記憶装置およびその制御方法
【課題】磁性膜の磁気情報値を高い確率で読み出すことができる記憶装置およびその制御方法を提供する。
【解決手段】電磁コイル53に第1電流値の電流が供給される。磁区制御膜35、35の間では磁気抵抗効果膜34に所定の強度のバイアス磁界が作用する。このとき、記憶媒体14上の磁性膜65の特定域で磁気情報値の識別に失敗すると、電磁コイル53に第1電流値よりも小さい第2電流値の電流が供給される。バイアス磁界は減少する。その結果、磁気抵抗効果膜34では磁化の向きが変化しやすくなる。再生信号の出力の感度は高まる。こうして、劣化した磁気情報値を有する特定域の磁性膜65から磁気情報値の識別に成功することができる。こうした記憶装置11では磁気情報値は高い確率で読み出されることができる。
【解決手段】電磁コイル53に第1電流値の電流が供給される。磁区制御膜35、35の間では磁気抵抗効果膜34に所定の強度のバイアス磁界が作用する。このとき、記憶媒体14上の磁性膜65の特定域で磁気情報値の識別に失敗すると、電磁コイル53に第1電流値よりも小さい第2電流値の電流が供給される。バイアス磁界は減少する。その結果、磁気抵抗効果膜34では磁化の向きが変化しやすくなる。再生信号の出力の感度は高まる。こうして、劣化した磁気情報値を有する特定域の磁性膜65から磁気情報値の識別に成功することができる。こうした記憶装置11では磁気情報値は高い確率で読み出されることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばハードディスク駆動装置(HDD)といった記憶装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
HDDでは磁気ディスク上にヘッドスライダが浮上する。ヘッドスライダには電磁変換素子が埋め込まれる。磁気ディスクの磁性膜には「1」や「0」といった磁気情報値が記録される。磁性膜から電磁変換素子に作用する磁界に基づき電磁変換素子は磁気情報値を読み出す。同様に、電磁変換素子から磁性膜に作用する記録磁界に基づき磁性膜に磁気情報値が書き込まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−303097号公報
【特許文献2】特開2007−287190号公報
【特許文献3】特開昭62−95711号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
記録密度の高まりに伴ってヘッドスライダの浮上量は減少する傾向にある。その結果、ヘッドスライダが磁気ディスクの表面に接触する可能性が高まる。ヘッドスライダが磁気ディスクの表面に接触すると、摩擦の熱や圧力により磁性膜の記録磁化が減少し、磁性膜から電磁変換素子に作用する磁界の強度は弱められてしまう。強度が弱まりすぎると、電磁変換素子では磁性膜から磁気情報値を読み出せないといった不具合が生じる。
【0005】
本発明は、上記実状に鑑みてなされたもので、磁性膜の磁気情報値を高い確率で読み出すことができる記憶装置およびその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、開示の記憶装置の制御方法の一具体例は、磁気抵抗効果膜を挟み込む1対の磁区制御膜に磁気的に結合される電磁コイルに第1電流値の電流を供給し、前記磁気抵抗効果膜に基づき記憶媒体上の磁性膜から磁気情報値を識別する工程と、前記磁性膜の特定域で前記磁気情報値の識別に失敗すると、前記電磁コイルに前記第1電流値よりも小さい第2電流値の電流を供給し、前記磁区制御膜同士の間で前記磁気抵抗効果膜に作用するバイアス磁界を減少させる工程と、前記第2電流値を維持しつつ前記磁気抵抗効果膜に基づき前記特定域の前記磁性膜から磁気情報値を識別する工程とを備えることを特徴とする。
【0007】
こうした記憶装置の制御方法によれば、電磁コイルに第1電流値の電流が供給される。磁区制御膜の間では磁気抵抗効果膜に所定の強度のバイアス磁界が作用する。このとき、記憶媒体上の磁性膜の特定域で磁気情報値の識別に失敗すると、電磁コイルに第1電流値よりも小さい第2電流値の電流が供給される。バイアス磁界は減少する。その結果、磁気抵抗効果膜では磁化の向きが変化しやすくなる。再生信号の出力の感度は高まる。こうして、劣化した磁気情報値を有する特定域の磁性膜から磁気情報値の識別に成功することができる。こうして記憶装置では磁気情報値は高い確率で読み出されることができる。
【0008】
上記目的を達成するために、開示の記憶装置の一具体例は、磁性膜で磁気情報値を保持する記憶媒体と、媒体対向面で前記記憶媒体に向き合うヘッドスライダと、前記媒体対向面に組み込まれて、前記磁気情報値の識別に基づき抵抗を変化させる磁気抵抗効果膜と、軟磁性材料から形成されて前記媒体対向面に沿って前記磁気抵抗効果膜を挟み込み、前記磁気抵抗効果膜にバイアス磁界を作用させる1対の磁区制御膜と、前記磁区制御膜に磁気的に結合され、供給される電流の電流値に応じて前記磁区制御膜同士の間で所定の強度の前記バイアス磁界を発生させる電磁コイルと、前記電磁コイルに接続されて、前記磁気情報値の識別の失敗時に前記電磁コイルに供給される電流の電流値を減少させる制御回路とを備えることを特徴とする。
【0009】
こうした記憶装置によれば、電磁コイルに第1電流値の電流が供給される。磁区制御膜の間では磁気抵抗効果膜に所定の強度のバイアス磁界が作用する。このとき、記憶媒体上の磁性膜の特定域で磁気情報値の識別に失敗すると、制御回路は、電磁コイルに第1電流値よりも小さい第2電流値の電流を供給する。バイアス磁界は減少する。その結果、磁気抵抗効果膜では磁化の向きが変化しやすくなる。再生信号の出力の感度は高まる。こうして、劣化した磁気情報値を有する特定域の磁性膜から磁気情報値の識別に成功することができる。こうした記憶装置では磁気抵抗効果膜は高い確率で磁気情報値を読み出すことができる。
【発明の効果】
【0010】
以上のように開示の記憶装置およびその制御方法によれば、磁性膜の磁気情報値を高い確率で読み出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る記憶装置の一具体例すなわちハードディスク駆動装置(HDD)の内部構造を概略的に示す平面図である。
【図2】一具体例に係る浮上ヘッドスライダを概略的に示す拡大斜視図である。
【図3】媒体対向面から観察される電磁変換素子を概略的に示す電磁変換素子の正面図である。
【図4】図3の4−4線に沿った断面図である。
【図5】トンネル接合磁気抵抗効果膜の構造を概略的に示す拡大正面図である。
【図6】図5の6−6線に沿った断面図であり、本発明の第1実施形態に係る読み出し素子の構造を概略的に示す。
【図7】浮上ヘッドスライダに搭載される電磁変換素子およびヒータに関連してHDDの制御系を概略的に示すブロック図である。
【図8】読み出し素子で磁気ディスクの記録磁性膜から磁気情報値を識別する様子を概略的に示す断面図である。
【図9】制御回路の処理の流れを示すフローチャートである。
【図10】読み出し素子で磁気ディスクの記録磁性膜から磁気情報値を識別する様子を概略的に示す断面図である。
【図11】図6に対応し、本発明の第2実施形態に係る読み出し素子の構造を概略的に示す断面図である。
【図12】浮上ヘッドスライダに搭載される電磁変換素子およびヒータに関連してHDDの制御系を概略的に示すブロック図である。
【図13】読み出し素子で電磁コイルにバイアス電流が供給される様子を概略的に示す断面図である。
【図14】読み出し素子で電磁コイルにバイアス電流が供給される様子を概略的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照しつつ本発明の一実施形態を説明する。
【0013】
図1は本発明に係る記憶装置の一具体例すなわちハードディスク駆動装置(HDD)11の内部構造を概略的に示す。このHDD11は筐体すなわちハウジング12を備える。ハウジング12は箱形のベース13およびカバー(図示されず)から構成される。ベース13は例えば平たい直方体の内部空間すなわち収容空間を区画する。カバーはベース13の開口に結合される。カバーとベース13との間で収容空間は密閉される。
【0014】
収容空間には、記憶媒体としての1枚以上の磁気ディスク14が収容される。磁気ディスク14はスピンドルモータ15の駆動軸に装着される。スピンドルモータ15は例えば4200rpmや5400rpm、7200rpm、10000rpm、15000rpmといった高速度で磁気ディスク14を回転させることができる。ここでは、例えば磁気ディスク14は垂直磁気記録ディスクに構成される。
【0015】
収容空間にはキャリッジ16がさらに収容される。キャリッジ16はキャリッジブロック17を備える。キャリッジブロック17は、垂直方向に延びる支軸18に回転自在に連結される。キャリッジブロック17には支軸18から水平方向に延びる複数のキャリッジアーム19が区画される。
【0016】
個々のキャリッジアーム19の先端にはヘッドサスペンション21が取り付けられる。ヘッドサスペンション21にはフレキシャが貼り付けられる。フレキシャ上には浮上ヘッドスライダ22が搭載される。フレキシャの働きで浮上ヘッドスライダ22はヘッドサスペンション21に対して姿勢を変化させることができる。浮上ヘッドスライダ22には磁気ヘッドすなわち電磁変換素子が搭載される。
【0017】
磁気ディスク14の回転に基づき磁気ディスク14の表面で気流が生成されると、気流の働きで浮上ヘッドスライダ22には正圧すなわち浮力および負圧が作用する。浮力および負圧とヘッドサスペンション21の押し付け力とが釣り合うことで磁気ディスク14の回転中に比較的に高い剛性で浮上ヘッドスライダ22は浮上し続けることができる。
【0018】
キャリッジブロック17には例えばボイスコイルモータ(VCM)23といった動力源が接続される。このVCM23の働きでキャリッジブロック17は支軸18回りで回転することができる。こうしたキャリッジブロック17の回転に基づきキャリッジアーム19およびヘッドサスペンション21の揺動は実現される。
【0019】
浮上ヘッドスライダ22の浮上中にキャリッジアーム19が支軸18回りで揺動すると、浮上ヘッドスライダ22は磁気ディスク14の半径線に沿って移動することができる。その結果、浮上ヘッドスライダ22上の電磁変換素子は最内周記録トラックと最外周記録トラックとの間でデータゾーンを横切ることができる。こうして浮上ヘッドスライダ22上の電磁変換素子は目標の記録トラック上に位置決めされる。
【0020】
図2は一具体例に係る浮上ヘッドスライダ22を示す。この浮上ヘッドスライダ22は、例えば平たい直方体に形成される基材すなわちスライダ本体25を備える。スライダ本体25の空気流出側端面には絶縁性の非磁性膜すなわち素子内蔵膜26が積層される。スライダ本体25は例えばAl2O3−TiC(アルチック)といった硬質の非磁性材料から形成される。素子内蔵膜26は例えばAl2O3(アルミナ)といった比較的に軟質の絶縁非磁性材料から形成される。浮上ヘッドスライダ22は媒体対向面すなわち浮上面27で磁気ディスク14に向き合う。
【0021】
素子内蔵膜26には電磁変換素子28が埋め込まれる。電磁変換素子28は例えば読み出し素子と書き込み素子とを備える。電磁変換素子28は素子内蔵膜26の表面に読み出し素子の読み出しギャップや書き込み素子の書き込みギャップを臨ませる。ただし、素子内蔵膜26の表面には硬質の保護膜が形成されてもよい。こういった硬質の保護膜は素子内蔵膜26の表面で露出する読み出しギャップや書き込みギャップを覆う。保護膜には例えばDLC(ダイヤモンドライクカーボン)膜が用いられればよい。
【0022】
図3に示されるように、読み出し素子31では、上下1対の導電層すなわち下部電極32および上部電極33にトンネル接合磁気抵抗効果膜34が挟み込まれる。下部電極32および上部電極33は例えばFeN(窒化鉄)やNiFe(ニッケル鉄)、NiFeB(ニッケル鉄ボロン)、CoFeB(コバルト鉄ボロン)といった高透磁率材料から形成されればよい。こうして下部電極32および上部電極33は下部シールド層および上部シールド層として機能することができる。その結果、下部電極32および上部電極33の間隔は磁気ディスク14上で記録トラックのダウントラック方向に磁気記録の分解能を決定する。
【0023】
同時に、下部電極32および上部電極33の間には1対の磁区制御膜35が配置される。トンネル接合磁気抵抗効果膜34は浮上面27に沿って磁区制御膜35、35同士の間に配置される。磁区制御膜35は軟磁性材料から形成される。磁区制御膜35は浮上面27に沿って一方向にバイアス磁界を確立する。磁区制御膜35と下部電極32との間、および、磁区制御膜35とトンネル接合磁気抵抗効果膜34との間には絶縁膜36が挟み込まれる。絶縁膜36は例えばAl2O3から形成される。磁区制御膜35は下部電極32およびトンネル接合磁気抵抗効果膜34から絶縁される。したがって、たとえ磁区制御膜35が導電性を有していても、上部電極33と下部電極32との間ではトンネル接合磁気抵抗効果膜34のみで導通が確立される。
【0024】
書き込み素子37すなわち単磁極ヘッドは、浮上面27で先端面を露出する主磁極38および補助磁極39を備える。浮上面27で補助磁極39のリーディング端にはトレーリングシールド41が区画される。トレーリングシールド41は主磁極38に向き合わせられる。主磁極38および補助磁極39は例えばFeNやNiFe、NiFeB、CoFeBといった磁性材料から形成される。図4を併せて参照し、補助磁極39の後端は主磁極38に磁性連結片42で接続される。磁性連結片42周りで磁気コイルすなわち薄膜コイルパターン43が形成される。こうして主磁極38、補助磁極39および磁性連結片42は、薄膜コイルパターン43の中心位置を貫通する磁性コアを形成する。書き込み素子37では薄膜コイルパターン43の働きで記録磁界が生成される。この記録磁界の働きで磁気ディスク14の記録磁性膜に「1」または「0」の磁気情報値が書き込まれる。
【0025】
読み出し素子31および書き込み素子37の間にはヒータ44が組み込まれる。ヒータ44は例えば電熱線から形成される。電熱線は例えばW(タングステン)から形成される。ヒータ44にヒータ電流が供給されると、ヒータ44は発熱する。ヒータ44の熱でヒータ44とともに読み出し素子31や書き込み素子37、素子内蔵膜26は熱膨張する。その結果、浮上面27で素子内蔵膜26やスライダ本体25は隆起する。いわゆる突き出しが形成される。こうした突き出しに基づき読み出し素子31および書き込み素子37は磁気ディスク14に向かって変位する。こうした変位に基づき浮上ヘッドスライダ22すなわち電磁変換素子28の浮上量は調整される。
【0026】
図5は一具体例に係るトンネル接合磁気抵抗効果膜34の構造を概略的に示す。このトンネル接合磁気抵抗効果膜34ではいわゆるボトム型の積層構造が確立される。トンネル接合磁気抵抗効果膜34は、下部電極32上に広がる下地層45を備える。下地層45は例えばTa(タンタル)から形成される。下地層45の表面にはピンニング層46が重ね合わせられる。ピンニング層46は反強磁性層から形成される。ここでは、ピンニング層46はIrMn(イリジウムマンガン)合金から形成される。
【0027】
ピンニング層46の表面にはピンド層47が重ね合わせられる。ピンド層47は強磁性層から形成される。ここでは、ピンド層47はCoFe(コバルト鉄)合金から形成される。ピンド層47とピンニング層46との間には交換結合が確立される。この交換結合の働きでピンド層47の磁化は所定の方向に固定される。ピンド層47の表面にはトンネルバリア層48が重ね合わせられる。トンネルバリア層48は絶縁材料から形成される。ここでは、トンネルバリア層48はMgO(酸化マグネシウム)から形成される。
【0028】
トンネルバリア層48の表面にはフリー層49が重ね合わせられる。フリー層49は強磁性層から形成される。ここでは、フリー層49はCoFeB層から形成される。フリー層49は、磁界の作用に応じて磁化方向の変化を許容する。フリー層49では前述のバイアス磁界の働きで磁化の向きは揃えられる。フリー層49の表面にはキャップ層51が重ね合わせられる。キャップ層51は例えば非磁性金属から形成される。ここでは、キャップ層51はTa(タンタル)層で形成される。キャップ層51には前述の上部電極44が重ね合わせられる。
【0029】
図6は本発明の第1実施形態に係る読み出し素子31の構造を概略的に示す。この読み出し素子31では、浮上面27から後方で磁区制御膜35、35は相互に連結される。磁区制御膜35、35周りに電磁コイル53が形成される。こうして電磁コイル53は磁区制御膜35、35に磁気的に結合される。電磁コイル53に電流が供給されると、磁区制御膜35、35同士の間では浮上面27に沿って一方向にバイアス磁界が確立される。このバイアス磁界がトンネル接合磁気抵抗効果膜34のフリー層49に作用すると、フリー層49では所定の方向に磁化の向きが揃えられる。
【0030】
磁気情報値の読み出しにあたって、トンネル接合磁気抵抗効果膜34には一方向にバイアス磁界が作用する。このとき、トンネル接合磁気抵抗効果膜34には記録再生用バイアス電圧が加えられる。記録再生用バイアス電圧は上部電極33および下部電極32の間でトンネル接合磁気抵抗効果膜34に加えられる。フリー層49には磁気ディスク14の記録磁性膜から漏れ出る磁界が作用する。この磁界の向きに応じてトンネル接合磁気抵抗効果膜34に流れるトンネル電流の変化が引き起こされる。トンネル電流の変化は再生信号を構成する。こういった変化に応じて記録磁性膜から磁気情報値が読み出される。
【0031】
図7に示されるように、HDD11は制御回路(ハードディスクコントローラ)55を備える。制御回路55は、例えばキャリッジブロック17上に実装されるヘッドIC(集積回路)56に接続される。ヘッドIC56には書き込み電流供給回路57、プリアンプ回路58、バイアス電流供給回路59およびヒータ電流供給回路61が組み込まれる。ヘッドIC56には浮上ヘッドスライダ22に接続される。制御回路55は所定のソフトウェアプログラムに従って書き込み電流供給回路57、プリアンプ回路58、バイアス電流供給回路59およびヒータ電流供給回路61の動作を制御する。ソフトウェアプログラムは例えばメモリ62に格納されればよい。
【0032】
書き込み電流供給回路57は書き込み素子37に接続される。書き込み電流供給回路57から書き込み素子37の薄膜コイルパターン43に書き込み電流が供給される。供給された書き込み電流に基づき書き込み素子37で記録磁界が生成される。プリアンプ回路58は読み出し素子31に接続される。プリアンプ回路58から読み出し素子31に記録再生用バイアス電圧が加えられる。バイアス電流供給回路59は電磁コイル53に接続される。バイアス電流供給回路59は電磁コイル53にバイアス電流を供給する。ヒータ電流供給回路61はヒータ44に接続される。ヒータ電流供給回路61はヒータ44に所定のヒータ電流を供給する。ヒータ電流の供給に応じてヒータ44は発熱する。
【0033】
制御回路55はヘッドIC56に対して書き込み電流や記録再生用バイアス電圧、バイアス電流、ヒータ電流の供給を指示する。記録再生用バイアス電圧の電圧値は一定に設定される。同時に、制御回路55はトンネル接合磁気抵抗効果膜34に流れるトンネル電流を検知する。検知に先立ってプリアンプ回路58はトンネル電流を増幅する。制御回路55はプリアンプ回路58の出力に基づき磁気情報値を識別する。さらに、制御回路55はバイアス電流の電流値を制御する。バイアス電流の電流値の増減に応じて磁区制御膜35、35同士の間で確立されるバイアス磁界の強弱が調整される。例えばバイアス電流の電流値が小さく設定されるにつれてバイアス磁界の強度は減少する。
【0034】
書き込み電流や記録再生用バイアス電圧、バイアス電流、ヒータ電流の供給にあたって、浮上ヘッドスライダ22の空気流出側端面には複数の端子63a〜63gが形成される。書き込み電流用に端子63a、63bが用いられる。記録再生用バイアス電圧用に端子63c、63dが用いられる。バイアス電流用に端子63e、63fが用いられる。ヒータ電流用に端子63g、63fが用いられる。端子63eは電磁コイル53に個別に接続される。端子63eから電磁コイル53に流れ込むバイアス電流は端子63fから流れ出る。端子63gはヒータ44に個別に接続される。端子63gからヒータ44に流れ込むヒータ電流は端子63fから流れ出る。こうして端子63fはバイアス電流の供給とヒータ電流の供給とに共通に用いられる。その結果、浮上ヘッドスライダ22で端子の数の増大は抑制される。
【0035】
いま、磁気ディスク14の記録磁性膜で磁気情報値を復旧する場面を想定する。図8に示されるように、浮上ヘッドスライダ22は浮上面27で磁気ディスク14の表面に向き合う。磁気ディスク14は、基板上に積層される軟磁性の裏打ち層64と、裏打ち層64の表面に積層される記録磁性膜65とを備える。記録磁性膜65では基板の表面に直交する垂直方向に磁化容易軸が確立される。書き込み素子37から作用する記録磁界に基づき記録磁性膜65では上向きの磁化または下向きの磁化が確立される。上向きの磁化および下向きの磁化は磁気情報値の「1」および「0」のいずれかに対応する。
【0036】
まず、磁気情報値の識別にあたって電磁コイル53には所定の第1電流値のバイアス電流が供給される。ここでは、第1電流値は基準値に設定される。同時に、第1電流値は最大値に設定される。磁区制御膜35、35同士の間では第1強度のバイアス磁界が生成される。同時に、トンネル接合磁気抵抗効果膜34には記録再生用バイアス電圧が加えられる。バイアス磁界は一方向にトンネル接合磁気抵抗効果膜34に作用する。その一方で、磁気ディスク14の記録磁性膜65から漏れ出る磁界はトンネル接合磁気抵抗効果膜34に作用する。磁界の作用に応じてフリー層49では磁化の向きが変化する。トンネル接合磁気抵抗効果膜34を流れるトンネル電流の変化が引き起こされる。トンネル電流の変化は再生信号を構成する。制御回路55は、図9のステップS1で、記録磁性膜65から磁気情報値の識別に成功する。こうして磁気情報値は高い確率で読み出されることができる。
【0037】
図10に示されるように、例えば浮上ヘッドスライダ22の突き出しとの接触に基づく摩擦の熱や圧力の影響で、磁気ディスク14の特定域の記録磁性膜65で磁化が減少する場合がある。磁化の減少に基づき特定域の記録磁性膜65から漏れ出る磁界の強度は弱まる。すなわち、記録磁性膜65で保持される磁気情報値は劣化する。したがって、読み出し素子31が特定域で磁気ディスク14の表面に向き合うと、磁化の減少に基づきトンネル接合磁気抵抗効果膜34に作用する磁界は弱まる。その結果、フリー層49では磁化の向きの変化は減少する。トンネル電流の変化量は減少してしまう。磁界の強度が制御回路55の識別可能なレベルを下回ると、制御回路55はステップS1で磁気情報値の識別に失敗する。
【0038】
制御回路55は、ステップS2で、電磁コイル53に第1電流値よりも小さい第2電流値のバイアス電流を供給する。磁区制御膜35、35同士の間ではバイアス磁界の強度は減少する。その結果、磁界の強度が小さくてもフリー層49で磁化の向きは変化しやすくなる。このとき、第2電流値の維持時に制御回路55は磁気情報値を再び識別する。前述と同様に、磁界の強度が制御回路55の識別可能なレベルを下回ると、制御回路55はステップS3で磁気情報値の識別に失敗する。制御回路55は、ステップS4で、第2電流値よりも小さいバイアス電流を設定することができるか判断する。ステップS4で、第2電流値よりも小さい電流値のバイアス電流の設定が可能と判断されると、処理はステップS2に戻る。ステップS2で第2電流値よりも小さい第3電流値が設定される。その後、ステップS3から処理が繰り返される。その一方で、ステップS4で、第2電流値より小さい電流値のバイアス電流の設定が不可能と判断されると、処理はエラー終了する。なお、バイアス電流の電流値の下限値はバイアス磁界の強度の下限値に基づき予め設定されればよい。
【0039】
その一方で、ステップS3で、第2電流値の維持時に磁界の強度が制御回路55の識別可能なレベルを上回ると、制御回路55は磁気情報値の識別に成功する。処理はステップS5に進む。ステップS5で、制御回路55は書き込み素子37の薄膜コイルパターン43に書き込み電流を供給する。書き込み素子37は磁気ディスク14上で前述の特定域の記録磁性膜65上に位置決めされる。書き込み素子37の主磁極から特定域の記録磁性膜65に向かって記録磁界が漏れ出る。漏れ出る記録磁界は記録磁性膜65に作用する。記録磁性膜65には、記録磁性膜65の表面に直交する垂直方向に記録磁界が誘導される。記録磁界は裏打ち層64から書き込み素子37の補助磁極39に循環する。こうした記録磁界の循環に基づき記録磁性膜65では前述の磁気情報値が上書きされる。その結果、特定域の記録磁性膜65では磁気情報値の磁界の強度は所定のレベルに復帰する。
【0040】
その後、ステップS6で、制御回路55はバイアス電流の電流値を第1電流値に設定する。ステップS7で、第1電流値を維持しつつ制御回路55は磁気情報値の識別を改めて実施する。読み出し素子31は前述の特定域の記録磁性膜65に向き合う。ステップS7で、制御回路55が磁気情報値の識別に成功すると、特定域の記録磁性膜65で磁気情報値の復旧は完了する。その一方で、ステップS7で、制御回路55が磁気情報値の識別に失敗すると、処理はステップS8に進む。読み出し素子31は前述の特定域とは別の領域の記録磁性膜65に向き合う。この別の領域の記録磁性膜65にステップS3で識別に成功した磁気情報値が書き込まれる。こうして特定域の記録磁性膜65に書き込まれた磁気情報値は別の領域の記録磁性膜65に書き込まれる。その結果、磁気情報値の復旧は完了する。
【0041】
以上のようなHDD11では、磁気ディスク14の特定域の記録磁性膜65で磁気情報値が劣化しても、バイアス磁界の強度の減少に基づきトンネル接合磁気抵抗効果膜34では磁化の向きが変化しやすくなる。トンネル接合磁気抵抗効果膜34は再生信号の出力の感度を高めることができる。その結果、制御回路55は、劣化した磁気情報値を有する特定域の記録磁性膜65で磁気情報値の識別に成功することができる。磁気情報値は高い確率で読み出されることができる。しかも、特定域の記録磁性膜65で磁気情報値が上書きされることから、特定域の記録磁性膜65から漏れ出る磁界の強度は十分に復旧する。その結果、特定域の記録磁性膜65で磁気情報値は高い確率で維持される。こうして磁気ディスク14上では高い精度で磁気情報値が保持される。磁気情報値の読み出し時の読み出しエラーは飛躍的に抑制される。
【0042】
図11は本発明の第2実施形態に係る読み出し素子31aの構造を概略的に示す。この読み出し素子31aでは、トンネル接合磁気抵抗効果膜34は浮上面27に沿って2対の第1磁区制御膜71、71および第2磁区制御膜72、72に挟み込まれる。第1磁区制御膜71、71同士は相互に連結される。第2磁区制御膜72、72同士は相互に連結される。第1磁区制御膜71、71周りで第1電磁コイル73が形成される。こうして第1電磁コイル73は第1磁区制御膜71に磁気的に結合される。同様に、第2磁区制御膜72、72周りで第2電磁コイル74が形成される。こうして第2電磁コイル74は第2磁区制御膜72に磁気的に結合される。
【0043】
第1磁区制御膜71の一端は浮上面27に沿ってトンネル接合磁気抵抗効果膜34の側面に向き合う。第2磁区制御膜72の一端は第1磁区制御膜71より浮上面27から遠ざかる後方でトンネル接合磁気抵抗効果膜34の側面に向き合う。その一方で、第2磁区制御膜72の他端は浮上面27に沿ってトンネル接合磁気抵抗効果膜34の側面に向き合う。第1磁区制御膜71の他端は第2磁区制御膜72より浮上面27から遠ざかる後方でトンネル接合磁気抵抗効果膜34の側面に向き合う。こうして第1磁区制御膜71、71および第2磁区制御膜72、72は相互に前後逆にトンネル接合磁気抵抗効果膜34の側面に向き合う。その他、前述と均等な構成や構造には同一の参照符号が付される。
【0044】
図12に示されるように、第1電磁コイル73および第2電磁コイル74には前述のバイアス電流供給回路59から個別にバイアス電流が供給される。供給にあたって、第1電磁コイル73用に端子75aおよび前述の端子63fが用いられる。第2電磁コイル74用に端子75bおよび前述の端子63fが用いられる。すなわち、バイアス電流は端子75aから第1電磁コイル73に流れ込んで端子63fから流れ出る。同様に、バイアス電流は端子75bから第2電磁コイル74に流れ込んで端子63fから流れ出る。すなわち、端子63fはバイアス電流およびヒータ電流の流通に共通に用いられる。こうして浮上ヘッドスライダ22で端子の数の増大は抑制される。
【0045】
図13に示されるように、例えば第1電磁コイル73および第2電磁コイル74に同一の電流値のバイアス電流が個別に供給されると、第1磁区制御膜71、71同士の間で第1バイアス磁界が確立される。同時に、第2磁区制御膜72、72同士の間で第1バイアス磁界と同じ強度の第2バイアス磁界が確立される。第1バイアス磁界は、トンネル接合磁気抵抗効果膜34の一方の前方角から対角線上の他方の後方角に向かう第1方向に沿って確立される。同時に、第2バイアス磁界はトンネル接合磁気抵抗効果膜34の一方の後方角から他方の前方角に向かう第2方向に沿って確立される。第2方向は第1方向に交差する。こうして第1および第2バイアス磁界の重畳に基づきトンネル接合磁気抵抗効果膜34の一方の側面から他方の側面に向かってバイアス磁界が確立される。こうした第1および第2バイアス磁界の強度の制御に基づき読み出し素子31aは前述の読み出し素子31と同様の作用効果を実現することができる。
【0046】
このとき、例えばトンネル接合磁気抵抗効果膜34の再生信号の波形で上方向の振幅および下方向の振幅が非対称になる場合、前述の同一の強度の第1および第2バイアス磁界では磁化の向きの変化に安定性を欠く。このとき、図14に示されるように、例えば第1バイアス電流が増大する一方で第2バイアス電流が減少すれば、第1バイアス磁界の強度は高まる一方で第2バイアス磁界の強度は弱まる。その結果、再生信号の波形で上方向の振幅および下方向の振幅が対称になる場合がある。こうしてトンネル接合磁気抵抗効果膜34で磁化の向きの変化は安定性を増す。読み出し素子31は安定的に磁気情報値を読み出すことができる。なお、再生信号の波形に応じて例えば第1バイアス磁界の強度が弱まる一方で第2バイアス磁界の強度が高まってもよい。第1および第2バイアス磁界の調整は例えばHDD11の組立後に実施されればよい。HDD11はその後出荷される。
【0047】
以上の実施形態に関し出願人はさらに以下の付記を開示する。
【0048】
(付記1) 磁気抵抗効果膜を挟み込む1対の磁区制御膜に磁気的に結合される電磁コイルに第1電流値の電流を供給し、前記磁気抵抗効果膜に基づき記憶媒体上の磁性膜から磁気情報値を識別する工程と、
前記磁性膜の特定域で前記磁気情報値の識別に失敗すると、前記電磁コイルに前記第1電流値よりも小さい第2電流値の電流を供給し、前記磁区制御膜同士の間で前記磁気抵抗効果膜に作用するバイアス磁界を減少させる工程と、
前記第2電流値を維持しつつ前記磁気抵抗効果膜に基づき前記特定域の前記磁性膜から磁気情報値を識別する工程とを備えることを特徴とする記憶装置の制御方法。
【0049】
(付記2) 付記1に記載の記憶装置の制御方法において、前記第2電流値の維持時に前記磁気情報値の識別に失敗すると、前記電磁コイルに前記第2電流値よりも小さい第3電流値の電流を供給する工程と、
前記第3電流値を維持しつつ前記磁気抵抗効果膜に基づき前記特定域の前記磁性膜から磁気情報値を識別する工程とを備えることを特徴とする記憶装置の制御方法。
【0050】
(付記3) 付記1に記載の記憶装置の制御方法において、前記第2電流値の維持時に前記磁気情報値の識別に成功すると、前記特定域の前記磁性膜に書き込み素子から記録磁界を作用させて磁気情報値を上書きする工程をさらに備えることを特徴とする記憶装置の制御方法。
【0051】
(付記4) 磁性膜で磁気情報値を保持する記憶媒体と、
媒体対向面で前記記憶媒体に向き合うヘッドスライダと、
前記媒体対向面に組み込まれて、前記磁気情報値の識別に基づき抵抗を変化させる磁気抵抗効果膜と、
軟磁性材料から形成されて前記媒体対向面に沿って前記磁気抵抗効果膜を挟み込み、前記磁気抵抗効果膜にバイアス磁界を作用させる1対の磁区制御膜と、
前記磁区制御膜に磁気的に結合され、供給される電流の電流値に応じて前記磁区制御膜同士の間で所定の強度の前記バイアス磁界を発生させる電磁コイルと、
前記電磁コイルに接続されて、前記磁気情報値の識別の失敗時に前記電磁コイルに供給される電流の電流値を減少させる制御回路とを備えることを特徴とする記憶装置。
【0052】
(付記5) 付記4に記載の記憶装置において、
前記媒体対向面に組み込まれて、前記記憶媒体に書き込み磁界を作用させて前記記憶媒体に磁気情報値を書き込む書き込み素子を備え、
前記書き込み素子は、前記記憶媒体上で特定域の前記磁性膜に識別に成功した前記磁気情報値の磁気情報値を上書きすることを特徴とする記憶装置。
【0053】
(付記6) 付記4に記載の記憶装置において、
前記媒体対向面に組み込まれて、発熱に基づき前記記憶媒体に向かって前記媒体対向面に突き出しを形成するヒータと、
前記電磁コイルおよび前記ヒータに共通に接続される第1端子と、
前記電磁コイルに個別に接続される第2端子と、
前記ヒータに個別に接続される第3端子とを備えることを特徴とする記憶装置。
【0054】
(付記7) 磁性膜で磁気情報値を保持する記憶媒体と、
媒体対向面で前記記憶媒体に向き合うヘッドスライダと、
前記媒体対向面に組み込まれて、前記磁気情報値の識別に基づき抵抗を変化させる磁気抵抗効果膜と、
軟磁性材料から形成されて前記媒体対向面に沿って前記磁気抵抗効果膜を挟み込み、前記磁気抵抗効果膜に第1方向に第1バイアス磁界を作用させる1対の第1磁区制御膜と、
前記第1磁区制御膜に磁気的に結合され、供給される電流の電流値に応じて前記第1磁区制御膜同士の間で所定の強度の第1バイアス磁界を発生させる第1電磁コイルと、
軟磁性材料から形成されて前記媒体対向面に沿って前記磁気抵抗効果膜を挟み込み、前記磁気抵抗効果膜に第1方向に交差する第2方向に第2バイアス磁界を作用させる1対の第2磁区制御膜と、
前記第2磁区制御膜に磁気的に結合され、供給される電流の電流値に応じて前記第2磁区制御膜同士の間で所定の強度の第2バイアス磁界を発生させる第2電磁コイルと、
前記第1および第2電磁コイルに接続されて、前記第1および第2電磁コイルに供給される電流の電流値を個別に増減させる制御回路とを備えることを特徴とする記憶装置。
【符号の説明】
【0055】
11 記憶装置(ハードディスク駆動装置)、14 記憶媒体(磁気ディスク)、22 ヘッドスライダ(浮上ヘッドスライダ)、27 媒体対向面(浮上面)、34 磁気抵抗効果膜(トンネル接合磁気抵抗効果膜)、35 磁区制御膜、37 書き込み素子、44 ヒータ、53 電磁コイル、55 制御回路(ハードディスクコントローラ)、63e 第2端子、63f 第1端子、63g 第3端子、65 磁性膜(記録磁性膜)、71 第1磁区制御膜、72 第2磁区制御膜、73 第1電磁コイル、74 第2電磁コイル。
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばハードディスク駆動装置(HDD)といった記憶装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
HDDでは磁気ディスク上にヘッドスライダが浮上する。ヘッドスライダには電磁変換素子が埋め込まれる。磁気ディスクの磁性膜には「1」や「0」といった磁気情報値が記録される。磁性膜から電磁変換素子に作用する磁界に基づき電磁変換素子は磁気情報値を読み出す。同様に、電磁変換素子から磁性膜に作用する記録磁界に基づき磁性膜に磁気情報値が書き込まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−303097号公報
【特許文献2】特開2007−287190号公報
【特許文献3】特開昭62−95711号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
記録密度の高まりに伴ってヘッドスライダの浮上量は減少する傾向にある。その結果、ヘッドスライダが磁気ディスクの表面に接触する可能性が高まる。ヘッドスライダが磁気ディスクの表面に接触すると、摩擦の熱や圧力により磁性膜の記録磁化が減少し、磁性膜から電磁変換素子に作用する磁界の強度は弱められてしまう。強度が弱まりすぎると、電磁変換素子では磁性膜から磁気情報値を読み出せないといった不具合が生じる。
【0005】
本発明は、上記実状に鑑みてなされたもので、磁性膜の磁気情報値を高い確率で読み出すことができる記憶装置およびその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、開示の記憶装置の制御方法の一具体例は、磁気抵抗効果膜を挟み込む1対の磁区制御膜に磁気的に結合される電磁コイルに第1電流値の電流を供給し、前記磁気抵抗効果膜に基づき記憶媒体上の磁性膜から磁気情報値を識別する工程と、前記磁性膜の特定域で前記磁気情報値の識別に失敗すると、前記電磁コイルに前記第1電流値よりも小さい第2電流値の電流を供給し、前記磁区制御膜同士の間で前記磁気抵抗効果膜に作用するバイアス磁界を減少させる工程と、前記第2電流値を維持しつつ前記磁気抵抗効果膜に基づき前記特定域の前記磁性膜から磁気情報値を識別する工程とを備えることを特徴とする。
【0007】
こうした記憶装置の制御方法によれば、電磁コイルに第1電流値の電流が供給される。磁区制御膜の間では磁気抵抗効果膜に所定の強度のバイアス磁界が作用する。このとき、記憶媒体上の磁性膜の特定域で磁気情報値の識別に失敗すると、電磁コイルに第1電流値よりも小さい第2電流値の電流が供給される。バイアス磁界は減少する。その結果、磁気抵抗効果膜では磁化の向きが変化しやすくなる。再生信号の出力の感度は高まる。こうして、劣化した磁気情報値を有する特定域の磁性膜から磁気情報値の識別に成功することができる。こうして記憶装置では磁気情報値は高い確率で読み出されることができる。
【0008】
上記目的を達成するために、開示の記憶装置の一具体例は、磁性膜で磁気情報値を保持する記憶媒体と、媒体対向面で前記記憶媒体に向き合うヘッドスライダと、前記媒体対向面に組み込まれて、前記磁気情報値の識別に基づき抵抗を変化させる磁気抵抗効果膜と、軟磁性材料から形成されて前記媒体対向面に沿って前記磁気抵抗効果膜を挟み込み、前記磁気抵抗効果膜にバイアス磁界を作用させる1対の磁区制御膜と、前記磁区制御膜に磁気的に結合され、供給される電流の電流値に応じて前記磁区制御膜同士の間で所定の強度の前記バイアス磁界を発生させる電磁コイルと、前記電磁コイルに接続されて、前記磁気情報値の識別の失敗時に前記電磁コイルに供給される電流の電流値を減少させる制御回路とを備えることを特徴とする。
【0009】
こうした記憶装置によれば、電磁コイルに第1電流値の電流が供給される。磁区制御膜の間では磁気抵抗効果膜に所定の強度のバイアス磁界が作用する。このとき、記憶媒体上の磁性膜の特定域で磁気情報値の識別に失敗すると、制御回路は、電磁コイルに第1電流値よりも小さい第2電流値の電流を供給する。バイアス磁界は減少する。その結果、磁気抵抗効果膜では磁化の向きが変化しやすくなる。再生信号の出力の感度は高まる。こうして、劣化した磁気情報値を有する特定域の磁性膜から磁気情報値の識別に成功することができる。こうした記憶装置では磁気抵抗効果膜は高い確率で磁気情報値を読み出すことができる。
【発明の効果】
【0010】
以上のように開示の記憶装置およびその制御方法によれば、磁性膜の磁気情報値を高い確率で読み出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る記憶装置の一具体例すなわちハードディスク駆動装置(HDD)の内部構造を概略的に示す平面図である。
【図2】一具体例に係る浮上ヘッドスライダを概略的に示す拡大斜視図である。
【図3】媒体対向面から観察される電磁変換素子を概略的に示す電磁変換素子の正面図である。
【図4】図3の4−4線に沿った断面図である。
【図5】トンネル接合磁気抵抗効果膜の構造を概略的に示す拡大正面図である。
【図6】図5の6−6線に沿った断面図であり、本発明の第1実施形態に係る読み出し素子の構造を概略的に示す。
【図7】浮上ヘッドスライダに搭載される電磁変換素子およびヒータに関連してHDDの制御系を概略的に示すブロック図である。
【図8】読み出し素子で磁気ディスクの記録磁性膜から磁気情報値を識別する様子を概略的に示す断面図である。
【図9】制御回路の処理の流れを示すフローチャートである。
【図10】読み出し素子で磁気ディスクの記録磁性膜から磁気情報値を識別する様子を概略的に示す断面図である。
【図11】図6に対応し、本発明の第2実施形態に係る読み出し素子の構造を概略的に示す断面図である。
【図12】浮上ヘッドスライダに搭載される電磁変換素子およびヒータに関連してHDDの制御系を概略的に示すブロック図である。
【図13】読み出し素子で電磁コイルにバイアス電流が供給される様子を概略的に示す断面図である。
【図14】読み出し素子で電磁コイルにバイアス電流が供給される様子を概略的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照しつつ本発明の一実施形態を説明する。
【0013】
図1は本発明に係る記憶装置の一具体例すなわちハードディスク駆動装置(HDD)11の内部構造を概略的に示す。このHDD11は筐体すなわちハウジング12を備える。ハウジング12は箱形のベース13およびカバー(図示されず)から構成される。ベース13は例えば平たい直方体の内部空間すなわち収容空間を区画する。カバーはベース13の開口に結合される。カバーとベース13との間で収容空間は密閉される。
【0014】
収容空間には、記憶媒体としての1枚以上の磁気ディスク14が収容される。磁気ディスク14はスピンドルモータ15の駆動軸に装着される。スピンドルモータ15は例えば4200rpmや5400rpm、7200rpm、10000rpm、15000rpmといった高速度で磁気ディスク14を回転させることができる。ここでは、例えば磁気ディスク14は垂直磁気記録ディスクに構成される。
【0015】
収容空間にはキャリッジ16がさらに収容される。キャリッジ16はキャリッジブロック17を備える。キャリッジブロック17は、垂直方向に延びる支軸18に回転自在に連結される。キャリッジブロック17には支軸18から水平方向に延びる複数のキャリッジアーム19が区画される。
【0016】
個々のキャリッジアーム19の先端にはヘッドサスペンション21が取り付けられる。ヘッドサスペンション21にはフレキシャが貼り付けられる。フレキシャ上には浮上ヘッドスライダ22が搭載される。フレキシャの働きで浮上ヘッドスライダ22はヘッドサスペンション21に対して姿勢を変化させることができる。浮上ヘッドスライダ22には磁気ヘッドすなわち電磁変換素子が搭載される。
【0017】
磁気ディスク14の回転に基づき磁気ディスク14の表面で気流が生成されると、気流の働きで浮上ヘッドスライダ22には正圧すなわち浮力および負圧が作用する。浮力および負圧とヘッドサスペンション21の押し付け力とが釣り合うことで磁気ディスク14の回転中に比較的に高い剛性で浮上ヘッドスライダ22は浮上し続けることができる。
【0018】
キャリッジブロック17には例えばボイスコイルモータ(VCM)23といった動力源が接続される。このVCM23の働きでキャリッジブロック17は支軸18回りで回転することができる。こうしたキャリッジブロック17の回転に基づきキャリッジアーム19およびヘッドサスペンション21の揺動は実現される。
【0019】
浮上ヘッドスライダ22の浮上中にキャリッジアーム19が支軸18回りで揺動すると、浮上ヘッドスライダ22は磁気ディスク14の半径線に沿って移動することができる。その結果、浮上ヘッドスライダ22上の電磁変換素子は最内周記録トラックと最外周記録トラックとの間でデータゾーンを横切ることができる。こうして浮上ヘッドスライダ22上の電磁変換素子は目標の記録トラック上に位置決めされる。
【0020】
図2は一具体例に係る浮上ヘッドスライダ22を示す。この浮上ヘッドスライダ22は、例えば平たい直方体に形成される基材すなわちスライダ本体25を備える。スライダ本体25の空気流出側端面には絶縁性の非磁性膜すなわち素子内蔵膜26が積層される。スライダ本体25は例えばAl2O3−TiC(アルチック)といった硬質の非磁性材料から形成される。素子内蔵膜26は例えばAl2O3(アルミナ)といった比較的に軟質の絶縁非磁性材料から形成される。浮上ヘッドスライダ22は媒体対向面すなわち浮上面27で磁気ディスク14に向き合う。
【0021】
素子内蔵膜26には電磁変換素子28が埋め込まれる。電磁変換素子28は例えば読み出し素子と書き込み素子とを備える。電磁変換素子28は素子内蔵膜26の表面に読み出し素子の読み出しギャップや書き込み素子の書き込みギャップを臨ませる。ただし、素子内蔵膜26の表面には硬質の保護膜が形成されてもよい。こういった硬質の保護膜は素子内蔵膜26の表面で露出する読み出しギャップや書き込みギャップを覆う。保護膜には例えばDLC(ダイヤモンドライクカーボン)膜が用いられればよい。
【0022】
図3に示されるように、読み出し素子31では、上下1対の導電層すなわち下部電極32および上部電極33にトンネル接合磁気抵抗効果膜34が挟み込まれる。下部電極32および上部電極33は例えばFeN(窒化鉄)やNiFe(ニッケル鉄)、NiFeB(ニッケル鉄ボロン)、CoFeB(コバルト鉄ボロン)といった高透磁率材料から形成されればよい。こうして下部電極32および上部電極33は下部シールド層および上部シールド層として機能することができる。その結果、下部電極32および上部電極33の間隔は磁気ディスク14上で記録トラックのダウントラック方向に磁気記録の分解能を決定する。
【0023】
同時に、下部電極32および上部電極33の間には1対の磁区制御膜35が配置される。トンネル接合磁気抵抗効果膜34は浮上面27に沿って磁区制御膜35、35同士の間に配置される。磁区制御膜35は軟磁性材料から形成される。磁区制御膜35は浮上面27に沿って一方向にバイアス磁界を確立する。磁区制御膜35と下部電極32との間、および、磁区制御膜35とトンネル接合磁気抵抗効果膜34との間には絶縁膜36が挟み込まれる。絶縁膜36は例えばAl2O3から形成される。磁区制御膜35は下部電極32およびトンネル接合磁気抵抗効果膜34から絶縁される。したがって、たとえ磁区制御膜35が導電性を有していても、上部電極33と下部電極32との間ではトンネル接合磁気抵抗効果膜34のみで導通が確立される。
【0024】
書き込み素子37すなわち単磁極ヘッドは、浮上面27で先端面を露出する主磁極38および補助磁極39を備える。浮上面27で補助磁極39のリーディング端にはトレーリングシールド41が区画される。トレーリングシールド41は主磁極38に向き合わせられる。主磁極38および補助磁極39は例えばFeNやNiFe、NiFeB、CoFeBといった磁性材料から形成される。図4を併せて参照し、補助磁極39の後端は主磁極38に磁性連結片42で接続される。磁性連結片42周りで磁気コイルすなわち薄膜コイルパターン43が形成される。こうして主磁極38、補助磁極39および磁性連結片42は、薄膜コイルパターン43の中心位置を貫通する磁性コアを形成する。書き込み素子37では薄膜コイルパターン43の働きで記録磁界が生成される。この記録磁界の働きで磁気ディスク14の記録磁性膜に「1」または「0」の磁気情報値が書き込まれる。
【0025】
読み出し素子31および書き込み素子37の間にはヒータ44が組み込まれる。ヒータ44は例えば電熱線から形成される。電熱線は例えばW(タングステン)から形成される。ヒータ44にヒータ電流が供給されると、ヒータ44は発熱する。ヒータ44の熱でヒータ44とともに読み出し素子31や書き込み素子37、素子内蔵膜26は熱膨張する。その結果、浮上面27で素子内蔵膜26やスライダ本体25は隆起する。いわゆる突き出しが形成される。こうした突き出しに基づき読み出し素子31および書き込み素子37は磁気ディスク14に向かって変位する。こうした変位に基づき浮上ヘッドスライダ22すなわち電磁変換素子28の浮上量は調整される。
【0026】
図5は一具体例に係るトンネル接合磁気抵抗効果膜34の構造を概略的に示す。このトンネル接合磁気抵抗効果膜34ではいわゆるボトム型の積層構造が確立される。トンネル接合磁気抵抗効果膜34は、下部電極32上に広がる下地層45を備える。下地層45は例えばTa(タンタル)から形成される。下地層45の表面にはピンニング層46が重ね合わせられる。ピンニング層46は反強磁性層から形成される。ここでは、ピンニング層46はIrMn(イリジウムマンガン)合金から形成される。
【0027】
ピンニング層46の表面にはピンド層47が重ね合わせられる。ピンド層47は強磁性層から形成される。ここでは、ピンド層47はCoFe(コバルト鉄)合金から形成される。ピンド層47とピンニング層46との間には交換結合が確立される。この交換結合の働きでピンド層47の磁化は所定の方向に固定される。ピンド層47の表面にはトンネルバリア層48が重ね合わせられる。トンネルバリア層48は絶縁材料から形成される。ここでは、トンネルバリア層48はMgO(酸化マグネシウム)から形成される。
【0028】
トンネルバリア層48の表面にはフリー層49が重ね合わせられる。フリー層49は強磁性層から形成される。ここでは、フリー層49はCoFeB層から形成される。フリー層49は、磁界の作用に応じて磁化方向の変化を許容する。フリー層49では前述のバイアス磁界の働きで磁化の向きは揃えられる。フリー層49の表面にはキャップ層51が重ね合わせられる。キャップ層51は例えば非磁性金属から形成される。ここでは、キャップ層51はTa(タンタル)層で形成される。キャップ層51には前述の上部電極44が重ね合わせられる。
【0029】
図6は本発明の第1実施形態に係る読み出し素子31の構造を概略的に示す。この読み出し素子31では、浮上面27から後方で磁区制御膜35、35は相互に連結される。磁区制御膜35、35周りに電磁コイル53が形成される。こうして電磁コイル53は磁区制御膜35、35に磁気的に結合される。電磁コイル53に電流が供給されると、磁区制御膜35、35同士の間では浮上面27に沿って一方向にバイアス磁界が確立される。このバイアス磁界がトンネル接合磁気抵抗効果膜34のフリー層49に作用すると、フリー層49では所定の方向に磁化の向きが揃えられる。
【0030】
磁気情報値の読み出しにあたって、トンネル接合磁気抵抗効果膜34には一方向にバイアス磁界が作用する。このとき、トンネル接合磁気抵抗効果膜34には記録再生用バイアス電圧が加えられる。記録再生用バイアス電圧は上部電極33および下部電極32の間でトンネル接合磁気抵抗効果膜34に加えられる。フリー層49には磁気ディスク14の記録磁性膜から漏れ出る磁界が作用する。この磁界の向きに応じてトンネル接合磁気抵抗効果膜34に流れるトンネル電流の変化が引き起こされる。トンネル電流の変化は再生信号を構成する。こういった変化に応じて記録磁性膜から磁気情報値が読み出される。
【0031】
図7に示されるように、HDD11は制御回路(ハードディスクコントローラ)55を備える。制御回路55は、例えばキャリッジブロック17上に実装されるヘッドIC(集積回路)56に接続される。ヘッドIC56には書き込み電流供給回路57、プリアンプ回路58、バイアス電流供給回路59およびヒータ電流供給回路61が組み込まれる。ヘッドIC56には浮上ヘッドスライダ22に接続される。制御回路55は所定のソフトウェアプログラムに従って書き込み電流供給回路57、プリアンプ回路58、バイアス電流供給回路59およびヒータ電流供給回路61の動作を制御する。ソフトウェアプログラムは例えばメモリ62に格納されればよい。
【0032】
書き込み電流供給回路57は書き込み素子37に接続される。書き込み電流供給回路57から書き込み素子37の薄膜コイルパターン43に書き込み電流が供給される。供給された書き込み電流に基づき書き込み素子37で記録磁界が生成される。プリアンプ回路58は読み出し素子31に接続される。プリアンプ回路58から読み出し素子31に記録再生用バイアス電圧が加えられる。バイアス電流供給回路59は電磁コイル53に接続される。バイアス電流供給回路59は電磁コイル53にバイアス電流を供給する。ヒータ電流供給回路61はヒータ44に接続される。ヒータ電流供給回路61はヒータ44に所定のヒータ電流を供給する。ヒータ電流の供給に応じてヒータ44は発熱する。
【0033】
制御回路55はヘッドIC56に対して書き込み電流や記録再生用バイアス電圧、バイアス電流、ヒータ電流の供給を指示する。記録再生用バイアス電圧の電圧値は一定に設定される。同時に、制御回路55はトンネル接合磁気抵抗効果膜34に流れるトンネル電流を検知する。検知に先立ってプリアンプ回路58はトンネル電流を増幅する。制御回路55はプリアンプ回路58の出力に基づき磁気情報値を識別する。さらに、制御回路55はバイアス電流の電流値を制御する。バイアス電流の電流値の増減に応じて磁区制御膜35、35同士の間で確立されるバイアス磁界の強弱が調整される。例えばバイアス電流の電流値が小さく設定されるにつれてバイアス磁界の強度は減少する。
【0034】
書き込み電流や記録再生用バイアス電圧、バイアス電流、ヒータ電流の供給にあたって、浮上ヘッドスライダ22の空気流出側端面には複数の端子63a〜63gが形成される。書き込み電流用に端子63a、63bが用いられる。記録再生用バイアス電圧用に端子63c、63dが用いられる。バイアス電流用に端子63e、63fが用いられる。ヒータ電流用に端子63g、63fが用いられる。端子63eは電磁コイル53に個別に接続される。端子63eから電磁コイル53に流れ込むバイアス電流は端子63fから流れ出る。端子63gはヒータ44に個別に接続される。端子63gからヒータ44に流れ込むヒータ電流は端子63fから流れ出る。こうして端子63fはバイアス電流の供給とヒータ電流の供給とに共通に用いられる。その結果、浮上ヘッドスライダ22で端子の数の増大は抑制される。
【0035】
いま、磁気ディスク14の記録磁性膜で磁気情報値を復旧する場面を想定する。図8に示されるように、浮上ヘッドスライダ22は浮上面27で磁気ディスク14の表面に向き合う。磁気ディスク14は、基板上に積層される軟磁性の裏打ち層64と、裏打ち層64の表面に積層される記録磁性膜65とを備える。記録磁性膜65では基板の表面に直交する垂直方向に磁化容易軸が確立される。書き込み素子37から作用する記録磁界に基づき記録磁性膜65では上向きの磁化または下向きの磁化が確立される。上向きの磁化および下向きの磁化は磁気情報値の「1」および「0」のいずれかに対応する。
【0036】
まず、磁気情報値の識別にあたって電磁コイル53には所定の第1電流値のバイアス電流が供給される。ここでは、第1電流値は基準値に設定される。同時に、第1電流値は最大値に設定される。磁区制御膜35、35同士の間では第1強度のバイアス磁界が生成される。同時に、トンネル接合磁気抵抗効果膜34には記録再生用バイアス電圧が加えられる。バイアス磁界は一方向にトンネル接合磁気抵抗効果膜34に作用する。その一方で、磁気ディスク14の記録磁性膜65から漏れ出る磁界はトンネル接合磁気抵抗効果膜34に作用する。磁界の作用に応じてフリー層49では磁化の向きが変化する。トンネル接合磁気抵抗効果膜34を流れるトンネル電流の変化が引き起こされる。トンネル電流の変化は再生信号を構成する。制御回路55は、図9のステップS1で、記録磁性膜65から磁気情報値の識別に成功する。こうして磁気情報値は高い確率で読み出されることができる。
【0037】
図10に示されるように、例えば浮上ヘッドスライダ22の突き出しとの接触に基づく摩擦の熱や圧力の影響で、磁気ディスク14の特定域の記録磁性膜65で磁化が減少する場合がある。磁化の減少に基づき特定域の記録磁性膜65から漏れ出る磁界の強度は弱まる。すなわち、記録磁性膜65で保持される磁気情報値は劣化する。したがって、読み出し素子31が特定域で磁気ディスク14の表面に向き合うと、磁化の減少に基づきトンネル接合磁気抵抗効果膜34に作用する磁界は弱まる。その結果、フリー層49では磁化の向きの変化は減少する。トンネル電流の変化量は減少してしまう。磁界の強度が制御回路55の識別可能なレベルを下回ると、制御回路55はステップS1で磁気情報値の識別に失敗する。
【0038】
制御回路55は、ステップS2で、電磁コイル53に第1電流値よりも小さい第2電流値のバイアス電流を供給する。磁区制御膜35、35同士の間ではバイアス磁界の強度は減少する。その結果、磁界の強度が小さくてもフリー層49で磁化の向きは変化しやすくなる。このとき、第2電流値の維持時に制御回路55は磁気情報値を再び識別する。前述と同様に、磁界の強度が制御回路55の識別可能なレベルを下回ると、制御回路55はステップS3で磁気情報値の識別に失敗する。制御回路55は、ステップS4で、第2電流値よりも小さいバイアス電流を設定することができるか判断する。ステップS4で、第2電流値よりも小さい電流値のバイアス電流の設定が可能と判断されると、処理はステップS2に戻る。ステップS2で第2電流値よりも小さい第3電流値が設定される。その後、ステップS3から処理が繰り返される。その一方で、ステップS4で、第2電流値より小さい電流値のバイアス電流の設定が不可能と判断されると、処理はエラー終了する。なお、バイアス電流の電流値の下限値はバイアス磁界の強度の下限値に基づき予め設定されればよい。
【0039】
その一方で、ステップS3で、第2電流値の維持時に磁界の強度が制御回路55の識別可能なレベルを上回ると、制御回路55は磁気情報値の識別に成功する。処理はステップS5に進む。ステップS5で、制御回路55は書き込み素子37の薄膜コイルパターン43に書き込み電流を供給する。書き込み素子37は磁気ディスク14上で前述の特定域の記録磁性膜65上に位置決めされる。書き込み素子37の主磁極から特定域の記録磁性膜65に向かって記録磁界が漏れ出る。漏れ出る記録磁界は記録磁性膜65に作用する。記録磁性膜65には、記録磁性膜65の表面に直交する垂直方向に記録磁界が誘導される。記録磁界は裏打ち層64から書き込み素子37の補助磁極39に循環する。こうした記録磁界の循環に基づき記録磁性膜65では前述の磁気情報値が上書きされる。その結果、特定域の記録磁性膜65では磁気情報値の磁界の強度は所定のレベルに復帰する。
【0040】
その後、ステップS6で、制御回路55はバイアス電流の電流値を第1電流値に設定する。ステップS7で、第1電流値を維持しつつ制御回路55は磁気情報値の識別を改めて実施する。読み出し素子31は前述の特定域の記録磁性膜65に向き合う。ステップS7で、制御回路55が磁気情報値の識別に成功すると、特定域の記録磁性膜65で磁気情報値の復旧は完了する。その一方で、ステップS7で、制御回路55が磁気情報値の識別に失敗すると、処理はステップS8に進む。読み出し素子31は前述の特定域とは別の領域の記録磁性膜65に向き合う。この別の領域の記録磁性膜65にステップS3で識別に成功した磁気情報値が書き込まれる。こうして特定域の記録磁性膜65に書き込まれた磁気情報値は別の領域の記録磁性膜65に書き込まれる。その結果、磁気情報値の復旧は完了する。
【0041】
以上のようなHDD11では、磁気ディスク14の特定域の記録磁性膜65で磁気情報値が劣化しても、バイアス磁界の強度の減少に基づきトンネル接合磁気抵抗効果膜34では磁化の向きが変化しやすくなる。トンネル接合磁気抵抗効果膜34は再生信号の出力の感度を高めることができる。その結果、制御回路55は、劣化した磁気情報値を有する特定域の記録磁性膜65で磁気情報値の識別に成功することができる。磁気情報値は高い確率で読み出されることができる。しかも、特定域の記録磁性膜65で磁気情報値が上書きされることから、特定域の記録磁性膜65から漏れ出る磁界の強度は十分に復旧する。その結果、特定域の記録磁性膜65で磁気情報値は高い確率で維持される。こうして磁気ディスク14上では高い精度で磁気情報値が保持される。磁気情報値の読み出し時の読み出しエラーは飛躍的に抑制される。
【0042】
図11は本発明の第2実施形態に係る読み出し素子31aの構造を概略的に示す。この読み出し素子31aでは、トンネル接合磁気抵抗効果膜34は浮上面27に沿って2対の第1磁区制御膜71、71および第2磁区制御膜72、72に挟み込まれる。第1磁区制御膜71、71同士は相互に連結される。第2磁区制御膜72、72同士は相互に連結される。第1磁区制御膜71、71周りで第1電磁コイル73が形成される。こうして第1電磁コイル73は第1磁区制御膜71に磁気的に結合される。同様に、第2磁区制御膜72、72周りで第2電磁コイル74が形成される。こうして第2電磁コイル74は第2磁区制御膜72に磁気的に結合される。
【0043】
第1磁区制御膜71の一端は浮上面27に沿ってトンネル接合磁気抵抗効果膜34の側面に向き合う。第2磁区制御膜72の一端は第1磁区制御膜71より浮上面27から遠ざかる後方でトンネル接合磁気抵抗効果膜34の側面に向き合う。その一方で、第2磁区制御膜72の他端は浮上面27に沿ってトンネル接合磁気抵抗効果膜34の側面に向き合う。第1磁区制御膜71の他端は第2磁区制御膜72より浮上面27から遠ざかる後方でトンネル接合磁気抵抗効果膜34の側面に向き合う。こうして第1磁区制御膜71、71および第2磁区制御膜72、72は相互に前後逆にトンネル接合磁気抵抗効果膜34の側面に向き合う。その他、前述と均等な構成や構造には同一の参照符号が付される。
【0044】
図12に示されるように、第1電磁コイル73および第2電磁コイル74には前述のバイアス電流供給回路59から個別にバイアス電流が供給される。供給にあたって、第1電磁コイル73用に端子75aおよび前述の端子63fが用いられる。第2電磁コイル74用に端子75bおよび前述の端子63fが用いられる。すなわち、バイアス電流は端子75aから第1電磁コイル73に流れ込んで端子63fから流れ出る。同様に、バイアス電流は端子75bから第2電磁コイル74に流れ込んで端子63fから流れ出る。すなわち、端子63fはバイアス電流およびヒータ電流の流通に共通に用いられる。こうして浮上ヘッドスライダ22で端子の数の増大は抑制される。
【0045】
図13に示されるように、例えば第1電磁コイル73および第2電磁コイル74に同一の電流値のバイアス電流が個別に供給されると、第1磁区制御膜71、71同士の間で第1バイアス磁界が確立される。同時に、第2磁区制御膜72、72同士の間で第1バイアス磁界と同じ強度の第2バイアス磁界が確立される。第1バイアス磁界は、トンネル接合磁気抵抗効果膜34の一方の前方角から対角線上の他方の後方角に向かう第1方向に沿って確立される。同時に、第2バイアス磁界はトンネル接合磁気抵抗効果膜34の一方の後方角から他方の前方角に向かう第2方向に沿って確立される。第2方向は第1方向に交差する。こうして第1および第2バイアス磁界の重畳に基づきトンネル接合磁気抵抗効果膜34の一方の側面から他方の側面に向かってバイアス磁界が確立される。こうした第1および第2バイアス磁界の強度の制御に基づき読み出し素子31aは前述の読み出し素子31と同様の作用効果を実現することができる。
【0046】
このとき、例えばトンネル接合磁気抵抗効果膜34の再生信号の波形で上方向の振幅および下方向の振幅が非対称になる場合、前述の同一の強度の第1および第2バイアス磁界では磁化の向きの変化に安定性を欠く。このとき、図14に示されるように、例えば第1バイアス電流が増大する一方で第2バイアス電流が減少すれば、第1バイアス磁界の強度は高まる一方で第2バイアス磁界の強度は弱まる。その結果、再生信号の波形で上方向の振幅および下方向の振幅が対称になる場合がある。こうしてトンネル接合磁気抵抗効果膜34で磁化の向きの変化は安定性を増す。読み出し素子31は安定的に磁気情報値を読み出すことができる。なお、再生信号の波形に応じて例えば第1バイアス磁界の強度が弱まる一方で第2バイアス磁界の強度が高まってもよい。第1および第2バイアス磁界の調整は例えばHDD11の組立後に実施されればよい。HDD11はその後出荷される。
【0047】
以上の実施形態に関し出願人はさらに以下の付記を開示する。
【0048】
(付記1) 磁気抵抗効果膜を挟み込む1対の磁区制御膜に磁気的に結合される電磁コイルに第1電流値の電流を供給し、前記磁気抵抗効果膜に基づき記憶媒体上の磁性膜から磁気情報値を識別する工程と、
前記磁性膜の特定域で前記磁気情報値の識別に失敗すると、前記電磁コイルに前記第1電流値よりも小さい第2電流値の電流を供給し、前記磁区制御膜同士の間で前記磁気抵抗効果膜に作用するバイアス磁界を減少させる工程と、
前記第2電流値を維持しつつ前記磁気抵抗効果膜に基づき前記特定域の前記磁性膜から磁気情報値を識別する工程とを備えることを特徴とする記憶装置の制御方法。
【0049】
(付記2) 付記1に記載の記憶装置の制御方法において、前記第2電流値の維持時に前記磁気情報値の識別に失敗すると、前記電磁コイルに前記第2電流値よりも小さい第3電流値の電流を供給する工程と、
前記第3電流値を維持しつつ前記磁気抵抗効果膜に基づき前記特定域の前記磁性膜から磁気情報値を識別する工程とを備えることを特徴とする記憶装置の制御方法。
【0050】
(付記3) 付記1に記載の記憶装置の制御方法において、前記第2電流値の維持時に前記磁気情報値の識別に成功すると、前記特定域の前記磁性膜に書き込み素子から記録磁界を作用させて磁気情報値を上書きする工程をさらに備えることを特徴とする記憶装置の制御方法。
【0051】
(付記4) 磁性膜で磁気情報値を保持する記憶媒体と、
媒体対向面で前記記憶媒体に向き合うヘッドスライダと、
前記媒体対向面に組み込まれて、前記磁気情報値の識別に基づき抵抗を変化させる磁気抵抗効果膜と、
軟磁性材料から形成されて前記媒体対向面に沿って前記磁気抵抗効果膜を挟み込み、前記磁気抵抗効果膜にバイアス磁界を作用させる1対の磁区制御膜と、
前記磁区制御膜に磁気的に結合され、供給される電流の電流値に応じて前記磁区制御膜同士の間で所定の強度の前記バイアス磁界を発生させる電磁コイルと、
前記電磁コイルに接続されて、前記磁気情報値の識別の失敗時に前記電磁コイルに供給される電流の電流値を減少させる制御回路とを備えることを特徴とする記憶装置。
【0052】
(付記5) 付記4に記載の記憶装置において、
前記媒体対向面に組み込まれて、前記記憶媒体に書き込み磁界を作用させて前記記憶媒体に磁気情報値を書き込む書き込み素子を備え、
前記書き込み素子は、前記記憶媒体上で特定域の前記磁性膜に識別に成功した前記磁気情報値の磁気情報値を上書きすることを特徴とする記憶装置。
【0053】
(付記6) 付記4に記載の記憶装置において、
前記媒体対向面に組み込まれて、発熱に基づき前記記憶媒体に向かって前記媒体対向面に突き出しを形成するヒータと、
前記電磁コイルおよび前記ヒータに共通に接続される第1端子と、
前記電磁コイルに個別に接続される第2端子と、
前記ヒータに個別に接続される第3端子とを備えることを特徴とする記憶装置。
【0054】
(付記7) 磁性膜で磁気情報値を保持する記憶媒体と、
媒体対向面で前記記憶媒体に向き合うヘッドスライダと、
前記媒体対向面に組み込まれて、前記磁気情報値の識別に基づき抵抗を変化させる磁気抵抗効果膜と、
軟磁性材料から形成されて前記媒体対向面に沿って前記磁気抵抗効果膜を挟み込み、前記磁気抵抗効果膜に第1方向に第1バイアス磁界を作用させる1対の第1磁区制御膜と、
前記第1磁区制御膜に磁気的に結合され、供給される電流の電流値に応じて前記第1磁区制御膜同士の間で所定の強度の第1バイアス磁界を発生させる第1電磁コイルと、
軟磁性材料から形成されて前記媒体対向面に沿って前記磁気抵抗効果膜を挟み込み、前記磁気抵抗効果膜に第1方向に交差する第2方向に第2バイアス磁界を作用させる1対の第2磁区制御膜と、
前記第2磁区制御膜に磁気的に結合され、供給される電流の電流値に応じて前記第2磁区制御膜同士の間で所定の強度の第2バイアス磁界を発生させる第2電磁コイルと、
前記第1および第2電磁コイルに接続されて、前記第1および第2電磁コイルに供給される電流の電流値を個別に増減させる制御回路とを備えることを特徴とする記憶装置。
【符号の説明】
【0055】
11 記憶装置(ハードディスク駆動装置)、14 記憶媒体(磁気ディスク)、22 ヘッドスライダ(浮上ヘッドスライダ)、27 媒体対向面(浮上面)、34 磁気抵抗効果膜(トンネル接合磁気抵抗効果膜)、35 磁区制御膜、37 書き込み素子、44 ヒータ、53 電磁コイル、55 制御回路(ハードディスクコントローラ)、63e 第2端子、63f 第1端子、63g 第3端子、65 磁性膜(記録磁性膜)、71 第1磁区制御膜、72 第2磁区制御膜、73 第1電磁コイル、74 第2電磁コイル。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気抵抗効果膜を挟み込む1対の磁区制御膜に磁気的に結合される電磁コイルに第1電流値の電流を供給し、前記磁気抵抗効果膜に基づき記憶媒体上の磁性膜から磁気情報値を識別する工程と、
前記磁性膜の特定域で前記磁気情報値の識別に失敗すると、前記電磁コイルに前記第1電流値よりも小さい第2電流値の電流を供給し、前記磁区制御膜同士の間で前記磁気抵抗効果膜に作用するバイアス磁界を減少させる工程と、
前記第2電流値を維持しつつ前記磁気抵抗効果膜に基づき前記特定域の前記磁性膜から磁気情報値を識別する工程とを備えることを特徴とする記憶装置の制御方法。
【請求項2】
請求項1に記載の記憶装置の制御方法において、前記第2電流値の維持時に前記磁気情報値の識別に失敗すると、前記電磁コイルに前記第2電流値よりも小さい第3電流値の電流を供給する工程と、
前記第3電流値を維持しつつ前記磁気抵抗効果膜に基づき前記特定域の前記磁性膜から磁気情報値を識別する工程とを備えることを特徴とする記憶装置の制御方法。
【請求項3】
請求項1に記載の記憶装置の制御方法において、前記第2電流値の維持時に前記磁気情報値の識別に成功すると、前記特定域の前記磁性膜に書き込み素子から記録磁界を作用させて磁気情報値を上書きする工程をさらに備えることを特徴とする記憶装置の制御方法。
【請求項4】
磁性膜で磁気情報値を保持する記憶媒体と、
媒体対向面で前記記憶媒体に向き合うヘッドスライダと、
前記媒体対向面に組み込まれて、前記磁気情報値の識別に基づき抵抗を変化させる磁気抵抗効果膜と、
軟磁性材料から形成されて前記媒体対向面に沿って前記磁気抵抗効果膜を挟み込み、前記磁気抵抗効果膜にバイアス磁界を作用させる1対の磁区制御膜と、
前記磁区制御膜に磁気的に結合され、供給される電流の電流値に応じて前記磁区制御膜同士の間で所定の強度の前記バイアス磁界を発生させる電磁コイルと、
前記電磁コイルに接続されて、前記磁気情報値の識別の失敗時に前記電磁コイルに供給される電流の電流値を減少させる制御回路とを備えることを特徴とする記憶装置。
【請求項5】
請求項4に記載の記憶装置において、
前記媒体対向面に組み込まれて、前記記憶媒体に書き込み磁界を作用させて前記記憶媒体に磁気情報値を書き込む書き込み素子を備え、
前記書き込み素子は、前記記憶媒体上で特定域の前記磁性膜に識別に成功した前記磁気情報値の磁気情報値を上書きすることを特徴とする記憶装置。
【請求項6】
請求項4に記載の記憶装置において、
前記媒体対向面に組み込まれて、発熱に基づき前記記憶媒体に向かって前記媒体対向面に突き出しを形成するヒータと、
前記電磁コイルおよび前記ヒータに共通に接続される第1端子と、
前記電磁コイルに個別に接続される第2端子と、
前記ヒータに個別に接続される第3端子とを備えることを特徴とする記憶装置。
【請求項1】
磁気抵抗効果膜を挟み込む1対の磁区制御膜に磁気的に結合される電磁コイルに第1電流値の電流を供給し、前記磁気抵抗効果膜に基づき記憶媒体上の磁性膜から磁気情報値を識別する工程と、
前記磁性膜の特定域で前記磁気情報値の識別に失敗すると、前記電磁コイルに前記第1電流値よりも小さい第2電流値の電流を供給し、前記磁区制御膜同士の間で前記磁気抵抗効果膜に作用するバイアス磁界を減少させる工程と、
前記第2電流値を維持しつつ前記磁気抵抗効果膜に基づき前記特定域の前記磁性膜から磁気情報値を識別する工程とを備えることを特徴とする記憶装置の制御方法。
【請求項2】
請求項1に記載の記憶装置の制御方法において、前記第2電流値の維持時に前記磁気情報値の識別に失敗すると、前記電磁コイルに前記第2電流値よりも小さい第3電流値の電流を供給する工程と、
前記第3電流値を維持しつつ前記磁気抵抗効果膜に基づき前記特定域の前記磁性膜から磁気情報値を識別する工程とを備えることを特徴とする記憶装置の制御方法。
【請求項3】
請求項1に記載の記憶装置の制御方法において、前記第2電流値の維持時に前記磁気情報値の識別に成功すると、前記特定域の前記磁性膜に書き込み素子から記録磁界を作用させて磁気情報値を上書きする工程をさらに備えることを特徴とする記憶装置の制御方法。
【請求項4】
磁性膜で磁気情報値を保持する記憶媒体と、
媒体対向面で前記記憶媒体に向き合うヘッドスライダと、
前記媒体対向面に組み込まれて、前記磁気情報値の識別に基づき抵抗を変化させる磁気抵抗効果膜と、
軟磁性材料から形成されて前記媒体対向面に沿って前記磁気抵抗効果膜を挟み込み、前記磁気抵抗効果膜にバイアス磁界を作用させる1対の磁区制御膜と、
前記磁区制御膜に磁気的に結合され、供給される電流の電流値に応じて前記磁区制御膜同士の間で所定の強度の前記バイアス磁界を発生させる電磁コイルと、
前記電磁コイルに接続されて、前記磁気情報値の識別の失敗時に前記電磁コイルに供給される電流の電流値を減少させる制御回路とを備えることを特徴とする記憶装置。
【請求項5】
請求項4に記載の記憶装置において、
前記媒体対向面に組み込まれて、前記記憶媒体に書き込み磁界を作用させて前記記憶媒体に磁気情報値を書き込む書き込み素子を備え、
前記書き込み素子は、前記記憶媒体上で特定域の前記磁性膜に識別に成功した前記磁気情報値の磁気情報値を上書きすることを特徴とする記憶装置。
【請求項6】
請求項4に記載の記憶装置において、
前記媒体対向面に組み込まれて、発熱に基づき前記記憶媒体に向かって前記媒体対向面に突き出しを形成するヒータと、
前記電磁コイルおよび前記ヒータに共通に接続される第1端子と、
前記電磁コイルに個別に接続される第2端子と、
前記ヒータに個別に接続される第3端子とを備えることを特徴とする記憶装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2010−170588(P2010−170588A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−9556(P2009−9556)
【出願日】平成21年1月20日(2009.1.20)
【出願人】(309033264)東芝ストレージデバイス株式会社 (255)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年1月20日(2009.1.20)
【出願人】(309033264)東芝ストレージデバイス株式会社 (255)
【Fターム(参考)】
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