観察装置及び培養観察装置
【課題】本発明は、無色の液滴をも検出することの可能な液滴の観察装置、及びそれを備えた培養観察装置を提供する。
【解決手段】本発明の観察装置は、透明な液滴(30a)の形成された透明な部材(30)を、その液滴より微細な明暗パターンを有した面光源(52)で照明する照明手段と、前記面光源で照明された前記部材の透過像を撮像する撮像手段(54)と、前記撮像手段が前記撮像で取得した明暗画像のパターンに基づき、その明暗画像における前記液滴の像の形成領域を検出する演算手段とを備える。
【解決手段】本発明の観察装置は、透明な液滴(30a)の形成された透明な部材(30)を、その液滴より微細な明暗パターンを有した面光源(52)で照明する照明手段と、前記面光源で照明された前記部材の透過像を撮像する撮像手段(54)と、前記撮像手段が前記撮像で取得した明暗画像のパターンに基づき、その明暗画像における前記液滴の像の形成領域を検出する演算手段とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明な培養容器や透明な基板に形成された透明な液滴を観察する観察装置、及びそれを備えた培養観察装置に関する。
【背景技術】
【0002】
細胞培養や化学反応計測の分野では、数μl〜数十μlの液滴中の実験(微量反応系の実験)が要求されることがある。生殖補助医療技術(ART)の分野では、ディッシュと呼ばれる培養容器の底面上に形成された液滴中で卵細胞や精子細胞を操作したり、受精卵を培養したりすることが一般的である。
【0003】
通常、実験用の液滴はフェノールレッド等のpH指示薬で色づけされているので、透明な培養容器中の透明な液滴の存在位置を見出すことは容易である。なお、特許文献1には液滴のサイズを自動検出する装置が開示されているが、その自動検出も、液滴が色づけされていれば容易である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−88034号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、臨床用の液滴の色付けは避けるべきなので、無色のままで使用せざるを得ない。よって、その場合は、培養容器内で液滴の存在位置を見出すことは困難である。
【0006】
そこで本発明は、無色の液滴をも検出することの可能な液滴の観察装置、及びそれを備えた培養観察装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の観察装置は、透明な液滴の形成された透明な部材を、その液滴より微細な明暗パターンを有した面光源で照明する照明手段と、前記面光源で照明された前記部材の透過像を撮像する撮像手段と、前記撮像手段が前記撮像で取得した明暗画像のパターンに基づき、その明暗画像における前記液滴の像の形成領域を検出する演算手段とを備える。
【0008】
本発明の培養観察装置は、本発明の観察装置と、前記観察装置の観察対象となった前記部材の位相差顕微鏡画像を、その観察装置よりも狭い視野で取得する位相差顕微鏡と、前記位相差顕微鏡の視野に対する前記部材の位置を前記検出の結果に応じて制御することにより、前記液滴を前記位相差顕微鏡の視野で補足する位置制御手段と、前記観察装置及び前記位相差顕微鏡の観察対象である前記部材を収容する恒温室とを備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、無色の液滴をも検出することの可能な液滴の観察装置、及びそれを備えた培養観察装置が実現する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】インキュベータの正面図。
【図2】正面扉18が開放されたときにおけるインキュベータの正面図。
【図3】観察ユニット28の構成を示す概略図。
【図4】インキュベータ11の回路ブロック図。
【図5】全体観察用の観察系に配置された培養容器30を示す図。
【図6】ストライプ状の面光源の例。
【図7】登録モードにおける制御ユニット14の動作フローチャート。
【図8】全体画像Iwholeの例。
【図9】全体画像Iwhole’の例。
【図10】ドロップ番号の付与された全体画像Iwhole’の例。
【図11】観察モードにおける制御ユニット14の動作フローチャート。
【図12】チェッカーフラッグ状の面光源の例。
【図13】格子状の面光源の例。
【図14】チェッカーフラッグ状の面光源を採用した場合の全体画像Iwholeの例。
【図15】格子状の面光源を採用した場合の全体画像Iwholeの例。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態を説明する。本実施形態はインキュベータの実施形態である。
【0012】
先ず、本実施形態のインキュベータの構造を説明する。
【0013】
図1は、本実施形態のインキュベータの正面図であり、図2は、正面扉18が開放されたときにおけるインキュベータの正面図である。図1,図2に示すとおり、インキュベータ11は、生体細胞の培養を行う第1筐体12と、制御ユニット14を収納する第2筐体13とを有しており、第1筐体12は第2筐体13の上部に配置される。
【0014】
第2筐体13の前面には操作パネル56が設けられており、その操作パネル56には、モニタや入力釦などが設けられている。第2筐体13の内部には、制御ユニット14と、観察ユニット28の一部とが配置される。
【0015】
第1筐体12の内部には、断熱材で覆われた恒温室15(図2)が形成されている。この恒温室15は、第1筐体12の正面に形成された正面開口16(図2)と、第1筐体12の左側面に形成された搬出入口17(図2)とによって外部と連絡している。このうち正面開口16(図2)は、観音開きの正面扉18によって開閉可能であり、搬出入口17(図2)は、スライド式の自動扉19(図1)によって開閉可能である。なお、搬出入口17のサイズは培養容器30(図2)が通過可能なサイズに設定されている。また、第1筐体12の底面には、正面側からみて右寄りの位置に開口20(図2)が形成されており、その開口20(図2)から観察ユニット28の一部が突設されている。
【0016】
恒温室15の壁面には、温度調整装置、噴霧装置、ガス導入部、環境センサユニットなどが内蔵されている。このうち温度調整装置はペルチェ素子を有しており、ペルチェ効果によって恒温室15(図2)の加熱または冷却を行う。噴霧装置は、恒温室15(図2)内に噴霧を行って恒温室15(図2)内の湿度を調整する。ガス導入部は、インキュベータ外の二酸化炭素ボンベと接続されており、その二酸化炭素ボンベから恒温室15(図2)へと二酸化炭素を導入することにより、恒温室15(図2)内の二酸化炭素濃度を調整する。環境センサユニットは、恒温室15(図2)内の温度、湿度、二酸化炭素濃度をそれぞれ検出する。
【0017】
第1筐体12の内部には、ストッカー25と、容器搬出入機構26(図2)と、容器搬送機構27とが配置され、前述したとおり観察ユニット28の一部も配置されている。
【0018】
ストッカー25の配置箇所は、第1筐体12の正面からみて恒温室15(図2)の左側である。ストッカー25は、複数の棚を有しており、各々の棚に培養容器30を収納することができる。ストッカー25の最下段は、第1筐体12の搬出入口17(図2)に連続しており、その最下段のスペースには、培養容器30を搬出入するための容器搬出入機構
26(図2)が設置される。
【0019】
容器搬送機構27の配置箇所は、第1筐体12の正面からみて恒温室15(図2)の中央である。この容器搬送機構27は、ストッカー25、容器搬出入機構26(図2)、観察ユニット28との間で培養容器30(図2)の受け渡しを行う。
【0020】
観察ユニット28の配置箇所は、第1筐体12の正面からみて恒温室15(図2)の右側である。この観察ユニット28は、試料台47(図2)と、試料台47(図2)の上方に張り出したアーム48(図2)と、本体部分49(図2)とを有している。このうち試料台47(図2)及びアーム48(図2)が第1筐体12の恒温室15(図2)の側に位置し、本体部分49(図2)が第2筐体13の側に位置している。
【0021】
図3は、観察ユニット28の構成を示す概略図である。図3に示すとおり、観察ユニット28は、試料台47と、第1照明部51と、第2照明部52と、顕微観察部53と、容器観察部54と、画像処理部55とを有している。
【0022】
このうち、顕微観察部53は本体部分49に内蔵されており、照明部51は、アーム48のうち、顕微観察部53と対向する位置に配置される。これらの顕微観察部53と第1照明部51とが位相差観察用の観察系を構成する。
【0023】
また、容器観察部54はアーム48に収納されており、第2照明部52は、本体部分49のうち、容器観察部54と対向する位置に配置される。これらの容器観察部54と第2照明部52とが全体観察用の観察系を構成する。
【0024】
試料台47は、透明な部材で構成されており、その上に培養容器30が載置される。この試料台47は、高精度なステージからなり、培養容器30を水平方向(XY方向)に移動させることにより、培養容器30を位相差観察用の顕微鏡(顕微観察部53及び第1照明部51)の光路へ挿入したり、全体観察用の観察系(容器観察部54及び第2照明部52)の光路へ挿入したりすることができる。
【0025】
また、試料台47は、培養容器30と位相差観察用の顕微鏡との間のZ方向の位置関係を変化させることにより、位相差観察用の顕微鏡の焦点調節を行うことができる。また、試料台47は、培養容器30と位相差観察用の顕微鏡とのXY方向の位置関係を変化させることにより、位相差観察用の顕微鏡の観察ポイントを変更することができる。
【0026】
観察ユニット28は、培養容器30を全体観察用の観察系(容器観察部54及び第2照明部52)の光路へ挿入した状態で、培養容器30の全体像を撮像することができる。以下、この撮像によって取得される画像を「全体画像」という。
【0027】
また、観察ユニット28は、培養容器30を位相差観察用の顕微鏡(顕微観察部53及び第1照明部51)の光路へ挿入した状態で、培養容器30の一部の拡大位相差像を撮像することができる。以下、この撮像によって取得される画像を「位相差画像」という。
【0028】
なお、顕微観察部53の対物レンズ61及び位相フィルタ62の組み合わせは、観察倍率の異なる複数種類の組み合わせの間で切り替えることが可能である。例えば、対物レンズ61及び位相フィルタ62の組み合わせは、2倍観察用の組み合わせ(対物レンズ61low及び位相フィルタ62low)と、4倍観察用の組み合わせ(対物レンズ61high及び位相フィルタ62high)との間で切り替わる。
【0029】
観察ユニット28は、対物レンズ61low及び位相フィルタ62lowを光路に設定した状態で倍率2倍の位相差画像(低倍位相差画像)を取得することができ、対物レンズ61high及び位相フィルタ62highを光路に設定した状態で倍率4倍の位相差画像(高倍位相差画像)を取得することができる。
【0030】
画像処理部55は、観察ユニット28が取得した画像(全体画像、低倍位相差画像、高倍位相差画像)に対して各種の画像処理を施す。なお、画像処理部55が実行可能な画像処理には、分散フィルタ処理(後述)やパターンマッチング処理(後述)などがある。
【0031】
次に、インキュベータ11の電気系統を説明する。
【0032】
図4は、インキュベータ11の回路ブロック図である。図4に示すとおり、インキュベータ11の制御ユニット14は、自動扉19の扉開閉機構19a、温度調整装置21、噴霧装置22、ガス導入部23、環境センサユニット24、容器搬出入機構26、容器搬送機構27、観察ユニット28、モニタ56a、入力釦56bとそれぞれ接続されている。
【0033】
制御ユニット14は、所定の制御プログラムに従ってインキュベータ11の各部を統括的に制御する。一例として、制御ユニット14は、温度調整装置21、噴霧装置22、ガス導入部23、環境センサユニット24をそれぞれ制御して恒温室15内を所定の環境条件に維持する。また、制御ユニット14は、ユーザが入力した観察スケジュールに基づいて、観察ユニット28および容器搬送機構27を制御して、培養容器30の観察シーケンスを自動的に実行する。
【0034】
なお、本実施形態のインキュベータ11には、観察に関する制御ユニット14の動作モードとして、後述する「登録モード」や「観察モード」が搭載されているものとする。また、制御ユニット14は、ハードディスクや不揮発性メモリなどで構成された記憶部14aを有しており、後述する各種のデータを記憶しておくこともできる。
【0035】
次に、本実施形態の培養容器30及び全体観察用の観察系を詳しく説明する。
【0036】
図5は、全体観察用の観察系に配置された培養容器30を示す図である。図5に示すとおり培養容器30は、蓋付きの透明なディッシュである。培養容器30の底面には、20〜25μl程度の透明な培養液滴(培地ドロップ)30aが複数個形成されており、個々の培地ドロップ30aの中で受精卵30cが1個ずつ生育している。
【0037】
個々の培地ドロップ30aの表面及び間隙は、乾燥を防ぐため透明のミネラルオイル30bで満たされている。ミネラルオイル30bの屈折率は例えば1.467であり、培地ドロップ30aの屈折率は例えば1.333である。また、培養容器30の直径は、約35mmであり、個々の培地ドロップ30aの直径は、6〜7mm程度であり、個々の受精卵aの直径は、100μm程度である。
【0038】
なお、複数の培地ドロップ30aのサイズ、及びそれらの配列パターンは未知であっても構わない。また、複数の培地ドロップ30aの各々は、フェノールレッドにより色付けされていても、無色であってもどちらでも構わない。但し、本実施形態では、個々の培地ドロップ30aは、培養容器30の底面に付着しており、観察期間中に培養容器30内を移動する可能性は無いものと仮定する。また、本実施形態では、複数の培地ドロップ30aのサイズは、培養容器30内ではほぼ共通と仮定する。
【0039】
全体観察用の観察系を構成する第2照明部52は、培養容器30の底面側に配置され、全体間接用の観察系を構成する容器観察部54は、培養容器30の上面側に配置される。
【0040】
第2照明部52は、バックライト付きの透過型液晶パネルからなり、容器観察部54は、結像光学系54bと、撮像素子54aとを備える。なお、撮像素子54aは、カラー撮像素子であってもモノクロ撮像素子であっても構わない。
【0041】
透過型液晶パネルである第2照明部52は、明部と暗部とを繰り返し配置したバイナリパターン(ここでは、ストライプパターンとする。)を表示する。この状態で、第2照明部52上にはストライプ状の面光源(図6参照)が形成される。
【0042】
面光源のストライプパターンは、培地ドロップ30aの直径(6〜7mm)と比較して十分に微細であり、培地ドロップ30aの直径サイズ内に少なくとも2周期分のストライプを配している。このストライプパターンの周期(面光源のストライプピッチ)は、例えば、1mm程度に設定される。なお、面光源のストライプピッチは、制御ユニット14によって制御可能であり、所定範囲内(例えば0.5〜2mmの範囲内)で可変である。
【0043】
結像光学系54bの視野は十分に大きく設定されており、その視野内に培養容器30の全体が収まる。この結像光学系54bにより、撮像素子54aの撮像面と培養容器30の底面近傍とは、光学的に共役な関係に結ばれている。この構成により、容器観察部54は、培養容器30の全体画像を取得することができる。
【0044】
第2照明部52から培養容器30までの間隔は、少なくとも容器観察部54がストライプパターンを分解できる程度の間隔に設定されている。
【0045】
次に、本実施形態の登録モードにおける制御ユニット14の動作を説明する。
【0046】
図7は、登録モードにおける制御ユニット14の動作フローチャートである。なお、登録モードの開始時点では、前述した面光源のストライプピッチは可変範囲の最大値に設定されているものと仮定する。
【0047】
ステップS11:制御ユニット14は、ユーザの操作に応じて培養容器30を恒温室15へ搬入すると共に、培養容器30の搬送を容器搬送機構27へ指示する。容器搬送機構27は、その培養容器30を搬送し、試料台47の所定位置へ載置する。
【0048】
ステップS12:制御ユニット14は、培養容器30の全体画像を取得するよう観察ユニット28へ指示する。観察ユニット28は、試料台47を駆動して培養容器30を全体観察用の観察系(容器観察部54及び第2照明部52)の光路へ配置し、その状態で培養容器30の全体画像Iwholeを取得し、その全体画像Iwholeをモニタ56aへ表示する(図8参照)。
【0049】
図8に示すとおり、全体画像Iwholeには、面光源のストライプパターンが反映されている。但し、図5に示したとおり培地ドロップ30aは、ミネラルオイル30bとの界面は曲面になっているため、培地ドロップ30aは通過光束に対してレンズ作用を及ぼす。このため、図8に示すとおり全体画像Iwholeのうち培地ドロップ30aに対応した領域に現れるストライプパターンのストライプピッチは、他の領域に現れるストライプパターンのストライプピッチよりも狭くなる。その結果、全体画像Iwhole上では培地ドロップ30aの像が可視化される。
【0050】
ステップS13:制御ユニット14は、ステップS12で取得された全体画像Iwholeへ分散フィルタ処理を施すよう画像処理部55へ指示する。画像処理部55は、全体画像Iwhole上で着目画素をシフトさせながら、着目領域を中心とする局所領域(例えば3×3画素の局所領域)の標準偏差へ着目画素の画素値を置換する処理を繰り返し、分散フィルタ処理後の全体画像Iwhole’を取得する。この全体画像Iwhole’は、制御ユニット14へ送出され、制御ユニット14によってモニタ56aへ表示される(図9参照)。
【0051】
ここで、本ステップの分散フィルタ処理には、全体画像Iwholeのうち、輝度の段差部(明暗のエッジ)を多く含む領域の平均輝度値を高める効果がある。よって、全体画像Iwhole’のうちストライプピッチが狭い領域の平均輝度値、すなわち、培地ドロップ30aの像の平均輝度値は、他の領域の平均輝度値よりも高くなる。よって、全体画像Iwhole’上では培地ドロップ30aの像が強調されることになる。
【0052】
ステップS14:制御ユニット14は、ステップS13で取得された全体画像Iwhole’に対してパターンマッチング処理を施すよう画像処理部55へ指示する。画像処理部55は、予め記憶している基準パターン(下述)との相関が一定以上となる1又は複数の任意サイズの領域を全体画像Iwhole’の中から検出し、検出した1又は複数の領域の輪郭線を、ドロップ像の輪郭線(以下、「エッジ画像」と称す。)として制御ユニット14へ送出する。
【0053】
ここで、本ステップの基準パターンは、本装置の製造者又はユーザが予め行った測定(又はシミュレーション)によって取得されたものである。その測定(又はシミュレーション)では、比較的小サイズの基準培地ドロップが形成された培養容器と、面光源のストライプピッチが最大値に設定された本装置とを用意(想定)し、その装置に全体画像Iwhole’を取得させ、その全体画像Iwhole’に現れた基準培地ドロップの像を、基準パターンとすればよい。
【0054】
ステップS15:制御ユニット14は、ステップS14においてドロップ像が検出されたか否かを判別し、検出されなかった場合は面光源のストライプピッチを変更するべくステップS16へ移行し、検出された場合は培養容器30の登録を行うべくステップS17へ移行する。
【0055】
なお、培地ドロップ30aのサイズが基準培地ドロップのサイズと近かった場合には、培地ドロップ30aの像に現れるストライプの本数が基準培地ドロップの像に現れるストライプの本数と同じになるので、1回目のパターンマッチングでドロップ像が検出される。一方、培地ドロップ30aのサイズが基準培地ドロップのサイズより一定以上大きかった場合には、培地ドロップ30aの像に現れるストライプの本数が基準培地ドロップの像に現れるストライプの本数より多くなるため、1回目のパターンマッチングでドロップ像が検出できない可能性がある。本実施形態では、ステップS14でドロップ像が検出されなかった場合には、面光源のストライプピッチを変更し、全体画像Iwholeの再取得を試みる。
【0056】
ステップS16:制御ユニット14は、面光源のストライプピッチを1段階だけ小さい値に変更してからステップS12へ戻る。このように面光源のストライプピッチを小さい値に変更すれば、培地ドロップ30aの像に現れるストライプの本数を基準パターンにおけるストライプの本数と同じにすることができるので、次のパターンマッチングでドロップ像を検出できる可能性が高まる。
【0057】
ステップS17:制御ユニット14は、ステップS14で取得したエッジ画像を、モニタ56a上の全体画像Iwhole’に対して重畳表示する(図10参照)。
【0058】
また、本ステップにおける制御ユニット14は、エッジ画像に含まれる1又は複数のドロップ像の各々に対して個別のドロップ番号iを順番にラベリングする。これによって、制御ユニット14は、培養容器30に形成された培地ドロップ30aの総数(すなわちドロップ番号iの最終値)を既知とする。以下、図10に示したとおり培地ドロップ30aの総数(すなわちドロップ番号iの最終値)を「8」と仮定する。
【0059】
また、本ステップにおける制御ユニット14は、エッジ画像に含まれる8個のドロップ像の各々のサイズを計算し、それらサイズの平均値を培養容器30に関する平均ドロップサイズとして求める。
【0060】
また、本ステップにおける制御ユニット14は、エッジ画像に含まれる8個のドロップ像の各々の中心座標(x1,y1)〜(x8,y8)を算出し、それらの中心座標(x1,y1)〜(x8,y8)を、位相差観察用の試料台座標(x1’,y1’)〜(x8’,y8’)へと変換する。ここで、試料台座標(xi’,yi’)は、i番目の培地ドロップ30aを位相差観察用の顕微鏡の視野中心に配置するための試料台座標である。
【0061】
また、本ステップにおける制御ユニット14は、培養容器30の観察スケジュール(タイムラプス観察の時間間隔、観察期間など)をユーザに入力させる。
【0062】
そして、本ステップにおける制御ユニット14は、培養容器30に関する以上の情報、すなわち、ラベリング済みのエッジ画像と、ドロップ番号iの最終値(ここでは8)と、平均ドロップサイズと、試料台座標(x1’,y1’)〜(x8’,y8’)と、観察スケジュールとを、培養容器30の管理データとして記憶部14aへ記憶する。これによって、培養容器30の登録が完了する。
【0063】
ステップS18:制御ユニット14は、ドロップ番号iを初期値「1」に設定する。
【0064】
ステップS19:制御ユニット14は、ドロップ番号iに対応する試料台座標(xi’,yi’)を記憶部14aから読み出し、その試料台座標(xi’,yi’)を観察ユニット28へ指定すると共に、位相差画像を取得するよう観察ユニット28へ指示する。観察ユニット28は、培養容器30を位相差観察用の顕微鏡(顕微観察部53及び第1照明部51)の光路へ挿入し、対物レンズ61及び位相フィルタ62の組み合わせを対物レンズ61low及び位相フィルタ62lowの組み合わせに設定し、試料台47を試料台座標(xi’,yi’)へ配置し、その状態において低倍位相差画像を取得し、その低倍位相差画像を、i番目の培地ドロップ30aのドロップ画像Idiとして制御ユニット14へ送出する。
【0065】
なお、i番目の培地ドロップ30aのサイズが大きい場合には、培地ドロップの像が低倍位相差画像Idiに収まらない可能性がある。そこで、本ステップの制御ユニット14は、培養容器30の平均ドロップサイズを閾値と比較し、平均ドロップサイズが閾値以上であった場合には、試料台47を試料台座標(xi’,yi’)の周辺でステップ状に移動させながら4枚の低倍位相差画像を取得するよう観察ユニット28へ指示を出し、観察ユニット28が取得した4枚の低倍位相差画像を繋ぎ合わせることにより、1枚のドロップ画像Idiを取得することが望ましい。
【0066】
さらに、本ステップの制御ユニット14は、その培地ドロップ画像Idiの中から受精卵30cの像を探索し、その受精卵30cを視野中心に配置した状態で高倍位相差画像を取得するよう観察ユニット28へ指示を出し、観察ユニット28が取得した高倍位相差画像を、i番目の培地ドロップ30aの卵画像として取得してもよい。
【0067】
そして、本ステップの制御ユニット14は、本ステップで取得した位相差画像を、i番目の培地ドロップの詳細画像としてモニタ56aへ表示する。
【0068】
ステップS111:制御ユニット14は、ステップS19で取得した詳細画像を、現在の日時及び現在のドロップ番号iに対応付けた上で、培養容器30の観察データとして記憶部14aへ記憶する。
【0069】
ステップS112:制御ユニット14は、ドロップ番号iが最終値(ここでは「8」)に達したか否かを判別し、達していなかった場合にはステップS113へ移行し、達していた場合にはステップS114へ移行する。
【0070】
ステップS113:制御ユニット14は、ドロップ番号iをインクリメントしてからステップS19へ戻る。
【0071】
ステップS114:制御ユニット14は、培養容器30をストッカー25へ収納するよう容器搬送機構27へ指示する。容器搬送機構27は、培養容器30をストッカー25へ収納する。
【0072】
次に、本実施形態の観察モードにおける制御ユニット14の動作を説明する。
【0073】
図11は、観察モードにおける制御ユニット14の動作フローチャートである。なお、観察モードは、登録モードの実行後に自動的に開始されるものとする。
【0074】
ステップS21:制御ユニット14は、培養容器30の管理データに書き込まれた観察スケジュールと現在日時とを比較して、培養容器30の観察開始時期が到来したか否かを判別する。観察開始時期が到来した場合にはステップS22に移行し、観察開始時期が到来していない場合には待機する。
【0075】
ステップS22:制御ユニット14は、培養容器30の搬送を容器搬送機構27に指示する。容器搬送機構27は、培養容器30をストッカー25から搬出して試料台47の所定位置に載置する。
【0076】
ステップS23:制御ユニット14は、ドロップ番号iを初期値「1」に設定する。
【0077】
ステップS24:制御ユニット14は、上述したステップS19と同様にi番目の培地ドロップ30aの詳細画像を取得し、それをモニタ56aへ表示する。
【0078】
ステップS25:制御ユニット14は、ステップS24で取得した詳細画像を、現在の日時及び現在のドロップ番号iに対応付けた上で、培養容器30の観察データとして記憶部14aへ記憶する。
【0079】
ステップS26:制御ユニット14は、ドロップ番号iが最終値(ここでは「8」)に達したか否かを判別し、達していなかった場合にはステップS27へ移行し、達していた場合にはステップS28へ移行する。
【0080】
ステップS27:制御ユニット14は、ドロップ番号iをインクリメントしてからステップS24へ戻る。
【0081】
ステップS28:制御ユニット14は、培養容器30をストッカー25へ収納するよう容器搬送機構27へ指示する。容器搬送機構27は、培養容器30をストッカー25へ収納する。
【0082】
ステップS29:制御ユニット14は、培養容器30の管理データに書き込まれた観察スケジュールと現在日時とを比較して、培養容器30の観察終了時期が到来したか否かを判別する。観察終了時期が到来した場合にはその旨をモニタ56aへ表示してからフローを終了し、観察終了時期が到来していない場合にはステップS21へ戻る。
【0083】
以上、本実施形態の観察ユニット28は、培養容器30の全体画像Iwholeを取得する際に、培地ドロップ30aよりも十分に微細な明暗パターンを有した面光源を採用する。よって、培地ドロップ30aが仮に無色であったとしても、全体画像Iwhole上で培地ドロップ30aの像は可視化される。
【0084】
したがって、本実施形態の画像処理部55は、その全体画像Iwholeからドロップ像を検出することが可能である。特に、本実施形態の画像処理部55は、パターンマッチング処理を全体画像Iwholeへ施すので、ドロップ像の検出を高確度で行うことができる。
【0085】
また、本実施形態の制御ユニット14は、画像処理部55がドロップ像の検出に失敗した場合には、面光源の明暗パターンのピッチを変更してから全体画像の取得及びドロップ像の検出を再度実行するので、ドロップ像を、そのサイズに依らず確実に検出することができる。
【0086】
また、本実施形態の制御ユニット14は、ドロップ像を強調するための画像処理(ここでは空間フィルタ処理の一種である分散フィルタ処理)をパターンマッチングの前に全体画像Iwholeへ施すので、パターンマッチングの確度をより高めることができる。
【0087】
また、本実施形態の観察ユニット28は、面光源の明暗パターンとしてストライプパターンを採用するので、画像処理部55は、ドロップ像の検出をシンプルな演算で確実に行うことが可能である。
【0088】
また、本実施形態の制御ユニット14は、ドロップ像の検出結果に応じて詳細画像の取得内容(試料台の配置先や位相差画像の取得手順など)を決定するので、詳細画像の取得を効率的に行うことができる。
【0089】
なお、本実施形態の面光源は、ストライプパターン状であったが、均一輝度の面光源に変更することも可能なので、本実施形態の観察ユニット28は、ストライプパターンの反映されていない培養容器30の全体画像(つまり、培養容器30の単なる透過観察画像)を取得することも可能である。よって、本実施形態の制御ユニット14は、上述したステップS12において全体画像Iwholeと透過観察画像との双方を取得し、上述したステップS17において他の管理データと共にその透過観察画像を記憶部14aへ記憶してもよい。
【0090】
また、本実施形態の制御ユニット14は、全体画像Iwholeの取得時にストライプ状の面光源を採用したが、明部と暗部とを繰り返し配置した他種の面光源を採用してもよい。例えば、図12に示すようなチェッカーフラッグ状の面光源や、図13に示すような格子状の面光源を採用してもよい。因みに、チェッカーフラッグ状の面光源を採用した場合の全体画像Iwholeの一例は、図14に示すとおりであり、格子状の面光源を採用した場合の全体画像Iwholeの一例は、図15に示すとおりとなる。何れの場合も、培地ドロップ30aの像を可視化することができる。但し、面光源の種類を変更する場合には、画像処理部55が予め記憶する基準パターンも変更する必要がある。
【0091】
また、本実施形態の画像処理部55は、パターンマッチングの前に全体画像Iwholeへ施す画像処理を分散フィルタ処理としたが、他種の空間フィルタ処理や、空間フィルタ処理以外の画像処理としてもよい。例えば、全体画像Iwholeを基準全体画像から減算する差分処理としてもよい。
【0092】
ここで、基準全体画像は、本装置の製造者又はユーザが予め行った測定(又はシミュレーション)によって取得されたものである。その測定(又はシミュレーション)では、培地ドロップの形成されていない基準培養容器と、面光源のストライプピッチが最大値に設定された本装置とを用意(想定)し、その装置に全体画像Iwholeを取得させ、その全体画像Iwholeを、基準全体画像とすればよい。
【0093】
但し、空間フィルタ処理の種類又は画像処理の種類を変更する場合には、画像処理部55が予め記憶する基準パターンも変更する必要がある。
【0094】
また、本実施形態の位相差観察用の顕微鏡は、位相差観察の観察倍率を2倍と4倍との間で切り換えたが、2倍と4倍と40倍の間で切り換えてもよい。因みに、40倍の観察倍率は、受精卵30cの画像を高精細に取得するのに適している。
【0095】
また、本実施形態では、培養容器30としてディッシュを使用したが、他種の培養容器を使用してもよい。何れの場合も、液滴の形成先(滴下先)が透明な部材でありさえすれば、本実施形態と同様の観察が可能である。なお、本明細書では文言「透明」を、「可視光に対して透明」の意味で使用した。
【0096】
また、本実施形態において、制御ユニット14の動作の一部又は全部は、インキュベータに外付けされたコンピュータによって実行されてもよい。また、本実施形態において、画像処理部55の動作の一部又は全部は、インキュベータに外付けされたコンピュータによって実行されてもよい。
【0097】
また、本実施形態では、本発明の観察装置を培養観察装置に適用したものを説明したが、本発明の観察装置は、培養観察装置以外の装置、例えば化学反応計測装置や液滴形成装置などにも適用することが可能である。
【符号の説明】
【0098】
11…インキュベータ,12…第1筐体,13…第2筐体,56…操作パネル,14…制御ユニット,28…観察ユニット,15…恒温室,16…正面開口,17…搬出入口,18…正面扉,17…搬出入口,19…自動扉19,30…培養容器,20…開口,47…試料台,51…第1照明部,52…第2照明部,53…顕微観察部,54…容器観察部,55…画像処理部,49…本体部分,61…対物レンズ,62…位相フィルタ
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明な培養容器や透明な基板に形成された透明な液滴を観察する観察装置、及びそれを備えた培養観察装置に関する。
【背景技術】
【0002】
細胞培養や化学反応計測の分野では、数μl〜数十μlの液滴中の実験(微量反応系の実験)が要求されることがある。生殖補助医療技術(ART)の分野では、ディッシュと呼ばれる培養容器の底面上に形成された液滴中で卵細胞や精子細胞を操作したり、受精卵を培養したりすることが一般的である。
【0003】
通常、実験用の液滴はフェノールレッド等のpH指示薬で色づけされているので、透明な培養容器中の透明な液滴の存在位置を見出すことは容易である。なお、特許文献1には液滴のサイズを自動検出する装置が開示されているが、その自動検出も、液滴が色づけされていれば容易である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−88034号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、臨床用の液滴の色付けは避けるべきなので、無色のままで使用せざるを得ない。よって、その場合は、培養容器内で液滴の存在位置を見出すことは困難である。
【0006】
そこで本発明は、無色の液滴をも検出することの可能な液滴の観察装置、及びそれを備えた培養観察装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の観察装置は、透明な液滴の形成された透明な部材を、その液滴より微細な明暗パターンを有した面光源で照明する照明手段と、前記面光源で照明された前記部材の透過像を撮像する撮像手段と、前記撮像手段が前記撮像で取得した明暗画像のパターンに基づき、その明暗画像における前記液滴の像の形成領域を検出する演算手段とを備える。
【0008】
本発明の培養観察装置は、本発明の観察装置と、前記観察装置の観察対象となった前記部材の位相差顕微鏡画像を、その観察装置よりも狭い視野で取得する位相差顕微鏡と、前記位相差顕微鏡の視野に対する前記部材の位置を前記検出の結果に応じて制御することにより、前記液滴を前記位相差顕微鏡の視野で補足する位置制御手段と、前記観察装置及び前記位相差顕微鏡の観察対象である前記部材を収容する恒温室とを備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、無色の液滴をも検出することの可能な液滴の観察装置、及びそれを備えた培養観察装置が実現する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】インキュベータの正面図。
【図2】正面扉18が開放されたときにおけるインキュベータの正面図。
【図3】観察ユニット28の構成を示す概略図。
【図4】インキュベータ11の回路ブロック図。
【図5】全体観察用の観察系に配置された培養容器30を示す図。
【図6】ストライプ状の面光源の例。
【図7】登録モードにおける制御ユニット14の動作フローチャート。
【図8】全体画像Iwholeの例。
【図9】全体画像Iwhole’の例。
【図10】ドロップ番号の付与された全体画像Iwhole’の例。
【図11】観察モードにおける制御ユニット14の動作フローチャート。
【図12】チェッカーフラッグ状の面光源の例。
【図13】格子状の面光源の例。
【図14】チェッカーフラッグ状の面光源を採用した場合の全体画像Iwholeの例。
【図15】格子状の面光源を採用した場合の全体画像Iwholeの例。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態を説明する。本実施形態はインキュベータの実施形態である。
【0012】
先ず、本実施形態のインキュベータの構造を説明する。
【0013】
図1は、本実施形態のインキュベータの正面図であり、図2は、正面扉18が開放されたときにおけるインキュベータの正面図である。図1,図2に示すとおり、インキュベータ11は、生体細胞の培養を行う第1筐体12と、制御ユニット14を収納する第2筐体13とを有しており、第1筐体12は第2筐体13の上部に配置される。
【0014】
第2筐体13の前面には操作パネル56が設けられており、その操作パネル56には、モニタや入力釦などが設けられている。第2筐体13の内部には、制御ユニット14と、観察ユニット28の一部とが配置される。
【0015】
第1筐体12の内部には、断熱材で覆われた恒温室15(図2)が形成されている。この恒温室15は、第1筐体12の正面に形成された正面開口16(図2)と、第1筐体12の左側面に形成された搬出入口17(図2)とによって外部と連絡している。このうち正面開口16(図2)は、観音開きの正面扉18によって開閉可能であり、搬出入口17(図2)は、スライド式の自動扉19(図1)によって開閉可能である。なお、搬出入口17のサイズは培養容器30(図2)が通過可能なサイズに設定されている。また、第1筐体12の底面には、正面側からみて右寄りの位置に開口20(図2)が形成されており、その開口20(図2)から観察ユニット28の一部が突設されている。
【0016】
恒温室15の壁面には、温度調整装置、噴霧装置、ガス導入部、環境センサユニットなどが内蔵されている。このうち温度調整装置はペルチェ素子を有しており、ペルチェ効果によって恒温室15(図2)の加熱または冷却を行う。噴霧装置は、恒温室15(図2)内に噴霧を行って恒温室15(図2)内の湿度を調整する。ガス導入部は、インキュベータ外の二酸化炭素ボンベと接続されており、その二酸化炭素ボンベから恒温室15(図2)へと二酸化炭素を導入することにより、恒温室15(図2)内の二酸化炭素濃度を調整する。環境センサユニットは、恒温室15(図2)内の温度、湿度、二酸化炭素濃度をそれぞれ検出する。
【0017】
第1筐体12の内部には、ストッカー25と、容器搬出入機構26(図2)と、容器搬送機構27とが配置され、前述したとおり観察ユニット28の一部も配置されている。
【0018】
ストッカー25の配置箇所は、第1筐体12の正面からみて恒温室15(図2)の左側である。ストッカー25は、複数の棚を有しており、各々の棚に培養容器30を収納することができる。ストッカー25の最下段は、第1筐体12の搬出入口17(図2)に連続しており、その最下段のスペースには、培養容器30を搬出入するための容器搬出入機構
26(図2)が設置される。
【0019】
容器搬送機構27の配置箇所は、第1筐体12の正面からみて恒温室15(図2)の中央である。この容器搬送機構27は、ストッカー25、容器搬出入機構26(図2)、観察ユニット28との間で培養容器30(図2)の受け渡しを行う。
【0020】
観察ユニット28の配置箇所は、第1筐体12の正面からみて恒温室15(図2)の右側である。この観察ユニット28は、試料台47(図2)と、試料台47(図2)の上方に張り出したアーム48(図2)と、本体部分49(図2)とを有している。このうち試料台47(図2)及びアーム48(図2)が第1筐体12の恒温室15(図2)の側に位置し、本体部分49(図2)が第2筐体13の側に位置している。
【0021】
図3は、観察ユニット28の構成を示す概略図である。図3に示すとおり、観察ユニット28は、試料台47と、第1照明部51と、第2照明部52と、顕微観察部53と、容器観察部54と、画像処理部55とを有している。
【0022】
このうち、顕微観察部53は本体部分49に内蔵されており、照明部51は、アーム48のうち、顕微観察部53と対向する位置に配置される。これらの顕微観察部53と第1照明部51とが位相差観察用の観察系を構成する。
【0023】
また、容器観察部54はアーム48に収納されており、第2照明部52は、本体部分49のうち、容器観察部54と対向する位置に配置される。これらの容器観察部54と第2照明部52とが全体観察用の観察系を構成する。
【0024】
試料台47は、透明な部材で構成されており、その上に培養容器30が載置される。この試料台47は、高精度なステージからなり、培養容器30を水平方向(XY方向)に移動させることにより、培養容器30を位相差観察用の顕微鏡(顕微観察部53及び第1照明部51)の光路へ挿入したり、全体観察用の観察系(容器観察部54及び第2照明部52)の光路へ挿入したりすることができる。
【0025】
また、試料台47は、培養容器30と位相差観察用の顕微鏡との間のZ方向の位置関係を変化させることにより、位相差観察用の顕微鏡の焦点調節を行うことができる。また、試料台47は、培養容器30と位相差観察用の顕微鏡とのXY方向の位置関係を変化させることにより、位相差観察用の顕微鏡の観察ポイントを変更することができる。
【0026】
観察ユニット28は、培養容器30を全体観察用の観察系(容器観察部54及び第2照明部52)の光路へ挿入した状態で、培養容器30の全体像を撮像することができる。以下、この撮像によって取得される画像を「全体画像」という。
【0027】
また、観察ユニット28は、培養容器30を位相差観察用の顕微鏡(顕微観察部53及び第1照明部51)の光路へ挿入した状態で、培養容器30の一部の拡大位相差像を撮像することができる。以下、この撮像によって取得される画像を「位相差画像」という。
【0028】
なお、顕微観察部53の対物レンズ61及び位相フィルタ62の組み合わせは、観察倍率の異なる複数種類の組み合わせの間で切り替えることが可能である。例えば、対物レンズ61及び位相フィルタ62の組み合わせは、2倍観察用の組み合わせ(対物レンズ61low及び位相フィルタ62low)と、4倍観察用の組み合わせ(対物レンズ61high及び位相フィルタ62high)との間で切り替わる。
【0029】
観察ユニット28は、対物レンズ61low及び位相フィルタ62lowを光路に設定した状態で倍率2倍の位相差画像(低倍位相差画像)を取得することができ、対物レンズ61high及び位相フィルタ62highを光路に設定した状態で倍率4倍の位相差画像(高倍位相差画像)を取得することができる。
【0030】
画像処理部55は、観察ユニット28が取得した画像(全体画像、低倍位相差画像、高倍位相差画像)に対して各種の画像処理を施す。なお、画像処理部55が実行可能な画像処理には、分散フィルタ処理(後述)やパターンマッチング処理(後述)などがある。
【0031】
次に、インキュベータ11の電気系統を説明する。
【0032】
図4は、インキュベータ11の回路ブロック図である。図4に示すとおり、インキュベータ11の制御ユニット14は、自動扉19の扉開閉機構19a、温度調整装置21、噴霧装置22、ガス導入部23、環境センサユニット24、容器搬出入機構26、容器搬送機構27、観察ユニット28、モニタ56a、入力釦56bとそれぞれ接続されている。
【0033】
制御ユニット14は、所定の制御プログラムに従ってインキュベータ11の各部を統括的に制御する。一例として、制御ユニット14は、温度調整装置21、噴霧装置22、ガス導入部23、環境センサユニット24をそれぞれ制御して恒温室15内を所定の環境条件に維持する。また、制御ユニット14は、ユーザが入力した観察スケジュールに基づいて、観察ユニット28および容器搬送機構27を制御して、培養容器30の観察シーケンスを自動的に実行する。
【0034】
なお、本実施形態のインキュベータ11には、観察に関する制御ユニット14の動作モードとして、後述する「登録モード」や「観察モード」が搭載されているものとする。また、制御ユニット14は、ハードディスクや不揮発性メモリなどで構成された記憶部14aを有しており、後述する各種のデータを記憶しておくこともできる。
【0035】
次に、本実施形態の培養容器30及び全体観察用の観察系を詳しく説明する。
【0036】
図5は、全体観察用の観察系に配置された培養容器30を示す図である。図5に示すとおり培養容器30は、蓋付きの透明なディッシュである。培養容器30の底面には、20〜25μl程度の透明な培養液滴(培地ドロップ)30aが複数個形成されており、個々の培地ドロップ30aの中で受精卵30cが1個ずつ生育している。
【0037】
個々の培地ドロップ30aの表面及び間隙は、乾燥を防ぐため透明のミネラルオイル30bで満たされている。ミネラルオイル30bの屈折率は例えば1.467であり、培地ドロップ30aの屈折率は例えば1.333である。また、培養容器30の直径は、約35mmであり、個々の培地ドロップ30aの直径は、6〜7mm程度であり、個々の受精卵aの直径は、100μm程度である。
【0038】
なお、複数の培地ドロップ30aのサイズ、及びそれらの配列パターンは未知であっても構わない。また、複数の培地ドロップ30aの各々は、フェノールレッドにより色付けされていても、無色であってもどちらでも構わない。但し、本実施形態では、個々の培地ドロップ30aは、培養容器30の底面に付着しており、観察期間中に培養容器30内を移動する可能性は無いものと仮定する。また、本実施形態では、複数の培地ドロップ30aのサイズは、培養容器30内ではほぼ共通と仮定する。
【0039】
全体観察用の観察系を構成する第2照明部52は、培養容器30の底面側に配置され、全体間接用の観察系を構成する容器観察部54は、培養容器30の上面側に配置される。
【0040】
第2照明部52は、バックライト付きの透過型液晶パネルからなり、容器観察部54は、結像光学系54bと、撮像素子54aとを備える。なお、撮像素子54aは、カラー撮像素子であってもモノクロ撮像素子であっても構わない。
【0041】
透過型液晶パネルである第2照明部52は、明部と暗部とを繰り返し配置したバイナリパターン(ここでは、ストライプパターンとする。)を表示する。この状態で、第2照明部52上にはストライプ状の面光源(図6参照)が形成される。
【0042】
面光源のストライプパターンは、培地ドロップ30aの直径(6〜7mm)と比較して十分に微細であり、培地ドロップ30aの直径サイズ内に少なくとも2周期分のストライプを配している。このストライプパターンの周期(面光源のストライプピッチ)は、例えば、1mm程度に設定される。なお、面光源のストライプピッチは、制御ユニット14によって制御可能であり、所定範囲内(例えば0.5〜2mmの範囲内)で可変である。
【0043】
結像光学系54bの視野は十分に大きく設定されており、その視野内に培養容器30の全体が収まる。この結像光学系54bにより、撮像素子54aの撮像面と培養容器30の底面近傍とは、光学的に共役な関係に結ばれている。この構成により、容器観察部54は、培養容器30の全体画像を取得することができる。
【0044】
第2照明部52から培養容器30までの間隔は、少なくとも容器観察部54がストライプパターンを分解できる程度の間隔に設定されている。
【0045】
次に、本実施形態の登録モードにおける制御ユニット14の動作を説明する。
【0046】
図7は、登録モードにおける制御ユニット14の動作フローチャートである。なお、登録モードの開始時点では、前述した面光源のストライプピッチは可変範囲の最大値に設定されているものと仮定する。
【0047】
ステップS11:制御ユニット14は、ユーザの操作に応じて培養容器30を恒温室15へ搬入すると共に、培養容器30の搬送を容器搬送機構27へ指示する。容器搬送機構27は、その培養容器30を搬送し、試料台47の所定位置へ載置する。
【0048】
ステップS12:制御ユニット14は、培養容器30の全体画像を取得するよう観察ユニット28へ指示する。観察ユニット28は、試料台47を駆動して培養容器30を全体観察用の観察系(容器観察部54及び第2照明部52)の光路へ配置し、その状態で培養容器30の全体画像Iwholeを取得し、その全体画像Iwholeをモニタ56aへ表示する(図8参照)。
【0049】
図8に示すとおり、全体画像Iwholeには、面光源のストライプパターンが反映されている。但し、図5に示したとおり培地ドロップ30aは、ミネラルオイル30bとの界面は曲面になっているため、培地ドロップ30aは通過光束に対してレンズ作用を及ぼす。このため、図8に示すとおり全体画像Iwholeのうち培地ドロップ30aに対応した領域に現れるストライプパターンのストライプピッチは、他の領域に現れるストライプパターンのストライプピッチよりも狭くなる。その結果、全体画像Iwhole上では培地ドロップ30aの像が可視化される。
【0050】
ステップS13:制御ユニット14は、ステップS12で取得された全体画像Iwholeへ分散フィルタ処理を施すよう画像処理部55へ指示する。画像処理部55は、全体画像Iwhole上で着目画素をシフトさせながら、着目領域を中心とする局所領域(例えば3×3画素の局所領域)の標準偏差へ着目画素の画素値を置換する処理を繰り返し、分散フィルタ処理後の全体画像Iwhole’を取得する。この全体画像Iwhole’は、制御ユニット14へ送出され、制御ユニット14によってモニタ56aへ表示される(図9参照)。
【0051】
ここで、本ステップの分散フィルタ処理には、全体画像Iwholeのうち、輝度の段差部(明暗のエッジ)を多く含む領域の平均輝度値を高める効果がある。よって、全体画像Iwhole’のうちストライプピッチが狭い領域の平均輝度値、すなわち、培地ドロップ30aの像の平均輝度値は、他の領域の平均輝度値よりも高くなる。よって、全体画像Iwhole’上では培地ドロップ30aの像が強調されることになる。
【0052】
ステップS14:制御ユニット14は、ステップS13で取得された全体画像Iwhole’に対してパターンマッチング処理を施すよう画像処理部55へ指示する。画像処理部55は、予め記憶している基準パターン(下述)との相関が一定以上となる1又は複数の任意サイズの領域を全体画像Iwhole’の中から検出し、検出した1又は複数の領域の輪郭線を、ドロップ像の輪郭線(以下、「エッジ画像」と称す。)として制御ユニット14へ送出する。
【0053】
ここで、本ステップの基準パターンは、本装置の製造者又はユーザが予め行った測定(又はシミュレーション)によって取得されたものである。その測定(又はシミュレーション)では、比較的小サイズの基準培地ドロップが形成された培養容器と、面光源のストライプピッチが最大値に設定された本装置とを用意(想定)し、その装置に全体画像Iwhole’を取得させ、その全体画像Iwhole’に現れた基準培地ドロップの像を、基準パターンとすればよい。
【0054】
ステップS15:制御ユニット14は、ステップS14においてドロップ像が検出されたか否かを判別し、検出されなかった場合は面光源のストライプピッチを変更するべくステップS16へ移行し、検出された場合は培養容器30の登録を行うべくステップS17へ移行する。
【0055】
なお、培地ドロップ30aのサイズが基準培地ドロップのサイズと近かった場合には、培地ドロップ30aの像に現れるストライプの本数が基準培地ドロップの像に現れるストライプの本数と同じになるので、1回目のパターンマッチングでドロップ像が検出される。一方、培地ドロップ30aのサイズが基準培地ドロップのサイズより一定以上大きかった場合には、培地ドロップ30aの像に現れるストライプの本数が基準培地ドロップの像に現れるストライプの本数より多くなるため、1回目のパターンマッチングでドロップ像が検出できない可能性がある。本実施形態では、ステップS14でドロップ像が検出されなかった場合には、面光源のストライプピッチを変更し、全体画像Iwholeの再取得を試みる。
【0056】
ステップS16:制御ユニット14は、面光源のストライプピッチを1段階だけ小さい値に変更してからステップS12へ戻る。このように面光源のストライプピッチを小さい値に変更すれば、培地ドロップ30aの像に現れるストライプの本数を基準パターンにおけるストライプの本数と同じにすることができるので、次のパターンマッチングでドロップ像を検出できる可能性が高まる。
【0057】
ステップS17:制御ユニット14は、ステップS14で取得したエッジ画像を、モニタ56a上の全体画像Iwhole’に対して重畳表示する(図10参照)。
【0058】
また、本ステップにおける制御ユニット14は、エッジ画像に含まれる1又は複数のドロップ像の各々に対して個別のドロップ番号iを順番にラベリングする。これによって、制御ユニット14は、培養容器30に形成された培地ドロップ30aの総数(すなわちドロップ番号iの最終値)を既知とする。以下、図10に示したとおり培地ドロップ30aの総数(すなわちドロップ番号iの最終値)を「8」と仮定する。
【0059】
また、本ステップにおける制御ユニット14は、エッジ画像に含まれる8個のドロップ像の各々のサイズを計算し、それらサイズの平均値を培養容器30に関する平均ドロップサイズとして求める。
【0060】
また、本ステップにおける制御ユニット14は、エッジ画像に含まれる8個のドロップ像の各々の中心座標(x1,y1)〜(x8,y8)を算出し、それらの中心座標(x1,y1)〜(x8,y8)を、位相差観察用の試料台座標(x1’,y1’)〜(x8’,y8’)へと変換する。ここで、試料台座標(xi’,yi’)は、i番目の培地ドロップ30aを位相差観察用の顕微鏡の視野中心に配置するための試料台座標である。
【0061】
また、本ステップにおける制御ユニット14は、培養容器30の観察スケジュール(タイムラプス観察の時間間隔、観察期間など)をユーザに入力させる。
【0062】
そして、本ステップにおける制御ユニット14は、培養容器30に関する以上の情報、すなわち、ラベリング済みのエッジ画像と、ドロップ番号iの最終値(ここでは8)と、平均ドロップサイズと、試料台座標(x1’,y1’)〜(x8’,y8’)と、観察スケジュールとを、培養容器30の管理データとして記憶部14aへ記憶する。これによって、培養容器30の登録が完了する。
【0063】
ステップS18:制御ユニット14は、ドロップ番号iを初期値「1」に設定する。
【0064】
ステップS19:制御ユニット14は、ドロップ番号iに対応する試料台座標(xi’,yi’)を記憶部14aから読み出し、その試料台座標(xi’,yi’)を観察ユニット28へ指定すると共に、位相差画像を取得するよう観察ユニット28へ指示する。観察ユニット28は、培養容器30を位相差観察用の顕微鏡(顕微観察部53及び第1照明部51)の光路へ挿入し、対物レンズ61及び位相フィルタ62の組み合わせを対物レンズ61low及び位相フィルタ62lowの組み合わせに設定し、試料台47を試料台座標(xi’,yi’)へ配置し、その状態において低倍位相差画像を取得し、その低倍位相差画像を、i番目の培地ドロップ30aのドロップ画像Idiとして制御ユニット14へ送出する。
【0065】
なお、i番目の培地ドロップ30aのサイズが大きい場合には、培地ドロップの像が低倍位相差画像Idiに収まらない可能性がある。そこで、本ステップの制御ユニット14は、培養容器30の平均ドロップサイズを閾値と比較し、平均ドロップサイズが閾値以上であった場合には、試料台47を試料台座標(xi’,yi’)の周辺でステップ状に移動させながら4枚の低倍位相差画像を取得するよう観察ユニット28へ指示を出し、観察ユニット28が取得した4枚の低倍位相差画像を繋ぎ合わせることにより、1枚のドロップ画像Idiを取得することが望ましい。
【0066】
さらに、本ステップの制御ユニット14は、その培地ドロップ画像Idiの中から受精卵30cの像を探索し、その受精卵30cを視野中心に配置した状態で高倍位相差画像を取得するよう観察ユニット28へ指示を出し、観察ユニット28が取得した高倍位相差画像を、i番目の培地ドロップ30aの卵画像として取得してもよい。
【0067】
そして、本ステップの制御ユニット14は、本ステップで取得した位相差画像を、i番目の培地ドロップの詳細画像としてモニタ56aへ表示する。
【0068】
ステップS111:制御ユニット14は、ステップS19で取得した詳細画像を、現在の日時及び現在のドロップ番号iに対応付けた上で、培養容器30の観察データとして記憶部14aへ記憶する。
【0069】
ステップS112:制御ユニット14は、ドロップ番号iが最終値(ここでは「8」)に達したか否かを判別し、達していなかった場合にはステップS113へ移行し、達していた場合にはステップS114へ移行する。
【0070】
ステップS113:制御ユニット14は、ドロップ番号iをインクリメントしてからステップS19へ戻る。
【0071】
ステップS114:制御ユニット14は、培養容器30をストッカー25へ収納するよう容器搬送機構27へ指示する。容器搬送機構27は、培養容器30をストッカー25へ収納する。
【0072】
次に、本実施形態の観察モードにおける制御ユニット14の動作を説明する。
【0073】
図11は、観察モードにおける制御ユニット14の動作フローチャートである。なお、観察モードは、登録モードの実行後に自動的に開始されるものとする。
【0074】
ステップS21:制御ユニット14は、培養容器30の管理データに書き込まれた観察スケジュールと現在日時とを比較して、培養容器30の観察開始時期が到来したか否かを判別する。観察開始時期が到来した場合にはステップS22に移行し、観察開始時期が到来していない場合には待機する。
【0075】
ステップS22:制御ユニット14は、培養容器30の搬送を容器搬送機構27に指示する。容器搬送機構27は、培養容器30をストッカー25から搬出して試料台47の所定位置に載置する。
【0076】
ステップS23:制御ユニット14は、ドロップ番号iを初期値「1」に設定する。
【0077】
ステップS24:制御ユニット14は、上述したステップS19と同様にi番目の培地ドロップ30aの詳細画像を取得し、それをモニタ56aへ表示する。
【0078】
ステップS25:制御ユニット14は、ステップS24で取得した詳細画像を、現在の日時及び現在のドロップ番号iに対応付けた上で、培養容器30の観察データとして記憶部14aへ記憶する。
【0079】
ステップS26:制御ユニット14は、ドロップ番号iが最終値(ここでは「8」)に達したか否かを判別し、達していなかった場合にはステップS27へ移行し、達していた場合にはステップS28へ移行する。
【0080】
ステップS27:制御ユニット14は、ドロップ番号iをインクリメントしてからステップS24へ戻る。
【0081】
ステップS28:制御ユニット14は、培養容器30をストッカー25へ収納するよう容器搬送機構27へ指示する。容器搬送機構27は、培養容器30をストッカー25へ収納する。
【0082】
ステップS29:制御ユニット14は、培養容器30の管理データに書き込まれた観察スケジュールと現在日時とを比較して、培養容器30の観察終了時期が到来したか否かを判別する。観察終了時期が到来した場合にはその旨をモニタ56aへ表示してからフローを終了し、観察終了時期が到来していない場合にはステップS21へ戻る。
【0083】
以上、本実施形態の観察ユニット28は、培養容器30の全体画像Iwholeを取得する際に、培地ドロップ30aよりも十分に微細な明暗パターンを有した面光源を採用する。よって、培地ドロップ30aが仮に無色であったとしても、全体画像Iwhole上で培地ドロップ30aの像は可視化される。
【0084】
したがって、本実施形態の画像処理部55は、その全体画像Iwholeからドロップ像を検出することが可能である。特に、本実施形態の画像処理部55は、パターンマッチング処理を全体画像Iwholeへ施すので、ドロップ像の検出を高確度で行うことができる。
【0085】
また、本実施形態の制御ユニット14は、画像処理部55がドロップ像の検出に失敗した場合には、面光源の明暗パターンのピッチを変更してから全体画像の取得及びドロップ像の検出を再度実行するので、ドロップ像を、そのサイズに依らず確実に検出することができる。
【0086】
また、本実施形態の制御ユニット14は、ドロップ像を強調するための画像処理(ここでは空間フィルタ処理の一種である分散フィルタ処理)をパターンマッチングの前に全体画像Iwholeへ施すので、パターンマッチングの確度をより高めることができる。
【0087】
また、本実施形態の観察ユニット28は、面光源の明暗パターンとしてストライプパターンを採用するので、画像処理部55は、ドロップ像の検出をシンプルな演算で確実に行うことが可能である。
【0088】
また、本実施形態の制御ユニット14は、ドロップ像の検出結果に応じて詳細画像の取得内容(試料台の配置先や位相差画像の取得手順など)を決定するので、詳細画像の取得を効率的に行うことができる。
【0089】
なお、本実施形態の面光源は、ストライプパターン状であったが、均一輝度の面光源に変更することも可能なので、本実施形態の観察ユニット28は、ストライプパターンの反映されていない培養容器30の全体画像(つまり、培養容器30の単なる透過観察画像)を取得することも可能である。よって、本実施形態の制御ユニット14は、上述したステップS12において全体画像Iwholeと透過観察画像との双方を取得し、上述したステップS17において他の管理データと共にその透過観察画像を記憶部14aへ記憶してもよい。
【0090】
また、本実施形態の制御ユニット14は、全体画像Iwholeの取得時にストライプ状の面光源を採用したが、明部と暗部とを繰り返し配置した他種の面光源を採用してもよい。例えば、図12に示すようなチェッカーフラッグ状の面光源や、図13に示すような格子状の面光源を採用してもよい。因みに、チェッカーフラッグ状の面光源を採用した場合の全体画像Iwholeの一例は、図14に示すとおりであり、格子状の面光源を採用した場合の全体画像Iwholeの一例は、図15に示すとおりとなる。何れの場合も、培地ドロップ30aの像を可視化することができる。但し、面光源の種類を変更する場合には、画像処理部55が予め記憶する基準パターンも変更する必要がある。
【0091】
また、本実施形態の画像処理部55は、パターンマッチングの前に全体画像Iwholeへ施す画像処理を分散フィルタ処理としたが、他種の空間フィルタ処理や、空間フィルタ処理以外の画像処理としてもよい。例えば、全体画像Iwholeを基準全体画像から減算する差分処理としてもよい。
【0092】
ここで、基準全体画像は、本装置の製造者又はユーザが予め行った測定(又はシミュレーション)によって取得されたものである。その測定(又はシミュレーション)では、培地ドロップの形成されていない基準培養容器と、面光源のストライプピッチが最大値に設定された本装置とを用意(想定)し、その装置に全体画像Iwholeを取得させ、その全体画像Iwholeを、基準全体画像とすればよい。
【0093】
但し、空間フィルタ処理の種類又は画像処理の種類を変更する場合には、画像処理部55が予め記憶する基準パターンも変更する必要がある。
【0094】
また、本実施形態の位相差観察用の顕微鏡は、位相差観察の観察倍率を2倍と4倍との間で切り換えたが、2倍と4倍と40倍の間で切り換えてもよい。因みに、40倍の観察倍率は、受精卵30cの画像を高精細に取得するのに適している。
【0095】
また、本実施形態では、培養容器30としてディッシュを使用したが、他種の培養容器を使用してもよい。何れの場合も、液滴の形成先(滴下先)が透明な部材でありさえすれば、本実施形態と同様の観察が可能である。なお、本明細書では文言「透明」を、「可視光に対して透明」の意味で使用した。
【0096】
また、本実施形態において、制御ユニット14の動作の一部又は全部は、インキュベータに外付けされたコンピュータによって実行されてもよい。また、本実施形態において、画像処理部55の動作の一部又は全部は、インキュベータに外付けされたコンピュータによって実行されてもよい。
【0097】
また、本実施形態では、本発明の観察装置を培養観察装置に適用したものを説明したが、本発明の観察装置は、培養観察装置以外の装置、例えば化学反応計測装置や液滴形成装置などにも適用することが可能である。
【符号の説明】
【0098】
11…インキュベータ,12…第1筐体,13…第2筐体,56…操作パネル,14…制御ユニット,28…観察ユニット,15…恒温室,16…正面開口,17…搬出入口,18…正面扉,17…搬出入口,19…自動扉19,30…培養容器,20…開口,47…試料台,51…第1照明部,52…第2照明部,53…顕微観察部,54…容器観察部,55…画像処理部,49…本体部分,61…対物レンズ,62…位相フィルタ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明な液滴の形成された透明な部材を、その液滴より微細な明暗パターンを有した面光源で照明する照明手段と、
前記面光源で照明された前記部材の透過像を撮像する撮像手段と、
前記撮像手段が前記撮像で取得した明暗画像のパターンに基づき、その明暗画像における前記液滴の像の形成領域を検出する演算手段と、
を備えたことを特徴とする観察装置。
【請求項2】
請求項1に記載の観察装置において、
前記演算手段は、
パターンマッチングにより前記検出を行う
ことを特徴とする観察装置。
【請求項3】
請求項2に記載の観察装置において、
前記検出に失敗した場合には、前記明暗パターンのピッチを変更してから前記撮像及び前記検出を再度実行させる繰り返し手段を更に備えた
ことを特徴とする観察装置。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載の観察装置において、
前記演算手段は、
前記液滴の像を強調するための画像処理を前記パターンマッチングの前に前記明暗画像へ施す
ことを特徴とする観察装置。
【請求項5】
請求項4に記載の観察装置において、
前記画像処理は、空間フィルタ処理である
ことを特徴とする観察装置。
【請求項6】
請求項4に記載の観察装置において、
前記画像処理は、前記明暗画像と、前記液滴が未形成である前記部材の明暗画像との間の差分処理である
ことを特徴とする観察装置。
【請求項7】
請求項2〜請求項6の何れか一項に記載の観察装置において、
前記明暗パターンは、ストライプパターンである
ことを特徴とする観察装置。
【請求項8】
請求項1〜請求項7の何れか一項に記載の観察装置と、
前記観察装置の観察対象となった前記部材の位相差顕微鏡画像を、その観察装置よりも狭い視野で取得する位相差顕微鏡と、
前記位相差顕微鏡の視野に対する前記部材の位置を前記検出の結果に応じて制御することにより、前記液滴を前記位相差顕微鏡の視野で補足する位置制御手段と、
前記観察装置及び前記位相差顕微鏡の観察対象である前記部材を収容する恒温室と、
を備えたことを特徴とする培養観察装置。
【請求項1】
透明な液滴の形成された透明な部材を、その液滴より微細な明暗パターンを有した面光源で照明する照明手段と、
前記面光源で照明された前記部材の透過像を撮像する撮像手段と、
前記撮像手段が前記撮像で取得した明暗画像のパターンに基づき、その明暗画像における前記液滴の像の形成領域を検出する演算手段と、
を備えたことを特徴とする観察装置。
【請求項2】
請求項1に記載の観察装置において、
前記演算手段は、
パターンマッチングにより前記検出を行う
ことを特徴とする観察装置。
【請求項3】
請求項2に記載の観察装置において、
前記検出に失敗した場合には、前記明暗パターンのピッチを変更してから前記撮像及び前記検出を再度実行させる繰り返し手段を更に備えた
ことを特徴とする観察装置。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載の観察装置において、
前記演算手段は、
前記液滴の像を強調するための画像処理を前記パターンマッチングの前に前記明暗画像へ施す
ことを特徴とする観察装置。
【請求項5】
請求項4に記載の観察装置において、
前記画像処理は、空間フィルタ処理である
ことを特徴とする観察装置。
【請求項6】
請求項4に記載の観察装置において、
前記画像処理は、前記明暗画像と、前記液滴が未形成である前記部材の明暗画像との間の差分処理である
ことを特徴とする観察装置。
【請求項7】
請求項2〜請求項6の何れか一項に記載の観察装置において、
前記明暗パターンは、ストライプパターンである
ことを特徴とする観察装置。
【請求項8】
請求項1〜請求項7の何れか一項に記載の観察装置と、
前記観察装置の観察対象となった前記部材の位相差顕微鏡画像を、その観察装置よりも狭い視野で取得する位相差顕微鏡と、
前記位相差顕微鏡の視野に対する前記部材の位置を前記検出の結果に応じて制御することにより、前記液滴を前記位相差顕微鏡の視野で補足する位置制御手段と、
前記観察装置及び前記位相差顕微鏡の観察対象である前記部材を収容する恒温室と、
を備えたことを特徴とする培養観察装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図11】
【図12】
【図13】
【図8】
【図9】
【図10】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図11】
【図12】
【図13】
【図8】
【図9】
【図10】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2011−127972(P2011−127972A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−285498(P2009−285498)
【出願日】平成21年12月16日(2009.12.16)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月16日(2009.12.16)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】
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