説明

触媒担持体

【課題】高いアイソスタティック強度と高い改質率を有する触媒担持体を提供する。
【解決手段】2つの開口面および外周面を有し、前記2つの開口面間に延在するセルがセル壁によって区画されたセラミックブロックを有する触媒担持体であって、前記セラミックブロックは、組み合わされた際に、該セラミックブロックの外周部を構成する外周側ハニカムユニットと、前記セラミックブロックの中央部を構成する中央側ハニカムユニットとを、接着層を介して組み合わせることにより形成され、前記外周側ハニカムユニットは、該ハニカムユニットの外周面を構成する外周セル壁を有し、該外周セル壁は、前記セラミックブロックとして組み合わされた際に、該セラミックブロックの外周面を形成する最外周セル壁を有し、前記外周側ハニカムユニットは、前記最外周セル壁と接するセルの、前記最外周セル壁と接する側のコーナー部が曲面化されている、触媒担持体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関から排出される排気ガス中のガス成分等を浄化する触媒担持体に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車、バス、トラック等の車両や建設機械等の内燃機関から排出される排気ガスに含まれる有害ガスを浄化する排気ガス処理装置が種々提案されている。
【0003】
一般的な排気ガス処理装置は、通常、エンジンの排気ガスマニホールドに連結された排気管の途上に、例えば金属等で構成されたケーシングを設け、その中にハニカム構造の触媒担持体を配置した構造となっている。
【0004】
この触媒担持体は、例えば、特許文献1のような、2つの端面を有するセラミックブロックと、そのセラミックブロックの端面を除く外周面に設置されたコート層とで構成される。また、セラミックブロックは、γアルミナ等からなる多孔質セラミックユニットが、接着層を介して複数個結束されて構成される。多孔質セラミックユニットは、セル壁を隔てて長手方向に延伸する多数のセルを有し、セル壁には、白金等の触媒が設置されている。このような触媒担持体に排気ガスを流通させた場合、セル壁に設置された触媒によって、排気ガスに含まれるCO、HCおよびNOx等の有害ガスが触媒反応によって改質されるため、排気ガスを浄化することができる。
【0005】
ところで、このような触媒担持体を製造する場合、まず最初に、接着層を介して、多孔質セラミックユニットを所定の数だけ結束させた後、この結束体を所望の形状に切断加工することにより、セラミックブロックが製作され、その後、セラミックブロックの外周(すなわち切断面)にコート層が設置される。しかしながらこのような方法では、セラミックブロックの製作時に、切断除去され廃棄される多孔質セラミックユニットの量が多くなり、製造コストが増大するという問題がある。また、前述の結束体を切断する工程のため、工程数が増加し、生産性が低下するという問題がある。
【0006】
このような問題に対処するため、DPF(Diesel Particulate Filter)の分野ではあるが、予め各種形状の複数の多孔質セラミックユニットを調製しておき、これらを接着層を介して組み合わせることにより、切断工程を経ずに、所望の形状のセラミックブロックを直接製作する技術が提案されている(特許文献2)。このようなDPFの製造方法は、触媒担持体の製造にも適用することができる。すなわち、触媒担持体の製造に、この製造方法を適用することにより、前述の製造コストおよび生産性の問題が解消される。
【特許文献1】特開2005−349378号公報
【特許文献2】特開2004−154718号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、前述のような触媒担持体では、排気ガスと触媒との接触確率を高めて改質率を向上させるため、セル壁の比表面積をできるだけ高くする必要がある。従って、特許文献1のような触媒担持体では、比表面積が大きくなっており、逆に強度は、低くなっている。そのため、触媒担持体については、設置の際および使用の際に破損が生じず、適正な強度が維持されるように考慮する必要がある。
【0008】
このような触媒担持体の破損を抑制するため、例えば、セルのコーナー部を円弧状に定形することが考えられる。
【0009】
図1および2は、触媒担持体130、130'の長手方向と垂直な断面から見たセル22およびセル壁23の拡大図の一例を示したものである。図1では、セル22のコーナー部は、実質的に直角であるのに対して、図2では、セル22のコーナー部が曲面状に定形されている。ここで、セル22内を流通する排気ガスのセル壁23内への最大進入距離をdとすると、図1のように、セルのコーナー部を曲面状に定形していない場合には、各セル22に流通される排気ガスは、セル壁23のほぼ全ての領域に進入し得る。従って、セル壁23に担持されているほほ全ての触媒を、排気ガスの改質反応に利用することができる。しかしながら、図2のように、セル22のコーナー部を曲面状に定形した場合には、各セル22に流通される排気ガスは、セル壁23の一部の領域にしか進入することはできず、図2の斜線部に示すような排気ガスが到達し得ない領域Pが生じる。この領域Pに設置された触媒(セル壁23の内部に設置されている)は、改質反応に寄与することができない。従って、図1と図2の触媒担持体において、セル壁23に設置された触媒の総量が一定の場合、図2の場合には、改質率が低下してしまう。
【0010】
このように、セルのコーナー部を曲面状にすると、触媒担持体の強度は改善されるものの、排気ガスの改質率は逆に低下してしまうという問題が生じる。
【0011】
本発明は、このような問題に鑑みなされたものであり、高いアイソスタティック強度と高い改質率の両特性を有する触媒担持体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明では、2つの開口面および外周面を有し、前記2つの開口面間に延在するセルがセル壁によって区画されたセラミックブロックを有する触媒担持体であって、
前記セラミックブロックは、組み合わされた際に、該セラミックブロックの外周部を構成する外周側ハニカムユニットと、前記セラミックブロックの中央部を構成する中央側ハニカムユニットとを、接着層を介して組み合わせることにより形成され、
前記外周側ハニカムユニットは、該ハニカムユニットの外周面を構成する外周セル壁を有し、該外周セル壁は、前記セラミックブロックとして組み合わされた際に、該セラミックブロックの外周面の一部を形成する最外周セル壁を有し、
前記外周側ハニカムユニットは、前記最外周セル壁と接するセルの、前記最外周セル壁と接する側のコーナー部が曲面化されていることを特徴とする触媒担持体が提供される。
【0013】
ここで、前記中央側ハニカムユニットは、該ハニカムユニットの外周面を構成する外周セル壁を有し、前記中央側ハニカムユニットは、前記外周セル壁と接するセルの、前記外周セル壁と接する側のコーナー部が曲面化されていても良い。
【0014】
また、本発明では、2つの開口面および外周面を有し、前記2つの開口面間に延在するセルがセル壁によって区画されたセラミックブロックを有する触媒担持体であって、
前記セラミックブロックは、組み合わされた際に、該セラミックブロックの外周面の一部を構成する外周側ハニカムユニットを、接着層を介して組み合わせることにより形成され、
前記外周側ハニカムユニットは、該ハニカムユニットの外周面を構成する外周セル壁を有し、該外周セル壁は、前記セラミックブロックとして組み合わされた際に、該セラミックブロックの外周面の一部を形成する最外周セル壁を有し、
前記外周側ハニカムユニットは、前記最外周セル壁と接するセルの、前記最外周セル壁と接する側のコーナー部が曲面化されていることを特徴とする触媒担持体が提供される。
【0015】
ここで、前記最外周セル壁の厚さは、均一であっても良い。
【0016】
また、前記外周側ハニカムユニットは、前記外周セル壁と接するセルの、前記外周セル壁と接する側のコーナー部が曲面化されていても良い。
【0017】
また、前記セラミックブロックは、円柱状であり、前記外周側ハニカムユニットは、前記最外周セル壁が曲面状になっていても良い。
【0018】
なお、当該ハニカムユニットは、無機粒子と、無機繊維および/またはウィスカとを含んでも良い。
【0019】
また、前記最外周セル壁の厚さは、0.25mm〜0.50mmの範囲であっても良い。
【0020】
また、前記セラミックブロックの外周面に、コート層が設置されても良い。
【0021】
特に、このコート層は、厚さが0.4〜3.0mmの範囲であっても良い。
【発明の効果】
【0022】
本発明では、触媒担持体を前述のように構成したため、アイソスタティック強度が高く、高い改質率を有する触媒担持体を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、図面により本発明の形態を説明する。
【0024】
図3には、本発明に係る触媒担持体の一例を模式的に示す。また、図4には、触媒担持体の骨格部を構成するセラミックブロックの概略図を示す。さらに、図5、7、8には、それぞれ、セラミックブロックを構成する第1、第2および第3のハニカムユニットの概略図を示す。なお図6は、図5に示す第1のハニカムユニットのA−A断面図である。
【0025】
図3に示すように、触媒担持体100は、セラミックブロック140と、該セラミックブロック140の開口端面を除く外周面に設置されたコート層120とを有する。セラミックブロック140は、図5〜8に示す3種類の形状のハニカムユニットを組み合わせることにより形成される。例えば、図4に示すセラミックブロック140は、第1、第2および第3のハニカムユニット130a、130bおよび130cを、それぞれ、4個、8個および4個組み合わせて、略円柱状となるように構成されている。より具体的には、円柱状のセラミックブロック140を構成する場合、まず、同一形状の第1のハニカムユニット130aを縦横2列ずつ積層して、中央部分を形成する。次に、2個の第2のハニカムユニット130bを鏡対称に併設することにより形成した4つのユニット組を、前述の中央部分の上下左右の各々に配設して、セラミックブロック140の外周部分の一部を形成する。さらに、4つの第2のハニカムユニット130bのユニット組の間に形成された4つの隙間に、セラミックブロック140の外周部分が滑らかにつながるように、第3のハニカムユニット130cを一つずつ配設することにより、セラミックブロック140が構成される。なお、これらのハニカムユニットの間には、接着層110が設置されており、これにより、各ハニカムユニット同士が結束され、セラミックブロック140の形状が維持されている。
【0026】
図5および6に示すように、第1のハニカムユニット130aは、実質的に四角柱状であり、内部には、セル壁23aによって区画された多数のセル22aが長手方向に沿って設けられている。セル22aは、両側の端面が開口されている。セル壁23aには、例えば白金等の貴金属からなる触媒が担持されている。
【0027】
第2のハニカムユニット130bは、図7に示すように、四角柱の一つの外周面(側面)が曲面状に形成された柱状形状となっている。なお、その他の側面は、平面状であり、特に、曲面状の側面と対向する平面状の側面の幅(W2)は、組立時にこの側面に併設されことになる第1のハニカムユニット130aの側面の幅とほぼ等しくなっている。第2のハニカムユニット130bの内部には、第1のハニカムユニット130aの場合と同様、セル壁23bによって区画された多数のセル22bが長手方向に沿って設けられている。セル22bは、両側の端面が開口されている。セル壁23bには、例えば白金等の貴金属からなる触媒が担持されている。
【0028】
第3のハニカムユニット130cは、図8に示すように、一つの外周面が曲面状に形成されており、残りの2つの側面は、相互に直角に交わる平坦な面を形成している。さらに、このハニカムユニット130cの長手方向に垂直な断面は、略扇状になっている。なお、平坦な2つの側面は、それぞれ幅W4およびW5を有し、これらの幅は、組立時にこの側面に併設されことになる第2のハニカムユニット130bの側面の幅(例えば、W3)とほぼ等しくなっている。このハニカムユニット130cの内部には、第1のハニカムユニット130aの場合と同様、セル壁23cによって区画された多数のセル22cが長手方向に沿って設けられている。セル22cは、両側の端面が開口されている。セル壁23cには、例えば白金等の貴金属からなる触媒が担持されている。
【0029】
以下、必要に応じて、第1のハニカムユニットのような、セラミックブロックが構成された際に、該セラミックブロックの外周面を構成しないハニカムユニットを、特に「中央側ハニカムユニット」と呼ぶことにする。同様に、必要に応じて、第2および第3のハニカムユニットのような、セラミックブロックが構成された際に、該セラミックブロックの外周面の一部を構成するハニカムユニットを、特に「外周側ハニカムユニット」と呼ぶことにする。また、各ハニカムユニットにおいて、ハニカムユニットの外周を構成するセル壁を、特に「外周セル壁」と称する。特に、各「外周セル壁」のうち、将来セラミックブロックが構成された際に、該セラミックブロックの最外周側に位置することになるものを、「最外周セル壁」と称する。さらに、各ハニカムユニットにおいて、ハニカムユニットの外周を構成するセル壁(すなわち、「外周セル壁」)と接するセルを、特に「外周セル」と称する。特に、各「外周セル」のうち、将来セラミックブロックが構成された際に、該セラミックブロックの最外周側に位置することになるものを、「最外周セル」と称する。この定義から明らかなように、「中央側ハニカムユニット」には、「最外周セル壁」および「最外周セル」は存在しない。
【0030】
図5〜8を再度参酌すると、第1のハニカムユニット130aでは、各セル22aの長手方向に垂直な断面は、略四角形状であり、いずれのセル22aも、略直角の4つのコーナー部を有する。これに対して、第2のハニカムユニット130bおよび第3のハニカムユニット130cでは、「最外周セル」において、一部のコーナー部が曲面状になっている。すなわち、図7の拡大部分(丸で囲った部分)に示すように、第2のハニカムユニット130bでは、「最外周セル」22'bは、「最外周セル壁」50bと接するコーナー部が曲面化されている。同様に、図8の拡大部分(丸で囲った部分)に示すように、第3のハニカムユニット130cでは、「最外周セル」22'cは、「最外周セル壁」50cと接するコーナー部が曲面化されている。
【0031】
なお、本願において、セルのコーナー部が「曲面化」されているという表現は、該当するセルのコーナー部が丸く定形されている状態(面丸めされた状態)の他、該当するセルのコーナー部が面取り(C面取り)されている状態も含むことに留意する必要がある。また、そのようなセルのコーナー部の「曲面化」は、実際には、相当する位置のセル壁のコーナー部を丸く定形したり、面取りされるように定形したりすることによって実施されることは、当業者には明らかである。
【0032】
以下、このように構成された本発明の触媒担持体の特徴的効果について説明する。
【0033】
通常、外周方向から応力が加わった際、第2および第3のハニカムユニットに、前述のような曲面状のコーナー部を有する最外周セルを設けた場合には、応力を分散することができ、破損が生じにくくなる、つまり触媒担持体100の外周方向からの応力に対する強度を向上させることが可能となる。
【0034】
また、本発明では、このようなコーナー部の曲面化を、第2および第3のハニカムユニット(すなわち、「外周側ハニカムユニット」)の全てのセルに適用するのではなく、「最外周セル」の「最外周セル壁」と接するコーナー部にのみ適用しても良い。以下、この効果について説明する。
【0035】
図1および2には、典型的なハニカムユニットの長手方向に対して垂直な面の拡大図を示す。図1は、セルの全てのコーナー部が曲面化されていないハニカムユニットに対応し、図2は、セルの全てのコーナー部が曲面化されているハニカムユニットに対応する。いずれの場合にも、セル壁23には、触媒が担持されている。ここで、これらのハニカムユニットにより構成された触媒担持体が実際に使用された場合、セル22内を流通する排気ガスは、多孔質なセル壁23内に入り込み、セル壁23に設置された触媒と接触することにより改質される。この排気ガスのセル壁23への最大進入距離をdとすると、セル壁23の厚さxが(d×√2)以下の場合には、図1のハニカムユニットにおいて、各セル22に流通された排気ガスは、セル壁23のほぼ全ての領域に到達し得る。これは、実質的にセル壁23に設置された触媒の全てが排気ガスの改質反応に寄与しうることを意味し、このハニカムユニットにより構成された触媒担持体は、高い改質率を有することになる。
【0036】
これに対して、セルのコーナー部が曲面化されている図2のハニカムユニットの場合は、セル壁の厚さが同様にxであっても、排気ガスは、セル壁の斜線部で示されている領域Pには、到達することができない。このため、この領域Pに設置された触媒は、排気ガスの浄化反応に寄与することはできない。従って、ハニカムユニットへの触媒の設置総量が一定の場合、図2のハニカムユニットで構成された触媒担持体では、排気ガスの改質率が低下してしまう。
【0037】
このように、セルのコーナー部を曲面化すると、触媒担持体の強度は改善されるものの、排気ガスの改質率は逆に低下してしまうという問題が生じる。
【0038】
しかしながら、本発明では、組み立てられた際に、セラミックブロック140の外周側に相当する、第2および第3ハニカムユニット130b、130cにおいて、コーナー部が曲面化されるセルは、触媒担持体としての強度に大きな影響を及ぼす「最外周セル」に限られており、その他のセルは、コーナー部が曲面化されていない。従って、本発明では、「最外周セル」のコーナー部の曲面化によって、強度を向上させることが可能となるとともに、セルのコーナー部の曲面化による改質率の低下を最小限に抑制することが可能となる。
【0039】
これに加えて、本実施形態では、最外周壁の厚さが均一になるようにセルを配置している。これにより、開口率を高め、より排ガスの浄化性能を高めることができる。
【0040】
なお、本発明において、コーナー部が曲面化されるセルは、「外周側ハニカムユニット」の「最外周セル」だけである必要はない。例えば、さらに「外周側ハニカムユニット」の「外周セル」において、「外周セル壁」と接するコーナー部が曲面化されても良い。あるいは、これに加えて、またはこれとは別に、「中央側ハニカムユニット」の「外周セル」において、「外周セル壁」と接するコーナー部が曲面化されても良い。これらの場合、セラミックブロックのセルの全てのコーナー部に対して、曲面化されるコーナー部の割合は、ごく僅かであり、曲面化による改質率の低下は、ほとんど無視できる。ただし、本発明では、強度を確保するため、少なくとも、「外周側ハニカムユニット」の「最外周セル」の「最外周セル壁」と接するコーナー部は、曲面化されている必要がある。
【0041】
また、前述の第1、第2および第3のハニカムユニットの形状は、一例であって、図に示した形状以外のものを使用しても良い。さらに、前述の例では、セラミックブロックは、3種類の形状のハニカムユニットを組み合わせることにより構成されたが、セラミックブロックは、2種類または4種類以上の形状のハニカムユニットを組み合わせることにより構成されても良い。
【0042】
特に、前述の記載では、セラミックブロックが「外周側ハニカムユニット」と、「中央側ハニカムユニット」とを組み合わせて構成される場合を例に、本発明による触媒担持体の特徴を説明した。しかしながら、セラミックブロックは、「外周側ハニカムユニット」のみで構成されても良い。図9には、そのようなセラミックブロックを有する本発明による触媒担持体の別の構成例を示す。この図から明らかなように、この触媒担持体101は、第4のハニカムユニット130d、すなわち「外周側ハニカムユニット」のみを接着層110を介して組み合わせることにより構成された、セラミックブロック141を有する。
【0043】
ここで、ハニカムユニットの「外周セル壁」および「最外周セル壁」の厚さは、強度の観点から、0.25〜0.5mmの範囲であることが好ましい。ただし、「最外周セル壁」の場合、最適な厚さは、コート層の厚さとの関係によって定められる。また、ハニカムユニット130a、b、cの「外周セル壁」以外のセル壁23a、b、cの厚さは、特に限定されないが、強度の点で望ましい下限は、0.1mmであり、圧力損失およびガス進入の点から望ましい上限は、0.4mmである。
【0044】
さらに、前述の触媒担持体の例(図3)では、セラミックブロックの外周面に、コート層が設置されている触媒担持体を示した。しかしながら、このコート層の設置は任意である。ただし、コート層を設置することにより、セラミックブロックの外周面の強度が向上し、触媒担持体の強度をさらに高めることができる。
【0045】
コート層の厚さは、特に限られないが、0.4〜3.0mmの範囲であることが好ましい。ただし、最適な厚さは、「最外周セル壁」の厚さとの関係によって定められる。また、コート層は、局部的に強度が低下することを回避するため、実質的に均一であることが好ましい。
【0046】
このような本発明による触媒担持体は、例えば、車両の排気ガス処理装置に用いることができる。
【0047】
図10には、本発明による触媒担持体100が装着された排気ガス処理装置70の一例を模式的に示す。図10に示すように、排気ガス処理装置70は、主として触媒担持体100、触媒担持体100を収容する金属製ケーシング71、および触媒担持体100とケーシング71との間に配設され、触媒担持体100を適切な位置に保持する保持シール材72で構成される。また、排気ガス処理装置70の一方の端部(導入部)には、エンジン等の内燃機関から排出された排気ガスを導入するための導入管74が接続されており、排気ガス処理装置70の他方の端部(排出部)には、排気ガスを排出するための排出管75が接続されている。図において矢印は、排気ガスの流れを示している。
【0048】
エンジン等の内燃機関から排出された排気ガスは、導入管74を通って、ケーシング71内に導入され、導入管74と面する触媒担持体100の一方の端面から各セル22に流入することにより、触媒担持体100内に流入する。触媒担持体100に流入した排気ガスは、セル22を通過する過程で触媒と接触し、この際に生じる改質反応により、CO、HCおよびNOx等の有害な成分が浄化される。その後、排気ガスは、触媒担持体100の他方の端面を通って、排気ガス処理装置から排出され、最終的に、排出管75を通って外部へ排出される。
【0049】
このような排気ガス処理装置70では、触媒担持体100は、コーナー部が曲面化されていないセルを多数有するセラミックブロックで構成されているため、良好な改質率を示す。また、この触媒担持体100では、特に高強度が必要となる、セラミックブロックの外周側に位置するセル(すなわち、「最外周セル」)の「最外周セル壁」と接するコーナー部が曲面化されているため、ケーシング71または保持シール材72側から付加される外周方向の圧縮応力に対して、良好な強度を示す。従って、本発明では、高いアイソスタティック強度と高い改質率とを兼ね備えた触媒担持体が提供される。
【0050】
本発明の触媒担持体を構成するハニカムユニット130a、b、cの組成は、特に限定されるものではないが、無機粒子と、無機繊維および/またはウィスカとを含んでなることが望ましい。無機粒子によって比表面積が向上し、無機繊維および/またはウィスカによってハニカムユニットの強度が向上することとなるからである。
【0051】
上記無機粒子としては、アルミナ、シリカ、ジルコニア、チタニア、セリア、ムライト、ゼオライト等からなる粒子が望ましい。これらの粒子は、単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。また、これらの中では、アルミナ粒子、セリア粒子が特に望ましい。
【0052】
上記無機繊維やウィスカとしては、アルミナ、シリカ、炭化珪素、シリカ−アルミナ、ガラス、チタン酸カリウムまたはホウ酸アルミニウム等からなる無機繊維やウィスカが望ましい。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。上記無機繊維および/またはウィスカのなかでは、ホウ酸アルミニウムウィスカがより望ましい。
【0053】
なお、本明細書中において、無機繊維やウィスカとは、平均アスペクト比(長さ/径)が5を超えるものをいう。また、上記無機繊維やウィスカの望ましい平均アスペクト比は、10〜1000である。
【0054】
上記ハニカムユニットに含まれる上記無機粒子の量について、望ましい下限は30重量%であり、より望ましい下限は40重量%であり、さらに望ましい下限は50重量%である。一方、望ましい上限は97重量%であり、より望ましい上限は90重量%であり、さらに望ましい上限は80重量%であり、特に望ましい上限は75重量%である。
【0055】
無機粒子の含有量が30重量%未満では、比表面積の向上に寄与する無機粒子の量が相対的に少なくなるため、ハニカム構造体としての比表面積が小さく、触媒成分を担持する際に触媒成分を高分散させることができなくなる場合がある。一方、97重量%を超えると強度向上に寄与する無機繊維および/またはウィスカの量が相対的に少なくなるため、ハニカム構造体の強度が低下することとなる。
【0056】
上記ハニカムユニットに含まれる上記無機繊維および/または上記ウィスカの合計量について、望ましい下限は3重量%であり、より望ましい下限は5重量%であり、さらに望ましい下限は8重量%である。一方、望ましい上限は70重量%であり、より望ましい上限は50重量%であり、さらに望ましい上限は40重量%であり、特に望ましい上限は30重量%である。
【0057】
無機繊維および/またはウィスカの含有量が3重量%未満ではハニカム構造体の強度が低下することとなり、50重量%を超えると比表面積向上に寄与する無機粒子の量が相対的に少なくなるため、ハニカム構造体としての比表面積が小さく触媒成分を担持する際に触媒成分を高分散させることができなくなる場合がある。
【0058】
また、上記ハニカムユニットは、上記無機粒子と上記無機繊維および/またはウィスカと無機バインダとを含む混合物である原料組成物を用いて製造されていることが望ましい。このように無機バインダを含む原料組成物を用いることにより、生成形体を焼成する温度を低くしても好適な強度のハニカムユニットを得ることができるからである。
【0059】
上記無機バインダとしては、無機ゾルや粘土系バインダ等を用いることができ、上記無機ゾルの具体例としては、例えば、アルミナゾル、シリカゾル、チタニアゾル、水ガラス等が挙げられる。また、粘土系バインダとしては、例えば、白土、カオリン、モンモリロナイト、セピオライト、アタパルジャイト等の複鎖構造型粘土等が挙げられる。これらは単独で用いても良く、2種以上を併用してもよい。
【0060】
これらのなかでは、アルミナゾル、シリカゾル、チタニアゾル、水ガラス、セピオライトおよびアタパルジャイトからなる群から選択された少なくとも1種が望ましい。
【0061】
上記原料組成物中に含まれる無機バインダの量は、原料組成物に含まれる上記無機粒子と上記無機繊維および/またはウィスカと上記無機バインダとの固形分の総量に対して、固形分として、その望ましい下限は、5重量%であり、より望ましい下限は、10重量%であり、さらに望ましい下限は15重量%である。一方、望ましい上限は、50重量%であり、より望ましい上限は、40重量%であり、さらに望ましい上限は、35重量%である。
【0062】
上記無機バインダの量が5重量%未満では、製造したハニカム構造体の強度が低くなることがあり、一方、上記無機バインダの量が50重量%を超えると上記原料組成物の成型性が悪くなる傾向にある。
【0063】
なお本発明の触媒担持体100において、接着層110とコート層120とは、同じ材料であっても異なる材料であっても良い。また、これらの層は、緻密質でも多孔質であっても良い。接着層110およびコート層120を構成する材料は、特に限られないが、例えば、無機バインダと有機バインダと無機繊維および/または無機粒子とからなるものを使用することができる。
【0064】
上記無機バインダとしては、例えば、シリカゾル、アルミナ等を使用することができ、これらは単独で使用しても、2種類以上のものを混合して使用しても良い。上記無機バインダの中では、シリカゾルが望ましい。
【0065】
上記有機バインダとしては、例えば、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシルメチルセルロース等を使用することができ、これらは単独で使用しても、2種類以上のものを混合して使用しても良い。上記有機バインダの中では、カルボキシルメチルセルロースが望ましい。
【0066】
上記無機繊維としては、例えば、シリカ−アルミナ、ムライト、アルミナ、シリカ等のセラミックファイバーを使用することができる。これらは、単独で使用しても、2種類以上のものを混合して使用しても良い。上記無機繊維の中では、シリカ−アルミナファイバーが望ましい。
【0067】
上記無機粒子としては、上述のものを使用することができる。これらは、単独で使用しても、2種類以上のものを混合して使用しても良い。特に、接着層110およびコート層120は、ハニカムユニットと同材料で構成されることが望ましい。
【0068】
なお、通常の場合、接着層110およびコート層120は、前記成分を含むペーストを原料として調製し、これを所定の箇所に設置後、乾燥させることにより形成される。原料となるペーストには、必要に応じて、酸化物系セラミックを成分とする微小中空球体であるバルーンや、球状アクリル粒子、グラファイト等の造孔剤を添加しても良い。
【0069】
本発明の触媒担持体100の形状は、いかなる形状であっても良い。例えば、触媒担持体の形状は、図3に示すような円柱型の他、楕円柱形等であっても良い。
(触媒担持体の製造方法)
次に、本発明の触媒担持体の製造方法について説明する。
【0070】
図11には、本発明の触媒担持体の製造フローを示す。ステップ100では、以下の工程により、触媒が設置された「中央側ハニカムユニット」(例えば、図5に示すような実質的に四角柱状のハニカムユニット)が製作される。
【0071】
最初に、前述のセラミック材料を主成分とする原料ペーストを用いて押出成形が行われる。
【0072】
原料ペーストには、これらのほかに有機バインダ、分散媒および成形助剤を成形性にあわせて適宜加えてもよい。有機バインダとしては、特に限定されるものではないが、例えば、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリエチレングリコール等から選ばれる1種以上の有機バインダが挙げられる。有機バインダの配合量は、無機粒子、無機繊維および/またはウィスカ、無機バインダの合計100重量部に対して、1〜10重量部が好ましい。分散媒としては、特に限定されるものではないが、例えば、水、有機溶媒(ベンゼンなど)およびアルコール(メタノールなど)などを挙げることができる。成形助剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、エチレングリコール、デキストリン、脂肪酸、脂肪酸石鹸およびポリアルコールを挙げることができる。
【0073】
原料ペーストは、特に限定されるものではないが、混合・混練することが好ましく、例えば、ミキサーやアトライタなどを用いて混合してもよく、ニーダーなどで十分に混練してもよい。原料ペーストを成型する方法は、特に限定されるものではないが、例えば、押出成形などによってセルを有する形状に成形することが好ましい。
【0074】
次に、得られた成形体は、乾燥することが好ましい。乾燥に用いる乾燥機は、特に限定されるものではないが、マイクロ波乾燥機、熱風乾燥機、誘電乾燥機、減圧乾燥機、真空乾燥機および凍結乾燥機などが挙げられる。また、得られた成形体は、脱脂することが好ましい。脱脂する条件は、特に限定されず、成形体に含まれる有機物の種類や量によって適宜選択するが、おおよそ400℃、2時間が好ましい。更に、得られた成形体は、焼成することが好ましい。焼成条件としては、特に限定されるものではないが、600〜1200℃が好ましく、600〜1000℃がより好ましい。この理由は、焼成温度が600℃未満では無機粒子などの焼結が進行せずハニカム構造体としての強度が低くなり、1200℃を超えると無機粒子などの焼結が進行しすぎて単位体積あたりの比表面積が小さくなるためである。以上の処理を行うことにより、「中央側ハニカムユニット」が製作される。
【0075】
次に、ステップ110では、同様の工程を経て、「外周側ハニカムユニット」(例えば、図7および8に示すような形状のハニカムユニット)が製作される。ここで、「外周側ハニカムユニット」は、前述の「中央側ハニカムユニット」と形状が異なる他、少なくとも「最外周セル」の「最外周セル壁」と接するコーナー部が曲面化されている点が異なることに留意する必要がある。
【0076】
次に、ステップ120では、「中央側ハニカムユニット」と、「外周側ハニカムユニット」とが、接着層を介して組み合わされ、セラミックブロックが形成される。
【0077】
この工程では、まず、一つの「中央側ハニカムユニット」の一側面に、後に接着層となる接着層用ペーストを均一な厚さで塗布した後、この接着層用ペーストを介して、順次他のハニカムユニットを積層する。この工程を繰り返し、所望の形状のセラミックブロックを製作する。なお前記接着層用ペーストには、前述の原料ペーストを使用しても良い。その後、セラミックブロックを加熱することにより、接着層用ペーストが乾燥、固定化され、接着層が形成されるとともに、各多孔質ハニカムユニット同士が固着される。
【0078】
次に、ステップ130では、セラミックブロックの外周面に、コート層が設置される。なお、このステップ130は、任意であり、必要な場合に実施される。
【0079】
コート層を設置する場合、まず、セラミックブロックの開口面を除く外周部にコート層用ペーストが設置される。コート層を形成する方法としては特に限定されず、例えば、回転手段を備えた支持部材を使用し、セラミックブロックをその回転軸方向に軸支、回転させ、コート層用のペーストを、回転しているセラミックブロックの外周部に付着させる。そして、板状部材等を用いてペーストを引き延ばし、ペースト層を形成し、この後、例えば、120℃以上の温度で乾燥させることにより、水分を蒸発させることで、セラミックブロックの外周部にコート層を形成する方法を挙げることができる。
【0080】
コート層を構成する材料としては特に限定されるものではないが、無機繊維、無機バインダ等の耐熱性の材料を含むものが好ましい。上記コート層は、上述した接着剤層と同じ材料により構成されていてもよい。この場合、コート層用ペーストには、前述の接着層用のペーストが使用される。このようにして、触媒担持体が作製される。
【0081】
次に、前述のように作製された触媒担持体のセル壁に、触媒が設置される。触媒材料は、特に限定されないが、例えば白金、パラジウム、ロジウム等の貴金属が挙げられる。またアルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、遷移金属等を含んだ化合物を担持させても良い。白金触媒を設置する方法としては、例えば、触媒担持層が設置されたハニカムユニットをジニトロジアンミン白金硝酸溶液([Pt(NH(NO]HNO)等に含浸させて、加熱する方法等が利用される。
【0082】
このような工程を経て、セル壁に触媒を設置しても良い。なお、ハニカムニットに触媒を担持した後に、ユニットを組み立てても良く、触媒が含まれた材料により、ハニカムユニットを作製しても良い。
【0083】
このような本発明による触媒担持体の製造方法では、同一形状のハニカムユニットを複数個結束させてセラミックブロックを構成した後、このセラミックブロックを所望の形状に切断する工程を有さない。従って、切除後に廃棄されるハニカムユニットが生成されず、触媒担持体を安価に製造することができるとともに、製造工程を簡略化することができる。また、このような形状のハニカムユニットは、比較的小さな成形体であるため、焼成時に生じる熱膨張等も小さく、例えば製造中にクラックが発生して、歩留まりが低下するようなこともほとんど生じない。
【0084】
以下、実施例により本発明の効果を詳しく説明する。
【実施例1】
【0085】
[触媒担持体の製作]
まず、γアルミナ粒子(平均粒径2μm)1575重量部、ゼオライト675重量部、ホウ酸アルミニウムウィスカ680重量部、シリカゾル(固体濃度30重量%)2600重量部、メチルセルロース320重量部、可塑剤(グリセリン)225重量部および潤滑剤(ユニルーブ)290重量部を混合・混練して混合組成物を得た。次に、この混合組成物を押出成形機により押出成形を行い、図5、7、8に示す3種類の柱状のハニカムユニット(以下、それぞれ、第1、第2および第3のハニカムユニットという)の成形体を得た。
【0086】
次に、マイクロ波乾燥機及び熱風乾燥機を用いてこれらの成形体を十分乾燥させ、400℃で2時間保持して脱脂した。その後、800℃で2時間保持して焼成を行い、3種類の形状のハニカムユニットを得た。第1のハニカムユニットは、縦37.0mm×横37.0mm×長さ150.0mm)の形状であった。第2のハニカムユニットは、図7に示す寸法W1、W2、W3およびL1が、それぞれ、33.0mm、37.0mm、20.6mmおよび150.0mmであった。第3のハニカムユニットは、図8に示す寸法W4、W5およびL2が、それぞれ、20.6mm、20.6mmおよび150.0mmであった。各ハニカムユニットの「外周セル壁」の厚さは、0.25mmであり、その他の部分のセル壁の厚さは、0.20mmであった。なお、第2および第3のハニカムユニットは、「最外周セル壁」と接する「最外周セル」のコーナー部のうち、「最外周セル壁」と接するコーナー部のみがC面取り(0.3mm)により、曲面化されている。これに対して、第1のハニカムユニットでは、いずれのセルのいずれのコーナー部も曲面化されていない。
【0087】
次に、γアルミナ粒子(平均粒径2μm)29重量%、シリカ−アルミナ繊維(平均繊維径10μm、平均繊維長100μm)7重量%、シリカゾル(固体濃度30重量%)34重量%、カルボキシメチルセルロース5重量%及び水25重量%を混合して、接着層用ペーストを調製した。この接着層用ペーストを各ハニカムユニットの側面に塗布し、ハニカムユニット同士を接合させ、図4に示す形状のセラミックブロックを作製した。接着層用ペーストは、完成後の接着層の厚さが1mmとなるように、ハニカムユニットに均一に塗布した。
【0088】
次に、コート層を形成するため、この状態で、上述の接着層用ペーストをハニカム構造体の開口面を除く外周面に塗布した。コート層用ペーストは、セラミックブロックの外周面に、ほぼ均一な厚さとなるように設置した。次に、これを120℃で乾燥後、700℃で2時間保持し、接着層およびコート層の脱脂を行った。コート層の厚さは、0.4mmであった。
【0089】
このような工程により、実施例1に係る触媒担持体を得た。
【0090】
次に、触媒担持体を硝酸白金溶液に含浸させ、単位体積当たりの白金重量が2.5g/Lとなるように触媒を担持させた後、600℃で1時間保持した。
【実施例2】
【0091】
実施例1の場合と同様の方法により、触媒担持体を製作した。ただし、この実施例2では、前述の3種類のハニカムユニットの「外周セル壁」の厚さを0.27mmとした。コート層の厚さは、0.4mmであった。
【実施例3】
【0092】
実施例1の場合と同様の方法により、触媒担持体を製作した。ただし、この実施例3では、前述の3種類のハニカムユニットの「外周セル壁」の厚さを0.4mmとした。コート層の厚さは、0.4mmであった。
【実施例4】
【0093】
実施例1の場合と同様の方法により、触媒担持体を製作した。ただし、この実施例4では、前述の3種類のハニカムユニットの「外周セル壁」の厚さを0.5mmとした。コート層の厚さは、0.4mmであった。
【実施例5】
【0094】
実施例1の場合と同様の方法により、触媒担持体を製作した。ただし、この実施例5では、前述の3種類のハニカムユニットの「外周セル壁」の厚さを0.4mmとした。コート層の厚さは、2.0mmであった。
【実施例6】
【0095】
実施例1の場合と同様の方法により、触媒担持体を製作した。ただし、この実施例6では、前述の3種類のハニカムユニットの「外周セル壁」の厚さを0.4mmとした。コート層の厚さは、3.0mmであった。
【実施例7】
【0096】
実施例1の場合と同様の方法により、触媒担持体を製作した。ただし、この実施例7では、前述の3種類のハニカムユニットの「外周セル壁」の厚さを0.4mmとした。コート層の厚さは、5.0mmであった。
【実施例8】
【0097】
実施例1の場合と同様の方法により、触媒担持体を製作した。ただし、この実施例8では、第2および第3のハニカムユニット、すなわち「外周側ハニカムユニット」において、「外周セル」の「外周セル壁」と接するコーナー部がC面取り(0.3mm)により、曲面化されている点が異なっている。前述の3種類のハニカムユニットの「外周セル壁」の厚さは、0.4mmであり、コート層の厚さは、0.4mmであった。
【実施例9】
【0098】
実施例1の場合と同様の方法により、触媒担持体を製作した。ただし、この実施例9では、第1、第2および第3の全てのハニカムユニットにおいて、「外周セル」の「外周セル壁」と接するコーナー部がC面取り(0.3mm)により、曲面化されている点が異なっている。前述の3種類のハニカムユニットの「外周セル壁」の厚さは、0.40mmであり、コート層の厚さは、0.4mmであった。
【比較例1】
【0099】
前述の実施例1と同様の工程により、触媒が担持された第1のハニカムユニットを16個製作した。セル壁の厚さは、外周部および内部とも、0.2mmであった。なお、このハニカムユニットでは、いずれのセルも、コーナー部が曲面化されていない。次に、これらの同一形状のハニカムユニットを、実施例1と同様の接着層を介して、4行×4列に接合させてセラミックブロックを形成した。次に、このセラミックブロックを、ダイアモンドカッターを用いて、略円柱状に切断した(直径約143mm)。その後、セラミックブロックの切断面に、実施例1と同様のコート層を設置し、触媒担持体を製作した。コート層の厚さは、0.4mmであった。
【比較例2】
【0100】
実施例1の場合と同様の方法により、触媒担持体を製作した。ただし、この比較例2では、第1、第2および第3のハニカムユニットにおいて、全てのセルの全てのコーナー部が曲面化されている点が、実施例1とは異なっている。前述の3種類のハニカムユニットの「外周セル壁」の厚さは、0.40mmであり、コート層の厚さは、0.4mmであった。
【0101】
以上の実施例および比較例に係る触媒担持体について、セラミックブロックの製造方法、曲面化コーナー部を有するハニカムユニットとそのセルの位置、セル壁の厚さ、コート層の厚さ等を表1にまとめて示した。
【0102】
【表1】

[CO浄化率測定]
前述のように製作した実施例1〜9および比較例1、2に係る触媒担持体を用いて、CO浄化率を測定した。
【0103】
CO浄化率は、以下のように測定した。触媒担持体をケーシング内に配設し、150℃において、触媒担持体の一方の端面側から、試験ガスを流入させ、他方の端面側から排出させる。排出された試験ガス中のCO濃度をガス分析装置によって測定する。得られた結果から、
CO浄化率(%)=(触媒担持体通過前の試験ガス中のCO濃度/触媒担持体通過後の試験ガス中のCO濃度)×100
としてCO浄化率を求めた。なお試験ガスには、以下の組成のガスを使用した:CO濃度500ppm、HC濃度150ppm、NO濃度150ppm、CO濃度5vol%、O濃度13vol%、SO濃度10ppm、HO濃度5vol%。
【0104】
結果を表1にまとめて示す。この表から、実施例1乃至9に係る触媒担持体では、全てのセルの全てのコーナー部が曲面化された比較例2に係る触媒担持体に比べて、CO浄化率が著しく向上していることがわかる。
[アイソスタティック強度測定]
前述のように製作した実施例1〜9および比較例1、2に係る触媒担持体を用いて、アイソスタティック強度を測定した。ここで、アイソスタティック強度とは、触媒担持体に等方的な静水圧荷重を負荷した際に破壊が生じるときの圧縮破壊荷重であり、社団法人自動車技術協会発行の自動車規格であるJASO規格M505−87に規定されている。
【0105】
アイソスタティック強度は、以下のように測定した。触媒担持体の両方の開口面に、金属板(アルミニウム板:厚さ15mm)を設置する。次に、この触媒担持体と金属板を、ウレタンゴムシート(厚さ2mm)に包み、密閉する。次に、この密閉体を水が入った容器中に完全に浸漬させる。この状態で、水圧を上昇させて行き、触媒担持体に破壊が生じる水圧を測定する。
【0106】
各触媒担持体において得られた結果をまとめて、表1に示す。また、図12には、コート層を0.4mmに統一した場合の、触媒担持体の「外周セル壁」の厚さとアイソスタティック強度の関係を示すグラフを示す。
【0107】
この結果から、実施例1乃至9に係る触媒担持体では、コーナー部が曲面化されたセルを有さない、比較例1に係る触媒担持体に比べて、アイソスタティック強度が向上していることがわかる。特に、図11のグラフから、「外周セル壁」の厚さが0.25mm以上の触媒担持体では、極めて良好なアイソスタティック強度が得られることがわかる。
【0108】
なお、実施例3と8の比較から、外周側ハニカムユニットにおいて、「最外周セル」のコーナー部(「最外周セル壁」と接するコーナー部のみ)が曲面化された場合と、「外周セル」のコーナー部(「外周セル壁」と接するコーナー部のみ)が曲面化された場合とでは、アイソスタティック強度にほとんど差異がないことがわかる。同様に、実施例8と9の比較から、「外周側ハニカムユニット」について、「外周セル」のコーナー部(「外周セル壁」と接するコーナー部のみ)が曲面化された場合と、「外周側ハニカムユニット」と「中央側ハニカムユニット」の双方について、「外周セル」のコーナー部(「外周セル壁」と接するコーナー部のみ)が曲面化された場合とで、アイソスタティック強度にほとんど差異がないことがわかる。従って、CO浄化率を考慮した場合、コーナー部の曲面化は、「外周側ハニカムユニット」のうち「最外周セル」にのみ適用することが、より好ましいといえる。
【0109】
ただし、外周セル壁に接するセルのコーナー部が曲面化された場合は、製造時(特に組立時)の破損を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】セルのコーナー部が曲面化されていないハニカムユニットの断面拡大図である。
【図2】セルのコーナー部が曲面化されたハニカムユニットの断面拡大図である。
【図3】本発明の触媒担持体の一例を模式的に示した斜視図である。
【図4】本発明の触媒担持体を構成するセラミックブロックの一例を模式的に示した斜視図である。
【図5】本発明の触媒担持体を構成する第1のハニカムユニットの一例を模式的に示した斜視図である。
【図6】図5の第1のハニカムユニットのA−A線での断面概略図である。
【図7】本発明の触媒担持体を構成する第2のハニカムユニットの一例を模式的に示した斜視図である。
【図8】本発明の触媒担持体を構成する第3のハニカムユニットの一例を模式的に示した斜視図である。
【図9】本発明の別の触媒担持体を模式的に示した図である。
【図10】本発明の触媒担持体が設置された排気ガス処理装置の一例を模式的に示した断面図である。
【図11】本発明の触媒担持体の製造フローを示す図である。
【図12】コート層を0.4mmに統一した場合の、触媒担持体の「外周セル壁」の厚さとアイソスタティック強度の関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0111】
22、22a、22b、22c セル
23、23a、23b、23c セル壁
70 排気ガス処理装置
71 ケーシング
72 保持シール材
74 導入管
75 排出管
100、101 触媒担持体
110 接着層
120 コート層
130a 第1のハニカムユニット
130b 第2のハニカムユニット
130c 第3のハニカムユニット
130d 第4のハニカムユニット
140、141 セラミックブロック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの開口面および外周面を有し、前記2つの開口面間に延在するセルがセル壁によって区画されたセラミックブロックを有する触媒担持体であって、
前記セラミックブロックは、組み合わされた際に、該セラミックブロックの外周部を構成する外周側ハニカムユニットと、前記セラミックブロックの中央部を構成する中央側ハニカムユニットとを、接着層を介して組み合わせることにより形成され、
前記外周側ハニカムユニットは、該ハニカムユニットの外周面を構成する外周セル壁を有し、該外周セル壁は、前記セラミックブロックとして組み合わされた際に、該セラミックブロックの外周面の一部を形成する最外周セル壁を有し、
前記外周側ハニカムユニットは、前記最外周セル壁と接するセルの、前記最外周セル壁と接する側のコーナー部が曲面化されていることを特徴とする触媒担持体。
【請求項2】
前記中央側ハニカムユニットは、該ハニカムユニットの外周面を構成する外周セル壁を有し、
前記中央側ハニカムユニットは、前記外周セル壁と接するセルの、前記外周セル壁と接する側のコーナー部が曲面化されていることを特徴とする請求項1に記載の触媒担持体。
【請求項3】
2つの開口面および外周面を有し、前記2つの開口面間に延在するセルがセル壁によって区画されたセラミックブロックを有する触媒担持体であって、
前記セラミックブロックは、組み合わされた際に、該セラミックブロックの外周面の一部を構成する外周側ハニカムユニットを、接着層を介して組み合わせることにより形成され、
前記外周側ハニカムユニットは、該ハニカムユニットの外周面を構成する外周セル壁を有し、該外周セル壁は、前記セラミックブロックとして組み合わされた際に、該セラミックブロックの外周面の一部を形成する最外周セル壁を有し、
前記外周側ハニカムユニットは、前記最外周セル壁と接するセルの、前記最外周セル壁と接する側のコーナー部が曲面化されていることを特徴とする触媒担持体。
【請求項4】
前記最外周セル壁の厚さは、均一であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一つに記載の触媒担持体。
【請求項5】
前記外周側ハニカムユニットは、前記外周セル壁と接するセルの、前記外周セル壁と接する側のコーナー部が曲面化されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一つに記載の触媒担持体。
【請求項6】
前記セラミックブロックは、円柱状であり、前記外周側ハニカムユニットは、前記最外周セル壁が曲面状になっていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一つに記載の触媒担持体。
【請求項7】
前記ハニカムユニットは、無機粒子と、無機繊維および/またはウィスカとを含むことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一つに記載の触媒担持体。
【請求項8】
前記最外周セル壁の厚さは、0.25mm〜0.50mmの範囲であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の触媒担持体。
【請求項9】
触媒が担持されてなる請求項1乃至7のいずれか一項に記載の触媒担持体。
【請求項10】
前記セラミックブロックの外周面に、コート層が設置されていることを特徴とする請求項請求項1乃至9のいずれか一項に記載の触媒担持体。
【請求項11】
前記コート層は、厚さが0.4〜3.0mmの範囲であることを特徴とする請求項10に記載の触媒担持体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−272731(P2008−272731A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−255887(P2007−255887)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(000000158)イビデン株式会社 (856)
【Fターム(参考)】