説明

記録媒体の搬送方法

【課題】記録処理時間を短縮でき、ユーザーが意図しない記録媒体の無駄な搬送を防止することができる記録媒体の搬送方法を提供する。
【解決手段】複数の記録用紙を収容するカセットから記録用紙を順次搬送経路に送り出すステップS8と、搬送経路において上記送り出しがなされる送出位置よりも下流側の検知位置で、上記送り出された記録用紙の先端を検知するステップS9とを有する記録用紙の搬送方法であって、上記送り出される記録用紙の送出数を予め選択するステップS1と、検知位置において上記先端を検知された記録用紙Pの検知数をカウントするステップS10と、搬送経路において送出位置から検知位置までの距離が搬送方向における記録用紙の長さより大きい場合、上記検知数が上記送出数の一つ前の数と同数となった時に、記録用紙の上記送り出しがされないようにするステップS11と、を有するという手法を採用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体の搬送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
紙、布、フィルム等の各種の記録媒体に文字や画像等を記録する記録装置として、インクを断続的に噴射して記録処理を行うインクジェットプリンターが知られている。
このインクジェットプリンターでは、カセット等に収容された記録媒体をピックアップローラー等で搬送経路に送り出し、その搬送経路の所定位置においてインクジェットヘッドを走査しつつインクを噴射させて、記録処理を実施する構成となっている。
下記特許文献1には、搬送経路に記録媒体の先端または後端を検知可能なセンサを備え、このセンサの検知結果に基づいて、最上位の記録媒体と次位の記録媒体とを分離するリタードローラーを第1の状態と第2の状態とに切り替えるインクジェットプリンターが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−74581号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記インクジェットプリンターにおいては、記録媒体の後端を上記センサで検知した時をトリガーとして、次の記録媒体の送り出しを行う形態を採用している。
しかしながら、この形態では、記録媒体の連続した送り出しができず、要求された印字枚数(送出数)が多い場合等は、記録処理時間が長く必要となるという問題がある。一方で、記録媒体の先端を上記センサで検知した時をトリガーとして、記録媒体を連続して順次送り出す形態とすれば、記録処理時間を短縮できるが、記録媒体の搬送経路における送出位置と検知位置までの距離が記録媒体の長さより大きい場合、印字枚数目(最後の記録媒体)をセンサがカウントした時には既に、次の記録媒体(最後の次の記録媒体)の送り出しが行われていることとなるため、ユーザーが意図しない印字枚数が出力されてしまう虞がある。
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、記録処理時間を短縮でき、ユーザーが意図しない記録媒体の無駄な搬送を防止することができる記録媒体の搬送方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明は、複数の記録媒体を収容する収容部から上記記録媒体を順次搬送経路に送り出す送出工程と、上記搬送経路において上記送り出しがなされる送出位置よりも下流側の所定位置で、上記送り出された上記記録媒体の先端を検知する検知工程とを有する記録媒体の搬送方法であって、上記送り出される上記記録媒体の送出数を予め選択する選択工程と、上記所定位置において上記先端を検知された上記記録媒体の検知数をカウントするカウント工程と、上記搬送経路において上記送出位置から上記所定位置までの距離が搬送方向における上記記録媒体の長さより大きい場合、上記検知数が上記送出数の一つ前の数と同数となった時に、上記記録媒体の上記送り出しがされないようにする非送出工程と、を有するという手法を採用する。
このような手法を採用することによって、本発明では、送出位置から所定位置(検知位置)までの距離が記録媒体よりも長い搬送経路において、検知位置での記録媒体のカウント数が選択された送出数よりも一つ前の数となった時に、記録媒体の送り出しがなされないようにすることで、選択した送出数よりも多く記録媒体が送り出されるのを防止し、記録処理時間を短縮して生産性を向上させる。
【0007】
また、本発明においては、上記収容部は、上記搬送経路において上記送り出しがなされる送出位置を複数有し、上記送出工程では、上記複数の送出位置のうちのいずれか一つから上記送り出しを行い、上記複数の送出位置のうち少なくとも一つは、上記搬送経路において該送出位置から上記所定位置までの距離が搬送方向における上記記録媒体の長さより大きい関係を有するという手法を採用する。
このような手法を採用することによって、本発明では、選択した送出位置から検知位置までの距離が記録媒体よりも短い場合は、通常の記録媒体の連続した送り出しが可能となり、一方で、選択した送出位置から検知位置までの距離が記録媒体よりも長い場合は、非送出工程によって、選択した送出数よりも多く記録媒体が送り出されるのを防止し、記録媒体の連続した送り出しが可能となる。
【0008】
また、本発明においては、上記送出位置には、上記記録媒体を順次搬送経路に送り出すピックアップローラーが設けられており、上記送出工程では、上記ピックアップローラーを回転駆動させることで上記送り出しを行い、上記非送出工程では、上記ピックアップローラーの回転駆動を停止させることで上記送り出しがされないようにするという手法を採用する。
このような手法を採用することによって、本発明では、ピックアップローラーの回転駆動を制御することで、記録媒体の送出/非送出を制御する。
【0009】
また、本発明においては、上記非送出工程の後に、上記送出数目の上記記録媒体の上記送り出す第2送出工程を有するという手法を採用する。
このような手法を採用することによって、本発明では、選択した送出数目の記録媒体を出力することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態におけるインクジェットプリンターの概略構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施形態におけるインクジェットプリンターの要部構成図である。
【図3】本発明の実施形態における記録ヘッドの内部構成を示す部分断面図である。
【図4】本発明の実施形態における第1の搬送経路を用いる場合の記録用紙の搬送方法を説明するための図である。
【図5】本発明の実施形態における第2の搬送経路を用いる場合の記録用紙の搬送方法を説明するための図である。
【図6】本発明の実施形態における記録用紙の搬送の動作を説明する図である。
【図7】本発明の実施形態における記録用紙の搬送方法を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る記録方法の実施形態について、図を参照して説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。本実施形態では、本発明に係る記録方法を実施する記録装置として、インクジェット式プリンター(以下、インクジェットプリンターと称する)を例示する。
【0012】
図1は、本発明の実施形態におけるインクジェットプリンター1の概略構成を示すブロック図である。図2は、本発明の実施形態におけるインクジェットプリンター1の要部構成図である。図3は、本発明の実施形態における記録ヘッド5の内部構成を示す部分断面図である。
なお、図2に示すように、XYZ直交座標系を設定し、XYZ直交座標系を参照しつつ各構成の位置関係について説明する場合がある。
【0013】
インクジェットプリンター1は、記録用紙Pにインク(流体)を噴射することで記録用紙Pに所定の情報や画像を印字する記録処理(印刷処理)を行うものである。このインクジェットプリンター1は、図1に示すように入力装置2と、記憶装置3と、制御装置4と、記録ヘッド5と、記録用紙搬送装置6と、記録用紙送出装置7と、用紙端検知センサ8とを有する。
【0014】
入力装置2は、制御装置4に外部からの記録処理に係る各種指令やデータを入力するものであり、ユーザーが操作する操作パネルや、記録ヘッド5から記録用紙Pにインクを噴射し所定の画像(パターン)を形成するための画像データ(パターンデータ)等を外部から入力する通信装置等を含む。なお、ユーザーは、操作パネルを操作することで記録処理を行う記録用紙Pの種類や印字枚数等を選択可能な構成となっている。
記憶装置3は、記録処理に係る各種構成機器の動作プログラムや入力装置2から入力されるデータ等を記憶するもので、RAMやEEPROM等を有する。
制御装置4は、各種構成機器の動作を電気的に制御するものであり、入力装置2、記憶装置3、記録ヘッド5、記録用紙搬送装置6、記録用紙送出装置7、用紙端検知センサ8との間でデータ授受を行う各種入出力インターフェイス回路や、該データに基づき所定の演算処理等を行うCPUやASIC等を有する。
【0015】
記録ヘッド5は、図2に示すように、記録用紙Pが記録用紙搬送装置6によって搬送される搬送経路60の所定位置(以下、記録位置と称する)に配置されている。記録ヘッド5は、インクを噴射するノズル形成面21Aを有し、このノズル形成面21Aが下側(−Z側)に向くように配置されている。この記録ヘッド5は、例えば、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色に応じたインクを噴射可能な構成となっている。また、記録ヘッド5は、キャリッジ50に搭載されて、搬送経路60の幅方向(Y軸方向)に往復移動(走査移動)することが可能な構成となっている。
【0016】
図3に示すように、記録ヘッド5は、ヘッド本体18と、ヘッド本体18に接続された流路形成ユニット22とを備えている。流路形成ユニット22は、振動板19と、流路基板20と、ノズル基板21とを備えると共に、共通インク室29と、インク供給口30と、圧力室31とを形成する。さらに、流路形成ユニット22は、ダイヤフラム部として機能する島部32と、共通インク室29内の圧力変動を吸収するコンプライアンス部33とを備える。ヘッド本体18には、固定部材26と共に駆動ユニット24を収容する収容空間23と、インクを流路形成ユニット22に案内する内部流路28とが形成される。
【0017】
上記構成の記録ヘッド5によれば、ケーブル27を介して駆動ユニット24に駆動信号が入力されると、圧電素子25が伸縮する。これにより、振動板19がキャビティに接近する方向及び離れる方向に変形(移動)する。このため、圧力室31の容積が変化し、インクを収容した圧力室31の圧力が変動する。この圧力の変動によって、ノズル17から、インクが噴射される。
【0018】
記録用紙搬送装置6は、図2に示すように、記録用紙送出装置7によって搬送経路60に送り出された記録用紙Pを、搬送経路60に沿って搬送する複数の搬送ローラー61を有する。搬送ローラー61は、Y軸方向に延びる回転軸周りに同期して回転することにより記録用紙Pをニップして搬送する構成となっている。また、搬送ローラー61の回転軸には、ロータリー式エンコーダー(不図示)が設けられており、記録用紙Pの搬送位置、搬送速度、搬送量を制御可能な構成となっている。なお、図2中の符号61aは、中間ローラーを、符号61bは、リタードローラーを示す。リタードローラー61bは、中間ローラー61aとの接触位置(以下、分離位置と称する)において、重なった記録用紙Pを一枚一枚分離するように回転駆動する構成となっている。
【0019】
記録用紙送出装置7は、積層した記録用紙Pを収容するカセット(収容部)71を有する。本実施形態のカセット71は、2段構成となっており、2つのカセット71A,71Bを備える構成となっている。
カセット71Aは、内部に収容している最上の記録用紙Pに当接して、Y軸方向に延びる回転軸周りに回転することにより記録用紙Pを搬送経路60に送り出すピックアップローラー72Aを有する。なお、ピックアップローラー72Aが設けられる位置を第1の送出位置Aと称する。また、カセット71Bは、内部に収容している最上の記録用紙Pに当接して、Y軸方向に延びる回転軸周りに回転することにより記録用紙Pを搬送経路60に送り出すピックアップローラー72Bを有する。なお、ピックアップローラー72Aが設けられる位置を第2の送出位置Bと称する。
上記のように本実施形態の記録用紙送出装置7は、搬送経路60に記録用紙Pを送り出す送出位置を、第1の送出位置Aと第2の送出位置Bの2つ有する構成となっている。
【0020】
用紙端検知センサ8は、搬送経路60において、第1の送出位置A及び第2の送出位置Bより下流側であって、記録ヘッド5が設けられる記録位置よりも上流側の所定位置(以下、検知位置Cと称する)に設けられている。用紙端検知センサ8は、検知位置Cを通過した記録用紙Pの端(先端及び後端)を検出するセンサであり、本実施形態では、機械的な機構によって記録用紙Pの端を検知するメカニカルセンサを用いている。より詳しくは、用紙端検知センサ8は、搬送経路60上に突出すると共にY軸方向に延びる軸周りに回動可能なレバーを備えて、このレバーが記録用紙Pと接触したときの回動を検知することにより、記録用紙Pの端を検知する構成となっている。
【0021】
続いて、上記構成のインクジェットプリンター1における、本発明の特徴的な記録用紙Pの搬送方法について、図4〜図7を参照して説明する。この説明においては、第1の送出位置Aからの搬送経路60(第1の搬送経路60A)を用いる搬送方法の場合と、第2の送出位置Bからの搬送経路60(第2の搬送経路60B)を用いる搬送方法の場合について説明する。なお、説明の容易化のため、カセット71A及びカセット71Bには、同一の用紙サイズ、例えばJIS規格のA4判がそれぞれ収容されているものとする。
図4は、本発明の実施形態における第1の搬送経路60Aを用いる場合の記録用紙Pの搬送方法を説明するための図である。図5は、本発明の実施形態における第2の搬送経路60Bを用いる場合の記録用紙Pの搬送方法を説明するための図である。図6は、本発明の実施形態における記録用紙Pの搬送の動作を説明する図である。図7は、本発明の実施形態における記録用紙Pの搬送方法を説明するフローチャートである。
【0022】
図4に示すように、第1の搬送経路60Aを用いる場合、搬送経路60においては、第1の送出位置Aから検知位置Cまでの距離が搬送方向における記録用紙Pの長さより小さい構成となっている。一方、図5に示すように、第2の搬送経路60Bを用いる場合、搬送経路60においては、第2の送出位置Bから検知位置Cまでの距離が搬送方向における記録用紙Pの長さより大きい構成となっている。
本実施形態のインクジェットプリンター1は、後述するフローに従い、第1の搬送経路60Aを選択した場合と、第2の搬送経路60Bを選択した場合とで、搬送の形態を切り替える構成となっている。
【0023】
また、本実施形態のインクジェットプリンター1は、図6(a)に示す一枚給紙の動作と、図6(b)に示す重ね給紙(連続給紙)の動作との切り替えが可能な構成となっている。
一枚給紙時においては、1枚目の給紙、印刷、排出の処理が終了した後に、2枚目の給紙を開始する、通常の給紙(送出・搬送)の形態となる。この時は、用紙端検知センサ8が、検知位置Cにおいて記録用紙Pの後端を検知したことをトリガーとして、次の記録用紙Pの給紙を行う。
一方、重ね給紙時においては、1枚目の給紙、印刷、排出の処理が終了していない内に2枚目の給紙を開始する、連続給紙の形態となる。この時は、用紙端検知センサ8が、検知位置Cにおいて記録用紙Pの先端を検知したことをトリガーとして、次の記録用紙Pの給紙を行う。
【0024】
以下、具体的な搬送方法について、図7を参照して説明する。
【0025】
先ず、ユーザーは、入力装置2の操作パネルを操作して、記録用紙Pの種類、所定の画像データを印字する印字枚数(送出数)を選択する(ステップS1:選択工程)。
以下の説明では、ステップS1において、記録用紙Pの種類としてJIS規格のA4判が選択され、印字枚数が2枚以上(例えば10枚)と選択された場合を例に挙げて説明する。なお、ステップS1における選択印字枚数が2枚以上としたのは、選択印字枚数が1枚であれば、図6(a)に示す通常の一枚給紙の動作で足りるため、図6(b)に示す重ね給紙の動作が必要ないからである。
【0026】
ステップS1で、記録用紙Pの種類、印字枚数が選択されると、制御装置4は、それらのデータを記憶装置3に記憶させる。そして、制御装置4は、選択されたA4判の記録用紙Pを収容しているカセット(カセット71Aあるいはカセット71B)を選択する(ステップS2)。
【0027】
次に、ステップS3においては、制御装置4は、予め記憶装置3に記憶させておいたデータを読み出して、選択した記録用紙Pの搬送方向の長さと、選択したカセットの送出位置から検知位置Cまでの搬送経路60の距離とを比較し、そのどちらが大きいかを判定する。
ステップS2でカセット71Aが選択され、ステップS3において、図4に示すように第1の送出位置Aから検知位置Cまでの距離が搬送方向における記録用紙Pの長さより小さいと判定された場合は、ステップS4に移行する。一方、ステップS2でカセット71Bが選択され、ステップS3において、図5に示すように第2の送出位置Bから検知位置Cまでの距離が搬送方向における記録用紙Pの長さより大きいと判定された場合は、ステップS8に移行する。
【0028】
ステップS4に移行した場合は、図4に示すように、第1の送出位置Aから検知位置Cまでの距離が搬送方向における記録用紙Pの長さより小さいため、記録用紙Pを連続して順次送り出す重ね給紙(ステップS4)を行っても、印字枚数目(10枚目)の記録用紙Pの先端を用紙端検知センサ8がカウントした時(ステップS5、S6)には、次の記録用紙P(11枚目)の送り出しが行われることは物理的にない。そのため、ステップS6において、検知カウントが10となった時に、ピックアップローラー72Aの回転駆動を停止させる(ステップS7)ことで、ユーザーが意図する印字枚数を出力することができる。
【0029】
一方で、図5に示すように、第2の送出位置Bから検知位置Cまでの距離が搬送方向における記録用紙Pの長さより大きい場合は、印字枚数目(10枚目)の記録用紙Pの先端を用紙端検知センサ8がカウントした時には既に、次の記録用紙P(11枚目)の送り出しが行われていることとなるため、ユーザーが意図しない印字枚数が出力されてしまう虞がある。このため、ステップS3からステップS8に移行した場合は、次の処理を行う。
【0030】
ステップS8においては、制御装置4は、図6(b)に示す重ね給紙動作を実行させる。具体的には、記録用紙送出装置7に制御信号を送り、カセット71Bに設けられたピックアップローラー72Bを回転駆動させ、カセット71Bから記録用紙Pを搬送経路60(第2の搬送経路60B)に順次連続して送り出させる(送出工程)。また同時に、制御装置4は、記録用紙搬送装置6に制御信号を送り、搬送ローラー61を回転駆動させ、カセット71Bから送り出された記録用紙Pを搬送経路60に沿って搬送させる。
搬送経路60に沿って搬送された記録用紙Pは、検知位置Cにおいてその先端が、用紙端検知センサ8により検知される(ステップS9:検知工程)。用紙端検知センサ8の検知結果は、制御装置4に出力され、制御装置4は、その検知回数を記憶装置3に記憶させてカウントする(ステップS10:カウント工程)。
【0031】
ステップS10では、制御装置4は、用紙端検知センサ8が記録用紙Pの先端を検知した検知回数と、ステップS1で選択された印字枚数の一つ目の数(9枚目)とが、同数となったか否かを判定する。
ステップS10においてカウント数が、選択した印字枚数の一つ前の数(9枚目)に満たない場合は、ステップS3に戻り、記録用紙Pの送出・搬送を続行させる。
一方、ステップS10においてカウント数が、選択した印字枚数の一つ前の数(9枚目)と同数となったら、ステップS11に移行して、制御装置4は、ピックアップローラー72Bの回転駆動を停止させる(非送出工程)。
ステップS11では、第2の送出位置Bから検知位置Cまでの距離が記録用紙Pよりも長い場合に、検知位置Cでの記録用紙Pのカウント数が、選択された印字枚数よりも一つ前の数となった時に、記録用紙Pの送り出しがなされないようにすることで、選択した印字枚数よりも多く記録用紙Pが送り出されるのを防止する。
【0032】
次に、ステップS12においては、制御装置4は、選択した印字枚数目(10枚目、以下、ラスト用紙と称する)の先端が、リタードローラー61bと中間ローラー61aとの間の分離位置を通過しているか否かを判定する。なお、ラスト用紙が分離位置を通過したか否かは、第2の送出位置Bから分離位置までの距離と、ピックアップローラー72Bによるラスト用紙の搬送距離(ステップS11による停止時まで)とを比較することにより判定する。あるいは、リタードローラー61bと中間ローラー61aとの間にラスト用紙が挟みこまれたことを検知するセンサを設け、そのセンサの検知結果により判定する。
【0033】
ステップS12において、ラスト用紙の先端が分離位置を通過していれば、搬送ローラー61の回転駆動のみによって、ラスト用紙を記録位置まで搬送できるため、ピックアップローラー72Bの回転駆動は停止したままとして、送出ジョブを終了させる。
一方、ステップS12において、ラスト用紙の先端が分離位置を通過していなければ、選択した印字枚数である10枚よりも一枚少ない9枚しか出力されなくなるため、この場合は、ステップS13に移行する。
【0034】
ステップS13においては、制御装置4は、一枚給紙動作を実行させる。具体的には、用紙端検知センサ8が、検知位置Cにおいてラスト用紙の一つ前(9枚目)の記録用紙Pの後端を検知したことをトリガーとして、制御装置4は、ピックアップローラー72Bの回転駆動を再開させ、ラスト用紙の一枚だけの送り出しを行う(第2送出工程)。ステップS13では、分離位置を先端が通過しなかったラスト用紙(10枚目)を送り出することによって、ユーザーが意図する印字枚数を出力する。
【0035】
以上のように、本実施形態によれば、複数の記録用紙Pを収容するカセット71から記録用紙Pを順次搬送経路60に送り出すステップS8と、搬送経路60において上記送り出しがなされる送出位置よりも下流側の検知位置Cで、上記送り出された記録用紙Pの先端を検知するステップS9とを有する記録用紙Pの搬送方法であって、上記送り出される記録用紙Pの送出数を予め選択するステップS1と、検知位置Cにおいて上記先端を検知された記録用紙Pの検知数をカウントするステップS10と、搬送経路60において送出位置から検知位置Cまでの距離が搬送方向における記録用紙Pの長さより大きい場合、上記検知数が上記送出数の一つ前の数と同数となった時に、記録用紙Pの上記送り出しがされないようにするステップS11と、を有するという手法を採用し、送出位置から検知位置Cまでの距離が記録用紙Pよりも長い搬送経路60において、検知位置での記録用紙Pのカウント数が選択された送出数よりも一つ前の数となった時に、記録用紙Pの送り出しがなされないようにすることで、選択した送出数よりも多く記録用紙Pが送り出されるのを防止し、記録処理時間を短縮して生産性を向上させることが可能となる。
【0036】
以上、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0037】
例えば、上述の実施形態においては、記録用紙送出装置7が2段のカセット71を有して送出位置が2つの形態について説明したが、例えば、カセット71が3段であっても、4段であってもよく、また、送出位置が3つであっても、4つであってもよい。
【0038】
また、例えば、上述の実施形態においては、記録装置がインクジェットプリンター1である場合を例にして説明したが、インクジェットプリンターに限られず、複写機及びファクシミリ等の装置であってもよい。
【符号の説明】
【0039】
1…インクジェットプリンター、4…制御装置、8…用紙端検知センサ、60…搬送経路、60A…第1の搬送経路、60B…第2の搬送経路、71…カセット(収容部)、71A…カセット、71B…カセット、72A…ピックアップローラー、72B…ピックアップローラー、A…第1の送出位置、B…第2の送出位置、C…検知位置(所定位置)、P…記録用紙(記録媒体)、S1…ステップ(選択工程)、S8…ステップ(送出工程)、S9…ステップ(検知工程)、S10…ステップ(カウント工程)、S11…ステップ(非送出工程)、S13…ステップ(第2送出工程)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の記録媒体を収容する収容部から前記記録媒体を順次搬送経路に送り出す送出工程と、前記搬送経路において前記送り出しがなされる送出位置よりも下流側の所定位置で、前記送り出された前記記録媒体の先端を検知する検知工程とを有する記録媒体の搬送方法であって、
前記送り出される前記記録媒体の送出数を予め選択する選択工程と、
前記所定位置において前記先端を検知された前記記録媒体の検知数をカウントするカウント工程と、
前記搬送経路において前記送出位置から前記所定位置までの距離が搬送方向における前記記録媒体の長さより大きい場合、前記検知数が前記送出数の一つ前の数と同数となった時に、前記記録媒体の前記送り出しがされないようにする非送出工程と、を有することを特徴とする記録媒体の搬送方法。
【請求項2】
前記収容部は、前記搬送経路において前記送り出しがなされる送出位置を複数有し、
前記送出工程では、前記複数の送出位置のうちのいずれか一つから前記送り出しを行い、
前記複数の送出位置のうち少なくとも一つは、前記搬送経路において該送出位置から前記所定位置までの距離が搬送方向における前記記録媒体の長さより大きい関係を有することを特徴とする請求項1に記載の記録媒体の搬送方法。
【請求項3】
前記送出位置には、前記記録媒体を順次搬送経路に送り出すピックアップローラーが設けられており、
前記送出工程では、前記ピックアップローラーを回転駆動させることで前記送り出しを行い、
前記非送出工程では、前記ピックアップローラーの回転駆動を停止させることで前記送り出しがされないようにすることを特徴とする請求項1または2に記載の記録媒体の搬送方法。
【請求項4】
前記非送出工程の後に、前記送出数目の前記記録媒体の前記送り出す第2送出工程を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の記録媒体の搬送方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−121715(P2011−121715A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−280639(P2009−280639)
【出願日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】