角速度センサ
【課題】時分割検出動作により3軸まわりの角速度を高い精度で検出する。
【解決手段】XY平面に広がる可撓性支持体の下面中央に振動子を接合し、上面に駆動用素子群と検出用素子群とを配したセンサ本体部300を用意する。動作信号発生器100により、振動子を前半周期にZ軸励振する駆動信号DrZと後半周期にX軸励振する駆動信号DrXを発生し、マトリクス変換器200を介して駆動用素子群に供給する。検出用素子群からの信号により、振動子の各軸方向の変位SΔx,SΔy,SΔzを検出し、これをスイッチSWを介して振動安定期のみAM検波器AMDおよび駆動信号に同期した同期検波器SDに与える。X軸振動の振幅Fxa,位相FxpとZ軸振動の振幅Fza,位相Fzpを動作信号発生器100へ帰還させ、フィードバック制御し、所定の同期検波器SDから出力される信号を3軸の角速度ωx,ωy,ωzとして出力する。
【解決手段】XY平面に広がる可撓性支持体の下面中央に振動子を接合し、上面に駆動用素子群と検出用素子群とを配したセンサ本体部300を用意する。動作信号発生器100により、振動子を前半周期にZ軸励振する駆動信号DrZと後半周期にX軸励振する駆動信号DrXを発生し、マトリクス変換器200を介して駆動用素子群に供給する。検出用素子群からの信号により、振動子の各軸方向の変位SΔx,SΔy,SΔzを検出し、これをスイッチSWを介して振動安定期のみAM検波器AMDおよび駆動信号に同期した同期検波器SDに与える。X軸振動の振幅Fxa,位相FxpとZ軸振動の振幅Fza,位相Fzpを動作信号発生器100へ帰還させ、フィードバック制御し、所定の同期検波器SDから出力される信号を3軸の角速度ωx,ωy,ωzとして出力する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、角速度センサに関し、特に、独立した3軸まわりの角速度を検出することができる角速度センサに用いる信号処理回路に関する。
【背景技術】
【0002】
産業機器や民生用機器の分野では、内蔵用の小型角速度センサの需要が高まっている。角速度も、加速度や力と同様にベクトル量であるため、実用上は、三次元空間において独立した3軸まわりの角速度を検出可能な三次元角速度センサが望まれている。たとえば、下記の特許文献1には、三次元の加速度とともに、三次元の角速度を検出することが可能な静電容量型センサおよび圧電型センサが開示されている。
【0003】
一般的な角速度センサの検出原理は、三次元直交座標系において、振動子を第1の座標軸方向に振動させた状態において、当該振動子に対して第2の座標軸方向に作用するコリオリ力を測定することにより、第3の座標軸まわりの角速度を求める、というものである。このような検出原理では、振動子の振動方向に直交する2つの座標軸まわりの角速度検出は可能であるが、振動子の振動方向を向いた座標軸まわりの角速度検出を行うことはできない。したがって、3軸まわりの角速度を検出するためには、振動子を2通りの座標軸に沿って振動させる必要がある。
【0004】
前掲の特許文献1の<§7.2>には、3軸まわりの角速度検出を行うための時分割検出動作が開示されている。この検出動作では、まず、振動子を第1の座標軸方向に振動させた状態で、第2の座標軸まわりの角速度および第3の座標軸まわりの角速度を検出し、続いて、振動子を第2の座標軸方向に振動させた状態で、第1の座標軸まわりの角速度を検出することになる。同文献の<§7.3>には、そのような時分割検出動作を行うための検出回路も開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO94/023272号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したとおり、時分割検出動作により3軸まわりの角速度検出を行う機能をもった角速度センサは、前掲の特許文献1に示すように公知のものである。しかしながら、このような機能をもった角速度センサに用いる従来の信号処理回路には、精度の高い検出値を得ることができないという問題がある。すなわち、時分割検出動作では、振動子を第1の軸方向に振動させながら行う検出動作と、振動子を第2の軸方向に振動させながら行う検出動作と、を交互に繰り返し行う必要があるが、振動子の振動方向を交互に変える運用をとると、振動子の運動が不安定になり、正確な測定を行うことができない。
【0007】
そこで本発明は、時分割検出動作により3軸まわりの角速度を高い精度で検出可能な角速度センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1) 本発明の第1の態様は、XYZ三次元座標系における各座標軸まわりの角速度を検出する角速度センサにおいて、
中心位置にZ軸が通り、XY平面に平行な上面を有する可撓性支持体と、
可撓性支持体の下面中央に接合された振動子と、
可撓性支持体の周囲を固定する固定部材と、
可撓性支持体の上方に配置された駆動用素子群と、
可撓性支持体の上方に配置された検出用素子群と、
駆動用素子群に対して交流駆動信号を供給して振動子を所定の座標軸方向に振動させ、所定のタイミングで検出用素子群から得られる検出信号を用いて、各座標軸まわりの角速度を示す電気信号を出力する検出回路と、
を設け、
駆動用素子群は、XY平面上に投影したときに、X軸正の領域に配置されたX軸正側駆動用素子と、X軸負の領域に配置されたX軸負側駆動用素子と、Y軸正の領域に配置されたY軸正側駆動用素子と、Y軸負の領域に配置されたY軸負側駆動用素子と、によって構成され、X軸正側駆動用素子とX軸負側駆動用素子とに交流駆動信号を供給すると振動子がX軸に沿って振動し、Y軸正側駆動用素子とY軸負側駆動用素子とに交流駆動信号を供給すると振動子がY軸に沿って振動し、4組の駆動用素子のすべてに交流駆動信号を供給すると振動子がZ軸に沿って振動するように、可撓性支持体の個々の配置位置にそれぞれ特定の撓みを生じさせる機能を有し、
検出用素子群は、XY平面上に投影したときに、X軸正の領域に配置されたX軸正側検出用素子と、X軸負の領域に配置されたX軸負側検出用素子と、Y軸正の領域に配置されたY軸正側検出用素子と、Y軸負の領域に配置されたY軸負側検出用素子と、XZ平面およびYZ平面の双方に関して対称となるように配置されたZ軸変位検出用素子と、によって構成され、X軸正側検出用素子とX軸負側検出用素子とは、振動子がX軸方向に変位したときに可撓性支持体に生じる撓みに起因して、当該変位に応じた絶対値をもち互いに逆極性の検出信号を出力し、Y軸正側検出用素子とY軸負側検出用素子とは、振動子がY軸方向に変位したときに可撓性支持体に生じる撓みに起因して、当該変位に応じた絶対値をもち互いに逆極性の検出信号を出力し、Z軸変位検出用素子は、振動子がZ軸方向に変位したときに可撓性支持体に生じる撓みに起因して、当該変位に応じた絶対値をもち変位方向に応じた極性の検出信号を出力する機能を有し、
検出回路は、
第1の半周期T1と第2の半周期T2とによって構成される周期Tについて、周期的動作を実行する機能を有し、
第1の半周期T1には、特定の駆動素子に振動子を第1の座標軸方向に振動させるための駆動信号を供給し、第2の半周期T2には、特定の駆動素子に振動子を第2の座標軸方向に振動させるための駆動信号を供給し、
第1の半周期T1において振動子が安定した振動状態を維持すると予想される第1の座標軸方向に関する安定振動期の期間、検出用素子群から得られる振動子のコリオリ力に起因した第2の座標軸方向への変位を示す検出値に基づいて、第3の座標軸まわりの角速度を検出するとともに、検出用素子群から得られる振動子のコリオリ力に起因した第3の座標軸方向への変位を示す検出値に基づいて、第2の座標軸まわりの角速度を検出し、
第2の半周期T2において振動子が安定した振動状態を維持すると予想される第2の座標軸方向に関する安定振動期の期間、検出用素子群から得られる振動子のコリオリ力に起因した第3の座標軸方向への変位を示す検出値に基づいて、第1の座標軸まわりの角速度を検出するようにしたものである。
【0009】
(2) 本発明の第2の態様は、上述した第1の態様に係る角速度センサにおいて、
検出回路が、検出用素子群から得られる信号に基づいて振動子の位相および振幅を測定する機能と、この測定値に基づいて、振動子の位相および振幅に対するフィードバック制御を行う機能と、を有するようにしたものである。
【0010】
(3) 本発明の第3の態様は、上述した第1または第2の態様に係る角速度センサにおいて、
特定の振動方向についての振動子の共振周波数をf0とした場合に、振動子を当該振動方向へ振動させるための駆動信号の供給開始時から、振動子が安定した振動状態になると予想される時点までの期間αを、(1/f0)×50≦α≦(1/f0)×125の範囲に設定するようにしたものである。
【0011】
(4) 本発明の第4の態様は、上述した第3の態様に係る角速度センサにおいて、
第1の座標軸方向についての振動子の共振周波数をf1とし、第2の座標軸方向についての振動子の共振周波数をf2とした場合に、第1の半周期T1を、(1/f1)×100≦T1≦(1/f1)×250の範囲に設定し、第2の半周期T2を、(1/f2)×100≦T2≦(1/f2)×250の範囲に設定するようにしたものである。
【0012】
(5) 本発明の第5の態様は、XYZ三次元座標系における各座標軸まわりの角速度を検出する角速度センサにおいて、
中心位置にZ軸が通り、XY平面に平行な上面を有する可撓性支持体と、
可撓性支持体の下面中央に接合された振動子と、
可撓性支持体の周囲を固定する固定部材と、
可撓性支持体の上方に配置された駆動用素子群と、
可撓性支持体の上方に配置された検出用素子群と、
検出用素子群から得られる検出信号に基づく制御を行いながら、駆動用素子群に対して交流駆動信号を供給して振動子を所定の座標軸方向に振動させ、所定のタイミングで検出用素子群から得られる検出信号を用いて、各座標軸まわりの角速度を示す電気信号を出力する検出回路と、
を設け、
駆動用素子群は、XY平面上に投影したときに、X軸正の領域に配置されたX軸正側駆動用素子と、X軸負の領域に配置されたX軸負側駆動用素子と、Y軸正の領域に配置されたY軸正側駆動用素子と、Y軸負の領域に配置されたY軸負側駆動用素子と、によって構成され、X軸正側駆動用素子とX軸負側駆動用素子とに交流駆動信号を供給すると振動子がX軸に沿って振動し、Y軸正側駆動用素子とY軸負側駆動用素子とに交流駆動信号を供給すると振動子がY軸に沿って振動し、4組の駆動用素子のすべてに交流駆動信号を供給すると振動子がZ軸に沿って振動するように、可撓性支持体の個々の配置位置にそれぞれ特定の撓みを生じさせる機能を果たし、
検出用素子群は、XY平面上に投影したときに、X軸正の領域に配置されたX軸正側検出用素子と、X軸負の領域に配置されたX軸負側検出用素子と、Y軸正の領域に配置されたY軸正側検出用素子と、Y軸負の領域に配置されたY軸負側検出用素子と、XZ平面およびYZ平面の双方に関して対称となるように配置されたZ軸変位検出用素子と、によって構成され、X軸正側検出用素子とX軸負側検出用素子とは、振動子がX軸方向に変位したときに可撓性支持体に生じる撓みに起因して、当該変位に応じた絶対値をもち互いに逆極性の検出信号を出力し、Y軸正側検出用素子とY軸負側検出用素子とは、振動子がY軸方向に変位したときに可撓性支持体に生じる撓みに起因して、当該変位に応じた絶対値をもち互いに逆極性の検出信号を出力し、Z軸変位検出用素子は、振動子がZ軸方向に変位したときに可撓性支持体に生じる撓みに起因して、当該変位に応じた絶対値をもち変位方向に応じた極性の検出信号を出力する機能を果たし、
検出回路は、
第1の半周期T1と第2の半周期T2とによって構成される周期Tについて、周期的動作を実行する機能を有するようにし、更に、
第1の半周期T1には、所定の周波数および振幅をもった交流信号が配されており、第2の半周期T2には、何ら交流信号が配されていない、第1の駆動信号を発生する第1の駆動信号発生部と、
第1の半周期T1には、何ら交流信号が配されておらず、第2の半周期T2には、所定の周波数および振幅をもった交流信号が配されている、第2の駆動信号を発生する第2の駆動信号発生部と、
第1の半周期T1には、第1の駆動信号の正側のピークに同期した位置に第1の駆動信号の周期の1/2以下のパルス幅をもったパルスが周期的に配され、第2の半周期T2には、第2の駆動信号の正側のピークに同期した位置に第2の駆動信号の周期の1/2以下のパルス幅をもったパルスが周期的に配されている、正側同期検波信号を発生する正側同期検波信号発生部と、
第1の半周期T1には、第1の駆動信号の負側のピークに同期した位置に第1の駆動信号の周期の1/2以下のパルス幅をもったパルスが周期的に配され、第2の半周期T2には、第2の駆動信号の負側のピークに同期した位置に第2の駆動信号の周期の1/2以下のパルス幅をもったパルスが周期的に配されている、負側同期検波信号を発生する負側同期検波信号発生部と、
第1の半周期T1において振動子が安定した振動状態を維持すると予想される第1の安定振動期を示す第1の検波イネーブル信号を発生する第1の検波イネーブル信号発生部と、
第2の半周期T2において振動子が安定した振動状態を維持すると予想される第2の安定振動期を示す第2の検波イネーブル信号を発生する第2の検波イネーブル信号発生部と、
第1の半周期T1には、振動子を第1の座標軸方向に振動させるために必要な駆動用素子に第1の駆動信号もしくはその位相反転信号を供給し、第2の半周期T2には、振動子を第2の座標軸方向に振動させるために必要な駆動用素子に第2の駆動信号もしくはその位相反転信号を供給するマトリクス変換器と、
第1の安定振動期の期間、正側同期検波信号および負側同期検波信号を利用することにより検出用素子群から得られる振動子のコリオリ力に起因した第2の座標軸方向への変位を示す検出値に基づいて、第3の座標軸まわりの角速度を示す電気信号を出力する第1の角速度検出部と、
第1の安定振動期の期間、正側同期検波信号および負側同期検波信号を利用することにより検出用素子群から得られる振動子のコリオリ力に起因した第3の座標軸方向への変位を示す検出値に基づいて、第2の座標軸まわりの角速度を示す電気信号を出力する第2の角速度検出部と、
第2の安定振動期の期間、正側同期検波信号および負側同期検波信号を利用することにより検出用素子群から得られる振動子のコリオリ力に起因した第3の座標軸方向への変位を示す検出値に基づいて、第1の座標軸まわりの角速度を示す電気信号を出力する第3の角速度検出部と、
第1の安定振動期の期間、検出用素子群から得られる振動子の第1の座標軸方向への変位を示す検出値に基づいて、振動子の振幅を測定する第1の振幅測定部と、
第1の安定振動期の期間、正側同期検波信号および負側同期検波信号を利用することにより検出用素子群から得られる振動子の第1の座標軸方向への変位を示す検出値に基づいて、振動子の位相を測定する第1の位相測定部と、
第2の安定振動期の期間、検出用素子群から得られる振動子の第2の座標軸方向への変位を示す検出値に基づいて、振動子の振幅を測定する第2の振幅測定部と、
第2の安定振動期の期間、正側同期検波信号および負側同期検波信号を利用することにより検出用素子群から得られる振動子の第2の座標軸方向への変位を示す検出値に基づいて、振動子の位相を測定する第2の位相測定部と、
第1の振幅測定部によって測定された振幅および第1の位相測定部によって測定された位相に基づいて、第1の駆動信号発生部が発生する第1の駆動信号の周波数および振幅が所定の基準周波数および基準振幅となるようにフィードバック制御するとともに、第2の振幅測定部によって測定された振幅および第2の位相測定部によって測定された位相に基づいて、第2の駆動信号発生部が発生する第2の駆動信号の周波数および振幅が所定の基準周波数および基準振幅となるようにフィードバック制御するフィードバック制御部と、
を備えるようにしたものである。
【0013】
(6) 本発明の第6の態様は、XYZ三次元座標系における各座標軸まわりの角速度を検出する角速度センサにおいて、
中心位置にZ軸が通り、XY平面に平行な上面を有する可撓性支持体と、
可撓性支持体の下面中央に接合された振動子と、
可撓性支持体の周囲を固定する固定部材と、
可撓性支持体の上方に配置された駆動用素子群と、
可撓性支持体の上方に配置された検出用素子群と、
検出用素子群から得られる検出信号に基づく制御を行いながら、駆動用素子群に対して交流駆動信号を供給して振動子を所定の座標軸方向に振動させ、所定のタイミングで検出用素子群から得られる検出信号を用いて、各座標軸まわりの角速度を示す電気信号を出力する検出回路と、
を設け、
駆動用素子群は、XY平面上に投影したときに、X軸正の領域に配置されたX軸正側駆動用素子と、X軸負の領域に配置されたX軸負側駆動用素子と、Y軸正の領域に配置されたY軸正側駆動用素子と、Y軸負の領域に配置されたY軸負側駆動用素子と、によって構成され、X軸正側駆動用素子とX軸負側駆動用素子とに交流駆動信号を供給すると振動子がX軸に沿って振動し、4組の駆動用素子のすべてに交流駆動信号を供給すると振動子がZ軸に沿って振動するように、可撓性支持体の個々の配置位置にそれぞれ特定の撓みを生じさせる機能を果たし、
検出用素子群は、XY平面上に投影したときに、X軸正の領域に配置されたX軸正側検出用素子と、X軸負の領域に配置されたX軸負側検出用素子と、Y軸正の領域に配置されたY軸正側検出用素子と、Y軸負の領域に配置されたY軸負側検出用素子と、XZ平面およびYZ平面の双方に関して対称となるように配置されたZ軸変位検出用素子と、によって構成され、X軸正側検出用素子とX軸負側検出用素子とは、振動子がX軸方向に変位したときに可撓性支持体に生じる撓みに起因して、当該変位に応じた絶対値をもち互いに逆極性の検出信号を出力し、Y軸正側検出用素子とY軸負側検出用素子とは、振動子がY軸方向に変位したときに可撓性支持体に生じる撓みに起因して、当該変位に応じた絶対値をもち互いに逆極性の検出信号を出力し、Z軸変位検出用素子は、振動子がZ軸方向に変位したときに可撓性支持体に生じる撓みに起因して、当該変位に応じた絶対値をもち変位方向に応じた極性の検出信号を出力する機能を果たし、
検出回路は、
第1の半周期Tzと第2の半周期Txとによって構成される周期Tについて、周期的動作を実行する機能を有するようにし、更に、
第1の半周期Tzには、所定の周波数fzおよび振幅Azをもった交流信号が配されており、第2の半周期Txには、何ら交流信号が配されていない、Z軸駆動信号DrZを発生するZ軸駆動信号発生部と、
第1の半周期Tzには、何ら交流信号が配されておらず、第2の半周期Txには、所定の周波数fxおよび振幅Axをもった交流信号が配されている、X軸駆動信号DrXを発生するX軸駆動信号発生部と、
第1の半周期Tzには、Z軸駆動信号DrZの正側のピークに同期した位置にZ軸駆動信号DrZの周期の1/2以下のパルス幅をもったパルスが周期的に配され、第2の半周期Txには、X軸駆動信号DrXの正側のピークに同期した位置にX軸駆動信号DrXの周期の1/2以下のパルス幅をもったパルスが周期的に配されている、正側同期検波信号SdAを発生する正側同期検波信号発生部と、
第1の半周期Tzには、Z軸駆動信号DrZの負側のピークに同期した位置にZ軸駆動信号DrZの周期の1/2以下のパルス幅をもったパルスが周期的に配され、第2の半周期Txには、X軸駆動信号DrXの負側のピークに同期した位置にX軸駆動信号DrXの周期の1/2以下のパルス幅をもったパルスが周期的に配されている、負側同期検波信号SdBを発生する負側同期検波信号発生部と、
第1の半周期Tzにおいて振動子がZ軸に沿って安定した振動状態を維持すると予想される第1の安定振動期βzを示すZ軸検波イネーブル信号EnZを発生するZ軸検波イネーブル信号発生部と、
第2の半周期Txにおいて振動子がX軸に沿って安定した振動状態を維持すると予想される第2の安定振動期βxを示すX軸検波イネーブル信号EnXを発生するX軸検波イネーブル信号発生部と、
第1の半周期Tzには、4組の駆動用素子のすべてにZ軸駆動信号DrZを供給し、第2の半周期Txには、X軸正側駆動用素子にX軸駆動信号DrXを供給しX軸負側駆動用素子にX軸駆動信号DrXの位相反転信号を供給するマトリクス変換器と、
第1の安定振動期βzの期間、正側同期検波信号および負側同期検波信号を利用することにより、X軸正側検出用素子の検出信号とX軸負側検出用素子の検出信号との差を示す検出値に基づいて、Y軸まわりの角速度ωyを示す電気信号を出力するY軸まわり角速度検出部と、
第1の安定振動期βzの期間、正側同期検波信号および負側同期検波信号を利用することにより、Y軸正側検出用素子の検出信号とY軸負側検出用素子の検出信号との差を示す検出値に基づいて、X軸まわりの角速度ωxを示す電気信号を出力するX軸まわり角速度検出部と、
第2の安定振動期βxの期間、正側同期検波信号および負側同期検波信号を利用することにより、Y軸正側検出用素子の検出信号とY軸負側検出用素子の検出信号との差を示す検出値に基づいて、Z軸まわりの角速度ωzを示す電気信号を出力するZ軸まわり角速度検出部と、
第1の安定振動期βzの期間、Z軸変位検出用素子から得られる振動子のZ軸方向への変位を示す検出値に基づいて、振動子のZ軸方向の振幅を測定するZ軸振幅測定部と、
第1の安定振動期βzの期間、正側同期検波信号および負側同期検波信号を利用することにより、Z軸変位検出用素子から得られる振動子のZ軸方向への変位を示す検出値に基づいて、振動子のZ軸方向の位相を測定するZ軸位相測定部と、
第2の安定振動期βxの期間、X軸正側検出用素子の検出信号とX軸負側検出用素子の検出信号との差として得られる振動子のX軸方向への変位を示す検出値に基づいて、振動子のX軸方向の振幅を測定するX軸振幅測定部と、
第2の安定振動期βxの期間、正側同期検波信号および負側同期検波信号を利用することにより、X軸正側検出用素子の検出信号とX軸負側検出用素子の検出信号との差として得られる振動子のX軸方向への変位を示す検出値に基づいて、振動子のX軸方向の位相を測定するX軸位相測定部と、
Z軸振幅測定部によって測定された振幅およびZ軸位相測定部によって測定された位相に基づいて、Z軸駆動信号発生部が発生するZ軸駆動信号DrZの周波数および振幅が所定の基準周波数および基準振幅となるようにフィードバック制御するとともに、X軸振幅測定部によって測定された振幅およびX軸位相測定部によって測定された位相に基づいて、X軸駆動信号発生部が発生するX軸駆動信号DrXの周波数および振幅が所定の基準周波数および基準振幅となるようにフィードバック制御するフィードバック制御部と、
を備えるようにしたものである。
【0014】
(7) 本発明の第7の態様は、上述した第6の態様に係る角速度センサにおいて、
マトリクス変換器が、
「DrZ+DrX」なる和信号を生成してX軸正側駆動用素子に供給する回路と、
「DrZ−DrX」なる差信号を生成してX軸負側駆動用素子に供給する回路と、
「DrZ」をY軸正側駆動用素子に供給する回路と、
「DrZ」をY軸負側駆動用素子に供給する回路と、
を有するようにしたものである。
【0015】
(8) 本発明の第8の態様は、上述した第5〜第7の態様に係る角速度センサにおいて、
角速度検出部が、
与えられた信号の信号値を、正側同期検波信号のパルスが与えられている間だけ積算する正側積算器と、
与えられた信号の信号値を、負側同期検波信号のパルスが与えられている間だけ積算する負側積算器と、
正側積算器の積算値と負側積算器の積算値との差を出力する差分器と、
によって構成される同期検波回路SDを有し、差分器によって求められた差に相当する電気信号を角速度を示す信号として出力するようにしたものである。
【0016】
(9) 本発明の第9の態様は、上述した第8の態様に係る角速度センサにおいて、
角速度検出部が、安定振動期の期間だけ検出値を通過させ、これを同期検波回路SDに与えるゲートスイッチSWを、更に有するようにしたものである。
【0017】
(10) 本発明の第10の態様は、上述した第5〜第9の態様に係る角速度センサにおいて、
位相測定部が、
与えられた信号の信号値を、正側同期検波信号のパルスが与えられている間だけ積算する正側積算器と、
与えられた信号の信号値を、負側同期検波信号のパルスが与えられている間だけ積算する負側積算器と、
正側積算器の積算値と負側積算器の積算値との差を出力する差分器と、
によって構成される同期検波回路SDを有し、差分器によって求められた差に相当する電気信号を位相の測定値を示す信号として出力するようにしたものである。
【0018】
(11) 本発明の第11の態様は、上述した第10の態様に係る角速度センサにおいて、
位相測定部が、安定振動期の期間だけ検出値を通過させ、これを同期検波回路SDに与えるゲートスイッチSWを、更に有するようにしたものである。
【0019】
(12) 本発明の第12の態様は、上述した第5〜第11の態様に係る角速度センサにおいて、
角速度検出部が、安定振動期でなくなったときに、直前の検出値を保持する機能を有し、次の安定振動期がくるまでの期間、保持していた検出値を継続して出力するようにしたものである。
【0020】
(13) 本発明の第13の態様は、上述した第5〜第12の態様に係る角速度センサにおいて、
フィードバック制御部が、半周期ごとのフィードバック制御を行う際に、当該半周期の振動方向についての振動子の共振周波数をf0とした場合に、駆動信号の周波数がf0となるような制御を行うようにしたものである。
【0021】
(14) 本発明の第14の態様は、上述した第5〜第12の態様に係る角速度センサにおいて、
フィードバック制御部が、半周期ごとのフィードバック制御を行う際に、当該半周期の振動方向についての振動子の共振周波数をf0とした場合に、駆動信号の周波数がf0の近傍の所定周波数(f0は除く)となるような制御を行うようにしたものである。
【0022】
(15) 本発明の第15の態様は、上述した第13または第14の態様に係る角速度センサにおいて、
駆動信号の位相と、位相測定部によって測定された振動子の位相とが、90°の位相差を生じるような周波数を、周波数f0とみなして、駆動信号に対する周波数制御を行うようにしたものである。
【0023】
(16) 本発明の第16の態様は、上述した第1〜第15の態様に係る角速度センサにおいて、
駆動用素子群および検出用素子群を構成する個々の素子が、可撓性支持体の上面に固定された圧電素子からなるようにしたものである。
【0024】
(17) 本発明の第17の態様は、上述した第1〜第15の態様に係る角速度センサにおいて、
駆動用素子群および検出用素子群を構成する個々の素子が、可撓性支持体の上面に固定された変位電極と、この変位電極に対向する位置に固定された固定電極と、によって構成される容量素子からなるようにしたものである。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係る角速度センサによれば、振動子を、半周期ごとに、2つの座標軸方向に交互に振動させながら、振動安定期にのみコリオリ力に基づく変位成分を効率的に取り出すことができるため、時分割検出動作により3軸まわりの角速度を高い精度で検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施形態に係る圧電素子を用いた角速度センサのセンサ本体部の構造を示す縦断面図であり、図2の構造体をXZ平面で切断した断面が示されている。
【図2】図1に示すセンサ本体部の構造を示す上面図である(ハッチングは、各電極の形状を明瞭に示すためのものであり、断面を示すものではない)。
【図3】本発明に係る角速度センサの検出回路の構成を示す回路図である。
【図4】図3に示す検出回路における動作信号発生器100から出力される各動作信号を示す波形図である。
【図5】図3に示す検出回路におけるマトリクス変換器200の演算機能を示す図である。
【図6】図3に示す検出回路におけるマトリクス変換器200の具体的な構成例を示す回路図である。
【図7】図3に示す検出回路による、角速度が作用していない状態での振動子の駆動動作を説明する信号波形図である。
【図8】図3に示す検出回路における同期検波回路SDの構成例を示す回路図である。
【図9】図3に示す検出回路において、正しい位相制御が行われているときの各信号波形を示す波形図である。
【図10】図3に示す検出回路において、位相が遅れているときの各信号波形を示す波形図である。
【図11】図3に示す検出回路において、位相が進んでいるときの各信号波形を示す波形図である。
【図12】図3に示す検出回路において、Y軸まわりの角速度が作用していない状態での動作を説明する信号波形図である。
【図13】図3に示す検出回路において、Y軸まわりの角速度が作用している状態での動作を説明する信号波形図である。
【図14】本発明に係る角速度センサの全般動作を説明する信号波形図である。
【図15】一般的な機械的振動系の周波数特性を示すグラフである。
【図16】本発明の別な実施形態に係る容量素子を用いたセンサ本体部の構造を示す縦断面図である。
【図17】図16に示すセンサ本体部の補助基板60の下面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明を図示する実施形態に基づいて説明する。
【0028】
<<< §1.センサ本体部の基本構造 >>>
本発明に係る角速度センサは、センサ本体部と検出回路とによって構成される。ここでは、まず、センサ本体部の基本構造を説明する。センサ本体部は、振動子と、これを支持する可撓性支持体および固定部材と、振動子を振動させる駆動用素子群と、振動子の変位を検出する検出用素子群と、によって構成されている。
【0029】
図1は、本発明の一実施形態に係る圧電素子を用いた角速度センサのセンサ本体部の構造を示す縦断面図である。図示のとおり、このセンサ本体部は、可撓性支持体10、振動子20、固定部材30、圧電素子40、そして各電極(先頭にEがつく符号が付された要素)によって構成されている。ここでは、説明の便宜上、振動子20の重心位置に原点Oをとり、図の右方向にX軸、図の上方向にZ軸、図の紙面垂直奥方向にY軸をとったXYZ三次元座標系を定義することにする。この角速度センサは、このXYZ三次元座標系におけるX軸まわりの角速度ωx、Y軸まわりの角速度ωy、Z軸まわりの角速度ωzをそれぞれ独立して検出する機能を有する。
【0030】
図2は、このセンサ本体部の構造を示す上面図である。なお、図2に示すX軸,Y軸,原点Oは、このセンサ本体部の上面に位置するものではなく、実際には、図1に示す原点Oの位置に配置されている。ただ、後述する電極配置の説明では、XY平面上に投影したときの各電極の位置に言及するため、図2では、便宜上、XY平面の投影像を描いてある。また、図2では、各電極の形状を明瞭に示すため、電極部分にハッチングを施して示してある(この図2におけるハッチングは断面を示すものではない)。図1に示す縦断面図は、この図2に示すセンサ本体部を、XZ平面で切断した断面を示している。
【0031】
図示の可撓性支持体10は、可撓性をもった正方形状の基板状部材であり、中心位置にZ軸が通り、XY平面に平行な上面を有している。図1に示すように、この可撓性支持体10の下面中央には、円柱状の振動子20が接合されている。また、この可撓性支持体10の下面周囲には、固定部材30が接合されており、その底面は、図示されていないセンサ筐体に固定される。振動子20と固定部材30との間には、振動子20の周囲を取り囲むような環状溝部Gが形成されており、その上方に位置する可撓性支持体10の部分は、薄い板状部材を構成し、外力の作用によって撓みを生じる。
【0032】
可撓性支持体10の上方には、駆動用素子群と検出用素子群とが配置されている。すなわち、図1に示すように、可撓性支持体10の上面には、共通電極Ecが形成され、更にその上面には、圧電素子40が配置され、この圧電素子40の上面には、合計12組の個別電極が形成されている。圧電素子40は、図2に示すとおり、円盤状の素子であり、たとえば、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)などの圧電セラミックスによって構成することができる。共通電極Ecは、この円盤状の圧電素子の下面に形成された円盤状の電極であり、右側には、配線の用に供する突起部が形成されている。図2の上面図にハッチングを施して示されている共通電極Ecは、この突起部の部分であり、実際には、共通電極Ecは円盤状の圧電素子40の下面全面に広がっている。
【0033】
圧電素子40の上面に形成された12組の個別電極の形状および配置は、図2の上面図に示すとおりである。これら12組の個別電極は、いずれも、図1に示す環状溝部Gの上方に配置されている。別言すれば、可撓性支持体10のうち、外力の作用によって撓みが生じる部分に配置されている。
【0034】
まず、駆動用素子群を構成する電極としては、XY平面上に投影したときに、X軸正の領域に配置されたX軸正側駆動用電極Ex(+)と、X軸負の領域に配置されたX軸負側駆動用電極Ex(−)と、Y軸正の領域に配置されたY軸正側駆動用電極Ey(+)と、Y軸負の領域に配置されたY軸負側駆動用電極Ey(−)と、の4組が設けられている。
【0035】
一方、検出用素子群を構成する電極としては、XY平面上に投影したときに、X軸正の領域に配置されたX軸正側検出用電極Ex1と、X軸負の領域に配置されたX軸負側検出用電極Ex2と、Y軸正の領域に配置されたY軸正側検出用電極Ey1と、Y軸負の領域に配置されたY軸負側検出用電極Ey2と、の4組が設けられており、更に、4枚の電極からなるZ軸変位検出用電極Ez1〜Ez4が設けられている。ここで、この4枚のZ軸変位検出用電極Ez1〜Ez4は、XZ平面およびYZ平面の双方に関して対称となるように配置された電極である。
【0036】
図2に示すとおり、ここに示す実施形態の場合、この合計12組の個別電極からなる全体的な電極パターンは、XZ平面およびYZ平面の双方に関して対称となっている。これは、後述する駆動信号や検出信号に対称性を確保するための配慮である。たとえば、X軸正側駆動用電極Ex(+)とX軸負側駆動用電極Ex(−)とが、YZ平面に関して対称性を有していれば、両電極に同一振幅の駆動信号を供給することにより、振動子を原点Oを中心として振動させることができる。
【0037】
なお、ここに示す例では、検出用素子群を構成する8枚の電極Ex1,Ex2,Ey1,Ey2,Ez1〜Ez4の外側に、駆動用素子群を構成する4枚の電極Ex(+),Ex(−),Ey(+),Ey(−)を配置する構成を採っているが、逆に、駆動用素子群を構成する電極を内側、検出用素子群を構成する電極を外側に配置してもかまわない。
【0038】
ここで、圧電素子40の上面に形成された個々の個別電極と、当該個別電極の下方に位置する圧電素子40の一部分と、その下方に位置する共通電極Ecの一部分とによって、駆動用素子もしくは検出用素子が形成される。すなわち、ここに示す圧電型のセンサでは、上下一対の電極でサンドイッチされた圧電素子が、1つの駆動用素子もしくは検出用素子を構成することになる。
【0039】
具体的には、X軸正側駆動用電極Ex(+)とその下方の圧電素子40の一部分とその下方の共通電極Ecの一部分とによりX軸正側駆動用素子が構成され、X軸負側駆動用電極Ex(−)とその下方の圧電素子40の一部分とその下方の共通電極Ecの一部分とによりX軸負側駆動用素子が構成され、Y軸正側駆動用電極Ey(+)とその下方の圧電素子40の一部分とその下方の共通電極Ecの一部分とによりY軸正側駆動用素子が構成され、Y軸負側駆動用電極Ey(−)とその下方の圧電素子40の一部分とその下方の共通電極Ecの一部分とによりY軸負側駆動用素子が構成される。
【0040】
同様に、X軸正側検出用電極Ex1とその下方の圧電素子40の一部分とその下方の共通電極Ecの一部分とによりX軸正側検出用素子が構成され、X軸負側検出用電極Ex2とその下方の圧電素子40の一部分とその下方の共通電極Ecの一部分とによりX軸負側検出用素子が構成され、Y軸正側検出用電極Ey1とその下方の圧電素子40の一部分とその下方の共通電極Ecの一部分とによりY軸正側検出用素子が構成され、Y軸負側検出用電極Ey2とその下方の圧電素子40の一部分とその下方の共通電極Ecの一部分とによりY軸負側検出用素子が構成され、Z軸変位検出用電極Ez1〜Ez4とその下方の圧電素子40の一部分とその下方の共通電極Ecの一部分とによりZ軸変位検出用素子が構成される。
【0041】
ここで、たとえば、圧電素子40が、上面に正、下面に負の電圧を印加するとXY平面に沿って伸び、上面に負、下面に正の電圧を印加するとXY平面に沿って縮むような特性をもった素子であるとすると(あるいは、これとは全く逆の特性をもった素子でもよい)、共通電極Ecを接地基準電位として、X軸正側駆動用電極Ex(+)に所定の交流電圧を加え、X軸負側駆動用電極Ex(−)に逆位相の交流電圧を加えれば、可撓性支持体10のX軸正側の部分と負側の部分とが周期的に伸縮し、かつ、両者の伸縮状態が常に逆になるため、振動子20はX軸方向に振動することになる。
【0042】
同様に、Y軸正側駆動用電極Ey(+)に所定の交流電圧を加え、Y軸負側駆動用電極Ey(−)に逆位相の交流電圧を加えれば、可撓性支持体10のY軸正側の部分と負側の部分とが周期的に伸縮し、かつ、両者の伸縮状態が常に逆になるため、振動子20はY軸方向に振動することになる。また、4枚の駆動用電極Ex(+),Ex(−),Ey(+),Ey(−)に対して、同位相の交流電圧を加えると、各部が同一周期で伸縮するため、振動子20はZ軸方向に振動することになる。
【0043】
このように、4枚の駆動用電極Ex(+),Ex(−),Ey(+),Ey(−)の一部もしくは全部に対して、様々な位相をもった交流駆動信号を供給することにより、振動子をX軸,Y軸,Z軸に振動させることができる。もっとも、後述する具体的な検出動作では、このうち、X軸方向への振動動作と、Z軸方向への振動動作のみを行い、Y軸方向への振動動作は行っていない。
【0044】
なお、圧電素子の特性は、製造工程において施す分極処理の極性に基づいて任意に設定することが可能である。したがって、図2に示す円盤状の圧電素子40の個々の部分ごとに、それぞれ異なる分極処理を施せば、部分ごとに特性を反転させることが可能である。このように、部分ごとに特性が反転した圧電素子を用いた場合、駆動のために供給する交流信号の位相は、上例の場合と異なることになる。
【0045】
たとえば、X軸正側駆動用電極Ex(+)が形成されている領域と、X軸負側駆動用電極Ex(−)が形成されている領域とについて、圧電素子40に互いに逆極性の分極処理が施されていた場合、振動子20をX軸方向に振動させるには、両電極Ex(+),Ex(−)に同位相の交流電圧を加える必要がある(同位相の交流電圧を加えても、特性が逆であるため、一方が伸びれば、他方が縮む関係になる)。また、この場合、振動子20をZ軸方向に振動させるには、両電極Ex(+),Ex(−)には逆位相の交流電圧を加える必要がある。
【0046】
このように、各駆動用電極に供給する交流駆動信号の位相は、各駆動用電極の形成領域における圧電素子の分極特性に依存して決める必要があるが、ここでは、圧電素子40の全領域が同一の分極特性を有する典型的な実施例を用いた場合についての説明を行うことにする。
【0047】
一方、各検出用電極には、下方の可撓性支持体10の一部分の伸縮状態に基づき、共通電極Ecを接地基準電位として、正もしくは負の電圧が発生する。たとえば、振動子20がX軸方向に変位すると、可撓性支持体10のX軸正側の部分と負側の部分とにおける伸縮状態が逆になるので、X軸正側検出用電極Ex1とX軸負側検出用電極Ex2とには、互いに逆極性の電圧が発生する。このとき、発生電圧の極性は、振動子の変位方向に依存し、発生電圧の大きさは、振動子の変位量に依存する。したがって、X軸正側検出用電極Ex1の発生電圧とX軸負側検出用電極Ex2の発生電圧との差を示す検出値は、振動子20のX軸方向に関する変位(符号は変位方向、絶対値は変位量)を示す値になる。
【0048】
同様に、Y軸正側検出用電極Ey1の発生電圧とY軸負側検出用電極Ey2の発生電圧との差を示す検出値は、振動子20のY軸方向に関する変位(符号は変位方向、絶対値は変位量)を示す値になる。また、Z軸方向に関する変位に関しては、4枚のZ軸変位検出用電極Ez1〜Ez4に同等の電圧が発生するので、これら4枚の電極Ez1〜Ez4の発生電圧の総和を示す検出値は、振動子20のZ軸方向に関する変位(符号は変位方向、絶対値は変位量)を示す値になる。なお、振動子20のZ軸方向に関する変位は、X軸検出用電極Ex1,Ex2およびY軸検出用電極Ey1,Ey2の発生電圧の総和として検出することも可能である。
【0049】
このように、各検出用電極Ex1,Ex2,Ey1,Ey2,Ez1〜Ez4の発生電圧に対する加算や減算を行うことにより、振動子の各座標軸方向への変位を検出することができ、また、作用したコリオリ力を変位として検出することもできる。
【0050】
結局、ここに示すセンサ本体部を用いれば、次のような方法で、各座標軸まわりの角速度ωx,ωy,ωzの検出が可能である。たとえば、振動子20をX軸方向に振動させた状態で、振動子20のY軸方向への変位(Y軸方向に作用するコリオリ力)を検出すれば、当該変位はZ軸まわりの角速度ωzに対応し、振動子20のZ軸方向への変位(Z軸方向に作用するコリオリ力)を検出すれば、当該変位はY軸まわりの角速度ωyに対応することになる。
【0051】
同様に、振動子20をY軸方向に振動させた状態で、振動子20のX軸方向への変位(X軸方向に作用するコリオリ力)を検出すれば、当該変位はZ軸まわりの角速度ωzに対応し、振動子20のZ軸方向への変位(Z軸方向に作用するコリオリ力)を検出すれば、当該変位はX軸まわりの角速度ωxに対応することになる。また、振動子20をZ軸方向に振動させた状態で、振動子20のX軸方向への変位(X軸方向に作用するコリオリ力)を検出すれば、当該変位はY軸まわりの角速度ωyに対応し、振動子20のY軸方向への変位(Y軸方向に作用するコリオリ力)を検出すれば、当該変位はX軸まわりの角速度ωxに対応することになる。続く§2で述べる検出回路は、このような検出動作を行うための回路である。
【0052】
<<< §2.検出回路の構成 >>>
図3は、本発明に係る角速度センサの検出回路の構成を示す回路図である。この検出回路は、§1で述べたセンサ本体部に対して所定の駆動信号を供給して振動子20を所定の座標軸方向に振動させながら、振動子20の所定の座標軸方向への変位を検出して、所定の座標軸まわりの角速度を示す電気信号を出力する機能を果たす。また、この検出回路は、振動子の振動状態をモニタしながら、基準の振動状態を維持するようフィードバック制御を行う機能も果たす。
【0053】
なお、図3の中央に示されているセンサ本体部300は、実際には、この検出回路の構成要素ではなく、§1で述べたセンサ本体部を示すものである。すなわち、図3のセンサ本体部300のブロックの上辺近傍に示されているEx(+),Ex(−),Ey(+),Ey(−)は、それぞれ図2に示す4枚の駆動用電極Ex(+),Ex(−),Ey(+),Ey(−)に対応するものである。同様に、図3のセンサ本体部300のブロックの下辺近傍に示されているEx1,Ex2,Ey1,Ey2,Ez1〜Ez4は、それぞれ図2に示す8枚の検出用電極Ex1,Ex2,Ey1,Ey2,Ez1〜Ez4に対応するものである。そして、図3のセンサ本体部300のブロックの左辺近傍に示されているEcは、図2に示す共通電極Ecに対応するものであり、この共通電極Ecは、図示のとおり接地されている。
【0054】
以下、この検出回路の各構成要素を順に説明する。まず、動作信号発生器100は、センサ本体部300に供給する駆動信号およびその他の回路要素に供給する種々の信号を発生する機能を有する。この動作信号発生器100は、図のブロック内に描かれているように、フィードバック制御部110と、各信号発生部120,130,140,150,160,170とを備えている。
【0055】
図4は、この動作信号発生器100から出力される各動作信号を示す波形図である。本発明に係る検出回路は、第1の半周期T1と第2の半周期T2とによって構成される周期Tについて、周期的動作を実行する機能を有する。特に、ここに示す実施形態の場合、第1の半周期T1は振動子20をZ軸方向に振動させながら検出を行う期間であり、第2の半周期T2は振動子20をX軸方向に振動させながら検出を行う期間であるため、以下、第1の半周期T1を半周期Tz、第2の半周期T1を半周期Txと呼ぶことにする。図4(1) には、時間軸上における半周期Tzの期間と半周期Txの期間とが示されている。両半周期Tz,Txによって検出回路の1周期Tが構成され、検出回路は、このような周期Tをもった周期的動作を行うことになる。
【0056】
ここに示す実施例の場合、T=12.5msに設定しており、80Hzの周波数で周期的動作が繰り返し実行される。また、各半周期が等しくなるような設定を行っているため、Tz=Tx=6.25msになる。もちろん、半周期Tz,Txは、必ずしも等しく設定する必要はない。後述するように、実用上、周期Tの値は、振動子の共振周波数に応じて最適な値に設定するのが好ましい。たとえば、振動子のZ軸方向の共振周波数とX軸方向の共振周波数とがほぼ等しいセンサの場合、当該共振周波数をf0として、周期Tを(1/f0)×200〜(1/f0)×500の範囲に設定すると、良好な検出が可能になる(詳細は§6で述べる)。
【0057】
動作信号発生器100内のZ軸駆動信号発生部150は、振動子20をZ軸方向へ振動させるためのZ軸駆動信号DrZを発生する機能を有する。このZ軸駆動信号DrZは、図4(2) に示すとおり、第1の半周期Tzには、所定の周波数fzおよび振幅Azをもった交流信号が配されており、第2の半周期Txには、何ら交流信号が配されていない信号である。一方、X軸駆動信号発生部140は、振動子20をX軸方向へ振動させるためのX軸駆動信号DrXを発生する機能を有する。このX軸駆動信号DrXは、図4(3) に示すとおり、第1の半周期Tzには、何ら交流信号が配されておらず、第2の半周期Txには、所定の周波数fxおよび振幅Axをもった交流信号が配されている信号である。
【0058】
ここに示す実施例の場合、fz=fx=20kHz程度、Az=Ax=1.0V程度になるように設定してある。なお、図4では、図示の便宜上、1半周期TzもしくはTxの期間内に各駆動信号の5周期分のみが描かれているが、上述の数値設定の場合、実際には、1半周期TzもしくはTxの期間内には各駆動信号の125周期分が入ることになる。これは、後述する正側同期検波信号SdAや負側同期検波信号SdBの場合も同様である。
【0059】
Z軸駆動信号DrZおよびX軸駆動信号DrXの周波数および振幅は、フィードバック制御部110による制御対象となり、後述するように、帰還信号と所定の基準値との偏差に基づいて随時調整される。なお、周波数fzとfxとは、必ずしも等しくなるような設定を行う必要はなく、同様に、振幅AzとAxとについても、必ずしも等しくなるような設定を行う必要はない。また、図示の例では、各駆動信号DrZ,DrXの振幅Az,Axは、常に一定値を維持させているが、振幅Az,Axは必ずしも一定値に保つ必要はなく、たとえば、各半周期の初頭の振幅をより大きくするような制御を行い、振動子の運動を早く安定させるような工夫をしてもよい。これら駆動信号DrX,DrZは、マトリクス変換器200を介して、センサ本体部300の各駆動用電極Ex(+),Ex(−),Ey(+),Ey(−)に与えられる。
【0060】
マトリクス変換器200は、上述したとおり、動作信号発生器100内のX軸駆動信号発生部140およびZ軸駆動信号発生部150から与えられるX軸駆動信号DrXおよびZ軸駆動信号DrZを、センサ本体部300の特定の駆動用電極Ex(+),Ex(−),Ey(+),Ey(−)に与える処理を実行する。その具体的な動作については後述する。
【0061】
一方、正側同期検波信号発生部160は、各駆動信号DrX,DrZの正側のピークに同期したパルスから構成される正側同期検波信号SdAを発生する機能を有し、負側同期検波信号発生部170は、各駆動信号DrX,DrZの負側のピークに同期したパルスから構成される負側同期検波信号SdBを発生する機能を有する。
【0062】
より具体的には、正側同期検波信号SdAは、図4(4) に示すとおり、第1の半周期Tzには、Z軸駆動信号DrZの正側のピークに同期した位置にZ軸駆動信号DrZの周期の1/2以下のパルス幅をもったパルスが周期的に配され、第2の半周期Txには、X軸駆動信号DrXの正側のピークに同期した位置にX軸駆動信号DrXの周期の1/2以下のパルス幅をもったパルスが周期的に配されている信号である。また、負側同期検波信号SdBは、図4(5) に示すとおり、第1の半周期Tzには、Z軸駆動信号DrZの負側のピークに同期した位置にZ軸駆動信号DrZの周期の1/2以下のパルス幅をもったパルスが周期的に配され、第2の半周期Txには、X軸駆動信号DrXの負側のピークに同期した位置にX軸駆動信号DrXの周期の1/2以下のパルス幅をもったパルスが周期的に配されている信号である。
【0063】
各同期検波信号SdA,SdBの時間軸上でのパルスの中心位置は、各駆動信号のピーク位置に一致している。パルスの幅は、各駆動信号の周期の1/2以下となるような値に設定すればよいが、ここに示す実施例の場合、各駆動信号の周期の1/4程度に設定してある。これら同期検波信号SdA,SdBは、全同期検波器SDに与えられる。
【0064】
Z軸検波イネーブル信号発生部130は、振動子20のZ軸方向への振動が安定し、検波処理が可能になった期間を示すZ軸検波イネーブル信号EnZを発生する機能を有し、X軸検波イネーブル信号発生部120は、振動子20のX軸方向への振動が安定し、検波処理が可能になった期間を示すX軸検波イネーブル信号EnXを発生する機能を有する。
【0065】
すなわち、Z軸検波イネーブル信号EnZは、図4(6) に示すとおり、第1の半周期Tzにおいて振動子20がZ軸に沿って安定した振動状態を維持すると予想される第1の安定振動期βzを示す信号である。ここで、図示の期間αzは、第1の半周期Tzにおいて振動子20のZ軸方向への振動状態が不安定であると予想される第1の不安定振動期ということになる。一方、X軸検波イネーブル信号EnXは、図4(7) に示すとおり、第2の半周期Txにおいて振動子20がX軸に沿って安定した振動状態を維持すると予想される第2の安定振動期βxを示す信号である。ここで、図示の期間αxは、第2の半周期Txにおいて振動子20のX軸方向への振動状態が不安定であると予想される第2の不安定振動期ということになる。
【0066】
既に述べたとおり、ここに示す実施例では、第1の半周期Tzでは、振動子20はZ軸に沿って駆動され、第2の半周期Txでは、振動子20はX軸に沿って駆動される。しかしながら、振動子20は、可撓性支持体10という機械的な構造体によって支持された物体であるため、駆動方向をZ軸からX軸へ、もしくは、X軸からZ軸へと、半周期ごとに90°切り替える操作を行ったとしても、実際の振動方向が直ちに切り替わるわけではないので、切替直後の実際の振動は不安定なものになる。振動状態が安定するまでに必要な時間は、個々のセンサ本体部の機械的構造に依存して定まるパラメータである。したがって、実際のセンサ本体部を用いた測定により(もしくは、コンピュータシミュレーションにより)、当該センサ本体部についての不安定振動期αz,αxを求めることができる。
【0067】
もちろん、各半周期Tz,Txは、これら不安定振動期αz,αxよりも長い期間に設定しておく必要がある。ここに示す実施例の場合、αz=αx=2.5msであった。したがって、Tz=Tx=6.25msに設定した場合、βz=βx=3.75msということになる。これら検波イネーブル信号EnX,EnZは、正確な検波が可能となる安定振動期βz,βxの期間を示す信号であり、それぞれ特定のゲートスイッチSWへ与えられる。
【0068】
以上、図3において、センサ本体部300の上方に描かれている要素が、この検出回路における振動子20を駆動する処理を行う回路である。この回路の働きにより、センサ本体部の振動子20は、前半周期Tzの期間中はZ軸方向に振動し、後半周期Txの期間中はX軸方向に振動することになる。続いて、振動子20が振動している状態において、振動子20の変位を検出する処理を行う回路について説明する。この回路は、図3において、センサ本体部300の下方に描かれている要素からなる。
【0069】
まず、差分器411は、X軸正側検出用電極Ex1に生じた電圧とX軸負側検出用電極Ex2に生じた電圧との差を求める機能を果たす。この差を示す信号SΔxは、前述したとおり、振動子20のX軸方向に関する変位を示す検出値になるので、ここではX軸変位検出信号SΔxと呼ぶ。同様に、差分器412は、Y軸正側検出用電極Ey1に生じた電圧とY軸負側検出用電極Ey2に生じた電圧との差を求める機能を果たす。この差を示す信号SΔyは、前述したとおり、振動子20のY軸方向に関する変位を示す検出値になるので、ここではY軸変位検出信号SΔyと呼ぶ。
【0070】
また、加算器413は、4枚のZ軸変位検出用電極Ez1〜Ez4に生じた電圧の総和を求める機能を果たす。この総和を示す信号SΔzは、前述したとおり、振動子20のZ軸方向に関する変位を示す検出値になるので、ここではZ軸変位検出信号SΔzと呼ぶ。
【0071】
差分器411から出力されたX軸変位検出信号SΔxは、ゲートスイッチ421を通してAM検波器431および同期検波器441に与えられ、ゲートスイッチ422を通して同期検波器442に与えられる。同様に、差分器412から出力されたY軸変位検出信号SΔyは、ゲートスイッチ423を通して同期検波器443に与えられ、ゲートスイッチ424を通して同期検波器444に与えられる。また、加算器413から出力されたZ軸変位検出信号SΔzは、ゲートスイッチ425を通して同期検波器445およびAM検波器432に与えられる。
【0072】
ここで、ゲートスイッチ421,424は、X軸検波イネーブル信号発生部120によって発生されたX軸検波イネーブル信号EnXによって示された安定振動期βxの期間のみ(すなわち、X軸方向への振動が安定し、検波処理が可能になった期間のみ)、入力した検出値を通過させて出力する。一方、ゲートスイッチ422,423,425は、Z軸検波イネーブル信号発生部130によって発生されたZ軸検波イネーブル信号EnZによって示された安定振動期βzの期間のみ(すなわち、Z軸方向への振動が安定し、検波処理が可能になった期間のみ)、入力した検出値を通過させて出力する。したがって、各AM検波器431,432や、各同期検波器441〜445には、安定振動期の期間のみ、所定の検出値を示す信号が与えられることになり、当該期間のみ検波が行われる。
【0073】
AM検波器431は、X軸変位検出信号SΔxの振幅を求める機能を果たし、求めたX軸振幅測定値Fxaはフィードバック制御部110へ帰還され、AM検波器432は、Z軸変位検出信号SΔzの振幅を求める機能を果たし、求めたZ軸振幅測定値Fzaはフィードバック制御部110へ帰還される。一方、同期検波器441は、X軸変位検出信号SΔxの位相を求める機能を果たし、求めたX軸位相測定値Fxpはフィードバック制御部110へ帰還され、同期検波器445は、Z軸変位検出信号SΔzの位相を求める機能を果たし、求めたZ軸位相測定値Fzpはフィードバック制御部110へ帰還される。
【0074】
同期検波器442は、振動子20がZ軸方向に振動している前半周期Tzの間に、X軸変位検出信号SΔxに基づいて振動子20に作用したX軸方向のコリオリ力を求める機能を果たし、求めた値をY軸まわりの角速度ωyとして出力する。一方、同期検波器443は、振動子20がZ軸方向に振動している前半周期Tzの間に、Y軸変位検出信号SΔyに基づいて振動子20に作用したY軸方向のコリオリ力を求める機能を果たし、求めた値をX軸まわりの角速度ωxとして出力する。また、同期検波器444は、振動子20がX軸方向に振動している後半周期Txの間に、Y軸変位検出信号SΔyに基づいて振動子20に作用したY軸方向のコリオリ力を求める機能を果たし、求めた値をZ軸まわりの角速度ωzとして出力する。
【0075】
なお、フィードバック制御部110は、帰還したX軸振幅測定値FxaおよびX軸位相測定値Fxpに基づいて、X軸駆動信号発生部140が発生するX軸駆動信号DrXの振幅および周波数が所定の基準振幅および基準周波数となるようなフィードバック制御を行うとともに、帰還したZ軸振幅測定値FzaおよびZ軸位相測定値Fzpに基づいて、Z軸駆動信号発生部150が発生するZ軸駆動信号DrZの振幅および周波数が所定の基準振幅および基準周波数となるようなフィードバック制御を行う。このようなフィードバック制御により、振動子20は、X軸方向およびZ軸方向に、それぞれ所定の基準振幅、所定の基準周波数で、振動するようになる。なお、同期検波信号SdA,SdBは、各駆動信号DrX,DrZに同期した信号であるから、同期検波信号発生部160,170が発生する同期検波信号SdA,SdBの周波数も、フィードバック制御部110による周波数制御を受けることになる。
【0076】
かくして、この図3に示す検出回路を用いれば、振動子20を、前半周期TzにおいてZ軸方向に振動させ、後半周期TxにおいてX軸方向に振動させる動作を繰り返し行いながら、前半周期Tzには、同期検波器442からY軸まわりの角速度ωyを示す電気信号を出力させるとともに、同期検波器443からX軸まわりの角速度ωxを示す電気信号を出力させ、後半周期Txには、同期検波器444からZ軸まわりの角速度ωzを示す電気信号を出力させることができる。しかも、これらの出力信号が示す検出値は、各検波イネーブル信号EnZ,EnXによって示される安定振動期βz,βxの期間に得られた値になるので、精度の高い正確な検出値になる。
【0077】
<<< §3.振動子の運動 >>>
続いて、ここでは、図3に示す検出回路を用いて駆動される振動子20の運動について詳述する。前述したとおり、動作信号発生器100からマトリクス変換器200には、図4(2) に示すようなZ軸駆動信号DrZと、図4(3) に示すようなX軸駆動信号DrXとが供給される。
【0078】
マトリクス変換器200は、これら2通りの駆動信号DrZ,DrXを利用して、振動子20を、第1の半周期Tzの期間にはZ軸方向に振動させ、第2の半周期Txの期間にはX軸方向に振動させる動作を行う。具体的には、第1の半周期Tzには、4組の駆動用素子(4枚の駆動用電極Ex(+),Ex(−),Ey(+),Ey(−))のすべてにZ軸駆動信号DrZを供給し、第2の半周期Txには、X軸正側駆動用素子(X軸正側駆動用電極Ex(+))にX軸駆動信号DrXを供給し、X軸負側駆動用素子(X軸負側駆動用電極Ex(−))にX軸駆動信号DrXの位相反転信号を供給する。
【0079】
そのような駆動動作を行うため、マトリクス変換器200は、図5に示すような演算により、X軸正側駆動信号Dx(+),X軸負側駆動信号Dx(−),Y軸正側駆動信号Dy(+),Y軸負側駆動信号Dy(−)を生成する機能を有している。ここで、X軸正側駆動信号Dx(+)は、Z軸駆動信号DrZとX軸駆動信号DrXとの和信号であり、X軸正側駆動用素子(X軸正側駆動用電極Ex(+))に与えられる。また、X軸負側駆動信号Dx(−)は、Z軸駆動信号DrZとX軸駆動信号DrXとの差信号であり、X軸負側駆動用素子(X軸負側駆動用電極Ex(−))に与えられる。一方、Y軸正側駆動信号Dy(+)およびY軸負側駆動信号Dy(−)は、いずれもZ軸駆動信号DrZそのものであり、それぞれY軸正側駆動用素子(Y軸正側駆動用電極Ex(+))およびY軸負側駆動用素子(Y軸負側駆動用電極Ex(−))に与えられる。
【0080】
図6は、このマトリクス変換器200の具体的な構成例を示す回路図である。図の左側の2つの端子に、動作信号発生器100から与えられたZ軸駆動信号DrZおよびX軸駆動信号DrXを入力すると、図の左側の4つの端子から、それぞれ各駆動信号Dx(+),Dx(−),Dy(+),Dy(−)が出力されることになる。この回路は、4つのOPアンプ210〜240と、抵抗R1〜R10によって構成されている。
【0081】
ここで、OPアンプ210は、「DrZ+DrX」なる和信号Dx(+)を生成してX軸正側駆動用素子(X軸正側駆動用電極Ex(+))に供給する回路であり、OPアンプ220および240は、「DrZ−DrX」なる差信号Dx(−)を生成してX軸負側駆動用素子(X軸負側駆動用電極Ex(−))に供給する回路である。また、OPアンプ230は、「DrZ」をY軸正側駆動用素子(Y軸正側駆動用電極Ey(+))とY軸負側駆動用素子(Y軸負側駆動用電極Ey(−))との双方に供給する回路である。
【0082】
結局、図5の各式の右辺および図6の各右側端子に示されている駆動信号Dx(+),Dx(−),Dy(+),Dy(−)が、図2に示す駆動用電極Ex(+),Ex(−),Ey(+),Ey(−)にそれぞれ与えられることになる。この場合、振動子20がどのような運動をするかを、第1の半周期Tzと第2の半周期Txとに分けて考えてみよう。
【0083】
まず、第1の半周期Tzの期間は、図4に示すとおり、X軸駆動信号DrXは、実質的な信号としての有効成分を有していないので、有効成分を有する信号は、Z軸駆動信号DrZのみということになる。したがって、図2に示す共通電極Ecを接地した状態で、4枚の駆動用電極Ex(+),Ex(−),Ey(+),Ey(−)のそれぞれに、図4(2) に示すZ軸駆動信号DrZの交流信号が供給されることになるので、§1で説明したとおり、振動子20は当該交流信号に同期してZ軸方向に振動する。
【0084】
一方、第2の半周期Txの期間は、図4に示すとおり、Z軸駆動信号DrZは、実質的な信号としての有効成分を有していないので、有効成分を有する信号は、X軸駆動信号DrXのみということになる。したがって、図2に示す共通電極Ecを接地した状態で、X軸正側駆動用電極Ex(+)に、図4(3) に示すZ軸駆動信号DrZの交流信号が供給され、X軸負側駆動用電極Ex(−)に、その反転信号が供給されることになるので、§1で説明したとおり、振動子20は当該交流信号に同期してX軸方向に振動する。
【0085】
かくして、マトリクス変換器200は、振動子20を、第1の半周期Tzの期間にはZ軸方向に振動させ、第2の半周期Txの期間にはX軸方向に振動させる動作を行うことになる。
【0086】
図3に示す検出回路では、振動子20の各座標軸方向の変位は、それぞれ変位検出信号SΔx,SΔy,SΔzとして検出することができる。たとえば、X軸変位検出信号SΔxは、差分器411から出力される信号であり、X軸正側検出用電極Ex1の発生電圧とX軸負側検出用電極Ex2の発生電圧との差に相当する信号である。振動子20がX軸方向に関して変位していない場合(すなわち、振動子20の重心がYZ平面上に位置する場合)、両電極Ex1,Ex2の電位は等しくなるため、SΔx=0になる。振動子20がX軸方向に関して変位すると、両電極Ex1,Ex2の下方に位置する圧電素子の伸縮状態が互いに逆になるため、両電極Ex1,Ex2には互いに逆極性の電圧が発生し、両者の差に相当する信号SΔxが正もしくは負の値として出力される。よって、この検出信号SΔxの絶対値は、振動子20のX軸方向に関する変位量を示し、検出信号SΔxの符号は、変位方向(X軸正方向か、負方向か)を示すことになる。
【0087】
同様に、Y軸変位検出信号SΔyは、差分器412から出力される信号であり、Y軸正側検出用電極Ey1の発生電圧とY軸負側検出用電極Ey2の発生電圧との差に相当する信号である。やはり、この検出信号SΔyの絶対値は、振動子20のY軸方向に関する変位量を示し、検出信号SΔyの符号は、変位方向(Y軸正方向か、負方向か)を示すことになる。また、Z軸変位検出信号SΔzは、加算器413から出力される信号であり、4枚のZ軸変位検出用電極Ez1〜Ez4の発生電圧の総和に相当する信号である。やはり、この検出信号SΔzの絶対値は、振動子20のZ軸方向に関する変位量を示し、検出信号SΔzの符号は、変位方向(Y軸正方向か、負方向か)を示すことになる。
【0088】
図7は、図3に示す検出回路による、角速度が作用していない状態での振動子の駆動動作を説明する信号波形図である。図7(1) に示すとおり、周期Tは、第1の半周期Tzと第2の半周期Txによって構成される。そして、第1の半周期Tzの期間は、図7(2) に示すZ軸駆動信号DrZの供給により、振動子20はZ軸方向に駆動され、第2の半周期Txの期間は、図7(3) に示すX軸駆動信号DrXの供給により、振動子20はX軸方向に駆動される。
【0089】
一方、図7(4) は、このような駆動動作が行われているときに、加算器413から出力されるZ軸変位検出信号SΔzの波形を示している。この検出信号SΔzは、振動子20のZ軸に関する位置の変遷を示すものである。振動子20の位置の変遷は、図7(2) に示すZ軸駆動信号DrZの供給によるものであるが、振動子20およびこれを支持する可撓性支持体10からなる機械的振動系に固有の特性により、振動子20の実際の変位は、Z軸駆動信号DrZに対して位相遅れを生じることになる。後述するように、振動子20をZ軸方向に関する共振周波数で振動させた場合、振動子20の実際の変位は、Z軸駆動信号DrZに対して90°の位相遅れを生じる。図7(4) に示す検出信号SΔzの位相が、図7(2) に示す駆動信号DrZに対して位相遅れを生じているのはこのためである。
【0090】
また、図7(2) に示す駆動信号DrZの振幅Azが一定であるのに対して、図7(4) に示す検出信号SΔzの振幅が変動しているのは、質量をもった振動子20に慣性が作用するためである。すなわち、第1の半周期Tzの始期から駆動信号DrZ内の交流信号の供給が開始されても、Z軸方向に関しては静止していた振動子20が、Z軸方向に振動し始めるには、ある程度の時間を要することになる。このため、図示の第1の不安定振動期αzの期間は、振幅が徐々に増加してゆくことになる。図示の第1の安定振動期βzは、振動子20が一定の振幅で安定した振動動作を行うようになった後の期間である。
【0091】
続いて、第1の半周期Tzの終期において、駆動信号DrZ内の交流信号の供給が停止する。このため、第2の半周期Txの期間は、振動子20をZ軸方向に駆動するための信号は供給されない。しかしながら、運動中の振動子20は、慣性の作用により、振幅を徐々に減少させながら、しばらくの間はZ軸方向への振動状態を維持する。図7(4) に示す検出信号SΔzの振幅が、半周期Txの初頭に残っているのはこのためである。
【0092】
結局、Z軸変位検出信号SΔzの振幅は、図7(4) に一点鎖線の包絡線で示すように、第1の半周期Tzの初頭から徐々に増加しながら一定値に達し、第2の半周期Txの初頭から徐々に減少しながら消滅することになる。ここで、期間αzは、第1の半周期Tzでありながら、振動が不安定である第1の不安定振動期であり、期間βzは、第1の半周期Tz内で、安定した振動が得られる第1の安定振動期である。前述したとおり、図4(6) に示すZ軸検波イネーブル信号EnZは、この第1の安定振動期βzを示す信号である。
【0093】
同様に、図7(5) は、差分器411から出力されるX軸変位検出信号SΔxの波形を示している。この検出信号SΔxは、振動子20のX軸に関する位置の変遷を示すものである。振動子20の位置の変遷は、図7(3) に示すX軸駆動信号DrXの供給によるものであるが、振動子20およびこれを支持する可撓性支持体10からなる機械的振動系に固有の特性により、振動子20の実際の変位は、X軸駆動信号DrXに対して位相遅れを生じることになる。やはり、振動子20をX軸方向に関する共振周波数で振動させた場合、振動子20の実際の変位は、X軸駆動信号DrXに対して90°の位相遅れを生じる。
【0094】
また、図7(5) に示す検出信号SΔxの振幅が、一点鎖線の包絡線で示すように、第2の半周期Txの初頭から徐々に増加しながら一定値に達し、第1の半周期Tzの初頭から徐々に減少しながら消滅するのは、振動子20の慣性の作用によるものである。ここで、期間αxは、第2の半周期Txでありながら、振動が不安定である第2の不安定振動期であり、期間βxは、第2の半周期Tx内で、安定した振動が得られる第2の安定振動期である。前述したとおり、図4(7) に示すX軸検波イネーブル信号EnXは、この第2の安定振動期βxを示す信号である。
【0095】
最後に示されている図7(6) は、差分器412から出力されるY軸変位検出信号SΔyの波形を示している。この検出信号SΔyは、振動子20のY軸に関する位置の変遷を示すものである。ここに示す実施例の場合、振動子20をY軸方向に振動させる動作は行われないので、角速度が作用していない状態では、図示のとおり、Y軸変位検出信号SΔyは零の状態を維持したままになる。
【0096】
前述したとおり、個々のセンサについての安定振動期βz,βxは、実際のセンサ本体部を用いた測定や、コンピュータシミュレーションにより求めることができる。なお、図7では、図示の便宜上、1半周期TzもしくはTxの期間内に各駆動信号や各検出信号の5周期分のみが描かれているが、実際には、1半周期TzもしくはTxの期間内には各駆動信号や各検出信号のより多数の周期分(前掲の例の場合、125周期分)が入ることになる。
【0097】
<<< §4.振幅および位相ならびにコリオリ力の検出 >>>
§2で述べたとおり、図3に示す検出回路において、センサ本体部300の下方に描かれている要素(400番台の符号が付された要素)は、振動子20のZ軸もしくはX軸方向に関する振動の振幅および位相と、振動子20に作用するX軸,Y軸,Z軸方向のコリオリ力とを検出する働きをする。以下、これらの各検出機能を個別に説明する。
【0098】
まず、ゲートスイッチ421には、図4(7) に示すX軸検波イネーブル信号EnXが与えられており、第2の安定振動期βxの期間のみ、与えられたX軸変位検出信号SΔxを通過させる機能を果たす。同様に、ゲートスイッチ422には、図4(6) に示すZ軸検波イネーブル信号EnZが与えられており、第1の安定振動期βzの期間のみ、与えられたX軸変位検出信号SΔxを通過させる機能を果たす。また、ゲートスイッチ423には、図4(6) に示すZ軸検波イネーブル信号EnZが与えられており、第1の安定振動期βzの期間のみ、与えられたY軸変位検出信号SΔyを通過させる機能を果たす。更に、ゲートスイッチ424には、図4(7) に示すX軸検波イネーブル信号EnXが与えられており、第2の安定振動期βxの期間のみ、与えられたY軸変位検出信号SΔyを通過させる機能を果たす。そして、ゲートスイッチ425には、図4(6) に示すZ軸検波イネーブル信号EnZが与えられており、第1の安定振動期βzの期間のみ、与えられたZ軸変位検出信号SΔzを通過させる機能を果たす。
【0099】
続いて、AM検波器431,432の機能を説明する。まず、AM検波器431は、ゲートスイッチ421を通じて、第2の安定振動期βxの期間にのみ与えられたX軸変位検出信号SΔxの振幅Fxaを求める。具体的には、図7(5) に示す検出信号SΔxの安定振動期βxの振幅Fxaが求められることになる。こうして得られた振幅Fxaは、X軸振幅測定信号として、フィードバック制御部110へ帰還させられる。同様に、AM検波器432は、ゲートスイッチ425を通じて、第1の安定振動期βzの期間にのみ与えられたZ軸変位検出信号SΔzの振幅Fzaを求める。具体的には、図7(4) に示す検出信号SΔzの安定振動期βzの振幅Fzaが求められることになる。こうして得られた振幅Fzaは、Z軸振幅測定信号として、フィードバック制御部110へ帰還させられる。
【0100】
このように、AM検波器431,432は、検出信号SΔxの振幅Fxa,検出信号SΔzの振幅Fzaを求める機能を果たす回路であるが、一般的な交流信号についての振幅を求める回路は、様々な分野で利用されている公知の回路であるため、ここでは、AM検波器431,432の内部構成についての詳細な説明は省略する。
【0101】
X軸変位検出信号SΔxの振幅Fxaは、振動子20のX軸方向に関する振動の振幅に対応するので、フィードバック制御部110は、この振幅Fxaが所定の基準振幅となるように、X軸駆動信号発生部140が発生させるX軸駆動信号DrXの振幅を調整する制御を行う。また、Z軸変位検出信号SΔzの振幅Fzaは、振動子20のZ軸方向に関する振動の振幅に対応するので、フィードバック制御部110は、この振幅Fzaが所定の基準振幅となるように、Z軸駆動信号発生部150が発生させるZ軸駆動信号DrZの振幅を調整する制御を行う。
【0102】
一方、同期検波器441〜445は、いずれも図8に示す回路によって構成されている。実際には、同期検波器441,445は、検出信号SΔx,SΔzの位相Fxp,Fzpを求める用途に利用され、同期検波器442,443,444は、検出信号SΔxもしくはSΔyに基づいて、X軸方向もしくはY軸方向に作用したコリオリ力を検出し、最終的に、それぞれ角速度ωy,ωx,ωzを求める用途に利用される。このように、同期検波器441,445と、同期検波器442,443,444とは、互いに用途は異なるが、いずれも図8に示す同一の回路によって構成することができる。
【0103】
図8に示す回路は、図の左側の端子に与えられた入力信号Sinに基づいて、図の右側の端子から出力信号Soutを出力する機能を有している。この回路は、図示のとおり、正側積算器K1、負側積算器K2、差分器K3によって構成されている。
【0104】
正側積算器K1は、正側同期検波信号SdAのパルスが与えられている間だけ信号を通過させるゲートスイッチGaと、通過した信号を積算するための抵抗R11〜R13,コンデンサC1〜C3,演算増幅器OP1によって構成され、与えられた入力信号Sinの信号値を、正側同期検波信号SdAのパルスが与えられている間だけ積算する機能を果たす。
【0105】
同様に、負側積算器K2は、負側同期検波信号SdBのパルスが与えられている間だけ信号を通過させるゲートスイッチGbと、通過した信号を積算するための抵抗R14〜R16,コンデンサC4〜C6,演算増幅器OP2によって構成され、与えられた入力信号Sinの信号値を、負側同期検波信号SdBのパルスが与えられている間だけ積算する機能を果たす。
【0106】
一方、差分器K3は、参照電圧Refが与えられた差動増幅器DIF,抵抗R17,コンデンサC7によって構成され、正側積算器K1の積算値と負側積算器K2の積算値との差を出力する機能を果たす。
【0107】
ここでは、図3に示す同期検波器445として図8に示す回路を用い、入力信号Sinとして、Z軸変位検出信号SΔzを与えた場合に、この回路から得られる出力信号Soutが、Z軸変位検出信号SΔzの位相の測定値を示す信号になる理由を簡単に説明しよう。
【0108】
図9は、図3に示す検出回路において、正しい位相制御が行われているときの各信号波形を示す波形図である。図9(1) に示すとおり、この図における時間軸は、第1の半周期Tz内の安定振動期βzの一部分を示している。この期間内は、センサ本体部に対して、図9(2) に示すようなZ軸駆動信号DrZが与えられており、振動子20は、Z軸方向に振動している。このため、図9(3) に示すようなZ軸変位検出信号SΔzが得られている。前述したとおり、振動子20がZ軸方向に関する共振周波数で振動していれば、Z軸変位検出信号SΔzの位相は、Z軸駆動信号DrZの位相に対して90°遅れることになる。図9の各波形は、このときの状態を示している。
【0109】
一般に、このような振動系では、振動子を固有の共振周波数で振動させると、供給したエネルギーを最も効率的に利用した運動が可能になり、最も大きな振幅が得られることが知られている。また、このとき、駆動信号の位相に対して、実際の振動子の位相が90°遅れることも知られている。図9に示す波形図は、このように、振動子が理想的な振動状態で振動しているときに得られる各信号波形を示している。
【0110】
ここで、図9(4) に示す正側同期検波信号SdAは、Z軸駆動信号DrZの正側のピークに同期したパルス(正側のピーク位置に中心がくるパルス)をもつ検波信号であり、図9(5) に示す負側同期検波信号SdBは、Z軸駆動信号DrZの負側のピークに同期したパルス(負側のピーク位置に中心がくるパルス)をもつ検波信号である。そして、図8に示す正側積算器K1は、ゲートスイッチGaの機能により、正側同期検波信号SdAのパルス期間のみ、入力信号Sin、すなわち、Z軸変位検出信号SΔzの信号値を積算する機能を果たし、負側積算器K2は、ゲートスイッチGbの機能により、負側同期検波信号SdBのパルス期間のみ、入力信号Sin、すなわち、Z軸変位検出信号SΔzの信号値を積算する機能を果たす。
【0111】
図9(6) は、Z軸変位検出信号SΔzの信号値の積算プロセスを示している。すなわち、このグラフにハッチングを施して示す積算領域a,bは、正側積算器K1によって信号値の積算が行われる領域に対応し、積算領域c,dは、負側積算器K2によって信号値の積算が行われる領域に対応する。図9に示す例のように、Z軸変位検出信号SΔzの位相が、Z軸駆動信号DrZの位相に対して正確に90°遅れている場合、積算領域aの面積と積算領域bの面積とは等しくなり、積算領域cの面積と積算領域dの面積とは等しくなる。ただ、積算領域a,dは負の信号値、積算領域b,cは正の信号値を示す領域であるから、結局、正側積算器K1による積算値は零になり、負側積算器K2による積算値も零になり、差分器K3から出力される出力信号Soutは零になる。
【0112】
したがって、図9(7) に示すように、同期検波器445から出力されるZ軸位相測定信号Fzp(図8の出力信号Sout)は、零を示す信号になる。これは、現在、振動子20が理想的な位相(すなわち、Z軸駆動信号DrZの位相に対して正確に90°遅れている位相)をもってZ軸方向に振動していることを示す。別言すれば、理想的な位相に対する位相差は0ということになる。このようなZ軸位相測定信号Fzpがフィードバック信号として帰還された場合、フィードバック制御部110は、Z軸駆動信号発生部150に対して、発生するZ軸駆動信号DrZの周波数fzをそのまま維持させる制御を行う。
【0113】
次に、何らかの要因によって、振動子20のZ軸方向への振動位相が理想的な位相からずれた場合を考えてみよう。図10は、位相が若干遅れた場合の各信号波形を示す波形図である。すなわち、図10(2) に示すZ軸駆動信号DrZの位相に対する、図10(3) に示すZ軸変位検出信号SΔzの位相差は90°を越えており、理想的な振動状態から逸脱していることになる。この場合、図10(6) を見るとわかるとおり、グラフにハッチングを施して示す積算領域a,b,c,dの面積に変化が生じる。具体的には、積算領域a,cの面積は、積算領域b,dの面積よりも大きくなる。このため、各積算領域を符号を考慮して積算すれば、正側積算器K1による積算値(積算領域a,b)は負になり、負側積算器K2による積算値(積算領域c,d)は正になる。結局、差分器K3から出力される出力信号Soutは負になる。
【0114】
したがって、図10(7) に示すように、同期検波器445から出力されるZ軸位相測定信号Fzp(図8の出力信号Sout)は、負の値を示す信号になる(図10(7) の一点鎖線は、零の値を示す基準レベルであり、実線が信号Fzpの実際のレベルを示す)。これは、現在、振動子20が理想的な位相から遅れて振動していることを示す。別言すれば、図10(7) の一点鎖線レベルと実線レベルとの差が、理想的な位相に対する位相差ということになる。このようなZ軸位相測定信号Fzpがフィードバック信号として帰還された場合、フィードバック制御部110は、Z軸駆動信号発生部150に対して、発生するZ軸駆動信号DrZの周波数fzを低め、位相遅延を解消させる制御を行う(本願発明者が行った実験では、周波数fzを低くすると、位相を進める制御が可能になることが確認できた)。
【0115】
逆に、図11は、位相が若干進んだ場合の各信号波形を示す波形図である。すなわち、図11(2) に示すZ軸駆動信号DrZの位相に対する、図11(3) に示すZ軸変位検出信号SΔzの位相差は90°を割っており、理想的な振動状態から逸脱していることになる。この場合、図11(6) を見るとわかるとおり、グラフにハッチングを施して示す積算領域a,b,c,dの面積に変化が生じる。具体的には、積算領域a,cの面積は、積算領域b,dの面積よりも小さくなる。このため、各積算領域を符号を考慮して積算すれば、正側積算器K1による積算値(積算領域a,b)は正になり、負側積算器K2による積算値(積算領域c,d)は負になる。結局、差分器K3から出力される出力信号Soutは正になる。
【0116】
したがって、図11(7) に示すように、同期検波器445から出力されるZ軸位相測定信号Fzp(図8の出力信号Sout)は、正の値を示す信号になる(図11(7) の一点鎖線は、零の値を示す基準レベルであり、実線が信号Fzpの実際のレベルを示す)。これは、現在、振動子20が理想的な位相から進んで振動していることを示す。別言すれば、図11(7) の一点鎖線レベルと実線レベルとの差が、理想的な位相に対する位相差ということになる。このようなZ軸位相測定信号Fzpがフィードバック信号として帰還された場合、フィードバック制御部110は、Z軸駆動信号発生部150に対して、発生するZ軸駆動信号DrZの周波数fzを高め、位相進みを解消させる制御を行う(本願発明者が行った実験では、周波数fzを高くすると、位相を遅らせる制御が可能になることが確認できた)。
【0117】
以上、図3に示す同期検波器445によって、第1の安定振動期βzの期間、Z軸位相測定信号Fzpが得られる理由を説明したが、同様に、同期検波器441によって、第2の安定振動期βxの期間、X軸位相測定信号Fxpが得られることになる。こうして、得られた各位相測定信号Fzp,Fxpは、上述したとおり、フィードバック制御部110へと帰還され、フィードバック制御部110によって、これらの帰還信号の信号値が零になるように、Z軸駆動信号発生部150が発生させるZ軸駆動信号DrZおよびX軸駆動信号発生部140が発生させるZ軸駆動信号DrXの周波数を調整する制御が行われる。
【0118】
続いて、図3に示す同期検波器442として図8に示す回路を用い、入力信号Sinとして、X軸変位検出信号SΔxを与えた場合に、この回路から得られる出力信号Soutが、振動子20に作用したX軸方向のコリオリ力、すなわち、Y軸まわりの角速度ωyを示す信号になる理由を簡単に説明しよう。
【0119】
図12は、図3に示す検出回路において、Y軸まわりの角速度が作用していない状態での動作を説明する信号波形図である。図12(1) に示すとおり、この図における時間軸は、第1の半周期Tz内の安定振動期βzの一部分を示している。この期間内は、センサ本体部に対して、図12(2) に示すようなZ軸駆動信号DrZが与えられており、振動子20は、Z軸方向に振動している。このため、図12(3) に示すようなZ軸変位検出信号SΔzが得られている。前述したとおり、振動子20が理想的な態様で振動していれば、Z軸変位検出信号SΔzの位相は、Z軸駆動信号DrZの位相に対して90°遅れることになる。図12の各波形は、このときの状態を示している。
【0120】
このように、振動子20がZ軸方向に振動している状態において、Y軸まわりの角速度が作用していなければ、X軸方向へのコリオリ力は作用しないので、振動子20がX軸方向に関して変位することはない。したがって、図12(6) に示すように、X軸変位検出信号SΔxは、零レベルを示す信号になる。同期検波器442には、このような零レベルを示すX軸変位検出信号SΔxが与えられるので、その出力信号、すなわち、Y軸まわりの角速度検出信号ωyは、図12(7) に示すように、零レベルを示す信号になる。
【0121】
一方、図13は、図3に示す検出回路において、Y軸まわりの角速度が作用している状態での動作を説明する信号波形図である。振動子20がZ軸方向に振動している状態において、Y軸まわりの角速度が作用していると、X軸方向へのコリオリ力が作用し、振動子20はX軸方向に関して変位する。もっとも、コリオリ力が作用する方向は、振動子20の運動方向に依存するので、振動子20がZ軸正方向へ向かって運動しているときと、Z軸負方向へ向かって運動しているときとでは、Y軸まわりの角速度の向きや大きさが全く同じであっても、X軸方向へのコリオリ力の向きは逆転する。
【0122】
たとえば、図13(3) のZ軸変位検出信号SΔzの信号値は、振動子20のZ軸に関する位置を示すものであるが、グラフ上の点P1は、Z=0の位置をZ軸正方向に向かって通過した瞬間を示し、点P2は、Z軸正方向の最大振幅地点に到達した瞬間を示し、点P3は、Z=0の位置をZ軸負方向に向かって通過した瞬間を示し、点P4は、Z軸負方向の最大振幅地点に到達した瞬間を示している。したがって、点P0〜P2へ移動する前半プロセスでは、振動子はZ軸正方向の速度成分をもって運動しており(点P1を通過する瞬間に正の最大速度をとる)、点P2〜P4へ移動する後半プロセスでは、振動子はZ軸負方向の速度成分をもって運動している(点P3を通過する瞬間に負の最大速度をとる)。
【0123】
ここで、振動子に作用するX軸方向のコリオリ力は、振動子のZ軸方向の速度成分に比例したものになり、振動子のX軸方向への変位も、これに応じたものになるので、この場合、図13(6) に示すようなX軸変位検出信号SΔxが得られる。同期検波器442には、このようなX軸変位検出信号SΔxが与えられるので、その出力信号、すなわち、Y軸まわりの角速度検出信号ωyは、図13(7) に示すように、所定のレベルを示す信号になる。すなわち、図13(6) に示すように、正側積算器K1による積算値(積算領域e)は正になり、負側積算器K2による積算値(積算領域f)は負になるので、差分器K3から出力される両者の差に相当する出力信号Soutは正の値になる。図13(7) において、一点鎖線は零レベルを示しており、実線は、出力信号Soutのレベル、すなわち、Y軸まわりの角速度検出信号ωyを示している。
【0124】
以上、図3に示す同期検波器442によって、第1の安定振動期βzの期間、Y軸まわりの角速度検出信号ωyが得られる理由を説明したが、同様に、同期検波器443によって、第1の安定振動期βzの期間、X軸まわりの角速度検出信号ωxが得られ、同期検波器444によって、第2の安定振動期βxの期間、Z軸まわりの角速度検出信号ωzが得られる。
【0125】
このように、図3に示す検出回路において、センサ本体部300の下方に描かれている400番台の符号が付された要素により、X軸振幅測定信号Fxa,X軸位相測定信号Fxp,Z軸振幅測定信号Fza,Z軸位相測定信号Fzp,X軸まわりの角速度検出信号ωx,Y軸まわりの角速度検出信号ωy,Z軸まわりの角速度検出信号ωzが得られることになる。しかも、これらの各信号は、X軸検波イネーブル信号EnXによって示される安定振動期βxもしくはZ軸検波イネーブル信号EnZによって示される安定振動期βzの期間のみについて、振動子の変位を検出して得られる信号であるので、振動子の振動が安定した期間についての正確な値になる。
【0126】
結局、図3に示す検出回路におけるゲートスイッチ421とAM検波器431は、第2の安定振動期βxの期間、X軸正側検出用素子の検出信号とX軸負側検出用素子の検出信号との差として得られる振動子のX軸方向への変位を示す検出値SΔxに基づいて、振動子のX軸方向の振幅Fxaを測定するX軸振幅測定部を構成し、ゲートスイッチ425とAM検波器432は、第1の安定振動期βzの期間、Z軸変位検出用素子から得られる振動子のZ軸方向への変位を示す検出値SΔzに基づいて、振動子のZ軸方向の振幅Fzaを測定するZ軸振幅測定部を構成することになる。
【0127】
また、ゲートスイッチ421と同期検波器441は、第2の安定振動期βxの期間、正側同期検波信号SdAおよび負側同期検波信号SdBを利用することにより、X軸正側検出用素子の検出信号とX軸負側検出用素子の検出信号との差として得られる振動子のX軸方向への変位を示す検出値SΔxに基づいて、振動子のX軸方向の位相Fxpを測定するX軸位相測定部を構成し、ゲートスイッチ425と同期検波器445は、第1の安定振動期βzの期間、正側同期検波信号SdAおよび負側同期検波信号SdBを利用することにより、Z軸変位検出用素子から得られる振動子のZ軸方向への変位を示す検出値SΔzに基づいて、振動子のZ軸方向の位相Fzpを測定するZ軸位相測定部を構成することになる。
【0128】
一方、ゲートスイッチ422と同期検波器442は、第1の安定振動期βzの期間、正側同期検波信号SdAおよび負側同期検波信号SdBを利用することにより、X軸正側検出用素子の検出信号とX軸負側検出用素子の検出信号との差を示す検出値SΔxに基づいて、Y軸まわりの角速度ωyを示す電気信号を出力するY軸まわり角速度検出部を構成し、ゲートスイッチ423と同期検波器443は、第1の安定振動期βzの期間、正側同期検波信号SdAおよび負側同期検波信号SdBを利用することにより、Y軸正側検出用素子の検出信号とY軸負側検出用素子の検出信号との差を示す検出値SΔyに基づいて、X軸まわりの角速度ωxを示す電気信号を出力するX軸まわり角速度検出部を構成し、ゲートスイッチ424と同期検波器444は、第2の安定振動期βxの期間、正側同期検波信号SdAおよび負側同期検波信号SdBを利用することにより、Y軸正側検出用素子の検出信号とY軸負側検出用素子の検出信号との差を示す検出値SΔyに基づいて、Z軸まわりの角速度ωzを示す電気信号を出力するZ軸まわり角速度検出部を構成することになる。
【0129】
そして、図3に示すフィードバック制御部110は、Z軸振幅測定部によって測定された振幅FzaおよびZ軸位相測定部によって測定された位相Fzpに基づいて、Z軸駆動信号発生部150が発生するZ軸駆動信号DrZの周波数fzおよび振幅Azが所定の基準周波数および基準振幅となるようにフィードバック制御するとともに、X軸振幅測定部によって測定された振幅FxaおよびX軸位相測定部によって測定された位相Fxpに基づいて、X軸駆動信号発生部140が発生するX軸駆動信号DrXの周波数fxおよび振幅Axが所定の基準周波数および基準振幅となるようにフィードバック制御する機能を果たす。
【0130】
なお、このようなフィードバック制御の方法は、たとえば、抵抗、キャパシタンス、インダクタンスなどの回路要素を組み合わせた制御回路によるPID制御法や、マイクロプロセッサを用いた制御法などが公知であるため、ここでは詳しい説明は省略する。
【0131】
<<< §5.センサの全般動作 >>>
図14は、本発明に係る角速度センサの全般動作を説明する信号波形図である。既に述べたとおり、図3に示す検出回路は、図14(1) に示すように、両半周期Tz,Txによって構成される周期Tごとの繰り返し動作を行う機能を有しており、図14(2) ,(3) に示すように、Z軸駆動信号DrZとX軸駆動信号DrXを用いて、振動子をZ軸方向およびX軸方向に交互に振動させる。一方、検波動作は、図14(4) ,(5) に示すZ軸検波イネーブル信号EnZおよびX軸検波イネーブル信号EnXによって示される第1の安定振動期βzおよび第2の安定振動期βxの期間についてのみ行われる。
【0132】
したがって、図14(6) に示すとおり、Z軸振幅測定信号Fza,Z軸位相測定信号Fzp,X軸振幅測定信号Fxa,X軸位相測定信号Fxp,X軸まわりの角速度検出信号ωx,Y軸まわりの角速度検出信号ωy,Z軸まわりの角速度検出信号ωzは、それぞれ図にハッチングを施した期間のみ得られる。ここで、Z軸振幅測定信号FzaおよびZ軸位相測定信号Fzpは、振動子をZ軸方向に振動させるときの制御に利用されるため、図示のとおり、第1の安定振動期βzの間に得られていれば十分であり、また、X軸振幅測定信号FxaおよびX軸位相測定信号Fxpは、振動子をX軸方向に振動させるときの制御に利用されるため、図示のとおり、第2の安定振動期βxの間に得られていれば十分である。
【0133】
これに対して、角速度検出信号ωx,ωy,ωzは、この角速度センサの主たる出力信号であり、実用上は、常に何らかの信号出力が得られるようにするのが好ましい。そこで、角速度検出部として機能する同期検波器442,443,444には、安定振動期でなくなったときに、直前の検出値を保持する機能をもたせ、次の安定振動期がくるまでの期間、保持していた検出値を継続して出力させるのが好ましい。
【0134】
具体的には、図14(6) に示すとおり、角速度検出信号ωx,ωyの検出値は、図にハッチングを施して示す第1の安定振動期βzの期間内しか得られないが、第1の安定振動期βzの終期において、その時点の検出値を保持させておき、次の第1の安定振動期βzがくるまでの間、保持させておいた検出値をそのまま継続して出力させるようにすればよい。同様に、角速度検出信号ωzの検出値は、図にハッチングを施して示す第2の安定振動期βxの期間内しか得られないが、第2の安定振動期βxの終期において、その時点の検出値を保持させておき、次の第2の安定振動期βxがくるまでの間、保持させておいた検出値をそのまま継続して出力させるようにすればよい。
【0135】
この場合、ハッチングを施した期間内は、リアルタイムで更新される正確な検出値が出力されるのに対して、それ以外の期間内は、保持されている過去の検出値が継続して出力されることになるため、検出値の精度は低下する。ただ、検出周期Tを、ある程度短い時間に設定しておけば、実用上、支障のない検出値を得ることができる。たとえば、上述の実施例の場合、T=12.5msなる設定を行っているので、保持した検出値を継続して出力するようにしても、一般的な用途に利用する上では何ら支障は生じない。
【0136】
既に述べたとおり、本発明に係る角速度センサにおいて、振動子を振動させる周波数は、振動方向に関して固有の共振周波数f0に設定するのが好ましい。図15は、一般的な機械的振動系の周波数特性を示すグラフである。グラフAは、振動周波数fに対する振幅を示すグラフである。同じエネルギーを供給して振動子を励振させたとしても、図示のとおり、共振周波数f0で振動させたときの振幅が最も大きくなる。したがって、フィードバック制御部110が、半周期ごとのフィードバック制御を行う際に、当該半周期の振動方向についての振動子の共振周波数をf0とした場合に、駆動信号の周波数がf0となるような制御を行うようにすれば、非常に効率的な検出動作が可能になる。
【0137】
振動子の共振周波数f0は、振動軸ごとにそれぞれ固有の値になる。上述した実施例の場合、Z軸方向に振動させる場合の共振周波数とX軸方向に振動させる場合の共振周波数とは、それぞれ別個の固有値になるので、第1の半周期Tzと第2の半周期Txとでは、それぞれ振動子は別個の周波数で振動させることになる。もちろん、センサ本体部の構造を適当に設計することにより、Z軸方向の共振周波数とX軸方向の共振周波数とを一致させることも可能である。
【0138】
一方、グラフBは、駆動信号と実変位との位相差を示すグラフであり、位相差は、左側に示す角度軸によって示されている。図示のとおり、共振周波数f0で振動させたとき、実変位の位相は、駆動信号の位相に対して90°だけ遅延することになる。§4で述べたように、フィードバック制御部110が、位相差を90°とするような周波数制御を行うのは、このためである。一般に、振動子の共振周波数は、製品ロットごとに異なり、また、温度などの利用環境によっても変化する。しかしながら、「共振周波数で振動させたとき、実変位の位相が、駆動信号の位相に対して90°だけ遅延する」ことは普遍である。したがって、駆動信号の位相と、位相測定部によって測定された振動子の位相とが、90°の位相差を生じるような周波数を、周波数f0とみなして、駆動信号に対する周波数制御を行うようにすればよい。本発明では、「位相差を90°に維持するフィードバック制御」を行っているため、どの製品ロットについても、どのような利用環境においても、常に理想的な振動状態を維持させる正しい制御が可能になる。
【0139】
グラフCは、位相差を示す帰還信号、すなわち、§4に示す例における位相測定信号Fxp,Fzpを示している。振動子の実際の振動周波数が共振周波数f0からずれると、この帰還信号の値も基準値からずれることになる。フィードバック制御部110は、この帰還信号が示す位相差が90°となるような制御を行う。なお、図示する近傍周波数領域Nを外れると、周波数に対する位相差の増減関係が反転するため、正しい制御を行うことができなくなるので、フィードバック制御部110は、近傍周波数領域Nを逸脱しないような制御を行う必要がある。
【0140】
なお、実際には、振動子を正確に共振周波数f0で振動させると、系が非線形となり、効率的な制御を行うことができないことが知られている。したがって、実用上は、振動子の振動周波数を正確な共振周波数f0に一致させるような制御を行う代わりに、若干、共振周波数f0からずれた所定周波数に維持するような制御を行うのが好ましい。すなわち、フィードバック制御部110が、半周期ごとのフィードバック制御を行う際に、当該半周期の振動方向についての振動子の共振周波数をf0とした場合に、駆動信号の周波数がf0の近傍の所定周波数(但し、当該周波数f0は除く別な周波数)となるような制御を行うようにすればよい。
【0141】
上述したとおり、駆動信号の位相と、位相測定部によって測定された振動子の位相とが、90°の位相差を生じるような周波数で振動子が振動している場合、当該振動周波数は共振周波数f0になる。したがって、若干、共振周波数f0からずれた所定周波数に維持するような制御を行うには、位相差が90°の近傍(90°は除く)の所定値(たとえば、85°や95°)となるようなフィードバック制御を行えばよい。§4では、位相測定信号Fxp,Fzpの信号値を零にするようなフィードバック制御を行う制御動作を述べたが、位相差が85°や95°となるようなフィードバック制御を行う場合、位相測定信号Fxp,Fzpの信号値を零に近い正もしくは負の所定値に維持するようなフィードバック制御を行えばよい。
【0142】
<<< §6.最適な期間設定 >>>
これまで述べたとおり、本発明における測定周期Tは、振動子を第1の座標軸方向に振動させる第1の半周期T1と、第2の座標軸方向に振動させる第2の半周期T2とによって構成される。そして、図4(6) ,(7) に示すように、各半周期T1,T2を、振動子の振動状態が不安定であると予想される不安定振動期αと、振動子が安定した振動状態を維持すると予想される安定振動期βとに分け、それぞれ安定振動期βの期間内に角速度の検出を行うことになる。
【0143】
前述した実施例の場合、T=12.5msに設定し、80Hzの周波数で周期的動作が繰り返し実行される。そして、各半周期が等しくなるような設定を行い、T1=T2=6.25msとしている。このような期間設定は、実用上、振動子の共振周波数に応じて最適な値に設定するのが好ましい。以下にその理由を説明する。
【0144】
本願発明に係る角速度センサに用いられる機械的な構造体は、中心位置にZ軸が通り、XY平面に平行な上面を有する可撓性支持体と、この可撓性支持体の下面中央に接合された振動子と、可撓性支持体の周囲を固定する固定部材と、可撓性支持体の上方に配置された駆動用素子群と、可撓性支持体の上方に配置された検出用素子群と、によって構成される。そこで、本願発明者は、このような機械的構造体の試作品を複数種類(各部の寸法、形状、材質などを変えたもの)実際に作成し、あるいは、コンピュータシミュレーションプログラム上で設計し、それぞれの試作品について、特定の座標軸方向に関する共振周波数と当該軸方向に振動させた場合の不安定振動期αとの関係を実測、あるいは、シミュレーションによって調べてみた。
【0145】
その結果、特定の振動方向についての振動子の共振周波数をf0とした場合に、不安定振動期の長さαは、(1/f0)×50〜(1/f0)×125の範囲に分布することが判明した。なお、振動子の振動状態が安定したと判断する時点としては、振幅値が「定常振幅値」の90%に到達した時点とした。ここで、「定常振幅値」とは、振動子を特定の振動方向に十分に長い期間(たとえば、数秒間)振動させ続け、振動子の振幅が一定となったときにおける当該振幅値をいう。「定常振幅値」に到達した時点で「振動が安定した」と判断する代わりに、その90%に到達した時点で「振動が安定した」と判断するようにしたのは、90%に到達した時点で得られた検出結果が、「定常振幅値」に到達した時点で得られた検出結果と、実用上、ほぼ同じになることが実験的に確認できたためである。
【0146】
このように、本願発明者が行った実験(実測およびシミュレーション)によれば、振動子の不安定振動期の長さαは、様々な機械的構造体によってバラツキがあるものの、振動方向についての振動子の共振周波数をf0とした場合、概ね、α=(1/f0)×50〜(1/f0)×125の範囲に分布することになる。もちろん、「安定した測定を行う」という観点からは、不安定振動期の長さαは、いくら長く設定してもかまわない。実際、図4(6) ,(7) における期間αz,αxは、数秒に設定しても、数分に設定しても、角速度の検出は可能である。
【0147】
しかしながら、期間αz,αxを長く設定すればするほど、半周期Tz,Txも長くなるので、3つの座標軸まわりの角速度ωx,ωy,ωzが得られる周期が長くなり、検出値の時間軸上での分解能が低下することになり好ましくない。たとえば、半周期Tz,Txを数秒程度に設定した場合、理論的には角速度センサとして機能することになるが、そのようなセンサは、デジタルカメラの撮影時の手ぶれ検出などには到底利用することができず、実用上、商業的な製品としての価値をもたない。このように、時間軸上での分解能を高めるには、半周期Tz,Txをできるだけ短く設定するのが好ましく、そのためには、不安定振動期の長さαをできるだけ短く設定するのが好ましい。
【0148】
結局、特定の振動方向についての振動子の共振周波数をf0とした場合に、振動子を当該振動方向へ振動させるための駆動信号の供給開始時から、振動子が安定した振動状態になると予想される時点までの期間αを、(1/f0)×50≦α≦(1/f0)×125の範囲に設定すれば、どのような機械的構造体を採用するセンサについても、適切な検出動作を行うことが可能になる。したがって、本発明に係る角速度センサの検出回路を設計する上では、不安定振動期αの期間が上記範囲内となるような設計を行うのが好ましい。
【0149】
一方、安定振動期の長さβは、角速度の測定動作が行われる期間の長さを定めるパラメータになる。期間βを長く設定すればするほど、当該半周期において得られる検出値のサンプル数は増加することになるが、3つの座標軸まわりの角速度ωx,ωy,ωzが得られる周期が長くなり、検出値の時間軸上での分解能は低下する。本願発明者が行った実験によると、期間α=期間βに設定すると、最もバランスの良い適切な検出値を得ることができた。
【0150】
このように、期間α=期間βに設定することにすれば、半周期=α+β=2αに設定すればよいことになる。結局、第1の座標軸方向についての振動子の共振周波数をf1とし、第2の座標軸方向についての振動子の共振周波数をf2とした場合、不安定振動期の長さを、上述したとおり(1/f0)×50〜(1/f0)×125の範囲に設定することにすれば、第1の半周期T1を、(1/f1)×100≦T1≦(1/f1)×250の範囲に設定し、第2の半周期T2を、(1/f2)×100≦T2≦(1/f2)×250の範囲に設定すればよいことになる。振動子のZ軸方向の共振周波数f1とX軸方向の共振周波数f2とがほぼ等しいセンサの場合、当該共振周波数をf0として、周期Tを(1/f0)×200〜(1/f0)×500の範囲に設定すると、良好な検出が可能になる。
【0151】
<<< §7.その他の変形例 >>>
これまで、図1および図2に示す例のように、駆動用素子群および検出用素子群を構成する個々の素子が、可撓性支持体10の上面に固定された圧電素子からなるセンサに本発明を適用した例を述べたが、本発明は、このような圧電素子を用いた角速度センサに限定されるものではない。たとえば、駆動用素子群および検出用素子群を構成する個々の素子が、可撓性支持体の上面に固定された変位電極と、この変位電極に対向する位置に固定された固定電極と、によって構成される容量素子からなる角速度センサについても、本発明は適用可能である。
【0152】
図16は、このような容量素子を用いたセンサ本体部の構造を示す縦断面図である。この図16に示すセンサ本体部において、可撓性支持体10、振動子20、固定部材30の構成は、図1に示すセンサ本体部と全く同じである。ただ、圧電素子40を設ける代わりに、容量素子が形成されている。すなわち、可撓性支持体10の上方に、台座50を介して補助基板60が接合されており、可撓性支持体10の上面に形成された共通電極Ecと、補助基板60の下面に形成された個々の個別電極とによって、個々の容量素子が形成されている。
【0153】
図17は、この図16に示すセンサ本体部の補助基板60の下面図である。補助基板60の下面に形成された12枚の電極の形状および配置は、図2に示す圧電素子10の上面に形成された12枚の電極の形状および配置と同一であり、ここでは、同一の符号を付して示してある。互いに対向する電極対によって、合計12組の容量素子群が形成される。これら12組の容量素子群は、図2に示す12組の圧電素子群とほぼ同じ機能を果たす。
【0154】
圧電素子は、上下の両電極間に電圧を印加することにより伸縮を生じる性質を有しているが、容量素子は、両電極間に電圧を印加することにより、クーロン力の作用を受け、電極間距離に変化が生じる性質を有している。したがって、各駆動用電極に交流駆動信号を与えれば、振動子を所定の座標軸方向に振動させることができる。また、圧電素子は、機械的に伸縮させる応力を受けると、上下の両電極間に電圧を発生させる性質を有しており、この性質を利用して、振動子の所定軸方向の変位を検出することができた。これに対して、上記容量素子は、可撓性支持体10を撓ませる応力を受けると、電極間距離に変化が生じ、静電容量値が変化する性質を有しており、この性質を利用して、振動子の所定軸方向の変位を検出することができる。
【0155】
結局、図16,図17に示す容量式のセンサ本体部についても、図3に示す検出回路を適用して、これまで述べてきた方法と同じ検出動作を行うことが可能である。要するに、本発明は、中心位置にZ軸が通り、XY平面に平行な上面を有する可撓性支持体と、この可撓性支持体の下面中央に接合された振動子と、可撓性支持体の周囲を固定する固定部材と、可撓性支持体の上方に配置された駆動用素子群と、可撓性支持体の上方に配置された検出用素子群と、を備えたセンサ本体部について適用可能な技術ということができる。なお、可撓性支持体は、必ずしも平板状の基板である必要はなく、たとえば、複数の橋梁構造を備えた部材であってもかまわない。
【0156】
ここで、駆動用素子群は、XY平面上に投影したときに、X軸正の領域に配置されたX軸正側駆動用素子と、X軸負の領域に配置されたX軸負側駆動用素子と、Y軸正の領域に配置されたY軸正側駆動用素子と、Y軸負の領域に配置されたY軸負側駆動用素子と、によって構成され、X軸正側駆動用素子とX軸負側駆動用素子とに交流駆動信号を供給すると振動子がX軸に沿って振動し、Y軸正側駆動用素子とY軸負側駆動用素子とに交流駆動信号を供給すると振動子がY軸に沿って振動し、4組の駆動用素子のすべてに交流駆動信号を供給すると振動子がZ軸に沿って振動するように、可撓性支持体の個々の配置位置にそれぞれ特定の撓みを生じさせる機能を有していれば、圧電素子や容量素子、その他の素子であってもかまわない。
【0157】
また、検出用素子群は、XY平面上に投影したときに、X軸正の領域に配置されたX軸正側検出用素子と、X軸負の領域に配置されたX軸負側検出用素子と、Y軸正の領域に配置されたY軸正側検出用素子と、Y軸負の領域に配置されたY軸負側検出用素子と、XZ平面およびYZ平面の双方に関して対称となるように配置されたZ軸変位検出用素子と、によって構成され、X軸正側検出用素子とX軸負側検出用素子とは、振動子がX軸方向に変位したときに可撓性支持体に生じる撓みに起因して、当該変位に応じた絶対値をもち互いに逆極性の検出信号を出力し、Y軸正側検出用素子とY軸負側検出用素子とは、振動子がY軸方向に変位したときに可撓性支持体に生じる撓みに起因して、当該変位に応じた絶対値をもち互いに逆極性の検出信号を出力し、Z軸変位検出用素子は、振動子がZ軸方向に変位したときに可撓性支持体に生じる撓みに起因して、当該変位に応じた絶対値をもち変位方向に応じた極性の検出信号を出力する機能を有していれば、圧電素子や容量素子、その他の素子であってもかまわない。
【0158】
本発明の特徴は、検出用素子群から得られる検出信号に基づく制御を行いながら、駆動用素子群に対して交流駆動信号を供給して振動子を所定の座標軸方向に振動させ、所定のタイミングで検出用素子群から得られる検出信号を用いて、各座標軸まわりの角速度を示す電気信号を出力する特有の検出回路を利用する点にある。
【0159】
図3に示す検出回路は、第1の半周期Tzに振動子をZ軸方向に振動させながら、X軸まわりの角速度ωxとY軸まわりの角速度ωyとを測定し、第2の半周期Txに振動子をX軸方向に振動させながら、Z軸まわりの角速度ωzを測定する回路であるが、本発明に用いる検出回路は、必ずしもこのような実施例の回路である必要はない。振動子をX軸方向に振動させながら、Z軸まわりの角速度ωzとともにY軸まわりの角速度ωyを測定することも可能であるし、振動子をY軸方向に振動させながら、X軸まわりの角速度ωxとともにZ軸まわりの角速度ωzを測定することも可能である。
【0160】
結局、本発明に用いる検出回路は、第1の半周期T1と第2の半周期T2とによって構成される周期Tについて、周期的動作を実行する機能を有しており、第1の駆動信号発生部、第2の駆動信号発生部、正側同期検波信号発生部、負側同期検波信号発生部、第1の検波イネーブル信号発生部、第2の検波イネーブル信号発生部、マトリクス変換器、第1の角速度検出部、第2の角速度検出部、第3の角速度検出部、第1の振幅測定部、第1の位相測定部、第2の振幅測定部、第2の位相測定部、フィードバック制御部を備えていればよい。
【0161】
ここで、第1の駆動信号発生部は、第1の半周期T1には、所定の周波数および振幅をもった交流信号が配されており、第2の半周期T2には、何ら交流信号が配されていない、第1の駆動信号を発生する構成要素であり、第2の駆動信号発生部は、第1の半周期T1には、何ら交流信号が配されておらず、第2の半周期T2には、所定の周波数および振幅をもった交流信号が配されている、第2の駆動信号を発生する構成要素である。
【0162】
また、正側同期検波信号発生部は、第1の半周期T1には、第1の駆動信号の正側のピークに同期した位置に第1の駆動信号の周期の1/2以下のパルス幅をもったパルスが周期的に配され、第2の半周期T2には、第2の駆動信号の正側のピークに同期した位置に第2の駆動信号の周期の1/2以下のパルス幅をもったパルスが周期的に配されている、正側同期検波信号を発生する構成要素であり、負側同期検波信号発生部は、第1の半周期T1には、第1の駆動信号の負側のピークに同期した位置に第1の駆動信号の周期の1/2以下のパルス幅をもったパルスが周期的に配され、第2の半周期T2には、第2の駆動信号の負側のピークに同期した位置に第2の駆動信号の周期の1/2以下のパルス幅をもったパルスが周期的に配されている、負側同期検波信号を発生する構成要素である。
【0163】
一方、第1の検波イネーブル信号発生部は、第1の半周期T1において振動子が安定した振動状態を維持すると予想される第1の安定振動期を示す第1の検波イネーブル信号を発生する構成要素であり、第2の検波イネーブル信号発生部は、第2の半周期T2において振動子が安定した振動状態を維持すると予想される第2の安定振動期を示す第2の検波イネーブル信号を発生する構成要素である。
【0164】
また、マトリクス変換器は、第1の半周期T1には、振動子を第1の座標軸方向に振動させるために必要な駆動用素子に第1の駆動信号もしくはその位相反転信号を供給し、第2の半周期T2には、振動子を第2の座標軸方向に振動させるために必要な駆動用素子に第2の駆動信号もしくはその位相反転信号を供給する構成要素である。
【0165】
そして、第1の角速度検出部は、第1の安定振動期の期間、正側同期検波信号および負側同期検波信号を利用することにより検出用素子群から得られる振動子のコリオリ力に起因した第2の座標軸方向への変位を示す検出値に基づいて、第3の座標軸まわりの角速度を示す電気信号を出力する構成要素であり、第2の角速度検出部は、第1の安定振動期の期間、正側同期検波信号および負側同期検波信号を利用することにより検出用素子群から得られる振動子のコリオリ力に起因した第3の座標軸方向への変位を示す検出値に基づいて、第2の座標軸まわりの角速度を示す電気信号を出力する構成要素であり、第3の角速度検出部は、第2の安定振動期の期間、正側同期検波信号および負側同期検波信号を利用することにより検出用素子群から得られる振動子のコリオリ力に起因した第3の座標軸方向への変位を示す検出値に基づいて、第1の座標軸まわりの角速度を示す電気信号を出力する構成要素である。
【0166】
更に、第1の振幅測定部は、第1の安定振動期の期間、検出用素子群から得られる振動子の第1の座標軸方向への変位を示す検出値に基づいて、振動子の振幅を測定する構成要素であり、第1の位相測定部は、第1の安定振動期の期間、正側同期検波信号および負側同期検波信号を利用することにより検出用素子群から得られる振動子の第1の座標軸方向への変位を示す検出値に基づいて、振動子の位相を測定する構成要素である。
【0167】
一方、第2の振幅測定部は、第2の安定振動期の期間、検出用素子群から得られる振動子の第2の座標軸方向への変位を示す検出値に基づいて、振動子の振幅を測定する構成要素であり、第2の位相測定部は、第2の安定振動期の期間、正側同期検波信号および負側同期検波信号を利用することにより検出用素子群から得られる振動子の第2の座標軸方向への変位を示す検出値に基づいて、振動子の位相を測定する構成要素である
【0168】
そして、フィードバック制御部は、第1の振幅測定部によって測定された振幅および第1の位相測定部によって測定された位相に基づいて、第1の駆動信号発生部が発生する第1の駆動信号の周波数および振幅が所定の基準周波数および基準振幅となるようにフィードバック制御するとともに、第2の振幅測定部によって測定された振幅および第2の位相測定部によって測定された位相に基づいて、第2の駆動信号発生部が発生する第2の駆動信号の周波数および振幅が所定の基準周波数および基準振幅となるようにフィードバック制御する構成要素である。
【符号の説明】
【0169】
10:可撓性支持体
20:振動子
30:固定部材
40:圧電素子
50:台座
60:補助基板
100:動作信号発生器
110:フィードバック制御部
120:X軸検波イネーブル信号発生部
130:Z軸検波イネーブル信号発生部
140:X軸駆動信号発生部
150:Z軸駆動信号発生部
160:正側同期検波信号発生部
170:負側同期検波信号発生部
200:マトリクス変換器
210〜240:OPアンプ
300:センサ本体部
411:差分器
412:差分器
413:加算器
421〜425:ゲートスイッチ(SW)
431,432:AM検波器(AMD)
441〜445:同期検波器(SD)
Ax:X軸駆動信号の振幅
Az:Z軸駆動信号の振幅
AMD:AM検波器
a〜f:グラフの積算領域
C1〜C7:コンデンサ
DIF:差動増幅器
DrX:X軸駆動信号
DrZ:Z軸駆動信号
Dx(+):X軸正側駆動信号
Dx(−):X軸負側駆動信号
Dy(+):Y軸正側駆動信号
Dy(−):Y軸負側駆動信号
Ec:共通電極
EnX:X軸検波イネーブル信号
EnZ:Z軸検波イネーブル信号
Ex(+):X軸正側駆動用電極
Ex(−):X軸負側駆動用電極
Ey(+):Y軸正側駆動用電極
Ey(−):Y軸負側駆動用電極
Ex1:X軸正側検出用電極
Ex2:X軸負側検出用電極
Ey1:Y軸正側検出用電極
Ey2:Y軸負側検出用電極
Ez1〜Ez4:Z軸変位検出用電極
Fxa:X軸振幅測定信号
Fxp:X軸位相測定信号
Fza:Z軸振幅測定信号
Fzp:Z軸位相測定信号
f:周波数
f0:共振周波数
fx:X軸駆動信号の周波数
fz:Z軸駆動信号の周波数
G:環状溝部
Ga,Gb:ゲートスイッチ
K1:正側積算器
K2:負側積算器
K3:差分器
N:近傍周波数領域
O:XYZ三次元座標系の原点
OP1,OP2:演算増幅器
P0〜P4:グラフ上の点
R1〜R17:抵抗
Ref:参照電圧
SD:同期検波器
SdA:正側同期検波信号
SdB:負側同期検波信号
Sin:入力信号
Sout:出力信号
SW:ゲートスイッチ
SΔx:X軸変位検出信号
SΔy:Y軸変位検出信号
SΔz:Z軸変位検出信号
T:動作周期
Tx:第2の半周期
Tz:第1の半周期
X,Y,Z:三次元座標系の各座標軸
αx:第2の不安定振動期
αz:第1の不安定振動期
βx:第2の安定振動期
βz:第1の安定振動期
ωx,ωy,ωz:各座標軸まわりの角速度
【技術分野】
【0001】
本発明は、角速度センサに関し、特に、独立した3軸まわりの角速度を検出することができる角速度センサに用いる信号処理回路に関する。
【背景技術】
【0002】
産業機器や民生用機器の分野では、内蔵用の小型角速度センサの需要が高まっている。角速度も、加速度や力と同様にベクトル量であるため、実用上は、三次元空間において独立した3軸まわりの角速度を検出可能な三次元角速度センサが望まれている。たとえば、下記の特許文献1には、三次元の加速度とともに、三次元の角速度を検出することが可能な静電容量型センサおよび圧電型センサが開示されている。
【0003】
一般的な角速度センサの検出原理は、三次元直交座標系において、振動子を第1の座標軸方向に振動させた状態において、当該振動子に対して第2の座標軸方向に作用するコリオリ力を測定することにより、第3の座標軸まわりの角速度を求める、というものである。このような検出原理では、振動子の振動方向に直交する2つの座標軸まわりの角速度検出は可能であるが、振動子の振動方向を向いた座標軸まわりの角速度検出を行うことはできない。したがって、3軸まわりの角速度を検出するためには、振動子を2通りの座標軸に沿って振動させる必要がある。
【0004】
前掲の特許文献1の<§7.2>には、3軸まわりの角速度検出を行うための時分割検出動作が開示されている。この検出動作では、まず、振動子を第1の座標軸方向に振動させた状態で、第2の座標軸まわりの角速度および第3の座標軸まわりの角速度を検出し、続いて、振動子を第2の座標軸方向に振動させた状態で、第1の座標軸まわりの角速度を検出することになる。同文献の<§7.3>には、そのような時分割検出動作を行うための検出回路も開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO94/023272号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したとおり、時分割検出動作により3軸まわりの角速度検出を行う機能をもった角速度センサは、前掲の特許文献1に示すように公知のものである。しかしながら、このような機能をもった角速度センサに用いる従来の信号処理回路には、精度の高い検出値を得ることができないという問題がある。すなわち、時分割検出動作では、振動子を第1の軸方向に振動させながら行う検出動作と、振動子を第2の軸方向に振動させながら行う検出動作と、を交互に繰り返し行う必要があるが、振動子の振動方向を交互に変える運用をとると、振動子の運動が不安定になり、正確な測定を行うことができない。
【0007】
そこで本発明は、時分割検出動作により3軸まわりの角速度を高い精度で検出可能な角速度センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1) 本発明の第1の態様は、XYZ三次元座標系における各座標軸まわりの角速度を検出する角速度センサにおいて、
中心位置にZ軸が通り、XY平面に平行な上面を有する可撓性支持体と、
可撓性支持体の下面中央に接合された振動子と、
可撓性支持体の周囲を固定する固定部材と、
可撓性支持体の上方に配置された駆動用素子群と、
可撓性支持体の上方に配置された検出用素子群と、
駆動用素子群に対して交流駆動信号を供給して振動子を所定の座標軸方向に振動させ、所定のタイミングで検出用素子群から得られる検出信号を用いて、各座標軸まわりの角速度を示す電気信号を出力する検出回路と、
を設け、
駆動用素子群は、XY平面上に投影したときに、X軸正の領域に配置されたX軸正側駆動用素子と、X軸負の領域に配置されたX軸負側駆動用素子と、Y軸正の領域に配置されたY軸正側駆動用素子と、Y軸負の領域に配置されたY軸負側駆動用素子と、によって構成され、X軸正側駆動用素子とX軸負側駆動用素子とに交流駆動信号を供給すると振動子がX軸に沿って振動し、Y軸正側駆動用素子とY軸負側駆動用素子とに交流駆動信号を供給すると振動子がY軸に沿って振動し、4組の駆動用素子のすべてに交流駆動信号を供給すると振動子がZ軸に沿って振動するように、可撓性支持体の個々の配置位置にそれぞれ特定の撓みを生じさせる機能を有し、
検出用素子群は、XY平面上に投影したときに、X軸正の領域に配置されたX軸正側検出用素子と、X軸負の領域に配置されたX軸負側検出用素子と、Y軸正の領域に配置されたY軸正側検出用素子と、Y軸負の領域に配置されたY軸負側検出用素子と、XZ平面およびYZ平面の双方に関して対称となるように配置されたZ軸変位検出用素子と、によって構成され、X軸正側検出用素子とX軸負側検出用素子とは、振動子がX軸方向に変位したときに可撓性支持体に生じる撓みに起因して、当該変位に応じた絶対値をもち互いに逆極性の検出信号を出力し、Y軸正側検出用素子とY軸負側検出用素子とは、振動子がY軸方向に変位したときに可撓性支持体に生じる撓みに起因して、当該変位に応じた絶対値をもち互いに逆極性の検出信号を出力し、Z軸変位検出用素子は、振動子がZ軸方向に変位したときに可撓性支持体に生じる撓みに起因して、当該変位に応じた絶対値をもち変位方向に応じた極性の検出信号を出力する機能を有し、
検出回路は、
第1の半周期T1と第2の半周期T2とによって構成される周期Tについて、周期的動作を実行する機能を有し、
第1の半周期T1には、特定の駆動素子に振動子を第1の座標軸方向に振動させるための駆動信号を供給し、第2の半周期T2には、特定の駆動素子に振動子を第2の座標軸方向に振動させるための駆動信号を供給し、
第1の半周期T1において振動子が安定した振動状態を維持すると予想される第1の座標軸方向に関する安定振動期の期間、検出用素子群から得られる振動子のコリオリ力に起因した第2の座標軸方向への変位を示す検出値に基づいて、第3の座標軸まわりの角速度を検出するとともに、検出用素子群から得られる振動子のコリオリ力に起因した第3の座標軸方向への変位を示す検出値に基づいて、第2の座標軸まわりの角速度を検出し、
第2の半周期T2において振動子が安定した振動状態を維持すると予想される第2の座標軸方向に関する安定振動期の期間、検出用素子群から得られる振動子のコリオリ力に起因した第3の座標軸方向への変位を示す検出値に基づいて、第1の座標軸まわりの角速度を検出するようにしたものである。
【0009】
(2) 本発明の第2の態様は、上述した第1の態様に係る角速度センサにおいて、
検出回路が、検出用素子群から得られる信号に基づいて振動子の位相および振幅を測定する機能と、この測定値に基づいて、振動子の位相および振幅に対するフィードバック制御を行う機能と、を有するようにしたものである。
【0010】
(3) 本発明の第3の態様は、上述した第1または第2の態様に係る角速度センサにおいて、
特定の振動方向についての振動子の共振周波数をf0とした場合に、振動子を当該振動方向へ振動させるための駆動信号の供給開始時から、振動子が安定した振動状態になると予想される時点までの期間αを、(1/f0)×50≦α≦(1/f0)×125の範囲に設定するようにしたものである。
【0011】
(4) 本発明の第4の態様は、上述した第3の態様に係る角速度センサにおいて、
第1の座標軸方向についての振動子の共振周波数をf1とし、第2の座標軸方向についての振動子の共振周波数をf2とした場合に、第1の半周期T1を、(1/f1)×100≦T1≦(1/f1)×250の範囲に設定し、第2の半周期T2を、(1/f2)×100≦T2≦(1/f2)×250の範囲に設定するようにしたものである。
【0012】
(5) 本発明の第5の態様は、XYZ三次元座標系における各座標軸まわりの角速度を検出する角速度センサにおいて、
中心位置にZ軸が通り、XY平面に平行な上面を有する可撓性支持体と、
可撓性支持体の下面中央に接合された振動子と、
可撓性支持体の周囲を固定する固定部材と、
可撓性支持体の上方に配置された駆動用素子群と、
可撓性支持体の上方に配置された検出用素子群と、
検出用素子群から得られる検出信号に基づく制御を行いながら、駆動用素子群に対して交流駆動信号を供給して振動子を所定の座標軸方向に振動させ、所定のタイミングで検出用素子群から得られる検出信号を用いて、各座標軸まわりの角速度を示す電気信号を出力する検出回路と、
を設け、
駆動用素子群は、XY平面上に投影したときに、X軸正の領域に配置されたX軸正側駆動用素子と、X軸負の領域に配置されたX軸負側駆動用素子と、Y軸正の領域に配置されたY軸正側駆動用素子と、Y軸負の領域に配置されたY軸負側駆動用素子と、によって構成され、X軸正側駆動用素子とX軸負側駆動用素子とに交流駆動信号を供給すると振動子がX軸に沿って振動し、Y軸正側駆動用素子とY軸負側駆動用素子とに交流駆動信号を供給すると振動子がY軸に沿って振動し、4組の駆動用素子のすべてに交流駆動信号を供給すると振動子がZ軸に沿って振動するように、可撓性支持体の個々の配置位置にそれぞれ特定の撓みを生じさせる機能を果たし、
検出用素子群は、XY平面上に投影したときに、X軸正の領域に配置されたX軸正側検出用素子と、X軸負の領域に配置されたX軸負側検出用素子と、Y軸正の領域に配置されたY軸正側検出用素子と、Y軸負の領域に配置されたY軸負側検出用素子と、XZ平面およびYZ平面の双方に関して対称となるように配置されたZ軸変位検出用素子と、によって構成され、X軸正側検出用素子とX軸負側検出用素子とは、振動子がX軸方向に変位したときに可撓性支持体に生じる撓みに起因して、当該変位に応じた絶対値をもち互いに逆極性の検出信号を出力し、Y軸正側検出用素子とY軸負側検出用素子とは、振動子がY軸方向に変位したときに可撓性支持体に生じる撓みに起因して、当該変位に応じた絶対値をもち互いに逆極性の検出信号を出力し、Z軸変位検出用素子は、振動子がZ軸方向に変位したときに可撓性支持体に生じる撓みに起因して、当該変位に応じた絶対値をもち変位方向に応じた極性の検出信号を出力する機能を果たし、
検出回路は、
第1の半周期T1と第2の半周期T2とによって構成される周期Tについて、周期的動作を実行する機能を有するようにし、更に、
第1の半周期T1には、所定の周波数および振幅をもった交流信号が配されており、第2の半周期T2には、何ら交流信号が配されていない、第1の駆動信号を発生する第1の駆動信号発生部と、
第1の半周期T1には、何ら交流信号が配されておらず、第2の半周期T2には、所定の周波数および振幅をもった交流信号が配されている、第2の駆動信号を発生する第2の駆動信号発生部と、
第1の半周期T1には、第1の駆動信号の正側のピークに同期した位置に第1の駆動信号の周期の1/2以下のパルス幅をもったパルスが周期的に配され、第2の半周期T2には、第2の駆動信号の正側のピークに同期した位置に第2の駆動信号の周期の1/2以下のパルス幅をもったパルスが周期的に配されている、正側同期検波信号を発生する正側同期検波信号発生部と、
第1の半周期T1には、第1の駆動信号の負側のピークに同期した位置に第1の駆動信号の周期の1/2以下のパルス幅をもったパルスが周期的に配され、第2の半周期T2には、第2の駆動信号の負側のピークに同期した位置に第2の駆動信号の周期の1/2以下のパルス幅をもったパルスが周期的に配されている、負側同期検波信号を発生する負側同期検波信号発生部と、
第1の半周期T1において振動子が安定した振動状態を維持すると予想される第1の安定振動期を示す第1の検波イネーブル信号を発生する第1の検波イネーブル信号発生部と、
第2の半周期T2において振動子が安定した振動状態を維持すると予想される第2の安定振動期を示す第2の検波イネーブル信号を発生する第2の検波イネーブル信号発生部と、
第1の半周期T1には、振動子を第1の座標軸方向に振動させるために必要な駆動用素子に第1の駆動信号もしくはその位相反転信号を供給し、第2の半周期T2には、振動子を第2の座標軸方向に振動させるために必要な駆動用素子に第2の駆動信号もしくはその位相反転信号を供給するマトリクス変換器と、
第1の安定振動期の期間、正側同期検波信号および負側同期検波信号を利用することにより検出用素子群から得られる振動子のコリオリ力に起因した第2の座標軸方向への変位を示す検出値に基づいて、第3の座標軸まわりの角速度を示す電気信号を出力する第1の角速度検出部と、
第1の安定振動期の期間、正側同期検波信号および負側同期検波信号を利用することにより検出用素子群から得られる振動子のコリオリ力に起因した第3の座標軸方向への変位を示す検出値に基づいて、第2の座標軸まわりの角速度を示す電気信号を出力する第2の角速度検出部と、
第2の安定振動期の期間、正側同期検波信号および負側同期検波信号を利用することにより検出用素子群から得られる振動子のコリオリ力に起因した第3の座標軸方向への変位を示す検出値に基づいて、第1の座標軸まわりの角速度を示す電気信号を出力する第3の角速度検出部と、
第1の安定振動期の期間、検出用素子群から得られる振動子の第1の座標軸方向への変位を示す検出値に基づいて、振動子の振幅を測定する第1の振幅測定部と、
第1の安定振動期の期間、正側同期検波信号および負側同期検波信号を利用することにより検出用素子群から得られる振動子の第1の座標軸方向への変位を示す検出値に基づいて、振動子の位相を測定する第1の位相測定部と、
第2の安定振動期の期間、検出用素子群から得られる振動子の第2の座標軸方向への変位を示す検出値に基づいて、振動子の振幅を測定する第2の振幅測定部と、
第2の安定振動期の期間、正側同期検波信号および負側同期検波信号を利用することにより検出用素子群から得られる振動子の第2の座標軸方向への変位を示す検出値に基づいて、振動子の位相を測定する第2の位相測定部と、
第1の振幅測定部によって測定された振幅および第1の位相測定部によって測定された位相に基づいて、第1の駆動信号発生部が発生する第1の駆動信号の周波数および振幅が所定の基準周波数および基準振幅となるようにフィードバック制御するとともに、第2の振幅測定部によって測定された振幅および第2の位相測定部によって測定された位相に基づいて、第2の駆動信号発生部が発生する第2の駆動信号の周波数および振幅が所定の基準周波数および基準振幅となるようにフィードバック制御するフィードバック制御部と、
を備えるようにしたものである。
【0013】
(6) 本発明の第6の態様は、XYZ三次元座標系における各座標軸まわりの角速度を検出する角速度センサにおいて、
中心位置にZ軸が通り、XY平面に平行な上面を有する可撓性支持体と、
可撓性支持体の下面中央に接合された振動子と、
可撓性支持体の周囲を固定する固定部材と、
可撓性支持体の上方に配置された駆動用素子群と、
可撓性支持体の上方に配置された検出用素子群と、
検出用素子群から得られる検出信号に基づく制御を行いながら、駆動用素子群に対して交流駆動信号を供給して振動子を所定の座標軸方向に振動させ、所定のタイミングで検出用素子群から得られる検出信号を用いて、各座標軸まわりの角速度を示す電気信号を出力する検出回路と、
を設け、
駆動用素子群は、XY平面上に投影したときに、X軸正の領域に配置されたX軸正側駆動用素子と、X軸負の領域に配置されたX軸負側駆動用素子と、Y軸正の領域に配置されたY軸正側駆動用素子と、Y軸負の領域に配置されたY軸負側駆動用素子と、によって構成され、X軸正側駆動用素子とX軸負側駆動用素子とに交流駆動信号を供給すると振動子がX軸に沿って振動し、4組の駆動用素子のすべてに交流駆動信号を供給すると振動子がZ軸に沿って振動するように、可撓性支持体の個々の配置位置にそれぞれ特定の撓みを生じさせる機能を果たし、
検出用素子群は、XY平面上に投影したときに、X軸正の領域に配置されたX軸正側検出用素子と、X軸負の領域に配置されたX軸負側検出用素子と、Y軸正の領域に配置されたY軸正側検出用素子と、Y軸負の領域に配置されたY軸負側検出用素子と、XZ平面およびYZ平面の双方に関して対称となるように配置されたZ軸変位検出用素子と、によって構成され、X軸正側検出用素子とX軸負側検出用素子とは、振動子がX軸方向に変位したときに可撓性支持体に生じる撓みに起因して、当該変位に応じた絶対値をもち互いに逆極性の検出信号を出力し、Y軸正側検出用素子とY軸負側検出用素子とは、振動子がY軸方向に変位したときに可撓性支持体に生じる撓みに起因して、当該変位に応じた絶対値をもち互いに逆極性の検出信号を出力し、Z軸変位検出用素子は、振動子がZ軸方向に変位したときに可撓性支持体に生じる撓みに起因して、当該変位に応じた絶対値をもち変位方向に応じた極性の検出信号を出力する機能を果たし、
検出回路は、
第1の半周期Tzと第2の半周期Txとによって構成される周期Tについて、周期的動作を実行する機能を有するようにし、更に、
第1の半周期Tzには、所定の周波数fzおよび振幅Azをもった交流信号が配されており、第2の半周期Txには、何ら交流信号が配されていない、Z軸駆動信号DrZを発生するZ軸駆動信号発生部と、
第1の半周期Tzには、何ら交流信号が配されておらず、第2の半周期Txには、所定の周波数fxおよび振幅Axをもった交流信号が配されている、X軸駆動信号DrXを発生するX軸駆動信号発生部と、
第1の半周期Tzには、Z軸駆動信号DrZの正側のピークに同期した位置にZ軸駆動信号DrZの周期の1/2以下のパルス幅をもったパルスが周期的に配され、第2の半周期Txには、X軸駆動信号DrXの正側のピークに同期した位置にX軸駆動信号DrXの周期の1/2以下のパルス幅をもったパルスが周期的に配されている、正側同期検波信号SdAを発生する正側同期検波信号発生部と、
第1の半周期Tzには、Z軸駆動信号DrZの負側のピークに同期した位置にZ軸駆動信号DrZの周期の1/2以下のパルス幅をもったパルスが周期的に配され、第2の半周期Txには、X軸駆動信号DrXの負側のピークに同期した位置にX軸駆動信号DrXの周期の1/2以下のパルス幅をもったパルスが周期的に配されている、負側同期検波信号SdBを発生する負側同期検波信号発生部と、
第1の半周期Tzにおいて振動子がZ軸に沿って安定した振動状態を維持すると予想される第1の安定振動期βzを示すZ軸検波イネーブル信号EnZを発生するZ軸検波イネーブル信号発生部と、
第2の半周期Txにおいて振動子がX軸に沿って安定した振動状態を維持すると予想される第2の安定振動期βxを示すX軸検波イネーブル信号EnXを発生するX軸検波イネーブル信号発生部と、
第1の半周期Tzには、4組の駆動用素子のすべてにZ軸駆動信号DrZを供給し、第2の半周期Txには、X軸正側駆動用素子にX軸駆動信号DrXを供給しX軸負側駆動用素子にX軸駆動信号DrXの位相反転信号を供給するマトリクス変換器と、
第1の安定振動期βzの期間、正側同期検波信号および負側同期検波信号を利用することにより、X軸正側検出用素子の検出信号とX軸負側検出用素子の検出信号との差を示す検出値に基づいて、Y軸まわりの角速度ωyを示す電気信号を出力するY軸まわり角速度検出部と、
第1の安定振動期βzの期間、正側同期検波信号および負側同期検波信号を利用することにより、Y軸正側検出用素子の検出信号とY軸負側検出用素子の検出信号との差を示す検出値に基づいて、X軸まわりの角速度ωxを示す電気信号を出力するX軸まわり角速度検出部と、
第2の安定振動期βxの期間、正側同期検波信号および負側同期検波信号を利用することにより、Y軸正側検出用素子の検出信号とY軸負側検出用素子の検出信号との差を示す検出値に基づいて、Z軸まわりの角速度ωzを示す電気信号を出力するZ軸まわり角速度検出部と、
第1の安定振動期βzの期間、Z軸変位検出用素子から得られる振動子のZ軸方向への変位を示す検出値に基づいて、振動子のZ軸方向の振幅を測定するZ軸振幅測定部と、
第1の安定振動期βzの期間、正側同期検波信号および負側同期検波信号を利用することにより、Z軸変位検出用素子から得られる振動子のZ軸方向への変位を示す検出値に基づいて、振動子のZ軸方向の位相を測定するZ軸位相測定部と、
第2の安定振動期βxの期間、X軸正側検出用素子の検出信号とX軸負側検出用素子の検出信号との差として得られる振動子のX軸方向への変位を示す検出値に基づいて、振動子のX軸方向の振幅を測定するX軸振幅測定部と、
第2の安定振動期βxの期間、正側同期検波信号および負側同期検波信号を利用することにより、X軸正側検出用素子の検出信号とX軸負側検出用素子の検出信号との差として得られる振動子のX軸方向への変位を示す検出値に基づいて、振動子のX軸方向の位相を測定するX軸位相測定部と、
Z軸振幅測定部によって測定された振幅およびZ軸位相測定部によって測定された位相に基づいて、Z軸駆動信号発生部が発生するZ軸駆動信号DrZの周波数および振幅が所定の基準周波数および基準振幅となるようにフィードバック制御するとともに、X軸振幅測定部によって測定された振幅およびX軸位相測定部によって測定された位相に基づいて、X軸駆動信号発生部が発生するX軸駆動信号DrXの周波数および振幅が所定の基準周波数および基準振幅となるようにフィードバック制御するフィードバック制御部と、
を備えるようにしたものである。
【0014】
(7) 本発明の第7の態様は、上述した第6の態様に係る角速度センサにおいて、
マトリクス変換器が、
「DrZ+DrX」なる和信号を生成してX軸正側駆動用素子に供給する回路と、
「DrZ−DrX」なる差信号を生成してX軸負側駆動用素子に供給する回路と、
「DrZ」をY軸正側駆動用素子に供給する回路と、
「DrZ」をY軸負側駆動用素子に供給する回路と、
を有するようにしたものである。
【0015】
(8) 本発明の第8の態様は、上述した第5〜第7の態様に係る角速度センサにおいて、
角速度検出部が、
与えられた信号の信号値を、正側同期検波信号のパルスが与えられている間だけ積算する正側積算器と、
与えられた信号の信号値を、負側同期検波信号のパルスが与えられている間だけ積算する負側積算器と、
正側積算器の積算値と負側積算器の積算値との差を出力する差分器と、
によって構成される同期検波回路SDを有し、差分器によって求められた差に相当する電気信号を角速度を示す信号として出力するようにしたものである。
【0016】
(9) 本発明の第9の態様は、上述した第8の態様に係る角速度センサにおいて、
角速度検出部が、安定振動期の期間だけ検出値を通過させ、これを同期検波回路SDに与えるゲートスイッチSWを、更に有するようにしたものである。
【0017】
(10) 本発明の第10の態様は、上述した第5〜第9の態様に係る角速度センサにおいて、
位相測定部が、
与えられた信号の信号値を、正側同期検波信号のパルスが与えられている間だけ積算する正側積算器と、
与えられた信号の信号値を、負側同期検波信号のパルスが与えられている間だけ積算する負側積算器と、
正側積算器の積算値と負側積算器の積算値との差を出力する差分器と、
によって構成される同期検波回路SDを有し、差分器によって求められた差に相当する電気信号を位相の測定値を示す信号として出力するようにしたものである。
【0018】
(11) 本発明の第11の態様は、上述した第10の態様に係る角速度センサにおいて、
位相測定部が、安定振動期の期間だけ検出値を通過させ、これを同期検波回路SDに与えるゲートスイッチSWを、更に有するようにしたものである。
【0019】
(12) 本発明の第12の態様は、上述した第5〜第11の態様に係る角速度センサにおいて、
角速度検出部が、安定振動期でなくなったときに、直前の検出値を保持する機能を有し、次の安定振動期がくるまでの期間、保持していた検出値を継続して出力するようにしたものである。
【0020】
(13) 本発明の第13の態様は、上述した第5〜第12の態様に係る角速度センサにおいて、
フィードバック制御部が、半周期ごとのフィードバック制御を行う際に、当該半周期の振動方向についての振動子の共振周波数をf0とした場合に、駆動信号の周波数がf0となるような制御を行うようにしたものである。
【0021】
(14) 本発明の第14の態様は、上述した第5〜第12の態様に係る角速度センサにおいて、
フィードバック制御部が、半周期ごとのフィードバック制御を行う際に、当該半周期の振動方向についての振動子の共振周波数をf0とした場合に、駆動信号の周波数がf0の近傍の所定周波数(f0は除く)となるような制御を行うようにしたものである。
【0022】
(15) 本発明の第15の態様は、上述した第13または第14の態様に係る角速度センサにおいて、
駆動信号の位相と、位相測定部によって測定された振動子の位相とが、90°の位相差を生じるような周波数を、周波数f0とみなして、駆動信号に対する周波数制御を行うようにしたものである。
【0023】
(16) 本発明の第16の態様は、上述した第1〜第15の態様に係る角速度センサにおいて、
駆動用素子群および検出用素子群を構成する個々の素子が、可撓性支持体の上面に固定された圧電素子からなるようにしたものである。
【0024】
(17) 本発明の第17の態様は、上述した第1〜第15の態様に係る角速度センサにおいて、
駆動用素子群および検出用素子群を構成する個々の素子が、可撓性支持体の上面に固定された変位電極と、この変位電極に対向する位置に固定された固定電極と、によって構成される容量素子からなるようにしたものである。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係る角速度センサによれば、振動子を、半周期ごとに、2つの座標軸方向に交互に振動させながら、振動安定期にのみコリオリ力に基づく変位成分を効率的に取り出すことができるため、時分割検出動作により3軸まわりの角速度を高い精度で検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施形態に係る圧電素子を用いた角速度センサのセンサ本体部の構造を示す縦断面図であり、図2の構造体をXZ平面で切断した断面が示されている。
【図2】図1に示すセンサ本体部の構造を示す上面図である(ハッチングは、各電極の形状を明瞭に示すためのものであり、断面を示すものではない)。
【図3】本発明に係る角速度センサの検出回路の構成を示す回路図である。
【図4】図3に示す検出回路における動作信号発生器100から出力される各動作信号を示す波形図である。
【図5】図3に示す検出回路におけるマトリクス変換器200の演算機能を示す図である。
【図6】図3に示す検出回路におけるマトリクス変換器200の具体的な構成例を示す回路図である。
【図7】図3に示す検出回路による、角速度が作用していない状態での振動子の駆動動作を説明する信号波形図である。
【図8】図3に示す検出回路における同期検波回路SDの構成例を示す回路図である。
【図9】図3に示す検出回路において、正しい位相制御が行われているときの各信号波形を示す波形図である。
【図10】図3に示す検出回路において、位相が遅れているときの各信号波形を示す波形図である。
【図11】図3に示す検出回路において、位相が進んでいるときの各信号波形を示す波形図である。
【図12】図3に示す検出回路において、Y軸まわりの角速度が作用していない状態での動作を説明する信号波形図である。
【図13】図3に示す検出回路において、Y軸まわりの角速度が作用している状態での動作を説明する信号波形図である。
【図14】本発明に係る角速度センサの全般動作を説明する信号波形図である。
【図15】一般的な機械的振動系の周波数特性を示すグラフである。
【図16】本発明の別な実施形態に係る容量素子を用いたセンサ本体部の構造を示す縦断面図である。
【図17】図16に示すセンサ本体部の補助基板60の下面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明を図示する実施形態に基づいて説明する。
【0028】
<<< §1.センサ本体部の基本構造 >>>
本発明に係る角速度センサは、センサ本体部と検出回路とによって構成される。ここでは、まず、センサ本体部の基本構造を説明する。センサ本体部は、振動子と、これを支持する可撓性支持体および固定部材と、振動子を振動させる駆動用素子群と、振動子の変位を検出する検出用素子群と、によって構成されている。
【0029】
図1は、本発明の一実施形態に係る圧電素子を用いた角速度センサのセンサ本体部の構造を示す縦断面図である。図示のとおり、このセンサ本体部は、可撓性支持体10、振動子20、固定部材30、圧電素子40、そして各電極(先頭にEがつく符号が付された要素)によって構成されている。ここでは、説明の便宜上、振動子20の重心位置に原点Oをとり、図の右方向にX軸、図の上方向にZ軸、図の紙面垂直奥方向にY軸をとったXYZ三次元座標系を定義することにする。この角速度センサは、このXYZ三次元座標系におけるX軸まわりの角速度ωx、Y軸まわりの角速度ωy、Z軸まわりの角速度ωzをそれぞれ独立して検出する機能を有する。
【0030】
図2は、このセンサ本体部の構造を示す上面図である。なお、図2に示すX軸,Y軸,原点Oは、このセンサ本体部の上面に位置するものではなく、実際には、図1に示す原点Oの位置に配置されている。ただ、後述する電極配置の説明では、XY平面上に投影したときの各電極の位置に言及するため、図2では、便宜上、XY平面の投影像を描いてある。また、図2では、各電極の形状を明瞭に示すため、電極部分にハッチングを施して示してある(この図2におけるハッチングは断面を示すものではない)。図1に示す縦断面図は、この図2に示すセンサ本体部を、XZ平面で切断した断面を示している。
【0031】
図示の可撓性支持体10は、可撓性をもった正方形状の基板状部材であり、中心位置にZ軸が通り、XY平面に平行な上面を有している。図1に示すように、この可撓性支持体10の下面中央には、円柱状の振動子20が接合されている。また、この可撓性支持体10の下面周囲には、固定部材30が接合されており、その底面は、図示されていないセンサ筐体に固定される。振動子20と固定部材30との間には、振動子20の周囲を取り囲むような環状溝部Gが形成されており、その上方に位置する可撓性支持体10の部分は、薄い板状部材を構成し、外力の作用によって撓みを生じる。
【0032】
可撓性支持体10の上方には、駆動用素子群と検出用素子群とが配置されている。すなわち、図1に示すように、可撓性支持体10の上面には、共通電極Ecが形成され、更にその上面には、圧電素子40が配置され、この圧電素子40の上面には、合計12組の個別電極が形成されている。圧電素子40は、図2に示すとおり、円盤状の素子であり、たとえば、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)などの圧電セラミックスによって構成することができる。共通電極Ecは、この円盤状の圧電素子の下面に形成された円盤状の電極であり、右側には、配線の用に供する突起部が形成されている。図2の上面図にハッチングを施して示されている共通電極Ecは、この突起部の部分であり、実際には、共通電極Ecは円盤状の圧電素子40の下面全面に広がっている。
【0033】
圧電素子40の上面に形成された12組の個別電極の形状および配置は、図2の上面図に示すとおりである。これら12組の個別電極は、いずれも、図1に示す環状溝部Gの上方に配置されている。別言すれば、可撓性支持体10のうち、外力の作用によって撓みが生じる部分に配置されている。
【0034】
まず、駆動用素子群を構成する電極としては、XY平面上に投影したときに、X軸正の領域に配置されたX軸正側駆動用電極Ex(+)と、X軸負の領域に配置されたX軸負側駆動用電極Ex(−)と、Y軸正の領域に配置されたY軸正側駆動用電極Ey(+)と、Y軸負の領域に配置されたY軸負側駆動用電極Ey(−)と、の4組が設けられている。
【0035】
一方、検出用素子群を構成する電極としては、XY平面上に投影したときに、X軸正の領域に配置されたX軸正側検出用電極Ex1と、X軸負の領域に配置されたX軸負側検出用電極Ex2と、Y軸正の領域に配置されたY軸正側検出用電極Ey1と、Y軸負の領域に配置されたY軸負側検出用電極Ey2と、の4組が設けられており、更に、4枚の電極からなるZ軸変位検出用電極Ez1〜Ez4が設けられている。ここで、この4枚のZ軸変位検出用電極Ez1〜Ez4は、XZ平面およびYZ平面の双方に関して対称となるように配置された電極である。
【0036】
図2に示すとおり、ここに示す実施形態の場合、この合計12組の個別電極からなる全体的な電極パターンは、XZ平面およびYZ平面の双方に関して対称となっている。これは、後述する駆動信号や検出信号に対称性を確保するための配慮である。たとえば、X軸正側駆動用電極Ex(+)とX軸負側駆動用電極Ex(−)とが、YZ平面に関して対称性を有していれば、両電極に同一振幅の駆動信号を供給することにより、振動子を原点Oを中心として振動させることができる。
【0037】
なお、ここに示す例では、検出用素子群を構成する8枚の電極Ex1,Ex2,Ey1,Ey2,Ez1〜Ez4の外側に、駆動用素子群を構成する4枚の電極Ex(+),Ex(−),Ey(+),Ey(−)を配置する構成を採っているが、逆に、駆動用素子群を構成する電極を内側、検出用素子群を構成する電極を外側に配置してもかまわない。
【0038】
ここで、圧電素子40の上面に形成された個々の個別電極と、当該個別電極の下方に位置する圧電素子40の一部分と、その下方に位置する共通電極Ecの一部分とによって、駆動用素子もしくは検出用素子が形成される。すなわち、ここに示す圧電型のセンサでは、上下一対の電極でサンドイッチされた圧電素子が、1つの駆動用素子もしくは検出用素子を構成することになる。
【0039】
具体的には、X軸正側駆動用電極Ex(+)とその下方の圧電素子40の一部分とその下方の共通電極Ecの一部分とによりX軸正側駆動用素子が構成され、X軸負側駆動用電極Ex(−)とその下方の圧電素子40の一部分とその下方の共通電極Ecの一部分とによりX軸負側駆動用素子が構成され、Y軸正側駆動用電極Ey(+)とその下方の圧電素子40の一部分とその下方の共通電極Ecの一部分とによりY軸正側駆動用素子が構成され、Y軸負側駆動用電極Ey(−)とその下方の圧電素子40の一部分とその下方の共通電極Ecの一部分とによりY軸負側駆動用素子が構成される。
【0040】
同様に、X軸正側検出用電極Ex1とその下方の圧電素子40の一部分とその下方の共通電極Ecの一部分とによりX軸正側検出用素子が構成され、X軸負側検出用電極Ex2とその下方の圧電素子40の一部分とその下方の共通電極Ecの一部分とによりX軸負側検出用素子が構成され、Y軸正側検出用電極Ey1とその下方の圧電素子40の一部分とその下方の共通電極Ecの一部分とによりY軸正側検出用素子が構成され、Y軸負側検出用電極Ey2とその下方の圧電素子40の一部分とその下方の共通電極Ecの一部分とによりY軸負側検出用素子が構成され、Z軸変位検出用電極Ez1〜Ez4とその下方の圧電素子40の一部分とその下方の共通電極Ecの一部分とによりZ軸変位検出用素子が構成される。
【0041】
ここで、たとえば、圧電素子40が、上面に正、下面に負の電圧を印加するとXY平面に沿って伸び、上面に負、下面に正の電圧を印加するとXY平面に沿って縮むような特性をもった素子であるとすると(あるいは、これとは全く逆の特性をもった素子でもよい)、共通電極Ecを接地基準電位として、X軸正側駆動用電極Ex(+)に所定の交流電圧を加え、X軸負側駆動用電極Ex(−)に逆位相の交流電圧を加えれば、可撓性支持体10のX軸正側の部分と負側の部分とが周期的に伸縮し、かつ、両者の伸縮状態が常に逆になるため、振動子20はX軸方向に振動することになる。
【0042】
同様に、Y軸正側駆動用電極Ey(+)に所定の交流電圧を加え、Y軸負側駆動用電極Ey(−)に逆位相の交流電圧を加えれば、可撓性支持体10のY軸正側の部分と負側の部分とが周期的に伸縮し、かつ、両者の伸縮状態が常に逆になるため、振動子20はY軸方向に振動することになる。また、4枚の駆動用電極Ex(+),Ex(−),Ey(+),Ey(−)に対して、同位相の交流電圧を加えると、各部が同一周期で伸縮するため、振動子20はZ軸方向に振動することになる。
【0043】
このように、4枚の駆動用電極Ex(+),Ex(−),Ey(+),Ey(−)の一部もしくは全部に対して、様々な位相をもった交流駆動信号を供給することにより、振動子をX軸,Y軸,Z軸に振動させることができる。もっとも、後述する具体的な検出動作では、このうち、X軸方向への振動動作と、Z軸方向への振動動作のみを行い、Y軸方向への振動動作は行っていない。
【0044】
なお、圧電素子の特性は、製造工程において施す分極処理の極性に基づいて任意に設定することが可能である。したがって、図2に示す円盤状の圧電素子40の個々の部分ごとに、それぞれ異なる分極処理を施せば、部分ごとに特性を反転させることが可能である。このように、部分ごとに特性が反転した圧電素子を用いた場合、駆動のために供給する交流信号の位相は、上例の場合と異なることになる。
【0045】
たとえば、X軸正側駆動用電極Ex(+)が形成されている領域と、X軸負側駆動用電極Ex(−)が形成されている領域とについて、圧電素子40に互いに逆極性の分極処理が施されていた場合、振動子20をX軸方向に振動させるには、両電極Ex(+),Ex(−)に同位相の交流電圧を加える必要がある(同位相の交流電圧を加えても、特性が逆であるため、一方が伸びれば、他方が縮む関係になる)。また、この場合、振動子20をZ軸方向に振動させるには、両電極Ex(+),Ex(−)には逆位相の交流電圧を加える必要がある。
【0046】
このように、各駆動用電極に供給する交流駆動信号の位相は、各駆動用電極の形成領域における圧電素子の分極特性に依存して決める必要があるが、ここでは、圧電素子40の全領域が同一の分極特性を有する典型的な実施例を用いた場合についての説明を行うことにする。
【0047】
一方、各検出用電極には、下方の可撓性支持体10の一部分の伸縮状態に基づき、共通電極Ecを接地基準電位として、正もしくは負の電圧が発生する。たとえば、振動子20がX軸方向に変位すると、可撓性支持体10のX軸正側の部分と負側の部分とにおける伸縮状態が逆になるので、X軸正側検出用電極Ex1とX軸負側検出用電極Ex2とには、互いに逆極性の電圧が発生する。このとき、発生電圧の極性は、振動子の変位方向に依存し、発生電圧の大きさは、振動子の変位量に依存する。したがって、X軸正側検出用電極Ex1の発生電圧とX軸負側検出用電極Ex2の発生電圧との差を示す検出値は、振動子20のX軸方向に関する変位(符号は変位方向、絶対値は変位量)を示す値になる。
【0048】
同様に、Y軸正側検出用電極Ey1の発生電圧とY軸負側検出用電極Ey2の発生電圧との差を示す検出値は、振動子20のY軸方向に関する変位(符号は変位方向、絶対値は変位量)を示す値になる。また、Z軸方向に関する変位に関しては、4枚のZ軸変位検出用電極Ez1〜Ez4に同等の電圧が発生するので、これら4枚の電極Ez1〜Ez4の発生電圧の総和を示す検出値は、振動子20のZ軸方向に関する変位(符号は変位方向、絶対値は変位量)を示す値になる。なお、振動子20のZ軸方向に関する変位は、X軸検出用電極Ex1,Ex2およびY軸検出用電極Ey1,Ey2の発生電圧の総和として検出することも可能である。
【0049】
このように、各検出用電極Ex1,Ex2,Ey1,Ey2,Ez1〜Ez4の発生電圧に対する加算や減算を行うことにより、振動子の各座標軸方向への変位を検出することができ、また、作用したコリオリ力を変位として検出することもできる。
【0050】
結局、ここに示すセンサ本体部を用いれば、次のような方法で、各座標軸まわりの角速度ωx,ωy,ωzの検出が可能である。たとえば、振動子20をX軸方向に振動させた状態で、振動子20のY軸方向への変位(Y軸方向に作用するコリオリ力)を検出すれば、当該変位はZ軸まわりの角速度ωzに対応し、振動子20のZ軸方向への変位(Z軸方向に作用するコリオリ力)を検出すれば、当該変位はY軸まわりの角速度ωyに対応することになる。
【0051】
同様に、振動子20をY軸方向に振動させた状態で、振動子20のX軸方向への変位(X軸方向に作用するコリオリ力)を検出すれば、当該変位はZ軸まわりの角速度ωzに対応し、振動子20のZ軸方向への変位(Z軸方向に作用するコリオリ力)を検出すれば、当該変位はX軸まわりの角速度ωxに対応することになる。また、振動子20をZ軸方向に振動させた状態で、振動子20のX軸方向への変位(X軸方向に作用するコリオリ力)を検出すれば、当該変位はY軸まわりの角速度ωyに対応し、振動子20のY軸方向への変位(Y軸方向に作用するコリオリ力)を検出すれば、当該変位はX軸まわりの角速度ωxに対応することになる。続く§2で述べる検出回路は、このような検出動作を行うための回路である。
【0052】
<<< §2.検出回路の構成 >>>
図3は、本発明に係る角速度センサの検出回路の構成を示す回路図である。この検出回路は、§1で述べたセンサ本体部に対して所定の駆動信号を供給して振動子20を所定の座標軸方向に振動させながら、振動子20の所定の座標軸方向への変位を検出して、所定の座標軸まわりの角速度を示す電気信号を出力する機能を果たす。また、この検出回路は、振動子の振動状態をモニタしながら、基準の振動状態を維持するようフィードバック制御を行う機能も果たす。
【0053】
なお、図3の中央に示されているセンサ本体部300は、実際には、この検出回路の構成要素ではなく、§1で述べたセンサ本体部を示すものである。すなわち、図3のセンサ本体部300のブロックの上辺近傍に示されているEx(+),Ex(−),Ey(+),Ey(−)は、それぞれ図2に示す4枚の駆動用電極Ex(+),Ex(−),Ey(+),Ey(−)に対応するものである。同様に、図3のセンサ本体部300のブロックの下辺近傍に示されているEx1,Ex2,Ey1,Ey2,Ez1〜Ez4は、それぞれ図2に示す8枚の検出用電極Ex1,Ex2,Ey1,Ey2,Ez1〜Ez4に対応するものである。そして、図3のセンサ本体部300のブロックの左辺近傍に示されているEcは、図2に示す共通電極Ecに対応するものであり、この共通電極Ecは、図示のとおり接地されている。
【0054】
以下、この検出回路の各構成要素を順に説明する。まず、動作信号発生器100は、センサ本体部300に供給する駆動信号およびその他の回路要素に供給する種々の信号を発生する機能を有する。この動作信号発生器100は、図のブロック内に描かれているように、フィードバック制御部110と、各信号発生部120,130,140,150,160,170とを備えている。
【0055】
図4は、この動作信号発生器100から出力される各動作信号を示す波形図である。本発明に係る検出回路は、第1の半周期T1と第2の半周期T2とによって構成される周期Tについて、周期的動作を実行する機能を有する。特に、ここに示す実施形態の場合、第1の半周期T1は振動子20をZ軸方向に振動させながら検出を行う期間であり、第2の半周期T2は振動子20をX軸方向に振動させながら検出を行う期間であるため、以下、第1の半周期T1を半周期Tz、第2の半周期T1を半周期Txと呼ぶことにする。図4(1) には、時間軸上における半周期Tzの期間と半周期Txの期間とが示されている。両半周期Tz,Txによって検出回路の1周期Tが構成され、検出回路は、このような周期Tをもった周期的動作を行うことになる。
【0056】
ここに示す実施例の場合、T=12.5msに設定しており、80Hzの周波数で周期的動作が繰り返し実行される。また、各半周期が等しくなるような設定を行っているため、Tz=Tx=6.25msになる。もちろん、半周期Tz,Txは、必ずしも等しく設定する必要はない。後述するように、実用上、周期Tの値は、振動子の共振周波数に応じて最適な値に設定するのが好ましい。たとえば、振動子のZ軸方向の共振周波数とX軸方向の共振周波数とがほぼ等しいセンサの場合、当該共振周波数をf0として、周期Tを(1/f0)×200〜(1/f0)×500の範囲に設定すると、良好な検出が可能になる(詳細は§6で述べる)。
【0057】
動作信号発生器100内のZ軸駆動信号発生部150は、振動子20をZ軸方向へ振動させるためのZ軸駆動信号DrZを発生する機能を有する。このZ軸駆動信号DrZは、図4(2) に示すとおり、第1の半周期Tzには、所定の周波数fzおよび振幅Azをもった交流信号が配されており、第2の半周期Txには、何ら交流信号が配されていない信号である。一方、X軸駆動信号発生部140は、振動子20をX軸方向へ振動させるためのX軸駆動信号DrXを発生する機能を有する。このX軸駆動信号DrXは、図4(3) に示すとおり、第1の半周期Tzには、何ら交流信号が配されておらず、第2の半周期Txには、所定の周波数fxおよび振幅Axをもった交流信号が配されている信号である。
【0058】
ここに示す実施例の場合、fz=fx=20kHz程度、Az=Ax=1.0V程度になるように設定してある。なお、図4では、図示の便宜上、1半周期TzもしくはTxの期間内に各駆動信号の5周期分のみが描かれているが、上述の数値設定の場合、実際には、1半周期TzもしくはTxの期間内には各駆動信号の125周期分が入ることになる。これは、後述する正側同期検波信号SdAや負側同期検波信号SdBの場合も同様である。
【0059】
Z軸駆動信号DrZおよびX軸駆動信号DrXの周波数および振幅は、フィードバック制御部110による制御対象となり、後述するように、帰還信号と所定の基準値との偏差に基づいて随時調整される。なお、周波数fzとfxとは、必ずしも等しくなるような設定を行う必要はなく、同様に、振幅AzとAxとについても、必ずしも等しくなるような設定を行う必要はない。また、図示の例では、各駆動信号DrZ,DrXの振幅Az,Axは、常に一定値を維持させているが、振幅Az,Axは必ずしも一定値に保つ必要はなく、たとえば、各半周期の初頭の振幅をより大きくするような制御を行い、振動子の運動を早く安定させるような工夫をしてもよい。これら駆動信号DrX,DrZは、マトリクス変換器200を介して、センサ本体部300の各駆動用電極Ex(+),Ex(−),Ey(+),Ey(−)に与えられる。
【0060】
マトリクス変換器200は、上述したとおり、動作信号発生器100内のX軸駆動信号発生部140およびZ軸駆動信号発生部150から与えられるX軸駆動信号DrXおよびZ軸駆動信号DrZを、センサ本体部300の特定の駆動用電極Ex(+),Ex(−),Ey(+),Ey(−)に与える処理を実行する。その具体的な動作については後述する。
【0061】
一方、正側同期検波信号発生部160は、各駆動信号DrX,DrZの正側のピークに同期したパルスから構成される正側同期検波信号SdAを発生する機能を有し、負側同期検波信号発生部170は、各駆動信号DrX,DrZの負側のピークに同期したパルスから構成される負側同期検波信号SdBを発生する機能を有する。
【0062】
より具体的には、正側同期検波信号SdAは、図4(4) に示すとおり、第1の半周期Tzには、Z軸駆動信号DrZの正側のピークに同期した位置にZ軸駆動信号DrZの周期の1/2以下のパルス幅をもったパルスが周期的に配され、第2の半周期Txには、X軸駆動信号DrXの正側のピークに同期した位置にX軸駆動信号DrXの周期の1/2以下のパルス幅をもったパルスが周期的に配されている信号である。また、負側同期検波信号SdBは、図4(5) に示すとおり、第1の半周期Tzには、Z軸駆動信号DrZの負側のピークに同期した位置にZ軸駆動信号DrZの周期の1/2以下のパルス幅をもったパルスが周期的に配され、第2の半周期Txには、X軸駆動信号DrXの負側のピークに同期した位置にX軸駆動信号DrXの周期の1/2以下のパルス幅をもったパルスが周期的に配されている信号である。
【0063】
各同期検波信号SdA,SdBの時間軸上でのパルスの中心位置は、各駆動信号のピーク位置に一致している。パルスの幅は、各駆動信号の周期の1/2以下となるような値に設定すればよいが、ここに示す実施例の場合、各駆動信号の周期の1/4程度に設定してある。これら同期検波信号SdA,SdBは、全同期検波器SDに与えられる。
【0064】
Z軸検波イネーブル信号発生部130は、振動子20のZ軸方向への振動が安定し、検波処理が可能になった期間を示すZ軸検波イネーブル信号EnZを発生する機能を有し、X軸検波イネーブル信号発生部120は、振動子20のX軸方向への振動が安定し、検波処理が可能になった期間を示すX軸検波イネーブル信号EnXを発生する機能を有する。
【0065】
すなわち、Z軸検波イネーブル信号EnZは、図4(6) に示すとおり、第1の半周期Tzにおいて振動子20がZ軸に沿って安定した振動状態を維持すると予想される第1の安定振動期βzを示す信号である。ここで、図示の期間αzは、第1の半周期Tzにおいて振動子20のZ軸方向への振動状態が不安定であると予想される第1の不安定振動期ということになる。一方、X軸検波イネーブル信号EnXは、図4(7) に示すとおり、第2の半周期Txにおいて振動子20がX軸に沿って安定した振動状態を維持すると予想される第2の安定振動期βxを示す信号である。ここで、図示の期間αxは、第2の半周期Txにおいて振動子20のX軸方向への振動状態が不安定であると予想される第2の不安定振動期ということになる。
【0066】
既に述べたとおり、ここに示す実施例では、第1の半周期Tzでは、振動子20はZ軸に沿って駆動され、第2の半周期Txでは、振動子20はX軸に沿って駆動される。しかしながら、振動子20は、可撓性支持体10という機械的な構造体によって支持された物体であるため、駆動方向をZ軸からX軸へ、もしくは、X軸からZ軸へと、半周期ごとに90°切り替える操作を行ったとしても、実際の振動方向が直ちに切り替わるわけではないので、切替直後の実際の振動は不安定なものになる。振動状態が安定するまでに必要な時間は、個々のセンサ本体部の機械的構造に依存して定まるパラメータである。したがって、実際のセンサ本体部を用いた測定により(もしくは、コンピュータシミュレーションにより)、当該センサ本体部についての不安定振動期αz,αxを求めることができる。
【0067】
もちろん、各半周期Tz,Txは、これら不安定振動期αz,αxよりも長い期間に設定しておく必要がある。ここに示す実施例の場合、αz=αx=2.5msであった。したがって、Tz=Tx=6.25msに設定した場合、βz=βx=3.75msということになる。これら検波イネーブル信号EnX,EnZは、正確な検波が可能となる安定振動期βz,βxの期間を示す信号であり、それぞれ特定のゲートスイッチSWへ与えられる。
【0068】
以上、図3において、センサ本体部300の上方に描かれている要素が、この検出回路における振動子20を駆動する処理を行う回路である。この回路の働きにより、センサ本体部の振動子20は、前半周期Tzの期間中はZ軸方向に振動し、後半周期Txの期間中はX軸方向に振動することになる。続いて、振動子20が振動している状態において、振動子20の変位を検出する処理を行う回路について説明する。この回路は、図3において、センサ本体部300の下方に描かれている要素からなる。
【0069】
まず、差分器411は、X軸正側検出用電極Ex1に生じた電圧とX軸負側検出用電極Ex2に生じた電圧との差を求める機能を果たす。この差を示す信号SΔxは、前述したとおり、振動子20のX軸方向に関する変位を示す検出値になるので、ここではX軸変位検出信号SΔxと呼ぶ。同様に、差分器412は、Y軸正側検出用電極Ey1に生じた電圧とY軸負側検出用電極Ey2に生じた電圧との差を求める機能を果たす。この差を示す信号SΔyは、前述したとおり、振動子20のY軸方向に関する変位を示す検出値になるので、ここではY軸変位検出信号SΔyと呼ぶ。
【0070】
また、加算器413は、4枚のZ軸変位検出用電極Ez1〜Ez4に生じた電圧の総和を求める機能を果たす。この総和を示す信号SΔzは、前述したとおり、振動子20のZ軸方向に関する変位を示す検出値になるので、ここではZ軸変位検出信号SΔzと呼ぶ。
【0071】
差分器411から出力されたX軸変位検出信号SΔxは、ゲートスイッチ421を通してAM検波器431および同期検波器441に与えられ、ゲートスイッチ422を通して同期検波器442に与えられる。同様に、差分器412から出力されたY軸変位検出信号SΔyは、ゲートスイッチ423を通して同期検波器443に与えられ、ゲートスイッチ424を通して同期検波器444に与えられる。また、加算器413から出力されたZ軸変位検出信号SΔzは、ゲートスイッチ425を通して同期検波器445およびAM検波器432に与えられる。
【0072】
ここで、ゲートスイッチ421,424は、X軸検波イネーブル信号発生部120によって発生されたX軸検波イネーブル信号EnXによって示された安定振動期βxの期間のみ(すなわち、X軸方向への振動が安定し、検波処理が可能になった期間のみ)、入力した検出値を通過させて出力する。一方、ゲートスイッチ422,423,425は、Z軸検波イネーブル信号発生部130によって発生されたZ軸検波イネーブル信号EnZによって示された安定振動期βzの期間のみ(すなわち、Z軸方向への振動が安定し、検波処理が可能になった期間のみ)、入力した検出値を通過させて出力する。したがって、各AM検波器431,432や、各同期検波器441〜445には、安定振動期の期間のみ、所定の検出値を示す信号が与えられることになり、当該期間のみ検波が行われる。
【0073】
AM検波器431は、X軸変位検出信号SΔxの振幅を求める機能を果たし、求めたX軸振幅測定値Fxaはフィードバック制御部110へ帰還され、AM検波器432は、Z軸変位検出信号SΔzの振幅を求める機能を果たし、求めたZ軸振幅測定値Fzaはフィードバック制御部110へ帰還される。一方、同期検波器441は、X軸変位検出信号SΔxの位相を求める機能を果たし、求めたX軸位相測定値Fxpはフィードバック制御部110へ帰還され、同期検波器445は、Z軸変位検出信号SΔzの位相を求める機能を果たし、求めたZ軸位相測定値Fzpはフィードバック制御部110へ帰還される。
【0074】
同期検波器442は、振動子20がZ軸方向に振動している前半周期Tzの間に、X軸変位検出信号SΔxに基づいて振動子20に作用したX軸方向のコリオリ力を求める機能を果たし、求めた値をY軸まわりの角速度ωyとして出力する。一方、同期検波器443は、振動子20がZ軸方向に振動している前半周期Tzの間に、Y軸変位検出信号SΔyに基づいて振動子20に作用したY軸方向のコリオリ力を求める機能を果たし、求めた値をX軸まわりの角速度ωxとして出力する。また、同期検波器444は、振動子20がX軸方向に振動している後半周期Txの間に、Y軸変位検出信号SΔyに基づいて振動子20に作用したY軸方向のコリオリ力を求める機能を果たし、求めた値をZ軸まわりの角速度ωzとして出力する。
【0075】
なお、フィードバック制御部110は、帰還したX軸振幅測定値FxaおよびX軸位相測定値Fxpに基づいて、X軸駆動信号発生部140が発生するX軸駆動信号DrXの振幅および周波数が所定の基準振幅および基準周波数となるようなフィードバック制御を行うとともに、帰還したZ軸振幅測定値FzaおよびZ軸位相測定値Fzpに基づいて、Z軸駆動信号発生部150が発生するZ軸駆動信号DrZの振幅および周波数が所定の基準振幅および基準周波数となるようなフィードバック制御を行う。このようなフィードバック制御により、振動子20は、X軸方向およびZ軸方向に、それぞれ所定の基準振幅、所定の基準周波数で、振動するようになる。なお、同期検波信号SdA,SdBは、各駆動信号DrX,DrZに同期した信号であるから、同期検波信号発生部160,170が発生する同期検波信号SdA,SdBの周波数も、フィードバック制御部110による周波数制御を受けることになる。
【0076】
かくして、この図3に示す検出回路を用いれば、振動子20を、前半周期TzにおいてZ軸方向に振動させ、後半周期TxにおいてX軸方向に振動させる動作を繰り返し行いながら、前半周期Tzには、同期検波器442からY軸まわりの角速度ωyを示す電気信号を出力させるとともに、同期検波器443からX軸まわりの角速度ωxを示す電気信号を出力させ、後半周期Txには、同期検波器444からZ軸まわりの角速度ωzを示す電気信号を出力させることができる。しかも、これらの出力信号が示す検出値は、各検波イネーブル信号EnZ,EnXによって示される安定振動期βz,βxの期間に得られた値になるので、精度の高い正確な検出値になる。
【0077】
<<< §3.振動子の運動 >>>
続いて、ここでは、図3に示す検出回路を用いて駆動される振動子20の運動について詳述する。前述したとおり、動作信号発生器100からマトリクス変換器200には、図4(2) に示すようなZ軸駆動信号DrZと、図4(3) に示すようなX軸駆動信号DrXとが供給される。
【0078】
マトリクス変換器200は、これら2通りの駆動信号DrZ,DrXを利用して、振動子20を、第1の半周期Tzの期間にはZ軸方向に振動させ、第2の半周期Txの期間にはX軸方向に振動させる動作を行う。具体的には、第1の半周期Tzには、4組の駆動用素子(4枚の駆動用電極Ex(+),Ex(−),Ey(+),Ey(−))のすべてにZ軸駆動信号DrZを供給し、第2の半周期Txには、X軸正側駆動用素子(X軸正側駆動用電極Ex(+))にX軸駆動信号DrXを供給し、X軸負側駆動用素子(X軸負側駆動用電極Ex(−))にX軸駆動信号DrXの位相反転信号を供給する。
【0079】
そのような駆動動作を行うため、マトリクス変換器200は、図5に示すような演算により、X軸正側駆動信号Dx(+),X軸負側駆動信号Dx(−),Y軸正側駆動信号Dy(+),Y軸負側駆動信号Dy(−)を生成する機能を有している。ここで、X軸正側駆動信号Dx(+)は、Z軸駆動信号DrZとX軸駆動信号DrXとの和信号であり、X軸正側駆動用素子(X軸正側駆動用電極Ex(+))に与えられる。また、X軸負側駆動信号Dx(−)は、Z軸駆動信号DrZとX軸駆動信号DrXとの差信号であり、X軸負側駆動用素子(X軸負側駆動用電極Ex(−))に与えられる。一方、Y軸正側駆動信号Dy(+)およびY軸負側駆動信号Dy(−)は、いずれもZ軸駆動信号DrZそのものであり、それぞれY軸正側駆動用素子(Y軸正側駆動用電極Ex(+))およびY軸負側駆動用素子(Y軸負側駆動用電極Ex(−))に与えられる。
【0080】
図6は、このマトリクス変換器200の具体的な構成例を示す回路図である。図の左側の2つの端子に、動作信号発生器100から与えられたZ軸駆動信号DrZおよびX軸駆動信号DrXを入力すると、図の左側の4つの端子から、それぞれ各駆動信号Dx(+),Dx(−),Dy(+),Dy(−)が出力されることになる。この回路は、4つのOPアンプ210〜240と、抵抗R1〜R10によって構成されている。
【0081】
ここで、OPアンプ210は、「DrZ+DrX」なる和信号Dx(+)を生成してX軸正側駆動用素子(X軸正側駆動用電極Ex(+))に供給する回路であり、OPアンプ220および240は、「DrZ−DrX」なる差信号Dx(−)を生成してX軸負側駆動用素子(X軸負側駆動用電極Ex(−))に供給する回路である。また、OPアンプ230は、「DrZ」をY軸正側駆動用素子(Y軸正側駆動用電極Ey(+))とY軸負側駆動用素子(Y軸負側駆動用電極Ey(−))との双方に供給する回路である。
【0082】
結局、図5の各式の右辺および図6の各右側端子に示されている駆動信号Dx(+),Dx(−),Dy(+),Dy(−)が、図2に示す駆動用電極Ex(+),Ex(−),Ey(+),Ey(−)にそれぞれ与えられることになる。この場合、振動子20がどのような運動をするかを、第1の半周期Tzと第2の半周期Txとに分けて考えてみよう。
【0083】
まず、第1の半周期Tzの期間は、図4に示すとおり、X軸駆動信号DrXは、実質的な信号としての有効成分を有していないので、有効成分を有する信号は、Z軸駆動信号DrZのみということになる。したがって、図2に示す共通電極Ecを接地した状態で、4枚の駆動用電極Ex(+),Ex(−),Ey(+),Ey(−)のそれぞれに、図4(2) に示すZ軸駆動信号DrZの交流信号が供給されることになるので、§1で説明したとおり、振動子20は当該交流信号に同期してZ軸方向に振動する。
【0084】
一方、第2の半周期Txの期間は、図4に示すとおり、Z軸駆動信号DrZは、実質的な信号としての有効成分を有していないので、有効成分を有する信号は、X軸駆動信号DrXのみということになる。したがって、図2に示す共通電極Ecを接地した状態で、X軸正側駆動用電極Ex(+)に、図4(3) に示すZ軸駆動信号DrZの交流信号が供給され、X軸負側駆動用電極Ex(−)に、その反転信号が供給されることになるので、§1で説明したとおり、振動子20は当該交流信号に同期してX軸方向に振動する。
【0085】
かくして、マトリクス変換器200は、振動子20を、第1の半周期Tzの期間にはZ軸方向に振動させ、第2の半周期Txの期間にはX軸方向に振動させる動作を行うことになる。
【0086】
図3に示す検出回路では、振動子20の各座標軸方向の変位は、それぞれ変位検出信号SΔx,SΔy,SΔzとして検出することができる。たとえば、X軸変位検出信号SΔxは、差分器411から出力される信号であり、X軸正側検出用電極Ex1の発生電圧とX軸負側検出用電極Ex2の発生電圧との差に相当する信号である。振動子20がX軸方向に関して変位していない場合(すなわち、振動子20の重心がYZ平面上に位置する場合)、両電極Ex1,Ex2の電位は等しくなるため、SΔx=0になる。振動子20がX軸方向に関して変位すると、両電極Ex1,Ex2の下方に位置する圧電素子の伸縮状態が互いに逆になるため、両電極Ex1,Ex2には互いに逆極性の電圧が発生し、両者の差に相当する信号SΔxが正もしくは負の値として出力される。よって、この検出信号SΔxの絶対値は、振動子20のX軸方向に関する変位量を示し、検出信号SΔxの符号は、変位方向(X軸正方向か、負方向か)を示すことになる。
【0087】
同様に、Y軸変位検出信号SΔyは、差分器412から出力される信号であり、Y軸正側検出用電極Ey1の発生電圧とY軸負側検出用電極Ey2の発生電圧との差に相当する信号である。やはり、この検出信号SΔyの絶対値は、振動子20のY軸方向に関する変位量を示し、検出信号SΔyの符号は、変位方向(Y軸正方向か、負方向か)を示すことになる。また、Z軸変位検出信号SΔzは、加算器413から出力される信号であり、4枚のZ軸変位検出用電極Ez1〜Ez4の発生電圧の総和に相当する信号である。やはり、この検出信号SΔzの絶対値は、振動子20のZ軸方向に関する変位量を示し、検出信号SΔzの符号は、変位方向(Y軸正方向か、負方向か)を示すことになる。
【0088】
図7は、図3に示す検出回路による、角速度が作用していない状態での振動子の駆動動作を説明する信号波形図である。図7(1) に示すとおり、周期Tは、第1の半周期Tzと第2の半周期Txによって構成される。そして、第1の半周期Tzの期間は、図7(2) に示すZ軸駆動信号DrZの供給により、振動子20はZ軸方向に駆動され、第2の半周期Txの期間は、図7(3) に示すX軸駆動信号DrXの供給により、振動子20はX軸方向に駆動される。
【0089】
一方、図7(4) は、このような駆動動作が行われているときに、加算器413から出力されるZ軸変位検出信号SΔzの波形を示している。この検出信号SΔzは、振動子20のZ軸に関する位置の変遷を示すものである。振動子20の位置の変遷は、図7(2) に示すZ軸駆動信号DrZの供給によるものであるが、振動子20およびこれを支持する可撓性支持体10からなる機械的振動系に固有の特性により、振動子20の実際の変位は、Z軸駆動信号DrZに対して位相遅れを生じることになる。後述するように、振動子20をZ軸方向に関する共振周波数で振動させた場合、振動子20の実際の変位は、Z軸駆動信号DrZに対して90°の位相遅れを生じる。図7(4) に示す検出信号SΔzの位相が、図7(2) に示す駆動信号DrZに対して位相遅れを生じているのはこのためである。
【0090】
また、図7(2) に示す駆動信号DrZの振幅Azが一定であるのに対して、図7(4) に示す検出信号SΔzの振幅が変動しているのは、質量をもった振動子20に慣性が作用するためである。すなわち、第1の半周期Tzの始期から駆動信号DrZ内の交流信号の供給が開始されても、Z軸方向に関しては静止していた振動子20が、Z軸方向に振動し始めるには、ある程度の時間を要することになる。このため、図示の第1の不安定振動期αzの期間は、振幅が徐々に増加してゆくことになる。図示の第1の安定振動期βzは、振動子20が一定の振幅で安定した振動動作を行うようになった後の期間である。
【0091】
続いて、第1の半周期Tzの終期において、駆動信号DrZ内の交流信号の供給が停止する。このため、第2の半周期Txの期間は、振動子20をZ軸方向に駆動するための信号は供給されない。しかしながら、運動中の振動子20は、慣性の作用により、振幅を徐々に減少させながら、しばらくの間はZ軸方向への振動状態を維持する。図7(4) に示す検出信号SΔzの振幅が、半周期Txの初頭に残っているのはこのためである。
【0092】
結局、Z軸変位検出信号SΔzの振幅は、図7(4) に一点鎖線の包絡線で示すように、第1の半周期Tzの初頭から徐々に増加しながら一定値に達し、第2の半周期Txの初頭から徐々に減少しながら消滅することになる。ここで、期間αzは、第1の半周期Tzでありながら、振動が不安定である第1の不安定振動期であり、期間βzは、第1の半周期Tz内で、安定した振動が得られる第1の安定振動期である。前述したとおり、図4(6) に示すZ軸検波イネーブル信号EnZは、この第1の安定振動期βzを示す信号である。
【0093】
同様に、図7(5) は、差分器411から出力されるX軸変位検出信号SΔxの波形を示している。この検出信号SΔxは、振動子20のX軸に関する位置の変遷を示すものである。振動子20の位置の変遷は、図7(3) に示すX軸駆動信号DrXの供給によるものであるが、振動子20およびこれを支持する可撓性支持体10からなる機械的振動系に固有の特性により、振動子20の実際の変位は、X軸駆動信号DrXに対して位相遅れを生じることになる。やはり、振動子20をX軸方向に関する共振周波数で振動させた場合、振動子20の実際の変位は、X軸駆動信号DrXに対して90°の位相遅れを生じる。
【0094】
また、図7(5) に示す検出信号SΔxの振幅が、一点鎖線の包絡線で示すように、第2の半周期Txの初頭から徐々に増加しながら一定値に達し、第1の半周期Tzの初頭から徐々に減少しながら消滅するのは、振動子20の慣性の作用によるものである。ここで、期間αxは、第2の半周期Txでありながら、振動が不安定である第2の不安定振動期であり、期間βxは、第2の半周期Tx内で、安定した振動が得られる第2の安定振動期である。前述したとおり、図4(7) に示すX軸検波イネーブル信号EnXは、この第2の安定振動期βxを示す信号である。
【0095】
最後に示されている図7(6) は、差分器412から出力されるY軸変位検出信号SΔyの波形を示している。この検出信号SΔyは、振動子20のY軸に関する位置の変遷を示すものである。ここに示す実施例の場合、振動子20をY軸方向に振動させる動作は行われないので、角速度が作用していない状態では、図示のとおり、Y軸変位検出信号SΔyは零の状態を維持したままになる。
【0096】
前述したとおり、個々のセンサについての安定振動期βz,βxは、実際のセンサ本体部を用いた測定や、コンピュータシミュレーションにより求めることができる。なお、図7では、図示の便宜上、1半周期TzもしくはTxの期間内に各駆動信号や各検出信号の5周期分のみが描かれているが、実際には、1半周期TzもしくはTxの期間内には各駆動信号や各検出信号のより多数の周期分(前掲の例の場合、125周期分)が入ることになる。
【0097】
<<< §4.振幅および位相ならびにコリオリ力の検出 >>>
§2で述べたとおり、図3に示す検出回路において、センサ本体部300の下方に描かれている要素(400番台の符号が付された要素)は、振動子20のZ軸もしくはX軸方向に関する振動の振幅および位相と、振動子20に作用するX軸,Y軸,Z軸方向のコリオリ力とを検出する働きをする。以下、これらの各検出機能を個別に説明する。
【0098】
まず、ゲートスイッチ421には、図4(7) に示すX軸検波イネーブル信号EnXが与えられており、第2の安定振動期βxの期間のみ、与えられたX軸変位検出信号SΔxを通過させる機能を果たす。同様に、ゲートスイッチ422には、図4(6) に示すZ軸検波イネーブル信号EnZが与えられており、第1の安定振動期βzの期間のみ、与えられたX軸変位検出信号SΔxを通過させる機能を果たす。また、ゲートスイッチ423には、図4(6) に示すZ軸検波イネーブル信号EnZが与えられており、第1の安定振動期βzの期間のみ、与えられたY軸変位検出信号SΔyを通過させる機能を果たす。更に、ゲートスイッチ424には、図4(7) に示すX軸検波イネーブル信号EnXが与えられており、第2の安定振動期βxの期間のみ、与えられたY軸変位検出信号SΔyを通過させる機能を果たす。そして、ゲートスイッチ425には、図4(6) に示すZ軸検波イネーブル信号EnZが与えられており、第1の安定振動期βzの期間のみ、与えられたZ軸変位検出信号SΔzを通過させる機能を果たす。
【0099】
続いて、AM検波器431,432の機能を説明する。まず、AM検波器431は、ゲートスイッチ421を通じて、第2の安定振動期βxの期間にのみ与えられたX軸変位検出信号SΔxの振幅Fxaを求める。具体的には、図7(5) に示す検出信号SΔxの安定振動期βxの振幅Fxaが求められることになる。こうして得られた振幅Fxaは、X軸振幅測定信号として、フィードバック制御部110へ帰還させられる。同様に、AM検波器432は、ゲートスイッチ425を通じて、第1の安定振動期βzの期間にのみ与えられたZ軸変位検出信号SΔzの振幅Fzaを求める。具体的には、図7(4) に示す検出信号SΔzの安定振動期βzの振幅Fzaが求められることになる。こうして得られた振幅Fzaは、Z軸振幅測定信号として、フィードバック制御部110へ帰還させられる。
【0100】
このように、AM検波器431,432は、検出信号SΔxの振幅Fxa,検出信号SΔzの振幅Fzaを求める機能を果たす回路であるが、一般的な交流信号についての振幅を求める回路は、様々な分野で利用されている公知の回路であるため、ここでは、AM検波器431,432の内部構成についての詳細な説明は省略する。
【0101】
X軸変位検出信号SΔxの振幅Fxaは、振動子20のX軸方向に関する振動の振幅に対応するので、フィードバック制御部110は、この振幅Fxaが所定の基準振幅となるように、X軸駆動信号発生部140が発生させるX軸駆動信号DrXの振幅を調整する制御を行う。また、Z軸変位検出信号SΔzの振幅Fzaは、振動子20のZ軸方向に関する振動の振幅に対応するので、フィードバック制御部110は、この振幅Fzaが所定の基準振幅となるように、Z軸駆動信号発生部150が発生させるZ軸駆動信号DrZの振幅を調整する制御を行う。
【0102】
一方、同期検波器441〜445は、いずれも図8に示す回路によって構成されている。実際には、同期検波器441,445は、検出信号SΔx,SΔzの位相Fxp,Fzpを求める用途に利用され、同期検波器442,443,444は、検出信号SΔxもしくはSΔyに基づいて、X軸方向もしくはY軸方向に作用したコリオリ力を検出し、最終的に、それぞれ角速度ωy,ωx,ωzを求める用途に利用される。このように、同期検波器441,445と、同期検波器442,443,444とは、互いに用途は異なるが、いずれも図8に示す同一の回路によって構成することができる。
【0103】
図8に示す回路は、図の左側の端子に与えられた入力信号Sinに基づいて、図の右側の端子から出力信号Soutを出力する機能を有している。この回路は、図示のとおり、正側積算器K1、負側積算器K2、差分器K3によって構成されている。
【0104】
正側積算器K1は、正側同期検波信号SdAのパルスが与えられている間だけ信号を通過させるゲートスイッチGaと、通過した信号を積算するための抵抗R11〜R13,コンデンサC1〜C3,演算増幅器OP1によって構成され、与えられた入力信号Sinの信号値を、正側同期検波信号SdAのパルスが与えられている間だけ積算する機能を果たす。
【0105】
同様に、負側積算器K2は、負側同期検波信号SdBのパルスが与えられている間だけ信号を通過させるゲートスイッチGbと、通過した信号を積算するための抵抗R14〜R16,コンデンサC4〜C6,演算増幅器OP2によって構成され、与えられた入力信号Sinの信号値を、負側同期検波信号SdBのパルスが与えられている間だけ積算する機能を果たす。
【0106】
一方、差分器K3は、参照電圧Refが与えられた差動増幅器DIF,抵抗R17,コンデンサC7によって構成され、正側積算器K1の積算値と負側積算器K2の積算値との差を出力する機能を果たす。
【0107】
ここでは、図3に示す同期検波器445として図8に示す回路を用い、入力信号Sinとして、Z軸変位検出信号SΔzを与えた場合に、この回路から得られる出力信号Soutが、Z軸変位検出信号SΔzの位相の測定値を示す信号になる理由を簡単に説明しよう。
【0108】
図9は、図3に示す検出回路において、正しい位相制御が行われているときの各信号波形を示す波形図である。図9(1) に示すとおり、この図における時間軸は、第1の半周期Tz内の安定振動期βzの一部分を示している。この期間内は、センサ本体部に対して、図9(2) に示すようなZ軸駆動信号DrZが与えられており、振動子20は、Z軸方向に振動している。このため、図9(3) に示すようなZ軸変位検出信号SΔzが得られている。前述したとおり、振動子20がZ軸方向に関する共振周波数で振動していれば、Z軸変位検出信号SΔzの位相は、Z軸駆動信号DrZの位相に対して90°遅れることになる。図9の各波形は、このときの状態を示している。
【0109】
一般に、このような振動系では、振動子を固有の共振周波数で振動させると、供給したエネルギーを最も効率的に利用した運動が可能になり、最も大きな振幅が得られることが知られている。また、このとき、駆動信号の位相に対して、実際の振動子の位相が90°遅れることも知られている。図9に示す波形図は、このように、振動子が理想的な振動状態で振動しているときに得られる各信号波形を示している。
【0110】
ここで、図9(4) に示す正側同期検波信号SdAは、Z軸駆動信号DrZの正側のピークに同期したパルス(正側のピーク位置に中心がくるパルス)をもつ検波信号であり、図9(5) に示す負側同期検波信号SdBは、Z軸駆動信号DrZの負側のピークに同期したパルス(負側のピーク位置に中心がくるパルス)をもつ検波信号である。そして、図8に示す正側積算器K1は、ゲートスイッチGaの機能により、正側同期検波信号SdAのパルス期間のみ、入力信号Sin、すなわち、Z軸変位検出信号SΔzの信号値を積算する機能を果たし、負側積算器K2は、ゲートスイッチGbの機能により、負側同期検波信号SdBのパルス期間のみ、入力信号Sin、すなわち、Z軸変位検出信号SΔzの信号値を積算する機能を果たす。
【0111】
図9(6) は、Z軸変位検出信号SΔzの信号値の積算プロセスを示している。すなわち、このグラフにハッチングを施して示す積算領域a,bは、正側積算器K1によって信号値の積算が行われる領域に対応し、積算領域c,dは、負側積算器K2によって信号値の積算が行われる領域に対応する。図9に示す例のように、Z軸変位検出信号SΔzの位相が、Z軸駆動信号DrZの位相に対して正確に90°遅れている場合、積算領域aの面積と積算領域bの面積とは等しくなり、積算領域cの面積と積算領域dの面積とは等しくなる。ただ、積算領域a,dは負の信号値、積算領域b,cは正の信号値を示す領域であるから、結局、正側積算器K1による積算値は零になり、負側積算器K2による積算値も零になり、差分器K3から出力される出力信号Soutは零になる。
【0112】
したがって、図9(7) に示すように、同期検波器445から出力されるZ軸位相測定信号Fzp(図8の出力信号Sout)は、零を示す信号になる。これは、現在、振動子20が理想的な位相(すなわち、Z軸駆動信号DrZの位相に対して正確に90°遅れている位相)をもってZ軸方向に振動していることを示す。別言すれば、理想的な位相に対する位相差は0ということになる。このようなZ軸位相測定信号Fzpがフィードバック信号として帰還された場合、フィードバック制御部110は、Z軸駆動信号発生部150に対して、発生するZ軸駆動信号DrZの周波数fzをそのまま維持させる制御を行う。
【0113】
次に、何らかの要因によって、振動子20のZ軸方向への振動位相が理想的な位相からずれた場合を考えてみよう。図10は、位相が若干遅れた場合の各信号波形を示す波形図である。すなわち、図10(2) に示すZ軸駆動信号DrZの位相に対する、図10(3) に示すZ軸変位検出信号SΔzの位相差は90°を越えており、理想的な振動状態から逸脱していることになる。この場合、図10(6) を見るとわかるとおり、グラフにハッチングを施して示す積算領域a,b,c,dの面積に変化が生じる。具体的には、積算領域a,cの面積は、積算領域b,dの面積よりも大きくなる。このため、各積算領域を符号を考慮して積算すれば、正側積算器K1による積算値(積算領域a,b)は負になり、負側積算器K2による積算値(積算領域c,d)は正になる。結局、差分器K3から出力される出力信号Soutは負になる。
【0114】
したがって、図10(7) に示すように、同期検波器445から出力されるZ軸位相測定信号Fzp(図8の出力信号Sout)は、負の値を示す信号になる(図10(7) の一点鎖線は、零の値を示す基準レベルであり、実線が信号Fzpの実際のレベルを示す)。これは、現在、振動子20が理想的な位相から遅れて振動していることを示す。別言すれば、図10(7) の一点鎖線レベルと実線レベルとの差が、理想的な位相に対する位相差ということになる。このようなZ軸位相測定信号Fzpがフィードバック信号として帰還された場合、フィードバック制御部110は、Z軸駆動信号発生部150に対して、発生するZ軸駆動信号DrZの周波数fzを低め、位相遅延を解消させる制御を行う(本願発明者が行った実験では、周波数fzを低くすると、位相を進める制御が可能になることが確認できた)。
【0115】
逆に、図11は、位相が若干進んだ場合の各信号波形を示す波形図である。すなわち、図11(2) に示すZ軸駆動信号DrZの位相に対する、図11(3) に示すZ軸変位検出信号SΔzの位相差は90°を割っており、理想的な振動状態から逸脱していることになる。この場合、図11(6) を見るとわかるとおり、グラフにハッチングを施して示す積算領域a,b,c,dの面積に変化が生じる。具体的には、積算領域a,cの面積は、積算領域b,dの面積よりも小さくなる。このため、各積算領域を符号を考慮して積算すれば、正側積算器K1による積算値(積算領域a,b)は正になり、負側積算器K2による積算値(積算領域c,d)は負になる。結局、差分器K3から出力される出力信号Soutは正になる。
【0116】
したがって、図11(7) に示すように、同期検波器445から出力されるZ軸位相測定信号Fzp(図8の出力信号Sout)は、正の値を示す信号になる(図11(7) の一点鎖線は、零の値を示す基準レベルであり、実線が信号Fzpの実際のレベルを示す)。これは、現在、振動子20が理想的な位相から進んで振動していることを示す。別言すれば、図11(7) の一点鎖線レベルと実線レベルとの差が、理想的な位相に対する位相差ということになる。このようなZ軸位相測定信号Fzpがフィードバック信号として帰還された場合、フィードバック制御部110は、Z軸駆動信号発生部150に対して、発生するZ軸駆動信号DrZの周波数fzを高め、位相進みを解消させる制御を行う(本願発明者が行った実験では、周波数fzを高くすると、位相を遅らせる制御が可能になることが確認できた)。
【0117】
以上、図3に示す同期検波器445によって、第1の安定振動期βzの期間、Z軸位相測定信号Fzpが得られる理由を説明したが、同様に、同期検波器441によって、第2の安定振動期βxの期間、X軸位相測定信号Fxpが得られることになる。こうして、得られた各位相測定信号Fzp,Fxpは、上述したとおり、フィードバック制御部110へと帰還され、フィードバック制御部110によって、これらの帰還信号の信号値が零になるように、Z軸駆動信号発生部150が発生させるZ軸駆動信号DrZおよびX軸駆動信号発生部140が発生させるZ軸駆動信号DrXの周波数を調整する制御が行われる。
【0118】
続いて、図3に示す同期検波器442として図8に示す回路を用い、入力信号Sinとして、X軸変位検出信号SΔxを与えた場合に、この回路から得られる出力信号Soutが、振動子20に作用したX軸方向のコリオリ力、すなわち、Y軸まわりの角速度ωyを示す信号になる理由を簡単に説明しよう。
【0119】
図12は、図3に示す検出回路において、Y軸まわりの角速度が作用していない状態での動作を説明する信号波形図である。図12(1) に示すとおり、この図における時間軸は、第1の半周期Tz内の安定振動期βzの一部分を示している。この期間内は、センサ本体部に対して、図12(2) に示すようなZ軸駆動信号DrZが与えられており、振動子20は、Z軸方向に振動している。このため、図12(3) に示すようなZ軸変位検出信号SΔzが得られている。前述したとおり、振動子20が理想的な態様で振動していれば、Z軸変位検出信号SΔzの位相は、Z軸駆動信号DrZの位相に対して90°遅れることになる。図12の各波形は、このときの状態を示している。
【0120】
このように、振動子20がZ軸方向に振動している状態において、Y軸まわりの角速度が作用していなければ、X軸方向へのコリオリ力は作用しないので、振動子20がX軸方向に関して変位することはない。したがって、図12(6) に示すように、X軸変位検出信号SΔxは、零レベルを示す信号になる。同期検波器442には、このような零レベルを示すX軸変位検出信号SΔxが与えられるので、その出力信号、すなわち、Y軸まわりの角速度検出信号ωyは、図12(7) に示すように、零レベルを示す信号になる。
【0121】
一方、図13は、図3に示す検出回路において、Y軸まわりの角速度が作用している状態での動作を説明する信号波形図である。振動子20がZ軸方向に振動している状態において、Y軸まわりの角速度が作用していると、X軸方向へのコリオリ力が作用し、振動子20はX軸方向に関して変位する。もっとも、コリオリ力が作用する方向は、振動子20の運動方向に依存するので、振動子20がZ軸正方向へ向かって運動しているときと、Z軸負方向へ向かって運動しているときとでは、Y軸まわりの角速度の向きや大きさが全く同じであっても、X軸方向へのコリオリ力の向きは逆転する。
【0122】
たとえば、図13(3) のZ軸変位検出信号SΔzの信号値は、振動子20のZ軸に関する位置を示すものであるが、グラフ上の点P1は、Z=0の位置をZ軸正方向に向かって通過した瞬間を示し、点P2は、Z軸正方向の最大振幅地点に到達した瞬間を示し、点P3は、Z=0の位置をZ軸負方向に向かって通過した瞬間を示し、点P4は、Z軸負方向の最大振幅地点に到達した瞬間を示している。したがって、点P0〜P2へ移動する前半プロセスでは、振動子はZ軸正方向の速度成分をもって運動しており(点P1を通過する瞬間に正の最大速度をとる)、点P2〜P4へ移動する後半プロセスでは、振動子はZ軸負方向の速度成分をもって運動している(点P3を通過する瞬間に負の最大速度をとる)。
【0123】
ここで、振動子に作用するX軸方向のコリオリ力は、振動子のZ軸方向の速度成分に比例したものになり、振動子のX軸方向への変位も、これに応じたものになるので、この場合、図13(6) に示すようなX軸変位検出信号SΔxが得られる。同期検波器442には、このようなX軸変位検出信号SΔxが与えられるので、その出力信号、すなわち、Y軸まわりの角速度検出信号ωyは、図13(7) に示すように、所定のレベルを示す信号になる。すなわち、図13(6) に示すように、正側積算器K1による積算値(積算領域e)は正になり、負側積算器K2による積算値(積算領域f)は負になるので、差分器K3から出力される両者の差に相当する出力信号Soutは正の値になる。図13(7) において、一点鎖線は零レベルを示しており、実線は、出力信号Soutのレベル、すなわち、Y軸まわりの角速度検出信号ωyを示している。
【0124】
以上、図3に示す同期検波器442によって、第1の安定振動期βzの期間、Y軸まわりの角速度検出信号ωyが得られる理由を説明したが、同様に、同期検波器443によって、第1の安定振動期βzの期間、X軸まわりの角速度検出信号ωxが得られ、同期検波器444によって、第2の安定振動期βxの期間、Z軸まわりの角速度検出信号ωzが得られる。
【0125】
このように、図3に示す検出回路において、センサ本体部300の下方に描かれている400番台の符号が付された要素により、X軸振幅測定信号Fxa,X軸位相測定信号Fxp,Z軸振幅測定信号Fza,Z軸位相測定信号Fzp,X軸まわりの角速度検出信号ωx,Y軸まわりの角速度検出信号ωy,Z軸まわりの角速度検出信号ωzが得られることになる。しかも、これらの各信号は、X軸検波イネーブル信号EnXによって示される安定振動期βxもしくはZ軸検波イネーブル信号EnZによって示される安定振動期βzの期間のみについて、振動子の変位を検出して得られる信号であるので、振動子の振動が安定した期間についての正確な値になる。
【0126】
結局、図3に示す検出回路におけるゲートスイッチ421とAM検波器431は、第2の安定振動期βxの期間、X軸正側検出用素子の検出信号とX軸負側検出用素子の検出信号との差として得られる振動子のX軸方向への変位を示す検出値SΔxに基づいて、振動子のX軸方向の振幅Fxaを測定するX軸振幅測定部を構成し、ゲートスイッチ425とAM検波器432は、第1の安定振動期βzの期間、Z軸変位検出用素子から得られる振動子のZ軸方向への変位を示す検出値SΔzに基づいて、振動子のZ軸方向の振幅Fzaを測定するZ軸振幅測定部を構成することになる。
【0127】
また、ゲートスイッチ421と同期検波器441は、第2の安定振動期βxの期間、正側同期検波信号SdAおよび負側同期検波信号SdBを利用することにより、X軸正側検出用素子の検出信号とX軸負側検出用素子の検出信号との差として得られる振動子のX軸方向への変位を示す検出値SΔxに基づいて、振動子のX軸方向の位相Fxpを測定するX軸位相測定部を構成し、ゲートスイッチ425と同期検波器445は、第1の安定振動期βzの期間、正側同期検波信号SdAおよび負側同期検波信号SdBを利用することにより、Z軸変位検出用素子から得られる振動子のZ軸方向への変位を示す検出値SΔzに基づいて、振動子のZ軸方向の位相Fzpを測定するZ軸位相測定部を構成することになる。
【0128】
一方、ゲートスイッチ422と同期検波器442は、第1の安定振動期βzの期間、正側同期検波信号SdAおよび負側同期検波信号SdBを利用することにより、X軸正側検出用素子の検出信号とX軸負側検出用素子の検出信号との差を示す検出値SΔxに基づいて、Y軸まわりの角速度ωyを示す電気信号を出力するY軸まわり角速度検出部を構成し、ゲートスイッチ423と同期検波器443は、第1の安定振動期βzの期間、正側同期検波信号SdAおよび負側同期検波信号SdBを利用することにより、Y軸正側検出用素子の検出信号とY軸負側検出用素子の検出信号との差を示す検出値SΔyに基づいて、X軸まわりの角速度ωxを示す電気信号を出力するX軸まわり角速度検出部を構成し、ゲートスイッチ424と同期検波器444は、第2の安定振動期βxの期間、正側同期検波信号SdAおよび負側同期検波信号SdBを利用することにより、Y軸正側検出用素子の検出信号とY軸負側検出用素子の検出信号との差を示す検出値SΔyに基づいて、Z軸まわりの角速度ωzを示す電気信号を出力するZ軸まわり角速度検出部を構成することになる。
【0129】
そして、図3に示すフィードバック制御部110は、Z軸振幅測定部によって測定された振幅FzaおよびZ軸位相測定部によって測定された位相Fzpに基づいて、Z軸駆動信号発生部150が発生するZ軸駆動信号DrZの周波数fzおよび振幅Azが所定の基準周波数および基準振幅となるようにフィードバック制御するとともに、X軸振幅測定部によって測定された振幅FxaおよびX軸位相測定部によって測定された位相Fxpに基づいて、X軸駆動信号発生部140が発生するX軸駆動信号DrXの周波数fxおよび振幅Axが所定の基準周波数および基準振幅となるようにフィードバック制御する機能を果たす。
【0130】
なお、このようなフィードバック制御の方法は、たとえば、抵抗、キャパシタンス、インダクタンスなどの回路要素を組み合わせた制御回路によるPID制御法や、マイクロプロセッサを用いた制御法などが公知であるため、ここでは詳しい説明は省略する。
【0131】
<<< §5.センサの全般動作 >>>
図14は、本発明に係る角速度センサの全般動作を説明する信号波形図である。既に述べたとおり、図3に示す検出回路は、図14(1) に示すように、両半周期Tz,Txによって構成される周期Tごとの繰り返し動作を行う機能を有しており、図14(2) ,(3) に示すように、Z軸駆動信号DrZとX軸駆動信号DrXを用いて、振動子をZ軸方向およびX軸方向に交互に振動させる。一方、検波動作は、図14(4) ,(5) に示すZ軸検波イネーブル信号EnZおよびX軸検波イネーブル信号EnXによって示される第1の安定振動期βzおよび第2の安定振動期βxの期間についてのみ行われる。
【0132】
したがって、図14(6) に示すとおり、Z軸振幅測定信号Fza,Z軸位相測定信号Fzp,X軸振幅測定信号Fxa,X軸位相測定信号Fxp,X軸まわりの角速度検出信号ωx,Y軸まわりの角速度検出信号ωy,Z軸まわりの角速度検出信号ωzは、それぞれ図にハッチングを施した期間のみ得られる。ここで、Z軸振幅測定信号FzaおよびZ軸位相測定信号Fzpは、振動子をZ軸方向に振動させるときの制御に利用されるため、図示のとおり、第1の安定振動期βzの間に得られていれば十分であり、また、X軸振幅測定信号FxaおよびX軸位相測定信号Fxpは、振動子をX軸方向に振動させるときの制御に利用されるため、図示のとおり、第2の安定振動期βxの間に得られていれば十分である。
【0133】
これに対して、角速度検出信号ωx,ωy,ωzは、この角速度センサの主たる出力信号であり、実用上は、常に何らかの信号出力が得られるようにするのが好ましい。そこで、角速度検出部として機能する同期検波器442,443,444には、安定振動期でなくなったときに、直前の検出値を保持する機能をもたせ、次の安定振動期がくるまでの期間、保持していた検出値を継続して出力させるのが好ましい。
【0134】
具体的には、図14(6) に示すとおり、角速度検出信号ωx,ωyの検出値は、図にハッチングを施して示す第1の安定振動期βzの期間内しか得られないが、第1の安定振動期βzの終期において、その時点の検出値を保持させておき、次の第1の安定振動期βzがくるまでの間、保持させておいた検出値をそのまま継続して出力させるようにすればよい。同様に、角速度検出信号ωzの検出値は、図にハッチングを施して示す第2の安定振動期βxの期間内しか得られないが、第2の安定振動期βxの終期において、その時点の検出値を保持させておき、次の第2の安定振動期βxがくるまでの間、保持させておいた検出値をそのまま継続して出力させるようにすればよい。
【0135】
この場合、ハッチングを施した期間内は、リアルタイムで更新される正確な検出値が出力されるのに対して、それ以外の期間内は、保持されている過去の検出値が継続して出力されることになるため、検出値の精度は低下する。ただ、検出周期Tを、ある程度短い時間に設定しておけば、実用上、支障のない検出値を得ることができる。たとえば、上述の実施例の場合、T=12.5msなる設定を行っているので、保持した検出値を継続して出力するようにしても、一般的な用途に利用する上では何ら支障は生じない。
【0136】
既に述べたとおり、本発明に係る角速度センサにおいて、振動子を振動させる周波数は、振動方向に関して固有の共振周波数f0に設定するのが好ましい。図15は、一般的な機械的振動系の周波数特性を示すグラフである。グラフAは、振動周波数fに対する振幅を示すグラフである。同じエネルギーを供給して振動子を励振させたとしても、図示のとおり、共振周波数f0で振動させたときの振幅が最も大きくなる。したがって、フィードバック制御部110が、半周期ごとのフィードバック制御を行う際に、当該半周期の振動方向についての振動子の共振周波数をf0とした場合に、駆動信号の周波数がf0となるような制御を行うようにすれば、非常に効率的な検出動作が可能になる。
【0137】
振動子の共振周波数f0は、振動軸ごとにそれぞれ固有の値になる。上述した実施例の場合、Z軸方向に振動させる場合の共振周波数とX軸方向に振動させる場合の共振周波数とは、それぞれ別個の固有値になるので、第1の半周期Tzと第2の半周期Txとでは、それぞれ振動子は別個の周波数で振動させることになる。もちろん、センサ本体部の構造を適当に設計することにより、Z軸方向の共振周波数とX軸方向の共振周波数とを一致させることも可能である。
【0138】
一方、グラフBは、駆動信号と実変位との位相差を示すグラフであり、位相差は、左側に示す角度軸によって示されている。図示のとおり、共振周波数f0で振動させたとき、実変位の位相は、駆動信号の位相に対して90°だけ遅延することになる。§4で述べたように、フィードバック制御部110が、位相差を90°とするような周波数制御を行うのは、このためである。一般に、振動子の共振周波数は、製品ロットごとに異なり、また、温度などの利用環境によっても変化する。しかしながら、「共振周波数で振動させたとき、実変位の位相が、駆動信号の位相に対して90°だけ遅延する」ことは普遍である。したがって、駆動信号の位相と、位相測定部によって測定された振動子の位相とが、90°の位相差を生じるような周波数を、周波数f0とみなして、駆動信号に対する周波数制御を行うようにすればよい。本発明では、「位相差を90°に維持するフィードバック制御」を行っているため、どの製品ロットについても、どのような利用環境においても、常に理想的な振動状態を維持させる正しい制御が可能になる。
【0139】
グラフCは、位相差を示す帰還信号、すなわち、§4に示す例における位相測定信号Fxp,Fzpを示している。振動子の実際の振動周波数が共振周波数f0からずれると、この帰還信号の値も基準値からずれることになる。フィードバック制御部110は、この帰還信号が示す位相差が90°となるような制御を行う。なお、図示する近傍周波数領域Nを外れると、周波数に対する位相差の増減関係が反転するため、正しい制御を行うことができなくなるので、フィードバック制御部110は、近傍周波数領域Nを逸脱しないような制御を行う必要がある。
【0140】
なお、実際には、振動子を正確に共振周波数f0で振動させると、系が非線形となり、効率的な制御を行うことができないことが知られている。したがって、実用上は、振動子の振動周波数を正確な共振周波数f0に一致させるような制御を行う代わりに、若干、共振周波数f0からずれた所定周波数に維持するような制御を行うのが好ましい。すなわち、フィードバック制御部110が、半周期ごとのフィードバック制御を行う際に、当該半周期の振動方向についての振動子の共振周波数をf0とした場合に、駆動信号の周波数がf0の近傍の所定周波数(但し、当該周波数f0は除く別な周波数)となるような制御を行うようにすればよい。
【0141】
上述したとおり、駆動信号の位相と、位相測定部によって測定された振動子の位相とが、90°の位相差を生じるような周波数で振動子が振動している場合、当該振動周波数は共振周波数f0になる。したがって、若干、共振周波数f0からずれた所定周波数に維持するような制御を行うには、位相差が90°の近傍(90°は除く)の所定値(たとえば、85°や95°)となるようなフィードバック制御を行えばよい。§4では、位相測定信号Fxp,Fzpの信号値を零にするようなフィードバック制御を行う制御動作を述べたが、位相差が85°や95°となるようなフィードバック制御を行う場合、位相測定信号Fxp,Fzpの信号値を零に近い正もしくは負の所定値に維持するようなフィードバック制御を行えばよい。
【0142】
<<< §6.最適な期間設定 >>>
これまで述べたとおり、本発明における測定周期Tは、振動子を第1の座標軸方向に振動させる第1の半周期T1と、第2の座標軸方向に振動させる第2の半周期T2とによって構成される。そして、図4(6) ,(7) に示すように、各半周期T1,T2を、振動子の振動状態が不安定であると予想される不安定振動期αと、振動子が安定した振動状態を維持すると予想される安定振動期βとに分け、それぞれ安定振動期βの期間内に角速度の検出を行うことになる。
【0143】
前述した実施例の場合、T=12.5msに設定し、80Hzの周波数で周期的動作が繰り返し実行される。そして、各半周期が等しくなるような設定を行い、T1=T2=6.25msとしている。このような期間設定は、実用上、振動子の共振周波数に応じて最適な値に設定するのが好ましい。以下にその理由を説明する。
【0144】
本願発明に係る角速度センサに用いられる機械的な構造体は、中心位置にZ軸が通り、XY平面に平行な上面を有する可撓性支持体と、この可撓性支持体の下面中央に接合された振動子と、可撓性支持体の周囲を固定する固定部材と、可撓性支持体の上方に配置された駆動用素子群と、可撓性支持体の上方に配置された検出用素子群と、によって構成される。そこで、本願発明者は、このような機械的構造体の試作品を複数種類(各部の寸法、形状、材質などを変えたもの)実際に作成し、あるいは、コンピュータシミュレーションプログラム上で設計し、それぞれの試作品について、特定の座標軸方向に関する共振周波数と当該軸方向に振動させた場合の不安定振動期αとの関係を実測、あるいは、シミュレーションによって調べてみた。
【0145】
その結果、特定の振動方向についての振動子の共振周波数をf0とした場合に、不安定振動期の長さαは、(1/f0)×50〜(1/f0)×125の範囲に分布することが判明した。なお、振動子の振動状態が安定したと判断する時点としては、振幅値が「定常振幅値」の90%に到達した時点とした。ここで、「定常振幅値」とは、振動子を特定の振動方向に十分に長い期間(たとえば、数秒間)振動させ続け、振動子の振幅が一定となったときにおける当該振幅値をいう。「定常振幅値」に到達した時点で「振動が安定した」と判断する代わりに、その90%に到達した時点で「振動が安定した」と判断するようにしたのは、90%に到達した時点で得られた検出結果が、「定常振幅値」に到達した時点で得られた検出結果と、実用上、ほぼ同じになることが実験的に確認できたためである。
【0146】
このように、本願発明者が行った実験(実測およびシミュレーション)によれば、振動子の不安定振動期の長さαは、様々な機械的構造体によってバラツキがあるものの、振動方向についての振動子の共振周波数をf0とした場合、概ね、α=(1/f0)×50〜(1/f0)×125の範囲に分布することになる。もちろん、「安定した測定を行う」という観点からは、不安定振動期の長さαは、いくら長く設定してもかまわない。実際、図4(6) ,(7) における期間αz,αxは、数秒に設定しても、数分に設定しても、角速度の検出は可能である。
【0147】
しかしながら、期間αz,αxを長く設定すればするほど、半周期Tz,Txも長くなるので、3つの座標軸まわりの角速度ωx,ωy,ωzが得られる周期が長くなり、検出値の時間軸上での分解能が低下することになり好ましくない。たとえば、半周期Tz,Txを数秒程度に設定した場合、理論的には角速度センサとして機能することになるが、そのようなセンサは、デジタルカメラの撮影時の手ぶれ検出などには到底利用することができず、実用上、商業的な製品としての価値をもたない。このように、時間軸上での分解能を高めるには、半周期Tz,Txをできるだけ短く設定するのが好ましく、そのためには、不安定振動期の長さαをできるだけ短く設定するのが好ましい。
【0148】
結局、特定の振動方向についての振動子の共振周波数をf0とした場合に、振動子を当該振動方向へ振動させるための駆動信号の供給開始時から、振動子が安定した振動状態になると予想される時点までの期間αを、(1/f0)×50≦α≦(1/f0)×125の範囲に設定すれば、どのような機械的構造体を採用するセンサについても、適切な検出動作を行うことが可能になる。したがって、本発明に係る角速度センサの検出回路を設計する上では、不安定振動期αの期間が上記範囲内となるような設計を行うのが好ましい。
【0149】
一方、安定振動期の長さβは、角速度の測定動作が行われる期間の長さを定めるパラメータになる。期間βを長く設定すればするほど、当該半周期において得られる検出値のサンプル数は増加することになるが、3つの座標軸まわりの角速度ωx,ωy,ωzが得られる周期が長くなり、検出値の時間軸上での分解能は低下する。本願発明者が行った実験によると、期間α=期間βに設定すると、最もバランスの良い適切な検出値を得ることができた。
【0150】
このように、期間α=期間βに設定することにすれば、半周期=α+β=2αに設定すればよいことになる。結局、第1の座標軸方向についての振動子の共振周波数をf1とし、第2の座標軸方向についての振動子の共振周波数をf2とした場合、不安定振動期の長さを、上述したとおり(1/f0)×50〜(1/f0)×125の範囲に設定することにすれば、第1の半周期T1を、(1/f1)×100≦T1≦(1/f1)×250の範囲に設定し、第2の半周期T2を、(1/f2)×100≦T2≦(1/f2)×250の範囲に設定すればよいことになる。振動子のZ軸方向の共振周波数f1とX軸方向の共振周波数f2とがほぼ等しいセンサの場合、当該共振周波数をf0として、周期Tを(1/f0)×200〜(1/f0)×500の範囲に設定すると、良好な検出が可能になる。
【0151】
<<< §7.その他の変形例 >>>
これまで、図1および図2に示す例のように、駆動用素子群および検出用素子群を構成する個々の素子が、可撓性支持体10の上面に固定された圧電素子からなるセンサに本発明を適用した例を述べたが、本発明は、このような圧電素子を用いた角速度センサに限定されるものではない。たとえば、駆動用素子群および検出用素子群を構成する個々の素子が、可撓性支持体の上面に固定された変位電極と、この変位電極に対向する位置に固定された固定電極と、によって構成される容量素子からなる角速度センサについても、本発明は適用可能である。
【0152】
図16は、このような容量素子を用いたセンサ本体部の構造を示す縦断面図である。この図16に示すセンサ本体部において、可撓性支持体10、振動子20、固定部材30の構成は、図1に示すセンサ本体部と全く同じである。ただ、圧電素子40を設ける代わりに、容量素子が形成されている。すなわち、可撓性支持体10の上方に、台座50を介して補助基板60が接合されており、可撓性支持体10の上面に形成された共通電極Ecと、補助基板60の下面に形成された個々の個別電極とによって、個々の容量素子が形成されている。
【0153】
図17は、この図16に示すセンサ本体部の補助基板60の下面図である。補助基板60の下面に形成された12枚の電極の形状および配置は、図2に示す圧電素子10の上面に形成された12枚の電極の形状および配置と同一であり、ここでは、同一の符号を付して示してある。互いに対向する電極対によって、合計12組の容量素子群が形成される。これら12組の容量素子群は、図2に示す12組の圧電素子群とほぼ同じ機能を果たす。
【0154】
圧電素子は、上下の両電極間に電圧を印加することにより伸縮を生じる性質を有しているが、容量素子は、両電極間に電圧を印加することにより、クーロン力の作用を受け、電極間距離に変化が生じる性質を有している。したがって、各駆動用電極に交流駆動信号を与えれば、振動子を所定の座標軸方向に振動させることができる。また、圧電素子は、機械的に伸縮させる応力を受けると、上下の両電極間に電圧を発生させる性質を有しており、この性質を利用して、振動子の所定軸方向の変位を検出することができた。これに対して、上記容量素子は、可撓性支持体10を撓ませる応力を受けると、電極間距離に変化が生じ、静電容量値が変化する性質を有しており、この性質を利用して、振動子の所定軸方向の変位を検出することができる。
【0155】
結局、図16,図17に示す容量式のセンサ本体部についても、図3に示す検出回路を適用して、これまで述べてきた方法と同じ検出動作を行うことが可能である。要するに、本発明は、中心位置にZ軸が通り、XY平面に平行な上面を有する可撓性支持体と、この可撓性支持体の下面中央に接合された振動子と、可撓性支持体の周囲を固定する固定部材と、可撓性支持体の上方に配置された駆動用素子群と、可撓性支持体の上方に配置された検出用素子群と、を備えたセンサ本体部について適用可能な技術ということができる。なお、可撓性支持体は、必ずしも平板状の基板である必要はなく、たとえば、複数の橋梁構造を備えた部材であってもかまわない。
【0156】
ここで、駆動用素子群は、XY平面上に投影したときに、X軸正の領域に配置されたX軸正側駆動用素子と、X軸負の領域に配置されたX軸負側駆動用素子と、Y軸正の領域に配置されたY軸正側駆動用素子と、Y軸負の領域に配置されたY軸負側駆動用素子と、によって構成され、X軸正側駆動用素子とX軸負側駆動用素子とに交流駆動信号を供給すると振動子がX軸に沿って振動し、Y軸正側駆動用素子とY軸負側駆動用素子とに交流駆動信号を供給すると振動子がY軸に沿って振動し、4組の駆動用素子のすべてに交流駆動信号を供給すると振動子がZ軸に沿って振動するように、可撓性支持体の個々の配置位置にそれぞれ特定の撓みを生じさせる機能を有していれば、圧電素子や容量素子、その他の素子であってもかまわない。
【0157】
また、検出用素子群は、XY平面上に投影したときに、X軸正の領域に配置されたX軸正側検出用素子と、X軸負の領域に配置されたX軸負側検出用素子と、Y軸正の領域に配置されたY軸正側検出用素子と、Y軸負の領域に配置されたY軸負側検出用素子と、XZ平面およびYZ平面の双方に関して対称となるように配置されたZ軸変位検出用素子と、によって構成され、X軸正側検出用素子とX軸負側検出用素子とは、振動子がX軸方向に変位したときに可撓性支持体に生じる撓みに起因して、当該変位に応じた絶対値をもち互いに逆極性の検出信号を出力し、Y軸正側検出用素子とY軸負側検出用素子とは、振動子がY軸方向に変位したときに可撓性支持体に生じる撓みに起因して、当該変位に応じた絶対値をもち互いに逆極性の検出信号を出力し、Z軸変位検出用素子は、振動子がZ軸方向に変位したときに可撓性支持体に生じる撓みに起因して、当該変位に応じた絶対値をもち変位方向に応じた極性の検出信号を出力する機能を有していれば、圧電素子や容量素子、その他の素子であってもかまわない。
【0158】
本発明の特徴は、検出用素子群から得られる検出信号に基づく制御を行いながら、駆動用素子群に対して交流駆動信号を供給して振動子を所定の座標軸方向に振動させ、所定のタイミングで検出用素子群から得られる検出信号を用いて、各座標軸まわりの角速度を示す電気信号を出力する特有の検出回路を利用する点にある。
【0159】
図3に示す検出回路は、第1の半周期Tzに振動子をZ軸方向に振動させながら、X軸まわりの角速度ωxとY軸まわりの角速度ωyとを測定し、第2の半周期Txに振動子をX軸方向に振動させながら、Z軸まわりの角速度ωzを測定する回路であるが、本発明に用いる検出回路は、必ずしもこのような実施例の回路である必要はない。振動子をX軸方向に振動させながら、Z軸まわりの角速度ωzとともにY軸まわりの角速度ωyを測定することも可能であるし、振動子をY軸方向に振動させながら、X軸まわりの角速度ωxとともにZ軸まわりの角速度ωzを測定することも可能である。
【0160】
結局、本発明に用いる検出回路は、第1の半周期T1と第2の半周期T2とによって構成される周期Tについて、周期的動作を実行する機能を有しており、第1の駆動信号発生部、第2の駆動信号発生部、正側同期検波信号発生部、負側同期検波信号発生部、第1の検波イネーブル信号発生部、第2の検波イネーブル信号発生部、マトリクス変換器、第1の角速度検出部、第2の角速度検出部、第3の角速度検出部、第1の振幅測定部、第1の位相測定部、第2の振幅測定部、第2の位相測定部、フィードバック制御部を備えていればよい。
【0161】
ここで、第1の駆動信号発生部は、第1の半周期T1には、所定の周波数および振幅をもった交流信号が配されており、第2の半周期T2には、何ら交流信号が配されていない、第1の駆動信号を発生する構成要素であり、第2の駆動信号発生部は、第1の半周期T1には、何ら交流信号が配されておらず、第2の半周期T2には、所定の周波数および振幅をもった交流信号が配されている、第2の駆動信号を発生する構成要素である。
【0162】
また、正側同期検波信号発生部は、第1の半周期T1には、第1の駆動信号の正側のピークに同期した位置に第1の駆動信号の周期の1/2以下のパルス幅をもったパルスが周期的に配され、第2の半周期T2には、第2の駆動信号の正側のピークに同期した位置に第2の駆動信号の周期の1/2以下のパルス幅をもったパルスが周期的に配されている、正側同期検波信号を発生する構成要素であり、負側同期検波信号発生部は、第1の半周期T1には、第1の駆動信号の負側のピークに同期した位置に第1の駆動信号の周期の1/2以下のパルス幅をもったパルスが周期的に配され、第2の半周期T2には、第2の駆動信号の負側のピークに同期した位置に第2の駆動信号の周期の1/2以下のパルス幅をもったパルスが周期的に配されている、負側同期検波信号を発生する構成要素である。
【0163】
一方、第1の検波イネーブル信号発生部は、第1の半周期T1において振動子が安定した振動状態を維持すると予想される第1の安定振動期を示す第1の検波イネーブル信号を発生する構成要素であり、第2の検波イネーブル信号発生部は、第2の半周期T2において振動子が安定した振動状態を維持すると予想される第2の安定振動期を示す第2の検波イネーブル信号を発生する構成要素である。
【0164】
また、マトリクス変換器は、第1の半周期T1には、振動子を第1の座標軸方向に振動させるために必要な駆動用素子に第1の駆動信号もしくはその位相反転信号を供給し、第2の半周期T2には、振動子を第2の座標軸方向に振動させるために必要な駆動用素子に第2の駆動信号もしくはその位相反転信号を供給する構成要素である。
【0165】
そして、第1の角速度検出部は、第1の安定振動期の期間、正側同期検波信号および負側同期検波信号を利用することにより検出用素子群から得られる振動子のコリオリ力に起因した第2の座標軸方向への変位を示す検出値に基づいて、第3の座標軸まわりの角速度を示す電気信号を出力する構成要素であり、第2の角速度検出部は、第1の安定振動期の期間、正側同期検波信号および負側同期検波信号を利用することにより検出用素子群から得られる振動子のコリオリ力に起因した第3の座標軸方向への変位を示す検出値に基づいて、第2の座標軸まわりの角速度を示す電気信号を出力する構成要素であり、第3の角速度検出部は、第2の安定振動期の期間、正側同期検波信号および負側同期検波信号を利用することにより検出用素子群から得られる振動子のコリオリ力に起因した第3の座標軸方向への変位を示す検出値に基づいて、第1の座標軸まわりの角速度を示す電気信号を出力する構成要素である。
【0166】
更に、第1の振幅測定部は、第1の安定振動期の期間、検出用素子群から得られる振動子の第1の座標軸方向への変位を示す検出値に基づいて、振動子の振幅を測定する構成要素であり、第1の位相測定部は、第1の安定振動期の期間、正側同期検波信号および負側同期検波信号を利用することにより検出用素子群から得られる振動子の第1の座標軸方向への変位を示す検出値に基づいて、振動子の位相を測定する構成要素である。
【0167】
一方、第2の振幅測定部は、第2の安定振動期の期間、検出用素子群から得られる振動子の第2の座標軸方向への変位を示す検出値に基づいて、振動子の振幅を測定する構成要素であり、第2の位相測定部は、第2の安定振動期の期間、正側同期検波信号および負側同期検波信号を利用することにより検出用素子群から得られる振動子の第2の座標軸方向への変位を示す検出値に基づいて、振動子の位相を測定する構成要素である
【0168】
そして、フィードバック制御部は、第1の振幅測定部によって測定された振幅および第1の位相測定部によって測定された位相に基づいて、第1の駆動信号発生部が発生する第1の駆動信号の周波数および振幅が所定の基準周波数および基準振幅となるようにフィードバック制御するとともに、第2の振幅測定部によって測定された振幅および第2の位相測定部によって測定された位相に基づいて、第2の駆動信号発生部が発生する第2の駆動信号の周波数および振幅が所定の基準周波数および基準振幅となるようにフィードバック制御する構成要素である。
【符号の説明】
【0169】
10:可撓性支持体
20:振動子
30:固定部材
40:圧電素子
50:台座
60:補助基板
100:動作信号発生器
110:フィードバック制御部
120:X軸検波イネーブル信号発生部
130:Z軸検波イネーブル信号発生部
140:X軸駆動信号発生部
150:Z軸駆動信号発生部
160:正側同期検波信号発生部
170:負側同期検波信号発生部
200:マトリクス変換器
210〜240:OPアンプ
300:センサ本体部
411:差分器
412:差分器
413:加算器
421〜425:ゲートスイッチ(SW)
431,432:AM検波器(AMD)
441〜445:同期検波器(SD)
Ax:X軸駆動信号の振幅
Az:Z軸駆動信号の振幅
AMD:AM検波器
a〜f:グラフの積算領域
C1〜C7:コンデンサ
DIF:差動増幅器
DrX:X軸駆動信号
DrZ:Z軸駆動信号
Dx(+):X軸正側駆動信号
Dx(−):X軸負側駆動信号
Dy(+):Y軸正側駆動信号
Dy(−):Y軸負側駆動信号
Ec:共通電極
EnX:X軸検波イネーブル信号
EnZ:Z軸検波イネーブル信号
Ex(+):X軸正側駆動用電極
Ex(−):X軸負側駆動用電極
Ey(+):Y軸正側駆動用電極
Ey(−):Y軸負側駆動用電極
Ex1:X軸正側検出用電極
Ex2:X軸負側検出用電極
Ey1:Y軸正側検出用電極
Ey2:Y軸負側検出用電極
Ez1〜Ez4:Z軸変位検出用電極
Fxa:X軸振幅測定信号
Fxp:X軸位相測定信号
Fza:Z軸振幅測定信号
Fzp:Z軸位相測定信号
f:周波数
f0:共振周波数
fx:X軸駆動信号の周波数
fz:Z軸駆動信号の周波数
G:環状溝部
Ga,Gb:ゲートスイッチ
K1:正側積算器
K2:負側積算器
K3:差分器
N:近傍周波数領域
O:XYZ三次元座標系の原点
OP1,OP2:演算増幅器
P0〜P4:グラフ上の点
R1〜R17:抵抗
Ref:参照電圧
SD:同期検波器
SdA:正側同期検波信号
SdB:負側同期検波信号
Sin:入力信号
Sout:出力信号
SW:ゲートスイッチ
SΔx:X軸変位検出信号
SΔy:Y軸変位検出信号
SΔz:Z軸変位検出信号
T:動作周期
Tx:第2の半周期
Tz:第1の半周期
X,Y,Z:三次元座標系の各座標軸
αx:第2の不安定振動期
αz:第1の不安定振動期
βx:第2の安定振動期
βz:第1の安定振動期
ωx,ωy,ωz:各座標軸まわりの角速度
【特許請求の範囲】
【請求項1】
XYZ三次元座標系における各座標軸まわりの角速度を検出する角速度センサであって、
中心位置にZ軸が通り、XY平面に平行な上面を有する可撓性支持体と、
前記可撓性支持体の下面中央に接合された振動子と、
前記可撓性支持体の周囲を固定する固定部材と、
前記可撓性支持体の上方に配置された駆動用素子群と、
前記可撓性支持体の上方に配置された検出用素子群と、
前記駆動用素子群に対して交流駆動信号を供給して前記振動子を所定の座標軸方向に振動させ、所定のタイミングで前記検出用素子群から得られる検出信号を用いて、各座標軸まわりの角速度を示す電気信号を出力する検出回路と、
を備え、
前記駆動用素子群は、XY平面上に投影したときに、X軸正の領域に配置されたX軸正側駆動用素子と、X軸負の領域に配置されたX軸負側駆動用素子と、Y軸正の領域に配置されたY軸正側駆動用素子と、Y軸負の領域に配置されたY軸負側駆動用素子と、によって構成され、前記X軸正側駆動用素子と前記X軸負側駆動用素子とに交流駆動信号を供給すると前記振動子がX軸に沿って振動し、前記Y軸正側駆動用素子と前記Y軸負側駆動用素子とに交流駆動信号を供給すると前記振動子がY軸に沿って振動し、前記4組の駆動用素子のすべてに交流駆動信号を供給すると前記振動子がZ軸に沿って振動するように、前記可撓性支持体の個々の配置位置にそれぞれ特定の撓みを生じさせる機能を有し、
前記検出用素子群は、XY平面上に投影したときに、X軸正の領域に配置されたX軸正側検出用素子と、X軸負の領域に配置されたX軸負側検出用素子と、Y軸正の領域に配置されたY軸正側検出用素子と、Y軸負の領域に配置されたY軸負側検出用素子と、XZ平面およびYZ平面の双方に関して対称となるように配置されたZ軸変位検出用素子と、によって構成され、前記X軸正側検出用素子と前記X軸負側検出用素子とは、前記振動子がX軸方向に変位したときに前記可撓性支持体に生じる撓みに起因して、当該変位に応じた絶対値をもち互いに逆極性の検出信号を出力し、前記Y軸正側検出用素子と前記Y軸負側検出用素子とは、前記振動子がY軸方向に変位したときに前記可撓性支持体に生じる撓みに起因して、当該変位に応じた絶対値をもち互いに逆極性の検出信号を出力し、前記Z軸変位検出用素子は、前記振動子がZ軸方向に変位したときに前記可撓性支持体に生じる撓みに起因して、当該変位に応じた絶対値をもち変位方向に応じた極性の検出信号を出力する機能を有し、
前記検出回路は、
第1の半周期T1と第2の半周期T2とによって構成される周期Tについて、周期的動作を実行する機能を有し、
前記第1の半周期T1には、特定の駆動素子に前記振動子を第1の座標軸方向に振動させるための駆動信号を供給し、前記第2の半周期T2には、特定の駆動素子に前記振動子を第2の座標軸方向に振動させるための駆動信号を供給し、
前記第1の半周期T1において前記振動子が安定した振動状態を維持すると予想される第1の座標軸方向に関する安定振動期の期間、前記検出用素子群から得られる前記振動子のコリオリ力に起因した前記第2の座標軸方向への変位を示す検出値に基づいて、第3の座標軸まわりの角速度を検出するとともに、前記検出用素子群から得られる前記振動子のコリオリ力に起因した前記第3の座標軸方向への変位を示す検出値に基づいて、前記第2の座標軸まわりの角速度を検出し、
前記第2の半周期T2において前記振動子が安定した振動状態を維持すると予想される第2の座標軸方向に関する安定振動期の期間、前記検出用素子群から得られる前記振動子のコリオリ力に起因した前記第3の座標軸方向への変位を示す検出値に基づいて、前記第1の座標軸まわりの角速度を検出することを特徴とする角速度センサ。
【請求項2】
請求項1に記載の角速度センサにおいて、
検出回路が、検出用素子群から得られる信号に基づいて振動子の位相および振幅を測定する機能と、この測定値に基づいて、振動子の位相および振幅に対するフィードバック制御を行う機能と、を有することを特徴とする角速度センサ。
【請求項3】
請求項1または2に記載の角速度センサにおいて、
特定の振動方向についての振動子の共振周波数をf0とした場合に、振動子を当該振動方向へ振動させるための駆動信号の供給開始時から、振動子が安定した振動状態になると予想される時点までの期間αを、(1/f0)×50≦α≦(1/f0)×125の範囲に設定したことを特徴とする角速度センサ。
【請求項4】
請求項3に記載の角速度センサにおいて、
第1の座標軸方向についての振動子の共振周波数をf1とし、第2の座標軸方向についての振動子の共振周波数をf2とした場合に、第1の半周期T1を、(1/f1)×100≦T1≦(1/f1)×250の範囲に設定し、第2の半周期T2を、(1/f2)×100≦T2≦(1/f2)×250の範囲に設定したことを特徴とする角速度センサ。
【請求項5】
XYZ三次元座標系における各座標軸まわりの角速度を検出する角速度センサであって、
中心位置にZ軸が通り、XY平面に平行な上面を有する可撓性支持体と、
前記可撓性支持体の下面中央に接合された振動子と、
前記可撓性支持体の周囲を固定する固定部材と、
前記可撓性支持体の上方に配置された駆動用素子群と、
前記可撓性支持体の上方に配置された検出用素子群と、
前記検出用素子群から得られる検出信号に基づく制御を行いながら、前記駆動用素子群に対して交流駆動信号を供給して前記振動子を所定の座標軸方向に振動させ、所定のタイミングで前記検出用素子群から得られる検出信号を用いて、各座標軸まわりの角速度を示す電気信号を出力する検出回路と、
を備え、
前記駆動用素子群は、XY平面上に投影したときに、X軸正の領域に配置されたX軸正側駆動用素子と、X軸負の領域に配置されたX軸負側駆動用素子と、Y軸正の領域に配置されたY軸正側駆動用素子と、Y軸負の領域に配置されたY軸負側駆動用素子と、によって構成され、前記X軸正側駆動用素子と前記X軸負側駆動用素子とに交流駆動信号を供給すると前記振動子がX軸に沿って振動し、前記Y軸正側駆動用素子と前記Y軸負側駆動用素子とに交流駆動信号を供給すると前記振動子がY軸に沿って振動し、前記4組の駆動用素子のすべてに交流駆動信号を供給すると前記振動子がZ軸に沿って振動するように、前記可撓性支持体の個々の配置位置にそれぞれ特定の撓みを生じさせる機能を有し、
前記検出用素子群は、XY平面上に投影したときに、X軸正の領域に配置されたX軸正側検出用素子と、X軸負の領域に配置されたX軸負側検出用素子と、Y軸正の領域に配置されたY軸正側検出用素子と、Y軸負の領域に配置されたY軸負側検出用素子と、XZ平面およびYZ平面の双方に関して対称となるように配置されたZ軸変位検出用素子と、によって構成され、前記X軸正側検出用素子と前記X軸負側検出用素子とは、前記振動子がX軸方向に変位したときに前記可撓性支持体に生じる撓みに起因して、当該変位に応じた絶対値をもち互いに逆極性の検出信号を出力し、前記Y軸正側検出用素子と前記Y軸負側検出用素子とは、前記振動子がY軸方向に変位したときに前記可撓性支持体に生じる撓みに起因して、当該変位に応じた絶対値をもち互いに逆極性の検出信号を出力し、前記Z軸変位検出用素子は、前記振動子がZ軸方向に変位したときに前記可撓性支持体に生じる撓みに起因して、当該変位に応じた絶対値をもち変位方向に応じた極性の検出信号を出力する機能を有し、
前記検出回路は、
第1の半周期T1と第2の半周期T2とによって構成される周期Tについて、周期的動作を実行する機能を有し、
前記第1の半周期T1には、所定の周波数および振幅をもった交流信号が配されており、前記第2の半周期T2には、何ら交流信号が配されていない、第1の駆動信号を発生する第1の駆動信号発生部と、
前記第1の半周期T1には、何ら交流信号が配されておらず、前記第2の半周期T2には、所定の周波数および振幅をもった交流信号が配されている、第2の駆動信号を発生する第2の駆動信号発生部と、
前記第1の半周期T1には、前記第1の駆動信号の正側のピークに同期した位置に前記第1の駆動信号の周期の1/2以下のパルス幅をもったパルスが周期的に配され、前記第2の半周期T2には、前記第2の駆動信号の正側のピークに同期した位置に前記第2の駆動信号の周期の1/2以下のパルス幅をもったパルスが周期的に配されている、正側同期検波信号を発生する正側同期検波信号発生部と、
前記第1の半周期T1には、前記第1の駆動信号の負側のピークに同期した位置に前記第1の駆動信号の周期の1/2以下のパルス幅をもったパルスが周期的に配され、前記第2の半周期T2には、前記第2の駆動信号の負側のピークに同期した位置に前記第2の駆動信号の周期の1/2以下のパルス幅をもったパルスが周期的に配されている、負側同期検波信号を発生する負側同期検波信号発生部と、
前記第1の半周期T1において前記振動子が安定した振動状態を維持すると予想される第1の安定振動期を示す第1の検波イネーブル信号を発生する第1の検波イネーブル信号発生部と、
前記第2の半周期T2において前記振動子が安定した振動状態を維持すると予想される第2の安定振動期を示す第2の検波イネーブル信号を発生する第2の検波イネーブル信号発生部と、
前記第1の半周期T1には、前記振動子を第1の座標軸方向に振動させるために必要な駆動用素子に前記第1の駆動信号もしくはその位相反転信号を供給し、前記第2の半周期T2には、前記振動子を第2の座標軸方向に振動させるために必要な駆動用素子に前記第2の駆動信号もしくはその位相反転信号を供給するマトリクス変換器と、
前記第1の安定振動期の期間、前記正側同期検波信号および前記負側同期検波信号を利用することにより前記検出用素子群から得られる前記振動子のコリオリ力に起因した前記第2の座標軸方向への変位を示す検出値に基づいて、第3の座標軸まわりの角速度を示す電気信号を出力する第1の角速度検出部と、
前記第1の安定振動期の期間、前記正側同期検波信号および前記負側同期検波信号を利用することにより前記検出用素子群から得られる前記振動子のコリオリ力に起因した前記第3の座標軸方向への変位を示す検出値に基づいて、前記第2の座標軸まわりの角速度を示す電気信号を出力する第2の角速度検出部と、
前記第2の安定振動期の期間、前記正側同期検波信号および前記負側同期検波信号を利用することにより前記検出用素子群から得られる前記振動子のコリオリ力に起因した前記第3の座標軸方向への変位を示す検出値に基づいて、前記第1の座標軸まわりの角速度を示す電気信号を出力する第3の角速度検出部と、
前記第1の安定振動期の期間、前記検出用素子群から得られる前記振動子の前記第1の座標軸方向への変位を示す検出値に基づいて、前記振動子の振幅を測定する第1の振幅測定部と、
前記第1の安定振動期の期間、前記正側同期検波信号および前記負側同期検波信号を利用することにより前記検出用素子群から得られる前記振動子の前記第1の座標軸方向への変位を示す検出値に基づいて、前記振動子の位相を測定する第1の位相測定部と、
前記第2の安定振動期の期間、前記検出用素子群から得られる前記振動子の前記第2の座標軸方向への変位を示す検出値に基づいて、前記振動子の振幅を測定する第2の振幅測定部と、
前記第2の安定振動期の期間、前記正側同期検波信号および前記負側同期検波信号を利用することにより前記検出用素子群から得られる前記振動子の前記第2の座標軸方向への変位を示す検出値に基づいて、前記振動子の位相を測定する第2の位相測定部と、
前記第1の振幅測定部によって測定された振幅および前記第1の位相測定部によって測定された位相に基づいて、前記第1の駆動信号発生部が発生する前記第1の駆動信号の周波数および振幅が所定の基準周波数および基準振幅となるようにフィードバック制御するとともに、前記第2の振幅測定部によって測定された振幅および前記第2の位相測定部によって測定された位相に基づいて、前記第2の駆動信号発生部が発生する前記第2の駆動信号の周波数および振幅が所定の基準周波数および基準振幅となるようにフィードバック制御するフィードバック制御部と、
を備えることを特徴とする角速度センサ。
【請求項6】
XYZ三次元座標系における各座標軸まわりの角速度を検出する角速度センサであって、
中心位置にZ軸が通り、XY平面に平行な上面を有する可撓性支持体と、
前記可撓性支持体の下面中央に接合された振動子と、
前記可撓性支持体の周囲を固定する固定部材と、
前記可撓性支持体の上方に配置された駆動用素子群と、
前記可撓性支持体の上方に配置された検出用素子群と、
前記検出用素子群から得られる検出信号に基づく制御を行いながら、前記駆動用素子群に対して交流駆動信号を供給して前記振動子を所定の座標軸方向に振動させ、所定のタイミングで前記検出用素子群から得られる検出信号を用いて、各座標軸まわりの角速度を示す電気信号を出力する検出回路と、
を備え、
前記駆動用素子群は、XY平面上に投影したときに、X軸正の領域に配置されたX軸正側駆動用素子と、X軸負の領域に配置されたX軸負側駆動用素子と、Y軸正の領域に配置されたY軸正側駆動用素子と、Y軸負の領域に配置されたY軸負側駆動用素子と、によって構成され、前記X軸正側駆動用素子と前記X軸負側駆動用素子とに交流駆動信号を供給すると前記振動子がX軸に沿って振動し、前記4組の駆動用素子のすべてに交流駆動信号を供給すると前記振動子がZ軸に沿って振動するように、前記可撓性支持体の個々の配置位置にそれぞれ特定の撓みを生じさせる機能を有し、
前記検出用素子群は、XY平面上に投影したときに、X軸正の領域に配置されたX軸正側検出用素子と、X軸負の領域に配置されたX軸負側検出用素子と、Y軸正の領域に配置されたY軸正側検出用素子と、Y軸負の領域に配置されたY軸負側検出用素子と、XZ平面およびYZ平面の双方に関して対称となるように配置されたZ軸変位検出用素子と、によって構成され、前記X軸正側検出用素子と前記X軸負側検出用素子とは、前記振動子がX軸方向に変位したときに前記可撓性支持体に生じる撓みに起因して、当該変位に応じた絶対値をもち互いに逆極性の検出信号を出力し、前記Y軸正側検出用素子と前記Y軸負側検出用素子とは、前記振動子がY軸方向に変位したときに前記可撓性支持体に生じる撓みに起因して、当該変位に応じた絶対値をもち互いに逆極性の検出信号を出力し、前記Z軸変位検出用素子は、前記振動子がZ軸方向に変位したときに前記可撓性支持体に生じる撓みに起因して、当該変位に応じた絶対値をもち変位方向に応じた極性の検出信号を出力する機能を有し、
前記検出回路は、
第1の半周期Tzと第2の半周期Txとによって構成される周期Tについて、周期的動作を実行する機能を有し、
前記第1の半周期Tzには、所定の周波数fzおよび振幅Azをもった交流信号が配されており、前記第2の半周期Txには、何ら交流信号が配されていない、Z軸駆動信号DrZを発生するZ軸駆動信号発生部と、
前記第1の半周期Tzには、何ら交流信号が配されておらず、前記第2の半周期Txには、所定の周波数fxおよび振幅Axをもった交流信号が配されている、X軸駆動信号DrXを発生するX軸駆動信号発生部と、
前記第1の半周期Tzには、前記Z軸駆動信号DrZの正側のピークに同期した位置に前記Z軸駆動信号DrZの周期の1/2以下のパルス幅をもったパルスが周期的に配され、前記第2の半周期Txには、前記X軸駆動信号DrXの正側のピークに同期した位置に前記X軸駆動信号DrXの周期の1/2以下のパルス幅をもったパルスが周期的に配されている、正側同期検波信号SdAを発生する正側同期検波信号発生部と、
前記第1の半周期Tzには、前記Z軸駆動信号DrZの負側のピークに同期した位置に前記Z軸駆動信号DrZの周期の1/2以下のパルス幅をもったパルスが周期的に配され、前記第2の半周期Txには、前記X軸駆動信号DrXの負側のピークに同期した位置に前記X軸駆動信号DrXの周期の1/2以下のパルス幅をもったパルスが周期的に配されている、負側同期検波信号SdBを発生する負側同期検波信号発生部と、
前記第1の半周期Tzにおいて前記振動子がZ軸に沿って安定した振動状態を維持すると予想される第1の安定振動期βzを示すZ軸検波イネーブル信号EnZを発生するZ軸検波イネーブル信号発生部と、
前記第2の半周期Txにおいて前記振動子がX軸に沿って安定した振動状態を維持すると予想される第2の安定振動期βxを示すX軸検波イネーブル信号EnXを発生するX軸検波イネーブル信号発生部と、
前記第1の半周期Tzには、前記4組の駆動用素子のすべてに前記Z軸駆動信号DrZを供給し、前記第2の半周期Txには、前記X軸正側駆動用素子に前記X軸駆動信号DrXを供給し前記X軸負側駆動用素子に前記X軸駆動信号DrXの位相反転信号を供給するマトリクス変換器と、
前記第1の安定振動期βzの期間、前記正側同期検波信号および前記負側同期検波信号を利用することにより、前記X軸正側検出用素子の検出信号と前記X軸負側検出用素子の検出信号との差を示す検出値に基づいて、Y軸まわりの角速度ωyを示す電気信号を出力するY軸まわり角速度検出部と、
前記第1の安定振動期βzの期間、前記正側同期検波信号および前記負側同期検波信号を利用することにより、前記Y軸正側検出用素子の検出信号と前記Y軸負側検出用素子の検出信号との差を示す検出値に基づいて、X軸まわりの角速度ωxを示す電気信号を出力するX軸まわり角速度検出部と、
前記第2の安定振動期βxの期間、前記正側同期検波信号および前記負側同期検波信号を利用することにより、前記Y軸正側検出用素子の検出信号と前記Y軸負側検出用素子の検出信号との差を示す検出値に基づいて、Z軸まわりの角速度ωzを示す電気信号を出力するZ軸まわり角速度検出部と、
前記第1の安定振動期βzの期間、前記Z軸変位検出用素子から得られる前記振動子のZ軸方向への変位を示す検出値に基づいて、前記振動子のZ軸方向の振幅を測定するZ軸振幅測定部と、
前記第1の安定振動期βzの期間、前記正側同期検波信号および前記負側同期検波信号を利用することにより、前記Z軸変位検出用素子から得られる前記振動子のZ軸方向への変位を示す検出値に基づいて、前記振動子のZ軸方向の位相を測定するZ軸位相測定部と、
前記第2の安定振動期βxの期間、前記X軸正側検出用素子の検出信号と前記X軸負側検出用素子の検出信号との差として得られる前記振動子のX軸方向への変位を示す検出値に基づいて、前記振動子のX軸方向の振幅を測定するX軸振幅測定部と、
前記第2の安定振動期βxの期間、前記正側同期検波信号および前記負側同期検波信号を利用することにより、前記X軸正側検出用素子の検出信号と前記X軸負側検出用素子の検出信号との差として得られる前記振動子のX軸方向への変位を示す検出値に基づいて、前記振動子のX軸方向の位相を測定するX軸位相測定部と、
前記Z軸振幅測定部によって測定された振幅および前記Z軸位相測定部によって測定された位相に基づいて、前記Z軸駆動信号発生部が発生する前記Z軸駆動信号DrZの周波数および振幅が所定の基準周波数および基準振幅となるようにフィードバック制御するとともに、前記X軸振幅測定部によって測定された振幅および前記X軸位相測定部によって測定された位相に基づいて、前記X軸駆動信号発生部が発生する前記X軸駆動信号DrXの周波数および振幅が所定の基準周波数および基準振幅となるようにフィードバック制御するフィードバック制御部と、
を備えることを特徴とする角速度センサ。
【請求項7】
請求項6に記載の角速度センサにおいて、
マトリクス変換器が、
「DrZ+DrX」なる和信号を生成してX軸正側駆動用素子に供給する回路と、
「DrZ−DrX」なる差信号を生成してX軸負側駆動用素子に供給する回路と、
「DrZ」をY軸正側駆動用素子に供給する回路と、
「DrZ」をY軸負側駆動用素子に供給する回路と、
を有することを特徴とする角速度センサ。
【請求項8】
請求項5〜7のいずれかに記載の角速度センサにおいて、
角速度検出部が、
与えられた信号の信号値を、正側同期検波信号のパルスが与えられている間だけ積算する正側積算器と、
与えられた信号の信号値を、負側同期検波信号のパルスが与えられている間だけ積算する負側積算器と、
前記正側積算器の積算値と前記負側積算器の積算値との差を出力する差分器と、
によって構成される同期検波回路SDを有し、前記差分器によって求められた差に相当する電気信号を角速度を示す信号として出力することを特徴とする角速度センサ。
【請求項9】
請求項8に記載の角速度センサにおいて、
角速度検出部が、安定振動期の期間だけ検出値を通過させ、これを同期検波回路SDに与えるゲートスイッチSWを、更に有することを特徴とする角速度センサ。
【請求項10】
請求項5〜9のいずれかに記載の角速度センサにおいて、
位相測定部が、
与えられた信号の信号値を、正側同期検波信号のパルスが与えられている間だけ積算する正側積算器と、
与えられた信号の信号値を、負側同期検波信号のパルスが与えられている間だけ積算する負側積算器と、
前記正側積算器の積算値と前記負側積算器の積算値との差を出力する差分器と、
によって構成される同期検波回路SDを有し、前記差分器によって求められた差に相当する電気信号を位相の測定値を示す信号として出力することを特徴とする角速度センサ。
【請求項11】
請求項10に記載の角速度センサにおいて、
位相測定部が、安定振動期の期間だけ検出値を通過させ、これを同期検波回路SDに与えるゲートスイッチSWを、更に有することを特徴とする角速度センサ。
【請求項12】
請求項5〜11のいずれかに記載の角速度センサにおいて、
角速度検出部が、安定振動期でなくなったときに、直前の検出値を保持する機能を有し、次の安定振動期がくるまでの期間、保持していた検出値を継続して出力することを特徴とする角速度センサ。
【請求項13】
請求項5〜12のいずれかに記載の角速度センサにおいて、
フィードバック制御部が、半周期ごとのフィードバック制御を行う際に、当該半周期の振動方向についての振動子の共振周波数をf0とした場合に、駆動信号の周波数が前記f0となるような制御を行うことを特徴とする角速度センサ。
【請求項14】
請求項5〜12のいずれかに記載の角速度センサにおいて、
フィードバック制御部が、半周期ごとのフィードバック制御を行う際に、当該半周期の振動方向についての振動子の共振周波数をf0とした場合に、駆動信号の周波数が前記f0の近傍の所定周波数(前記f0は除く)となるような制御を行うことを特徴とする角速度センサ。
【請求項15】
請求項13または14に記載の角速度センサにおいて、
駆動信号の位相と、位相測定部によって測定された振動子の位相とが、90°の位相差を生じるような周波数を、周波数f0とみなして、駆動信号に対する周波数制御を行うことを特徴とする角速度センサ。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれかに記載の角速度センサにおいて、
駆動用素子群および検出用素子群を構成する個々の素子が、可撓性支持体の上面に固定された圧電素子からなることを特徴とする角速度センサ。
【請求項17】
請求項1〜15のいずれかに記載の角速度センサにおいて、
駆動用素子群および検出用素子群を構成する個々の素子が、可撓性支持体の上面に固定された変位電極と、この変位電極に対向する位置に固定された固定電極と、によって構成される容量素子からなることを特徴とする角速度センサ。
【請求項1】
XYZ三次元座標系における各座標軸まわりの角速度を検出する角速度センサであって、
中心位置にZ軸が通り、XY平面に平行な上面を有する可撓性支持体と、
前記可撓性支持体の下面中央に接合された振動子と、
前記可撓性支持体の周囲を固定する固定部材と、
前記可撓性支持体の上方に配置された駆動用素子群と、
前記可撓性支持体の上方に配置された検出用素子群と、
前記駆動用素子群に対して交流駆動信号を供給して前記振動子を所定の座標軸方向に振動させ、所定のタイミングで前記検出用素子群から得られる検出信号を用いて、各座標軸まわりの角速度を示す電気信号を出力する検出回路と、
を備え、
前記駆動用素子群は、XY平面上に投影したときに、X軸正の領域に配置されたX軸正側駆動用素子と、X軸負の領域に配置されたX軸負側駆動用素子と、Y軸正の領域に配置されたY軸正側駆動用素子と、Y軸負の領域に配置されたY軸負側駆動用素子と、によって構成され、前記X軸正側駆動用素子と前記X軸負側駆動用素子とに交流駆動信号を供給すると前記振動子がX軸に沿って振動し、前記Y軸正側駆動用素子と前記Y軸負側駆動用素子とに交流駆動信号を供給すると前記振動子がY軸に沿って振動し、前記4組の駆動用素子のすべてに交流駆動信号を供給すると前記振動子がZ軸に沿って振動するように、前記可撓性支持体の個々の配置位置にそれぞれ特定の撓みを生じさせる機能を有し、
前記検出用素子群は、XY平面上に投影したときに、X軸正の領域に配置されたX軸正側検出用素子と、X軸負の領域に配置されたX軸負側検出用素子と、Y軸正の領域に配置されたY軸正側検出用素子と、Y軸負の領域に配置されたY軸負側検出用素子と、XZ平面およびYZ平面の双方に関して対称となるように配置されたZ軸変位検出用素子と、によって構成され、前記X軸正側検出用素子と前記X軸負側検出用素子とは、前記振動子がX軸方向に変位したときに前記可撓性支持体に生じる撓みに起因して、当該変位に応じた絶対値をもち互いに逆極性の検出信号を出力し、前記Y軸正側検出用素子と前記Y軸負側検出用素子とは、前記振動子がY軸方向に変位したときに前記可撓性支持体に生じる撓みに起因して、当該変位に応じた絶対値をもち互いに逆極性の検出信号を出力し、前記Z軸変位検出用素子は、前記振動子がZ軸方向に変位したときに前記可撓性支持体に生じる撓みに起因して、当該変位に応じた絶対値をもち変位方向に応じた極性の検出信号を出力する機能を有し、
前記検出回路は、
第1の半周期T1と第2の半周期T2とによって構成される周期Tについて、周期的動作を実行する機能を有し、
前記第1の半周期T1には、特定の駆動素子に前記振動子を第1の座標軸方向に振動させるための駆動信号を供給し、前記第2の半周期T2には、特定の駆動素子に前記振動子を第2の座標軸方向に振動させるための駆動信号を供給し、
前記第1の半周期T1において前記振動子が安定した振動状態を維持すると予想される第1の座標軸方向に関する安定振動期の期間、前記検出用素子群から得られる前記振動子のコリオリ力に起因した前記第2の座標軸方向への変位を示す検出値に基づいて、第3の座標軸まわりの角速度を検出するとともに、前記検出用素子群から得られる前記振動子のコリオリ力に起因した前記第3の座標軸方向への変位を示す検出値に基づいて、前記第2の座標軸まわりの角速度を検出し、
前記第2の半周期T2において前記振動子が安定した振動状態を維持すると予想される第2の座標軸方向に関する安定振動期の期間、前記検出用素子群から得られる前記振動子のコリオリ力に起因した前記第3の座標軸方向への変位を示す検出値に基づいて、前記第1の座標軸まわりの角速度を検出することを特徴とする角速度センサ。
【請求項2】
請求項1に記載の角速度センサにおいて、
検出回路が、検出用素子群から得られる信号に基づいて振動子の位相および振幅を測定する機能と、この測定値に基づいて、振動子の位相および振幅に対するフィードバック制御を行う機能と、を有することを特徴とする角速度センサ。
【請求項3】
請求項1または2に記載の角速度センサにおいて、
特定の振動方向についての振動子の共振周波数をf0とした場合に、振動子を当該振動方向へ振動させるための駆動信号の供給開始時から、振動子が安定した振動状態になると予想される時点までの期間αを、(1/f0)×50≦α≦(1/f0)×125の範囲に設定したことを特徴とする角速度センサ。
【請求項4】
請求項3に記載の角速度センサにおいて、
第1の座標軸方向についての振動子の共振周波数をf1とし、第2の座標軸方向についての振動子の共振周波数をf2とした場合に、第1の半周期T1を、(1/f1)×100≦T1≦(1/f1)×250の範囲に設定し、第2の半周期T2を、(1/f2)×100≦T2≦(1/f2)×250の範囲に設定したことを特徴とする角速度センサ。
【請求項5】
XYZ三次元座標系における各座標軸まわりの角速度を検出する角速度センサであって、
中心位置にZ軸が通り、XY平面に平行な上面を有する可撓性支持体と、
前記可撓性支持体の下面中央に接合された振動子と、
前記可撓性支持体の周囲を固定する固定部材と、
前記可撓性支持体の上方に配置された駆動用素子群と、
前記可撓性支持体の上方に配置された検出用素子群と、
前記検出用素子群から得られる検出信号に基づく制御を行いながら、前記駆動用素子群に対して交流駆動信号を供給して前記振動子を所定の座標軸方向に振動させ、所定のタイミングで前記検出用素子群から得られる検出信号を用いて、各座標軸まわりの角速度を示す電気信号を出力する検出回路と、
を備え、
前記駆動用素子群は、XY平面上に投影したときに、X軸正の領域に配置されたX軸正側駆動用素子と、X軸負の領域に配置されたX軸負側駆動用素子と、Y軸正の領域に配置されたY軸正側駆動用素子と、Y軸負の領域に配置されたY軸負側駆動用素子と、によって構成され、前記X軸正側駆動用素子と前記X軸負側駆動用素子とに交流駆動信号を供給すると前記振動子がX軸に沿って振動し、前記Y軸正側駆動用素子と前記Y軸負側駆動用素子とに交流駆動信号を供給すると前記振動子がY軸に沿って振動し、前記4組の駆動用素子のすべてに交流駆動信号を供給すると前記振動子がZ軸に沿って振動するように、前記可撓性支持体の個々の配置位置にそれぞれ特定の撓みを生じさせる機能を有し、
前記検出用素子群は、XY平面上に投影したときに、X軸正の領域に配置されたX軸正側検出用素子と、X軸負の領域に配置されたX軸負側検出用素子と、Y軸正の領域に配置されたY軸正側検出用素子と、Y軸負の領域に配置されたY軸負側検出用素子と、XZ平面およびYZ平面の双方に関して対称となるように配置されたZ軸変位検出用素子と、によって構成され、前記X軸正側検出用素子と前記X軸負側検出用素子とは、前記振動子がX軸方向に変位したときに前記可撓性支持体に生じる撓みに起因して、当該変位に応じた絶対値をもち互いに逆極性の検出信号を出力し、前記Y軸正側検出用素子と前記Y軸負側検出用素子とは、前記振動子がY軸方向に変位したときに前記可撓性支持体に生じる撓みに起因して、当該変位に応じた絶対値をもち互いに逆極性の検出信号を出力し、前記Z軸変位検出用素子は、前記振動子がZ軸方向に変位したときに前記可撓性支持体に生じる撓みに起因して、当該変位に応じた絶対値をもち変位方向に応じた極性の検出信号を出力する機能を有し、
前記検出回路は、
第1の半周期T1と第2の半周期T2とによって構成される周期Tについて、周期的動作を実行する機能を有し、
前記第1の半周期T1には、所定の周波数および振幅をもった交流信号が配されており、前記第2の半周期T2には、何ら交流信号が配されていない、第1の駆動信号を発生する第1の駆動信号発生部と、
前記第1の半周期T1には、何ら交流信号が配されておらず、前記第2の半周期T2には、所定の周波数および振幅をもった交流信号が配されている、第2の駆動信号を発生する第2の駆動信号発生部と、
前記第1の半周期T1には、前記第1の駆動信号の正側のピークに同期した位置に前記第1の駆動信号の周期の1/2以下のパルス幅をもったパルスが周期的に配され、前記第2の半周期T2には、前記第2の駆動信号の正側のピークに同期した位置に前記第2の駆動信号の周期の1/2以下のパルス幅をもったパルスが周期的に配されている、正側同期検波信号を発生する正側同期検波信号発生部と、
前記第1の半周期T1には、前記第1の駆動信号の負側のピークに同期した位置に前記第1の駆動信号の周期の1/2以下のパルス幅をもったパルスが周期的に配され、前記第2の半周期T2には、前記第2の駆動信号の負側のピークに同期した位置に前記第2の駆動信号の周期の1/2以下のパルス幅をもったパルスが周期的に配されている、負側同期検波信号を発生する負側同期検波信号発生部と、
前記第1の半周期T1において前記振動子が安定した振動状態を維持すると予想される第1の安定振動期を示す第1の検波イネーブル信号を発生する第1の検波イネーブル信号発生部と、
前記第2の半周期T2において前記振動子が安定した振動状態を維持すると予想される第2の安定振動期を示す第2の検波イネーブル信号を発生する第2の検波イネーブル信号発生部と、
前記第1の半周期T1には、前記振動子を第1の座標軸方向に振動させるために必要な駆動用素子に前記第1の駆動信号もしくはその位相反転信号を供給し、前記第2の半周期T2には、前記振動子を第2の座標軸方向に振動させるために必要な駆動用素子に前記第2の駆動信号もしくはその位相反転信号を供給するマトリクス変換器と、
前記第1の安定振動期の期間、前記正側同期検波信号および前記負側同期検波信号を利用することにより前記検出用素子群から得られる前記振動子のコリオリ力に起因した前記第2の座標軸方向への変位を示す検出値に基づいて、第3の座標軸まわりの角速度を示す電気信号を出力する第1の角速度検出部と、
前記第1の安定振動期の期間、前記正側同期検波信号および前記負側同期検波信号を利用することにより前記検出用素子群から得られる前記振動子のコリオリ力に起因した前記第3の座標軸方向への変位を示す検出値に基づいて、前記第2の座標軸まわりの角速度を示す電気信号を出力する第2の角速度検出部と、
前記第2の安定振動期の期間、前記正側同期検波信号および前記負側同期検波信号を利用することにより前記検出用素子群から得られる前記振動子のコリオリ力に起因した前記第3の座標軸方向への変位を示す検出値に基づいて、前記第1の座標軸まわりの角速度を示す電気信号を出力する第3の角速度検出部と、
前記第1の安定振動期の期間、前記検出用素子群から得られる前記振動子の前記第1の座標軸方向への変位を示す検出値に基づいて、前記振動子の振幅を測定する第1の振幅測定部と、
前記第1の安定振動期の期間、前記正側同期検波信号および前記負側同期検波信号を利用することにより前記検出用素子群から得られる前記振動子の前記第1の座標軸方向への変位を示す検出値に基づいて、前記振動子の位相を測定する第1の位相測定部と、
前記第2の安定振動期の期間、前記検出用素子群から得られる前記振動子の前記第2の座標軸方向への変位を示す検出値に基づいて、前記振動子の振幅を測定する第2の振幅測定部と、
前記第2の安定振動期の期間、前記正側同期検波信号および前記負側同期検波信号を利用することにより前記検出用素子群から得られる前記振動子の前記第2の座標軸方向への変位を示す検出値に基づいて、前記振動子の位相を測定する第2の位相測定部と、
前記第1の振幅測定部によって測定された振幅および前記第1の位相測定部によって測定された位相に基づいて、前記第1の駆動信号発生部が発生する前記第1の駆動信号の周波数および振幅が所定の基準周波数および基準振幅となるようにフィードバック制御するとともに、前記第2の振幅測定部によって測定された振幅および前記第2の位相測定部によって測定された位相に基づいて、前記第2の駆動信号発生部が発生する前記第2の駆動信号の周波数および振幅が所定の基準周波数および基準振幅となるようにフィードバック制御するフィードバック制御部と、
を備えることを特徴とする角速度センサ。
【請求項6】
XYZ三次元座標系における各座標軸まわりの角速度を検出する角速度センサであって、
中心位置にZ軸が通り、XY平面に平行な上面を有する可撓性支持体と、
前記可撓性支持体の下面中央に接合された振動子と、
前記可撓性支持体の周囲を固定する固定部材と、
前記可撓性支持体の上方に配置された駆動用素子群と、
前記可撓性支持体の上方に配置された検出用素子群と、
前記検出用素子群から得られる検出信号に基づく制御を行いながら、前記駆動用素子群に対して交流駆動信号を供給して前記振動子を所定の座標軸方向に振動させ、所定のタイミングで前記検出用素子群から得られる検出信号を用いて、各座標軸まわりの角速度を示す電気信号を出力する検出回路と、
を備え、
前記駆動用素子群は、XY平面上に投影したときに、X軸正の領域に配置されたX軸正側駆動用素子と、X軸負の領域に配置されたX軸負側駆動用素子と、Y軸正の領域に配置されたY軸正側駆動用素子と、Y軸負の領域に配置されたY軸負側駆動用素子と、によって構成され、前記X軸正側駆動用素子と前記X軸負側駆動用素子とに交流駆動信号を供給すると前記振動子がX軸に沿って振動し、前記4組の駆動用素子のすべてに交流駆動信号を供給すると前記振動子がZ軸に沿って振動するように、前記可撓性支持体の個々の配置位置にそれぞれ特定の撓みを生じさせる機能を有し、
前記検出用素子群は、XY平面上に投影したときに、X軸正の領域に配置されたX軸正側検出用素子と、X軸負の領域に配置されたX軸負側検出用素子と、Y軸正の領域に配置されたY軸正側検出用素子と、Y軸負の領域に配置されたY軸負側検出用素子と、XZ平面およびYZ平面の双方に関して対称となるように配置されたZ軸変位検出用素子と、によって構成され、前記X軸正側検出用素子と前記X軸負側検出用素子とは、前記振動子がX軸方向に変位したときに前記可撓性支持体に生じる撓みに起因して、当該変位に応じた絶対値をもち互いに逆極性の検出信号を出力し、前記Y軸正側検出用素子と前記Y軸負側検出用素子とは、前記振動子がY軸方向に変位したときに前記可撓性支持体に生じる撓みに起因して、当該変位に応じた絶対値をもち互いに逆極性の検出信号を出力し、前記Z軸変位検出用素子は、前記振動子がZ軸方向に変位したときに前記可撓性支持体に生じる撓みに起因して、当該変位に応じた絶対値をもち変位方向に応じた極性の検出信号を出力する機能を有し、
前記検出回路は、
第1の半周期Tzと第2の半周期Txとによって構成される周期Tについて、周期的動作を実行する機能を有し、
前記第1の半周期Tzには、所定の周波数fzおよび振幅Azをもった交流信号が配されており、前記第2の半周期Txには、何ら交流信号が配されていない、Z軸駆動信号DrZを発生するZ軸駆動信号発生部と、
前記第1の半周期Tzには、何ら交流信号が配されておらず、前記第2の半周期Txには、所定の周波数fxおよび振幅Axをもった交流信号が配されている、X軸駆動信号DrXを発生するX軸駆動信号発生部と、
前記第1の半周期Tzには、前記Z軸駆動信号DrZの正側のピークに同期した位置に前記Z軸駆動信号DrZの周期の1/2以下のパルス幅をもったパルスが周期的に配され、前記第2の半周期Txには、前記X軸駆動信号DrXの正側のピークに同期した位置に前記X軸駆動信号DrXの周期の1/2以下のパルス幅をもったパルスが周期的に配されている、正側同期検波信号SdAを発生する正側同期検波信号発生部と、
前記第1の半周期Tzには、前記Z軸駆動信号DrZの負側のピークに同期した位置に前記Z軸駆動信号DrZの周期の1/2以下のパルス幅をもったパルスが周期的に配され、前記第2の半周期Txには、前記X軸駆動信号DrXの負側のピークに同期した位置に前記X軸駆動信号DrXの周期の1/2以下のパルス幅をもったパルスが周期的に配されている、負側同期検波信号SdBを発生する負側同期検波信号発生部と、
前記第1の半周期Tzにおいて前記振動子がZ軸に沿って安定した振動状態を維持すると予想される第1の安定振動期βzを示すZ軸検波イネーブル信号EnZを発生するZ軸検波イネーブル信号発生部と、
前記第2の半周期Txにおいて前記振動子がX軸に沿って安定した振動状態を維持すると予想される第2の安定振動期βxを示すX軸検波イネーブル信号EnXを発生するX軸検波イネーブル信号発生部と、
前記第1の半周期Tzには、前記4組の駆動用素子のすべてに前記Z軸駆動信号DrZを供給し、前記第2の半周期Txには、前記X軸正側駆動用素子に前記X軸駆動信号DrXを供給し前記X軸負側駆動用素子に前記X軸駆動信号DrXの位相反転信号を供給するマトリクス変換器と、
前記第1の安定振動期βzの期間、前記正側同期検波信号および前記負側同期検波信号を利用することにより、前記X軸正側検出用素子の検出信号と前記X軸負側検出用素子の検出信号との差を示す検出値に基づいて、Y軸まわりの角速度ωyを示す電気信号を出力するY軸まわり角速度検出部と、
前記第1の安定振動期βzの期間、前記正側同期検波信号および前記負側同期検波信号を利用することにより、前記Y軸正側検出用素子の検出信号と前記Y軸負側検出用素子の検出信号との差を示す検出値に基づいて、X軸まわりの角速度ωxを示す電気信号を出力するX軸まわり角速度検出部と、
前記第2の安定振動期βxの期間、前記正側同期検波信号および前記負側同期検波信号を利用することにより、前記Y軸正側検出用素子の検出信号と前記Y軸負側検出用素子の検出信号との差を示す検出値に基づいて、Z軸まわりの角速度ωzを示す電気信号を出力するZ軸まわり角速度検出部と、
前記第1の安定振動期βzの期間、前記Z軸変位検出用素子から得られる前記振動子のZ軸方向への変位を示す検出値に基づいて、前記振動子のZ軸方向の振幅を測定するZ軸振幅測定部と、
前記第1の安定振動期βzの期間、前記正側同期検波信号および前記負側同期検波信号を利用することにより、前記Z軸変位検出用素子から得られる前記振動子のZ軸方向への変位を示す検出値に基づいて、前記振動子のZ軸方向の位相を測定するZ軸位相測定部と、
前記第2の安定振動期βxの期間、前記X軸正側検出用素子の検出信号と前記X軸負側検出用素子の検出信号との差として得られる前記振動子のX軸方向への変位を示す検出値に基づいて、前記振動子のX軸方向の振幅を測定するX軸振幅測定部と、
前記第2の安定振動期βxの期間、前記正側同期検波信号および前記負側同期検波信号を利用することにより、前記X軸正側検出用素子の検出信号と前記X軸負側検出用素子の検出信号との差として得られる前記振動子のX軸方向への変位を示す検出値に基づいて、前記振動子のX軸方向の位相を測定するX軸位相測定部と、
前記Z軸振幅測定部によって測定された振幅および前記Z軸位相測定部によって測定された位相に基づいて、前記Z軸駆動信号発生部が発生する前記Z軸駆動信号DrZの周波数および振幅が所定の基準周波数および基準振幅となるようにフィードバック制御するとともに、前記X軸振幅測定部によって測定された振幅および前記X軸位相測定部によって測定された位相に基づいて、前記X軸駆動信号発生部が発生する前記X軸駆動信号DrXの周波数および振幅が所定の基準周波数および基準振幅となるようにフィードバック制御するフィードバック制御部と、
を備えることを特徴とする角速度センサ。
【請求項7】
請求項6に記載の角速度センサにおいて、
マトリクス変換器が、
「DrZ+DrX」なる和信号を生成してX軸正側駆動用素子に供給する回路と、
「DrZ−DrX」なる差信号を生成してX軸負側駆動用素子に供給する回路と、
「DrZ」をY軸正側駆動用素子に供給する回路と、
「DrZ」をY軸負側駆動用素子に供給する回路と、
を有することを特徴とする角速度センサ。
【請求項8】
請求項5〜7のいずれかに記載の角速度センサにおいて、
角速度検出部が、
与えられた信号の信号値を、正側同期検波信号のパルスが与えられている間だけ積算する正側積算器と、
与えられた信号の信号値を、負側同期検波信号のパルスが与えられている間だけ積算する負側積算器と、
前記正側積算器の積算値と前記負側積算器の積算値との差を出力する差分器と、
によって構成される同期検波回路SDを有し、前記差分器によって求められた差に相当する電気信号を角速度を示す信号として出力することを特徴とする角速度センサ。
【請求項9】
請求項8に記載の角速度センサにおいて、
角速度検出部が、安定振動期の期間だけ検出値を通過させ、これを同期検波回路SDに与えるゲートスイッチSWを、更に有することを特徴とする角速度センサ。
【請求項10】
請求項5〜9のいずれかに記載の角速度センサにおいて、
位相測定部が、
与えられた信号の信号値を、正側同期検波信号のパルスが与えられている間だけ積算する正側積算器と、
与えられた信号の信号値を、負側同期検波信号のパルスが与えられている間だけ積算する負側積算器と、
前記正側積算器の積算値と前記負側積算器の積算値との差を出力する差分器と、
によって構成される同期検波回路SDを有し、前記差分器によって求められた差に相当する電気信号を位相の測定値を示す信号として出力することを特徴とする角速度センサ。
【請求項11】
請求項10に記載の角速度センサにおいて、
位相測定部が、安定振動期の期間だけ検出値を通過させ、これを同期検波回路SDに与えるゲートスイッチSWを、更に有することを特徴とする角速度センサ。
【請求項12】
請求項5〜11のいずれかに記載の角速度センサにおいて、
角速度検出部が、安定振動期でなくなったときに、直前の検出値を保持する機能を有し、次の安定振動期がくるまでの期間、保持していた検出値を継続して出力することを特徴とする角速度センサ。
【請求項13】
請求項5〜12のいずれかに記載の角速度センサにおいて、
フィードバック制御部が、半周期ごとのフィードバック制御を行う際に、当該半周期の振動方向についての振動子の共振周波数をf0とした場合に、駆動信号の周波数が前記f0となるような制御を行うことを特徴とする角速度センサ。
【請求項14】
請求項5〜12のいずれかに記載の角速度センサにおいて、
フィードバック制御部が、半周期ごとのフィードバック制御を行う際に、当該半周期の振動方向についての振動子の共振周波数をf0とした場合に、駆動信号の周波数が前記f0の近傍の所定周波数(前記f0は除く)となるような制御を行うことを特徴とする角速度センサ。
【請求項15】
請求項13または14に記載の角速度センサにおいて、
駆動信号の位相と、位相測定部によって測定された振動子の位相とが、90°の位相差を生じるような周波数を、周波数f0とみなして、駆動信号に対する周波数制御を行うことを特徴とする角速度センサ。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれかに記載の角速度センサにおいて、
駆動用素子群および検出用素子群を構成する個々の素子が、可撓性支持体の上面に固定された圧電素子からなることを特徴とする角速度センサ。
【請求項17】
請求項1〜15のいずれかに記載の角速度センサにおいて、
駆動用素子群および検出用素子群を構成する個々の素子が、可撓性支持体の上面に固定された変位電極と、この変位電極に対向する位置に固定された固定電極と、によって構成される容量素子からなることを特徴とする角速度センサ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2011−38955(P2011−38955A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−188218(P2009−188218)
【出願日】平成21年8月17日(2009.8.17)
【出願人】(390013343)株式会社ワコー (34)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年8月17日(2009.8.17)
【出願人】(390013343)株式会社ワコー (34)
【Fターム(参考)】
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