説明

親水性/透過率を高めるための針状シリカコーティング

針状シリカ粒子の層でコーティングされた基材を有するコーティングされた物品が提供される。コーティングは、実質的に厚さが均一であり、基材に永続的に接着し、かつ基材に反射防止特性又は親水性表面特性を付与する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、針状シリカ粒子コーティングに関する。加えて、本発明は、針状シリカ粒子コーティングを有する光学フィルム等の物品、及びかかる物品を調整するプロセスを提供する。
【背景技術】
【0002】
水を散らし、それにより物品の表面上に水滴が形成されるのを防ぐことができる表面を有する物品が、種々の用途にとって望ましい。例えば、温室の窓等、霧又は湿潤環境で用いられる透明なプラスチックは、光透過率を低下させる光反射水滴の形成を避けることが望ましい場合がある。これらの材料の拡水表面は、その透明性を維持し、望ましくない筋が入るのを最低限に抑えるのを補助できる。
【0003】
拡水表面コーティング、特にシリカ系コーティングの問題は、コロイドシリカ及びコロイドシリカフィルムの表面化学、反応化学及び溶液化学の非常に複雑な性質である。例えば、イオンとシリカ表面との相互作用は、広範囲な研究にもかかわらず完全には理解されていない(Iler,「The Chemistry of Silica,」John Wiley,1979 p.665参照)。かかる問題にもかかわらず、耐久性の高いシリカ系拡水フィルムが、以下に記載される本発明に従って提供される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
拡水特性は、再帰反射シートを使用する道路標識において望ましい場合がある。再帰反射シートは、相当量の入射光線を光源に戻す能力を有する。かかる再帰反射シートへの及び再帰反射シートからの光透過は、雨粒及び/又は露の付着により損なわれる。
【0005】
光透過に影響を与える場合がある沈殿の具体的な形態は、結露である。露は、再帰反射シートが作用している夜間に生じるため、特に問題となる場合がある。小さなビーズ状の水滴の形態で道路標識上に存在するとき、露は、入射光線及び再帰反射光線の光路を乱す場合がある。これにより、通過する運転手が標識上の情報を識別するのがより困難になる場合がある。対照的に、再帰反射性道路標識の表面上に透明な層として露が滑らかに広がるとき、表面上の情報を識別するのはより容易である場合がある、なぜならば生じる水の薄い平滑層はそれほど入射光線及び再帰反射光線の光路をそれほど誤った方向に向けないためである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、9〜25nmの平均粒径及び40〜500nmの長さを有する針状シリカ粒子と<5のpKaを有する酸とを含有する分散物を含む組成物、及び基材をコーティング組成物でコーティングすることと、コーティングを乾燥させることとを含む基材のコーティング方法に関する。
【0007】
本開示は、その上に針状シリカ粒子コーティングを有する基材、特にポリマー基材を含むコーティングされた物品を更に提供する。コーティングは、9〜25nmの平均粒径及び40〜500nmの長さを有する粒塊化針状シリカ粒子の連続コーティングを含む。多くの実施形態では、コーティングの厚さは実質的に均一であり、永続的に基材に接着する。
【0008】
コーティングは、種々の基材、特にポリマー基材に良好に接着し、例えば、少なくとも2パーセント等の、正反射率の平均が著しく低下した、かかる基材を提供できる。基材が透明であるとき、コーティングは、同材料のコーティングされていない基材の透過率に対して、400〜700nmの波長範囲における垂直入射光線の透過率を平均して増加することを提供できる。透過率の増加は、好ましくは、少なくとも2パーセントであり、最高で10%以上である。選択された光の波長のいずれに対しても、反射防止層として用いられるコーティングにとって最適な厚さが存在する。
【0009】
コーティングは、基材に親水性表面を更に提供し、疎水性ポリマー基材に親水性表面を提供するのに特に有用である。コーティングはまた、帯電しやすいポリマーフィルム及びシート材料に防曇性及び静電気防止特性も提供できる。コーティングはまた、好ましくは、フィルム及びシート材料等のポリマー材料に耐摩耗性及び滑り特性を提供し、それにより取扱性を改善できる。
【0010】
コーティング組成物から得られるコーティングは、ガラス及びポリマー基材等の表面に耐水及び機械的耐久性親水性表面を更に提供し、種々の温度及び高湿度条件下で優れた防曇性を提供できる。更に、コーティングは、保護層を提供し、コーティングのナノ多孔質構造がオリゴマー及びポリマー分子による浸透を抑える傾向があるため、食品及び機械油、塗料、ほこり及び汚れを含む有機汚染物質をすすぎ落とし除去することができる。
【0011】
本発明の方法は、基材上のコーティングに非水性溶媒又は界面活性剤を必要しないため、危険性が低く、空気中に揮発性有機化合物(VOC)を放出しない。多くの実施形態の他の利点としては、より均一なコーティング、基材への優れた接着性、コーティングの優れた耐久性、高い反射防止性及び高い透過率、並びに汚染物質をすすぎ落とすことができる場合洗浄の容易性が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】比較例C−5のTEM顕微鏡写真。
【図2】実施例14のTEM顕微鏡写真。
【図3】実施例C1、18、及び20〜22の透過率データをプロットしたグラフ。
【図4】実施例C1、19、27及び28の透過率データをプロットしたグラフ。
【図5】実施例C1、18、及び28〜33の透過率データをプロットしたグラフ。
【図6】実施例C1〜C4、及び5〜13の透過率データをプロットしたグラフ。
【図7】実施例C17、56及び57の透過率データをプロットしたグラフ。
【図8】実施例C18、58及び59の透過率データをプロットしたグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示は、<5、好ましくは<2.5、最も好ましくは1未満のpKa(HO)を有する酸と、9〜25nmの平均粒径及び40〜500nmの長さを有する針状シリカ粒子とを含有する溶液で基材をコーティングすることと、コーティングを乾燥させることとを含む、基材をコーティングする方法を提供する。
【0014】
予想外に、これらの針状シリカ粒子コーティング組成物は、酸性化すると、有機溶媒又は界面活性剤のいずれも用いることなしに、疎水性有機及び無機基材上に直接コーティングすることができる。ポリエチレンテレフタレート(PET)又はポリカーボネート(PC)等の疎水性表面上におけるこれらの無機粒子水性分散物の湿潤特性は、分散物のpHと酸のpKaとの関数である。コーティング組成物は、pH=2〜3のHCl、更には幾つかの実施形態では2〜5のHClで酸性化されると、疎水性有機基材をコーティング可能である。対照的に、中性又は塩基性pHでは、コーティング組成物は有機基材上でビーズ状になる。
【0015】
理論に縛られるものではないが、針状シリカ粒子の粒塊は、粒子表面におけるプロトン化シラノール基と組み合わせられた酸触媒シロキサン結合を通して形成され、これらの粒塊は、疎水性有機表面上における被覆性を説明する、なぜならばこれらの基は疎水性表面に結合、吸着、又はそうでなければ永続的に接着される傾向があるためである。粒塊という用語は、互いに接触している多くの点を有するシリカ粒子間の複数の接着を指す。例は、図2(pH=2で得られたTEM顕微鏡写真)中に見ることができる。シリカ粒子のネッキング、接着又はもつれの結果として、元来の針状形状が変形する恐れがある。透過電子顕微鏡は、一般的に、得られるコーティング中の針状シリカ粒子の少なくとも25%、好ましくは少なくとも50%が、隣接する粒子に接着していることを示す。
【0016】
ナノ粒子シリカ分散物の水性有機溶媒系コーティングが記載されているが、かかる水と有機溶媒との混合物は、液相の組成を連続的に変化させる場合があり、結果としてコーティング特性を変化させる蒸発速度の差に悩まされており、これにより均一性が低下し、欠陥が生じる。界面活性剤は分散物の湿潤特性を補助することができるが、粒子間及び界面の基材接着に干渉する場合があり、不均一でかつ欠陥を有するコーティングを生成させることが多い。
【0017】
これら酸性化分散物に対する光散乱測定値は、これらの針状シリカ粒子が粒塊する傾向があることを示し、(コーティング及び乾燥後)それぞれの針状シリカ粒子が隣接する針状粒子に固く接着していると思われる針状シリカ粒子の三次元多孔質網状構造を提供する。電子顕微鏡写真は、かかる結合を、テトラアルコキシシラン又はシロキサンオリゴマー等のシリカ源の不在のもとで酸により作製される、隣接する粒子との間のシリカ「ネック」として示す。これらの形成は、シロキサン結合の作製及び破壊における強酸の触媒作用によって生じる。驚くべきことに、酸性化分散物は、pHが1〜4の範囲であるとき安定であるように思われる。光散乱測定値は、pH約2〜3及び10重量%の濃度におけるこれらの粒塊した酸性化針状シリカ粒子は、1週間超、又は更には1カ月間超後も同じ大きさを保持していたことを示したが、形状の変形が見られた。かかる酸性化針状シリカ粒子分散物は、より低い分散物濃度において更に長い期間安定に保たれると予想される。
【0018】
この組成物で用いられるシリカ粒子は、水性又は水性有機溶媒混合物中の針状シリカ粒子の分散物であり、9〜25nmの平均粒径及び40〜500nmの長さを有する。用語「針状」とは、一般に針のような、細長い形状の粒子を指し、他のとげ状、棒状、鎖状、並びにフィラメント状形状を含んでよい。初期の針状形状は、コーティング組成物が酸と接触することにより変形する恐れがあり、その結果ネッキング又は接着が生じることが理解される。平均粒径は、透過型電子顕微鏡を使用して測定されてよい。針状シリカ粒子は、好ましくは表面改質されていない。
【0019】
針状コロイダルシリカ粒子は、5〜25nmの均一な厚さ、40〜500nm(動的光散乱法による測定)の長さD、及び5〜30の伸長度D/Dを有する場合があり、ここで、本明細書に参考として引用され組み込まれる米国特許第5,221,497号の明細書に開示されるように、Dは、等式D=2720/Sにより算出された直径(nm)を意味し、Sは、粒子の比表面積(m/g)を意味する。
【0020】
米国特許第5,221,497号には針状シリカナノ粒子の製造法が開示されており、この方法では、水溶性カルシウム塩、マグネシウム塩又はこれらの混合物を、平均粒径3〜30nmの活性ケイ酸又は酸性シリカゾルのコロイド水溶液に、シリカに対しCaO、MgO又はその両方が0.15〜1.00重量%の量で添加し、次いで水酸化アルキル金属を、SiO/MO(M:アルカリ金属原子)のモル比が20〜300となるように添加し、得られた液体を60〜300℃で0.5〜40時間加熱する。この方法で得られたコロイダルシリカ粒子は伸長形のシリカ粒子であり、5〜40nmの範囲内の均一な厚さで、1平面のみに延びる伸長を有する。
【0021】
針状シリカゾルはまた、米国特許第5,597,512号に記載されているように調製することができる。簡単にいうと、この方法は、(a)水溶性カルシウム塩又はマグネシウム塩又はそのカルシウム塩とそのマグネシウム塩の混合物を含む水溶液を、1〜6%(重量/重量)のSiOを含有し、2〜5の範囲内のpHを有する活性ケイ酸のコロイド水溶液と、CaO又はMgO又はCaOとMgOの混合物と活性ケイ酸のSiOの重量比として1500〜8500ppmの量で混合する工程、(b)水酸化アルキル金属又は水溶性有機塩基又はその水酸化アルキル金属若しくはその水溶性有機塩基の水溶性ケイ酸塩を、工程(a)で得られた水溶液と、モル比SiO/MOが20〜200で混合する工程(SiOは、活性ケイ酸由来のシリカ含量とケイ酸塩のシリカ含量の総量を表わし、Mは、アルカリ金属原子又は有機塩基分子を表わす)、及び(c)工程(b)で得られた混合物の少なくとも一部を60℃以上に加熱してヒール液を得、工程(b)で得られた混合物の別の一部、又は工程(b)にしたがって別途調製された混合物を用いてフィード液を調製し、そのフィード液をそのヒール液に添加し、添加中に混合物から水を蒸発させ、SiOが6〜30%(重量/重量)の濃度まで濃縮する工程、を含む。工程(c)で製造されたシリカゾルのpHは、典型的には8.5〜11である。
【0022】
有用な針状シリカ粒子は、Nissan Chemical Industries(東京、日本)より商標名SNOWTEX−UPの水性懸濁液として入手できる。この混合物は、20〜21%(重量/重量)の針状シリカ、0.35%(重量/重量)未満のNaO、及び水からなる。粒子は、直径約9〜15ナノメートルであり、40〜300ナノメートルの長さである。懸濁液は、25℃において<100mPasの粘度、約9〜10.5のpH、及び20℃において約1.13の比重を有する。
【0023】
その他の有用な針状シリカ粒子は、Nissan Chemical Industriesより商標名SNOWTEX−PS−S及びSNOWTEX−PS−Mの水性懸濁液として得ることができ、真珠の数珠状の形態を有する。この混合物は、20〜21%(重量/重量)のシリカ、0.2%(重量/重量)未満のNaO、及び水からなる。SNOWTEX−PS−Mの粒子は、直径約18〜25ナノメートルであり、80〜150ナノメートルの長さである。動的光散乱法による粒径は、80〜150である。懸濁液は、25℃において<100mPasの粘度、約9〜10.5のpH、及び20℃において約1.13の比重を有する。SNOWTEX−PS−Sは、粒径10〜15nm、80〜120nmの長さである。
【0024】
低又は非水性シリカゾル(シリカオルガノゾルとも呼ばれる)が使用されてもよく、液相が有機溶媒、又は水溶性有機溶媒であるシリカゾル分散物である。この発明の実施において、シリカゾルは、その液相が対象基材と相溶し、典型的に水性又は水溶性有機溶媒であるように選択される。アンモニウム安定化針状シリカ粒子は、一般に、任意の順序で希釈及び酸性化されてよい。
【0025】
必要に応じて、透過率の値及び/又は防曇特性を低下させない量で、球状シリカ粒子を添加してよい。これら追加のシリカ粒子は、一般に、100ナノメートル以下、好ましくは5〜100ナノメートル、最も好ましくは5〜50ナノメートルの平均一次粒径を有し、最大、針状シリカ粒子と同じ量で用いることができる、即ち、針状粒子と球状粒子との比は≧1:1である。用語「球状」とは、シリカナノ粒子の名目上の形状を指す。
【0026】
幾つかの実施形態では、針状シリカ粒子は、表面改質剤を用いて表面改質されてよい。表面改質シリカ粒子は、粒子の表面に結合した表面基を含む。表面基は、粒子の疎水性又は親水性の性質を改質し、好ましくは親水性である。表面基は、統計的に平均化された無秩序に表面改質された粒子を提供するように選択してよい。幾つかの実施形態では、表面基は、粒子の表面上に単層、好ましくは連続的な単層を形成するのに十分な量で存在する。一般に、利用可能な表面官能基(即ちSi−OH基)の25%未満が、親水性と分散性を維持するために親水性表面改質剤で改質され、かつ親水性表面改質剤で改質される。シリカナノ粒子は、表面改質されないことが好ましいが、それらは、酸又は塩基安定化されてよい。
【0027】
種々の方法が、ナノ粒子の表面を改質するために利用可能であり、それらには、例えば、表面改質剤のナノ粒子への添加(例えば、粉末又はコロイド状分散物の形態)及び表面改質剤をナノ粒子と反応するのを可能にすることが挙げられる。その他の有用な表面改質方法は、例えば、米国特許第2,801,185号(Iler)及び同第4,522,958号(Dasら)に記載されている。
【0028】
表面改質基は表面改質剤から誘導してよい。概略的に、表面改質剤は、式A〜Bにより表すことができ、式中、A基は粒子の表面に結合することができ(即ちSi−OH基)及びB基は系の他の構成成分(例えば、接着剤及び/又は基材)と反応しない相溶化基である。適合化基は、粒子を比較的より極性に、比較的極性を低く又は比較的非極性にするように選択することが可能である。好ましくは、適合化基は、酸基(カルボキシレート、スルホネート及びホスホネート基を含む)等の非塩基性親水性基、アンモニウム基又はポリ(オキシエチレン)基である。表面改質剤の好適な部類としては、例えば、シラン、有機酸、有機塩基及びアルコールが挙げられる。
【0029】
かかる表面改質剤は、針状シリカ粒子に対して0〜10重量%の量で用いられる。表面改質剤を用いて、コーティング組成物に組み込む前にシリカナノ粒子の表面を改質することができるが、直接コーティング組成物に添加してシリカナノ粒子をその場で改質することが有利である場合もある。
【0030】
コーティング組成物は、<5、好ましくは<2.5、最も好ましくは1未満のpKa(HO)を有する酸を含有する。有用な酸としては、有機酸及び無機酸の両方が挙げられ、シュウ酸、クエン酸、安息香酸、酢酸、ベンゼンスルホン酸、HSO、HPO、CFCOH、HCl、HBr、HI、HBrO、HNO、HClO、HSO、CHSOH、CFSOH、CFCOH、及びCHOSOOHを例として挙げることができる。最も好ましい酸としては、HCl、HNO、HSO、及びHPOが挙げられる。幾つかの実施形態では、有機酸と無機酸との混合物を提供することが望ましい。幾つかの実施形態では、≦3.5(好ましくは<2.5、最も好ましくは1未満)のpKaを有する酸と、>0のpKaを有する少量の他の酸とを含む酸の混合物を用いてよい。≧5のpKaを有する弱酸は、透過率、洗浄性、及び/又は耐久性を含んでよい望ましい特性を有する均一なコーティングを提供しないことが見出されている。具体的には、弱酸、又は塩基性コーティング組成物を含むコーティング組成物は、典型的には、ポリマー基材の表面上でビーズ状になる。
【0031】
コーティング組成物は、一般的に、5未満、好ましくは4未満、最も好ましくは3未満のpHをもたらすのに十分な酸を含有する。幾つかの実施形態では、コーティング組成物のpHは、5未満にpHを低下させた後、pH 5〜6に調整し得ることが見出されている。これにより、よりpH感受性の高い基材をコーティングすることが可能になる。
【0032】
テトラエチルオルトシリケート(TEOS)等のテトラアルコキシカップリング剤、及びアルキルポリシリケート(例えばポリ(ジエトキシシロキサン))等のオリゴマー形態等もまた、針状シリカ粒子間の結合を改善するために有用である場合がある。コーティング組成物に含まれるカップリング剤の量は、コーティングの反射防止又は防曇特性が消滅するのを防ぐために、限定されるべきである。カップリング剤の最適量は、実験的に決定され、カップリング剤のアイデンティティ、分子量及び屈折率に依存する。カップリング剤は、存在するとき、典型的には、針状シリカ粒子の0.1〜20重量%、より好ましくは針状シリカ粒子の約1〜15重量%の濃度で組成物に添加される。
【0033】
開示する物品は、針状シリカ粒子粒塊の連続ネットワークを有する基材である。本明細書で使用するとき、「連続」という用語は、ゲル状網状構造が適用される領域に実質的に不連続又はギャップを有することなく基材の表面を被覆することを指す。「ネットワーク」という用語は、共に連結して多孔質三次元網状構造を形成する針状シリカ粒子の粒塊又は集塊を指す。
【0034】
図1は、比較例C5の、塩基性pHにおけるコーティングを示す。コーティングは、不均一であり、個々の粒子は、隣接する粒子との結合又はネックがほとんど存在しないことが明らかである。図2は、実施例14のコーティングされた物品を示す。図から分かるように、個々の針状シリカ粒子は、隣接する針状シリカ粒子と結合しており、コーティングは均一である。
【0035】
「多孔質」という用語は、粒子が連続コーティングを形成するとき、針状シリカ粒子間に空隙が存在することを示す。単層コーティングでは、光学的に透明な基材を通過する空気中の光透過率を最大化し、基材による反射を最小化するために、コーティングの屈折率は、基材の屈折率の平方根にできる限り近いべきであり、コーティングの厚さは、入射光線の光学波長の4分の1(1/4)であるべきである。コーティングの空隙は、屈折率(RI)が空気の屈折率(R=1)から金属酸化物ナノ粒子の屈折率(例えば、シリカの場合RI=1.44)に突然変化した場合、針状シリカ粒子間に多様なサブ波長の隙間をもたらす。多孔率を調整することにより、基材の屈折率の平方根に非常に近い、算出された屈折率を有するコーティング(参照することにより本明細書に組み込まれる米国特許第4,816,333号(Langeら)に見られる)を作製することができる。最適屈折率を有するコーティングを利用することにより、入射光線の光学波長の約4分の1に等しいコーティング厚さで、コーティングされた基材を通過する透過率の割合は最大化され、反射は最小化される。
【0036】
好ましくは、網状構造は、乾燥したとき、約25〜65体積%、より好ましくは約30〜50体積%の多孔性を有する。幾つかの実施形態では、多孔性はより高くてよい。多孔率は、参照することにより本明細書に組み込まれるW.L.Bragg,A.B.Pippard,Acta Crystallographica,volume 6,page 865(1953)等に公開されている手順に従ってコーティングの屈折率から算出することができる。針状シリカ粒子では、この多孔性は、ポリエステル、ポリカーボネート、又はポリ(メチルメタクリレート)基材の屈折率の平方根におおよそ等しい、1.15〜1.40、好ましくは1.20〜1.36の屈折率を有するコーティングを提供する。例えば、1.25〜1.36の屈折率を有する多孔質針状シリカ粒子コーティングは、1000〜2000Åの厚さでポリエチレンテレフタレート基材(RI=1.64)上にコーティングされたとき、高度な反射防止表面を提供することができる。コーティング層の厚さは、反射防止ではなく、不所望の微粒子の除去の清浄容易性等、用途に応じて数マイクロメートル又は数ミルの厚さにまで厚くしてよい。機械的特性は、コーティング厚さが増加したとき改善されると予測することができる。
【0037】
コーティング組成物は、所望により、ポリマー結合剤を含有して、コーティング組成物の基材への引っ掻き耐性及び/又は接着性を改善することができる。有用なポリマー結合剤には、好ましくは、水溶性又は水分散性であり、ポリビニルアルコール、ポリ−N−ビニルピロリドン、ポリビニルアセテート、ポリアクリレート及びメタクリレート、並びにポリウレタン等のエチレン性不飽和モノマー(1つ又は複数);ポリエステル;デンプン、ゼラチン、ゴム、セルロース、デキストラン、タンパク質等の天然ポリマー;並びに任意の上記ポリマーに基づく誘導体(イオン性及び非イオン性)及びコポリマーを含むポリマーが挙げられる。更に、ポリシロキサンを含むアルコキシシラン官能基もまた、有用である場合がある。一般に、結合剤の量は、針状粒子の大部分が、ポリマーマトリクスに埋め込まれているのではなく露出しているような量であるべきである。コーティング組成物は、シリカ粒子の重量に基づいて、最高約50重量%のポリマー結合剤を含有できる。好ましくは、ポリマー結合剤の量は、引っ掻き耐性及びコーティング付着性を改善するために、約0.05〜10重量%の範囲である。不所望の過剰の結合剤は、水中でコーティング物品をすすぐ、又はコーティング物品を水に浸すことにより除去できる。
【0038】
幾つかの実施形態では、本発明の物品は、透明から不透明の、ポリマー、ガラス、セラミック、又は金属の、平坦、曲線状、又は複雑な形状を有し、集塊針状シリカ粒子の連続網状構造がその上に形成されている、本質的にいずれの構成であってよい基材を含む。光透過率を高めるためにコーティングが透明な基材に適用されるとき、コーティングされた物品は、好ましくは、少なくとも400〜700nmに及ぶ波長の範囲にわたって、コーティングされる基材によって、少なくとも2パーセントから最高10パーセントもの垂直入射光線の透過率の合計が平均的に増加する。透過率の増加はまた、スペクトルの紫外線及び/又は近赤外領域の波長でも見られ得る。光透過性平面基材の片面又は両面に塗布される好ましいコーティング組成物は、550nmで測定したとき、基材の透過率を少なくとも5パーセント、好ましくは10パーセント増加させる。
【0039】
本発明のコーティング組成物は、基材に親水性を付与し、これは、組成物でコーティングされる基材に、反射防止に加えて、防曇特性を付与するのに有用である。コーティングは、物品が直接、人間の呼吸に繰り返し曝露された後及び/又は蒸気源の上に物品を保持した後に、十分に透視することができないほど、コーティングされた基材の透明性を著しく低下させるのに十分な密度の凝縮された小さな水滴が生じるのに、コーティングされた基材が抵抗するのであれば、防曇であるとみなされる。コーティング組成物は、コーティングされた基材の透明性が、容易に透視することができないほど著しく低下していなければ、コーティングされた基材に均一の水膜又は少数の大きな水滴が生じても、防曇であるとみなされ得る。多くの場合、基材が蒸気源に曝露された後に、基材の透明性を著しく低下させない水膜が残る。
【0040】
物品が光散乱又はグレアを引き起こす、又は物品の表面上の曇りの形成によりぼんやりとする傾向が低下し得る場合光学的に透明な物品の価値が高まる例は多数存在する。例えば、保護メガネ(ゴーグル、顔面防護器具、ヘルメット等)、眼科用レンズ、建築用ガラス、装飾用ガラスフレーム、自動車の窓、及びフロントガラスは、全て、不快で邪魔なグレアを引き起こす方法で光を散乱させ得る。かかる物品の使用はまた、物品の表面上の水蒸気の曇りの形成によっても有害な影響を受け得る。理想的には、好ましい実施形態では、本発明のコーティングされた物品は、非常に優れた防曇特性を有しながら、別に550nmの光の90パーセント超の透過率を有する。
【0041】
ポリマー基材は、ポリマーシート、フィルム、又は成形材料を含んでよい。幾つかの実施形態では、高い透過率が望ましい場合、基材は透明である。透明という用語は、可視スペクトル(約400〜700nmの波長)において入射光線の少なくとも85%を透過することを意味する。透明な基材は、有色であっても無色であってもよい。
【0042】
他の実施形態では、高い親水性が望ましい場合、基材は最初は疎水性であってよい。組成物は、種々のコーティング方法により広範な基材に適用することができる。本明細書で使用するとき「親水性」は、熱可塑性ポリマー層の表面の特徴、即ち、水溶液により湿潤されることを指すためだけに用いられ、層が水溶液を吸収するかどうかを表さない。したがって、熱可塑性ポリマー層は、層が水溶液に対して非透過性であろうと透過性であろうと親水性であるということができる。水滴又は水溶液が50°未満の静的水接触角を呈する表面を「親水性」であるという。疎水性基材は、50°以上の水接触角を有する。本明細書に記載されるコーティングは、少なくとも10°、好ましくは少なくとも20°、基材の親水性を増加させ得る。
【0043】
本発明のコーティング組成物を塗布し得る基材は、好ましくは可視光に透明又は半透明である。好ましい基材は、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート)、ポリカーボネート、アリルジグリコールカーボネート、ポリアクリレート、例えばポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ホモエポキシポリマー、ポリジアミンとのエポキシ付加ポリマー、ポリジチオール、ポリエチレンコポリマー、フッ素化表面、セルロースエステル、例えばアセテート及びブチラート、ガラス、セラミック、有機及び無機複合材料等から作製され、ブレンド及び積層体を含む。
【0044】
典型的には、基材は、フィルム、シート、パネル又は窓ガラス材料の形態であり、眼科用レンズ、建築用ガラス、装飾用ガラスフレーム、自動車の窓、及びフロントガラス、並びに手術用マスク及び顔面防護器具等の保護メガネ等の物品の一部であってよい。所望により、コーティングは、物品の一部のみを覆うことができ、例えば、顔面防護器具の目に直接隣接する部分のみをコーティングし得る。基材は、平面、曲線又は成形され得る。コーティングされる物品は、吹き込み成形、流し込み成形、引抜き成形、又は射出成形により、また光重合、圧縮成形又は反応性射出成形により製造することができる。
【0045】
本発明の反射防止、防曇組成物でコーティングされる使い捨て手術用顔面マスク及び顔面防護器具等の物品は、好ましくは、防曇特性を低下させ得る環境曝露及び混入を減少さえる単回使用パッケージ中で保存される。再利用可能な物品は、好ましくは、使用されないとき環境曝露から製品を保護する又は完全に封止するパッケージと併用される。パッケージを形成するために用いられる材料は、非汚染性材料から構成されるべきである。特定の隣接する材料は、防曇特性を部分的に又は全て消失させ得ることが見出されている。理論に縛られるものではないが、可塑剤、触媒、及び他の老化時に揮発し得る低分子量物質を含有する材料は、コーティングに吸収され、防曇特性を低下させると現在考えられている。したがって、本発明は、反射防止及び防曇特性を有する、手術用マスク及び顔面防護器具等の保護メガネ、並びに眼科用レンズ、窓及びフロントガラスを提供する。
【0046】
他の実施形態では、基材は透明である必要はない。組成物は、グラフィックス及び標識で用いられる可撓性フィルム等の容易に洗浄可能な表面を提供する。可撓性フィルムは、PET等のポリエステルから作製されてよく、又はPP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)及びPVC(ポリ塩化ビニル)等のポリオレフィンが特に好ましい。基材は、基材樹脂を押し出してフィルムを製造する、所望により押し出されたフィルムを一軸又は二軸配向すること等の従来のフィルム作製技術を用いてフィルムに形成され得る。基材とコーティングとの間の接着を改善するために、例えば、化学処理、機械的粗化、空気又は窒素コロナなどのコロナ処理、プラズマ、火炎又は化学放射線などによって基材を処理することができる。必要に応じて、任意の結合層を基材とコーティングとの間に適用して、層間接着を高めることもできる。基材の他の側も上記処理を用いて処理して、基材と接着剤との間の接着を高めることもできる。基材は、当該技術分野で既知であるような言葉又は記号等のグラフィックスと共に提供されてよい。
【0047】
幾つかの実施形態では、コーティング組成物は、洗浄可能性を向上させ、基材及び下層のグラフィック表示を引っ掻き、摩耗、及び溶媒等から引き起こされる損傷から保護する丈夫な摩耗耐性層を提供する。「清浄可能」とは、コーティン組成物が、硬化したとき、油及び汚れ耐性を提供して、油又は偶発的なほこり等の汚染物質への曝露による汚れからコーティングされた物品を保護するのを補助することを意味する。コーティング組成物はまた、汚れた場合のコーティングの清浄化を容易にすることができ、よって汚染物質の除去に必要なのは単なる水によるすすぎのみである。
【0048】
水性系から疎水性基材上に組成物を均一にコーティングするために、又は界面接着を強化するために、基材の表面エネルギーを増加させる及び/又はコーティング組成物の表面張力を低下させることが望ましい場合がある。表面エネルギーは、コロナ放電又は火炎処理法を用いてコーティングする前に基材表面を酸化させることにより増加させることができる。これらの方法はまた、コーティングの基材への接着を高めることもできる。物品の表面エネルギーを増加させることができる他の方法としては、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)の薄いコーティング等の下塗剤の使用が挙げられる。あるいは、コーティン組成物の表面張力は、低級アルコール(C〜C)の添加により低下させることができる。しかし、幾つかの実施形態では、所望の防曇特性のためにコーティングの親水性を高めるために、かつ確実に水性又はヒドロアルコール性溶液で物品を均一にコーティングするために、典型的には界面活性剤である湿潤剤を添加することが有益である場合もある。
【0049】
本明細書で使用するとき「界面活性剤」という用語は、コーティング溶液の表面張力を低下させることができる、同分子に親水性(極性)及び疎水性(非極性)領域を含む分子を分子を表す。有用な界面活性剤は、参照することに本明細書に組み込まれる米国特許第6,040,053号(Scholzら)に記載されているものを挙げることができる。
【0050】
針状シリカ粒子の典型的な濃度では(例えば、総コーティング組成物に対して約0.2〜15重量%)、コーティングの反射防止特性を保つために、大部分の界面活性剤はコーティング組成物の約0.1重量%未満、好ましくは約0.003〜0.05重量%含まれる。幾つかの界面活性剤では、防曇特性を得るのに必要な濃度を超える濃度で、むらのあるコーティングが生じることに留意すべきである。
【0051】
コーティング組成物中のアニオン性界面活性剤は、添加されるとき、得られるコーティングの均一性を高めることが好ましい。有用なアニオン性界面活性剤としては、その分子構造が、(1)約C−約C20−アルキル、アルキルアリール、アルキルアリール、及び/又はアルケニル基等の少なくとも1つの疎水部分、(2)サルフェート、スルホネート、ホスフェート、ポリオキシエチレンサルフェート、ポリオキシエチレンスルホネート、ポリオキシエチレンホスフェート等の少なくとも1つのアニオン性基、及び/又はかかるアニオン基の塩であって、アルカリ金属塩、アンモニウム塩、第三アミノ塩等を含む塩を含むものが挙げられるが、これらに限定されない。有用なアニオン性界面活性剤の代表的な例としては、Henkel Inc.,Wilmington,Del.から商品名TEXAPON L−100として、又はStepan Chemical Co,Northfield,Ill.から商品名POLYSTEP B−3として入手可能なラウリル硫酸ナトリウム;Stepan Chemical Co.,Northfield,Ill.から商品名POLYSTEP B−12として入手可能なラウリルエーテル硫酸ナトリウム;Henkel Inc.,Wilmington,Del.から商品名STANDAPOL Aとして入手可能なラウリル硫酸アンモニウム;及びRhone−Poulenc、Inc.,Cranberry,N.J.から商品名SIPONATE DS−10として入手可能なドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムが挙げられる。
【0052】
有用な非イオン性界面活性剤の例としては、ポリエトキシレート化アルキルアルコール(例えば「Brij(商標)30」及び「Brij(商標)35」、ICI Americas,Inc.から市販、並びに「Tergitol(商標)TMN−6(商標)Specialty Surfactant」、Union Carbide Chemical and Plastics Co.から市販、ポリエトキシレート化アルキルフェノール(例えば、「Triton(商標)X−100」Union Carbide Chemical and Plastics Co.製、「Iconol(商標)NP−70」BASF Corp.製)及びポリエチレングリコール/ポリプロピレングリコールブロックコポリマー(「Tetronic(商標)1502ブロックコポリマー界面活性剤」「Tetronic(商標)908ブロックコポリマー界面活性剤」及び「Pluronic(商標)F38ブロックコポリマー界面活性剤」として全てBASF,Corp.から市販)が挙げられる。
【0053】
特定の界面活性剤がコーティング組成物において有用である場合がある。コーティング組成物が界面活性剤を含まない場合、又はコーティングの均一性が向上することが望ましい場合、確実に水性又は水性アルコール性溶液で物品を均一にコーティングするために、例えばアセチレン性ジオール等の耐久性防曇特性を付与しないものを含む湿潤剤を添加することが望ましい場合がある。
【0054】
いずれの添加される湿潤剤も、コーティングの反射防止及び防曇特性を壊さない濃度で含まれるべきである。一般的に湿潤剤は、針状シリカ粒子の量によってコーティング組成物の約0.1重量%未満、好ましくは約0.003〜0.05重量%の量で用いられる。コーティングされた物品を水ですすぐ又は水中に浸漬することが、過剰な界面活性剤又は湿潤剤を除去するために望ましい場合がある。
【0055】
組成物は、バー、ロール、カーテン、輪転グラビア、スプレー、又はディップコーティング技術等の従来の技術を用いて物品上にコーティングされることが好ましい。好ましい方法としては、バー及びロールコーティング、又は厚さを調整するためにエアナイフコーティングが挙げられる。確実にコーティングを均一にし、フィルムを湿潤させるために、コロナ放電又は火炎処理方法前に基材表面を酸化させることが望ましい場合がある。物品の表面エネルギーを増加させることができる他の方法としては、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)の等の下塗剤の使用が挙げられる。
【0056】
本発明のコーティングは、コーティングにおける可視干渉色の変化を避けるために、約200Å未満、より好ましくは100Å未満で変動する均一な平均厚さで適用されることが好ましい。最適な平均乾燥コーティング厚さは、具体的なコーティング組成物に依存するが、一般的にコーティングの平均厚さは、Gaertner Scientific Corpの型番L115C等の楕円偏光計を用いて測定したとき500〜2500Å、好ましくは750〜2000Å、より好ましくは1000〜1500Åである。この範囲を上回る及び下回る場合、コーティングの反射防止特性が著しく低下する場合がある。しかし、平均コーティング厚さは均一であることが好ましいが、実際のコーティング厚さはコーティング上のある特定の点から別の点までで大幅に変動し得ることに留意すべきである。かかる厚さの変動は、視覚的に区別できる領域に限定したとき、コーティングの広帯域の反射防止特性をもたらすことにより実際は有益である場合もある。
【0057】
本発明のコーティングは、平面基材の両面にコーティングすることができる。別の方法としては、本発明のコーティングは、基材の片側にコーティングされ得る。基材の反対側はコーティングされていなくてよく、米国特許第2,803,552号、同第3,075,228号、同第3,819,522号、同第4,467,073号、又は同第4,944,294号(全て参照することにより本明細書に組み込まれる)に開示されているような従来の界面活性剤若しくはポリマー防曇組成物でコーティングされてよく、又は米国特許第4,816,333号に開示されているような反射防止組成物、若しくは「Evaluation of Scratch Resistant and Anti−reflective Coatings for Plastic Lenses」(supra)、J.D.Massoにより記載されている多層コーティング(いずれも参照することにより本明細書に組み込まれる)でコーティングされてよい。好ましくは、コーティング面は、より湿度が高い方向を向くべきであり、例えば、フェイスシールドでは、防曇コーティングを有する側が着用者に向くべきである。反対側は、粒子による研磨、及び/又は吹き込みによる破壊に対して耐性である透明な弾力性及び/又は頑丈なコーティングを有してよい。
【0058】
一旦コーティングされると、物品は典型的には再循環オーブン内にて20〜150℃の温度で乾燥される。不活性ガスを循環させてよい。乾燥プロセスを加速させるために更に温度を上げてよいが、基材への損傷を避けるために注意を払わなければならない。コーティング組成物を基材に適用し乾燥させた後、コーティング組成物は、好ましくは約80〜99.9重量%(より好ましくは約85〜95重量%)の針状シリカ粒子(典型的には集塊している)、約0.1〜20重量%(より好ましくは約5〜15重量%)の加水分解されたテトラアルコキシシラン及び所望により約0〜5重量%(より好ましくは約0.5〜2重量%)の界面活性剤、並びに最高約5重量%(好ましくは0.1〜2重量%)の湿潤剤を含む。
【0059】
本発明のコーティング組成物が基材に適用され反射防止特性をもたらすとき、コーティングされた基材の光透過率を増加させることによりグレアは減少する。好ましくは、コーティングされた基材は、550nm(例えば、人間の眼がピーク光学反応を示す波長)において、コーティングされていない基材と比べたとき、少なくとも3パーセント、最高10パーセントの垂直入射光線の透過率の増加を示す。透過率パーセントは、入射角及び光の波長に依存し、参照することにより本明細書に組み込まれるASTM試験法D1003−92、表題「Haze and Luminous Transmittance of Transparent Plastics」を用いて測定される。好ましくは、コーティングされた基材は、550nmの光を用いて、コーティングされていない基材と比較したとき、3%超、より好ましくは5%超、最も好ましくは8%超の透過率パーセントの増加を示す。所望の用途が著しく「軸外」(即ち非垂直)視野又は不所望の反射に関与するとき、視感度の増加は、特に反射が視野内の物体の輝度に近づく又は超える場合更に大きくなる場合がある。
【0060】
本発明のコーティング組成物は、上に論じたように、本組成物でコーティングされた表面に防曇及び反射防止特性を付与する。防曇特性は、コーティングされた基材の透明性を著しく低下させる傾向がある水滴の形成に耐性を有するコーティングの傾向により示される。例えば、人間の呼吸から生じる水蒸気は、水滴としてではなく、薄い均一な水フィルムの形態でコーティングされた基材上で凝結する傾向がある。かかる均一なフィルムは、基材の清澄性又は透明性をそれほど低下させない。
【0061】
多くの実施形態では、本発明のコーティング組成物は、保存安定性である、例えば、ゲルを形成せず、不透明にならず、又は著しく劣化しない。更に、多くの実施形態では、コーティングされた物品は、本明細書に記載の試験方法を用いて、耐久性及び摩耗耐性である。
【実施例】
【0062】
材料
Nissan Chemical Industries(東京、日本)からのSnowtex(商標)UPは、10〜21重量%の針状シリカ、0.35重量%未満のNaO、及び水である。粒子は、直径約9〜15ナノメートルであり、40〜100ナノメートルmの長さである。懸濁液は、25℃において<100mPasの粘度、約9〜10.5のpH、及び20℃において約1.13の比重を有する。
【0063】
Nissan Chemical Industries(東京、日本)からのSnowtex(商標)OUPは、15〜16重量%の針状シリカ、0.03重量%未満のNaO、及び水である。粒子は、直径約9〜15ナノメートルであり、40〜100ナノメートルの長さである。懸濁液は、25℃において<20mPasの粘度、約2〜4のpH、及び20℃において約1.08〜1.11の比重を有する。
【0064】
球状シリカナノ粒子分散物は、Nalco Company,Naperville,ILから、Nalco 1115(商標)(4nm)、2326(商標)(5nm)、1030(商標)(13nm)、及び1050(商標)として入手可能である。テトラエトキシシラン(TEOS、99.9%)は、Alfa Aesar,Ward Hill,MAから入手した。ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムは、商品名「Melinex 618」として、E.I.DuPont de Nemours,Wilmington,DEから入手し、5.0ミルの厚さと下塗りされた表面とを有した。
【0065】
ポリカーボネート(PC)フィルムは、商品名LEXAN 8010(0.381mm)、8010SHC(1.0−mm)及びOQ92として、GE Advanced Materials Specialty Film and Sheet,Pittsfield,MA)から入手した。
【0066】
Bynel−3101(商標)は、E.I.DuPont de Nemours & Co.,Wilmington,Delから市販されているポリエチレンコポリマーである。
【0067】
Pellathene 2363(商標)は、Dow Chemical,Midland MIから入手可能なポリエーテル系ポリウレタンである。
【0068】
ポリ塩化ビニル(PVC)フィルムは、3M Company,St.Paul,MN.から入手可能な3M(商標)Scotchcal(商標)Luster Overlaminate 8519、0.03mm(1.25ミル)であった。
【0069】
PC上のPFPE(実施例44)は、0.5重量%の調製品2を含有するSHC−1200の溶液をトップコーティングとして用いて、11/828566(Klunら、参照することにより本明細書に組み込まれる)の実施例1に従って調製した、その上にペルフルオロポリエーテルコーティングを有するポリカーボネート基材を指す。
【0070】
DS−10 Aldrich Chemical;Milwaukee,Wisから入手可能なドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム。
【0071】
3M 906(商標)Hardcoatは、IPA中に32重量%の20nm SiO粒子、8重量%のN,N−ジメチルアクリルアミド、8重量%のメタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、及び52重量%のペンタエリスリトールトリ/テトラアクリレート(PETA)を含有する33重量%固形分のセラマーハードコート分散物であり、3M Companyから入手可能である。米国特許第5,677,050号(Bilkadiら)の10段25〜39行目、及び実施例1を参照してよい。
【0072】
透過率
透過率及び反射率の測定は、相対湿度20%で、Varian Cary 5E分光光度計を用いて実施した。原子間力顕微鏡(AFM)の高さ及び相画像を、500nm〜5μmの範囲のNanoscope IIIa,Dimension 5000 AFM microscope(Digital Instruments,Santa Barbara)を用いて収集した。多角分光偏光解析法(M2000)測定は、PET又はガラスのいずれか上のコーティングに対して行った。70°の入射角で300〜900nmにて測定を実施した。フィルム厚さをこの範囲にわたって決定し、屈折率の値は555nmで決定した。
【0073】
接触角測定
Millipore Corporation(Billerica,MA)から入手した濾過システムを通して濾過した、購入したままの脱イオン水を用い、AST Products(Billerica,MA)製商品番号VCA−2500XEとして入手可能なビデオ接触角分析計により、乾燥コーティングされた試料上で前進、後退及び静的水接触角の測定を行った。報告する値は、液滴の右側及び左側で測定された少なくとも3滴の測定値の平均であり、これらを表に示す。滴の量は、静的測定において1μLであった。
【0074】
防曇性試験
防曇特性は、アルコールを含まない評価者の息により吹き付けられる空気に面するコーティングの側の即時外観変化により評価した。防曇性能を以下のようにランク付けした。
【0075】
5=非常に良好
4=良好
3=不良
耐久性試験
機械的耐久性は、実施例に規定するように乾いた及び湿ったKimwipe(商標)ティッシュでコーティングされた表面を強く拭き取ることにより評価した。表中に報告された数字は、光透過率により判定したとき、コーティングを視覚的に除去するのに必要な拭き取り回数を指す、即ち乾いたKimwipeで「x」回こすり、濡れたKimwipeで「y」回こすった後に引っ掻かれたコーティングを、表中では「x/y」と報告する。
【0076】
洗浄容易性試験
汚れたディーゼル油、又は植物油を、ある期間(2分間〜一晩)コーティング表面上に適用した。その後、汚染された領域を、汚れた油又は植物油が視覚的に完全に除去されるまで水ですすいだ。適用する流速を750mL/分に設定したときのかかった時間を記録した。水のすすぎ時間を記録する。次いで4〜5回洗浄サイクルを繰り返した。清浄性を、清浄化速度(時間)及び表面上に油が残っているかどうかにより評価した。容易に洗浄するための機械的耐久性は、コーティング表面を濡れた及び/又は乾いたKimwipe(商標)ティッシュをこすることにより評価した。
【0077】
被覆性
視覚的に均一なコーティングをもたらした分散物を、「コーティング可」と表記する。ビーズ状になった及び/又は視覚的に不均一なコーティングをもたらしたコーティングを「ビーズ状」と表記した。
【0078】
試料調製−一般的:
針状シリカ粒子分散物を、脱イオン水で5重量%(特に明記しない限り)に希釈し、濃HCl水溶液で、指示されるpH(一般に2〜3)に酸性化した。幾つかの例では、酸性化針状シリカ粒子分散物(5重量%)を更に、表に記載された比でTEOS、球状シリカナノ粒子又は有機溶媒と組み合わせた。
【0079】
指示された基材を、0.025mm(1ミル)のギャップを有する閉鎖塗布器又はマイヤー棒及び5重量%のシリカ分散物(総シリカ重量)を用いてコーティングした。コーティングされた試料を80〜100℃に5分間加熱して、乾燥させ、100〜200nmの範囲の厚さの乾燥コーティング厚を提供した。
【0080】
実施例1〜13及び比較例1
以下の比較例及び実施例1〜13では、未処理ポリエチレンテレフタレート(PET)基材を、pH 2〜3で規定の1重量%の針状シリカ粒子組成物により約25マイクロメートル(1ミル)のコーティング厚さにコーティングし、80〜100℃で5〜10分間乾燥させた。針状及び球状シリカ粒子の両方を有する実施例では、コーティング組成物は、1重量%の組み合わせられた粒子であった。コーティングされた試料を、上述した試験方法を用いて、透過率、防曇性及び接触角について試験した。防曇性能は、周囲条件に1週間曝露した後、測定した。結果を表1に示す。比較の目的で、コーティングされていないPET試料も試験した。
【0081】
【表1】

【0082】
表1の結果は、針状シリカ粒子コーティングにより得られたコーティングが、一般に、球状ナノ粒子から得られたコーティングよりも優れた透過率、防曇性及び接触角を有することを示す。
【0083】
実施例14〜17及び比較例C5〜C7
以下の実施例及び比較例では、未処理ポリエチレンテレフタレート(PET)基材を、規定のpH値で規定の5重量%の針状シリカ粒子組成物により約25マイクロメートル(1ミル)のコーティング厚さにコーティングし、80〜120℃で5〜10分間乾燥させた。コーティングされた試料を、上述した試験方法を用いて耐久性(水研ぎ及び空研ぎ)、被覆性及び接触角について試験した。結果を表2に示す。比較例C5及び実施例14の100,000倍のデジタル顕微鏡写真(TEM)を、それぞれ図1及び図2に示す。図から分かるように、図1は、シリカ粒子の粒塊を示すが、一方、図2は、粒子間の接着の程度が高いより均一なコーティングを示す。
【0084】
【表2】

【0085】
表2の結果は、5未満のpHを有する分散物が、より均一なコーティングを提供するが、それよりも高いpHの分散物は、ビーズ状になった又はコーティングできなかったことを示す。
【0086】
以下の比較例及び実施例18〜33では、未処理ポリエチレンテレフタレート(PET)基材を、pH 2〜3で規定の5重量%の針状シリカ粒子組成物により約25マイクロメートル(1ミル)のコーティング厚さにコーティングし(片面)、80〜100℃で5〜10分間乾燥させた。一部の実施例はまた、指定の比率でTEOS及び/又は球状シリカナノ粒子も含有していた。コーティングされた試料を、上述した試験方法を用いて、透過率(未処理PET基材に比べて)、コーティングの質、防曇性能及び接触角の増加について試験した。結果を表3に示す。比較例1、並びに実施例18、及び20〜22の透過率データを図3に示す。比較例1、並びに実施例18、26、及び27の透過率データを図4に示す。比較例1、並びに実施例18、及び28〜33の透過率データを図5に示す。
【0087】
【表3】

【0088】
表3の結果は、シロキサンオリゴマー及び/又は球状シリカナノ粒子と組み合わせられた針状シリカ粒子から得られたコーティングが、親水性、反射防止及び防曇特性を有することを示す。
【0089】
以下の実施例34〜35及び比較例C8では、未処理ポリエチレンテレフタレート(PET)基材を、規定のpHで規定の5重量%の針状シリカ粒子組成物により約25マイクロメートル(1ミル)のコーティング厚さにコーティングし(片面)、80〜120℃で5〜10分間乾燥させた。コーティング組成物は、イソプロパノール/水の重量比が79:21であった。コーティングされた試料を、上述した試験方法を用いて、透過率(未処理PET基材に比べて)、分散安定性、防曇性能及び接触角の増加について試験した。結果を表4に示す。
【0090】
【表4】

【0091】
表4の結果は、IPA等のアルコールを溶媒として用いるときSnowtex−UPは安定ではないが、有機酸又は無機酸のいずれかで溶液のpHを調整したとき安定になることを示す。
【0092】
以下の実施例36〜39及び比較例C9〜C11では、未処理ポリエチレンテレフタレート(PET)基材を、規定のpHで規定の5重量%の針状シリカ粒子組成物により約25マイクロメートル(1ミル)のコーティング厚さにコーティングし(片面)、80〜120℃で5〜10分間乾燥させた。コーティングされていないPET基材を対照として試験した。一部のコーティング組成物は、界面活性剤DS−10を更に含有していた。コーティングされた試料を、上述した試験方法を用いて植物油及び汚れたディーゼル油に対する清浄性について試験した。結果を表5に示す。
【0093】
【表5】

【0094】
表5の結果は、針状シリカ粒子から得られた親水性の高い表面がすすぎ落とし清浄性を有することを示す。実施例C10及びC11は、非酸性化粒子は界面活性剤の補助によりコーティング可能であったが、コーティングは、酸処理をしたものと同程度の耐久性を有さないことを示した。
【0095】
以下の実施例40〜44及び比較例C12では、種々の基材を、規定のpHで規定の5重量%の針状シリカ粒子組成物により約25マイクロメートル(1ミル)のコーティング厚さにコーティングし(片面)、80〜100℃で5〜10分間乾燥させた。pH10のコーティング溶液でコーティングされた未処理PET基材を対照として試験した。コーティングされた試料は、上述した試験方法を用いて、前進及び後退接触角、貯蔵寿命及び被覆性について試験した。安定性は、1ヶ月間分散物を静置させることにより決定した。1ヶ月後も視覚的に分離が見られないものは、安定であるとみなした。結果を表6に示す。図から分かるように、図1は、シリカ粒子の粒塊を示すが、一方、図2は、より均一なコーティングを示す。
【0096】
【表6】

【0097】
表6の結果は、酸性化針状シリカ粒子分散物が、種々の疎水性基材に対して低い後退角を示し、これらの基材にコーティング可能であったことを示す。
【0098】
実施例45〜53
実施例45〜53では、Snowtex−OUP(直径約15nm、長さ約40nm)、NALCO 1115(4nmの球状シリカナノ粒子)、NALCO 2326(5nmの球状シリカナノ粒子)、及びNALCO 1050(20nmの球状シリカナノ粒子)をDI水を用いて1.0重量%に希釈した。懸濁液のpH値を濃HClを用いて2.0に調整した。球状ナノ粒子懸濁液1115、2326又は1050を、指定の比率でSnowtex−OUPと混合した。次いで、混合した懸濁液を、0.025mm(1ミル)のギャップで、未処理PET基材上にバーコーティングした。試料を110℃で5分間乾燥させた。そのコーティングの静的、前進、及び後退接触角を測定した。3つの点の平均接触角を表1に示した。透過率スペクトルを図6に示す。
【0099】
実施例54及び比較実施例C13〜C16
以下の実施例及び比較例では、Snowtex−OUP(アスペクト比の高いシリカナノ粒子;NALCO 2326(30重量%、直径5nm);NALCO 1034A(34%、直径20nm)、及びNALCO 2329(40.%、75nm)を、IPA及び希HCl(pH:2.5)の混合溶媒(重量比1:1)で1.0重量%に希釈した。ポリ(ビニルアルコール)(Mw:78k、98モル%加水分解)を80℃のDI水に溶解させて、1.0重量%の原液を作製した。TEOSをIPAで1.0重量%に希釈した。1.0重量%Snowtex−OUP、NALCO 2326(1.0重量%)及びNALCO 1034A(1.0重量%)の溶液に、それぞれ1.0重量%TEOS及び1.0重量%PVA原液を添加したところ、SiO2/PVA/TEOSの組成は重量比で90:5:5になった。
【0100】
次いで、メイヤーロッド#3を用いてPET基材(IPAで前洗浄されている)上に溶液をコーティングした。フィルムを120℃の空気オーブン内で5分間加熱した。次いで1片の黒色テープ(Yamato Co.Japan)を試料の裏側に積層して、裏側からの反射を除いた。4つの試料の前側からの反射スペクトルを、400〜700nmの波長で測定し、Perkin Elmer Lambda 950分光計で回収した。このようにして得られた特定の波長における最低反射率を表7に示した。試験した全ての波長における全ての反射率を足し、次いでデータ点の数で割ることにより、400〜700nmの平均反射率を算出した。ブランクPET(C16)の反射率も、同じ方法を用いて測定した。それは、5.31%の平均反射率を有する。Snowtex−OUPは、1.28%の平均反射率を示す。ブランクPETと比べると、反射率の低下は約76%[(5.3−1.28)/5.3]であると算出されたが、一方、NALCO 2326、NALCO 1034A、及びNALCO 2329は、それぞれ2.61%、2.31%、及び1.94%の平均反射率を示す。ブランクPETと比べると、約50〜60%の低い反射率低下を示す。
【0101】
【表7】

【0102】
表7の結果は、最低が所望の550nmであるとき、本コーティング組成物は、約76%の最大反射率低下を示すが、一方、NALCO 2326、NALCO 1034A、及びNALCO 2329は50〜60%と低い反射率低下を示す。C16は、5.31%の平均反射率を有する。Snowtex−OUPは、1.28%の平均反射率を示す。ブランクPETと比べると、反射率の低下は約76%[(5.3−1.28)/5.3]であると算出されたが、一方、NALCO 2326、NALCO 1034A、及びNALCO 2329は、それぞれ2.61%、2.31%、及び1.94%の平均反射率を示す。
【0103】
実施例56〜57及び比較実施例C17
以下の実施例及び比較例では、コーティングの透過率を評価した。Snowtex OUP、ポリ(ビニルアルコール)及びTEOS(SiO2/PVA/TEOS 90/5/5又はSnowtex OUP、ポリ(ビニルアルコール)、及び3−グリシドオキシプロピルトリメトキシシラン(SiO/PVA/エポキシシラン85/10/5(重量比)固形含量1.0重量%)を含む針状シリカ粒子分散物を、HCI溶液でpH=2に酸性化し、次いで1片の0.05mm(2ミル)PET基材を、片面及び両面、メイヤーロッド#4を用いて3M 906(商標)ハードコートでコーティングした。基材及び試料について透過率スペクトルを回収した。比較の目的で、3M 906ハードコートでコーティングしただけのPET基材も試験した。
【0104】
図7のデータは、コーティング(SiO/PVA/TEOS)が、ハードコートPET基材の対照試料と比べて、400〜700nmの透過率を改善したことを示す。図から分かるように、平均透過率(400〜700nm)は、基材の88.2%から、片面コーティングで93.7%、両面コーティングで97.5%まで増加する。更に、PVA結合剤及び架橋剤TEOSと組み合わせられたSnowtex−OUPから得られたコーティングは、広い波長範囲で透過率が改善した。
【0105】
実施例58〜59及び比較例C18
Snowtex−OUP(実施例58)及びSnowtex−UP(実施例59)の反射防止(AR)特性もまた、比較した。これら2つの懸濁液を、DI水で1.0%に希釈し、次いでHCl溶液を用いてpH=2.0に調整し、次いで未処理PET基材の両面にコーティングした。透過率スペクトルを図8に示す。
【0106】
図8の結果は、基材の両面をコーティングすると透過率が向上することを示す。PET基材の透過率は、86.8%である。それは、OUP両面コーティングで96.1%、UP両面コーティングで94.1%に増加する。
【0107】
以下の実施例60〜63では、コロナ処理したポリエチレンテレフタレート(PET)基材を、シリカ:表面改質剤の比が9:1である指定の表面改質剤1〜3を含む、pH=2の5重量%の針状シリカ粒子組成物を含有しているコーティング組成物でコーティングした(片面)。表面改質剤は、
1:N−トリメトキシシリルプロピル−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロリド
2:カルボキシエチルシラントリオールナトリウム塩
3:(HO)Si(CHOCHCH(OH)CHSOH(米国特許第4,338,377号及び同第4,152,165号に記載の合成手順に従って調製)
PET基材を、約25マイクロメートル(1ミル)のコーティング厚さでコーティングし、100〜120℃で5〜10分間乾燥させた。コーティングされた試料を、上述した試験方法を用いて、防曇性及び水接触角について試験した。結果が表8に示される。
【0108】
【表8】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材に対するコーティングを提供するする方法であって、
a)5未満のpHを有する針状シリカ粒子の水性分散物、及び
b)<5のpKaを有する酸、を含むコーティング組成物で基材をコーティングする工程と、
乾燥させて、シリカ粒子コーティングを提供する工程と、を含む方法。
【請求項2】
前記シリカ粒子の平均粒径が、9〜25nmであり、平均粒子長が、40〜500nmである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記コーティング組成物が、針状シリカ粒子と球状シリカナノ粒子との混合物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記球状ナノ粒子の平均粒径が、100ナノメートル以下である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記針状シリカ粒子の濃度が、前記コーティング組成物の0.1〜20重量%である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記酸が、シュウ酸、クエン酸、安息香酸、酢酸、ベンゼンスルホン酸、HSO、HPO、CFCOH、HCl、HBr、HI、HBrO、HNO、HclO、HSO、CHSOH、CFSOH、CFCOH、及びCHOSOOHから選択され、最も好ましい酸としては、HCl、HNO、HSO、及びHPOが挙げられる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法から調製される親水性物品。
【請求項8】
前記コーティング組成物が、テトラアルコキシシランを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記コーティング組成物が、針状シリカ粒子の量に対して、最高50重量%のポリマー結合剤を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記コーティング組成物が、
a)0.5〜99重量%の水と、
b)0.1〜20重量%の針状シリカ粒子と、
c)pHを5未満に低下させるのに十分な量の<5のpKaを有する酸と、
d)シリカナノ粒子の量に対して、0〜20重量%のテトラアルコキシシランと、
e)0〜50重量%のポリマー結合剤とを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記基材が、コーティング後50°未満の静的水接触角を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記コーティング組成物のpHが、3未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
コーティング組成物のpHを5未満に調整するのに十分な酸を添加する工程と、次いでpHを5〜6の範囲に調整するのに十分な塩基を添加する工程と、を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
基材と、前記基材上の針状シリカ粒子の粒塊のコーティングとを含むコーティングされた物品であって、前記粒塊が、針状シリカ粒子の三次元多孔質網状構造を含み、前記針状シリカ粒子が、隣接する針状シリカ粒子に接着している、物品。
【請求項15】
50°未満の水接触角を有する、請求項14に記載のコーティングされた物品。
【請求項16】
前記コーティングが、約500及び2500Åの厚さである、請求項14に記載のコーティングされた物品。
【請求項17】
前記基材が、透明である、請求項14に記載のコーティングされた物品。
【請求項18】
前記平均透過率が、コーティングされていない基材に比べて少なくとも2パーセント増加する、請求項17に記載のコーティングされた物品。
【請求項19】
前記コーティングが、約1.15〜1.40の屈折率を有する、請求項14に記載のコーティングされた物品。
【請求項20】
前記乾燥したコーティングが、
a)80〜99.9重量%の粒塊針状シリカ粒子と、
b)0.1〜20重量%のテトラアルコキシシランと、
c)0〜5重量%の界面活性剤と、
d)0〜約2重量%の湿潤剤と、を含む、請求項14に記載のコーティングされた物品。
【請求項21】
a)0.5〜99重量%の水と、
b)0.1〜20重量%の針状シリカ粒子と、
c)0〜20重量%の、100nm以下の平均粒径を有する球状シリカナノ粒子であって、b)及びc)の合計が0.1〜20重量%である球状シリカナノ粒子と、
d)pHを5未満に低下させるのに十分な量の<5のpKaを有する酸と、
e)針状シリカ粒子の量に対して、0〜20重量%のテトラアルコキシシランと、
f)針状シリカ粒子の量に対して、0〜50重量%のポリマー結合剤と、を含むコーティング組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2011−530401(P2011−530401A)
【公表日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−522118(P2011−522118)
【出願日】平成21年7月29日(2009.7.29)
【国際出願番号】PCT/US2009/052043
【国際公開番号】WO2010/017069
【国際公開日】平成22年2月11日(2010.2.11)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】