説明

記憶制御装置、画像形成装置および記憶制御方法

【課題】 不揮発性の記憶部に対し、データの確実な書き込みを確保し、システムの起動時間の遅延を抑える。
【解決手段】 不揮発性の記憶部7は、複数の分割記憶領域を有し、1組の分割記憶領域が無効記憶領域および有効記憶領域として同一の分割データを記憶する。カウント部15は記憶部7から読み出す回数をカウントする。記憶変更制御部17は、装置の動作停止状態が検出され、変更到達回数にそのカウント数が達したとき、無効記憶領域として設定された分割記憶領域以外の1組の分割記憶領域を無効記憶領域および有効記憶領域に変更制御する。記憶変更制御部17は、変更された1組の分割記憶領域において無効記憶領域に対して有効記憶領域の分割データを記憶制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は記憶制御装置、画像形成装置および記憶制御方法に係り、例えば電子写真方式の複写機、ファクシミリ機、プリンタ又はこれらの機能を搭載した複合機(MFP:Multi Function Peripheral)等の画像形成装置に用いて好適する記憶制御装置、当該画像形成装置および記憶制御方法の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の画像形成装置にあっては、一般に、原稿上の画像情報から画像データを光学的に読み取り、その画像データに基づきトナー像を形成して用紙に転写定着させて印刷する印刷(印字)機能の他、画像データをファクシミリ送受信するファクシミリ機能、その他種々の画像データ処理機能を有している。
【0003】
近年、画像形成装置に対する省電力化の要請から、所定期間動作させないとき、再起動に必要な構成要素へ電源電力を供給し続ける一方、それ以外の構成要素に対して電源電力の供給を遮断する省電力モードを搭載する例が多い。
【0004】
このような構成では、一層の省電力化を進めるために、動作プログラムを記憶した記憶部を含めて殆どの構成要素に対する電源電力供給を遮断する構成が求められている。
【0005】
このような構成においては、省電力モードから印刷ジョブの入力等によって通常モードに再起動する過程で、動作プログラム等が記憶部から読み出されるが、記憶部からの読み出し(リード)回数が大幅に増加する傾向にある。
【0006】
そして、動作プログラム等を記憶する記憶部として例えば不揮発性の半導体メモリを用いる場合、繰り返しリードを行うと不揮発メモリの記憶状況が劣化するため、一般的に、一定のリード回数、例えば1000回に1回の書き込み(ライト)を行うことが必要である。
【0007】
ところが、記憶部に対して動作プログラム等の書き直しを行っている最中に、停電やその他予期せぬ事態に起因して書き込みが不成立となると、最悪の場合、装置が二度と起動しなくなる心配があり、対策が望まれている。
【0008】
そこで、本出願人は、特願2011−52943号(特許文献1)をもって新規な記憶制御装置を提案した。
【0009】
この特許文献1は、複数に分割される分割記憶領域(ブロック)を有しデータがその分割記憶領域(ブロック)に分割記憶される記憶部であって、1組のそれら分割記憶領域(ブロック)が無効記憶領域および有効記憶領域として同一の分割データが記憶される不揮発性の記憶部と、記憶されたデータをその記憶部から読み出す回数をカウントするカウント部と、このカウント部によるカウント数が変更到達回数に達したとき、その無効記憶領域として設定された分割記憶領域以外の1組の分割記憶領域(ブロック)を無効記憶領域および有効記憶領域に変更設定制御するとともに、変更設定された1組の分割記憶領域(ブロック)において無効記憶領域に対して有効記憶領域の分割データを記憶制御する記憶変更制御部を有している。
【0010】
このような構成では、記憶制御装置を搭載したシステム例えば画像形成装置において、起動時に分割記憶領域(ブロック)をシフトすることにより、データの確実な書き込みを確保することが容易で信頼性が向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特願2011−52943号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上述した特許文献1は、画像形成装置の起動時に分割記憶領域(ブロック)をシフトしているため、ブロックシフト処理時間分だけ余分な起動時間を要し、装置が使用可能になるまでの時間が遅延する難点がある。
【0013】
本発明はそのような課題を解決するためになされたもので、データの確実な書き込みを確保することが容易で信頼性を向上させ、かつ起動時間の遅延を抑えた記憶制御装置、画像形成装置および記憶制御方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
そのような課題を解決するために本発明の請求項1に係る記憶制御装置は、複数に分割される分割記憶領域を有しデータがその分割記憶領域に分割記憶される記憶部であって、1組のそれら分割記憶領域が無効記憶領域および有効記憶領域として同一の分割データが記憶される不揮発性の記憶部と、記憶されたデータをその記憶部から読み出す回数をカウントするカウント部と、当該装置又はこれを搭載した電子機器の動作停止状態が検出されるとともに、予め設定された変更到達回数にカウント部によるカウント数が達したとき、その無効記憶領域として設定された分割記憶領域以外の1組の分割記憶領域を無効記憶領域および有効記憶領域に変更設定制御し、変更設定された1組の分割記憶領域において無効記憶領域に対して有効記憶領域の分割データを記憶制御する記憶変更制御部と、を具備している。
【0015】
本発明の請求項2に係る記憶制御装置は、上記記憶変更制御部が、その変更到達回数として所定の基準回数に至る前の近い回数に達したとき、それら変更設定制御および記憶制御をする構成である。
【0016】
本発明の請求項3に係る記憶制御装置は、上記記憶変更制御部が、その動作停止状態として動作エラー状態が検出されたとき、それら変更設定制御および記憶制御をする構成である。
【0017】
本発明の請求項4に係る記憶制御装置は、上記記憶変更制御部が、その動作停止状態として上記電子機器に対する外部からの操作指示入力が所定期間なされないことが検出されたとき、それら変更設定制御および記憶制御をする構成である。
【0018】
本発明の請求項5に係る画像形成装置は、それら請求項1〜4いずれか1項記載の記憶制御装置と、画像データを画像形成する画像形成部とを有する上記電子機器としての構成である。
【0019】
本発明の請求項6に係る記憶制御方法は、複数に分割される分割記憶領域を有しデータが分割記憶領域に分割記憶される不揮発性の記憶部について、その分割記憶領域を有効記憶領域としてデータを分散記憶するとともに、1組のそれら分割記憶領域を無効記憶領域および有効記憶領域として同一の分割データを記憶する記憶工程と、記憶されたデータを記憶部から読み出す回数をカウントするカウント工程と、当該装置又はこれを搭載した電子機器の動作停止状態が検出されるとともに、予め設定された変更到達回数にそのカウント部によるカウント数が達したとき、その無効記憶領域として設定された分割記憶領域以外の1組の分割記憶領域を無効記憶領域および有効記憶領域に変更設定制御し、変更設定された1組の分割記憶領域において無効記憶領域に対して有効記憶領域の分割データを記憶制御する記憶変更制御工程と、を具備している。
【0020】
本発明の請求項7に係る記憶制御方法は、上記記憶変更制御工程が、その変更到達回数として所定の基準回数に至る前の近い回数に達したとき、それら変更設定制御および記憶制御をする構成である。
【0021】
本発明の請求項8に係る記憶制御方法は、上記記憶変更制御工程が、その動作停止状態として動作エラー状態が検出されたとき、それら変更設定制御および記憶制御をする構成である。
【0022】
本発明の請求項9に係る記憶制御方法は、上記記憶変更制御工程が、その動作停止状態として上記電子機器に対する外部からの操作指示入力が所定期間なされないことが検出されたとき、それら変更設定制御および記憶制御をする構成である。
【発明の効果】
【0023】
このような本発明の請求項1、6に係る記憶制御装置および記憶制御方法では、記憶されたデータを記憶部から読み出す回数をカウントし、当該装置又はこれを搭載した電子機器の動作停止状態が検出されるとともに、そのカウント数が変更到達回数に達したとき、無効記憶領域として設定された分割記憶領域以外の1組の分割記憶領域を無効記憶領域および有効記憶領域に変更設定制御し、変更設定された1組の分割記憶領域において無効記憶領域に対して有効記憶領域の分割データを記憶制御するから、装置の起動時間の遅延を抑えることが容易であり、データの確実な書き込みを確保することが容易で信頼性も向上可能である。
【0024】
本発明の請求項2、7に係る記憶制御装置および記憶制御方法では、その変更到達回数として所定の基準回数に至る前の近い回数に達したとき、それら変更設定制御および前記記憶制御をするから、無効記憶領域として設定された分割記憶領域以外の1組の分割記憶領域を無効記憶領域および有効記憶領域に変更設定制御し、変更設定された1組の分割記憶領域において無効記憶領域に対して有効記憶領域の分割データを記憶制御することを、動作停止状態の発生時のタイミングで行う頻度が増加し、装置の起動時間の遅延を抑えることがさらに容易となる。
【0025】
本発明の請求項3、8に係る記憶制御装置および記憶制御方法では、その動作停止状態として動作エラー状態が検出されたとき、それら変更設定制御および前記記憶制御をするから、特にエラー状態が生じたとき、これに伴う動作停止期間を有効に利用してデータの確実な書き込み期間を確保することが容易で、装置の起動時間を長くさせ難い。
【0026】
本発明の請求項4、9に係る記憶制御装置および記憶制御方法では、その動作停止状態として電子機器に対する外部からの操作指示入力が所定期間なされないことが検出されたとき、それら変更設定制御および前記記憶制御をするから、操作者の不操作期間を有効に利用してデータの確実な書き込み期間を確保することが容易であり、装置の起動時間を長くさせ難い。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係る記憶制御装置を含む画像形成装置の実施の形態を示す概略ブロック図である。
【図2】本発明に係る記憶制御装置の動作を説明する図である。
【図3】本発明に係る記憶制御装置の動作を説明する図である。
【図4】本発明に係る記憶制御装置の動作を説明する図である。
【図5】本発明に係る記憶制御装置の動作を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明に係る記憶制御装置、画像形成装置および記憶制御方法の実施の形態を図面を参照して説明する。なお、本発明に係る記憶制御装置および記憶制御方法は画像形成装置を説明する過程で説明する。
【0029】
まず、本発明に係る記憶制御装置を含む本発明の画像形成装置Aを説明する。
図1は本発明の画像形成装置Aの実施の一形態を示す概略ブロック図である。
【0030】
画像形成装置Aは、主制御部1を中心にして画像読取部3、RAM(random access memory)5、不揮発性の記憶部7、操作パネル部9および印刷部11を有し、電子機器としての例えば複合機を構成している。なお、画像形成装置Aとしてはこれ以外にも種々の構成を有するが、本発明の要部ではないので説明および図示を省略する。
【0031】
主制御部1は、画像読取部3、RAM5、不揮発性の記憶部7、操作パネル部9および印刷部11を制御するものであるが、詳細は後述する。
【0032】
画像読取部3は、画像形成装置Aの図示しない本体ケースの上部等に配置され、主制御部1の制御の下、原稿画像の表示された原稿用紙から当該紙面の画像状態を光学的に読み込み、フィルタ処理等をして電子的画像データを生成するスキャナ部としての機能を有し、画像データを例えばRAM5等に記憶する。
【0033】
RAM5は、後述するように不揮発性の記憶部7に記憶された動作プログラム(データ)を読み出して記憶する他、主制御部1等の動作途中の処理データ等を一時的に記憶する機能を有する。
【0034】
不揮発性の記憶部7は、主制御部1の制御の下、主制御部1等を動作させる動作プログラムおよび操作パネル部9の動作画面(データ)等を記憶する読み書き可能な半導体メモリ、例えばフラッシュメモリ(商標)であり、図2および図3に示すように、複数に分割される分割記憶領域(ブロック)および個々の分割記憶領域の特徴を関連づけるフラグ領域を有している。
【0035】
しかも、不揮発性の記憶部7は、動作プログラム等のデータがそれら複数の分割記憶領域に分割記憶されるとともに、2個で1組の分割記憶領域には無効記憶領域および有効記憶領域として同一の分割データが記憶されるようになっている。
【0036】
それら各分割記憶領域は、当該画像形成装置の電源オフへの切換え時に電源供給が急激に低下する過程(ごく短期間)でも、分割データを記憶してその確保が可能な記憶容量に設定されている。
【0037】
フラグ領域は、個々の分割記憶領域の特徴、すなわち個々の分割記憶領域が有効記憶領域か無効記憶領域かの情報を設定する領域であり、いずれかの分割記憶領域にもデータの読み書きが可能であるが、無効記憶領域に設定された分割記憶領域は読み飛ばされるようになっている。分割記憶領域およびフラグ領域についての詳細は後述する。
【0038】
図2Aは、不揮発性の記憶部7について分割記憶領域(図では単に記憶領域と略す。)を1〜nまでn個確保するとともに、個々の分割記憶領域1〜nにはデータとしてのプログラムが分割プログラム(図では単にプログラムと略す。)1〜n−1に分割されて記憶された状態を示し、個々の分割記憶領域1〜nに関連づけたn個のフラグ領域には有効記憶領域と無効記憶領域(図では有効又は無効と略す。)が設定されている。
【0039】
分割記憶領域1、2の2個で1組となっており、初期設定として分割記憶領域1が無効記憶領域に、分割記憶領域2が有効記憶領域に設定され、無効記憶領域の分割記憶領域1に対して有効記憶領域の分割記憶領域2の分割プログラム1も記憶されている。1組の分割記憶領域1、2には同一の分割プログラム1が記憶されている。
【0040】
操作パネル部9は、画像形成装置Aの図示しない本体ケースの上部等に配置され、当該装置Aの動作状態を表示する表示部と、当該装置Aに対する操作指示および後述するアップデート指示の入力を外部から受ける操作入力部であり、主制御部1によって制御される。
【0041】
印刷部11は、画像形成装置Aの本体ケース内に配置され、用紙のセットされる給紙段から当該用紙を給紙し、RAM5の画像データに基づき画像形成してトナー像をその用紙に転写する画像形成部等を有している。
【0042】
主制御部1は、CPU(central processing unit)、このCPUの起動プログラムを格納したメモリ部、入出力インターフェース(いずれも図示せず。)を有し、上述した画像読取部3、RAM5、不揮発性の記憶部7、操作パネル部9および印刷部11を制御する機能の他、次の機能を有している。
【0043】
すなわち、主制御部1は、例えば5分間といった予め設定された所定の待機期間、外部から操作指示入力の有無を検出する機能を有する。
【0044】
主制御部1は、その検出に基づき、再起動に必要な起動構成要素(図示せず。)へ電源電力を供給制御し、画像読取部3、RAM5、不揮発性の記憶部7、操作パネル部9および印刷部11に対して電源電力の供給を遮断する省電力モードへの移行を制御する機能、更に、起動構成要素に対して入力指示等があったとき、通常モードに再起動する過程で、順次、画像読取部3、操作パネル部9および印刷部11等に電源を供給し、不揮発性の記憶部7を起動させて分割プログラム1〜n−1を読み出して全体の動作プログラムをRAM5に記憶させ、再起動制御する機能を有している。
【0045】
不揮発性の記憶部7から分割プログラムを読み出すとき、主制御部1は、無効記憶領域に設定された分割記憶領域を読み飛ばし制御する。
【0046】
なお、入力指示としては、図示はしないが、省電力モード下でも動作可能になっている例えば電源スイッチのオン操作、ネットワークを介した印刷ジョブの入力等がある。
【0047】
さらに、主制御部1は、動作停止検出部13、カウント部15および記憶変更制御部17としての機能も有している。
【0048】
動作停止検出部13は、動作停止状態として画像形成装置Aの動作エラー状態を検出する機能も有している。エラー状態とは、本発明の記憶制御装置、又は外部からの操作指示入力に基づく画像形成装置A自体の動作中に操作者からの誤った操作入力や装置が正常に動作しなくなって当該動作を中止する状態である。
【0049】
動作停止検出部13は、上述したような予め設定された待機期間、外部から操作指示入力の有無を検出する主制御部1の機能を受け持つ構成も可能である。
【0050】
要は、動作停止検出部13は、本発明に係る記憶制御装置又はこれを搭載した電子機器、例えば画像形成装置Aの動作停止状態を検出する機能であればよい。
【0051】
カウント部15は、不揮発性の記憶部7から動作プログラム等のデータを読み出す回数をカウントし、カウント数を一次的に記憶する機能を有している。
【0052】
記憶変更制御部17は、変更到達回数(基準回数としてのm回毎、例えば100回毎から10回を減算した値「90回、190回、290回、…」)を記憶しており、動作停止検出部13によって、画像形成装置Aの動作停止状態が検出されるとともに、カウント部15によるカウント数が変更到達回数に達した都度、無効記憶領域として設定された分割記憶領域以外の2個1組の分割記憶領域の一方を無効記憶領域に変更設定制御するとともに、変更された1組の分割記憶領域において一方の無効記憶領域に対して他方の有効記憶領域の分割プログラムを記憶制御する機能を有している。
【0053】
すなわち、記憶変更制御部17は、常時、動作停止検出部13を監視しており、エラー等によって動作停止が発生した状態下において、カウント数が変更到達回数である90回(190回、290回、…)に達していれば、無効記憶領域に設定された分割記憶領域に隣合う分割記憶領域を無効記憶領域として降順に変更設定制御するとともに、これと降順に隣合って組を形成する分割記憶領域の分割プログラムを、無効記憶領域に設定された分割記憶領域に記憶制御し、それまで無効記憶領域であった分割記憶領域を有効記憶領域に変更設定制御する機能を有している。
【0054】
なお、変更到達回数として、例えば100回から10回を減算する理由、すなわち基準回数に至る前の近い数とする理由は、無効記憶領域として設定された分割記憶領域以外の1組の分割記憶領域を無効記憶領域および有効記憶領域に変更設定制御し、変更設定された1組の分割記憶領域において無効記憶領域に対して有効記憶領域の分割データを記憶制御することを、動作停止状態の発生時のタイミングで行う頻度が増すためであり、変更到達回数が基準回数毎であってもよい。
【0055】
不揮発性の記憶部7が例えば図2Aのように設定されている状況の下で、装置が再起動されると、同図Bに示すように、分割記憶領域2が無効記憶領域に変更設定され、分割記憶領域1が有効記憶領域に変更されて分割プログラム1〜n−1が読み出される。この際、無効記憶領域の分割記憶領域2は読み飛ばされる。
【0056】
次いで、図2Cに示すように、分割記憶領域2、3を1組として、無効記憶領域に変更された分割記憶領域2に対して有効記憶領域である分割記憶領域3の分割プログラム2が記憶される。
【0057】
以降、図3A〜Fに示すように、分割記憶領域nまでそれらが降順で繰り返される。
【0058】
なお、1組の分割記憶領域において無効記憶領域に対して記憶する分割プログラムは、例えば読み出されてRAM5に記憶された分割プログラムを用いてなされる。
【0059】
しかも、記憶変更制御部17は、図4Aに示すように、降順最後の分割記憶領域が無効記憶領域に設定され、次のカウント数が90回に達した状態でエラー等の動作停止状態が発生すれば、同図Bに示すように、昇順で隣合う分割記憶領域を無効記憶領域として変更設定制御するとともに、それまで無効記憶領域であった分割記憶領域を有効記憶領域に変更設定制御する機能を有し、以降、同図C、Dのように昇順で繰り返し制御する。
【0060】
次に、本発明に係る記憶制御装置の動作を図5のフローチャートを参照して簡単に説明する。
【0061】
ここで、予め、図2Aに示すように、分割記憶領域1〜nに分割データとして分割プログラム1〜n−1が分割記憶されており、2個で1組の分割記憶領域1、2が初期設定として無効記憶領域と有効記憶領域に設定されるとともに同じ分割プログラム1が記憶されており(記憶工程)、カウント部15が読み出し回数をカウントしている(カウント工程)として説明する。
【0062】
画像形成装置Aのシステム起動中に、ステップS1にて当該装置の動作処理が実行されているとき、ステップS2において動作停止検出部13がエラー発生を検出したか否かを判別し(動作停止検出工程)、エラーが発生せずにステップS2がNOであれば、ジョブ待ちに移って終了する。
【0063】
エラー発生が検出されてステップS2がYESであれば、記憶変更制御部17がカウント部15のカウント値に基づき、変更到達回数「カウント回数>(次回基準回数−10)」に達したか否か判別し、達せずにステップS3がNOであれば、ジョブ待ちに移って終了する。
【0064】
カウント値が達していてステップS3がYESであれば、ステップS4にて書込回数から無効記憶領域が降順か昇順かを判別する。
【0065】
続くステップS5にて、記憶変更制御部17が、判別された降順又は昇順に沿って無効記憶領域を隣合う分割記憶領域に変更設定するとともにそれまでの無効記憶領域を有効記憶領域に変更設定し、ステップS6にて、記憶変更制御部17が、変更した無効記憶領域に対し隣合う分割記憶領域の分割データを記憶制御する(記憶変更制御工程)。
【0066】
続く、ステップS7にて、記憶変更制御部17が、次回の基準回数を”今回の基準回数+m”で更新し、次のジョブを待つ(記憶変更制御工程)。これらの処理がエラー発生の都度、実行される。
このような主要な処理が本発明の記憶制御方法を構成する。
【0067】
このように本発明の記憶制御装置は、複数に分割される分割記憶領域を有しプログラムが分割記憶領域に分割記憶される記憶部であって、1組の分割記憶領域が無効記憶領域および有効記憶領域として同一の分割プログラムが記憶される不揮発性の記憶部7と、記憶されたプログラムを記憶部7から読み出す回数をカウントするカウント部15と、当該装置又はこれを搭載した電子機器のエラー発生状態が検出されるとともに、予め設定された変更到達回数にそのカウント部15によるカウント数が達したとき、無効記憶領域として設定された分割記憶領域以外の1組の分割記憶領域を無効記憶領域および有効記憶領域に変更設定制御するとともに、変更された1組の分割記憶領域において無効記憶領域に対して有効記憶領域の分割プログラムを記憶制御する記憶変更制御部17とを具備している。
【0068】
そのため、無効記憶領域と有効記憶領域間の変更設定や無効記憶領域と有効記憶領域間の分割プログラムの変更記憶制御が、エラー発生時の動作停止期間、すなわち操作者がシステムを使用しないタイミングにおいて、不揮発性記憶部7の細分化された分割記憶領域に分割データがブロックシフトされ、起動時にはなされないから、装置やシステム起動時間の遅延を抑えることが容易である。
【0069】
また、不揮発性の記憶部7に対する動作プログラム等データの書き直し期間が短くなり、記憶過程で種々の事態に起因して書き込みが不成立となり難く、データの確実な書き込みを確保することが容易で、信頼性も向上する。
【0070】
さらに、その動作停止状態として電子機器に対する外部からの操作指示入力が所定期間なされないことが検出されたとき、それら変更設定制御および前記記憶制御すれば、操作者の不操作期間を有効に利用し、データの確実な書き込み期間を確保して速やかな起動が容易である。
【0071】
また、その変更到達回数として所定の基準回数に至る前の近い回数に達したとき、それら変更設定制御および前記記憶制御をするから、無効記憶領域として設定された分割記憶領域以外の1組の分割記憶領域を無効記憶領域および有効記憶領域に変更設定制御し、変更設定された1組の分割記憶領域において無効記憶領域に対して有効記憶領域の分割データを記憶制御することを、動作停止状態の発生時のタイミングで行う頻度が増す。従って、装置の起動時間の遅延を抑えることがさらに容易となる。
【0072】
そして、無効記憶領域に設定された分割記憶領域に隣合う分割記憶領域を無効記憶領域として、順次、降順又は昇順に変更設定制御するから、変更する有効記憶領域および無効記憶領域が分散せずに処理速度が低下せず、記憶データの連続性も保持し易い。
【0073】
また、本発明の記憶制御装置では、降順最後の分割記憶領域が無効記憶領域に設定され、次回のカウント数が変更到達回数に達したとき、順次、昇順に変更設定制御する構成も可能であり、分割記憶領域への書き込み記憶をエンドレスで継続実行可能である。
【0074】
さらにまた、本発明において、当該装置の電源オフ時にデータの記憶確保の可能な記憶容量として選定された分割記憶領域に対して処理をなす構成であるから、特に、記憶部7に対して動作プロラム等の書き直しを行っている過程で種々の事態に起因して書き込みが不成立となり難く、装置の起動確保が可能である。
【0075】
そして、上述した本発明の記憶制御装置では、隣合う2個の分割記憶領域を1組として順次変更設定する構成を説明したが、本発明では隣合う分割記憶領域を1組とする構成に限定されず、任意の分割記憶領域を1組として構成可能であり、上述したように処理速度を低下させ難い。
【0076】
ところで、画像形成装置Aにおいては、不揮発性の記憶部7に記憶された動作プログラム等のデータをアップデートする場合が多々あり、この際にもデータが不揮発性の記憶部7に書き直されるから、記憶部7の信頼性を確保する観点から、その書き直しを考慮してカウント数が変更到達回数に達したか否か判別することが好ましい。
【0077】
なお、アップデートは、アップグレード、バージョンアップ又はその他の名称で称呼される場合もある。
【0078】
図1において、外部記憶装置19は、記憶部7に記憶された動作プログラム等のデータに対するアップデート版が予め記憶されたものであり、例えばハードディスク(HDD)やUSB(universal serial bus)メモリである。
【0079】
主制御部1は、外部記憶装置19が接続されたとき、又は外部記憶装置19が接続された状態でパネル操作部9からアップデート指示が入力されたとき、外部記憶装置19内のアップデートデータを入力して記憶部7に記憶制御する機能を有している。
【0080】
カウント部15は、記憶部7の全領域がアップデートデータによって書き換えられたとき、読み出す回数のカウントに基づき、記憶変更制御部17にて扱う専用のカウント数として、前回の変更到達回数に達した時の基準回数からカウントし直すよう形成されている。
【0081】
すなわち、カウント部15は、例えば基準回数が「100」で、当初からの累積カウント数が「250」の時点で記憶部7のデータがアップデートデータされて書き換え記憶されたとき、「250」を「100」で割った値「2.5」のうち小数点以下を切り捨てて「100」を掛けて得た値「200」を専用のカウント数とし、このカウント数「200」からカウントし直すよう形成されている。
【0082】
上述した記憶変更制御部17は、専用のカウント数が「290(300−10)」になって変更到達回数に達したとき、無効記憶領域として設定された分割記憶領域以外の2個1組の分割記憶領域の一方を無効記憶領域に変更設定制御するとともに、変更された1組の分割記憶領域において一方の無効記憶領域に対して他方の有効記憶領域の分割プログラムを記憶制御する機能を有している。
【0083】
このような構成では、カウント数が変更到達回数の途中において記憶部7のデータがアップデートされても、カウント部15によるカウント数が戻されて基準回数で数え直されるから、アップデートされて直ぐに変更到達回数に到達することが少なくなる。
【0084】
そのため、記憶部7への読み出しタイミングを先に延ばすことが可能で、データのアップデートがあっても、不揮発性の記憶部7の信頼性を向上させることが容易である。
【0085】
そして、本発明に係る記憶制御装置において、変更到達回数に達したときカウント数を初期値「0」にリセットし直すようカウント部15を形成することも可能であり、このような構成では、カウント処理構成が簡単となる。
【0086】
もっとも、最初から読み出す回数の累積カウント数を別の用途に使用する場合もあるから、累積カウント数とは別個に、前回の基準回数から記憶変更制御専用にカウントし直し、変更到達回数に達する毎に無効記憶領域をブロックシフトさせて分割データを記憶制御する構成の方が好ましいかもしれない。
【0087】
要は、記憶部7に記憶されたデータがアップデートされて書き換え記憶されたとき、読み出す回数のカウントに基づき、基準回数でカウントし直すようカウント部15が形成されていれば、本発明の目的達成が可能である。
【0088】
また、本発明に係る画像形成装置および記憶制御方法は、上述した記憶制御装置と同様の効果を有し、複写機、ファクシミリ機、複合機等の画像形成装置の他、種々の電子機器において実施可能である。
【符号の説明】
【0089】
1 主制御部
3 画像読取部
5 RAM
7 記憶部
9 操作パネル部(入力部、画面表示部)
11 印刷部(画像形成部)
13 動作停止検出部
15 カウント部
17 記憶変更制御部
19 外部記憶装置
A 画像形成装置(電子機器)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数に分割される分割記憶領域を有しデータが前記分割記憶領域に分割記憶される不揮発性の記憶部であって、1組の前記分割記憶領域が無効記憶領域および有効記憶領域として同一の分割データが記憶される不揮発性の記憶部と、
記憶された前記データを前記記憶部から読み出す回数をカウントするカウント部と、
当該装置又はこれを搭載した電子機器の動作停止状態が検出されるとともに、予め設定された変更到達回数に前記カウント部によるカウント数が達したとき、無効記憶領域として設定された前記分割記憶領域以外の1組の前記分割記憶領域を無効記憶領域および有効記憶領域に変更設定制御し、変更設定された1組の前記分割記憶領域において無効記憶領域に対して有効記憶領域の前記分割データを記憶制御する記憶変更制御部と、
を具備することを特徴とする記憶制御装置。
【請求項2】
前記記憶変更制御部は、前記変更到達回数として所定の基準回数に至る前の近い回数に達したとき、前記変更設定制御および前記記憶制御をする請求項1記載の記憶制御装置。
【請求項3】
前記記憶変更制御部は、前記動作停止状態として動作エラー状態が検出されたとき、前記変更設定制御および前記記憶制御をする請求項1又は2記載の記憶制御装置。
【請求項4】
前記記憶変更制御部は、前記動作停止状態として前記電子機器に対する外部からの操作指示入力が所定期間なされないことが検出されたとき、前記変更設定制御および前記記憶制御をする請求項1又は2項記載の記憶制御装置。
【請求項5】
前記請求項1〜4いずれか1項記載の記憶制御装置と、画像データを画像形成する画像形成部とを有する前記電子機器としての画像形成装置。
【請求項6】
複数に分割される分割記憶領域を有しデータが前記分割記憶領域に分割記憶される不揮発性の記憶部ついて、前記分割記憶領域を有効記憶領域として前記データを分散記憶するとともに、1組の前記分割記憶領域を無効記憶領域および有効記憶領域として同一の分割データを記憶する記憶工程と、
記憶された前記データを前記記憶部から読み出す回数をカウントするカウント工程と、
当該装置又はこれを搭載した電子機器の動作停止状態が検出されるとともに、予め設定された変更到達回数に前記カウント部によるカウント数が達したとき、無効記憶領域として設定された前記分割記憶領域以外の1組の前記分割記憶領域を無効記憶領域および有効記憶領域に変更設定制御し、変更設定された1組の前記分割記憶領域において無効記憶領域に対して有効記憶領域の前記分割データを記憶制御する記憶変更制御工程と、
を具備することを特徴とする記憶制御方法。
【請求項7】
前記記憶変更制御工程は、前記変更到達回数として所定の基準回数に至る前の近い回数に達したとき、前記変更設定制御および前記記憶制御をする請求項6記載の記憶制御方法。
【請求項8】
前記記憶変更制御工程は、前記動作停止状態として動作エラー状態が検出されたとき、前記変更設定制御および前記記憶制御をする請求項6又は7記載の記憶制御方法。
【請求項9】
前記記憶変更制御工程は、前記動作停止状態として前記電子機器に対する外部からの操作指示入力が所定期間なされないことが検出されたとき、前記変更設定制御および前記記憶制御をする請求項6又は7記載の記憶制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−50835(P2013−50835A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−188072(P2011−188072)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000006150)京セラドキュメントソリューションズ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】