説明

触媒の改良

滅菌剤、例えば病院室の大規模除染に使用するオゾン、は、室中の大気を、酸化銀をチタニアと組み合わせた触媒の上に通すことにより、破壊され、室を安全にすることができる。この触媒は、容易に再生し、再使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本発明は、触媒の改良に関し、より詳しくは、担持された酸化銀触媒に関する。そのような触媒は、過剰の滅菌剤、例えばオゾンまたは過酸化水素、の破壊に使用することができる。
【発明の背景】
【0002】
滅菌剤、例えばオゾンまたは過酸化水素、の使用は、多くの細菌及び他の病原性微生物をある閉じ込められた区域環境から除去するために確立されている。残念ながら、そのような滅菌剤は、より高い生活形、例えば人間または家畜、にとっては毒性または有害でもあり、滅菌剤の濃度を安全なレベルに下げてから、到達できるようにするするために、十分に注意する必要がある。
【0003】
除去すべき汚染物は、細菌、ウイルス、及び他の病原体、または合成の毒性試剤、例えば生物学的過程を妨害する化合物、を包含する生物学的に、または合成により生じた汚染物でよい。環境には、植物が生長する区域、例えば温室、食品加工区域、例えば台所、ホテルルーム、会議場、病院内の汚染されている隔離室及び他の区域、等、ならびに住居における室及び救急車、等、及び動物を飼っている場所、例えば農場及び動物園、特に隔離区域、鶏小屋または他の、動物が密集している区域が挙げられる。
【0004】
使用する除染装置は、電源から、または周期的に再充電できる内部再充電式バッテリーから電力を得る、固定型または携帯用の装置でよい。
【0005】
説明し易くするために、以下、滅菌剤としてオゾンの使用を中心に説明する。
【0006】
滅菌の前または最中に大気(雰囲気、空気)を加湿するのが有利であることが一般的に知られている。空気の加湿は、環境中へのオゾン導入の前、それと同時に、またはそれに続いて、通常は温度が10℃〜45℃である環境中に、好適なノズルから水滴の霧を噴霧することにより、または蒸気を通すことにより、達成することができる。湿度が高い程良い−水が、恐らく、特に強力な酸化体であるヒドロキシルラジカルの形成により、オゾンの効果を高めると考えられるが、これは、実際に支配している条件によって異なることがある。現在、約70%の相対湿度を超えるように加湿するのが好ましいと考えられるが、他の湿度レベルも使用できる。
【0007】
上記のように、オゾンは水蒸気と反応し、特に強力な酸化体であるヒドロキシルラジカルを形成することができ、非常に活性が高い試剤はこのヒドロキシルラジカルであろう。三重反応におけるヒドロキシルラジカルの組合せにより、やはり強力な防腐剤特性を有する過酸化水素も形成されるであろう。
【0008】
オゾンは、好適なオゾン発生器から、例えば酸素の紫外光照射または電気的技術、例えばコロナ放電またはプラズマ形成が関与する技術、から形成することができる。好ましくは、酸素の供給源は、好ましくない窒素酸化物の形成を最少に抑えるために、限られた量の窒素(例えば15%未満)だけを含む。オゾンの供給源として空気も使用できるが、純粋な酸素または酸素濃度を高めた空気を使用するのが好ましい。
【0009】
環境中のオゾン量は、存在する汚染物の全てを破壊するのに十分なレベルで、及び時間維持すべきである。典型的な値は、少なくとも10〜50ppmオゾン、好ましくは20〜40ppmオゾンで20〜120分間、好ましくは30〜60分間である。
【0010】
オゾン及びその誘導体が環境を除染した後、ファンを使用し、環境の空気(雰囲気)をフィルターを通して適切に循環させ、存在する可能性がある粒子状物質を除去し、次いで、環境が、存在する人間または動物に対して安全になるように、触媒上を通し、残留オゾン及びその誘導体、例えば過酸化水素、を酸素または酸素及び水に転化する。
【0011】
上記の手順は、加湿、オゾンレベルを予め決められた期間維持し、その後これらのスイッチを切り、特殊な触媒を通して大気を流し、オゾンを安全レベルに下げるためのコンピュータ制御装置を使用して達成することができる。センサーがこの制御を行うための入力を与え、コンピュータが除染に必要な時間及びオゾンを安全レベルに下げるのに必要な時間を信頼性良く予測する。
【0012】
先行技術は、活性オゾン分解触媒が、金属成分、例えば白金、または酸化物、例えばマンガン及び他の遷移金属元素の酸化物、を含む処方物を包含することを示唆している。驚くべきことに、我々は、常温で高オゾンレベル及び高湿度が関与するこの用途では、白金触媒が効果的に作用しないことを見出した。やや良好な初期性能が観察されたが、失活は非常に急速であった。これは、活性箇所に対する水及び/または酸素化学種の強い吸着によるものであり、このオゾン−破壊用途は、達成が非常に困難であるという事実を強調している。高度に担持されたMnO触媒は、良好な初期活性を有し、最初は白金より優れているが、使用中に急速に失活する。我々は、150℃で一晩真空炉処理し、吸着された化学種を除去することにより、失われた活性の一部が回復することを見出したが、急速な失活と遅い再生の組合せにより、この触媒が実用的な解決策ではないことは明らかである。
【0013】
幾つかの先行技術は、酸化銀/MnO触媒が非常に良好なオゾン分解活性を有することを示唆している。酸化銀/MnO触媒を調製し、試験したが、これらの触媒は、低温における非常に高い湿度及び非常に高いオゾン濃度の特別な条件下では、やはり急速に失活した。特に湿度が触媒失活の原因であると考えられ、このことを支持する幾つかの実験的な証拠があった。
【発明の概要】
【0014】
我々は、低レベルの助触媒の存在が、本願における酸化銀触媒の触媒性能に大きな影響を及ぼすことを見出した。最適化方法により、アルミナを含む酸化銀触媒処方物は、比較的乏しい初期性能を有し、僅かに使用しただけで非常に大きく失活し、シリカを含む酸化銀の性能は、より優れているが、シリカ及びチタニアを含む酸化銀は、性能が驚く程、優れており、この性能を長期間の使用サイクルにわたって維持することが分かった。チタニアを含む酸化銀は、シリカ/チタニア担体と比較して活性が改良されていると思われる。
【0015】
従って、第一の態様で、本発明は、オゾンまたは他の滅菌剤を破壊するための、酸化銀、チタニア及び所望によりMnOを触媒の10重量%までの量で含んでなる触媒を提供する。
【0016】
第二の態様で、本発明は、オゾンまたは他の滅菌剤を大気から除去する方法であって、該大気を、酸化銀、チタニア及び所望によりMnOを触媒の10重量%までの量で含んでなる触媒の上を通過させる、方法を提供する。
【0017】
第三の態様で、本発明は、閉じ込められた(閉塞)空間を滅菌する方法であって、該空間中の大気を加湿し、続いて、または同時に、予め決められた期間内に滅菌を達成する量のオゾンまたは他の滅菌剤を供給すること、次いで該大気を、酸化銀、チタニア及び所望によりMnOを触媒の10重量%までの量で含んでなる触媒の上を通過させることにより、該滅菌剤を接触破壊することを含んでなる、方法を提供する。
【発明の詳細な説明】
【0018】
上記のように、触媒は、酸化銀及びチタニアを含んでなるが、少量の二酸化マンガンも包含することができる。二酸化マンガンが存在する場合、その量は触媒の10重量%以下である。触媒は、少量の、典型的には触媒の15重量%までの、シリカも包含することができる。
【0019】
酸化銀とチタニア及び存在する場合、他の酸化物の比は、従来の最適化技術により決定することができるが、好ましくは、触媒は、少なくとも60重量%の酸化銀、より好ましくは少なくとも70重量%、さらに好ましくは少なくとも80重量%の酸化銀を含んでなる。
【0020】
触媒は、公知の技術を使用して調製し、平行通路を有する、フロースルー型の、例えばセラミックまたは好適なステンレス鋼材料から製造された、従来のハニカムモノリス上に担持させることができる。触媒活性成分及び粒子状担体を含んでなるウォッシュコートを使用して担体を被覆する方法は十分に確立されている。フロースルーセラミックハニカム担体に対する我々の予備試験では、約1.5〜2.5g/立方インチのウォッシュコート装填量を使用している。具体的な触媒製造技術及びウォッシュコート/触媒装填量は、従来の様式で特定の用途に対して最適化することができる。
【0021】
担持された触媒では、実際的な用途、特に携帯用装置、におけるファンサイズ制限のために、圧損は低いことが重要である。フロースルー触媒は、通常、セラミックマットと共に保持され、その末端に好適な連結装置を有する金属(例えばステンレス鋼)円筒中に収容される。そのような配置は、自動車用触媒転化器で良く知られている。
【0022】
触媒は、ガスがフィルター壁を通って流れるように交互の通路末端を塞いだウォールフローフィルター上に担持することができる。触媒は、フィルター壁上及び/または中に堆積させ、それによって、背圧は増加するが、触媒をより効果的に利用することができる。フォームまたはペレット型の触媒も、好ましくはステンレス鋼または他の耐オゾン性材料から製造された好適な容器中で使用することができる。別の担体、例えば高表面積焼結金属モノリス、静止ミキサー(static mixer)と呼ばれる金属装置、及び部分的フィルター構造、も適宜使用できる。
【0023】
ウォッシュコート中に結合剤として少量のシリカを配合することにより、フロースルーまたはフィルター型担体に対するウォッシュコートの密着性が改良されると期待されるが、我々が製造した触媒のどれでも、密着性の問題には直面していない。
【0024】
銀含有触媒は、特に低温で、特に低または高酸化状態にある硫黄化合物、例えばHS及びSOにより、被毒に敏感になることがある。作動装置中でこれらの触媒上を通過する空気の量は非常に大きいので、少量の毒でも、少なくともある程度の失活を急速に引き起こすことがある。従って、上流にある少量の、毒に対する親和力が高い保護材料で触媒を保護することにより、触媒の寿命を引き伸ばすことを提案する。そのような保護材料は、高表面積酸化亜鉛(HS用)及び、ハロゲン化物を捕獲するための、アルカリ性付与した高表面積材料、例えばアルカリ性付与したアルミナ、の2つの個別相または混合物でよい。保護材料は、好適な容器に入れた、ペレットまたは他の固体形態にあるか、またはフロースルーセラミックまたは金属モノリスハニカム上に被覆することができる。
【0025】
ここに記載する我々の作業例は、全て単一の触媒担体、直径10.5インチ、長さ6インチ(約26.67cmx15.24cm)(400cpsi、6mil通路壁)を使用しているが、これは都合上使用しているのであって、他の触媒担体も効果的であると考えられる。平行に配置した複数の小型触媒は、より高い融通性を与えることができる、例えば各触媒が独自のファンを備え、これらのスイッチを順次オンにすることにより、ソフトスタートモーター手順、等を有するコストを節約することができる。触媒担体の他の標準的な直径ならびに全体的な形状も考慮することができ、上記のように、それぞれが独自のファンを備えることにより、空気流方向、等により高い融通性が得られると共に、より経済的になる。
【0026】
本発明の触媒は、高い空間速度範囲全体にわたって、一般的に使用されている触媒よりも効果的である、すなわち、閉じ込められた空間がより急速に安全になる。既存の市販装置による従来空気流速度は、650〜750m/hrであり、触媒空間速度77〜89x10/hr−1に等しい。我々の初期試験では、触媒空間速度47〜213x10/hr−1に相当する空気流速度400〜1000m/hrに変化させた。試験で使用した室におけるオゾンレベルは、空間速度増加と比例して、より急速に低下した。
【0027】
さらなる調査研究により、本発明の触媒を比較的低い温度及び比較的高い湿度で操作することにより、1より高い酸化状態を有する銀化学種の形成を引き起すことが分かった。これは、X線回折研究により確認された。使用済み触媒の、室温、窒素中における水素による還元は、より高い酸化状態の材料も還元したが、Ag酸化物の量は増加せず、活性は回復しなかった。
【0028】
我々は、使用済み触媒中にある高酸化状態銀材料は、中程度の温度における空気中熱処理により、効果的に再生できることを発見した。例えば、空気中、150℃で加熱することにより、高酸化状態材料の全て、または実質的に全てが、活性Ag酸化物形態に転化された。触媒は、その場で、または専用(dedicated)装置中で再生させることができる。
【0029】
触媒を高温、例えば200℃、で操作することにより、失活を回避できようが、これは、例えば病院で室を除染する場合は、一般的に実用的ではない。
【0030】
従って、触媒の上流に電気ヒーターを配置し、これを定期的に作動させ、流量を下げながら、触媒の上を流れる空気の温度を増加させるのが好ましい。再生に好適な温度は130〜250℃であり、期間は5分間〜10時間、15分間〜5時間が好都合である。有利な再生様式は、触媒がその性能を長期間にわたって維持するように、触媒を短時間、頻繁に再生させることであろう。
【0031】
ここで、下記の例により、本発明をさらに説明する。
触媒例
【0032】
触媒A(比較用)Pt/Alの調製
分散性アルミナ(1250g)を、希釈した硝酸を加えてpH4に調節した脱イオン水(3.5リットル)に入れ、高せん断ミキサーで攪拌することにより、分散させた。分散させた混合物を、セリア/ジルコニアボールを使用して30分間ボールミルでd50粒子径5ミクロン未満に処理し、次いで、連続的に攪拌しながら、ヒドロキシエチルセルロース(Aqualonから市販のNatrosol)(6.5g)を加え、コージーライトモノリスハニカム、直径10.5インチ、高さ6インチ、400平方通路/平方インチ、壁厚6/1000インチ、に容易に塗布できる被覆混合物を形成した。過剰のウォッシュコートを高圧エアガンで除去してから、90℃で45分間乾燥させた。このウォッシュコート処理したモノリスハニカムを500℃で1時間か焼した後、モノリスハニカム上のアルミナの重量は1145gであった。か焼したハニカムを、硝酸白金(9.6g白金/リットル)及びクエン酸(100g/リットル)を含む水溶液で含浸させ、空気流中、90℃で乾燥させてから、500℃で2時間か焼した。この被覆したモノリスは、白金12.0gを含んでいた。
【0033】
触媒D(比較用)MnO/Alの調製
KMnO(水4リットル中210g) の高温(65℃)水溶液及びMnSO(水6リットル中300g)を混合することにより、二酸化マンガンを調製し、得られた暗褐色沈殿物を65℃でさらに3時間攪拌した。次いで、沈殿物を濾別し、温脱イオン水で洗浄し(3x1リットル)、加熱炉中110℃で一晩乾燥させ、活性形態のMnO(245g)を得た。この調製を必要に応じて繰り返し、必要な量のMnOを得た。続いて、Alfa Aesarから活性化された酸化マンガン(IV)として購入したMnOは、類似の結果で代替できることが分かった。脱イオン水(1.2リットル)に、高せん断ミキサー中で攪拌しながら、MnO(900g)及び分散性Al(100g)を加え、十分に混合された一様なスラリーを得た。次いでこれを、セリア/ジルコニアボールを使用して3時間ボールミル処理し、d50粒子径5ミクロン未満を得た。次いで、脱イオン水及びヒドロキシエチルセルロース(Aqualonから市販のNatrosol)(20.2g)を加え、コージーライトハニカム、直径10.5インチ、高さ6インチ、400平方通路/平方インチ、壁厚6/1000インチ、に容易に塗布できる被覆混合物を形成した。過剰のウォッシュコートを高圧エアガンで除去し、空気流中、90℃で1時間乾燥させた後、得られた被覆されたモノリスはウォッシュコート901gを有していた。
【0034】
触媒E(比較用)MnO/Alの調製
Alfa Aesarから活性化された酸化マンガン(IV)として購入した二酸化マンガン(1039g)を脱イオン水(1.2リットル)及び分散性Al(104g)に高せん断ミキサー中で攪拌しながら加え、十分に混合された一様なスラリーを得た。次いでこれを、セリア/ジルコニアボールを使用して3時間ボールミル処理し、d50粒子径5ミクロン未満を得た。次いで、脱イオン水及びヒドロキシエチルセルロース(Aqualonから市販のNatrosol)(6.7g)を加え、コージーライトハニカム、直径10.5インチ、高さ6インチ、400平方通路/平方インチ、壁厚6/1000インチ、に容易に塗布できる被覆混合物を形成した。過剰のウォッシュコートを高圧エアガンで除去し、空気流中、90℃で1時間乾燥させた後、得られた被覆されたモノリスはウォッシュコート1030gを有していた。
【0035】
触媒F(比較用)AgO/MnO/TiO/SiOの調製
脱イオン水(1.2リットル)に、高せん断ミキサー中で攪拌しながら、酸化銀(441g)、MnO(441g)、TiO(156g)及びSiO(104g) を加え、十分に混合された一様なスラリーを得た。次いでこれを、セリア/ジルコニアボールを使用して3時間ボールミル処理し、d50粒子径5ミクロン未満を得た。次いで、脱イオン水及びキサンタンガム、Rhone-Poulenc SAから市販のRhodapol(20.2g)を加え、コージーライトハニカム、直径10.5インチ、高さ6インチ、400平方通路/平方インチ、壁厚6/1000インチ、に容易に塗布できる特性を有する被覆混合物を形成した。過剰のウォッシュコートを高圧エアガンで除去し、空気流中、90℃で1時間乾燥させた後、得られた被覆されたモノリスはウォッシュコート1017gを有していた。
【0036】
触媒G(比較用)MnO/AgO/TiO/SiOの調製
脱イオン水(1.2リットル)に、高せん断ミキサー中で攪拌しながら、酸化銀(707g)、MnO(177g)、TiO(156g)及びSiO(104g) を加え、十分に混合された一様なスラリーを得た。次いでこれを、セリア/ジルコニアボールを使用して3時間ボールミル処理し、d50粒子径5ミクロン未満を得た。次いで、脱イオン水及びキサンタンガム、Rhone-Poulenc SAから市販のRhodapol (20.2g)を加え、コージーライトハニカム、直径10.5インチ、高さ6インチ、400平方通路/平方インチ、壁厚6/1000インチ、に容易に塗布できる特性を有する被覆混合物を形成した。過剰のウォッシュコートを高圧エアガンで除去し、空気流中、90℃で1時間乾燥させた後、得られた被覆されたモノリスはウォッシュコート1109gを有していた。
【0037】
触媒H MnO/AgO/TiO/SiOの調製
脱イオン水(1.2リットル)に、高せん断ミキサー中で攪拌しながら、酸化銀(960g)、MnO(25g)、TiO(156g)及びSiO(104g) を加え、十分に混合された一様なスラリーを得た。次いでこれを、セリア/ジルコニアボールを使用して3時間ボールミル処理し、d50粒子径5ミクロン未満を得た。次いで、脱イオン水及びキサンタンガム、Rhone-Poulenc SAから市販のRhodapol (20.2g)を加え、コージーライトハニカム、直径10.5インチ、高さ6インチ、400平方通路/平方インチ、壁厚6/1000インチ、に容易に塗布できる特性を有する被覆混合物を形成した。過剰のウォッシュコートを高圧エアガンで除去し、空気流中、90℃で1時間乾燥させた後、得られた被覆されたモノリスはウォッシュコート1208gを有していた。
【0038】
触媒I AgO/TiO/SiOの調製
脱イオン水(1.2リットル)に、高せん断ミキサー中で攪拌しながら、酸化銀(986g)、TiO(156g)及びSiO(104g) を加え、十分に混合された一様なスラリーを得た。次いでこれを、セリア/ジルコニアボールを使用して3時間ボールミル処理し、d50粒子径5ミクロン未満を得た。次いで、脱イオン水及びキサンタンガム、Rhone-Poulenc SAから市販のRhodapol (20.2g)を加え、コージーライトハニカム、直径10.5インチ、高さ6インチ、400平方通路/平方インチ、壁厚6/1000インチ、に容易に塗布できる特性を有する被覆混合物を形成した。過剰のウォッシュコートを高圧エアガンで除去し、空気流中、90℃で1時間乾燥させた後、得られた被覆されたモノリスはウォッシュコート1147gを有していた。
【0039】
触媒J(比較用)AgO/SiOの調製
脱イオン水(1.2リットル)に、高せん断ミキサー中で攪拌しながら、酸化銀(986g)及びSiO(260g)を加え、十分に混合された一様なスラリーを得た。次いでこれを、セリア/ジルコニアボールを使用して3時間ボールミル処理し、d50粒子径5ミクロン未満を得た。次いで、脱イオン水及びキサンタンガム、Rhone-Poulenc SAから市販のRhodapol (20.2g)を加え、コージーライトハニカム、直径10.5インチ、高さ6インチ、400平方通路/平方インチ、壁厚6/1000インチ、に容易に塗布できる特性を有する被覆混合物を形成した。過剰のウォッシュコートを高圧エアガンで除去し、空気流中、90℃で1時間乾燥させた後、得られた被覆されたモノリスはウォッシュコート1205gを有していた。
【0040】
触媒K(比較用)AgO/Alの調製
脱イオン水(1.2リットル)に、高せん断ミキサー中で攪拌しながら、酸化銀(Johnson Matthey)(986g)及び分散性Al(260g)を加え、十分に混合された一様なスラリーを得た。次いでこれを、セリア/ジルコニアボールを使用して3時間ボールミル処理し、d50粒子径5ミクロン未満を得た。次いで、脱イオン水及びキサンタンガム、Rhone-Poulenc SAから市販のRhodapol (26.9g)を加え、コージーライトハニカム、直径10.5インチ、高さ6インチ、400平方通路/平方インチ、壁厚6/1000インチ、に容易に塗布できる特性を有する被覆混合物を形成した。過剰のウォッシュコートを高圧エアガンで除去し、空気流中、90℃で1時間乾燥させた後、得られた被覆されたモノリスはウォッシュコート1185gを有していた。
【0041】
触媒L AgO/TiOの調製
脱イオン水(1.2リットル)に、高せん断ミキサー中で攪拌しながら、酸化銀(986g)及びTiO(Millennium Inorganic Chemicals)(260g)を加え、十分に混合された一様なスラリーを得た。次いでこれを、セリア/ジルコニアボールを使用して3時間ボールミル処理し、d50粒子径5ミクロン未満を得た。次いで、脱イオン水を加え、キサンタンガム、Rhone-Poulenc SAから市販のRhodapol (20.2g)を攪拌しながら加え、コージーライトハニカム、直径10.5インチ、高さ6インチ、400平方通路/平方インチ、壁厚6/1000インチ、に容易に塗布できる特性を有する被覆混合物を形成した。過剰のウォッシュコートを高圧エアガンで除去し、空気流中、90℃で1時間乾燥させた後、得られた被覆されたモノリスはウォッシュコート1143gを有していた。
試験手順
【0042】
病院の患者隔離室に典型的な、容積72立方体メートルを有する室を、室の中央にある高さ約1メートルの装置中で互いに120°に配置した3個のノズルを通して脱イオン水を噴霧することにより、予め決められた相対湿度レベルに加湿した。Pacific Ozone Technologにより製造されたプラズマオゾン発生器を使用して純粋酸素のシリンダーから誘導したオゾンを、室中で予め決められたレベルに維持された速度で、室中に放出した。オゾン及び相対湿度センサーから測定値を得るコンピュータ装置を、湿度及びオゾンの両方を所望のレベルに少なくとも30分間維持した室中に配置した。次いで、オゾン発生器のスイッチを切り、コンピュータ制御装置を介して加湿を停止した。
【0043】
次いで、好適なファンを使用することにより、制御装置が室中の空気を、オゾン分解触媒を通して循環させ、室中に存在する過剰のオゾンを除去した。触媒を通る空気の流れ及びオゾンの濃度をセンサーにより測定し、コンピュータがデータを記録した。
結果
【0044】
室中のオゾン濃度と時間の関係を示す減衰曲線により指数減衰を得た。これは、良好な一次過程であった。僅かな、またはある程度の失活を受ける触媒には、この関係により、触媒を通る空気流量、温度、等の特定の条件下での一次分解速度定数が与えられるとして、環境中の残留オゾンが特定のレベルに到達するのに必要な時間を正確に計算することができる。失活係数をこれらの計算に適用し、病院、等におけるコンピュータ制御装置に現場で使用することができる。
【0045】
72立方メートルの室で様々な種類の触媒に対して得た結果の概要を表1に示す。
【0046】
【表1】

【0047】
我々は、この用途における触媒におおよその順位を与えるための性能及び寿命係数(PLC)を、PLC=(N仕事サイクル後の半減期−初期半減期)/Nと定義した。一般的に、PLCの値が低い程、その触媒は優れているが、初期性能が不十分である場合、そのPLCは不確かである。
【0048】
驚くべきことに、様々な確立されたオゾン分解触媒が、活性を非常に急速に失い、これは、触媒作用に関しては比較的低い温度である室温において、オゾン及び湿度のレベルが非常に高いという異常に厳しい条件によるものであると思われる。
【0049】
本発明の触媒は、多くの使用/再生サイクル全体にわたって性能を明らかに損なうことなく、オゾンのレベルを、人を露出しても安全であるとして受け容れられているレベルに驚く程急速に下げるのに必要な、99.4%を超える非常に高いオゾン転化率を達成した。
結果に対する考察
【0050】
1.触媒A
白金触媒(長さ6インチ、40g/ft)による最初の試験は、10分間を少し超える初期半減期を有していたが、これは、3回の実験の後、非常に高い空気流量でも19.5分間に増加したことを示している。これは、室におけるオゾンの自然減衰に対する半減期、典型的には20.7分間よりも非常に優れている訳ではない。従って、白金触媒は、初期性能が良くなく、活性を急速に失うので、白金触媒の性能は、この用途には不十分であると結論付けた。
【0051】
2.触媒D及びE
酸化マンガン/アルミナ触媒に対する予備試験は、触媒Aより遙かに優れた性能、約3分間の半減期を有することを示していた。しかし、耐久性は好ましくなく、触媒Dの半減期は7回の実験後に約15分間であった。ここでは、異なった湿度で試験した触媒D及びEを比較して、高い湿度が重要なファクターであることを示している。湿度が低い程、触媒寿命は長く、使用済み触媒の脱水により、その性能が改良された。
【0052】
3.触媒F、G、及びH
チタニア及びシリカを含む酸化マンガン触媒に酸化銀を添加することにより、存在する酸化銀の量に比例して、及び存在する二酸化マンガンの量に反比例して、性能が改良される。特に、これらの3種類の触媒の中で、酸化銀含有量が最も高く、二酸化マンガン含有量が最も低い触媒Hは、試験の時に得られた明らかに最良の半減期、すなわち18回の試験の後で3.7分間、を有していた。
【0053】
4.触媒I
この触媒は、シリカ及びチタニアに対する酸化銀の比率が大きく、酸化マンガンを含まない。性能は実際非常に良く、良好な活性を、半減期が3.7分間になる32回の試験まで維持している。
【0054】
5.触媒J、K及びL
これらの触媒は、酸化銀含有触媒で、アルミナ、シリカ及びチタニアの1種類だけを添加する効果を立証するために調製した。触媒Jは性能が劣っており(初期半減期8.8分間) 、アルミナの、オゾン分解における酸化銀の性能に対する効果が乏しいことを示している。触媒Kの性能は、かなり良いが、初期半減期が4.2分間であり、傑出してはいない。しかし、酸化銀をチタニアと共に含む触媒Lは、非常に良い半減期3.1分間を有し、耐久性が良好である。
【0055】
触媒再生の例
現在、試験した中で2種類の最も良い触媒は、触媒I(酸化銀/チタニア/シリカ)及び触媒L(酸化銀/チタニア)であると考えられ、両方をさらに試験する。
【0056】
使用済みの性能が乏しい触媒IのX線回折パターンは、AgOに特徴的な低強度反射だけを含み支配的な銀相は混合酸化状態化学種AgAgIIIである。この触媒を空気中、150℃で3.5時間加熱することにより、混合酸化状態化学種がAgOに定量的に転化され、触媒活性が回復することが分かった。前に記載した試験手順で、16℃におけるオゾン分解に対する半減期は3.8分間であり、17℃で行った。2回目の実験では3.5分間であり、この触媒の本来の性能に類似している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オゾンまたは他の滅菌剤を破壊するための触媒であって、
酸化銀及びチタニアからなるものである、触媒。
【請求項2】
オゾンまたは他の滅菌剤を破壊するための触媒であって、
酸化銀、チタニア及び必要に応じてMnOを触媒の10重量%までの量で含んでなる、触媒。
【請求項3】
さらにシリカを含んでなる、請求項1または2に記載の触媒。
【請求項4】
触媒担体上に堆積させた、請求項1〜3のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項5】
前記触媒担体が、セラミックまたは金属フロースルーモノリスである、請求項4に記載の触媒。
【請求項6】
ペレットまたは成形された押出物の形態にある、請求項1〜3のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項7】
上流に存在する、硫黄及び/またはハロゲン化物用の保護床と組み合わせてなる、請求項1〜6のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項8】
一個以上の保護床をさらに含んでなる、請求項1〜7のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項9】
大気からオゾンまたは他の滅菌剤を除去する方法であって、
前記大気を、請求項1〜8のいずれか一項に記載の触媒上を通過させることを含んでなる、方法。
【請求項10】
閉じ込められた空間を滅菌する方法であって、
空間中の大気を加湿し、続いて、または同時に、
予め決められた期間内に滅菌を達成する量のオゾンまたは他の滅菌剤を供給し、次いで
前記大気を、請求項1〜8のいずれか一項に記載の触媒上を通過させ、
前記滅菌剤を接触破壊することを含んでなる、方法。
【請求項11】
前記触媒を再生することをさらに含んでなる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記触媒が、空気中で加熱することにより再生されてなる、請求項11に記載の方法。

【公表番号】特表2012−511422(P2012−511422A)
【公表日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−540211(P2011−540211)
【出願日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際出願番号】PCT/GB2009/051686
【国際公開番号】WO2010/067120
【国際公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【出願人】(590004718)ジョンソン、マッセイ、パブリック、リミテッド、カンパニー (152)
【氏名又は名称原語表記】JOHNSON MATTHEY PUBLIC LIMITED COMPANY
【Fターム(参考)】