説明

角速度センサ及び角速度センサを備えた電子機器

【課題】ジャイロ素子の姿勢を反転させた場合と同等に、反転姿勢の角速度を検出できると共に、構成が単純で、重量及び製造コストが小さく、メンテナンス性が良い角速度センサ、及び、該角速度センサを備えた電子機器を提供すること。
【解決手段】面状のエレメント部3と、エレメント部3の中心周りの方向に配置された複数の電極4a〜4dと、所定の電極に交流電圧を印加してエレメント部3を一次振動させる交流電源11と、所定の電極に発生する電気信号を検出する検出手段13と、交流電源11及び検出手段13の電極4a〜4dに対する接続状態を切り替える切替手段15と、検出手段13が検出する電気信号の大きさの変化に基づいて角速度を検出する演算手段16とを備えた角速度センサを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、角速度センサ、及び、角速度センサを備えた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
角速度センサが検出する角速度には、バイアス成分が含まれている。バイアス成分は、零点出力、又は、オフセット等と呼ばれ、角速度センサが備えるジャイロ素子の非対称性、回路の特性、温度影響等の様々な要因により生じるものである。このようなバイアス成分が含まれる角速度センサが検出する角速度Yと、真の角速度X(角速度の検出対象となる回転運動そのものの角速度)とは、次式(1)’で示される関係を有する。
Y=AX+B(A:係数、B:バイアス成分)…(1)’
B=B1+B+B+・・+B(B1〜B:各種要因のバイアス成分)
【0003】
角速度センサが検出した角速度Yから真の角速度Xを算出するために、次のような方法が用いられる場合がある。この方法は、ジャイロ素子101が非反転姿勢(図14(a)参照)のときに検出された角速度Y1と、ジャイロ素子101が反転姿勢(図14(b)参照)であり、且つ、ジャイロ素子101の真の角速度が角速度Y1の検出時と同一であるときに検出された角速度Y2とを用いて真の角速度を算出する方法である。
【0004】
前述の角速度Y1と真の角速度Xとの関係は、次式(2)’及び図14(c)で表される。
Y1=AX+B…(2)’(B:非反転姿勢のときのバイアス成分)
一方、前述の角速度Y2と真の角速度Xとの関係は、次式(3)’及び図14(d)で表される。
Y2=−AX+B…(3)’(B:反転姿勢のときのバイアス成分)
【0005】
バイアス成分は、ジャイロ素子101の物理的反転によって変化しないとみなすことができるため、式(2)’のBと式(3)’のBは等しく、式(2)’から(3)’を引き、Xについて解くと、次式(4)’が算出される。
X=(Y1−Y2)/2A…(4)’
【0006】
しかしながら、真の角速度を前述の方法で算出するためには、非反転姿勢と反転姿勢とのときの角速度が必要なため、例えば、特許文献1に記載されているようなジャイロ素子の反転機構を角速度センサに設ける必要がある。しかし、このような反転機構を角速度センサに設けると、角速度センサは、構造が複雑に、重量及び製造コストが大きく、メンテナンス性が低くなる。
【0007】
一方、ジャイロ素子の反転機構を用いることなく、ジャイロ素子が反転姿勢であるときの角速度を検出するジャイロセンサが特許文献2に開示されている。
【0008】
特許文献2のジャイロセンサは、ジャイロ素子が非反転姿勢のときの角速度の検出極性を反転することによって、反転姿勢のときの角速度を検出するものである。検出極性が反転した角速度においては、当該角速度に含まれるバイアス成分のうち、電気回路の構成によって生じるバイアス成分が、ジャイロ素子の姿勢を反転したときと同様の大きさである。しかし、検出極性を反転してもジャイロ素子の姿勢が反転しないため、ジャイロ素子を構成する部品間の位置関係は反転しない。このため、検出極性が反転した角速度に含まれるバイアス成分の一部がジャイロ素子の姿勢が反転したときと異なるため、特許文献2の技術によって検出される反転姿勢のときの角速度Y2に含まれるバイアス成分は、非反転姿勢のときの角速度Y1に含まれるバイアス成分と異なる。このように、角速度Y1及びY2に含まれるバイアス成分が異なると、上式(2)’及び(3)’から上式(4)’を算出できない。よって、特許文献2の技術を用いて、前述した方法によって、真の角速度Xを算出することができない。
【特許文献1】特開2006−177909号公報
【特許文献2】特開2006−64613号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、構成が単純で、重量及び製造コストが小さく、メンテナンス性が良いと共に、ジャイロ素子の姿勢を反転させた場合と同等に、反転姿勢の角速度を検出できる角速度センサ、及び、該角速度センサを備えた電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、第1の手段として、面状のエレメント部と、前記エレメント部の中心周りの方向に沿って前記エレメント部上に配置、もしくは前記エレメント部に対して対向配置された一次電極及び二次電極とを備え、前記一次電極は、前記エレメント部の中心周りの方向に(360°/n(nは、2以上の整数))の間隔で配置され、前記二次電極は、前記各一次電極から前記エレメント部の中心周りの方向に(360°×1/4n)離れた位置に配置され、前記エレメント部と前記一次電極又は前記二次電極との間に生じる静電力又は電磁力によって、平面内cosnθモードの一次振動を前記エレメント部に発生させる角速度センサであって、前記一次電極と前記二次電極との何れか一方に接続され、接続された電極に交流電圧を印加して平面内cosnθモードの一次振動を前記エレメント部に発生させる交流電源と、前記一次電極と前記二次電極との何れか他方に接続され、接続された電極に発生する電気信号の大きさを検出する検出手段と、前記一次電極及び前記二次電極に対する、前記交流電源及び前記検出手段の接続状態を、前記交流電源が前記一次電極に接続され、前記検出手段が前記二次電極に接続された第1状態と、前記交流電源が前記二次電極に接続され、前記検出手段が前記一次電極に接続された第2状態とに切り替える切替手段と、前記検出手段が検出する電気信号の大きさの変化に基づいて、前記第1状態及び前記第2状態における角速度を演算する演算手段とを備えたことを特徴とする角速度センサを提供する。
【0011】
第1の手段に係る角速度センサは、以下のような演算によって、第1状態及び第2状態のときの角速度を検出する。交流電源は、自身が接続された電極に交流電圧を印加して、平面内cosnθモードの一次振動をエレメント部に発生させる。エレメント部が一次振動をしているときに、エレメント部の法線方向周りの回転運動をエレメント部が行うと、該回転運動の角速度に応じた大きさの二次振動がエレメント部に発生する。この二次振動は、最大伸縮方向が、一次振動と(360°×1/4n)異なる平面内cosnθモードの振動である。検出手段は、第1状態及び第2状態の何れのときも、交流電源が接続された電極からエレメント部の中心周りの方向に(360°×1/4n)離れた位置に配置された電極に接続されている。よって、第1状態及び第2状態の何れのときも、検出手段が接続された電極には、二次振動に応じた大きさの電気信号が発生する。第1の手段に係る角速度センサは、検出手段が検出した電気信号の大きさに基づいて角速度を演算する。よって、第1の手段に係る角速度センサは、第1状態及び第2状態のときの角速度を検出することができる。
【0012】
また、第1の手段に係る角速度センサは、一次電極及び二次電極に対する交流電源及び検出手段の接続状態を、第1状態から第2状態又は第2状態から第1状態に切り替えることで、交流電源及び検出手段に接続された電極の位置関係を、エレメント部及び一〜二次電極の姿勢を物理的に反転したきと同一の関係にすることができる。よって、第1の手段に係る角速度センサは、エレメント部及び一〜二次電極の姿勢を物理的に反転しなくても、物理的に反転したときと同等に、反転姿勢の角速度を検出することができる。このように、第1の手段に係る角速度センサは、反転機構を用いなくても、反転姿勢のときの角速度を検出することができるため、物理的に反転したときと同等に、反転姿勢の角速度を検出することができると共に、構成が単純で、重量及び製造コストが小さく、メンテナンス性が良い。
【0013】
本発明は、第2の手段として、面状のエレメント部と、前記エレメント部の中心周りの方向に沿って前記エレメント部上に配置、もしくは前記エレメント部に対して対向配置された一次電極及び二次電極とを備え、前記一次電極は、前記エレメント部の中心周りの方向に360°/n間隔で位置するn個の位置のうち、1〜(n−1)個の位置に配置され、前記二次電極は、前記各一次電極から前記エレメント部の中心周りの方向に(360°×1/4n)離れた位置に配置され、前記エレメント部と前記一次電極又は前記二次電極との間に生じる静電力又は電磁力によって、平面内cosnθモードの一次振動を前記エレメント部に発生させる角速度センサであって、前記一次電極と前記二次電極との何れか一方に接続され、接続された電極に交流電圧を印加して、平面内cosnθモードの固有振動数で平面内cosnθモードの一次振動を前記エレメント部に発生させる交流電源と、前記一次電極と前記二次電極との何れか他方に接続され、接続された電極に発生する電気信号の大きさを検出する検出手段と、前記一次電極及び前記二次電極に対する、前記交流電源及び前記検出手段の接続状態を、前記交流電源が前記一次電極に接続され、前記検出手段が前記二次電極に接続された第1状態と、前記交流電源が前記二次電極に接続され、前記検出手段が前記一次電極に接続された第2状態とに切り替える切替手段と、前記検出手段が検出する電気信号の大きさの変化に基づいて、前記第1状態及び前記第2状態における角速度を演算する演算手段とを備えたことを特徴とする角速度センサを提供する。
【0014】
第2の手段に係る角速度センサでは、一〜二次電極が配置される位置がnよりも少ない。第2の手段に係る角速度センサは、nよりも少ない位置に配置された一次電極又は二次電極に交流電圧を印加して、平面内cosnθモードの固有振動数でエレメント部を振動させることで、エレメント部に平面内cosnθモードの一次振動を発生させる。このように、第2の手段に係る角速度センサにおいても、平面内cosnθモードの一次振動をエレメント部に発生させることができるので、第2の手段に係る角速度センサは、第1の手段に係る角速度センサと同様に、角速度を検出することができる。また、第2の手段に係る角速度センサは、第1の手段に係る角速度センサと同様に、一次電極及び二次電極に対する交流電源及び検出手段の接続状態を切り替えることで、交流電源及び検出手段に接続された電極の位置関係を、エレメント部及び一〜二次電極の姿勢を物理的に反転したきと同一の関係にすることができる。よって、第2の手段に係る角速度センサは、第1の手段に係る角速度センサと同様に、反転機構を用いなくても、反転姿勢のときの角速度を検出することができるため、構成が単純で、重量及び製造コストが小さく、メンテナンス性が良い。
【0015】
本発明は、第3の手段として、面状のエレメント部と、前記エレメント部の中心周りの方向に沿って、前記エレメント部上に配置、もしくは前記エレメント部に対して対向配置された一次電極、二次電極、三次電極及び四次電極とを備え、前記一次電極は、前記エレメント部の中心周りの方向に(360°/n(nは、2以上の整数))の間隔で配置され、前記二次電極は、前記各一次電極から前記エレメント部の中心周りの方向に(360°×1/4n)離れた位置に配置され、前記三次電極は、前記各一次電極から前記エレメント部の中心周りの方向に(360°×2/4n)離れた位置に配置され、前記四次電極は、前記各一次電極から前記エレメント部の中心周りの方向に(360°×3/4n)離れた位置に配置され、前記エレメント部と前記一〜四次電極の何れか1つとの間に生じる静電力又は電磁力によって、平面内cosnθモードの一次振動を前記エレメント部に発生させる角速度センサであって、接続された電極に第1交流電圧を印加して、平面内cosnθモードの一次振動を前記エレメント部に発生させる第1交流電源と、接続された電極に発生する電気信号の大きさの変化を検出して、前記第1交流電圧の大きさを制御する第1検出手段と、接続された電極に発生する電気信号の大きさの変化を検出する第2検出手段と、前記第2検出手段によって検出された電気信号の大きさの変化を打ち消す第2交流電圧を、接続された電極に印加する第2交流電源と、前記一〜四次電極に対する前記第1交流電源、前記第1検出手段、前記第2検出手段及び前記第2交流電源の接続状態を、下記第1状態と下記第2状態とに切り替える切替手段と、前記第2交流電圧に基づいて、前記第1状態及び前記第2状態における角速度を演算する演算手段とを備えたことを特徴とする角速度センサを提供する。
前記第1状態は、
前記エレメント部の中心周りの一方向に、前記第1交流電源が接続された電極、前記第2交流電源が接続された電極、前記第1検出手段が接続された電極、前記第2検出手段が接続された電極が、この順で位置する状態である。
前記第2状態は、
前記エレメント部の中心周りの他方向に、前記第1交流電源が接続された電極、前記第2交流電源が接続された電極、前記第1検出手段が接続された電極、前記第2検出手段が接続された電極が、この順で位置する状態である。
【0016】
第3の手段に係る角速度センサは、第1交流電源(第1の手段及び第2の手段に係る角速度センサの交流電源に相当する)、第1検出手段、第2検出手段(第1の手段及び第2の手段に係る角速度センサの検出手段に相当する)及び第2交流電源を備える。第3の手段に係る角速度センサは、第2検出手段によって検出される電気信号の大きさの変化を打ち消す第2交流電圧が第2交流電源によって印加される。即ち、第3の手段に係る角速度センサは、二次振動の大きさに応じた第2交流電圧を印加することで、発生した二次振動を打ち消す。第2交流電源は、第1状態及び第2状態の何れのときも、第1交流電源が接続された電極からエレメント部の中心周りの方向に(360°×1/4n)離れた位置に配置された電極に接続されている。前述のように、二次振動は、最大伸縮方向が、一次振動と(360°×1/4n)異なる平面内cosnθモードの振動であるため、第2交流電源が接続された電極とエレメント部との距離は、二次振動に応じて変動する。よって、第2交流電源が接続された電極に第2交流電圧を印加することで、発生した二次振動を打ち消すことができる。このように、発生した二次振動を打ち消すことで、発生する二次振動の大きさが、エレメント部の法線方向周り回転運動の角速度に応じた大きさからずれ難くされている。更に、第3の手段に係る角速度センサの第1検出手段は、第1状態及び第2状態の何れのときも、第1交流電源が接続された電極からエレメント部の中心周りの方向に(360°×2/4n)離れた位置に配置された電極に接続されている。前述のように、一次振動は、平面内cosnθモードの振動であるため、第1検出手段が接続された電極には、一次振動に応じた大きさの電気信号が発生する。第1検出手段は、接続された電極に発生する電気信号の大きさの変化に基づいて、第1交流電圧の大きさを制御する。よって、第3の手段に係る角速度センサは、一次振動の振動状態が一定を保つように、一次振動をフィードバック制御することができる。以上のように、第3の手段に係る角速度センサは、第2検出手段によって検出された電気信号の大きさの変化を打ち消し、且つ、一次振動をフィードバック制御することができるため、角速度の検出精度が高い。
【0017】
また、第3の手段に係る角速度センサは、一〜四次電極に対する第1交流電源、第1検出手段、第2検出手段及び第2交流電源の接続状態を、第1状態から第2状態又は第2状態から第1状態に切り替えることで、第1交流電源、第1検出手段、第2検出手段及び第2交流電源に接続された電極の位置関係を、エレメント部及び一〜四次電極の姿勢を物理的に反転したきと同一の関係にすることができる。よって、第3の手段に係る角速度センサは、第1の手段に係る角速度センサと同様に、反転機構を用いなくても、反転姿勢のときの角速度を検出することができるため、構成が単純で、重量及び製造コストが小さく、メンテナンス性が良い。
【0018】
本発明は、第4の手段として、面状のエレメント部と、前記エレメント部の中心周りの方向に沿って前記エレメント部上に配置、もしくは前記エレメント部に対して対向配置された一次電極、二次電極、三次電極及び四次電極とを備え、前記一次電極は、前記エレメント部の中心周りの方向に360°/n間隔で位置するn個の位置のうち、1〜(n−1)個の位置に配置され、前記二次電極は、前記各一次電極から前記エレメント部の中心周りの方向に(360°×1/4n)離れた位置に配置され、前記三次電極は、前記各一次電極から前記エレメント部の中心周りの方向に(360°×2/4n)離れた位置に配置され、前記四次電極は、前記各一次電極から前記エレメント部の中心周りの方向に(360°×3/4n)離れた位置に配置され、前記エレメント部と前記一〜四次電極の何れか1つとの間に生じる静電力又は電磁力によって、平面内cosnθモードの一次振動を前記エレメント部に発生させる角速度センサであって、接続された電極に第1交流電圧を印加して、平面内cosnθモードの固有振動数で平面内cosnθモードの振動を前記エレメント部に発生させる第1交流電源と、接続された電極に発生する電気信号の大きさの変化を検出して、前記第1交流電圧の大きさを制御する第1検出手段と、接続された電極に発生する電気信号の大きさの変化を検出する第2検出手段と、前記第2検出手段によって検出された電気信号の大きさの変化を打ち消す第2交流電圧を、接続された電極に印加する第2交流電源と、前記一〜四次電極に対する前記第1交流電源、前記第1検出手段、前記第2検出手段及び前記第2交流電源の接続状態を、下記第1状態と下記第2状態とに切り替える切替手段と、前記第2交流電圧に基づいて、前記第1状態及び前記第2状態における角速度を演算する演算手段とを備えたことを特徴とする角速度センサを提供する。
前記第1状態は、
前記エレメント部の中心周りの一方向に、前記第1交流電源が接続された電極、前記第2交流電源が接続された電極、前記第1検出手段が接続された電極、前記第2検出手段が接続された電極が、この順で位置する状態である。
前記第2状態は、
前記エレメント部の中心周りの他方向に、前記第1交流電源が接続された電極、前記第2交流電源が接続された電極、前記第1検出手段が接続された電極、前記第2検出手段が接続された電極が、この順で位置する状態である。
【0019】
第4の手段に係る角速度センサは、第2の手段に係る角速度センサと同様に、一〜四次電極が配置される位置がnよりも少い。第4の手段に係る角速度センサは、第2の手段に係る角速度センサと同様に、第1交流電源が接続された電極に第1交流電圧を印加して、平面内cosnθモードの固有振動数でエレメント部を振動させることで、エレメント部に平面内cosnθモードの一次振動を発生させる。また、第4の手段に係る角速度センサは、第2交流電源が接続された電極に第2交流電圧を印加して、平面内cosnθモードの固有振動数でエレメント部を振動させることで、エレメント部に生じる二次振動を打ち消す。このように、第4の手段に係る角速度センサは、一次振動を発生させ、且つ、二次振動を打ち消すことができるので、第3の手段に係る角速度センサと同様に、角速度を検出することができる。また、第4の手段に係る角速度センサは、第3の手段に係る角速度センサと同様に、一〜四次電極に対する第1交流電源等の接続状態を切り替えることで、第1交流電源等に接続された電極の位置関係を、エレメント部及び一〜四次電極の姿勢を物理的に反転したきと同一の関係にすることができる。よって、第4の手段に係る角速度センサは、第3の手段に係る角速度センサと同様に、反転機構を用いなくても、反転姿勢のときの角速度を検出することができるため、構成が単純で、重量及び製造コストが小さく、メンテナンス性が良い。
【0020】
第1〜4の手段に係る角速度センサのエレメント部は、例えば、リング状に形成することができる。
【0021】
本発明は、第5の手段として、面状のエレメント部と、前記エレメント部の中心周りの方向に沿って前記エレメント部上に配置、もしくは前記エレメント部に対して対向配置された一次電極及び二次電極とを備え、前記一次電極は、前記エレメント部の中心周りの方向に180°離れた2つの位置のうち少なくとも1つに配置され、前記二次電極は、前記各一次電極から前記エレメント部の中心周りの方向に90°離れた位置に配置され、前記エレメント部と前記一次電極又は前記二次電極との間に生じる静電力又は電磁力によって、平面内cosnθモードの一次振動を前記エレメント部に発生させる角速度センサであって、前記一次電極と前記二次電極との何れか一方に接続され、接続された電極に交流電圧を印加して、前記エレメント部が含まれる平面内において、当該接続された電極と前記エレメント部の中心とを結ぶ線分の方向に前記エレメント部を一次振動させる交流電源と、前記一次電極と前記二次電極との何れか他方に接続され、接続された電極に発生する電気信号の大きさを検出する検出手段と、前記一次電極及び前記二次電極に対する、前記交流電源及び前記検出手段の接続状態を、前記交流電源が前記一次電極に接続され、前記検出手段が前記二次電極に接続された第1状態と、前記交流電源が前記二次電極に接続され、前記検出手段が前記一次電極に接続された第2状態とに切り替える切替手段と、前記検出手段が検出する電気信号の大きさの変化に基づいて、前記第1状態及び前記第2状態における角速度を演算する演算手段とを備えたことを特徴とする角速度センサを提供する。
【0022】
第5の手段に係る角速度センサにおいて、前記エレメント部が、一次振動しているときに、エレメント部の法線方向周りの回転運動をエレメント部が行うと、該回転運動の角速度に応じた大きさの二次振動がエレメント部に生じる。この二次振動の振動方向は、エレメント部が含まれる平面内であり、且つ、振動方向が一次振動に対して直交方向の振動である。検出手段は、第1状態及び第2状態の何れのときも、交流電源が接続された電極からエレメント部の中心周りの方向に90°離れた位置に配置された電極に接続されている。よって、第1状態及び第2状態の何れのときも、検出手段が接続された電極には、二次振動に応じた大きさの電気信号が発生する。第5の手段に係る角速度センサは、検出手段が検出した電気信号の大きさに基づいて角速度を検出する。よって、第5の手段に係る角速度センサは、第1状態及び第2状態のときの角速度を検出することができる。また、第5の手段に係る角速度センサは、一〜二次電極に対する、交流電源及び検出手段の接続状態を切り替えることで、交流電源及び検出手段に接続された電極の位置関係を、エレメント部及び一〜二次電極の姿勢を物理的に反転したきと同一の関係にすることができる。よって、第5の手段に係る角速度センサは、第1の手段に係る角速度センサと同様に、反転機構を用いなくても、反転姿勢のときの角速度を検出することができるため、構成が単純で、重量及び製造コストが小さく、メンテナンス性が良い。
【0023】
また、第1〜5の手段に係る角速度センサの好ましい1つの構成として、前記演算手段は、前記第1状態及び前記第2状態における角速度に基づいて、第1状態及び第2状態において演算した角速度に含まれるバイアス成分を算出する構成を挙げることができる。
【0024】
バイアス成分を算出する具体的な構成として、前記第1状態において前記演算手段が演算した角速度をy1、前記第2状態において前記演算手段が演算した角速度をy2、前記バイアス成分をbとしたとき、前記演算手段は、次式(1)を用いて前記バイアス成分bを算出する構成を挙げることができる。
=(y1+y2)/2…(1)
【0025】
また、好ましい構成として、前記演算手段は、演算した角速度を前記バイアス成分を用いて補正することにより、角速度補正値を算出する構成を挙げることができる。
【0026】
かかる好ましい構成によれば、バイアス成分が除かれた角速度に基づいて角速度補正値が算出されるので、真の角速度(角速度の検出対象となる回転運動そのものの角速度)に近い値を有する角速度補正値が算出される。
【0027】
また、第1〜5の手段に係る角速度センサの好ましい1つの他の構成として、前記第1状態において前記演算手段が演算した角速度をy1、前記第2状態において前記演算手段が演算した角速度をy2、前記角速度補正値をxとしたとき、前記演算手段は、次式(2)を用いて前記角速度補正値を算出する構成を挙げることができる。
x=(y1−y2)/2a…(2)(a:係数)
【0028】
上式(2)によれば、バイアス成分に影響されない角速度補正値が算出されるため、かかる好ましい構成によれば、真の角速度に近い値を有する角速度補正値を算出することができる。
【0029】
また、本発明は、前述の角速度センサを備えた電子機器を提供する。
【発明の効果】
【0030】
本発明は、構成が単純で、重量及び製造コストが小さく、メンテナンス性が良いと共に、ジャイロ素子の姿勢を反転させた場合と同等に、反転姿勢の角速度を検出できる角速度センサ、及び、該角速度センサを備えた電子機器を提供することを目的とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
(実施形態1)
図1は、本実施形態に係る角速度センサ1の概略構成図であり、図1(a)は角速度センサ1が備えるジャイロ素子2の平面図、及び、角速度センサ1の機能ブロック図を示し、図1(b)は図1(a)のA−A端面図を示す。図1に示すように、角速度センサ1は、ジャイロ素子2、第1交流電源11、第1検出手段12、第2検出手段13、第2交流電源14、切替手段15及び演算手段16を備える。
【0032】
ジャイロ素子2は、エレメント部及び一〜四次電極を備える。このジャイロ素子2の具体的な構成として、例えば、図1(a)及び(b)に示すように、エレメント部3、一〜四次電極4a〜4d、サポート部5及び枠体6を備えた構成を挙げることができる。このような構成のジャイロ素子2は、例えば、ガラス基板などの絶縁基板2aと半導体基板2bとを接合して形成することができる。図1(a)に示すように、半導体基板2bには、エレメント部3、一〜四次電極4a〜4d、サポート部5及び枠体6を形成することができる。エレメント部3、一〜四次電極4a〜4d、サポート部5及び枠体6は、半導体基板2bをMEMS技術(Micro Electro Mechanical System)を用いて加工することで形成することができる。
【0033】
図1(a)に示すように、エレメント部3は、半導体基板2bの中央部にリング状に形成されている。エレメント部3からは、サポート部5が径外方向に延びている。このサポート部5は、エレメント部3と枠体6とを接続し、エレメント部3を枠体6に支持している。枠体6は、エレメント部3の外側に形成され、図1(b)に示すように、絶縁基板2aに載置されている。一方、一〜四次電極4a〜4dは、エレメント部3の径方向に該エレメント部3と対向するように、エレメント部3の中心周りの方向に沿って配置されている。一次電極4aは、エレメント部3の中心周りの方向に360°/nの間隔で配置することができる。また、二次電極4bは、各一次電極4aからエレメント部3の中心周りの方向に(360°×1/4n)、三次電極4cは、各一次電極4aからエレメント部3の中心周りの方向に(360°×2/4n)、四次電極4dは、各一次電極4aからエレメント部3の中心周りの方向に(360°×3/4n)離れた位置に配置することができる。nの値は、正の整数であれば限定されるものでなく、本実施形態では、2である。よって、本実施形態では、一次電極4aは、エレメント部3の中心周りの方向に180°の間隔で配置され、二次電極4bは、各一次電極4aからエレメント部3の中心周りの方向に45°、三次電極4cは、各一次電極4aからエレメント部3の中心周りの方向に90°、四次電極4dは、各一次電極4aからエレメント部3の中心周りの方向に135°離れた位置に配置されている。図1(b)に示すように、一〜四次電極4a〜4dは、絶縁基板2aに載置されている。尚、図1(a)に示すように、本実施形態では、一〜四次電極4a〜4dがエレメント部3の外側に形成されているが、一〜四次電極4a〜4dは、エレメント部3の内側に形成されてもよい。
【0034】
第1交流電源11、第1検出手段12、第2検出手段13及び第2交流電源14は、それぞれ、一〜四次電極4a〜4dのうちの何れか1つに接続される。
【0035】
切替手段15は、一〜四次電極4a〜4dに対する第1交流電源11、第1検出手段12、第2検出手段13及び第2交流電源14の接続状態を、下記第1状態と下記第2状態とに切り替える。図2(a)は第1状態を、図2(b)は第2状態を説明する図である。図2(a)を表側から見たとき、エレメント部3の中心に対して右周りに、第1交流電源11が接続された電極(一次電極4a)、第2交流電源14が接続された電極(二次電極4b)、第1検出手段12が接続された電極(三次電極4c)、第2検出手段13が接続された電極(四次電極4d)がこの順で位置する。一方、図2(b)を表側から見たとき、エレメント部3の中心に対して左周りに、第1交流電源11が接続された電極(二次電極4b)、第2交流電源14が接続された電極(一次電極4a)、第1検出手段12が接続された電極(四次電極4d)、第2検出手段13が接続された電極(三次電極4c)がこの順で位置する。
【0036】
第1状態において図2(a)を表側から見たときと、第2状態において図2(b)を裏側から見たときとの何れの場合も、エレメント部3の中心に対して右周りに、第1交流電源11が接続された電極、第2交流電源14が接続された電極、第1検出手段12が接続された電極、第2検出手段13が接続された電極がこの順で位置する。よって、第2状態における第1交流電源11、第2交流電源14、第1検出手段12及び第2検出手段13が接続された電極の位置関係は、第1状態のままエレメント部3及び一〜四次電極4a〜4dの姿勢を物理的に反転させた場合と同一である。このため、角速度センサ1は、接続状態を切り替えることで、エレメント部3及び一〜四次電極4a〜4dの姿勢を物理的に反転した状態とすることができる。尚、反転とは、エレメント部3の法線方向が180°変更するように、エレメント部3及び一〜四次電極4a〜4dの向きを180°変更した状態である。
【0037】
このような接続状態の切り替えは、本実施形態においては、一〜四次電極4a〜4dと、第1交流電源11、第1検出手段12、第2検出手段13及び第2交流電源14とを、スイッチ素子Sを介して接続することで実現している。
【0038】
具体的には、図1(a)に示すように、一次電極4aと二次電極4bとは、スイッチ素子Sを介して第1交流電源11と第2交流電源14とに接続され、三次電極4cと四次電極4dとは、スイッチ素子Sを介して第1検出手段12と第2検出手段13とに接続されている。尚、図1(a)に示すように、本実施形態では、一〜四次電極4a〜4dは、それぞれ2つの位置に配置されているが、図1(a)においては、何れか一方の位置に配置された一〜四次電極4a〜4dと、第1交流電源11、第1検出手段12、第2検出手段13及び第2交流電源14との接続状態を示し、何れか他方については、省略している。
【0039】
第1状態への切り替えは、スイッチ素子Sを図1(a)の実線で示す状態に、第2状態への切り替えは、スイッチ素子Sを図1(a)の破線で示す状態に切り替えることで行うことができる。
【0040】
切替手段15は、現在の接続状態が第1状態か第2状態かを演算手段16に通知する。尚、接続状態の切り替えは、プログラム等に従って自動的に行われても、角速度センサ1のユーザの指示に従って行われてもよい。
【0041】
演算手段16は、第2交流電源14が印加する第2交流電圧に基づいて角速度を演算する。演算手段16が演算する角速度とは、エレメント部3の法線方向(即ち、図1(a)の紙面と垂直な方向)周りの回転運動により生じる角速度である。次に、演算手段16が行う角速度の演算について説明する。
【0042】
第1交流電源11は、自身が接続された電極(以下、基準電極という)に第1交流電圧を印加して、基準電極とエレメント部3との間に静電力を作用させることで、平面内cos2θモードの一次振動をエレメント部3に発生させる。図2(a)及び(b)に示すように、第1状態及び第2状態の何れの状態においても、第1交流電源11は、エレメント部3の中心周りの方向に互いに180°離れた位置に配置された電極に接続され、エレメント部3に対して、180°異なる方向から静電力を加えることが可能な構成とされている。このため、本実施形態においては、第1交流電源11が接続された基準電極に第1交流電圧が印加されることで、図3(a)に示すように、エレメント部3の中心と基準電極(図3(a)においては一次電極4a)とを結ぶ直線の方向及び該直線の方向と直交する方向が最大伸縮方向である平面内cos2θモードの一次振動がエレメント部3に発生する。
【0043】
本実施形態においては、かかる一次振動は、一次振動の振動状態が一定に保たれるように第1検出手段12によってフィードバック制御されている。図2(a)及び(b)に示すように、第1状態及び第2状態の何れの状態においても、第1検出手段12は、基準電極からエレメント部3の中心周りの方向に90°離れた位置に配置された電極に接続されている。よって、第1検出手段12が接続された電極とエレメント部3との間の静電容量は、一次振動に応じて変動し、第1検出手段12が接続された電極には、一次振動に応じた大きさの電気信号が発生する。第1検出手段12は、自身が接続された電極に発生する電気信号の大きさに基づいて、第1交流電圧の大きさを制御することで、一次振動の振動状態が一定に保たれるように、一次振動をフィードバック制御する。
【0044】
エレメント部3が一次振動をしているときに、エレメント部3の法線方周りの回転運動をエレメント部3が行うと、該回転運動の角速度に応じた大きさの二次振動がエレメント部3に発生する。この二次振動は、図3(b)に示すように、最大伸縮方向が、一次振動と(360°/4n)、即ち、本実施形態では、nは2であるから、45°異なる平面内cos2θモードの振動である。図2(a)に示すように、第1状態においては、第2検出手段13は、基準電極に対してエレメント部3の中心に対して左周りに45°離れた位置に配置された四次電極4dに接続され、図2(b)に示すように、第2状態においては、第2検出手段13は、基準電極に対してエレメント部3の中心に対して右周りに45°離れた位置に配置された三次電極4cに接続されている。よって、第1状態及び第2状態の何れのときも、第2検出手段13が接続された電極とエレメント部3との間の静電容量は、二次振動に応じて変動し、第2検出手段13が接続された電極には、二次振動に応じた大きさの電気信号が発生し、第2検出手段13は、自身が接続された電極に発生する電気信号の大きさを検出する。
【0045】
第2検出手段13によって検出される電気信号の大きさの変化に応じた大きさの第2交流電圧が第2交流電源14によって、第2交流電源14が接続された電極に印加される。このように第2交流電圧が印加されることで、発生した二次振動が打ち消される。図2(a)に示すように、第2交流電源14は、第1状態においては、基準電極に対してエレメント部3の中心に対して右周りに45°離れた位置に配置された二次電極4bに接続され、図2(b)に示すように、第2状態においては、基準電極に対してエレメント部3の中心に対して左周りに45°離れた位置に配置された一次電極4aに接続されている。よって、第1状態及び第2状態の何れのときも、第2交流電源14が接続された電極とエレメント部3との間の距離は、二次振動に応じて変動する。このような第2交流電源14が接続された電極に第2交流電圧を印加すると、第2交流電源14が接続された電極とエレメント部3との間に静電力が作用して、二次振動が打ち消される。このように、二次振動を打ち消すことで、発生する二次振動の大きさが、エレメント部3の法線方向周り回転運動の角速度に応じた大きさからずれ難くされている。以上のような第2交流電圧の大きさは、第2交流電源14から演算手段16に入力される。
【0046】
演算手段16は、切替手段15から通知される現在の接続状態とに基づいて、演算する角速度の極性を決定し、第2交流電源14から入力される第2交流電圧に基づき、演算する角速度の大きさを決定する。このように角速度の極性を決定するのは、第1状態と第2状態とでは、エレメント部3が同一の回転運動を行っていても、極性が反転するためである。これは、接続状態が切り替えられると、エレメント部3及び一〜四次電極4a〜4dの姿勢が物理的に反転した状態となるからである。演算する角速度の極性は、切替手段15から通知される現在の接続状態が、第1状態又は第2状態とでは逆となるように決定する。極性の決定の具体的な方法としては、第1状態又は第2状態のときは、第2交流電源14から入力される第2交流電圧の極性を反転させる旨を演算手段16に記憶しておき、演算手段16は、第1状態又は第2状態のとき、第2交流電源14から入力される第2交流電圧の極性を反転させる。また、第2交流電圧に基づく角速度の大きさの決定は、例えば、第2交流電圧と角速度との対応関係が演算手段16に記憶されており、演算手段16が、第2交流電圧と前記対応関係とに基づいて角速度の大きさを決定することで行うことができる。
【0047】
前述にように、第1状態と第2状態とでは、第1交流電源11、第1検出手段12、第2検出手段13及び第2交流電源14が接続された電極の位置関係は、エレメント部3及び一〜四次電極4a〜4dの姿勢が非反転時及び反転時のときの関係となる。よって、第1状態のときの角速度は、非反転姿勢又は反転姿勢の角速度の何れか一方に相当し、第2状態のときの角速度は、非反転姿勢又は反転姿勢の角速度の何れか他方に相当する。従って、角速度センサ1は、エレメント部3及び一〜四次電極4a〜4dの姿勢を反転させる反転機構が無くても、これらの姿勢を物理的に非反転又は反転させた場合と同等に、非反転姿勢又は反転姿勢のときの角速度を検出することができる。よって、角速度センサ1は、非反転姿勢及び反転姿勢のときの角速度を検出できると共に、構成が単純で、重量及び製造コストが小さく、メンテナンス性が良いという利点を有する。
【0048】
更に、演算手段16は、以上のように演算した第1状態及び第2状態における角速度に基づいて、前述のように第1状態及び第2状態において演算した角速度に含まれるバイアス成分を算出する。以下、バイアス成分の算出について説明する。
【0049】
第1状態のときに演算手段16が演算する角速度をy1とすると、角速度y1は次式(3)で表される。
y1=ax+b1…(3)(b1:角速度y1に含まれるバイアス成分)
また、第2状態のときに演算手段16が演算する角速度をy2とすると、角速度y2は次式(4)で表される。
y2=−ax+b2…(4)(b2:角速度y2に含まれるバイアス成分)
エレメント部3及び一〜四次電極4a〜4dが非反転姿勢のときと、非反転姿勢に対して姿勢が物理的に反転した時のバイアス成分は同一であるが、第1状態におけるバイアス成分b1と第2状態におけるバイアス成分b2は同一でない。これは、第1状態から第2状態へ切り替えられる際には、第1交流電源11、第1検出手段12、第2検出手段13、第2交流電源14が接続される電極の位置関係は反転しているが、エレメント部3及び一〜四次電極4a〜4dの姿勢は物理的に反転しないためである。
【0050】
バイアス成分には、エレメント部3の反りなどエレメント部3や一〜四次電極4a〜4dが物理的に反転することで極性が反転する反転成分が含まれる。よって、バイアス成分は、次式(5)のように、反転成分と非反転成分とから構成されていると考える事ができる。
バイアス成分=非反転成分+反転成分…(5)(非反転成分とは、第1交流電源11等が接続された電極の位置関係に影響される成分である。)
【0051】
第1状態から第2状態へ切り替えられる際には、エレメント部3及び一〜四次電極4a〜4dが物理的に反転しないため、第1状態のときに検出される角速度y1と第2状態のときに検出される角速度y2に含まれるバイアス成分の反転成分は互いに極性が反対である。よって、第1状態のときに検出される角速度y1は次式(6)で表され、第2状態のときに検出される角速度y2は次式(7)で表される。
y1=ax+b1=ax+(b1+b2)/2+(b1−b2)/2…(6)
y2=−ax+b2=−ax+(b1+b2)/2−(b1−b2)/2…(7)
(式(6)及び(7)におけるa:係数、式(6)及び(7)におけるx:真の角速度、式(6)及び(7)における(b1+b2)/2:非反転成分、式(6)及び(7)における(b1−b2)/2:反転成分)
角速度y1及び角速度y2の検出時のジャイロ素子2の真の角速度が同一であるとき、式(6)に(7)を加えて、非反転成分(b1+b2)/2について解くと、非反転成分は式(8)によって表される。
(b1+b2)/2=(y1+y2)/2…(8)
【0052】
よって、角速度y1及びy2の検出時のジャイロ素子2の真の角速度が同一であるとき、即ち、ジャイロ素子2が等速運動状態又は停止状態にあるとき、角速度y1及びy2の両方に含まれる非反転成分は、第1状態及び第2状態のときに検出される角速度y1及びy2から算出できる。本方法においては、このように算出できる非反転成分を、バイアス成分bとして算出する。即ち、演算手段16は、式(1)で表される非反転成分と同一の値をバイアス成分bとして算出する。
=(y1+y2)/2…(1)
このように非反転成分と同一の値をバイアス成分bと算出するため、反転成分の小さなジャイロ素子をジャイロ素子2として使用すれば、角速度センサ1は、バイアス成分を高精度に算出することができる。
【0053】
尚、式(8)は、角速度y1及びy2の検出時のジャイロ素子2の真の角速度が同一であることを前提にして導出された式である。よって、バイアス成分を高精度に算出する観点から、角速度y1及びy2の検出時におけるジャイロ素子2の真の角速度の差は、小さいことが好ましく、差が0であることが最も好ましい。
【0054】
また、高精度に角速度を算出するために、上式(1)のy1及びy2に代入する角速度は、例えば、ジャイロ素子2が停止状態及び等速運動状態であることがセンサ等によって検知されたときに検出された角速度y1及びy2としてもよい。また、上式(1)のy1に代入する角速度は、第1状態の時に検出された複数回の角速度の平均値であってもよい。同様に、上式(1)のy2に代入する角速度は、第2状態の時に検出された複数回の角速度の平均値であってもよい。
【0055】
更に、演算手段16は、このように算出したバイアス成分bを用いて演算した角速度を補正して、角速度補正値xを算出し、当該角速度補正値を所定の装置やモニタ等に出力する。角速度補正値は、例えば、次式(9)を用いて行われる。
x=(y−b)/a…(9)(y:演算した角速度)
このようにバイアス成分bが除かれた角速度に基づいて角速度補正値が算出されるので、この角速度補正値は、真の角速度に近い値を有する。よって、所定の装置やモニタ等には、真の角速度に近い値の角速度補正値が出力されることになる。
【0056】
また、バイアス成分bの算出に使用される角速度y1及びy2の検出のタイミングは限定されるものでない。検出のタイミングとしては、例えば、バイアス成分bを用いて補正される角速度yが検出されるタイミングより前でもよい。バイアス成分bの算出に使用される角速度y1及びy2の検出のタイミングを、角速度yが検出されるタイミングより前とする場合は、例えば、演算手段16に、角速度y1及びy2に基づいて算出されたバイアス成分bを記憶する機能を備えることで、算出したバイアス成分bに基づいて、角速度yを補正することができる。
【0057】
また、演算手段16は、次式(2)を用いて角速度補正値xを算出してもよい。次式(2)は、背景技術の欄に記載の式(4)’と同様に導出される式である。
x=(y1−y2)/2a…(2)
【0058】
本実施形態においては、第2状態における第1交流電源11等と一〜四次電極4a〜4dとの接続状態は、図2(b)に示す状態に限らず、下記の2つの何れか一方の状態であってもよい。1つ目の状態は、第1交流電源11が三次電極4cに、第1検出手段12が一次電極4aに、第2検出手段13が四次電極4dに、第2交流電源14が二次電極4bに接続された状態である。このような第2状態に切替可能な構成としては、図4に示すような構成を挙げることがことができる。尚、図4においては、一〜四次電極4a〜4dのそれぞれの一方についての第1交流電源11等との接続状態を示し、他方についての接続状態は省略している。
【0059】
また、第2状態の2つ目の状態は、第1交流電源11が一次電極4aに、第1検出手段12が三次電極4cに、第2検出手段13が二次電極4bに、第2交流電源14が四次電極4dに接続された状態である。このような第2状態に切替可能な構成としては、図5に示すような構成を挙げることがことができる。尚、図5においては、一〜四次電極4a〜4dのそれぞれの一方についての第1交流電源11等との接続状態を示し、他方についての接続状態は省略している。
【0060】
以上に説明した角速度センサ1は、方位計測用のジャイロコンパス等の電子機器に実装することができる。図6は、角速度センサ1を電子機器に実装した状態の模式図を示す。図6に示すように、電子機器には、角速度センサ1と、角速度センサ1を載置する基板9とを備えた3つのセンサモジュール10a〜10cが実装されている。
【0061】
センサモジュール10aは、角速度センサ1のエレメント部3の法線方向がX軸に平行となるように配置され、センサモジュール10bは、角速度センサ1のエレメント部3の法線方向がY軸に平行となるように配置され、センサモジュール10cは、角速度センサ1のエレメント部3の法線方向がZ軸に平行となるように配置されている。即ち、センサモジュール10aは、電子機器のX軸周りの角速度補正値を、センサモジュール10bは、電子機器のY軸周りの角速度補正値を、センサモジュール10cは、電子機器のZ軸周りの角速度補正値を算出できるように配置されている。
【0062】
次に、センサモジュール10a〜10cに備えられた3つの角速度センサ1を用いて、電子機器のプロセッサ11がX軸、Y軸及びZ軸周りの各角速度補正値を取得する方法を説明する。プロセッサ11は、第1切替指令と第2切替指令とを各センサモジュール10a〜10cに送信する。第1切替指令とは、角速度センサ1の一〜四次電極4a〜4dに対する第1交流電源11等の接続状態を、第1状態に切替る指令である。また、第2切替指令とは、角速度センサ1の一〜四次電極4a〜4dに対する第1交流電源11等の接続状態を、第2状態へ切替る指令である。
【0063】
プロセッサ11から各センサモジュール10a〜10cに向けて第1切替指令が送信されると、各センサモジュール10a〜10cの角速度センサ1に備えられた切替手段15は、一〜四次電極4a〜4dに対する第1交流電源11等の接続状態を第1状態へ切り替える。同様に、切替手段15は、第2切替指令を受信すると、一〜四次電極4a〜4dに対する第1交流電源11等の接続状態を第2状態へ切り替える。各切替手段15は、第1状態へと切り替えると、第1状態に切り替えた旨を、第2状態へと切り替えると、第2状態に切り替えた旨を、自身と同じ角速度センサ1に備えられた演算手段16に通知する。
【0064】
各演算手段16は、第1状態に切り替えられた旨が通知されると、角速度を演算し、演算した角速度を、上式(1)の角速度y1として記憶する。また、各演算手段16は、第2状態に切り替えられた旨が通知されると、角速度を演算し、演算した角速度を上式(1)の角速度y2として記憶する。そして、各演算手段16は、上式(1)、角速度y1及びy2に基づいて、バイアス成分bを算出して記憶する。バイアス成分bを記憶すると、その後、演算手段16は、随時角速度を演算すると共に、上式(9)を用いて、角速度補正値xを算出し、角速度補正値xを電子機器が備えるADコンバータ12にアナログ値で出力する。
【0065】
ADコンバータ12は、各プロセッサモジュール10a〜10cの演算手段16から出力された、X軸、Y軸、Z軸周りの各角速度補正値xを量子化し、量子化した角速度補正値xをプロセッサ11に出力する。このようにして、プロセッサ11は、X軸、Y軸及びZ軸周りの角速度補正値を取得することができる。尚、上記の説明では、角速度y1、y2の演算及び記憶がプロセッサ11とは別の演算手段16において行われているが、プロセッサ11に角速度y1、y2の演算及び記憶する機能を備えることで、プロセッサ11によって、角速度y1、y2の演算及び記憶を行ってもよい。
【0066】
尚、エレメント部3の形状は、リング状に限定されるものでなく、正8n(n:正の整数)角形等とすることができる。エレメント部3の中心としては、例えば、エレメント部上の全ての点からの距離が等しい点や、エレメント部3の重心とすることができる。
(実施形態2)
【0067】
実施形態1に係る角速度センサ1は、n(n=2)個の位置に配置された電極に第1交流電圧及び第2交流電圧を印加することによって、cosnθモードの一次振動を発生させ、cosnθモードの二次振動を打ち消す。しかし、nより少ない数の位置に配置された電極に第1交流電圧及び第2交流電圧を印加することでも、cosnθモードの一次振動の発生、及び、cosnθモードの二次振動の打ち消しは可能である。本実施形態では、nより少ない数の位置に配置された電極に第1交流電圧及び第2交流電圧を印加して、cosnθモードの一次振動を発生させ、cosnθモードの二次振動を打ち消す角速度センサについて説明する。
【0068】
図7は、本実施形態に係る角速度センサ1Aが備えるジャイロ素子2の平面図、及び、角速度センサ1Aの機能ブロック図を示す。角速度センサ1Aにおいては、一次電極4aは、エレメント部3の中心周りの方向に(360°/2)、即ち、180°間隔で位置する2つの位置のうち、1つの位置に配置されている。二次電極4bは、一次電極4aに対して、エレメント部3の中心周りの方向に(360°/4×2)、即ち、45°離れた位置に配置され、三次電極4cは、一次電極4aからエレメント部3の中心周りの方向に(360°×2/4×2)、即ち、90°離れた位置に配置され、四次電極4dは、一次電極4aからエレメント部3の中心周りの方向に(360°×3/4×2)、即ち、135°離れた位置に配置されている。
【0069】
角速度センサ1Aにおける一〜四次電極4a〜4dに対する第1交流電源11等の接続状態の第1状態は、第1交流電源11が一次電極4aに接続され、第1検出手段12が三次電極4cに接続され、第2検出手段13が四次電極4dに接続され、第2交流電源14が二次電極4bに接続された状態である。一方、第2状態は、第1交流電源11が四次電極4dに接続され、第1検出手段12が二次電極4bに接続され、第2検出手段13が一次電極4aに接続され、第2交流電源14が三次電極4cに接続された状態である。
【0070】
第1状態への切り替えは、スイッチ素子Sを図7の実線で示す状態に、第2状態への切り替えは、スイッチ素子Sを図7の破線で示す状態にすることで行うことができる。
【0071】
第1状態において図7を表側から見たとき、エレメント部3の中心に対して右周りに、第1交流電源11が接続された電極(一次電極4a)、第2交流電源14が接続された電極(二次電極4b)、第1検出手段12が接続された電極(三次電極4c)、第4検出手段13が接続された電極(四次電極4d)がこの順で位置する。一方、第2状態において図7を裏側から見たとき、エレメント部3の中心に対して右周りに、第1交流電源11が接続された電極(四次電極4d)、第2交流電源14が接続された電極(三次電極4c)、第1検出手段12が接続された電極(二次電極4b)、第2検出手段13が接続された電極(一次電極4a)がこの順で位置する。よって、第1状態において、図7を表側から見たときと、第2状態において、図7を裏側から見たときとでは、第1交流電源11、第2交流電源14、第1検出手段12及び第2検出手段13が接続された電極の位置関係は一致する。よって、角速度センサ1Aは、実施形態1に係る角速度センサ1と同様に、接続状態を切り替えることで、第1交流電源11等が接続された電極の位置関係を、エレメント部3及び一〜四次電極4a〜4dの姿勢を物理的に反転したときの状態とすることができる。
【0072】
第1交流電源11は、接続された1つの電極に、第1交流電圧を印加して、平面内cos2θモードの固有振動数でエレメント部3を振動させて、平面内cos2θモードの一次振動をエレメント部3に発生させる。平面内cos2θモードの固有振動数でエレメント部3を振動させる方法としては、第1交流電圧の周期を、エレメント部3の平面内cos2θモードの固有振動数の逆数とする方法が挙げられる。また、第2交流電源14は、接続された1つの電極に、第2交流電圧を印加して、平面内cos2θモードの固有振動数でエレメント部3を振動させて、平面内cos2θモードの二次振動を打ち消す。平面内cos2θモードの固有振動数でエレメント部3を振動させる方法としては、第2交流電圧の周期を、エレメント部3の平面内cos2θモードの固有振動数の逆数とする方法が挙げられる。このように、1つの電極に第1交流電圧及び第2交流電圧を印加することよって、一次振動を発生させ、及び、二次振動を打ち消すことができるので、角速度センサ1Aは、エレメント部3の法線方向周りの回転運動の角速度を検出することができる。
【0073】
以上のように、角速度センサ1Aは、角速度を検出でき、且つ、接続状態を切り替えることで、第1交流電源11等が接続された電極の位置関係を、エレメント部3及び一〜四次電極4a〜4dの姿勢を物理的に反転したときの状態とすることができる。よって、角速度センサ1Aは、反転機構が無くても、非反転姿勢及び反転姿勢の角速度を検出することができる。また、角速度センサ1Aは、反転機構を用いなくても、反転姿勢の角速度を検出できるため、構成が単純で、重量及び製造コストが小さく、メンテナンス性が良い。尚、角速度センサ1Aの演算手段16は、第1状態と第2状態における角速度を用いて、実施形態1に係る角速度センサ1の演算手段16と同様の方法で、バイアス成分の算出及び角速度補正値の算出をしていもよい。
【0074】
尚、第1状態においては、エレメント部3の中心に対して右周り及び左周りの何れか一方向において、第1交流電源11が接続された電極、第2交流電源14が接続された電極、第1検出手段12が接続された電極及び第2検出手段13が接続された電極がこの順で位置していれば、第1交流電源11、第2交流電源14、第1検出手段12及び第2検出手段13は、一〜四次電極4a〜4dのうちどの電極に接続されてもよい。例えば、第1交流電源11が二次電極4bに、第2交流電源14が三次電極4cに、第1検出手段12が四次電極4dに、第2検出手段13が一次電極4aに接続されてもよい。
【0075】
また、第2状態においては、エレメント部3の中心に対して右周り及び左周りの何れか他方向において、第1交流電源11が接続された電極、第2交流電源14が接続された電極、第1検出手段12が接続された電極及び第2検出手段13が接続された電極がこの順で位置していれば、第1交流電源11、第2交流電源14、第1検出手段12及び第2検出手段13は、一〜四次電極4a〜4dのうちどの電極に接続されてもよい。例えば、第1交流電源11が二次電極4bに、第2交流電源14が一次電極4aに、第1検出手段12が四次電極4dに、第2検出手段13が三次電極4cに接続されていてもよい。
【0076】
(実施形態3)
図8は、本実施形態に係る角速度センサ1Bが備えるジャイロ素子2の平面図、及び、角速度センサ1Bの機能ブロック図を示す。図8に示すように、本実施形態に係る角速度センサ1Bは、三〜四次電極と、第1検出手段と、第2交流電源とが備えられていない点が実施形態1に係る角速度センサ1と異なる。即ち、本実施形態に係る角速度センサ1Bは、一次振動のフィードバック制御、及び、二次振動の打ち消しを行わない。一〜二次電極4a〜4bの配置位置は、実施形態1と同様である。尚、本実施形態、下記の実施形態4及び5では、第1交流電源11を交流電源11と、第2検出手段13を検出手段13という。
【0077】
一〜二次電極4a〜4bの何れか一方には、交流電源11が接続され、何れか他方には、検出手段13が接続される。具体的には、一〜二次電極4a〜4bに対する交流電源11及び検出手段13の接続状態が第1状態においては、交流電源11が一次電極4aに、検出手段13が二次電極4bに接続される。第2状態においては、交流電源11が二次電極4bに、検出手段13が一次電極4aに接続される。第1状態と第2状態の切替は、切替手段15によって行われる。第1状態への切り替えは、スイッチ素子Sを図8の実線で示す状態に、第2状態への切り替えは、スイッチ素子Sを図8の破線で示す状態にすることで行うことができる。
【0078】
第1状態において、図8を表側から見たとき、交流電源11が接続された電極(一次電極4a)に対して、エレメント部3の中心に対して右周りに45°の位置に、検出手段13が接続された電極(二次電極4b)が位置している。また、第2状態において、図8を裏側から見たとき、交流電源11が接続された電極(二次電極4b)に対して、エレメント部3の中心に対して右周りに45°の位置に、検出手段13が接続された電極(一次電極4a)が位置している。よって、角速度センサ1Bは、実施形態1に係る角速度センサ1と同様に、接続状態を切り替えることで、交流電源11等が接続された電極の位置関係を、エレメント部3及び一〜二次電極4a〜4bの姿勢を物理的に反転したときの状態とすることができる。
【0079】
また、本実施形態に係る角速度センサ1Bにおいては、演算手段16は、検出手段13によって検出される電気信号の大きさの変化と、切替手段15から通知される現在の接続状態とに基づいて角速度を演算する。検出手段13は、第1状態であっても第2状態であっても、交流電源11が接続された電極に対してエレメント部3の中心周りの方向に45°離れた位置に配置された電極に接続されている。よって、検出手段13が検出する電気信号の大きさは、第1状態であっても第2状態であっても、二次振動に応じた大きさとなる。よって、演算手段16は、実施形態1に係る演算手段16と同様に、第1状態及び第2状態のときの角速度を演算することができる。
【0080】
以上のように、角速度センサ1Bは、実施形態1に係る角速度センサ1と同様に角速度を検出でき、且つ、接続状態を切り替えることで、交流電源11及び検出手段13が接続された電極の位置関係をエレメント部3及び一〜二次電極4a〜4bの姿勢を物理的に反転した状態とすることができる。よって、角速度センサ1Bは、反転機構が無くても、非反転姿勢と反転姿勢とのときの角速度を検出することができると共に、反転機構を用いなくても、反転姿勢の角速度を検出できるため、構成が単純で、重量及び製造コストが小さく、メンテナンス性が良い。尚、本実施形態に係る角速度センサ1Bの演算手段16は、第1状態と第2状態における角速度を用いて、実施形態1に係る角速度センサ1の演算手段16と同様の方法で、バイアス成分の算出及び角速度補正値の算出をしていもよい。
【0081】
(実施形態4)
図9は、本実施形態に係る角速度センサ1Cが備えるジャイロ素子2の平面図、及び、角速度センサ1Cの機能ブロック図を示す。図9に示すように、本実施形態に係る角速度センサ1Cは、一次電極4aと二次電極4bは、それぞれが1つの位置に配置されている点が、実施形態3に係る角速度センサ1Bと異なる。本実施形態においては、一次電極4aと二次電極4bとは、互いに、エレメント部3の中心周りの方向に45°離れた位置に配置されている。
【0082】
実施形態3に係る角速度センサ1Bと同様に、この一次電極4aと二次電極4bとの何れか一方には、交流電源11が接続され、一次電極4aと二次電極4bとの何れか他方には、検出手段13が接続される。具体的には、第1状態においては、交流電源11が一次電極4aに、検出手段13が二次電極4bに接続される。第2状態においては、交流電源11が二次電極4bに、検出手段13が一次電極4aに接続される。第1状態と第2状態の切替は、切替手段15によって行われる。第1状態への切り替えは、スイッチ素子Sを図9の実線で示す状態に、第2状態の切り替えは、スイッチ素子Sを図9の破線で示す状態にすることで行うことができる。
【0083】
第1状態において、図9を表側から見たとき、交流電源11が接続された電極(一次電極4a)に対して、エレメント部3の中心に対して右周りに45°の位置に、検出手段13が接続された電極(二次電極4b)が位置している。また、第2状態において、図9を裏側から見たとき、交流電源11が接続された電極(二次電極4b)に対して、エレメント部3の中心に対して右周りに45°の位置に、検出手段13が接続された電極(一次電極4a)が位置している。よって、角速度センサ1Cは、接続状態を切り替えることで、交流電源11等が接続された電極の位置関係を、エレメント部3及び一〜二次電極4a〜4bの姿勢を物理的に反転したときの状態とすることができる。
【0084】
また、角速度センサ1Cは、実施形態2に係る角速度センサ1Aと同様に、交流電源11が接続される電極が1つであるので、実施形態2に係る角速度センサ1Aと同様にして、1つの位置に配置された電極に第1交流電圧を印加して、エレメント部3を平面内cos2θモードで振動させる。また、角速度センサ1Cの演算手段16は、検出手段13によって検出される電気信号の大きさの変化と、切替手段15から通知される現在の接続状態とに基づいて角速度を演算する。検出手段13は、実施形態3に係る角速度センサ1Bの検出手段13と同様に、第1状態であっても第2状態であっても、交流電源11が接続された電極に対してエレメント部3の中心周りの方向に45°異なる位置に配置された電極に接続されている。よって、角速度センサ1Cの演算手段16は、実施形態3に係る角速度センサ1Bと同様に、第1状態及び第2状態のときの角速度を演算することができる。
【0085】
以上のように、角速度センサ1Cは、第1状態及び第2状態の角速度を検出でき、且つ、接続状態を切り替えることで、交流電源11及び検出手段13が接続される電極の位置関係を、エレメント部3及び一〜二次電極4a〜4bの姿勢を反転したときの状態とすることができる。よって、角速度センサ1Cは、反転機構が無くても、非反転姿勢と反転姿勢の角速度を検出することができると共に、反転機構を用いなくても、反転姿勢の角速度を検出することができるため、構成が単純で、重量及び製造コストが小さく、メンテナンス性が良い。
【0086】
<実施形態1〜4の変形例>
実施形態1〜4においては、一〜四次電極4a〜4dの配置位置を規定する数式のnを2として説明したが、nは2に限定されるものでなく3以上であってもよい。
【0087】
例えば、実施形態1の角速度センサ1において、nを3とした場合の構成は、次のような構成である。図10は、一〜四次電極4a〜4dに対する第1交流電源11、第1検出手段12、第2検出手段13及び第2交流電源14の接続状態を示す図であり、図10(a)は第1状態を、図10(b)は第2状態を示す。図10(a)及び(b)に示すように、一次電極4aは、エレメント部3の中心周りの方向に120°間隔で配置され、二次電極4bは、各一次電極4aからエレメント部3の中心周りの方向に30°離れた位置に配置され、三次電極4cは、各一次電極4aからエレメント部3の中心周りの方向に60°離れた位置に配置され、四次電極4dは、各一次電極4aからエレメント部3の中心周りの方向に90°離れた位置に配置されている。
【0088】
図10(a)を表側から見ると、エレメント部3の中心に対して右周りに、第1交流電源11が接続された電極(一次電極4a)、第2交流電源14が接続された電極(二次電極4b)、第1検出手段12が接続された電極(三次電極4c)、第2検出手段13が接続された電極(四次電極4d)がこの順で位置する。また、図10(b)を裏側から見ると、エレメント部3の中心に対して右周りに、第1交流電源11が接続された電極(二次電極4b)、第2交流電源14が接続された電極(一次電極4a)、第1検出手段12が接続された電極(四次電極4d)、第2検出手段13が接続された電極(三次電極4c)がこの順で位置する。よって、nが3の場合に対応する構成であっても、角速度センサは、実施形態1に係る角速度センサ1と同様に、接続状態を切り替えることで、第1交流電源11等が接続された電極の位置関係を、エレメント部3及び一〜四次電極4a〜4dの姿勢を物理的に反転したときの状態とすることができる。
【0089】
また、かかる構成では、第1状態及び第2状態の何れの状態においても、第1交流電源11は、エレメント部3の中心周りの方向に互いに120°離れた位置に配置された電極に接続されている。このため、かかる構成においては、一次振動は平面内cos3θモードとなる。また、第1状態であっても第2状態であっても、第1検出手段12は、基準電極からエレメント部3の中心周りの方向に60°(360×2/(4×3))離れた位置に配置された電極に接続されている。また、第2検出手段13及び第2交流電源14は、基準電極からエレメント部3の中心周りの方向に30°(360×1/(4×3))離れた位置に配置された電極に接続されている。よって、かかる構成の場合においても、第2交流電圧に基づいて、第1状態及び第2状態における角速度を検出することができる。
【0090】
以上のように、第1状態と第2状態とでは、第1交流電源11、第1検出手段12、第2検出手段13及び第2交流電源14が接続された電極の位置関係は、エレメント部3及び一〜四次電極4a〜4dの姿勢が非反転時及び反転時のときの関係となる。よって、第1状態のときの角速度は、非反転姿勢又は反転姿勢の角速度の何れか一方に相当し、第2状態のときの角速度は、非反転姿勢又は反転姿勢の角速度の何れか他方に相当する。従って、かかる構成においても、反転機構が無くても、物理的に反転させた場合と同等に、非反転姿勢及び反転姿勢の角速度を検出することができる。
【0091】
(実施形態5)
図11は、本実施形態に係る角速度センサが備えるジャイロ素子2の平面図である。図11に示すように、本実施形態に係る角速度センサのジャイロ素子2は、面状のエレメント部3、一〜二次電極4a〜4b、サポート部5及び枠体6を備える。
【0092】
エレメント部3は、例えば、図11に示すような平面視正方形状、平面視円板状とすることができる。エレメント部3は、サポート部5によって、枠体6に支持されている。
【0093】
一〜二次電極4a〜4bは、エレメント部3の中心周りの方向に沿って、該エレメント部3に対向配置されている。一次電極4aは、エレメント部3の中心周りの方向に互いに180°離れた2つの位置のうち、1つの位置に配置されている。二次電極4a〜4bは、一次電極4aからエレメント部3の中心周りの方向に、90°離れた位置に配置されている。
【0094】
更に、本実施形態に係る角速度センサは、図11においては、図示していないが、実施形態1に係る角速度センサ1の第1交流電源11に対応する交流電源11、実施形態1に係る角速度センサ1の第2検出手段13に対応する検出手段13、切替手段15及び演算手段16を備える。一〜二次電極4a〜4bの何れか一方には、交流電源11が接続され、何れか他方には、検出手段13が接続される。具体的には、一〜二次電極4a〜4bに対する交流電源11及び検出手段13の接続状態が第1状態においては、交流電源11が一次電極4aに、検出手段13が二次電極4bに接続される。第2状態においては、交流電源11が二次電極4bに、検出手段13が一次電極4aに接続される。第1状態と第2状態の切替は、切替手段15によって、一〜二次電極4a〜4bと交流電源11及び検出手段13を接続するスイッチ素子を切り替えることで行うことができる。切替手段15は、現在の接続状態が第1状態か第2状態かを演算手段16に通知する。
【0095】
交流電源11は、接続された電極に第1交流電圧を印加して、接続された電極とエレメント部3との間に静電力を作用させて、エレメント部3が含まれる平面内において、接続された電極とエレメント部3の中心とを結ぶ線分の方向に前記エレメント部3を一次振動(第1状態においては、振動方向が図11に示す矢印P方向の振動)させる。検出手段13は、接続された電極に発生する電気信号の大きさを検出する。
【0096】
演算手段16は、検出手段13によって検出される電気信号の大きさと、切替手段15から通知される現在の接続状態とに基づいて角速度を検出する。次に、演算手段16が行う角速度の演算について説明する。
【0097】
エレメント部3が一次振動しているときに、エレメント部3の法線方向(即ち、図11の紙面と垂直な方向)周りの回転運動をエレメント部3が行うと、回転運動の角速度に応じた大きさの二次振動が生じる。この二次振動は、振動方向が、エレメント部3が含まれる平面内であり、且つ、一次振動に対して垂直方向(第1状態においては、図11に示す矢印Q方向)である。このため、例えば、第1状態においては、交流電源11が接続された一次電極4aに対して、エレメント部3の中心周りの方向に90°離れた位置に配置された二次電極4bに生じる電気信号の大きさは、二次振動に応じて変動する。検出手段13は、第1状態及び第2状態の何れのときも、第1交流電源11が接続された電極からエレメント部3の中心周りの方向に90°離れた位置に配置された電極に接続されている。よって、演算手段16は、検出手段13によって検出される電気信号の大きさに基づいて角速度を検出することができる。
【0098】
また、一〜二次電極4a〜4bと、交流電源11及び検出手段13との接続状態を、第1状態から第2状態又は第2状態から第1状態に切り替えることで、交流電源11及び検出手段13に接続された電極の位置関係を、エレメント部3及び一〜二次電極4a〜4bの姿勢を物理的に反転したきと同一の関係にすることができる。よって、本実施形態に係る角速度センサは、エレメント部3及び一〜二次電極4a〜4bの姿勢を物理的に反転しなくても、物理的に反転したときと同等に、反転姿勢の角速度を検出することができる。このように、本実施形態に係る角速度センサは、反転機構を用いなくても、反転姿勢のときの角速度を検出することができるため、構成が単純で、重量及び製造コストが小さく、メンテナンス性が良い。
【0099】
<電磁力を用いた角速度センサ>
以上において説明した、実施形態1〜5に係る角速度センサでは、一次振動の発生、及び、第2検出手段13によって検出された電気信号の大きさの変化の打ち消し(二次振動の打ち消し)は、静電力を用いて行われている。しかし、一次振動の発生、及び、二次振動の打ち消しは、静電力に代えて電磁力を用いて行ってもよい。
【0100】
電磁力を用いる場合、エレメント部3の法線方向の磁界をエレメント部3に発生させる。この磁界は、例えば、エレメント部3の法線方向両側に磁石を配置したり、或いは、図12(a)に示すように、エレメント部3がリング状である場合は、エレメント部3の法線方向一方側がS極、他方側がN極となるように磁石7をエレメント部3の内側に配置することで形成することができる。
【0101】
図12(a)は、一〜四次電極4a〜4dが配置されたエレメント部3の平面図である。図12(a)に示すように、電磁力を用いる場合、一〜四次電極4a〜4dは、エレメント部3の中心周りの方向に沿って、エレメント部3上に配置される。一次電極4aは、エレメント部3の中心周りの方向に360°/nの間隔で配置することができ、二次電極4bは、各一次電極4aからエレメント部3の中心周りの方向に(360°×1/4n)、三次電極4cは、各一次電極4aからエレメント部3の中心周りの方向に(360°×2/4n)、四次電極4dは、各一次電極4aからエレメント部3の中心周りの方向に(360°×3/4n)離れた位置に配置することができる。尚、図12(a)におていは、一〜四次電極4a〜4dの配置位置を規定する数式のnを2とした場合の平面図である。更に、図12(a)に示すように、一〜四次電極4a〜4dは、エレメント部3の中心周りの方向に沿った、それぞれ長さが等しい円弧状に形成されている。
【0102】
第1交流電源11、第1検出手段12、第2検出手段13及び第2交流電源14は、一〜四次電極4a〜4dの何れかと接続される。図12(b)に示すように、第1交流電源11は、接続される電極4の長手方向(図12(b)の矢印L方向)に電流が流れるように、接続される電極4上の2点(図12(b)の例では、A点及びB点)と接続される。第1検出手段12、第2検出手段13及び第2交流電源14においても、同様の理由により、接続される電極上の2点と接続される。
【0103】
次に、一〜四次電極4a〜4dに対する第1交流電源11等の接続状態が図2(a)に示す第1状態である場合を用いて、電磁力によって、一次振動が発生すること、及び、二次振動が打ち消されることについて説明する。第1交流電源11が接続された一次電極4aに第1交流電圧が印加されると、一次電極4aにおいて、一次電極4aの長手方向に電流が流れる。一次電極4aの長手方向に電流が流れることにより、当該電流とエレメント部3の法線方向の磁界とによって、図12(a)に示す矢印R方向(径方向)の電磁力が一次電極4aに発生する。この電磁力により、エレメント部3の一次電極4aが配置された部分が矢印R方向に振動し、この振動により、エレメント部3には、cos2θモードの一次振動が発生する。また、第2交流電源14が接続された二次電極4bに第2交流電圧が印加されると、二次電極4bにおいて、二次電極4bの長手方向に電流が流れる。二次電極4bの長手方向に電流が流れることにより、当該電流とエレメント部3の法線方向の磁界とによって、図12(a)に示す矢印R’方向(径方向)の電磁力が二次電極4bに発生する。この電磁力により、エレメント部3の二次電極4bが配置された部分が矢印R’方向に振動し、この振動により、エレメント部3の二次振動が打ち消される。一方、一次振動によって、エレメント部3の三次電極4cが配置された部分が振動すると、該振動とエレメント部3の法線方向の磁界とによって、三次電極4cにおいて、三次電極4cの長手方向に電流が流れる。よって、第1検出手段12が接続される三次電極4cには、一次振動に応じた大きさの電気信号が発生する。よって、第1検出手段12は、一次振動をフィードバック制御できる。また、二次振動によって、エレメント部3の四次電極4dが配置された部分が振動すると、該振動とエレメント部3の法線方向の磁界とによって、四次電極4dにおいて、四次電極4dの長手方向に電流が流れる。よって、第2検出手段13が接続される四次電極4dには、二次振動に応じた大きさの電気信号が発生し、この電気信号の大きさに応じた第2交流電圧が前述のように印加されることで、二次振動が打ち消される。
【0104】
以上のように、電磁力を用いて、一次振動の発生、及び、二次振動の打ち消しを行うことができる。尚、第1交流電源11等と一〜四次電極4a〜4dとの接続を枠体6(図示しない)上において可能なように、一〜四次電極4a〜4dは、サポート部5(図示しない)を介して枠体6まで延出されていてもよい。
【0105】
尚、電磁力を用いる場合であっても、実施形態2のように、第1交流電圧及び第2交流電圧が印加される電極が配置された位置の数がnより小さくてもよい。また、実施形態3及び4のように、角速度センサは、三〜四次電極4c〜4dを備えず、一次振動のフィードバック制御及び二次振動の打ち消しを行わなくてもよい。また、実施形態5のように、一次電極4aは、エレメント部3の中心周りの方向に180°離れた2つの位置のうち少なくとも1つに配置され、二次電極4bは、各一次電極4aからエレメント部3の中心周りの方向に90°離れた位置に配置され、一次振動の振動方向が、エレメント部3が含まれる平面内において、交流電源11が接続された電極とエレメント部3の中心とを結ぶ線分の方向であってもよい。
【実施例】
【0106】
本発明について、実施例1及び比較例1及び2の角速度センサを用いて更に説明する。
【0107】
(実施例1)
実施例1に係る角速度センサは、実施形態1に係る角速度センサ1と同様の構成である。実施例1の角速度センサが算出する角速度Dは、演算手段が検出した角速度から、バイアス成分を取り除いた角速度である。このバイアス成分は、実施形態1において示す式(1)を用いて算出されたものである。また、実施例1の角速度センサの演算手段が検出する最大の角速度4.5Vであり、最小の角速度は0.5Vであり、実施例1の角速度センサの演算手段の出力範囲は4V(=4.5V−0.5V)である。
【0108】
(比較例1)
比較例1に係る角速度センサは、検出する角速度Dが異なる点を除き、実施例1に係る角速度センサ1と同様の構成である。比較例1の角速度センサが検出する角速度Dは、バイアス成分が除去される前の角速度、即ち、演算手段が第2交流電圧に基づいて検出した角速度そのものである。
【0109】
(比較例2)
比較例2に係る角速度センサは、バイアス成分の算出方法が異なる点を除き、実施例1に係る角速度センサ1と同様の構成である。比較例2の角速度センサにおけるバイアス成分の算出は、エレメント部及び一〜四次電極の非反転姿勢のときの角速度を、実施形態1において示す式(1)のy1に代入し、エレメント部及び一〜四次電極を物理的に反転させたときの角速度を実施形態1において示す式(1)のy2に代入して算出したものである。
【0110】
以上に説明した、実施例1、比較例1及び2の角速度センサが算出した角速度Dの誤差を最小二乗法を用いて図13に示すグラフに表した。図13における横軸は、真の角速度である。一方、縦軸は、次式(9)によって、算出される誤差値である。
誤差値=((D−ax)/V)×100(D:実施例1、比較例1及び2の角速度センサが算出する角速度、a:係数、x:真の角速度、V:角速度センサの出力範囲)…(9)
【0111】
図13に示すように、実施例1及び比較例2の角速度センサの角速度Dは、真の角速度xが0のときは略0である。即ち、実施例1及び比較例2の角速度センサは、原点通過性が良い。また、実施例1及び比較例2の角速度センサの角速度Dは、真の角速度xの0を基準にして、真の角速度が正の値のときと負の値のときの誤差の大きさ(絶対値)がほぼ同一であるという対象性を有する。即ち、実施例1及び比較例2の角速度センサは、回転方向によって発生する誤差のばらつきが小さいという特性を有する。
【0112】
このように、実施形態1において示す式(1)によって算出されたバイアス成分で角速度を補正することで、原点通過性が良く、回転方向によって発生する誤差のばらつきが小さくなることが分かった。
【0113】
また、比較例2の角速度センサは、実施例1と同様に原点通過性が良く、回転方向によって発生する誤差のばらつきが小さいが、比較例2の角速度センサが算出する角速度Dを算出するためには、反転機構が必要となる。このため、比較例2の角速度センサは、反転機構を備える分、実施例1の角速度センサに比べて、構成が複雑で、重量及び製造コストが大きく、メンテナンス性が悪い。
【図面の簡単な説明】
【0114】
【図1】図1は実施形態1に係る角速度センサの概略構成図であり、図1(a)は角速度センサが備えるジャイロ素子の平面図、及び、角速度センサの機能ブロック図を示し、図1(b)は図1(a)のA−A端面図を示す。
【図2】図2は一〜四次電極に対する第1交流電源、第1検出手段、第2検出手段及び第2交流電源の接続状態を示す図であり、図2(a)は第1状態を、図2(b)は第2状態を示す。
【図3】図3は(a)はリング部の一次振動を示し、図3(b)はリング部の二次振動を示す。尚、図3(a)及び(b)における一〜四次電極に対する第1交流電源等の接続状態は、第1状態である。
【図4】図4は、実施形態1に係る角速度センサの概略構成図である。
【図5】図5は、実施形態1に係る角速度センサの概略構成図である。
【図6】図6は、角速度センサの使用形態を説明する説明図である。
【図7】図7は、実施形態2に係る角速度センサが備えるジャイロ素子の平面図、及び、角速度センサの機能ブロック図を示す。
【図8】図8は、実施形態3に係る角速度センサが備えるジャイロ素子の平面図、及び、角速度センサの機能ブロック図を示す。
【図9】図9は、実施形態4に係る角速度センサが備えるジャイロ素子の平面図、及び、角速度センサの機能ブロック図を示す。
【図10】図10は一〜四次電極に対する第1交流電源、第1検出手段、第2検出手段及び第2交流電源の接続状態を示す図であり、図10(a)は第1状態を、図10(b)は第2状態を示す。
【図11】図11は、実施形態5に係る角速度センサが備えるジャイロ素子の平面図である。
【図12】図12は電磁力を用いて一次振動の発生及び二次振動の打ち消しを行う角速度センサを説明するための図であり、図12(a)は一〜四次電極が配置されたエレメント部の平面図を示し、図12(b)は第1交流電源と、第1交流電源と接続される電極との接続形態を示す図である。
【図13】図13は、実施例1、比較例1及び2の角速度センサが算出する角速度の誤差を測定する実験結果を示す。
【図14】図14は、ジャイロ素子が非反転姿勢のとき及び反転姿勢のときにおいて角速度センサが検出する角速度と真の角速度との関係を説明するための説明図である。
【符号の説明】
【0115】
1、1A、1B、1C 角速度センサ
2 ジャイロ素子
3 エレメント部
4a 一次電極
4b 二次電極
4c 三次電極
4d 四次電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
面状のエレメント部と、前記エレメント部の中心周りの方向に沿って前記エレメント部上に配置、もしくは前記エレメント部に対して対向配置された一次電極及び二次電極とを備え、前記一次電極は、前記エレメント部の中心周りの方向に(360°/n(nは、2以上の整数))の間隔で配置され、前記二次電極は、前記各一次電極から前記エレメント部の中心周りの方向に(360°×1/4n)離れた位置に配置され、前記エレメント部と前記一次電極又は前記二次電極との間に生じる静電力又は電磁力によって、平面内cosnθモードの一次振動を前記エレメント部に発生させる角速度センサであって、
前記一次電極と前記二次電極との何れか一方に接続され、接続された電極に交流電圧を印加して平面内cosnθモードの一次振動を前記エレメント部に発生させる交流電源と、
前記一次電極と前記二次電極との何れか他方に接続され、接続された電極に発生する電気信号の大きさを検出する検出手段と、
前記一次電極及び前記二次電極に対する、前記交流電源及び前記検出手段の接続状態を、前記交流電源が前記一次電極に接続され、前記検出手段が前記二次電極に接続された第1状態と、前記交流電源が前記二次電極に接続され、前記検出手段が前記一次電極に接続された第2状態とに切り替える切替手段と、
前記検出手段が検出する電気信号の大きさの変化に基づいて、前記第1状態及び前記第2状態における角速度を演算する演算手段とを備えたことを特徴とする角速度センサ。
【請求項2】
面状のエレメント部と、前記エレメント部の中心周りの方向に沿って前記エレメント部上に配置、もしくは前記エレメント部に対して対向配置された一次電極及び二次電極とを備え、前記一次電極は、前記エレメント部の中心周りの方向に360°/n間隔で位置するn個の位置のうち、1〜(n−1)個の位置に配置され、前記二次電極は、前記各一次電極から前記エレメント部の中心周りの方向に(360°×1/4n)離れた位置に配置され、前記エレメント部と前記一次電極又は前記二次電極との間に生じる静電力又は電磁力によって、平面内cosnθモードの一次振動を前記エレメント部に発生させる角速度センサであって、
前記一次電極と前記二次電極との何れか一方に接続され、接続された電極に交流電圧を印加して、平面内cosnθモードの固有振動数で平面内cosnθモードの一次振動を前記エレメント部に発生させる交流電源と、
前記一次電極と前記二次電極との何れか他方に接続され、接続された電極に発生する電気信号の大きさを検出する検出手段と、
前記一次電極及び前記二次電極に対する、前記交流電源及び前記検出手段の接続状態を、前記交流電源が前記一次電極に接続され、前記検出手段が前記二次電極に接続された第1状態と、前記交流電源が前記二次電極に接続され、前記検出手段が前記一次電極に接続された第2状態とに切り替える切替手段と、
前記検出手段が検出する電気信号の大きさの変化に基づいて、前記第1状態及び前記第2状態における角速度を演算する演算手段とを備えたことを特徴とする角速度センサ。
【請求項3】
面状のエレメント部と、前記エレメント部の中心周りの方向に沿って、前記エレメント部上に配置、もしくは前記エレメント部に対して対向配置された一次電極、二次電極、三次電極及び四次電極とを備え、前記一次電極は、前記エレメント部の中心周りの方向に(360°/n(nは、2以上の整数))の間隔で配置され、前記二次電極は、前記各一次電極から前記エレメント部の中心周りの方向に(360°×1/4n)離れた位置に配置され、前記三次電極は、前記各一次電極から前記エレメント部の中心周りの方向に(360°×2/4n)離れた位置に配置され、前記四次電極は、前記各一次電極から前記エレメント部の中心周りの方向に(360°×3/4n)離れた位置に配置され、前記エレメント部と前記一〜四次電極の何れか1つとの間に生じる静電力又は電磁力によって、平面内cosnθモードの一次振動を前記エレメント部に発生させる角速度センサであって、
接続された電極に第1交流電圧を印加して、平面内cosnθモードの一次振動を前記エレメント部に発生させる第1交流電源と、
接続された電極に発生する電気信号の大きさの変化を検出して、前記第1交流電圧の大きさを制御する第1検出手段と、
接続された電極に発生する電気信号の大きさの変化を検出する第2検出手段と、
前記第2検出手段によって検出された電気信号の大きさの変化を打ち消す第2交流電圧を、接続された電極に印加する第2交流電源と、
前記一〜四次電極に対する前記第1交流電源、前記第1検出手段、前記第2検出手段及び前記第2交流電源の接続状態を、下記第1状態と下記第2状態とに切り替える切替手段と、
前記第2交流電圧に基づいて、前記第1状態及び前記第2状態における角速度を演算する演算手段とを備えたことを特徴とする角速度センサ。
前記第1状態は、
前記エレメント部の中心周りの一方向に、前記第1交流電源が接続された電極、前記第2交流電源が接続された電極、前記第1検出手段が接続された電極、前記第2検出手段が接続された電極が、この順で位置する状態である。
前記第2状態は、
前記エレメント部の中心周りの他方向に、前記第1交流電源が接続された電極、前記第2交流電源が接続された電極、前記第1検出手段が接続された電極、前記第2検出手段が接続された電極が、この順で位置する状態である。
【請求項4】
面状のエレメント部と、前記エレメント部の中心周りの方向に沿って前記エレメント部上に配置、もしくは前記エレメント部に対して対向配置された一次電極、二次電極、三次電極及び四次電極とを備え、前記一次電極は、前記エレメント部の中心周りの方向に360°/n間隔で位置するn個の位置のうち、1〜(n−1)個の位置に配置され、前記二次電極は、前記各一次電極から前記エレメント部の中心周りの方向に(360°×1/4n)離れた位置に配置され、前記三次電極は、前記各一次電極から前記エレメント部の中心周りの方向に(360°×2/4n)離れた位置に配置され、前記四次電極は、前記各一次電極から前記エレメント部の中心周りの方向に(360°×3/4n)離れた位置に配置され、前記エレメント部と前記一〜四次電極の何れか1つとの間に生じる静電力又は電磁力によって、平面内cosnθモードの一次振動を前記エレメント部に発生させる角速度センサであって、
接続された電極に第1交流電圧を印加して、平面内cosnθモードの固有振動数で平面内cosnθモードの振動を前記エレメント部に発生させる第1交流電源と、
接続された電極に発生する電気信号の大きさの変化を検出して、前記第1交流電圧の大きさを制御する第1検出手段と、
接続された電極に発生する電気信号の大きさの変化を検出する第2検出手段と、
前記第2検出手段によって検出された電気信号の大きさの変化を打ち消す第2交流電圧を、接続された電極に印加する第2交流電源と、
前記一〜四次電極に対する前記第1交流電源、前記第1検出手段、前記第2検出手段及び前記第2交流電源の接続状態を、下記第1状態と下記第2状態とに切り替える切替手段と、
前記第2交流電圧に基づいて、前記第1状態及び前記第2状態における角速度を演算する演算手段とを備えたことを特徴とする角速度センサ。
前記第1状態は、
前記エレメント部の中心周りの一方向に、前記第1交流電源が接続された電極、前記第2交流電源が接続された電極、前記第1検出手段が接続された電極、前記第2検出手段が接続された電極が、この順で位置する状態である。
前記第2状態は、
前記エレメント部の中心周りの他方向に、前記第1交流電源が接続された電極、前記第2交流電源が接続された電極、前記第1検出手段が接続された電極、前記第2検出手段が接続された電極が、この順で位置する状態である。
【請求項5】
前記エレメント部がリング状に形成されていることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の角速度センサ。
【請求項6】
面状のエレメント部と、前記エレメント部の中心周りの方向に沿って前記エレメント部上に配置、もしくは前記エレメント部に対して対向配置された一次電極及び二次電極とを備え、
前記一次電極は、前記エレメント部の中心周りの方向に180°離れた2つの位置のうち少なくとも1つに配置され、前記二次電極は、前記各一次電極から前記エレメント部の中心周りの方向に90°離れた位置に配置され、前記エレメント部と前記一次電極又は前記二次電極との間に生じる静電力又は電磁力によって、平面内cosnθモードの一次振動を前記エレメント部に発生させる角速度センサであって、
前記一次電極と前記二次電極との何れか一方に接続され、接続された電極に交流電圧を印加して、前記エレメント部が含まれる平面内において、当該接続された電極と前記エレメント部の中心とを結ぶ線分の方向に前記エレメント部を一次振動させる交流電源と、
前記一次電極と前記二次電極との何れか他方に接続され、接続された電極に発生する電気信号の大きさを検出する検出手段と、
前記一次電極及び前記二次電極に対する、前記交流電源及び前記検出手段の接続状態を、前記交流電源が前記一次電極に接続され、前記検出手段が前記二次電極に接続された第1状態と、前記交流電源が前記二次電極に接続され、前記検出手段が前記一次電極に接続された第2状態とに切り替える切替手段と、
前記検出手段が検出する電気信号の大きさの変化に基づいて、前記第1状態及び前記第2状態における角速度を演算する演算手段とを備えたことを特徴とする角速度センサ。
【請求項7】
前記演算手段は、前記第1状態及び前記第2状態における角速度に基づいて、第1状態及び第2状態において演算した角速度に含まれるバイアス成分を算出することを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の角速度センサ。
【請求項8】
前記第1状態において前記演算手段が演算した角速度をy1、前記第2状態において前記演算手段が演算した角速度をy2、前記バイアス成分をbとしたとき、前記演算手段は、次式(1)を用いて前記バイアス成分bを算出することを特徴とする請求項7に記載の角速度センサ。
=(y1+y2)/2…(1)
【請求項9】
前記演算手段は、演算した角速度を前記バイアス成分を用いて補正することにより、角速度補正値を算出することを特徴とする請求項7又は8に記載の角速度センサ。
【請求項10】
前記第1状態において前記演算手段が演算した角速度をy1、前記第2状態において前記演算手段が演算した角速度をy2、前記角速度補正値をxとしたとき、前記演算手段は、次式(2)を用いて前記角速度補正値を算出することを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の角速度センサ。
x=(y1−y2)/2a…(2)(a:係数)
【請求項11】
請求項1〜10の何れか1項に記載の角速度センサを備えた電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−115559(P2009−115559A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−287778(P2007−287778)
【出願日】平成19年11月5日(2007.11.5)
【出願人】(000183369)住友精密工業株式会社 (336)
【Fターム(参考)】