説明

触媒添着吸着剤および触媒添着通気構造体および空気浄化装置および除湿脱臭装置

【課題】触媒粒子の添着で作成した吸着剤では、触媒添着のためのバインダが、吸着剤の孔部分を覆ってしまうために、本来の吸着能力が低下してしまい、また、触媒の粒子が大きくかたまっており、吸着剤に吸着した有機ガスと接触する確率が低くなってしまい、有機ガスの分解効率が悪いといった課題があった。
【解決手段】吸着剤のスメクタイト2を水3中にアミノ基4を有する有機分子ポリマー5とともに混合し、ろ過乾燥して、ポリマーハイブリッドスメクタイト7を得る。これをコバルトとマンガンの硝酸塩水溶液に投入する。コバルトマンガンとアミノ基が反応しスメクタイト層6a、6b表面にコバルトマンガン複合水酸化物11が得られ,これを焼成しコバルトマンガンスメクタイト触媒13を得る。吸着剤表面に触媒を高分散に添着した高効率の触媒添着吸着剤を提供でき、またバインダでの接着がないため、吸着サイトを塞がないため吸着能力が落ちにくい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機ガスを吸着し、分解する触媒添着吸着剤および触媒添着吸着剤で構成される触媒添着通気構造体とそれをもちいた空気浄化装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、空気中の有機ガスからなる臭気成分を吸着し分解する脱臭ロータなどの触媒添着通気構造体としては、二酸化マンガンをもちいたハニカム構造のロータが知られており空気清浄装置に対する技術として開示されている。
【0003】
以下、その空気清浄装置について図12および図13を参照しながら説明する。
【0004】
図12の脱臭ロータ101の概略図および吸着剤103の拡大図に示すように、回転式の脱臭ロータ101を備え、処理空気102を吸引し、脱臭ロータ101を通過させる。この際、前記処理空気102中の臭気は脱臭ロータ101によって吸着される。脱臭ロータ101は、吸着剤103と触媒104が混合されており、臭気成分を吸着した脱臭ロータ101は回転して、加熱装置105によって温められ、熱によって活性化した触媒104と反応することによって、臭気成分を分解することができるものであり、吸着剤103に臭気成分が飽和することなく、連続して脱臭できるものである。
【0005】
そして、上記方法で臭気成分も吸着可能な吸着剤103を含む除湿素子に触媒を添着しようとすると、二酸化マンガンや、特許文献2にしめされるコバルトマンガン複合酸化物などの触媒粉末を、素子上にアクリル樹脂やコロイダルシリカなどのバインダ106を用いて接着することになる。しかし、吸着剤と触媒104粒子およびバインダによって除湿素子内の吸湿剤のもつ吸着サイトは大きく阻害されてしまうため、除湿能力が低下してしまう。また、触媒粉末は表面積が大きくないため、十分な触媒活性、つまりは十分な脱臭能力を得るためには、多量の触媒が必要となっており、そのために吸湿剤の持つ吸着サイトが阻害され、除湿能力が低下してしまっていた。
【特許文献1】特開2003−339831号公報
【特許文献2】特開平10−180108号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような従来の触媒の添着方式で作成した多孔質の吸着剤では、触媒添着のためのバインダが、吸着剤の孔部分を覆ってしまうために、本来の吸着能力が低下してしまう課題があった。
【0007】
また、触媒の粒子が大きくかたまっているために、吸着剤に吸着した有機ガスと接触する確率が低くなってしまい、有機ガスの分解効率が悪いといった課題があり、分解効率を上げるために触媒の添着量をふやす必要があり、前記のように、吸着能力が低下する課題が出てしまうため、分解効率の改善が求められている。
【0008】
以上のような吸着剤に触媒を添着した触媒添着吸着剤で構成される通気構造体も、やはり吸着能力が低下し、有機ガスの分解効率が低いといった課題があり、触媒添着吸着剤およびそれにより構成される通気構造体の触媒未添着時からの吸着能力の維持および有機ガスの分解効率の向上が求められている。
【0009】
以上のことから、吸着能力を維持しながら、分解効率を向上させるためには、吸着剤上に少量でかつ高分散に触媒を添着する技術が求められている。
【0010】
そのため、本発明では、吸着剤の表面を触媒が極力覆ってしまわないように、触媒粒子を吸着剤表面に微粒子状態で高分散した触媒添着吸着剤および、吸着剤を担持したハニカムなどの通気性を有した通気構造体の吸着剤表面に微粒子状態で触媒粒子を高分散した触媒添着通気構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の触媒添着吸着剤および前記触媒から構成される触媒添着通気構造体は上記目的を達成するために、イオン状態の金属触媒を分散し、吸着剤上に添着し、水酸化物として固体として表面に固定化し、水酸化物が酸化物に変化する温度以上で焼成をすることによって、酸化触媒である金属酸化物を吸着剤上に生成したものである。
【0012】
この手段により、吸着剤を例えば酸化触媒の粒子を粉砕し、分散した分散液につけて吸着剤上に添着した触媒添着吸着剤に比べ、イオンとして分散するために分散性がよく、広く微細に吸着剤上に分散した金属酸化物触媒を得ることが可能になる。そのため、比較的高分解率の触媒添着吸着剤を得られる。
【0013】
また、非常に細かく分散するために、バインダでの接着が必要ないため、吸着剤の吸着サイトを塞ぐことも無く、吸着できるため、吸着能力が落ちにくい。
【0014】
また、本発明の吸着剤において例えばゼオライトなどのイオン交換性をもつ吸着剤の場合、金属触媒イオンの溶液にそのまま含浸などして接触すると、イオン交換が起こってしまい、ゼオライト中にイオンとして存在し、焼成しても酸化せず、酸化触媒としての役割を果たせない無駄が生じるため、金属触媒のイオンを吸着剤の表面に着ける必要があるが、本発明では、吸着剤表面を塩基性に修飾もしくは吸着剤表面上に塩基性基をもつ分子を存在させることで、イオン交換する前に塩基性基と金属イオンが反応し、水酸化物として表面上に固定化されるためイオン交換がおこりにくく、金属イオンを無駄にせず、酸化触媒をゼオライト上に、固定化できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば吸着剤表面を覆わないように細かい粒子の状態で、かつ高い分散性で金属酸化物触媒を吸着剤表面に添着したために、高分解効率でかつ本来の吸着剤の吸着能力を損なわない触媒添着吸着剤を提供できる。またこの触媒添着吸着剤から構成される触媒添着通気構造体を本来の吸着能力を損なわずに提供できる。また、この触媒添着通気構造体を機内に配した空気浄化装置を提供できる。また、吸着剤にガス吸着性と吸湿性の両方を有する吸着剤を用いることによって、有機ガスを吸着分解しながら除湿もできる除湿脱臭装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の請求項1記載の発明は、吸着剤表面を塩基性にした後、金属触媒イオンの酸性溶液と前記吸着剤表面とを接触させ、金属触媒イオンの水酸化物を吸着剤表面に生成し、得られた水酸化物が酸化物に変化する温度以上で焼成し、金属酸化物を吸着剤表面上に生成したことを特徴とする触媒添着吸着剤であり、これによって、触媒はイオン状態で吸着剤表面に分散しているため、粉体粒子を吸着剤上に分散させるよりも高分散状態にあり、これを水酸化物としさらに酸化物とすることで固体化することができる。この結果、吸着剤表面に触媒を高分散した状態で添着した高効率の触媒添着吸着剤を提供できる。また、非常に細かく分散するために、バインダでの接着が必要ないため、吸着剤の吸着サイトを塞ぐことも無く、吸着できるため、吸着能力が落ちにくい。
【0017】
また、本発明の請求項2記載の発明は、請求項1において特に吸着剤がゼオライトであるものであり、ゼオライトは吸着剤の中でもガスの吸着性や選択性に優れており、使用者が吸着分解したいガスに合わせ、ゼオライトの種類を選ぶことができる。
【0018】
また、本発明の請求項3記載の発明は金属イオンの酸性溶液が、マンガン、コバルト、ニッケル、鉄のうちいずれか一つもしくはいずれか複数の硝酸塩、酢酸塩、硫酸塩、炭酸塩またはシュウ酸塩のいずれかひとつもしくはいずれか複数の溶液であり、これを前述の塩基性にした吸着剤表面に接触させると、マンガンもしくはコバルトもしくはニッケルもしくは鉄のいずれかもしくは複数の水酸化物が生成し、吸着剤表面に沈殿ができる。これを乾燥し、焼成することで、マンガンもしくはコバルトもしくはニッケルもしくは鉄の酸化物を吸着剤表面に生成させる。このとき各金属単体の金属酸化物触媒でもよいが、例えばマンガンとコバルトの硝酸塩混合溶液を前述の塩基性に修飾した多孔質表面に接触させ、マンガンコバルト複合水酸化物を生成し、焼成してマンガンコバルト複合酸化物を生成してもよく、単体の金属複合酸化物よりも活性が高く、望ましい。また、マンガンコバルトの混合だけでなく、マンガン鉄複合酸化物、マンガンニッケル複合酸化物のような、複合酸化物の状態でも活性が高く望ましい。
【0019】
なお、接触させる方法としては、金属触媒イオンの酸性溶液に、吸着剤を含浸しても良いし、ハニカムやシート形状など構造物化した吸着剤に酸性溶液をスプレーなどで塗付するなどの方法をとることができる。
【0020】
また、本発明の請求項4記載の発明は前述までの吸着剤表面を塩基性にする方法として、吸着剤をアンモニア水溶液に浸けるもしくはアンモニア水溶液を噴霧することで吸着剤の表面にアンモニアを残存させる方法である。化学的にゼオライトなどの吸着剤と化学的結合はしていないが、アンモニアをゼオライト表面に置くことで、見た目上吸着剤表面を塩基性にすることができる。また、ゼオライトやカチオン交換性層状化合物など吸着剤が水分散液中などで負の表面電位をもつ場合、アンモニウムイオンは正電荷をもつのでその表面に付着しやすいため、吸着剤が上記のように水分散液中で負の表面電位を持つ場合などに特に用いると良い。なお、アンモニアは揮発性のため、吸着剤表面に着けたのち、乾燥させるのは望ましくなく、ぬれた状態のまま金属イオンの酸性液に接触させるのが望ましい。
【0021】
なお、吸着剤粒子を塩基性にする場合や、塩基性にした吸着剤粒子を金属イオンの酸性液に接触させる場合などにおいて、粒子を水分散させるなどの手段において、一次粒子のレベルに粒子を分散させることが、より均一に表面に触媒を生成させることができるため望ましい。その方法として、ボールミルやジェットミルなどの粒子の微粉化を行なうのが望ましい。
【0022】
また、本発明の請求項5記載の発明は、前述までの吸着剤表面を塩基性にする方法として、吸着剤と例えば後述のアミノ基などの塩基性基を持つシリル化剤等を用いて、化学反応によって吸着剤の表面と反応させて吸着剤の表面を塩基性に修飾することを特徴とし、修飾された塩基性基と金属イオンとが反応し、吸着剤表面に金属の水酸化物を生成させることが可能になる。なお、吸着剤表面と化学的結合でつながるため、塩基性修飾した吸着剤を例えば水に分散しても、塩基性基が拡散することが少なくなるため、金属イオンの酸性溶液に含浸などして、金属水酸化物を生成する場合、酸性溶液の組成の変化が少なく抑えられるため望ましい。
【0023】
また、本発明の請求項6記載の発明は、吸着剤表面を塩基性にする方法として、分子構造の一部に塩基性基を有する高分子ポリマーと吸着剤を混合した混合物を作成するものである。その後、金属触媒イオンの酸性溶液と前記の混合物を接触させ、金属触媒イオンの水酸化物を吸着剤表面近傍に生成し、得られた水酸化物が酸化物に変化する温度以上で焼成し、金属酸化物を吸着剤表面上に生成することができる。なお、この場合も吸着剤とは化学的結合は無いが、ポリマー構造が吸着剤表面に留まるため、ポリマー中の塩基性基が吸着剤表面を修飾したものと似た効果を得ることができる。そのため、吸着剤表面近傍で水酸化物を生成させることが可能である。なお、ポリマーの構造は、吸着剤の種類や表面状態、粒子径などによって、使用者が任意に選択できるものであるが、塩基性基が金属イオンと反応したときに生成する水酸化物また焼成酸化したときに生成する金属酸化物が吸着剤上に残存するくらい吸着剤表面近傍に存在する必要がある。
【0024】
また、本発明の請求項7記載の発明は、前記高分子ポリマーのもつ塩基性基がアミノ基としたものであり、前述のアンモニアがゼオライトやカチオン交換性層状化合物の表面に吸着しやすいように、アミノ基においても、正電荷に分極するために、ポリマーと吸着剤が近くになりやすいため、生成する水酸化物が吸着剤上に保持されやすくなるというメリットがある。
【0025】
また、本発明の請求項8記載の発明は、上記のように金属触媒の酸化物もしくは複合酸化物を生成した後に、その吸着剤もしくは吸着剤からなる物質をイオン交換水などで洗浄することで、イオン状態のまま残存した金属イオンを洗い流すことを特徴としている。この操作によって、不活性の金属を取り除き、金属イオンの吸着剤を劣化させる悪影響を防ぐことや、吸着サイトを阻害するといった悪影響を防ぐことが可能である。なお、ナトリウムイオンを含む水などで、比較的無害な陽イオンと金属イオンを交換するのも望ましい。
【0026】
また、本発明の請求項9記載の発明は、以上のような金属触媒を添着した吸着剤からなる、触媒添着吸着剤で構成した通気性の構造体であり、上記の触媒添着吸着剤では粉末状など、実使用において使用状況が限られる。そのため、例えば押出し成形によるハニカム構造体や、シート状に加工し、これをコルゲート加工したハニカム構造体や、シート状に加工しプリーツ折した濾材フィルタなどの通気性を有する形状に加工することで触媒添着通気構造体つまり、吸着触媒フィルタとし、これに通気し、有機ガスを吸着し、その後加熱して吸着剤に吸着した有機ガスを放出し、添着した触媒と反応、もしくは放出せずその場で触媒と反応して分解することができる。なお、シート状に加工するには触媒添着吸着剤をガラス繊維や有機パルプなどと混抄する方法や、シート加工されたものにバインダなどを介して触媒添着吸着剤を接着する方法などが望ましい。
【0027】
また、請求項10記載の発明は、吸着剤をもちいて、前記のようなハニカム構造体やプリーツ折りした濾材フィルタなどの通気性を有する形状に加工した吸着剤を担持した通気構造体を作成する。これを上述の触媒添着吸着剤をえたときに用いたような製造方法で、吸着剤だけでなく吸着剤を担持した通気構造体に対して行い、通気構造体吸着剤表面を塩基性に表面修飾もしくは塩基性基を吸着剤表面近傍に存在させる。そして金属触媒イオンの酸性溶液に前記吸着剤を担持した通気構造体を含浸し、金属触媒イオンの水酸化物を吸着剤表面上もしくは表面近傍に生成し、水酸化物が酸化物に変化する温度以上で焼成し、金属酸化物を吸着剤表面上に生成し、触媒を添着した通気構造体、つまり吸着触媒フィルタが得られる。
【0028】
これに通気し、有機ガスを吸着し、その後加熱して吸着剤に吸着した有機ガスを放出し、添着した触媒と反応、もしくは放出せずその場で触媒と反応して分解することができる。
【0029】
また、本発明の請求項11記載の発明は、前述の触媒添着通気構造体、つまり吸着触媒フィルタを搭載し、かつ近傍に加熱手段を配置し、かつ前記触媒添着通気構造体に通気するための送風装置を配した空気浄化装置であり、触媒添着通気構造体に通気しながら、通気構造体中の吸着剤に気中の有機ガスを通気によって吸着させ、清浄な空気を放出するものである。そして吸着した有機ガスは加熱手段によって加熱され、吸着剤に吸着した有機ガスを放出し添着した触媒と反応、もしくは放出せずその場で触媒と反応して分解することができる。こうして、吸着剤に吸着した有機ガスが連続で分解されるので、吸着剤は再生され、連続で有機ガスの吸着、そして清浄な空気を放出することが可能である。
【0030】
また、本発明の請求項12記載の発明は、前述の空気清浄装置において、特に触媒添着通気構造体が円形でかつ、回転させるための回転手段を有し、通気構造体の一部を加熱する加熱手段を有し、かつ前記触媒添着通気構造体に通気するための送風装置を配した空気浄化装置であり、加熱手段以外の部分に通気する吸着ゾーンと、加熱手段で加熱する部分の再生ゾーンとに区別し、触媒添着通気構造体は回転によって、吸着ゾーンと再生ゾーンを連続して交互に入れ替わるものである。吸着ゾーンにおいては、触媒添着通気構造体に通気しながら、通気構造体中の吸着剤に気中の有機ガスを通気によって吸着させ、清浄な空気を放出するものである。そして再生ゾーンにおいては、吸着した有機ガスおよび吸着剤は加熱手段によって加熱され、吸着剤から有機ガスは脱着して添着した触媒と反応、もしくは脱着せずその場で触媒と反応して分解することができる。こうして、吸着剤に吸着した有機ガスが連続で分解されるので、吸着剤は再生され、連続で有機ガスの吸着、そして清浄な空気を放出することが可能である。
【0031】
また、本発明の請求項13記載の発明は、前述の触媒添着通気構造体において、吸着剤が、シリカ/アルミナ比が10/1以上のハイシリカゼオライトを用いた、有機ガス吸着性を持ちながらかつ吸湿性を有する触媒添着除湿素子であり、かつ通気方向に対し円形であり、筐体内に前記触媒添着除湿素子と、これを回転される回転手段と、前記触媒添着除湿素子を加熱するための加熱手段と、加熱されて放出した水分を結露回収するための結露用熱交換器と水タンクと、前記触媒添着除湿素子に通気するための送風装置を配した除湿脱臭装置である。加熱手段以外の部分に通気する吸着ゾーンと、加熱手段で加熱する部分の再生ゾーンとに区別し、触媒添着除湿素子は回転によって、吸着ゾーンと再生ゾーンを連続して交互に入れ替わるものである。吸着ゾーンにおいては、触媒添着除湿素子に通気しながら、触媒添着除湿素子中のハイシリカゼオライトに気中の水分と有機ガスを通気によって吸着させ、除湿されかつ清浄な空気を放出するものである。そして触媒添着除湿素子は回転し、再生ゾーンに入る。再生ゾーンにおいては、吸着した水分は加熱装置によって加熱されてハイシリカゼオライトから脱着し、結露用熱交換機で、冷却され水となり、タンクに回収される。また、吸着した有機ガスは加熱手段によって加熱され、ハイシリカゼオライトから脱着し添着した触媒と反応、もしくは脱着せずその場で触媒と反応して分解することができる。こうして、ハイシリカゼオライトに吸着した有機ガスが連続で分解されるので、ハイシリカゼオライトは再生され、連続で水分と有機ガスの吸着することができる。通常、有機ガスをゼオライトが吸い、脱着されないとゼオライトの細孔が埋まってしまい、吸着容量が減ってしまうため、触媒によって有機ガスを分解することによって、吸湿能力を維持することができる。また、ゼオライトははじめ有機ガスを吸うが、徐々に吸わなくなるため、触媒を持たない除湿素子では、初期にしか脱臭することは出来ないが、触媒によって吸着した有機ガスが分解されるので、除湿素子は繰返し有機ガスを吸着することができる。
【0032】
なお、ハイシリカゼオライトは水分をよく吸着し、かつ疎水性のために有機ガスも吸着性が良いため望ましい。
【0033】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0034】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1について図1乃至図4を用いて説明する。図1のチャート1に示すように、吸着剤である層状粘土化合物としてスメクタイト2を水3中に分散させ、これに塩基性基としてアミノ基4を有する有機分子ポリマー5と共に攪拌する。攪拌には例えばマグネチックスターラーや攪拌翼を用いるのが良い。
【0035】
攪拌によって有機分子ポリマー5はスメクタイト層6aとスメクタイト層6b間に入り込む。これによってスメクタイト層の層間が広がりこれを、ろ過乾燥して、ポリマーハイブリッドスメクタイト7を得る(図2のスメクタイトとポリマーの混合の概略図およびポリマーハイブリッドスメクタイトの拡大図を参照)。
【0036】
コバルトの硝酸塩とマンガンの硝酸塩の水溶液、望ましくは複合酸化物となったときに活性が高くなるようにコバルトイオン1に対してマンガンイオンが1ないし3となる割合で水溶液を作成する。前記コバルトマンガン水溶液8に前記のポリマーハイブリッドスメクタイト7を粉砕して、投入する。ポリマー中のアミノ基4とコバルトイオン9、マンガンイオン10が反応し、スメクタイト層6a、6b表面にコバルトマンガン複合水酸化物11が得られる(図3参照)。これをろ過、乾燥し、焼成しコバルトマンガン複合水酸化物11をコバルトマンガン複合酸化物12とする。このときの焼成温度としては、コバルトとマンガンが十分酸化する250℃以上望ましくは350℃以上でまた複合酸化物でなくなってしまうため450℃以下で焼成するのが望ましい。こうして、コバルトマンガンスメクタイト触媒13が得られる(図4参照)。
【0037】
上記によりコバルトマンガン複合酸化物12触媒はイオン状態で吸着剤であるスメクタイト2表面に分散しているため、粉体粒子をスメクタイト上に分散させるよりも高分散状態にあり、これをコバルトマンガン複合水酸化物11としさらにコバルトマンガン複合酸化物12とすることで固体化することができる。バインダでの接着が必要ないため、スメクタイト2の吸着サイトを塞ぐことも無く、吸着能力が落ちにくい。
【0038】
なお、基材用の波型のシートと平型のシートを交互に積層して得られるコルゲートハニカム構造体(図示せず)にコバルトマンガンスメクタイト触媒を、バインダを介して添着し、必要であれば焼成して、基材中の有機分を焼き飛ばして、ハニカム形状の通気性の触媒フィルタとしても良い。
【0039】
なお、層状化合物として、スメクタイトだけでなく、セピオライトやカオリナイトを用いても良い。
【0040】
なお、得られたコバルトマンガンスメクタイト触媒13はイオン交換水で洗浄しても良い。これにより、イオン状態のまま残存した金属イオンを洗い流せる。なお、ナトリウムイオンを含む水などスメクタイトの交換性カチオンなどの比較的無害な陽イオンと残存した金属イオンを交換するのも望ましい。
【0041】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態1のポリマーハイブリッドスメクタイトを作成する替わりに、例えばアミノ基14などの塩基性基をもつシリル化剤15の溶液にスメクタイトを溶媒に分散させ、スメクタイト表面をシリル化することで、スメクタイト表面を塩基性修飾した、シリル化スメクタイト16を作成して、用いても良い(図5参照)。
【0042】
(実施の形態3)
本発明の実施の形態3について図6乃至図10を用いて説明する。基材17用の波型のシートと平型のシートを交互に積層して得られるコルゲートハニカム構造体(図示せず)に有機ガス吸着用の吸着剤としてゼオライト18を、バインダ19を介して添着し、必要であれば焼成して、基材17中の有機分を焼き飛ばす。得られたハニカム構造体(図示せず)を図1のチャート20に示すように0.01%以上3%以下のアンモニア水21に含浸する。アンモニア水21の濃度は望ましくは後述の表面で金属イオンの水酸化物を十分に生成させるために0.1%以上でまた、後述の金属イオンの水酸化物析出にあたり、アンモニウムイオンが金属イオン溶液に流れ出さないために1%以下が望ましい。
【0043】
アンモニア水21に含浸したのちハニカム構造体を引上げ、エアガンなどで吹き、余剰にアンモニア水21がつかないように吹き飛ばす。このゼオライト18にアンモニウムイオン22が湿潤のままで付着した状態の概念図を図7に示す。そして湿潤状態のまま、チャート20に示すように硝酸マンガン水溶液23に含浸する。このときゼオライト上のアンモニウムイオン22とマンガンイオン24が反応して水酸化マンガン25が生成する。その概念図を図8に示す。また硝酸マンガン以外に、酢酸マンガン、硫酸マンガン、炭酸マンガン、シュウ酸マンガンなどを水に溶かしたものでもよい。これを前記と同様に引上げ、エアガンなどで吹き、余剰にマンガンイオン24や硝酸イオンが残らないように吹き飛ばす。
【0044】
その後350℃以上で焼成し、酸化マンガン26をゼオライト18上に生成する。こうして、ハニカム状の触媒添着通気構造体27を得る。この概念図を図9の触媒添着通気構造体の概略図および触媒添着通気構造体の基材17表面の拡大図に示す。
【0045】
また、図10に示すような空気浄化装置28には、酸化マンガン26を前述の方法で添着した触媒添着通気構造体27と、前記触媒添着通気構造体27が吸った有機ガスを分解するために加熱するためのヒーターなどの加熱手段29と、前記触媒添着通気構造体27に空気を送るためのファン30と、ギアモーターなどの回転手段31とを備えるものである。回転手段31によって前記触媒添着通気構造体27は回転し、ファン30によって筐体32内に吸い込まれる処理風路33の部分と、加熱手段29によって再生される再生風路34の通過部分とを連続して繰り返すことにより処理空気中の有機ガスを吸着して清浄化した空気を供給するものである。
【0046】
(実施の形態4)
また、本発明の実施の形態3では初期基材として波型と平型のシートの積層であったが、吸着剤とバインダからなる材料の押出し成形して作成するハニカム形状であってもよい(図示せず)。
【0047】
(実施の形態5)
また、本発明の実施の形態3では初期基材として波型と平型のシートの積層でハニカム構造体を作成したが、ガラス繊維やパルプ繊維から成る通気性の不織布シートをプリーツ状にした通気フィルタに、実施の形態1のようなゼオライトなどの吸着剤を混ぜ込みや、バインダを介して接着を行なった通気構造体を作成しても良い。
【0048】
(実施の形態6)
また、本発明の実施の形態3では、吸着剤にゼオライトを用いたが、カオリナイトやセピオライト、スメクタイトなどの層状粘土化合物や活性炭やシリカゲル、メソポーラスシリカを用いても良い。
【0049】
(実施の形態7)
また、本発明の実施の形態3では触媒となる金属酸化物の金属としてマンガンを用いたが、コバルトやニッケル、鉄を用いてもよく、とくにこの中の複数の金属イオンの酸性溶液を用いることによって、複合酸化物を吸着剤表面に得ることができる。そしてこの複合酸化物は高効率でありのぞましく、例えばコバルトイオン1に対してマンガンイオンが1乃至3になる配合の酸性溶液を用いると特に活性が高いので良い。
【0050】
(実施の形態8)
また、本発明の実施の形態8について、図11を用いて説明する。実施の形態3のゼオライトについて、シリカ/アルミナ比が10/1以上のハイシリカゼオライトを用いた、有機ガス吸着性を持ちながらかつ吸湿性を有する触媒添着除湿素子35とする。図11に示すように筐体36内に前記触媒添着除湿素子35と、これを回転させるギアモーターなどの回転手段37と、前記触媒添着除湿素子35を加熱するためのヒーターなどの加熱手段38と、加熱されて放出した水分を結露回収するための結露用熱交換器39と水タンク40と、前記触媒添着除湿素子35に通気するためのファン41を配した除湿脱臭装置としても良い。
【0051】
ファン41によって空気を触媒添着除湿素子35に送り、有機ガスと湿気が吸着され、乾燥して、有機ガスを吸った空気が筐体36外に供給される。触媒添着除湿素子35は回転して、加熱手段38によって温められる。ハイシリカゼオライトから水分が脱着し、結露用熱交換器39で、冷却され水となり、水タンク40に回収される。また、ハイシリカゼオライトに吸着した有機ガスは加熱手段38によって加熱され、ハイシリカゼオライトから脱着し素子に添着した触媒と反応、もしくは脱着せずその場で触媒と反応して分解される。
【0052】
なお、本発明の実施の形態1から8に示した内容について、望まれる仕様にあわせて組み合わせて用いても、もちろん良い。
【実施例】
【0053】
(実施例1)
無機のセラミックシート基材からなるハニカム構造体にゼオライトをバインダを介して担持したゼオライトハニカムフィルタを作成し、アンモニア水0.1%、1%のそれぞれを用意した。
【0054】
ハニカムフィルタを各アンモニア水に含浸し、引上げ、エアガンにてフィルタ面に対して20m/sで空気を吹きかけ、余剰液を落とした。これを、コバルトとマンガンの原子比で1:2になるように調整した硝酸塩水溶液にぬれたまま含浸した。
【0055】
(比較例1)
実施例1において、アンモニア水に含浸せず、ゼオライトハニカムフィルタをそのままコバルトとマンガンの硝酸塩水溶液につけた。
【0056】
その結果、実施例1では、0.1%、1%の場合もゼオライトハニカムフィルタ上に濃緑色のコバルトとマンガンの水酸化物が共沈したものが得られた。比較例1では実施例1のような共沈はえられなかった。
【産業上の利用可能性】
【0057】
吸着剤上に微細に分散した金属触媒を添着した触媒添着吸着剤および触媒添着吸着剤から構成される通気構造体が得られ、これを搭載した除湿脱臭装置および空気浄化装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の実施の形態1の吸着触媒の作成チャート
【図2】本発明の実施の形態1のスメクタイトとポリマーの混合の概略図およびポリマーハイブリッドスメクタイトの拡大図
【図3】本発明の実施の形態1のコバルトマンガン複合酸化物の生成の概念図
【図4】本発明の実施の形態1のコバルトマンガンスメクタイト触媒の概念図
【図5】本発明の実施の形態2のシリル化スメクタイトの概念図
【図6】本発明の実施の形態3の酸化マンガン−ゼオライトハニカムの作成チャート
【図7】本発明の実施の形態3のゼオライト表面付近のアンモニウムイオン存在の概念図
【図8】本発明の実施の形態3の水酸化マンガン生成時の概念図
【図9】本発明の実施の形態3の触媒添着通気構造体の概略図および触媒添着通気構造体の基材の表面の拡大図
【図10】本発明の実施の形態3の空気浄化装置の概略図
【図11】本発明の実施の形態8の除湿脱臭装置の概略図
【図12】従来の脱臭ロータの概略図および吸着剤の拡大図
【図13】従来の脱臭ロータ細部の概念図
【符号の説明】
【0059】
1 チャート
2 スメクタイト
3 水
4 アミノ基
5 有機分子ポリマー
6a スメクタイト層
6b スメクタイト層
7 ポリマーハイブリッドスメクタイト
8 コバルトマンガン水溶液
9 コバルトイオン
10 マンガンイオン
11 コバルトマンガン複合水酸化物
12 コバルトマンガン複合酸化物
13 コバルトマンガンスメクタイト触媒
14 アミノ基
15 シリル化剤
16 シリル化スメクタイト
17 基材
18 ゼオライト
19 バインダ
20 チャート
21 アンモニア水
22 アンモニウムイオン
23 硝酸マンガン水溶液
24 マンガンイオン
25 水酸化マンガン
26 酸化マンガン
27 触媒添着通気構造体
28 空気浄化装置
29 加熱手段
30 ファン
31 回転手段
32 筐体
33 処理風路
34 再生風路
35 触媒添着除湿素子
36 筐体
37 回転手段
38 加熱手段
39 結露用熱交換器
40 水タンク
41 ファン
101 脱臭ロータ
102 処理空気
103 吸着剤
104 触媒
105 加熱装置
106 バインダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸着剤表面を塩基性にした後、金属触媒イオンの酸性溶液と前記吸着剤表面とを接触させ、金属触媒イオンの水酸化物を吸着剤表面に生成し、得られた水酸化物が酸化物に変化する温度以上で焼成し、金属酸化物を吸着剤表面上に生成したことを特徴とする触媒添着吸着剤。
【請求項2】
吸着剤がゼオライトであることを特徴とする請求項1記載の触媒添着吸着剤。
【請求項3】
金属イオンの酸性溶液が、マンガン、コバルト、ニッケルまたは鉄のうちいずれか一つもしくはいずれか複数の硝酸塩、酢酸塩、硫酸塩、炭酸塩またはシュウ酸塩のうちいずれかひとつもしくはいずれか複数の溶液であることを特徴とする請求項1または2に記載の触媒添着吸着剤。
【請求項4】
アンモニア水溶液に浸けるまたはアンモニア水溶液を噴霧することで吸着剤の表面にアンモニアを残存せしめ、吸着剤表面を塩基性にするようにしたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の触媒添着吸着剤。
【請求項5】
吸着剤と反応する基と塩基性基を併せ持つ分子を化学反応によって吸着剤と反応させて前記吸着剤の表面を塩基性に修飾することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の触媒添着吸着剤。
【請求項6】
分子構造の一部に塩基性基を有する高分子ポリマーと吸着剤を混合した混合物を作成し、金属触媒イオンの酸性溶液と前記の混合物を接触させ、金属触媒イオンの水酸化物を吸着剤表面近傍に生成し、得られた水酸化物が酸化物に変化する温度以上で焼成し、金属酸化物を吸着剤表面上に生成したことを特徴とする触媒添着吸着剤。
【請求項7】
分子構造の一部の塩基性基がアミノ基である高分子ポリマーであることを特徴とする請求項6記載の触媒添着吸着剤。
【請求項8】
焼成後に、吸着剤を洗浄することで金属イオンとして残存しているものを洗い流すことを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の触媒添着吸着剤。
【請求項9】
請求項1乃至8記載のいずれかに記載の触媒添着吸着剤を少なくとも一部に含む通気性を有した触媒添着通気構造体。
【請求項10】
吸着剤を通気性を有した通気構造体上に担持し、吸着剤の表面を塩基性に修飾するかもしくは吸着剤の表面近傍に塩基性基を存在せしめ、金属触媒イオンの酸性溶液に前記吸着剤を担持した通気構造体を含浸し、金属触媒イオンの水酸化物を吸着剤表面上もしくは表面近傍に生成し、水酸化物が酸化物に変化する温度以上で焼成し、金属酸化物を吸着剤表面上に生成したことを特徴とする触媒添着通気構造体。
【請求項11】
請求項9もしくは10に記載の触媒添着通気構造体を搭載し、かつ前記触媒添着通気構造体の近傍に加熱手段を配置し、かつ前記触媒添着通気構造体に通気するための送風装置を配した空気浄化装置。
【請求項12】
請求項9もしくは10に記載の触媒添着通気構造体が円形でかつ回転させるための回転手段を有し、通気構造体の一部を加熱する加熱手段を有し、かつ前記触媒添着通気構造体に通気するための送風装置を配した空気浄化装置。
【請求項13】
請求項9もしくは10に記載の触媒添着通気構造体の吸着剤が吸湿性を持つゼオライトである吸湿性触媒添着除湿素子であり、通気方向に対し円形であり、筐体内に前記吸湿性触媒添着除湿素子と、これを回転させる回転手段と、前記吸湿性触媒添着除湿素子を加熱するための加熱手段と、加熱されて放出した水分を結露回収するための結露用熱交換器と水タンクと、前記吸湿性触媒添着除湿素子に通気するための送風装置を配した除湿脱臭装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−61405(P2009−61405A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−232343(P2007−232343)
【出願日】平成19年9月7日(2007.9.7)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】