説明

計測装置および除振装置

【課題】 周囲の振動や音の影響を低減し、非接触による振動測定を行うことが可能な計測装置およびこれに用いられる除振装置を提供する。
【解決手段】 台車7上には、ジャッキ9が設けられる。ジャッキ9を計測装置1の四隅に設け、適宜調整することで、除振装置10を水平に調整することが可能である。ジャッキ9により水平が調整された除振装置10は、定盤13の少なくとも四隅に設けられる。除振装置10は、下部からの振動を上部に伝達することを防止するものである。定盤13はいわゆる光学定盤であり、除振装置10によって支持される。定盤13の上には、測定部15が設けられる。測定部15では、例えばレーザー、超音波、電磁波等を検査対象の構造体3表面に発信(発振)するとともに、反射したレーザー、超音波、電磁波等を受信(受振)し、検査対象部の欠陥を検出することが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばコンクリート構造体の内部欠陥を非破壊で計測可能な計測装置およびこれに用いられる除振装置等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンクリート構造体の検査方法としては、目視検査に加え、検査対象をハンマリングして、この際の打音によって当該部位の健全度を検査する方法がある。しかしながらこのような打音による検査は、作業者の技量によるところが大きく、検査精度としては十分ではない場合がある。
【0003】
これに対し、ハンマリングによる検査部の振動を測定し、当該部位の固有振動数を計測することで、検査対象部の健全度を評価する方法が提案されている(特許文献1)。
【0004】
また、例えば、レーザー、超音波、電磁波、光音響等を用いて、検査対象部の内部欠陥を非接触で検査を行う検査方法がある(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−051873号公報
【特許文献2】特開2005−147813号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のように、加速度センサ等により取得し、直接検査部の振動を計測する方法は、検査部ごとにセンサを設置する必要があり、広範囲にわたる検査に対しては作業性に問題がある。
【0007】
一方で、特許文献2のような非接触による振動測定方法によれば、効率良くコンクリート構造体の健全度を測定することができる。しかしながら、このような非接触による検査対象部の振動測定においては、検査対象部のわずかな振動を検出する必要があるため、周囲からのノイズの影響が極めて大きい。例えば、軌道に沿ってトンネル等のコンクリート構造体の検査を行う場合には、軌道に沿って台車を移動させながら検査を行うが、この際用いられる台車のエンジンや周囲の音によって、検査部に振動が生じるため、検査対象における正確な振動情報を測定することができない。
【0008】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、周囲の振動や音の影響を低減し、非接触による振動測定を行うことが可能な計測装置およびこれに用いられる除振装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述した目的を達成するため、第1の発明は、計測装置であって、除振装置と、少なくとも四隅に設けられた前記除振装置の上に設けられる定盤と、前記定盤の上に設けられる測定部と、を具備し、前記除振装置は、下部に設けられた空気ばね部と、上部に設けられた粘弾性体部と、を有し、前記空気ばね部は、下板と、前記下板と対向する中板と、前記下板と前記中板との間を連結するように設けられる、空気ばねおよび前記空気ばねの周囲に設けられる複数のバランスばねと、を具備し、前記粘弾性体部は、前記中板に対向する上板と、前記中板と前記上板との間を連結するように設けられる、第1の粘弾性体および前記第1の粘弾性体の周囲に設けられる複数のばねと、前記中板と前記上板との間に配置される粘弾性部材とを具備し、前記粘弾性部材は、前記中板の上面に固定される受け部と、前記上板の下面に固定され、略水平方向に向けて形成される筒部と、前記筒部内に保持され、端部が前記受け部と接触する第2の粘弾性体と、を具備することを特徴とする計測装置である。
【0010】
前記定盤は、6か所以上の前記除振装置により支持されることが望ましい。隣り合う前記除振装置の中板同士が、互いに連結梁によって連結され、前記連結梁は、端部が変形可能な薄板等で構成されることが望ましい。
【0011】
前記定盤は、樹脂製定盤、コンクリート製定盤、金属と樹脂との層構造の定盤、またはハニカム構造のハニカムコアに高分子材料を充填した構造の定盤、のいずれかであり、前記定盤の振動の減衰比を金属定盤に対して高めてもよい。
【0012】
前記除振装置の下部には、複数の前記除振装置を全て水平に調整可能な複数のジャッキが設けられてもよい。
【0013】
前記中板と前記上板の外縁部に対し側方を覆うように形成される断熱部材と、前記中板、前記上板および前記断熱部材とで囲まれた空間内に配置されるヒータとをさらに具備してもよい。この場合、前記空間内の温度を検知するセンサをさらに備え、前記センサによって測温された温度から前記空間内の温度を前記ヒータによって制御する温調部を具備してもよい。
【0014】
前記除振装置は平面視略矩形であり、前記筒部は前記除振装置の各辺に対して、垂直または平行ではなく所定の角度をもって配置され、前記定盤の重心を中心として前記定盤が水平面上で回転動作をする際に、前記除振装置の前記筒部が、前記除振装置の位置における前記定盤の回転円の接線方向に向けて配置されてもよい。
【0015】
第1の発明によれば、計測部の下部に除振装置が設けられるため、台車からの振動が計測部に伝わることを防止することができる。特に、除振装置には空気ばね部と粘弾性体部が設けられるため、特に低周波数域における振動を効率良く除振することができる。
【0016】
また、測定部が載置される定盤が、6か所以上の除振装置によって支持されれば、粘弾性体による減衰効果により定盤の共振が抑えられ、より確実に振動が測定部に伝達することを防止することができる。また、隣り合う除振装置の中板同士が連結梁で連結されることで、過剰にバランスばねを強くすることなく、各除振装置の水平方向の変位を抑えることができる。
【0017】
また、定盤自体の減衰比を大きくすることで、共振時の振動を小さく抑えることができる。また、同時に、固有振動数自体を低周波数側にシフトさせることができる。このような減衰比を大きくするものとしては、樹脂製の定盤、コンクリート製の定盤、金属と樹脂(ゴム材料を含む)との層構造の定盤、または金属製のハニカム構造のハニカムコアに高分子材料等の樹脂材料を充填した構造の定盤等を用いることができる。このようにすることで、例えば音や人の声等の周波数帯の振動を抑制することができる。
【0018】
また、除振装置の下部に、全ての除振装置を水平に調整可能な複数のジャッキが設けられることで、例えば、軌道が傾くような場合においても、常に除振装置を水平に保つことができ、確実に除振装置の機能を発揮させることができる。
【0019】
また、中板と上板の外縁部に対して、側方を覆うように断熱部材を設け、内部の空間内にヒータとを設けることで、粘弾性体等を常に一定の条件に保つことができる。したがって、外部の温度変化によらず、常に一定の除振効果を得ることができる。この際、空間内の温度を検知するセンサを設け、センサによって測温された温度から空間内の温度をヒータによって制御することで、より確実に除振装置の機能を発揮させることができる。
【0020】
また、筒部材を、除振装置の各辺に対して、垂直または平行ではなく所定の角度をもって配置し、定盤の重心を中心として定盤が水平面上で回転動作をする際に、筒部が、除振装置の位置における定盤の回転円の接線方向に向けて配置されることで、定盤の回転方向の振動に対しても十分な除振効果を得ることができる。
【0021】
第2の発明は、除振装置であって、下部に設けられた空気ばね部と、上部に設けられた粘弾性体部と、を有し、前記空気ばね部は、下板と、前記下板と対向する中板と、前記下板と前記中板との間を連結するように設けられる、空気ばねおよび前記空気ばねの周囲に設けられる複数のバランスばねと、を具備し、前記粘弾性体部は、前記中板に対向する上板と、前記中板と前記上板との間を連結するように設けられる、第1の粘弾性体および前記第1の粘弾性体の周囲に設けられる複数のばねと、前記中板と前記上板との間に配置される粘弾性部材とを具備し、前記粘弾性部材は、前記中板の上面に固定される受け部と、前記上板の下面に固定され、略水平方向に向けて形成される筒部と、前記筒部内に保持され、端部が前記受け部と接触する第2の粘弾性体と、を具備することを特徴とする除振装置である。
【0022】
第2の発明によれば、上部に配置される除振対象物に対して、下部からの振動が伝わることを確実に防止することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、周囲の振動や音の影響を低減し、非接触による振動測定を行うことが可能な計測装置およびこれに用いられる除振装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】計測装置1の使用状態を示す概略図。
【図2】計測装置1の平面概略図。
【図3】定盤の構成を示す図。
【図4】除振装置10を示す正面図。
【図5】除振装置10を示す図で、図4のC−C線断面図。
【図6】除振装置10近傍を示す図で、図2のF部拡大図。
【図7】除振装置50を示す正面図。
【図8】除振装置50を示す図で、図6のD−D線断面図。
【図9】連結梁62が設けられた計測装置1a示す図。
【図10】除振装置の効果を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下図面に基づいて、本発明の実施形態を詳細に説明する。図1は、計測装置1の使用状態を示す図であり、図2(a)は計測装置1の平面概略図、図2(b)は正面図である。なお、以下の説明では、軌道5脇に設けられるコンクリート製の構造体3の検査を行う状態について説明するが、本発明はこれに限られず、コンクリート構造体であればいずれの構造体であっても当然に適用可能である。
【0026】
計測装置1は、主にジャッキ9、除振装置10、定盤13、測定部15等から構成される。計測装置1は、台車7上に設置される。台車7はエンジン等を有し、軌道5上を走行可能である。
【0027】
台車7上には、ジャッキ9が設けられる。ジャッキ9は、台車7に対して、ジャッキ9上に設けられ上部に除振装置10が設けられるフレーム等の高さを調整可能である。すなわち、ジャッキ9を計測装置1の四隅に設け、適宜調整することで、それぞれの部位の除振装置10を水平に調整することが可能である。
【0028】
ジャッキ9により水平が調整された除振装置10は、定盤13の少なくとも四隅(図2(a)では6か所)に設けられる。除振装置10は、下部(台車7側)からの振動を上部(定盤13)に伝達することを防止するものである。なお、除振装置10の構造部については詳細を後述する。除振装置10の設置数は、定盤13の大きさ等によって適宜設定されるが、図示したように6か所以上設けることが望ましい。このようにすることで、より確実に定盤の振動(各種変形モードにおける振動)を抑制することができる。
【0029】
定盤13はいわゆる光学定盤であり、除振装置10によって支持される。定盤13としては、通常の金属ハニカム構造のものを用いることもできるが、より減衰比の大きなものを用いることが望ましい。例えば鋼製やアルミ製のハニカム構造の減衰比(例えば減衰比0.01程度)に対して、好ましくは減衰比0.1以上のものを用いることが望ましい。
【0030】
図3は、定盤の構造を示す図である。図3(a)に示すように、例えば、定盤13の材質を樹脂部63で構成することができる。このように、定盤13を硬質樹脂(またはコンクリート製)とすることで、従来の金属ハニカム構造の定盤と比較して、定盤13の減衰比を大きくすることができる。したがって、周囲の音などによる定盤の共振を抑制することができ、また、同時に固有振動数を低くすることができる。すなわち、定盤13の振動をより確実に抑制することができる。
【0031】
また、定盤の減衰比を大きくする方法としては、図3(b)に示すような定盤13aとすることもできる。定盤13aは金属部65で樹脂部63を挟み込んだ構造である。このような構造とすることで、従来の金属ハニカム構造の定盤と比較して、定盤の減衰比を大きくし、定盤の共振を抑制することができる。
【0032】
また、図3(c)に示すような定盤13bとすることもできる。定盤13bはハニカム構造の金属部65のハニカムコアに樹脂部63が充填された構造である。このように、定盤13bのハニカムコアに樹脂(またはコンクリート)等を充填することでも、従来の金属ハニカム構造の定盤と比較して、定盤の減衰比を大きくすることができる。したがって、周囲の音などによる定盤の共振を抑制することができる。なお、以下の例では定盤13を用いる例を説明する。
【0033】
定盤13の上には、測定部15が設けられる。測定部15は、例えば、レーザー、超音波、電磁波等を検査対象の構造体3表面に発信(発振)(図中矢印A)するとともに、反射したレーザー、超音波、電磁波等を受信(受振)(図中矢印B)して、構造体3の内部欠陥を検出することが可能である。このような測定部としては、例えば特許文献2や特開2009−30996号公報に記載の方法などがある。なお、本発明においては、このような微小な振動を検出するためのいずれの測定(非接触による振動測定)に対しても有効である。
【0034】
次に、除振装置10について説明する。図4は、除振装置10を示す正面図であり、図5は図4のC−C線断面図である。除振装置10は、空気ばね部、粘弾性体部を有する。下部の空気ばね部は、下板23、中板25、空気ばね31、バランスばね33等から構成される。また、上部の粘弾性体部は、上板27、粘弾性体35、ばね37、粘弾性部材45等から構成される。
【0035】
空気ばね部は、いわゆるベローズ型空気バネ式の防振装置として構成されている。この部分はダイヤフラム型でも同様の効果が得られる。下板23と中板25は、水平に固定配置された例えば平板から構成されている。下板23と中板25とは所定間隔で水平に配置されている。下板23と中板25との間に配置される空気ばね31が設けられる。空気ばね31の周囲外側には、複数本のコイルバネから成るバランスばね33が配置される。また、下板23下部には、空気タンク29が設けられる。
【0036】
空気ばね31は、下板23と中板25の間において、内側に気密空間を形成するように形成される。すなわち、空気ばね31は、下板23と中板25に対して密着するように機械的に取り付けられている。下板23の略中央には貫通孔が設けられ、空気ばね31の内部空間と空気タンク29とが連通する。また、空気タンク29の側壁には空気取り入れ口が設けられ、空気タンク29と外部とが連通し、外部から空気タンク29内へ圧縮空気が導入される。
【0037】
すなわち、空気タンク29内に導入された圧縮空気の空気圧が貫通孔を介して空気ばね31の内部空間に作用することにより、中板25が上方に向かって押圧される。その際、空気タンク29内の空気圧を適宜に調整することにより、中板25に作用する上方への押圧力が調整される。
【0038】
また、バランスばね33が設けられることで、中板25上から偏荷重が加えられ、中板25が傾斜しようとすると、バランスばね33の反発力によって、中板25の傾斜が補正される。したがって、中板25の水平度が保持される。
【0039】
なお、バランスばね33のバネ定数が小さい程、空気ばね部の鉛直方向のバネ定数は小さくなる。したがって、バランス力を保持するためには、バランスばね33の間隔を大きくとればよく、さらにバランスばね33のバネ定数を小さく設定することによって、鉛直方向のバネ定数を小さくすることができる。
【0040】
中板25の上方には粘弾性体部が設けられる。図5に示すように、中板25と上板27との間の中心軸を中心に、第1の粘弾性体である粘弾性体35および、粘弾性体35の周囲に、複数の圧縮コイルばねであるばね37が設けられる。なお、上板27は平板から構成されており、上板27と中板25とは所定間隔で水平に配置されている。
【0041】
中板25上には、板状の受け部39が中板25上に略垂直に設けられる。また、上板27の下面には筒部材43が設けられる。筒部材43内部には第2の粘弾性体である粘弾性体41が設けられる。図5に示すように、筒部材43は、略矩形の中板25の各辺に対して(垂直または平行ではなく)所定角度で中板25の面に略平行に構成される。粘弾性体41の端部は受け部39に対して略垂直に接触する。なお、粘弾性体41は、圧縮または引張力を受けて変形しながら筒部材43に対して出入り自在に設けられる。ここで、受け部39、筒部材43および粘弾性体41を総称して粘弾性部材45とする。
【0042】
ばね37は、中板25(上板27)を垂直に通る中心線に対して、所定半径の円周上にて、それぞれ中心線に対して平行に鉛直方向に延びるように、点対称に配置される。なお、ばね37の下端及び上端は、中板25および上板27にそれぞれ固定される。
【0043】
粘弾性体35は、粘弾性を有する材料であり、例えば熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂等から構成される。粘弾性体35は、その圧縮により振動に関して減衰力を生ずる。すなわち、粘弾性体35によって鉛直方向の振動を減衰することができる。
【0044】
同様に、粘弾性体41は、粘弾性を有する材料であり、例えば熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂等から構成される。粘弾性体41は、その圧縮により振動に関して減衰力を生ずる。なお、粘弾性体41は、筒部材43内に挿入される。したがって、粘弾性体41は、主に筒部材43の軸方向に対する振動を減衰させることができる。
【0045】
なお、筒部材43は、その略中間位置に図示を省略したフランジ部を備え、この中心に調整ネジが螺合される。調整ネジをネジ込むことにより、調整ネジの先端が筒部材43の内部にて粘弾性体41を後方から圧縮する。これにより、減衰力が得られると共に、調整ネジの先端の進退により、減衰力を調整することができる。
【0046】
次に、計測装置1の動作について説明する。前述した図2(a)に示すように、定盤13は重心である回転中心61を中心として回転方向(図中矢印E方向)の振動を伴う。すなわち、定盤13の水平方向および鉛直方向の振動を前述した除振装置10で除振するとともに、この回転方向の振動に対しても減衰させる必要がある。
【0047】
図6は除振装置10近傍を示す図で、図2(a)のF部拡大図である。図6に示すように、ある位置における除振装置10において、回転中心61(図2(a))を中心とした円周方向をEとし、除振装置10(粘弾性部材45)の位置における、この円の接線方向をGとする。この際、筒部材43および粘弾性体41は、この接線方向Gの方向に向けて配置される。前述の通り、粘弾性体41は圧縮時に振動を減衰させるため、粘弾性体41方向の振動に対して減衰力を発揮する。したがって、定盤13の回転振動に対しても、粘弾性部材45によって振動を減衰することができる。
【0048】
なお、それぞれの除振装置10の位置によって、回転中心61(図2(a))を中心とする円およびその接線方向が異なる。このため、それぞれの除振装置10は配置される位置に応じて、粘弾性部材45の設置方向が決められる。
【0049】
以上説明したように、本発明実施形態による計測装置1は、装置下部または周囲の音響等による振動の影響を除振装置10等によって遮断し、定盤13上に配置された測定部15が、振動の影響を受けることを防止することができる。
【0050】
特に、除振装置が二層構造であり、下部の空気ばね部と上部の粘弾性体部によって鉛直方向の振動と水平方向の振動が、計測装置下部から定盤13に伝達されることを防止することができる。
【0051】
また、定盤13の減衰比を大きくすることで、定盤の共振を抑制することができる。したがって、定盤13の周囲の音響等に対する共振を抑制することができる。したがって、トンネル内などの密閉空間等においても、音響に伴う定盤13の振動を抑制し、上部の測定部への振動の影響を抑制することができる。
【0052】
また、除振装置10は、粘弾性部材45が定盤13の回転方向に向けて配置されるため、定盤13の回転方向の振動に対しても減衰力を発揮することができる。
【0053】
次に、他の実施形態について説明する。図7は他の実施形態である除振装置50を示す図である。なお、以下の実施の形態において、除振装置10と同様の機能を奏する構成については、図4〜図5等と同様の記号を付し、重複する説明を省略する。計測装置1の除振装置としては、除振装置10に代えて除振装置50を用いることができる。
【0054】
除振装置50は、略除振装置10と同様の構成であるが、ヒータ53および断熱部材51が設けられる点で異なる。上板27と中板25の外周部を覆うように、断熱部材51が設けられる。断熱部材51は内部の粘弾性体35やばね37の動作に応じて追従することが可能な部材であり、例えば布状やブランケット状の部材である。
【0055】
図8は図7のD−D線断面図である。図8に示すように、中板25上面にはヒータ53が配置される。ヒータ53は図示を省略した電源に接続される。ヒータ53によって粘弾性体部(中板25と上板27および断熱部材51で囲まれた空間)の温度を上昇させることができる。
【0056】
ここで、粘弾性体35、41による減衰特性は、温度に依存する。したがって、計測装置1の使用場所や使用時期、使用環境等によって減衰特性が変動する恐れがある。このため、使用状況によっては、計測装置に対してチューニングされた減衰特性を十分に得ることができない恐れがある。例えば、夜間での使用や冬季での使用では、周囲温度が低くなるため、粘弾性体35、41による減衰特性が十分に得られない恐れがある。
【0057】
これに対し、除振装置50では、当該粘弾性体35、41が配置される空間の温度を常に一定にすることができる。したがって、粘弾性体35、41の減衰特性を常に一定にすることができる。なお、より望ましくは、中板25、上板27および断熱部材51で囲まれた空間内部の温度や、粘弾性体35、41の温度をセンサで測定し、ヒータ53の稼働を制御すればよい。このようにすることで、過剰に加熱することがなく、確実に同一条件での減衰特性を得ることができる。
【0058】
なお、ヒータ53の配置レイアウトは図示した例に限られない。また、断熱部材51が完全に中板25、上板27の外周を覆わなくてもよい。また、中板25、上板27自体を断熱部材で構成したり、断熱材を張り付けたりしてもよい。
【0059】
除振装置50を用いれば、除振装置10を用いた場合と同様の効果を得ることができる。また、温度変化に伴う除振装置の減衰特性の変化を抑制することができる。
【0060】
図9は、他の実施の形態である計測装置1aを示す図である。計測装置1aは計測装置1と略同様であるが、除振装置10同士が連結梁62によって連結される点で異なる。なお、計測装置1aにおいて、除振装置10に代えて除振装置50を用いてもよい。
【0061】
前述の通り、定盤13に偏荷重等が付与された際に、バランスばね33によって上板27の水平方向への変位に復元力が付与される。しかし、バランスばね33のばね定数が小さすぎると、上板27が偏荷重により傾斜しやすく、場合によっては座屈することがある。一方、バランスばね33のばね定数を大きくしていくと、空気ばね部のばね定数を大きくすることになり、鉛直方向の固有振動数を下げられない。
【0062】
計測装置1aでは、隣り合う部位に配置されるそれぞれの除振装置10(中板25)同士が連結梁62で連結される。連結梁62としては、例えば端部が容易に変形可能な薄板等を用いることができる。連結梁62によって、各中板27同士が互いに強制的に水平に保持され得ることになるとともに、連結梁62の端部に容易に変形可能な薄板等を用いれば、バランスばねと同様な効果を生み、中板の傾きを抑えることができるとともに、水平方向への変位に復元力が付与され、除振装置10の安定度が向上する。したがって、バランスばね33のバネ定数を過剰に大きくすることなく、鉛直方向の固有振動数を下げるとともに、粘弾性体35等の座屈を水平方向の固有振動数も下げることができる。
【実施例】
【0063】
図1に示すような計測装置を作成して、除振装置の効果を測定した。結果を図10に示す。台車のエンジンをアイドリング状態として、計測装置の除振装置下部(台車)の振動と、除振装置上部(定盤上)の振動を加速度センサによって計測した。
【0064】
図10に示すように、鉛直方向(Z方向)および軌道方向(X方向)および軌道と垂直方向(Y方向)それぞれの振動成分に対して、除振装置が極めて高い除振効果を得ることが分かった。したがって、定盤上において、レーザー、超音波、電磁波、光音響等を利用した非接触による振動測定部を配置し、検査対象部の微小な振動を計測するような計測部を用いても、下部からの振動による影響を防ぎ、精度よく検査を行うことができる。
【0065】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0066】
1、1a………計測装置
3………構造体
5………軌道
7………台車
9………ジャッキ
10、50………除振装置
13、13a、13b………定盤
15………測定部
23………下板
25………中板
27………上板
29………空気タンク
31………空気ばね
33………バランスばね
35………粘弾性体
37………ばね
39………受け部
41………粘弾性体
43………筒部材
45………粘弾性部材
51………断熱部材
53………ヒータ
61………回転中心
62………連結梁
63………樹脂部
65………金属部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
計測装置であって、
除振装置と、少なくとも四隅に設けられた前記除振装置の上に設けられる定盤と、前記定盤の上に設けられる測定部と、を具備し、
前記除振装置は、
下部に設けられた空気ばね部と、上部に設けられた粘弾性体部と、を有し、
前記空気ばね部は、下板と、前記下板と対向する中板と、前記下板と前記中板との間を連結するように設けられる、空気ばねおよび前記空気ばねの周囲に設けられる複数のバランスばねと、を具備し、
前記粘弾性体部は、前記中板に対向する上板と、前記中板と前記上板との間を連結するように設けられる、第1の粘弾性体および前記第1の粘弾性体の周囲に設けられる複数のばねと、前記中板と前記上板との間に配置される粘弾性部材とを具備し、
前記粘弾性部材は、前記中板の上面に固定される受け部と、前記上板の下面に固定され、略水平方向に向けて形成される筒部と、前記筒部内に保持され、端部が前記受け部と接触する第2の粘弾性体と、を具備することを特徴とする計測装置。
【請求項2】
前記定盤は、6か所以上の前記除振装置により支持されることを特徴とする請求項1記載の計測装置。
【請求項3】
隣り合う前記除振装置の中板同士が、互いに連結梁によって連結され、前記連結梁は、端部が変形可能な薄板等で構成されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の計測装置。
【請求項4】
前記定盤は、樹脂製定盤、コンクリート製定盤、金属と樹脂との層構造の定盤、またはハニカム構造のハニカムコアに樹脂を充填した構造の定盤、のいずれかであり、前記定盤の振動の減衰比を金属定盤に対して高めたことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の計測装置。
【請求項5】
前記除振装置の下部には、複数の前記除振装置を全て水平に調整可能な複数のジャッキが設けられることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の計測装置。
【請求項6】
前記中板と前記上板の外縁部に対し側方を覆うように形成される断熱部材と、
前記中板、前記上板および前記断熱部材とで囲まれた空間内に配置されるヒータとをさらに具備することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の計測装置。
【請求項7】
前記空間内の温度を検知するセンサをさらに備え、前記センサによって測温された温度から前記空間内の温度を前記ヒータによって制御する温調部を具備することを特徴とする請求項6記載の除振装置。
【請求項8】
前記除振装置は平面視略矩形であり、少なくとも一部の前記除振装置の前記筒部は、前記除振装置の各辺に対して垂直または平行ではなく所定の角度をもって配置され、前記定盤の重心を中心として前記定盤が水平面上で回転動作をする際に、前記除振装置の前記筒部が、前記除振装置の位置における前記定盤の回転円の接線方向に向けて配置されることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれかに記載の計測装置。
【請求項9】
除振装置であって、
下部に設けられた空気ばね部と、上部に設けられた粘弾性体部と、を有し、
前記空気ばね部は、下板と、前記下板と対向する中板と、前記下板と前記中板との間を連結するように設けられる、空気ばねおよび前記空気ばねの周囲に設けられる複数のバランスばねと、を具備し、
前記粘弾性体部は、前記中板に対向する上板と、前記中板と前記上板との間を連結するように設けられる、第1の粘弾性体および前記第1の粘弾性体の周囲に設けられる複数のばねと、前記中板と前記上板との間に配置される粘弾性部材とを具備し、
前記粘弾性部材は、前記中板の上面に固定される受け部と、前記上板の下面に固定され、略水平方向に向けて形成される筒部と、前記筒部内に保持され、端部が前記受け部と接触する第2の粘弾性体と、を具備することを特徴とする除振装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−163426(P2012−163426A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−23594(P2011−23594)
【出願日】平成23年2月7日(2011.2.7)
【出願人】(000196587)西日本旅客鉄道株式会社 (202)
【出願人】(505184724)株式会社ユニロック (5)
【Fターム(参考)】