説明

親水性多孔質膜

【解決手段】 多孔質不活性支持体からなる親水性多孔質膜。その上にイオノマーが堆積し、該膜はそれらが1L/(h・m2・atm)より高い透水性を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、親水性多孔質膜およびそれらの製造法に関する。該膜は、高い透水性を有し、水で容易に湿潤可能で、湿潤状態で湿潤していない膜よりかなり低い通気度を示す。
より詳細には、本発明の膜は、好ましくは−SO3H官能基を有する、フッ素化されたイオノマーからなるフッ素化されたポリマーを好ましくはベースにした不活性多孔質支持体からなる。
【0002】
本発明の膜は、高い透水性を特徴とし、分離工程において、例えば水溶液の精密ろ過、限外ろ過および超ろ過(iperfiltration)工程、例えば湿潤気体を脱水するための、浸透気化工程において特に適当に用いられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
分離工程において現在用いられる膜は、水素化ポリマーをベースにしていることが知られている。これらの膜の欠点は、それらが洗浄されるのが難しく、一度用いると再利用されるのが難しいことである。そのうえ、医療分野、例えば透析で用いられるとき限外ろ過膜は、有害な物質の放出がないという本質的な特徴を有さなければならないことが、よく知られている。そのうえ該膜は、分解されなく容易に滅菌可能でなければならない。これらの欠点を克服するために、必要な多孔度を得るための特定な方法により得られたフッ素化されたポリマー、例えばPVDF(ポリフッ化ビニリデン)またはPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、をベースにした膜を用いることが、先行技術において知られている。しかし、これら材料の高い疎水性のため、特にPTFEの場合、透水性が極端に減少する。透水性を増加させるため、膜の表面処理を行い、材料の疎水性を減少させることが知られている。しかし、これら表面処理をもっても、膜は低い透水性を示している。
【0004】
さらに、該処理は、膜に一時な親水性を与える。これは、膜が脱水状態になるとき、親水性を失い(いわゆるディウェッティング現象)、膜に親水性を与える複雑な処理を繰り返す必要があることを意味する。
この目的で、米国特許第6,179,132号参照。その中には、ろ過用の多孔質膜が記述されている。その膜は、基体に直接結合したペルフルオロカーボンコポリマーで完全に改質された表面を有する、多孔質ペルフルオロポリマー基体からなり、ペルフルオロカーボンコポリマーは水と接触して直接湿潤可能な親水性基を有する。該特許において、基体を不活性にする危険にさらさず、かつ基体多孔度を意味あるほど減少させることなく、ペルフルオロポリマー表面が親水性になることが示されている。コポリマーは、実質的に水性の溶液からペルフルオロポリマー上に堆積され、水で直接湿潤可能なペルフルオロポリマー表面を得る。表面が水との接触で直接湿潤可能ではないので、該特許に記述の方法に従い改質された、この直接湿潤可能な表面は、水および有機溶媒の溶液または有機溶媒のみの溶液から堆積されたペルフルオロカーボンポリマーで処理した先行技術で記述された表面とは異なる。そのうえ先行技術に従い改質された上記表面には、表面を水で湿潤させるためには複雑な予備処理(有機溶媒または剪断)が必要である。該特許の多孔質膜は、ディウェッティング現象を示さない。該特許による支持体表面は、コーティングでコートされていないが、改質のみされている。
【0005】
該膜は透水性を示すが、しかしこれは、この分野において必要とされるようなろ過の分野で用いられるのに十分高くない(比較例参照)。
また、浸透気化工程において、湿式気体を脱水するのに用いる膜は、それらが湿気のある気体と接したときに、高い透水性と気体への低い透過を示さなければならない。これらの適用に関して、ナフィオン(登録商標)−ベースの膜が用いられる。しかし、これらの膜の欠点は低い透水性である。従って、産業的プラントには、広い表面を有する膜が必要であり、従って、それらは大きなサイズを有さなければならない。これは、産業的観点および経済的観点の両方から欠点を意味する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
先行技術の膜に関して向上した透水性を有し、ディウェッティング現象を示さない、入手可能な親水性膜に対し、必要が感じられていた。
驚き、予期せぬことに、本発明者により、以後記述する膜により上記技術的問題が解決可能であることが見出された。
本発明の目的は、不活性の多孔質支持体上にイオノマーが堆積されてなる親水性多孔質膜であって、その膜が、1L/(h・m2・Atm)より高い、好ましくは10L/(h・m2・Atm)より高い、より好ましくは100L/(h・m2・Atm)より高い、さらにより好ましくは500L/(h・m2・Atm)より高い透水性を有し、イオノマーが非晶形であり、かつ酸性型の親水性基を有することを特徴とする、親水性多孔質膜である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】(A)は実施例4で得られた試料のS.E.M.分析で得られた写真を示す。(B)は2軸延伸 PTFE試料のS.E.M.分析で得られた写真を示す。
【図2】(A)は試料のE.D.S分析を示す。(B)は2軸延伸 PTFEのE.D.S分析を示す。
【図3】(A)は実施例D(比較例)で得られた試料のS.E.M.で分析して得られた写真を示す。(B)は実施例D(比較例)で得られた試料のE.D.S.分析を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
透水性は、以下の試験により測定される:膜を、直立円柱の底に設置し、0.5mmの直径を有する孔を有し、500,000L/(h・m2・Atm)より高い透水性を有する36mmの直径を有する金属板の上に設置し;130mLの脱イオン水および蒸留水を金属円柱に注ぎ;円柱を閉じて内部圧力を窒素を供給することにより調節し、4つの透過実験をそれぞれ0.5、1、1.5および2Atmの圧力で行い、各実験の間圧力を維持し、終点で水泡(head)が膜の上にあるように操作し;流量およびそのときの各圧力値での流動性を測定し;時間単位に対し、膜表面単位に対し、および圧力単位に対し集められた水容量を測定する。
【0009】
その後、得られた流動性と相当する圧力をダイヤグラムに記録し、それは実験点に関して、最小平均二重偏差を与える、ダイヤグラム原点を通過する直線の傾き(それは透水性を意味する)を測定した。用いた膜は、0.2ミクロンの多孔度(孔平均サイズ)、40ミクロンの厚さを有し、Gore(登録商標)ドイツにより市販されている、2軸延伸(bistretched)PTFE−ベースのゴレテック(Goretex)(商標登録)である。膜は、米国特許第6,179,132号の方法に従うか、または本発明の方法に従うが、または比較実施例に従い、処理される。膜は約40ミクロンの厚さを有する。
【0010】
本発明者は、本発明の不活性多孔質支持体上で、イオノマーがコーティングの形態で、膜隙間を定義する外表面上および内壁上に、分布されることを見出した。S.E.M写真により、コーティング形成イオノマー量が、約20重量%より低いとき(図1A、1Bおよび3A参照)、本発明の処理の後でさえ、支持体多孔質構造が実質的に不変であることが示されている。膜が支持体として2軸延伸PTFEを用いるとき、イオノマーはそれ自体、支持体構造を形成するすべての単一フィブリルおよび結節上に、均等に均質に配列する。
【0011】
ろ過の種類に応じて、それは膜多孔度を調整するのに、例えばそれらのカットオフ(cut-off)を調整するために有用である。従って、本発明の多孔質膜は、膜が湿っていないときには、部分的にまたは全体的に気体が吸蔵された孔を有し、ただし上記限界より高い透水性値である。気体吸蔵物は、支持体上に堆積したイオノマー量に依存する。気体吸蔵はASTM0726−58に従い測定され、ガーレイ(Gurley)数として表現される。ガーレイ数が10,000より高いとき、湿っていないとき膜は全体的に気体が吸蔵されている。
気体が完全に吸蔵された孔を有する多孔質膜を得るために、膜は、膜(支持体+イオノマー)の重量に関して約30重量%より高い量のイオノマーを含まなくてはならない。
【0012】
部分的に気体で吸蔵された孔を有する多孔質膜は、約20重量%より低いイオノマー量を含有する。部分的に気体で吸蔵された膜について用いることができるイオノマーの最低量は、非常に低く、約0.5重量%のオーダーでさえある。
非常に高い透水性を有する膜は、0.5〜10重量%(支持体+イオノマー)の堆積したイオノマー量を含有する。
本発明者は、20%〜30重量%のイオノマーにおいて、部分的に、および全体的に気体で吸蔵された膜を見出すことが可能であることを見出した。結合理論に従っていないが、この領域は転移領域と定義されうる。
【0013】
気体で完全に吸蔵されていない多孔質膜は、湿っていないとき、不透明にみえることが見出されている。驚いたことに、水と接触した該膜は、先行技術で記載したものより、さらに透明になり、それらは、不透明であるときに比べて、気体への浸透性がより低くなることが見出されている。
多孔質支持体として、膜に適当な機械的性質を与えることができるいずれの多孔質不活性材料を用いることができる。より好ましくは、(ペル)フルオロポリマーをベースとした多孔質支持体を、高い化学的不活性にするのに用い、より好ましくはPTFEの多孔質膜、好ましくは2軸延伸を用いる。
【0014】
イオノマーは、(ペル)フルオロ化されたポリマー、好ましくは−SO3Hおよび/または−COOH官能基、好ましくは−SO3Hを有し、非晶質になるような当量を有する。好ましいイオノマーは、
(A) 少なくとも1つのエチレン不飽和を含有する、1以上のフッ素化されたモノマーから誘導されるモノマー単位;
(B) 親水性基へ変換可能な官能基、好ましくは−SO2Fおよび/または−COOR、−COF[式中、RはC1〜C20アルキル基またはC6〜C20アリール基である]を、上記当量になるような量で含有するフッ素化された、官能基が−SO2Fおよび/または−COOR、−COFであるとき、官能基は最終的な膜において親水性基、好ましくは−SO3Hおよび/または−COOH基に変換される、モノマー単位からなる。
【0015】
好ましくは、タイプ(A)のフッ素化されたモノマーは、
− フッ化ビニリデン(VDF);
− C2〜C8ペルフルオロオレフィン、好ましくはテトラフルオロエチレン(TFE);
− クロロトリフルオロエチレン(CTFE)およびブロモトリフルオロエチレンのようなC2〜C8クロロ−および/またはブロモ−および/またはヨードフルオロオレフィン;
− CF2=CFORf(ペル)フルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)[式中、RfはC1〜C6(ペル)フルオロアルキル、例えばトリフルオロメチル、ブロモジフルオロメチル、ペンタフルオロプロピルである];
− CF2=CFOX ペルフルオロ−オキシアルキルビニルエーテル[式中、Xは、1以上のエーテル基を有するC1〜C12 ペルフルオロ−オキシアルキル、例えばペルフルオロ−2−プロポキシ−プロピルである]から選択される。
【0016】
好ましくは、タイプ(B)のフッ素化されたモノマーは、以下:
− F2C=CF−O−CF2−CF2−SO2F;
− F2C=CF−O−[CF2−CXF−O]n−CF2−CF2−SO2F[式中、X=Cl、FまたはCF3;n=1〜10];
− F2C=CF−O−CF2−CF2−CF2−SO2
− F2C=CF−Ar−SO2F[式中、Arはアリール環である];
− F2C=CF−O−CF2−CF2−CF2−COF
− F2C=CF−O−[CF2−CXF−O]n−CF2−CFX−COF[式中、X=Cl、FまたはCF3;n=1〜10]の1またはそれ以上から選択される。
【0017】
任意に、本発明のフッ素化されたイオノマーは、式:
12C=CH−(CF2m−CH=CR56 (I)
[式中、
m=2〜10、好ましくは4〜8;
1、R2、R5、R6は、同一または互いに異なって、HまたはC1〜C5アルキル基である]
のビスオレフィンから誘導された0.01〜5モル%のモノマー単位を含有してもよい。
【0018】
単位より高い不飽和の数を有する式(I)のビスオレフィンのコモノマーとしての導入は、該コモノマーが重合の間にイオノマーを予め架橋する機能を有するので、有利である。ビスオレフィン導入は、最終的なレティキュールを形成する第1の鎖の長さを増加させるという利点がある。
【0019】
(ペル)フルオロ化されたイオノマーは、任意に架橋されることができる。これは、液体への膜多孔度および気体の吸蔵を調整するのに有用である。実際、架橋により、支持体壁をコートするイオノマー量を増加させる。
架橋は、イオンおよびラジカルルートの両方で起こりうる。混合架橋も、用いることができる。架橋は過酸化ルートで起こるのが好ましく、そのゆえにイオノマーは、ラジカル攻撃部位、例えばヨウ素および/または臭素原子を鎖および/または高分子の末端位に含まなければならない。ラジカル架橋は、イオノマーが該単位を含有するときには、ビスオレフィンの炭素原子上でも起こることができる。
【0020】
イオン性タイプの架橋は、先行技術のイオノマーの公知の方法に従い起こる。例えばスルホン酸性イオノマー架橋については、2つの−SO2F基の間で反応させるような架橋剤が添加される。特許出願第WO 99/38,897号参照。
好ましくは、本発明のフッ素化されたイオノマーは、
− TFEから誘導されたモノマー単位;
− CF2=CF−O−CF2CF2SO2Fから誘導されたモノマー単位;
− 式(I)のビスオレフィンから誘導されたモノマー単位;
− 末端位のヨウ素原子からなる。
【0021】
そのようなヨウ素および/または臭素原子の鎖への導入に関しては、反応混合物中、2〜10の炭素原子を有するブロモおよび/もしくはヨードオレフィン(例えば米国特許第4,035,565号および同第4,694,045号に記述のように)またはヨードおよび/もしくはブロモフルオロ−アルキルビニルエーテル(米国特許第4,745,165号、同第4,564,662号および欧州特許第199,138号に記述のように)のような、臭素化および/またはヨウ素化「硬化部位」コモノマーの、最終製品中の「硬化部位」コモノマーの含有量が、通常他の基本モノマー単位の100モルあたり0.05〜2モルの範囲であるような量での添加により行うことができる。
【0022】
代わりに、または硬化部位コモノマーと組み合わせても、ヨウ素化および/または臭素化連鎖移動剤、例えば、式Rf(I)x(Br)y[式中、Rfは、1〜8の炭素原子を有する(ペル)フルオロアルキルまたは(ペル)フルオロクロロアルキル基であり、一方xとyは0〜2の整数であり、1≦x+y≦2(例えば米国特許第4,243,770号および同第4,943,622号参照)である]の化合物の反応混合物に添加することにより、末端ヨウ素および/または臭素原子を導入することが可能である。連鎖移動剤として、アルカリまたはアルカリ土類金属のヨウ化物および/または臭化物を米国特許第5,173,553号に従い用いることも可能である。
【0023】
ラジカルタイプの架橋は、式(I)のビスオレフィンの単位および高分子鎖の末端位にヨウ素を含有するイオノマーを用いるのが好ましい。
本発明のスルホン酸性イオノマーがラジカルルートで架橋されたとき、用いる過酸化物のタイプに応じ、加熱によりラジカルを生じうる適当な過酸化物の添加により、100℃〜300℃の範囲の架橋温度を用いる。通常、過酸化物量はポリマーに対して0.1%〜10重量%の範囲である。それらの中で、例えばジ−tert−ブチル−ペルオキシドおよび2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチル)ペルオキシ)ヘキサン;ジクミルペルオキシド;ジベンゾイルペルオキシド;ジtert−ブチルペルベンゾエート;ジ−1,3−ジメチル−3−(tert−ブチルペルオキシ)ブチルカルボネートのようなジアルキル過酸化物が挙げられる。他の過酸化物系は、例えば、欧州特許第136,596号および同第410,351号に記述されている。
【0024】
さらに、架橋の前に:
(a) ポリマーに対して0.5〜10%、好ましくは1〜7重量%の範囲の量の架橋補助剤;なかでも、トリアリル−シアヌレート;トリアリルイソシアヌレート(TAIC);トリス(ジアリルアミン)−S−トリアジン;トリアリルホスフィット;N,N−ジアリル−アクリルアミド;N,N,N’,N’,−テトラアリル−マロンアミド;トリビニル−イソシアヌレート;2,4,6−トリビニル−メチルトリシロキサン;N,N’ビスアリルビシクロ−オクタ−7−エン−ジスクシンイミド(BOSA);式(I)のビスオレフィン、トリアジンを挙げることができ;
【0025】
(b) 例えばBa、Na、K、Pb、Caのステアリン酸塩、安息香酸塩、炭酸塩、蓚酸塩または亜燐酸塩のような弱い酸塩と任意に組み合わせて、ポリマーに対して1〜15%、好ましくは2〜10重量%の範囲の量の、例えばMg、Zn、CaまたはPbのような2価の金属の酸化物または水酸化物から選択される金属化合物;
【0026】
(c) 増粘剤、顔料、抗酸化剤、安定剤等のような他の一般的な添加剤;
(d) 無機もしくはポリマー性補強充填剤、好ましくはPTFE、任意に フィブリル化可能なPTFE[充填剤は、10〜100nm、好ましくは10〜60nmのサイズを有するのが好ましい]
を添加することができる。
【0027】
本発明の必須の特徴は、非晶質イオノマーが支持体孔を形成するミクロ構造のすべてを均質にコーティングするのに用いられることである。
非晶質イオノマーにより、結晶化度の実質的不在を示すものを意味する。例えば、X線結晶回折分析において、結晶化度ピークは不在でなければならない。特に2θで18°のピークは、不在でなければならない(実施例参照)。本発明に従えば、5%より低い残留結晶化度の存在は、容認されるが、1%より低いのが好ましく、とにかく透水性が上記限界より低いようなものである。この場合、結晶度は実施例で示されたように計算される。
【0028】
上記のような架橋に加えて、膜多孔度は、1以上の(ペル)フルオロポリマーからなる組成物中に添加することによっても、調整可能である。非晶質または結晶性(ペル)フルオロポリマーが挙げられるが、非晶質なものは本発明の膜のイオノマーとは異なるものである。非晶質なものの例は、コポリマーTFE/(ペル)フルオロビニルエーテル、TFE/VDF/HFPおよび/または(ペル)フルオロビニルエーテルのような(ペル)フルオロエラストマーである。
【0029】
結晶の例は、PVDF、PFA、MFA、PEP(ビニルエーテルで任意に改質される)、PTFEである。好ましくは、(ペル)フルオロポリマーは、結晶性イオノマー性タイプである。
多孔質膜、好ましくは気体で完全に吸蔵されていない孔を有するものが、分離工程において、例えば水溶液の精密ろ過および限外ろ過工程において、例えば湿気のある気体を脱水するための、浸透気化工程において用いられるのが特に適している。
【0030】
先行技術の膜に対して本発明の膜の高い透水性のため、より小さい膜の表面が必要であり、従ってより安価なプラントである。これは、産業的観点から、本発明の膜で得られうる著しい利点を意味する。
気体で完全に吸蔵された孔を有する多孔質膜は、超ろ過および/または逆浸透工程に特に適する。
本発明の膜が、水性の溶液流れの存在下に室温より高く、150℃までの温度での熱時ろ過に用いられるとき、本発明のフッ素化されたイオノマーは、架橋された形態で用いられるのが好ましく、以下のような方法の工程d)が行われる。本発明の膜が室温またはそれより低い温度で用いられるとき、以下に示す方法の工程d)は任意である。
【0031】
本発明のさらなる目的は、(ペル)フルオロ化されたポリマーおよび、親水性基、好ましくは−SO3Hまたは−COOH官能基を含有する非晶質(ペル)フルオロ化されたイオノマーから形成される多孔質支持体の親水性多孔質膜の製造方法であり、その方法は、以下の工程:
a) (ペル)フルオロ化されたポリマーから形成された多孔質支持体を、加水分解しうる基、好ましくは−SO2F、−COOR、−COF[式中、RはC1〜C20アルキル基またはC6〜C20アリール基である]を有する(ペル)フルオロ化されたイオノマーで、1〜20重量%の範囲、好ましくは4〜20重量%の範囲の濃度のイオノマー性化合物のフッ素化された有機溶媒中の溶液を用いて、イオノマー性溶液で実質的に満たされた孔を有する膜を得るまで、含浸し[含浸は室温〜120℃、好ましくは15℃〜40℃の温度で行われ、そのように含浸された膜は溶媒の実質的除去および実質的に透明な膜の入手まで50℃〜200℃、好ましくは120℃〜160℃の温度での熱処理に付され、任意に工程a)を膜が実質的に透明に見えるまで繰り返し]、
【0032】
b) a)で得られた膜を、水中で完全に解離する、無機の強い、好ましくは水性の、アルカリ、すなわち塩基で処理し、官能基の親水性基への変換、好ましくは−SO2Fから−SO3-へ、および−COOR、−COF基から−COO-基への変換をし;
c) b)で得られた膜を、無機の強い酸、すなわち水溶液中で完全に解離する酸で処理し、酸親水性型の(ペル)フルオロ化されたイオノマーを得;
d) 任意に50℃〜100℃の範囲の温度で水で処理し、過剰なイオノマーが除去され、洗浄水のpHが中性になるまで任意に繰り返す
ことからなる。
【0033】
工程a)において、フッ素化された有機溶媒は、フッ素化されたイオノマーを指示された濃度で完全に溶解させなければならない。好ましい溶液は、最高の含浸を得ることが可能な粘度を有するものである。該溶媒の例は、メチルペルフルオロブチルエーテル、ペルフルオロヘキサン、ペルフルオロヘプタンである。そのうえ工程a)における溶媒は、常圧で180℃より低い、好ましくは120℃より低い沸点を有さなければならない。
【0034】
工程a)の終点において、膜は不透明または透明に見える。これは、溶液粘度、含浸温度および熱処理温度に左右される。工程a)は、透明な膜が得られるまで、1回以上繰り返される。
工程b)において、強アルカリは、Ia族の金属の水酸化物が好ましい。通常、温度はイオノマー官能基が十分すばやく変換されるようなものを用いる。工程b)で用いられる温度は、塩基濃度およびイオノマー官能基の性質に左右される。例えば−SO2F官能基を有する(ペル)フルオロ化されたイオノマーの場合、20℃〜80℃、好ましくは50℃〜80℃の範囲の温度が用いられるので、処理時間は通常2〜4時間である。
【0035】
工程b)の終点で、イオノマーは加水分解されていない官能基をこれ以上示してはならない。イオノマー官能基が−SO2Fのとき、−SO2F基が存在しないことを証明しなければならない。これは、例えばIR分光法(1470cm-1での−SO2F基のシグナル)で確認することができる。強アルカリでの処理が−COOR官能基を有するイオノマーに行われれば、当該文やの当業者に公知な方法に従い、−COOR基が消失するまでエステル加水分解を行うことができる。
【0036】
工程b)の終点で、洗浄水の中性が得られるまで水での洗浄が行われるのが好ましい。
工程c)において、強酸での処理により、塩化された基が相当する酸基に完全に置換される。これは、ときおり、適当に希釈されたソーダ溶液で膜を粉砕することにより行うことができる。工程c)の温度は重要ではなく、しかし室温で行うのが好ましい。用いられる強酸は、通常H2SO4、HCl、HNO3である。
【0037】
工程c)の終点で、工程d)は洗浄水の中性pHが得られるまで行うのが好ましい。さらなる水での洗浄の実施により、膜重量は一定であり、イオノマーをもはや放出しない。通常、該処理は約5分から4時間の間の時間、行われる。
上述のように、本発明の方法で得られうる膜は、多孔質支持体の内表面および外表面上の全体に実質的に同質のコーティングを示す。コーティングの形態のままであるイオノマーの量は、イオノマー+支持体の全重量に対して約20%より低く、通常5〜10%のオーダーである。これらの多孔質膜は、最大の透水性を示す。工程d)の終点において、本発明の膜はそれらが水で湿るまで透明に見える。膜を空気中に放置すると、これはすばやく脱水し(数分)、不透明になる。この形態で、膜は著しく気体透過性である。しかし不透明膜は、予期せぬことに、水との接触時に非常に短時間に再度透明になる。従って、本発明の膜は、上述のようなディウェッティング現象を示さない。
【0038】
任意に工程a)において、イオノマーが架橋されなかればならないとき、架橋剤(a)は工程a)において含浸溶液に添加される(上記参照)。例えば、過酸化物性架橋の場合、過酸化物および架橋補助剤はイオノマー攻撃ラジカル性部位含有に添加される(上記参照)。架橋は含浸工程a)の後で100℃〜300℃の温度で行われる。例えば架橋は、熱処理が工程a)で言及したように行われるオーブン中で起こる;または膜を2つのPTFEシートの間に挿入し、それぞれが約100ミクロンの厚さを有し、100℃〜300℃の温度でプレスして膜架橋を行うことにより;または同じ温度で密閉したオートクレーブ中で起こる。架橋の終点で、膜が透明でないとき、工程a)(架橋からなる)を繰り返す。工程a)において架橋を用いるとき、工程a)の終点で示された熱処理は、この場合架橋工程の後で行われるが、任意である。架橋により、過剰なイオノマー量は、その後工程d)で除去されるが、減少する。
【0039】
架橋を行うことによって得られうる膜は、多孔質で架橋されていないものより低い透水性を示し、これは架橋物により異なる。極限として、気体で完全に吸蔵された膜が得られる。しかし予期せぬことに、気体で吸蔵された該膜は依然良好な透水性を示し、上記値より高い。架橋工程により、膜多孔度および従って透水性が調整されうる。
【0040】
多孔度の調整が架橋によらず、工程d)の終点で、非晶質または結晶性の(ペル)フルオロポリマーの添加により行われるとき、(ペル)フルオロポリマーが溶解された溶媒中で溶解されて添加される。先行技術で公知の方法が用いられる。例えば、(ペル)フルオロポリマーが含浸溶液として結晶性イオノマーであるとき、ヒドロアルコール溶液[そこから含浸前にはアルコールが除去されるのが好ましい]を用いることができる。米国特許第6,179,132号参照。部分的に吸蔵された孔と親水性官能基、好ましくは塩の形態で、例えばSO3Liを有する多孔質膜を用い、電気化学的分野、例えばリチウム電池において、電極およびセバレーターを製造することができる。
【0041】
以下の実施例により、本発明を限定しない目的で説明する。
【実施例】
【0042】
膜透水性の測定
膜は、0.5mmの直径を有する孔を有する多孔質金属板で支持された直立円柱の底に設置される。その板は36mmの直径と500,000L/(h・m2・Atm)より高い透水性を有する。金属板の透水性は従って、水流に対する抵抗性が膜のものに対してわずかであるようなものである。膜は、完全に平坦になるように、印加された圧力により応力が加えられないように、測定装置中に設置される。金属円柱中、膜の上で、130mlの脱イオン・蒸留水を注入する。円柱を閉鎖し、内圧を窒素を供給することにより調節する。圧力をマノメーターで読み、リデューサー(reducer)を用いることにより所定値で一定に維持した。膜を抜けて浸透する水を円柱の下に設置した容器中に集めた。実験の終点で、脱水を避けるために、30mlの水が上記膜の上に残るように操作した。集めた水を検量し、用いた時間により、流量を測定した。多孔質隔壁の表面で流速を割ることにより、流動性を測定した。
【0043】
0.5、1、1.5および2Atmで、それぞれ50KPa、101KPa、150Kpaおよび202KPaに相当し、測定した。膜が静止状態で操作されるとき、すなわち液体に働く水流および圧力が時間内に一定値になったと仮定されるとき、測定を行った。その後、膜表面の単位および圧力単位について透水性、すなわち時間単位に集められた容量を測定する。このパラメーターは、圧力の関数における流動性のデカルトダイヤグラム中で報告される、直線の傾きを計算して測定される。ダイヤグラム原点を通過する直線の傾きを計算する;0.5、1、1.5および2atmの圧力で測定された流動性の実験値に対して最小平均二重偏差を与える。
【0044】
通気性の測定(ガーレイ数)
通気性のガーレイのテストは、100mlの空気の流れを得るのに必要な秒での時間を、6.45cm2(1sq.インチ)の表面を有する膜を通じて12cmの水カラムにより発揮されるものに相当する圧力下に測定する。測定はガーレイ・タイプ・ポロシメーター(ASTM 0726−58)で行われる。試料は上記装置円柱上に固定され、封止板の間に留めた。円柱をその後穏やかに下へ降ろした。光電セルに接合した自動クロノメーターを用いて、膜を通る上記空気の容量の円柱から排出されるのに必要な時間(秒)を記録した。この時間はガーレイ数として表される。
【0045】
発明の膜におけるイオノマー量の測定
膜の最初の重量を知ってから、テストされた試料に存在するイオノマー量を検量することにより計算した。
【0046】
塩廃棄
器具は透水性のテストで用いたものと同じであり、テスト調製は同じである。膜の上に、130mlの公知濃度の塩溶液を加えた。円柱をその後密閉し、内圧を窒素で調整した。
圧力を、リデューサーを用い所定値[その値は塩溶液の浸透圧の値より高くなければならない]で一定に維持し、圧力をマノメーターで測定した。膜を通過する溶液を円柱の下に設置した容器中に集めた。通過した溶液の最初の8mlのアリコートを捨てたのち、同じ容量の第2のアリコートを測定のため集めた。膜を通過した溶液の塩濃度を、直線を換算して伝導度滴定の方法により測定した。塩の廃棄を以下の式:
廃棄%=100×(1−Mp/Mi
[式中、Mpは、通過した溶液のモル濃度であり、Miは容器に導入された最初の溶液のモル濃度である]
を用いて計算した。
【0047】
イオノマーの結晶化度の測定
化合物を、0.3mmの厚さを有する試料を、適当な刷込み型を用い、PTFEでコートされた2つのスチール板の間に250℃で成形し、1分間16,000kgの荷重を負荷することにより分析用に製造した。試料をすばやく冷却し、厚さをさらに低くして上記条件下に2回目に処理した。終点で、試料をプレス中でゆっくりと冷却させた。X線回折分析を、イオノマーが2θが18°のピークと同定される結晶化度ピークを示すかどうか証明するために試料に行った。結晶化度ピークが存在しないとき、イオノマーは非晶質である。本発明に従い、5%より低い結晶化度を示すイオノマーも非晶質であると考えられ、該結晶化度パーセントは、18°のピーク面積と18°と16.5°のピーク面積との間のパーセント比により計算される:
【0048】
【数1】

[式中、A18°は2θが18°でのピーク面積であり、
16.5°は16.5°でのピーク面積であり、非晶質相と同定される]。
各面積の計算のため、2つのピークが部分的に重複するので2つのローレンツ(Lorentz)曲線を用いた。
【0049】
S.E.M.+E.D.S.分析
試料を炭素でコートし、それらを導体にし、それらをE.D.S.システム(エネルギー分散システム)でインターフェースで連結したS.E.M. (電子顕微鏡)で調べ、それにより試料自体の表面上に存在する無機成分の映像および定性の両方のスペクトルを得た。
用いるS.E.M.器械はケンブリッジ・インストゥルメンツ・ステレオスキャン(Cambridge lnstruments Stereoscan)(登録商標)120 タイプであり、E.D.S.器械はリンク・アナリティカル(Links Analytical)(登録商標)eXLタイプである。
【0050】
実施例1
当量461g/eqを有するイオノマーの製造
2リットルのオートクレーブ中、以下:
− 脱塩水 800ml;
− 式CF2=CF−O−CF2CF2−SO2Fのモノマー78g;
− 以下の式:
CF2ClO(CF2CF(CF3)O)n(CF2O)mCF2COONH4[式中、n/m=10]を有し、平均分子量527を有する、アンモニウムで塩化された酸末端基を有するフルオロポリオキシアルキレンの5重量%の水性の溶液 240g;
− ペルフルオロポリエーテル溶媒ガルデン(Galden)(登録商標)D02に溶解させた式 I−(CF26−Iのヨウ素化トランスファー・エージェント(transfer agent)の33容量%の溶液7ml;
− ペルフルオロポリエーテル溶媒ガルデン(登録商標)D02に溶解させた式CH2=CH−(CF26−CH=CH2のビスオレフィンの1.5容量%溶液2ml
の反応物を導入した。
【0051】
混合物を、700rpmでの攪拌を維持し、50℃に加熱した。その後、100mlの80g/lの濃度の過硫酸アンモニウム(APS)水溶液をオートクレーブ内へ供給した。圧力をTFEを導入することにより3絶対気圧にした。反応は8分後に開始した。圧力をTFEを供給することにより3絶対気圧(303kPa)で維持した。重合の間、式CF2=CF−O−CF2CF2−SO2Fのスルホニルモノマー12gと溶媒ガルデン(登録商標)D02中の式CH2=CH−(CF26−CH=CH2のビスオレフィンの1.5容量%の溶液2mlを、供給されたTFEの各6gのアリコートに添加した。反応器に供給されたTFEの全体量は、90gであった。最初から312分後に、攪拌をゆるめ、反応器を冷却し、TFEを排出することにより反応を停止した。製造されたラテックスは23重量%の固形分を有していた。ラテックスを凍結により凝集させ、ポリマーを母液から分離し、100℃で16時間常圧で乾燥させた。NMRで測定したコポリマー組成はモルパーセントで以下:64.4%のTFEおよび35.6%のスルホン酸性モノマーであり、461g/eqの当量に相当する。イオノマー中のヨウ素の重量含有量は、蛍光X線分析(XRF)で測定して0.36%である。
X−線分析で上記の結晶化度ピークを示さなかったので、イオノマーは非晶質である。
【0052】
実施例2
8重量%の量で実施例1のイオノマー含有量を有する架橋されていない多孔質膜の製造
461g/eqの当量を有するイオノマー1.71gを、34gのメチルペルフルオロブチルエーテル(HFE(登録商標)7100)中に溶解させた。そのようにして製造されたイオノマー溶液を用いて、60mmの内径を有するPTFEフレーム上に設置した、40μmの厚さ、0〜2μmの平均孔直径(多孔度)および91mgの重量を有する多孔質PTFE膜を含浸させた。溶液泡をその上に堆積させて、各側に膜を溶液で含浸させた。次いで、数秒間直立させて、表面から含浸溶液を除去し、その後140℃で10分間ストーブ中に入れた。ストーブ中での移動を含む含浸工程を3回繰り返し、透明な膜を得た。
【0053】
膜を活性化させ、すなわち、ポリマースルホニル基SO2Fを、膜を4時間70℃で10重量%のKOH水性溶液中で処理し、膜を脱塩水中で洗浄し、膜を16時間室温で20重量%のHCl水性溶液中で処理し、最後に脱塩水で洗浄して酸スルホン酸基SO3Hへ変換した。
膜はその後、脱塩水中で1時間100℃で保ち、水を除去して膜をストーブ中で110℃で乾燥した。
【0054】
膜は、乾燥状態で白色だが、水と接触して透明になった。99mgの重さであり、従って8mgのイオノマーを含有し、膜重量の8%に相当した。
− ガーレイ数:140s.
− 透水性:2042L/(h・m2・atm).
【0055】
実施例3
当量588g/eqを有するイオノマーの製造
2リットルのオートクレーブ中、以下:
− 脱塩水850ml;
− 式CF2=CF−O−CF2CF2−SO2Fのモノマー74 g;
− アンモニウムイオンで塩化された酸末端基を有し、以下の式:
CF2ClO(CF2CF(CF3)O)n(CF2O)mCF2COONH4[式中、n/m=10]を有し、平均分子量527を有するフルオロポリオキシアルキレンの5重量%の水性の溶液240g;
− ペルフルオロポリ−エーテル溶媒ガルデン(登録商標) D02中の式I−(CF26−Iのヨウ素化トランスファー・エージェントの33容量%の溶液13ml;
− ペルフルオロポリエーテル溶媒ガルデン(登録商標)D02中の式CH2=CH−(CF26−CH=CH2のビスオレフィンの1.5容量%の溶液 2ml
の反応物を導入した。
【0056】
混合物を、700rpmでの攪拌を維持し、60℃まで加熱した。その後、過硫酸アンモニウム(APS)の8g/Lの濃度の水性溶液50mLをオートクレーブ中に供給した。圧力をTFEを導入することにより6絶対気圧(606KPa)にした。反応は、2分後に開始した。圧力をTFEを供給することにより6絶対気圧で維持した。重合の間、式CF2=CF−O−CF2CF2−SO2Fのスルホニルモノマー19gと、溶媒ガルデン(登録商標)D02中の式CH2=CH−(CF26−CH=CH2のビスオレフィンの1.5容量%の溶液2mlを、供給されたTFEの各9gのアリコートに添加した。反応器中に供給されたTFEの全量は180gである。攪拌を緩め、反応器を冷却し、TFEを排出することにより開始から221分後に反応を停止した。製造したラテックスは25重量%の固形分を有していた。
【0057】
ラテックスを凍結により凝集させ、ポリマーを母液から分離し、100℃で16時間常圧で乾燥させた。NMRで測定したコポリマー組成はモルパーセントで以下:75.5%のTFEと24.5%のスルホン酸性モノマーであり、588g/eqの当量に相当した。蛍光X線分析(XRF)したイオノマー中のヨウ素の重量での含有量は、0.55%であった。
X線分析で結晶化度ピークを示さなかったので、イオノマーは非晶質である。
【0058】
実施例4
16重量%に等しい実施例3のイオノマーの含有量を有する架橋された多孔質膜の製造
当量588g/eqを有するイオノマー1.32gを、26gのメチルペルフルオロブチルエーテル(HFE(登録商標)7100)中に溶解させた。そのように製造した溶液7.13gに、ルペロック(Luperox)101(2,5−ビス(tert−ブチルペルオキシ)−2,5−ジメチルヘキサン)6.8g、式CH2=CH−(CF26−CH=CH2のビス−オレフィン14.9gおよびHFE(登録商標)7100の63.9gを混合して得られた架橋剤溶液0.38gを添加した。そのようにして得られたイオノマーと架橋剤の溶液を、2つのアリコートに分割し、それぞれを40μmの厚さ、0.2μmの平均孔径(多孔度)および86mgの重量を有し、60mmの内径を有するPTFEフレーム上に予め設置された多孔質PTFE膜の各側を含浸するのに用いた。溶媒を空気で蒸発させ、架橋剤の除去を防ぐために膜を密閉した金属容器中に移し、プレスの2つの板の間に170℃の温度で15分間入れ、イオノマー架橋を得た。架橋工程の後、膜をフレームから取り去った。透明に見え、404mgの重さであった。
【0059】
ポリマースルホニル基SO2Fの酸スルホン酸基SO3Hへの変換を、酸性化時間を4時間に減らし、膜を最後に脱塩水中で1時間85℃で保持し、ストーブ中で乾燥した以外は実施例2のように行った。
膜は、乾燥状態では白色で、水との接触時に透明になった。102mgの重さで、従って16mgのイオノマーを含有し、それは全重量(イオノマー+PTFE多孔質支持体)の16%に相当する。
【0060】
− ガーレイ数:479 s.
− 透水性:241L/(h・m2・atm).
試料をS.E.M.で分析して図1Aに示す写真を得た。
比較のため、膜を用いるために用いた2軸延伸 PTFE試料も同じS.E.M.法で分析した(図1B)。
イオノマーは連続してコートされ、PTFE結節とフィブリル構造を有していたことが認められた。膜構造中、PTFE結節とフィブリル構造を識別することが依然として可能であった。
【0061】
試料および2軸延伸 PTFEのそれぞれのE.D.S分析は、図2Aおよび2Bにそれぞれ示した。
両方において、フッ素ピークが約0.7KeVで観察され、膜のE.D.S.スペクトルにおいて、約2.4KeVでのピークは硫黄ピークに相当する。
硫黄ピークは、言われているように、膜中に存在するイオノマーの全量の表面部分のみを示し、この場合全イオノマー量の16%に相当することが認められた。
【0062】
実施例5
33重量%に等しい実施例3のイオノマー量を含有する架橋された多孔質膜の製造
当量588g/eqを有するイオノマー2.85gを、メチルペルフルオロブチルエーテル(HFE(登録商標)7100)28.5gに溶解させた。そのように製造した溶液11.5gに、ルペロック101(2,5−ビス(tert−ブチルペルオキシ)−2,5−ジメチルヘキサン)6.8g、式CH2=CH−(CF26−CH=CH2のビスオレフィン14.9gおよびHFE(登録商標)7100の63.9gを混合して得られる架橋剤溶液0.51gを添加した。
【0063】
そのように製造したイオノマーおよび架橋剤の溶液を、40μmの厚さと68mgの重量を有し、60mmの内径を有するPTFEフレーム上に設置された多孔質PTFE膜を含浸するのに用いた。膜を、その上に溶液泡を堆積させて、各側上に溶液で含浸した。次いで数秒間直立させて、表面から過剰な含浸溶液を除去した。フレームから取り去り、250μmの厚さを有する2つのPTFEシートの間に入れ、170℃で15分間プレス中に入れてイオノマー架橋を得た。
− ガーレイ数: 326 s.
− 透水性: 10L/(h・m2・atm).
【0064】
実施例6
当量524g/eqを有するイオノマーの製造
2リットルのオートクレーブ中、以下:
− 脱塩水850ml;
− 式CF2=CF−O−CF2CF2−SO2Fのモノマー74g;
−アンモニウムイオンで塩化された酸末端基を有し、式:
CF2ClO(CF2CF(CF3)O)n(CF2O)mCF2COONH4[式中、n/m=10]を有し、平均分子量527を有するフルオロポリオキシアルキレンの5重量%水性溶液240g;
− ペルフルオロポリエーテル溶媒ガルデン(登録商標)D02中の式I−(CF26−Iのヨウ素化トランスファー・エージェントの33容量%の溶液6.5ml;
− ペルフルオロポリエーテル溶媒ガルデン(登録商標)D02中の式CH2=CH−(CF26−CH=CH2のビスオレフィンのl.5容量%の溶液2mlの反応物を導入した。
【0065】
混合物は、700rpmでの攪拌を維持し、60℃まで加熱した。その後、16g/Lの濃度の過硫酸アンモニウム(APS)の水性溶液50mLをオートクレーブ中に供給した。圧力をTFEを導入することにより5絶対気圧(505KPa)にした。反応は14分後に開始した。圧力をTFEを供給することにより5絶対気圧で維持した。重合の間、溶媒ガルデン(登録商標)D02中の、式CF2=CF−O−CF2CF2−SO2Fのスルホニルモノマー17gと、式CH2=CH−(CF26−CH=CH2のビスオレフィンの1.5容量%の溶液2mlを供給されたTFEの各8gのアリコートに添加した。
【0066】
反応器に供給されたTFEの全量は160gであった。反応を、攪拌をゆるめ、反応器を冷却し、TFEを排出することにより開始から296分後に停止させた。製造されたラテックスは、25重量%の固形分を有していた。
ラテックスは、凍結により凝集させ、ポリマーを母液から分離し、100℃で16時間常圧で乾燥した。NMRで測定したコポリマー組成は、モルパーセントで、以下:70.9%のTFEおよび29.1%のスルホン酸性モノマーであり、当量524g/eqに相当する。蛍光X線分析(XRF)で測定したイオノマー中のヨウ素の重量での含有量は、0.30%である。
X線分析で結晶化度ピークが認められないので、イオノマーは非晶質である。
【0067】
実施例7
29重量%に等しい量で実施例6のイオノマー量を含有する架橋されていない膜の製造
当量524g/eqを有するイオノマー29.9gをメチルペルフルオロブチルエーテル(HFE(登録商標)7100)433gに溶解させた。そのようにして製造されたイオノマー溶液を、40μmの厚さ、0.2μmの多孔度(平均孔直径)および86mgの重量を有し、60mmの内径を有するPTFEフレーム上に設置された多孔質PTFE膜を含浸するのに用いた。膜は、その上に溶液泡を堆積させて各側上を溶液で含浸した。次いで、数秒間直立させて、表面から過剰な含浸溶液を除去し、ストーブ中へ140℃で5分間入れた。含浸溶液1mlを次いで膜上の各側上に堆積させ、均質に全体の膜表面上に分布させた。空気での溶媒の部分的蒸発を待ち、ストーブ中140℃で5分間で完全に蒸発させた。膜は透明に見えた。
【0068】
膜を活性化させ、すなわちポリマースルホニル基SO2Fを、膜を4時間70℃で10重量%KOH水性溶液で処理し、次いで、脱塩水中で洗浄し、その後4時間室温で20重量%のHCl水性溶液で処理し、最後に脱塩水で洗浄することにより、酸スルホン酸基SO3Hへ変換した。
膜は、ストーブ中100℃で乾燥した。膜は乾燥状態でも透明であった。試料重量は121mgであり、従って35mgのイオノマーを含有し、全重量の29%に相当した。
− ガーレイ数: > 10,000 s.
− 透水性:14L/(h・m2・atm).
【0069】
実施例8
65重量%に等しい量の実施例6のイオノマー量を含む架橋されていない膜の製造
実施例7で製造したHFE7100中の当量524g/eqを有するイオノマー含浸溶液を、同じサイズを有する円形フレーム上に設置された実施例7のものと等しいPTFE膜を含浸するのに用いた。膜を、その上を溶液泡で堆積させて各側を溶液で含浸した。次いで、数秒間直立させて、表面から過剰な含浸溶液を除去し、その後ストーブ中に140℃で5分間入れた。1mlの含浸溶液をその後膜の各側に堆積させ、全体の膜表面に均等に分布させた。溶媒を空気で部分的に蒸発させ、その後140℃で5分間ストーブ中へ移動させた。
【0070】
1mlの含浸溶液でのこの処理および続く溶媒の蒸発を2回繰り返した。得られた試料は透明であった。
膜を溶液で処理することおよび先の実施例で記述した水での洗浄により活性化した。
膜をストーブ中で100℃で乾燥した。膜は乾燥状態でも透明であった。試料は240mgの重さであり、従って154mgのイオノマーを含有し、膜重量の65%に相当した。
− ガーレイ数: >10,000 s.
− 透水性:2 L/(h・m2・atm)
【0071】
実施例9
75重量%に等しい量の実施例6のイオノマー量を含む架橋されていない膜の製造
実施例7で製造したHFE7100中の当量524g/eqを有するイオノマー含浸溶液を、同じサイズを有する円形フレーム上に設置された実施例7のものと等しいPTFE膜を含浸するのに用いた。膜を、その上を溶液泡で堆積させて各側を溶液で含浸した。次いで、数秒間直立させて、表面から過剰な含浸溶液を除去し、その後140℃で5分間ストーブ中へ入れた。1mlの含浸溶液をその後膜の各側に堆積させ、全体の膜表面に均等に分布させた。溶媒を空気で部分的に蒸発させ、その後140℃で5分間ストーブ中へ移動させた。
【0072】
1mlの含浸溶液でのこの処理および続く溶媒の蒸発をさらに2回繰り返した。得られた試料は透明であった。
溶液で処理することおよび実施例7で記述した水での洗浄により、膜を活性化した。
膜をストーブ中で100℃で乾燥した。膜は乾燥状態でも透明であった。試料は345mgの重さであり、従って259mgのイオノマーを含有し、膜重量の75%に相当した。
− ガーレイ数:>10,000s.
− 透水性:4L/(h・m2・atm).
【0073】
実施例10
当量499g/eqを有するイオノマーの製造
2リットルのオートクレーブ中に、以下:
− 脱塩水700ml;
− 式CF2=CF−O−CF2CF2−SO2Fモノマー74g;
− 予め混合して得られたフルオロポリオキシアルキレンのマイクロエマルジョン29g;
− カリウムで塩化された酸末端基を有し、以下の式:
CF2ClO(CF2CF(CF3)O)n(CF2O)mCF2COOK[式中、n/m=10]を有し、平均分子量527を有するフルオロポリオキシアルキレン11.6g;
− 平均分子量450を有する式:CF3O(CF2CF(CF3)O)n(CF2O)mCF3[式中、n/m=20]のペルフルオロポリエーテル油ガルデン(登録商標)D02の5.8g;
− 水11.6g;
− ペルフルオロポリエーテル溶媒ガルデン(登録商標)D02中の式I−(CF26−Iのヨウ素化トランスファー・エージェントの33容量%の溶液5.7ml;
− ペルフルオロポリエーテル溶媒ガルデン(登録商標)D02中の式CH2=CH−(CF26−CH=CH2のビスオレフィンの1.5容量%溶液1.5ml;
の反応物を供給した。
【0074】
混合物は700rpmでの攪拌を維持し、50℃で加熱した。その後過硫酸カリウム(KPS)の20g/Lの濃度の水性溶液400mlをその後オートクレーブ中に供給し、圧力をTFEを導入することにより3絶対気圧(303KPa)にした。反応が3分後に開始した。圧力をTFEを供給して3絶対気圧に維持した。重合の間、式CF2=CF−O−CF2CF2−SO2Fのスルホニルモノマー12gと、溶媒ガルデン(登録商標)D02中に溶解させた式CH2=CH−(CF26−CH=CH2のビスオレフィン1.5容量%の溶液1.5mlを、供給されたTFEの各12gアリコートに添加した。反応器へ供給したTFEの全量は88gであった。反応を開始から277分後に攪拌をゆるめ、反応器を冷却し、TFEを排出して停止させた。製造したラテックスは25重量%の固形分を有していた。ラテックスを凍結により凝集させ、ポリマーを母液から分離し、常圧で100℃で8時間乾燥させた。NMRで測定したコポリマー組成はモルパーセントで以下:68.7%のTFEおよび31.3%のスルホン酸性モノマーであり、499g/eqの当量に相当した。蛍光X線分析(XRF)で測定したイオノマー中のヨウ素の重量パーセント含有量は、0.25%であった。
X線分析で結晶化度ピークが存在しないので、イオノマーは非晶質であった。
【0075】
実施例11
60重量%に等しい実施例10のイオノマーの量を含有する架橋されていない多孔質膜の製造
実施例10で得られたイオノマー30gを600gのメチルペルフルオロブチルエーテル(HFE7100)に溶解させた。そのようにして製造されたイオノマー溶液を、40μmの厚さ、0.2μmに等しい上記で定義した多孔度、90mgの重量を有し、60mmの内径を有するPTFEフレーム上に設置された多孔質PTFE膜を含浸するのに用いた。膜を溶液中に垂直に浸し、その後抽出して、溶媒蒸発が完全になるまで垂直を維持した。
【0076】
その後、直立配置で溶液中に再度浸し、抽出して、表面から過剰な含浸溶液を除去するために垂直で数秒間維持し、ストーブ中170℃で10分間乾燥した。
この第2の含浸工程をさらに2回繰り返し、透明な膜を得た。
膜を実施例2で記述したようにして活性化した。膜をストーブ中120℃で乾燥した。膜は乾燥状態でも透明であった。
試料は225mgの重さであり、従って135mgのイオノマー (膜重量すなわちPTFE+イオノマーの60%に相当する)を含有した。
膜をNaClの0.02M溶液と2バール圧力を用いて塩廃棄について試験した。浸透した生成物の測定されたモル濃度は0.013Mであり、すなわち供給された溶液のモル濃度の65%(廃棄値=35%)であった。
− ガーレイ数: >10,000 s.
− 透水性:1.5L/(h・m2・atm).
【0077】
実施例C(比較)
当量735g/eqを有するイオノマーの製造
2リットルのオートクレーブ中、以下:
−脱塩水1L;
−式CF2=CF−O−CF2CF2−SO2Fモノマー74g;
−予め混合して得られたフルオロポリオキシアルキレンのマイクロエマルジョン29g;:
−カリウムで塩化された酸末端基を有し、式:
CF2ClO(CF2CF(CF3)O)n(CF2O)mCF2COOK[式中、n/m=10]を有し、平均分子量527を有するフルオロポリオキシアルキレン11.6g;
−式:CF3O(CF2CF(CF3)O)n(CF2O)mCF3[式中、n/m=20]を有し、平均分子量450を有するペルフルオロポリエーテル油ガルデン(登録商標)D0の25.8g;
− 水11.6g
の反応物を供給した。
【0078】
混合物を500rpmで攪拌を維持し、50℃で加熱した。その後、過硫酸カリウム(KPS)の20g/Lの濃度の水性溶液100mlをオートクレーブ中に供給した。圧力をその後TFEを導入することにより6絶対気圧(606KPa)にした。反応が23分後に開始した。圧力をTFEを供給することにより6絶対気圧に維持した。重合の間、式CF2=CF−O−CF2CF2−SO2Fスルホニルモノマー12gを、供給されたTFEの各11gのアリコートに添加した。反応器に供給したTFEの全量は225gであった。反応を攪拌をゆるめ、反応器を冷却し、TFEを排出することにより、開始から317分後に停止させた。製造されたラテックスは、37重量%の固形分を有していた。
【0079】
ラテックスをlM硝酸溶液中で凝集させ、得られた凝集物を洗浄水の中性が得られるまで洗浄した。
そのようにして得られたポリマーをポリマーのスルホニル基SO2Fを酸スルホン酸基SO3Hへ変換して活性化させた。変換は、ポリマーを16時間80℃で10%のKOHで処理し、中性になるまで洗浄し、室温で20%のHClで24時間処理し、最後に洗浄水の中性を得るまで再度洗浄することにより行った。
イオノマーの当量を測定するために、数グラムの化合物をNaOHの希釈粉砕溶液で粉砕した。当量は735g/eqであった。
X線分析で得られたイオノマースペクトルは、2θで18°での結晶化度ピークを示した。計算された結晶化度は10.2%であった。
【0080】
実施例D(比較例)
米国特許第6,179,132号に従い、水溶液からそれを堆積させることで酸の形態の結晶性イオノマーを47inを用いて含浸して製造された4.7重量%に等しい結晶性イオノマーの量を含有する架橋されていない多孔質膜
当量735g/eqを有する比較例Cで得られたポリマー数グラムを、欧州特許出願第1,004,615号の技術に従い、3.5重量%の濃度で、メタノール、水およびフルオロポリエーテル(H−ガルデン(登録商標)B等級)で85/11.6/3.4の重量比で形成された混合物中に溶解させた。そのようにして製造されたイオノマー溶液を水で容量で3倍に希釈し、真空下に90℃で維持し、定期的に蒸発した容量を水で戻し、最初に用いた溶媒混合物の非水性成分、主に主成分であるメタノールを水で置換した。残存メタノール量を、ガスクロマトグラフィーで測定した。
【0081】
6時間後、メタノールは定量的に除去された。この時点で水の添加を停止し、2.4%の濃度(重量測定により測定)を有するまでイオノマー溶液を濃縮した。そのようにして得られたイオノマー水性溶液は透明であった。厚さ40μm、平均孔直径0.2μmおよび重量85mgを有し、60mmの内径を有するPTFEフレーム上に設置された多孔質PTFE膜を処理するのに用いた。膜の片面に、1滴のイソプロパノールを堆積させ、それをポリエチレン使い捨てピペットのバルブを用いて、膜表面上に均質に分布させた。膜は半透明になり、イソプロパノールの膜孔中への浸透を示した。
【0082】
同じ処理を膜の他方の側に繰り返した。膜が不透明になる前に、1滴のイオノマー水性溶液を膜の側上に堆積させ、それをイソプロパノールで最初に処理した。上記と同じ技術で、それを表面上に分布させた。膜表面をピペットバルブでこすり、膜表面上に滴が形成されるのを防いだ。
【0083】
こすることを、イオノマー溶液がもはや滴で回収されないことが確認されるまで、延長させた。その後、イオノマー溶液での同じ処理を膜の他方の側に繰り返した。膜の両方の側をさらに6分間、すなわち、薄い同質のフィルムが処理された膜表面の全体上に形成されるまで、こすった。膜をその後ストーブ中に140℃で1分間入れた。
【0084】
膜は乾燥状態で白色で、水との接触により、完全に透明になった。
そのようにして製造された試料は89mgであり、すなわち3mgのイオノマーを含有し、膜重量(支持体+イオノマー)を基にして3.4%に相当した。
− ガーレイ数:66 s.
− 透水性:0.2L/(h・m2・atm).
【0085】
試料をS.E.Mで分析し、図3Aに示す写真を得た。
写真を本発明の膜試料で得られたもの(図1A−実施例4)と比較すると、比較実施例により得られた膜は、本発明のもの(16%)より約5倍低いイオノマー量を含有するが、結節およびフィブリル構造を認識するのがより困難な表面を示したことが観察された。これは、堆積したイオノマー量が、広く表面でコートされたことを意味する。
【0086】
E.D.S.分析は、図3Bに示されている。フッ素ピークが約0.7Revに見られ、硫黄ピークが約2.4KeVに見られる。本発明の試料(実施例4)のE.D.S.スペクトルを示す図2Aと図3Bを比較すると、前述のようにイオノマーの全量が、本発明の膜に存在するものより低いにもかかわらず、硫黄ピークは先行技術の技術に従い製造された膜におけるものより高いことが観察される。
この分析により、図3Aの写真と図1Aの写真の間の比較から得られる結論が確認された。
【0087】
実施例E(比較)
当量915g/eqを有するイオノマー製造
2リットルのオートクレーブ中に、以下:
−脱塩水1.2L;
− 式CF2=CF−O−CF2CF2−SO2Fモノマー88g;
−予め混合して得られたフルオロポリオキシアルキレンのマイクロエマルジョン35g;
− カリウムで塩化された酸末端基を有し、式:
CF2ClO(CF2CF(CF3)O)n(CF2O)mCF2COOK[式中、n/m=10]を有し、平均分子量527を有するフルオロポリオキシアルキレン14g;
−式CF3O(CF2CF(CF3)O)n(CF2O)mCF3[式中、n/m=20]を有し、平均分子量450を有するペルフルオロポリエーテル油ガルデン(登録商標)D02の7g;
−水14g;
の反応物を供給した。
【0088】
混合物を500rpmで攪拌を維持し、50℃に加熱した。その後、過硫酸カリウム(KPS)の20g/Lの濃度の水性溶液120mlをオートクレーブに供給した。圧力をその後、TFEを導入することにより11絶対気圧(1111KPa)にした。反応は30分後に開始した。圧力をTFEを供給することにより11絶対気圧に維持した。重合の間、式CF2=CF−O−CF2CF2−SO2Fのスルホニルモノマー15gを供給されたTFEの各20gのアリコートに添加した。反応器に供給したTFEの全量は400gであった。反応を攪拌をゆるめ、反応器を冷却し、TFEを排出することにより、開始から275分後に停止した。製造されたラテックスは36重量%の固形分を有していた。ラテックスを硝酸1M溶液中で凝集させ、得られた凝集物を洗浄水の中性が得られるまで洗浄した。
【0089】
そのようにして得られたポリマーを、ポリマーのスルホニル基SO2Fを酸スルホン酸基SO3Hへ変換して活性化した。変換は、ポリマーを16時間80℃で10%KOH中で処理し、中性になるまで洗浄し、室温で20%HClで24時間処理し、最後に洗浄水が中性になるまで再度洗浄して行った。
【0090】
イオノマーの当量を測定するために、数グラムの化合物をNaOHの希釈粉砕溶液で粉砕した。当量は915g/eqであった。
X線分析で得られたイオノマースペクトルは、2θに18°で結晶化度ピークを示した。計算した結晶化度は23.2%であった。
【0091】
実施例F(比較)
ヒドロアルコール溶液から堆積させることにより、酸の形態の結晶性イオノマーを含浸に用いることにより製造された66重量%に等しい結晶性イオノマー量を含有する架橋されていない膜
比較実施例Eで得られた当量915g/eqを有するポリマーを、欧州特許公報第1,004,615号の開示に従い、メタノール、水およびフルオロポリエーテル(H−ガルデン(登録商標)等級B)の85/11.6/3.4重量比で形成された混合物中に、3.5重量%の濃度で溶解させた。
【0092】
そのようにして製造されたイオノマー溶液を、厚さ40μm、平均孔直径0.2μmおよび重量96mgを有し、60mmの内径を有するPTFEフレーム上に設置された多孔質PTFE膜を含浸するのに用いた。膜を溶液中に浸し、ストーブ中へ140℃で10分間入れた。最終的なストーブ中での乾燥を含む含浸工程を4回繰り返した。膜は乾燥状態で透明であり、286gの重量であり、すなわち190mgのイオノマーを含有し、膜(支持体+イオノマー)の重量を基に66%に相当した。
− ガーレイ数: 10,000 s.
− 透水性:試験条件下で水が浸透しなかったので測定せず.
【0093】
この比較実施例は、結晶性イオノマーを膜の含浸に用いることにより、逆に非晶質イオノマーを用いることにより水に浸透可能な膜が実施例8のように得られるイオノマー重量濃度[膜上の非晶質イオノマーの量は65%であり、実施例9では非晶質イオノマーの量は75%である]では水が浸透しない膜が得られることを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不活性の多孔質支持体および不活性の多孔質支持体上に堆積したフッ素化されたイオノマーでできている親水性多孔質膜であって、その膜が、1L/(h・m2・Atm)より高い透水性を有し、該イオノマーが、テトラフルオロエチレン(TFE)から誘導されたモノマー単位とCF2=CF−O−CF2CF2SO2Fから誘導されたモノマー単位とを含み、上記のイオノマーが5%より低い結晶化度に相当する非晶形であり、かつ−SO3Hの形態にある親水性基を有することを特徴とする親水性多孔質膜。
【請求項2】
部分的にまたは全体的に気体で吸蔵された孔を有する請求項1による膜。
【請求項3】
30重量%より高いイオノマー量を含有する、請求項1または2による全体的に気体で吸蔵された孔を有する膜。
【請求項4】
20重量%より低いイオノマー量を含有する、請求項1または2による部分的に気体で吸蔵された孔を有する膜。
【請求項5】
多孔質支持体が、(ペル)フルオロポリマーで形成されている請求項1〜3のいずれか一つによる膜。
【請求項6】
イオノマーが、式:
12C=CH−(CF2m−CH=CR56 (I)
[式中、m=2〜10;
1、R2、R5、R6は、同一または互いに異なって、HまたはC1〜C5アルキル基である]のビスオレフィンから誘導されたモノマー単位を0.01〜5モル%含有する請求項1〜5のいずれか一つによる膜。
【請求項7】
イオノマーが、
− TFEから誘導されたモノマー単位;
− CF2=CF−O−CF2CF2SO2Fから誘導されたモノマー単位;
− 式(I)のビスオレフィンから誘導されたモノマー単位;
− 末端位のヨウ素原子
からなる請求項1〜6のいずれか一つによる膜。
【請求項8】
(ペル)フルオロ化されたイオノマーが架橋された請求項7による膜。
【請求項9】
1以上の非晶質または結晶性のフッ素化されたイオノマーが添加されており、非晶質のものが、膜中で用いられるイオノマーとは異なる請求項1〜8のいずれか一つによる膜。
【請求項10】
添加されるフッ素化されたイオノマーが、結晶性イオノマー性タイプである請求項9による膜。
【請求項11】
分離方法、水溶液の精密ろ過および限外ろ過方法、ならびに浸透気化方法で用いられる請求項1〜10のいずれか一つによる膜。
【請求項12】
膜が、超ろ過および逆浸透方法における請求項3のものである請求項11による膜。
【請求項13】
以下の工程:
a) (ペル)フルオロ化されたポリマーから形成された多孔質支持体を、加水分解しうる基−SO2Fを有する(ペル)フルオロ化されたイオノマーで、1〜20重量%の範囲の濃度のイオノマー性化合物のフッ素化された有機溶媒中の溶液を用いて、イオノマー性溶液で満たされた孔を有する膜を得るまで、含浸し、この含浸を室温〜120℃の温度で行い;そのように含浸された膜を溶媒の除去および透明な膜の入手まで50℃〜200℃の温度での熱処理に付し、
b) a)で得られた膜を、水中で完全に解離する、無機の強い、水性の、アルカリ、すなわち塩基で処理し、官能基の親水性基への変換、すなわち−SO2Fから−SO3-へ、の変換をし;
c) b)で得られた膜を、無機の強い酸、すなわち水溶液中で完全に解離する酸で処理し、酸親水性型の(ペル)フルオロ化されたイオノマーを得る;
ことからなる、
(ペル)フルオロ化されたポリマーから形成された多孔質支持体と、親水性基を含有し、−SO3H官能基を有する非晶質(ペル)フルオロ化されたイオノマーとからなる請求項8による親水性多孔質膜の製造方法。
【請求項14】
工程a)を1回以上繰り返す、請求項13による方法。
【請求項15】
さらに、過剰で、かつpHが中性の洗液中にあるイオノマーを含む請求項13による方法。
【請求項16】
工程a)において溶媒が、常圧で180℃より低い沸点を有する請求項13または14による方法。
【請求項17】
工程b)において用いられる強アルカリが、Ia族の金属の水酸化物である請求項13〜16のいずれか一つによる方法。
【請求項18】
工程b)の終点で、水での洗浄が、中性pHの洗浄水が得られるまで行われる請求項13〜17のいずれか一つによる方法。
【請求項19】
イオノマーが、含浸溶液a)に架橋剤を添加することにより架橋される請求項13〜18のいずれか一つによる方法。
【請求項20】
架橋が、含浸溶液に過酸化物を添加し、100℃〜300℃の温度で操作することにより起こる請求項19による方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−29863(P2010−29863A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−251110(P2009−251110)
【出願日】平成21年10月30日(2009.10.30)
【分割の表示】特願2002−48141(P2002−48141)の分割
【原出願日】平成14年2月25日(2002.2.25)
【出願人】(392001645)
【氏名又は名称原語表記】AUSIMONT SOCIETA PER AZIONI
【Fターム(参考)】