説明

親和性反応の化学的に増幅された電気化学的検出

本発明は、概して電気化学の分野に関する。特に、本発明は、検体をアッセイするための方法を提供し、とりわけ酸化物電極において分析される検体と結合および/または反応し得る反応剤および電極により直接酸化され得ない還元剤を用いて、酸化還元反応に関与する還元電気化学活性分子を作り出し、増幅電気化学信号を繰り返し発生させて、試料中の検体の存在および/または量を決定する方法に関する。親和性反応を化学的に増幅させて電気化学的に検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、概して電気化学の分野に関する。特に、本発明は、検体をアッセイするための方法およびキットを提供し、とりわけ酸化物電極において分析される検体と結合および/または反応できる反応剤および電極により直接酸化され得ない還元剤を用いて、酸化還元反応に関与する還元電気化学活性分子を繰り返し作り出し、増幅電気化学信号を発生させて、試料中の検体の存在および/または量を決定する方法およびキットに関する。
【背景技術】
【0002】
背景技術
現在利用可能な分析方法を改良し、より高い感度、より低いコストおよびより良い再現性を得るという目的を持った新しい方法を開発するために絶えず努力がなされてきた。通常、親和性系の生物学検出では、標識(信号発生分子)が、生物分子に付着し、独自の生物学的認識を通して補完的なパ−トナ−に結合する。その認識反応としては、DNA−DNA間、DNA−RNA間、抗原−抗体間およびリガンド−レセプター間等を含む。その結合反応は、光、電流、何らかの塊(mass)、音などの形で標識から放射される信号を測定することにより、検出され、ある場合には定量される。
【0003】
初期の生物学検出では、放射性同位体が標識として用いられていた。それら放射性同位体は適切な感度が得られるが、貯蔵期限が短く、人間の健康に害を及ぼす。その結果、放射性同位体は酵素標識および吸着系検出装置(例えばELISA)に置き換えられている。酵素標識は安全であるが、長期の貯蔵に十分な安定性は有しない。そして感度もまた影響を受ける。次に蛍光有機分子および蛍光無機分子が出現する。これらは、安全かつ安定である。これらは、ELISAより高い感度が得られるが、なお放射性同位体に匹敵するものではない。複雑で高価なレーザー励起源および検出光学機器では、装置コストもまた重要な欠点である。最近では、化学ルミネセンスおよび電気化学ルミネセンスが、それらが(非常に低いバックグラウンドによる)超高感度を有し、かつ安定的な試薬であることから臨床診断研究室において選択される検出方法になってきている。しかしながら、その方法は光学検出を依然として用いているため、装置コストは比較的高いままである。
【0004】
光学検出と平行して、電気化学もまた化学分析および生物分析でこれまでに用いられてきた。低い装置コストで簡単であるため、電気化学検出は、コストと可搬性が重要な問題である分野においてはかなり成功している。電気化学検出の例としては、イオン選択性電極、手持ち式のグルコースメーターおよび他の血液分析器などが含まれる。しかしながら、抗体と抗原間によるものような親和性反応の電気化学検出は、成功していないようである。これは主に、通常の電気化学検出において親和性反応のための標識が1つだけの電子(検出信号)しか与えないか受け取らないという事実によるものである。この事実は、2層充電からのバックグラウンド電流と組み合わされて、その感度に重大な限界をもたらす。
【0005】
化学増幅は、以前は電気化学信号を増大する方法であると考えられていた。この方策を進めるために、化学薬剤が電解液に加えられる。検出信号は、依然として親和性反応の標識分子の電気化学電流である。反応が連続する際に、最初に標識が電極により酸化される。これに続いて溶液内において酸化された標識と溶液内の化学薬剤(これは標識を元の酸化還元状態に還元し戻す)との間での酸化還元化学反応がおこる。再生された標識は、再び最初の段階に関与することができる。全体的な効果は、同じ標識分子の循環および繰り返される電気化学反応である。これにより、同じ標識から複数の電子が引き出せるので、信号増幅が生じる。
(1) 電極反応: 標識(還元) → 標識(酸化)
(2) 化学再生: 標識(酸化)+還元剤 → 標識(還元)
(3) (1)を繰り返す。
【0006】
化学増幅は何年も前から提案されているにもかかわらず、あまり成功しなかった。その主な理由は、一般的に言えば、増幅に用いられる化学薬剤が電極で直接酸化されるようになり、高いバックグラウンド電流を生じさせ得るからである。したがって、目標は増幅効果を最大にし、同時に化学薬剤からのバックグラウンドを最小にすることである。
【0007】
親和性反応は、一般的に親和性ペアの1つに付着する標識と呼ばれる信号発生分子の助けにより検出される。上述したように、色、蛍光、化学ルミネセンスおよび電気化学ルミネセンスを発生する様々な分子は、標識として使われてきた。
【0008】
理論上は、多くの生物分子は標識を使わずに電気化学法により検出することができる。というのは、それらの成分の内のいくつかは、酸化還元活性を有しているからである。例えば、DNA内においてグアニンは、対標準水素電極(NHE)で1.3Vの酸化還元電位を有しており、これは容易に多くの電極で得ることができる。他の塩基は、それより高い酸化還元電位を有している。DNAの糖部位もまた酸化可能である。タンパク質では、チロシンの酸化還元電位が0.82〜0.95V、トリプトファンが0.82〜1.07V、そしてヒスチジンが1.32〜1.62Vである。しかしながら、これらの酸化反応は反応速度が遅く、そのため検出用には実用的ではない。
【0009】
米国特許第5,871,918号(Thorpら)には、グアニン塩基を間接的に電気化学酸化することによりDNAを分析する方法が記載されている。この方法では、標的DNAは電極表面に固定されたプローブとハイブリダイズする。例えばルテニウムトリス−ビピリジンのような遷移金属錯体が溶液中に溶解され、標的DNA中のグアニン塩基の電気化学的酸化を仲介するのに使用される。この複合体は、最初に電気化学的に酸化される。次いで、グアニンとの化学反応により還元された状態に戻る。還元された複合体は、電極において再び酸化され得る。このアプローチの欠点は、DNAが全く存在しない場合に複合体が酸化電流を生み出し、これがバックグラウンド信号となることである。さらに、DNA内のグアニン塩基の量が少ないために、増幅効率が最善ではない。米国特許第6,346,387号では、同じ著者がタンパク質分析のための同様のアプローチを提案していた。
【0010】
上述したように、電気化学標識は、親和性反応の分析のために用いることができる。米国特許第5,312,527号で、Mikkelsenらは、非共有結合よってDNA二本鎖をコバルトトリスビピリジンで標識化し、続いて電気化学的検出を行った。DNA二本鎖は、ガラス上炭素電極においてハイブリダイズされる。コバルト錯体が電解液に少量加えられる。それは、インターカレーションにより二本鎖と結合するが、単鎖とは結合しない。標的DNAが存在しない場合は、その錯体は低濃度で溶液に均一に分配され、幾分かのバックグラウンド電流を作り出す。標的DNAが導入され電極に固定されたプローブとハイブリダイズするとき、錯体は二本鎖に中にインターカレートされる。電極表面での錯体の集積は、溶液中の錯体よりかなり高い電流を作り出す。これは、二本鎖形成を指示するものとしての役割を果たす。このアプローチは、結合していない金属錯体が高いバックグラウンド電流を作り出すということにおいて、Thorpのものと同じ欠点を有している。
【0011】
DNAを標識化する従来の方法に追随して、Meadeらは、米国特許第6,277,576号の中でDNAの糖部位に電気化学標識を共有結合で付ける合成方法を開示している。速い電極反応速度を有する古典的な電気化学化合物であるフェロセンが、標識として用いられている。DNAプローブは、導電性のあるチオール分子を介して金電極に固定さている。その表面の他の領域は、絶縁層で覆われている。標識化DNAがプローブとハイブリダイズした後、フェロセンの電気化学的電流が検出されるが、絶縁層はバックグラウンド電流を最小値に維持する。ここでは開示された方法には増幅機構がないということを指摘することに価値を有する。
【0012】
酵素は、DNAおよび免疫反応に対する標識として多くの場合において用いられてきた。1つの酵素分子は、数千以上の基質を触媒することができるので、本来備わっている増幅機構が存在する。例として、William HeinemanらのAnal.Chem.1996,68,2453、I.WillnerらのAnal.Chem,1996,68,3151、およびAdam HellerのJ.Am.Chem.Soc.,1999,121,769に開示されたものが挙げられる。酵素の大きさおよび不安定性は、それらの応用を制限する。
【0013】
米国特許第6,221,586号は、標識として電気化学的に活性なDNAインターカレーターを、酸化されたインターカレーターを再生するための還元剤として溶解したヘキサシアノ鉄(III)塩を用いるアプローチを使用している。使われている金電極上でのヘキサシアノ鉄(III)塩の電流は抑制することが難しいので、感度が重要な課題である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
当該技術分野において、高感度でコスト効果の良い検出が必要とされている。本発明は、このことおよび当該技術分野における他の関連する要求に対応している。
【課題を解決するための手段】
【0015】
発明の開示
電極の材料および試薬類は、化学的に増幅される電気化学法により化学親和性反応および生物親和性反応の検出のために用いられる。本方法および本キットの利点には、現在の一般的な蛍光法より顕著に低い装置コストであるが、同等の感度を有することが含まれる。
【0016】
1つの局面では、本発明は、検体をアッセイするための方法に関する。その方法は、a)分析される検体と酸化物電極において結合および/または反応し得る反応剤を提供する工程;b)検体が前記試料中に存在していれば、前記検体と前記反応剤とを結合できるような適切な条件の下で、前記検体を含むことが疑われる試料と工程a)で提供された反応剤とを接触させる工程であって、前記反応剤、前記検体、あるいは追加の反応剤、追加の検体または検体類似物が還元された形の電気化学活性分子に共有結合しており、そしてその接触により、前記電気化学的活性分子を前記電極の近傍へ持ってきて、前記電極により前記電気化学活性分子を酸化する工程;c)酸化された電気化学活性分子を還元剤によって還元された形に還元して戻す工程であって、還元剤が電極により直接酸化され得ないで、還元された電気化学活性分子が工程b)およびc)の酸化還元反応において繰り返し関与して、増幅電気化学信号を発生させる工程;ならびにd)その増幅電気化学信号を評価して、試料中の検体の存在および/または量を決定する工程を包含する。
【0017】
別の局面では、本発明は検体をアッセイするためのキットに関する。そのキットは、a)分析される検体と酸化物電極において結合および/または反応し得る反応剤;b)電気化学活性分子に共有結合する追加の反応剤、検体または検体類似物の存在下で、電極上でその検体をその反応剤と接触させることにより、その電気化学的活性分子を電極の近くへ持ってきてその電気化学活性分子を該電極によって酸化する、還元された形の電気化学活性分子に共有結合する追加の反応剤、検体または検体類似物;c)電極により直接酸化され得ない還元剤であって、繰り返される酸化還元反応に関与するために、その還元剤が酸化された電気化学活性分子を還元された状態に還元し戻して、増幅電気化学信号を発生させる還元剤;ならびにd)試料中の検体の存在および/または量を決定するために、増幅電気化学信号を評価する手段
を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
発明の実施の態様
制限の手段ではなく、開示を明確にするために、本発明の詳細な説明は以下のサブセクションに分節される。
【0019】
A.定義
他に規定がない限り、本明細書で用いられる全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって通常理解される意味と同じ意味を有する。本明細書に参照される全ての特許、出願、公開された出願および他の刊行物は、それら全体が参考として援用される。もし本章で定められた定義が、本明細書で参考として援用される特許、出願、公開された出願および他の刊行物で定められた定義と逆であるかまたは他に矛盾を有している場合は、本章で定められた定義が本明細書で参照として援用される定義よりも優先される。
【0020】
本明細書で用いられる「1つの」(「a」または「an」)は、「少なくとも1つの」または「1以上の」を意味する。
【0021】
本明細書で用いられる「電極」は、それを通って電流が媒体に出入する導電体または半導体を意味する。媒体は、電解質溶液、固体、溶融した塊、気体または真空であり得る。
【0022】
本明細書で用いられるときに、「酸化物電極」は、金属酸化物または非金属酸化物で構成される導電体または半導体を意味する。酸化物は、安定な状態で存在することができ、したがって「天然酸化物」と呼ばれる。あるいは、電圧が電極に印加された後にのみ酸化物が発生し、いったん電圧を切れば不安定になってもよい。この場合は、酸化物はその場でのみ存在する。
【0023】
本明細書で用いられる「電気化学活性分子」は、適切な電圧が電極に印加されたときに、電極へ電子を渡し得るかあるいは電極から電子を受け取り得る分子を意味する。
【0024】
本明細書で用いられる「還元剤」は、酸素を除去し、水素または電子を与える任意の試薬を意味する。還元剤は、還元プロセスにおいて酸化される。還元剤の相対的な強さは、それらの標準電極電位により推測され得る。慣例により、標準電極電位は、還元電位または還元されやすさである。したがって、最も強い還元剤は、大きい負の電極電位を有している。(例えば、BardおよびFaulkner,Electrochemical Methods,Wiley,New York,1980を参照のこと。)
本明細書で用いられる「前記還元剤が前記電極により直接酸化され得ない」は、還元剤の標準電位と電極に印加される電圧との差が、還元剤を酸化するのに十分なくらい大きいにもかかわらず、酸化の速度が非常に遅いので無視できるということを意味する。
【0025】
本明細書で用いられる「Good」緩衝液は、1996年にGoodらによって導入された緩衝液の類を意味する(Good,N.Eら,Biochemistry,5:467(1996))。それらは、正帯電基として第二アミン類または第三アミン類を、負帯電基としてスルホン酸またはカルボン酸を含む両性イオン緩衝液である。例示されるGood緩衝液としては、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸(BES)、(またはN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)タウリン))、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)グリシン(BICINE)、3−(シクロヘキシルアミノ)−1−プロパンスルホン酸(CAPS)、4−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−1−プロパンスルホン酸(HEPPS)(またはN−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−N’−(3−プロパンスルホン酸))、4−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−1−エタンスルホン酸(HEPES)(またはN−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−N’−(2−エタンスルホン酸))、2−(N−モルフォリノ)エタンスルホン酸(MES)、あるいはそれらのヘミソジウム塩(hemisodium salt)または一水和物、4−モルフォリンプロパンスルホン酸(MOPS)(または3−モルフォリノプロパンスルホン酸)、ピペラジン−1,4−ビス(2−エタンスルホン酸)(PIPES)(またはピペラジン−N,N’−ビス(2−エタンスルホン酸)または1,4−ピペラジンジエタンスルホン酸)、[(2−ヒドロキシ−1,1−ビス[ヒドロキシメチル]エチル)アミノ]−1−プロパンスルホン酸(TAPS)(またはN−[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]−3−アミノプロパンスルホン酸)、2−[2−ヒドロキシ−1,1−ビス(ヒドロキシメチル)エチルアミノ]エタンスルホン酸(TES)(またはTES遊離酸)およびN−[2−ヒドロキシ−1,1−ビス(ヒドロキシメチル)エチル]グリシン(TRIClNE)(またはN−[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]グリシン)(Sigma−Aldrich製品カタログを概ね参照のこと)が挙げられる。
【0026】
本明細書で用いられる「標識」は、検出可能な信号を提供するのに用いることのできる任意の原子、分子または部位を意味する。
【0027】
本明細書で用いられる「抗体」は、免疫グロブリンの特定の型を意味し、すなわちIgA、IgD、IgE、IgG(例えばIgG、IgG2、IgGおよびIgG)、およびIgMのことである。抗体は、任意の適切な形態で存在することができ、任意の適切なフラグメントまたは誘導体もまた含む。例示される抗体としては、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、Fabフラグメント、Fab’フラグメント、F(ab’)フラグメント、Fvフラグメント、二重特異性抗体、単鎖抗体、および抗体フラグメントから形成される多重特異性抗体が挙げられる。
【0028】
本明細書で用いられる「核酸」は、DNA、RNAまたはPNAを含むが、これらに限定されない任意の核酸を含んだ分子を意味する。この用語は、DNAおよびRNAの公知の塩基類似物(以下のものを含むが、これらに限定されない)のいずれかを含む配列を包含する:4−アセチルシトシン、8−ヒドロキシ−N6−メチルアデノシン、アジリジニルシトシン、プソイドイソシトシン、5−(カルボキシヒドロキシルメチル)ウラシル、5−フルオロウラシル、5−ブロモウラシル、5−カルボキシメチルアミノメチル−2−チオウラシル、5−カルボキシルメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、イノシン、N6−イソペンテニルアデニン、1−メチルアデニン、1−メチルプソイドウラシル、1−メチルグアニン、1−メチルイノシン、2,2−ジメチルグアニン、2−メチルアデニン、2−メチルグアニン、3−メチルシトシン、5−メチルシトシン、N6−メチルアデニン、7−メチルグアニン、5−メチルアミノメチルウラシル、5−メトキシアミノメチル−2−チオウラシル、β−D−マンノシルケオシン(queosine)、5’−メトキシカルボニルメチルウラシル、5−メトキシウラシル、2−メチルチオ−N6−イソペンテニルアデニン、ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル−5−オキシ酢酸、オキシブトキソシン、プソイドウラシル、ケオシン、2−チオシトシン、5−メチル−2−チオウラシル、2−チオウラシル、4−チオウラシル、5−メチルウラシル、N−ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル−5−オキシ酢酸、プソイドウラシル、ケオシン、2−チオシトシン、および2,6−ジアミノプリン。
【0029】
本明細書で用いられる「植物」は、様々な光合成を行う植物界に属する真核多細胞生物であって、特徴として胚を産生し、葉緑体を含有し、セルロース細胞壁を有し、および移動ができない生物のいずれかを意味する。
【0030】
本明細書で用いられる「動物」は、動物界に属する多細胞生物を意味し、移動する能力、光合成でない代謝、刺激に対する明白な反応、制限された成長、および一定の体構造を特徴とする。動物の例としては、鳥類(例、ニワトリ)、脊椎動物(例、魚類)および哺乳類(例、マウス、ラット、ウサギ、ネコ、イヌ、ブタ、雌ウシ、雄ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、サルおよびヒト以外の他の霊長類)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0031】
本明細書で用いられる「細菌」は、全ての原核生物を意味し、原生生物界の全ての門に属するものを含む。この用語は、マイコプラズマ、クラミジア、アクチノミセス、ストレプトミセス、およびリケッチアを含む細菌と考えられる全ての微生物を包含する。全ての形態の細菌は本定義に中に含まれ、球菌、桿菌、スピロヘータ、スフェロプラスト、プロトプラストなどを含んでいる。
【0032】
本明細書で用いられる「ウイルス」は、いくつかの例外があるが、光学顕微鏡で観察できず、独立した代謝を欠いており、生きた宿主細胞内においてのみ複製可能な微小感染性病原体を意味する。個々の粒子(すなわちビリオン)は、核酸およびタンパク質の殻または被膜からなる。ある種のビリオンは、脂質含有膜もまた有している。この用語「ウイルス」は、全ての型のウイルスを包含し、動物ウイルス、植物ウイルス、ファージウイルス、および他のウイルスを含む。
【0033】
本明細書で用いられる「菌類」は、変則的な塊で成長し、根、茎または葉を持たず、葉緑素または他の光合成可能な色素を欠く真核生物の区分を意味する。各生物(葉状体)は、フィラメント状で単細胞であり、グルカン、キチンまたはその両方を含む細胞壁に囲まれ、本当の核を含む分枝した体細胞構造(菌糸)を有する。
【0034】
本明細書で用いられる「試料」は、本方法および/または本デバイスを使って、アッセイされる検体を含み得るいずれかのものを意味する。試料は、生体液あるいは生体組織のような生物試料であってもよい。生体液の例としては、尿、血、血漿、血清、だ液、精液、便、痰、大脳髄液、涙、粘液、羊水などが含まれる。生体組織は、ヒト、動物、植物、細菌、菌類あるいはウィルス構造体の構造材料の1つを形成し、それらの細胞間物質と共にある、通常特定の種類の細胞の凝集体であり、結合組織、上皮組織、筋肉組織および神経組織が含まれる。生体組織の例としては、臓器、腫瘍、リンパ節、動脈および個々の細胞もまた含まれる。生体組織は、細胞懸濁試料を得るために処理することができる。試料は、インビトロで調製された細胞の混合物でもよい。試料は、培養された細胞懸濁液でもよい。生体試料の場合、そのままの試料であるか、または元の試料において種々の処理または調製の後に得られる処理された試料であってもよい。例えば、種々の細胞分離法(例えば、磁力的に活性化した細胞の分類)は、血液のような体液試料から標的細胞を分離し、または濃縮するために適用することができる。本発明に用いられた試料には、このような標的細胞が濃縮された細胞調製物が含まれる。
【0035】
本明細書で用いられる「液体(流体)試料」は、それが液体、あるいは流体(例えば生物流体)として自然に存在する試料を意味する。「液体試料」はまた、液体でない状態(例えば固体または気体)で天然に存在するが、固体または気体試料物質を含む液体、流体、溶液または懸濁液として調製される試料も意味する。例えば、液体試料には、生体組織を含んでいる液体、流体、溶液または懸濁液が包含され得る。
【0036】
本明細書で用いられる、「検体」は、分析される任意の物質を意味する。このような物質としては、イオン、分子、抗原、細菌、化合物、ウイルス、細胞、抗体および細胞器官などが含まれるが、これらに制限されない。
【0037】
本明細書で用いられる「特異性結合」は、特定の分子構造の存在に依存している方法で、ある物質に他の物質を結合させることを意味する。例えば、レセプターは、リガンド結合部位に相補的な化学構造を含んでいるリガンドに選択的に結合する。逆に、「非特異性結合」は、任意の、そして分子の構造的な適合性に基づかない、相互作用をいう。
【0038】
本明細書で用いられる、「特異性結合対」は、他の物質を除外して、リガンドに対する特異性結合親和性を有する任意の物質または物質の種類を意味する。1つの実施形態では、特異性結合対は、試料リガンドまたは免疫化学法による試料とリガンドとの結合能力と相互作用する特異性結合アッセイ試薬を含む。例えば、試薬および/または試料リガンドまたは試料のリガンドに対する結合能力との間の抗原−抗体関係またはハプテン−抗体関係が存在する。さらに、リガンドと結合パートナーとの間の他の結合相互作用は、特異性結合アッセイの基準としての役割を果たし、ホルモン、ビタミン、代謝物および薬物とそれらの各レセプターおよび結合物質との間の結合相互作用を含むことは、当該技術分野においてよく理解されることである。(例えば、Langanら編,Ligand Assay,pp.211 et seq.,Masson Publishing U.S.A.Inc.,New York,1981を参照のこと。).
本明細書で用いられる「血漿」は、凝固させた後に得られた血清から分離された血液の流動的な非細胞部を意味する。
【0039】
本明細書で用いられる「血清」は、循環している血液内で血漿から分類されて、フィブリン塊および血球の除去の後で得られた血液の流体部分を意味する。
【0040】
本明細書で用いられる「流体」は、流動可能な任意の組成物を意味する。したがって、流体は、準固体、ペースト、溶液、水性混合物、ゲル、ローション、クリームおよび他のそのような組成物の形態である組成物を含有する。
【0041】
本明細書で用いられる用語「評価すること(assessing)」は、試料中に存在する検体の定量的測定および/または定性的測定、ならびに試料中の検体の含有量を示している指数、比率、パーセンテージ、目に見える値または他の値の定量的測定および/または定性的測定を含むことを意図している。評価は直接的または間接的であってもよく、そして実際に検出された化学種が検体それ自身である必要は当然ないが、例えば、それらの誘導体または何らかのさらなる物質であってもよい。
【0042】
本明細書で用いられる「アルキル」は、直鎖アルキル基または分枝アルキル基を包含し、1以上の置換基で任意に置換されたアルキル基を含む。例えば、アルキル基は、ヒドロキシ基、ハロゲン基、アリール基、アルコキシ基、アシル基、または当該技術分野で公知の他の置換基により任意に置換することができる。アルキル基の1以上の炭素原子はまた、1以上のヘテロ原子と任意に置き換えることもできる。
【0043】
本明細書で用いられる「置換」は、化合物中の水素原子と置換基との置き換えを意味する。
【0044】
B.検体をアッセイするための電気化学に基づいた方法およびキット
1つの局面では、本発明は、検体をアッセイするための方法に関する。その方法は、a)分析される検体と酸化物電極において結合および/または反応し得る反応剤を提供する工程;b)検体が前記試料中に存在していれば、その検体と前記反応剤とを結合できるような適切な条件の下で、前記検体を含むことが疑われる試料と工程a)で提供された反応剤とを接触させる工程であって、前記反応剤、検体、あるいは追加の反応剤、追加の検体または検体類似物が還元された形の電気化学活性分子に共有結合しており、そしてその接触により、電気化学的活性分子を前記電極の近くへ持ってきて、前記電極により電気化学活性分子を酸化可能とする工程;c)酸化された電気化学活性分子を還元剤によって還元された形に還元して戻す工程であって、その還元剤が電極により直接酸化され得ないで、還元された電気化学活性分子が工程b)およびc)の酸化還元反応において繰り返し関与して、増幅電気化学信号を発生させる工程;ならびにd)前記増幅電気化学信号を評価して、前記試料中の前記検体の存在および/または量を決定する工程を含む。
【0045】
別の局面では、本発明は検体をアッセイするためのキットに関する。そのキットは、a)分析される検体と酸化物電極において結合および/または反応し得る反応剤;b)電気化学活性分子に共有結合する追加の反応剤、検体または検体類似物の存在下で、電極上でその検体をその反応剤と接触させることにより、その電気化学的活性分子を電極の近くへ持ってきてその電気化学活性分子を電極によって酸化可能とする、還元された形の電気化学活性分子に共有結合する追加の反応剤、検体または検体類似物;c)電極により直接酸化され得ない還元剤であって、繰り返される酸化還元反応に関与するために、その還元剤が酸化された電気化学活性分子を還元された形へ還元し戻し、増幅電気化学信号を発生させる還元剤;ならびにd)前記増幅電気化学信号を評価して、試料中の検体の存在および/または量を決定する手段を含む。
【0046】
好ましくは、キットは、検体をアッセイするためのキットを用いるための装置をさらに含む。また好ましくは、キットは、電気化学活性分子を酸化できるが、還元剤を酸化できない酸化物電極をさらに含む。
【0047】
本方法および本キットは、細胞、細胞オルガネラ、ウイルス、分子およびそれらの凝集体または複合体のような検体のいずれでもアッセイするために使うことができる。例示される細胞としては、動物細胞、植物細胞、菌類細胞、細菌細胞、組換え細胞および培養された細胞が含まれる。例示される細胞のオルガネラとしては、核、ミトコンドリア、葉緑体、リボソーム、ER、ゴルジ体、リソソーム、プロテアソーム、分泌小胞、液胞およびミクロソームが含まれる。アッセイされる分子は、無機分子、有機分子およびそれらの複合体であってもよい。例示される有機的な分子としては、アミノ酸、ペプチド、タンパク質、ヌクレオシド、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、核酸、ビタミン、単糖類、オリゴ糖、炭水化物、脂質およびそれらの複合体が含まれる。1つの特定の実施形態においては、アッセイされる検体は、ホルモン、がんマーカー、ステロイド、ステロール、薬剤化合物、薬剤化合物の代謝物またはそれらの複合体である。
【0048】
本方法および本キットは、任意の適切な試料をアッセイするために使うことができる。例えば、本方法および本キットは、哺乳類の試料(例、ウシ、ヤギ、ヒツジ、ウマ、ウサギ、モルモット、マウス、ヒト、ネコ、サル、イヌおよびブタに由来する試料)の中の検体をアッセイするために使うことができる。他の例では、本方法と本キットは、臨床的試料(例えば、血清、血漿、全血、痰、大脳髄液、羊水、尿、胃腸の内容物、髪、唾液、汗、粘性断片(gum scrapping)、生検からの組織)の中の検体をアッセイするために使うことができる。好ましくは、アッセイされる試料は、ヒトの臨床的試料である。さらに他の例では、本方法および本キットは、体液試料中の検体をアッセイするために使うことができる。
【0049】
いずれの適切な反応剤も、本方法および本キットを用いることができる。好ましくは、反応剤は、検体と特異的に結合および/または反応する。1つの例では、反応剤は、細胞、細胞オルガネラ、ウイルス、分子、およびそれらの凝集体または複合体である。他の例では、反応剤は抗体である。さらに他の例では、反応剤は核酸である。
【0050】
本方法と本キットは、任意の適切なアッセイフォーマットで用いることができる。1つの例では、本方法と本キットは、検体が電気化学活性分子と共有結合し、電極上の反応剤と検体とを接触させることにより電気化学活性分子を電極に接近させるという直接アッセイフォーマットで用いられる。
【0051】
他の例では、本方法および本キットは、電極上の反応剤、検体、および検体と結合および/または反応する能力があり、電気化学活性分子に共有結合する2番目の反応剤が、サンドイッチ構造を形成し、電気化学活性分子を電極に接近させるというサンドウィッチアッセイフォーマットで用いられる。さらに他の例では、本方法および本キットは、検体と、電気化学活性分子に共有結合する検体または検体類似物とが、電極上の反応剤との結合に対して競合し、そして電気化学活性分子と共有結合する検体または検体類似物が反応剤と結合することにより電気化学活性分子を電極に接近させるという競合アッセイフォーマットで使われる。さらにもう1つの例では、本方法および本キットは、酵素免疫吸着法(ELISA)、イムノブロッティング、免疫沈降、ラジオイムノアッセイ(RIA)、イムノ染色、ラテックス凝集、間接血球凝集アッセイ(IHA)、相補物固定、間接免疫蛍光アッセイ(IFA)、比濁法、フローサイトメトリーアッセイ、化学ルミネセンスアッセイ、側方流動イムノアッセイ、μ捕獲アッセイ、阻害アッセイ、エネルギー移動アッセイ、結合活性アッセイ、濁度測定イムノアッセイまたは時間分解増幅クリプテート放射(TRACE)アッセイで用いられる。
【0052】
いずれの適切な電気化学活性分子でも、本方法および本キットを用いることができる。例えば、電気化学活性分子は遷移金属錯体であり得、例としては、フェロセン、金属ポルフィリン、金属ポリピリジン、金属ポリフェナントロリンおよび金属フタロシアニンである。1つの特定の実施形態では、遷移金属錯体は金属トリス(2,2’−ビピリジン)およびその誘導体である。もう1つの特定の実施形態では、遷移金属錯体はルテニウムトリス(2,2’−ビピリジン)およびその誘導体の1つである。いずれの適切な遷移金属でも用いることができる。例示される遷移金属としては、コバルト、ニッケル、オスミウム、鉄、レニウム、クロムおよびルテニウムが含まれる。
【0053】
本方法および本キットで用いられる酸化物電極は、任意の適切な方法(例えば、自然の状態での形成)により形成することができる。任意の適切な電極が本方法と本キットで使用可能である。例えば、電極は、金、プラチナ、銀、コバルト、ニッケルおよび炭素電極であり得る。好ましくは、電極は金属酸化物電極である。単一の金属酸化物または2種以上の金属酸化物の組み合わせのいずれでも用いることができる。例示される金属酸化物としては、酸化インジウム、酸化スズ、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化タングステン、酸化亜鉛および酸化鉄が含まれる。金属酸化物は純粋な金属酸化物であり得るか、またはスズをドーピングしたインジウム酸化物またはフッ素をドーピングしたスズ酸化物ようなドープ金属酸化物でもあり得る。
【0054】
任意の適切な還元剤が、本方法および本キットで使用可能である。1つの例では、還元剤は水溶液に可溶である。他の例では、還元剤は有機酸化還元分子である。例示される有機酸化還元分子としては、有機酸(例えば、カルボン酸およびシュウ酸)、有機塩基(例えば、一級アミン、二級アミンまたは三級アミンなどのアミン類)、有機イオンおよび有機両性イオンが含まれる。有機酸化還元分子はまた、イオン化有機酸(例えば、シュウ酸塩)または、イオン化有機塩基(例えば、プロトン化トリプロピルアミン)であり得る。任意の適切な有機両性イオンが、本方法および本キットで使用可能である。例えば、有機両性イオンは、有機塩基および有機酸を含むことができる。1つの特定の実施形態では、有機塩基はアミンであり有機酸はカルボン酸である。他の特定の実施形態では、有機塩基はアミンであり有機酸はスルホン酸である。さらに他の特定の実施形態では、有機両性イオンはプロリンのようなアミノ酸である。さらに他の特定の実施形態では、有機両性イオンは、「Good」緩衝液であり、例としては、BES、BICINE、CAPS、HEPPS、HEPES、MES、MOPS、PIPES、TAPS、TESおよびTRICINEがある。
【0055】
C.例示される実施形態
1つの特定の実施形態では、本発明は以下のシステムを提供する。(1)電気化学活性標識は、親和性結合対の1つの分子に共有結合する;(2)標識は、親和性反応が起きる電極で速い電子伝達を受ける;(3)標識が、溶液中に溶けている化学薬剤の電気化学反応を触媒する;および(4)電極材料は、化学薬剤の直接の電気化学反応が最小となるようなものである。そのため、このシステムは、増幅された信号および低いバックグラウンドのために高い感度を提供する。
【0056】
サンドイッチイムノアッセイのためには、本発明は、下記の工程により実行され得る。
【0057】
抗体/抗原親和性対(捕獲抗体)の1つは、電極上に固定される。
【0058】
電極を、テスト試料と接触させる。抗原が存在しているとき、それは固定された捕獲抗体に結合する。
【0059】
ついで、電極を、電気化学標識が共有結合している第2の抗体(標識化抗体)と接触させる。こうして、捕獲抗体/抗原/標識化抗体の3次の複合体が形成される。
【0060】
最終的に、電極は還元剤を含んでいる溶液に浸される。標識の化学的に増幅された電気化学電流が測られて、そしてテスト試料中の抗原の存在または量と関連づけられる
この実施形態は、イムノアッセイに限定されておらず、リガンド−レセプター結合対、DNA−DNA結合対、DNA−RNA結合対およびタンパク質−DNA結合対のような他の親和性に基づくアッセイにも同様に適用できる。検体は、天然由来または合成された化学分子、生化学分子、生物分子であり、薬物、ペプチド、タンパク質、リガンド、レセプター、糖類、ビタミン、ホルモン、脂質、オリゴヌクレオチド、DNA、RNA、ウイルスおよび細胞が含まれる。アッセイは、サンドイッチアッセイ、競合アッセイまたは直接アッセイのうちのいずれかであり得る。
【0061】
一般に、本明細書で使われる電気化学標識は次の特徴を有している。(1)検出で用いられる電極との速い電気化学反応を示す;(2)分子の酸化状態および還元状態の両方が安定している;(3)他の分子に結合するのに使うことのできる官能基を有している;(4)合成および精製するのが容易であり、高価ではない;および(5)他の分子と結合する場合、親和性反応は任意のかなり有害な方法でも影響を受けない。適切な標識は、多くの場合にフェロセン、金属ポルフィリン、金属ポリピリジン、金属ポリフェナントロリンおよび金属フタロシアニンのような遷移金属錯体である。金属ポリピリジンは、電気化学標識として魅力ある候補である。なぜなら、上述の特徴の他にも、それらの酸化還元電位は、異なった金属を使うことによって簡単に広範囲で調節することができるからである。例えば、コバルト、オスミニウム、鉄およびルテニウムを使うことによって、金属トリス(2,2’−ビピリジン)の酸化還元電位は、連続的に0Vから1.1V(対SCE)に増える。実施例3で例証されるように、標識と還元剤の間の酸化還元電位に適合するものを探す場合、酸化還元電位にバリエーションがあることは望ましい。
【0062】
化学的に増幅された電気化学検出に適切であるには、電極は、標識と速い電子交換が可能でなければならないが、還元剤との電気化学反応が無視できなければならない。多くの酸化された電極がこの要求を満たす。それらは、電極がどのように酸化されるかによって、おおよそ2つのグループに分類できる。第1のグループの電極は、通常原子状態であるが、電気化学測定の間に容易に酸化され得る。言い換えれば、酸化された電極は自然に形成される。一旦、電圧が取り去られると、酸化された状態は不安定となる。これら電極としては、金、プラチナ、銀、コバルト、ニッケル、炭素などが含まれる。第2のグループには、安定性がある酸化物である金属酸化物電極が含まれる。その材料としては、酸化インジウム、酸化スズ、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化タングステンなどが含まれる。それらは、純粋な金属酸化物、またはスズをドーピングされたインジウム酸化物(ITO)のようなドーピングされた金属酸化物でもよい。種々の形および大きさの金属酸化物電極の調製は、この分野の当業者にとって常識である。この実施形態のための好ましい電極は、金属酸化物である。最も好ましいのは、ドープされたまたはドープされていない酸化インジウム、酸化スズおよび酸化チタンである。
【0063】
還元剤は、酸化還元活性でなければならない。そして酸化された標識を還元することが可能なように、還元剤の酸化還元電位は標識化分子の酸化還元電位より低くなければならない。また、還元剤自体の電気化学電流は、検出感度を最大にするために最小に維持されなくてはならない。さらに、還元剤は、好ましくは水溶液への適正な溶解度および長い保存期間を有する。一般に、有機酸化還元分子は、たいていの酸化された電極上で遅い電気化学反応を示す。理由は現在のところ明確ではないが、一般的な考え方は、電気化学反応が分子と金属表面との間に化学結合を伴うということである。酸化させられた表面の上で、このような結合は形成され得ず、したがって電子伝達反応が遅くなる。例示される還元剤としては、有機酸、有機塩基、有機イオンおよび有機両性イオンが含まれる。これらの還元剤は、飽和アルキル化合物、不飽和アルキル化合物、芳香族化合物あるいはヘテロ環化合物のカテゴリーに入り得る。それらは、−OH、−F、−C1、−Br、−I、−SHなどの置換基を持っていてもよい。有機酸としては、モノカルボン酸、ジカルボン酸およびそれ以上のカルボン酸が含まれる。好ましい有機酸は、ジカルボン酸である。最も好ましくはシュウ酸である。有機塩基としては、モノアミン類、ポリアミン類が含まれ、アミン類は一級アミン、二級アミン類、三級アミン類であってもよい。好ましい有機塩基としては、第三アミン類である。最も好ましくは、トリプロピルアミンである。さらに、上記の有機酸および有機塩基のイオン化された形態もまた、電気化学信号の化学増幅のための還元剤に適している。最も好ましくは、シュウ酸塩およびプロトン化トリプロピルアミンである。アミノ酸および生物緩衝分子のようないくつかの有機両性イオンは、カルボン酸とアミンの両方を含んでいる。それらはまた、適切な還元剤であることが判明している。好ましい有機両性イオンとしては、プロリン、PIPES、およびHEPESが含まれる。
【実施例】
【0064】
D.実施例
実施例1
(ルテニウムトリス−ビピリジン)のシュウ酸塩増幅電気化学電流)
ルテニウムトリス(2,2’−ビピリジン)をAlfa Aesarから、シュウ酸ナトリウムをAvocadoから購入した。シュウ酸ナトリウム10mM、ルテニウムトリス−(ビピリジン)0.5mM、リン酸ナトリウム0.lMを含む溶液(pH5.5)を調製した。電気化学測定をCHI 630A電気化学分析器で行った。作動している電極を0.8cmの面積のガラススライド上でインジウムスズ酸化物フィルムで被覆した。プラチナ箔をカウンター電極として用い、参照として飽和カロメルを用いた。測定を行うために、電極電圧を0Vから1.3Vまで走査し、次いで100mV/秒の割合で0Vへ戻した。走査中の電流を記録した。図1に示すように、電流を電圧に対してプロットした。太線はルテニウムトリス−(ビピリジン)を含む溶液に対応し、一方、細線は金属錯体を含まない溶液に対応している。
【0065】
実施例2
(種々の金属錯体のシュウ酸塩増幅電気化学電流)
フェロセンモノカルボン酸をAlfa Aesarから購入した。オスミウムトリス(2,2’−ビピリジン)および鉄トリス(2,2’−ビピリジン)を文献(参考文献を参照のこと)に従って合成した。
【0066】
シュウ酸ナトリウム10mM、金属錯体0.5mM、リン酸ナトリウム0.lMを含む溶液(pH5.5)を調製した。電気化学測定を実施例1に記載のように行った。図2に示すように、各金属錯体についての最大電流を標準電位の関数としてプロットした。最大の酸化標準電位を有するルテニウムトリス(2,2’−ビピリジン)が、最大の電流を発生させた。
【0067】
実施例3
(種々の還元剤により増幅されたルテニウムトリス(2,2’−ビピリジン)の電気化学電流)
還元剤を以下の供給元から購入し、さらに精製することなく用いた。PIPES(ICN)、トリプロピルアミン(Alfa Aesar)、HEPES(Avocado)、プロリン(Alfa Aesar)、トリブチルアミン(Shanghai United Chemicals、上海、中国)、トリエチルアミン(Shanghai United Chemicals、上海、中国)。
【0068】
リン酸ナトリウム0.lM中に還元剤10mMを含む溶液を調製した。還元剤を電気化学測定してバックグラウンド電流を得た後、ルテニウムトリス(2,2’−ビピリジン)を最終濃度が0.5mMになるまで添加した。増幅電流は、バックグラウンド電流と同じ方法により測定した。増幅ファクターは、全ての電圧に対するバックグラウンドで増幅電流を最初に分割し、次に最大値を選択することにより得た。以下の表1のデータは、シュウ酸塩が最も高い増幅ファクターを有していることを示す。
【0069】
(表1)
種々の還元剤の増幅ファクター(表示されている場合を除き、全てpH7.5)
【0070】
【表1】

実施例4
(様々な濃度におけるルテニウムトリス(2,2’−ビピリジン)のプロリン増幅電流)
プロリン10mM、リン酸ナトリウム0.lMを含む溶液(pH7.5)を調製した。還元剤を電気化学測定してバックグラウンド電流を得た後、ルテニウムトリス(2,2’−ビピリジン)を最終濃度が125uM、250uM、375uMおよび500uMになるまで添加した。各ルテニウム錯体濃度に対するプロリン増幅電流を測定した(図3)。電流は、ルテニウム濃度と線形の関係にあることが見出された(図4)。
【0071】
実施例5
(化学的増幅電気化学により検出されたビオチン−アビジン結合)
ビオチン標識化ウシ血清アルブミン(ビオチン−BSA)を、1mg/mLのビオチン−BSA溶液に室温で1時間電極を浸漬することにより、インジウム−スズ酸化物電極に吸着させた。リン酸緩衝液ですすいだ後、ルテニウム(4,4’−ジカルボキシル)−ビス(2,2’−ビピリジン)で標識されたアビジン溶液に室温で1時間電極を浸漬した。電極をリン酸緩衝液で再びすすいだ。次いで、その電極を0.1Mリン酸塩(pH5.5)中の10mMシュウ酸ナトリウムを含む電気化学電池の中に取り付けた。実施例1の記載と同様にして電気化学電流を測定した。アビジン濃度の関数としての電流は、図5に示される。
【0072】
上記の実施例は、例示される目的のみのために含まれ、本発明の範囲を制限する意図はない。上記で記載されたことに対する多くの変更は可能である。上記の実施例に対する修正および変更は当業者にとって明確なものであるので、本発明が添付の特許請求の範囲に記載された範囲によってのみ制限されることを意図している。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】図1は、ルテニウムトリス(2、2’−ビピリジン)に対するシュウ酸塩増幅電流を示す。
【図2】図2は、プロリンと様々な濃度のルテニウムトリス(2、2’−ビピリジン)とのサイクリックボルタモグラムを示す。
【図3】図3は、増幅電流とルテニウムトリス(2、2’−ビピリジン)濃度との関係を示す。
【図4】図4は、様々な濃度におけるルテニウムトリス(2、2’−ビピリジン)のプロリン増幅電流を示す。
【図5】図5は、化学的に増幅される電気化学により検出されたビオチン−アビジン結合を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体をアッセイする方法であって、
a)分析される検体と酸化物電極において結合および/または反応し得る反応剤を提供する工程;
b)検体が該試料中に存在していれば、該検体と該反応剤とが結合できるような適切な条件の下で、該検体を含むことが疑われる試料と工程a)で提供された反応剤とを接触させる工程であって、該反応剤、該検体、あるいは追加の反応剤、追加の検体または検体類似物が還元された形の電気化学活性分子に共有結合しており、そして該接触により、該電気化学的活性分子を該電極の近くへ持ってきて、該電極により該電気化学活性分子を酸化する工程;
c)該酸化された電気化学活性分子を還元剤によって還元された形に還元して戻す工程であって、該還元剤が該電極により直接酸化され得ないで、還元された該電気化学活性分子が工程b)およびc)の酸化還元反応において繰り返し関与して、増幅電気化学信号を発生させる工程;ならびに
d)該増幅電気化学信号を評価して、該試料中の該検体の存在および/または量を決定する工程
を含む方法。
【請求項2】
前記検体が、細胞、細胞オルガネラ、ウイルス、分子およびそれらの凝集体または複合体からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記細胞が、動物細胞、植物細胞、菌類細胞、細菌細胞、組換え細胞および培養された細胞からなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記細胞オルガネラが、核、ミトコンドリア、葉緑体、リボソーム、ER、ゴルジ体、リソソーム、プロテアソーム、分泌小胞、液胞およびミクロソームからなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記分子が、無機分子、有機分子およびそれらの複合体からなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記有機分子が、アミノ酸、ペプチド、タンパク質、ヌクレオシド、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、核酸、ビタミン、単糖類、オリゴ糖、炭水化物、脂質およびそれらの複合体からなる群から選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記検体が、ホルモン、がんマーカー、ステロイド、ステロール、薬剤化合物、薬剤化合物の代謝物およびそれらの複合体からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記試料が哺乳類の試料である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記哺乳類が、ウシ、ヤギ、ヒツジ、ウマ、ウサギ、モルモット、マウス、ヒト、ネコ、サル、イヌおよびブタからなる群から選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記試料が臨床的試料である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記臨床的試料が、血清、血漿、全血、痰、大脳髄液、羊水、尿、胃腸の内容物、髪、唾液、汗、粘性断片(gum scrapping)、生検からの組織からなる群から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記臨床的試料がヒトの臨床的試料である、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記試料が体液試料である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記反応剤が検体と特異的に結合および/または反応する、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記反応剤が、細胞、細胞オルガネラ、ウイルス、分子およびそれらの凝集体または複合体からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記反応剤が抗体である、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記反応剤が核酸である、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記検体が電気化学活性分子と共有結合し、前記電極上の前記反応剤と該検体とを接触させることにより該電気化学活性分子を該電極に接近させる直接アッセイフォーマットにおいて用いられる、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記電極上の前記反応剤、前記検体、および該検体と結合および/または反応する能力があり電気化学活性分子に共有結合する2番目の反応剤が、サンドイッチ構造を形成し、該電気化学活性分子を該電極に接近させるというサンドウィッチアッセイフォーマットにおいて用いられる、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記検体と電気化学活性分子に共有結合する検体または検体類似物とが、前記電極上の前記反応剤との結合に対して競合し、そして該電気化学活性分子と共有結合する該検体または該検体類似物が該反応剤と結合することにより該電気化学活性分子を該電極に接近させるという競合アッセイフォーマットにおいて用いられる、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記電気化学活性分子が遷移金属錯体である、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記遷移金属錯体が、フェロセン、金属ポルフィリン、金属ポリピリジン、金属ポリフェナントロリンおよび金属フタロシアニンからなる群から選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記遷移金属が、コバルト、ニッケル、オスミウム、鉄、レニウム、クロムおよびルテニウムからなる群から選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記遷移金属錯体が金属トリス(2,2’−ビピリジン)またはその誘導体の1つである、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
前記遷移金属錯体がルテニウムトリス(2,2’−ビピリジン)またはその誘導体の1つである、請求項21に記載の方法。
【請求項26】
前記酸化物電極が天然物またはインサイチュで形成されたものである、請求項1に記載の方法。
【請求項27】
前記電極が、金電極、プラチナ電極、銀電極、コバルト電極、ニッケル電極および炭素電極からなる群から選択される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記電極が金属酸化物電極である、請求項1に記載の方法。
【請求項29】
前記電極が単一の金属酸化物または2種以上の金属酸化物の組み合わせである、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記金属酸化物が、酸化インジウム、酸化スズ、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化タングステン、酸化亜鉛および酸化鉄からなる群から選択される、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前記金属酸化物が純粋な金属酸化物またはドープ金属酸化物である、請求項28に記載の方法。
【請求項32】
前記ドープ金属酸化物がスズをドーピングしたインジウム酸化物である、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記ドープ金属酸化物がフッ素をドーピングしたスズ酸化物である、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
前記還元剤が水溶液に可溶である、請求項1に記載の方法。
【請求項35】
前記還元剤が有機酸化還元分子である、請求項1に記載の方法。
【請求項36】
前記有機酸化還元分子が、有機酸、有機塩基、有機イオンおよび有機両性イオンからなる群から選択される、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記有機酸がカルボン酸である、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記有機酸がシュウ酸である、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
前記有機塩基がアミンである、請求項36に記載の方法。
【請求項40】
前記有機塩基が一級アミン、二級アミンまたは三級アミンである、請求項36に記載の方法。
【請求項41】
前記有機塩基がトリプロピルアミンである、請求項36に記載の方法。
【請求項42】
前記有機酸化還元分子が、イオン化有機酸またはイオン化有機塩基である、請求項35に記載の方法。
【請求項43】
前記イオン化有機酸がシュウ酸塩である、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記イオン化有機塩基がプロトン化トリプロピルアミンである、請求項42に記載の方法。
【請求項45】
前記有機両性イオンが有機塩基および有機酸を含む、請求項36に記載の方法。
【請求項46】
前記有機塩基がアミンであり、前記有機酸がカルボン酸である、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記有機塩基がアミンであり、前記有機酸がスルホン酸である、請求項45に記載の方法。
【請求項48】
前記有機両性イオンがアミノ酸である、請求項36に記載の方法。
【請求項49】
前記アミノ酸がプロリンである、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記有機両性イオンが「Good」緩衝液である、請求項36に記載の方法。
【請求項51】
前記「Good」緩衝液が、BES、BICINE、CAPS、HEPPS、HEPES、MES、MOPS、PIPES、TAPS、TESおよびTRICINEからなる群から選択される請求項50に記載の方法。
【請求項52】
酵素免疫吸着法(ELISA)、イムノブロッティング、免疫沈降、ラジオイムノアッセイ(RIA)、イムノ染色、ラテックス凝集、間接血球凝集アッセイ(IHA)、相補物固定、間接免疫蛍光アッセイ(IFA)、比濁法、フローサイトメトリーアッセイ、化学ルミネセンスアッセイ、側方流動イムノアッセイ、μ捕獲アッセイ、阻害アッセイ、エネルギー移動アッセイ、結合活性アッセイ、濁度測定イムノアッセイまたは時間分解増幅クリプテート放射(TRACE)アッセイからなる群から選択されるアッセイフォーマットにおいて用いられる、請求項1に記載の方法。
【請求項53】
検体をアッセイするキットであって、
a)分析される検体と酸化物電極において結合および/または反応し得る反応剤;
b)電気化学活性分子に共有結合する追加の反応剤、検体または検体類似物の存在下で、該電極上で該検体を該反応剤と接触させることにより、該電気化学的活性分子を該電極の近くへ持ってきて該電気化学活性分子を該電極によって酸化可能にする、還元された形の該電気化学活性分子に共有結合する追加の反応剤、検体または検体類似物;
c)該電極により直接酸化され得ない還元剤であって、繰り返される酸化還元反応に関与するために、該還元剤が酸化された該電気化学活性分子を還元された形に還元して戻し、増幅電気化学信号を発生させる還元剤;ならびに
d)該試料中の該検体の存在および/または量を決定するために該増幅電気化学信号を評価する手段
を含むキット。
【請求項54】
前記検体をアッセイするために、前記キットを用いるための指示書をさらに含む、請求項53に記載のキット。
【請求項55】
前記電気化学活性分子を酸化できるが、前記還元剤を酸化できない酸化物電極をさらに含む、請求項53に記載のキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2006−508351(P2006−508351A)
【公表日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−555956(P2004−555956)
【出願日】平成15年5月6日(2003.5.6)
【国際出願番号】PCT/CN2003/000329
【国際公開番号】WO2004/051274
【国際公開日】平成16年6月17日(2004.6.17)
【出願人】(504234923)キャピタル バイオチップ カンパニー リミテッド (6)
【出願人】(598098331)ツィンファ ユニバーシティ (534)
【Fターム(参考)】