視認力向上支援装置
【課題】例えば覚醒度低下や居眠りに限らない運転者の状態に基づいてノイズ強度を変更させて、視認力を向上することができる視認力向上装置を提供すること。
【解決手段】運転を開始した時点では、まず、ステップ100にて、初期値の最適ノイズ強度のノイズを運転者に付加する。その後、ステップ110にて、運転適正範囲を決定する処理(運転適正範囲決定処理)を行う。次に、ステップ120にて、車両挙動をモニタして、車両挙動に応じて運転者状態の算出方法を変更する処理(車両挙動取得処理)を行う。次に、ステップ130にて、荷重分布の標準偏差から、ノイズ強度を変更する処理(運転者状態取得処理)を行う。次に、ステップ140にて、上述の様にして設定されたノイズ強度のノイズを付与する処理を行う。
【解決手段】運転を開始した時点では、まず、ステップ100にて、初期値の最適ノイズ強度のノイズを運転者に付加する。その後、ステップ110にて、運転適正範囲を決定する処理(運転適正範囲決定処理)を行う。次に、ステップ120にて、車両挙動をモニタして、車両挙動に応じて運転者状態の算出方法を変更する処理(車両挙動取得処理)を行う。次に、ステップ130にて、荷重分布の標準偏差から、ノイズ強度を変更する処理(運転者状態取得処理)を行う。次に、ステップ140にて、上述の様にして設定されたノイズ強度のノイズを付与する処理を行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、視認力向上支援装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、自車両周辺の状況に対する運転者の視覚認識能力を向上させ、周囲状況に対する反応を敏感にさせることで、不注意や見落としによる事故を未然に防ぐ視認力向上支援装置が提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
この特許文献1に開示されている視認力向上装置によれば、周辺状況、運転者状態に対応した強度のノイズを生成し、ドライバに付与する。そのため、運転者の視認力を向上させることができるようになる。
【特許文献1】特開2006−172315号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の視認力向上装置は、覚醒度低下・居眠りといったノイズそのものの知覚が困難となる運転者状態となった時点で、運転者へのノイズ強度を変更するため、ノイズの効果が期待できる程度以下に運転者状態か変化した場合には、ノイズ印加による視認力向上の支援が難しいという問題があった。
【0005】
本発明は、かかる問題に鑑みてなされたものであり、例えば覚醒度低下や居眠りに限らない運転者の状態に基づいてノイズ強度を変更させて、視認力を向上することができる視認力向上装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、確率共振(SR、Stochastic Resonance)の研究成果(人の脳における確率共振現象の実験的検証、日高ら、生体・生理シンポジウム論文集VOL.15th,P.261〜264)に着目したものである。
【0007】
生体における確率共振現象とは、感覚神経細胞に対する適度なノイズ印加によって、その感覚神経細胞における閾値以下の入力信号を検出する能力が上昇するという現象である。この確率共振現象によって、人の生体機能(例えば、知覚、調節、行為等のマクロな機能)が向上するということが実験的検証等によって明らかになっている。
【0008】
ところで、これまでに確率共振現象による効果が現れた例を見ると、低下した機能に対してノイズを付加することで機能を向上する研究結果がある(例えば、I. Hidaka, D. Nozaki, Y. Yamamoto: Functional stochastic resonance in the human brain: Noise induced sensitization of baroreflex system. Phys. Rev. Lett. 85: 3740-3743, 2000.)。
【0009】
つまり、確率共振現象は検出能力の閾値を下げる効果があるが、その効果は人間が本来持つ能力を引き出すものあるため、最大能力を発揮している状態ではその効果は小さいと考えられる。逆に捉えると、人間の能力が低下している状態では、能力を引き出せる伸びしろが大きい分、確率共振現象としての効果は大きいと考えられる。
【0010】
しかしながら、人間の能力が低下しきった状況とは、居眠りなど運転そのものが困難な状況である。従来の技術では居眠りを検知した場合にはシート振動などの覚醒手段によりドライバを覚醒させているが、居眠りに至る以前に人間の能力低下を検知し、ノイズを付与することによって、確率共鳴の効果を最大限に得ることができる。
【0011】
本発明は、上述した知見により得られたものである。以下、各請求項毎に説明する。
(1)請求項1の発明は、視認可能なノイズ強度の閾値に基づいて設定されたノイズ強度(例えば最適ノイズ強度)の視覚的ノイズを生成し、その生成した視覚的ノイズを車両運転中の運転者に対して付与することによって、運転者の視認力向上を支援する視認力向上支援装置に関するものである。
【0012】
特に本発明では、(例えば圧力センサを用いた)運転者状態取得手段によって、運転者の覚醒度低下又は居眠りに到る前の(運転者の操作能力を示す)運転者状態を取得し、対応関係記憶手段によって、運転者状態と視覚的ノイズとの対応関係を記憶する。そして、ノイズ付与態様制御手段では、運転者状態取得手段によって取得された運転者状態から、対応関係記憶手段に記憶された対応関係に基づいて、視覚的ノイズの付与態様を制御する。
【0013】
確率共鳴の効果を最大限に得るためには、運転者の車両の操作能力が低下した場合に、その状態に応じた最適なノイズ強度の視覚的ノイズを付与できることが好ましいが、上述した様に、実際に覚醒度が低下した状態や居眠りの状態になってからノイズ強度を上げても、その効果は低い。
【0014】
よって、本発明では、実際に覚醒度が低下した状態や居眠りの状態に陥る前に、運転者の操作能力が通常より低下したことを、例えばシート背もたれ部における荷重分布の変動等によって検出し、その運転者状態に対応して視覚的ノイズの付与態様を制御する。例えば、その運転者状態に対応したノイズ強度の視覚的ノイズを運転者に付与する。
【0015】
このようにすることで、運転者の操作能力が低下しても、居眠りなど運転に不可能な状態に陥る以前に、視覚的ノイズを車両の運転者に対して付与することができる。また、前述のように、能力低下時を狙ってノイズを付与することによって確率共鳴現象の効果を最大限に得ることができる。これにより、従来より一層効果的に、視認力向上を支援することができる。
【0016】
なお、対応関係記憶手段には、実際に運転者に付与する視覚的ノイズを発生させるための例えば電気的な信号(ノイズ信号)の強度等のデータが記憶されている(以下同様)。
(2)請求項2の発明は、視認可能なノイズ強度の閾値に基づいて設定されたノイズ強度(例えば最適ノイズ強度)の視覚的ノイズを生成し、その生成した視覚的ノイズを車両運転中の運転者に対して付与することによって、運転者の視認力向上を支援する視認力向上支援装置に関するものである。
【0017】
特に本発明では、運転者状態取得手段によって、運転者によって生じるシート背もたれ部における荷重分布の変動に基づいて、運転者状態を取得し、対応関係記憶手段によって、運転者状態と視覚的ノイズとの対応関係を記憶している。そして、ノイズ付与態様制御手段によって、運転者状態取得手段によって取得された運転者状態から、対応関係記憶手段に記憶された対応関係に基づいて、視覚的ノイズの付与態様を制御する。
【0018】
上述した様に、実際に覚醒度が低下した状態や居眠りの状態になってからノイズ強度を上げても、その効果は低い。よって、本発明では、運転者によって生じるシート背もたれ部における荷重分布の変動に基づいて、(覚醒度の低下や居眠り等に到る前の)運転者の操作能力が通常より低下したことを検出し、その運転者状態に対応して視覚的ノイズの付与態様を制御する。例えば、その運転者状態に対応したノイズ強度の視覚的ノイズを運転者に付与する。
【0019】
これにより、一層効果的に、視認力向上を支援することができる。
(3)請求項3の発明では、車両状態取得手段によって、車両状態を取得し、対応関係記憶手段によって、運転者状態及び車両状態と視覚的ノイズとの対応関係を記憶する。そして、ノイズ付与態様制御手段によって、運転者状態取得手段及び車両状態取得手段によって取得された運転者状態及び車両状態から、対応関係記憶手段に記憶された対応関係に基づいて、視覚的ノイズの付与態様を制御する。
【0020】
自動車内での運転者の状態を計測する上で、悪路、急カーブなどによる自動車そのものの挙動はアーチファクトとなる。そこで、本発明では、車両状態取得手段は、例えば垂直方向や水平方向の車両挙動を取得し、運転者状態取得手段による運転者状態の取得に影響を与える車両挙動がある場合には、その影響を抑えるよう計測方法等を変更する。これにより、視認力向上を支援する制御を精度良く行うことができる。
【0021】
(4)請求項4の発明では、運転者状態取得手段は、シート背もたれ部に配置された複数の圧力センサを備えている。
本発明では、シート背もたれ部に加わる圧力の重心位置を算出するために、複数(好ましくは3個以上)の圧力センサを、シート背もたれ部(例えば内部)に配置する。
【0022】
(5)請求項5の発明では、シート背もたれ部の圧力センサは、垂直方向には、座面から所定の距離をとった運転者の腰から両肩までの範囲内、水平方向には運転者の肩幅の範囲内に、少なくとも3つ以上のセンサを配置する。
【0023】
本発明では、シート背もたれ部において、運転者の荷重がかかる部分に圧力センサを配置する。この運転者の荷重がかかる部分としては、垂直方向が、座面から運転者の両肩までの高さが考えられるが、座面に近い位置に圧力センサを配置すると、圧力センサに全く荷重がかからない姿勢で運転を行う運転者や、常に圧力センサに接触した姿勢で運転を行う運転者がいると考えられるため、座面から一定の距離を取った位置に配置する。水平方向に関しては、運転者の肩幅よりも狭い範囲に圧力センサを配置する。なお、女性の平均的な肩幅でも荷重を捉えられる範囲が望ましい。
【0024】
(6)請求項6の発明では、シート背もたれ部の圧力センサの配置は、少なくとも水平方向及び垂直方向にそれぞれ2つ以上配置する。
本発明では、水平方向と垂直方向の重心位置による判定を可能にするため、少なくとも水平方向用に2箇所以上、垂直方向用に2箇所以上圧力センサを配置する。
【0025】
この配置は、運転者の荷重分布を捉えることが可能で、かつできるだけ広い範囲であることが望ましい。従って、垂直方向は座面から一定の距離を取った位置から運転者の両肩まで、水平方向は運転者の肩幅までの範囲の圧力を得るため、センサは3点以上必要になる。また、4点以上のセンサを用いる場合には、前述の範囲内に左右対称に配置することが望ましい。
【0026】
(7)請求項7の発明では、運転者状態取得手段は、複数の圧力センサから得られる荷重分布に基づいて、運転者の状態を取得する。
運転者の状態に応じて圧力センサから得られる荷重分布が変化するので、この荷重分布から運転者の状態を検出できる。
【0027】
(8)請求項8の発明では、複数の圧力センサから得られる荷重中心位置の所定時間における標準偏差に基づいて、運転者の状態を取得する。
運転者の状態の変化に伴って、シート背もたれ部に対する荷重分布は変化する。よって、例えば、この荷重分布の重心(荷重中心位置とする)を求め、その移動量によって運転者の状態を評価することができる。具体的には、例えば、一定時間内の運転者のシート背もたれ部に対する重心のばらつきを求めるため、一定時間荷重中心位置を求め、水平方向、垂直方向の荷重中心位置の標準偏差をそれぞれ求める。
【0028】
なお、後述するように、運転者の操作能力が低下すると、荷重分布の標準偏差が小さくなる傾向にある。
(9)請求項9の発明では、荷重中心位置は、各圧力センサ間の相対値から得ることを特徴とする。
【0029】
例えば、圧力センサからの出力を全センサの出力の総和で割ることによって圧力分布を正規化する。これにより、体重差やシート背もたれ部に対する姿勢の違いなどの個人間差を考慮せずに、運転者状態を取得することができる。
【0030】
(10)請求項10の発明では、ノイズ付与態様制御手段は、荷重中心位置の標準偏差が所定の第1の閾値を下回った場合には、それまで付与していた視覚的ノイズよりもノイズ強度を相対的に大きくした視覚的ノイズを付与することを特徴とする。
【0031】
本発明では、例えば運転開始時からの一定期間に、荷重中心位置の標準偏差を複数回取得し、この取得した集合に対し、一定期間以後の荷重中心位置の標準偏差が含まれるか否かによって運転者状態を判定する。
【0032】
運転者の状態は運転開始時から徐々に低下していくと考えられ、運転開始時は運転者の状態がよく、運転に適した状態であると考えられる。よって、前記集合に含まれない外れ値は運転に適さないと判断する。具体的には、運転に適した状態とは、任意に設定できる時間における荷重中心位置の標準偏差が、運転開始後から任意の期間での荷重中心位置の標準偏差の集合に含まれる範囲と考える。この範囲に含まれないもののうち、例えば範囲の下限を下回った時点を運転者の運転能力が低下した状態と判定する。
【0033】
このとき、ノイズ付与態様制御手段により、それまでに付与していた視覚的ノイズよりもノイズ強度を相対的に大きくした視覚的ノイズを付与する。これにより、視認力が向上する。
【0034】
(11)請求項11の発明では、第1の閾値は、運転適正範囲の下限とすることを特徴とする。
本発明は、第1の閾値を例示したものである。なお、運転適正範囲とは、運転に適した状態の範囲のことであり、例えば運転の際の車線中心線からのずれ(逸脱量)等に基づいて設定することができる。例えば逸脱量が所定値より小さい場合には、運転に適した状態であると考えることができる。
【0035】
(12)請求項12の発明では、運転適正範囲は、運転者が運転を開始してから所定期間における荷重中心位置の標準偏差により得られる範囲において、その中央値を中心として25%から50%の範囲とすることを特徴とする。
【0036】
本発明では、例えば運転開始時から任意の期間に、荷重中心位置の標準偏差を複数回取得し、その範囲の中央値を中心として25%から50%に当たる範囲を運転適正範囲とする。
【0037】
(13)請求項13の発明では、ノイズ付与態様制御手段は、荷重中心位置の標準偏差が運転適正範囲に当てはまる場合には、視覚的ノイズのノイズ強度を、初期設定値(デフォルト値)と同等なノイズ強度とする。
【0038】
ここでは、運転に適した状態とは、任意に設定できる時間間隔の荷重中心位置の標準偏差が運転適正範囲に含まれる範囲と考える。そこで、荷重中心位置の標準偏差が運転適正範囲内にあった時に、ノイズ強度を初期設定値に変更する。これはノイズ付与態様制御手段が、運転者の状態に即してノイズの強度を変更するのに対して、運転者状態が運転に適した状況になったために、デフォルトの値である初期設定値に戻すことを意味している。また、通常は、運転者の状態が運転に適した状況であるという判断が継続している場合には、ノイズの強度は変更しない。
【0039】
(14)請求項14の発明では、ノイズ付与態様制御手段は、荷重中心位置の標準偏差が所定の第2の閾値を上回った場合には、それまで付与していた視覚的ノイズと同じノイズ強度のノイズを付与する。但し、第2の閾値は第1の閾値より大である。
【0040】
本発明では、例えば運転開始時から任意の期間に、荷重中心位置の標準偏差を複数回取得し、例えばその範囲の第1の閾値である中央値から25%低い値から第2の閾値である中央値から25%高い値に当たる、中央値を中心とした50%の範囲を運転適正範囲とする。運転に適した状態とは、任意に設定できる時間間隔の荷重中心位置の標準偏差が運転適正範囲に含まれる範囲と考える。その集合に統計的に含まれない外れ値のうち、第2の閾値(例えば上限)を超えた場合は、座り直しなど、運転者の大きな体動が影響したものと考える。
【0041】
これらは運転者の状態の評価においてアーチファクトであることから、ノイズ付与態様制御手段は、制御対象とせずにそれまで与えていたノイズ強度に変更を与えない。
なお、運転者に座り直しがない場合においても、後述するように、荷重中心位置の標準偏差は車両挙動による影響を受ける可能性がある。この場合にも、標準偏差の値は大きくなるが上記の対処をすることによって運転者の状態の変化のみに基づいてノイズ強度を変更することができる。
【0042】
(15)請求項15の発明では、第2の閾値は、運転適正範囲の上限とする。
本発明は、第2の閾値を例示したものである。
(16)請求項16の発明では、運転者状態取得手段は、車両状態取得手段から得られる上下方向の車両挙動に応じて、荷重中心位置から標準偏差を得るための荷重分布中心のサンプル数を増減する。
【0043】
本発明は、悪路走行時のように、車両が上下方向に振動する場合に対処するものである。運転者状態は一定時間の荷重中心位置の標準偏差から求めるが、車両が上下方向に振動する場合、その値は運転者の状態にかかわらず大きくなる。このとき、車両状態取得手段において、標準偏差を求める荷重中心位置のサンプル数を増やし、車両の挙動による影響が含まれる荷重中心位置の影響を平均化することによって、挙動がある場合にも運転者状態を検出できるようにした。
【0044】
(17)請求項17の発明では、運転者状態取得手段は、車両状態取得手段から得られる左右方向の車両挙動に応じて、荷重中心位置から標準偏差を得るための荷重分布中心のサンプル数を増減する。
【0045】
本発明は、左右旋回時のように、車両に横Gがかかる場合に対処するものである。横Gがかかる場合においては、運転者の状態にかかわらず偏った荷重中心位置が得られる。このとき、車両状態取得手段において、標準偏差を求める荷重中心位置のサンプル数を増やし、横Gの影響が含まれる荷重中心位置の影響を平均化することによって、左右方向の車両挙動がある場合にも運転者状態を検出できるようにした。
【発明を実施するための最良の形態】
【0046】
次に、本発明の最良の形態(実施形態)について説明する。
a)まず、本実施形態の視認力向上支援装置の概略構成を説明する。
図1(a)に示すように、本実施形態の視認力向上支援装置1は、車両に搭載されており、ノイズ(電気的ノイズ)を生成するノイズ生成装置3と、生成したノイズを視認性ノイズとして出力するノイズ発生装置5と、運転者の状態を取得する運転者状態取得装置7と、車両の状態を取得する車両状態取得装置9と、操作スイッチ11とを備えている。
【0047】
前記ノイズ生成装置3は、後述する所定のノイズを知覚することができるノイズ強度の閾値を記憶するノイズ強度記憶部3aと、ノイズ強度記憶部3aの記憶するノイズ強度の閾値に基づいて、出力すべきノイズの最適強度(最適ノイズ強度)を設定するノイズ最適強度設定部3bと、運転者状態取得装置7や車両状態取得装置9にて取得する運転者状態及び車両状態と最適ノイズ強度との対応関係を記憶している対応関係記憶部3cと、ノイズ強度記憶部3a及びノイズ最適強度設定部3b及び対応関係記憶部3cと接続され、ノイズ生成装置3全体の制御を司る制御部3dとを備える。
【0048】
制御部3dは、運転者状態取得装置7と接続されており、取得した運転者状態に対応する最適ノイズ強度を、対応関係記憶部3cに記憶された対応関係に基づいて決定し、その決定した最適ノイズ強度のノイズを生成する。そして、その生成したノイズに応じた制御信号(駆動要求信号)をノイズ発生装置5へ出力する。
【0049】
ノイズ発生装置5は、例えば室内灯であり、この室内灯等から視覚的ノイズの重畳された光(ノイズ光)が出力(照射)されることとなる。なお、通常の室内灯として機能を果たす場合には相対的に高い輝度が必要であるが、ノイズ光の場合にはそれに比べて低い輝度で十分である。
【0050】
本実施形態のノイズ発生装置5として用いられる室内灯の具体例としては、図1(b)に示すように、運転者の頭上より前方の車室内の天井部に搭載されたものが考えられる。この室内灯は、いわゆるルームランプとしての役割を果たすものであり、このように運転者の頭上より前方の車室内の天井部に搭載されていれば、運転者に対する視覚的ノイズの付与の点で好ましい。
【0051】
b)ここで、視覚的ノイズについて説明する。
視覚認識における確率共振現象(SR)を誘起するために用いられる視覚的なノイズは、特定の周波数帯域で強い強度を示すことのないランダムな広帯域ノイズでなければならない。従って、視覚認識可能な周波数帯における視覚的なノイズのノイズ強度の周波数分布が一様であるランダムノイズや、視覚的なノイズのノイズ強度の周波数分布が視覚的なノイズの周波数に反比例する1/fノイズ等を用いることで視覚認識における確率共振現象(SR)を誘起することができる。
【0052】
なお、前述のとおり、ランダムな広域帯ノイズは、ノイズ強度が小さ過ぎたり、あるいは、入力信号の強度と無関係に閾値を超えるほど大き過ぎたりした場合、出力信号の信号雑音比を低下させることが知られており、信号出力の信号雑音比を最大化するノイズ強度が存在する。
【0053】
そこで、確率共振現象(SR)を誘起するのに適したノイズ強度のノイズ光を発生させるためには、例えば、実験等によって信号出力の信号雑音比を大きくするのに適したノイズ強度を予め求めておき、ノイズ強度記憶部3aに、この実験等によって求めたノイズ強度を最適ノイズ強度として記憶しておけばよい。
【0054】
また、最適ノイズ強度に関しては個人差があるため、その個人差を補完するため、本実施形態では、次のような対応をする。つまり、制御部3dによってノイズ発生装置5から出力するノイズ光の強度を徐々に高めていき、運転者がノイズを最初に知覚したタイミングで操作スイッチ11を操作すると、その操作タイミングにおけるノイズ光の強度がノイズ強度の閾値として決定され、ノイズ強度記憶部3aに記憶されるよう構成する。
【0055】
そして、ノイズ最適強度設定部3bは、ノイズ強度記憶部3aに記憶している閾値に対して、信号出力の信号雑音比を大きくするのに適した所定の割合のノイズ強度(例えば、上記ランダムノイズの場合は閾値の100%程度のノイズ強度、上記1/fノイズの場合は閾値の69%程度のノイズ強度)を最適ノイズ強度として設定する。なお、信号出力の信号雑音比を大きくするのに適した閾値に対するノイズ強度の割合は、実験等によって予め求めておけばよい。また、閾値に対するノイズ強度の割合を変更可能に構成してもよい。
【0056】
c)次に、運転者状態取得装置7について説明する。
図2に示すように、運転者状態取得装置7は、運転席のシート背もたれ部13の内部に配置した複数の圧力センサ15を備えており、運転者の着座状況を検出する。
【0057】
この圧力センサ15は、運転者がシート背もたれ部13に確実に接触する部分に配置する。具体的には、図3(a)に示すように、垂直方向は運転者の腰(詳しくは座面より所定値(例えば24cm程度)上の位置)から運転者の肩の高さまでの範囲、図3(b)に示すように、水平方向は運転者の肩幅以内の範囲である。
【0058】
圧力センサ15の配置方法としては、例えば前記図2(a)に示すように、シート中心付近に、十字に圧力センサ15を配置する方法、図2(b)に示すように、肩部を取り出すようT字に配置する方法、図2(c)に示すように、長方形型に配置する方法などが考えられる。
【0059】
また、どのような体型の運転者に対しても確実に運転者状態の取得を行うためには、多くの圧力センサ15を配置することが望ましい。その配置方法としては、例えば図2(d)に示すような碁盤目状の配置が挙げられるが、更に密度を大きくするためには、図2(f)に示すような配置が望ましい。
【0060】
更に、本実施形態では、後述するように、運転者の身長、体型などに依存しないようにするために、着座状態の取得方法としては、シート背もたれ部13に対する圧力分布の標準偏差を採用し、各圧力センサ15から得られる値は、相対値に置き換える。
【0061】
d)次に、本実施形態における処理を説明する。
(1)まず、図4に全体の処理の流れを示す。
運転を開始した時点では、まず、ステップ(S)100にて、前述の(初期値の)最適ノイズ強度の視覚的ノイズを運転者に付加する。
【0062】
その後、ステップ110にて、後述するように、運転適正範囲を決定する処理(運転適正範囲決定処理)を行う。なお、本実施形態では、運転者状態がその範囲に含まれるか否かによりノイズの仕様を変更する。
【0063】
次に、ステップ120にて、後述するように、車両挙動をモニタして、車両挙動に応じて運転者状態の算出方法を変更する処理(車両挙動取得処理)を行う。
次に、ステップ130にて、後述するように、荷重分布の標準偏差から、ノイズ強度を変更する処理(運転者状態取得処理)を行う。
【0064】
次に、ステップ140にて、上述の様にして設定されたノイズ強度の視覚的ノイズを付与する処理行って、前記ステップ120の処理に戻る。
(2)次に、図5に前記適正範囲決定処理を示す。
【0065】
ステップ200では、車両状態取得装置9により、運転開始時から、任意に設定できる初期取得時間T0(例えば10分間)の荷重中心位置から、運動適正範囲を設定する。
ここでは、各圧力センサ15からの出力を、全センサの出力の総和で割ることによって、圧力センサ15の出力を相対値化して、圧力分布を正規化し、この正規化された圧力分布から得られる荷重分布の重心(荷重中心位置)を求める。
【0066】
つまり、各圧力センサ15の相対値を元に、任意の間隔(例えば0.1秒間隔)で運転者のシート背もたれ部13の荷重中心位置を算出し、その上で、任意に設定できる時間(例えば過去10秒間)の重心位置(各サンプルポイントにおける荷重中心位置)100点の標準偏差Dを算出する。
【0067】
そして、運転開始時から、任意に設定できる初期取得時間T0(例えば10分間)の荷重中心位置を取得し、この荷重中心位置の標準偏差Dの60点(即ち10秒間のデータによって得られる1個の標準偏差Dを10分間分=60点分)の分布を、運動適正範囲とする。
【0068】
続くステップ210では、運動適正範囲の下限値をdminとし、上限値をdmaxとし、一旦本処理を終了する。
(3)次に、図6に前記車両状態取得処理を示す。
【0069】
ステップ300では、車両状態取得装置9により、上下方向の振動と、左右方向の横Gを検出する(車両挙動を検出する)。
続くステップ310では、振動および横Gがあるか否か、即ち車両挙動があるか否かを判定する。ここで肯定判断されるとステップ320に進み、一方否定判断されるとステップ330に進む。
【0070】
ステップ320では、車両挙動があるので、車両挙動による影響を低減するために、荷重中心位置の標準偏差Dの算出時間(運転者状態の判定に用いる判定用取得時間)T1を長くし(Tlongに設定)、サンプル数を増加させて、一旦本処理を終了する。
【0071】
一方、ステップ330では、車両挙動が無いので、荷重中心位置の標準偏差Dの算出時間(判定用取得時間)T1を初期値に設定し(Tdefに設定)、一旦本処理を終了する。なお、Tlong>Tdefである。
【0072】
(4)次に、図7に前記運転者状態取得処理を示す。
ステップ400では、前記図8の車両状態取得処理によって設定された荷重中心位置の標準偏差Dを算出する時間(判定用取得時間T1)に基づいて、運転者のシート背もたれ部13に対する荷重中心位置の標準偏差Dを算出する。
【0073】
続くステップ410では、このとき得られた荷重中心位置の標準偏差Dが、運転適正範囲の下限値dminを下回るか否かを判定する。ここで肯定判断されるとステップ420に進み、一方否定判断されるとステップ430に進む。
【0074】
ステップ420では、荷重中心位置の標準偏差Dが、運転適正範囲の下限値dminを下回ったので、運転者状態が運転に適していないとして、ノイズ強度を大きくする処理を行って一旦本処理を終了する。
【0075】
一方、ステップ430では、荷重中心位置の標準偏差Dが、運転適正範囲の上限値dmax以下か否かを判定する。ここで肯定判断されるとステップ440に進み、一方否定判断されると一旦本処理を終了する。
【0076】
ステップ440では、荷重中心位置の標準偏差Dが、運転適正範囲内にあるので、ノイズ強度の仕様を初期値(前記ステップ420にて設定した値より小さなノイズ強度)に変更し、一旦本処理を終了する。
【0077】
また、ステップ430で否定判断された場合には、荷重中心位置の標準偏差Dは、運転適正範囲内を上回るが、これは、運転者の座り直しや車両挙動の影響があったと判断し、そのまま本処理を終了する。
【0078】
そして、運転者が運転行為を続ける期間だけ、上述した処理を繰り返す。
e)次に、上述した運転適正範囲の設定方法について、更に詳しく説明する。
本実施形態の運転適正範囲は、下記に示す実験に基づいて設定したものである。
【0079】
この実験は、運転者状態と車線からの逸脱量を調べたものである。
具体的には、圧力センサによって荷重中心位置の標準偏差を求めるとともに、同時に車線(詳しくは車線中心線)からの逸脱量(ふらつき量)を計測した。ここでは、標準偏差を算出するサンプリング間隔は0.1秒で、その10秒間のデータから標準偏差を算出した。その結果を図8に示す。
【0080】
この図8では、細線が逸脱量を示し、太線が運転者状態(荷重中心位置の標準偏差)を示している。なお、図8では、縦軸が逸脱量(deg(操舵角))及び標準偏差を示し、横軸が時間(秒)を示している。
【0081】
図11から明かな様に、逸脱量が増加する運転開始から1200秒後付近から、標準偏差の値が減少していることが分かる(操作能力低下区間)。このことから運転適正範囲は、少なくともこの区間を検出できるよう設定する必要がある。
【0082】
運転適正範囲は、実験開始から任意に設定できる時間(たとえば10分間)で得られた荷重中心位置の範囲の最大値および最小値より、下記式(1)、(2)から得る。ここでxは、運転適正範囲を決めるパラメータである。
【0083】
上限:(1/2)(1+x)(最大値−最小値)・・(1)
下限:(1/2)(1−x)(最大値−最小値)・・(2)
図9に10分間の標準偏差に対してx=0.75(図10ではx=0.5、図11ではx=0.25)の運転適正範囲(上下の破線で挟まれた範囲)と、圧力センサにより得られた運転者状態(荷重中心位置の標準偏差)を示す。なお、図9〜図11の縦軸が標準偏差を示し、横軸が時間(秒)を示している。
【0084】
図9に示す様に、x=0.75では、前記図8に示した区間(操作能力低下区間)を検出することができていないのに対して、x=0.5、x=0.25では、操作能力低下区間を検出することが可能となることが分かる。
【0085】
しかしながら、運転適正範囲がx=0.25の場合よりも狭くなると、運転適正範囲の上限を超える値が多くなり、座り直しを誤判定する可能性が高くなる。
以上の理由から、運転適正範囲は、運転開始から任意の時間までの標準偏差集合における最小値から最大値までの範囲の25%から50%の範囲(すなわち標準偏差の中央値を中心として25%から50%の範囲)とする。
【0086】
d)このように、本実施形態では、運転者によって生じるシート背もたれ部13における荷重分布の変動に基づいて、運転者状態を取得し、その運転者状態と視覚的ノイズとの対応関係データを用いて、運転者に付与する視覚的ノイズのノイズ強度を変更している。
【0087】
つまり、実際に覚醒度が低下した状態や居眠りの状態になってからノイズ強度を上げても、その効果は低いので、本実施形態では、シート背もたれ部13における荷重分布の変動に基づいて、(覚醒度の低下や居眠り等に到る前の)運転者の操作能力が通常より低下したことを検出し、その運転者状態に対応したノイズ強度の視覚的ノイズを運転者に付与する。これにより、効果的に視認力向上を支援することができる。
【0088】
また、自動車内での運転者の状態を計測する上で、悪路、急カーブなどによる自動車そのものの挙動はアーチファクトとなるので、本実施形態では、垂直方向や水平方向の車両挙動を取得し、運転者状態の取得に影響を与える車両挙動がある場合には、その影響を抑えるよう計測方法等を変更する。これにより、視認力向上を支援する制御を精度良く行うことができる。
【0089】
尚、本発明は前記実施例になんら限定されるものではなく、本発明を逸脱しない範囲において種々の態様で実施しうることはいうまでもない。
例えばノイズ強度は、運転者に照射する光の輝度、発光面積、輝度変化量、発光面積変化量、点灯時間、波長変化量、及び色度変化量のうち、少なくとも1種を調整することによって、変化させることができる。なお、輝度を大きくするほど、発光面積を大きくするほど、輝度変化量を大きくするほど、発光面積変化量を大きくするほど、点灯時間を長くするほど、波長変化量を大きくするほど、色度変化量を上げるほど、ノイズ強度を大きくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】(a)は本実施形態の視認力向上支援装置の概略構成を示すブロック図、(b)はノイズ発生装置の具体例の説明図である。
【図2】シートにおける圧力センサの配置例を示す説明図である。
【図3】シートにおける圧力センサの垂直方向及び水平方向の配置範囲を示す説明図である。
【図4】本実施形態の視認力向上支援装置が実施する処理のメインルーチンを示すフローチャートである。
【図5】運転適正範囲を設定する処理を示すフローチャートである。
【図6】車両挙動を取得する処理を示すフローチャートである。
【図7】運転者状態を取得する処理を示すフローチャートである。
【図8】運転者状態と車線からの逸脱量との関係を調べた実験例の実験結果を示すグラフである。
【図9】x=0.75とした場合の運転適正範囲を示すグラフである。
【図10】x=0.50とした場合の運転適正範囲を示すグラフである。
【図11】x=0.25とした場合の運転適正範囲を示すグラフである。
【符号の説明】
【0091】
1…視認力向上支援装置
3…ノイズ生成装置
3a…ノイズ強度記憶部
3b…ノイズ最適強度設定部
3c…対応関係記憶部
3d…制御部
5…ノイズ発生装置
7…運転者状態取得装置
9…車両状態取得装置
11…操作スイッチ
13…シート背もたれ部
15…圧力センサ
【技術分野】
【0001】
本発明は、視認力向上支援装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、自車両周辺の状況に対する運転者の視覚認識能力を向上させ、周囲状況に対する反応を敏感にさせることで、不注意や見落としによる事故を未然に防ぐ視認力向上支援装置が提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
この特許文献1に開示されている視認力向上装置によれば、周辺状況、運転者状態に対応した強度のノイズを生成し、ドライバに付与する。そのため、運転者の視認力を向上させることができるようになる。
【特許文献1】特開2006−172315号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の視認力向上装置は、覚醒度低下・居眠りといったノイズそのものの知覚が困難となる運転者状態となった時点で、運転者へのノイズ強度を変更するため、ノイズの効果が期待できる程度以下に運転者状態か変化した場合には、ノイズ印加による視認力向上の支援が難しいという問題があった。
【0005】
本発明は、かかる問題に鑑みてなされたものであり、例えば覚醒度低下や居眠りに限らない運転者の状態に基づいてノイズ強度を変更させて、視認力を向上することができる視認力向上装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、確率共振(SR、Stochastic Resonance)の研究成果(人の脳における確率共振現象の実験的検証、日高ら、生体・生理シンポジウム論文集VOL.15th,P.261〜264)に着目したものである。
【0007】
生体における確率共振現象とは、感覚神経細胞に対する適度なノイズ印加によって、その感覚神経細胞における閾値以下の入力信号を検出する能力が上昇するという現象である。この確率共振現象によって、人の生体機能(例えば、知覚、調節、行為等のマクロな機能)が向上するということが実験的検証等によって明らかになっている。
【0008】
ところで、これまでに確率共振現象による効果が現れた例を見ると、低下した機能に対してノイズを付加することで機能を向上する研究結果がある(例えば、I. Hidaka, D. Nozaki, Y. Yamamoto: Functional stochastic resonance in the human brain: Noise induced sensitization of baroreflex system. Phys. Rev. Lett. 85: 3740-3743, 2000.)。
【0009】
つまり、確率共振現象は検出能力の閾値を下げる効果があるが、その効果は人間が本来持つ能力を引き出すものあるため、最大能力を発揮している状態ではその効果は小さいと考えられる。逆に捉えると、人間の能力が低下している状態では、能力を引き出せる伸びしろが大きい分、確率共振現象としての効果は大きいと考えられる。
【0010】
しかしながら、人間の能力が低下しきった状況とは、居眠りなど運転そのものが困難な状況である。従来の技術では居眠りを検知した場合にはシート振動などの覚醒手段によりドライバを覚醒させているが、居眠りに至る以前に人間の能力低下を検知し、ノイズを付与することによって、確率共鳴の効果を最大限に得ることができる。
【0011】
本発明は、上述した知見により得られたものである。以下、各請求項毎に説明する。
(1)請求項1の発明は、視認可能なノイズ強度の閾値に基づいて設定されたノイズ強度(例えば最適ノイズ強度)の視覚的ノイズを生成し、その生成した視覚的ノイズを車両運転中の運転者に対して付与することによって、運転者の視認力向上を支援する視認力向上支援装置に関するものである。
【0012】
特に本発明では、(例えば圧力センサを用いた)運転者状態取得手段によって、運転者の覚醒度低下又は居眠りに到る前の(運転者の操作能力を示す)運転者状態を取得し、対応関係記憶手段によって、運転者状態と視覚的ノイズとの対応関係を記憶する。そして、ノイズ付与態様制御手段では、運転者状態取得手段によって取得された運転者状態から、対応関係記憶手段に記憶された対応関係に基づいて、視覚的ノイズの付与態様を制御する。
【0013】
確率共鳴の効果を最大限に得るためには、運転者の車両の操作能力が低下した場合に、その状態に応じた最適なノイズ強度の視覚的ノイズを付与できることが好ましいが、上述した様に、実際に覚醒度が低下した状態や居眠りの状態になってからノイズ強度を上げても、その効果は低い。
【0014】
よって、本発明では、実際に覚醒度が低下した状態や居眠りの状態に陥る前に、運転者の操作能力が通常より低下したことを、例えばシート背もたれ部における荷重分布の変動等によって検出し、その運転者状態に対応して視覚的ノイズの付与態様を制御する。例えば、その運転者状態に対応したノイズ強度の視覚的ノイズを運転者に付与する。
【0015】
このようにすることで、運転者の操作能力が低下しても、居眠りなど運転に不可能な状態に陥る以前に、視覚的ノイズを車両の運転者に対して付与することができる。また、前述のように、能力低下時を狙ってノイズを付与することによって確率共鳴現象の効果を最大限に得ることができる。これにより、従来より一層効果的に、視認力向上を支援することができる。
【0016】
なお、対応関係記憶手段には、実際に運転者に付与する視覚的ノイズを発生させるための例えば電気的な信号(ノイズ信号)の強度等のデータが記憶されている(以下同様)。
(2)請求項2の発明は、視認可能なノイズ強度の閾値に基づいて設定されたノイズ強度(例えば最適ノイズ強度)の視覚的ノイズを生成し、その生成した視覚的ノイズを車両運転中の運転者に対して付与することによって、運転者の視認力向上を支援する視認力向上支援装置に関するものである。
【0017】
特に本発明では、運転者状態取得手段によって、運転者によって生じるシート背もたれ部における荷重分布の変動に基づいて、運転者状態を取得し、対応関係記憶手段によって、運転者状態と視覚的ノイズとの対応関係を記憶している。そして、ノイズ付与態様制御手段によって、運転者状態取得手段によって取得された運転者状態から、対応関係記憶手段に記憶された対応関係に基づいて、視覚的ノイズの付与態様を制御する。
【0018】
上述した様に、実際に覚醒度が低下した状態や居眠りの状態になってからノイズ強度を上げても、その効果は低い。よって、本発明では、運転者によって生じるシート背もたれ部における荷重分布の変動に基づいて、(覚醒度の低下や居眠り等に到る前の)運転者の操作能力が通常より低下したことを検出し、その運転者状態に対応して視覚的ノイズの付与態様を制御する。例えば、その運転者状態に対応したノイズ強度の視覚的ノイズを運転者に付与する。
【0019】
これにより、一層効果的に、視認力向上を支援することができる。
(3)請求項3の発明では、車両状態取得手段によって、車両状態を取得し、対応関係記憶手段によって、運転者状態及び車両状態と視覚的ノイズとの対応関係を記憶する。そして、ノイズ付与態様制御手段によって、運転者状態取得手段及び車両状態取得手段によって取得された運転者状態及び車両状態から、対応関係記憶手段に記憶された対応関係に基づいて、視覚的ノイズの付与態様を制御する。
【0020】
自動車内での運転者の状態を計測する上で、悪路、急カーブなどによる自動車そのものの挙動はアーチファクトとなる。そこで、本発明では、車両状態取得手段は、例えば垂直方向や水平方向の車両挙動を取得し、運転者状態取得手段による運転者状態の取得に影響を与える車両挙動がある場合には、その影響を抑えるよう計測方法等を変更する。これにより、視認力向上を支援する制御を精度良く行うことができる。
【0021】
(4)請求項4の発明では、運転者状態取得手段は、シート背もたれ部に配置された複数の圧力センサを備えている。
本発明では、シート背もたれ部に加わる圧力の重心位置を算出するために、複数(好ましくは3個以上)の圧力センサを、シート背もたれ部(例えば内部)に配置する。
【0022】
(5)請求項5の発明では、シート背もたれ部の圧力センサは、垂直方向には、座面から所定の距離をとった運転者の腰から両肩までの範囲内、水平方向には運転者の肩幅の範囲内に、少なくとも3つ以上のセンサを配置する。
【0023】
本発明では、シート背もたれ部において、運転者の荷重がかかる部分に圧力センサを配置する。この運転者の荷重がかかる部分としては、垂直方向が、座面から運転者の両肩までの高さが考えられるが、座面に近い位置に圧力センサを配置すると、圧力センサに全く荷重がかからない姿勢で運転を行う運転者や、常に圧力センサに接触した姿勢で運転を行う運転者がいると考えられるため、座面から一定の距離を取った位置に配置する。水平方向に関しては、運転者の肩幅よりも狭い範囲に圧力センサを配置する。なお、女性の平均的な肩幅でも荷重を捉えられる範囲が望ましい。
【0024】
(6)請求項6の発明では、シート背もたれ部の圧力センサの配置は、少なくとも水平方向及び垂直方向にそれぞれ2つ以上配置する。
本発明では、水平方向と垂直方向の重心位置による判定を可能にするため、少なくとも水平方向用に2箇所以上、垂直方向用に2箇所以上圧力センサを配置する。
【0025】
この配置は、運転者の荷重分布を捉えることが可能で、かつできるだけ広い範囲であることが望ましい。従って、垂直方向は座面から一定の距離を取った位置から運転者の両肩まで、水平方向は運転者の肩幅までの範囲の圧力を得るため、センサは3点以上必要になる。また、4点以上のセンサを用いる場合には、前述の範囲内に左右対称に配置することが望ましい。
【0026】
(7)請求項7の発明では、運転者状態取得手段は、複数の圧力センサから得られる荷重分布に基づいて、運転者の状態を取得する。
運転者の状態に応じて圧力センサから得られる荷重分布が変化するので、この荷重分布から運転者の状態を検出できる。
【0027】
(8)請求項8の発明では、複数の圧力センサから得られる荷重中心位置の所定時間における標準偏差に基づいて、運転者の状態を取得する。
運転者の状態の変化に伴って、シート背もたれ部に対する荷重分布は変化する。よって、例えば、この荷重分布の重心(荷重中心位置とする)を求め、その移動量によって運転者の状態を評価することができる。具体的には、例えば、一定時間内の運転者のシート背もたれ部に対する重心のばらつきを求めるため、一定時間荷重中心位置を求め、水平方向、垂直方向の荷重中心位置の標準偏差をそれぞれ求める。
【0028】
なお、後述するように、運転者の操作能力が低下すると、荷重分布の標準偏差が小さくなる傾向にある。
(9)請求項9の発明では、荷重中心位置は、各圧力センサ間の相対値から得ることを特徴とする。
【0029】
例えば、圧力センサからの出力を全センサの出力の総和で割ることによって圧力分布を正規化する。これにより、体重差やシート背もたれ部に対する姿勢の違いなどの個人間差を考慮せずに、運転者状態を取得することができる。
【0030】
(10)請求項10の発明では、ノイズ付与態様制御手段は、荷重中心位置の標準偏差が所定の第1の閾値を下回った場合には、それまで付与していた視覚的ノイズよりもノイズ強度を相対的に大きくした視覚的ノイズを付与することを特徴とする。
【0031】
本発明では、例えば運転開始時からの一定期間に、荷重中心位置の標準偏差を複数回取得し、この取得した集合に対し、一定期間以後の荷重中心位置の標準偏差が含まれるか否かによって運転者状態を判定する。
【0032】
運転者の状態は運転開始時から徐々に低下していくと考えられ、運転開始時は運転者の状態がよく、運転に適した状態であると考えられる。よって、前記集合に含まれない外れ値は運転に適さないと判断する。具体的には、運転に適した状態とは、任意に設定できる時間における荷重中心位置の標準偏差が、運転開始後から任意の期間での荷重中心位置の標準偏差の集合に含まれる範囲と考える。この範囲に含まれないもののうち、例えば範囲の下限を下回った時点を運転者の運転能力が低下した状態と判定する。
【0033】
このとき、ノイズ付与態様制御手段により、それまでに付与していた視覚的ノイズよりもノイズ強度を相対的に大きくした視覚的ノイズを付与する。これにより、視認力が向上する。
【0034】
(11)請求項11の発明では、第1の閾値は、運転適正範囲の下限とすることを特徴とする。
本発明は、第1の閾値を例示したものである。なお、運転適正範囲とは、運転に適した状態の範囲のことであり、例えば運転の際の車線中心線からのずれ(逸脱量)等に基づいて設定することができる。例えば逸脱量が所定値より小さい場合には、運転に適した状態であると考えることができる。
【0035】
(12)請求項12の発明では、運転適正範囲は、運転者が運転を開始してから所定期間における荷重中心位置の標準偏差により得られる範囲において、その中央値を中心として25%から50%の範囲とすることを特徴とする。
【0036】
本発明では、例えば運転開始時から任意の期間に、荷重中心位置の標準偏差を複数回取得し、その範囲の中央値を中心として25%から50%に当たる範囲を運転適正範囲とする。
【0037】
(13)請求項13の発明では、ノイズ付与態様制御手段は、荷重中心位置の標準偏差が運転適正範囲に当てはまる場合には、視覚的ノイズのノイズ強度を、初期設定値(デフォルト値)と同等なノイズ強度とする。
【0038】
ここでは、運転に適した状態とは、任意に設定できる時間間隔の荷重中心位置の標準偏差が運転適正範囲に含まれる範囲と考える。そこで、荷重中心位置の標準偏差が運転適正範囲内にあった時に、ノイズ強度を初期設定値に変更する。これはノイズ付与態様制御手段が、運転者の状態に即してノイズの強度を変更するのに対して、運転者状態が運転に適した状況になったために、デフォルトの値である初期設定値に戻すことを意味している。また、通常は、運転者の状態が運転に適した状況であるという判断が継続している場合には、ノイズの強度は変更しない。
【0039】
(14)請求項14の発明では、ノイズ付与態様制御手段は、荷重中心位置の標準偏差が所定の第2の閾値を上回った場合には、それまで付与していた視覚的ノイズと同じノイズ強度のノイズを付与する。但し、第2の閾値は第1の閾値より大である。
【0040】
本発明では、例えば運転開始時から任意の期間に、荷重中心位置の標準偏差を複数回取得し、例えばその範囲の第1の閾値である中央値から25%低い値から第2の閾値である中央値から25%高い値に当たる、中央値を中心とした50%の範囲を運転適正範囲とする。運転に適した状態とは、任意に設定できる時間間隔の荷重中心位置の標準偏差が運転適正範囲に含まれる範囲と考える。その集合に統計的に含まれない外れ値のうち、第2の閾値(例えば上限)を超えた場合は、座り直しなど、運転者の大きな体動が影響したものと考える。
【0041】
これらは運転者の状態の評価においてアーチファクトであることから、ノイズ付与態様制御手段は、制御対象とせずにそれまで与えていたノイズ強度に変更を与えない。
なお、運転者に座り直しがない場合においても、後述するように、荷重中心位置の標準偏差は車両挙動による影響を受ける可能性がある。この場合にも、標準偏差の値は大きくなるが上記の対処をすることによって運転者の状態の変化のみに基づいてノイズ強度を変更することができる。
【0042】
(15)請求項15の発明では、第2の閾値は、運転適正範囲の上限とする。
本発明は、第2の閾値を例示したものである。
(16)請求項16の発明では、運転者状態取得手段は、車両状態取得手段から得られる上下方向の車両挙動に応じて、荷重中心位置から標準偏差を得るための荷重分布中心のサンプル数を増減する。
【0043】
本発明は、悪路走行時のように、車両が上下方向に振動する場合に対処するものである。運転者状態は一定時間の荷重中心位置の標準偏差から求めるが、車両が上下方向に振動する場合、その値は運転者の状態にかかわらず大きくなる。このとき、車両状態取得手段において、標準偏差を求める荷重中心位置のサンプル数を増やし、車両の挙動による影響が含まれる荷重中心位置の影響を平均化することによって、挙動がある場合にも運転者状態を検出できるようにした。
【0044】
(17)請求項17の発明では、運転者状態取得手段は、車両状態取得手段から得られる左右方向の車両挙動に応じて、荷重中心位置から標準偏差を得るための荷重分布中心のサンプル数を増減する。
【0045】
本発明は、左右旋回時のように、車両に横Gがかかる場合に対処するものである。横Gがかかる場合においては、運転者の状態にかかわらず偏った荷重中心位置が得られる。このとき、車両状態取得手段において、標準偏差を求める荷重中心位置のサンプル数を増やし、横Gの影響が含まれる荷重中心位置の影響を平均化することによって、左右方向の車両挙動がある場合にも運転者状態を検出できるようにした。
【発明を実施するための最良の形態】
【0046】
次に、本発明の最良の形態(実施形態)について説明する。
a)まず、本実施形態の視認力向上支援装置の概略構成を説明する。
図1(a)に示すように、本実施形態の視認力向上支援装置1は、車両に搭載されており、ノイズ(電気的ノイズ)を生成するノイズ生成装置3と、生成したノイズを視認性ノイズとして出力するノイズ発生装置5と、運転者の状態を取得する運転者状態取得装置7と、車両の状態を取得する車両状態取得装置9と、操作スイッチ11とを備えている。
【0047】
前記ノイズ生成装置3は、後述する所定のノイズを知覚することができるノイズ強度の閾値を記憶するノイズ強度記憶部3aと、ノイズ強度記憶部3aの記憶するノイズ強度の閾値に基づいて、出力すべきノイズの最適強度(最適ノイズ強度)を設定するノイズ最適強度設定部3bと、運転者状態取得装置7や車両状態取得装置9にて取得する運転者状態及び車両状態と最適ノイズ強度との対応関係を記憶している対応関係記憶部3cと、ノイズ強度記憶部3a及びノイズ最適強度設定部3b及び対応関係記憶部3cと接続され、ノイズ生成装置3全体の制御を司る制御部3dとを備える。
【0048】
制御部3dは、運転者状態取得装置7と接続されており、取得した運転者状態に対応する最適ノイズ強度を、対応関係記憶部3cに記憶された対応関係に基づいて決定し、その決定した最適ノイズ強度のノイズを生成する。そして、その生成したノイズに応じた制御信号(駆動要求信号)をノイズ発生装置5へ出力する。
【0049】
ノイズ発生装置5は、例えば室内灯であり、この室内灯等から視覚的ノイズの重畳された光(ノイズ光)が出力(照射)されることとなる。なお、通常の室内灯として機能を果たす場合には相対的に高い輝度が必要であるが、ノイズ光の場合にはそれに比べて低い輝度で十分である。
【0050】
本実施形態のノイズ発生装置5として用いられる室内灯の具体例としては、図1(b)に示すように、運転者の頭上より前方の車室内の天井部に搭載されたものが考えられる。この室内灯は、いわゆるルームランプとしての役割を果たすものであり、このように運転者の頭上より前方の車室内の天井部に搭載されていれば、運転者に対する視覚的ノイズの付与の点で好ましい。
【0051】
b)ここで、視覚的ノイズについて説明する。
視覚認識における確率共振現象(SR)を誘起するために用いられる視覚的なノイズは、特定の周波数帯域で強い強度を示すことのないランダムな広帯域ノイズでなければならない。従って、視覚認識可能な周波数帯における視覚的なノイズのノイズ強度の周波数分布が一様であるランダムノイズや、視覚的なノイズのノイズ強度の周波数分布が視覚的なノイズの周波数に反比例する1/fノイズ等を用いることで視覚認識における確率共振現象(SR)を誘起することができる。
【0052】
なお、前述のとおり、ランダムな広域帯ノイズは、ノイズ強度が小さ過ぎたり、あるいは、入力信号の強度と無関係に閾値を超えるほど大き過ぎたりした場合、出力信号の信号雑音比を低下させることが知られており、信号出力の信号雑音比を最大化するノイズ強度が存在する。
【0053】
そこで、確率共振現象(SR)を誘起するのに適したノイズ強度のノイズ光を発生させるためには、例えば、実験等によって信号出力の信号雑音比を大きくするのに適したノイズ強度を予め求めておき、ノイズ強度記憶部3aに、この実験等によって求めたノイズ強度を最適ノイズ強度として記憶しておけばよい。
【0054】
また、最適ノイズ強度に関しては個人差があるため、その個人差を補完するため、本実施形態では、次のような対応をする。つまり、制御部3dによってノイズ発生装置5から出力するノイズ光の強度を徐々に高めていき、運転者がノイズを最初に知覚したタイミングで操作スイッチ11を操作すると、その操作タイミングにおけるノイズ光の強度がノイズ強度の閾値として決定され、ノイズ強度記憶部3aに記憶されるよう構成する。
【0055】
そして、ノイズ最適強度設定部3bは、ノイズ強度記憶部3aに記憶している閾値に対して、信号出力の信号雑音比を大きくするのに適した所定の割合のノイズ強度(例えば、上記ランダムノイズの場合は閾値の100%程度のノイズ強度、上記1/fノイズの場合は閾値の69%程度のノイズ強度)を最適ノイズ強度として設定する。なお、信号出力の信号雑音比を大きくするのに適した閾値に対するノイズ強度の割合は、実験等によって予め求めておけばよい。また、閾値に対するノイズ強度の割合を変更可能に構成してもよい。
【0056】
c)次に、運転者状態取得装置7について説明する。
図2に示すように、運転者状態取得装置7は、運転席のシート背もたれ部13の内部に配置した複数の圧力センサ15を備えており、運転者の着座状況を検出する。
【0057】
この圧力センサ15は、運転者がシート背もたれ部13に確実に接触する部分に配置する。具体的には、図3(a)に示すように、垂直方向は運転者の腰(詳しくは座面より所定値(例えば24cm程度)上の位置)から運転者の肩の高さまでの範囲、図3(b)に示すように、水平方向は運転者の肩幅以内の範囲である。
【0058】
圧力センサ15の配置方法としては、例えば前記図2(a)に示すように、シート中心付近に、十字に圧力センサ15を配置する方法、図2(b)に示すように、肩部を取り出すようT字に配置する方法、図2(c)に示すように、長方形型に配置する方法などが考えられる。
【0059】
また、どのような体型の運転者に対しても確実に運転者状態の取得を行うためには、多くの圧力センサ15を配置することが望ましい。その配置方法としては、例えば図2(d)に示すような碁盤目状の配置が挙げられるが、更に密度を大きくするためには、図2(f)に示すような配置が望ましい。
【0060】
更に、本実施形態では、後述するように、運転者の身長、体型などに依存しないようにするために、着座状態の取得方法としては、シート背もたれ部13に対する圧力分布の標準偏差を採用し、各圧力センサ15から得られる値は、相対値に置き換える。
【0061】
d)次に、本実施形態における処理を説明する。
(1)まず、図4に全体の処理の流れを示す。
運転を開始した時点では、まず、ステップ(S)100にて、前述の(初期値の)最適ノイズ強度の視覚的ノイズを運転者に付加する。
【0062】
その後、ステップ110にて、後述するように、運転適正範囲を決定する処理(運転適正範囲決定処理)を行う。なお、本実施形態では、運転者状態がその範囲に含まれるか否かによりノイズの仕様を変更する。
【0063】
次に、ステップ120にて、後述するように、車両挙動をモニタして、車両挙動に応じて運転者状態の算出方法を変更する処理(車両挙動取得処理)を行う。
次に、ステップ130にて、後述するように、荷重分布の標準偏差から、ノイズ強度を変更する処理(運転者状態取得処理)を行う。
【0064】
次に、ステップ140にて、上述の様にして設定されたノイズ強度の視覚的ノイズを付与する処理行って、前記ステップ120の処理に戻る。
(2)次に、図5に前記適正範囲決定処理を示す。
【0065】
ステップ200では、車両状態取得装置9により、運転開始時から、任意に設定できる初期取得時間T0(例えば10分間)の荷重中心位置から、運動適正範囲を設定する。
ここでは、各圧力センサ15からの出力を、全センサの出力の総和で割ることによって、圧力センサ15の出力を相対値化して、圧力分布を正規化し、この正規化された圧力分布から得られる荷重分布の重心(荷重中心位置)を求める。
【0066】
つまり、各圧力センサ15の相対値を元に、任意の間隔(例えば0.1秒間隔)で運転者のシート背もたれ部13の荷重中心位置を算出し、その上で、任意に設定できる時間(例えば過去10秒間)の重心位置(各サンプルポイントにおける荷重中心位置)100点の標準偏差Dを算出する。
【0067】
そして、運転開始時から、任意に設定できる初期取得時間T0(例えば10分間)の荷重中心位置を取得し、この荷重中心位置の標準偏差Dの60点(即ち10秒間のデータによって得られる1個の標準偏差Dを10分間分=60点分)の分布を、運動適正範囲とする。
【0068】
続くステップ210では、運動適正範囲の下限値をdminとし、上限値をdmaxとし、一旦本処理を終了する。
(3)次に、図6に前記車両状態取得処理を示す。
【0069】
ステップ300では、車両状態取得装置9により、上下方向の振動と、左右方向の横Gを検出する(車両挙動を検出する)。
続くステップ310では、振動および横Gがあるか否か、即ち車両挙動があるか否かを判定する。ここで肯定判断されるとステップ320に進み、一方否定判断されるとステップ330に進む。
【0070】
ステップ320では、車両挙動があるので、車両挙動による影響を低減するために、荷重中心位置の標準偏差Dの算出時間(運転者状態の判定に用いる判定用取得時間)T1を長くし(Tlongに設定)、サンプル数を増加させて、一旦本処理を終了する。
【0071】
一方、ステップ330では、車両挙動が無いので、荷重中心位置の標準偏差Dの算出時間(判定用取得時間)T1を初期値に設定し(Tdefに設定)、一旦本処理を終了する。なお、Tlong>Tdefである。
【0072】
(4)次に、図7に前記運転者状態取得処理を示す。
ステップ400では、前記図8の車両状態取得処理によって設定された荷重中心位置の標準偏差Dを算出する時間(判定用取得時間T1)に基づいて、運転者のシート背もたれ部13に対する荷重中心位置の標準偏差Dを算出する。
【0073】
続くステップ410では、このとき得られた荷重中心位置の標準偏差Dが、運転適正範囲の下限値dminを下回るか否かを判定する。ここで肯定判断されるとステップ420に進み、一方否定判断されるとステップ430に進む。
【0074】
ステップ420では、荷重中心位置の標準偏差Dが、運転適正範囲の下限値dminを下回ったので、運転者状態が運転に適していないとして、ノイズ強度を大きくする処理を行って一旦本処理を終了する。
【0075】
一方、ステップ430では、荷重中心位置の標準偏差Dが、運転適正範囲の上限値dmax以下か否かを判定する。ここで肯定判断されるとステップ440に進み、一方否定判断されると一旦本処理を終了する。
【0076】
ステップ440では、荷重中心位置の標準偏差Dが、運転適正範囲内にあるので、ノイズ強度の仕様を初期値(前記ステップ420にて設定した値より小さなノイズ強度)に変更し、一旦本処理を終了する。
【0077】
また、ステップ430で否定判断された場合には、荷重中心位置の標準偏差Dは、運転適正範囲内を上回るが、これは、運転者の座り直しや車両挙動の影響があったと判断し、そのまま本処理を終了する。
【0078】
そして、運転者が運転行為を続ける期間だけ、上述した処理を繰り返す。
e)次に、上述した運転適正範囲の設定方法について、更に詳しく説明する。
本実施形態の運転適正範囲は、下記に示す実験に基づいて設定したものである。
【0079】
この実験は、運転者状態と車線からの逸脱量を調べたものである。
具体的には、圧力センサによって荷重中心位置の標準偏差を求めるとともに、同時に車線(詳しくは車線中心線)からの逸脱量(ふらつき量)を計測した。ここでは、標準偏差を算出するサンプリング間隔は0.1秒で、その10秒間のデータから標準偏差を算出した。その結果を図8に示す。
【0080】
この図8では、細線が逸脱量を示し、太線が運転者状態(荷重中心位置の標準偏差)を示している。なお、図8では、縦軸が逸脱量(deg(操舵角))及び標準偏差を示し、横軸が時間(秒)を示している。
【0081】
図11から明かな様に、逸脱量が増加する運転開始から1200秒後付近から、標準偏差の値が減少していることが分かる(操作能力低下区間)。このことから運転適正範囲は、少なくともこの区間を検出できるよう設定する必要がある。
【0082】
運転適正範囲は、実験開始から任意に設定できる時間(たとえば10分間)で得られた荷重中心位置の範囲の最大値および最小値より、下記式(1)、(2)から得る。ここでxは、運転適正範囲を決めるパラメータである。
【0083】
上限:(1/2)(1+x)(最大値−最小値)・・(1)
下限:(1/2)(1−x)(最大値−最小値)・・(2)
図9に10分間の標準偏差に対してx=0.75(図10ではx=0.5、図11ではx=0.25)の運転適正範囲(上下の破線で挟まれた範囲)と、圧力センサにより得られた運転者状態(荷重中心位置の標準偏差)を示す。なお、図9〜図11の縦軸が標準偏差を示し、横軸が時間(秒)を示している。
【0084】
図9に示す様に、x=0.75では、前記図8に示した区間(操作能力低下区間)を検出することができていないのに対して、x=0.5、x=0.25では、操作能力低下区間を検出することが可能となることが分かる。
【0085】
しかしながら、運転適正範囲がx=0.25の場合よりも狭くなると、運転適正範囲の上限を超える値が多くなり、座り直しを誤判定する可能性が高くなる。
以上の理由から、運転適正範囲は、運転開始から任意の時間までの標準偏差集合における最小値から最大値までの範囲の25%から50%の範囲(すなわち標準偏差の中央値を中心として25%から50%の範囲)とする。
【0086】
d)このように、本実施形態では、運転者によって生じるシート背もたれ部13における荷重分布の変動に基づいて、運転者状態を取得し、その運転者状態と視覚的ノイズとの対応関係データを用いて、運転者に付与する視覚的ノイズのノイズ強度を変更している。
【0087】
つまり、実際に覚醒度が低下した状態や居眠りの状態になってからノイズ強度を上げても、その効果は低いので、本実施形態では、シート背もたれ部13における荷重分布の変動に基づいて、(覚醒度の低下や居眠り等に到る前の)運転者の操作能力が通常より低下したことを検出し、その運転者状態に対応したノイズ強度の視覚的ノイズを運転者に付与する。これにより、効果的に視認力向上を支援することができる。
【0088】
また、自動車内での運転者の状態を計測する上で、悪路、急カーブなどによる自動車そのものの挙動はアーチファクトとなるので、本実施形態では、垂直方向や水平方向の車両挙動を取得し、運転者状態の取得に影響を与える車両挙動がある場合には、その影響を抑えるよう計測方法等を変更する。これにより、視認力向上を支援する制御を精度良く行うことができる。
【0089】
尚、本発明は前記実施例になんら限定されるものではなく、本発明を逸脱しない範囲において種々の態様で実施しうることはいうまでもない。
例えばノイズ強度は、運転者に照射する光の輝度、発光面積、輝度変化量、発光面積変化量、点灯時間、波長変化量、及び色度変化量のうち、少なくとも1種を調整することによって、変化させることができる。なお、輝度を大きくするほど、発光面積を大きくするほど、輝度変化量を大きくするほど、発光面積変化量を大きくするほど、点灯時間を長くするほど、波長変化量を大きくするほど、色度変化量を上げるほど、ノイズ強度を大きくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】(a)は本実施形態の視認力向上支援装置の概略構成を示すブロック図、(b)はノイズ発生装置の具体例の説明図である。
【図2】シートにおける圧力センサの配置例を示す説明図である。
【図3】シートにおける圧力センサの垂直方向及び水平方向の配置範囲を示す説明図である。
【図4】本実施形態の視認力向上支援装置が実施する処理のメインルーチンを示すフローチャートである。
【図5】運転適正範囲を設定する処理を示すフローチャートである。
【図6】車両挙動を取得する処理を示すフローチャートである。
【図7】運転者状態を取得する処理を示すフローチャートである。
【図8】運転者状態と車線からの逸脱量との関係を調べた実験例の実験結果を示すグラフである。
【図9】x=0.75とした場合の運転適正範囲を示すグラフである。
【図10】x=0.50とした場合の運転適正範囲を示すグラフである。
【図11】x=0.25とした場合の運転適正範囲を示すグラフである。
【符号の説明】
【0091】
1…視認力向上支援装置
3…ノイズ生成装置
3a…ノイズ強度記憶部
3b…ノイズ最適強度設定部
3c…対応関係記憶部
3d…制御部
5…ノイズ発生装置
7…運転者状態取得装置
9…車両状態取得装置
11…操作スイッチ
13…シート背もたれ部
15…圧力センサ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
視認可能なノイズ強度の閾値に基づいて設定されたノイズ強度の視覚的ノイズを生成し、その生成した視覚的ノイズを車両運転中の運転者に対して付与することによって、運転者の視認力向上を支援する視認力向上支援装置であって、
前記運転者の覚醒度低下又は居眠りに到る前の運転者状態を取得する運転者状態取得手段と、
前記運転者状態と前記視覚的ノイズとの対応関係を記憶している対応関係記憶手段と、
前記運転者状態取得手段によって取得された運転者状態から、前記対応関係記憶手段に記憶された対応関係に基づいて、前記視覚的ノイズの付与態様を制御するノイズ付与態様制御手段と、
を備えたことを特徴とする視認力向上支援装置。
【請求項2】
視認可能なノイズ強度の閾値に基づいて設定されたノイズ強度の視覚的ノイズを生成し、その生成した視覚的ノイズを車両運転中の運転者に対して付与することによって、運転者の視認力向上を支援する視認力向上支援装置であって、
前記運転者によって生じるシート背もたれ部における荷重分布の変動に基づいて、運転者状態を取得する運転者状態取得手段と、
前記運転者状態と前記視覚的ノイズとの対応関係を記憶している対応関係記憶手段と、
前記運転者状態取得手段によって取得された運転者状態から、前記対応関係記憶手段に記憶された対応関係に基づいて、前記視覚的ノイズの付与態様を制御するノイズ付与態様制御手段と、
を備えたことを特徴とする視認力向上支援装置。
【請求項3】
前記請求項1又は2に記載の視認力向上支援装置において、
更に、車両状態を取得する車両状態取得手段を備え、
前記運転者状態及び車両状態と視覚的ノイズとの対応関係を記憶している対応関係記憶手段と、
前記運転者状態取得手段及び車両状態取得手段によって取得された運転者状態及び車両状態から、前記対応関係記憶手段に記憶された対応関係に基づいて、前記視覚的ノイズの付与態様を制御するノイズ付与態様制御手段と、
を備えたことを特徴とする視認力向上支援装置。
【請求項4】
前記請求項1〜3のいずれかに記載の視認力向上支援装置において、
前記運転者状態取得手段は、シート背もたれ部に配置された複数の圧力センサを備えることを特徴とする視認力向上支援装置。
【請求項5】
前記請求項4に記載の視認力向上支援装置において、
前記シート背もたれ部の圧力センサは、垂直方向には、座面から所定の距離をとった運転者の腰から両肩までの範囲内、水平方向には、運転者の肩幅の範囲内に、少なくとも3つ以上のセンサを配置することを特徴とする視認力向上支援装置。
【請求項6】
前記請求項4又は5に記載の視認力向上支援装置において、
前記シート背もたれ部の圧力センサの配置は、少なくとも水平方向及び垂直方向にそれぞれ2つ以上配置することを特徴とする視認力向上支援装置。
【請求項7】
前記請求項4〜6のいずれかに記載の視認力向上支援装置において、
前記運転者状態取得手段は、前記複数の圧力センサから得られる荷重分布に基づいて、前記運転者状態を取得することを特徴とする視認力向上支援装置。
【請求項8】
前記請求項7に記載の視認力向上支援装置において、
前記複数の圧力センサから得られる荷重中心位置の所定時間における標準偏差に基づいて、前記運転者状態を取得することを特徴とする視認力向上支援装置。
【請求項9】
前記請求項8に記載の視認力向上支援装置において、
前記荷重中心位置は、各圧力センサ間の相対値から得ることを特徴とする視認力向上支援装置。
【請求項10】
前記請求項8又は9に記載の視認力向上支援装置において、
前記ノイズ付与態様制御手段は、前記荷重中心位置の標準偏差が所定の第1の閾値を下回った場合には、それまで付与していた視覚的ノイズよりもノイズ強度を相対的に大きくした視覚的ノイズを付与することを特徴とする視認力向上支援装置。
【請求項11】
前記請求項10に記載の視認力向上支援装置において、
前記第1の閾値は、運転適正範囲の下限とすることを特徴とする視認力向上支援装置。
【請求項12】
前記請求項11記載の視認力向上支援装置において、
前記運転適正範囲は、運転者が運転を開始してから所定期間における荷重中心位置の標準偏差により得られる範囲において、その中央値を中心として25%から50%の範囲とすることを特徴とする視認力向上支援装置。
【請求項13】
前記請求項11又は12に記載の視認力向上支援装置において、
前記ノイズ付与態様制御手段は、前記荷重中心位置の標準偏差が前記運転適正範囲に当てはまる場合には、前記視覚的ノイズのノイズ強度を、初期設定値と同等なノイズ強度とすることを特徴とする視認力向上支援装置。
【請求項14】
前記請求項8〜13のいずれかに記載の視認力向上支援装置において、
前記ノイズ付与態様制御手段は、前記荷重中心位置の標準偏差が所定の第2の閾値を上回った場合には、それまで付与していた視覚的ノイズと同じノイズ強度のノイズを付与することを特徴とする視認力向上支援装置。
【請求項15】
前記請求項14に記載の視認力向上支援装置において、
前記第2の閾値は、前記運転適正範囲の上限とすることを特徴とする視認力向上支援装置。
【請求項16】
前記請求項8〜15のいずれかに記載の視認力向上支援装置において、
前記運転者状態取得手段は、前記車両状態取得手段から得られる上下方向の車両挙動に応じて、前記荷重中心位置から標準偏差を得るための荷重分布中心のサンプル数を増減することを特徴とする視認力向上支援装置。
【請求項17】
前記請求項8〜15のいずれかに記載の視認力向上支援装置において、
前記運転者状態取得手段は、前記車両状態取得手段から得られる左右方向の車両挙動に応じて、前記荷重中心位置から標準偏差を得るための荷重分布中心のサンプル数を増減することを特徴とする視認力向上支援装置。
【請求項1】
視認可能なノイズ強度の閾値に基づいて設定されたノイズ強度の視覚的ノイズを生成し、その生成した視覚的ノイズを車両運転中の運転者に対して付与することによって、運転者の視認力向上を支援する視認力向上支援装置であって、
前記運転者の覚醒度低下又は居眠りに到る前の運転者状態を取得する運転者状態取得手段と、
前記運転者状態と前記視覚的ノイズとの対応関係を記憶している対応関係記憶手段と、
前記運転者状態取得手段によって取得された運転者状態から、前記対応関係記憶手段に記憶された対応関係に基づいて、前記視覚的ノイズの付与態様を制御するノイズ付与態様制御手段と、
を備えたことを特徴とする視認力向上支援装置。
【請求項2】
視認可能なノイズ強度の閾値に基づいて設定されたノイズ強度の視覚的ノイズを生成し、その生成した視覚的ノイズを車両運転中の運転者に対して付与することによって、運転者の視認力向上を支援する視認力向上支援装置であって、
前記運転者によって生じるシート背もたれ部における荷重分布の変動に基づいて、運転者状態を取得する運転者状態取得手段と、
前記運転者状態と前記視覚的ノイズとの対応関係を記憶している対応関係記憶手段と、
前記運転者状態取得手段によって取得された運転者状態から、前記対応関係記憶手段に記憶された対応関係に基づいて、前記視覚的ノイズの付与態様を制御するノイズ付与態様制御手段と、
を備えたことを特徴とする視認力向上支援装置。
【請求項3】
前記請求項1又は2に記載の視認力向上支援装置において、
更に、車両状態を取得する車両状態取得手段を備え、
前記運転者状態及び車両状態と視覚的ノイズとの対応関係を記憶している対応関係記憶手段と、
前記運転者状態取得手段及び車両状態取得手段によって取得された運転者状態及び車両状態から、前記対応関係記憶手段に記憶された対応関係に基づいて、前記視覚的ノイズの付与態様を制御するノイズ付与態様制御手段と、
を備えたことを特徴とする視認力向上支援装置。
【請求項4】
前記請求項1〜3のいずれかに記載の視認力向上支援装置において、
前記運転者状態取得手段は、シート背もたれ部に配置された複数の圧力センサを備えることを特徴とする視認力向上支援装置。
【請求項5】
前記請求項4に記載の視認力向上支援装置において、
前記シート背もたれ部の圧力センサは、垂直方向には、座面から所定の距離をとった運転者の腰から両肩までの範囲内、水平方向には、運転者の肩幅の範囲内に、少なくとも3つ以上のセンサを配置することを特徴とする視認力向上支援装置。
【請求項6】
前記請求項4又は5に記載の視認力向上支援装置において、
前記シート背もたれ部の圧力センサの配置は、少なくとも水平方向及び垂直方向にそれぞれ2つ以上配置することを特徴とする視認力向上支援装置。
【請求項7】
前記請求項4〜6のいずれかに記載の視認力向上支援装置において、
前記運転者状態取得手段は、前記複数の圧力センサから得られる荷重分布に基づいて、前記運転者状態を取得することを特徴とする視認力向上支援装置。
【請求項8】
前記請求項7に記載の視認力向上支援装置において、
前記複数の圧力センサから得られる荷重中心位置の所定時間における標準偏差に基づいて、前記運転者状態を取得することを特徴とする視認力向上支援装置。
【請求項9】
前記請求項8に記載の視認力向上支援装置において、
前記荷重中心位置は、各圧力センサ間の相対値から得ることを特徴とする視認力向上支援装置。
【請求項10】
前記請求項8又は9に記載の視認力向上支援装置において、
前記ノイズ付与態様制御手段は、前記荷重中心位置の標準偏差が所定の第1の閾値を下回った場合には、それまで付与していた視覚的ノイズよりもノイズ強度を相対的に大きくした視覚的ノイズを付与することを特徴とする視認力向上支援装置。
【請求項11】
前記請求項10に記載の視認力向上支援装置において、
前記第1の閾値は、運転適正範囲の下限とすることを特徴とする視認力向上支援装置。
【請求項12】
前記請求項11記載の視認力向上支援装置において、
前記運転適正範囲は、運転者が運転を開始してから所定期間における荷重中心位置の標準偏差により得られる範囲において、その中央値を中心として25%から50%の範囲とすることを特徴とする視認力向上支援装置。
【請求項13】
前記請求項11又は12に記載の視認力向上支援装置において、
前記ノイズ付与態様制御手段は、前記荷重中心位置の標準偏差が前記運転適正範囲に当てはまる場合には、前記視覚的ノイズのノイズ強度を、初期設定値と同等なノイズ強度とすることを特徴とする視認力向上支援装置。
【請求項14】
前記請求項8〜13のいずれかに記載の視認力向上支援装置において、
前記ノイズ付与態様制御手段は、前記荷重中心位置の標準偏差が所定の第2の閾値を上回った場合には、それまで付与していた視覚的ノイズと同じノイズ強度のノイズを付与することを特徴とする視認力向上支援装置。
【請求項15】
前記請求項14に記載の視認力向上支援装置において、
前記第2の閾値は、前記運転適正範囲の上限とすることを特徴とする視認力向上支援装置。
【請求項16】
前記請求項8〜15のいずれかに記載の視認力向上支援装置において、
前記運転者状態取得手段は、前記車両状態取得手段から得られる上下方向の車両挙動に応じて、前記荷重中心位置から標準偏差を得るための荷重分布中心のサンプル数を増減することを特徴とする視認力向上支援装置。
【請求項17】
前記請求項8〜15のいずれかに記載の視認力向上支援装置において、
前記運転者状態取得手段は、前記車両状態取得手段から得られる左右方向の車両挙動に応じて、前記荷重中心位置から標準偏差を得るための荷重分布中心のサンプル数を増減することを特徴とする視認力向上支援装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図9】
【図10】
【図11】
【図8】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図9】
【図10】
【図11】
【図8】
【公開番号】特開2008−217482(P2008−217482A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−54722(P2007−54722)
【出願日】平成19年3月5日(2007.3.5)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月5日(2007.3.5)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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