説明

規定された含量の異性体を有するジケトピペラジン微粒子

本明細書において、約45%から約65%の特定の含量のトランス異性体を有するフマリルジケトピペラジン(FDKP)組成物及び微粒子が開示される。FDKP微粒子は、インスリン、グルカゴン、副甲状腺ホルモン、及び同様物を含む、内分泌ホルモンといった薬物を含有し得、薬物の肺送達のための粉末製剤を作るために用いられ得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フマリルジケトピペラジン(FDKP)組成物及び約45%から約65%の含量の特定のトランス異性体を有する微粒子に関する。FDKP微粒子は、疾患又は不調(例えば内分泌系の疾患(糖尿病及び肥満を含む))の治療おける薬物又は活性剤のためのデリバリーシステムとして用いられ得る。
【背景技術】
【0002】
薬物の送達は、特に送達される化合物が対象に経口投与され標的部位に到達する前に消化管において直面する環境下で不安定である場合に、長年大きな問題となっていた。例えば、特に、投与の容易さ、患者コンプライアンス、及びコスト低減の観点から、薬物の経口投与が多くの場合において望ましい。しかしながら、多くの化合物は、経口投与されると、効果が無くなり、又は低い若しくは変化しやすい有効性を示す。おそらくこれは、薬物が消化管における環境に不安定である、又はそれらが吸収されると有効性が無くなるからである。
【0003】
経口のドラッグデリバリーに関連した問題に起因して、肺へのドラッグデリバリーが探索されてきた。例えば、典型的には、肺へ送達される薬物は、肺の組織に影響を与えるようにデザインされ、それは例えば、血管拡張剤、界面活性剤、化学療法剤、又はインフルエンザ若しくは他の呼吸器系疾患のためのワクチンである。ヌクレオチド薬物を含む他の薬物は、肺に送達されてきた。それらは、特に治療にふさわしい組織であるからである。例えば、嚢胞性繊維症における遺伝子治療では、不完全なアデノシンデアミナーゼを発現するレトロウイルスベクターが肺に投与される。
【0004】
全身的な効果を有する薬物のための肺へのドラッグデリバリーもまた行われ得る。全身的薬剤を肺に送達させる利点は、大きな表面積及び肺の粘膜表面による摂取の容易さを含む。肺のドラッグデリバリーのこれらの形式のすべてに関連する一つの問題は、気管を内張りしている絨毛といった生体バリアのすべてを薬物が通り抜けること、及び一定の容積及び重量の薬物を投与しようとすることにおける問題に起因して、薬物を肺に送達するのが困難であるということである。
【0005】
したがって、薬物の肺への送達においては改善の余地がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、肺への薬物の改善された送達を可能とするシステム、微粒子、及び方法を提供する。本明細書において開示される態様は、規定された含量の異性体を含有するジケトピペラジン微粒子を提供することにより、改善された送達を達成する。具体的には、ジケトピペラジン微粒子は、約45%から約65%の含量のトランス異性体を有するフマリルジケトピペラジン(FDKP)化合物により例示される。この範囲での含量のトランス異性体を有するFDKP微粒子は、改善された空気力学的パフォーマンスといった、肺へのドラッグデリバリーに有用な特性を示す。
【0007】
本明細書に開示される一実施態様は、約45%から約65%の含量のトランス異性体を含有するFDKP微粒子を含む。FDKP微粒子の他の実施態様において、トランス異性体の含量は、約50%から約65%、約52%から約62%、又は約53%から約65%であり得る。FDKP微粒子の他の実施態様において、トランス異性体の含量は、約53%から約63%である。
【0008】
他の実施態様において、FDKP微粒子は、薬物又は活性剤を含む。FDKP微粒子の種々の態様において、薬物は、例えば、ペプチド(インスリン、グルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)、グルカゴン、エキセンディン、副甲状腺ホルモン、カルシトニン、オキシントモジュリン、及び同様物を含む)であり得る。FDKP微粒子の他の実施態様において、ペプチド含量は、下流プロセスコンディションに依存して変化し得る。特定の実施態様において、FDKP微粒子は、標的とされ又は送達される用量に依存して変化し得る含量の薬物/ペプチドを有するように調製され得る。例えば、薬物がインスリンの場合、インスリン成分は、微粒子を含む粉末製剤中、約3U/mgから約4U/mgであり得る。
【0009】
本明細書に開示された実施態様はまた、微粒子を含有する乾燥粉末を含む。一実施態様において、乾燥粉末は、約45%から約65%の含量のトランス異性体を含有するFDKP微粒子を含む。乾燥粉末の他の実施態様において、FDKP微粒子は、約50%から約65%、約52%から約62%、又は約53%から約65%の含量のトランス異性体を有し得る。FDKP微粒子を含有する乾燥粉末の他の実施態様において、トランス異性体の含量は、約53%から約63%である。
【0010】
乾燥粉末の他の実施態様において、FDKP微粒子は、薬物を含む。乾燥粉末の他の態様において、薬物は、種々の分子サイズ又は質量のペプチド(インスリン、グルカゴン様ペプチド−1、グルカゴン、エキセンディン、副甲状腺ホルモン、カルシトニン、オキシントモジュリン、及び同様物を含む)である。乾燥粉末の一実施態様において、フマリルジケトピペラジンのトランス異性体の含量が45%から65%の間の範囲にあり、薬物がインスリンである場合、FDKP微粒子のインスリン含量は、約3U/mgから約4U/mgである。ある実施態様において、薬物は、微粒子の表面に吸収されている。
【0011】
さらなる実施態様は、吸入器(一単位用量の乾燥粉末薬剤容器、例えばカートリッジ)、並びに本明細書に開示された微粒子及び活性剤を含有する粉末、を含むドラッグデリバリーシステムに関連する。一実施態様において、乾燥粉末での使用のためのドラッグデリバリーシステムは、吸入システムを含み、それは、粉末を細分化し投与するための導管を通るエアフローに、大きい抵抗を与える空気路を有する、高抵抗性吸入器を含む。一実施態様において、吸入システムは、例えば、約0.065から約0.200(√kPa)/L/分の抵抗値を有する。ある実施態様において、乾燥粉末は、ピーク吸入圧力差が約2kPaから約20kPaの範囲であり得る吸入システムでの吸入により効果的に送達され得、それは、約7L/分から約70L/分の間の最大流量を作り出し得る。ある実施態様において、吸入システムは、持続的なフローとして、又は患者に送達される粉末の1又は2以上のパルスとして、吸入器から粉末を噴射することにより一回量を提供するように構成される。ここに開示されるいくつかの実施態様において、乾燥粉末吸入器システムは、吸入器内の既定の質量フローバランスを含む。例えば、吸入器に存在し患者に入る全流量のおよそ10%から70%のフローバランスは、1又は2以上の投与口により送達され、エアフローは粉末製剤を含有する領域を通過し、およそ30%から90%のエアフローが吸入器の他の導管から生み出される。さらに、バイパスのフロー又は粉末容器の領域に入らず及び存在しない(例えば、カートリッジを通過する)フローは、吸入器内の粉末投与口に存在するフローと再結合し得、マウスピースに存在する前に流体化された粉末を薄め、加速し、最終的には細分化する。一実施態様において、約7−70L/分の範囲の流速は、1−30mgの間の1回量分で投与される容器又はカートリッジの75%以上の含量をもたらす。ある実施態様において、前述のような吸入システムは、一回の吸入で、40%以上、50%以上、60%以上、又は70%以上の割合で粉末用量の吸入性画分/1回量を放出することができる。
【0012】
特定の実施態様において、吸入システムは、乾燥粉末吸入器、45%から65%の間の含量のFDKPトランス異性体を有するフマリルジケトピペラジンの微粒子を含有する乾燥粉末製剤、及び1又は2以上の活性剤を含んで提供される。吸入システムのこの実施態様のいくつかの側面において、乾燥粉末製剤は、一単位用量のカートリッジにおいて提供される。あるいは、乾燥粉末製剤は、吸入器においてあらかじめ組み込まれ得る。この実施態様において、吸入システムの構造的な配置により、吸入器の細分化機構は、50%以上の吸入性画分を作り出すことができる。それは、吸入器(カートリッジ)に含まれる粉末の半分以上が5.8μm未満の粒子として放出されるということである。吸入器は、投与の間、容器内に含まれる粉末製剤の85%以上を噴射することができる。ある実施態様において、吸入器は、一回の吸入で含まれる粉末製剤の85%以上を噴射することができる。一実施態様において、吸入器は、30mgまでの範囲の1回量分で2−5kPaの間の圧力差で3秒間未満にて、カートリッジ含量又は容器含量の90%以上を噴射することができる。
【0013】
本明細書に開示される実施態様はまた、方法を含む。一実施態様において、内分泌腺に関連する疾患又は不調を治療する方法は、約45%から約65%の含量のFDKPトランス異性体を含有するFDKP微粒子及び前記疾患又は不調を治療するのに適した薬物を含有する乾燥粉末製剤を必要に応じてヒトに投与することを含む。一実施態様は、必要に応じてヒトに前述のFDKPの微粒子を含有する乾燥粉末を投与することを含む、インスリン関連疾患を治療する方法を含む。該方法は、約45%から約65%又は約45%から約63%の範囲の含量のトランス異性体を有するフマリルジケトピペラジンの微粒子を含む乾燥粉末製剤を対象に投与することを含む。種々の実施態様において、インスリン関連疾患は特に、糖尿病前症、1型糖尿病(ハネムーン期、前ハネムーン期、又は両方)、2型糖尿病、妊娠性糖尿病、低血糖症、高血糖症、インスリン耐性、分泌機能障害、早期のインスリン分泌不調、膵臓β細胞機能の喪失、膵臓β細胞の喪失、及び代謝障害のいずれか又はすべてをを含み又は排除し得る。一実施態様において、乾燥粉末は、インスリンを含む。他の実施態様において、乾燥粉末は、グルカゴン、エキセンディン、又はGLP−1を含む。
【0014】
本明細書に開示される他の実施態様は、a)約45%から約65%の含量のトランス異性体を有するFDKP化合物を合成すること;b)トランス異性体含量の範囲が約45%から約65%であることを評価するためにFDKP化合物のトランス異性体含量を決定すること:c)工程b)のFDKP化合物を、塩基性pHを有する溶液に溶解させて、FDKP溶液を形成すること;d)揮発性酸の溶液を提供すること、及びe)高せん断ミキサーでFDKP溶液を揮発性酸の溶液と一緒に混合して微粒子を製造することを含む、乾燥粉末として肺投与に適する微粒子を製造する方法を含む。一実施態様において、FDKP化合物のトランス異性体含量を決定する工程は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて行われる。他の実施態様において、異性体含量は、粒子形成の後で決定される。
【0015】
他の実施態様において、約45%から約65%の含量のトランス異性体を有するジケトピペラジンを合成する方法が開示され、該方法は、エステル基を有するジケトピペラジンを提供すること;塩基性pHで水と水混和性溶媒との混合物においてジケトピペラジンのエステル基をけん化すること;及び各々約0.4から約0.7の範囲の割合でトリフルオロ酢酸及び氷酢酸を含有する反応混合物においてジケトピペラジンを再結晶化させることを含む。この及び他の実施態様において、再結晶化工程における反応混合物は、約4時間又は4時間以上の期間継続するように維持又は許容される。
【0016】
合成の一実施態様において、水混和性溶媒は、メタノール、エタノール、又はイソプロパノールを含むアルコールである。テトラヒドロフラン、ジオキサン、アセトン、及びアセトニトリルといった他の溶媒もまた、使われ得る。この及び他の実施態様において、該方法はさらに、ジケトピペラジンのトランス異性体含量を決定する工程を含む。
【0017】
特定の実施態様において、約45%から約65%の含量のトランス異性体を有するジケトピペラジンの製造方法は、式2,5−ジケト−3,6−ビス(N−X−4−アミノブチル)ピペラジンを有するジケトピペラジンを用い、Xはフマリル、スクシニル、マレイル、及びグルタリルからな群より選択される。典型的な実施態様において、ジケトピペラジンは、式2,5−ジケト−3,6−ビス(N−フマリル−4−アミノブチル)ピペラジンを有する。
【0018】
特定の実施態様において、約45%から約65%の範囲の含量のDKPトランス異性体を有するDKP化合物の製造方法は、けん化反応及び再結晶化反応を含む。一実施態様において、該方法は、エステル(エチルエステル、又はメチルエステルといったアルキルエステルを含む)保護基を含むジケトピペラジ化合物のけん化反応を含む。一実施態様において、約45%から約65%の含量のトランス異性体を有するFDKP化合物を合成する工程は、水性の溶媒といった溶媒中でFDKPのエステルをけん化すること、及び塩基を加えることを含む。特定の実施態様において、該方法は、フマリルジケトピペラジンエチルエステルといったDKPを、比率が各々1:1から約3:1の水:メタノールといった溶媒中に溶解させることを含む。他の実施態様において、他のアルコール、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アセトン、アセトニトリル、及び同様物を含む、他の水混和性溶媒が用いられ得る。一実施態様において、溶媒は水のみを含み得る。この及び他の実施態様において、けん化反応はさらに、水酸化ナトリウムを含む溶液を加えること;約20℃から約60℃の範囲又は環流コンディションの温度で反応混合物を維持すること;反応混合物をろ過してろ液を得ること;ろ液に酸性溶液を加えること、並びにろ過により形成された固体マテリアルを収集し及びFDKP固体マテリアルを洗浄することを含む。固体マテリアルはその後、形成されたFDKP粒子のトランス異性体含量を決定するために分析され得る。
【0019】
特定の実施態様において、該方法は、約1分間から約2時間約40℃から約85℃にてトリフルオロ酢酸中でFDKPの懸濁液を加熱し反応を冷却することを含む、FDKPマテリアルを再結晶化すること;氷酢酸を溶液に加え約20℃で約1時間から約24時間懸濁液を冷却することを含む。一実施態様において、再結晶化工程は、比率が各々約0.4から約0.7の範囲のトリフルオロ酢酸:氷酢酸を含有する溶液中で約1時間から約6.5時間、約15℃から約25℃の範囲の結晶化温度で反応を行うことを含む。この実施態様において、該方法はさらに、氷酢酸で反応混合物を洗浄すること、及び1時間あたり約7℃から約10℃の割合で反応の温度を下げることを含む。他の冷却速度が、所望の含量の異性体を有するFDKPマテリアルを得るように用いられ得る。
【0020】
本明細書に開示された他の実施態様は、必要に応じて患者にインスリンを送達する方法を含み、それは、患者による乾燥粉末の吸入によって肺の深部に本明細書に開示されたジケトピペラジンの微粒子を含有する乾燥粉末を投与することを含む。この実施態様の側面において、吸入器システムの特別な特徴が特定される。
【0021】
以下の図は、本明細書の一部を形成し、本明細書に開示される実施例のある側面をさらに説明するために含まれる。本開示は、本明細書に記載の特定の実施態様の詳細な説明と組み合わせてこれらの図の1又は2以上を参照することによってより良く理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】トランス異性体含量%に応じた空気力学的粉末パフォーマンスを示す図である。
【図2】約45%から約65%の含量のトランス異性体を有するFDKPを製造するために制御され得る合成スキームにおける工程を示す図である。
【図3】図2で示されたスキームのけん化工程の間ゆっくりとしたNaOH添加に応じたトランス異性体含量%を示す図である。
【図4】早急な冷却傾斜を用いるトリフルオロ酢酸(TFA)再結晶化後のトランス異性体含量%を示す図である。
【図5】約45%から約65%の含量のトランス異性体を有するインスリン含有FDKP微粒子を製造するためのプロセスの図である。
【図6】トランス異性体含量の応答曲面法分析を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
上述の通り、肺へのドラッグデリバリーは、多くの利点をもたらす。肺へ薬物を送達することは困難である。しかしながら、それは、均一な容積及び重量を有する薬物が生体の物理的バリアを通過して輸送されることの問題に起因する。本明細書において、既定の含量のトランス異性体を有するジケトピペラジン、ドラッグデリバリー媒体としての微粒子、微粒子の製造方法、及び微粒子を用いた治療方法が開示される。
【0024】
本明細書で用いられるように、“微粒子”という用語は、特定の外部又は内部構造にかかわらず、約0.5μmから約1000μmの直径を有する粒子を意味する。約0.5ミクロンから約10ミクロンの間の直径を有する粒子は、肺に到達し得、ほとんどの生体バリアを良好に通過する。約10ミクロン未満の直径が気管の曲がり角を進むために必要とされ、約0.5ミクロン又はそれ以上の直径が吐き出されるのを回避するために必要とされる。最も十分な吸収が起こると考えられている肺深部(又は肺胞領域)に到達させるために、“吸入性画分”(RF)に含まれる粒子の割合を最大化することが好ましく、通常約0.5ミクロンから約5.7ミクロンの空気力学径を有する粒子となるように受け入れられ(いくつかの文献はいくらか異なる範囲を用いるが)、例えば、アンダーソンカスケードインパクタによる標準的技術を用いて測定される。NEXT GENERATION IMPACTOR(商標名)(NGI(商標名)、MSP Corporation)といった他のインパクタが、空気力学径を測定するために用いられ得、吸入性画分が例えば<6.4μmの同空気力学径により規定される。いくつかの実施態様において、レーザー回折装置が粒子径を決定するために用いられ、米国特許出願12/727,179号明細書(出願日2010年3月18日)に開示されるレーザー回折装置が例示され(関連技術に対してその全体において本明細書に取り込まれる)、粒子の容積メジアン幾何学径(VMGD)が吸入システムのパフォーマンスを評価するために測定される。例えば、種々の実施態様において、≧80%、≧85%、又は≧90%のカートリッジ排出、及び≦12.5μm、≦7.0μm、又は≦4.8μmの放出された粒子のVMGDは、漸増するより良好な空気力学的パフォーマンスを示唆し得る。本明細書において開示される実施態様は、約45%から約65%の間の含量のトランス異性体を有するFDKP微粒子が、改善された空気力学的パフォーマンスといった、肺への薬物の送達に有益な特性を示すことを表す。
【0025】
1回量における吸入性画分(RF/fill)は、投薬としての使用のために充填された含量の粉末の噴射において吸入器から放出された用量、及び呼吸に適する用量における粉末%を表す。すなわち、肺送達に適するサイズで放出される充填された用量からの粒子の割合であり、微粒子の空気力学的パフォーマンスの測定値である。本明細書に記載されるように、40%又は40%以上のRF/fill値は、許容される空気力学的パフォーマンス特性を反映する。本明細書において開示されたある実施態様において、1回量における吸入性画分は、50%以上であり得る。典型的な実施態様において、1回量における吸入性画分は、80%までであり得、1回量の約80%は、標準的技術を用いて測定される<5.8μmの粒子サイズで放出される。
【0026】
本明細書に用いられるように、“乾燥粉末”の用語は、噴射剤、キャリア、又は他の液体中に懸濁され又は溶解されていない微粒子組成物を意味する。必ずしもすべての水分子の完全な除去を意味するものではない。
【0027】
特定のRF/fill値は、粉末を送達するために用いられる吸入器に依存し得ると理解されるべきである。粉末は通常、凝集する傾向にあり、結晶性のDKP微粒子は、特に凝集性の粉末を形成する。乾燥粉末吸入器の機能の一つは、得られた粒子が吸入器により1回量を送達するのに適した吸入性画分を含むように、粉末を細分化することである。しかしながら、凝集性の粉末の細分化は典型的には、吸入器により送達された吸入性画分を測定する際にみられる粒子サイズ分布が主な粒子のサイズ分布に合致しないように、不完全である。それは、プロファイルが大きな粒子の方にシフトするということである。吸入器のデザインは細分化の効率において変化し、したがって、異なるデザインを用いて観察されるRF/fillの絶対値もまた変化するだろう。しかしながら、異性体含量に応じた最適RF/fillは、吸入器間で同じであろう。
【0028】
本明細書で用いられるように、“約”という用語は、値が、値を決定するために用いられる装置又は方法に対する測定値の標準偏差を含む、ということを示唆するために用いられる。
【0029】
ジケトピペラジン
【0030】
薬物の不安定性及び/又は乏しい吸収性といった薬学分野における問題に打ち勝つために用いられてきたドラッグデリバリー媒体の一つのクラスは、2,5−ジケトピペラジンである。2,5−ジケトピペラジンは、下記に示される一般式1の化合物により表され、E及びEは独立してNであり、又はより具体的にはNHである。他の実施態様において、E及び/又はEは独立して酸素原子又は窒素原子であり、E及びEの置換基のひとつが酸素原子であり他方が窒素原子である場合、化学式は置換類似ジケトモルフォリンとなり、E及びEの両方が酸素原子である場合、化学式は置換類似ジケトジオキサンとなる。
【化1】

【0031】
これらの2,5−ジケトピペラジンは、ドラッグデリバリーにおいて有用であることが示されてきた。特に、酸性のR及びR基を有するものであり、例えば、米国特許第5,352,461号(発明の名称“Self Assembling Diketopiperazine Drug Delivery System”);米国特許第5,503,852号(発明の名称“Method For Making Self−Assembling Diketopiperazine Drug Delivery System”);米国特許第6,071,497号(発明の名称“Microparticles For Lung Delivery Comprising Diketopiperazine”);及び米国特許第6,331,318号(発明の名称“Carbon−Substituted Diketopiperazine Delivery System”)に記載される(ジケトピペラジン及びジケトピペラジン介在のドラッグデリバリーに関して教示するすべてに対して全体において参照により本明細書に取り込まれる)。ジケトピペラジンは、薬物又は微粒子を取り込む微粒子に形成され得、それには薬物が吸収され得る。薬物とジケトピペラジンとの組み合わせは、改善された薬物安定性及び/又は吸収特性をもたらし得る。これらの微粒子は、種々の投与ルートで投与され得る。乾燥粉末として、これらの微粒子は、肺を含む呼吸器系の特定の領域に吸入によって送達され得る。
【0032】
このような微粒子は典型的には、遊離酸(又は遊離塩基)のpHベースの沈殿により得られ、凝集された結晶性プレートからなる自己集合された微粒子となる。粒子の安定性は、DKP溶液中の少量のポリソルベート−80といった界面活性剤により改善され得、粒子が沈殿する(米国特許出願2007/00593873号明細書(発明の名称“Method of drug formulation based on increasing the affinity of crystalline microparticle surfaces for active agents”)(DKP微粒子及び乾燥粉末の形成及び包含に関して教示するすべてに対して全体において参照により本明細書に取り込まれる)を参照)。最終的には溶媒は除去されて乾燥粉末が得られ得る。溶媒除去の適切な方法は、凍結乾燥及び噴霧乾燥(例えば、米国特許出願2007/0196503号明細書(発明の名称“A method for improving the pharmaceutic properties of microparticles comprising diketopiperazine and an active agent”及び米国特許第6,444,226号(発明の名称“Purification and stabilization of peptide and protein pharmaceutical agents”)(DKP微粒子及び乾燥粉末の形成及び包含に関して教示するすべてに対して全体において参照により本明細書に取り込まれる)を参照)を含む。本明細書において開示される微粒子は、DKPの塩からなる微粒子とは異なる。このような粒子は典型的には、噴霧乾燥により形成(乾燥されるとは反対である)され、非結晶性塩(遊離酸又は遊離塩基とは反対である)の球体及び/又は崩壊性球体となる。それらは化学的、物理的、及び形態学的に異なるものである。本開示は、遊離酸又は溶解されたアニオンとして理解されるFDKPに言及する。
【0033】
ジケトピペラジンの合成方法は、例えば、Katchalski,et al.,J.Amer.Chem.Soc.68,879−880(1946)、及びKopple,et al.,J.Org.Chem.33(2),862−864(1968)に記載される(それらの全体において参照により本明細書に取り込まれる)。2,5−ジケト−3,6−ジ(アミノブチル)ピペラジン(Katchalski et al、リシン無水物としてこれを参照)はまた、Kopple法と同様に溶融フェノール中のN−ε−P−L−リシンの環状二量化、その後適切な試薬及びコンディションでの保護(P)−基の除去により調製され得る。例えば、CBz保護基は、酢酸中の4.3M HBrを用いて除去され得る。このルートは、好ましいものとされ得る。商業的に入手可能なスターティングマテリアルを用い、製品におけるスターティングマテリアルの立体化学を保つことが報告された反応コンディションを含み、及びすべての工程は製造のために容易にスケールアップされ得るためである。ジケトピペラジンの合成方法はまた、米国特許7,709,639号(発明の名称“Catalysis of Diketopiperazine Synthesis”)に記載される(同様のことに関して教示する事項に対して全体において参照により本明細書に取り込まれる)。
【0034】
フマリルジケトピペラジン(2,5−ジケト−3,6−ビス(N−フマリル−4−アミノブチル)ピペラジン;FDKP)は、肺への適用のための一つの好ましいジケトピペラジンである。
【化2】

【0035】
FDKPは、有用な微粒子マトリックスを提供する。酸性では低い溶解性を有するが中性又は塩基性pHでは容易に溶解するためである。これらの特性は、FDKPを結晶化させ、結晶を酸性コンディション下で微粒子を形成するように自己集合させることができる。粒子は、pHが中性である生理学的コンディション下で容易に溶解する。前述の通り、約0.5ミクロンと約10ミクロンとの間の直径を有する微粒子は、肺に到達し得、生体バリアのほとんどを良好に通過する。このサイズ範囲の粒子は、FDKPから容易に調製され得る。
【0036】
FDKPは、ジケトピペラジン環において2つの不斉中心を有する。FDKPは、ジケトピペラジンの中心“環”に関連した側鎖のアレンジメントによって“シス−FDKP”及び“トランス−FDKP”として同定される幾何異性体の混合物として製造される。R,R及びS,Sエナンチオマーは、ジケトピペラジン環(下記A及びB)の同平面サイドから保護するプロペニル(アミドブチル)“サイドアーム(side arms)”を有し、シス異性体として言及される。一方、R,S化合物は、ジケトピペラジン環(下記C)の反対の平面サイドから保護する“サイドアーム(side arms)”を有し、トランス異性体として言及される。
【化3】

【0037】
米国特許第7,464,706号(発明の名称“Unit Dose Cartridge and Dry Powder Inhaler”)(同様のことに関して教示する事項に対して全体において参照により本明細書に取り込まれる)に開示された、MEDTONE(登録商標)吸入器といった中程度の効率性を有する吸入器を用いてRF/fillにより測定された、許容可能な空気力学的パフォーマンスを有するFDKP微粒子粉末は、約45%から約65%の範囲の含量のトランス異性体を有するFDKPから製造されてきた。この範囲の含量の異性体を有する粒子はまた、米国特許出願第12/484,125号(発明の名称“A Dry Powder Inhaler and System for Drug Delivery”、出願日:2009年6月12日、及び米国特許出願第12/717,884号(発明の名称“Improved Dry Powder Drug Delivery System”、出願日:2010年3月4日)(同様のことに関して教示する事項に対して全体において参照により本明細書に取り込まれる)に開示されるように、高い効率性を有する吸入器で良好なパフォーマンスを示す。65%以上のトランス−FDKPを含有する微粒子を含む粉末は、より低く変化しやすいRF/fillを有する傾向ある(図1)。FDKPのトランス異性体を多く含む微粒子は、変化した形態を有し、また処理するのが困難な粘性懸濁を引き起こす。
【0038】
図1に報告されるコンディションに相当するコンディション下で行われた他の実験において、約95%とトランス含量の多いFDKPとインスリンとから作られた微粒子では、約24%のRF/fillがもたらされた。一方で、同じインスリン含量で約59%の含量のトランス異性体を有するコントロールサンプルでは、約49−52%のRF/fillがもたらされた(データを示さず)。したがって、約45%から約65%の含量のトランス異性体を有するFDKP微粒子粉末は、許容可能な空気力学的特性を有する粉末を提供する。他の実施態様において、FDKPトランス異性体含量は、約50%から約65%、約52%から約62%、又は約53%から約63%の範囲である(図1参照)。
【0039】
前述に基づき、約45%から約65%の範囲内の含量のトランス異性体を有する微粒子粉末を作るのが望ましい。したがって、本開示は、トランス異性体含量がFDKP微粒子の空気力学的パフォーマンスに影響を与えるであろうこと(それは予想されていなかった)を解明する。しかしながら、改善された整合性(consistency)はFDKP微粒子を作るために用いられたFDKPの異性体含量を注意深く制御することにより得られ得ることが発見された。図1において、実線の曲線は予測RF/fillを表し、破線の曲線は適切なRF/fillスコアを得る片側下側95%信頼限界を表す。縦の破線は、本明細書で開示される典型的な一実施態様に対するトランス異性体含量の限界を提供する。
【0040】
FDKPシス/トランス異性体比は、図2で示される製造工程の間に確立される。図2は、約45%から約65%の含量のトランス異性体を有するFDKPを作るために制御され得る合成スキームにおける工程を示す。合成スキームにおいて、ターゲットされる又は所望される異性体比を得るために調節され得るFDKPの合成の間、いくつかのパラメータ及び/又はけん化及び再結晶化を含む反応工程が存在する。例えば、温度、反応時間、及び用いられる溶媒又は共溶媒のタイプを含む、反応の特定のパラメータは、所望の又はターゲットとされたトランス異性体含量を有する製品を作るために制御され得る。
【0041】
FDKPトランス異性体含量の範囲の下限の制御
【0042】
トランス異性体含量の範囲の下限は、DKP環を強い塩基にさらすことで制御される。一つの製造工程において、エチル保護基は、水酸化ナトリウムでけん化することにより除去される。これらの塩基性コンディションはまた、異性体が過度にあるか否かにかかわらず、下記で示されるような異性体間で環エピマー化を促進する。例えば、例として95%のトランス異性体からなるスターティング化合物を含む反応に塩基を加えることは、シス及びトランス異性体のおよそ50/50の含量の混合物からなるFDKPマテリアルを生成し得る(図3)。塩基性のpHに加えて、他のファクターもまた、トランス異性体含量の形成の調節に寄与し得、それは、溶媒及び共溶媒の濃度、曝露の時間、並びに反応温度を含む。
【化4】

【0043】
FDKPトランス異性体含量の範囲の上限の制御
【0044】
異性体間での溶解性の違いは、FDKP異性体含量に影響を与える。例えば、FDKPは、トリフルオロ酢酸(TFA)及び氷酢酸(GAA)から再結晶化され得る。トランスFDKPは、この溶媒系においてはシスFDKPよりも溶解性が低い。したがって、溶解性の低いトランス異性体の選択的沈殿を起こしやすいコンディションは、最終生成物のトランス異性体含量を上げるために用いられ得る。このようなコンディションは、再結晶化時間の短縮、低温での逆溶媒添加、及び/又はトリフルオロ酢酸−氷酢酸(TFA−GAA)混合物の早急な冷却を含む(図4)。このような方法によりトランス異性体含量を上げることはまた、シス異性体含量の多いFDKPの残余溶液をもたらすと理解されるだろう。
【表1】

【0045】
約45%から約65%の範囲の含量の異性体を有する微粒子を提供することは、有利な空気力学的特性を有する微粒子をもたらす。
【0046】
活性剤の選定及び取り込み
【0047】
本明細書で記載される微粒子が所望の異性体含量を維持する限り、それらは肺への送達及び/又は薬物吸収に有利である他の付加的な特性を採用し得る。米国特許第6,428,771号(発明の名称“Method for Drug Delivery to the Pulmonary System”)は、肺へのDKP粒子送達を開示し、同様のことに関して教示する事項に対して全体において参照により本明細書に取り込まれる。米国特許第6,444,226号(発明の名称“Purification and Stabilization of Peptide and Protein Pharmaceutical Agents”)は、微粒子表面に薬物を吸収する有利な方法を開示し、同様のことに関して教示する事項に対して全体において参照により本明細書に取り込まれる。米国特許出願第11/532,063号(発明の名称“Method of Drug Formulation based on Increasing the Affinity of Crystalline Microparticle Surfaces for Active Agents”)(同様のことに関して教示する事項に対して全体において参照により本明細書に取り込まれる)に開示されるように、微粒子表面の特性は、所望の特性を得るためにコントロールされ得る。米国特許出願第11/532,065号(発明の名称“Method of Drug Formation based on Increasing the Affinity of Active Agents for Crystalline Microparticle Surfaces”)は、微粒子への活性剤の吸収を促進させるための方法を開示する。米国特許出願第11/532,065号は、同様のことに関して教示する事項に対して全体において参照により本明細書に取り込まれる。
【0048】
本明細書に記載される微粒子は、1又は2以上の活性剤を含み得る。本明細書において用いられるように、“活性剤”(“薬物”と同義で用いられる)は、薬学的物質を意味し、低分子薬物、生物学的及び生物活性的薬剤を含む。活性剤は、自然発生的なもの、リコンビナント、又は合成起源のものでもよく、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、核酸、有機高分子、合成有機化合物、ポリサッカライド、その他の糖、脂肪酸、脂質、抗体、及びそれらのフラグメントを含み、限定されることなく、ヒト化若しくはキメラ抗体、F(ab)、F(ab)、単独の単鎖抗体若しくは他のポリペプチドに結合している単鎖抗体、癌抗原に対する治療的若しくは診断的モノクローナル抗体を含む。活性剤は、血管作動剤、神経活性剤、ホルモン、抗凝固剤、免疫調節剤、細胞毒性剤、抗菌剤、抗ウイルス剤、抗原、感染性因子、炎症性メディエータ、ホルモン、及び細胞表面抗原といった、種々の生物学的活性及びクラスに属し得る。より具体的には、活性剤は、限定されることなく、サイトカイン、リポカイン、エンケファリン、アルキン、シクロスポリン、抗−IL−8抗体、ABX−IL−8を含むIL−8アンタゴニスト、PG−12を含むプロスタグランディン、LY29311を含むLTB受容体ブロッカー、BIIL284及びCP105696、スマトリプタン及びパルミトオレエートといったトリプタン、インスリン及びその類似体、成長ホルモン及びその類似体、副甲状腺ホルモン(PTH)及びその類似体、副甲状腺ホルモン関連ペプチド(PTHrP)、グレリン、オベスタチン、エンテロスタチン、顆粒球単球コロニー刺激因子(GM−CSF)、アミリン、アミリン類似体、グルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)、テキサスレッド、クロピドグレル、PPACK(D−フェニルアラニル−L−プロリル−L−アルギニンクロロメチルケトン)、オキシントモジュリン(OXM)、ペプチドYY(3−36)(PYY)、アディポネクチン、コレシストキニン(CCK)、セクレチン、ガストリン、グルカゴン、モチリン、ソマトスタチン、脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)、心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)、IGF−1、成長ホルモン放出因子(GHRF)、インテグリンβ−4前駆体(ITB4)受容体アンタゴニスト、ノシセプチン、ノシスタチン、オルファニンFQ2、カルシトニン、CGRP、アンジオテンシン、サブスタンスP、ニューロキニンA、膵臓ポリペプチド、ニューロペプチドY、デルタ睡眠誘発ペプチド、並びに血管作用性小腸ペプチドを含み得る。
【0049】
45%と65%の間の含量のトランス異性体を有するFDKPから形成される微粒子において送達される薬物含量は、典型的には0.01%以上である。一実施態様において、前述の含量のトランス異性体を有する微粒子で送達される薬物含量は、約0.01%から約20%の範囲であり得、それは典型的にはインスリンといったペプチドである。例えば、薬物がインスリンである場合、本微粒子は典型的には3−4U/mg(およそ10−15%)のインスリンを含む。ある実施態様において、微粒子の薬物含量は、送達される薬物の形態及びサイズに依存して変化し得る。
【0050】
微粒子の製造
【0051】
一実施態様において、約45%から約65%の含量のトランス異性体及びインスリンを含有するFDKP微粒子を製造するために用いられ得る製造プロセスが本明細書に開示される。
【0052】
図5は、インスリンを含有する本FDKP微粒子を作るための製造プロセスの概略図を示す。要約すると、デュアルフィード高せん断ミキサー(例えば、米国仮特許出願第61/257,311号(出願日:2009年11月2日)に開示され、それはすべてにおいて参照により本明細書に取り込まれる)を用いて、約16℃±約2℃で等量の約10.5wt%の酢酸と約2.5wt%のFDKP溶液とを(表2及び3)、0.001−inオリフィスで、2000psiで供することができる。沈殿物を約等量及び約同温の脱イオン(DI)水容器に収集し得る。得られた懸濁液は、約0.8%の固形分を含む。沈殿物を収集し、タンジェント流ろ過により洗浄し得る。沈殿物をまず約4%の固形分に濃縮し、その後脱イオン水で洗浄し得る。懸濁液を最終的にFDKPの初期質量に基づき約10%の固形分に濃縮し得る。濃縮された懸濁液については、オーブン乾燥法により固体含量を分析し得る。
【0053】
濃縮されたインスリンのストック液は、インスリン1に対して約2wt%酢酸9を用いて調製され得る。インスリンのストックは、重量測定法で懸濁液に添加されて、約11.4wt%の濃度のものが得られ得る。インスリン含有懸濁液は、少なくとも約15分間混合され得、その後、最初のpH約3.5からpH約4.5に約14−約15wt%アンモニア水で調節され得る。懸濁液は、例えば米国仮特許出願第61/257,385号(出願日:2009年11月2日)(全体において参照により本明細書に取り込まれる)で開示されるような冷凍製粒機を用いてペレットを形成するように液体窒素中で急速冷凍され得、約45%から約65%の間のある含量%のトランス異性体を有するバルクのインスリン含有FDKPを作るためにけん化され得る。ブランクのFDKP微粒子は、インスリン負荷及びpH調節工程を互いに差し引いて製造され得る。
【表2】


【表3】

【0054】
本明細書で用いられるように、“溶媒”は、活性剤及び微粒子が“浸かっている(bath)”液体メディウムを意味する。すべての成分が溶液中にあることを要するとは理解されるべきではない。実際、多くの場合において、微粒子が懸濁されている液体メディウムを意味するように用いられ得る。
【0055】
前述の開示より明白であるように、本明細書に開示される態様の微粒子は、多くの異なる形態をとり、多くの異なる薬物又は活性剤を取り込むことができる。しかしながら、これらの態様の各々の一般的な属性は、形成された微粒子が約45%から約65%の含量のトランス異性体を有するということである。
【実施例】
【0056】
下記の実施例は、開示された微粒子の実施態様を説明するために含まれる。本技術分野における当業者により、下記の実施例に開示される技術が、本開示の実施において良好に機能するように発明者により発見された技術を表し、したがってその実施のために好ましい形態を構成するように考慮され得ることが理解されるべきである。しかしながら、本技術分野における当業者であれば、本開示を踏まえて、多くの変更が開示された特定の実施態様において作られ得ることを理解し、さらに、本発明の範囲から逸脱することなく同様又は類似の結果を得るべきである。
【0057】
(実施例1)
I.トランス異性体含量とRF/fillとの間の関係
【0058】
微粒子は、FDKP及びインスリンから製造された。溶液を形成するためにFDKPをNHOH水に溶解した。この溶液の供給ストリームは、微粒子の水性懸濁液を形成するために高せん断ミキサーにおいてHOAc溶液ストリームと組み合わされた。
【0059】
FDKP供給溶液は、約2.5wt%FDKP、約1.6wt%濃縮NHOH(約28−約30wt%NH)、及び約0.05wt%ポリソルベート80により調製された。酢酸供給溶液は、約10.5wt%GAA及び約0.05wt%ポリソルベート80で調製された。両方の供給溶液は、使用前に約0.2μmの膜を用いてろ過した。
【0060】
等量(質量による)の各供給溶液を、#5オリフィス(0.0011sq.inch)を備えたDUAL−FEED SONOLATOR(登録商標)で汲み上げた。負圧ポンプを各供給ストリームの同じ流速に対して50%で設定し、供給圧力は約2000psiであった。受容管は、各々の供給溶液の質量と同量の脱イオン(DI)水を含んでいた(例えば、4kgのFDKP供給溶液及び4kgのHOAc供給溶液が、SONOLATOR(登録商標)で4kgのDI水を含む受容管に汲み上げらた)。
【0061】
得られた懸濁液を濃縮し、0.2mPES膜を用いてタンジェント流ろ過により洗浄した。懸濁液をまず約4%の固形分に濃縮し、その後DI水で透析ろ過し、最後に約16%の固形分に濃縮した。洗浄された懸濁液の実際の固形分割合は、“乾燥減量”により決定した。
【0062】
DI水中に約2wt%HOAcを含む溶媒において約10wt%インスリン(未処理)を含有するインスリンストック溶液を調製し、滅菌ろ過した。ストック溶液を使用前に0.22μmのフィルターでろ過した。懸濁液の固体含量に基づき、適切な量のストック溶液を混合された懸濁液に加えた。得られた微粒子/インスリン混合物をその後、水酸化アンモニウム溶液を用いてpH約3.6からpH約4.5に調節した。
【0063】
微粒子/インスリン懸濁液をその後、液体窒素による急速冷凍によってペレット化(低温製粒)した。アイスペレットを凍結乾燥させ、乾燥粉末を製造した。
【0064】
バルク粉末の1回量における吸入性画分(RF/fill)は、空気力学的微粒子サイズ分布の測定値であり、アンダーソンカスケードインパクタで試験することにより決定される。RF/fill値を得るためには、カートリッジをバルク粉末で充填し、30L/minでMEDTONE(登録商標)吸入器で噴射する。各々の吸入器ステージで収集された粉末の重量を測定し、収集されたトータルの粉末をカートリッジに充填されたトータル量に標準化する。したがって、RF/fillは、カートリッジに充填された粉末により分割された吸入性画分を表すインパクタのステージにおいて収集された粉末である。
【0065】
図1に示されるように、RF/fillとして測定された許容可能な空気力学的パフォーマンスを有するFDKP粉末は、最低45%のトランス異性体含量のFDKPより作られた(図1)。65%以上のトランス−FDKPを含有する粉末は、より低くかつより変化しやすいRF/fillを有する傾向にあった。
【0066】
試験は、有用な空気力学的特性を有するトランス異性体含量の範囲を決定した。次のセクションは、特定の異性体含量を作り得る加工コンディションを評価するために行われた実験を記述する。
【0067】
II.けん化溶媒
【0068】
FDKPトランス異性体含量におけるけん化コンディションの影響(もしあるならば)を決定するために実験を行った(図2)。FDKPジエチルエステル(化合物004)及び590mLの反応溶媒の混合物(表5を参照)を約57℃に加熱した。反応温度が安定化した後、約50%NaOH溶液を約60分間以上滴下ロートで滴下した。NaOH添加が終わった後、約30分間反応を維持させ、その後、未反応の固体を除去するためにろ過した。ろ液をpH約5の酢酸で酸性化し、得られた固体をろ過により分離し、水及びアセトンで洗浄し、真空オーブンで乾燥させ、シス及びトランス異性体含量を決定するためにHPLCで分析した。
【0069】
そこで、水性(表4、A)から有機性(表4、E)の範囲の5つの異なる溶媒系を評価した。概して、表4のデータは、実験A、B、及びCで用いられた溶媒系が許容可能な含量のトランス異性体を有するFDKPをもたらすことを示した。
【表4】

【0070】
III.再結晶化コンディション
【0071】
FDKPは、TFA(溶媒)/GAA(逆溶媒)混合物から再結晶化され得る(図2;工程6)。制御されたプロセスのパラメータは、この再結晶化プロセス及びFDKP異性体含量への影響を特徴づけるように評価された。概して、高収率での再結晶化反応はまた、FDKPに所望のトランス異性体含量をもたらした。低収率の再結晶化反応では、トランス異性体含量の上昇がみられた。シス異性は再結晶化溶媒系において、より高い溶解性を有するためである。
【0072】
反応器に粗FDKP(約75g)及びTFA(約250mL)を入れ、撹拌を開始した。懸濁液を加熱環流し(約80℃から約85℃)、約10分間又はすべての固体が溶解するまで維持した。混合物を約60℃未満に冷却した。氷酢酸(約375mL)を溶液に加えた。混合物を冷却し、約10℃から約20℃に最低約6時間維持した。沈殿生成物をろ過し、GAA(3×約100mL)、アセトン(3×約100mL)、及び水(1×約100mL)で洗浄した。生成物を約12時間から約18時間、真空下(約22−約25in.Hg)にて約55℃で乾燥させた。
【0073】
最初に、溶媒量、逆溶媒量、結晶化時間、及び結晶化温度を含む4つのファクターを試験した。約2.68mL/g又は約3.34mL/gのFDKPの溶媒量は、FDKPの許容可能なトランス異性体%をもたらした。およそ6.68mL溶媒/gのFDKPでは、許容不可能な高いトランス異性体含量がもたらされた。逆溶媒の量は、5.0mL/gのFDKPまでFDKPトランス異性体含量%にほとんど影響を及ぼさなかった。コントロールの量から逆溶媒量を低減させることで、所望の範囲以上のFDKPトランス%が実質的に作られた。
【0074】
高収率での実験において、結晶化時間は、約6時間又は24時間までFDKPトランス異性体含量%にほとんど影響を及ぼさなかった。異性体含量(FDKPのトランス異性体%)は、試験された高温(35℃)及び低温(0℃)の結晶化温度では約45%−約65%の範囲からはずれた。
【0075】
次の実験は、これらの発見を支持した。図6は、溶媒:逆溶媒比(TFA:GAA)及び結晶化温度に応じて、FDKPのトランス%として測定された、FDKP異性体含量を示す表面を表す。これらの実験において試験された範囲にわたって、FDKPトランス%の値が59−75%で変化した。データは、FDKPトランス異性体が低い溶媒比(0.43)及び高い結晶化温度(25℃)で所望の範囲内にあることを示唆する。応答表面のこの領域におけるFDKPトランス異性体%の予想値は、58−60%である。これらの観察は、25℃の結晶化温度を用いるのが有利であり得ることを示唆する。
【0076】
(実施例2)
FDKPのトランス異性体の測定
【0077】
FDKPシス/トランス異性体比は、HPLCを用いて決定された。FDKPサンプルを0.1Mギ酸アンモニウム緩衝液中で〜0.15mg/mLの濃度で調製した。サンプルを超音波にかけ、分析用のHPLCバイアルに移した。用いた注入容積は、20μLであった。下記のHPLCパラメータを用いて31.7分及び33.3分(各々シス及びトランスFDKP)のリテンションタイムが観察された。
カラム:Phenomenex LUNA Phenyl−Hexyl
粒子サイズ:3mm
カラム長:15cm
カラム内径:3.0mm
移動相A:水/トリフルオロ酢酸、1000:1(v:v)
移動相B:メタノール/テトラヒドロフラン/トリフルオロ酢酸、900:100:1(v:v:v)
注入量:20μL
流速:0.3mL/分
ランタイム:90分間
カラム温度:30±3℃
サンプル温度:8±3℃
検出器:UV254nm
【表5】

【0078】
(実施例3)
容積メジアン幾何学径(VMGD)特性による放出された製剤の幾何学的粒子サイズ分析
【0079】
乾燥粉末吸入器から放出された乾燥粉末製剤のレーザー回折は、粉末に関する細分化のレベルを特徴づけるために用いられる通常の方法である。該方法は、工業的に標準的なインパクション方法においてもたらされる空気力学径よりもむしろ幾何学径の測定値を示唆する。典型的には、放出された粉末の幾何学的サイズは、メジアン粒子サイズ、VMGDにより特徴づけられた容積分布を含む。重要なことには、放出された粒子の幾何学的サイズは、インパクション法により提供される空気力学的サイズに比して、高い分解能で観察される。より小さいサイズが望ましく、肺の管に送達された個々の粒子の、より大きな可能性をもたらす。したがって、吸入器の細分化における違い及び最終的なパフォーマンスは、回折によりより容易に改善され得る。これらの実験において、吸入器は、現実の患者の呼吸能力に類似した圧力にてレーザー回折で試験され、粉末製剤を細分化する吸入システムの効率を決定する。特に、製剤は、成分を付与された活性インスリンを含む及び含まない粘着性のジケトピペラジン粉末を含んでいた。これらの粉末製剤は、特徴的な表面積、異性体比、及びCarr指数を有していた。表6では、VMDG、及び試験の間の容器の放出効率を報告している。FDKP粉末は、およそ50のCarr指数を有し、TI粉末はおよそ40のCarr指数を有している。
【表6】

【0080】
表6のデータは、MEDTONE(登録商標)吸入器システムにおいてDPI2として特定された吸入器における粉末細分化の改善を示す。14−56m/gの範囲の表面積を有するジケトピペラジン製剤は、85%を超える放出効率及び7ミクロン未満のVMGDを示した。同様に、45−66%のトランスの範囲の異性体比を有する製剤は、従前装置(predicate device)を超えた改善されたパフォーマンスを示した。しかしながら、66%のトランス含量でより効率的な吸入器を用いた場合でも、本明細書にて開示される範囲から外れたトランス異性体含量の通り、空気力学的パフォーマンスの落ち込み(減少)を示す、カートリッジ放出の減少がみられた、といういうことは注目するものに値する。最後に、Carr指数40−50で特徴づけられる製剤での吸入器システムのパフォーマンスは、同様に従前装置(predicate device)を超えた改善を示した。すべての場合において、報告されたVMGD値は、7ミクロン未満であった。
【0081】
他に示唆のない限り、本明細書及び特許請求の範囲において用いられた成分の量、分子量といった特性、反応条件等を表現するすべての数字は、すべての場合において、用語“約”により変形されるように理解されるべきである。したがって、反対に示唆されない限り、本明細書及び添付の特許請求の範囲において用いられた数字のパラメータは、本発明により得られようとされる所望の特性に基づき変化し得る近似値である。少なくとも及び特許請求の範囲の範囲への均等物の適用を制限しようとすることなく、各々の数字のパラメータは少なくとも、報告される有効数字の数字を考慮して、及び通常の四捨五入の技術を適用することにより、理解されるべきである。本発明の広い範囲に記載された数字の範囲及びパラメータが近似値であるにもかかわらず、特定の実施例において記載された数値は、可能な限り正確に報告される。しかしながら、いかなる数値も本質的には、各々の試験測定において見出される標準偏差に起因する誤差を必然的に含む。
【0082】
本発明を記述する文脈において(特に、特許請求の範囲の文脈において)用いられる“ひとつの(a)”、“ひとつの(an)”、“該(the)”、及び同様の指示語は、本明細書において他に示唆のない限り、又は文脈により明確に否定されない限り、単数及び複数をカバーするように理解されるべきである。本明細書における値の範囲の記述は、単に範囲に含まれる各々の独立した値を個別に参照する省略方法として提供されるように意図されたにすぎない。本明細書において他に示唆のない限り、各々の個々の値は、それがまるで本明細書において個々に列挙されるように、本明細書に包含される。本明細書に記載されるすべての方法は、本明細書において他に示唆のない限り、又は文脈により明確に否定されない限り、適切ないかなる方法においても行われ得る。本明細書において提供されるいずれかの及びすべての実施例、又は典型的な言語(例えば、“といった(such as)”)の使用は、単に本発明の理解を容易にするようにしたにすぎず、他にクレームされた本発明の範囲における限定をもたらさない。本明細書におけるいかなる言語も、本発明の実施に本質的であるクレームされていないいかなる要素をも示唆するように理解されるべきではない。
【0083】
特許請求の範囲において用いられる“又は(or)”は、本明細書において他のもののみを言及するように明確に示唆されない限り、又は他のものが互いに排他的でない限り、開示が他のもの及び“及び/又は(and/or)”のみに言及する定義を支持するものではあるが、“及び/又は(and/or)”を意味するように用いられる。
【0084】
本明細書に開示される本発明の代替要素又は態様の集団は、限定されて理解されるべきではない。各々の集団要素は、個々に又は該集団の他の要素若しくは本明細書においてみられる他の要素との組み合わせにて言及され及びクレームされ得る。集団の1若しくは2以上の要素は、利便性及び/若しくは特許性を理由に集団に包含され得、又は集団から削除され得ることが予測される。こうした包含又は削除が生じる場合、本明細書は、変形された集団を含むと考えられ、その結果、添付された特許請求の範囲において用いられるすべてのマーカッシュの集団の明細書を充足する。
【0085】
本発明の好ましい態様は、本発明を実施するために本発明者らに知られたベストモードを含んで本明細書に記載される。むろん、これらの好ましい態様における変形は、前述の記載を読むことにおいて本技術分野の当業者に明白となるだろう。本発明者らは、当業者が必要に応じてこのような変形を用いることを期待し、本発明者らは、本発明に対して本明細書に具体的に記載されたものよりもむしろ他の方法で実施されることを意図する。したがって、本発明は、適用法律により許容されるように本明細書に添付された特許請求の範囲において列挙される対象物のすべての変形物及び均等物を含む。さらに、すべての可能性のある変形における上述の要素のいかなる組み合わせも、本明細書において他に示唆のない限り、又は文脈により明確に否定されない限り、本発明により包含される。
【0086】
本明細書に開示される特定の態様は、言語からなる又は本質的に言語からなる特許請求の範囲においてさらに限定され得る。特許請求の範囲において用いられる場合、補正ごとにファイルされ又は加えられるとしても、推移(transition)の表現である“〜からなる(consisting of)”は、特許請求の範囲に特定されていない要素、工程、又は成分を排除する。推移(transition)の表現である“本質的に〜からなる(consisting essentially of)”は、特許請求の範囲の範囲を、特定されたマテリアル又は工程及び基本的かつ新しい特徴に実質的に影響を与えないものに限定する。クレームされた本発明の態様は、本明細書において本質的に又は明確に記載され及び可能にされる。
【0087】
さらに、この明細書の至るところに特許及び刊行物が多数参照されてきた。上述の参照及び刊行物の各々は、それらの全体において本明細書に個々に包含される。
【0088】
さらに、本明細書において開示される本発明の態様は、本発明の原理の実例となるということが理解されるべきである。用いられ得る他の変形は、本発明の範囲内にある。このように、実施例により、限定されることなく、本発明の他の構成が、本明細書における教示に従って用いられ得る。したがって、本発明は、正確に示され及び記載されるものに限定されない。
【0089】
(関連する出願)
本出願は、米国仮特許出願61/186,779(出願日2009年6月12日)に基づき、35USC§119(e)に基づく優先権主張の利益を有する。これらの出願各々の全体の内容は、本明細書に参照により取り込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
約45%から約65%の含量のトランス異性体を含有する、フマリルジケトピペラジン(FDKP)組成物。
【請求項2】
前記トランス異性体の含量は、約50%から約65%である、
ことを特徴とする請求項1に記載のFDKP組成物。
【請求項3】
前記トランス異性体の含量は、約53%から約63%である、
ことを特徴とする請求項1に記載のFDKP組成物。
【請求項4】
請求項1に記載のFDKP組成物を含有する、フマリルジケトピペラジン(FDKP)微粒子。
【請求項5】
前記トランス異性体の含量は、約50%から約65%である、
ことを特徴とする請求項4に記載のFDKP微粒子。
【請求項6】
前記トランス異性体の含量は、約53%から約63%である、
ことを特徴とする請求項4に記載のFDKP微粒子。
【請求項7】
さらに薬物又は活性剤を含有する、請求項4に記載のFDKP微粒子。
【請求項8】
前記薬物又は活性剤は、ペプチド又はタンパク質である、
ことを特徴とする請求項7に記載のFDKP微粒子。
【請求項9】
前記ペプチドは、内分泌ホルモンである、
ことを特徴とする請求項8に記載のFDKP微粒子。
【請求項10】
前記内分泌ホルモンは、インスリン、副甲状腺ホルモン、カルシトニン、グルカゴン、グルカゴン様ペプチド−1、オキシントモジュリン、前記内分泌ホルモンの類似体又は活性フラグメントである、
ことを特徴とする請求項9に記載のFDKP微粒子。
【請求項11】
薬物は、微粒子の0.01wt%よりも多い量で存在する、
ことを特徴とする請求項4に記載のFDKP微粒子。
【請求項12】
請求項4に記載のFDKP微粒子を含有する、乾燥粉末。
【請求項13】
請求項7に記載のFDKP微粒子を含有する、乾燥粉末。
【請求項14】
内分泌関連疾患又は不調を治療する方法であって、
約45%から約65%の含量のFDKPトランス異性体及び前記疾患又は不調を治療するのに適した内分泌ホルモンを含有するフマリルジケトピペラジン(FDKP)微粒子を含有する乾燥粉末製剤を、必要に応じてヒトに投与することを含む方法。
【請求項15】
内分泌ホルモンは、インスリン、副甲状腺ホルモン、カルシトニン、グルカゴン、グルカゴン様ペプチド−1、オキシントモジュリン、前記内分泌ホルモンの類似体である、
ことを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
内分泌関連疾患は、糖尿病である、
ことを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項17】
a)約45%から約65%の含量のFDKPトランス異性体を有するFDKP化合物を合成することと、
b)FDKP溶液を形成するように、塩基性pHを有する溶液にFDKP化合物を溶解することと、
c)揮発性酸の溶液を供給することと、
d)懸濁液において前記微粒子を作るように、高せん断ミキサーで溶液をともに混合することと、
を含む、乾燥粉末としての肺投与に適した微粒子を製造する方法。
【請求項18】
さらにFDKPのトランス異性体含量を決定することを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
FDKPのトランス異性体含量を決定する工程は、高速液体クロマトグラフィーを用いて行われる、
ことを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項20】
さらに薬物を含有する溶液と前記微粒子とを混合することを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
薬物は、内分泌ホルモンである、
ことを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項22】
薬物は、インスリン、副甲状腺ホルモン、カルシトニン、グルカゴン、グルカゴン様ペプチド−1、オキシントモジュリン、又は前記薬物の類似体である、
ことを特徴とする請求項21に記載の方法。
【請求項23】
a)塩基性のpHで水と水混和性溶媒との混合物においてジケトピペラジンのエステルをけん化することと、
b)約0.4から約0.7の範囲の比率でトリフルオロ酢酸及び氷酢酸を含有する反応混合物において前記ジケトピペラジンを再結晶化することと、
を含む、約45%から約65%の含量のトランス異性体を有するジケトピペラジンを合成する方法。
【請求項24】
水混和性溶媒は、アルコール、テトラヒドロフラン、ジオキサン、及びアセトニトリルである、
ことを特徴とする請求項23に記載の方法。
【請求項25】
アルコールは、メタノール、エタノール、又はイソプロパノールである、
ことを特徴とする請求項24に記載の方法。
【請求項26】
メタノールの水:メタノール比は、1:1から約3:1の範囲である、
ことを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項27】
さらにジケトピペラジンのトランス異性体含量を決定することを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項28】
ジケトピペラジンは、式2,5−ジケト−3,6−ビス(N−X−4−アミノブチル)ピペラジンであり、
Xは、フマリル、スクシニル、マレイル、及びグルタリルからなる群より選択される、
ことを特徴とする請求項23に記載の方法。
【請求項29】
ジケトピペラジンは、2,5−ジケト−3,6−ビス(N−フマリル−4−アミノブチル)ピペラジンである、
ことを特徴とする請求項23に記載の方法。
【請求項30】
再結晶化工程における反応混合物は、約4時間又は4時間以上の期間維持される、
ことを特徴とする請求項23に記載の方法。

【図2】
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【図5】
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【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−530062(P2012−530062A)
【公表日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−515175(P2012−515175)
【出願日】平成22年6月11日(2010.6.11)
【国際出願番号】PCT/US2010/038287
【国際公開番号】WO2010/144785
【国際公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【出願人】(507302829)マンカインド コーポレ−ション (16)
【Fターム(参考)】