説明

親水化処理用組成物

【課題】 本発明の目的は、加工性、親水持続性および耐汚染性に優れた被膜を形成しうる親水化処理用組成物を提供することでる。
【解決手段】
(a) ポリオキシアルキレン鎖又はポリビニルピロリドン鎖を有する重合性不飽和モノマー 2〜50質量%、(b) N−メチロールアクリルアミド及び/又はN−メチロールメタクリルアミド 30〜65質量%、(c) 1分子中に2個以上の重合性不飽和二重結合を有する化合物 0.1〜5質量%、(d) カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー 2〜50質量%、(e) (メタ)アクリルアミド系重合性不飽和モノマー 0〜50質量%、並びに(f) 1分子中に1個の重合性不飽和基を有する、上記(a)、(b)、(c)、(d)及び(e)以外の他のモノマー 0〜65.9質量%からなるモノマー混合物の共重合体からなる親水性架橋重合体微粒子(A)を含有することを特徴とする親水化処理用組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、親水持続性および耐汚染性に優れた被膜を形成しうる親水化処理用組成物、それを用いた熱交換器フィン材の親水化処理方法及び該組成物を塗布した熱交換器フィン材に関する。
【背景技術】
【0002】
空調機の熱交換器は冷房時に発生する凝縮水が水滴となってフィン間に水のブリッジを形成し、空気の通風路を狭めるため、通風抵抗が大きくなって電力の損失、騒音の発生、水滴の飛散などの不具合が発生する。かかる現象を防止する方策として、例えば、アルミニウム製フィン材(以下、フィン材という)の表面を親水化処理して水滴および水滴によるブリッジの形成を防止することが行なわれている。
【0003】
熱交換器の表面処理方法として、アルミニウム板を成型加工してフィンを作成し、このものを組立てたのち、表面処理剤を浸せき、スプレー、シャワーなどの手段により塗布する、いわゆるアフターコート法と、あらかじめロールコータなどの手段によりアルミニウム板に表面処理膜を形成したのち、この板にプレス成型加工を施してフィン材を作成する、いわゆるプレコート法の二方法がある。
【0004】
作業効率の点から後者の方法が有利であるが、そこに用いられる表面処理膜には厳しい加工性が要求されるとともに、シリカなどの無機質粒子成分が混在していると、プレス成型に用いられる金型が著しく摩耗し、フィン材の成型不良、親水性被膜の破壊による耐食性の劣化、さらに金型寿命の短縮による経済的損失などの問題が発生する。
【0005】
これに対応する親水化処理方法として、例えば、以下の方法が提案されている。
(1)ポリビニルアルコールと特定の水溶性ポリマーと水溶性架橋剤とを組合せて用いる方法(特許文献1、特許文献2等参照)。
(2)特定の親水性モノマーからなる親水性重合体部分と疎水性重合体部分とからなるブロック共重合体と、金属キレート型架橋剤とを組合せて用いる方法(特許文献3、特許文献4等参照)。
(3)ポリアクリルアミド系樹脂を用いる方法(特許文献5、特許文献6等参照)。
(4)ポリアクリル酸ポリマーなどの高分子と、この高分子と水素結合によるポリマーコンプレックスを形成し得るポリエチレンオキサイドやポリビニルピロリドンなどの高分子とを組合せて用いる方法(特許文献7等参照)。
(5)親水性重合体微粒子を用いる方法(特許文献8等参照)。
【0006】
これらの方法の内、(5)の方法で得られた被膜はプレス成型時における成型不良の問題を解決し、加工性や親水性の持続性に優れているという有利な点の多いものであるが、これらのいずれの方法において作られたアルミフィン材においても、エアコンを使用している間に室内の汚染物質がフィン材に付着して親水性が低下し、結露水が室内に飛散するという新たな問題が浮き彫りとなり、対策を急がれている。
【0007】
【特許文献1】特開平1−299877号公報
【特許文献2】特開平3−26381号公報
【特許文献3】特開平2−107678号公報
【特許文献4】特開平2−202967号公報
【特許文献5】特開平1−104667号公報
【特許文献6】特開平1−270977号公報
【特許文献7】特開平6−322292号公報
【特許文献8】特開平9−87576号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、加工性、親水持続性および耐汚染性に優れた被膜を形成しうる親水化処理用組成物を提供することでる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解消するために鋭意検討した結果、親水性重合体微粒子中にN−メチロールアクリルアミド及び/又はN−メチロールメタクリルアミドを多量に含有させ、且つ1分子中に2個以上の重合性不飽和二重結合を有する化合物によって重合体微粒子中を適度に架橋させた親水性架橋重合体微粒子を用いることによってかかる課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、例えば、次の事項からなる。
1、 (a) ポリオキシアルキレン鎖又はポリビニルピロリドン鎖を有する重合性不飽和モノマー 2〜50質量%、
(b) N−メチロールアクリルアミド及び/又はN−メチロールメタクリルアミド 30〜65質量%、
(c) 1分子中に2個以上の重合性不飽和二重結合を有する化合物 0.1〜5質量%、
(d) カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー 2〜50質量%、並びに
(e) 1分子中に1個の重合性不飽和基を有する、上記(a)、(b)、(c)及び(d)以外の他のモノマー 0〜65.9質量%
からなるモノマー混合物の共重合体からなる親水性架橋重合体微粒子(A)を含有することを特徴とする親水化処理用組成物。
2、 さらにポリオキシアルキレン鎖を有する化合物(B)を含有するものである上記1に記載の親水化処理用組成物。
3、 さらに硬化剤(C)を含有するものである上記1又は2に記載の親水化処理用組成物。
4、 硬化剤(C)がメラミン樹脂、ポリアルデヒド化合物及びエポキシ化合物から選ばれる少なくとも1種を含有するものである上記3に記載の親水化処理用組成物。
5、 上記1〜4のいずれか一項に記載の親水化処理用組成物をアルミニウム製熱交換器フィン材に塗布することを特徴とするフィン材の親水化処理方法。
6、 上記1〜4のいずれか一項に記載の親水化処理用組成物からの塗膜が表面層として形成されてなるアルミニウム製熱交換器フィン材。
【発明の効果】
【0011】
本発明の組成物によれば、従来の問題点であった、親水持続性、連続成型加工性(耐金型摩耗性)及び優れた耐食性を維持しつつ、耐汚染性にも優れた親水性被膜を基材上に形成することができる。
【0012】
かくして、本発明の組成物で処理されたアルミニウム製熱交換器フィン材を用いることにより、熱交換器の省エネルギー化及び省資源化を達成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の親水化処理用組成物は、ポリオキシアルキレン鎖又はポリビニルピロリドン鎖を有する重合性不飽和モノマー(a)、N−メチロールアクリルアミド及び/又はN−メチロールメタクリルアミド(b)、1分子中に2個以上の重合性不飽和二重結合を有する化合物(c)、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(d)並びに1分子中に1個の重合性不飽和基を有する上記(a)、(b)、(c)及び(d)以外の他のモノマー(e)からなるモノマー混合物の共重合体からなる親水性架橋重合体微粒子(A)を含有するものである。
【0014】
ポリオキシアルキレン鎖又はポリビニルピロリドン鎖を有する重合性不飽和モノマー(a)は、1分子中に少なくとも1個の重合性二重結合と、ポリオキシアルキレン鎖又はポリビニルピロリドン鎖を有する化合物であり、その代表例としては下記一般式[1]、[2]又は[3]で示される化合物を挙げることができる。
【0015】
【化1】

【0016】
[式中、R、RおよびRは同一又は相異なり、それぞれ水素原子又はメチル基を表わし、Rは−OH、−OCH、−SOH又は−SOを表わし、ここでMはNa、K、Li、NH4+又は有機アンモニウム基を表わし、nは10〜200の数であり、そしてn個の式
【0017】
【化2】

【0018】
の単位における各Rは同一であってもよく或いは互に異なっていてもよい、ここで、上記有機アンモニウム基は、1級、2級、3級および4級のいずれであってもよく、その窒素原子には少なくとも1個の有機基と0〜3個の水素原子が結合したものであり、上記有機基としては、O、S、N原子などを含有していてもよい炭素原子数1〜8のアルキル基、アリール基、アラルキル基などを挙げることができる]
【0019】
【化3】

【0020】
[式中、R、R、R、Rおよびnはそれぞれ前記と同じ意味を有する]
【0021】
【化4】

【0022】
[式中、RおよびRは前記と同じ意味を有し、XはO、S又はN原子を含有してもよい炭素原子数5〜10の二価の有機基を表わし、mは10〜100の整数である]
上記式[3]において、Xによって表わされる「O、S又はN原子を含有してもよい炭素原子数5〜10の二価の有機基」の具体例としては、下記式で表わされる基などを挙げることができる。
【0023】
【化5】

【0024】
上記モノマー(a)としては、分散安定性等の観点から、中でも、nが50〜200である式[1]又は[2]の化合物が好ましい。
【0025】
1分子中に2個以上の重合性不飽和二重結合を有する化合物(c)としては、例えば、メチレンビスアクリルアミド、メチレンビスメタクリルアミド、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、アリル(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。これらのうち、得られる重合体微粒子の分散安定性および親水性等の観点から、メチレンビスアクリルアミド、メチレンビスメタクリルアミドが好適である。
【0026】
カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(d)としては、1分子中に少なくとも1個のカルボキシル基と1個の重合性不飽和基を有する化合物であれば特に制限なく使用でき、その代表例としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸モノブチル、マレイン酸モノブチルなどを挙げることができる。モノマー(d)は、本発明の親水化処理用組成物の硬化性に寄与するものである。
【0027】
1分子中に1個の重合性不飽和基を有する上記(a)、(b)、(c)及び(d)以外の他のモノマー(e)は、1分子中に1個の重合性不飽和基を有し、前記モノマー(a)、(b)、(c)及び(d)と共重合可能な、前記モノマー(a)、(b)、(c)及び(d)以外の化合物であり、必要に応じて使用されるものである。
【0028】
必要に応じて使用される(a)、(b)、(c)及び(d)以外の他のモノマー(e)としては、下記一般式[4]で示される(メタ)アクリルアミド系重合性不飽和モノマー(f)や水酸基含有重合性不飽和モノマー(g)等の親水性を有するモノマーを使用することが好ましく、モノマー(e)中(メタ)アクリルアミド系重合性不飽和モノマー(f)及び水酸基含有重合性不飽和モノマー(g)の合計量が40質量%以上、特に60質量%以上であることが親水持続性の点から好ましい。
【0029】
【化6】

【0030】
[式中、Rは水素原子又はメチル基を表わし、RおよびRは同一又は相異なり、それぞれ水素原子又は炭素原子数1〜5のアルキル基を表わし、ただしRとRとの炭素原子数の和は5以下である]
上記式[4]において、R又はRによって表わされうる「炭素原子数1〜5のアルキル基」は、直鎖状のもの又は分枝鎖状のもののいずれであってもよく、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル、アミルなどを挙げることができる。
【0031】
上記一般式[4]で示される(メタ)アクリルアミド系重合性不飽和モノマー(f)の代表例としては、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、N−n−プロピルアクリルアミド、N−n−プロピルメタクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−イソプロピルメタクリルアミド、N−n−ブチルアクリルアミドなどが挙げられる。
【0032】
また、水酸基含有重合性不飽和モノマー(g)としては、例えば2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の如きアクリル酸又はメタクリル酸の炭素数2〜8のヒドロキシアルキルエステルを挙げることができる。
【0033】
上記(f)又は(g)以外のモノマー(e)の代表例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等の如きアクリル酸又はメタクリル酸の炭素数1〜24のアルキル又はシクロアルキルエステル;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどの重合性不飽和ニトリル;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、α−クロルスチレンなどの芳香族ビニル化合物;N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレートなどのアクリル酸又はメタクリル酸の炭素数2〜8の含窒素アルキルエステル;エチレン、プロピレンなどのα−オレフイン;ブタジエン、イソプレンなどのジエン化合物;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル;エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテルなどのビニルエーテルなどを挙げることができる。
【0034】
また、1分子中に加水分解性シリル基、エポキシ基及びN−アルコキシメチル基から選ばれる少なくとも1個の官能基と1個の重合性二重結合とを有する化合物を使用することもできるが、上記化合物は反応性を有する基を有しているため、粒子の製造安定性が低下したり粒子内架橋が進みすぎて親水性が低下したりすることがあるため使用には注意する必要がある。上記化合物の代表例としては、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、2−スチリルエチルトリメトキシシラン、ビニルトリス(メトキシエトキシ)シランなどの加水分解性シリル基を有する不飽和化合物;グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテルなどのエポキシ基を有する不飽和化合物;N−メトキシメチルアクリルアミド、N−メトキシメチルメタクリルアミド、N−エトキシメチルアクリルアミド、N−エトキシメチルメタクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド、N−ブトキシメチルメタクリルアミドなどのN−アルコキシメチル基を有する不飽和化合物を挙げることができる。
【0035】
これらの化合物は1種で又は2種以上の混合物として使用することができるが、疎水性の化合物を多く用いると重合体粒子の親水性が損なわれるため注意が必要である。
【0036】
親水性架橋重合体微粒子(A)の製造
親水性架橋重合体微粒子(A)は、例えば、以上に述べたポリオキシアルキレン鎖又はポリビニルピロリドン鎖を有する重合性不飽和モノマー(a)、N−メチロールアクリルアミド及び/又はN−メチロールメタクリルアミド(b)、1分子中に2個以上の重合性不飽和二重結合を有する化合物(c)、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(d)並びに必要に応じて1分子中に1個の重合性不飽和基を有する上記(a)、(b)、(c)及び(d)以外の他のモノマー(e)からなるモノマー混合物を、該モノマー混合物は溶解するが生成する共重合体を実質的に溶解しない水混和性有機溶媒中又は水混和性有機溶媒/水混合溶媒中で重合せしめることにより製造することができる。その際、製造安定性の点から分散安定剤を使用することができるが、親水持続性を低下させることもあり、分散安定剤を使用しなくても製造できる場合は分散安定剤を使用しない方が好ましい。
【0037】
その際の各モノマーの使用割合は、ポリオキシアルキレン鎖又はポリビニルピロリドン鎖を有する重合性不飽和モノマー(a)を2〜50質量%、好ましくは10〜40質量%、特に好ましくは20〜40質量%、N−メチロールアクリルアミド及び/又はN−メチロールメタクリルアミド(b)を30〜65質量%、好ましくは35〜60質量%、特に好ましくは40〜60質量%、1分子中に2個以上の重合性不飽和二重結合を有する化合物(c)を0.1〜5質量%、好ましくは1〜5質量%、特に好ましくは1〜4質量%、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(d)を2〜50質量%、好ましくは5〜30質量%、特に好ましくは8〜30質量%、上記(a)、(b)、(c)及び(d)以外の他のモノマー(e)を0〜65.9質量%、好ましくは0〜49質量%、特に好ましくは0〜31質量%の範囲内である。
【0038】
また、(a)、(b)、(c)及び(d)以外の他のモノマー(e)を使用する場合には、モノマー(e)中(メタ)アクリルアミド系重合性不飽和モノマー(f)及び水酸基含有重合性不飽和モノマー(g)の合計量が40質量%以上、特に60質量%以上であることが親水持続性の点から好ましい。
【0039】
ポリオキシアルキレン鎖又はポリビニルピロリドン鎖を有する重合性不飽和モノマー(a)の量が2質量%未満であると、一般に、生成する重合体粒子を充分に安定化することが困難となり、重合中又は貯蔵中に凝集物が生成しやすくなり、一方、50質量%を超えると、生成する重合体粒子が反応溶媒に溶解しやすくなり、重合体の多くが溶解してしまうため重合体微粒子を満足に形成することができなくなる。
【0040】
N−メチロールアクリルアミド及び/又はN−メチロールメタクリルアミド(b)の量が30質量%未満であると、被膜の耐汚染性が経時で低下し、一方、65質量%を超えると親水性が低下する。
【0041】
1分子中に2個以上の重合性不飽和二重結合を有する化合物(c)の量が0.1質量%未満であると、一般に、生成する重合体微粒子の架橋度が小さくなり、有機溶剤型塗料に配合した場合、微粒子がその溶剤に溶解、膨潤しやすくなる。一方、5質量%を超えると、重合時に凝集物の生成が多くなり、所望の重合体微粒子を安定に製造することが極めて困難になる。
【0042】
カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(d)の量が2質量%未満であると、得られる被膜の硬化性が不十分となり、一方、50質量%を超えると、得られる親水化処理用組成物の安定性が悪くなる。
【0043】
上記重合体微粒子(A)の製造に際して反応溶媒として、原料のモノマー混合物は溶解するが、生成する共重合体を実質的に溶解しない水混和性有機溶媒又は水混和性有機溶媒/水混合溶媒が使用される。ここで、「水混和性」又は「水と混和する」とは、20℃の温度で水に任意の割合で溶解しうることを意味する。上記水混和性有機溶媒としては、上記の要件を満たす限り任意のものを使用することができるが、特に、溶解性パラメータ(SP)値が一般に9〜11、特に9.5〜10.7の範囲内にある有機溶媒を少なくとも50質量%、特に70質量%以上含有するものが、重合安定性の観点から好適である。なお、本明細書における「溶解性パラメータ(SP)値」は、Journal of Paint Technology, Vol.42 No. 541,76〜118(1970年2月)の記載に基づくものである。
【0044】
SP値が上記の範囲内にある水混和性有機溶媒としては、例えば、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のアルキレングリコールモノアルキルエーテルが挙げられ、これらの中特に、エチレングリコールモノブチルエーテル又はプロピレングリコールモノメチルエーテルが好ましい。
【0045】
水混和性有機溶媒は、以上に述べた如きSP値が9〜11の範囲内にある有機溶媒以外に、他の水混和性又は水非混和性有機溶媒を含有することができる。そのような有機溶媒としては、水混和性有機溶媒、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等が好適である。該他の有機溶媒は、有機溶媒の全量の50質量%以下、特に30質量%以下の量で使用することが望ましい。
【0046】
また、反応溶媒として、水混和性有機溶媒/水の混合溶媒を使用する場合、該混合溶媒中における水の含有量は、重合安定性等の観点から、通常、水混和性有機溶媒100質量部あたり60質量部以下、特に40質量部以下であることが好ましい。
【0047】
前記モノマー混合物の共重合は、通常、ラジカル重合開始剤の存在下に行なわれる。ラジカル重合開始剤としては、それ自体既知のものを使用することができ、その使用量は、通常、モノマーの合計量に対して0.2〜5質量%の範囲内が好ましい。
【0048】
重合温度は、使用する重合開始剤の種類等によって変えることができるが、通常、約50〜約160℃、さらには90〜160℃の範囲内の温度が適当であり、反応時間は0.5〜10時間程度とすることができる。また、重合反応後にモノマー(c)による架橋を進行させるために、より高温に加熱してもよい。さらに、重合反応中や重合反応後における粒子内架橋反応をより速やかに進行させるために、必要に応じて、架橋反応触媒を加えてもよい。架橋反応触媒としては、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸等の強酸触媒;トリエチルアミンなどの塩基触媒などを挙げることができ、架橋反応種に応じて適宜選定すればよい。
【0049】
以上に述べた如くして製造される重合体微粒子(A)の粒子径は、特に限定されるものではないが、重合体微粒子(A)の安定性、凝集物の発生抑制などの点から、一般に0.03〜1μm、好ましくは0.05〜0.6μmの範囲内の平均粒子径を有することが適当である。この平均粒子径は、粒子径測定装置、例えばコールター(coulter)モデルN4MD(コールター社製)によって測定することができる。
【0050】
上記重合体微粒子(A)は、モノマー(a)に由来するポリオキシアルキレン鎖又はポリビニルピロリドン鎖が重合体微粒子表面に化学的に結合した状態で外側に向って配向しているため、分散安定剤の不存在下であっても、重合安定性及び経時での分散安定性(貯蔵安定性)が極めて優れており、しかも、表面が親水性に富んでいる。
【0051】
また、重合体微粒子(A)は、モノマー(c)成分の存在により、粒子内架橋されており、有機溶剤型塗料中においても、その形態を保持し、また、加熱によっても容易に溶融せず、塗料から処理膜を形成した際に処理膜に微細な凹凸を形成することができる。
【0052】
親水化処理用組成物
本発明の親水化処理用組成物は上記重合体微粒子(A)を必須成分として含有するところに特徴があるが、一般には連続被膜形成性成分と共に用いられる。該連続被膜形成性成分としては、背景技術の項で挙げた特許文献等に開示されているような従来公知の原料を使用することができるが、上記重合体微粒子(A)と組み合わせた場合の組成物の液安定性の点からポリオキシアルキレン鎖を有する化合物(B)を使用することが好ましく、さらに硬化剤(C)を使用することにより耐汚染性及び親水性を大きく向上させることができる。
【0053】
ポリオキシアルキレン鎖を有する化合物(B)としては、ポリオキシエチレン鎖又はポリオキシプロピレン鎖を有する化合物が好適である。
【0054】
ポリオキシアルキレン鎖を有する化合物(B)の代表例としては、下記のものを挙げることができる。
(1) ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、上記ポリオキシエチレン鎖と上記ポリオキシプロピレン鎖とがブロック状に結合したブロック化ポリオキシアルキレングリコール。
(2) 上記ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール又はブロック化ポリオキシアルキレングリコールの片末端又は両末端の水酸基を、モノアルコール又は2価以上のポリアルコールもしくはフェノール類でエーテル化するか、或いは一塩基酸でエステル化することによって封鎖してなる化合物。
【0055】
上記エーテル化に使用できるモノアルコール又は2価以上のポリアルコールもしくはフェノール類としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノールなどのモノアルコール;ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサンジオール、ジ(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、グリセリン、ジグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどの2価以上のポリアルコール;フェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールFなどのフェノール類などを挙げることができる。
【0056】
上記エステル化に使用できる一塩基酸としては、例えば、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、ヒドロキシ酢酸、乳酸、安息香酸、p−t−ブチル安息香酸などを挙げることができる。
(3) 上記ポリオキシエチレン鎖又はポリオキシプロピレン鎖を有する重合性不飽和モノマーの重合体、該モノマーと他のモノマーとの共重合体。
【0057】
ポリオキシアルキレン鎖を有する化合物(B)は、ポリオキシエチレン鎖又はポリオキシプロピレン鎖部分を50質量%以上、好ましくは80質量%以上有することが好ましい。なかでもポリオキシエチレン鎖部分を50質量%以上、好ましくは80質量%以上有するもの、特にポリエチレングリコールであることが好ましい。
【0058】
また、ポリオキシアルキレン鎖を有する化合物(B)の分子量は、特に限定されるものではないが、数平均分子量が通常、500〜500,000、特に3,000〜100,000の範囲内にあることが好ましい。
【0059】
本発明の組成物において、重合体微粒子(A)とポリオキシアルキレン鎖を有する化合物(B)との配合比率は、得られる組成物に望まれる性能等に応じて適宜選定できるものであり、特に限定されるものではないが、通常、成分(A)/成分(B)の固形分重量比で10/90〜90/10、特に50/50〜80/20の範囲内が好適である。
【0060】
本発明の組成物は、重合体微粒子(A)、化合物(B)のそれぞれが親水性に優れた成分であり、化合物(B)中のポリオキシアルキレン鎖と重合体微粒子(A)中のカルボキシル基とが水素結合によって結合するので、得られる処理膜は親水性が良好で且つ水不溶性になり耐水溶解性に優れている。さらにポリオキシアルキレン鎖と水素結合を形成するカルボキシル基が親水性架橋重合体微粒子に結合しているため、本発明の組成物から形成される処理被膜は、表面に凹凸を有し、この表面形態によって親水性をさらに優れたものとなる。
【0061】
本発明の組成物には、この組成物から得られる処理膜の耐水溶解性及び耐汚染性をさらに優れたものとするために、必要に応じて、(C)成分として硬化剤を配合してもよい。硬化剤(C)としては、例えば、メラミン樹脂、ポリアルデヒド化合物、エポキシ化合物、尿素樹脂、フェノール樹脂、ブロック化ポリイソシアネート化合物、金属キレート化合物などを挙げることができる。これらの中でも耐汚染性の点からメラミン樹脂、ポリアルデヒド化合物及びエポキシ化合物から選ばれる少なくとも1つの硬化剤を使用することが好ましい。また、該硬化剤は一般に水溶性又は水分散性を有していることが好ましい。
【0062】
上記メラミン樹脂としては、メラミンとアルデヒドとの反応によって得られるメチロール化アミノ樹脂があげられる。アルデヒドとしては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンツアルデヒド等がある。また、このメチロール化アミノ樹脂を適当なアルコールによってエーテル化したものも使用でき、エーテル化に用いられるアルコールの例としてはメチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、i−ブチルアルコール、2−エチルブタノール、2−エチルヘキサノールなどが挙げられる。メラミン樹脂としては、なかでもメチロール基の少なくとも一部をメチルエーテル化したメチロール化メラミン樹脂が好適である。
【0063】
上記ポリアルデヒド化合物は、1分子中に少なくとも2個のアルデヒド基を有する化合物であり、その具体例としてはグリオキザール、グルタルアルデヒド等が挙げられる。
【0064】
上記エポキシ化合物としては、1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有する化合物であり、その代表的な例としては、エチレングリコール・ジグリシジルエーテル、ヘキサンジオール・ジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコール・ジグリシジルエーテル、グリセリン・ジグリシジルエーテル、グリセリン・トリグリシジルエーテル、ジグリセリン・トリグリシジルエーテル、ソルビトール・ポリグリシジルエーテル、水添ビスフェノールA・ジグリシジルエーテルまたはビスフェノールA・ジグリシジルエーテルなどの多価アルコールまたは多価フェノールのポリグリシジルエーテル;p−オキシ安息香酸のグリシジルエステル・グリシジルエーテルなどのグリシジルエステル・グリシジルエーテル化物;フタル酸ジグリシジルエステルまたはヘキサヒドロフタル酸・ジグリシジルエステルなどの多価カルボン酸のポリグリシジルエステル;ヒダントイン環などの含窒素ヘテロ環を含むポリエポキシ化合物;上記1分子中に2個以上のエポキシ基を有する化合物と多価アルコール、多価フェノールまたは多塩基酸との付加物であるエポキシ樹脂;脂肪酸変性エポキシ樹脂、アミン変性エポキシ樹脂などの変性エポキシ樹脂;側鎖にエポキシ基を有するビニル系重合体などを挙げることができる。
【0065】
本発明の組成物で処理された熱交換器フィン材において、例えば、熱交換器のフィンピッチが1.2mm以下の場合には、フィンと水との接触角が5度以下のいわゆる拡張濡れになることが望ましい。この目的のために本発明の組成物には、必要に応じて、(D)成分として湿潤作用を有する界面活性剤を配合することができる。
【0066】
界面活性剤(D)は、表面湿潤作用を有するものであれば、陰イオン系、陽イオン系、両性イオン系、非イオン系のいずれの界面活性剤であってもよい。使用しうる界面活性剤(D)の代表例としては、ジアルキルスルホコハク酸エステル塩およびアルキレンオキシドシラン化合物を挙げることができる。
【0067】
これらの界面活性剤はそれぞれ単独で又は2種以上を組合わせて使用することができる。界面活性剤(D)の配合量は、通常、前記重合体微粒子(A)と化合物(B)の合計100質量部に対して20質量部以下とすることができ、好ましくは0.5〜10質量部、さらに好ましくは1〜5質量部の範囲内である。
【0068】
本発明の組成物には、さらに必要に応じて、微生物の発生や繁殖を阻止するために、(E)成分として防菌剤を含有することができる。防菌剤(E)としては特に以下の(1)〜(5)の条件を備えているものが好適である。
(1) 低毒性で安全性が高いこと;
(2) 熱、光、酸、アルカリなどに対して安定であり、水に対して離溶性であり、かつ持続性にすぐれていること;
(3) 低濃度で殺菌性を有するか、または菌の発育を阻止する能力を有すること;
(4) 塗料に配合しても効力が低下しないこと、また、塗料の安定性を阻害しないこと;
(5) 形成した被膜の親水性および耐食性を阻害しないこと。
【0069】
かかる条件に適合する防菌剤はそれ自体既知の防菌・殺菌作用をもつ脂肪族系、芳香族系の有機化合物の中から選ぶことができ、例えば、ハロアリルスルホン系、ヨードプロパギル系、N−ハロアルキルチオ系、ベンツチアゾール系、ニトリル系、ピリジン系、8−オキシキノリン系、ベンゾチアゾール系、イソチアゾリン系、フェノール系、第4級アンモニウム塩系、トリアジン系、チアジン系、アニリド系、アダマンタン系、ジチオカーバメイト系、ブロムインダノン系等の防菌剤が挙げられる。
【0070】
上記防菌剤の具体例としては、2−(4−チアゾリル)−ベンツイミダゾール、N−(フルオロジクロロメチルチオ)フタルイミド、N−ジメチル−N′−フェノール−N′−(フルオロジクロロメチルチオ)−スルファミド、O−フェニルフェノール、10,10′−オキシビスフェノキシアルシン、2,3,5,6−テトラクロロ−4−(メチルスルホニル)ピリジン、2,4,5,6−テトラクロロイソフタロニトリル、ジヨードメチル−p−トルイルスルホン、2−ベンツイミダゾールカルバミン酸メチル、ビス(ジメチルチオカルバモイル)ジサルファイド、N−(トリクロロメチルチオ)−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボキシイミドなどを挙げることができる。また、無機塩系の防菌剤も使用でき、例えばメタホウ酸バリウム、ホウ酸銅、ホウ酸亜鉛、ゼオライト(アルミノシリケート)などが代表的なものである。
【0071】
これらの防菌剤はそれぞれ単独で用いてもよく或いは併用することができ、その配合量は防菌剤の種類等に応じて変えることができるが、一般には、組成物の安定性、造膜性、被膜の親水性、塗板の耐食性を阻害しない等の点を考慮して、上記の重合体微粒子(A)と化合物(B)の合計100質量部に対して防菌剤(E)を20質量部以下とすることが好ましく、3〜15質量部の範囲とすることがより好ましい。
【0072】
本発明の組成物は、例えば、上記重合体微粒子(A)、ポリオキシアルキレン鎖を有する化合物(B)、硬化剤(C)、界面活性剤(D)、防菌剤(E)等を、水性媒体中に溶解ないしは分散することにより調製することができる。水性媒体は、水を主成分とするものであり、さらに有機溶剤や中和剤などを含有していてもよい。
【0073】
本発明の組成物は、また、必要に応じて水性有機樹脂(ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸など)、着色顔料、それ自体既知の防錆顔料(たとえばクロム酸塩系、鉛系、モリブデン酸系など)、防錆剤(たとえばタンニン酸、没食子酸などのフェノール性カルボン酸およびその塩類、フイチン酸、ホスフィン酸などの有機リン酸、重リン酸の金属塩類、亜硝酸塩など)などを含有することもできる。
【0074】
本発明の組成物は、金属、ガラス、木材、プラスチックス、布などの基材の上に塗布することができ、この塗膜を焼付けることによって親水性の硬化塗膜を形成せしめることができる。塗膜は硬化塗膜厚が0.3〜5μm、さらには0.5〜3μmの範囲内であることが好ましい。焼付けは一般に、素材到達最高温度が約80〜約250℃で焼付時間が約30分〜15秒の条件下で行なわれる。
【0075】
特に、本発明の組成物は、アルミニウム製熱交換フィン材の親水化処理に有用である。アルミニウム製熱交換器フィン材の親水化処理は、該フィン材に本発明の組成物を塗布することにより行なうことができる。例えば、本発明の組成物を、十分に脱脂され、必要に応じて化成処理されたアルミニウム板(熱交換器に組立てられたものであってもよい)に、それ自体既知の方法、例えば浸漬塗装、シャワー塗装、スプレー塗装、ロール塗装、電気泳動塗装などによって塗装し、焼付けることにより行なうことができる。
【実施例】
【0076】
以下、実施例及び比較例をあげて本発明をさらに具体的に説明する。これらの例は本発明をより詳細に説明するためのものであって、本発明の範囲になんら制限を加えるものではない。「部」および「%」はそれぞれ「質量部」および「質量%」を示す。
【0077】
親水性架橋重合体微粒子の製造
製造例1
窒素導入管、玉入りコンデンサ、滴下ロート及びメカニカルスターラを備えたフラスコにプロピレングリコールモノメチルエーテル200部を入れ、118℃に昇温した。次にフラスコ内に下記のモノマー、溶媒及び開始剤の混合物を5時間かけて滴下し、滴下終了後さらに1時間118℃に保持して親水性架橋重合体微粒子分散液(A−1)を得た。
ブレンマーPME−4000(注1) 30部
N−メチロールアクリルアミド 47部
メチレンビスアクリルアミド 3部
メタクリル酸2−ヒドロキシエチル 2部
アクリルアミド 7部
アクリル酸 13部
プロピレングリコールモノメチルエーテル 200部
2,2′−アゾビス(2−メチルブチロニトリル) 1.5部
得られた分散液は乳白色の、固形分20%の安定な分散液であり、樹脂粒子の粒子径は336nmであった。
(注1) ブレンマーPME−4000:下記式で示される化合物、nの平均値は約98、日本油脂社製。
【0078】
【化7】

【0079】
製造例2
製造例1においてモノマー、溶媒及び開始剤の混合物を下記の組成とする以外は製造例1と同様にして製造し、親水性架橋重合体微粒子分散液(A−2)を得た。
ブレンマーPME−4000(注1) 42部
N−メチロールアクリルアミド 35部
メチレンビスアクリルアミド 3部
メタクリル酸2−ヒドロキシエチル 2部
アクリルアミド 5部
アクリル酸 13部
プロピレングリコールモノメチルエーテル 200部
2,2′−アゾビス(2−メチルブチロニトリル) 1.5部
得られた分散液は乳白色の、固形分20%の安定な分散液であり、樹脂粒子の粒子径は258nmであった。
【0080】
製造例3
製造例1においてモノマー、溶媒及び開始剤の混合物を下記の組成とする以外は製造例1と同様にして製造し、親水性架橋重合体微粒子分散液(A−3)を得た。
ブレンマーPME−4000(注1) 10部
N−メチロールアクリルアミド 60部
メチレンビスアクリルアミド 1部
アクリルアミド 19部
アクリル酸 10部
プロピレングリコールモノメチルエーテル 200部
2,2′−アゾビス(2−メチルブチロニトリル) 1.5部
得られた分散液は乳白色の、固形分20%の安定な分散液であり、樹脂粒子の粒子径は284nmであった。
【0081】
製造例4
製造例1においてモノマー、溶媒及び開始剤の混合物を下記の組成とする以外は製造例1と同様にして製造し、親水性架橋重合体微粒子分散液(A−4)を得た。
ブレンマーPME−4000(注1) 20部
N−メチロールアクリルアミド 15部
メチレンビスアクリルアミド 5部
アクリルアミド 50部
アクリル酸 10部
プロピレングリコールモノメチルエーテル 200部
2,2′−アゾビス(2−メチルブチロニトリル) 1.5部
得られた分散液は乳白色の、固形分20%の安定な分散液であり、樹脂粒子の粒子径は185nmであった。
【0082】
製造例5
製造例1においてモノマー、溶媒及び開始剤の混合物を下記の組成とする以外は製造例1と同様にして製造し、親水性架橋重合体微粒子分散液(A−5)を得た。
ブレンマーPME−4000(注1) 30部
N−メチロールアクリルアミド 23部
メチレンビスアクリルアミド 3部
メタクリル酸2−ヒドロキシエチル 2部
アクリルアミド 31部
アクリル酸 11部
プロピレングリコールモノメチルエーテル 200部
2,2′−アゾビス(2−メチルブチロニトリル) 1.5部
得られた分散液は乳白色の、固形分20%の安定な分散液であり、樹脂粒子の粒子径は285nmであった。
【0083】
製造例6
製造例1においてモノマー、溶媒及び開始剤の混合物を下記の組成とする以外は製造例1と同様にして製造し、親水性架橋重合体微粒子分散液(A−6)を得た。
ブレンマーPME−4000(注1) 20部
N−メチロールアクリルアミド 20部
アクリルアミド 50部
アクリル酸 10部
プロピレングリコールモノメチルエーテル 200部
2,2′−アゾビス(2−メチルブチロニトリル) 1.5部
得られた分散液は乳白色の、固形分20%の安定な分散液であり、樹脂粒子の粒子径は425nmであった。
【0084】
ポリオキシアルキレン鎖を有する化合物水溶液の製造
製造例7
四つ口フラスコ中に水を150部仕込み、50℃にて撹拌しながらフレーク状のPEG20000(三洋化成工業社製、ポリエチレングリコール、数平均分子量20000)を100部添加して溶解させ、固形分40%のポリエチレングリコール水溶液(B−1)を得た。
【0085】
親水化処理用組成物の製造
実施例1
製造例7で得たポリエチレングリコール水溶液(B−1)を固形分量で30部、製造例1で得た親水性架橋重合体微粒子分散液(A−1)を固形分量で70部、サイメル701(日本サイテックインダストリーズ社製、メチルエーテル化メラミン樹脂、固形分82%)を固形分量で20部及びNEWCOL2308(日本乳化剤社製、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、固形分100%)を固形分量で5部を混合攪拌し、水を加えて固形分10%の親水化処理用組成物を得た。
【0086】
実施例2〜16及び比較例1〜4
実施例1において配合を下記表1に示すものとする以外は実施例1と同様にして各実施例及び比較例の固形分10%の親水化処理用組成物を得た。
【0087】
なお、表1中の各注の原料は下記の内容のものであり、表1の配合は固形分量である。
【0088】
注2)グリオキザール:日本合成化学工業社製
注3)デナコールEX−313:ナガセケムテックス社製、グリセリンポリグリシジルエーテル
注4)セロゲン7A:第一工業製薬社製、カルボキシメチルセルロース
注5)ポリビニルアルコール:日本酢ビ・ポバール社製、重合度1,000、ケン化度98%
注6)ポリアクリル酸:日本純薬社製、分子量20,000、アンモニア0.7当量中和、固形分40%。
【0089】
塗膜性能試験
上記実施例および比較例で得た親水化処理用組成物を、アルカリ脱脂剤(日本シービーケミカル社製、商品名「ケミクリーナー561B」)を溶解した濃度2%の水溶液を使用して脱脂した後、クロメート処理剤(日本パーカライジング社製、商品名「アルクロム712」)でクロメート処理(金属クロム換算塗着量30mg/m)を行ったアルミニウム板(A1050、板厚0.1mm)に、乾燥膜厚で1μmとなるように塗布し、素材到達最高温度が220℃になるようにして10秒間焼付けし各塗装板を得た。得られた塗装板について下記試験方法に従って試験を行った。その試験結果を表1に合わせて示す。
【0090】
耐水性:3枚重ねのガーゼに水をしみ込ませて、試験板の平面部をこすった時の素地露出までの往復回数を求め、下記基準で評価した。
◎:30回以上。
○:20回以上で30回未満、実用の範囲。
△:10回以上で20回未満。
×:10回未満。
【0091】
塗膜密着性:素地に達するように鋭利な刃物で塗膜に大きさ1×1mmのゴバン目を100個作り、その表面に粘着セロハンテープを貼着し、それを急激に剥離した後の残存した枡目数を求め、下記基準で評価した。
◎:残存個数/全体個数=100個/100個。
○:残存個数/全体個数=90個〜99個/100個。
△:残存個数/全体個数=70個〜89個/100個。
×:残存個数/全体個数=69個以下/100個。
【0092】
親水性:各試験板に揮発性プレス油AF−2C(出光興産社製)を塗布し、180℃にて5分間乾燥させたものを試験塗板とした。この試験塗板と水との接触角を協和化学社製CA−X150型接触角計で測定し初期親水性を評価した。また、試験塗板を水道水流水(流水量は塗板1m当り15kg/時)中に120時間浸漬し、80℃で5分間乾燥したのち上記と同様にして塗板と水との接触角を測定し流水後の親水性を評価した。親水性は下記基準に従って評価した。
◎:接触角が10°未満。
○:接触角が10°以上で20°未満、実用の範囲。
△:接触角が20°以上で30°未満。
×:接触角が30°以上。
【0093】
耐汚染性:各試験板に揮発性プレス油AF−2C(出光興産社製)を塗布し、180℃にて5分間乾燥させた後、水道水流水(流水量は塗板1m当り15kg/時)中に72時間浸漬したものを試験塗板とした。15リットルのガラス容器内にステアリン酸30gを入れたシャーレを置き、各試験塗板を容器内に吊るして容器を密閉した。該容器を100℃に設定した乾燥器の中に24時間放置した後、取り出して各試験塗板の水との接触角を協和化学社製CA−X150型接触角計で測定し、下記基準に従って評価した。
◎:接触角が30°未満。
○:接触角が30°以上で35°未満、実用の範囲
△:接触角が35°以上で40°未満。
×:接触角が40°以上。
【0094】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a) ポリオキシアルキレン鎖又はポリビニルピロリドン鎖を有する重合性不飽和モノマー 2〜50質量%、
(b) N−メチロールアクリルアミド及び/又はN−メチロールメタクリルアミド 30〜65質量%、
(c) 1分子中に2個以上の重合性不飽和二重結合を有する化合物 0.1〜5質量%、
(d) カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー 2〜50質量%、並びに
(e) 1分子中に1個の重合性不飽和基を有する、上記(a)、(b)、(c)及び(d)以外の他のモノマー 0〜65.9質量%
からなるモノマー混合物の共重合体からなる親水性架橋重合体微粒子(A)を含有することを特徴とする親水化処理用組成物。
【請求項2】
さらにポリオキシアルキレン鎖を有する化合物(B)を含有するものである請求項1に記載の親水化処理用組成物。
【請求項3】
さらに硬化剤(C)を含有するものである請求項1又は2に記載の親水化処理用組成物。
【請求項4】
硬化剤(C)がメラミン樹脂、ポリアルデヒド化合物及びエポキシ化合物から選ばれる少なくとも1種を含有するものである請求項3に記載の親水化処理用組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の親水化処理用組成物をアルミニウム製熱交換器フィン材に塗布することを特徴とするフィン材の親水化処理方法。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の親水化処理用組成物からの塗膜が表面層として形成されてなるアルミニウム製熱交換器フィン材。

【公開番号】特開2009−149715(P2009−149715A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−326958(P2007−326958)
【出願日】平成19年12月19日(2007.12.19)
【出願人】(000001409)関西ペイント株式会社 (815)
【Fターム(参考)】