説明

複雑な組成の燃料に適した燃料電池システムおよびその運転方法

一の側面に第1の触媒電極を有し、当該一の側面と対向する側面に第2の触媒電極を有する第1の電極電解液アセンブリと、大気温度において前記第1の触媒電極に燃料を供給する第1の導管とを備える燃料電池システムが提供される。当該燃料電池システムは、一の側面に第3の触媒電極を有し、当該一の側面と対向する側面に第4の触媒電極を有する第2の電極電解液アセンブリと、前記第2の触媒電極と前記第3の触媒電極との間に液体を密封するように取り付けられたメッシュとを備える。第2の導管が、第4の触媒電極に対し液体により酸化剤を供給可能なように第4の触媒電極に接続されている。当該燃料電池システムは、さらに、第1の電極電解液アセンブリに対し電位を与える手段と、第2の電極電解液アセンブリから出力されるエネルギーを消費する電気的負荷回路とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大まかには、燃料電池および燃料処理システムと、それらを運転する方法に関し、より詳しくは、電気化学的手段により、燃料電池システム内の有機燃料を大気温度にて処理する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、無公害の発電方法を提供するための複数の電気化学セルで構成されている。燃料電池が、一般の電池等の他の電気化学的なエネルギー変換器と異なる点は、燃料電池が有する電極の各々に燃料と酸化剤が継続的に供給されると同時に、反応生成物が燃料電池から継続的に除去される、という点である。燃料と酸化剤が電極に供給される限り、基本的に電流は流れ続ける。燃料電池は、多数の電気化学セルを積層し電気的に接続することにより形成され、住居用、商業用、工業用といった様々な規模の電力需要に対し電力供給を行うことができる。燃料電池システムが備える燃料電池の各々は、電解溶剤とそれに接触する少なくとも2個の触媒電極を有する電極電解液アセンブリを備えている。燃料電池の各々はまた、燃料と酸化剤の供給量を管理すると同時に、温度が燃料電池の運転可能な範囲内にとどまるように制御する装置を有している。純粋な水素を燃料に用いた場合、他の燃料と比較してより効率的に燃料電池による電力出力を得ることができる。しかしながら、水素には、高い可燃性、貯蔵の困難性、比較的高い生産コスト、といった多くの難点がある。
【0003】
燃料電池には、水素だけでなく、自然由来の有機燃料や人工的に合成された燃料を用いることもできる。自然由来の燃料は、供給量が潤沢であり、ひどくコスト高な合成燃料と比べ低コストであるため、一般的に合成燃料よりも好まれる。自然由来の有機燃料は、合成燃料と同様に、水蒸気改質反応などの吸熱化学反応を用いることにより、燃料電池システムの外部において水素を生成することができる。しかしながら、水蒸気改質反応は、負荷調整のために加えられる熱エネルギーの量に依存して反応速度が決まるため、反応速度を速めることができない。従って、水蒸気改質反応は大気温度よりもかなり高温でほぼ定常的に運転される燃料電池に利用されるに留まる。定常的な運転に限定されるということは、そのような燃料電池は、変化しやすい電気負荷の需要に追従して電力の出力を変化させることができない、ということである。さらに、そのような高温における燃料電池の運転においては、高分子化合物でできた電解質膜のほとんどを利用することができない。燃料電池の運転を大気温度で可能とするために、水蒸気改質反応を燃料電池の外部で行うように設計された燃料電池システムも多々ある。しかしながら、燃料電池の外部で水蒸気改質反応を行わせるとコスト高となり、またそれにより、変化する負荷需要に追従する能力が高まるわけでもない。燃料電池の外部において水蒸気改質反応により生成された水素を貯蔵設備に蓄積することは可能である。しかしながら、水素のような極めて可燃性が高い燃料を貯蔵することは危険である。さらに、水素貯蔵施設を用いる場合、燃料電池を一定位置に据え付けて利用する必要がある。
【0004】
自然由来の有機物から得られた水素を利用する燃料電池の電極のあるものは、運転に要する温度が水の沸点より低いルテニウムを電極における触媒に用いる。しかしながら、ルテニウムを用いた触媒電極を備えた燃料電池は通常、大気温度より高い温度で運転される。
【0005】
水素は、簡単な構造のメタノールなどの水溶性の有機燃料から、大気温度にて(すなわち、水蒸気改質反応を用いることなく)生成することができる。しかしながら、メタノールの利用は一般的に、幅広い用途に利用可能なほど費用効率が高くない。ヘキソースなどの複雑な組成の有機燃料は、自然界に豊富にあり費用も安価なため、燃料電池に利用するのに望ましい。燃料電池で用いる際、ヘキソースなどの複雑な組成の有機燃料は一連の電気化学的な脱水素反応において反応し、水素を放出する。典型的な例によれば、そのような脱水素反応の結果、中間体が生成される。そのような中間体はさらに反応し、廃棄物質となる。しかしながら、中間体のあるものは、触媒電極の燃料側を汚染し非活性化して水素の生成を根本的に止めてしまうことが判っている。メタノールなどの特定の燃料は、高温で運転すれば、燃料側の触媒電極を汚染することが少ない。しかしながら、メタノールは電解質膜を容易に透過して移動し、触媒電極の酸化剤側を分極化してしまう。このような分極化は燃料電池の性能を低下させる。
【0006】
メタノールが電解質膜を透過して移動することを抑制するために、水素透過金属バリアが利用可能である。しかしながら、金属バリアを利用すると、水素イオンや中性原子などの電気化学的に活性化した他の物質の透過も抑制されてしまい、メタノール燃料そのものから得られる性能も制限されてしまう。ポリマーなどの他の透過成膜を用いてメタノールの電極への到達を制御する方法を用いる場合、金属バリアを備えた燃料電池より高い性能を発揮する正常運転のためには、高温を要するという欠点がある。
【0007】
触媒電極を備える燃料電池の性能は、特に大気温度に近い温度における運転において、触媒の失活と反応中間体による汚染のために低下する。白金を含む触媒電極においては、通常、一酸化炭素が汚染を引き起こす反応中間体である。燃料電池の運転温度を約摂氏200度まで上げれば、そのような汚染を除去できる。燃料電池の運転を継続的に固定の場所またはその周辺で行う場合であれば、燃料電池の運転温度を上げることができるが、燃料電池を一時的な場所や必要が生じた場所で運転する場合にはそれは困難であるし、また高温運転においてはポリマー電解質膜の利用も不可能となる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
大気温度に近い温度において燃料電池内で複雑な組成の燃料を処理可能な燃料処理装置/システムを備える燃料電池システムの提供が求められている。先行技術による方法や、運搬可能もしくは一時的な場所で運転可能なシステムに対するこれらのニーズに応じるために開発されている先行技術の方法およびシステムは、高価、低効率、低性能のいずれかであるか、もしくはそれらの全ての欠点を有している。上記の事情に照らし、本発明は、先行技術が有する欠点および難点を改善もしくは解消することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様によれば、大気温度で有機燃料を処理し電気エネルギーを生成することが可能な燃料電池が提供される。燃料電池は2つの電極電解液アセンブリを備え、それらの各々はそれらの対向する2つの側面の各々に触媒電極を有し、それらの電極の間には導電性のメッシュが密封されて配置されている。第1の導管は大気温度で燃料を電極電解液アセンブリの一方の側面に供給する。導電性のメッシュは貫通する複数の開口部を有し、触媒電極の各々のメッシュに隣接する部分がその開口部を介して互いに通じている。第2の導管は酸化剤を電極電解液アセンブリの他方の側面に供給する。燃料電池システムは電極電解液アセンブリの一つに対し電位を与える手段と、電極電解液アセンブリの他の一つから生成されるエネルギーを使用する電気的負荷回路を備えている。
【0010】
上記態様の一実施例によれば、電位を与える手段は、一方の電極電解液アセンブリの一方の側面と導電的に接続された正極と、同じ電極電解液アセンブリの反対の側面と導電的に接続された負極とを有し、水素生成反応の処理に用いられるエネルギーの供給と触媒電極からの汚染物質の除去とを行い、一方の電極電解液アセンブリを通じた他方の電極電解液アセンブリへの水素の移動をもたらす。
【0011】
本発明の他の一態様によれば、電極電解液アセンブリを1つのみ有し、大気温度で有機燃料を処理し電気エネルギーを生成することが可能な燃料電池が提供される。燃料電池システムは、電極電解液アセンブリを備え、その電極電解液アセンブリの一方の側面には第1の触媒電極が設けられ、その電極電解液アセンブリの反対の側面には第2の触媒電極が設けられている。第1の導管は大気温度で第1の触媒電極に燃料を供給し、第2の導管は第2の触媒電極に酸化剤を供給する。燃料電池システムは第1の触媒電極、電極電解液アセンブリおよび第2の触媒電極に対し電位を与える手段を備えている。さらに、燃料電池システムは、第1の触媒電極、電極電解液アセンブリおよび第2の触媒電極から生成されるエネルギーを消費する電気的負荷回路を備えている。
【0012】
上記態様の一実施例によれば、電位を与える手段は、第1の触媒電極と導電的に接続された正極と、第2の触媒電極と導電的に接続された負極とを有し、水素生成反応の処理に用いられるエネルギーの供給と第1の触媒電極からの汚染物質の除去とを行い、電極電解液アセンブリを通じた第2の触媒電極への水素の移動をもたらす。燃料電池システムはまた上記の電位を与える手段を含む第1の電気回路を備えている。第1の電気回路と電気的負荷回路とは互いに連動し、運転中、電気的負荷回路が開いている時に第1の電気回路が閉じ、第1の電気回路が開いている時に電気的負荷回路が閉じる。運転中、第1の電気回路と電気的負荷回路とは所定の時間の経過に伴い開閉される。
【0013】
本発明のさらに他の一態様は、燃料と酸化剤が各々の導管を通って電極電解液アセンブリに供給される燃料電池システムの運転方法に関する。電位を与える手段の正極と一方の触媒電極とを導電的に接続し、電位を与える手段の負極と他方の触媒電極とを導電的に接続することにより、大気温度で水素を生成し触媒電極の一つから汚染物質を除去する電気化学反応に用いられるエネルギーが供給される。水素は一方の電極電解液アセンブリから他方の電極電解液アセンブリへ移動し、他方の電極電解液アセンブリにおいてエネルギーの生成に用いられる。
【0014】
本発明のさらに他の一態様は、電極電解液アセンブリを1つのみ有する燃料電池システムの運転の方法に関し、その方法は電位を与える手段を含む第1の電気回路を準備するステップを備える。第1の電気回路は電気的負荷回路と連動し、運転中、電気的負荷回路が開いている時に第1の電気回路が閉じ、第1の電気回路が開いている時に電気的負荷回路が閉じる。第1の電気回路と電気的負荷回路は所定の時間の経過に伴い周期的に開閉され、それにより燃料処理段階と発電段階とが切り替わる。
【0015】
本発明のさらに他の一態様は、燃料電池システムに適した燃料の選択の方法に関し、望ましくは、水に溶解する燃料を選択するステップと、当該燃料の有するギブズの自由エネルギーが当該燃料の反応熱より大きくなるように、当該燃料の水溶液を選択するステップとを備える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1には、単一セルの燃料電池システム(以下、燃料電池システム2と呼ぶ)が示されている。燃料電池システム2は、第1の電極電解液アセンブリ4と、第2の電極電解液アセンブリ6と、それらの間に配置されそれらに密封されている導電性のメッシュ8とを備えている。第1の導管10は第1の電極電解液アセンブリ4の一方の側面に液体を供給可能なように接続されており、第2の導管12は第2の電極電解液アセンブリ6の一方の側面に液体を供給可能なように接続されている。少なくとも第1の導管10および第2の導管12の一部は、導電性の物質でできている。燃料電池システム2は、エネルギー蓄積装置16を含む第1の電気回路14を備えており、エネルギー蓄積装置16は第1の電極電解液アセンブリ4に対し与えられる第1の電位の形で処理エネルギーを供給する。また、第2の電極電解液アセンブリ6にはそれをまたぐように電気的負荷回路18が接続されており、電気的負荷回路18は第2の電極電解液アセンブリ6から第2の電位の形で生成されるエネルギーを消費する。燃料電池システム2が複数、電気的に直列回路を形成するように接続されてもよいし、運転に用いられる液体の供給設備内に積層されてもよい。第1の電気回路14はエネルギー蓄積装置16を含むものとして説明したが、本発明はその点につき限定されず、第1の電気回路14がバッテリー、キャパシタ、それらの複数を組み合わせたもの等、処理エネルギーを供給可能な他の手段を含んでもよい。
【0017】
図1および図2に示されるように、第1の電極電解液アセンブリ4は電解質膜5を備え、電解質膜5は望ましくはイオン交換ポリマーでできており、当該電解質膜は第1の電極21と第2の電極22とを有し、それらの電極は望ましくは電解質膜の表面に加熱圧着された触媒電極である。同様に、第2の電極電解液アセンブリ6もまた電解質膜5を備え、電解質膜5は望ましくはイオン交換ポリマーでできており、当該電解質膜は第3の電極23と第4の電極24とを有し、それらの電極は望ましくは電解質膜の表面に加熱圧着された触媒電極である。ポリマーでできた電解質膜5は一般的に柔軟な弾性素材であり、いずれのイオン導電性素材が用いられてもよいが、一般的にはイオンの双方向の移動を可能とする炭化水素樹脂もしくはフッ素炭化樹脂が用いられる。炭化水素樹脂に関して言えば、特定の用途にフェノール系物質が用いられる。フッ素炭化樹脂は特に、化学的な腐食を伴う環境下において耐久性があり有効である。電極の製造に適する素材としては、白金、パラジウム、ロジウム、金、タングステン、タンタル、ルテニウム、およびそれらの合金や組み合わせがあるが、それらに限られない。本発明は上記の点に関し限定されず、他の膜および他の電極が本発明において用いられてもよい。
【0018】
第1の電極電解液アセンブリ4はまた、貫通孔20および貫通孔25と、シール面28とを有している。第2の電極電解液アセンブリ6は第1の電極電解液アセンブリ4と同様の構成である。第2の電極22および第3の電極23はメッシュ8と導電的に接続され、第1の電極21は第1の導管10と導電的に接続され、第4の電極24は第2の導管12と導電的に接続されている。第1および第2の電極電解液アセンブリが他の構成部品に組み付けられると、貫通孔20および貫通孔25は液体が燃料電池システム2を貫き流れるためのマニホールドを形成する。第1の電極電解液アセンブリ4および第2の電極電解液アセンブリ6は互いに同様の構成であるものとして説明したが、本発明はその点につき限定されず、例えば、第1および第2の電極電解液アセンブリが異なる素材でできている、異なる製造方法で製造されるなど、異なる構成であってもよい。
【0019】
図1に示されるように、組み立てられると、第1の導管10は第1の電極21に液体を供給可能なように接続され、大気温度で第1の電極21に燃料を供給する。望ましくは、燃料が供給され水素の生成のために処理される間の燃料の温度は、高分子電解質の利用に適するように、約華氏60度から約華氏100度の範囲内である。燃料の処理と燃料電池の運転が大気温度にて行われると、燃料電池および燃料処理システムの少なくとも一方を暖めるために要する起動時間が不要となるため、燃料電池システムは一時的な負荷要求に応じることが可能となる。大気温度の運転は約華氏60度から約華氏100度の範囲内であるものとして説明したが、本発明はその点につき限定されず、例えば、本発明にかかる燃料電池システムが約華氏180度までの温度で運転されるものとしてもよい。
【0020】
第2の導管12は第4の電極24に液体を供給可能なように接続され、第4の電極24に酸化剤を供給する。望ましくは、第1の導管10は第1の電極21に燃料を供給する閉じたループシステムの一部を構成し、第2の導管12は第4の電極24に酸化剤を供給する閉じたループシステムの一部を構成する。反応生成物および余分な熱は、それぞれ、閉じたループシステムにおいて第1の導管10および第2の導管12を通る燃料および酸化剤の流れに伴い、燃料電池システム2から外部へ運び出される。
【0021】
さらに、図1に示されるように、エネルギー蓄積装置16の正極は第1の導管10および第1の電極21と導電的に接続され、エネルギー蓄積装置16の負極はメッシュ8および第2の電極22と導電的に接続されている。第1の電気回路14に含まれるエネルギー蓄積装置16は、水素を生成する電気化学反応に用いられる処理エネルギーを供給するとともに第1の電極21において生成される汚染物質である一酸化炭素(CO)を除去するために、分極されている。水素は第1の電極電解液アセンブリ4を通じて第3の電極23へと移動する。下記の式1は第1の電極電解液アセンブリ4において起こる電気化学反応の全体を示したものである。式1は特に、第1の触媒電極に水がある状態で第1の電極電解液アセンブリ4に対し第1の電位が与えられることにより、水素(H)系物質が生成され、第1の電極21から汚染物質COが除去される様子を示している。
【0022】
【数1】

【0023】
式1に示される電気化学反応に要する処理エネルギーは、約0.103ボルトである。第2の電極電解液アセンブリ6から生じる電気エネルギーの出力は式1の電気化学反応に要する処理エネルギーよりも大きい。第2の電極電解液アセンブリ6において、メッシュ8が負極を、また第2の導管12が正極を構成している。望ましくは、第1の導管10の電位は第2の導管12の電位よりも低い。式1に示されるように、水はこの電気化学反応に必要な反応物質の1つである。従って、導管は燃料の水溶液を供給可能なように構成されることが望ましい。
【0024】
上記反応に関するギブズの自由エネルギーは、所定の反応経路によって取り出すことができる論理的に最大の仕事量を示す。反応により生成される熱は、標準状態において1モルの物質が化学反応により変化する際にシステムにおいて生じるエンタルピーの変化に相当する。従って、燃料は、反応により生じる熱の絶対値より大きな絶対値のギブズの自由エネルギーを有することが望ましい。特に、2以上の水素結合を有する複雑な組成の有機燃料が望ましい。望ましい複雑な組成の有機燃料の例としては、ヘキソースC12に例示される炭水化物があり、ヘキソースC12の生成する熱は1モルあたり−669.92キロカロリーであり、ヘキソースC12の有するギブズの自由エネルギーは1モルあたり−688.33キロカロリーである。大気温度における処理に適した他の複雑な組成の有機燃料には、ヒドラジンやほとんどの軽質炭化水素が含まれる。
【0025】
図3には、燃料電池システム2の起動後、エネルギー蓄積装置16が第1の電気回路14から切断され、第2の電極電解液アセンブリ6から出力されるエネルギーの一部が電気化学反応の処理エネルギーとして用いられている状態が示されている。また、出力される電気エネルギーの残りは電気的負荷回路18に接続された何らかの有用な電気負荷Lにより消費される様子も示されている。第2の電極電解液アセンブリ6より出力される電気エネルギーは電気化学反応において消費される処理エネルギーよりも大きい。
【0026】
図3には、第3の電気回路17に接続された安定抵抗器9が示されている。安定抵抗器9の一方の端子は第1の導管10と導電的に接続され正電荷を運ぶ。安定抵抗器9の他方の端子は第2の導管12と導電的に接続され負電荷を運ぶ。第3の電気回路17は電気的負荷回路18の電流量を安定させるとともに、水素を生成する電気化学反応に用いられる処理エネルギーを提供する。第3の電気回路17は電気的負荷回路18から得られる電流の少なくとも一部を処理エネルギーとして利用可能とする。電気的負荷回路18を流れる電流量は処理エネルギーの供給のために第3の電気回路17を流れる電流量より大きい。安定抵抗器9は、第1の導管10の電位が第2の導管12の電位より低くなるように、第3の電気回路17を流れる電流量を調整する。安定抵抗器9が第3の電気回路17の電流量を調整するものとして説明したが、本発明はその点に関し限定されず、例えば、燃料処理電流と外部負荷とをより細かく一致させることが可能な半導体装置や電流制御装置といった他の装置が用いられてもよい。
【0027】
図4には、燃料電池システム2の起動後、エネルギー蓄積装置16が第1の電気回路14から切断されている状態が示されている。運転中、燃料電池システムは第1サイドPと第2サイドSとを持つ誘導装置29に導電的に接続されている。第1サイドPは主回路11と分岐回路13とを有している。主回路11は回路を繰り返し開閉することで誘導装置29を帯電させるための切替装置35を備えている。主回路11は第2の電極電解液アセンブリ6に対し電気的に接続され、その両端はそれぞれ第2の導管12およびメッシュ8で終端処理されている。第2サイドSは第2サイド回路15と負荷Lとを有している。主回路11、分岐回路13および第2サイド回路15はメッシュ8において最も負の極性を示し、第1の導管10において2番目に負の極性を示すように接続されており、切替装置35が繰り返し開閉される際に第1の導管10はメッシュ8に対し正の極性となり、第2の導管12において最も正の極性が示される。
【0028】
図4には、主回路11が分岐回路13に電流を流し電気化学反応の処理エネルギーを提供することにより、第2の電極電解液アセンブリ6から出力される電気エネルギーを消費する状態が示されている。エネルギー蓄積装置16から出力される電気エネルギーのうち残りの部分は誘導装置29を帯電させるために消費された後、電気的負荷回路18に接続された何らかに利用される電気的な負荷Lに消費される。第2の電極電解液アセンブリ6から出力される電気エネルギーの一部は分岐回路に流れ、残りの部分は誘導装置を帯電させるものとして説明したが、本発明はその点に関し限定されず、例えば、出力されるエネルギーの実質的に全てを誘導装置の帯電に消費し、その帯電により第2サイドにおいて処理エネルギーのための電流および何らかに利用される負荷により消費される電流を生じさせるようにしてもよい。
【0029】
図5〜図7には、メッシュ8が第1の活性面32に散在する複数の開口部30を有する導電性物質でできている様子が示されている。望ましい実施例において、開口部30は互いに間隔をおいて離れた複数の壁部31により区切られ、メッシュが第1の電極電解液アセンブリ4と第2の電極電解液アセンブリ6の間に配置された時に、第2の電極22および第3の電極23の一部が変形し開口部30に入り込んで互いにかみ合う。燃料電池システム2の運転の間、水素イオンなどの水素系物質は、互いにかみ合った第2の電極22および第3の電極23の部分を通って第1の電極電解液アセンブリ4から第2の電極電解液アセンブリ6へと移動する。望ましくは、メッシュ8は少なくとも第2の電極22および第3の電極23よりも高い導電性を有し、第1の活性面32の全体およびそれにかみ合っている第2の電極22および第3の電極23の部分に電流を行き渡らせる。メッシュ8は、少なくとも第1の電気回路14および電気的負荷回路18の電気端子となる。
【0030】
メッシュ8の一方の側面には、実質的にその周辺を囲むようにシール面34がある。シール面34には接合パターン36(例えば、複数の溝)が形成されており、電極電解液アセンブリの柔らかいポリマー材料としっかりとかみ合ってそれを密封する。説明のために例示の接合パターン36は、互いに平行の複数の尾根部分を有し、それらが複数の溝を形成している。メッシュ8の他方の側面も同様のシール面と接合パターンを有している。メッシュ8が第1の電極電解液アセンブリ4および第2の電極電解液アセンブリ6の間に配置された時に、シール面34の尾根部分がそれらの電極電解液アセンブリの材料に押しつけられ、変形して、それらの各々の意図された空洞部分に液体を確実に密封することを可能にする。
【0031】
また、図5に示されるように、メッシュ8は貫通孔38および貫通孔39を有している。メッシュ8が他の構成部品に組み付けられると、貫通孔38および貫通孔39は液体が燃料電池システム2を貫き流れるためのマニホールドを形成する。シール面34は実質的に貫通孔38および貫通孔39の周辺も囲むように伸びている。
【0032】
図8において、燃料電池システムは燃料電池システム102として示されている。燃料電池システム102は第1の電極電解液アセンブリ104と第2の電極電解液アセンブリ106を備えている。第1の電極電解液アセンブリ104は電解質膜105を備え、電解質膜105は望ましくはイオン交換ポリマーでできており、当該電解質膜は第1の電極121と第2の電極122とを有し、それらの電極は望ましくは電解質膜の表面に加熱圧着された触媒電極である。第2の電極122はその中に埋め込まれた形で導電性のメッシュ108を有している。同様に、第2の電極電解液アセンブリ106もまた電解質膜105を備え、電解質膜105は望ましくはイオン交換ポリマーでできており、当該電解質膜は第3の電極123と第4の電極124とを有し、それらの電極は望ましくは電解質膜の表面に加熱圧着された触媒電極である。第3の電極123はその中に埋め込まれた形で導電性のメッシュ108を有している。第1の導管110は第1の電極121に液体を供給可能なように接続され、第2の導管112は第4の電極124に液体を供給可能なように接続されている。第1の電極電解液アセンブリ104と第1の導管110、第2の電極電解液アセンブリ106と第2の導管112は互いに導電的に接続されている。燃料電池システム102は、エネルギー蓄積装置116を含む第1の電気回路114を備えており、エネルギー蓄積装置116は第1の電極電解液アセンブリ104に対し第1の電位を与える。また、第2の電極電解液アセンブリ106にはそれをまたぐように電気的負荷回路118が接続されており、電気的負荷回路118は第2の電極電解液アセンブリ106から第2の電位の形で生成されるエネルギーを消費する。
【0033】
メッシュ108は上述したメッシュ8と同様のものである。特に、望ましくは、メッシュ108は少なくとも第2の電極122および第3の電極123よりも高い導電性を有し、第2の電極122および第3の電極123の全体にわたり電流を供給する。また、メッシュ108は少なくとも第1の電気回路114および電気的負荷回路118の電気端子となる。組み立てられた時に、第2の電極122および第3の電極123は互いに隣接する位置で密着する。
【0034】
図9において、燃料電池システムは燃料電池システム202として示されている。燃料電池システム202は第1の電極電解液アセンブリ204と第2の電極電解液アセンブリ206を備えている。第1の電極電解液アセンブリ204は電解質膜205を備え、電解質膜205は望ましくはイオン交換ポリマーでできており、当該電解質膜は第1の電極221を有し、その電極は望ましくは電解質膜の表面に加熱圧着された触媒電極である。この燃料電池システムにおいては、第2の電極および第3の電極が1つの共通電極222に統合されており、共通電極222はその中に埋め込まれた形で導電性のメッシュ208を有している。第2の電極電解液アセンブリ206もまた電解質膜205を備え、電解質膜205は望ましくはイオン交換ポリマーでできており、当該電解質膜は第4の電極224を有し、その電極は望ましくは電解質膜の表面に加熱圧着された触媒電極である。共通電極222は第1および第2の電極電解液アセンブリの電解質膜205の面の間に配置されている。第1の導管210は第1の電極221に液体を供給可能なように接続され、第2の導管212は第4の電極224に液体を供給可能なように接続されている。第1の電極電解液アセンブリ204と第1の導管210、第2の電極電解液アセンブリ206と第2の導管212は互いに導電的に接続されている。燃料電池システム202は、エネルギー蓄積装置216を含む第1の電気回路214を備えており、エネルギー蓄積装置216は第1の電極電解液アセンブリ204に対し第1の電位を与える。また、第2の電極電解液アセンブリ206にはそれをまたぐように電気的負荷回路218が接続されており、電気的負荷回路218は第2の電極電解液アセンブリ206から第2の電位の形で生成されるエネルギーを消費する。
【0035】
メッシュ208は上述したメッシュ8およびメッシュ108と同様のものである。特に、望ましくは、メッシュ208は少なくとも共通電極222よりも高い導電性を有し、共通電極222の全体にわたり電流を供給する。また、メッシュ208は少なくとも第1の電気回路214および電気的負荷回路218の電気端子となる。
【0036】
図10に示されるように、本発明の一実施例において、第1の導管10は複数の通路40で構成された第2の活性面51を備え、それらの通路40を通じて、隣接して配置されている第1の触媒電極との間の液体の流れが確保される。望ましくは、第1の導管10の少なくとも一部は触媒電極よりも高い導電性を有し、第2の活性面51およびそれとかみ合っている第1の触媒電極の部分の全体に電流を供給する。第1の導管10は第1の電気回路14の電気端子となる。また、第2の導管12は電気的負荷回路18の電気端子となる。第1の導管10および第2の導管12は回路の電気端子となるものとして説明したが、本発明はこの点に関し限定されず、それらの導管と導電的に接続された独立した電気端子が本発明において用いられてもよい。
【0037】
第1の導管10の電極側には、実質的にその周辺を囲むようにシール面44がある。シール面44には接合パターン(例えば、複数の溝)が形成されており、メッシュ8に関し上述したものと同様に、電極電解液アセンブリの柔らかいポリマー材料としっかりとかみ合ってそれを密封する。第1の導管10の電極側には、さらに、貫通孔48および貫通孔49が設けられている。第1の導管10が他の構成部品に組み付けられると、貫通孔48および貫通孔49は液体が燃料電池システム2を貫き流れるためのマニホールドを形成する。シール面44は実質的に貫通孔48および貫通孔49の周辺も囲むように伸びている。
【0038】
図10および図11に示されるように、第1の導管10は液体吸入路50および液体供給機構52を有している。また、第1の導管10は液体排出路54および液体受取機構56を有している。液体吸入路50は貫通孔48との間で液体の流れにより接続され、処理液を液体供給機構52に供給する。液体供給機構52は、処理液を概ね矢印57の方向に向けて第2の活性面51に供給し、その結果、組み立てられた状態で電極電解液アセンブリの表面に接する導管の第2の活性面51に液体が配給される。第2の活性面51から溢れ出た液体は液体受取機構56により受け取られ、液体受取機構56はその処理液を概ね矢印59の方向に向けて液体排出路54およびセルの排出マニホールドの一部を構成する貫通孔48に導く。第2の導管12の構成および製造材料は第1の導管10のものと同様である。
【0039】
図12に示されるように、組み立てられた燃料電池システム2は、第1の電極電解液アセンブリ4、第2の電極電解液アセンブリ6、そしてそれらに挟まれる位置に配置されそれらと互いに密封するように組み合わされるメッシュ8を備えている。第1の導管10は第1の電極電解液アセンブリ4の一方の側面に液体を供給可能なように接続されており、第2の導管12は第2の電極電解液アセンブリ6の一方の側面に液体を供給可能なように接続されている。燃料電池システム2が組み立てられると、各々の部品が有する貫通孔49、貫通孔20、貫通孔38、貫通孔25および貫通孔48が吸入液体マニホールド60を形成し、各々の部品が有する貫通孔48、貫通孔25、貫通孔39、貫通孔20および貫通孔49が吸入液体マニホールド61を形成し、各々の部品が有する貫通孔49、貫通孔20、貫通孔38、貫通孔25および貫通孔48が排出液体マニホールド62を形成し、各々の部品が有する貫通孔48、貫通孔25、貫通孔39、貫通孔20および貫通孔49が排出液体マニホールド63を形成する。
【0040】
図13に示されるように、複数の燃料電池システム2を積層体66に組み立てると都合のよい場合がしばしばある。積層体66においては各々の燃料電池システム2が伝導体27により電気的に直列に接続され、各導管を通じた燃料および酸化剤の流れは並流するように構成・管理され、互いに隣接する燃料電池システムの間には絶縁体の分離層68が配置され燃料電池システムの端末処理がなされている。燃料電池システム2の各々はエネルギー蓄積装置16を含む第1の電気回路14を備え、第1の電極電解液アセンブリ4に対し第1の電位を与える。さらに、積層体66の一方の端に位置する燃料電池システム2のメッシュ8と、積層体66の他方の端に位置する燃料電池システム2の第2の導管12との間には電気的負荷回路19が接続され、積層体66から第2の電位の形で出力されるエネルギーを消費する。ある燃料電池システム2の第2の導管12と、その燃料電池システム2に隣接する燃料電池システム2のメッシュ8とは伝導体27により導電的に接続されている。具体的には、複数の燃料電池システム2は電気的に直列に接続されている。積層体66は、図1に例示の単一セルの燃料電池システム2に関し上述したものと同様に動作する。複数の燃料電池システム2の各々は伝導体27により電気的に直列に接続され、各導管を通じた燃料および酸化剤の流れは並流するように構成・管理されるものとして説明したが、本発明はその点につき限定されず、他のいかなる構成の燃料電池システムの積層体が本発明において採用されてもよい。
【0041】
図14に示されるように、単一セルの燃料電池システム302は燃料処理と燃料電池装置の役割とを交互に果たす電極電解液アセンブリ304を備えている。電極電解液アセンブリ304は第1の導管310と第2の導管312との間に配置されている。電極電解液アセンブリ304はその一方の側面に設けられた第1の触媒電極321と、その反対の側面に設けられた第2の触媒電極322とを有している。電極電解液アセンブリ304は電解質膜305を有し、電解質膜305は望ましくは、第1の電極電解液アセンブリ4に関し上述したものと同様に、イオン交換ポリマーでできている。
【0042】
第1の導管310は第1の触媒電極321に液体を供給可能なように接続され、大気温度にて第1の触媒電極321に燃料を供給する。第2の導管312は第2の触媒電極322に液体を供給可能なように接続されており、第2の触媒電極322に酸化剤を供給する。燃料電池システム302は電極電解液アセンブリ304に第1の電位を与えるためのエネルギー蓄積装置316を含む第1の電気回路314を備えている。さらに、電極電解液アセンブリ304には電極電解液アセンブリ304から第2の電位の形で出力されるエネルギーを消費する電気的負荷回路318が接続されている。燃料電池システム302が複数、電気的に直列回路を形成するように接続されてもよいし、運転に用いられる液体の供給設備内に積層されてもよい。第1の電気回路314はエネルギー蓄積装置316を含むものとして説明したが、本発明はその点につき限定されず、第1の電気回路314がバッテリー、キャパシタ、それらの複数を組み合わせたもの等を含んでもよい。
【0043】
電極電解液アセンブリ304と第1の導管310および第2の導管312はマニホールドを形成する貫通孔を有している。第1の導管310および第2の導管312はシール面を有し、電極電解液アセンブリと互いに密封するように組み合わされ、液体吸入路、液体供給機構、液体排出路、および液体受取機構を形成する。さらに、燃料電池システム302は燃料電池システム2と類似の構成により、複雑な組成の有機燃料の水溶液を大気温度で処理する。
【0044】
図14に示されるように、エネルギー蓄積装置316の正極は第1の導管310および第1の触媒電極321と間欠的に導電的に接続され、エネルギー蓄積装置316の負極は第2の導管312および第2の触媒電極322と間欠的に導電的に接続される。第1の導管310は主に有機燃料を第1の触媒電極321に供給するために用いられ、第2の導管312は主に酸化剤を第2の触媒電極322に供給するために用いられる。第1の電気回路314に含まれるエネルギー蓄積装置316の双極性により、第1の触媒電極321にて発生する一酸化炭素(CO)による汚染が除去されると同時に水素系物質を生成する電気化学反応のための処理エネルギーが供給される。生成された水素は電極電解液アセンブリ304と通じて移動する。電気的負荷回路318は電極電解液アセンブリ304をまたぐように間欠的に接続され、電極電解液アセンブリ304から第2の電位の形で出力されるエネルギーを消費する。
【0045】
図15および図16に示されるように、第1の電気回路314と電気的負荷回路318とは互いに連動し、運転中、電気的負荷回路318にエネルギーが供給されない期間のうちの少なくとも一部の期間に第1の電気回路314にエネルギーが供給され、それに続く第1の電気回路314にエネルギーが供給されない期間のうちの少なくとも一部の期間に電気的負荷回路318にエネルギーが供給される。運転中、電気的負荷回路318を開いた後、第1の所定の時間だけ閉じる処理が繰り返され、一方、第1の電気回路314は燃料の処理の後、第2の所定の時間だけ充電を行う、という動作を周期的に繰り返す。
【0046】
図15には、燃料処理段階における燃料電池システム302が示されており、スイッチ370およびスイッチ371が燃料処理の位置にあり、エネルギー蓄積装置316の正極が第1の触媒電極321と導電的に接続され、エネルギー蓄積装置316の負極が第2の触媒電極322と導電的に接続され、その結果、第1の電気回路314における電流が矢印373の方向に流れる。燃料処理段階の間、スイッチ372は電気的負荷回路318を開く位置となり、その回路に電流は流れない。燃料処理段階の間、エネルギー蓄積装置は第1の触媒電極321において発生した一酸化炭素(CO)による汚染の除去および水素を生成する電気化学反応のための処理エネルギーを供給する。
【0047】
図16には、発電段階における燃料電池システム302が示されており、スイッチ370およびスイッチ371が充電位置に変更されており、エネルギー蓄積装置316の正極が第2の触媒電極322と導電的に接続され、エネルギー蓄積装置316の負極が第1の触媒電極321と導電的に接続され、その結果、第1の電気回路314における電流が矢印374の方向に流れ、それによりエネルギー蓄積装置316が再び充電された状態となる。また、スイッチ372は電気的負荷回路318を閉じる位置となり、その回路には第2の電位の形でエネルギーの出力が供給され、電流が矢印375の方向に流れる。
【0048】
図15乃至図17に示されるように、発電段階において、スイッチ372が閉じられ、スイッチ370およびスイッチ371が充電位置にあると、電流量は正の値を示す。エネルギー蓄積装置316の充電のために第1の電気回路314を流れる電流量の相対的な値が図17の矢印384で示されており、電気的負荷回路318を流れ電気的な負荷により消費される余分な電流量の相対的な値が図17の矢印385で示されている。発電段階において、エネルギー蓄積装置316の充電に要する電流量の値は、電気的な負荷により消費され得る電流量よりも少ないことが望ましい。
【0049】
また、図15乃至図17に示されるように、燃料処理段階において、スイッチ370およびスイッチ371が燃料処理位置にあり、スイッチ372が開かれると、エネルギー蓄積装置316からの電流量は負の値を示す。水素生成反応のための処理エネルギーの供給に要する電流量の値が図17の矢印383で示されている。燃料処理段階の間、基本的に電気的負荷回路318には電流は流れない。処理エネルギーは電気的な負荷により消費され得るエネルギー全体よりも少ないことが望ましい。
【0050】
さらに、スイッチ370およびスイッチ371が燃料処理位置にありスイッチ372が開いている第1の期間387は、スイッチ372が閉じられスイッチ370およびスイッチ371が充電位置にある第2の期間386よりも短いことが望ましい。望ましくは、第1の期間387は約0.01秒から約10秒の間であり、第2の期間386は約0.5分から約10分の間である。そのように周期的に燃料処理と発電の段階が切り替わることにより、1つの電極電解液アセンブリが燃料処理と発電の両方に用いられ、その結果、燃料電池システム302の構成が簡素化される。
【0051】
第1の期間387は約0.01秒から約10秒の間であり、第2の期間386は約0.5分から約10分の間であることが望ましいものとして説明したが、本発明はその点に関し限定されず、例えば、発電能力の低下を示すパラメータに応じて第2の期間を選択し、発電段階において第1の触媒電極321において発生した汚染物質の量に応じた必要な燃料処理量に基づき第1の期間を選択するといった性能に応じた制御を採用するなど、他の期間が用いられてもよい。そのような方法で第1の期間および第2の期間を選択すると、全体としての出力を増加させ、燃料処理に要するエネルギーを少なくすることができ、燃料電池システムの効率を高めることができる。上述した性能に応じた制御における発電能力の低下を示すパラメータとしては、例えば、燃料の温度、電極の温度、燃料の流率、酸化剤の流率、電気的な負荷量、燃料電池システムもしくは個々のセルにおける電圧などがある。
【0052】
図18の曲線88に示されるように、運転開始直後の燃料電池システムの電力密度は電流密度に応じて変化する。同様に、曲線89に示されるように、運転開始直後の燃料電池システムの電圧もまた、電流密度に応じて変化する。図に例示の燃料電池システムにおいては、電力密度は点93において最大値約0.34W/cmとなる。3分間運転すると、第1の触媒電極321に生じた汚染物質のために燃料電池システムの性能が低下する。そのような3分間の運転の後、燃料電池の電力密度は曲線90に示されるように低下し、燃料電池システムの電圧は曲線91に示されるように低下する。そのような燃料電池の性能の低下により、電力密度の最大値は点94で示されるように約0.21W/cmに低下する。燃料電池システムの出力のうち、線92で示される約0.175W/cmが外部の負荷により消費される。性能に応じた制御法による場合、電力密度の最大値である点94が外部負荷の線92を下回るより前に、第1の触媒電極321から汚染物質を除去するために発電を一時的に中断する。性能に応じた制御法によれば、第2の時間が負荷量に応じて調整可能となるので、変化する負荷に対し電力を供給するための燃料電池において効果的である。
【0053】
図19に示されるように、複数の燃料電池システム302を双極性の積層体366に組み立ててもよい。複数の燃料電池システム302の各々は第1の導管310と第2の導管312との間に配置された電極電解液アセンブリ304を備えている。例えば、互いに隣り合う第1の導管310と第2の導管312との間の電気的な接続を維持するために、それらの間に双極性の分離板369が配置された状態で、複数の燃料電池システム302が双極性の積層体366に組み立てられる。一方の端に位置する燃料電池システム302には、絶縁体のカバー368と、それと隣り合う第1の導管310との間に挟まれる形で第1の端末伝導体377が配置されており、他方の端に位置する燃料電池システム302には、もう一つの絶縁体のカバー368と、それと隣り合う第2の導管312との間に挟まれる形で第2の端末伝導体379が配置されている。第1の端末伝導体377および第2の端末伝導体379は、それぞれ、隣接する第1の導管310および第2の導管312とかみ合い、導電的に接続されている。絶縁体のカバーは双極性の積層体366の端部を絶縁体し防護している。
【0054】
また、燃料電池システム302は第1の端末伝導体377および第2の端末伝導体379を挟み電位を与えるエネルギー蓄積装置316を含む第1の電気回路314を備える。第1の端末伝導体377および第2の端末伝導体379には、電気的負荷回路318も接続されており、出力されるエネルギーを消費する。図には燃料処理段階の状態のスイッチ370およびスイッチ371を含む第1の電気回路314が示され、スイッチ372は開いた位置にある。双極性の積層体366は連動を制御する回路を含み、図11乃至図14に示した単一セルの燃料電池システム302に関し上述したものと同様に動作するように構成されている。
【0055】
本発明は一態様として、燃料電池システム2の運転方法を提供する。燃料電池システム2の運転方法においては、まず第1のステップとして、第1の電極21を一方の側面に、また第2の電極22をそれと反対の側面に有する第1の電極電解液アセンブリ4と、第1の触媒電極に液体を供給可能なように接続された第1の導管10と、第3の電極23を一方の側面に、また第4の電極24をそれと反対の側面に有する第2の電極電解液アセンブリ6と、複数の開口部を有し第2の触媒電極と第3の触媒電極との間に配置され密封され、それらの開口部を通じて第2の触媒電極と第3の触媒電極とを接続する導電性のメッシュ8と、第4の触媒電極に液体を供給可能なように接続された第2の導管12と、エネルギー蓄積装置16を含む第1の電気回路14と、電気的負荷回路18が準備される。
【0056】
燃料電池システム2の運転方法は、さらに、複雑な組成の有機構造を有した燃料の水溶液を第1の導管10を通じて供給ステップと、第2の導管12を通じて酸化剤を供給するステップとを備え、望ましくは、少なくとも燃料電池システムの運転の時間の一部において燃料が大気温度である。燃料電池システム2の運転方法は、さらに、エネルギー蓄積装置16の正極、第1の導管10、そして第1の電極21の間に導電的な接続を確立するステップを備える。導電的な接続は、エネルギー蓄積装置16の負極、メッシュ8、そして第2の電極22の間にも確立される。このようにエネルギー蓄積装置を接続することにより、大気温度において水素を生成すると同時に第1の触媒電極から汚染物質を除去する電気化学反応を活性化させるための処理エネルギーが供給される。
【0057】
燃料電池システム2の運転方法は、さらに、第1の触媒電極に水素を供給し、その水素を第1の電極電解液アセンブリを通じて第3の触媒電極に移動させるステップを備える。第2の電極電解液アセンブリに対し、それをまたぐように電気消費を行う電気的負荷回路を接続することにより、エネルギーが第2の電極電解液アセンブリから出力され、電気化学反応により第3の電極23において水素が消費されるとともに、第4の電極24において酸化剤が消費される。その結果、電気的負荷回路18に電流が流れる。
【0058】
本発明は一態様として、燃料電池システム302の運転方法も提供する。燃料電池システム302の運転方法においては、まず第1のステップとして、第1の触媒電極を一方の側面に、また第2の触媒電極をそれと反対の側面に有する電極電解液アセンブリと、第1の触媒電極に液体を供給可能なように接続された第1の導管と、第2の触媒電極に液体を供給可能なように接続された第2の導管と、エネルギー蓄積装置316を含む第1の電気回路314と、電気的負荷回路318が準備される。
【0059】
燃料電池システム302の運転方法は、複雑な組成の有機構造を有した燃料の水溶液を第1の導管310を通じて供給するステップと、第2の導管312を通じて酸化剤を供給するステップとを備え、望ましくは、燃料が大気温度である。燃料電池システム302の運転方法は、さらに、エネルギー蓄積装置316の正極と第1の触媒電極との間に導電的な接続を確立するステップと、エネルギー蓄積装置316の負極と第2の触媒電極との間に導電的な接続を確立するステップとを備える。このようにエネルギー蓄積装置を接続することにより、大気温度において第1の触媒電極から汚染物質を除去すると同時に水素を生成する電気化学反応を活性化させるための処理エネルギーが供給される。
【0060】
燃料電池システム302の運転方法は、さらに、第1の触媒電極321に水素を供給するステップを備える。所定時間、望ましくは約0.01秒から約10秒の間の時間の経過後、それまでかけられていた第1の電位が燃料電池システム302から取り除かれる。続いて、電極電解液アセンブリ304に対しそれをまたぐように、電気的な負荷を有する電気的負荷回路318を導電的に接続することにより、エネルギーが電極電解液アセンブリから出力され、電気化学反応により電極電解液アセンブリから生成される水素のほとんどと酸化剤のほとんどが電気化学反応により消費される。その結果、電気的負荷回路318に電流が流れる。
【0061】
燃料電池システム302の運転方法は、運転中、電気的負荷回路が開いている時に第1の電気回路が閉じられ、第1の電気回路が開いている時に電気的負荷回路が閉じられ、所定の時間の経過ごとに周期的に第1の電気回路と電気的負荷回路とが開閉されるように、第1の電気回路314と電気的負荷回路318とを互いに連動させるステップを備える。望ましくは、燃料処理段階において第1の電気回路が閉じられ電気的負荷回路が開かれる時間は約0.01秒から約10秒の間のいずれかであり、それに続く発電段階において電気的負荷回路が閉じられ第1の電気回路が開かれる時間は約0.5分から約10分の間のいずれかである。電気的負荷回路318は第1の所定の時間の経過に伴い周期的に開閉され、一方、第1の電気回路314は第2の所定の時間の経過に伴い周期的に燃料処理と充電とを切り替えながら行う。
【0062】
本発明は、さらに一態様として、燃料電池システムに適する燃料の選択方法を提供し、その選択方法は、水に溶解する燃料を選択するステップと、選択した燃料のギブズの自由エネルギーがその燃料の反応熱より大きくなるようにその燃料の水溶液を選択するステップとを備える。
【0063】
本明細書においては、本発明の特定の実施例を参照しつつ本発明の開示および説明を行ったが、他に様々な本発明の実施例や変形例を考えることができ、別途提出する特許請求の範囲は本発明の真の技術的思想の範囲内において、それらの実施例や変形例を含むことを意図している。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】図1は、本発明にかかる燃料電池システムの概略図である。
【図2】図2は、電極電解液アセンブリを上から見た図である。
【図3】図3は、本発明において燃料電池から出力されるエネルギーにより処理エネルギーが供給される様子を示した概略図である。
【図4】図4は、図3に示される燃料電池に対し処理エネルギーを供給するための誘導装置を設けた場合の概略図である。
【図5】図5は、メッシュを上から見た図である。
【図6】図6は、図5に示されるメッシュの断面図である。
【図7】図7は、図5に示されるメッシュの第1および第2の電極電解液アセンブリの間に位置する部分の断面図である。
【図8】図8は、各々の電極に埋め込まれたメッシュを有する燃料電池システムの断面図である。
【図9】図9は、共通の電極に埋め込まれたメッシュを有する燃料電池システムの断面図である。
【図10】図10は、導管を上から見た図である。
【図11】図11は、導管の断面を示す概略図である。
【図12】図12は、燃料電池システムの分解組立概略図である。
【図13】図13は、図1に示される燃料電池システムを複数、積層した状態を示す概略図である。
【図14】図14は、電極電解液アセンブリを1つのみ有する燃料電池システムの概略図である。
【図15】図15は、図14に示される燃料電池システムに電源の切られた電気的負荷回路を接続した状態を示す概略図である。
【図16】図16は、図14に示される燃料電池システムに電源の入れられた電気的負荷回路を接続した状態を示す概略図である。
【図17】図17は、燃料処理段階および発電段階における運転パラメータのグラフである。
【図18】図18は、燃料電池システムにおける電流密度に応じて変化する電圧および電力密度のグラフである。
【図19】図19は、図14に示される燃料電池を複数、積層した状態を示す概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極電解液アセンブリであって、当該電極電解液アセンブリの有する複数の側面のうち一の側面に第1の触媒電極を有し、当該複数の側面のうち当該一の側面と対向する位置の側面に第2の触媒電極を有する第1の電極電解液アセンブリと、
大気温度において前記第1の触媒電極に燃料を供給可能なように前記第1の触媒電極に接続された第1の導管と、
電極電解液アセンブリであって、当該電極電解液アセンブリの有する複数の側面のうち一の側面に第3の触媒電極を有し、当該複数の側面のうち当該一の側面と対向する位置の側面に第4の触媒電極を有する第2の電極電解液アセンブリと、
伝導性のメッシュであって、当該メッシュを貫通する複数の開口部を有し、当該複数の開口部を介して前記第2の触媒電極と前記第3の触媒電極とが通じるように、前記第2の触媒電極と前記第3の触媒電極との間に密封するように取り付けられたメッシュと、
前記第4の触媒電極に酸化剤を供給可能なように前記第4の触媒電極に接続された第2の導管と、
前記第1の触媒電極と前記第2の触媒電極に接続され前記第1の電極電解液アセンブリに対し電位を与える手段と、
前記第3の触媒電極と前記第4の触媒電極に接続され前記第2の電極電解液アセンブリから出力されるエネルギーを消費する電気的負荷回路と
を備える燃料電池システム。
【請求項2】
前記電位を与える手段は、前記第1の触媒電極と導電的に接続された正極と、前記第2の触媒電極と導電的に接続された負極とを有し、水素生成反応に用いられる処理エネルギーの供給と、前記第1の触媒電極からの汚染物質の除去と、前記第1の電極電解液アセンブリから前記第3の触媒電極への水素の移動とをもたらす
請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記電気的負荷回路を流れる電流の少なくとも一部を前記電気的負荷回路から受け取り、当該受け取った電流を前記水素生成反応に用いられる処理エネルギーの供給のために利用可能とする第3の電気回路を備え、
前記処理エネルギーの量は前記出力されるエネルギーの量よりも少ない
請求項2に記載の燃料電池システム。
【請求項4】
誘導装置を備え、
前記誘導装置は前記出力されるエネルギーにより帯電し、少なくとも前記処理エネルギーの供給を行う
請求項3に記載の燃料電池システム。
【請求項5】
前記第1の導管は前記燃料の水溶液を供給可能であり、
前記燃料のギブズの自由エネルギーは前記燃料の反応熱よりも大きい
請求項2に記載の燃料電池システム。
【請求項6】
前記燃料は有機構造を有する
請求項5に記載の燃料電池システム。
【請求項7】
前記第2の触媒電極および前記第3の触媒電極のうちの少なくとも一方に少なくとも1のメッシュが埋め込まれている
請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項8】
前記第2の触媒電極と前記第3の触媒電極は統合して1つの共通触媒電極を形成し、
前記メッシュは、前記共通触媒電極に埋め込まれている
請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項9】
請求項1に記載の燃料電池システムを複数備え、
前記複数の燃料電池システムは、前記複数の燃料電池システムの各々が備える前記第1の導管、前記第1の電極電解液アセンブリ、前記メッシュ、前記第2の電極電解液アセンブリおよび前記第2の導管が当該順序で順次配置されるように積層され、
前記複数の燃料電池システムのうち互いに隣り合う2つの燃料電池システムの間と、積層された前記複数の燃料電池システムの両端とに各々配置された絶縁性の分離層を備え、
前記電位を与える手段は、前記複数の燃料電池システムの各々に関し、前記第1の触媒電極と前記第2の触媒電極に接続され前記第1の電極電解液アセンブリに電位を与え、
前記電気的負荷回路は、積層された前記複数の燃料電池システムの全体を挟むように接続され前記複数の燃料電池システムの全体から出力されるエネルギーを消費し、
前記複数の燃料電池システムは互いに導電的に接続されている
燃料電池システム。
【請求項10】
電極電解液アセンブリであって、当該電極電解液アセンブリの有する複数の側面のうち一の側面に第1の触媒電極を有し、当該複数の側面のうち当該一の側面と対向する位置の側面に第2の触媒電極を有する電極電解液アセンブリと、
大気温度において前記第1の触媒電極に燃料を供給可能なように前記第1の触媒電極に接続された第1の導管と、
前記第2の触媒電極に酸化剤を供給可能なように前記第2の触媒電極に接続された第2の導管と、
前記第1の触媒電極と前記第2の触媒電極に接続され前記電極電解液アセンブリに対し電位を与える手段と、
前記第1の触媒電極と前記第2の触媒電極に接続され前記電極電解液アセンブリから出力されるエネルギーを消費する電気的負荷回路と
を備える燃料電池システム。
【請求項11】
前記電位を与える手段は、前記第1の触媒電極と導電的に接続された正極と、前記第2の触媒電極と導電的に接続された負極とを有し、水素生成反応に用いられる処理エネルギーの供給と、前記第1の触媒電極からの汚染物質の除去とをもたらす
請求項10に記載の燃料電池システム。
【請求項12】
前記電位を与える手段を含む第1の電気回路を備え、
運転中、前記電気的負荷回路が開かれている時に前記第1の電気回路が閉じられ、前記第1の電気回路が開いている時に前記電気的負荷回路が閉じられるように、前記第1の電気回路と前記電気的負荷回路が互いに連動するように開閉され、前記第1の電気回路と前記電気的負荷回路の各々の開かれた状態および閉じられた状態が所定の時間だけ維持される
請求項10に記載の燃料電池システム。
【請求項13】
前記電位を与える手段は、電気エネルギー貯蓄装置、バッテリーおよびキャパシタのうちの少なくともいずれか1つを有する
請求項10に記載の燃料電池システム。
【請求項14】
前記処理エネルギーの量は前記出力されるエネルギーの量よりも少なく、運転中、前記出力されるエネルギーの一部は前記電位を与える手段に供給される
請求項11に記載の燃料電池システム。
【請求項15】
前記第1の電気回路は、前記電気的負荷回路が閉じられた状態で維持される時間よりも短い時間、閉じられた状態で維持される
請求項12に記載の燃料電池システム。
【請求項16】
前記第1の導管は前記燃料の水溶液を供給可能であり、
前記燃料のギブズの自由エネルギーは前記燃料の反応熱よりも大きい
請求項11に記載の燃料電池システム。
【請求項17】
前記燃料は有機構造を有する
請求項16に記載の燃料電池システム。
【請求項18】
請求項10に記載の燃料電池システムを複数備え、
前記複数の燃料電池システムは、前記複数の燃料電池システムの各々が備える前記第1の導管、前記電極電解液アセンブリおよび前記第2の導管が当該順序で順次配置されるように積層され、
前記複数の燃料電池システムのうち互いに隣り合う2つの燃料電池システムの間に配置された双極性の分離層と、積層された前記複数の燃料電池システムの両端に配置された絶縁性の分離層とを備え、
前記電位を与える手段は前記複数の燃料電池システムの全体に対し電位を与え、
前記電気的負荷回路は前記複数の燃料電池システムの全体を挟むように接続され前記複数の燃料電池システムの全体から出力されるエネルギーを消費し、
前記複数の燃料電池システムは互いに導電的に接続されている
燃料電池システム。
【請求項19】
電極電解液アセンブリであって当該電極電解液アセンブリの有する複数の側面のうち一の側面に第1の触媒電極を有し当該複数の側面のうち当該一の側面と対向する位置の側面に第2の触媒電極を有する第1の電極電解液アセンブリと、前記第1の触媒電極に液体を供給可能なように接続された第1の導管と、電極電解液アセンブリであって当該電極電解液アセンブリの有する複数の側面のうち一の側面に第3の触媒電極を有し当該複数の側面のうち当該一の側面と対向する位置の側面に第4の触媒電極を有する第2の電極電解液アセンブリと、伝導性のメッシュであって当該メッシュを貫通する複数の開口部を有し当該複数の開口部を介して前記第2の触媒電極と前記第3の触媒電極とが通じるように前記第2の触媒電極と前記第3の触媒電極との間に密封するように取り付けられたメッシュと、前記第4の触媒電極に液体を供給可能なように接続された第2の導管と、電位を与える手段と、電気的負荷回路とを準備するステップと、
大気温度において、有機構造を有する燃料の水溶液を前記第1の導管を通じて供給するステップと、
酸化剤を前記第2の導管を通じて供給するステップと、
前記電位を与える手段の正極と前記第1の触媒電極との間に導電的な接続を確立するステップと、
前記電位を与える手段の負極と前記第2の触媒電極との間に導電的な接続を確立するステップと、
大気温度において水素の生成と前記第1の触媒電極からの汚染物質の除去とをもたらす電気化学反応に用いられる処理エネルギーを供給するステップと、
前記第1の触媒電極に前記水素を供給するステップと、
前記水素を前記第1の電極電解液アセンブリを通じて前記第3の触媒電極へ移動させるステップと、
前記第2の電極電解液アセンブリをまたぐように、前記第2の電極電解液アセンブリに対し、電気的な負荷を含む前記電気的負荷回路を接続するステップと、
前記第2の電極電解液アセンブリにおいてエネルギーを生成し出力するステップと、
前記第3の触媒電極において、前記水素と前記酸化剤とを電気化学反応において消費するステップと、
前記電気的負荷回路に電流を流すステップと
を備える燃料電池システムの運転の方法。
【請求項20】
電極電解液アセンブリであって当該電極電解液アセンブリの有する複数の側面のうち一の側面に第1の触媒電極を有し当該複数の側面のうち当該一の側面と対向する位置の側面に第2の触媒電極を有する電極電解液アセンブリと、前記第1の触媒電極に液体を供給可能なように接続された第1の導管と、前記第2の触媒電極に液体を供給可能なように接続された第2の導管と、電位を与える手段と、電気的負荷回路とを準備するステップと、
大気温度において、有機構造を有する燃料の水溶液を前記第1の導管を通じて供給するステップと、
酸化剤を前記第2の導管を通じて供給するステップと、
前記電位を与える手段の正極と前記第1の触媒電極との間に導電的な接続を確立するステップと、
前記電位を与える手段の負極と前記第2の触媒電極との間に導電的な接続を確立するステップと、
大気温度において水素の生成と前記第1の触媒電極からの汚染物質の除去とをもたらす電気化学反応に用いられる処理エネルギーを供給するステップと、
前記第1の触媒電極に前記水素を供給するステップと、
前記電位を与える手段を前記電極電解液アセンブリから切断するステップと、
前記電極電解液アセンブリをまたぐように、前記電極電解液アセンブリに対し、前記電気的負荷回路を接続するステップと、
前記電極電解液アセンブリにおいてエネルギーを生成し出力するステップと、
前記電極電解液アセンブリから供給される前記水素と、前記酸化剤とを、電気化学反応において消費するステップと、
前記電気的負荷回路に電流を流すステップと
を備える燃料電池システムの運転の方法。
【請求項21】
前記電位を与える手段を含む第1の電気回路を準備するステップと、
運転中、前記電気的負荷回路が開かれている時に前記第1の電気回路が閉じられ、前記第1の電気回路が開いている時に前記電気的負荷回路が閉じられるように、前記第1の電気回路と前記電気的負荷回路を互いに連動するように開閉することにより、所定の時間の経過に伴い周期的に前記第1の電気回路と前記電気的負荷回路の各々を開閉するステップと
を備える請求項20に記載の方法。
【請求項22】
水に溶解する燃料を選択するステップと、
前記燃料のギブズの自由エネルギーが前記燃料の反応熱より大きくなるように、前記燃料の水溶液を選択するステップと
を備える燃料電池システムに用いられる燃料の選択の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公表番号】特表2009−514175(P2009−514175A)
【公表日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−538078(P2008−538078)
【出願日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際出願番号】PCT/US2006/042308
【国際公開番号】WO2007/051010
【国際公開日】平成19年5月3日(2007.5.3)
【出願人】(508125553)
【氏名又は名称原語表記】Andrei LEONIDA
【住所又は居所原語表記】35 Timberwood Road, West Hartford, Connecticut 06117, United States of America
【Fターム(参考)】