説明

触媒消臭剤入りクロス下地壁材及びその取付構造

【課題】 室内の湿度を調整し、かつ、室内の消臭を効率よく行える触媒消臭剤入りクロス下地壁材及びその取付構造を提供する。
【解決手段】 珪藻土と消臭効果を有する触媒とを加えた石膏材料をパネル状に成形した基材1と、基材1の後面に貼り付けられた基材1への透湿を防止する防湿紙2と、を有することを特徴とする触媒消臭剤入りクロス下地壁材及びその取付構造であり、石膏材料に対して珪藻土を20〜30重量%と、触媒を二酸化マンガンとし石膏材料に対して0.1〜0.2重量%とし、防湿紙2を、基材1の後面から端面に至るまで設けることで、室内の調湿及び脱臭を効率よく行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、湿度調整機能と消臭機能を併せもつ触媒消臭剤入りクロス下地壁材とその取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の建物は、鉄筋コンクリート造りの建物に代表されるように密閉性が高く、室内の湿度が高くなりやすいため、室内の湿度調整が課題となっている。この課題を解決するため、特開2004−76341号公報に示すごとく、珪藻土などの調湿剤を含む壁材を用いて、室内の湿度が高いときには水分を吸着し、逆に低いときには室内に水分を放出することで、室内湿度を調節させることが知られている。しかしながら、この壁材においては、室内の空気だけではなく壁材の外装側の外気の水分も吸収してしまうため、その分だけ室内の調湿効果が低下してしまうという問題があった。
【0003】
一方、特開2000−86325号公報には、酸化鉄、酸化チタン、酸化コバルトなどの遷移元素酸化物を触媒とし、天井面や壁面に塗布することにより、室内の消臭が行える消臭抗菌塗料及び消臭抗菌板材が開示されている。しかしながら、この塗料を直接天井面や壁面に塗布すると、触媒の色が目立ってしまうため意匠面で劣り、又、触媒を塗布した上から壁紙を接着すると、壁紙がはがれやすくなる可能性がある。それに加え、触媒を壁材などの表面に塗布する方法では、触媒量を増やすのには限界があった。
【特許文献1】特開2004−76341号公報
【特許文献2】特開2000−86325号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願発明は、上記背景技術に鑑みて発明されたものであり、その課題は、内装材として用い、室内の湿度の調整と消臭を効率よく行える触媒消臭剤入りクロス下地壁材及びその取付構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本願発明は、珪藻土と消臭効果を有する触媒とを加えた石膏材料をパネル状に成形した基材と、基材の後面に貼り付けられた基材への透湿を防止する防湿紙と、を有することを特徴とする触媒消臭剤入りクロス下地壁材及び、この触媒消臭剤入りクロス下地壁材を防湿紙側が外装側となるように釘を用いて壁構造材に取り付け、触媒消臭剤入りクロス下地壁材の室内側に透湿性のクロスを貼り付けたことを特徴とする触媒消臭剤入りクロス下地の取付構造である。
【発明の効果】
【0006】
本願発明の触媒消臭剤入りクロス下地壁材及びその取付構造においては、基材に珪藻土を含んでいるため、室内の湿度が高いときには過剰な水分を吸収し、湿度が低いときには吸収した水分を再放出するために室内の湿度を調整することができ、又、基材に消臭効果を有する触媒を加えているために、悪臭の分解も同時に行うことができる。又、触媒を石膏材料に加えているため、基材の表面だけに触媒を塗布したときと比べると触媒量を大幅に増やすことができる。
【0007】
それに加え、基材の後面に透湿を防止するための防湿紙を貼り付けているために、壁材の室内とは反対側、すなわち外装側からの水分の吸収を防ぎ、室内の調湿を効率よく行うことができ、又、触媒の消臭効果も室内側に集中させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図1は、本願の請求項1〜3の発明に対応した実施形態である触媒消臭剤入りクロス下地壁材を示している。この実施形態の触媒消臭剤入りクロス下地壁材は、図1に示す如く、珪藻土と消臭効果を有する触媒とを加えた石膏材料をパネル状に成形した基材と、基材の後面に貼り付けられた基材への透湿を防止する防湿紙と、を有することを特徴とする触媒消臭剤入りクロス下地壁材である。
【0009】
又、防湿紙は、基材の後面から端面まで至らせている。
【0010】
又、珪藻土を石膏材料に対し20〜30重量%とし、触媒を二酸化マンガンとし、石膏材料に対し0.1〜0.2重量%としている。
【0011】
以下、この実施形態の触媒消臭剤入りクロス下地壁材を、より具体的詳細に説明する。この実施形態の触媒消臭剤入りクロス下地壁材では、基材1は、20〜30重量%の珪藻土と0.1〜0.2重量%の二酸化マンガンを含む石膏材料を混練してパネル状に成形している。この基材1の、触媒消臭剤入りクロス下地壁材が内装壁の一部として取り付けられた時の室内側とは反対側となる面、すなわち後面の略全面に裏面紙3を貼り付け、さらに前面から端面及び後面に至るまで表面紙4を貼り付けている。更に、後面から端面に至るまで、透湿を防ぐための防湿紙2を酢酸ビニルエマルジョン系の接着剤を用いて接着しており、ここでは防湿紙2として一般的なビニールコーティングシートを用いている。
【0012】
次に、基材1の製造方法を示す。原料石膏をドライヤーで100℃前後で乾燥して、水分を取り除く。続いて、この原料石膏を焼成炉で170〜180℃で焼成し、その後、処理した原料石膏を粉砕機を用いて微粒子に粉砕する。この粉砕した原料石膏、すなわち石膏材料に粉末の珪藻土、二酸化マンガン、混和剤及び水を混入して混練し、原料ペーストを得る。なお、この原料ペーストを調製するにあたり、水は石膏材料100部に対して65〜80部、混和剤は1部混合し、混和剤としては気泡剤、減水剤を含んだエマルジョンを入れる。この原料ペーストをパネル状に成形して硬化させ、乾燥機にて乾燥させることで基材1を製造する。なお、基材1の厚みは、9.5〜12.5mmである。
【0013】
又、表面紙4としては、透湿度の高いものを選択することが望ましく、又、裏面紙3としては表面紙4と同じ素材でも、又、透湿性が無いものでもかまわない。又、防湿紙2は、ビニールコーティングシートに限らず、透湿抵抗30m2・h・mmHg/g以上の透湿性が低い素材を用いてもよい。
【0014】
従って、この実施形態の触媒消臭剤入りクロス下地壁材においては、基材1が珪藻土を含んでいるため、室内の湿度が高いときには基材1が室内の過剰な水分を吸収し、湿度が低いときには吸収していた水分を再放出するために室内の湿度を一定の範囲に保つことができる。又、基材1に触媒を混練して加えているため、水分及び空気の吸収と同時に悪臭の分解も行え、基材1の表面のみに触媒を塗布した場合と比べ、触媒の添加量を大幅に増やすことができる。又、壁材に多孔質の珪藻土を配合しているために、基材1と空気との接触面積も大きくなるために消臭効率がよく、又、一度吸収された水分中の悪臭成分も分解されるために、水分が壁材から再放出されるときには悪臭成分が除去される効果を有する。
【0015】
さらに、基材1の後面に基材1への透湿を防止するための防湿紙2を設けているために、基材1が外装壁側や廊下や階段などの室外側から遮断され、基材1の湿度調整機能が室内空間に集中し、室内の湿度調整を効果的に行うことができる。それに加え、触媒による消臭効果も室内に集中させることができ、効率よく消臭が行える。
【0016】
又、触媒を基材1の表面だけに塗布するのではなく、基材1中に練りこんでいるため、触媒が基材1に均等に分散しており、接着した表面紙4や裏面紙3がはがれにくく、触媒の色が接着した表面紙4や裏面紙3から透けて目立つこともない。又、壁材において、基材1、表面紙4及び裏面紙3という構成は一般的であり、触媒を基材1に練りこむ以外は通常の壁材の製造手順のままであり、この一般的な壁材と同様な工程で作成できるため、新たに製造ラインを作り直す必要がなく、又、触媒を基材1に塗布したときのように作業工程が増えることもない。それに加え、防湿紙2は通常の手順で作成した壁材の上から貼り付けるだけですむ。
【0017】
又、この実施例では、石膏材料に対し、20〜30重量%の珪藻土を配合することで、高い湿度調整を発揮でき、かつ、内装材としての強度も併せもたせている。なお、これ以上珪藻土を増やすと機械的強度が弱くなり、逆に、これ以下に珪藻土を減らすと十分な調湿機能を発揮することができないおそれがあった。ただし、この配合比は基材の製造方法によっても異なるため、調湿機能を十分に発揮し、かつ、内装材としての強度が十分保持できればこれに限らない。
【0018】
又、この実施例では、石膏材料に対し、消臭触媒として二酸化マンガンを添加することで、アンモニア、硫化水素やメチルメルカプタンといった悪臭成分を分解できる。それに加え、二酸化マンガンは毒性が低く安価であり、酸化チタンを代表とする光触媒とは異なり、光が照射されなくても消臭の触媒活性を示すために、光、特に紫外線の当たりにくい室内で使用し、さらに壁紙で装飾される内装材として用いるには都合がよい。又、触媒消臭剤であるので化学消臭剤や活性炭などの物理吸着による脱臭剤とは異なり、効果が半永久的に持続するので、商品寿命が長くて一度設置すると取り替えにくい内装材に適している。ただし、触媒の種類としてはこれ以外に、鉄、コバルト、マンガン、ニッケルや銅などの遷移金属もしくはその酸化物など、光が照射されなくても二酸化マンガンと同様に臭気成分の分解を触媒する機能を有するものを用いてもよい。
【0019】
又、この実施例では、二酸化マンガンを石膏材料に対して0.1〜0.2重量%添加することで、消臭効果を十分に発揮し、かつ、内装壁として使用するのに十分な強度を保持した基材1にしている。なお、添加量がこれ以下だと十分に消臭効果が得られず、逆に、これ以上だと基材1成形時に発泡が促進されてうまく成形できなくなってしまうものであった。しかしながら、触媒の添加量は触媒の性質や基材の製造方法によっても異なるため、消臭効果を十分に発揮し、かつ、内装壁として使用するのに十分な強度を保持することができればこれに限らない。
【0020】
なお、裏面紙3に透湿性の低い素材、例えばビニールコーティングシートを選択することで防湿紙2として用いてもよく、これにより、裏面紙3を防湿紙2として兼用させることも可能である。
【0021】
図2は、本願の請求項4の発明に対応した実施形態である触媒消臭剤入りクロス下地壁材の取付構造を示している。この実施形態の触媒消臭剤入りクロス下地壁材の取付構造は、前述した請求項1〜3のいずれか一つに記載の触媒消臭剤入りクロス下地壁材5を、防湿紙2側が外装側となるように釘6を用いて壁構造材7に取り付け、触媒消臭剤入りクロス下地壁材5の室内8側に透湿性のクロス9を貼り付けたことを特徴とする触媒消臭剤入りクロス下地の取付構造である。
【0022】
以下、この実施形態の触媒消臭剤入りクロス下地壁材の取付構造を、より具体的詳細に説明する。この実施形態の触媒消臭剤入りクロス下地壁材の取付構造では、触媒消臭剤入りクロス下地壁材5の防湿紙2側が建物の外装側となるように配置し、釘6を用いて柱、間柱や胴ぶちなどの壁構造材7に取り付けている。さらに、触媒消臭剤入りクロス下地壁材5の前面に透湿性のクロス9を貼り付けている。クロス9は、透湿度の高いものが望ましく、この場合、1000g/m2・24hのものを用いている。又、図示はしていないが、このクロス9を貼り付けるときには接着剤をクロス9もしくは触媒消臭剤入りクロス下地壁材5前面のすべてに塗布して貼り付けるのではなく、一定間隔をあけて塗布しており、これにより接着剤塗布部間を通して基材1と室内8との間で水分及び空気が透過できるようになっている。ただしクロス9の接着においては、クロス9が触媒消臭剤入りクロス下地壁材5からはがれないための接着強度を保持するように、接着剤の量及び接着剤を塗布する間隔が設定されている。なお、釘6は打ち込み釘に限らず、螺子やタッカーなど、パネル状の触媒消臭剤入りクロス下地壁材5を壁構造材に固定できるものであればよい。
【0023】
従って、この実施形態の触媒消臭剤入りクロス下地壁材の取付構造においては、クロス9に透湿性の素材を選択しているため、触媒消臭剤入りクロス下地壁材5の上からクロス貼りを施しても、触媒消臭剤入りクロス下地壁材5の基材1への水分及び空気の出入りが所定量確保され、従って、調湿及び消臭効果が損なわれることはない。又、接着剤を触媒消臭剤入りクロス下地壁材5とクロス9の全面に塗布するのではなく、間隔を設けて塗布しているために、接着剤により触媒消臭剤入りクロス下地壁材5への室内8の水分及び空気の透過が妨げられるのを防いでいる。又、この触媒消臭剤入りクロス下地壁材5においては、図1に示すように、防湿紙2を基材1に対して後面から端面に至るまで設けているため、触媒消臭剤入りクロス下地壁材5を複数ならべて設置したときに触媒消臭剤入りクロス下地壁材5間に隙間が生じたとしても、生じた隙間を通して基材1が外気の水分や空気まで吸収することがなく、室内8の調湿及び消臭効果が低減することがないので、非常に効率よく調湿及び消臭が行える。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本願発明の実施形態である触媒消臭剤入りクロス下地壁材を示す断面図。
【図2】本願発明の実施形態である触媒消臭剤入りクロス下地壁材の取付構造を示す要部断面図。
【符号の説明】
【0025】
1 基材
2 防湿紙
3 裏面紙
4 表面紙
5 触媒消臭剤入りクロス下地壁材
6 釘
7 壁構造材
8 室内
9 クロス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
珪藻土と消臭効果を有する触媒とを加えた石膏材料をパネル状に成形した基材と、基材の後面に貼り付けられた基材への透湿を防止する防湿紙と、を有することを特徴とする触媒消臭剤入りクロス下地壁材。
【請求項2】
防湿紙は、基材の後面から端面まで至らせたことを特徴とする請求項1記載の触媒消臭剤入りクロス下地壁材。
【請求項3】
珪藻土を石膏材料に対し20〜30重量%とし、触媒を二酸化マンガンとし、石膏材料に対し0.1〜0.2重量%としたことを特徴とする請求項1又は2記載の触媒消臭剤入りクロス下地壁材。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一つに記載の触媒消臭剤入りクロス下地壁材を、防湿紙側が外装側となるように釘を用いて壁構造材に取り付け、触媒消臭剤入りクロス下地壁材の室内側に透湿性のクロスを貼り付けたことを特徴とする触媒消臭剤入りクロス下地の取付構造。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−169799(P2006−169799A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−363007(P2004−363007)
【出願日】平成16年12月15日(2004.12.15)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】