触媒及びその製造方法ならびにその用途
【課題】酸性電解質中や高電位で腐食せず、耐久性に優れ、高い酸素還元能を有する触媒を提供する。
【解決手段】一種以上の3族の遷移金属化合物と、結晶子サイズが1〜100nmの範囲である一種以上の4族または5族の遷移金属酸化物とを含む金属炭窒酸化物であることを特徴とする触媒で、3族の遷移金属化合物が、スカンジウム、イットリウム、ランタン、セリウム、サマリウム、ジスプロシウム及びホルミウムからなる群から選ばれる一種以上の化合物であり、4族または5族の遷移金属酸化物が、チタン、ジルコニウム、タンタル及びニオブからなる群から選ばれる一種以上の酸化物である。
【解決手段】一種以上の3族の遷移金属化合物と、結晶子サイズが1〜100nmの範囲である一種以上の4族または5族の遷移金属酸化物とを含む金属炭窒酸化物であることを特徴とする触媒で、3族の遷移金属化合物が、スカンジウム、イットリウム、ランタン、セリウム、サマリウム、ジスプロシウム及びホルミウムからなる群から選ばれる一種以上の化合物であり、4族または5族の遷移金属酸化物が、チタン、ジルコニウム、タンタル及びニオブからなる群から選ばれる一種以上の酸化物である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は触媒及びその製造方法ならびにその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池には、電解質の種類や電極の種類により種々のタイプに分類され、代表的なものとしては、アルカリ型、リン酸型、溶融炭酸塩型、固体電解質型、固体高分子型がある。この中でも低温(−40℃程度)から120℃程度で作動可能な固体高分子型燃料電池が注目を集め、近年、自動車用低公害動力源としての開発・実用化が進んでいる。固体高分子型燃料電池の用途としては、車両用駆動源や定置型電源が検討されているが、これらの用途に適用されるためには、長期間に渡る耐久性が求められている。
【0003】
この高分子固体形燃料電池は、高分子固体電解質をアノードとカソードとで挟み、アノードに燃料を供給し、カソードに酸素または空気を供給して、カソードで酸素が還元されて電気を取り出す形式である。燃料には水素またはメタノールなどが主として用いられる。
【0004】
従来、燃料電池の反応速度を高め、燃料電池のエネルギー変換効率を高めるために、燃料電池のカソード(空気極)表面やアノード(燃料極)表面には、触媒を含む層(以下「燃料電池用触媒層」とも記す。)が設けられていた。
【0005】
この触媒として、一般的に貴金属が用いられており、貴金属の中でも高い電位で安定であり、活性が高い白金が、主として用いられてきた。しかし、白金は価格が高く、また資源量が限られていることから、代替可能な触媒の開発が求められていた。
【0006】
また、カソード表面に用いる貴金属は酸性雰囲気下では、溶解する場合があり、長期間に渡る耐久性が必要な用途には適さないという問題があった。このため酸性雰囲気下で腐食せず、耐久性の優れ、高い酸素還元能を有する触媒の開発が強く求められていた。
【0007】
白金に代わる触媒として、炭素、窒素、ホウ素等の非金属を含む材料が触媒として近年着目されている。これらの非金属を含む材料は、白金などの貴金属と比較して価格が安く、また資源量が豊富である。
【0008】
非特許文献1では、ジルコニウムをベースとしたZrOxN化合物に、酸素還元能を示すことが報告されている。
【0009】
特許文献1では、白金代替材料として長周期表4族,5族及び14族の元素群から選ばれる1種以上の窒化物をふくむ酸素還元電極材料が開示されている。
【0010】
しかしながら、これらの非金属を含む材料は、触媒として実用的に充分な酸素還元能が得られていないという問題点があった。
【0011】
また、特許文献2では、炭化物、酸化物、窒化物を混合し、真空、不活性または非酸化性雰囲気下、500〜1500℃で熱処理をした炭窒酸化物が開示されている。
【0012】
しかしながら、特許文献2に開示されている炭窒酸化物は、薄膜磁気ヘッドセラミックス基板材料であり、この炭窒酸化物を触媒として用いることは検討されていない。
【0013】
なお、白金は、上記燃料電池用の触媒としてだけでなく、排ガス処理用触媒または有機合成用触媒としても有用であるが、白金は価格が高く、また資源量が限られているため、これらの用途においても代替可能な触媒の開発が求められていた。
【非特許文献1】S. Doi,A. Ishihara,S. Mitsushima,N. kamiya,and K. Ota, Journal of The Electrochemical Society, 154 (3) B362−B369 (2007)
【特許文献1】特開2007−31781号公報
【特許文献2】特開2003−342058号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明はこのような従来技術における問題点の解決を課題としており、本発明の目的は、酸性電解質中や高電位で腐食せず、耐久性に優れ、高い酸素還元能を有する触媒を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、上記従来技術の問題点を解決すべく鋭意検討した結果、一種以上の3族の遷移金属化合物と、結晶子サイズが1〜100nmの範囲である一種以上の4族または5族の遷移金属酸化物とを含む前記4族または5族の金属炭窒酸化物混合物が、酸性電解質中や高電位で腐食せず、耐久性に優れ、高い酸素還元能を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0016】
本発明は、たとえば以下の(1)〜(11)に関する。
(1)
一種以上の3族の遷移金属化合物と、結晶子サイズが1〜100nmの範囲である一種以上の4族または5族の遷移金属酸化物とを含む前記4族または5族の遷移金属炭窒酸化物混合物であることを特徴とする触媒。
【0017】
(2)
3族の遷移金属化合物が、スカンジウム、イットリウム、ランタン、セリウム、サマリウム、ジスプロシウム及びホルミウムからなる群から選ばれる一種以上の化合物であることを特徴とする(1)に記載の触媒。
(3)
4族または5族の遷移金属酸化物が、チタン、ジルコニウム、タンタル及びニオブからなる群から選ばれる一種以上の酸化物であることを特徴とする(1)に記載の触媒。
(4)
(1)〜(3)のいずれかに記載の燃料電池用触媒。
【0018】
(5)
一種以上の3族の遷移金属化合物と一種以上の4族または5族の遷移金属酸化物とを含む前記金属炭窒化物混合物を得る工程と、
前記金属炭窒化物混合物を酸素含有ガス中で熱処理して前記金属炭窒酸化物混合物を得る工程とを含むことを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の金属炭窒酸化物混合物触媒の製造方法。
(6)
(1)〜(4)のいずれかに記載の触媒を含むことを特徴とする燃料電池用触媒層。
【0019】
(7)
さらに電子伝導性粒子を含むことを特徴とする(6)に記載の燃料電池用触媒層。
(8)
(6)または(7)のいずれかに記載の燃料電池用触媒層と、多孔質支持層とを有することを特徴とする電極。
【0020】
(9)
カソードとアノードと前記カソード及び前記アノードの間に配置された電解質膜とを有する膜電極接合体であって、前記カソード及び/または前記アノードが(8)に記載の電極であることを特徴とする膜電極接合体。
【0021】
(10)
(9)に記載の膜電極接合体を備えることを特徴とする燃料電池。
【0022】
(11)
(9)に記載の膜電極接合体を備えることを特徴とする固体高分子形燃料電池。
【発明の効果】
【0023】
本発明の触媒は、酸性電解質中や高電位で腐食せず、安定であり、高い酸素還元能を有し、かつ白金と比べ安価である。したがって、前記触媒を備えた燃料電池は、比較的安価で性能が優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
<触媒>
本発明の触媒は、一種以上の3族の遷移金属化合物と、結晶子サイズが1〜100nmの範囲である一種以上の4族または5族の遷移金属酸化物とを含む金属炭窒酸化物混合物からなることを特徴としている。
【0025】
本発明の触媒における3族の遷移金属化合物、4族または5族の遷移金属酸化物の割合や結晶子サイズは、リートベルト解析によって求めることができる。
【0026】
従来から、複数の結晶相を有する物質の結晶構造を特定するための解析方法として「リートベルト解析」と呼ばれる解析法が知られている。以下、その詳細について説明する。
【0027】
リートベルト解析では、まずX線回折法(XRD法)により被解析試料の実測回折パターンを得て、この実測回折パターンと、近似計算式に基づく計算回折パターンとを一致させるように、当該近似計算式に含まれる各種パラメータを精密化する、いわゆるパターンフィッティングという解析手法が用いられる。そして、このようにして各種パラメータが精密化されると、そのうちの特定のパラメータの値から、複数の結晶相(例えば単斜相、正方晶、立方晶)の割合や、各結晶子のサイズ結晶子径)を算出することができる。
【0028】
この際、精密な解析パラメータを得るために、測定する回折角度2θは10〜110°であることが好ましい。同様に、測定する回折角度間隔は0.02°以下であることが好ましい。更に同様に、測定する時間は、得られるX線回折パターンの最大ピークの回折強度が5000以上になるように設定することが好ましい。このリートベルト解析をするためには、RIETAN−2000などのリートベルト解析用のソフトウェアを使用することができる。
本発明の触媒は、少なくとも一種以上の3族の遷移金属化合物を含む。3族の遷移金属元素はランタノイド、アクイノイドのいずれかであってもよい。
【0029】
特に、3族の遷移金属化合物の元素として好ましくは、スカンジウム、イットリウム、ランタン、セリウム、サマリウム、ジスプロシウム及びホルミウムからなる群のいずれか一種以上である。
【0030】
詳細は不明であるが、一般に3族の遷移金属元素は4族または5族の遷移金属酸化物中に固溶しやすい。4族または5族の遷移金属酸化物中では、3族の遷移金属元素は欠陥となり、4族または5族の遷移金属酸化物の結晶成長を抑制するため粒径が小さくなると考えられる。
【0031】
粒径が小さくなると比表面積が大きくなり、触媒として好ましい。また、欠陥となる点が活性点として作用し、触媒活性を高めるものと推察している。
【0032】
3族の遷移金属化合物の添加量は、金属種によって異なるが、触媒中の全遷移金属化合物中の0.1〜20モル%が好ましい。3族の遷移金属化合物の添加量が0.1モル%より少ないとその効果が少なくなる恐れがある。また、3族の遷移金属化合物の添加量が20モル%より多いと、金属炭窒酸化物混合物の触媒作用を減じてしまう恐れがあり好ましくない。
【0033】
3族の遷移金属元素は、4族または5族の遷移金属酸化物に一部固溶して作用していると考えているが、元素の種類やその添加量によっては3族の遷移金属酸化物として検出されることもある。
【0034】
酸性電解質中や高電位で腐食しないことから、4族または5族の遷移金属のいずれか1つは金属炭窒酸化物であることが好ましい。特に、チタン、ジルコニウム、タンタル、ニオブのいずれか1つであることが好ましい。
【0035】
ここでいう、4族または5族の遷移金属酸化物とは、リートベルト解析で精密化して近似値として一致するものをいう。また、リートベルト解析で得られる4族または5族の遷移金属酸化物の1つの結晶子サイズが1〜100nmである。好ましくは、3〜80nmである。さらに好ましくは、5〜50nmである。結晶子サイズが1nmより小さいと粒子が凝集して扱いにくく好ましくない。結晶子サイズが100nmより大きいと、触媒面積が小さくなり高い酸素還元能が得られない恐れがあり好ましくない。
本発明の触媒の製造方法は特に限定されない。
【0036】
例えば、本発明は、3族の遷移金属化合物のうちいずれか一種を含み、4族または5族の遷移金属酸化物のいずれか一種を含む前記4族または5族の遷移金属炭窒化物混合物を得る工程と、前記金属炭窒化物混合物を酸素含有ガス中で熱処理することにより結晶子サイズが1〜100nmの前記金属酸化物を含む前記金属炭窒酸化物混合物を得る工程とを含む製造方法で得ることができる。
【0037】
3族の遷移金属化合物のうちいずれか一種を含み、4族または5族の遷移金属酸化物のいずれか一種を含む前記4族または5族の遷移金属炭窒化物混合物の粒径が小さいほど、前記遷移金属炭窒化物を酸素含有不活性ガス中で熱処理することにより得られる前記金属炭窒酸化物の中の前記金属酸化物の結晶子サイズが小さくなると推察される。
【0038】
(金属炭窒化物を得る工程)
3族の遷移金属化合物のうちいずれか一種を含み、4族または5族の遷移金属酸化物のいずれか一種を含む前記4族または5族の遷移金属炭窒化物混合物を得る工程としては、
(I)本発明の金属組成になる3族、4族、5族の遷移金属、水素物、酸化物、炭化物、窒化物に適宜カーボンを添加したものを原料として、窒素雰囲気中などで熱処理することにより3族の遷移金属のうちいずれか1つを含み、4族または5族の遷移金属のいずれか1つを含む金属炭窒化物混合物を得る固相法。
【0039】
(II)錯体を原料とする液相法と組み合わせることによって粒径の小さい3族の遷移金属のうちいずれか1つを含み、4族または5族の遷移金属のいずれか1つを含む金属炭窒化物を得る方法。
などがあげられる。
【0040】
次に、(I)の製法のなかから、金属酸化物、炭素を原料とする、3族の遷移金属化合物のうちいずれか一種を含み、4族または5族の遷移金属酸化物のいずれか一種を含む前記4族または5族の遷移金属炭窒化物混合物の製造方法について詳しく述べる。
【0041】
4族または5族の遷移金属酸化物としては、特に規定ない。たとえば、ZrO、ZrO2、Zr2O5、の酸化ジルコニウムとしては、ZrO、ZrO2、Zr2O5、TiO、Ti3O4、TiO2、Ti3O5、TiNO2N−1等の酸化チタンが用いられる。なかでも、安価で容易に入手可能なZrO2、TiO2、が好ましい。
【0042】
3族の遷移金属酸化物としては、特に制限はない。例えば、Sc2O3,Y2O3,La2O3,CeO2,Sm2O3,Dy2O3,Ho2O3などがあげられる。
【0043】
原料の炭素としては、カーボン、カーボンブラック、グラファイト、黒鉛、活性炭、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、カーボンナノホーン、フラーレンが挙げられる。カーボンの粉末の粒径がより小さいと、比表面積が大きくなり、酸化物との反応がしやすくなるため好ましい。例えば、カーボンブラック(比表面積:100〜300m2/g、例えばキャボット社製 XC−72)などが好適に用いられる。
【0044】
前記配合量(モル比)は、通常、4族または5族の遷移金属酸化物に対して、3族の遷移金属酸化物が0.1〜20モル%である。また、4族または5族の遷移金属酸化物と3族の遷移金属酸化物との合計に対して、炭素が1〜4モルである。好ましくは、炭素が2〜3モルである。
【0045】
これら3族の遷移金属酸化物と4族または5族の遷移金属酸化物と炭素を十分に混合した後、窒素雰囲気中で熱処理する。
【0046】
一般に、熱処理は、電気炉を用いて行う。熱処理の温度は1200℃〜2200℃の範囲であり、好ましくは1400〜1700℃の範囲である。前記熱処理温度が1200℃未満であると4族または5族の遷移金属のいずれか1つを含む金属炭窒化物混合物は得られない。焼成温度が低いほど、4族または5族の遷移金属のいずれか1つを含む金属炭窒化物混合物の粒径は小さくなるが、原料などが残存しやすくなる。2200℃以上であると焼結し粒径が大きくなり、本発明の結晶子サイズが1〜100nmの4族または5族の遷移金属酸化物を含む金属炭窒化物混合物は得られない。金属種にもよるが、1400〜1700℃の範囲で、原料の残存の少ない粒径の小さい4族または5族の遷移金属のいずれか1つを含む金属炭窒化物が得られる。
(金属炭窒酸化物を得る工程)
次に、上記製造方法で得られた金属炭窒化物混合物を、酸素を含むガス中で熱処理することにより、金属炭窒酸化物混合物を得る工程について説明する。
【0047】
酸素を不活性ガスで希釈することで、酸化が均一に進行するようにコントロールすることができる。上記不活性ガスとしては、窒素、ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス、クリプトンガス、キセノンガスまたはラドンガスが挙げられる。窒素またはアルゴンガスが、比較的入手しやすい点で特に好ましい。
【0048】
また、不活性ガスに水素を混在させてもよい。水素濃度は、0.0001〜10容量%が好ましく、0.05〜5容量%が特に好ましい。水素は、前記水素濃度が前記範囲内であると、均一な炭窒酸化物が形成する点で好ましい。水素濃度が0.0001容量%未満では、水素を混在させる効果が小さく好ましくない。また10容量%を超えると十分な酸化ができない恐れがあり好ましくない。
【0049】
当該工程における酸素濃度は、熱処理時間と熱処理温度に依存するが、0.0001〜10容量%が好ましく、0.03〜3容量%が特に好ましい。酸素濃度がこの範囲内であると、均一な金属炭窒酸化物混合物が形成する点で好ましい。
【0050】
また、前記酸素濃度が0.0001容量%未満であると未酸化状態になる傾向があり、10容量%を超えると酸化が進み過ぎてしまう傾向がある。
【0051】
当該工程における熱処理の温度は、通常は400〜1400℃の範囲であり、好ましくは600〜1200℃の範囲である。前記熱処理温度が前記範囲内であると、均一な金属炭窒酸化物混合物が形成する点で好ましい。前記熱処理温度が400℃未満であると酸化が進まない。1400℃以上であると酸化の進行が速く、コントロールできない恐れがある。
【0052】
当該工程における熱処理方法としては、整地法、攪拌法、落下法、粉末捕捉法などが挙げられる。
【0053】
落下法とは、誘導炉中に微量の酸素を含む不活性ガスを流しながら、炉を所定の熱処理温度まで加熱し、該温度で熱的平衡を保った後、炉の加熱区域である坩堝中に原料である金属炭窒化物混合物を落下させ、熱処理する方法である。落下法の場合は、金属炭窒酸化物混合物の粒子の凝集及び成長を最小限度に抑制することができる点で好ましい。
【0054】
粉末捕捉法とは、微量の酸素を含む不活性ガス雰囲気中で、金属炭窒化物混合物を飛沫にして浮遊させ、所定の熱処理温度に保たれた垂直の管状炉中に金属炭窒化物混合物を捕捉して、熱処理する方法である。
【0055】
本発明の触媒としては、上述の製造方法等により得られる金属炭窒酸化物を、そのまま用いてもよいが、得られる金属炭窒酸化物混合物をさらに解砕し、より微細な粉末にしたものを用いてもよい。
【0056】
金属炭窒酸化物を解砕する方法としては、例えば、ロール転動ミル、ボールミル、媒体撹拌ミル、気流粉砕機、乳鉢、槽解機による方法等が挙げられ、金属炭窒酸化物をより微粒とすることができる点では、気流粉砕機による方法が好ましく、少量処理が容易となる点では、乳鉢による方法が好ましい。
<用途>
本発明の触媒は、白金触媒の代替触媒として使用することができる。
【0057】
例えば、燃料電池用触媒、排ガス処理用触媒または有機合成用触媒として使用できる。
【0058】
本発明の燃料電池用触媒層は、前記触媒を含むことを特徴としている。
【0059】
本発明の燃料電池用触媒層は、アノード触媒層またはカソード触媒層のいずれにも用いることができる。本発明の燃料電池用触媒層は、高い酸素還元能を有し、酸性電解質中において高電位であっても腐蝕しがたい触媒を含むため、燃料電池のカソードに設けられる触媒層(カソード用触媒層)として有用である。特に固体高分子型燃料電池が備える膜電極接合体のカソードに設けられる触媒層に好適に用いられる。
【0060】
本発明の燃料電池用触媒層には、さらに電子伝導性粉末を含むことが好ましい。前記触媒を含む燃料電池用触媒層がさらに電子伝導性粉末を含む場合には、還元電流をより高めることができる。電子伝導性粉末は、前記触媒に、電気化学的反応を誘起させるための電気的接点を生じさせるため、還元電流を高めると考えられる。
【0061】
前記電子伝導性粒子は通常、触媒の担体として用いられる。
【0062】
電子伝導性粒子としては、炭素、導電性高分子、導電性セラミクス、金属または酸化タングステンもしくは酸化イリジウムなどの導電性無機酸化物が挙げられ、それらを単独または組み合わせて用いることができる。特に、炭素は比表面積が大きいため、炭素単独または炭素とその他の電子伝導性粒子との混合物が好ましい。すなわち燃料電池用触媒層としては、前記触媒と、炭素とを含むことが好ましい。
【0063】
炭素としては、カーボンブラック、グラファイト、黒鉛、活性炭、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、カーボンナノホーン、フラーレンなどが使用できる。カーボンの粒径は、小さすぎると電子伝導パスが形成されにくくなり、また大きすぎると燃料電池用触媒層のガス拡散性が低下したり、触媒の利用率が低下する傾向があるため、10〜1000nmの範囲であることが好ましく、10〜100nmの範囲であることがよりに好ましい。
【0064】
電子伝導性粒子が、炭素の場合、前記触媒と炭素との重量比(触媒:電子伝導性粒子)は、好ましくは4:1〜1000:1である。
【0065】
導電性高分子としては特に限定は無いが、例えばポリアセチレン、ポリ−p−フェニレン、ポリアニリン、ポリアルキルアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリインドール、ポリ−1,5−ジアミノアントラキノン、ポリアミノジフェニル、ポリ(o−フェニレンジアミン)、ポリ(キノリニウム)塩、ポリピリジン、ポリキノキサリン、ポリフェニルキノキサリン等が挙げられる。これらの中でも、ポリピロール、ポリアニリン、ポリチオフェンが好ましく、ポリピロールがより好ましい。
【0066】
高分子電解質としては、燃料電池用触媒層において一般的に用いられているものであれば特に限定されない。具体的には、スルホン酸基を有するパーフルオロカーボン重合体(例えば、ナフィオン(デュポン社 5%ナフィオン溶液(DE521)など)、スルホン酸基を有する炭化水素系高分子化合物、リン酸などの無機酸をドープさせた高分子化合物、一部がプロトン伝導性の官能基で置換された有機/無機ハイブリッドポリマー、高分子マトリックスにリン酸溶液や硫酸溶液を含浸させたプロトン伝導体などが挙げられる。これらの中でも、ナフィオン(デュポン社 5%ナフィオン溶液(DE521))が好ましい。
【0067】
前記触媒を、担体である前記電子伝導性粒子上に分散させる方法としては、気流分散、液中分散等の方法が挙げられる。液中分散は、溶媒中に触媒及び電子伝導性粒子を分散したものを、燃料電池用触媒層形成工程に使用できるため好ましい。液中分散としては、オリフィス収縮流による方法、回転せん断流による方法または超音波による方法等があげられる。液中分散の際、使用される溶媒は、触媒や電子伝導性粒子を浸食することがなく、分散できるものであれば特に制限はないが、揮発性の液体有機溶媒または水等が一般に使用される。
【0068】
また、触媒を、前記電子伝導性粒子上に分散させる際、さらに上記電解質と分散剤とを同時に分散させてもよい。
【0069】
燃料電池用触媒層の形成方法としては、特に制限はないが、たとえば、前記触媒と電子伝導性粒子と電解質とを含む懸濁液を、後述する電解質膜またはガス拡散層に塗布する方法が挙げられる。前記塗布する方法としては、ディッピング法、スクリーン印刷法、ロールコーティング法、スプレー法などが挙げられる。また、前記触媒と電子伝導性粒子と電解質とを含む懸濁液を、塗布法またはろ過法により基材に燃料電池用触媒層を形成した後、転写法で電解質膜に燃料電池用触媒層を形成する方法が挙げられる。
【0070】
本発明の電極は、前記燃料電池用触媒層と多孔質支持層とを有することを特徴としている。
【0071】
本発明の電極はカソードまたはアノードのいずれの電極にも用いることができる。本発明の電極は、耐久性に優れ、触媒能が大きいので、カソードに用いるとより効果を発揮する。
【0072】
多孔質支持層とは、ガスを拡散する層(以下「ガス拡散層」とも記す。)である。ガス拡散層としては、電子伝導性を有し、ガスの拡散性が高く、耐食性の高いものであれば何であっても構わないが、一般的にはカーボンペーパー、カーボンクロスなどの炭素系多孔質材料や、軽量化のためにステンレス、耐食材を被服したアルミニウム箔が用いられる。
【0073】
本発明の膜電極接合体は、カソードとアノードと前記カソード及び前記アノードの間に配置された電解質膜とを有する膜電極接合体であって、前記カソード及び/または前記アノードが、前記電極であることを特徴としている。
【0074】
電解質膜としては、例えば、パーフルオロスルホン酸系を用いた電解質膜または炭化水素系電解質膜などが一般的に用いられるが、高分子微多孔膜に液体電解質を含浸させた膜または多孔質体に高分子電解質を充填させた膜などを用いてもよい。
【0075】
また本発明の燃料電池は、前記膜電極接合体を備えることを特徴としている。
【0076】
燃料電池の電極反応はいわゆる3相界面(電解質‐電極触媒‐反応ガス)で起こる。燃料電池は、使用される電解質などの違いにより数種類に分類され、溶融炭酸塩型(MCFC)、リン酸型(PAFC)、固体酸化物型(SOFC)、固体高分子型(PEFC)等がある。中でも、本発明の膜電極接合体は、固体高分子型燃料電池に使用することが好ましい。
【実施例】
【0077】
以下に、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
[実施例1]
1.触媒の調製
二酸化セリウム0.17g(1mmol)、酸化チタン7.92g(99mmol)、カーボンブラック(キャボット社製、Vulcan72)3g(250mmol)をボールミルで十分に混合した。該混合物を1500℃で3時間、窒素雰囲気中で熱処理した。得られた物をボールミルで十分に粉砕し、炭窒化物混合物7.2gを得た。
得られたチタンの炭窒化物混合物300mgを、管状炉で、1000℃3時間、1.5容量%酸素ガスと4容量%水素を含有する窒素雰囲気中で熱処理した。得られたチタンの炭窒酸化物混合物(以下「触媒(1)」とも記す。)を十分に粉砕し、270mgを得た。
X‘Pert PRO MPDを用いてX線回折スペクトルを測定した。電圧45V,電流40mA、測定する回折角度2θは10〜110°とし、測定する回折角度間隔は0.016711°とした。
【0078】
触媒(1)の粉末X線回折スペクトルを図1に示す。
【0079】
理学電機社製リートベルト解析ソフトJADEを用いて、実測回折パターンより、チタンの炭窒酸化物混合物中の酸化チタンの結晶子サイズを求めた。得られた結果を表1に示す。
【0080】
【表1】
2.燃料電池用電極の製造
酸素還元能の測定は、次のように行った。触媒(1)0.095gとカーボンブラック(キャボット社製 XC−72)0.005gをイソプロピルアルコール:純水=2:1の重量比で混合した溶液10gに入れ、超音波で撹拌、縣濁して混合した。この混合物30μlをグラッシーカーボン電極(東海カーボン社製、径:5.2mm)に塗布し、120℃で1時間乾燥した。さらに、ナフィオン(デゥポン社 5%ナフィオン溶液(DE521))を10倍に純水で希釈したもの10μlを塗布し、120℃で1時間乾燥し、燃料電池用電極(1)を得た。
【0081】
3.酸素還元能の評価
このようにして作製した燃料電池用電極(1)の触媒能(酸素還元能)を以下の方法で評価した。
【0082】
まず、作製した燃料電池用電極(1)を、酸素雰囲気及び窒素雰囲気で、0.5mol/dm3の硫酸溶液中、30℃、5mV/秒の電位走査速度で分極し、電流−電位曲線を測定した。その際、同濃度の硫酸溶液中での可逆水素電極を参照電極とした。
【0083】
上記測定結果から、酸素雰囲気での還元電流と窒素雰囲気での還元電流との差を求めた。
図2に、上記測定により得られた酸素還元電流−酸素還元電位曲線(以下「電流−電位曲線」とする。)を示す。
0.7V(vs.NHE)における電流値を表2に示す。酸素還元電流が大きいほど、燃料電池用電極(1)の触媒能(酸素還元能)が高いことを示す。
【0084】
【表2】
[実施例2]
1.触媒の調製
三酸化二イットリウム0.81g(2.5mmol)、酸化チタン7.6g(95mmol)、カーボンブラック(キャボット社製、Vulcan72)3g(250mmol)をボールミルで十分に混合した。該混合物を1500℃で3時間、窒素雰囲気中で熱処理した。得られた物をボールミルで十分に粉砕し、炭窒化物混合物7.4gを得た。
得られたチタンの炭窒化物混合物300mgを、管状炉で、1000℃3時間、1.5容量%酸素ガスと4容量%水素を含有する窒素雰囲気中で熱処理した。得られたチタンの炭窒酸化物混合物(以下「触媒(2)」とも記す。)を十分に粉砕し、275mgを得た。
【0085】
実施例1と同様にして X線回折スペクトルを測定した。触媒(2)の粉末X線回折スペクトルを図3に示す。
【0086】
実施例1と同様にしてリートベルト解析を行い、チタンの炭窒酸化物混合物中の酸化チタンの結晶子サイズを求めた。得られた結果を表1に示す。
【0087】
2.燃料電池用電極の製造
前記触媒(2)を用いた以外は実施例1と同様にして燃料電池用電極(2)を得た。
【0088】
3.酸素還元能の評価
前記燃料電池用電極(2)を用いた以外は実施例1と同様にして触媒能(酸素還元能)を評価した。
【0089】
図4に、当該測定により得られた電流−電位曲線を示す。
【0090】
0.7V(vs.NHE)における電流値を表2に示す。
[実施例3]
1.触媒の調製
二酸化セリウム0.09g(0.5mmol)、酸化ジルコニウム12.3g(99.5mmol)、カーボンブラック(キャボット社製、Vulcan72)3g(250mmol)をボールミルで十分に混合した。該混合物を1700℃で3時間、窒素雰囲気中で熱処理した。得られた物をボールミルで十分に粉砕し、ジルコニウムの炭窒化物混合物11.3gを得た。
得られたジルコニウムの炭窒化物混合物300mgを、管状炉で、1000℃3時間、0.75容量%酸素ガスと4容量%水素を含有する窒素雰囲気中で熱処理した。得られたジルコニウムの炭窒酸化物混合物(以下「触媒(3)」とも記す。)を十分に粉砕し、280mgを得た。
実施例1と同様にして X線回折スペクトルを測定した。触媒(3)の粉末X線回折スペクトルを図5に示す。
実施例1と同様にして リートベルト解析を行い、ジルコニウムの炭窒酸化物混合物中の酸化ジルコニウムの単斜晶と正方晶の結晶子サイズを求めた。得られた結果を表3に示す。
【0091】
【表3】
2.燃料電池用電極の製造
前記触媒(3)を用いた以外は実施例1と同様にして燃料電池用電極(3)を得た。
【0092】
3.酸素還元能の評価
前記燃料電池用電極(3)を用いた以外は実施例1と同様にして触媒能(酸素還元能)を評価した。
【0093】
図6に、当該測定により得られた電流−電位曲線を示す。
0.5V(vs.NHE)における電流値を表4に示す。
【0094】
【表4】
[実施例4]
1.触媒の調製
三酸化二イットリウム1.61g(5mmol)、酸化ジルコニウム7.6g(90mmol)、カーボン(キャボット社製、Vulcan72)3g(250mmol)をボールミルで十分に混合した。該混合物を1700℃で3時間、窒素雰囲気中で熱処理した。得られた物をボールミルで十分に粉砕し、ジルコニウムの炭窒化物混合物11.6gを得た。
得られたジルコニウムの炭窒化物混合物300mgを、管状炉で、1000℃3時間、0.75容量%酸素ガスと4容量%水素を含有する窒素雰囲気中で熱処理した。得られたジルコニウムの炭窒酸化物混合物(以下「触媒(4)」とも記す。)を十分に粉砕し、275mgを得た。
【0095】
実施例1と同様にして X線回折スペクトルを測定した。触媒(4)の粉末X線回折スペクトルを図7に示す。
実施例1と同様にして リートベルト解析を行い、ジルコニウムの炭窒酸化物混合物中の酸化ジルコニウムの単斜晶と正方晶の結晶子サイズを求めた。得られた結果を表3に示す。
【0096】
2.燃料電池用電極の製造
前記触媒(4)を用いた以外は実施例1と同様にして燃料電池用電極(4)を得た。
【0097】
3.酸素還元能の評価
前記燃料電池用電極(4)を用いた以外は実施例1と同様にして触媒能(酸素還元能)を評価した。
【0098】
図8に、当該測定により得られた電流−電位曲線を示す。
0.5V(vs.NHE)における電流値を表4に示す。
[比較例1]
1.触媒の調製
酸化チタン8.0g(100mmol)、カーボンブラック(キャボット社製、Vulcan72)3g(250mmol)をボールミルで十分に混合した。該混合物を1500℃で3時間、窒素雰囲気中で熱処理した。得られた物をボールミルで十分に粉砕し、チタンの炭窒化物混合物7.2gを得た。
得られたチタンの炭窒化物混合物300mgを、管状炉で、1000℃3時間、1.5容量%酸素ガスと4容量%水素を含有する窒素雰囲気中で熱処理した。得られたチタンの炭窒酸化物混合物(以下「触媒(5)」とも記す。)を十分に粉砕し、275mgを得た。
実施例1と同様にして X線回折スペクトルを測定した。触媒(5)の粉末X線回折スペクトルを図9に示す。
実施例1と同様にして リートベルト解析を行い、チタンの炭窒酸化物混合物中の酸化チタンの結晶子サイズを求めた。得られた結果を表1に示す。
【0099】
2.燃料電池用電極の製造
前記触媒(5)を用いた以外は実施例1と同様にして燃料電池用電極(5)を得た。
【0100】
3.酸素還元能の評価
前記燃料電池用電極(5)を用いた以外は実施例1と同様にして触媒能(酸素還元能)を評価した。
【0101】
図10に、当該測定により得られた電流−電位曲線を示す。
【0102】
0.7V(vs.NHE)における電流値を表2に示す。
[比較例2]
1.触媒の調製
酸化ジルコニウム12.3g(100mmol)、カーボンブラック(キャボット社製、Vulcan72)3g(250mmol)をボールミルで十分に混合した。該混合物を1500℃で3時間、窒素雰囲気中で熱処理した。得られた物をボールミルで十分に粉砕し、ジルコニウムの炭窒化物混合物11.9gを得た。
得られたジルコニウムの炭窒化物混合物300mgを、管状炉で、1000℃3時間、0.75容量%酸素ガスと4容量%水素を含有する窒素雰囲気中で熱処理した。得られたジルコニウムの炭窒酸化物混合物(以下「触媒(6)」とも記す。)を十分に粉砕し、275mgを得た。
【0103】
実施例1と同様にして X線回折スペクトルを測定した。触媒(6)の粉末X線回折スペクトルを図11に示す。
【0104】
実施例1と同様にして リートベルト解析を行い、ジルコニウムの炭窒酸化物混合物中の酸化ジルコニウムの単斜晶と正方晶の結晶子サイズを求めた。得られた結果を表3に示す。
【0105】
2.燃料電池用電極の製造
前記触媒(6)を用いた以外は実施例1と同様にして燃料電池用電極(6)を得た。
【0106】
3.酸素還元能の評価
前記燃料電池用電極(5)を用いた以外は実施例1と同様にして触媒能(酸素還元能)を評価した。
【0107】
図12に、当該測定により得られた電流−電位曲線を示す。
0.5V(vs.NHE)における電流値を表4に示す。
【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明の製造方法より得られた触媒は、酸性電解質中や高電位で腐食せず、耐久性に優れ、高い酸素還元能を有するので、燃料電池用触媒層、電極、電極接合体または燃料電池に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】触媒(1)の粉末X線回折スペクトルである。
【図2】電極(1)の電流−電位曲線である。
【図3】触媒(2)の粉末X線回折スペクトルである。
【図4】電極(2)の電流−電位曲線である。
【図5】触媒(3)の粉末X線回折スペクトルである。
【図6】電極(3)の電流−電位曲線である。
【図7】触媒(4)の粉末X線回折スペクトルである。
【図8】電極(4)の電流−電位曲線である。
【図9】触媒(5)の粉末X線回折スペクトルである。
【図10】電極(5)の電流−電位曲線である。
【図11】触媒(6)の粉末X線回折スペクトルである。
【図12】電極(6)の電流−電位曲線である。
【技術分野】
【0001】
本発明は触媒及びその製造方法ならびにその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池には、電解質の種類や電極の種類により種々のタイプに分類され、代表的なものとしては、アルカリ型、リン酸型、溶融炭酸塩型、固体電解質型、固体高分子型がある。この中でも低温(−40℃程度)から120℃程度で作動可能な固体高分子型燃料電池が注目を集め、近年、自動車用低公害動力源としての開発・実用化が進んでいる。固体高分子型燃料電池の用途としては、車両用駆動源や定置型電源が検討されているが、これらの用途に適用されるためには、長期間に渡る耐久性が求められている。
【0003】
この高分子固体形燃料電池は、高分子固体電解質をアノードとカソードとで挟み、アノードに燃料を供給し、カソードに酸素または空気を供給して、カソードで酸素が還元されて電気を取り出す形式である。燃料には水素またはメタノールなどが主として用いられる。
【0004】
従来、燃料電池の反応速度を高め、燃料電池のエネルギー変換効率を高めるために、燃料電池のカソード(空気極)表面やアノード(燃料極)表面には、触媒を含む層(以下「燃料電池用触媒層」とも記す。)が設けられていた。
【0005】
この触媒として、一般的に貴金属が用いられており、貴金属の中でも高い電位で安定であり、活性が高い白金が、主として用いられてきた。しかし、白金は価格が高く、また資源量が限られていることから、代替可能な触媒の開発が求められていた。
【0006】
また、カソード表面に用いる貴金属は酸性雰囲気下では、溶解する場合があり、長期間に渡る耐久性が必要な用途には適さないという問題があった。このため酸性雰囲気下で腐食せず、耐久性の優れ、高い酸素還元能を有する触媒の開発が強く求められていた。
【0007】
白金に代わる触媒として、炭素、窒素、ホウ素等の非金属を含む材料が触媒として近年着目されている。これらの非金属を含む材料は、白金などの貴金属と比較して価格が安く、また資源量が豊富である。
【0008】
非特許文献1では、ジルコニウムをベースとしたZrOxN化合物に、酸素還元能を示すことが報告されている。
【0009】
特許文献1では、白金代替材料として長周期表4族,5族及び14族の元素群から選ばれる1種以上の窒化物をふくむ酸素還元電極材料が開示されている。
【0010】
しかしながら、これらの非金属を含む材料は、触媒として実用的に充分な酸素還元能が得られていないという問題点があった。
【0011】
また、特許文献2では、炭化物、酸化物、窒化物を混合し、真空、不活性または非酸化性雰囲気下、500〜1500℃で熱処理をした炭窒酸化物が開示されている。
【0012】
しかしながら、特許文献2に開示されている炭窒酸化物は、薄膜磁気ヘッドセラミックス基板材料であり、この炭窒酸化物を触媒として用いることは検討されていない。
【0013】
なお、白金は、上記燃料電池用の触媒としてだけでなく、排ガス処理用触媒または有機合成用触媒としても有用であるが、白金は価格が高く、また資源量が限られているため、これらの用途においても代替可能な触媒の開発が求められていた。
【非特許文献1】S. Doi,A. Ishihara,S. Mitsushima,N. kamiya,and K. Ota, Journal of The Electrochemical Society, 154 (3) B362−B369 (2007)
【特許文献1】特開2007−31781号公報
【特許文献2】特開2003−342058号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明はこのような従来技術における問題点の解決を課題としており、本発明の目的は、酸性電解質中や高電位で腐食せず、耐久性に優れ、高い酸素還元能を有する触媒を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、上記従来技術の問題点を解決すべく鋭意検討した結果、一種以上の3族の遷移金属化合物と、結晶子サイズが1〜100nmの範囲である一種以上の4族または5族の遷移金属酸化物とを含む前記4族または5族の金属炭窒酸化物混合物が、酸性電解質中や高電位で腐食せず、耐久性に優れ、高い酸素還元能を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0016】
本発明は、たとえば以下の(1)〜(11)に関する。
(1)
一種以上の3族の遷移金属化合物と、結晶子サイズが1〜100nmの範囲である一種以上の4族または5族の遷移金属酸化物とを含む前記4族または5族の遷移金属炭窒酸化物混合物であることを特徴とする触媒。
【0017】
(2)
3族の遷移金属化合物が、スカンジウム、イットリウム、ランタン、セリウム、サマリウム、ジスプロシウム及びホルミウムからなる群から選ばれる一種以上の化合物であることを特徴とする(1)に記載の触媒。
(3)
4族または5族の遷移金属酸化物が、チタン、ジルコニウム、タンタル及びニオブからなる群から選ばれる一種以上の酸化物であることを特徴とする(1)に記載の触媒。
(4)
(1)〜(3)のいずれかに記載の燃料電池用触媒。
【0018】
(5)
一種以上の3族の遷移金属化合物と一種以上の4族または5族の遷移金属酸化物とを含む前記金属炭窒化物混合物を得る工程と、
前記金属炭窒化物混合物を酸素含有ガス中で熱処理して前記金属炭窒酸化物混合物を得る工程とを含むことを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の金属炭窒酸化物混合物触媒の製造方法。
(6)
(1)〜(4)のいずれかに記載の触媒を含むことを特徴とする燃料電池用触媒層。
【0019】
(7)
さらに電子伝導性粒子を含むことを特徴とする(6)に記載の燃料電池用触媒層。
(8)
(6)または(7)のいずれかに記載の燃料電池用触媒層と、多孔質支持層とを有することを特徴とする電極。
【0020】
(9)
カソードとアノードと前記カソード及び前記アノードの間に配置された電解質膜とを有する膜電極接合体であって、前記カソード及び/または前記アノードが(8)に記載の電極であることを特徴とする膜電極接合体。
【0021】
(10)
(9)に記載の膜電極接合体を備えることを特徴とする燃料電池。
【0022】
(11)
(9)に記載の膜電極接合体を備えることを特徴とする固体高分子形燃料電池。
【発明の効果】
【0023】
本発明の触媒は、酸性電解質中や高電位で腐食せず、安定であり、高い酸素還元能を有し、かつ白金と比べ安価である。したがって、前記触媒を備えた燃料電池は、比較的安価で性能が優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
<触媒>
本発明の触媒は、一種以上の3族の遷移金属化合物と、結晶子サイズが1〜100nmの範囲である一種以上の4族または5族の遷移金属酸化物とを含む金属炭窒酸化物混合物からなることを特徴としている。
【0025】
本発明の触媒における3族の遷移金属化合物、4族または5族の遷移金属酸化物の割合や結晶子サイズは、リートベルト解析によって求めることができる。
【0026】
従来から、複数の結晶相を有する物質の結晶構造を特定するための解析方法として「リートベルト解析」と呼ばれる解析法が知られている。以下、その詳細について説明する。
【0027】
リートベルト解析では、まずX線回折法(XRD法)により被解析試料の実測回折パターンを得て、この実測回折パターンと、近似計算式に基づく計算回折パターンとを一致させるように、当該近似計算式に含まれる各種パラメータを精密化する、いわゆるパターンフィッティングという解析手法が用いられる。そして、このようにして各種パラメータが精密化されると、そのうちの特定のパラメータの値から、複数の結晶相(例えば単斜相、正方晶、立方晶)の割合や、各結晶子のサイズ結晶子径)を算出することができる。
【0028】
この際、精密な解析パラメータを得るために、測定する回折角度2θは10〜110°であることが好ましい。同様に、測定する回折角度間隔は0.02°以下であることが好ましい。更に同様に、測定する時間は、得られるX線回折パターンの最大ピークの回折強度が5000以上になるように設定することが好ましい。このリートベルト解析をするためには、RIETAN−2000などのリートベルト解析用のソフトウェアを使用することができる。
本発明の触媒は、少なくとも一種以上の3族の遷移金属化合物を含む。3族の遷移金属元素はランタノイド、アクイノイドのいずれかであってもよい。
【0029】
特に、3族の遷移金属化合物の元素として好ましくは、スカンジウム、イットリウム、ランタン、セリウム、サマリウム、ジスプロシウム及びホルミウムからなる群のいずれか一種以上である。
【0030】
詳細は不明であるが、一般に3族の遷移金属元素は4族または5族の遷移金属酸化物中に固溶しやすい。4族または5族の遷移金属酸化物中では、3族の遷移金属元素は欠陥となり、4族または5族の遷移金属酸化物の結晶成長を抑制するため粒径が小さくなると考えられる。
【0031】
粒径が小さくなると比表面積が大きくなり、触媒として好ましい。また、欠陥となる点が活性点として作用し、触媒活性を高めるものと推察している。
【0032】
3族の遷移金属化合物の添加量は、金属種によって異なるが、触媒中の全遷移金属化合物中の0.1〜20モル%が好ましい。3族の遷移金属化合物の添加量が0.1モル%より少ないとその効果が少なくなる恐れがある。また、3族の遷移金属化合物の添加量が20モル%より多いと、金属炭窒酸化物混合物の触媒作用を減じてしまう恐れがあり好ましくない。
【0033】
3族の遷移金属元素は、4族または5族の遷移金属酸化物に一部固溶して作用していると考えているが、元素の種類やその添加量によっては3族の遷移金属酸化物として検出されることもある。
【0034】
酸性電解質中や高電位で腐食しないことから、4族または5族の遷移金属のいずれか1つは金属炭窒酸化物であることが好ましい。特に、チタン、ジルコニウム、タンタル、ニオブのいずれか1つであることが好ましい。
【0035】
ここでいう、4族または5族の遷移金属酸化物とは、リートベルト解析で精密化して近似値として一致するものをいう。また、リートベルト解析で得られる4族または5族の遷移金属酸化物の1つの結晶子サイズが1〜100nmである。好ましくは、3〜80nmである。さらに好ましくは、5〜50nmである。結晶子サイズが1nmより小さいと粒子が凝集して扱いにくく好ましくない。結晶子サイズが100nmより大きいと、触媒面積が小さくなり高い酸素還元能が得られない恐れがあり好ましくない。
本発明の触媒の製造方法は特に限定されない。
【0036】
例えば、本発明は、3族の遷移金属化合物のうちいずれか一種を含み、4族または5族の遷移金属酸化物のいずれか一種を含む前記4族または5族の遷移金属炭窒化物混合物を得る工程と、前記金属炭窒化物混合物を酸素含有ガス中で熱処理することにより結晶子サイズが1〜100nmの前記金属酸化物を含む前記金属炭窒酸化物混合物を得る工程とを含む製造方法で得ることができる。
【0037】
3族の遷移金属化合物のうちいずれか一種を含み、4族または5族の遷移金属酸化物のいずれか一種を含む前記4族または5族の遷移金属炭窒化物混合物の粒径が小さいほど、前記遷移金属炭窒化物を酸素含有不活性ガス中で熱処理することにより得られる前記金属炭窒酸化物の中の前記金属酸化物の結晶子サイズが小さくなると推察される。
【0038】
(金属炭窒化物を得る工程)
3族の遷移金属化合物のうちいずれか一種を含み、4族または5族の遷移金属酸化物のいずれか一種を含む前記4族または5族の遷移金属炭窒化物混合物を得る工程としては、
(I)本発明の金属組成になる3族、4族、5族の遷移金属、水素物、酸化物、炭化物、窒化物に適宜カーボンを添加したものを原料として、窒素雰囲気中などで熱処理することにより3族の遷移金属のうちいずれか1つを含み、4族または5族の遷移金属のいずれか1つを含む金属炭窒化物混合物を得る固相法。
【0039】
(II)錯体を原料とする液相法と組み合わせることによって粒径の小さい3族の遷移金属のうちいずれか1つを含み、4族または5族の遷移金属のいずれか1つを含む金属炭窒化物を得る方法。
などがあげられる。
【0040】
次に、(I)の製法のなかから、金属酸化物、炭素を原料とする、3族の遷移金属化合物のうちいずれか一種を含み、4族または5族の遷移金属酸化物のいずれか一種を含む前記4族または5族の遷移金属炭窒化物混合物の製造方法について詳しく述べる。
【0041】
4族または5族の遷移金属酸化物としては、特に規定ない。たとえば、ZrO、ZrO2、Zr2O5、の酸化ジルコニウムとしては、ZrO、ZrO2、Zr2O5、TiO、Ti3O4、TiO2、Ti3O5、TiNO2N−1等の酸化チタンが用いられる。なかでも、安価で容易に入手可能なZrO2、TiO2、が好ましい。
【0042】
3族の遷移金属酸化物としては、特に制限はない。例えば、Sc2O3,Y2O3,La2O3,CeO2,Sm2O3,Dy2O3,Ho2O3などがあげられる。
【0043】
原料の炭素としては、カーボン、カーボンブラック、グラファイト、黒鉛、活性炭、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、カーボンナノホーン、フラーレンが挙げられる。カーボンの粉末の粒径がより小さいと、比表面積が大きくなり、酸化物との反応がしやすくなるため好ましい。例えば、カーボンブラック(比表面積:100〜300m2/g、例えばキャボット社製 XC−72)などが好適に用いられる。
【0044】
前記配合量(モル比)は、通常、4族または5族の遷移金属酸化物に対して、3族の遷移金属酸化物が0.1〜20モル%である。また、4族または5族の遷移金属酸化物と3族の遷移金属酸化物との合計に対して、炭素が1〜4モルである。好ましくは、炭素が2〜3モルである。
【0045】
これら3族の遷移金属酸化物と4族または5族の遷移金属酸化物と炭素を十分に混合した後、窒素雰囲気中で熱処理する。
【0046】
一般に、熱処理は、電気炉を用いて行う。熱処理の温度は1200℃〜2200℃の範囲であり、好ましくは1400〜1700℃の範囲である。前記熱処理温度が1200℃未満であると4族または5族の遷移金属のいずれか1つを含む金属炭窒化物混合物は得られない。焼成温度が低いほど、4族または5族の遷移金属のいずれか1つを含む金属炭窒化物混合物の粒径は小さくなるが、原料などが残存しやすくなる。2200℃以上であると焼結し粒径が大きくなり、本発明の結晶子サイズが1〜100nmの4族または5族の遷移金属酸化物を含む金属炭窒化物混合物は得られない。金属種にもよるが、1400〜1700℃の範囲で、原料の残存の少ない粒径の小さい4族または5族の遷移金属のいずれか1つを含む金属炭窒化物が得られる。
(金属炭窒酸化物を得る工程)
次に、上記製造方法で得られた金属炭窒化物混合物を、酸素を含むガス中で熱処理することにより、金属炭窒酸化物混合物を得る工程について説明する。
【0047】
酸素を不活性ガスで希釈することで、酸化が均一に進行するようにコントロールすることができる。上記不活性ガスとしては、窒素、ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス、クリプトンガス、キセノンガスまたはラドンガスが挙げられる。窒素またはアルゴンガスが、比較的入手しやすい点で特に好ましい。
【0048】
また、不活性ガスに水素を混在させてもよい。水素濃度は、0.0001〜10容量%が好ましく、0.05〜5容量%が特に好ましい。水素は、前記水素濃度が前記範囲内であると、均一な炭窒酸化物が形成する点で好ましい。水素濃度が0.0001容量%未満では、水素を混在させる効果が小さく好ましくない。また10容量%を超えると十分な酸化ができない恐れがあり好ましくない。
【0049】
当該工程における酸素濃度は、熱処理時間と熱処理温度に依存するが、0.0001〜10容量%が好ましく、0.03〜3容量%が特に好ましい。酸素濃度がこの範囲内であると、均一な金属炭窒酸化物混合物が形成する点で好ましい。
【0050】
また、前記酸素濃度が0.0001容量%未満であると未酸化状態になる傾向があり、10容量%を超えると酸化が進み過ぎてしまう傾向がある。
【0051】
当該工程における熱処理の温度は、通常は400〜1400℃の範囲であり、好ましくは600〜1200℃の範囲である。前記熱処理温度が前記範囲内であると、均一な金属炭窒酸化物混合物が形成する点で好ましい。前記熱処理温度が400℃未満であると酸化が進まない。1400℃以上であると酸化の進行が速く、コントロールできない恐れがある。
【0052】
当該工程における熱処理方法としては、整地法、攪拌法、落下法、粉末捕捉法などが挙げられる。
【0053】
落下法とは、誘導炉中に微量の酸素を含む不活性ガスを流しながら、炉を所定の熱処理温度まで加熱し、該温度で熱的平衡を保った後、炉の加熱区域である坩堝中に原料である金属炭窒化物混合物を落下させ、熱処理する方法である。落下法の場合は、金属炭窒酸化物混合物の粒子の凝集及び成長を最小限度に抑制することができる点で好ましい。
【0054】
粉末捕捉法とは、微量の酸素を含む不活性ガス雰囲気中で、金属炭窒化物混合物を飛沫にして浮遊させ、所定の熱処理温度に保たれた垂直の管状炉中に金属炭窒化物混合物を捕捉して、熱処理する方法である。
【0055】
本発明の触媒としては、上述の製造方法等により得られる金属炭窒酸化物を、そのまま用いてもよいが、得られる金属炭窒酸化物混合物をさらに解砕し、より微細な粉末にしたものを用いてもよい。
【0056】
金属炭窒酸化物を解砕する方法としては、例えば、ロール転動ミル、ボールミル、媒体撹拌ミル、気流粉砕機、乳鉢、槽解機による方法等が挙げられ、金属炭窒酸化物をより微粒とすることができる点では、気流粉砕機による方法が好ましく、少量処理が容易となる点では、乳鉢による方法が好ましい。
<用途>
本発明の触媒は、白金触媒の代替触媒として使用することができる。
【0057】
例えば、燃料電池用触媒、排ガス処理用触媒または有機合成用触媒として使用できる。
【0058】
本発明の燃料電池用触媒層は、前記触媒を含むことを特徴としている。
【0059】
本発明の燃料電池用触媒層は、アノード触媒層またはカソード触媒層のいずれにも用いることができる。本発明の燃料電池用触媒層は、高い酸素還元能を有し、酸性電解質中において高電位であっても腐蝕しがたい触媒を含むため、燃料電池のカソードに設けられる触媒層(カソード用触媒層)として有用である。特に固体高分子型燃料電池が備える膜電極接合体のカソードに設けられる触媒層に好適に用いられる。
【0060】
本発明の燃料電池用触媒層には、さらに電子伝導性粉末を含むことが好ましい。前記触媒を含む燃料電池用触媒層がさらに電子伝導性粉末を含む場合には、還元電流をより高めることができる。電子伝導性粉末は、前記触媒に、電気化学的反応を誘起させるための電気的接点を生じさせるため、還元電流を高めると考えられる。
【0061】
前記電子伝導性粒子は通常、触媒の担体として用いられる。
【0062】
電子伝導性粒子としては、炭素、導電性高分子、導電性セラミクス、金属または酸化タングステンもしくは酸化イリジウムなどの導電性無機酸化物が挙げられ、それらを単独または組み合わせて用いることができる。特に、炭素は比表面積が大きいため、炭素単独または炭素とその他の電子伝導性粒子との混合物が好ましい。すなわち燃料電池用触媒層としては、前記触媒と、炭素とを含むことが好ましい。
【0063】
炭素としては、カーボンブラック、グラファイト、黒鉛、活性炭、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、カーボンナノホーン、フラーレンなどが使用できる。カーボンの粒径は、小さすぎると電子伝導パスが形成されにくくなり、また大きすぎると燃料電池用触媒層のガス拡散性が低下したり、触媒の利用率が低下する傾向があるため、10〜1000nmの範囲であることが好ましく、10〜100nmの範囲であることがよりに好ましい。
【0064】
電子伝導性粒子が、炭素の場合、前記触媒と炭素との重量比(触媒:電子伝導性粒子)は、好ましくは4:1〜1000:1である。
【0065】
導電性高分子としては特に限定は無いが、例えばポリアセチレン、ポリ−p−フェニレン、ポリアニリン、ポリアルキルアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリインドール、ポリ−1,5−ジアミノアントラキノン、ポリアミノジフェニル、ポリ(o−フェニレンジアミン)、ポリ(キノリニウム)塩、ポリピリジン、ポリキノキサリン、ポリフェニルキノキサリン等が挙げられる。これらの中でも、ポリピロール、ポリアニリン、ポリチオフェンが好ましく、ポリピロールがより好ましい。
【0066】
高分子電解質としては、燃料電池用触媒層において一般的に用いられているものであれば特に限定されない。具体的には、スルホン酸基を有するパーフルオロカーボン重合体(例えば、ナフィオン(デュポン社 5%ナフィオン溶液(DE521)など)、スルホン酸基を有する炭化水素系高分子化合物、リン酸などの無機酸をドープさせた高分子化合物、一部がプロトン伝導性の官能基で置換された有機/無機ハイブリッドポリマー、高分子マトリックスにリン酸溶液や硫酸溶液を含浸させたプロトン伝導体などが挙げられる。これらの中でも、ナフィオン(デュポン社 5%ナフィオン溶液(DE521))が好ましい。
【0067】
前記触媒を、担体である前記電子伝導性粒子上に分散させる方法としては、気流分散、液中分散等の方法が挙げられる。液中分散は、溶媒中に触媒及び電子伝導性粒子を分散したものを、燃料電池用触媒層形成工程に使用できるため好ましい。液中分散としては、オリフィス収縮流による方法、回転せん断流による方法または超音波による方法等があげられる。液中分散の際、使用される溶媒は、触媒や電子伝導性粒子を浸食することがなく、分散できるものであれば特に制限はないが、揮発性の液体有機溶媒または水等が一般に使用される。
【0068】
また、触媒を、前記電子伝導性粒子上に分散させる際、さらに上記電解質と分散剤とを同時に分散させてもよい。
【0069】
燃料電池用触媒層の形成方法としては、特に制限はないが、たとえば、前記触媒と電子伝導性粒子と電解質とを含む懸濁液を、後述する電解質膜またはガス拡散層に塗布する方法が挙げられる。前記塗布する方法としては、ディッピング法、スクリーン印刷法、ロールコーティング法、スプレー法などが挙げられる。また、前記触媒と電子伝導性粒子と電解質とを含む懸濁液を、塗布法またはろ過法により基材に燃料電池用触媒層を形成した後、転写法で電解質膜に燃料電池用触媒層を形成する方法が挙げられる。
【0070】
本発明の電極は、前記燃料電池用触媒層と多孔質支持層とを有することを特徴としている。
【0071】
本発明の電極はカソードまたはアノードのいずれの電極にも用いることができる。本発明の電極は、耐久性に優れ、触媒能が大きいので、カソードに用いるとより効果を発揮する。
【0072】
多孔質支持層とは、ガスを拡散する層(以下「ガス拡散層」とも記す。)である。ガス拡散層としては、電子伝導性を有し、ガスの拡散性が高く、耐食性の高いものであれば何であっても構わないが、一般的にはカーボンペーパー、カーボンクロスなどの炭素系多孔質材料や、軽量化のためにステンレス、耐食材を被服したアルミニウム箔が用いられる。
【0073】
本発明の膜電極接合体は、カソードとアノードと前記カソード及び前記アノードの間に配置された電解質膜とを有する膜電極接合体であって、前記カソード及び/または前記アノードが、前記電極であることを特徴としている。
【0074】
電解質膜としては、例えば、パーフルオロスルホン酸系を用いた電解質膜または炭化水素系電解質膜などが一般的に用いられるが、高分子微多孔膜に液体電解質を含浸させた膜または多孔質体に高分子電解質を充填させた膜などを用いてもよい。
【0075】
また本発明の燃料電池は、前記膜電極接合体を備えることを特徴としている。
【0076】
燃料電池の電極反応はいわゆる3相界面(電解質‐電極触媒‐反応ガス)で起こる。燃料電池は、使用される電解質などの違いにより数種類に分類され、溶融炭酸塩型(MCFC)、リン酸型(PAFC)、固体酸化物型(SOFC)、固体高分子型(PEFC)等がある。中でも、本発明の膜電極接合体は、固体高分子型燃料電池に使用することが好ましい。
【実施例】
【0077】
以下に、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
[実施例1]
1.触媒の調製
二酸化セリウム0.17g(1mmol)、酸化チタン7.92g(99mmol)、カーボンブラック(キャボット社製、Vulcan72)3g(250mmol)をボールミルで十分に混合した。該混合物を1500℃で3時間、窒素雰囲気中で熱処理した。得られた物をボールミルで十分に粉砕し、炭窒化物混合物7.2gを得た。
得られたチタンの炭窒化物混合物300mgを、管状炉で、1000℃3時間、1.5容量%酸素ガスと4容量%水素を含有する窒素雰囲気中で熱処理した。得られたチタンの炭窒酸化物混合物(以下「触媒(1)」とも記す。)を十分に粉砕し、270mgを得た。
X‘Pert PRO MPDを用いてX線回折スペクトルを測定した。電圧45V,電流40mA、測定する回折角度2θは10〜110°とし、測定する回折角度間隔は0.016711°とした。
【0078】
触媒(1)の粉末X線回折スペクトルを図1に示す。
【0079】
理学電機社製リートベルト解析ソフトJADEを用いて、実測回折パターンより、チタンの炭窒酸化物混合物中の酸化チタンの結晶子サイズを求めた。得られた結果を表1に示す。
【0080】
【表1】
2.燃料電池用電極の製造
酸素還元能の測定は、次のように行った。触媒(1)0.095gとカーボンブラック(キャボット社製 XC−72)0.005gをイソプロピルアルコール:純水=2:1の重量比で混合した溶液10gに入れ、超音波で撹拌、縣濁して混合した。この混合物30μlをグラッシーカーボン電極(東海カーボン社製、径:5.2mm)に塗布し、120℃で1時間乾燥した。さらに、ナフィオン(デゥポン社 5%ナフィオン溶液(DE521))を10倍に純水で希釈したもの10μlを塗布し、120℃で1時間乾燥し、燃料電池用電極(1)を得た。
【0081】
3.酸素還元能の評価
このようにして作製した燃料電池用電極(1)の触媒能(酸素還元能)を以下の方法で評価した。
【0082】
まず、作製した燃料電池用電極(1)を、酸素雰囲気及び窒素雰囲気で、0.5mol/dm3の硫酸溶液中、30℃、5mV/秒の電位走査速度で分極し、電流−電位曲線を測定した。その際、同濃度の硫酸溶液中での可逆水素電極を参照電極とした。
【0083】
上記測定結果から、酸素雰囲気での還元電流と窒素雰囲気での還元電流との差を求めた。
図2に、上記測定により得られた酸素還元電流−酸素還元電位曲線(以下「電流−電位曲線」とする。)を示す。
0.7V(vs.NHE)における電流値を表2に示す。酸素還元電流が大きいほど、燃料電池用電極(1)の触媒能(酸素還元能)が高いことを示す。
【0084】
【表2】
[実施例2]
1.触媒の調製
三酸化二イットリウム0.81g(2.5mmol)、酸化チタン7.6g(95mmol)、カーボンブラック(キャボット社製、Vulcan72)3g(250mmol)をボールミルで十分に混合した。該混合物を1500℃で3時間、窒素雰囲気中で熱処理した。得られた物をボールミルで十分に粉砕し、炭窒化物混合物7.4gを得た。
得られたチタンの炭窒化物混合物300mgを、管状炉で、1000℃3時間、1.5容量%酸素ガスと4容量%水素を含有する窒素雰囲気中で熱処理した。得られたチタンの炭窒酸化物混合物(以下「触媒(2)」とも記す。)を十分に粉砕し、275mgを得た。
【0085】
実施例1と同様にして X線回折スペクトルを測定した。触媒(2)の粉末X線回折スペクトルを図3に示す。
【0086】
実施例1と同様にしてリートベルト解析を行い、チタンの炭窒酸化物混合物中の酸化チタンの結晶子サイズを求めた。得られた結果を表1に示す。
【0087】
2.燃料電池用電極の製造
前記触媒(2)を用いた以外は実施例1と同様にして燃料電池用電極(2)を得た。
【0088】
3.酸素還元能の評価
前記燃料電池用電極(2)を用いた以外は実施例1と同様にして触媒能(酸素還元能)を評価した。
【0089】
図4に、当該測定により得られた電流−電位曲線を示す。
【0090】
0.7V(vs.NHE)における電流値を表2に示す。
[実施例3]
1.触媒の調製
二酸化セリウム0.09g(0.5mmol)、酸化ジルコニウム12.3g(99.5mmol)、カーボンブラック(キャボット社製、Vulcan72)3g(250mmol)をボールミルで十分に混合した。該混合物を1700℃で3時間、窒素雰囲気中で熱処理した。得られた物をボールミルで十分に粉砕し、ジルコニウムの炭窒化物混合物11.3gを得た。
得られたジルコニウムの炭窒化物混合物300mgを、管状炉で、1000℃3時間、0.75容量%酸素ガスと4容量%水素を含有する窒素雰囲気中で熱処理した。得られたジルコニウムの炭窒酸化物混合物(以下「触媒(3)」とも記す。)を十分に粉砕し、280mgを得た。
実施例1と同様にして X線回折スペクトルを測定した。触媒(3)の粉末X線回折スペクトルを図5に示す。
実施例1と同様にして リートベルト解析を行い、ジルコニウムの炭窒酸化物混合物中の酸化ジルコニウムの単斜晶と正方晶の結晶子サイズを求めた。得られた結果を表3に示す。
【0091】
【表3】
2.燃料電池用電極の製造
前記触媒(3)を用いた以外は実施例1と同様にして燃料電池用電極(3)を得た。
【0092】
3.酸素還元能の評価
前記燃料電池用電極(3)を用いた以外は実施例1と同様にして触媒能(酸素還元能)を評価した。
【0093】
図6に、当該測定により得られた電流−電位曲線を示す。
0.5V(vs.NHE)における電流値を表4に示す。
【0094】
【表4】
[実施例4]
1.触媒の調製
三酸化二イットリウム1.61g(5mmol)、酸化ジルコニウム7.6g(90mmol)、カーボン(キャボット社製、Vulcan72)3g(250mmol)をボールミルで十分に混合した。該混合物を1700℃で3時間、窒素雰囲気中で熱処理した。得られた物をボールミルで十分に粉砕し、ジルコニウムの炭窒化物混合物11.6gを得た。
得られたジルコニウムの炭窒化物混合物300mgを、管状炉で、1000℃3時間、0.75容量%酸素ガスと4容量%水素を含有する窒素雰囲気中で熱処理した。得られたジルコニウムの炭窒酸化物混合物(以下「触媒(4)」とも記す。)を十分に粉砕し、275mgを得た。
【0095】
実施例1と同様にして X線回折スペクトルを測定した。触媒(4)の粉末X線回折スペクトルを図7に示す。
実施例1と同様にして リートベルト解析を行い、ジルコニウムの炭窒酸化物混合物中の酸化ジルコニウムの単斜晶と正方晶の結晶子サイズを求めた。得られた結果を表3に示す。
【0096】
2.燃料電池用電極の製造
前記触媒(4)を用いた以外は実施例1と同様にして燃料電池用電極(4)を得た。
【0097】
3.酸素還元能の評価
前記燃料電池用電極(4)を用いた以外は実施例1と同様にして触媒能(酸素還元能)を評価した。
【0098】
図8に、当該測定により得られた電流−電位曲線を示す。
0.5V(vs.NHE)における電流値を表4に示す。
[比較例1]
1.触媒の調製
酸化チタン8.0g(100mmol)、カーボンブラック(キャボット社製、Vulcan72)3g(250mmol)をボールミルで十分に混合した。該混合物を1500℃で3時間、窒素雰囲気中で熱処理した。得られた物をボールミルで十分に粉砕し、チタンの炭窒化物混合物7.2gを得た。
得られたチタンの炭窒化物混合物300mgを、管状炉で、1000℃3時間、1.5容量%酸素ガスと4容量%水素を含有する窒素雰囲気中で熱処理した。得られたチタンの炭窒酸化物混合物(以下「触媒(5)」とも記す。)を十分に粉砕し、275mgを得た。
実施例1と同様にして X線回折スペクトルを測定した。触媒(5)の粉末X線回折スペクトルを図9に示す。
実施例1と同様にして リートベルト解析を行い、チタンの炭窒酸化物混合物中の酸化チタンの結晶子サイズを求めた。得られた結果を表1に示す。
【0099】
2.燃料電池用電極の製造
前記触媒(5)を用いた以外は実施例1と同様にして燃料電池用電極(5)を得た。
【0100】
3.酸素還元能の評価
前記燃料電池用電極(5)を用いた以外は実施例1と同様にして触媒能(酸素還元能)を評価した。
【0101】
図10に、当該測定により得られた電流−電位曲線を示す。
【0102】
0.7V(vs.NHE)における電流値を表2に示す。
[比較例2]
1.触媒の調製
酸化ジルコニウム12.3g(100mmol)、カーボンブラック(キャボット社製、Vulcan72)3g(250mmol)をボールミルで十分に混合した。該混合物を1500℃で3時間、窒素雰囲気中で熱処理した。得られた物をボールミルで十分に粉砕し、ジルコニウムの炭窒化物混合物11.9gを得た。
得られたジルコニウムの炭窒化物混合物300mgを、管状炉で、1000℃3時間、0.75容量%酸素ガスと4容量%水素を含有する窒素雰囲気中で熱処理した。得られたジルコニウムの炭窒酸化物混合物(以下「触媒(6)」とも記す。)を十分に粉砕し、275mgを得た。
【0103】
実施例1と同様にして X線回折スペクトルを測定した。触媒(6)の粉末X線回折スペクトルを図11に示す。
【0104】
実施例1と同様にして リートベルト解析を行い、ジルコニウムの炭窒酸化物混合物中の酸化ジルコニウムの単斜晶と正方晶の結晶子サイズを求めた。得られた結果を表3に示す。
【0105】
2.燃料電池用電極の製造
前記触媒(6)を用いた以外は実施例1と同様にして燃料電池用電極(6)を得た。
【0106】
3.酸素還元能の評価
前記燃料電池用電極(5)を用いた以外は実施例1と同様にして触媒能(酸素還元能)を評価した。
【0107】
図12に、当該測定により得られた電流−電位曲線を示す。
0.5V(vs.NHE)における電流値を表4に示す。
【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明の製造方法より得られた触媒は、酸性電解質中や高電位で腐食せず、耐久性に優れ、高い酸素還元能を有するので、燃料電池用触媒層、電極、電極接合体または燃料電池に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】触媒(1)の粉末X線回折スペクトルである。
【図2】電極(1)の電流−電位曲線である。
【図3】触媒(2)の粉末X線回折スペクトルである。
【図4】電極(2)の電流−電位曲線である。
【図5】触媒(3)の粉末X線回折スペクトルである。
【図6】電極(3)の電流−電位曲線である。
【図7】触媒(4)の粉末X線回折スペクトルである。
【図8】電極(4)の電流−電位曲線である。
【図9】触媒(5)の粉末X線回折スペクトルである。
【図10】電極(5)の電流−電位曲線である。
【図11】触媒(6)の粉末X線回折スペクトルである。
【図12】電極(6)の電流−電位曲線である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一種以上の3族の遷移金属化合物と、結晶子サイズが1〜100nmの範囲である一種以上の4族または5族の遷移金属酸化物とを含む前記4族または5族の遷移金属炭窒酸化物混合物であることを特徴とする触媒。
【請求項2】
3族の遷移金属化合物が、スカンジウム、イットリウム、ランタン、セリウム、サマリウム、ジスプロシウム及びホルミウムからなる群から選ばれる一種以上の化合物であることを特徴とする請求項1に記載の触媒。
【請求項3】
4族または5族の遷移金属酸化物が、チタン、ジルコニウム、タンタル及びニオブからなる群から選ばれる一種以上の酸化物であることを特徴とする請求項1に記載の触媒。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の燃料電池用触媒。
【請求項5】
一種以上の3族の遷移金属化合物と一種以上の4族または5族の遷移金属酸化物とを含む前記金属炭窒化物混合物を得る工程と、
前記金属炭窒化物混合物を酸素含有ガス中で熱処理して前記金属炭窒酸化物混合物を得る工程とを含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の金属炭窒酸化物混合物触媒の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかに記載の触媒を含むことを特徴とする燃料電池用触媒層。
【請求項7】
さらに電子伝導性粒子を含むことを特徴とする請求項6に記載の燃料電池用触媒層。
【請求項8】
請求項6または7のいずれかに記載の燃料電池用触媒層と、多孔質支持層とを有することを特徴とする電極。
【請求項9】
カソードとアノードと前記カソード及び前記アノードの間に配置された電解質膜とを有する膜電極接合体であって、前記カソード及び/または前記アノードが請求項8に記載の電極であることを特徴とする膜電極接合体。
【請求項10】
請求項9に記載の膜電極接合体を備えることを特徴とする燃料電池。
【請求項11】
請求項9に記載の膜電極接合体を備えることを特徴とする固体高分子形燃料電池。
【請求項1】
一種以上の3族の遷移金属化合物と、結晶子サイズが1〜100nmの範囲である一種以上の4族または5族の遷移金属酸化物とを含む前記4族または5族の遷移金属炭窒酸化物混合物であることを特徴とする触媒。
【請求項2】
3族の遷移金属化合物が、スカンジウム、イットリウム、ランタン、セリウム、サマリウム、ジスプロシウム及びホルミウムからなる群から選ばれる一種以上の化合物であることを特徴とする請求項1に記載の触媒。
【請求項3】
4族または5族の遷移金属酸化物が、チタン、ジルコニウム、タンタル及びニオブからなる群から選ばれる一種以上の酸化物であることを特徴とする請求項1に記載の触媒。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の燃料電池用触媒。
【請求項5】
一種以上の3族の遷移金属化合物と一種以上の4族または5族の遷移金属酸化物とを含む前記金属炭窒化物混合物を得る工程と、
前記金属炭窒化物混合物を酸素含有ガス中で熱処理して前記金属炭窒酸化物混合物を得る工程とを含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の金属炭窒酸化物混合物触媒の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかに記載の触媒を含むことを特徴とする燃料電池用触媒層。
【請求項7】
さらに電子伝導性粒子を含むことを特徴とする請求項6に記載の燃料電池用触媒層。
【請求項8】
請求項6または7のいずれかに記載の燃料電池用触媒層と、多孔質支持層とを有することを特徴とする電極。
【請求項9】
カソードとアノードと前記カソード及び前記アノードの間に配置された電解質膜とを有する膜電極接合体であって、前記カソード及び/または前記アノードが請求項8に記載の電極であることを特徴とする膜電極接合体。
【請求項10】
請求項9に記載の膜電極接合体を備えることを特徴とする燃料電池。
【請求項11】
請求項9に記載の膜電極接合体を備えることを特徴とする固体高分子形燃料電池。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−88981(P2010−88981A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−259415(P2008−259415)
【出願日】平成20年10月6日(2008.10.6)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年10月6日(2008.10.6)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】
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