説明

記録媒体、再生装置

【課題】干渉縞を消去又は変化させてマーク記録を行う方式の記録媒体として良好な再生信号が得られる記録媒体の提供。
【解決手段】記録媒体は、感光層と非感光層(中間層4)が順に積層された記録層形成領域10を有し、感光層内に、記録媒体表面に平行に形成された干渉縞が、集光された光の照射部分において消去又は変化されることで情報が記録され、また集光された光の照射に対する反射光によって情報が再生される記録層3が形成されているようにする。特に記録層の厚みdは、8PF≦d≦30PFとし、さらに好ましくは8PF≦d≦22PFとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体表面に平行に形成された干渉縞が、集光された光の照射部分において消去又は変化されることで情報が記録され、また集光された光の照射に対する反射光によって情報が再生される記録層を備えた記録媒体、及びその記録媒体の再生装置に関する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0002】
【非特許文献1】R.R. Mcleod , A.J.Daiber , T.Honda , M.E.McDonald , T.L.Robertson , T.Slagle , S.L.Sochava , and L.Hesselink "Three-dimensional optical disk data storage via the localized alteration of a format hologram," Appl. Opt., Vol. 47,(2008) pp2696-2707
【非特許文献2】Y. Kawata, et. al.,”Fabrication of multilayered photochromic memory media using pressure-sensitive adhesives,”Appl. Opt.,Vol. 46,(2006) pp8424
【背景技術】
【0003】
CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、BD(Blu-ray Disc(登録商標))のような光ディスクシステムは、顕微鏡の対物レンズのように非接触でディスクの片面に形成された微少な反射率変化を読み取っている。よく知られているようにディスク上の光スポットの大きさはおよそλ/NA(λ:照明光の波長、NA:開口数)で与えられ、解像度もこの値に比例する。例えばBDでは、直径12cmのディスクでおよそ25GBの容量を実現している。
また、記録層を複数重ねて1枚のディスクの容量を上げることも知られている。
【0004】
一方、定在波を記録する方式も提案されている。
照射された光強度によって屈折率が変化する光ディスク等の記録媒体中に、一旦光を集光し、その後、記録媒体の裏面に設けられた反射装置を用いてもう一度逆方向から光を同一焦点位置に集光する。これにより光スポットサイズの小さなホログラムを形成することにより、情報を記録する。
再生時には、同じようにディスク表面から照射した光の反射光を読み取ることにより情報を判別する。また、光記録媒体中に層状に情報を記録することで多層記録を行うことも可能である。
しかしながらこの方式では、光ディスク等の記録媒体の上面側と下面側の両面に光学系を配置する必要があり、光学系全体あるいはドライブシステムが大きく複雑になるという問題点があった。
【0005】
また、上記非特許文献1では、一旦、光ディスク中全面に干渉縞を記録しておき(プリフォーマット)、マークの記録はその干渉縞に一部分を消去/変化させる事で行う方法が提案されている。
また上記非特許文献2には、干渉縞を作らず、記録層材料の屈折率変化によりマーク記録を行う方式が示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
非特許文献1、2に記載されたようなマーク記録方式は、記録再生用のピックアップにディスク両面の光路を配置する必要がなくなる点で有用である。
しかしながらこれら方式において、常に良好な再生信号が得られるわけではない。
そこで本技術では、記録媒体に形成された干渉縞を消去又は変化させてマーク記録を行う方式において、十分な変調度の良好な再生信号が得られるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本技術の記録媒体は、感光層と非感光層が積層された記録層形成領域を有し、上記感光層内に、記録媒体表面に平行に形成された干渉縞が、集光された光の照射部分において消去又は変化されることで情報が記録され、また集光された光の照射に対する反射光によって情報が再生される記録層が形成されている。
特に上記記録層の厚みdは、8PF≦d≦30PF(但し、PFは上記干渉縞のピッチ)とする。より好ましくは8PF≦d≦22PFとする。
【0008】
また本技術の再生装置は、上記記録媒体の上記記録層に対して光照射を行い、反射光を受光する光ピックアップと、上記光ピックアップで受光した反射光の情報から上記記録層に記録されている情報を再生する信号処理部とを備える。
【0009】
上記の本技術の記録媒体では、感光層と非感光層を交互に積層していき、例えば1つの感光層を1つの記録層として干渉縞を形成する。これにより多数の記録層を備えた多層記録媒体を形成できる。また或いは1つの感光層に複数の記録層(干渉縞形成部分)が形成されるようにしてもよい。
この構成により干渉縞の形成部分である記録層を複数備えた記録媒体を容易に形成できる。その上で、さらに、記録層の厚みを上記の範囲とすることで、記録層から良好な再生信号が得られるようになる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、干渉縞を消去又は変化させてマーク記録を行う方式において、再生時に適切な信号レベルや変調度となる再生信号が得られるようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】第1の実施の形態のホログラムディスクの説明図である。
【図2】第1の実施の形態の平面波による初期化の説明図である。
【図3】媒体の厚みと回折効率の関係の説明図である。
【図4】実施の形態のホログラムディスクへの記録の説明図である。
【図5】実施の形態の記録層の厚みと記録マークの説明図である。
【図6】第1の実施の形態のホログラムディスクに対する初期化装置の説明図である。
【図7】実施の形態の再生装置のブロック図である。
【図8】実施の形態の再生装置の光学系のブロック図である。
【図9】第1の実施の形態のI1,I2レベルの測定結果の説明図である。
【図10】実施の形態の測定時の再生系の説明図である。
【図11】第2の実施の形態の再生信号振幅の測定結果の説明図である。
【図12】第2の実施の形態のI1,I2レベルの測定結果の説明図である。
【図13】第3の実施の形態のホログラムディスクの説明図である。
【図14】第3の実施の形態のホログラムディスクに対する初期化装置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施の形態を次の順序で説明する。
<1.第1の実施の形態のホログラムディスク>
<2.記録再生装置>
<3.記録層の厚み>
<4.第2の実施の形態のホログラムディスク>
<5.第3の実施の形態のホログラムディスク>
【0013】
<1.第1の実施の形態のホログラムディスク>

図1に、本技術の記録媒体の第1の実施の形態となるホログラムディスク1の構成を示している。
【0014】
図1(a)に示すように、ホログラムディスク1は、例えばCD、DVD、BDのように所定の厚みを持った円形のディスクメディアとされている。
図1(b)は、このホログラムディスク1の厚み方向の断面構成を模式的に示している。
ホログラムディスク1は、ディスク基板6上に層構造が形成されて成る。即ち、ディスク基板6上に、中間層4と記録層3が交互に積層された記録層形成領域10が設けられている。そして記録層形成領域10の上面側にカバー層2が形成される。カバー層2側が、記録再生時のレーザ光入射面側となる。
【0015】
記録層形成領域10では、図示のように記録層3と中間層4が交互に積層されている。
記録層3は、例えばフォトポリマーによる感光層とされ、後述する初期化処理で干渉縞が形成されたものである。中間層4は、透明樹脂材料などで形成される非感光層である。即ちこのホログラムディスク1は、ディスク製造時に、ディスク基板6上に、感光層と非感光層が交互に積層され、さらにカバー層2が形成される。その後、初期化処理により、感光層に干渉縞が形成されて、その感光層が記録層3となる。
【0016】
この第1の実施の形態の場合、各感光層は、その厚み方向の全体に干渉縞が形成されることで、1つの感光層が1つの記録層3となる。
感光層と非感光層(中間層4)が交互に積層された後、感光層に干渉縞が形成されることで、図のように多数の記録層3(レイヤL0〜Ln)が形成される。例えば記録層3が20個の20層ディスクや、記録層3が30個の30層ディスクなどが形成できる。
【0017】
また、この例ではディスク基板6には、例えばスパイラル状のグルーブや凹凸ピット列による凹凸パターンが形成された基準面5が設けられている。この基準面5は、記録再生時に各記録層3(レイヤーL0〜Ln)へのレーザ光のフォーカスサーボ制御の基準となったり、トラッキングサーボ制御の基準となる。
また基準面5の凹凸パターンが、アドレス情報に基づいてウォブリングされたウォブリンググルーブであったり、アドレス情報に基づくピット列とされていることで、記録再生時のディスク上のアドレス読出にも用いることができる。
なお、所定の凹凸パターンによる基準面5は、例えばカバー層2と記録層形成領域10の間など、他の位置に形成されていても良い。
【0018】
カバー層2は、例えば50μm程度の厚みとされる。
中間層4(非感光層)の厚みは5〜15μm程度とされる。
記録層3(感光層)の厚みは「d」とする。この厚みdについては後述するが、干渉縞のピッチをPFとしたときに、8PF≦d≦30PF、さらに好ましくは8PF≦d≦22PFの範囲とされる。
【0019】
このように実施の形態のホログラムディスク1は、感光層と非感光層が順に積層された記録層形成領域10を有する。そして感光層内に、記録媒体表面に平行に形成された干渉縞が、集光された光の照射部分において消去又は変化されることで情報が記録され、また集光された光の照射に対する反射光によって情報が再生される記録層3が形成されているものである。
特に第1の実施の形態では、感光層の厚み方向の全体に干渉縞が形成されて、1つの感光層が1つの記録層3とされている。そして記録層3の厚みd(この場合、感光層の厚みでもある)は上記範囲内に設定される。
【0020】
上記のように、このホログラムディスク1は、初期化処理(プリフォーマット)として感光層に干渉縞を形成することで、記録層3が形成される。
そのホログラムディスク1に対する情報の記録時には、片面側から光を集光して照射することにより、干渉縞を消去又は変化させてマーク記録を行う。
【0021】
ここで初期化処理について説明する。
まず初期化処理を行うための初期化装置30の構成例を図6で説明する。
レーザ光源31は、波長λfの初期化光を出力する。例えば波長λfはホログラムディスク1に対する再生光の波長λrと同じとされる。例えばλf=λr=405nmとされる。
【0022】
この初期化光は、レンズ32,33によるエキスパンダにより光径が拡大される。エキスパンダを構成するレンズ32,33の焦点面位置には空間フィルタ34が配置されている。
さらに初期化光は、レンズ35,36により光径が拡大される。そしてレンズ36から得られる平面波の平行光がホログラムディスク1の一方の面側から一様に照射される。
さらに、この平面波の初期化光は、ホログラムディスク1を通過した後、ミラー37で反射される。これによって、ホログラムディスク1の他方の面(反対面)側からも同時に平面波が照射される構成とされている。
従ってこの初期化装置30は、波長λfの平面波の初期化光を、ホログラムディスク1の各記録層3に対して一方の面から垂直に照射する第1の照射光学系(レーザ光源31からレンズ36)と、波長λfの平面波の初期化光を、ホログラムディスク1の記録層3に対して他方の面から照射する第2の照射光学系(レーザ光源31からミラー37)とを備える。
なお、この初期化装置30の構成は一例であり、他の構成もあり得る。例えば第2の照射光学系を第1の照射光学系とは独立した光路で形成することもできる。
【0023】
このような初期化装置10によるプリフォーマット動作を図2に示す。
図2(a)は、例えば上記のような初期化装置30により、ホログラムディスク1の一方の面及び他方の面から、波長λfの平面波の初期化光が一様に照射されている様子を模式的に示している。
このようにホログラムディスク1の上下から波長λfの平面波を入射することで、ホログラムディスク1の各記録層3として、図2(b)のようにピッチPF=λf/2Nの平面状の干渉縞を一様に形成する。なおNは記録層材料の屈折率である。
即ち、ホログラムディスク1の各記録層3(図1のレイヤーL0〜Ln)として、厚み方向に屈折率分布が変化するグレーティングが形成される。(ベースとなる屈折率をN、屈折率変化分をΔNとするグレーティング)
なお、中間層4は非感光層であることで、干渉縞は形成されない。従って、単にホログラムディスク1の上下両面側から平面波を入射することで、全ての感光層に干渉縞が形成される。つまり多数の記録層3が一度の初期化光の照射で形成されるものとなる。
【0024】
記録時には、このように干渉縞が形成されたホログラムディスク1の記録層3に対して、片面から集光した光を照射することによりマークを形成する。
図4(a)はホログラムディスク1の深さ方向(=厚み方向)にピッチPFの干渉縞が形成された記録層3に対して光を照射してマーク記録を行った様子を示している。
ホログラムディスク1内の或る記録層3に合焦するように記録光を集光して照射することで、その部分で干渉縞が消失又は変化(膨張又は収縮)して、図示のようにマークが形成される。この図4(a)は、レーザ光の集光部分で干渉縞が膨張して、記録後の干渉縞ピッチPMが元のピッチPFより広がった例を示している。
【0025】
なお、記録時にどのようなマークが形成されるかは、図4(b)(c)(d)のような例が想定される。
図4(b)は、記録層3の干渉縞の元のピッチPFに対して、記録後のピッチPMが広がってマークが形成される膨張型を示している。
図4(c)は、記録層3の干渉縞の元のピッチPFに対して、記録後のピッチPMが縮まってマークが形成される収縮型を示している。
図4(d)は、記録層3の干渉縞が消失することでマークが形成される消失型を示している。
記録マークとしてはこのような種類が想定されるが、この膨張型、収縮型、消失型のいずれとするかは、記録レーザ光のパワーや記録層3の材料の設定で決めることができる。
【0026】
また、記録層3の厚みdが各種場合における記録マークの形成例を図5に示す。ここでは膨張型のマークとして、記録層3の厚みdを、5PF、10PF、20PF、30PFとした各場合の記録マークを示している。
【0027】
このように、記録層3には記録レーザ光照射によりマークを形成することができ、情報をマーク列により記録できる。
再生時には、再生光を、このマーク列が形成された記録層3に合わせてフォーカスし、照射していく。すると、マーク部分(干渉縞の変形又は消失部分)と、元の干渉縞のままの部分での屈折率の違いによって、再生光の反射光を検出した際に、マーク列に応じた再生信号が得られる。
【0028】
このような本実施の形態のホログラムディスク1は、次の利点を有する。
まず、ホログラムディスク1は感光層と非感光層を交互に積層していき、1つの感光層を1つの記録層として干渉縞を形成する。これにより多数の記録層3を備えた多層記録媒体を容易に形成できる。特に初期化で干渉縞を形成する際には、上記図2のような初期化光の照射により、各感光層部分のみに干渉縞が形成され、これによって複数の記録層を有する多層記録媒体とできるためである。
【0029】
また、このような積層構造であることで、記録層3の厚みは積層工程で容易に制御できる。記録層3の厚みは、良好な再生信号を得るために重要となる。
【0030】
ここで仮に、干渉縞を有さない記録層に屈折率が変化するマークを形成する方式を考える。例えば図1(b)のような層構造において、記録層が干渉縞を有さず、記録層の屈折率が、記録前はN1、記録後にN1+ΔNとなるものを想定する。
例えばN1=1.6、ΔN=0.01、カバー層や中間層に相当する部分の屈折率N0=1.55とする。
この場合、記録前の反射率は0.025%、記録後の反射率は0.036%となり、マーク記録部分の反射率変化は0.011%であって非常に小さい。これは再生信号としてS/Nが不十分であり、良好な再生が困難である。
【0031】
これに対し本例のホログラムディスク1は、各記録層3をホログラム記録媒体材料としグレーティングを形成する。グレーティングを形成することによって反射率を上げることができる。
回折効率ηは、
η=tanh2(π・ΔN・d/λ)
で与えられることは公知である。図3に、縦軸を回折効率、横軸に媒体の厚みdをとったグラフを示す。
つまり記録層3の厚みを適切に設定することで、十分な反射率が得られ、再生信号としてS/Nの良好な信号を得ることができるようになる。
本実施の形態では、記録層3(感光層)の厚みdは、干渉縞のピッチをPFとしたときに、8PF≦d≦30PF、好ましくは8PF≦d≦22PFの範囲とすることで、良好な再生信号が得られるようにする。
なお、この厚みdの範囲の根拠については後述する。
【0032】
<2.記録再生装置>

本例のホログラムディスク1に対して記録再生を行う実施の形態の記録再生装置の構成を図7,図8で説明する。
図7に実施の形態の記録再生装置60の全体構成を示す。この記録再生装置60は、干渉縞が形成された記録層3を有するホログラムディスク1に対し、一般のユーザが家庭等において情報を記録し、また当該ホログラムディスク1から情報を再生する際に利用されることが想定されている。
【0033】
図7に示すように、記録再生装置60は制御部61、駆動制御部62、信号処理部63、スピンドルモータ64、スレッドモータ65、光ピックアップ66を備える。
【0034】
制御部61は、記録再生装置60の全体を統括制御する。
この制御部61は、図示しないCPU(Central Processing Unit)を中心に構成されており、図示しないROM(Read Only Memory)から基本プログラムや情報記録プログラム等の各種プログラムを読み出し、これらを図示しないRAM(Random Access Memory)に展開することにより、情報記録処理等の各種処理を実行する。
【0035】
駆動制御部62は、供給される信号に対する処理や、後述するアクチュエータに供給すべき供給信号の生成等を行う。
また駆動制御部62は、各種の駆動制御処理を実行する。
信号処理部63は、符号化処理や復号化処理、或いは変調処理や復調処理等の種々の信号処理を行う。
【0036】
スピンドルモータ64は、駆動制御部62の制御に基づきホログラムディスク1を回転駆動する。
光ピックアップ66は、駆動制御部62から供給される記録信号に基づいてレーザ出力を行い、ホログラムディスク1に対して記録を行う。また再生時にはレーザ光のホログラムディスク1からの反射光情報を検出する。
光ピックアップ66は、スレッドモータ65によって移動軸65上でスライド移動される。即ち光ピックアップ66は、ホログラムディスク1の半径方向に移動可能とされる。
【0037】
また光ピックアップ66は、駆動制御部62の制御に基づいてフォーカス制御及びトラッキング制御等の位置制御を行うことにより、レーザ光を所望の位置に集光し得るように構成されている。
なおフォーカス方向とは、ホログラムディスク1に対し近接又は離隔する方向を表し、トラッキング方向とはホログラムディスク1の径方向(すなわち内周側又は外周側へ向かう方向)を表している。
【0038】
記録時には、例えば制御部61は、ホログラムディスク1が装填された状態で、図示しない外部機器等から情報記録命令、記録すべき情報及び当該情報を記録すべきアドレスを受け付けると、情報記録プログラム等に従い駆動命令を駆動制御部62へ供給する。
駆動制御部62は、駆動命令に従ってスピンドルモータ64を駆動制御することにより、ホログラムディスク1を例えば線速度一定とするよう回転させる。また駆動制御部62は、駆動命令に従ってスレッドモータ65を駆動制御することにより、光ピックアップ66を移動軸65に沿って移動させる。
信号処理部63は、記録すべき情報に対して所定の符号化処理や変調処理等を施すことにより、例えば値「0」及び「1」の符号で表される記録信号を生成する。駆動制御部62は、信号処理部63から供給される記録信号を基にレーザ駆動信号を生成し、これを光ピックアップ66へ供給する。
光ピックアップ66は、後述するフォーカス制御及びトラッキング制御を行いながら、ホログラムディスク1の一面側から記録信号に基づいた光ビームを照射し、記録信号に基づいたマーク列を形成していくことで情報を記録する。
【0039】
再生時には、例えば制御部61は、ホログラムディスク1が装填された状態で、図示しない外部機器等から情報再生命令、再生すべきアドレスを受け付けると、情報再生プログラム等に従い駆動命令を駆動制御部62へ供給する。
駆動制御部62は、駆動命令に従ってスピンドルモータ64を駆動制御することにより、ホログラムディスク1を例えば線速度一定とするよう回転させる。また駆動制御部62は、駆動命令に従ってスレッドモータ65を駆動制御することにより、光ピックアップ66を移動軸65に沿って移動させる。
また駆動制御部62は光ピックアップ66に、フォーカス制御及びトラッキング制御を行いながら、ホログラムディスク1の一面側から光ビームを照射させる。この反射光の検出情報は信号処理部63に供給されて2値化処理、デコード処理、エラー訂正処理等が行われ、ホログラムディスク1に記録されていたデータが再生される。
【0040】
このように記録再生装置60は、フォーカス制御及びトラッキング制御等の位置制御を行いながら、初期化済みのホログラムディスク1に対して情報を記録し、また情報が記録されたホログラムディスク1から情報を再生するように構成されている。
【0041】
光ピックアップ66の構成について説明する。光ピックアップ66は、図8に模式的に示すように、ホログラムディスク1の一方の面から光ビーム(記録再生光)を照射する。
【0042】
なお、ホログラムディスク1は、上述した初期化処理により干渉縞が形成された記録層3を有する。
またここでは、サーボ制御の基準を得るための基準面5を破線で示している。基準面5はフォーカスサーボ基準面となると共に、トラッキングガイドとしてのスパイラル状又は同心円状のグルーブ(又はピット列)が形成されている。
【0043】
光ピックアップ66は、大きく分けてサーボ光学系70及び記録再生光学系80により構成されている。
サーボ光学系70は、ホログラムディスク1に対してサーボ光LZ1を照射し、またホログラムディスク1により当該サーボ光LZ1が反射されて得られる反射サーボ光LZ2を受光する構成とされている。
【0044】
サーボ光学系70のサーボ用レーザ21は、例えば半導体レーザでなる。サーボ用レーザ21は、図7の制御部61の制御に基づいて発散光でなる所定光量のサーボ光LZ1を出射する。サーボ光LZ1はコリメータレンズ22で発散光から平行光に変換されてビームスプリッタ23へ入射される。
ビームスプリッタ23は、光ビームの波長により反射率が異なる波長選択性(ダイクロイック性)を有しており、例えば波長=λsのサーボ光をほぼ100%の割合で反射する。なお、後述する記録再生用レーザ81が出力する記録再生光LZ11は、波長λrとすると、ビームスプリッタ23は波長λrの光はほぼ100%の割合で透過するものとされている。
サーボ光LZ1の波長λsは、記録再生光LZ11の波長λrより長波長とされる。一例として、サーボ光LZ1の波長λs=650nm、記録再生光LZ11の波長λr=405nmなどとされる。
【0045】
ビームスプリッタ23で反射されたサーボ光LZ1は、次のビームスプリッタ24へ入射する。ビームスプリッタ24は、サーボ光LZ1を約50%の割合で透過すると共にその残りを反射する。
ビームスプリッタ24を透過したサーボ光LZ1は対物レンズ25によって集光され、ホログラムディスク1の一方の面に照射される。このときサーボ光LZ1は、ホログラムディスク1の基準面5に合焦され、この基準面5で反射される。
基準面5で反射された反射サーボ光LZ2は、サーボ光LZ1が収束光であったために発散光となり、対物レンズ25により平行光に変換され、ビームスプリッタ24へ入射される。そしてビームスプリッタ24により約50%の割合で反射され、集光レンズ26へ入射される。
集光レンズ26は、反射サーボ光LZ2を収束させ、フォトディテクタ27へ照射する。
フォトディテクタ27には、例えば非点収差方式でのフォーカスエラー信号や、プッシュプル方式でのトラッキングエラー信号などを得るために必要な検出領域を有し、それらの検出領域の光電変換信号をサーボ制御回路29に供給する。
【0046】
サーボ制御回路29は、フォトディテクタ27からの光電変換信号を用いてフォーカスエラー信号、トラッキングエラー信号を生成し、これらに基づいてアクチュエータ28にフォーカスサーボ駆動信号、トラッキングサーボ駆動信号を供給する。
【0047】
アクチュエータ28は、対物レンズ25を保持するレンズホルダ(図示せず)と光ピックアップ16との間に設けられており、フォーカス駆動信号に基づき、対物レンズ25をフォーカス方向へ駆動する。
またアクチュエータ28は、トラッキング駆動信号に従い対物レンズ25をトラッキング方向へ駆動する。
これによりサーボ光LZ1がホログラムディスク1の基準面5におけるグルーブ(基準目標トラック)に合焦するよう、対物レンズ25がフィードバック制御される。
【0048】
なお、基準面5におけるグルーブがアドレス情報に基づいてウォブリングされていたり、或いはピット列等としてアドレス情報が記録されている場合、サーボ制御回路29は、反射サーボ光LZ2の検出情報からアドレス情報を抽出し、図7の制御部61等に供給することができる。例えば記録時には、このアドレス情報を用いて記録動作を実行制御可能となる。
なお、再生時には、この基準面5からのアドレス情報だけでなく、記録層3に形成されたマーク列から記録データとともに読み出されるアドレス情報も制御に用いることができる。
【0049】
記録再生光学系80は、記録再生光LZ11をホログラムディスク1の一方の面に照射し、また反射記録再生光LZ12を検出する構成とされている。
記録再生光学系80の記録再生用レーザ81は、例えば半導体レーザでなり、波長λrのレーザ光を出射する。ホログラムディスク1に情報を記録する場合、記録再生用レーザ81は、制御部61(図7)の制御に基づき、発散光でなる記録再生光LZ11を比較的高い強度で出射し、コリメータレンズ82へ入射させる。
【0050】
コリメータレンズ82は、記録再生光LZ11を発散光から平行光に変換し、ビームスプリッタ83へ入射させる。ビームスプリッタ83は、記録再生光LZ11を所定の割合で透過し、リレーレンズ84へ入射させる。
リレーレンズ84は、可動レンズ84Aにより記録再生光LZ11を平行光から収束光又は発散光に変換し、さらに固定レンズ84Bにより当該記録再生光LZ11の収束状態を変化させて、ビームスプリッタ23へ入射させる。
【0051】
ビームスプリッタ23は、上述のように波長λrの記録再生光LZ11を透過し、ビームスプリッタ24へ入射させる。ビームスプリッタ24は、記録再生光LZ11を所定の割合で透過し、対物レンズ25へ入射させる。対物レンズ25は、記録再生光LZ11を集光し、ホログラムディスク1へ照射する。
【0052】
ここで記録再生光LZ11の焦点位置は、リレーレンズ84の固定レンズ84Bから出射される際の収束状態により定められることになる。すなわち記録再生光LZ11の焦点は、制御部61の制御の下で、可動レンズ84Aの位置に応じて或る記録層3(例えば図1のレイヤL0〜Lnのいずれか)の深さ位置となる。
つまりサーボ光LZ1が基準面5に合焦するように対物レンズ25がフォーカス制御されている状態において、サーボ光LZ1よりも所定のオフセット分だけホログラムディスク1の深さ方向の位置に、記録再生光LZ11が合焦される。
従って、可動レンズ84Aの制御により、記録再生光LZ11は、複数の記録層3のうちの任意の記録層3にフォーカス制御できることとなる。
【0053】
記録時においては、或る記録層3に記録再生光LZ11が合焦されることで、マーク記録が行われる。即ち記録再生光LZ11の光エネルギー及び熱エネルギー等が焦点位置に収束されることで、その焦点位置近傍において干渉縞が熱的若しくは光化学反応的に破壊又は変化され、局所的にホログラムとしての性質を失った(或いは変質した)記録マークが形成される。
従って、記録再生装置60は、記録すべき情報に対して信号処理部63により所定の変調処理等を施した記録信号に基づいて変調された記録再生光LZ11を出力することで、記録信号に基づいたマーク列を形成することができる。
なお、未だマーク列が形成されていない記録時においては、先に述べた反射サーボ光LZ2によるトラッキング制御が行われる。従って、記録層3に形成されるマーク列は、平面的に見れば、基準面5に形成されたスパイラル状又は同心円状のグルーブ(又はピット列)に沿った、スパイラル状又は同心円状とすることができる。
【0054】
また、上記のように記録再生光LZ11の合焦位置は可動レンズ84Aにより制御できる。従って、合焦位置となる深さ位置を変化させていくことで、レイヤL0〜Lnとしての各記録層3にマーク列を形成できる。つまり多層的なマーク記録が可能である。
【0055】
一方、ホログラムディスク1から情報を再生する場合、制御部61は、記録再生用レーザ81から記録再生光LZ11を比較的低い強度で出射させる。
また可動レンズ84Aの制御により、記録再生光LZ11の合焦位置を、再生目的とする所定の記録層3に相当する深さ位置とする。
これにより記録再生光LZ11は、再生目的の記録層3に照射される。このとき当該記録層3からの反射光として、マーク有無に応じた反射光成分を有する反射記録再生光LZ12が得られる。
【0056】
反射記録再生光LZ12は、記録再生光LZ11の光路を反対方向へ辿る。即ち対物レンズ25、ビームスプリッタ24、ビームスプリッタ23及びリレーレンズ84を順次介し、ビームスプリッタ83へ入射される。
ビームスプリッタ83は、反射記録再生光LZ12の一部を反射することにより集光レンズ86へ入射させる。集光レンズ86は、反射記録再生光LZ12を収束させ、フォトディテクタ87へ照射する。
【0057】
フォトディテクタ87は、反射記録再生光LZ11を受光して検出した光量に応じた電気信号(再生信号)を発生させる。これを図7に示した信号処理部63へ送出する。
信号処理部63は、フォトディテクタ87からの再生信号に対し2値化、デコード処理、エラー訂正処理等を施すことにより、ホログラムディスク1に記録されている情報を再生し、これを制御部61へ供給する。
これに応じて制御部61は、再生された情報を外部機器へ送出する。
【0058】
このように記録再生装置60は、ホログラムディスク1に情報を記録する際には、記録すべき情報に応じて初期ホログラムを破壊(変化)又は維持する。またホログラムディスク1から情報を再生する際には、記録再生光LZ11のマーク列からの反射光(反射記録再生光LZ12)を検出して、その検出結果を基に情報を再生する。
なお、ここでは記録再生装置60について説明したが、記録機能を持たない再生専用装置も、略同様の構成で実現可能である。
【0059】
<3.記録層の厚み>

先に、記録層3の厚みdは、干渉縞のピッチをPFとしたときに、8PF≦d≦30PF、好ましくは8PF≦d≦22PFの範囲とすると述べた。これについて説明する。
最適な記録層3の厚みを判定するために、各種の厚みとしたホログラムディスク1を用いて再生信号レベルを計算した。
【0060】
なお検討の際の検出系は、図10に模式的に示すように、ピンホール201を通した後で行い、ピンホール201の大きさ(直径D)は集光系200のNAに対して、直径4・λ/NAとした。集光系200とは、例えば上記図8のような記録再生装置60における反射記録再生光LZ12の光学系を表しており、ピンホール201を通した後にフォトディテクタ87で検出していると考えればよい。
またホログラムディスク1には、RLL(1−7)変調(RLL;Run Length Limited)による記録信号に基づき、1T=112nmのマーク列が、トラックピッチTp=0.36μmで形成されているものとした。
対物レンズ25のNAは0.85、再生光波長λr=405nmとした。
【0061】
図9(a)は、記録層3について各種の厚みとした場合の再生信号レベル(ボトムレベルI1、ピークレベルI2)を示している。
ボトムレベルI1とピークレベルI2は、例えば図9(b)に示すような再生信号波形におけるボトムレベルとピークレベルの値である。
再生信号にはDC成分が加わることから、ボトムレベルI1はほぼDC成分のレベルと考えることができ、ピークレベルI2−ボトムレベルI1が変調度となる。
図9(a)の縦軸は、ピークレベルI2とボトムレベルI1を示す信号レベルである。
横軸は、記録層3の厚みとしている。ここでは横軸の数値は、厚みd×λf/Nの値としている。なお、この第1の実施の形態では、初期化光の波長λfは再生光波長λrと同じ405nmである。
【0062】
また測定では、膨張型、収縮型、消失型の各場合のマーク形成において行った。例えばI1(1.1)、I2(1.1)として示す測定結果について、(1.1)とは、マーク形成後の干渉縞ピッチPMと初期の干渉縞ピッチPFについて、PM/PFの値である。従って、(1.1)或いは(1.2)を付したピークレベルI2とボトムレベルI1の測定結果は、干渉縞が膨張してマークが形成された膨張型のものである。
また(0.91)、(0.83)を付した測定結果は、干渉縞が収縮してマークが形成された収縮型のものである。
さらに、(uni.)を付した測定結果は、干渉縞が消失してマークが形成された消失型のものである。
【0063】
なお、初期化光の波長λfに対し、初期化処理で形成される干渉縞のピッチPFは、PF=λf/2Nである。(Nは記録層3の材料の屈折率)
従って、図9(a)の横軸の数値xを干渉縞のピッチPFを用いて示す場合、(x・λ/N)/(λ/2N)の値を用いればよい。例えば横軸の厚みの値「5」は10PF、「15」は30PFとなる。
【0064】
この図9(a)の結果からは、膨張型、収縮型、消失型のいずれの場合でも、記録層3の厚みが増すにつれて、信号レベルは高くなることがわかる。そしてピークレベルI2とボトムレベルI1は、膨張型、収縮型、消失型のいずれの場合でも、大きな差はない。
【0065】
ここで、ボトムレベルI1はDCレベルに相当すること、及び変調度(I2−I1)が十分得られるようにしたいということから、適切な厚みの範囲が決められる。
まず大まかにいえば、記録層3の厚みが薄いほど、変調度(I2−I1)は小さくなる。特に横軸「4」未満で、変調度が低下する。
一方、記録層3の厚みが厚くなるほど、DC成分(ボトムレベルI1)に対する変調度(I2−I1)の割合が小さくなっていく。つまり記録層3の厚みが厚くなるほど、S/Nが悪くなると言える。
【0066】
このことから、記録層3の厚みdとして適切な範囲は、範囲A1で示す「4」〜「15」、つまり8PF≦d≦30PFであるとすることができる。
つまり、まず8PF≦dであれば、変調度はほとんど低下しない。
またd≦30PFは、(I2−I1)/{(I2+I1)/2}>0.5となる範囲である。これは、再生信号の振幅平均レベルに対し、変調度が半分以上となる範囲といういみで、良好なS/Nの1つの指標である。
これらのことから、記録層3の厚みdは8PF≦d≦30PFであるとすることが適切である。
【0067】
またさらに、記録層3の厚みdとして、より適切な範囲は、範囲A2で示す「4」〜「11」、つまり8PF≦d≦22PFであるとすることができる。
まず、8PF≦dについては上記同様、変調度が低下しない範囲である。
d≦22PFとするのは、(I2−I1)≧I1という条件による。つまり変調分がDCレベル以上という条件である。この条件により、S/Nの点でよりよい再生信号が得られる。
さらにいえば、この22PF以下という厚みは、形成されるマークに対する記録層3の厚み効率が適切となるという意味もある。
図5に、各種厚みの場合に形成されるマークを示したが、厚みd=30PFの場合、記録マークの縦の長さに対して、干渉縞が形成された記録層3が余分に厚くなっていることが見てとれる。つまり、1つの記録層3として厚みが余分であるといえる。一方、厚みd=20PFの場合、さほどの無駄はない。厚みの無駄は、例えば全体で所定の厚みとされるホログラムディスク1における形成可能な記録層数にも関わる。従って、厚みの無駄は少ない方がよい。
この点と、上記の(I2−I1)≧I1という条件を加味すればd≦22PFとすることがより適切であるといえる。
【0068】
以上のように、本実施の形態では、上記範囲で記録層3の厚みを設定することで品質の良い再生信号が得られるようになる。
【0069】
<4.第2の実施の形態のホログラムディスク>

続いて第2の実施の形態のホログラムディスク1について説明する。なお、第2の実施の形態のホログラムディスク1は、その構造は図1と同様であるが、記録されるマークのホログラムピッチが一定になるものである。
【0070】
上述の第1の実施の形態では、初期化光波長λf=再生光波長λrであり、初期化状態の干渉縞のピッチλf/2Nは、再生光波長λrからみてのλr/2Nであって。従って、再生時にはマークが形成されていない部分(初期干渉縞のままの部分)ではブラッグマッチ、マーク部分でブラッグミスマッチとなり、その結果、再生光照射時にマーク部分と非マーク部分で異なる再生信号が得られる。
これ以外にも、再生光に対し、マーク部分がブラッグマッチ、非マーク部分がブラッグミスマッチとなるようにしてもよい。このようにするのが第2の実施の形態であり、このために初期化の際の初期化光波長λfを、再生光波長λrとは異なる波長とする。そしてマーク部分の干渉縞ピッチPMが、λr/2Nとなるようにするものである。
【0071】
図11(a)は、初期化光波長λfを、再生光波長λr×0.91とした場合、λr×0.83とした場合、λr×0.77とした場合のそれぞれについて、記録層3の厚みに応じた信号振幅レベルを示している。
縦軸の信号振幅レベルは、図11(b)に示すようにピークレベルからボトムレベルまでの振幅レベルである。
なお、この第2の実施の形態の場合、非マーク部分でブラッグミスマッチとなるため、DC光成分はほとんど無い。従って、信号振幅レベルは、変調度とほぼ等価と考えることができる。
図11(a)の横軸の値は、上述した図9(a)と同様、記録層3の厚みd×λf/Nの値としている。また、検出系は図10で説明したものと同様としている。
さらに図12は、図11(a)に対応して、ピークレベルI2、ボトムレベルI1を示している。
【0072】
この図11(a)、図12の結果から、初期化光波長λfを、再生光波長λrとは異なる波長とする場合でも、記録層3の厚みは、範囲A1で示す「4」〜「15」、つまり8PF≦d≦30PFの範囲、さらには「4」〜「11」、つまり8PF≦d≦22PFの範囲であれば、或る程度の変調度が得られ、適切であるといえる。
【0073】
<5.第3の実施の形態のホログラムディスク>

第3の実施の形態のホログラムディスク1を図13で説明する。
図13(a)は、ホログラムディスク1の初期化前の状態、図13(b)は初期化後の状態を示している。
この第3の実施の形態のホログラムディスク1は、感光層と非感光層が積層された記録層形成領域10を有することは、第1,第2の実施の形態と同様であるが、1つの感光層内に、その厚み方向の一部に干渉縞が形成されて成る記録層が、複数形成されている例である。
【0074】
ホログラムディスク1は図13(a)のように、ディスク基板6上に、非感光層(中間層4)と感光層7が交互に積層された記録層形成領域10を有する。そして記録再生時にレーザ光が入射される側はカバー層2とされる。
ここでカバー層2は、例えば50μm程度の厚みとされる。
中間層4(非感光層)の厚みは5〜15μm程度とされる。
感光層7(初期化前で記録層未形成)の厚みは例えば30μmとされる。
【0075】
そして、このようなホログラムディスク1では、初期化により、図13(b)に示すように、各感光層7内に、2つの記録層3が形成される。つまり、各感光層7内では、部分的に干渉縞が形成され、その干渉縞部分が記録層3となる。
例えば感光層7において上方の非感光層(中間層4やカバー層2)と接する部分と、下方の非感光層と接する部分とに、それぞれ干渉縞領域が形成され、記録層3とされる。
図13(c)は、記録動作によって記録層3内の干渉縞が変形して形成されるマークの例を示しているが、この場合も、記録層3としての干渉縞の膨張・収縮・消失によりマークが形成されるものとなる。
記録層3の厚みdは、上述の第1の実施の形態と同様、干渉縞のピッチをPFとしたときに、8PF≦d≦30PF、さらに好ましくは8PF≦d≦22PFの範囲とされる。
【0076】
このようなホログラムディスク1では、第1の実施の形態と同様にS/Nの良い再生信号を得ることができる。
さらに、第1の実施の形態では1つの感光層=1つの記録層3となったが、この第3の実施の形態では1つの感光層7内に複数の記録層3が形成される。このため、積層時に1つの感光層7の厚みは厚くなるものの、結局、所望の記録層数を得るための積層構造として、積層数を少なくできる。このためディスク製造工程の効率化が可能となる。
また積層数を少なくできることは記録層3と中間層4の界面での不要反射を減らすことができるという利点もある。
【0077】
なお、この図13(b)のように感光層7内に部分的に干渉縞領域(=記録層3)を形成する初期化は、例えば図14のような初期化装置で実行できる。
【0078】
レーザ光源41は、波長λf(例えば405nm)の初期化光を出力する。レーザのコヒーレンシーは10μm以下である。
この初期化光は、レンズ42、空間フィルタ44、レンズ43を介してビームスプリッタ45に達する。ビームスプリッタ45で分光された一方の光成分は、偏光ビームスプリッタ46→1/4波長板47→調整ミラー48→1/4波長板→偏光ビームスプリッタ46→レンズ53という光路をとり、レンズ53、54で光径が拡大される。そしてレンズ54から得られる平面波の平行光がホログラムディスク1の一方の面側から照射される。
【0079】
またビームスプリッタ45で分光された他方の光成分は、1/2波長板49→ミラー50→ミラー51という経路をたどり、レンズ52、55で光径が拡大される。そしてレンズ55から得られる平面波の平行光がホログラムディスク1の他方の面側から照射される。
【0080】
このような構成において、調整ミラー48は光軸方向に移動可能とされており、調整ミラー48の位置を変えることで、干渉縞が形成される深さ位置を変えることができる。
従って、図13(a)の各感光層7内での各記録層3の形成位置に合わせて調整ミラー48を制御しながら、順次、干渉縞形成を行っていくことで、図13(b)のような本例のホログラムディスク1を製造できる。
【0081】
なお、この第3の実施の形態のホログラムディスク1は、図7,図8で上述した記録再生装置で情報の記録及び再生が可能である。
【0082】
以上、実施の形態について説明してきたが、本技術は実施の形態の例に限らず、多様な変形例が考えられる。
記録媒体の層構造は、図1,図13に限定されない。少なくとも感光層と非感光層が積層された記録層形成領域を有し、感光層内に形成された干渉縞で記録層が形成されている記録媒体であればよい。
また、本技術のホログラムディスク1等の記録媒体は、マーク部分と非マーク部分(初期状態部分)との屈折率の差に応じた光量変化で再生するものとしたが、いわゆるホモダイン検出として記録された情報を再生することも可能である。例えば干渉縞が膨張してマークとなることにより、再生光照射時の反射光に、マーク部分と非マーク部分で位相差が生じる。この位相差を検出することで再生情報を得るようにすることもできる。
【符号の説明】
【0083】
1 ホログラムディスク、2 カバー層、3 記録層、4 中間層、5 基準面、6 ディスク基板、7 感光層、10 記録層形成領域、25 対物レンズ、60 記録再生装置、61 制御部、66 光ピックアップ、81 記録再生用レーザ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光層と非感光層が積層された記録層形成領域を有し、
上記感光層内に、記録媒体表面に平行に形成された干渉縞が、集光された光の照射部分において消去又は変化されることで情報が記録され、また集光された光の照射に対する反射光によって情報が再生される記録層が形成されている記録媒体。
【請求項2】
上記記録層の厚みdは、8PF≦d≦30PFである請求項1に記載の記録媒体。但し、PFは上記干渉縞のピッチである。
【請求項3】
上記記録層の厚みdは、8PF≦d≦22PFである請求項2に記載の記録媒体。
【請求項4】
上記感光層の厚み方向の全体が、上記干渉縞が形成された上記記録層とされている請求項2に記載の記録媒体。
【請求項5】
上記感光層内に、その厚み方向の一部に上記干渉縞が形成されて成る上記記録層が複数形成されている請求項2に記載の記録媒体。
【請求項6】
記録又は再生時の上記記録層に対する照射光のフォーカス又はトラッキング制御のための基準面が設けられている請求項2に記載の記録媒体。
【請求項7】
感光層と非感光層が積層された記録層形成領域を有し、上記感光層内に、記録媒体表面に平行に形成された干渉縞が、集光された光の照射部分において消去又は変化されることで情報が記録され、また集光された光の照射に対する反射光によって情報が再生される記録層が形成されている記録媒体に対する再生装置として、
上記記録層に対して光照射を行い、反射光を受光する光ピックアップと、
上記光ピックアップで受光した反射光の情報から上記記録層に記録されている情報を再生する信号処理部と、
を備えた再生装置。

【図1】
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【図3】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図14】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−150340(P2012−150340A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−9731(P2011−9731)
【出願日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】