覆工板
【課題】表面に被覆材を設けなくてもすべり摩擦抵抗が高く、長期間にわたって連続使用する場合でも維持・補修作業が不要で、かつ製造コストが安い覆工板を提供する。
【解決手段】底板4の幅方向両端部に主桁2a,2bを接合し、底板4及び主桁2a,2bの長手方向両端部に、その上端部が主桁2a,2bの上端部よりも上方に位置し、側面を構成する端部プレート3a,3bを接合する。更に、主桁2a,2bの上面の幅方向外側端部に、その端縁に沿って側面の一部を構成する型枠プレート8a,8bを接合する。一方、主桁2a,2bの長手方向中間部には、両主桁を連結する1又は複数枚のリブ5を接合し、底板4、主桁2a、主桁2b、型枠プレート8a及び形枠プレート8bによって囲まれる空間内に、主桁2a,2bの上端部が覆われるように、端部プレート3a,3b及び型枠プレート8a,8bの上端部まで中詰めコンクリート7を充填する。
【解決手段】底板4の幅方向両端部に主桁2a,2bを接合し、底板4及び主桁2a,2bの長手方向両端部に、その上端部が主桁2a,2bの上端部よりも上方に位置し、側面を構成する端部プレート3a,3bを接合する。更に、主桁2a,2bの上面の幅方向外側端部に、その端縁に沿って側面の一部を構成する型枠プレート8a,8bを接合する。一方、主桁2a,2bの長手方向中間部には、両主桁を連結する1又は複数枚のリブ5を接合し、底板4、主桁2a、主桁2b、型枠プレート8a及び形枠プレート8bによって囲まれる空間内に、主桁2a,2bの上端部が覆われるように、端部プレート3a,3b及び型枠プレート8a,8bの上端部まで中詰めコンクリート7を充填する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地下掘削工事現場及び架設桟橋等のように路面となる面にすべり止め対策を施す必要がある用途に使用される覆工板に関し、特に、鋼材とコンクリートとを一体化した合成覆工板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、交通路を確保するための仮設路面板として掘削箇所等に敷設される覆工板は、縞H形鋼を主部材としたものが主流となっている。このような鋼製覆工板は、製造が容易で、取扱いもしやすいことから、地下掘削工事現場及び架設桟橋等において広く使用されている。その一方で、鋼製覆工板には、コンクリート及びアスファルトに比べてすべり抵抗が低いという短所があり、特に強いすべり止め対策を要求される場合には、一般に、すべり抵抗性に優れたモルタル等で路面となる面を被覆している(例えば、特許文献1及び2参照。)。
【0003】
また、鋼製以外の覆工板としては、従来、プレキャストコンリート板又は鋼材とコンクリートとを組み合わせた合成覆工板も開発されている(例えば、特許文献3〜5参照。)。図13は特許文献5に記載の合成覆工板を示す斜視図である。図13に示すように、特許文献5に記載の合成覆工板101は、コンクリート103の両側部に鉄製主桁102a,102bが接合されている。また、特許文献5には、コンクリート103と鉄製主桁102a,102bとの接合部の強度を補強するための構造として、コンクリート103にアンカー鉄筋を敷設した構造、コンクリート103の上部又は上下部にリブ状ジベル付鉄板を配置した構造、コンクリート103の縦方向中心部に鉄骨を埋設した構造等が記載されている。
【0004】
一方、強度性能と併せて、一般道と同程度のすべり摩擦抵抗も確保するために、鋼材部分をコンクリートで覆った合成覆工板も提案されている(非特許文献1及び2参照。)。非特許文献2に記載の合成覆工板では、π形鋼を4本並列し、幅方向の両端部に鋼床版のU形リブに類似した形状の補強桁を取り付けたものに、厚さ8cmの軽量コンクリートを打設して、鋼材とコンクリートとを一体化している。
【0005】
【特許文献1】特開昭63−171403号公報
【特許文献2】特開平4−50406号公報
【特許文献3】特開昭51−136332号公報
【特許文献4】特開昭51−107641号公報
【特許文献5】特開昭51−115029号公報
【非特許文献1】西堀忠信,外2名、「鋼・コンクリート合成被覆工板の耐力と力学的特性」、川崎製鉄技報、川崎製鉄株式会社、1975年、第7巻、第4号、p.74−87
【非特許文献2】西堀忠信,外2名、「鋼・コンクリート合成被覆工板の耐力と力学的特性」、川崎製鉄技報、川崎製鉄株式会社、1979年、第11巻、第4号、p.163−168
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前述した従来の技術には以下に示す問題点がある。即ち、特許文献1及び2に記載された従来の鋼製覆工板では、すべり防止用被覆材として、表面に薄いモルタル又は塗装が施されているが、これらの表面被覆材は、単に覆工板表面に敷き詰めただけであるため、長期間繰返し使用することにより、磨耗による剥がれが生じたり、衝撃により割れ又は欠けが発生したりすることがある。このため、特許文献1及び2に記載の覆工板は、長期間にわたって連続使用する場合、被覆材が破損した箇所に特殊機械を用いて補修を施したり、更にひどい場合には覆工板ごと取り替えたりしなければならず、維持・補修作業にかなりの負担がかかるという問題点がある。
【0007】
また、特許文献3〜5に記載の従来の合成覆工板は、路面にすべり抵抗が低い鋼材が露出しており、すべり対策としては鋼材表面に縞目を施しているだけであるため、鋼製覆工板と同等レベルのすべり抵抗性しか期待できず、より大きなすべり抵抗性が要求された場合、前述した鋼製覆工板と同様の対策が別途必要となる。
【0008】
更に、非特許文献1及び2に記載の合成覆工板は、覆工板本体にすべり抵抗機能を付与しているが、強度性能を確保するために、鋼材とコンクリートとを一体化させるための多くの加工が必要であるという問題点がある。例えば、非特許文献1に記載の合成覆工板の場合、主部材であるH形鋼に横鉄筋を通すための穴あけを行っているが、鋼製覆工板の製作と比較すると、これら穴あけ加工及び鉄筋差込み作業は全く余分な作業であり、材料低減効果よりも加工費増分が勝ってしまい不経済な製品となってしまっている。また、非特許文献2に記載の合成覆工板においても、主部材として特殊な形鋼が用いられていたり、底部に補剛桁を取り付けたりしているため、従来の鋼製覆工板に表面被覆を施したものより価格が高いものとなっている。更に、この合成覆工板において、主部材として用いられている特殊形鋼は、素材価格が高いのはもちろんのこと市場性が乏しく、タイムリーな材料手配ができないという問題点もある。
【0009】
本発明は、上述した問題点を鑑みてなされたものであって、表面に被覆材を設けなくてもすべり摩擦抵抗が高く、長期間にわたって連続使用する場合でも維持・補修作業が不要又は極めて容易で、かつ製造コストが安い覆工板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る覆工板は、鋼材とコンクリートとを一体化した合成覆工板であって、鋼製底板と、前記底板の幅方向両端部に夫々接合された1対の鋼製主桁と、前記底板の長手方向両端部及び前記主桁の長手方向両端部に夫々接合され、その上端部が前記主桁の上端部よりも上方に位置し、側面を構成する1対の鋼製端部プレートと、前記主桁の幅方向端縁に沿って固定され、その上端部が前記主桁の上端部よりも上方に位置し、少なくとも側面の一部を構成する1対の鋼製型枠プレートと、前記1対の主桁を相互に連結する1又は複数枚の鋼製リブと、前記底板、前記主桁、前記端部プレート及び前記型枠プレートで形成される空間内に充填された中詰めコンクリートと、を有することを特徴とする。
【0011】
この覆工板は、前記中詰めコンクリート中に、ひび割れ防止用鉄筋が配置されていてもよい。
【0012】
また、前記主桁は、断面形状が、例えば、H形、L形又はC形であってもよい。
【0013】
更に、本発明の覆工板は、平面視で、長方形状、台形状又は三角形状とすることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、H形鋼及び鋼板等の一般的な鋼材を使用すると共に、主桁よりも上方にまで中詰めコンクリートを充填し、更に、路面となる面をすべり抵抗性に優れた中詰めコンクリートで形成しているため、製造コストを増加させることなく、優れたすべり抵抗性が得られ、長期間にわたって連続使用する場合でも維持・補修作業が不要又は極めて容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、添付の図面を参照して詳細に説明する。先ず、本発明の第1の実施形態に係る覆工板について説明する。図1は本実施形態の覆工板を示す斜視図であり、図2は図1に示すA−A線による断面図である。図1及び図2に示すように、本実施形態の覆工板1は、鋼材とコンクリートとを一体化した合成覆工板であり、鋼板等からなる底板4の幅方向両端部に、夫々主桁2a,2bが接合されており、また、底板4及び主桁2a,2bの長手方向両端部には、夫々鋼板等からなり側面を構成する端部プレート3a,3bが接合されている。更に、主桁2a,2bの上面の幅方向外側端部には、その端縁に沿って鋼板等からなり、主桁2a,2bと共に側面を構成する型枠プレート8a,8bが接合されており、型枠プレート8a,8bの長手方向両端部は、夫々端部プレート3a,3bに接合されている。更にまた、主桁2a,2bの長手方向中間部には、鋼板等からなり両主桁を連結するリブ5が接合されており、このリブ5の下端部は底板4に接合されている。そして、底板4、主桁2a、主桁2b、型枠プレート8a及び形枠プレート8bによって囲まれる空間内には、主桁2a,2bの上端部が覆われるように、端部プレート3a,3b及び型枠プレート8a,8bの上端部まで中詰めコンクリート7が充填されている。なお、各部材は、その接触部分を隅肉溶接等の方法で溶接することにより接合されている。
【0016】
本実施形態の覆工板1の主構造部材である主桁2a,2bは、本体の主要強度部材であると共に、張り出し部によりコンクリートの抜け出しを防止し、一体化を確保するずれ止め機能も兼ねていることから、少なくとも本体底面側にフランジ、即ち、内側への張り出し形状を有する鋼材を使用する必要がある。そこで、本実施形態においては、主桁2a,2bとして、H型形状を有する鋼材(H形鋼)を使用している。そして、この主桁2a,2bを構成するH形鋼の下フランジの幅方向内側端部に底板4を隅肉溶接し、上フランジの幅方向外側端部に、型枠プレート8a,8bを隅肉溶接している。更に、この主桁2a,2bの長手方向両端部では、少なくとも主桁2a,2bを構成するH形鋼の下フランジの上側と端部プレート3a,3bとを隅肉溶接している。その際、コンクリートの漏出を確実に防止するためには、H形鋼のウェブ及び上フランジの下側も隅肉溶接することが望ましい。なお、主桁2a,2bと底板4、主桁2a,2bと型枠プレート8a,8b、又は主桁2a,2bと端部プレート3a,3bとを隅肉溶接する際は、覆工板内面側を溶接することが望ましいが、作業が難しい場合は、覆工板外面側を隅肉溶接してもよい。
【0017】
また、本実施形態における底板4は、主桁2a,2bを連結する部材であると共に、中詰めコンクリート7を充填する際の型枠部材としての機能、更には、主桁2a,2b及び端部プレート3a,3bとの接合部が隅肉溶接により止水溶接が施されていることから、本体底面からの漏水を防ぐ止水機能をも有する。
【0018】
一方、覆工板1の側面を構成すると共に型枠部材として機能する端部プレート3a,3b及び型枠プレート8a,8bは、矩形形状の鋼板からなり、主桁2a,2b及び底板4に接合された状態での端部プレート3a,3bの上端部の位置と、主桁2a,2bに接合された状態での型枠プレート8a,8bの上端部の位置とが、同じ高さになるようにその幅が設定されている。このため、端部プレート3a,3bの上端部は、主桁2a,2bの上端部よりも、型枠プレート8a,8bの幅の分だけ上方に位置している。また、型枠プレート8a,8bは、中詰めコンクリート7を主桁2a,2bの上面よりも更に上方にまで充填するための嵩上げ部材であり、その長さは、主桁2a,2bの長さと同等で、主桁2a,2bの上フランジ上面に、点溶接にて固定されている。
【0019】
また、主桁2aと主桁2bとを連結するリブ5は、覆工板1の形状保持することを目的として設けられている部材である。その高さは特に限定するものではなく、施工時及び使用中に、主桁2a,2bが傘折れしたり又はねじれたりせず、かつコンクリート7の品質及びリブ5の防食性を考慮し、その上に耐食性を確保できる程度の厚さのコンクリート7層が形成される高さであればよい。具体的には、主桁2a,2bの高さの1/2付近に、リブ5の上端部が位置することが望ましい。更に、リブ5の主桁2a,2b側下端部には、中詰めコンクリート7の充填性を良好にするための空気孔5aとして、主桁2a,2bの下フランジの厚さよりも大きな切り欠きが設けられている。具体的には、空気孔5aは、底板4からの高さが、底板4から主桁2a,2bの下フランジ上面までの高さよりも更に、中詰めコンクリート7の最大骨材寸法分以上高く、その幅は、主桁2a,2bのフランジ幅の1/2程度の大きさを有する。なお、このリブ5の取付けは、主桁2a,2bとの接合部は、荷重作用時の横開きを防止するためにウェッブ部にて隅肉溶接を行うが、底板4との接合部は位置固定用の点溶接でよい。
【0020】
次に、上述の如く構成された本実施形態の覆工板1の製造方法について説明する。本実施形態の覆工板1を製造する際は、先ず、主桁2a,2bを構築する。その際、形鋼を使用する場合は、所定の寸法に切断するのみでよい。一方、ビルトアップ材を使用する場合は、所定の寸法に切断したプレート(鋼板)を所定の形状に組立て、仮付けとして数箇所点付け溶接を施した後、隅肉溶接にて本溶接を行う。次に、主桁2a,2bを所定の間隔をあけて配置し、これらに端部プレート3a,3b、底板4、リブ5、及び型枠プレート8a,8bを、仮付け溶接した後、本溶接する。このとき、溶接により生じた熱ひずみによって、覆工板1に曲がり及び反りが発生することがあるが、その場合は、熱矯正、又は端部プレート3a,3b及び型枠プレート8a,8bに切削加工を施すことで、所定の寸法精度を確保することができる。
【0021】
その後、底板4、主桁2a、主桁2b、型枠プレート8a及び形枠プレート8bによって囲まれる空間内に、中詰めコンクリート7を充填する。その際、前述した各部材が型枠として機能するため、特別な型枠及び治具は不要であり、中詰めコンクリート7をそのまま本体に充填することができる。また、覆工板1の表面の平坦度を確保するため、中詰めコンクリート7の表面は、こて仕上げを行う。
【0022】
次に、本実施形態の覆工板1の使用方法について説明する。図3及び図4は本実施形態の覆工板の設置方法を模式的に示す図である。本実施形態の覆工板1は、通常は、図1に示す状態で架台に直置きされるが、図3及び図4に示すように、受け桁11上に覆工板1を設置することもできる。例えば、図3に示すように、鋼板又はL形鋼等で構成されるストッパー10する場合、ストッパー10を覆工板1の底面の4箇所に隅肉溶接にて固着して設置する。また、図4に示すように、ストッパー10の代わりにL型形状をした鋼製の締結クリップ12を使用する場合は、前述したストッパー10と同様に、覆工板1の底面の4箇所に、締結クリップ12を隅肉溶接にて固着して設置する。前述したストッパー10を使用する方法と締結クリップ12を使用する方法との相違点は、ストッパー10は、単に受け桁11に接触しているだけであるが、締結クリップ12は、受け桁11を挟みこむように取り付けられるため、ボルト等でクリップ12を締めこむことにより、覆工体1を受け桁11に固定できる点である。
【0023】
更に、図3及び図4に示すように、覆工板1の底面にゴムパッド等の緩衝材14を取り付け、この緩衝材14を介して受け桁11に設置することにより、使用時の騒音及び衝撃を低減することができる。
【0024】
上述の如く、本実施形態の覆工板1においては、H形鋼及び鋼板等の一般的な鋼材を使用しているため、鋼材の加工度を上げることなく、現行の鋼製覆工板以上の強度性能を有する合成覆工板とすることができる。これにより、従来品より経済的に優れた覆工板構造を実現できる。また、主桁2a,2bよりも上方にまで中詰めコンクリート7を充填し、路面となる面を、縞H鋼に比べてすべり抵抗性に優れたコンクリートにより形成しているため、別途すべり止め被覆を施す必要がなく、材料費及び工程数の削減が可能となる。更に、路面となる面を形成するコンクリートと、主構造部材である鋼材とを一体化しているため、モルタル又は塗装を接着剤により接着して路面を形成していた従来の覆工板に比べて、繰返し使用に伴う剥がれ及び欠けが少なく、優れた耐久性を確保することができる。
【0025】
なお、本実施形態においては、主桁2a,2bにH形鋼を使用した覆工板について述べたが、本発明はこれに限定されるものではない。図5及び図6は本実施形態の変形例の覆工板を示す断面図であり、図1に示すA−A線による断面図に相当する。具体的には、主桁2a,2bは、内側に向かってフランジが張り出した形状の鋼材であればよく、例えば、H形鋼以外に、図5に示すようなC形鋼、図6に示すようなL形鋼を使用しても、本実施形態の覆工板1と同様の効果が得られる。
【0026】
また、本実施形態の覆工板1では、型枠プレート8a,8bを夫々主桁2a,2bの上面に固定しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、主桁2a,2bよりも上方にまで中詰めコンクリート7を充填するための嵩上げ部材として機能すればよい。図7は本実施形態の他の変形例の覆工板を示す断面図であり、図1に示すA−A線による断面図に相当する。具体的には、図7に示すように、主桁2a,2bをH形鋼により構成した場合は、型枠プレート9a,9bを主桁2a,2bの外側側面に接合することもできる。ただし、この場合、溶接劣化に伴う型枠プレート9a,9bの脱落を防止するため、主桁2a,2bと型枠プレート9a,9bとを接合する際に、主桁2a,2bの上フランジ上面を隅肉溶接することが望ましい。
【0027】
更に、本実施形態の覆工板1は、主桁2a,2bの張り出し部分、即ち、フランジに、ジベル筋13等を固着することにより、主桁2a,2bと中詰めコンクリート7との付着強度をより高めることができる。図8は主桁2a,2bの下フランジにジベル筋13を設けた場合の構造を示す斜視図であり、図9はその断面図である。図8及び図9に示すように、主桁2a,2bをH形鋼により構成した場合、例えば、下フランジに所定の間隔を空けて複数個のジベル筋13を固定することができる。これにより、主桁2a,2bと中詰めコンクリート7との付着強度が補強される。
【0028】
更にまた、本実施形態の覆工板1では、リブ5に矩形の空気穴5aを形成しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、空気孔の形状は適宜設定することができ、例えば、図2に示すような矩形状の空気孔5aと同等の面積を有する扇形状の空気孔とすることもできる。
【0029】
更にまた、本実施形態の覆工板1においては、必要に応じて、覆工板1の上面の4隅に、吊り上げ用の孔を設けることもできる。
【0030】
更にまた、一般的な覆工板の形状は、図1に示すような平面視で長方形状であるが、本発明はこれに限定されるものではなく、道路線形に合わせて適宜設定することが可能である。図10は本実施形態の第4変形例の覆工板を示す斜視図である。例えば、図10に示す覆工板21のように、主桁2a,2bを配置する位置を調節することにより、平面視で台形形状又は三角形状の覆工板を提供することも可能となる。これにより、道がカーブしている場合等において、デットスペースを少なくすることができるため、施工費用を低減することができる。
【0031】
従来の縞H形鋼を主部材とした覆工板において、道路線形に合わせた覆工板とするには、矩形の覆工板を敷き並べて必要線形を確保する場合と、矩形覆工板を加工して異型形状を製作する場合と2通りあるが、前者は道がカーブしている場合等には必要線形を確保するためのデッドスペースが大きくなるため不経済であり、後者は量産品である矩形覆工板とはことなり、オフライン生産となるため、矩形覆工板に比べて大幅に割高になるだけでなく、主部材である縞H形鋼の切断方向に制約があり、必ずしも合理的な形状が確保できない場合もあった。これに対して、本実施形態の覆工板は、主桁等の配置角度を変えると共に、底板の形状を変えるだけで種々の道路線形に対応可能となる。特に施工途中で道路線形が変わる場合においては、前述した従来技術に対して、製作の容易性及び低コスト化の面で有利である。
【0032】
次に、本発明の第2の実施形態に係る覆工板について説明する。図11は本実施形態の覆工板を示す斜視図であり、図12は図11に示すB−B線による断面図である。図11及び図12に示すように、本実施形態の覆工板31は、中詰めコンクリート7中に、ひび割れ分散鉄筋6を配したものであり、それ以外の構成は、前述の第1の実施形態の覆工板と同様である。この覆工板31で使用するひび割れ分散鉄筋6としては、一般的なひび割れ防止用鉄筋を使用することができるが、全体として中詰めコンクリート7の表面面積と同等の面積を有し、鉄筋を長手方向と幅方向に直角に交差させて網目状に組んだものであることが望ましい。また、ひび割れ分散鉄筋6は、例えば、図12に示すように、主桁2a,2bの上フランジ上面に直接設置してもよい。
【0033】
本実施形態の覆工板31においては、中詰めコンクリート7中にひび割れ分散鉄筋6を配置しているため、使用中に路面に生じるひび割れの幅を小さく分散することができ、前述の第1の実施形態の覆工板1よりも更に耐久性を向上させることができる。なお、本実施形態の覆工板31における上記以外の効果は、前述の第1の実施形態の覆工板1と同様である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の第1の実施形態の覆工板を示す斜視図である。
【図2】図1に示すA−A線による断面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態の覆工板の設置方法を模式的に示す図である。
【図4】本発明の第1の実施形態の覆工板の他の設置方法を模式的に示す図である。
【図5】本発明の第1の実施形態の第1変形例の覆工板を示す断面図であり、図1に示すA−A線による断面図に相当する。
【図6】本発明の第1の実施形態の第2変形例の覆工板を示す断面図であり、図1に示すA−A線による断面図に相当する。
【図7】本発明の第1の実施形態の第3変形例の覆工板を示す断面図であり、図1に示すA−A線による断面図に相当する。
【図8】主桁2a,2bの下フランジにジベル筋を設けた場合の構造を示す斜視図である。
【図9】図8に示す覆工板の断面図である。
【図10】本発明の第1の実施形態の第4変形例の覆工板を示す斜視図である。
【図11】本発明の第2の実施形態の覆工板を示す斜視図である。
【図12】図11に示すB−B線による断面図である。
【図13】特許文献5に記載の合成覆工板を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0035】
1、21、31、101 覆工板
2a、2b、102a、102b 主桁
3a、3b 端部プレート
4 底板
5 リブ
5a 空気孔
6 ひび割れ分散鉄筋
7、103 コンクリート
8a、8b、9a、9b 型枠プレート
10 ストッパー
11 受桁
12 クリップ
13 ジベル筋
14 緩衝材
【技術分野】
【0001】
本発明は、地下掘削工事現場及び架設桟橋等のように路面となる面にすべり止め対策を施す必要がある用途に使用される覆工板に関し、特に、鋼材とコンクリートとを一体化した合成覆工板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、交通路を確保するための仮設路面板として掘削箇所等に敷設される覆工板は、縞H形鋼を主部材としたものが主流となっている。このような鋼製覆工板は、製造が容易で、取扱いもしやすいことから、地下掘削工事現場及び架設桟橋等において広く使用されている。その一方で、鋼製覆工板には、コンクリート及びアスファルトに比べてすべり抵抗が低いという短所があり、特に強いすべり止め対策を要求される場合には、一般に、すべり抵抗性に優れたモルタル等で路面となる面を被覆している(例えば、特許文献1及び2参照。)。
【0003】
また、鋼製以外の覆工板としては、従来、プレキャストコンリート板又は鋼材とコンクリートとを組み合わせた合成覆工板も開発されている(例えば、特許文献3〜5参照。)。図13は特許文献5に記載の合成覆工板を示す斜視図である。図13に示すように、特許文献5に記載の合成覆工板101は、コンクリート103の両側部に鉄製主桁102a,102bが接合されている。また、特許文献5には、コンクリート103と鉄製主桁102a,102bとの接合部の強度を補強するための構造として、コンクリート103にアンカー鉄筋を敷設した構造、コンクリート103の上部又は上下部にリブ状ジベル付鉄板を配置した構造、コンクリート103の縦方向中心部に鉄骨を埋設した構造等が記載されている。
【0004】
一方、強度性能と併せて、一般道と同程度のすべり摩擦抵抗も確保するために、鋼材部分をコンクリートで覆った合成覆工板も提案されている(非特許文献1及び2参照。)。非特許文献2に記載の合成覆工板では、π形鋼を4本並列し、幅方向の両端部に鋼床版のU形リブに類似した形状の補強桁を取り付けたものに、厚さ8cmの軽量コンクリートを打設して、鋼材とコンクリートとを一体化している。
【0005】
【特許文献1】特開昭63−171403号公報
【特許文献2】特開平4−50406号公報
【特許文献3】特開昭51−136332号公報
【特許文献4】特開昭51−107641号公報
【特許文献5】特開昭51−115029号公報
【非特許文献1】西堀忠信,外2名、「鋼・コンクリート合成被覆工板の耐力と力学的特性」、川崎製鉄技報、川崎製鉄株式会社、1975年、第7巻、第4号、p.74−87
【非特許文献2】西堀忠信,外2名、「鋼・コンクリート合成被覆工板の耐力と力学的特性」、川崎製鉄技報、川崎製鉄株式会社、1979年、第11巻、第4号、p.163−168
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前述した従来の技術には以下に示す問題点がある。即ち、特許文献1及び2に記載された従来の鋼製覆工板では、すべり防止用被覆材として、表面に薄いモルタル又は塗装が施されているが、これらの表面被覆材は、単に覆工板表面に敷き詰めただけであるため、長期間繰返し使用することにより、磨耗による剥がれが生じたり、衝撃により割れ又は欠けが発生したりすることがある。このため、特許文献1及び2に記載の覆工板は、長期間にわたって連続使用する場合、被覆材が破損した箇所に特殊機械を用いて補修を施したり、更にひどい場合には覆工板ごと取り替えたりしなければならず、維持・補修作業にかなりの負担がかかるという問題点がある。
【0007】
また、特許文献3〜5に記載の従来の合成覆工板は、路面にすべり抵抗が低い鋼材が露出しており、すべり対策としては鋼材表面に縞目を施しているだけであるため、鋼製覆工板と同等レベルのすべり抵抗性しか期待できず、より大きなすべり抵抗性が要求された場合、前述した鋼製覆工板と同様の対策が別途必要となる。
【0008】
更に、非特許文献1及び2に記載の合成覆工板は、覆工板本体にすべり抵抗機能を付与しているが、強度性能を確保するために、鋼材とコンクリートとを一体化させるための多くの加工が必要であるという問題点がある。例えば、非特許文献1に記載の合成覆工板の場合、主部材であるH形鋼に横鉄筋を通すための穴あけを行っているが、鋼製覆工板の製作と比較すると、これら穴あけ加工及び鉄筋差込み作業は全く余分な作業であり、材料低減効果よりも加工費増分が勝ってしまい不経済な製品となってしまっている。また、非特許文献2に記載の合成覆工板においても、主部材として特殊な形鋼が用いられていたり、底部に補剛桁を取り付けたりしているため、従来の鋼製覆工板に表面被覆を施したものより価格が高いものとなっている。更に、この合成覆工板において、主部材として用いられている特殊形鋼は、素材価格が高いのはもちろんのこと市場性が乏しく、タイムリーな材料手配ができないという問題点もある。
【0009】
本発明は、上述した問題点を鑑みてなされたものであって、表面に被覆材を設けなくてもすべり摩擦抵抗が高く、長期間にわたって連続使用する場合でも維持・補修作業が不要又は極めて容易で、かつ製造コストが安い覆工板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る覆工板は、鋼材とコンクリートとを一体化した合成覆工板であって、鋼製底板と、前記底板の幅方向両端部に夫々接合された1対の鋼製主桁と、前記底板の長手方向両端部及び前記主桁の長手方向両端部に夫々接合され、その上端部が前記主桁の上端部よりも上方に位置し、側面を構成する1対の鋼製端部プレートと、前記主桁の幅方向端縁に沿って固定され、その上端部が前記主桁の上端部よりも上方に位置し、少なくとも側面の一部を構成する1対の鋼製型枠プレートと、前記1対の主桁を相互に連結する1又は複数枚の鋼製リブと、前記底板、前記主桁、前記端部プレート及び前記型枠プレートで形成される空間内に充填された中詰めコンクリートと、を有することを特徴とする。
【0011】
この覆工板は、前記中詰めコンクリート中に、ひび割れ防止用鉄筋が配置されていてもよい。
【0012】
また、前記主桁は、断面形状が、例えば、H形、L形又はC形であってもよい。
【0013】
更に、本発明の覆工板は、平面視で、長方形状、台形状又は三角形状とすることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、H形鋼及び鋼板等の一般的な鋼材を使用すると共に、主桁よりも上方にまで中詰めコンクリートを充填し、更に、路面となる面をすべり抵抗性に優れた中詰めコンクリートで形成しているため、製造コストを増加させることなく、優れたすべり抵抗性が得られ、長期間にわたって連続使用する場合でも維持・補修作業が不要又は極めて容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、添付の図面を参照して詳細に説明する。先ず、本発明の第1の実施形態に係る覆工板について説明する。図1は本実施形態の覆工板を示す斜視図であり、図2は図1に示すA−A線による断面図である。図1及び図2に示すように、本実施形態の覆工板1は、鋼材とコンクリートとを一体化した合成覆工板であり、鋼板等からなる底板4の幅方向両端部に、夫々主桁2a,2bが接合されており、また、底板4及び主桁2a,2bの長手方向両端部には、夫々鋼板等からなり側面を構成する端部プレート3a,3bが接合されている。更に、主桁2a,2bの上面の幅方向外側端部には、その端縁に沿って鋼板等からなり、主桁2a,2bと共に側面を構成する型枠プレート8a,8bが接合されており、型枠プレート8a,8bの長手方向両端部は、夫々端部プレート3a,3bに接合されている。更にまた、主桁2a,2bの長手方向中間部には、鋼板等からなり両主桁を連結するリブ5が接合されており、このリブ5の下端部は底板4に接合されている。そして、底板4、主桁2a、主桁2b、型枠プレート8a及び形枠プレート8bによって囲まれる空間内には、主桁2a,2bの上端部が覆われるように、端部プレート3a,3b及び型枠プレート8a,8bの上端部まで中詰めコンクリート7が充填されている。なお、各部材は、その接触部分を隅肉溶接等の方法で溶接することにより接合されている。
【0016】
本実施形態の覆工板1の主構造部材である主桁2a,2bは、本体の主要強度部材であると共に、張り出し部によりコンクリートの抜け出しを防止し、一体化を確保するずれ止め機能も兼ねていることから、少なくとも本体底面側にフランジ、即ち、内側への張り出し形状を有する鋼材を使用する必要がある。そこで、本実施形態においては、主桁2a,2bとして、H型形状を有する鋼材(H形鋼)を使用している。そして、この主桁2a,2bを構成するH形鋼の下フランジの幅方向内側端部に底板4を隅肉溶接し、上フランジの幅方向外側端部に、型枠プレート8a,8bを隅肉溶接している。更に、この主桁2a,2bの長手方向両端部では、少なくとも主桁2a,2bを構成するH形鋼の下フランジの上側と端部プレート3a,3bとを隅肉溶接している。その際、コンクリートの漏出を確実に防止するためには、H形鋼のウェブ及び上フランジの下側も隅肉溶接することが望ましい。なお、主桁2a,2bと底板4、主桁2a,2bと型枠プレート8a,8b、又は主桁2a,2bと端部プレート3a,3bとを隅肉溶接する際は、覆工板内面側を溶接することが望ましいが、作業が難しい場合は、覆工板外面側を隅肉溶接してもよい。
【0017】
また、本実施形態における底板4は、主桁2a,2bを連結する部材であると共に、中詰めコンクリート7を充填する際の型枠部材としての機能、更には、主桁2a,2b及び端部プレート3a,3bとの接合部が隅肉溶接により止水溶接が施されていることから、本体底面からの漏水を防ぐ止水機能をも有する。
【0018】
一方、覆工板1の側面を構成すると共に型枠部材として機能する端部プレート3a,3b及び型枠プレート8a,8bは、矩形形状の鋼板からなり、主桁2a,2b及び底板4に接合された状態での端部プレート3a,3bの上端部の位置と、主桁2a,2bに接合された状態での型枠プレート8a,8bの上端部の位置とが、同じ高さになるようにその幅が設定されている。このため、端部プレート3a,3bの上端部は、主桁2a,2bの上端部よりも、型枠プレート8a,8bの幅の分だけ上方に位置している。また、型枠プレート8a,8bは、中詰めコンクリート7を主桁2a,2bの上面よりも更に上方にまで充填するための嵩上げ部材であり、その長さは、主桁2a,2bの長さと同等で、主桁2a,2bの上フランジ上面に、点溶接にて固定されている。
【0019】
また、主桁2aと主桁2bとを連結するリブ5は、覆工板1の形状保持することを目的として設けられている部材である。その高さは特に限定するものではなく、施工時及び使用中に、主桁2a,2bが傘折れしたり又はねじれたりせず、かつコンクリート7の品質及びリブ5の防食性を考慮し、その上に耐食性を確保できる程度の厚さのコンクリート7層が形成される高さであればよい。具体的には、主桁2a,2bの高さの1/2付近に、リブ5の上端部が位置することが望ましい。更に、リブ5の主桁2a,2b側下端部には、中詰めコンクリート7の充填性を良好にするための空気孔5aとして、主桁2a,2bの下フランジの厚さよりも大きな切り欠きが設けられている。具体的には、空気孔5aは、底板4からの高さが、底板4から主桁2a,2bの下フランジ上面までの高さよりも更に、中詰めコンクリート7の最大骨材寸法分以上高く、その幅は、主桁2a,2bのフランジ幅の1/2程度の大きさを有する。なお、このリブ5の取付けは、主桁2a,2bとの接合部は、荷重作用時の横開きを防止するためにウェッブ部にて隅肉溶接を行うが、底板4との接合部は位置固定用の点溶接でよい。
【0020】
次に、上述の如く構成された本実施形態の覆工板1の製造方法について説明する。本実施形態の覆工板1を製造する際は、先ず、主桁2a,2bを構築する。その際、形鋼を使用する場合は、所定の寸法に切断するのみでよい。一方、ビルトアップ材を使用する場合は、所定の寸法に切断したプレート(鋼板)を所定の形状に組立て、仮付けとして数箇所点付け溶接を施した後、隅肉溶接にて本溶接を行う。次に、主桁2a,2bを所定の間隔をあけて配置し、これらに端部プレート3a,3b、底板4、リブ5、及び型枠プレート8a,8bを、仮付け溶接した後、本溶接する。このとき、溶接により生じた熱ひずみによって、覆工板1に曲がり及び反りが発生することがあるが、その場合は、熱矯正、又は端部プレート3a,3b及び型枠プレート8a,8bに切削加工を施すことで、所定の寸法精度を確保することができる。
【0021】
その後、底板4、主桁2a、主桁2b、型枠プレート8a及び形枠プレート8bによって囲まれる空間内に、中詰めコンクリート7を充填する。その際、前述した各部材が型枠として機能するため、特別な型枠及び治具は不要であり、中詰めコンクリート7をそのまま本体に充填することができる。また、覆工板1の表面の平坦度を確保するため、中詰めコンクリート7の表面は、こて仕上げを行う。
【0022】
次に、本実施形態の覆工板1の使用方法について説明する。図3及び図4は本実施形態の覆工板の設置方法を模式的に示す図である。本実施形態の覆工板1は、通常は、図1に示す状態で架台に直置きされるが、図3及び図4に示すように、受け桁11上に覆工板1を設置することもできる。例えば、図3に示すように、鋼板又はL形鋼等で構成されるストッパー10する場合、ストッパー10を覆工板1の底面の4箇所に隅肉溶接にて固着して設置する。また、図4に示すように、ストッパー10の代わりにL型形状をした鋼製の締結クリップ12を使用する場合は、前述したストッパー10と同様に、覆工板1の底面の4箇所に、締結クリップ12を隅肉溶接にて固着して設置する。前述したストッパー10を使用する方法と締結クリップ12を使用する方法との相違点は、ストッパー10は、単に受け桁11に接触しているだけであるが、締結クリップ12は、受け桁11を挟みこむように取り付けられるため、ボルト等でクリップ12を締めこむことにより、覆工体1を受け桁11に固定できる点である。
【0023】
更に、図3及び図4に示すように、覆工板1の底面にゴムパッド等の緩衝材14を取り付け、この緩衝材14を介して受け桁11に設置することにより、使用時の騒音及び衝撃を低減することができる。
【0024】
上述の如く、本実施形態の覆工板1においては、H形鋼及び鋼板等の一般的な鋼材を使用しているため、鋼材の加工度を上げることなく、現行の鋼製覆工板以上の強度性能を有する合成覆工板とすることができる。これにより、従来品より経済的に優れた覆工板構造を実現できる。また、主桁2a,2bよりも上方にまで中詰めコンクリート7を充填し、路面となる面を、縞H鋼に比べてすべり抵抗性に優れたコンクリートにより形成しているため、別途すべり止め被覆を施す必要がなく、材料費及び工程数の削減が可能となる。更に、路面となる面を形成するコンクリートと、主構造部材である鋼材とを一体化しているため、モルタル又は塗装を接着剤により接着して路面を形成していた従来の覆工板に比べて、繰返し使用に伴う剥がれ及び欠けが少なく、優れた耐久性を確保することができる。
【0025】
なお、本実施形態においては、主桁2a,2bにH形鋼を使用した覆工板について述べたが、本発明はこれに限定されるものではない。図5及び図6は本実施形態の変形例の覆工板を示す断面図であり、図1に示すA−A線による断面図に相当する。具体的には、主桁2a,2bは、内側に向かってフランジが張り出した形状の鋼材であればよく、例えば、H形鋼以外に、図5に示すようなC形鋼、図6に示すようなL形鋼を使用しても、本実施形態の覆工板1と同様の効果が得られる。
【0026】
また、本実施形態の覆工板1では、型枠プレート8a,8bを夫々主桁2a,2bの上面に固定しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、主桁2a,2bよりも上方にまで中詰めコンクリート7を充填するための嵩上げ部材として機能すればよい。図7は本実施形態の他の変形例の覆工板を示す断面図であり、図1に示すA−A線による断面図に相当する。具体的には、図7に示すように、主桁2a,2bをH形鋼により構成した場合は、型枠プレート9a,9bを主桁2a,2bの外側側面に接合することもできる。ただし、この場合、溶接劣化に伴う型枠プレート9a,9bの脱落を防止するため、主桁2a,2bと型枠プレート9a,9bとを接合する際に、主桁2a,2bの上フランジ上面を隅肉溶接することが望ましい。
【0027】
更に、本実施形態の覆工板1は、主桁2a,2bの張り出し部分、即ち、フランジに、ジベル筋13等を固着することにより、主桁2a,2bと中詰めコンクリート7との付着強度をより高めることができる。図8は主桁2a,2bの下フランジにジベル筋13を設けた場合の構造を示す斜視図であり、図9はその断面図である。図8及び図9に示すように、主桁2a,2bをH形鋼により構成した場合、例えば、下フランジに所定の間隔を空けて複数個のジベル筋13を固定することができる。これにより、主桁2a,2bと中詰めコンクリート7との付着強度が補強される。
【0028】
更にまた、本実施形態の覆工板1では、リブ5に矩形の空気穴5aを形成しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、空気孔の形状は適宜設定することができ、例えば、図2に示すような矩形状の空気孔5aと同等の面積を有する扇形状の空気孔とすることもできる。
【0029】
更にまた、本実施形態の覆工板1においては、必要に応じて、覆工板1の上面の4隅に、吊り上げ用の孔を設けることもできる。
【0030】
更にまた、一般的な覆工板の形状は、図1に示すような平面視で長方形状であるが、本発明はこれに限定されるものではなく、道路線形に合わせて適宜設定することが可能である。図10は本実施形態の第4変形例の覆工板を示す斜視図である。例えば、図10に示す覆工板21のように、主桁2a,2bを配置する位置を調節することにより、平面視で台形形状又は三角形状の覆工板を提供することも可能となる。これにより、道がカーブしている場合等において、デットスペースを少なくすることができるため、施工費用を低減することができる。
【0031】
従来の縞H形鋼を主部材とした覆工板において、道路線形に合わせた覆工板とするには、矩形の覆工板を敷き並べて必要線形を確保する場合と、矩形覆工板を加工して異型形状を製作する場合と2通りあるが、前者は道がカーブしている場合等には必要線形を確保するためのデッドスペースが大きくなるため不経済であり、後者は量産品である矩形覆工板とはことなり、オフライン生産となるため、矩形覆工板に比べて大幅に割高になるだけでなく、主部材である縞H形鋼の切断方向に制約があり、必ずしも合理的な形状が確保できない場合もあった。これに対して、本実施形態の覆工板は、主桁等の配置角度を変えると共に、底板の形状を変えるだけで種々の道路線形に対応可能となる。特に施工途中で道路線形が変わる場合においては、前述した従来技術に対して、製作の容易性及び低コスト化の面で有利である。
【0032】
次に、本発明の第2の実施形態に係る覆工板について説明する。図11は本実施形態の覆工板を示す斜視図であり、図12は図11に示すB−B線による断面図である。図11及び図12に示すように、本実施形態の覆工板31は、中詰めコンクリート7中に、ひび割れ分散鉄筋6を配したものであり、それ以外の構成は、前述の第1の実施形態の覆工板と同様である。この覆工板31で使用するひび割れ分散鉄筋6としては、一般的なひび割れ防止用鉄筋を使用することができるが、全体として中詰めコンクリート7の表面面積と同等の面積を有し、鉄筋を長手方向と幅方向に直角に交差させて網目状に組んだものであることが望ましい。また、ひび割れ分散鉄筋6は、例えば、図12に示すように、主桁2a,2bの上フランジ上面に直接設置してもよい。
【0033】
本実施形態の覆工板31においては、中詰めコンクリート7中にひび割れ分散鉄筋6を配置しているため、使用中に路面に生じるひび割れの幅を小さく分散することができ、前述の第1の実施形態の覆工板1よりも更に耐久性を向上させることができる。なお、本実施形態の覆工板31における上記以外の効果は、前述の第1の実施形態の覆工板1と同様である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の第1の実施形態の覆工板を示す斜視図である。
【図2】図1に示すA−A線による断面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態の覆工板の設置方法を模式的に示す図である。
【図4】本発明の第1の実施形態の覆工板の他の設置方法を模式的に示す図である。
【図5】本発明の第1の実施形態の第1変形例の覆工板を示す断面図であり、図1に示すA−A線による断面図に相当する。
【図6】本発明の第1の実施形態の第2変形例の覆工板を示す断面図であり、図1に示すA−A線による断面図に相当する。
【図7】本発明の第1の実施形態の第3変形例の覆工板を示す断面図であり、図1に示すA−A線による断面図に相当する。
【図8】主桁2a,2bの下フランジにジベル筋を設けた場合の構造を示す斜視図である。
【図9】図8に示す覆工板の断面図である。
【図10】本発明の第1の実施形態の第4変形例の覆工板を示す斜視図である。
【図11】本発明の第2の実施形態の覆工板を示す斜視図である。
【図12】図11に示すB−B線による断面図である。
【図13】特許文献5に記載の合成覆工板を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0035】
1、21、31、101 覆工板
2a、2b、102a、102b 主桁
3a、3b 端部プレート
4 底板
5 リブ
5a 空気孔
6 ひび割れ分散鉄筋
7、103 コンクリート
8a、8b、9a、9b 型枠プレート
10 ストッパー
11 受桁
12 クリップ
13 ジベル筋
14 緩衝材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼材とコンクリートとを一体化した合成覆工板であって、
鋼製底板と、
前記底板の幅方向両端部に夫々接合された1対の鋼製主桁と、
前記底板の長手方向両端部及び前記主桁の長手方向両端部に夫々接合され、その上端部が前記主桁の上端部よりも上方に位置し、側面を構成する1対の鋼製端部プレートと、
前記主桁の幅方向端縁に沿って固定され、その上端部が前記主桁の上端部よりも上方に位置し、少なくとも側面の一部を構成する1対の鋼製型枠プレートと、
前記1対の主桁を相互に連結する1又は複数枚の鋼製リブと、
前記底板、前記主桁、前記端部プレート及び前記型枠プレートで形成される空間内に充填された中詰めコンクリートと、
を有することを特徴とする覆工板。
【請求項2】
更に、前記中詰めコンクリート中に、ひび割れ防止用鉄筋が配置されていることを特徴とする請求項1に記載の覆工板。
【請求項3】
前記主桁の断面形状が、H形、L形又はC形であることを特徴とする請求項1又は2に記載の覆工板。
【請求項4】
平面視で、長方形状、台形状又は三角形状であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の覆工板。
【請求項1】
鋼材とコンクリートとを一体化した合成覆工板であって、
鋼製底板と、
前記底板の幅方向両端部に夫々接合された1対の鋼製主桁と、
前記底板の長手方向両端部及び前記主桁の長手方向両端部に夫々接合され、その上端部が前記主桁の上端部よりも上方に位置し、側面を構成する1対の鋼製端部プレートと、
前記主桁の幅方向端縁に沿って固定され、その上端部が前記主桁の上端部よりも上方に位置し、少なくとも側面の一部を構成する1対の鋼製型枠プレートと、
前記1対の主桁を相互に連結する1又は複数枚の鋼製リブと、
前記底板、前記主桁、前記端部プレート及び前記型枠プレートで形成される空間内に充填された中詰めコンクリートと、
を有することを特徴とする覆工板。
【請求項2】
更に、前記中詰めコンクリート中に、ひび割れ防止用鉄筋が配置されていることを特徴とする請求項1に記載の覆工板。
【請求項3】
前記主桁の断面形状が、H形、L形又はC形であることを特徴とする請求項1又は2に記載の覆工板。
【請求項4】
平面視で、長方形状、台形状又は三角形状であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の覆工板。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2008−156934(P2008−156934A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−347918(P2006−347918)
【出願日】平成18年12月25日(2006.12.25)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年12月25日(2006.12.25)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]