説明

計測対象保持具

【課題】計測対象とする生体の表皮を挟むなどして損傷させてしまうのを防止する。
【解決手段】マウス18が収容される検体ホルダ54は、マウスの計測部位となる胴部102を、下型ブロック56と上型ブロック58を重ねることにより凹部112と凹部114内に収容する。下型ブロックには、凹部の周縁部に一対の立壁部124が形成され、上型ブロックには、嵌め込み溝128が形成されている。これより、マウスの胴部を凹部112に収容するときに、立壁部によって表皮が凹部112からはみ出してしまうのが防止され、はみ出した表皮が下型ブロックと上型ブロックとの間に挟まってしまうことによりマウスに損傷を与えてしまうことがない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光を用いたトモグラフィー(Tomography)に係り、詳細には、小動物などの生体を計測対象とするときに計測対象を保持する計測対象保持具に関する。
【背景技術】
【0002】
生体組織が近赤外線などの所定波長の光に対して透過性を有し、生体に照射された光は、等方的に散乱しながら生体内を進行し、照射された光に応じた光が、生体の周囲から射出される。この生体から射出される光の強度を計測することにより、計測対象の断層情報(断層画像)の再構築が可能となる(光トモグラフィー)。このような光トモグラフィーは、生体に対してX線CTなどよりも有用とされている。
【0003】
光トモグラフィーを用いた小動物などの生体観察においては、小動物の胴部内の臓器や病変部位などの予め設定された部位に特異的に付着して蛍光を発する蛍光識別剤を投与し、励起光を照射することにより体内から発せられる蛍光を計測する。このとき、光(励起光)の照射位置を変えながら、1つの照射位置に対して、生体の周囲の複数箇所で光(蛍光)の強度を計測する。
【0004】
このような光トモグラフィーにおいても、X線CTなどと同じように、計測途中で生体が動くと、適正な断層画像の再構築が困難となるだけでなく場合によっては、再計測が必要となってしまう。
【0005】
ここで、例えば、特許文献1では、小動物をカプセルに収容することにより固定してX線CTの計測を行うように提案している。
【0006】
また、特許文献2では、回転テーブル上に被検体を配置して、回転テーブルを廻すことにより、X線源及び二次元X線検出器を固定したままでCT撮影を行うX線CT装置を提案しており、このときに、被検体を筒に立位の状態で収容して回転テーブルに載せるようにしている。
【0007】
一方、光の吸収特性、散乱係数などの光学的特性が近似した部材の間では、光の等方的散乱が継続する。ここから、生体と光学的特性が近似した部材によって形成した保持部材に生体を収容することにより、生体から射出される光の計測及び計測結果を用いた断層情報の再構築が容易となる。
【0008】
ところで、保持部材と保持部材に収容された小動物との間で、光の等方散乱が継続されるためには、保持部材の内面に小動物の表皮が接している必要がある。ここから、ブロック状で内面に小動物の体型に合わせた凹部を形成した保持部材を分割し、小動物を収容した状態で重ね合わせることが考えられる。
【0009】
しかしながら、例えばヌードマウスなどでは、麻酔剤が投与されることにより弛緩してしまう。このために、表皮が弛み、分割した保持器具を重ね合わせたときに弛んだマウスの表皮が挟まってしまい、小動物に傷を負わせてしまう。このような傷は、小動物の寿命を縮めてしまうことがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2004−121289号公報
【特許文献2】特開2006−105787号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、光トモグラフィーによって小動物などの生体を計測対象として観察するときに、計測対象の表皮を挟むなどして損傷させてしまうことなく、小動物の長期にわたる観察を容易とする計測対象保持具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために本発明は、光学特性として光の等方散乱が生じる材質によって形成され、計測対象とされる生体の計測部位の下部側を収容する第1の凹部が形成された第1のブロック部材と、光学特性として光の等方散乱が生じる材質によって形成され、前記第1のブロック部材の前記第1の凹部と重ねられることにより、前記生体の計測部位の上部側を収容する第2の凹部が形成された第2のブロック部材と、前記第1の凹部からはみ出す前記生体の計測部位の表皮を前記第1又は第2の凹部へ案内することにより、前記生体の前記計測部位を第1及び第2の凹部に密接させて前記第1及び第2のブロック部材によって保持させる案内手段と、を含む。
【0013】
この発明によれば、第1のブロック部材と第2のブロック部材を重ね合わせることにより、生体の一部とされる計測部位を、第1のブロック部材に形成した第1の凹部と、第2のブロック部材に形成した第2の凹部とに収容する。
【0014】
この第1及び第2のブロック部材は、光学特性として光の等方散乱が生じる部材によって形成されており、計測部位の周囲が第1及び第2の凹部に密着された状態で収容されて第1及び第2のブロック部材に囲われることにより、計測部位に対して光を用いた断層画像の再構築が可能となる。
【0015】
ここで、第1及び第2のブロック部材の間には、第1の凹部からはみ出すことにより、第1のブロック部材と第2のブロック部材を重ねたときに、第1のブロック部材と第2のブロック部材との間で挟まってしまう表皮を、第1ないし第2の凹部内に案内する案内手段が設けられる。
【0016】
これにより、生体の表皮を挟んでしまうことなく、第1及び第2のブロック部材によって生体を保持することができる。このとき、第1及び第2のブロック部材は、少なくとも生体の計測部位を収容するものであれば良い。
【0017】
このような発明では、前記第1及び第2の凹部が計測対象とされる前記生体の胴部を収容するものであれば良い。
【0018】
請求項3の発明は、前記案内手段が、互いに対向される面が、前記第1の内面に沿って前記第1のブロック部材から前記第2のブロック部材の前記第2の凹部の内面へ向けて延設された一対の立壁部と、前記第2のブロック部材に形成され、前記第1のブロック部材を重ねたときに前記一対の立壁部のそれぞれが挿入される挿入部と、を含む。
【0019】
この発明によれば、計測対象の下部側を収容する第1のブロック部材の第1の凹部の周縁部に一対の立壁部を形成し、第2のブロック部材に立壁部が挿入されて嵌め込まれる挿入部を形成する。
【0020】
これにより生体の計測部位を第1の凹部に収容するときに、表皮が第1の凹部からはみ出してしまうのを防止することができうる。
【0021】
このような本発明では、前記立壁部の先端が波型形状に形成することが好ましく、これにより、第1の凹部に計測部位を収容するときに表皮が立壁部の先端にかかっても、円滑に第1の凹部内に落とし込んで収容することができる。
【0022】
請求項5に係る発明は、前記第2のブロックに成形され、前記第1のブロック部材と前記第2のブロック部材とを重ねたときに、第1のブロック部材と第2のブロック部材との間に、前記第1及び第2の凹部内と外部とを連通する開口部が形成される切込み部と、前記開口部に前記第1及び第2の凹部の外側から挿入されて嵌め込まれることにより、前記切込み部内に形成される空間を閉塞する閉塞部材と、を含む。
【0023】
この発明によれば、第2のブロック部材に切込み部を形成することにより、第1の凹部から表皮がはみ出しても、第1のブロック部材と第2のブロック部材とに挟まれることがない。また、はみ出した表皮は、切込み部によって形成される開口部に閉塞部材を押し込むことにより、第1又は第2の凹部ないに案内されるので、計測部位を第1及び第2の凹部内に密着させることができる。
【0024】
このような本発明では、前記第2のブロック部材に設けられて、前記生体の前記胴部に連続する襟首を把持する把持手段を含むことが好ましく、これにより、生体を第1及び第2の凹部内に簡単にかつ円滑に収容することができる。
【発明の効果】
【0025】
以上説明したように本発明によれば、生体の計測部材が収容された第1のブロック部材の第1の凹部に、第2のブロック部材の第2の凹部を重ねたときに、計測部位の表皮を第1のブロック部材と第2のブロック部材との間で挟んでしまうのを確実に防止できる。
【0026】
また、本発明では、計測部位が第1及び第2の凹部に密接するので、適正な光断層画像の再構築が可能となるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】第1の実施の形態に係る検体ホルダを示す概略斜視図である。
【図2】光断層計測システムの要部の概略構成図である。
【図3】光計測装置の要部の概略構成図である。
【図4】光計測装置への検体ホルダの装着を示す概略構成図である。
【図5】光断層計測システムの制御部の概略構成図である。
【図6】第1の実施の形態に係る検体ホルダの要部の軸方向と交差する方向に沿った概略断面図である。
【図7】第2の実施の形態に係る検体ホルダを示す概略斜視図である。
【図8】検体ホルダに設けた揺動部を示す軸方向と交差する方向に沿った概略断面図である。
【図9】第2の実施の形態に係る検体ホルダへのマウスの収容を示す概略斜視図である。
【図10】第3の実施の形態に係る検体ホルダの概略斜視図である。
【図11】検体ホルダの要部の軸方向と交差する方向に沿った概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に、図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。
〔第1の実施の形態〕
図2、図3及び図5には、本実施の形態に係る光断層計測システム10の概略構成が示されている。図2及び図5に示されるように、光断層計測システム10は、光計測装置12及びデータ処理装置14を含んでいる。データ処理装置14には、表示手段とされるモニタ16が設けられており、光断層計測システム10では、このモニタ16に処理設定の表示、処理状態の表示、計測結果の表示などの各種の表示がなされる。
【0029】
本実施の形態に係る光断層計測システム10では、例えば、計測対象(検体)とする生体としてヌードマウスなどの小動物を適用している(図1参照。以下、「マウス18」とする)。計測対象とされるマウス18には、例えば、マウス18内の臓器や病変部位などの予め設定した部位に特異的に付着する抗体などに蛍光物質を含ませた蛍光識別剤が投与される。
【0030】
光計測装置12では、このマウス18へ蛍光識別剤に対する励起光となる所定波長の光(例えば、近赤外線など)を照射し、この励起光により蛍光物質によって発せられてマウス18から放出(射出)される蛍光を計測する。
【0031】
光計測装置12では、マウス18への励起光の照射位置を変えながら、それぞれの照射位置で、マウス18から放出される蛍光を複数箇所で計測して、光の照射位置ごとの光(蛍光)の強度を示すデータ(以下、計測データとする)を取得する。光計測装置12で計測された計測データは、データ処理装置14へ入力される。
【0032】
データ処理装置14では、入力された計測データに対して所定の演算処理を施すことにより、光断層情報として、マウス18中の蛍光物質(蛍光識別剤)の濃度分布情報を取得する。また、データ処理装置14では、取得した蛍光の濃度分布情報に基づいて光断層画像の再構築を行い、再構築した光断層画像をモニタ16等に表示する。
【0033】
図3に示されるように、光計測装置12には、ケーシング(図示省略)内に設けられた基台20上に計測ユニット22が取り付けられている。計測ユニット22は、ベース板24を備え、このベース板24が基台20上から立設されている。
【0034】
また、ベース板24の一方の面には、枠体26が設けられている。図2に示されるように、この枠体26は、リング状に形成され、ベース板24(図2では図示省略)に形成されている図示しない円孔と同軸となるように配置されている。
【0035】
図3に示されるように、計測ユニット22には、ベース板24と枠体26との間に、ロータリーアクチュエータ28が配置されている。ロータリーアクチュエータ28には、ベース板24の円孔に対応した図示しない空洞部が形成され、この空洞部が枠体26と同軸となるように配置されている。また、ロータリーアクチュエータ28は、ベース板24に固定され、このロータリーアクチュエータ28に枠体26が取り付けられて支持されている。
【0036】
ロータリーアクチュエータ28は、モータの駆動力によって枠体26を回動する。このときに、枠体26は、その軸心を軸に回動される。なお、ロータリーアクチュエータ28は、ステッピングモータ、パルスモータなどの任意の構成のモータを適用でき、また、モータに限らずエアにより駆動されるなど任意の構成を適用することができる。
【0037】
図2に示されるように、この枠体26には、励起光とする光を発する光源ヘッド30及び、マウス18から発せられる蛍光を受光する複数の受光ヘッド32が設けられている。光源ヘッド30及び受光ヘッド32のそれぞれは、光軸が枠体26の軸方向と交差する平面上となるように配置されている。また、光源ヘッド30及び受光ヘッド32は、それぞれの光軸が隣接する光源ヘッド30又は受光ヘッドの光軸と所定の角度θとなるように枠体26に取り付けられている。なお、本実施の形態では、一例として1基の光源ヘッド30と、11基の受光ヘッド32とを設け、角度θが30°となるように配置されている。
【0038】
光計測装置12では、枠体26内が計測位置とされており、枠体26の軸心部に、体長方向が軸方向に沿うようにマウス18が配置される(図1及び図4参照)。また、光計測装置12では、ロータリーアクチュエータ28の作動により枠体26を回動することにより、マウス18への励起光の照射位置が変えられると共に、それぞれの照射位置でマウス18から発せられる蛍光の計測が可能となっている。
【0039】
これにより、光断層計測システム10では、マウス18の体長方向と交差する方向に沿った光断層画像の再構築がなされる。なお、光計測装置12としては、これに限らず、マウス18と光源ヘッド30及び受光ヘッド26との相対位置を移動しながら、励起光に対する蛍光の強度を計測する任意の構成を適用することができる。
【0040】
一方、図3に示されるように、光計測装置12には、ベース板24を挟んでアーム34、36が対で配置されている。アーム34は、支柱38の先端に、アーム36へ向けて取り付けられたブラケット40が設けられ、アーム36は、支柱42の先端に、アーム34へ向けて突設されたブラケット44が設けられている。
【0041】
基台20上には、長尺のスライダ46及びスライドベース48が配置されている。スライダ46及びスライドベース48のそれぞれは、長手方向が枠体26の軸方向(図3の紙面左右方向)に沿って配置され、ベース板24の下端部に形成された図示しない開口部に挿通されている。
【0042】
スライドベース48の長手方向の一端側には、アーム34の支柱38が立設され、他端側には、アーム36の支柱42が立設されている。また、アーム34、36は、それぞれのブラケット40、44が、枠体26の開口部に対向されている。
【0043】
スライダ46は、ブラケット50A、50Bを介して基台20に固定されている。このスライダ46の内部には、例えば、ステッピングモータなどを駆動源とする送りねじ機構(図示省略)が設けられ、スライダ46は、ステッピングモータが駆動されてブロック46Aを長手方向に沿って移動する。このブロック46Aには、スライドベース48が取り付けられている。
【0044】
これにより、光計測装置12では、スライダ46が作動されることにより、一対のアーム34、36が一体で図3の紙面左右方向(矢印A方向及び矢印A方向と反対方向)へ移動される。
【0045】
光計測装置12では、一対のアーム34、36の間でマウス18を保持するようになっている。光計測装置12では、ベース板24の枠体26と反対側(図3の紙面右側)が、マウス18の装填部52とされ、この装填部52でマウス18が光計測装置12に装填され、また、この装填部52でマウス18が光計測装置12から取り出される。
【0046】
光計測装置12では、装填されたマウス12がアーム34、36に保持される。また、光計測装置12では、アーム34、36に保持されたマウス18を、スライダ46によって計測ユニット22の計測位置へ移動し、これにより、マウス18が体長方向に沿って順に計測位置を通過することにより、光断層計測システム10では、マウス18の体長方向に沿った任意の位置での光断層画像の再構築が可能となっている。
【0047】
一方、光断層計測システム10では、計測対象保持具とされる検体ホルダ54に収容されて光計測装置12へ装填される。図1に示されるように、第1の実施の形態に係る検体ホルダ54は、第1のブロック部材とされる下型ブロック56と、第2のブロック部材とされる上型ブロック58とによって形成される。下型ブロック56及び上型ブロック58は、長手方向と交差する方向に沿った断面が略半円状とされ、検体ホルダ54は、下型ブロック56と上型ブロック58とが重ね合わせられることにより所定径の略円柱状となる。
【0048】
図4に示されるように、アーム34に取り付けられているブラケット40には、例えば、上方に向けられた開口された凹部40Aが形成されている。また、アーム36に取り付けられているブラケット44には、上方に向けられて開口された凹部44Aが形成されている。
【0049】
検体ホルダ54は、下型ブロック56の軸方向の一端部がブラケット40の凹部40Aに収容され、他端側がブラケット44の凹部44Aに収容される。これにより、検体ホルダ54は、アーム34とアーム36との間に掛け渡された状態で保持される。
【0050】
なお、図4に示されるように、検体ホルダ54は、下型ブロック56の一方の端面が凹部40Aの壁面40Bに当接されることにより計測ユニット22に対して軸方向に沿った位置決めがなされ、下側ブロック56の他方の端面が凹部44Aの壁面44Bに当接された状態で、ブラケット44が図示しない付勢手段によりブラケット40へ向けて付勢される。これにより、検体ホルダ54は、ブラケット40、44の間に挟持されて保持される。
【0051】
なお、ブラケット40、44には、凹部40A、44A内に図示しない三角形状の突起部が形成されており、図1に示されるように、検体ホルダ54の下型ブロック56には、この突起部に対応して三角形状の切込み部60(図1では、一方のみを図示)が形成されている。検体ホルダ54は、下型ブロック56の切込み部60にブラケット40、44の凹部40A、44Aに形成された突起部が入り込むことにより、回転方向の位置決めがなされる。
【0052】
一方、図2及び図5に示されるように、光計測装置12には、制御部62が設けられ、この制御部62によって蛍光の計測が制御される。また、制御部62は、計測データを取得すると、取得した計測データをデータ処理装置14へ出力する。
【0053】
図5に示されるように、データ処理装置14には、CPU64、ROM66、RAM68、記憶手段とされるHDD70、キーボード72(図1参照)やマウスなどの入力デバイス74と共に、モニタ16等がバス76に接続された一般的構成のコンピュータが形成されている。
【0054】
また、データ処理装置14には、入出力インターフェイス(I/O IF)78が設けられており、この入出力インターフェイス78が、光計測装置12の制御部62に設けている入出力インターフェイス80に接続されている。なお、光計測装置12とデータ処理装置14との接続は、RS−232Cなどの公知の規格のみならず任意の規格を適用することができる。
【0055】
データ処理装置14では、CPU64が、RAM68をワークメモリとして用い、ROM66又はHDD70に記憶されたプログラムを実行することにより、光計測装置12の作動を制御し、マウス18から発せられる蛍光の強度を計測する。また、データ処理装置14では、光計測装置12において計測により得られた計測データを読み込み、この計測データに基づいて蛍光の強度分布を示す断層画像の再構築が行われる。
【0056】
光計測装置12の制御部62には、図示しないマイクロコンピュータを備えたコントローラ82が設けられ、このコントローラ82が、入出力インターフェイス80を介しデータ処理装置14に接続されている。
【0057】
また、制御部62には、光源ヘッド30を駆動する発光駆動回路84、受光ヘッド32のそれぞれから出力される電気信号を増幅する増幅器(amp)86、増幅器86から出力される電気信号(アナログ信号)に対してA/D変換を行うことによりアナログ信号に応じたデジタル信号を生成するA/D変換器88を備えている。
【0058】
また、制御部62には、ロータリーアクチュエータ28を駆動する駆動回路90及びスライダ46を駆動する駆動回路92が設けられている。これにより、光計測装置12では、検体ホルダ54の移動、計測ユニット22の回動及び光源ヘッド30、受光ヘッド32の作動が制御されて、励起光に対する蛍光の計測が行われる。
【0059】
ところで、光断層計測システム10では、予め計測部位を設定し、設定した計測部位に合わせた検体ホルダ54を用いる。ここで、以下では、図1に示されるように、マウス18の体を、頭部100、胴部102及び尾を含む足部104に大別したときに、内臓諸器官が含まれる胴部102を計測部位として説明する。
【0060】
検体ホルダ54は、収容されるマウス18の胴部102に対応する中間部が拘束部106とされ、この拘束部106を挟んで頭部100側となる先端部108と、足部104側となる後端部110とに区分される。なお、下型ブロック56及び上型ブロック58では、拘束部106、先端部108、後端部110を、拘束部106A及び拘束部106B、先端部108A及び先端部108B、後端部110A及び後端部110Bされる。
【0061】
下型ブロック56の拘束部106Aには、マウス18の胴部102が収容される凹部112が形成され、上型ブロック58の拘束部106Bには、凹部114が形成されている。下型ブロック56の凹部112は、収容されるマウス18の胴部100の外形のうち、腹部102A側に合わせて湾曲された内面112Aが形成され、上型ブロック58の凹部114は、収容されるマウス18の胴部100の外形のうち、背部102B側に合わせて湾曲された内面114Aが形成されている。このとき、凹部112、114は、マウス18の通常状態(例えば、麻酔剤を投与していない状態)での体型に合わせたものとなっている。
【0062】
これにより、検体ホルダ54では、マウス18が収容されたときに、マウス18の胴部102が下型ブロック56の拘束部106A及び上型ブロック58の拘束部106Bに密着される。
【0063】
また、下型ブロック56の先端部108A及び上型ブロック58の先端部108Bには、マウス18の頭部100に対応し、頭部100の形状よりも広く形成された凹部116、118が形成され、下型ブロック56の後端部110A及び上型ブロック58の後端部110Bには、マウス18の足部104に対応し、足部104の大きさよりも広く形成された凹部120、122が形成されている。
【0064】
一方、図1及び図6に示されるように、下型ブロック56には、凹部112を挟むように立壁部124が対で形成されている。この立壁部124は、凹部112の周縁部から上型ブロック58へ向けて突出されている。
【0065】
一対の立壁部124は、互いに対向される内面124Aが、上型ブロック58の凹部114に形成される内面114Aに合わせられて形成されている。また、立壁部124の上端部124Bは、緩やかな波型形状とされている(図1参照)。
【0066】
上型ブロック58には、下型ブロック56の立壁部124に対応する挿入部として嵌め込み溝128が形成されている。嵌め込み溝128のそれぞれは、立壁部124の外形形状に合わせて、凹部114の内面114Aを掘り込んだ形状で形成されている。
【0067】
検体ホルダ54では、下型ブロック56と上型ブロック58とを重ね合わせたときに、立壁部124が、上型ブロック58の嵌め込み溝128に挿入されて嵌め込まれる。これにより、検体ホルダ54には、凹部112の内面112Aと凹部114の内面114Aとが、立壁部124の内面124Aによって連続された空洞が形成される。
【0068】
これにより、検体ホルダ54は、下型ブロック56の凹部112にマウス18の胴部102が収容され、凹部116、120に頭部100、足部104が収容された状態で、上型ブロック58が重ねられることにより、マウス18は、胴部102が表皮を内面112A、114A、124Aに密着された状態で緊密に拘束されると共に、頭部100及び足部104は、締め付けられることなく収容される。
【0069】
一般に、マウス18等の生体では、光に対して異方性散乱媒質となっている。異方性散乱媒質は、入射された光が光浸達長(等価散乱長)に達するまでは、前方散乱が支配的な領域となっているが、光浸達長を超えた領域では、光の散乱が等方的となる(等方散乱領域)。この等方散乱領域では、光の偏向がランダムな多重散乱(等方散乱)が生じる。
【0070】
また、異方性散乱媒質同士が接している場合、一方の異方性散乱媒質で等方散乱を繰り返しながら伝播した光が、他方の異方性散乱媒質に入射されると、他方の異方性散乱媒質では、前方散乱が生じることなく等方散乱が継続される。
【0071】
さらに、高密度媒質内で光が散乱を受けながら伝播するときに、光強度の分布は、光子のエネルギーの流れを記述する基本的な方程式である光(光子)の輸送方程式で表されるが、検体ホルダ54内に収容したマウス18の体内を実質的に等方散乱領域とみなすことができ、マウス12の体内での光の散乱を等方散乱に近似することができる。
【0072】
これにより、拡散方程式を用いて光強度の分布を表すことができ、データ処理装置14では、光計測装置12で得られた計測データを用いて拡散方程式の解を演算することにより光(蛍光)の濃度分布を取得する。
【0073】
検体ホルダ54では、少なくともマウス18の計測部位としている胴部102が収容される拘束部106(拘束部106A、106B)が、収容しているマウス18との間で実質的に等方散乱領域と見なされるように、異方性散乱媒質となる材質を用いて形成されている。本実施の形態では、材質として、光の透過散乱係数μ’が0.002m−1〜0.1m−1のポリアセタール樹脂(POM)を用いている。なお、検体ホルダ54の拘束部106を形成する材質は、これに限らず、異方散乱媒質であれば任意の材質を適用することができる。
【0074】
ここで、本実施の形態では、下型ブロック56を異方性散乱媒質(例えばPOM)によって形成すると共に、上型ブロック58の拘束部106B、後端部110Bを異方性散乱媒質によって形成している。
【0075】
一方、上型ブロック58では、先端部108Bを、光の透過性が高い透明な樹脂部材を用いて形成している。これにより、検体ホルダ54では、下型ブロック56に上型ブロック58を重ねたときに、検体ホルダ54の内部を視認可能とする点検部130を形成している。
【0076】
このように構成されている光断層計測システム10では、マウス18を検体ホルダ54に収容し、この検体ホルダ54を光計測装置12に装填する。光計測装置12では、マウス18を収容した検体ホルダ54が装填されると、スライダ46を作動させて検体ホルダ54を移動し、この検体ホルダ54内のマウス18の胴部102(検体ホルダ54の拘束部106)が計測位置に達すると、励起光を照射しながら蛍光の強度の計測データを取得する。このとき、光計測装置12では、マウス18の所定部位を計測位置に対向させた状態で、ロータリーアクチュエータ28を駆動することにより、光源ヘッド30を所定の角度θずつ回動させながら、それぞれの回動位置で励起光に対する蛍光の計測を行う。
【0077】
このようにして計測された計測データは、光計測装置12からデータ処理装置14へ送られ、データ処理装置14で所定のデータ処理(画像処理)が行われる。これにより、データ処理装置14では、マウス18の計測部位に対応して再構築された光断層画像がモニタ16に表示される。
【0078】
ところで、検体ホルダ54にマウス18を収容する場合、下型ブロック56の凹部112、116、120内にマウス18の下側(腹部102A側)を落とし込む。このとき、非計測部位となるマウス18の頭部100及び足部104は、比較的広く形成された凹部116及び凹部120内に収容されるが、マウス18の胴部102は凹部112に収容される。この後、下型ブロック56に上型ブロック58が重ねられる。
【0079】
ここで、図6に示されるように、検体ブロック54では、下型ブロック56に、凹部112を挟むように対で立壁124が形成されている。この立壁部124により、下型ブロック56は、検体ブロック54の中心(軸心)位置よりも上方側の位置で開口され、凹部112が深くされた状態となっている。
【0080】
これにより、マウス18は、胴部102が凹部112に収容されたときに、表皮に弛みが生じた状態であっても、弛んだ表皮が凹部112からはみだしてしまうことがない。
【0081】
また、立壁部124の上端部124Bは、波形形状とされており、これにより、マウス18を凹部112内に収容するときに、弛んだ表皮が立壁部124の上端部124Bにかかっても、表皮の自重や張力などによって滑り落ちる。
【0082】
このような下型ブロック56にマウス18が収容された状態で、上型ブロック58を被せたときに、マウス18の背部102B側の表皮は、上型ブロック58の内面114Aに密着される。すなわち、マウス18の表皮が凹部112からはみだすことがなく、また、凹部112、114が、マウス18の胴部102の大きさに合わせられているので、検体ホルダ54に収容されたマウス18の胴部102は、異方散乱媒質により形成された検体ブロック54の拘束部106に密着される。
【0083】
したがって、光計測装置12では、マウス18の胴部102の適正な計測データの取得が可能となり、この計測データを用いることにより、マウス18の胴部102の正確な光断層画像の再構築が可能となる。
【0084】
光計測装置12でマウス18の計測を行うときは、マウス18に麻酔剤を投与して生きたままの状態に維持し、これにより、例えば、マウス18内の病変部位の変化など観察が可能となる。しかし、マウス18は、麻酔剤が投与されると筋肉が弛緩した状態となり特に腹部102の表皮に弛みが生じ、表皮が弛んだ状態では、胴部102内の臓器や病変部位などの相対位置に変化が生じやすい。
【0085】
ここで、マウス18を検体ホルダ54に収容するときに、下型ブロック56の凹部112から弛緩したマウス18の表皮がはみだすと、上型ブロック58をかぶせたときに、マウス18の表皮が下型ブロック56と上型ブロック58とに挟まれてしまう。
【0086】
マウス18の表皮が下型ブロック56と上型ブロック58との間に挟まれると、例えば、下型ブロック56と上型ブロック58との間に隙間が生じたり、マウス18の背部102Bと上型ブロック58の内面114Aとの間に隙間が生じたりして、正確な計測データの取得が困難となる。
【0087】
また、マウス18の表皮が下型ブロック56と上型ブロック58との間に挟まった状態でこれらの隙間を埋めようとするとマウス18の表皮を損傷させてしまう。小動物、特に、ヌードマウスなどは、表皮などの傷に弱く、損傷が生じると体調不良をきたしたり、死亡してしまう可能性が高く、継続的な観察が困難となる。
【0088】
これに対して、検体ホルダ54は、マウス18の表皮が弛んで状態であっても、下型ブロック56と上型ブロック58との間で、表皮を挟んでしまうことがなく、また、少なくとも計測対象とされる部位では、表皮を異方性散乱媒質で形成した下側ブロック56の拘束部106Aと上型ブロック58の拘束部106Bとに密接されることができる。これにより、マウス12の観測の適正な観測を長期にわたって行うことができる。
【0089】
また、検体ホルダ54には、上型ブロック58に点検部130を設けており、この点検部130によって検体ホルダ54内を視認することができる。これにより、光計測装置12で計測を行うときに、マウス18と下型ブロック56の内面112Aないし上型ブロック58の内面114Aとの間に明らかに隙間があり、適正な計測が困難となる状態を識別することができる。
〔第2の実施の形態〕
次に、第2の実施の形態を説明する。なお、第2の実施の形態において第1の実施の形態と同等の構成には、同じ符号を付与してその説明を省略する。
【0090】
図7から図9には、第2の実施の形態に係る検体ホルダ140が示されている。この検体ホルダ140は、第1の実施の形態の検体ホルダ54に換えて用いられる。
【0091】
検体ホルダ140は、下型ブロック142と上型ブロック144とによって構成され、下型ブロック142と上型ブロック144とを重ね合わせることにより略円柱形状となる。なお、下型ブロック142は、前記した検体ブロック54の下型ブロック56と同等の構成を用いることができる。また、上型ブロック144は、マウス18の胴部102に対応する凹部114と、マウス18の足部104に対応する凹部122が形成されても良い。
【0092】
この検体ブロック140の上型ブロック144には、凹部114よりもマウス18の頭部100側に把持部146が設けられている。
【0093】
図8に示されるように、この揺動部146は、それぞれが、円弧状に形成された一対の揺動部材148、150を備えている。この揺動部材148、150は、円周方向の一端側が、下側ブロック142の上面に対向され、その端面152が下側ブロック148の上面に緊密に接する平面とされている。
【0094】
また、揺動部材148、150は、互いに対向される端部が、串歯状に形成された重なり部154、156とされている。揺動部材148、150のそれぞれは、重なり部154、156で、ピン158によって上型ブロック144の拘束部106Bに連結されて軸支されている。これにより、揺動部材148、150のそれぞれは、ピン158を軸に、互いの先端部(端面152側の端部)が離間する方向及び接近する方向へ揺動可能となっている(図8の矢印参照)。
【0095】
揺動部材148、150のそれぞれは、端面152側の先端部が互いに離間されることにより、重なり部154、156の先端が互いに接近される。この重なり部154、156は、互いの先端によって摘み部160を形成している。すなわち、揺動部材148、150が互いに離間する方向へ揺動されて開かれることにより、重なり部154、156の先端が接近し、マウス18を挟む摘み部160を形成する。
【0096】
図7及び図9に示されるように、この摘み部160は、拘束部106Bに隣接して設けられていることにより、凹部114にマウス18の胴部102が対向された状態で、マウス18の頭部100と胴部102の間(頭部100の胴部102側)の襟首100Aに対応するようになっている。したがって、上型ブロック144は、把持部146をマウス18の襟首100Aに対向したときに、マウス18の胴部102が、凹部114に対向される。
【0097】
上型ブロック144は、把持部146をマウス18の襟首100Aに対向させた状態で、揺動部材148、150を開くことにより、摘み部160によりマウス18の襟首100Aの表皮を摘むことにより把持できる(図9参照)。また、マウス18の襟首100Aを摘み部160で摘んだ状態で、上型ブロック144を持ち上げることより、マウス18を摘み上げることができる。
【0098】
このような検体ブロック140にマウス18を収容する場合、上型ブロック144によってマウス18の襟首100Aを摘んで持ち上げ、このマウス18の胴部102を、下型ブロック142の一対の立壁部124の間に対向させる。なお、上型ブロック144によってマウス18を摘み上げた状態では、マウス18の足部104に手を添えることが好ましい。
【0099】
この状態で上型ブロック144を下型ブロック142へ向けて降ろすことにより、襟首100Aで吊り下げられたマウス18の胴部102が、一対の立壁部124の間へ挿入される。このとき、麻酔剤が投与されるなどしてマウス18が弛緩していれば、マウス18は、自重によって延びて幅が狭くなるので、一対の立壁部124の間へ容易に挿入可能となる。また、検体ホルダ140では、下型ブラケット142の凹部112を、一対の立壁部124によって実質的に深くしているので、マウス18の胴部102が凹部112に入り込んだときに、マウス18の表皮が凹部112から飛び出してしまうことがない。
【0100】
検体ホルダ140では、上型ブロック144によって摘み上げたマウス18の胴部102を下型ブロック142の凹部112内に収容することにより、マウス18の頭部100が下型ブロック142の凹部116内に配置される。この状態で、揺動部材148、150の先端部(端面152)を、下型ブロック142へ向けて揺動することにより、摘み部160を形成している重なり部154、156が互いに離間して、マウス18の襟首100Aの把持が解除されて、マウス18の頭部100が凹部116内に収容される。
【0101】
また、把持部146は、揺動部材148、150の先端部の端面152を、下型ブロック142に当接されることにより、凹部116内に収容されたマウス18の襟首100Aの近傍が揺動部材148、150により覆われる。
【0102】
このような検体ホルダ140を用いることにより、計測を行うマウス18の取扱が容易となり、円滑な計測が可能となる。また、比較的やわらかく、挟んでも損傷することがないマウス18の襟首100Aを摘むので、マウス18の表皮に損傷を生じさせることがなく、マウス18を用いた長期の観察が可能となる。
【0103】
このような揺動部材148、150及びピン158の材質としては、異方性散乱媒質を用いることができるが、ピン158は異方性散乱媒質を用いることが好ましい。しかし、マウス18襟首100Aが、光断層計測システム10で非計測部位とされているので、揺動部材148、150は、必ずしも異方性散乱媒質に限らず、例えば、透明樹脂等によって形成することもできる。
【0104】
また、検体ホルダ140では、それぞれが円弧状に形成された揺動部材148、150を用いたが、揺動部146は、マウス18の非計測部位に対向して、マウス18の非計測部位を損傷させることなく摘み上げる構成であれば任意の構成を適用することができる。
【0105】
さらに、検体ホルダ54、140では、異方性散乱媒質となる材質を用いて上型ブロック56、142の後端側(後端部110B)を形成しているが、これに限らず、例えば、透明部材を用いて形成したものであっても良い。これにより、マウス18の腰部から下側を視認可能となるので、例えば、マウス18が排泄したか否かなどを監視することができる。
〔第3の実施の形態〕
次に本発明の第3の実施の形態を説明する。なお、第3の実施の形態において前記した第1又は第2の実施の形態と同等の構成には、同じ符号を付与してその説明を省略する。
【0106】
図10及び図11には、第3の実施の形態に係る検体ホルダ170の概略構成が示されている。この検体ホルダ170は、下型ブロック172と上型ブロック174とによって形成され、下型ブロック172と上型ブロック174とを重ね合わせることにより略円柱形状となる。
【0107】
下側ブッロク172には、検体ホルダ170の拘束部176となる拘束部176Aに、マウス18の胴部102(腹部102A)に対応する凹部178共に、マウス18の頭部102に対応する凹部180及び、マウス18の足部104に対応する凹部182が形成されている。凹部178は、マウス18の腹部102A側が収容されるようになっており、この腹部102Aの形状に合わせた内面178Aが形成されている。また、凹部180、182は、凹部178よりも拡幅されており、それぞれに頭部100及び足部104が締め付けられることなく収容される。
【0108】
また、上型ブロック174には、拘束部176Bに、マウス18の胴部102に対応する凹部184共に、頭部100が対応する凹部186及び、足部104が対応される凹部188が形成されている。凹部184は、内面184Aが、マウス18の背部102Bの形状に合わせて湾曲されており、凹部186及び凹部188は、凹部184よりも開口幅が広げられている。
【0109】
これにより、検体ホルダ170では、下型ブロック172と上型ブロック174とが重ねられることにより、凹部178と凹部184との間でマウス18の胴部102を密接して収容し、凹部180と凹部186及び凹部182と凹部188とに、マウス18の頭部100及び足部104が収容される。
【0110】
一方、上型ブロック174には、マウス18の胴部102に対向する位置に矩形形状の切込み部190が形成されている。切込み部190のそれぞれは、マウス18の胴部102の左右方向に対応するように、幅方向(軸方向と交差する方向)の両側に形成されている。
【0111】
これにより、検体ブロック170には、下型ブロック172と上型ブロック174とを重ねたときに、上型ブロック174に、軸方向に沿って長い矩形形状の開口部192が形成される。
【0112】
検体ブロック170には、この開口部192に嵌め込まれる押えブロック194が設けられている。押えブロック194は、開口部192の開口形状に合わせられた略矩形ブロック状に形成されて、一端側から開口部192内に挿入される(以下、挿入方向側とする)。押えブロック194の挿入方向側の端面194Aは、上型ブロック174の凹部184の内面184Aに沿うように形成されている。また、押えブロック194の挿入側と反対側の端面194Bは、押えブロック194を開口部192に挿入したときに、下型ブロック172と上型ブロック174の周面との間を円弧状に連結する形状となっている。
【0113】
検体ホルダ170は、下型ブロック172と上型ブロック174とを重ねた状態で開口部192に押えブロック194を嵌め込むことにより、マウス18の胴部102の表皮が緊密に接すると共に外形が円柱状に形成される。
【0114】
このように形成されている検体ホルダ170にマウス18を収容する場合、下型ブロック172の凹部178にマウス18の胴部102(腹部102A)が収容される。このとき、マウス18の表皮が弛んでいると、図11に示されるように、マウス18の弛んだ表皮が凹部178の周縁部にはみだす。
【0115】
この状態で、下型ブロック172に上型ブロック174を重ねると、上型ブロック174に切込み部190を形成していることにより、下型ブロック172の凹部178からはみだしている表皮が、下型ブロック172と上型ブロック挟まれることはないが、開口部192内に入り込んだ状態となる。
【0116】
検体ホルダ170では、下型ブロック172と上型ブロック174を重ねると、開口部192に押えブロック194を嵌め込む。また、押えブロック194は、挿入側の端面194Aが凹部184の内面184Aと一致するまで押込まれる。
【0117】
このとき、押えブロック194は、外方から開口部192内に挿入されるため、開口部192内にはみだしている表皮は、押えブロック194によって凹部178、184内に押込まれる。これにより、マウス18の表皮が下型ブロック172と上型ブロック174との間などに挟まって損傷してしまうことがない。また、マウス18の胴部102の表皮は、下型ブロック172の内面178A及び上型ブロック174の内面184Aに密接される。
【0118】
これにより、マウス18の表皮を損傷させてしまうことなく、また、マウス18の表皮と下型ブロック172及び上型ブロック174との間で隙間を生じさせてしまうことが無い。
【0119】
したがって、検体ホルダ170を用いた場合でも、マウス18の光断層画像を長期にわたって観察することができる。また、マウス12の表皮と下型ブロック172及び上型ブロック174との間に隙間が生じてしまうことがないので、適正は光断層画像の再構築が可能となる。
【0120】
なお、以上説明した本実施の形態は、本発明の構成を限定するものではない。例えば、光断層計測システム10は、蛍光トモグラフィーなどの光トモグラフィーにより光断層画像の再構築を行う任意の校正を適用することができる。
【符号の説明】
【0121】
10 光断層計測システム
12 光計測装置
14 データ処理装置
18 マウス
30 光源ヘッド
32 受光ヘッド
54、140、170 検体ホルダ
56、142,172 上型ブロック
58、144、174 下型ブロック
102 胴部
112、178 凹部
114、184 凹部
124 立壁部
128 嵌め込み溝
130 点検部
146 把持部
148、150 揺動部材
154、156 重なり部
160 摘み部
190 切込み部
192 開口部
194 押えブロック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学特性として光の等方散乱が生じる材質によって形成され、計測対象とされる生体の計測部位の下部側を収容する第1の凹部が形成された第1のブロック部材と、
光学特性として光の等方散乱が生じる材質によって形成され、前記第1のブロック部材の前記第1の凹部と重ねられることにより、前記生体の計測部位の上部側を収容する第2の凹部が形成された第2のブロック部材と、
前記第1の凹部からはみ出す前記生体の計測部位の表皮を前記第1又は第2の凹部へ案内することにより、前記生体の前記計測部位を第1及び第2の凹部に密接させて前記第1及び第2のブロック部材によって保持させる案内手段と、
を含む計測対象保持具。
【請求項2】
前記第1及び第2の凹部が計測対象とされる前記生体の胴部を収容する請求項1に記載の計測対象保持具。
【請求項3】
前記案内手段が、互いに対向される面が、前記第1の内面に沿って前記第1のブロック部材から前記第2のブロック部材の前記第2の凹部の内面へ向けて延設された一対の立壁部と、
前記第2のブロック部材に形成され、前記第1のブロック部材を重ねたときに前記一対の立壁部のそれぞれが挿入される挿入部と、
を含む請求項1又は請求項2に記載の計測対象保持具。
【請求項4】
前記立壁部の先端が波型形状に形成されている請求項3の記載の計測対象保持具。
【請求項5】
前記第2のブロックに成形され、前記第1のブロック部材と前記第2のブロック部材とを重ねたときに、第1のブロック部材と第2のブロック部材との間に、前記第1及び第2の凹部内と外部とを連通する開口部が形成される切込み部と、
前記開口部に前記第1及び第2の凹部の外側から挿入されて嵌め込まれることにより、前記切込み部内に形成される空間を閉塞する閉塞部材と、
を含む請求項1又は請求項2に記載の計測対象保持具。
【請求項6】
前記第2のブロック部材に設けられて、前記生体の前記胴部に連続する襟首を把持する把持手段を含む請求項2に記載の計測対象保持具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−75434(P2011−75434A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−227997(P2009−227997)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】