説明

親子シールド掘進機

【課題】簡単な構成にして親カッタヘッドを親シールドフレームに脱落不能に支持するとともに子カッタヘッドの強度を確保しつつ掘削作業性能の向上を図った親子シールド掘進機を提供する。
【解決手段】親カッタヘッド(40)の後面に親カッタヘッド支持部材(50)を設け、当該親カッタヘッド支持部材を親シールドフレーム(11)に遊嵌することで親カッタヘッドを該親シールドフレームに半径方向で支持する。さらに、親カッタヘッド支持部材の外周に周方向で一周する溝(52)を形成する一方、親シールドフレームの内周面に全周に亘り突出して環状係合突起(12)を形成し、当該環状係合突起と上記親カッタヘッド支持部材の上記溝とを係合することで親カッタヘッドを周方向で回転自在にして軸方向でも支持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、親子シールド掘進機に係り、詳しくは、親子シールド掘進機の簡素化を図る技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、大口径のトンネルを掘削した後、連続して小口径のトンネルを掘削することの可能な親子シールド掘進機が開発されている。
この種の親子シールド掘進機は、例えば放射状の子カッタヘッドに回転駆動機構を設け、当該子カッタヘッドの外側に同軸にして環状の親カッタヘッドを連結機構により連結するよう構成されている。これにより、親子シールド掘進機を親シールド掘進機として機能させる場合には、親カッタヘッドが連結機構を介し子カッタヘッドと一体に回転して大口径のトンネルを掘削可能であり、親子シールド掘進機から子シールド掘進機を分離して子シールド掘進機として機能させるときには、連結機構の連結解除により子カッタヘッドのみが回転して小口径のトンネルを掘削可能である(特許文献1参照)。
【0003】
また、親子シールド掘進機から子シールド掘進機を分離する際、連結機構の連結を解除しても親カッタヘッドが子カッタヘッドに引っ掛かるおそれがある等の理由から、親カッタヘッドをスラスト・ラジアル軸受を用いて親シールドフレームに脱落不能に支持するよう構成した親子シールド掘進機も開発されている(特許文献2)。
【特許文献1】特開平3−197791号公報
【特許文献2】特許第3192576号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献2に開示される親子シールド掘進機の場合、スラスト・ラジアル軸受を用いて親カッタヘッドを親シールドフレームに支持しているため、スラスト・ラジアル軸受を設ける分だけ構造が複雑化するという問題がある。
また、当該特許文献2に開示されるように、親子シールド掘進機が泥水式であって子カッタヘッドが円板状である場合には子カッタヘッドを十分な強度を有して構成できるが、親子シールド掘進機が一般的な土圧式である場合には、カッタフレームが通常は放射状をしているために分離した後の子カッタヘッドは一般に放射状であり、そのままでは子カッタヘッドにおいて十分な強度を確保できないという問題がある。
【0005】
そこで、放射状をなす子カッタヘッドに環状の補強部材を設けることが考えられるが、補強部材を子カッタヘッドの外周縁に配設すると、親子シールド掘進機を親シールド掘進機として機能させる際、親カッタヘッドで掘削した土石を子カッタヘッド側に寄せて子シールド掘進機と共用化したスクリュコンベアで後方に排出しようとしても、当該補強部材が障害となり、当該土石をスムーズに排出することができず、掘削作業性能が低下するという問題がある。
【0006】
本発明はこのような問題点を解決するためになされたもので、その目的とするところは、簡単な構成にして親カッタヘッドを親シールドフレームに脱落不能に支持するとともに子カッタヘッドの強度を確保しつつ掘削作業性能の向上を図った親子シールド掘進機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した目的を達成するために、請求項1の親子シールド掘進機は、筒状の子シールドフレームと該子シールドフレームに設けた回転駆動機構により回転駆動する子カッタヘッドとから子シールド掘進機が構成され、前記子シールドフレームの外側に筒状の親シールドフレームを連結するとともに前記子カッタヘッドの外側に同軸にして親カッタヘッドを連結することにより親シールド掘進機が構成される親子シールド掘進機であって、前記親カッタヘッドの後面に全周に亘り連続的または断続的に後方に向け延びて設けられ、前記親シールドフレームに遊嵌することで前記親カッタヘッドを該親シールドフレームに半径方向で支持し、外周に周方向で一周する溝が形成された親カッタヘッド支持部材と、前記親シールドフレームの内周面に全周に亘り突出して環状に設けられ、前記親カッタヘッド支持部材の前記溝と係合することで前記親カッタヘッドを周方向で回転自在にして軸方向で支持する環状係合突起とを備えたことを特徴とする。
【0008】
請求項2の親子シールド掘進機では、請求項1において、前記親カッタヘッドの前面は、カッタ部を除き内周側が後方に向けて傾斜して傾斜面を形成していることを特徴とする。
請求項3の親子シールド掘進機では、請求項1または2において、前記子カッタヘッドは放射状に延びる複数のスポーク部材で構成され、これら複数のスポーク部材は、隣り合うスポーク部材同士が各先端よりも中心側の位置で補強部材により互いに連結されていることを特徴とする。
【0009】
請求項4の親子シールド掘進機では、請求項1乃至3のいずれかにおいて、前記子カッタヘッド及び前記親カッタヘッドの後方には前記子シールドフレーム及び前記親シールドフレームが隔壁に仕切られてチャンバが形成されており、前記子シールドフレームのうち該チャンバ内の部分には複数の貫通孔が穿設されていることを特徴とする。
請求項5の親子シールド掘進機では、請求項1乃至4のいずれかにおいて、前記親カッタヘッドと前記子カッタヘッドとを連結するヘッド連結機構は、前記子カッタヘッド及び前記親カッタヘッドのいずれか一方に設けられた複数の可動ピンといずれか他方に設けられた複数のピン孔からなり、前記可動ピンを突出させ前記ピン孔に挿入することで前記親カッタヘッドを前記子カッタヘッドに連結して親シールド掘進機を構成可能である一方、該複数の可動ピンを没入させることで前記親カッタヘッドと前記子カッタヘッドとの連結を解除して前記子シールド掘進機を構成可能であり、前記複数の可動ピンのうちの少なくとも一つは、該子シールド掘進機が構成されたとき、突出した状態で該子シールド掘進機のコピーカッタとして機能することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の親子シールド掘進機によれば、親カッタヘッドの後面に全周に亘り連続的または断続的に後方に向け延びて設けられた親カッタヘッド支持部材は、親シールドフレームに遊嵌して親カッタヘッドを該親シールドフレームに半径方向で支持するとともに、外周に形成された溝に親シールドフレームの内周面に環状に設けられた環状係合突起が係合することで親カッタヘッドを周方向で回転自在にして軸方向で支持するので、簡単で安価な構成にして、親カッタヘッドを親シールドフレームに脱落不能に支持可能であり、特に親子シールド掘進機から子シールド掘進機を分離する際において親カッタヘッドが子カッタヘッドや子シールドフレームに引っ掛かるような事態を容易に防止でき、掘削作業性能の向上を図ることができる。
【0011】
また、請求項2の親子シールド掘進機によれば、親カッタヘッドの前面をカッタ部を除き内周側が後方に向けて傾斜する傾斜面としたので、親カッタヘッドによって切削した土石を容易に子カッタヘッド側に寄せるようにでき、例えば子シールド掘進機との共用化を図ったスクリュコンベアを用いて良好に当該土石を後方に排出することができ、掘削作業性能の向上を図ることができる。
【0012】
また、請求項3の親子シールド掘進機によれば、子カッタヘッドの隣り合うスポーク部材同士を各先端よりも中心側の位置で補強部材により互いに連結しているので、子カッタヘッドが補強されて子カッタヘッドの強度を確保することができるとともに、子カッタヘッドの外周縁に環状の補強部材を設ける構成と異なり当該連結する部材が親カッタヘッドによって切削した土石を子カッタヘッド側に寄せる際の障害とならないため、当該土石をスムーズに子カッタヘッド側に寄せるようにでき、例えば子シールド掘進機との共用化を図ったスクリュコンベアを用いて当該土石を良好に排出でき、掘削作業性能の向上を図ることができる。
【0013】
また、請求項4の親子シールド掘進機によれば、子シールドフレームのうちチャンバ内の部分には複数の貫通孔が穿設されているので、親カッタヘッドによって切削した土石が親カッタヘッドの背面側、即ち親カッタヘッド支持部材側の部分に侵入した場合であっても、当該土石を貫通孔を通って容易に子カッタヘッド側のチャンバ内に寄せるようにでき、例えば子シールド掘進機との共用化を図ったスクリュコンベアを用いて良好に当該土石を後方に排出するようにでき、やはり掘削作業性能の向上を図ることができる。
【0014】
また、請求項5の親子シールド掘進機によれば、親カッタヘッドと子カッタヘッドとを連結するヘッド連結機構を子カッタヘッド及び親カッタヘッドのいずれか一方に設けられた複数の可動ピンといずれか他方に設けられた複数のピン孔とで構成し、これら複数の可動ピンのうちの少なくとも一つを突出した状態で子シールド掘進機のコピーカッタとして機能させるようにしたので、子シールド掘進機のコピーカッタを別途設けることなく効率よく子シールド掘進機を実現でき、これによっても掘削作業性能の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
図1は本発明に係る親子シールド掘進機の縦断面図を示し(部材断面を示す斜線は省略、以下同様)、図2は本発明に係る親子シールド掘進機の正面図、図3は図1のA部拡大図を示す。
親子シールド掘進機は、例えば土圧式のシールド掘進機であって、大径の親シールド掘進機1の内部に小径の子シールド掘進機2が設けられて構成されている。
【0016】
詳しくは、親子シールド掘進機は、子シールド掘進機2の主要部をなす子シールド掘進機本体20の外周に環状の親シールド本体10を嵌合可能であって、子シールド掘進機本体20に親シールド本体10が嵌合した状態で大径のトンネルを構築可能な親シールド掘進機1として機能し、親シールド本体10が外れた状態で小径のトンネルを構築可能な子シールド掘進機2として機能するよう構成されている。
【0017】
当該親子シールド掘進機は、センターシャフト支持方式のシールド掘進機であり、子シールド掘進機本体20には、円筒状の子シールドフレーム21から内部に延びて隔壁22が一体に設けられており、当該隔壁22の中心部を子カッタヘッド30に接合されたセンターシャフト24が回転可能に貫通している。そして、センターシャフト24の後端部が、カッタ軸受25を介して隔壁22に一体に接合されたシャフト支持部材26に回転自在に軸支されている。
【0018】
センターシャフト24には、隔壁22とシャフト支持部材26との間に位置してカッタヘッドギヤ27が外嵌されており、一方シャフト支持部材26には、カッタヘッドギヤ27と噛合するピニオン29を備えた回転駆動モータ28が固定されている。つまり、センターシャフト24は、回転駆動モータ28によりピニオン29、カッタヘッドギヤ27を介して駆動されて子カッタヘッド30を高トルクで回転可能である(回転駆動機構)。
【0019】
子カッタヘッド30は、複数(例えば、8本)のスポーク部材31が放射状に延び、各スポーク部材31に複数のカッタビット32を備えて構成されている。
そして、各スポーク部材31には、先端部に位置して半径方向で可動ピン33を出没可能なカッタヘッド保持ジャッキ(ヘッド連結機構)34がそれぞれ設けられている。なお、これら複数のカッタヘッド保持ジャッキ34のうちの例えば点対称に位置する一対34a、34aは、子シールド掘進機2用のコピーカッタとして機能するように構成されている。コピーカッタ34aは、突没する可動カッタピン33aを突出させることでトンネルの内径を微小量広げるよう掘削を行うものであり、これによりトンネル内周面との摩擦抵抗が減少して子シールド掘進機2のスムーズな進行が確保されることとなる。
【0020】
また、隣り合うスポーク部材31同士は、補強部材35で連結されている。詳しくは、補強部材35は、環状に湾曲した棒状部材(例えば、断面L字の形鋼)であり、各スポーク部材31の先端よりも中心側の部位を連結するように設けられている。
親子シールド掘進機が親シールド掘進機1として機能する状態では、子カッタヘッド30には親シールド本体10の一部である親カッタヘッド40が外嵌されている。
【0021】
親カッタヘッド40は、上記スポーク部材31の延長部分として複数(例えば、8箇所)のスポーク延長部(カッタ部)41を有しており、各スポーク延長部41に複数のカッタビット42を備えて構成されている。
そして、親カッタヘッド40の各スポーク延長部41には、子カッタヘッド30の各スポーク部材31に設けられた上記カッタヘッド保持ジャッキ34の可動ピン33に対応して当該可動ピン33の嵌入する複数のピン孔43が穿設されている。親子シールド掘進機が親シールド掘進機1として機能する状態では、カッタヘッド保持ジャッキ34の可動ピン33は突出してそれぞれ対応するピン孔43に嵌合し、子カッタヘッド30と親カッタヘッド40とは合体しており、これにより、子カッタヘッド30と親カッタヘッド40とが回転駆動モータ28により一体に回転し、大径のトンネルを構築可能である。
【0022】
また、親カッタヘッド40の前面は、スポーク延長部41を除き全周に亘って内周側が後方に向け傾斜して傾斜面44を形成している。
また、親カッタヘッド40の各スポーク延長部41の後面には、全周に亘り後方に向け延びて親カッタヘッド支持部材50が一体に設けられている。詳しくは、親カッタヘッド支持部材50は、単純に鋼板部材を組み合わせて構成され、親シールド本体10の一部である親シールドフレーム11の内側に所定の隙間を有して遊嵌されており、このように親カッタヘッド支持部材50が親シールドフレーム11に遊嵌されていることで、親カッタヘッド40は、周方向で回転自在でありながら親シールドフレーム11に半径方向で脱落不能に支持されている。なお、図1に示すように親カッタヘッド40が子カッタヘッド30に外嵌された状態では、親カッタヘッド支持部材50は子シールドフレーム21の外側に遊嵌された状態でもある。
【0023】
当該親カッタヘッド支持部材50の親シールドフレーム11に臨む外周面には、周方向で一周するようにして溝52が形成されており、一方、親シールドフレーム11の内周面には、全周に亘り環状に突出するようにして環状係合突起12が形成されており、当該環状係合突起12は上記親カッタヘッド支持部材50の溝52と周方向で摺動可能に係合している。これにより、親カッタヘッド40は、周方向で回転自在でありながら親シールドフレーム11に軸方向でも脱落不能に支持されている。
【0024】
また、親カッタヘッド40には、一部が親カッタヘッド支持部材50に掛かるようにして親シールド掘進機1用の一対のコピーカッタ45、45が例えば点対称に位置して設けられている。コピーカッタ45は、上記コピーカッタ34aと同様、突没する可動カッタピン46を突出させることでトンネルの内径を微小量広げるよう掘削を行うものであり、これによりトンネル内周面との摩擦抵抗が減少して親シールド掘進機1のスムーズな進行が確保される。
【0025】
また、子シールドフレーム21のうちチャンバ38内の部分には、親カッタヘッド支持部材50に臨むようにして複数の貫通孔23が周方向に並んで穿設されている。
そして、親子シールド掘進機が親シールド掘進機1として機能する状態では、親シールドフレーム11と子シールドフレーム21とは複数の締結具13によって締結されており、これにより親シールド本体10と子シールド本体20とが完全に一体化している。
【0026】
なお、親シールドフレーム11側には全周に亘り子シールドフレーム21と摺接するようにして止水シール14が設けられており、これにより親シールドフレーム11と子シールドフレーム21間の止水が可能である。
また、当該親子シールド掘進機には、親シールド掘進機1と子シールド掘進機2と共用のスクリュコンベア60が設けられている。詳しくは、スクリュコンベア60は子シールドフレーム21の内部に位置するようにして子シールド本体20に設置されている。つまり、スクリュコンベア60は、親子シールド掘進機が子シールド掘進機2として機能した場合には子カッタヘッド30で掘削した土石をチャンバ38を介してそのままスクリュ62で搬送して後方に排出可能であり、親シールド掘進機1として機能した場合には、親カッタヘッド40で掘削し傾斜面44によってチャンバ38のうち子シールド本体20側の部分に集めた土石を同様にスクリュ62で搬送して後方に排出可能である。
【0027】
また、親子シールド掘進機が親シールド掘進機1として機能する状態では、親シールドフレーム11の後方に当該親シールドフレーム11と略同径のテールフレーム70が中折れ継手72を介して連結されている。詳しくは、隔壁22とテールフレーム70の隔壁73とは複数の方向制御ジャッキ(中折れジャッキ)74で連結されており、これら複数の方向制御ジャッキ74を個別に伸縮制御することで、テールフレーム70を図1中に二点鎖線で示すように中折れ継手72回りに回動させ、親シールド掘進機1の進行方向を制御可能である。
【0028】
テールフレーム70には、親シールド掘進機1で掘削したトンネルの内周面にセグメント80を設置するためのエレクタ装置76が設けられるとともに、親シールド掘進機1用に複数のシールドジャッキ78が設けられている。これにより、親シールド掘進機1は、エレクタ装置76でセグメント80を設置するとともにシールドジャッキ78を伸長させて当該設置したセグメント80を押圧する動作を繰り返しながらセグメント80からの反力を受けて掘進可能である。
【0029】
以下、上記のように構成された本発明に係る親子シールド掘進機が親シールド掘進機1として機能する場合の作用について説明する。
上述したように、親子シールド掘進機が親シールド掘進機1として機能する場合には、カッタヘッド保持ジャッキ34の可動ピン33がそれぞれ対応するピン孔43に嵌合して子カッタヘッド30と親カッタヘッド40とは合体しており、親シールド掘進機1は、子カッタヘッド30のカッタビット32と親カッタヘッド40のカッタビット42とで地中の土石を掘削しながらシールドジャッキ78の伸長により前進する。
【0030】
このとき、上述したように親カッタヘッド40には傾斜面44が形成されていることから、当該親カッタヘッド40で掘削した土石を良好にチャンバ38のうち子カッタヘッド30側の部分、即ちスクリュコンベア60の設置された子シールド掘進機本体20側の部分に集めることが可能である(図3中の実線矢印参照)。
また、子カッタヘッド30の隣り合うスポーク部材31同士は補強部材35で連結されているが、当該補強部材35は、棒状(例えば、断面L字の形鋼)であるとともに各スポーク部材31の先端よりも中心側の部位を連結するように設けられているので、当該補強部材35が親カッタヘッド40で掘削した土石の子シールド掘進機本体20側への移動の妨げとなることはなく、当該土石をスムーズにチャンバ38のうち子シールド掘進機本体20側の部分に集めることが可能である(図3中の実線矢印参照)。
【0031】
さらに、子シールドフレーム21のうちチャンバ38内の部分には、上述したように複数の貫通孔23が親カッタヘッド支持部材50に臨むようにして周方向に並んで穿設されているので、親カッタヘッド40の後側に土石が侵入した場合であっても、当該土石を親カッタヘッド40と一体に回転する親カッタヘッド支持部材50の回転によって良好に貫通孔23から子シールド掘進機本体20側へ掻き出すことが可能である(図3中の破線矢印参照)。これにより、親カッタヘッド40の後側に土石が滞留することによる親カッタヘッド40の固着を防止可能である。
【0032】
また、親シールドフレーム11と子シールドフレーム21との間には止水シール14が設けられているので、親シールドフレーム11と子シールドフレーム21間については当該止水シール14によって良好に止水される。
このように、本発明に係る親子シールド掘進機によれば、親子シールド掘進機を親シールド掘進機1として機能させた場合において、親シールド掘進機1と子シールド掘進機2と共用のスクリュコンベア60を用いて土石を良好に後方に排出でき、掘削作業性能の向上を図ることができる。
【0033】
なお、ここでは親カッタヘッド支持部材50は親シールドフレーム11の内側に所定の隙間を有して遊嵌されており、故に親カッタヘッド40は親シールドフレーム11に支持されていないことになるが、実験によれば、子カッタヘッド30において十分に親カッタヘッド40の支持強度を確保可能であることが確認されており、親カッタヘッド40をベアリング等で親シールドフレーム11に支持する必要はない。
【0034】
次に、本発明に係る親子シールド掘進機を親シールド掘進機1から分離して子シールド掘進機2として機能させる場合の作用を子シールド掘進機2の構成を捕捉しながら説明する。
図4乃至図6は、親シールド掘進機1から子シールド掘進機2を分離させる際の一連の作業状況を示しており、具体的には、図4は親シールド掘進機1の内部において子シールド掘進機2を使用可能な状態に構成した状況を示し、図5は子シールド掘進機2だけが親シールド掘進機1から分離して掘進する状況を示し、図6は図5のB部拡大図を示しており、以下これらの図に基づき説明する
親シールド掘進機1から子シールド掘進機2を分離させる際には、先ず、親シールド掘進機1においてのみ必要であったエレクタ装置76及びシールドジャッキ78を取り外し、中折れ継手72を溶接等で固定するとともに隔壁73を切断して拡開し、テールフレーム70をブラケット82を用いてセグメント80に固定する。
【0035】
次いで、図4に示すように、子シールド掘進機2用に子シールドフレーム21の延長部21aを接続するとともに当該延長部21aと略同径のテールフレーム90を中折れ継手92を介して連結する。具体的には、延長部21aに突設されたブラケット21bとテールフレーム90の隔壁93とを複数の方向制御ジャッキ(中折れジャッキ)94で連結する。なお、これら複数の方向制御ジャッキ94の機能は上記方向制御ジャッキ74と同様である。
【0036】
さらに、テールフレーム90に子シールド掘進機2で掘削したトンネルの内周面にセグメント100を設置するためのエレクタ装置96を設置するとともに子シールド掘進機2用の複数のシールドジャッキ98を配設し、セグメント80上に新たに反力受け部材99を設置する。
そして、締結具13を外すとともに、カッタヘッド保持ジャッキ34の可動ピン33を全て没入させる。
【0037】
なお、スクリュコンベア60については共用であるため外す必要はないが、作業性の向上のために一旦外して再設置するようにしてもよい。
これにより、親子シールド掘進機は親シールド掘進機1から分離して子シールド掘進機2として機能可能となり、図5に示すように、当該子シールド掘進機2は、エレクタ装置96でセグメント100を設置するとともにシールドジャッキ98を伸長させて当該設置したセグメント100を押圧する動作を繰り返しながら、反力受け部材99からの反力を受けて単独で掘進する。
【0038】
このとき、上述したように、親カッタヘッド支持部材50は、親シールドフレーム11に遊嵌して半径方向で当該親シールドフレーム11に脱落不能に支持されるとともに、溝52が親シールドフレーム11の環状係合突起12と係合して軸方向でも当該親シールドフレーム11に脱落不能に支持されているため、子シールド掘進機2が親シールド掘進機1から分離して単独で掘進する場合において、図6に示すように親カッタヘッド40が子カッタヘッド30や子シールドフレーム21或いは延長部21aに引っ掛かることもなく、子シールド掘進機2は良好に掘進可能である。
【0039】
このように、本発明の親子シールド掘進機によれば、親子シールド掘進機を親シールド掘進機1から分離して子シールド掘進機2として機能させる場合において、単純に鋼板部材を組み合わせた親カッタヘッド支持部材50により、簡単で安価な構成でありながら親カッタヘッド40を親シールドフレーム11に脱落不能に支持でき、子シールド掘進機2を良好に親シールド掘進機1から分離して掘進させることができる。
【0040】
この際、子カッタヘッド30の隣り合うスポーク部材31同士は補強部材35で連結されているため、親シールド掘進機1での掘削作業性能の向上を図りつつ、子カッタヘッド30での掘削時におけるスポーク部材31の撓みや変形を良好に防止でき、子カッタヘッド30の耐久性能を十分に確保することができる。これにより、子シールド掘進機2による長距離の掘削を実現可能である。
【0041】
また、複数のカッタヘッド保持ジャッキ34のうちの例えば一対34a、34aについては子シールド掘進機2用のコピーカッタとして機能させるようにしているので、子シールド掘進機2のコピーカッタを別途設けることなく効率よく子シールド掘進機2を実現でき、これによっても掘削作業性能の向上を図ることができる。
また、子シールド掘進機2が親シールド掘進機1から分離する場合においても、親シールドフレーム11と子シールドフレーム21或いはテールフレーム90間については止水シール14によって良好に止水を維持可能である。
【0042】
以上で本発明に係る実施形態の説明を終えるが、実施形態は上記に限られるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形可能である。
例えば、上記実施形態では、親カッタヘッド支持部材50を親カッタヘッド40の各スポーク延長部41の後面にのみ断続的に設けるようにしているが、全周に亘り連続的に設けるようにしてもよい。
【0043】
また、上記実施形態では、カッタヘッド保持ジャッキ34を子カッタヘッド30のスポーク部材31側に設け、ピン孔43を親カッタヘッド40側に形成するようにしているが、カッタヘッド保持ジャッキとピン孔との位置関係は逆であってもよい。
また、上記実施形態では、複数のカッタヘッド保持ジャッキ34のうちの一対34a、34aを子シールド掘進機2用のコピーカッタとして機能させるようにしているが、複数のカッタヘッド保持ジャッキ34のうちの少なくとも一つをコピーカッタとして機能させればよい。
【0044】
また、子カッタヘッド30のスポーク部材31やカッタヘッド保持ジャッキ34の数は上記実施形態に限られるものではなく、親子シールド掘進機の外径や掘削する土質等に応じて適宜設定すればよい。
また、上記実施形態では、本発明の親子シールド掘進機を土圧式のシールド掘進機に適用した場合を例に説明したが、土圧式に限られるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明に係る親子シールド掘進機の縦断面図である。
【図2】本発明に係る親子シールド掘進機の正面図である。
【図3】図1のA部拡大図である。
【図4】親シールド掘進機の内部において子シールド掘進機を使用可能な状態に構成した状況を示す図である。
【図5】子シールド掘進機だけが親シールド掘進機から分離して掘進する状況を示す図である。
【図6】図5のB部拡大図である。
【符号の説明】
【0046】
1 親シールド掘進機
2 子シールド掘進機
10 親シールド本体
11 親シールドフレーム
13 締結具
20 子シールド掘進機本体
21 子シールドフレーム
23 貫通孔
30 子カッタヘッド
31 スポーク部材
33 可動ピン
34 カッタヘッド保持ジャッキ(ヘッド連結機構)
35 補強部材
40 親カッタヘッド
41 スポーク延長部(カッタ部)
43 ピン孔
44 傾斜面
50 親カッタヘッド支持部材
52 溝
60 スクリュコンベア
70、90 テールフレーム
78、98 シールドジャッキ
80、100 セグメント

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の子シールドフレームと該子シールドフレームに設けた回転駆動機構により回転駆動する子カッタヘッドとから子シールド掘進機が構成され、前記子シールドフレームの外側に筒状の親シールドフレームを連結するとともに前記子カッタヘッドの外側に同軸にして親カッタヘッドを連結することにより親シールド掘進機が構成される親子シールド掘進機であって、
前記親カッタヘッドの後面に全周に亘り連続的または断続的に後方に向け延びて設けられ、前記親シールドフレームに遊嵌することで前記親カッタヘッドを該親シールドフレームに半径方向で支持し、外周に周方向で一周する溝が形成された親カッタヘッド支持部材と、
前記親シールドフレームの内周面に全周に亘り突出して環状に設けられ、前記親カッタヘッド支持部材の前記溝と係合することで前記親カッタヘッドを周方向で回転自在にして軸方向で支持する環状係合突起と、
を備えたことを特徴とする親子シールド掘進機。
【請求項2】
前記親カッタヘッドの前面は、カッタ部を除き内周側が後方に向けて傾斜して傾斜面を形成していることを特徴とする、請求項1記載の親子シールド掘進機。
【請求項3】
前記子カッタヘッドは放射状に延びる複数のスポーク部材で構成され、
これら複数のスポーク部材は、隣り合うスポーク部材同士が各先端よりも中心側の位置で補強部材により互いに連結されていることを特徴とする、請求項1または2記載の親子シールド掘進機。
【請求項4】
前記子カッタヘッド及び前記親カッタヘッドの後方には前記子シールドフレーム及び前記親シールドフレームが隔壁に仕切られてチャンバが形成されており、
前記子シールドフレームのうち該チャンバ内の部分には複数の貫通孔が穿設されていることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか記載の親子シールド掘進機。
【請求項5】
前記親カッタヘッドと前記子カッタヘッドとを連結するヘッド連結機構は、前記子カッタヘッド及び前記親カッタヘッドのいずれか一方に設けられた複数の可動ピンといずれか他方に設けられた複数のピン孔からなり、前記可動ピンを突出させ前記ピン孔に挿入することで前記親カッタヘッドを前記子カッタヘッドに連結して親シールド掘進機を構成可能である一方、該複数の可動ピンを没入させることで前記親カッタヘッドと前記子カッタヘッドとの連結を解除して前記子シールド掘進機を構成可能であり、
前記複数の可動ピンのうちの少なくとも一つは、該子シールド掘進機が構成されたとき、突出した状態で該子シールド掘進機のコピーカッタとして機能することを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか記載の親子シールド掘進機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−198080(P2007−198080A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−20472(P2006−20472)
【出願日】平成18年1月30日(2006.1.30)
【出願人】(000000099)石川島播磨重工業株式会社 (5,014)
【Fターム(参考)】