説明

触媒、窒素酸化物浄化用素子、及び窒素酸化物浄化用システム

【課題】200℃以下、あるいは500℃以上のいずれの排ガス温度領域においても窒素酸化物の浄化性能が高く、かつ水蒸気繰り返し吸脱着に対する耐久性も高い排気ガス浄化用触媒を提供する。
【解決手段】骨格構造に少なくともアルミニウム原子とリン原子とケイ素原子とを含むゼオライトに金属を担持してなる触媒であって、吸湿処理した後固体29Si−DD/MAS−NMRスペクトルを測定した際、−130〜−50ppmの信号強度の積分強度面積に対して、−130〜−92.5ppmの信号強度の積分強度面積が、41%以上である触媒。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に窒素酸化物浄化用に適した触媒に関するものであり、特にディーゼルエンジン等の内燃機関から排出される排ガス中に含まれる窒素酸化物を効率的に分解して浄化することができる、ゼオライトを含む触媒(以下、単に「ゼオライト触媒」と称す場合がある。)と、このゼオライト触媒を用いた窒素酸化物浄化用素子、及びそれを用いたシステムに関する。なお、本発明において、「窒素酸化物浄化」とは、窒素酸化物を還元して窒素と酸素にすることをいう。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車、特に窒素酸化物の浄化が難しいディーゼル車の排ガス処理等において、窒素酸化物等の選択的触媒還元(Selective Catalytic Reduction:SCR)触媒として金属を担持したゼオライト触媒が提案されている。
例えば、特許文献1には、特定の物性を有するシリコアルミノフォスフェートゼオライトに、特定の状態の金属を担持したSCR触媒が提案されている。
また、特許文献2には、特定のテンプレートを用いて合成したSAPO−34に銅をイオン交換法によって担持したSCR触媒が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2010/084930号公報
【特許文献2】国際公開第2009/099937号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の触媒は、200℃以下の排ガス温度において高いNOx分解活性を示し、また、触媒の実使用時、水の吸着、脱着が繰り返される条件下において長期の耐久性を有する。しかし、500℃以上の高温におけるNOxの分解活性が不十分であるという問題があった。
一方、特許文献2に記載の触媒は、500℃以上の高温において高いNOx分解活性を有するが、200℃以下の排ガス温度におけるNOx分解活性は不十分であり、また特に水蒸気繰り返し吸脱着に対する耐久性が著しく低いという欠点があった。
【0005】
本発明は、200℃以下、あるいは500℃以上のいずれの排ガス温度領域においても窒素酸化物の浄化性能が高く、かつ水蒸気繰り返し吸脱着に対する耐久性も高く、排気ガス浄化用触媒として有用な触媒を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意検討の結果、シリコアルミノフォスフェートゼオライトに金属を担持させた窒素酸化物浄化用触媒において、ゼオライト中のシリコンが特定の状態にあるものが、従来の窒素酸化物浄化用触媒に比べて200℃以下、あるいは500℃以上のいずれの排ガス温度領域においてもNOxガスの浄化性能に優れ、また水蒸気の繰り返し吸脱着に対して高い耐久性を示すことを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
すなわち、本願発明の要旨は下記に存する。
【0008】
[1] 骨格構造に少なくともアルミニウム原子とリン原子とケイ素原子とを含むゼオライトに金属を担持してなる触媒であって、吸湿処理した後固体29Si−DD/MAS−NMRスペクトルを測定した際、−130〜−50ppmの信号強度の積分強度面積に対して、−130〜−92.5ppmの信号強度の積分強度面積が、41%以上である触媒。
【0009】
[2] 骨格構造に少なくともアルミニウム原子とリン原子とケイ素原子とを含むゼオライトに金属を担持した触媒であって、吸湿処理した後固体29Si−DD/MAS−NMRスペクトルを測定した際、−130〜−50ppmの信号強度の積分強度面積に対して、−130〜−100ppmの信号強度の積分強度面積が、17%以上である触媒。
【0010】
[3] 骨格構造に少なくともアルミニウム原子とリン原子とケイ素原子とを含むゼオライトに金属を担持した触媒であって、吸湿処理後の固体29Si−DD/MAS−NMRスペクトルの−87.5ppm〜−97.5ppmの範囲におけるピークトップ位置から、乾燥処理後の固体29Si−DD/MAS−NMRスペクトルの−87.5ppm〜−97.5ppmの範囲におけるピークトップ位置を引いた差が、4.5ppm以内である触媒。
【0011】
[4] 前記ゼオライトの構造が、IZAが定めるコードでCHAである[1]ないし[3]のいずれかに記載の触媒。
【0012】
[5] 窒素酸化物浄化用である[1]ないし[4]のいずれかに記載の触媒。
【0013】
[6] 前記ゼオライトの骨格構造に含まれるケイ素原子、アルミニウム原子、及びリン原子の合計に対するケイ素原子の存在割合をx、アルミニウム原子の存在割合をy、リン原子の存在割合をzとしたとき、xが0.1以上、0.3以下であり、かつyが0.2以上、0.6以下であり、かつzが0.2以上、0.6以下である[1]ないし[5]のいずれかに記載の触媒。
【0014】
[7] ケイ素原子原料、アルミニウム原子原料、リン原子原料及びテンプレートを混合した後水熱合成してゼオライトを製造する際に、テンプレートとして、下記(1)及び(2)の2つの群の各群につき1種以上の化合物を選択したテンプレートを用いて製造された[1]ないし[6]のいずれかに記載の触媒。
(1) ヘテロ原子として窒素原子を含む脂環式複素環化合物
(2) アルキルアミン
【0015】
[9] [1]ないし[8]のいずれかに記載の触媒をハニカム状の成形体に塗布し得られる窒素酸化物浄化用素子。
【0016】
[10] [1]ないし[8]のいずれかに記載の触媒を含む混合物を成形して得られる窒素酸化物浄化用素子。
【0017】
[11] [9]又は[10]に記載の窒素酸化物浄化用素子を用いる窒素酸化物浄化システム。
【0018】
[12] ケイ素原子原料、アルミニウム原子原料、リン原子原料及びテンプレートを混合した後水熱合成することにより、骨格構造に少なくともアルミニウム原子とリン原子とを含むゼオライトを製造し、該ゼオライトに、金属を担持する触媒の製造方法であって、該ゼオライトの製造に当たり、
テンプレートとして、(1)ヘテロ原子として窒素を含む脂環式複素環化合物と、(2)アルキルアミンの2つの群から各群につき1種以上の化合物を選択したテンプレートを用い、
ケイ素原子原料、アルミニウム原子原料及びリン原子原料の混合割合を、水性ゲルの組成におけるアルミニウム原子原料、ケイ素原子原料及びリン源の酸化物換算のモル比で、SiO/Alの値が0.5以上、かつP/Alの値が1.1以下とすることを特徴とする触媒の製造方法。
【0019】
[13] 担持金属の金属源、及びゼオライトを分散媒と混合した混合スラリーを調製し、該混合スラリーの分散媒を除去して得られた粉体を焼成することを特徴とする[12]に記載の触媒の製造方法。
【0020】
[14] 前記金属源が銅及び/又は鉄の塩であることを特徴とする[13]に記載の触媒の製造方法。
【0021】
[15] 前記混合スラリーの分散媒を除去するのに要する時間が、60分以下であることを特徴とする[13]又は[14]に記載の触媒の製造方法。
【0022】
[16] 前記混合スラリーを均一に噴霧した状態を経て、熱風と接触させ乾燥して分散媒を除去することを特徴とする[13]ないし[15]のいずれかに記載の触媒の製造方法。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、200℃以下、あるいは500℃以上のいずれの排ガス温度領域においてもNOxガスの浄化性能に優れ、また水蒸気の繰り返し吸脱着に対して高い耐久性を示す触媒と、この触媒を用いた、窒素酸化物浄化性能及びその維持特性に優れた窒素酸化物浄化用素子及び窒素酸化物浄化システムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】実施例1で製造されたSCR触媒の吸湿処理後及び乾燥処理後の固体29Si−DD/MAS−NMRの測定結果を示すチャートである。
【図2】実施例2で製造されたSCR触媒の吸湿処理後及び乾燥処理後の固体29Si−DD/MAS−NMRの測定結果を示すチャートである。
【図3】比較例1で製造されたSCR触媒の吸湿処理後及び乾燥処理後の固体29Si−DD/MAS−NMRの測定結果を示すチャートである。
【図4】比較例2で製造されたSCR触媒の吸湿処理後及び乾燥処理後の固体29Si−DD/MAS−NMRの測定結果を示すチャートである。
【図5】比較例3で製造されたSCR触媒の吸湿処理後及び乾燥処理後の固体29Si−DD/MAS−NMRの測定結果を示すチャートである。
【図6】実施例で用いた触媒の水蒸気繰り返し吸脱着試験装置の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明するが、以下の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はこれらの内容に特定はされない。
【0026】
[触媒]
本発明の触媒は、骨格構造に少なくともアルミニウム原子とリン原子とケイ素原子とを含むゼオライトに金属を担持してなる触媒であって、下記(i)〜(iii)のいずれか1以上を満たすものである。
(i) 吸湿処理した後固体29Si−DD/MAS−NMRスペクトルを測定した際、−130〜−50ppmの信号強度の積分強度面積に対して、−130〜−92.5ppmの信号強度の積分強度面積が、41%以上(以下、「条件(i)」と称す場合がある。)
(ii) 吸湿処理した後固体29Si−DD/MAS−NMRスペクトルを測定した際、−130〜−50ppmの信号強度の積分強度面積に対して、−130〜−100ppmの信号強度の積分強度面積が、17%以上(以下、「条件(ii)」と称す場合がある。)
(iii) 吸湿処理後の固体29Si−DD/MAS−NMRスペクトルの−87.5ppm〜−97.5ppmの範囲におけるピークトップ位置から、乾燥処理後の固体29Si−DD/MAS−NMRスペクトルの−87.5ppm〜−97.5ppmの範囲におけるピークトップ位置を引いた差が、4.5ppm以内(以下、「条件(iii)」と称す場合がある。)
【0027】
<ゼオライト>
本発明で使用するゼオライトは、骨格構造に少なくともケイ素原子、アルミニウム原子、リン原子を含むゼオライト(以下、単に「ゼオライト」と称す場合がある。)であって、シリコアルミノフォスフェート(SAPO)と称されるものである。
【0028】
本発明において用いられるゼオライトの骨格構造に含まれるアルミニウム原子、リン原子及びケイ素原子の存在割合は、下記式(I)、(II)及び(III)を満たすことが好ましい。
0.1≦x≦0.3 ・・・(I)
(式中、xは骨格構造中のケイ素原子とアルミニウム原子とリン原子の合計に対するケイ素原子のモル比を示す)
0.2≦y≦0.6 ・・・(II)
(式中、yは骨格構造中のケイ素原子とアルミニウム原子とリン原子の合計に対するアルミニウム原子のモル比を示す)
0.2≦z≦0.6 ・・・(III)
(式中、zは骨格構造中のケイ素原子とアルミニウム原子とリン原子の合計に対するリン原子のモル比を示す)
【0029】
xの値としては、通常0.1以上、好ましくは0.12以上、より好ましくは0.14以上であり、通常0.3以下、好ましくは0.2以下、より好ましくは0.18以下である。xの値が上記下限値より小さいと、金属を担持して窒素酸化物浄化用触媒としたとき、排ガス温度500℃以上において窒素酸化物浄化性能が十分でない場合がある。xの値が上記上限値より大きいと、合成時に不純物が混入しやすくなる傾向がある。
さらに、yは通常0.2以上、好ましくは0.35以上、より好ましくは0.40以上であり、通常0.6以下、好ましくは0.55以下である。yの値が上記下限値より小さいまたは上記上限値より大きいと、合成時に不純物が混入しやすくなる傾向がある。
さらに、zは通常0.2以上、好ましくは0.25以上、より好ましくは0.30以上であり、通常0.6以下、好ましくは0.50以下、より好ましくは0.40以下である。zの値が上記下限値より小さいと、合成時に不純物が混入しやすくなる傾向があり、zの値が上記上限値より大きいと、金属を担持して窒素酸化物浄化用触媒としたとき、排ガス温度500℃以上における窒素酸化物浄化性能が十分でない場合がある。
【0030】
また、本発明におけるゼオライトの骨格構造内には、アルミニウム、リン及びケイ素原子以外の他の原子が含まれていてもよい。含まれていてもよい他の原子としては、リチウム、マグネシウム、チタン、ジルコニウム、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、パラジウム、銅、亜鉛、ガリウム、ゲルマニウム、砒素、スズ、カルシウム、硼素などの原子の1種又は2種以上が挙げられ、好ましくは、鉄原子、銅原子、ガリウム原子が挙げられる。
【0031】
これらの他の原子の含有量はゼオライトの骨格構造中に、ケイ素原子とアルミニウム原子とリン原子の合計に対するモル比で、0.3以下であることが好ましく、さらに好ましくは0.1以下である。
【0032】
なお、上記のゼオライトの骨格構造中の原子の割合は、元素分析により決定するが、本発明における元素分析は、試料を塩酸水溶液で加熱溶解させた後、誘導結合プラズマ(ICP:Inductively Coupled Plasma)発光分光分析により求めるものである。
【0033】
<骨格構造>
ゼオライトは通常結晶性であり、メタン型のSiO4四面体あるいはAlO4四面体あるいはPO4四面体(以下、これらを一般化して「TO4」とし、含有する酸素原子以外の原子をT原子という。)が、各頂点の酸素原子を共有し連結した規則的な網目構造を持つ。T原子としてはAl、P、Si以外の原子も知られている。網目構造の基本単位のひとつに、8個のTO4四面体が環状に連結したものがあり、これは8員環と呼ばれている。同様に、6員環、10員環などもゼオライト構造の基本単位となる。
【0034】
なお、本発明におけるゼオライトの構造は、X線回折法(X−ray diffraction、以下XRD)により決定する。
【0035】
本発明におけるゼオライトの構造は、International Zeolite Association(IZA)が定めるコードで示すと、AEI、AFR、AFS、AFT、AFX、AFY、AHT、CHA、DFO、ERI、FAU、GIS、LEV、LTA、VFIのいずれかが好ましく、AEI、AFX、GIS、CHA、VFI、AFS、LTA、FAU、AFYのいずれかがさらに好ましく、燃料由来の炭化水素を吸着しにくいことからCHA構造を有するゼオライトが最も好ましい。
【0036】
本発明におけるゼオライト類のフレームワーク密度は、特に限定されるものではないが、通常13.0T/nm以上、好ましくは、13.5T/nm以上、より好ましくは14.0T/nm以上であり、通常20.0T/nm以下、好ましくは19.0T/nm以下、より好ましくは17.5T/nm以下である。なお、フレームワーク密度(T/nm)は、ゼオライトの単位体積nmあたり存在するT原子(ゼオライトの骨格構造を構成する酸素原子以外の原子(T原子))の数を意味し、この値はゼオライトの構造により決まるものである。
ゼオライトのフレームワーク密度が上記下限値未満では、構造が不安定となる場合があったり、耐久性が低下する傾向があり、一方、上記上限値を超過すると吸着量、触媒活性が小さくなる場合があったり、触媒としての使用に適さない場合がある。
【0037】
<粒子径>
本発明におけるゼオライトの粒子径について特に限定はないが、通常1μm以上であり、さらに好ましくは2μm以上、より好ましくは3μm以上であり、通常15μm以下であり、好ましくは10μm以下である。
なお、本発明におけるゼオライトの粒子径とは、下記に説明するゼオライトの製造において、テンプレートを除去した後の粒子径として測定した値をいう。また、この粒子径とは、電子顕微鏡でゼオライトを観察した際の、任意の10〜30点のゼオライト粒子の一次粒子径の平均値をいう。
【0038】
{ゼオライトの製造方法}
本発明におけるゼオライトはそれ自体既知の化合物であり、通常用いられる方法に準じて製造することができる。
【0039】
本発明におけるゼオライトの製造方法は、特に限定されないが、例えば特開2003−183020号公報、国際公開WO2010/084930号パンフレット、特公平4−37007号公報、特公平5−21844号公報、特公平5−51533号公報、米国特許第4440871号明細書等に記載の方法に準じて製造することができる。
【0040】
本発明に用いられるゼオライトは、通常、アルミニウム原子原料、リン原子原料、ケイ素原子原料、及び必要に応じてテンプレートを混合した後、水熱合成することによって得られる。テンプレートを混合した場合は、水熱合成後に通常テンプレートを除去する操作を行う。
【0041】
<アルミニウム原子原料>
本発明におけるゼオライトのアルミニウム原子原料は特に限定されず、通常、擬ベーマイト、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウムトリエトキシド等のアルミニウムアルコキシド、水酸化アルミニウム、アルミナゾル、アルミン酸ナトリウム等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。取り扱いが容易な点及び反応性が高い点でアルミニウム源としては擬ベーマイトが好ましい。
【0042】
<リン原子原料>
本発明におけるゼオライトのリン原子原料は通常リン酸であるが、リン酸アルミニウムを用いてもよい。リン原子原料は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0043】
<ケイ素原子原料>
本発明におけるゼオライトのケイ素原子原料は特に限定されず、通常、ヒュームドシリカ、シリカゾル、コロイダルシリカ、水ガラス、ケイ酸エチル、ケイ酸メチル等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。高純度で、反応性が高い点でヒュームドシリカが好ましい。
【0044】
<テンプレート>
本発明のゼオライトの製造に用いられるテンプレートとしては、公知の方法で使用される種々のテンプレートが使用でき、以下に示す(1)ヘテロ原子として窒素原子を含む脂環式複素環化合物と(2)アルキルアミンとの2つの群から、各群につき1種以上の化合物を選択して用いることが好ましい。
【0045】
(1)ヘテロ原子として窒素原子を含む脂環式複素環化合物
ヘテロ原子として窒素原子を含む脂環式複素環化合物の複素環は通常5〜7員環であって、好ましくは6員環である。複素環に含まれるヘテロ原子の個数は通常3個以下、好ましくは2個以下である。窒素原子以外のヘテロ原子は任意であるが、窒素原子に加えて酸素原子を含むものが好ましい。ヘテロ原子の位置は特に限定されないが、ヘテロ原子が相互に隣り合わないものが好ましい。
【0046】
また、ヘテロ原子として窒素原子を含む脂環式複素環化合物の分子量は、通常250以下、好ましくは200以下、さらに好ましくは150以下であり、また通常30以上、好ましくは40以上、さらに好ましくは50以上である。
【0047】
このようなヘテロ原子として窒素原子を含む脂環式複素環化合物として、モルホリン、N−メチルモルホリン、ピペリジン、ピペラジン、N,N’−ジメチルピペラジン、1,4−ジアザビシクロ(2,2,2)オクタン、N−メチルピペリジン、3−メチルピペリジン、キヌクリジン、ピロリジン、N−メチルピロリドン、ヘキサメチレンイミンなどが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。これらのうち、モルホリン、ヘキサメチレンイミン、ピペリジンが好ましく、モルホリンが特に好ましい。
【0048】
(2)アルキルアミン
アルキルアミンのアルキル基は、通常、鎖状アルキル基であって、アミン1分子中に含まれるアルキル基の数は特に限定されるものではないが、3個が好ましい。
また、アルキルアミンのアルキル基は一部水酸基等の置換基を有していてもよい。
アルキルアミンのアルキル基の炭素数は4以下が好ましく、1分子中の全アルキル基の炭素数の合計が10以下がより好ましい。
また、アルキルアミンの分子量は通常250以下、好ましくは200以下、さらに好ましくは150以下である。
【0049】
このようなアルキルアミンとしては、ジ−n−プロピルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−イソプロピルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、ジ−n−ブチルアミン、ネオペンチルアミン、ジ−n−ペンチルアミン、イソプロピルアミン、t−ブチルアミン、エチレンジアミン、ジ−イソプロピル−エチルアミン、N−メチル−n−ブチルアミン等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。これらのうち、ジ−n−プロピルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−イソプロピルアミン、トリエチルアミン、ジ−n−ブチルアミン、イソプロピルアミン、t−ブチルアミン、エチレンジアミン、ジ−イソプロピル−エチルアミン、N−メチル−n−ブチルアミンが好ましく、トリエチルアミンが特に好ましい。
【0050】
上記(1)及び(2)のテンプレートの好ましい組み合わせとしては、モルホリンとトリエチルアミンを含む組合せである。
【0051】
テンプレートの混合比率は、条件に応じて選択する必要がある。
2種のテンプレートを混合して用いるときは、通常、混合させる2種のテンプレートのモル比が1:20から20:1、好ましくは1:10から10:1、さらに好ましくは1:5から5:1である。
3種のテンプレートを混合して用いるときは、通常、3つ目のテンプレートのモル比は、上記で混合された(1)と(2)の2種のテンプレートの合計に対して1:20から20:1、好ましくは1:10から10:1、さらに好ましくは1:5から5:1である。
また、2種以上のテンプレートの混合比は特に限定されるものではなく、条件に応じて適宜選ぶことができるが、例えば、モルホリンとトリエチルアミンを用いる場合、モルホリン/トリエチルアミンのモル比は通常0.05以上、好ましくは0.1以上、さらに好ましくは0.2以上であり、通常20以下、好ましくは10以下、さらに好ましくは5以下である。
【0052】
テンプレートには、上記(1)及び(2)以外のその他のテンプレートが入っていてもよいが、その他のテンプレートはテンプレート全体に対してモル比で通常20%以下であり、10%以下が好ましい。
【0053】
本発明で用いるゼオライトの製造に、テンプレートを用いると、得られるゼオライト中のSi含有量をコントロールすることが可能であり、窒素酸化物浄化用触媒として好ましいSi含有量、Si存在状態にすることができる。その理由は明らかではないが、以下のような事が推察される。
【0054】
例えば、CHA型構造のSAPOを合成する場合、テンプレートとして(1)ヘテロ原子として窒素原子を含む脂環式複素環化合物、例えばモルホリンを用いると、Si含有量の多いSAPOを比較的容易に合成しうる。しかしながら、Si含有量の少ないSAPOを合成しようとすると、デンス成分やアモルファス成分が多く、結晶化が困難である。一方、テンプレートとして(2)アルキルアミン、例えばトリエチルアミンを用いると、CHA構造のSAPOも限られた条件では合成可能であるが、通常、種々の構造のSAPOが混在しやすい。しかし、逆に言えば、デンス成分やアモルファス成分では無く、結晶構造のものにはなりやすい。すなわち、上記(1),(2)のそれぞれのテンプレートはCHA構造を導くための特徴、SAPOの結晶化を促進させる特徴などを有している。これらの特徴を組み合わせる事により、相乗効果を発揮させ、(1)又は(2)のテンプレート単独では実現できなかった効果を得ることができると考えられる。
【0055】
<水熱合成によるゼオライトの合成>
本発明で用いるゼオライトの製造には、まず、上述のケイ素原子原料、アルミニウム原子原料、リン原子原料、テンプレート及び水を混合して水性ゲルを調合する。その混合順序には制限がなく、用いる条件により適宜選択すればよいが、通常は、まず水にリン原子原料、アルミニウム原子原料を混合し、これにケイ素原子原料とテンプレートを混合する。
【0056】
前記(1),(2)の2つの群から各群につき1種以上選択されたテンプレートを混合する順番は特に限定されず、テンプレートを調製した後その他の物質と混合してもよいし、各テンプレートをそれぞれ他の物質と混合してもよい。
【0057】
好ましい水性ゲルの組成は、以下の通りである。
即ち、ケイ素原子原料、アルミニウム原子原料及びリン原子原料を各々の酸化物換算のモル比で表した場合、SiO/Alの値は、通常、0.3より大きく、好ましくは0.4以上であり、より好ましくは0.5以上であり、さらに好ましくは0.6以上である。また通常1.0以下であり、好ましくは0.8以下である。また同様の基準でのP/Alの比は通常0.5以上、好ましくは0.6以上、さらに好ましくは0.7以上であり、通常1.3以下、好ましくは1.2以下、より好ましくは1.1以下、さらに好ましくは0.9以下、特に好ましくは0.75以下である。
水熱合成によって得られるゼオライトの組成は、水性ゲルの組成と相関があり、従って、所望の組成のゼオライトを得るためには水性ゲルの組成を、上記の範囲において適宜設定すればよい。
【0058】
テンプレートの総量は、水性ゲル中のアルミニウム原子原料を酸化物で表したとき、Alに対するテンプレートのモル比で、通常0.2以上、好ましくは0.5以上、さらに好ましくは1以上であって、通常4以下、好ましくは3以下、さらに好ましくは2.5以下である。テンプレートの使用量が上記下限以上であるとテンプレート量が十分となり、上記上限以下であるとアルカリ濃度を抑えることができ、従って、上記範囲内であることにより良好な結晶化を行うことができる。
【0059】
また、水性ゲル中の水の割合は、合成のし易さ及び生産性の高さの観点から、アルミニウム原子原料を酸化物で表したとき、Alに対する水のモル比で、通常3以上、好ましくは5以上、さらに好ましくは10以上であって、通常200以下、好ましくは150以下、さらに好ましくは120以下である。
【0060】
水性ゲルのpHは通常5以上、好ましくは6以上、さらに好ましくは6.5以上であって、通常10以下、好ましくは9以下、さらに好ましくは8.5以下である。
【0061】
なお、水性ゲル中には、所望により、上記以外の成分を含有していてもよい。このような成分としては、アルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物や塩、アルコール等の親水性有機溶媒が挙げられる。水性ゲル中のこれらの他の成分の含有量としては、アルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物や塩は、アルミニウム原子原料を酸化物で表したとき、Alに対するモル比で、通常0.2以下、好ましくは0.1以下であり、アルコール等の親水性有機溶媒は、水性ゲル中の水に対してモル比で通常0.5以下、好ましくは0.3以下である。
【0062】
水熱合成は、上記の水性ゲルを耐圧容器に入れ、自己発生圧力下、又は結晶化を阻害しない程度の気体加圧下で、攪拌又は静置状態で所定温度を保持する事により行われる。水熱合成の際の反応温度は、通常100℃以上、好ましくは120℃以上、さらに好ましくは150℃以上であって、通常300℃以下、好ましくは250℃以下、さらに好ましくは220℃以下である。この温度範囲のうち、最も高い温度である最高到達温度まで昇温する過程において、80℃から120℃までの温度域に1時間以上置かれることが好ましく、2時間以上置かれることがより好ましい。
この温度範囲での昇温時間が1時間未満であると、得られたテンプレート含有ゼオライトを焼成して得られるゼオライトの耐久性が不十分となる場合がある。また、80℃から120℃までの温度範囲内に1時間以上置かれることが、得られるゼオライトの耐久性の面で好ましい。
一方、この温度範囲での昇温時間の上限は特に制限はないが、長すぎると生産効率の面で不都合な場合があり、通常50時間以下、生産効率の点で好ましくは24時間以下である。
【0063】
前記温度領域の間の昇温方法は、特に制限はなく、例えば、単調に昇温させる方法、階段状に変化させる方法、振動等上下に変化させる方法、及びこれらを組み合わせて行う方式など様々な方式を用いることができる。通常、制御の容易さから、昇温速度をある値以下に保持して、単調に昇温する方式が好適に用いられる。
【0064】
また、水熱合成の際の最高到達温度付近に所定時間保持するのが好ましく、最高到達温度付近とは、該温度より5℃低い温度乃至最高到達温度を意味し、最高到達温度に保持する時間は、所望とするゼオライトの合成のしやすさに影響し、通常0.5時間以上、好ましくは3時間以上、さらに好ましくは5時間以上であって、通常30日以下、好ましくは10日以下、さらに好ましくは4日以下である。
【0065】
最高到達温度に達した後の温度の変化の方法は、特に制限はなく、階段状に降温させる方法、最高到達温度以下で、振動等上下に変化させる方法、及びこれらを組み合わせて行う方式など様々な方式を用いることができる。通常、制御の容易さ、得られるゼオライトの耐久性の観点から、最高到達温度を保持した後、100℃から室温までの温度に降温するのが好適である。
【0066】
<テンプレートを含有したゼオライト>
水熱合成後、生成物であるテンプレートを含有したゼオライトを水熱合成反応液より分離するが、テンプレートを含有したゼオライトの分離方法は特に限定されない。通常、濾過又はデカンテーション等により分離し、水洗後、室温から150℃以下の温度で乾燥して生成物を得ることができる。
【0067】
次いで、通常テンプレートを含有したゼオライトからテンプレートを除去するが、その方法は特に限定されない。通常、空気又は酸素含有の不活性ガス、あるいは不活性ガスの雰囲気下に400℃から700℃の温度で焼成したり、エタノール水溶液、HCl含有エーテル等の抽出溶剤による抽出等の方法により、含有する有機物(テンプレート)を除去することができる。好ましくは製造性の面で焼成によるテンプレートの除去が好ましい。
【0068】
ただし、本発明においては、後述の如く、ゼオライトからテンプレートを除去せずに、金属の担持に供することもできる。
【0069】
{担持金属}
本発明の触媒では、上述のようなゼオライトに金属が担持されている。
【0070】
<金属>
本発明においてゼオライトに担持される金属は、ゼオライトに担持させて、触媒活性を発揮し得るものであれば、特に限定されるものではないが、好ましくは鉄、コバルト、パラジウム、イリジウム、白金、銅、銀、金、セリウム、ランタン、プラセオジウム、チタン、ジルコニア等の中の群から選ばれる。ゼオライトに担持させる金属は、これらの1種であってもよく、2種以上の金属を組み合わせてゼオライトに担持してもよい。ゼオライトに担持させる金属は、更に好ましくは、鉄及び/又は銅、特に好ましくは銅である。
【0071】
なお、本発明において「金属」とは、必ずしも元素状のゼロ価の状態にあるものに限定されず、「金属」という場合、触媒中に担持された存在状態、例えばイオン性ないしはその他の種としての存在状態を含む。
【0072】
<担持量>
本発明の触媒におけるゼオライトへの金属の担持量は、特に限定されないが、ゼオライトに対する金属の重量割合で通常0.1%以上、好ましくは0.5%以上、さらに好ましくは1%以上であり、通常10%以下、好ましくは8%以下、さらに好ましくは5%以下である。金属担持量が上記下限値未満では活性点が少なくなる傾向があり、触媒性能を発現しない場合がある。金属担持量が上記上限値超過では金属の凝集が著しくなる傾向があり、触媒性能が低下する場合がある。
【0073】
<金属担持方法>
本発明の触媒を製造する際のゼオライトへの金属の担持方法としては、特に限定されないが、一般的に用いられるイオン交換法、含浸担持法、沈殿担持法、固相イオン交換法、CVD法等が用いられる。好ましくは、イオン交換法、含浸担持法である。
【0074】
担持する金属の金属源としては、特に限定されるものではないが、金属塩、金属錯体、金属単体、金属酸化物等が用いられ、通常は、担持金属の塩類が用いられ、例えば硝酸塩、硫酸塩、塩酸塩等の無機酸塩、又は酢酸塩などの有機酸塩を用いることができる。金属源は、後述する分散媒に可溶であっても不溶であってもよい。
【0075】
なお、本発明における触媒は、ゼオライトに金属を担持する際、テンプレートを除去したゼオライトに金属を担持しても、テンプレートを含有したゼオライトに金属を担持した後にテンプレートを除去してもよいが、製造工程が少なく、簡便な点でテンプレートを含有したゼオライトに金属を担持した後にテンプレートを除去することが好ましい。
【0076】
ただし、イオン交換法によりゼオライトに金属を担持する場合、一般的なイオン交換法ではテンプレートを焼成等により除去したゼオライトを用いることが好ましい。これは、テンプレートが除去された細孔に金属がイオン交換することにより、イオン交換ゼオライトを製造することができ、テンプレートを含有したゼオライトはイオン交換ができないため、イオン交換法による金属の担持には不向きであることによる。
【0077】
テンプレートを除去してから金属担持を行う場合は、上記のように、通常、空気又は酸素含有の不活性ガス、あるいは不活性ガスの雰囲気下において、通常400℃以上700℃以下の温度で焼成する方法、エタノール水溶液、HCl含有エーテル等の抽出剤により抽出する方法等の種々の方法により、ゼオライト中に含まれるテンプレートを除去することができる。
【0078】
金属の担持にイオン交換法を採用しない場合には、テンプレートを含有したゼオライトを用い、例えば、ゼオライトと金属源との混合分散液から分散媒を除去し、その後下記のような焼成工程を行なって、テンプレート除去と同時に金属を担持することで触媒を製造することができる。テンプレート除去のための焼成を省略することができるため、製造面ではイオン交換法によらない金属担持法が有利であり、このような担持法としては「含浸担持法」が挙げられる。
【0079】
含浸担持法による場合、ゼオライト(テンプレートを含有したゼオライトであってもテンプレートを除去した後のゼオライトであってもよく、好ましくはテンプレートを含有したゼオライトである。)と金属源とを含む混合分散液から分散媒を除去した後焼成を行うが、この分散媒を除去する際、一般的には、スラリー状態から、短時間で乾燥させることが好ましく、スプレードライ法を用いて乾燥することが好ましい。
【0080】
乾燥後の焼成温度は特に限定されないが、通常400℃以上、好ましくは600℃以上、さらに好ましくは700℃以上、より好ましくは800℃以上であり、上限は通常1000℃以下、好ましくは900℃以下である。焼成温度が上記下限値未満では金属源が分解しないことがあり、ゼオライト上での金属の分散性を高めると共に、金属とゼオライト表面との相互作用を高めるためには、焼成温度は高い方が好ましいが、上記上限値超過ではゼオライトの構造が破壊される可能性がある。
【0081】
ただし、本発明の触媒の製造においては、上記のゼオライトへの金属の担持工程において、意図的にゼオライトの一部構造を破壊させて、本発明の触媒の水の吸着量を調整する必要がある場合には、上記焼成をより高温(例えば、900℃以上)で行ったり、以下の焼成中の気体の流通量を大きく設定したりする場合もある。即ち、ゼオライトの構造は、ゼオライトの種類や金属担持量によっても異なるが、900℃から1000℃の範囲内での焼成で徐々に破壊されて行く場合があり、従って、焼成工程で、意図的にゼオライトの構造を壊して、例えば、25℃の水蒸気吸着等温線で、相対蒸気圧0.5における水の吸着量が0.25〜0.35(kg−水/kg−ゼオライト)のゼオライトを用いて、この水の吸着量が0.2(kg−水/kg−触媒)以下の本発明の触媒を製造することも可能である。特に水の吸着量を0.05(kg−水/kg−触媒)以上、0.2(kg−水/kg−触媒)以下とした触媒は、急激な温度上昇時の吸着水分による触媒の劣化の問題が無く、窒素酸化物浄化性能及びその維持特性に優れるので好ましい。
【0082】
上記焼成の雰囲気は、特に限定はなく、大気下、又は窒素ガス下、アルゴンガス下等の不活性雰囲気下で行われ、雰囲気中に水蒸気が含まれてもよい。
焼成の方法も特に限定されず、マッフル炉、キルン、流動焼成炉などを用いることができるが、上記雰囲気気体の流通下に焼成する方法が望ましい。
【0083】
気体の流通速度は特に限定されないが、通常被焼成粉体1gあたりの気体の流通量は、0.1ml/分以上、好ましくは5ml/分以上で、通常100ml/分以下、好ましくは20ml/分以下である。
被焼成粉体1gあたりの気体の流通量が上記下限値未満では乾燥粉体中に残存する金属源由来の酸等が加熱時に除去されずゼオライトが破壊される可能性があり、上記上限値超過では粉体が飛散することがある。
【0084】
{その他の成分}
本発明の触媒は、ゼオライト以外に、平均粒子径が0.1〜10μmである金属酸化物粒子、及び/又は無機バインダー、好ましくは平均粒子径が0.1〜10μmである金属酸化物粒子と無機バインダーの両方を含むことも可能であり、これらの成分を含むことにより、上述のような、触媒劣化や、窒素酸化物浄化性能及びその維持特性に優れる、水の吸着量が0.2(kg−水/kg−触媒)以下の触媒とすることもできる。
【0085】
該平均粒子径が0.1〜10μmである金属酸化物粒子の金属としては、アルミニウム、珪素、チタン、セリウム、ニオブが好ましく、これらの1種又は2種以上の組み合わせが挙げられる。該金属酸化物粒子の平均粒子径は、好ましくは0.l〜5μm、更に好ましくは0.1〜3μmである。なお、ここで金属酸化物粒子の粒子径とは、電子顕微鏡で金属酸化物粒子を観察した際の、任意の10〜30点の金属酸化物粒子の一次粒子径の平均値をいう。
【0086】
該無機バインダーとしては、シリカゾル、アルミナゾル、チタニアゾル、セリアゾルなどが用いられ、これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いても良い。これらのうち、ゼオライトへの固着能力があり、かつ安価であることから、シリカゾルが好ましい。無機バインダーは、平均粒子径が5〜100nm、好ましくは4〜60nm、より好ましくは10〜40nmの無機酸化物のゾルであることが好ましい。この平均粒子径も上記金属酸化物の粒子径と同様の方法で測定したものをいう。
【0087】
これら金属酸化物粒子及び無機バインダーを使用する場合には、添加するタイミングは特に限定されず、例えば、ゼオライトに銅担持した後、焼成の前、或いは焼成の後に添加しても良く、また噴霧乾燥する場合は、スラリーに添加しても良い。これらの添加量は両者の合計で触媒中の0.1〜100重量%、好ましくは0.5〜50重量%程度である。
【0088】
{ゼオライト含有量}
本発明の触媒のゼオライト含有量は、上記の金属酸化物粒子及び/又は無機バインダー等の他の成分を含まない場合、前述の好適な金属担持量を満たす値となるが、特に、上記の金属酸化物粒子及び/又は無機バインダー等の他の成分を含む場合のゼオライトの含有量(担持金属を含むゼオライト含有量)は、好ましくは30〜99.9重量%、より好ましくは40〜99重量%、とりわけ好ましくは50〜90重量%である。
本発明の触媒中のゼオライト含有量が上記下限値以上であることにより、高い窒素酸化物浄化性能を得ることができる。
【0089】
{粒子径}
本発明の触媒の粒子径は特に限定されないが、窒素酸化物浄化用に使用する場合の粒子径は、平均一次粒子径として通常15μm以下、好ましくは10μm以下であり、下限は、通常0.1μmである。触媒の粒子径が大き過ぎると単位重量当たりの比表面積が小さくなるため、被処理ガスとの接触効率が悪く、従って、窒素酸化物の浄化効率が劣るものとなり、触媒の粒子径が小さ過ぎると取り扱い性が悪くなる。従って、前述の方法でゼオライトに金属を担持して得られた焼成後の触媒、或いは他の成分を添加して得られた焼成後の触媒は、必要に応じて、ジェットミル等の乾式粉砕又はボールミル等の湿式粉砕を行ってもよい。なお、触媒の平均一次粒子径の測定方法は、前述のゼオライトの平均一次粒子径の測定方法と同様である。
【0090】
[触媒の製造方法]
本発明の触媒の製造方法には特に制限はないが、例えば、前述の担持金属の金属源及びゼオライト、並びに必要に応じて用いられる前述の平均粒子径0.1〜10μmの金属酸化物粒子及び/又は無機バインダー、その他の各種添加剤を分散媒と混合した混合スラリーを調製し、この混合スラリーを乾燥させて分散媒を除去し、得られた乾燥粉体を焼成することにより製造される。
【0091】
該各種添加剤としては、上述の成分以外に、混合分散液の粘度調整、あるいは分散媒を除去して触媒とした際の粒子形状又は粒子径制御の目的で使用されるものが好ましく用いられる。該添加剤の種類は特に限定されないが、無機添加剤が好ましく、シリカゾル、アルミナゾル、チタニアゾルなどの無機ゾル(好ましくはシリカゾル)、セピオライト、モンモリロナイト、カオリンなどの粘土系添加剤、主鎖にポリシロキサン結合を有するオリゴマー又はポリマーであるシリコーン類(ポリシロキサン結合の主鎖の置換基の一部が加水分解をうけてOH基となったものも含む)、珪酸液由来成分等の各種添加剤等が挙げられる。これらの添加剤を用いた場合には、最終的に、これらの添加剤を含む触媒が製造される。該無機ゾルの平均粒子径は通常4〜60nm、好ましくは10〜40nmである。
これら添加剤の添加量は、特に限定されるものではないが、ゼオライトに対して重量比で50%以下、好ましくは20%以下、更に好ましくは10%以下である。重量比を前記上限値超過とすると、触媒性能が低下する場合がある。
【0092】
本発明の触媒の製造に用いられる該分散媒とは、ゼオライトを分散させるための液体であり、分散媒の種類は、特に限定されるものではないが、通常、水、アルコール、ケトンなどの1種又は2種以上が使用され、加熱時の安全性の観点から、分散媒は水を使用することが望ましい。
【0093】
混合スラリー調製の際の混合順序は、特に制限されるものではないが、通常、まず分散媒に、金属源を溶解又は分散させ、これにゼオライトを混合するのが好ましい。
前述の金属酸化物や無機バインダーやその他の各種添加剤を使用する場合は、分散媒中に添加しておいても良い。
【0094】
上記の成分を混合して調製されるスラリー中の固形分の割合は、好ましくは5〜60重量%、より好ましくは10〜50重量%である。スラリー中の固形分の割合が前記下限値未満では、除去すべき分散媒の量が多くて、分散媒除去工程に支障をきたす場合がある。また、スラリー中の固形分の割合が前記上限値超過では、金属や、ゼオライト以外の他の成分がゼオライト上に均一に分散しにくくなる傾向がある。
なお、混合スラリーの調製に用いるゼオライトは、前述の如く、テンプレートを含むゼオライトであってもよく、テンプレートを除去したゼオライトであってもよい。
【0095】
混合スラリーの調合温度は通常0℃以上、好ましくは10℃以上、通常80℃以下、好ましくは60℃以下である。
ゼオライトは通常、分散媒と混合すると発熱することがあり、調合温度が上記上限値を超えるとゼオライトが酸又はアルカリにより分解する可能性がある。調合温度の下限は分散媒の融点である。
【0096】
また、混合スラリーの調合時のpHは特に限定されないが、通常3以上、好ましくは4以上、さらに好ましくは5以上であり、通常10以下、好ましくは9以下、さらに好ましくは8以下である。pHを前記下限値未満あるいは上限値超過として調合するとゼオライトが破壊される可能性がある。
【0097】
混合スラリー調合時の混合の方法としては、十分にゼオライトと金属源及び必要に応じて用いられるその他の成分や各種添加剤が混合あるいは分散する方法であればよく、各種公知の方法が用いられるが、具体的には攪拌、超音波、ホモジナイザー等が用いられる。
【0098】
<混合スラリーの乾燥>
上記混合スラリーの乾燥方法としては、混合スラリー中の分散媒を短時間で除去できる方法であれば特に限定されないが、好ましくは混合スラリーを均一に噴霧した状態を経て、短時間に除去できる方法である。より好ましくは混合スラリーを均一に噴霧した状態を経て、高温の熱媒体と接触させて除去する方法であり、更に好ましくは混合スラリーを均一に噴霧した状態を経て、高温の熱媒体として熱風と接触させ乾燥して分散媒を除去することにより、均一な粉体を得ることのできる方法であることから、スプレードライ法を採用することが好ましい。
【0099】
本発明において、混合スラリーの乾燥にスプレードライを適用する場合、噴霧の方法としては、回転円盤による遠心噴霧、圧力ノズルによる加圧噴霧、二流体ノズル、四流体ノズル等による噴霧などを用いることができる。
【0100】
噴霧したスラリーは、加熱した金属板や、高温ガスなどの熱媒体と接触することにより分散媒が除去される。いずれの場合も、熱媒体の温度は特に限定されないが、通常80℃以上、350℃以下である。熱媒体の温度が上記下限値未満では混合スラリーから十分に分散媒が除去できない場合があり、また上記上限値超過では金属源が分解し、金属酸化物が凝集する場合がある。
【0101】
スプレードライの乾燥条件については特に限定されないが、通常ガス入口温度を約200〜300℃、ガス出口温度を約60〜200℃として実施する。
【0102】
混合スラリーを乾燥して分散媒を除去するに要する乾燥時間は、好ましくは60分以下であり、より好ましくは10分以下、更に好ましくは1分以下、特に好ましくは10秒以下であり、より短時間で乾燥することが望ましい。この乾燥時間の下限は特に限定されるものではないが、通常0.1秒以上である。
【0103】
前記上限値超過の時間をかけて乾燥を行うと、金属を担持させるゼオライトの表面に金属源が凝集し、不均一に担持されるため、触媒活性低下の原因となる。また、一般的に金属源は酸性、又はアルカリ性を呈するため、分散媒の存在下でそれらの金属を含んだ状態で高温条件に長時間曝されると、金属原子を担持させたゼオライトの構造の分解が促進されると考えられる。そのため乾燥時間が長くなるほど触媒活性が低下すると考えられる。
なお、ここで、混合スラリーから分散媒を除去するための乾燥時間とは、被乾燥物中の分散媒の量が1重量%以下になるまでの時間をいい、水が分散媒の場合の乾燥時間は、混合スラリーの温度が80℃以上になった時点から、被乾燥物中の水の含有量が1重量%以下になるまでの時間をいう。水以外の分散媒の場合の乾燥時間は、その分散媒の常圧における沸点より20℃低い温度になった時点から、被乾燥物中の分散媒の含有量が1重量%以下になるまでの時間をいう。
【0104】
上記混合スラリーの乾燥により分散媒を除去して得られる乾燥粉体の粒子径は特に限定されないが、乾燥を短時間で終了させることができるよう、通常1mm以下、好ましくは200μm以下で、通常2μm以上となるように、混合スラリーの乾燥を行うことが好ましい。
【0105】
<乾燥粉体の焼成>
上記乾燥により得られた乾燥粉体は、次いで焼成することによって本発明の触媒を得る。
【0106】
乾燥粉体の焼成方法は特に限定されず、マッフル炉、キルン、流動焼成炉などを用いることができるが、気体の流通下に焼成する方法が好ましい。
【0107】
焼成時の流通気体としては、特に限定されないが、空気、窒素、酸素、ヘリウム、アルゴン、又はこれらの混合気体などを用いることができ、好ましくは空気が用いられる。また流通気体は水蒸気を含んでいてもよい。焼成は、還元雰囲気で行うこともでき、その場合、水素を流通気体中に混合したり、シュウ酸等の有機物を乾燥粉体に混ぜて焼成することができる。
【0108】
気体の流通速度は特に限定されないが、被焼成粉体1gあたりの気体の流通量は、通常0.1ml/分以上、好ましくは5ml/分以上、通常100ml/分以下、好ましくは20ml/分以下である。粉体1gあたりの気体の流通量が上記下限値未満では乾燥粉体中に残存する酸が加熱時に除去されず、ゼオライトが破壊される可能性があり、上記上限値超過の流通量では粉体が飛散することがある。
【0109】
焼成温度は特に限定されないが、通常400℃以上、好ましくは500℃以上、より好ましくは600℃以上、更に好ましくは700℃以上、特に好ましくは800℃以上であり、通常1100℃以下、好ましくは1000℃以下、特に好ましくは950℃以下である。焼成温度が上記下限値未満では金属源が分解しないことがあり、上記上限値超過ではゼオライトの構造が破壊される可能性がある。
【0110】
焼成時間は、焼成温度によっても異なるが、通常1分〜3日、好ましくは0.5〜24時間、より好ましくは1〜10時間である。焼成時間が短か過ぎると金属源が分解しないことがあり、一方で、徒に焼成時間を長くしても焼成による効果は得られず、生産効率が低下する。
【0111】
焼成後、得られた触媒は、所望の粒子径とするために、前述の如く、ジェットミル等の乾式粉砕又はボールミル等の湿式粉砕を行ってもよい。
【0112】
{固体29Si−DD/MAS−NMRスペクトル}
本発明の触媒は、前述の如く、骨格構造に少なくともアルミニウム原子とリン原子とケイ素原子とを含むゼオライトに金属を担持してなる触媒であって、下記条件(i)〜(iii)のいずれか1以上を満たすものであり、好ましくは、下記条件(i)〜(iii)のいずれか2以上、より好ましくは、下記条件(i)〜(iii)をすべて満たすものである。
【0113】
条件(i):吸湿処理した後固体29Si−DD/MAS−NMRスペクトルを測定した際、−130〜−50ppmの信号強度の積分強度面積に対して、−130〜−92.5ppmの信号強度の積分強度面積が、41%以上
条件(ii):吸湿処理した後固体29Si−DD/MAS−NMRスペクトルを測定した際、−130〜−50ppmの信号強度の積分強度面積に対して、−130〜−100ppmの信号強度の積分強度面積が、17%以上
条件(iii):吸湿処理後の固体29Si−DD/MAS−NMRスペクトルの−87.5ppm〜−97.5ppmの範囲におけるピークトップ位置から、乾燥処理後の固体29Si−DD/MAS−NMRスペクトルの−87.5ppm〜−97.5ppmの範囲におけるピークトップ位置を引いた差が、4.5ppm以内
【0114】
なお、ここで、吸湿処理した触媒とは、後述の実施例の項に記載されるように、触媒を固体NMR用試料管にサンプリング後、塩化アンモニウム飽和水溶液を張ったデシケーター中に一晩以上放置して十分に吸湿させた触媒をさし、乾燥処理した触媒とは、この吸湿処理後の触媒を、シュレンク管で2時間以上、120℃で真空乾燥したものをさす。
【0115】
以下、この条件(i)〜(iii)について説明する。
【0116】
本発明の触媒は、上述のようなゼオライトに金属を担持したものであって、吸湿処理した後測定した固体29Si―DD/MAS−NMRスペクトルにおいて、通常、−92.5ppm近傍の信号強度の積分強度面積が大きいものである。
すなわち、ゼオライト骨格中のケイ素原子は、通常Si(OX)(OY)4n(X、YはAl,P,Si、Hなどの原子を表す。;n=0〜2を表す。)型の結合をとる。乾燥したシリコアルミノフォスフェートゼオライトの固体29Si-DD/MAS−NMRで−92.5ppm付近に観測されるピークは、X、Yが共にAlでSi(OAl)の場合に相当する。一般的に、吸湿処理したシリコアルミノフォスフェートゼオライトの固体29Si-DD/MAS−NMRにおいては、水の吸着によってSi−O−Alの結合角や結合長が変化し、Si(OAl)のピークが−90.0ppm近傍にシフトする。水の吸着、脱着が繰り返されれば、Si−O−Alの結合変化が繰り返されることによってやがてゼオライト骨格の構造が破壊されていく。ゼオライト骨格の構造が破壊されれば、触媒表面積の低下、触媒活性点の減少等を経て触媒活性の低下を招くことから、吸湿処理した状態において−90.0ppm近傍の信号強度の積分強度面積は小さく、−92.5ppm近傍の信号強度の積分強度面積が大きいほうが望ましいと考えられる。
【0117】
そこで、本発明の第1態様では、触媒の吸湿状態における固体29Si−DD/MAS−NMRスペクトルにおいて、−130〜−50ppmの信号強度の積分強度面積に対して、−130〜−92.5ppmの信号強度の積分強度面積が41%以上であり、より好ましくは42%以上であり、さらに好ましくは43%以上とする(条件(i))。この値の上限は100%であり、この場合は後述する本発明の第2態様において全てのケイ素原子がSi−O−Si結合を少なくとも1つ有している場合に該当する。
【0118】
また、乾燥したシリコアルミノフォスフェートゼオライトが吸湿したときの、Si(OAl)サイトにおけるSi−O−Alの結合角や結合長の変化は小さいほうが望ましい。
【0119】
そこで、本発明の第3態様では、触媒の吸湿状態における固体29Si−DD/MAS−NMRの−87.5ppm〜−97.5ppmの範囲におけるピークトップ位置から、乾燥状態における固体29Si-DD/MAS−NMRの−87.5ppm〜−97.5ppmの範囲におけるピークトップ位置を引いた差が、4.5ppm以内であり、好ましくは3.0ppm以内とする(条件(iii))。Si−O−Alの結合角や結合長が全く変化しないことが最も好ましいため、上記ピークトップ位置差の下限は0ppmである。なお、前記「ピークトップ位置」は、−87.5ppm〜−97.5ppmの範囲に同強度のピークが複数ある場合には、最も高磁場側のピークトップ位置とする。
【0120】
さらに、−110ppm付近のピークはX、Yが共にケイ素原子の場合に相当し、SiOドメインが形成されていることを示している。このようなSi−O−Si結合は加水分解に対して安定であるため、ケイ素原子同士が集まったSiOドメインを有する触媒は水蒸気の繰り返し吸脱着に対して高い耐久性を持つと考えられる。従って、−110ppm近傍の信号強度の積分強度面積は大きいことが好ましいものである。
【0121】
そこで本発明の第2態様では、触媒の吸湿状態における固体29Si−DD/MAS−NMRスペクトルの−130〜−50ppmの信号強度の積分強度面積に対して、−130〜−100ppmの信号強度の積分強度面積が17%以上であり、好ましくは20%以上、より好ましくは22%以上とする(条件(ii))。この値の上限は100%であり、全てのケイ素原子がSi−O−Si結合を少なくとも1つ有している場合に該当する。
【0122】
[窒素酸化物浄化用素子]
本発明の触媒は、或いはこの触媒を含む触媒混合物は造粒、成形(成膜を含む)等により所定の形状とすることにより、各種分野における窒素酸化物浄化用素子として使用することができる。特に、本発明の触媒を用いた本発明の窒素酸化物浄化用素子(以下、「本発明の浄化用素子」と称す場合がある。)は、自動車用排ガス触媒(SCR触媒)として有用であるが、その用途は何ら自動車用に限定されるものではない。
【0123】
本発明の触媒の造粒、成形の方法は特に限定されるものではなく、各種公知の方法を用いて行うことができる。通常、本発明の触媒を含む触媒混合物を成形し、成形体として用いる。成形体の形状としては好ましくはハニカム状が用いられる。
【0124】
また、自動車用等の排ガスの浄化に用いられる場合、本発明の窒素酸化物浄化用素子は、例えば、本発明の触媒を、シリカ、アルミナ、粘土鉱物等の無機バインダー、有機バインダー、又はシリコーン類、珪酸液、特定のシリカゾルあるいはアルミナゾル等の、架橋結合等により変性、または反応してバインダーとしての機能を発現するもの(以下、バインダー前駆体ということがある)と混合してスラリーを調製し、これをコージェライト等の無機物で作製されたハニカム状の成形体の表面に塗布し、焼成することにより作製される。
【0125】
また、本発明の触媒を用いた窒素酸化物浄化用素子には、アルミナ繊維、ガラス繊維等の無機繊維を添加してもよく、これらの無機繊維と該触媒を含んだ混練物を押出法や圧縮法等の成形を行い、引き続き焼成を行うことにより、好ましくはハニカム状の浄化用素子として製造することもできる。これらの素子の製造方法は公知の方法が用いられる。
【0126】
[触媒の使用方法]
本発明の触媒又は窒素酸化物浄化用素子は、窒素酸化物浄化システムに用いることができる。なお本発明において、窒素酸化物浄化システムとは、窒素酸化物が本発明の窒素酸化物浄化用素子と接触し浄化されていれば、本発明の窒素酸化物浄化用素子を含む機械、装置類は全て該当する。該システムには、本発明の窒素酸化物浄化用素子以外の素子が含まれていても良く、例えば尿素タンク、尿素水噴射装置、尿素分解装置、CO酸化触媒、HC酸化触媒、NO酸化触媒、ディーゼルパーティキュレートフィルター(DPF)、アンモニア浄化触媒などの素子が含まれていても良い。該システム中の各素子の配置は特に限定されないが、例えば通常、本発明の窒素酸化物浄化素子の前段には尿素タンク、尿素水噴射装置、尿素分解装置、CO酸化触媒、HC酸化触媒、NO酸化触媒、DPFなどが配置され、窒素酸化物浄化素子の後段にはアンモニア浄化触媒などが配置される。
【0127】
該排ガスには窒素酸化物以外の成分が含まれていてもよく、例えば炭化水素、一酸化炭素、二酸化炭素、水素、窒素、酸素、硫黄酸化物、水が含まれていてもよい。
窒素酸化物含有排ガスとしては、具体的には、本ディーゼル自動車、ガソリン自動車、定置発電・船舶・農業機械・建設機械・二輪車・航空機用の各種ディーゼルエンジン、ボイラー、ガスタービン等から排出される多種多様の窒素酸化物含有排ガスが挙げられる。
【0128】
本発明の触媒又は窒素酸化物浄化用素子を用いて窒素酸化物含有排ガスを処理する際の、本発明の触媒又は浄化用素子と排ガスとの接触条件としては特に限定されるものではないが、被処理排ガスの空間速度は通常100/h以上、好ましくは1000/h以上であり、通常500000/h以下、好ましくは100000/h以下である。また、接触時の排ガス温度は通常100℃以上、好ましくは150℃以上であり、通常700℃以下、好ましくは500℃以下である。
【0129】
なお、このような排ガス処理時には、触媒又は浄化用素子に、還元剤を共存させて使用することもでき、還元剤を共存させることにより、浄化を効率よく進行させることができる。還元剤としては、アンモニア、尿素、有機アミン類、一酸化炭素、炭化水素、水素等の1種又は2種以上が用いられ、好ましくはアンモニア、尿素が用いられる。
【0130】
本発明の触媒又は窒素酸化物浄化用素子を使用して、排ガス中の窒素酸化物の浄化を行う浄化工程の後段の工程に、窒素酸化物の浄化で消費されなかった余剰の還元剤を酸化する触媒による還元剤の分解工程を設けて、処理ガス中の還元剤量を減少させることができる。その場合、酸化触媒として還元剤を吸着させるためのゼオライト等の担体に白金族等の金属を担持した触媒を用いることができるが、そのゼオライト及び酸化触媒として、前述の本発明で用いるゼオライト、及び本発明の触媒を用いることもできる。
【実施例】
【0131】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り以下の実施例により何ら限定されるものではない。
【0132】
尚、以下の実施例及び比較例において、触媒活性の評価及び固体29Si−DD/MAS−NMRスペクトル測定は、下記の条件で行った。
【0133】
[触媒活性の評価方法]
調製した触媒は以下の方法に基づき触媒活性を評価した。
調製した触媒をプレス成形後、破砕して16〜28メッシュに整粒した。整粒した各触媒1mlを常圧固定床流通式反応管に充填した。触媒層に表1の組成のガスを1670ml/min(空間速度SV=100000/h)で流通させながら、触媒層を加熱した。150℃、200℃、500℃のそれぞれの温度で、出口NO濃度が一定となったとき、
下記式で、NO浄化率を算出し、触媒の窒素酸化物除去活性とした。
NO浄化率={(入口NO濃度)―(出口NO濃度)}/(入口NO濃度)×100
【0134】
【表1】

【0135】
触媒活性の評価は、以下の水蒸気繰り返し吸脱着試験前と後とで行い、これらの結果を纏めて表3Cに示した。
【0136】
[触媒の水蒸気繰り返し吸脱着耐久性試験(90℃−60℃−5℃の水蒸気繰り返し吸脱着試験)]
実装条件に近い繰り返し吸脱着試験条件として、図6に示す試験装置を用いて、触媒の「90℃−60℃−5℃の水蒸気繰り返し吸脱着試験」を実施した。
図6において、1は60℃に保持された恒温室、2は90℃に保持された恒温室、3は5℃に保持された恒温室である。恒温室1内には飽和水蒸気の容器4が設けられ、恒温室2内には試料を保持した真空容器5が設けられ、恒温室3内には水だめとなる容器6が設けられている。容器4と真空容器5とはバルブaを有する配管を介して連結されており、容器6と真空容器5はバルブ6を有する配管を介して連結されている。
試料を90℃に保たれた真空容器5内に保持し、5℃の飽和水蒸気雰囲気(90℃の相対湿度1%)と60℃の飽和水蒸気雰囲気(90℃の相対湿度28%)にそれぞれ90秒曝す操作を繰返す。すなわち、60℃の飽和水蒸気雰囲気に曝す操作は、図6中、バルブaを開く(バルブbは閉じたまま)。この状態で90秒保持した後、バルブaを閉じると同時にバルブbを開ける。このとき、60℃の飽和水蒸気雰囲気に曝されたときに試料1に吸着した水は、5℃の飽和水蒸気雰囲気で一部が脱着し、5℃に保った水だめの容器6に移動する。この状態で90秒保持する。
以上の吸着、脱着を2000回繰り返し行う。
試験後回収した試料について上記触媒活性の評価方法の条件に基づきNO浄化率を評価した。
本試験は実装条件に近い条件を再現したものである。車などのディーゼルエンジン排ガスは5〜15体積%の水を排ガス中に含む。車では走行中、排ガスが200℃以上の高温となり、相対湿度は5%以下に低下し、触媒は水分を脱着した状態になる。しかし、停止時に90℃近辺で相対湿度が15%以上となり、触媒は水を吸着する。本条件により、90℃の吸着時には相対湿度が28%となる。この実条件に近い状態での繰り返し耐久性が実装時には重要となる。
【0137】
[ゼオライト組成の分析]
試料をアルカリ融解後、酸溶解し、得られた溶液を誘導結合プラズマ発光分析法(ICP−AES法)により分析した。
【0138】
[固体29Si−DD/MAS−NMRスペクトル]
吸湿処理後の固体29Si−DD/MAS−NMRスペクトルは、試料を固体NMR用試料管にサンプリング後、塩化アンモニウム飽和水溶液を張ったデシケーター中に一晩以上放置し、十分に吸湿させた後、密栓してシリコンゴムを標準物質として表2の条件で測定した。
また、乾燥処理後の固体29Si−DD/MAS−NMRスペクトルは、上記の吸湿処理をした試料を、シュレンク管で2時間以上、120℃で真空乾燥後、窒素雰囲気下でサンプリングし、シリコンゴムを標準物質として表2の条件で測定した。
【0139】
【表2】

【0140】
[実施例1]
水201.6g、85%リン酸67.8g、及び擬ベーマイト(25%水含有、サソール社製)57.1gを混合し、2時間攪拌した。この混合液にfumedシリカ(アエロジル200、日本アエロジル社製)15.1g、水228.1g、モルホリン37.0g、及びトリエチルアミン42.9gを加え、さらに2時間攪拌し、以下の組成を有する水性ゲルを得た。
Al/SiO/P/モルホリン/トリエチルアミン/HO=1/0.6/0.7/1/1/60(モル比)
【0141】
該水性ゲルを1Lのステンレス製オートクレーブに仕込み、攪拌しながら最高到達温度190℃まで昇温時間10時間で昇温し、190℃で24時間保持した。反応後冷却して、濾過、水洗の後100℃で乾燥した。得られた乾燥粉体をジェットミルで3〜5μmに粉砕し、その後700℃で空気気流下焼成を行い、テンプレートを除去した。
【0142】
こうして得られたゼオライトのXRDを測定したところ、CHA構造(フレームワーク密度=14.6T/1000Å)であった。
また、ICP分析により元素分析を行ったところ、骨格構造のケイ素原子とアルミニウム原子とリン原子の合計に対する各成分の構成割合(モル比)は、ケイ素原子がx=0.14、アルミニウム原子がy=0.49、リン原子がz=0.38であった。
【0143】
次に、1.46gの酢酸銅(II)一水和物(キシダ化学社製)に30gの純水を加え溶解し、15.0gの上記ゼオライトを加え攪拌し、水スラリーとした。この水スラリーに対し、1mol/Lのアンモニア水溶液をスラリーのpHが7を超えないように注意しながら51.1g滴下した。この水スラリーを170℃金属板上に噴霧し乾燥させ、触媒前駆体とした。触媒前駆体を空気流通中、750℃で2時間焼成し、銅が2.2重量%担持されたSCR触媒を得た。
【0144】
[実施例2]
水1484kg、75%リン酸592kg、及び擬ベーマイト(25%水含有、サソール社製)440kgを混合し、3時間攪拌した。この混合液にfumedシリカ(アエロジル200、日本アエロジル社製)117kgと水1607kgを加え、10分間攪拌した。この混合液にモルホリン285kgとトリエチルアミン331kgを加え、1.5時間攪拌し、以下の組成を有する水性ゲルを得た。
Al/SiO/P/モルホリン/トリエチルアミン/HO=1/0.6/0.7/1/1/60(モル比)
【0145】
該水性ゲルを5mのステンレス製オートクレーブに仕込み、攪拌しながら最高到達温度190℃まで昇温時間10時間で昇温し、190℃で24時間保持した。反応後冷却して、濾過、水洗の後90℃で減圧乾燥した。得られた乾燥粉体をジェットミルで3〜5μmに粉砕し、その後750℃で空気気流下焼成を行い、テンプレートを除去した。
【0146】
こうして得られたゼオライトのXRDを測定したところ、CHA構造(フレームワーク密度=14.6T/1000Å)であった。また、ICP分析により元素分析を行ったところ、骨格構造のケイ素原子とアルミニウム原子とリン原子の合計に対する各成分の構成割合(モル比)は、ケイ素原子がx=0.17、アルミニウム原子がy=0.52、リン原子がz=0.31であった。
以上のようにして得られたゼオライトに対し国際公開第2010/084930号公報の実施例2Aに開示されている方法により、銅を2.8重量%担持し、SCR触媒とした。
【0147】
[比較例1]
国際公開第2010/084930号公報の実施例1Aに開示されている方法により、シリコアルミノフォスフェートゼオライトを合成した。得られたゼオライトのXRDを測定したところ、CHA構造(フレームワーク密度=14.6T/1000Å)であった。また、ICP分析にてゼオライトの組成分析を行ったところ、骨格構造のケイ素原子とアルミニウム原子とリン原子の合計に対する各成分の構成割合(モル比)は、ケイ素原子がx=0.09、アルミニウム原子y=が0.50、リン原子がz=0.40であった。
以上のようにして得られたゼオライトに対し国際公開第2010/084930号公報の実施例2Aに開示されている方法により、銅を2.5重量%担持し、SCR触媒とした。
【0148】
[比較例2]
国際公開第2009/099937号公報の実施例11に開示されている方法により、シリコアルミノフォスフェートゼオライトを合成した。得られたゼオライトのXRDを測定したところ、CHA構造(フレームワーク密度=14.6T/1000Å)であった。また、ICP分析にてゼオライトの組成分析を行ったところ、骨格構造のケイ素原子とアルミニウム原子とリン原子の合計に対する各成分の構成割合(モル比)は、ケイ素原子がx=0.16、アルミニウム原子がy=0.49、リン原子がz=0.34であった。
次に、1.17gの酢酸銅(II)一水和物(キシダ化学社製)に24gの純水を加え溶解し、12.0gの上記ゼオライトを加え攪拌し、水スラリーとした。この水スラリーに対し、1mol/Lのアンモニア水溶液をスラリーのpHが7を超えないように注意しながら34.0g滴下した。この水スラリーを170℃金属板上に噴霧し乾燥させ、触媒前駆体とした。触媒前駆体を空気流通中、750℃で2時間焼成し、銅が1.8重量%担持されたSCR触媒を得た。
【0149】
[比較例3]
比較例2に記載のゼオライトに対し国際公開第2009/099937号の実施例11に開示されている方法により、銅を1.3重量%担持し、SCR触媒とした。
【0150】
実施例1,2及び比較例1〜3で製造されたSCR触媒の評価結果を表3に示す。また、各SCR触媒の固体29Si−DD/MAS−NMRスペクトルの測定チャートを図1〜5に示す。
【0151】
【表3】

【0152】
表3より、本発明の条件(i)〜(iii)を満たす触媒は、200℃以下、あるいは500℃以上のいずれの排ガス温度領域においてもNOxガスの浄化性能に優れ、また水蒸気の繰り返し吸脱着に対して高い耐久性を示すことが分かる。
【符号の説明】
【0153】
1,2,3 恒温室
4,5,6 容器
a,b バルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨格構造に少なくともアルミニウム原子とリン原子とケイ素原子とを含むゼオライトに金属を担持してなる触媒であって、吸湿処理した後固体29Si−DD/MAS−NMRスペクトルを測定した際、−130〜−50ppmの信号強度の積分強度面積に対して、−130〜−92.5ppmの信号強度の積分強度面積が、41%以上である触媒。
【請求項2】
骨格構造に少なくともアルミニウム原子とリン原子とケイ素原子とを含むゼオライトに金属を担持した触媒であって、吸湿処理した後固体29Si−DD/MAS−NMRスペクトルを測定した際、−130〜−50ppmの信号強度の積分強度面積に対して、−130〜−100ppmの信号強度の積分強度面積が、17%以上である触媒。
【請求項3】
骨格構造に少なくともアルミニウム原子とリン原子とケイ素原子とを含むゼオライトに金属を担持した触媒であって、吸湿処理後の固体29Si−DD/MAS−NMRスペクトルの−87.5ppm〜−97.5ppmの範囲におけるピークトップ位置から、乾燥処理後の固体29Si−DD/MAS−NMRスペクトルの−87.5ppm〜−97.5ppmの範囲におけるピークトップ位置を引いた差が、4.5ppm以内である触媒。
【請求項4】
前記ゼオライトの構造が、IZAが定めるコードでCHAである請求項1ないし3のいずれか1項に記載の触媒。
【請求項5】
窒素酸化物浄化用である請求項1ないし4のいずれか1項に記載の触媒。
【請求項6】
前記ゼオライトの骨格構造に含まれるケイ素原子、アルミニウム原子、及びリン原子の合計に対するケイ素原子の存在割合をx、アルミニウム原子の存在割合をy、リン原子の存在割合をzとしたとき、xが0.1以上、0.3以下であり、かつyが0.2以上、0.6以下であり、かつzが0.2以上、0.6以下である請求項1ないし5のいずれか1項に記載の触媒。
【請求項7】
ケイ素原子原料、アルミニウム原子原料、リン原子原料及びテンプレートを混合した後水熱合成してゼオライトを製造する際に、テンプレートとして、下記(1)及び(2)の2つの群の各群につき1種以上の化合物を選択したテンプレートを用いて製造された請求項1ないし6のいずれか1項に記載の触媒。
(1) ヘテロ原子として窒素原子を含む脂環式複素環化合物
(2) アルキルアミン
【請求項8】
前記ゼオライトに担持された金属が銅である請求項1ないし7のいずれか1項に記載の触媒。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれか1項に記載の触媒をハニカム状の成形体に塗布し得られる窒素酸化物浄化用素子。
【請求項10】
請求項1ないし8のいずれか1項に記載の触媒を含む混合物を成形して得られる窒素酸化物浄化用素子。
【請求項11】
請求項9又は10に記載の窒素酸化物浄化用素子を用いる窒素酸化物浄化システム。
【請求項12】
ケイ素原子原料、アルミニウム原子原料、リン原子原料及びテンプレートを混合した後水熱合成することにより、骨格構造に少なくともアルミニウム原子とリン原子とを含むゼオライトを製造し、該ゼオライトに、金属を担持する触媒の製造方法であって、該ゼオライトの製造に当たり、
テンプレートとして、(1)ヘテロ原子として窒素を含む脂環式複素環化合物と、(2)アルキルアミンの2つの群から各群につき1種以上の化合物を選択したテンプレートを用い、
ケイ素原子原料、アルミニウム原子原料及びリン原子原料の混合割合を、水性ゲルの組成におけるアルミニウム原子原料、ケイ素原子原料及びリン源の酸化物換算のモル比で、SiO/Alの値が0.5以上、かつP/Alの値が1.1以下とすることを特徴とする触媒の製造方法。
【請求項13】
担持金属の金属源、及びゼオライトを分散媒と混合した混合スラリーを調製し、該混合スラリーの分散媒を除去して得られた粉体を焼成することを特徴とする請求項12に記載の触媒の製造方法。
【請求項14】
前記金属源が銅及び/又は鉄の塩であることを特徴とする請求項13に記載の触媒の製造方法。
【請求項15】
前記混合スラリーの分散媒を除去するのに要する時間が、60分以下であることを特徴とする請求項13又は14に記載の触媒の製造方法。
【請求項16】
前記混合スラリーを均一に噴霧した状態を経て、熱風と接触させ乾燥して分散媒を除去することを特徴とする請求項13ないし15のいずれか1項に記載の触媒の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−196663(P2012−196663A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−18376(P2012−18376)
【出願日】平成24年1月31日(2012.1.31)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】