説明

角度をなす空洞を有する継手の使用方法

【課題】管要素を連結するにあたり継手にかかる曲げ、ねじれを吸収する。
【解決手段】一対の管要素を対向する端部において連結する方法には管継手が使用され、この管継手は対向する端部に接続部材72、74を有する互いに接続可能な一対の継手セグメント52を含む。接続部材はセグメントを互いに接近する方向へ引き寄せて、管要素と係合させるように締め付ける。各セグメントは管要素の溝に係合する、内方に向かってアーチ状をなすアーチ状面間に設けられた空洞58を有する。空洞は管要素の周りで周方向に延在する封止部材を収納する。角度をなす面66が接続部材に隣接して配置される。対向するセグメントの面は、互いに係合し、管要素に対して直交する軸を中心に両管継手セグメントを互いに反対の方向に回動させる。セグメントが回転すると、空洞が封止部材をねじることなく受け入れるように、空洞は軸に対して角度をなす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一対の管要素を終端同士において連結するための機械的な継手の使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
機械的な管継手は、例えば採鉱、石油採収および精製、化学製品製造、さらにはオフィスビル、倉庫、学校等で用いられる防火システムといった広範な産業分野で用いられる。機械的な継手は、比較的未熟な作業員が単純な工具を用いて流体搬送管網の組み立てが可能という点で、例えば溶接あるいはろう付けで管要素を封止する他の方法に比べてかなりの利点がある。「管要素」という用語は、本明細書において、何らかの管状品目あるいは管形状を有する構成要素を意味するのに用いられる。管要素には、素管、エルボ、キャップ、T継手といった管継手、さらには弁、レジューサ、ストレーナ、絞り弁、圧力調整器等の流体制御構成要素がある。
【0003】
図1は、従来技術よる機械的な管継手10の例を示す。継手10は、封止部材16と管要素18,20にわたって配置可能な2つの(あるいはそれより多くの)セグメント12,14を備える。各継手セグメント12,14は、管要素18,20をそれぞれ嵌合して終端どうし固定するアーチ状面22,24を有する。図1で示される例において、アーチ状面22は径方向内側に向けて突出し、管要素の終端にある溝26と嵌合する。他の例として、滑らかな終端、フレア終端、あるいは継手で嵌合される段部を有する管要素がある。
【0004】
封止部材16は、両方の管要素18,20と嵌合し、液密継手を固定する。封止部材16は、好ましくは、後壁34に取り付けられる一対の側壁30,32で規定される継手内にある空洞28内に配置される柔軟な弾性リングである。封止部材16は、継手セグメント12,14が引っ張られて管継手を形成する際にセグメントの側壁および後壁と接触することで圧迫されて管要素と嵌合する。
【0005】
図2,3で示されるように、継手セグメント12,14は、反対側の終端に配置され、角度をなす面36,38を有する場合もある。表面の勾配は各セグメントで互いに反対向きに配置される。2つのセグメントが管要素18,20にわたる場合のように、セグメントの表面が対向配置され、セグメントが引っ張られると、表面の摺動嵌合によって、管要素16,18の縦軸42に対して垂直の向きに配置される軸40周りで互いに相対的に反対方向にセグメントが回転する。セグメント12,14の相対的な回転によってアーチ状面22,24を管要素の溝26の側面と嵌合させ、全ての軸周りの継手、すなわち曲げおよびねじれに対して剛性を高めるとともに軸方向の膨張あるいは収縮を防ぐことから、この回転は望ましい。
【0006】
本明細書で記述される角度をなす面に加えて、特許文献1で開示される三日月状の溝内にある三日月状の突起といった継手セグメントの相対回転、あるいは特許文献2で開示される取り付けフランジの偏り開口部の利用を行う他の手段もある。
【0007】
継手セグメント12,14を接続するために、各セグメントは、セグメントの反対側の終端に配置された接続部材を有する。図2,3で示す例において、接続部材は、セグメントから外側に延在するラグ形状の突起44を備える。突起は、締め付けされる際にセグメント12,14を互いに引っ張るボルト48、ナット50といった締め付け具を受け入れる開口部46を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第5246257号明細書
【特許文献2】米国特許第4861075号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特定の状況において、軸40周りで継手セグメントを回転させることで継手の剛性を高めるのは有利であるが、このようにセグメントが回転すると、側壁30,32との嵌合によって封止部材16が変形する。セグメントの回転によって封止部材の形状をゆがめないことが好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、一対の管要素を対向する終端同士で固定する方法に関する。この方法においては、端部同士が互いに取り付けられる一対の管継手セグメントよりなる管継手が使用される。各管継手セグメントはその内周面に沿って延びる空洞を有する。空洞は、管継手セグメントの両端間に延びる第2の軸と直交する第1の軸を中心に回動した位置に配置されるように角度をなしている。空洞内にはシールが配置されている。このシールは第1の軸と第2の軸を含む平面を画定する。
【0011】
前記方法は、
(a)両管要素の端部を両管継手セグメントの間に位置決めする工程と、
(b)両管継手セグメントを管要素に向かい互いに接近する方向に引き寄せる工程と、
(c)両管継手セグメント第1の軸を中心にシールに対して回動させ、空洞をシールとほぼ平行に配向させる工程と
からなる。
【0012】
両管継手セグメントは互いに反対方向に回動される。前記位置決めする工程は、管継手セグメントが互いの端部同士が対向して離間した状態で連結されているときに、両管要素の端部を管継手セグメント間に挿入する工程を含む。両管継手セグメントを互いに接近する方向に引き寄せる工程は、管継手セグメントの端部に位置される接続部材を締め付ける工程に影響される。両管継手セグメントを回動させる工程は、管継手セグメントの端部に設けた角度をなす面を互いに摺動するように接触させる工程の影響をうける。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】従来技術による管継手を用いる管。継手の断面図。
【図2】従来技術による管継手の分解斜視図。
【図3】図2で示される管継手の分解側面図。
【図4】本発明よる管継手セグメントの正面図。
【図5】図4で示される管継手セグメントの底面図。
【図6】本発明よる管継手セグメントの他の実施形態の正面図。
【図7】図6で示される管継手セグメントの底面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図4,5は、本発明による管継手セグメント52を示す。セグメント52は、管要素の外面と接続するように適応されるアーチ状面54,56を有する。空洞58はアーチ状面間に配置される。空洞は、側壁60,62と、側壁に取り付けられる後壁64とで規定される。角度をなす面66,68は、継手セグメントの各終端に配置される。面66,68は、逆の勾配を有し、他のセグメント上の同様の面と対向して嵌合すると、継手によって
連結されている管要素の縦軸に対して実質的に垂直な軸70周りで互いに相対的に反対方向で回転させる。接続部材72,74は、継手セグメント52の反対側の終端に配置される。この例において、接続部材は、管要素にわたって2つの継手セグメントを接続するためのボルトおよびナットといった締め付け具を受け入れるように適応される開口部76を有するラグを備える。
【0015】
図4,5で示される実施形態において、空洞58は、接続部材70,72の間に延伸する基準線80に対して回転軸70周りで測定される回転角78の角度方向を有する。空洞58の回転角78は、基準線80に平行な線81に対する側壁60,62の角度82によって規定される。回転角78は、実際的な設計で4°未満であることが好ましく、継手の大きさおよび継手セグメントの回転角度に応じて、1/4°と4°との間の範囲を取る場合もある。回転角78は、他の継手セグメントと嵌合する際の継手セグメント52の相対回転の方向に対して逆方向に向けられる。こういった回転角の配置によって、管要素の縦軸に対して実質的に垂直な(すなわち、基準線80と同列の)封止部材は、継手セグメントが軸70周りで回転する際の側壁60,62と後壁64との相互作用でねじれないように、継手セグメントの回転を相殺する。このように、継手セグメントは管要素および封止部材に対して回転するが、封止部材が空洞内で実質的に直接受け入れられ、回転の結果、側壁の1つと強制的に接触させられてねじれないように、空洞58には角度が付けられる。
【0016】
継手セグメント52が、図1,2で示されるものと同様の方式で封止部材および管要素を取り巻いて互いに取り付けられる場合、封止部材を嵌合して上述のとおり角度を付けて設けられる空洞の側壁によって最初に反対方向にねじられる。セグメントが管要素に向けて動かされると、アーチ状面54,56は、セグメントの最初のねじれのために、管要素にある溝と当初同列にならない場合もある。結果として、アーチ状面が適切に溝と嵌合しない場合もある。このようなずれの危険性を減らすために、管要素にある溝と最初に接触すると考えられるアーチ状面54,56の外領域83に面取りを行うのが有利である。
【0017】
図6,7で示される他の継手セグメントの実施形態84において、空洞86は複数の部分に分割される。この例において、セグメント84の反対側の終端に配置される2つの終端部分88,90と、終端部分の間に配置される中間部分92という3つの部分がある。3つの部分がある場合、各終端部分が約45°の角度94をなし、中間部分が約90°の角度96をなすのが有利である。他の角度分布も同様に可能である。
【0018】
空洞86の終端部分88,90は、その角度方向によって中間部分92から区別される。好ましくは、終端部分88,90が、約6°未満、さらに好ましくは、約1/4°と約6°との間の各回転角98,100を有する一方、中間部分92は本明細書で規定される角度をなさない。終端部分の回転角98,100が同じ大きさおよび勾配を有するのが好ましい。
【0019】
継手セグメントは、好ましくは延性鋳鉄から鋳造されるが、プラスチックで成型されるか、あるいは金属ビレットから機械加工することも可能である。鋳造後に機械加工するよりも、セグメントの鋳造中に空洞の角度方向を与えるのが有利である。複数部分を有する構造は、継手セグメントの鋳造のためのパターンを準備する点で有利である。これは、管要素の形状に一致させるために変形させる継手にとって特に有利である。軸70周りで回転中のセグメントの直線方向の動きが各終端で最大になることから、終端部分のみに角度を付け、影響を受けない中間部分をそのままにしておくことも可能である。中間部分の動きが比較的限定されていることで、回転軸からさらに離れていて大きな距離を移動する終端部分よりも封止部材へのねじれ効果が少なくなる傾向がある。
【0020】
本明細書で示される継手の例は、2つのセグメントと、セグメントの相対的な回転をもたらすために角度を付けて設けられる面とを有するが、セグメントが継手面から離れて互いに相対的に回転する何らかのスタイルの継手で封止部材の変形を防ぐために角度を付けた空洞も適用可能である。さらなる例として、4つ以上のセグメントと、相対回転を行うさまざまな手段を有する継手とを有する継手もある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の管要素を、互いに対向する端部において固定する方法であって、
内周面に沿って延び、かつ両端間に延びる第2の軸に直交する第1の軸を中心とする回動軌跡上の位置に配向するように角度をなし、さらには第1の軸及び第2の軸を含む平面を画定するシールを収容する空洞をそれぞれが備える一対の管継手セグメントにて構成される管継手を使用する工程と、
前記一対の管要素の互いに対向する部分を両管継手セグメント間に位置決めする工程と、
両管継手セグメントを管要素に向かい互いに接近する方向に引き寄せる工程と、
管継手セグメントを互いに接近する方向へ引っ張って前記配管要素の外面と嵌合させる工程と、
前記管継手セグメントを第1の軸を中心にシールに対して回動させ、空洞をシールとほぼ平行に配向させる工程とを含む方法。
【請求項2】
両管継手セグメントを互いに反対の方向に回動させる工程を有する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記位置決めする工程は、管継手セグメントが互いの端部同士が対向して離間した状態で連結されているときに、両管要素の端部を管継手セグメント間に挿入する工程を含む請求項1に記載の方法。
【請求項4】
両管継手セグメントを互いに接近する方向へ引き寄せる工程は、管継手セグメントの両端に配置した接続部材を締める工程を含む請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記管継手セグメントを回動させる工程は、管継手セグメントの端部に設けた角度をなす面を互いに摺動するように接触させる工程を含む請求項1に記載の方法。
【請求項6】
管継手を一対の管継手セグメントにより構成し、各管継手セグメントは同管継手セグメントの内周面に沿って延び、かつ管継手セグメントの両端間に延びる第2の軸に直交する第1の軸を中心とする回動軌跡上の位置に配向するように角度をなし、さらには第1の軸及び第2の軸を含む平面を画定するシールを収容する空洞を備えており、同管継手により一対の管要素を、互いに対向する端部において固定する方法であって、
前記一対の管要素の互いに対向する部分を両管継手セグメント間に位置決めする工程と、
両管継手セグメントを管要素に向かい互いに接近する方向に引き寄せる工程と、
管継手セグメントを互いに接近する方向へ引っ張って前記配管要素の外面と嵌合させる工程と、
前記管継手セグメントを第1の軸を中心にシールに対して回動させ、空洞をシールとほぼ平行に配向させる工程とを含む方法。
【請求項7】
両管継手セグメントを互いに反対の方向に回動させる工程を有する請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記位置決めする工程は、管継手セグメントが互いの端部同士が対向して離間した状態で連結されているときに、両管要素の端部を管継手セグメント間に挿入する工程を含む請求項6に記載の方法。
【請求項9】
両管継手セグメントを互いに接近する方向へ引き寄せる工程は、管継手セグメントの両端に配置した接続部材を締める工程を含む請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記管継手セグメントを回動させる工程は、管継手セグメントの端部に設けた角度をなす面を互いに摺動するように接触させる工程を含む請求項6に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−43236(P2011−43236A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−190872(P2010−190872)
【出願日】平成22年8月27日(2010.8.27)
【分割の表示】特願2008−537909(P2008−537909)の分割
【原出願日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【出願人】(503217015)ヴィクトリック カンパニー (19)
【Fターム(参考)】