説明

複数個取り配線基板および複数個取り配線基板の検査方法

【課題】複数個取り配線基板上に形成されるめっき層のひろがり幅を簡易に判定できる複数個取り配線基板を提供し、さらには複数個取り配線基板の検査方法を提供する。
【解決手段】複数個取り配線基板100は、複数個の配線基板領域1とダミー領域2を有し、配線基板領域1に、めっき層4が被着される配線導体3が形成されており、ダミー領域2に、めっき層4が配線導体3を被着する際に許容されるひろがり幅を識別するための少なくとも1対の識別用部材5を有し、識別用部材5が、一定の間隙で対向して配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品を収容するための電子部品収納用パッケージや混成集積回路基板等に用いられる複数の配線基板領域が配列され、配線基板領域にめっきが施される複数個取り配線基板およびその検査方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、半導体素子、弾性表面波素子および圧電振動子等の電子部品搭載用の基板となる配線基板は、配線導体が形成された複数の絶縁層を上下に積層し、その積層体の主面に電子部品の搭載部を設けた構造を有する。このような配線基板は、通常、その1辺の長さが数mm程度と小さく、複数個の配線基板の取り扱いを容易とするために、また配線基板および電子装置の作製を効率よくするために、母基板に配線基板領域が複数縦横に配列形成された、いわゆる複数個取り配線基板の形態で作製されている。
【0003】
複数個取り配線基板は、通常、セラミック焼結体等から成る絶縁層が複数積層されて成り、中央部に四角形状の配線基板領域が縦横に配列形成されているとともに外周部にダミー領域が形成された四角形状の母基板と、配線基板領域に形成された配線導体とを具備する構造を有する。なお、ダミー領域は、複数個取り配線基板の取り扱いを容易とすること等のために設けられている。そして、この複数個取り配線基板が個々の配線基板に分割されることにより複数個の配線基板が形成される。
【0004】
また、個々の配線基板の配線導体の露出部分には、ニッケルや金等のめっき層が被着され、電子部品の電極が半田等を介して接続される。
【0005】
このめっき層は、配線導体の露出部分の酸化腐食の防止や、配線導体に電子部品を、はんだ等の接続材を介して接続する際の接続を容易かつ強固なものとすること等のために、配線導体に被着される。このようなめっき層は、通常、複数個取り配線基板をニッケル等のめっき液中に浸漬しながら、配線導体にめっき用の電流を、治具等を介して外部から供給することにより形成される。
【特許文献1】特開2002−54000号公報
【特許文献2】特開平6−349976号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近時、電子部品の微細化に伴い、複数個取り配線基板にも、各配線基板領域の小型化、配線導体の高密度化が求められ、隣り合う配線導体の間の間隔が狭くなってきている。しかしながら、上記従来の複数個取り配線基板においては、露出している配線導体において、めっき層が被着されるため、配線導体の幅(平面視で、配線導体の長手方向に直交する方向の幅、以下単に線幅ともいう)が太くなる。
【0007】
そして、めっき層が被着することにより線幅が太くなった露出部分において、配線導体同士がめっき層を介して接し、電気的に短絡してしまうという問題が発生するようになってきた。
【0008】
この問題に対応するため、めっき層のひろがり幅を設定する、すなわち、めっき層のひろがりを、配線導体同士が電気的に短絡しないように設定する必要がでてきた。
【0009】
この場合、配線導体同士の電気的な短絡は、めっき層により誘発されるので、めっき層の配線導体からのひろがり幅(平面視したときの、配線導体の外縁からめっき層の外縁までの間の長さ)が、設定値内であるか否かを測定することにより、電気的な短絡の有無を検査するという手段が考えられる。
【0010】
しかしながら、配線基板上の配線導体のめっき層のひろがり幅が設定値内か否かを測定することは、測定方法も難しく、また測定に時間もかかり、作業性が極端に落ちるという問題があった。
【0011】
本発明は、このような従来の問題点を解決するために完成されたものであり、その目的は、複数個取り配線基板の配線導体上に形成されるめっき層のひろがり幅を簡易に判定できる複数個取り配線基板を提供し、さらには複数個取り配線基板の検査方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の複数個取り配線基板は、複数個の配線基板領域とダミー領域を有し、前記配線基板領域に、めっき層が被着される配線導体が形成された複数個取り配線基板であって、前記ダミー領域に、前記めっき層が前記配線導体を被着する際に許容されるひろがり幅を識別するための少なくとも1対の識別用部材を有し、前記識別用部材が、一定の間隙で対向して配置されていることを特徴とするものである。
【0013】
また、本発明の複数個取り配線基板は、好ましくは、前記対向する識別用部材の少なくとも一方が、導体パターンであることを特徴とするものである。
【0014】
また、本発明の複数個取り配線基板は、好ましくは、前記一定の間隙が、少なくとも前記許容されるひろがり幅であることを特徴とするものである。
【0015】
また、本発明の複数個取り配線基板は、好ましくは、前記対向する1対の識別用部材が、対向する1対の導体パターンであることを特徴とするものである。
【0016】
また、本発明の複数個取り配線基板は、好ましくは、前記対向する1対の導体パターンが、枠状の形状における、対向する一辺であることを特徴とするものである。
【0017】
また、本発明の複数個取り配線基板は、好ましくは、前記対向する1対の導体パターンが、1対の四角形状であることを特徴とするものである。
【0018】
また、本発明の複数個取り配線基板は、前記一定の間隙が、少なくとも前記許容されるひろがり幅2倍の幅であることを特徴とするものである。
【0019】
また、本発明の複数個取り配線基板は、好ましくは、前記ダミー領域に、前記対向する識別用部材を複数対有していることを特徴とするものである。
【0020】
また、本発明の複数個取り配線基板は、好ましくは、前記めっき層が、銅めっき層およびニッケルめっき層の少なくとも一方を含むことを特徴とするものである。
【0021】
また、本発明の複数個取り配線基板の検査方法は、複数個の配線基板領域とダミー領域を有し、前記配線基板領域に配線導体が、前記ダミー領域に、一定の間隔で対向して配置されている少なくとも1対の識別用部材が設けられている複数個取り配線基板上に、前記配線基板領域および導体パターン上に被着しためっき層のひろがり幅を検査する複数個取り配線基板の検査方法であって、前記複数個取り配線基板をめっき液中に浸漬して、前記配線導体の表面にめっき層を形成し、しかる後、前記ダミー領域の、少なくとも1対の識別用部材の間隔におけるめっき度合いを識別することにより、前記配線基板領域のめっき層の可否を判定することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0022】
本発明の複数個取り配線基板は、ダミー領域に、めっき層が配線導体を被着する際に許容されるひろがり幅を識別するための少なくとも1対の識別用部材を有し、識別用部材が、一定の間隙で対向して配置されていることから、識別用部材の間隙を確認することにより、配線基板領域の配線導体上のめっき層のひろがり幅が、許容範囲内か否かを判断できる。
【0023】
すなわち、配線基板領域の配線導体にめっき層を被着させる際に、めっき液中で同時に、ダミー領域の識別用部材にもめっき層が被着される。そのため、識別用部材におけるめっき層のひろがり幅を測定することにより、配線導体におけるめっき層のひろがり幅を検知することができる。この場合、めっき層のひろがり幅の分、互いに対向する1対の識別用部材の間の間隙の幅が狭くなるので、所定の間隙の幅を基準にして、容易にめっき層のひろがり幅を測定することができる。そのため、めっき層のひろがり幅が許容される範囲内であるか否かを容易に、かつ確実に検知することができる。したがって、配線基板領域のめっき層のひろがり幅を簡易に判定できる複数個取り配線基板を提供することができる。
【0024】
またさらに、本発明の複数個取り配線基板は、対向する識別用部材の少なくとも一方が、導体パターンであることにより、配線基板領域に形成された配線導体と同じ材料で形成することが可能であり、識別用部材と配線導体に被着されるめっき層の被着条件が同じとなる。そのため、識別用部材と配線導体に被着されるめっき層のひろがり幅をより一層正確とすることができる。また、例えば、めっき層を電解めっき法で被着する場合に、識別用部材に対するめっき層の被着を、配線導体にめっきする場合と同様に行うことができる。したがって、識別用部材(間隙)を確認することにより、配線導体のめっき層のひろがり幅をより正確に判断できる。
【0025】
またさらに、本発明の複数個取り配線基板は、一定の間隙が、少なくとも許容されるひろがり幅であることから、めっき層の被着後この間隙の有無により、めっき層のひろがり幅が許容範囲内か否かをより容易に判断できる。
【0026】
つまり、間隙が、許容されるひろがり幅と同じである場合には、間隙の有無により、容易にめっき層のひろがり幅が許容範囲内か否かを容易に検知することができる。より具体的には、間隙が確認できる場合には、めっき層のひろがり幅が許容範囲内であると判断でき、間隙が確認できない場合には、めっき層のひろがり幅が許容範囲内でないと判断できる。また、間隙が、許容されるひろがり幅よりも広い場合には、残存する間隙の幅を測定することにより、めっき層のひろがり幅が許容される幅に達しているか否かを容易に検知することができる。
【0027】
またさらに、本発明の複数個取り配線基板は、対向する1対の識別用部材が、対向する1対の導体パターンであることから、1度に2つの導体パターンを用いて、めっき層のひろがり幅を判断することができる。それゆえ、配線導体のめっき層のひろがり幅をより正確に判断できる。なお、この1対の導体パターンは、その端部がつながっていてもよく、その一部が対向していればよい。そのような例としては、枠状等が挙げられる。
【0028】
またさらに、本発明の複数個取り配線基板は、対向する1対の導体パターンが、枠状の形状における、対向する一辺であることから、めっき層は対向する1対の識別用部材のお互いの方向に(内側方向)向かって広がっていくことから、対向する1対の導体パターンの間隙を確認することにより、配線導体に許容される両側のめっき層ひろがり幅を確認できる。
【0029】
またさらに、本発明の複数個取り配線基板は、対向する1対の導体パターンが、四角形状であることから、1方向だけのめっき層のひろがりが確認できるだけでなく、異なる2方向のめっき層のひろがりを確認できる。
【0030】
またさらに、本発明の複数個取り配線基板は、一定の間隙が、少なくとも許容されるひろがり幅2倍の幅である場合には、次のような効果を得ることができる。
【0031】
すなわち、対向する識別用部材を、配線導体と同じ材料で識別用部材を形成することが可能であり、識別用部材と配線導体に被着されるめっき層の被着条件が同じとなる。そのため、互いに隣接する2つの配線導体の間で、めっき層が、隣接する配線導体に広がるのと同様な状態を形成できる。したがって、配線導体のめっき層のひろがり幅をより正確に判断できる。
【0032】
またさらに、本発明の複数個取り配線基板は、ダミー領域に、対向する識別用部材を複数対有していることから、所望する方向のめっき層の確認を容易に行うことができる。
【0033】
また、複数の識別用部材によりめっき層のひろがり幅を確認できるので、めっき層のひろがり幅が識別用部材間でバラついたとしても、複数の識別用部材を確認すること(例えば、各ひろがり幅のうち最大のものを基準にして判断すること)により、配線導体におけるめっき層のひろがり幅が、許容される範囲内か否かを、より正確に判断することができる
またさらに、本発明の複数個取り配線基板は、めっき層が、銅めっき層およびニッケルめっき層の少なくとも一方を含むことから、配線導体に被着される下地めっき層に対応したものとなる。そのため、配線導体の電気的な特性や信頼性が有効に確保される。したがって、この構成によれば、特性や信頼性が確保された配線導体のめっき層のひろがりをより正確に判断できる。
【0034】
本発明の複数個取り配線基板の検査方法は、複数個の配線基板領域とダミー領域を有し、配線基板領域に配線導体が、ダミー領域に、一定の間隔で対向して配置されている少なくとも1対の識別用部材が設けられている複数個取り配線基板上に、配線基板領域および導体パターン上に被着しためっき層のひろがり幅を検査する複数個取り配線基板の検査方法であって、複数個取り配線基板をめっき液中に浸漬して、配線導体の表面にめっき層を形成し、しかる後、ダミー領域の、少なくとも1対の識別用部材の間隔におけるめっき度合いを識別することにより、配線基板領域のめっき層の可否を判定することから、配線基板領域の配線導体のめっき層のひろがり幅を測定することなく、許容されるめっき層のひろがり幅の範囲内か否かを容易に確認できる。
【0035】
したがって、複数個取り配線基板上に形成されるめっき層のひろがり幅を簡易に判定できる複数個取り配線基板の検査方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
(実施形態1)
まず、請求項1〜請求項3に記載の複数個取り配線基板について図1に基づき説明する。
【0037】
図1(a)は、本発明の実施形態1にかかる複数個取り配線基板の一例を示す平面図である。また図1(b)は図1(a)の部分X1の詳細図である。
【0038】
図1(a)、(b)において、1は配線基板領域、2はダミー領域、3は配線導体、4はめっき層である。これら配線基板領域1、ダミー領域2、配線導体3、めっき層4により、複数個取り配線基板100が基本的に構成される。
【0039】
各配線基板領域1およびダミー領域2は、酸化アルミニウム質焼結体(アルミナセラミックス)、窒化アルミニウム質焼結体、ムライト質焼結体、窒化珪素質焼結体、炭化珪素質焼結体、ガラスセラミックス焼結体等の電気絶縁材料により形成されている。
【0040】
配線基板領域1は、それぞれが、電子部品(図示せず)を搭載する配線基板(図示せず)の絶縁基体となる領域である。本実施形態において、配線基板領域1は平面視で四角形状であり、それぞれの上面の中央部に電子部品を搭載する搭載部(図示せず)を有している。
【0041】
電子部品は、半導体集積回路素子や光半導体素子を含む半導体素子、弾性表面波素子、圧電振動子、加速度センサ素子、コンデンサ、抵抗器、インダクタ等の種々の機能素子や受動素子である。
【0042】
ダミー領域2は、縦横に配列されている配線基板領域1を取り囲むように形成され、複数個取り配線基板100の取り扱いを容易とすること等の機能を有している。
【0043】
なお、複数個取り配線基板100は、その形状が基本的には四角形状であるが、各角部に丸みがつけてあったり、各辺が直線でなく、いくつかの凹凸が設けられたりしているような、略四角形状のものであってもよいが、好ましくは正方形状もしくは長方形状である。
【0044】
配線基板領域1およびダミー領域2は、例えば酸化アルミニウム質焼結体から成る場合、以下のようにして作製される。まず、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化カルシウム、酸化マグネシウム等の原料粉末に適当な有機バインダ、溶剤を添加混合して泥漿状のセラミックスラリーを作製し、このセラミックスラリーをドクターブレード法やカレンダーロール法等のシート成形技術を採用しシート状となすことによってセラミックグリーンシート(セラミック生シート)を得る。しかる後、セラミックグリーンシートを所定の順に上下に積層して生セラミック成形体と成す。この生セラミック成形体を還元雰囲気中で約1600℃の高温で焼成することによって、複数個取り配線基板100が製作される。
【0045】
また複数個取り配線基板100は、その上下主面の少なくとも一方に、配線基板領域1同士の境界および配線基板領域1とダミー領域2との境界に沿って、分割溝7が縦横に形成されている。
【0046】
分割溝7は、複数個取り配線基板100をこれに沿って撓折して個々の配線基板領域1をそれぞれの配線基板に分割する際に曲げ応力を集中させる機能を有している。
【0047】
分割溝7は、複数個取り配線基板100(配線基板領域1およびダミー領域2)となるグリーンシートの主面に所定の断面形状を有する金属製のブレード(刃)を押圧し、その刃先を所定深さに侵入させることによって形成される。
【0048】
なお配列された複数の配線基板領域1を個々の配線基板領域1に分割する方法としては、上述のような分割溝7を予め形成しておくという方法に限らず、ダイシング加工等の他の方法を用いてもよい。
【0049】
また、各配線基板領域1は、搭載部の周辺から下面にかけてタングステン、マンガン、銅、銀、金、パラジウム、白金等の金属材料から成る配線導体3を有している。この配線導体3は、例えばタングステンから成る場合、銅粉末に適当な有機バインダ、溶剤等を添加混合して得た金属ペーストを、複数個取り配線基板100の各セラミック絶縁層となるグリーンシートの上面に予めスクリーン印刷法等により所定パターンに印刷塗布しておくことによって形成される。
【0050】
配線導体3は、搭載部に搭載される電子部品と電気的に接続され、この電子部品の電極を各配線基板領域1の下面側等に導出する導電路として機能する。配線導体3と電子部品の電極との電気的な接続は、例えばボンディングワイヤやはんだ等の導電性接続材(図示せず)を介して行なわれる。
【0051】
つまり、配線導体3のうち搭載部に電子部品の電極(図示せず)を半田やボンディングワイヤ等の導電性接続材(図示せず)を介して電気的に接続するとともに、配線導体3のうち搭載部外の表面に導出された部分を、半田等を介して外部の電気回路に電気的に接続することにより、電子部品の電極が外部の電気回路と電気的に接続される。
【0052】
配線導体3は、例えば、配線基板としての小型化や、搭載される電子部品の高機能化や高集積化等に対応するために、隣接間隔が50μm〜100μm程度と、高密度に形成される。なお、配線導体3は、配線基板領域1の上面以外の表面やの内部に延在させてもよい。さらに、配線導体3の露出表面には、めっき層4が被着される。
【0053】
めっき層4は、配線導体3の酸化腐食を防止したり、半田等の接続材の接続を容易かつ確実なものとしたりする機能をなす。めっき層4は、ニッケルや金、銅、コバルト、白金、パラジウム等の金属またはその合金から成り、また、例えばニッケル−リン等、ニッケル−ホウ素等の金属以外の成分を含有する金属または合金も含むものである。
【0054】
めっき層4は、電解めっき法や無電解めっき法等のめっき法により被着、形成することができる。
【0055】
例えば、硫酸ニッケルを主なニッケルの供給源として含み、これに塩化ニッケルやホウ酸等を添加した電解ニッケルめっき液(いわゆるワット浴)に複数個取り配線基板100を、めっき用治具(図示せず)等で保持して浸漬し、治具等を介して配線導体3にめっき用の電流を外部の電源から供給することにより、配線導体3の露出部分にニッケルめっき層が被着される。
【0056】
また、銅めっき層であれば、銅の供給源としての硫酸銅および還元剤としてのホルマリンを主成分として含有し、これに錯化剤やpH調整剤等が添加されてなる無電解銅めっき液に複数個取り配線基板100を所定時間浸漬することにより、配線導体3の露出部分に被着される。
【0057】
また、金めっき層であれば、シアン化金化合物にクエン酸カリウム等の有機酸(塩)類やリン酸カリウム等のリン酸塩類等の添加物を添加した電解金めっき浴に複数個取り配線基板100を浸漬し、めっき用治具等を介して配線導体3に所定のめっき用の電流を供給することにより配線導体3の露出部分に被着される。
【0058】
なお、配線導体3上のめっき層4の厚さは、導電性接合材の接続強度の確保等を考慮して、3μm以上が好ましい。3μm以下だと半田等の導電性接続材にて電子部品を接続する際や、配線基板を外部回路基板等に接続すれ際に、半田等の導電性接続材にめっき層4が溶融したりして、配線導体3と導電性接続材が十分な強度で接続できない。この場合、例えば、厚さ2μm以上のニッケルめっき層や銅めっき層と、厚さ1μm以上の金めっき層とを順次被着させる。ニッケルめっき層や銅めっき層は、導電性接合材と接合し、導電性接合材を配線導体3に強固に接合させる機能を有する。金めっき層は、導電性接合材の接続性をさらに向上させるとともに、ニッケルめっき層や銅めっき層の酸化腐食を抑制する機能を有する。
【0059】
このような厚みのめっき層4を、めっきのひろがり幅の設定なしに被着させると、上記のように隣接間隔が狭い配線導体3の間で、めっき層4が被着した部分において、配線導体3同士が電気的に短絡する可能性がある。
【0060】
それゆえ、本発明の複数個取り配線基板100は、ダミー領域2に、めっき層4が配線導体2を被着する際に許容されるひろがり幅を識別するための少なくとも1対の識別用部材5を有し、識別用部材5が、一定の間隙で対向して配置されている。
【0061】
このような識別用部材5を備えることから、識別用部材5の間隙を確認することにより、配線基板領域1の配線導体3上のめっき層4のひろがり幅が、許容範囲内か否かを判断できる。
【0062】
すなわち、配線基板領域1の配線導体3にめっき層4を被着させる際に、めっき液中で同時に、ダミー領域2の識別用部材5にもめっき層4が被着される。そのため、識別用部材5におけるめっき層4のひろがり幅を測定することにより、配線導体3におけるめっき層4のひろがり幅を検知することができる。この場合、めっき層4のひろがり幅の分、互いに対向する1対の識別用部材5の間の間隙の幅が狭くなるので、所定の間隙の幅を基準にして、容易にめっき層4のひろがり幅を測定することができる。そのため、めっき層4のひろがり幅が許容される範囲内であるか否かを容易に、かつ確実に検知することができる。したがって、めっき層4のひろがり幅を簡易に判定できる複数個取り配線基板100を提供することができる。
【0063】
このような識別用部材5は、例えば、タングステン、マンガン、銅、銀、金、パラジウム、白金等の金属材料や、酸化アルミニウム質焼結体(アルミナセラミックス)、窒化アルミニウム質焼結体、ムライト質焼結体、窒化珪素質焼結体、炭化珪素質焼結体、ガラスセラミックス焼結体等のセラミック材料等により形成される。
【0064】
識別用部材5は、例えば、タングステンからなる場合であれば、配線導体3を形成するのと同様の金属ペーストを、配線基板領域1を形成するセラミックグリーンシートの表面に、所定パターンで印刷しておくことにより形成することができる。
【0065】
また、本発明の複数個取り配線基板100は、対向する識別用部材5の少なくとも一方が、導体パターンであることにより、配線基板領域1に形成された配線導体3と同じ材料で形成することが可能であり、識別用部材5と配線導体3に被着されるめっき層4の被着条件が同じとなる。そのため、識別用部材5と配線導体3に被着されるめっき層4のひろがり幅をより一層正確とすることができる。また、例えば、めっき層4が電解めっき法で被着される場合に、識別用部材5に対するめっき層4の被着を、配線導体3にめっきするのと同様に行うことができる。
【0066】
したがって、識別用部材5(間隙)を確認することにより、配線導体3に被着されるめっき層4のひろがり幅をより正確に判断できる。
【0067】
なお、識別用部材5に電解めっき法でめっき層4を被着させる場合には、例えば、識別用部材5を接続用の導体(図示せず)を介して配線導体3と電気的に接続しておいて、識別用部材5にもめっき用の電流が供給されるようにしておく。接続用の導体は、例えば、配線基板領域1やダミー領域2の内部等に、配線導体3と同様の材料および方法で形成することができる。
【0068】
またさらに、本発明の複数個取り配線基板100は、一定の間隙が、少なくとも許容されるひろがり幅であることあるから、めっき層4の被着後この間隙の有無により、めっき層のひろがりが許容範囲内か否かを、より容易に判断できる。
【0069】
つまり、間隙が、許容されるひろがり幅と同じである場合には、間隙の有無により、容易にめっき層4のひろがり幅が許容範囲内か否かを容易に検知することができる。より具体的には、間隙が確認できる場合には、めっき層4のひろがり幅が許容範囲内であると判断でき、間隙が確認できない場合には、めっき層4のひろがり幅が許容範囲内でないと判断できる。また、間隙が、許容されるひろがり幅よりも広い場合には、残存する間隙の幅を測定することにより、めっき層4のひろがり幅が許容される幅に達しているか否かを容易に検知することができる。
【0070】
(実施形態2)
次に請求項5に記載の複数個取り配線基板100について図2に基づいて説明する。
【0071】
図2(a)は、本発明の実施形態2にかかる複数個取り配線基板100の一例を示す平面図である。また図2(b)は図2(a)の部分X2の詳細図である。なお、先に述べた実施形態1と共通する構成については同一の参照符を付し、重複する説明を省略するものとする。
【0072】
本発明の複数個取り配線基板100は、対向する1対の識別用部材5が、対向する1対の導体パターンが、枠状の形状における、対向する一辺であることから、めっき層4は対向する1対の識別用部材5のお互いの方向に(内側方向)向かって広がっていく。それゆえ、対向する1対の識別用部材5の間隙を確認することにより、配線導体3に許容される両側のめっき層のひろがりを確認できる。
【0073】
(実施形態3)
次に請求項6に記載の複数個取り配線基板100について図3に基づいて説明する。
【0074】
図3(a)は、本発明の実施形態3にかかる複数個取り配線基板100の一例を示す平面図である。また図3(b)は図3(a)の部分X3の詳細図である。
【0075】
なお、先に述べた実施形態1と共通する構成については同一の参照符を付し、重複する説明を省略するものとする。
【0076】
本発明の複数個取り配線基板100は、対向する識別用部材5が、四角形状であることから、一方向だけのめっき層4のひろがりが確認できるだけでなく、違う2方向のめっき層4のひろがりを確認できる。
【0077】
またさらに、本発明の複数個取り配線基板100は、対向する識別用部材5が導体パターンであって、かつ一定の間隙が、少なくとも許容されるひろがり幅2倍の幅であることから、配線導体3のめっき層4が配線導体3の外方向に広がるのと同様な状態を形成でき、配線導体3のめっき層4のひろがりをより正確に判断できる。
【0078】
またさらに、本発明の複数個取り配線基板は、ダミー領域に、対向する識別用部材を複数対有していることから、所望する方向のめっき層の確認を容易に行うことができる。
【0079】
また、複数の識別用部材によりめっき層のひろがり幅を確認できるので、めっき層のひろがり幅が識別用部材間でバラついたとしても、複数の識別用部材を確認すること(例えば、各ひろがり幅のうち最大のものを基準にして判断すること)により、配線導体におけるめっき層のひろがり幅が、許容される範囲内か否かを、より正確に判断することができる
またさらに、本発明の複数個取り配線基板は、めっき層が、銅めっき層およびニッケルめっき層の少なくとも一方を含むことから、配線導体に被着される下地めっき層に対応したものとなる。そのため、配線導体の電気的な特性や信頼性が有効に確保される。したがって、この構成によれば、特性や信頼性が確保された配線導体のめっき層のひろがりをより正確に判断できる。
【0080】
本発明の複数個取り配線基板の検査方法は、複数個の配線基板領域1とダミー領域2を有し、配線基板領域1に配線導体3が、ダミー領域2に、一定の間隔で対向して配置されている少なくとも1対の識別用部材5が設けられている複数個取り配線基板100上に、配線基板領域1および導体パターン上に被着しためっき層4のひろがり幅を検査する複数個取り配線基板1の検査方法であって、複数個取り配線基板1をめっき液中に浸漬して、配線導体3の表面にめっき層4を形成し、しかる後、ダミー領域2の、少なくとも1対の識別用部材5の間隔におけるめっき度合いを識別することにより、配線基板領域1のめっき層4の可否を判定するというものである。
【0081】
なお、上記検査方法の説明は、図1〜図3に示すような複数個取り配線基板100を例として行い、検査方法を手順に沿って示す図面は省略している。各符号は、図1〜図3から引用したものである。
【0082】
このような検査方法としたことから、配線基板領域1の配線導体3のめっき層4のひろがり幅を測定することなく、許容されるめっき層4の範囲内か否かを容易に確認できる。
【0083】
したがって、複数個取り配線基板100上に形成されるめっき層4のひろがり幅を簡易に判定できる複数個取り配線基板の検査方法を提供することができる。
【0084】
なお、複数個の配線基板領域1とダミー領域2を有し、配線基板領域1に配線導体3が、ダミー領域2に、一定の間隔で対向して配置されている少なくとも1対の識別用部材5が設けられている複数個取り配線基板100は、上述した製造方法により製造することができる。
【0085】
また、ダミー領域2の、少なくとも1対の識別用部材5の間隔におけるめっき度合いの識別は、例えば、目視(双眼顕微鏡等を用いる場合を含む)や画像認識装置による外観検査等の際に、識別用部材5の間隙を検査しその幅を確認することにより行なうことができる。
【0086】
具体的には、例えば、一対の識別用部材5を導体パターンで形成するとともに、間隙の幅を、許容されるひろがり幅の2倍としておき、複数個取り配線基板100にめっきを施し、配線導体2および識別用部材5にめっき層4を被着させる。そして、目視や画像認識装置により、間隙が残存しているか否かを確認することにより、ひろがり幅が許容される範囲内か否かを確認する。
【0087】
この場合、めっき度合いの識別は、ダミー領域2には他に配線導体3等の導体が露出している部位が少ない(または無い)ことや、ニッケル、金等のめっき層とダミー領域2を形成するセラミック材料等との間の色調、明度(光の反射率)の差が大きいこと等から、容易に行ない得る。
【0088】
なお、本発明は上述した実施形態1、2、3に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更、改良等が可能である。
【0089】
例えば、上述した実施形態3において、対向する識別用部材5の、四角形状を長方形とすることにより、めっき層4が被着されるめっき工程において、複数個取り配線基板100がめっき浴の中で揺動される2つ直角方向に合わせて、長方形の識別部材5の辺方向を形成することにより、揺動方向に起きるめっき層4のひろがりが、より正確に確認できる。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】(a)、(b)は本発明の実施形態1にかかる配線基板の一例を示す平面図およびで部分X1の詳細図である。
【図2】(a)、(b)は本発明の実施形態2にかかる配線基板の一例を示す平面図およびで部分X2の詳細図である。
【図3】(a)、(b)は本発明の実施形態3にかかる配線基板の一例を示す平面図およびで部分X2の詳細図である。
【符号の説明】
【0091】
1・・・配線基板領域
2・・・ダミー領域
3・・・配線導体
4・・・めっき層
5・・・識別用部材
7・・・分割溝
100・・・複数個取り配線基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数個の配線基板領域とダミー領域を有し、前記配線基板領域に、めっき層が被着される配線導体が形成された複数個取り配線基板であって、
前記ダミー領域に、前記めっき層が前記配線導体を被着する際に許容されるひろがり幅を識別するための少なくとも1対の識別用部材を有し、前記識別用部材が、一定の間隙で対向して配置されていることを特徴とする複数個取り配線基板。
【請求項2】
前記対向する識別用部材の少なくとも一方が、導体パターンであることを特徴とする請求項1に記載の複数個取り配線基板。
【請求項3】
前記一定の間隙が、少なくとも前記許容されるひろがり幅であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の複数個取り配線基板。
【請求項4】
前記対向する1対の識別用部材が、対向する1対の導体パターンであることを特徴とする請求項1に記載の複数個取り配線基板。
【請求項5】
前記対向する1対の導体パターンが、枠状の形状における、対向する一辺であることを特徴とする請求項4に記載の複数個取り配線基板。
【請求項6】
前記対向する1対の導体パターンが、1対の四角形状であることを特徴とする請求項4に記載の複数個取り配線基板。
【請求項7】
前記一定の間隙が、少なくとも前記許容されるひろがり幅2倍の幅であることを特徴とする請求項4〜請求項6のいずれかに記載の複数個取り配線基板。
【請求項8】
前記ダミー領域に、前記対向する識別用部材を複数対有していることを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれかに記載の複数個取り配線基板。
【請求項9】
前記めっき層が、銅めっき層およびニッケルめっき層の少なくとも一方を含むことを特徴とする請求項1〜請求項8のいずれかに記載の複数個取り配線基板。
【請求項10】
複数個の配線基板領域とダミー領域を有し、前記配線基板領域に配線導体が、前記ダミー領域に、一定の間隔で対向して配置されている少なくとも1対の識別用部材が設けられている複数個取り配線基板上に、前記配線基板領域および導体パターン上に被着しためっき層のひろがり幅を検査する複数個取り配線基板の検査方法であって、前記複数個取り配線基板をめっき液中に浸漬して、前記配線導体の表面にめっき層を形成し、しかる後、前記ダミー領域の、少なくとも1対の識別用部材の間隔におけるめっき度合いを識別することにより、前記配線基板領域のめっき層の可否を判定することを特徴とする複数個取り配線基板の検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−234661(P2007−234661A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−50976(P2006−50976)
【出願日】平成18年2月27日(2006.2.27)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】