説明

記録媒体制御装置、記録媒体制御方法、および、プログラム

【課題】メディアに設定可能な転送速度モードが複数存在する場合に、実効効率の最も高いデータ転送速度が設定されるようにする。
【解決手段】デバイスドライバ400において、転送速度モード候補認識部410はメディア500が対応可能な転送速度モードの候補を認識する。転送速度モード設定部420は、候補として認識された転送速度モードを順次設定する。実効転送速度計測処理部430は、設定された候補の転送速度モードごとに実効転送速度を計測する。転送速度モード判定部440は、候補の転送速度モードごとに、計測された実効転送速度と規定の転送クロック周波数との比を求め、この比の値に基づいて最も効率がよいとされる最大効率転送速度モードを判定する。転送速度モード設定部420は、ファイルアクセス時に対応するデータ転送速度として最大効率転送速度モードを設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体制御装置に関し、特に、複数の転送速度モードを設定可能な記録媒体を制御する記録媒体制御装置、および、その方法ならびに当該方法をコンピュータに実行させるプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、記録媒体に対するデータの書込み、読出し時におけるデータ転送速度は高速に設定されるほど好ましい。そこで、例えば次のような技術が知られている。すなわち、記録媒体に対してデータ転送レートを切り替えながら試験データを書き込んで、その読出し結果からエラー発生率を求め、エラー率が許容限界値となるパラメータ値を設定して記録媒体に記録する。そして、例えば記憶装置の起動時に記録媒体に記録された上記のパラメータ値を設定し、記録媒体に対するデータの読出しおよび書込みを行おうというものである(例えば特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−225711号公報(図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の従来技術のもとでは、記録媒体が対応可能な最高のデータ転送速度でデータの記録再生を実行することができる。しかし、現状は、記録媒体が対応可能なデータ転送速度が相当に高くなっているうえに、異なるデータ転送速度が規定される複数のモード(転送速度モード)が存在する状況にある。このような状況においては、例えば記録媒体に対して常に最高の転送速度モードを設定して記録再生を行うことが効率的であるとは限らない。
【0005】
よく知られているように、データ転送における実際の転送速度(実効転送速度)は、通常、最大速度(理論値)より低くなる。また、最大速度に対してどの程度の比率の実効転送速度が得られるのかについても、そのときの環境や条件等に応じて異なる。このことからすれば、例えば複数の転送速度モードにおいて得られる実効転送速度について顕著な差がみられないという状況も生じ得る。そのうえで、例えばデータ転送速度の高速化に伴っては消費電力の増加や輻射ノイズの増加などの問題が顕著に表れてくる。このような観点からすれば、常に最速の転送速度モードを設定するのではなく、そのときの実効転送速度などの状況に応じてより適切な転送速度モードを設定してやることが好ましい。
【0006】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、記録媒体に対する記録再生に際して、最適なデータ転送速度が設定されるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その第1の側面は、記録媒体に対応して設定可能なデータ転送速度を示す転送速度モードの候補を認識する候補認識部と、上記候補として認識された転送速度モードごとに実効転送速度を計測する実効転送速度計測部と、上記候補として認識された転送速度モードごとの上記実効転送速度に基づいて上記転送速度モードごとの実効効率を算出し、上記候補として認識された転送速度モードのうちから上記実効効率が最も高い転送速度モードを設定対象転送速度モードとして判定する転送速度モード判定部と、上記設定対象転送速度モードとして判定された転送速度モードが示すデータ転送速度により上記記録媒体に対する記録再生が行われるように設定する転送速度モード設定部とを具備する記録媒体制御装置である。これにより、記録媒体への記録再生のためのデータ転送に際して設定可能な複数の転送速度モードの候補のうちから、最適とされる転送速度モードを実効効率に基づいて判定するという作用をもたらす。
【0008】
また、この第1の側面において、上記記録媒体に対する記録または再生を伴う機器動作内容に応じて、転送速度モードを設定する際の優先事項が実効効率または速度の何れであるのかを判定する優先事項判定部をさらに具備し、上記転送速度モード判定部は、上記優先事項が実効効率であると判定されている場合には上記実効効率が最も高い転送速度モードを上記設定対象転送速度モードとして判定し、上記優先事項が速度であると判定されている場合には上記実効効率が最も高い転送速度モードに代えて上記実効転送速度が最も高い転送速度モードを上記設定対象転送速度モードとして判定するようにしてもよい。これにより、実効効率を優先すべき機器動作内容に応じては実効効率が最も高い転送速度モードを設定し、速度を優先すべき機器動作内容に応じては実効転送速度が最も高い転送速度モードを設定するという作用をもたらす。
【0009】
また、この第1の側面において、上記転送速度モード判定部は、上記記録媒体に対してファイルを記録または再生するのに最低限必要な必須実効転送速度と上記実効転送速度とを比較し、上記実効転送速度のほうが低い転送速度モードを上記候補から除外するようにしてもよい。これにより、ファイルの記録再生が正常に行える実効転送速度が計測された転送速度モードのうちから転送速度モードを設定するという作用をもたらす。
【0010】
また、この第1の側面において、上記実効転送速度計測部は、上記候補の転送速度モードを順次設定して当該設定された転送速度モードごとに、上記記録媒体に対する記録または再生を伴う機器動作内容が記録である場合に応じては記録媒体に対するデータ書込みを実行しながら上記実効転送速度を計測する記録対応計測処理を実行し、上記機器動作内容が再生である場合に応じては上記記録媒体に対するデータ読出しを実行しながら上記実効転送速度を計測する再生対応計測処理を実行するようにしてもよい。これにより、機器動作内容が記録と再生の何れであるのかに応じて、再生対応計測処理または記録対応計測処理の一方のみを実行するという作用をもたらす。
【0011】
また、この第1の側面において、上記実効転送速度計測部は、上記候補の転送速度モードを順次設定して当該された転送速度モードごとに、記録媒体に対するデータ書込みを実行しながらデータ書込みの際の実効転送速度を計測する記録対応計測処理と記録媒体に対する読出しを実行しながらデータ読出しの際の実効転送速度を計測する再生対応計測処理とを実行し、上記転送速度モード判定部は、上記データ書込みの際の実効転送速度と上記データ読出しの際の実効転送速度との平均値である上記実効転送速度に基づいて上記実効効率を算出するようにしてもよい。これにより、記録時と再生時とを総合した実効転送速度により実効効率を算出するという作用をもたらす。
【0012】
また、この第1の側面において、上記転送速度モード判定部は、上記実効転送速度と上記転送速度モードによって規定される転送クロック周波数との比率を上記実効効率として算出するようにしてもよい。これにより、計測された実効転送速度と転送クロック周波数を利用して実効効率に相当する値を算出するという作用をもたらす。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、記録媒体に対する記録再生に際して最適なデータ転送速度を設定可能となり、例えば消費電力やノイズの低減なども図られるという効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明が具現化されるビデオカメラ100の構成例を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態に対応するメディアアクセス処理の階層構成例を示す図である。
【図3】第1の実施の形態におけるデバイスドライバ400の機能構成例を示す図である。
【図4】第1の実施の形態におけるデバイスドライバ400の処理手順例を示す図である。
【図5】第1の実施の形態における最大効率転送速度モード判定のための処理手順例を示す図である。
【図6】第1の実施の形態における、1つの転送速度モード候補に対応する評価値算出のための処理手順例を示す図である。
【図7】計測結果情報601の内容の具体例を示す図である。
【図8】メディア500のフォーマット構造例を示す図である。
【図9】第2の実施の形態におけるアプリケーション200とデバイスドライバ400の機能構成例を示す図である。
【図10】優先事項テーブルの内容例を示す図である。
【図11】第2の実施の形態におけるアプリケーション200の処理手順例を示す図である。
【図12】第2の実施の形態におけるデバイスドライバ400の処理手順例を示す図である。
【図13】第2の実施の形態における最速転送速度モード判定の処理手順例を示す図である。
【図14】第3の実施の形態におけるアプリケーション200とデバイスドライバ400の機能構成例を示す図である。
【図15】第3の実施の形態におけるアプリケーション200の処理手順例を示す図である。
【図16】第3の実施の形態におけるデバイスドライバ400の処理手順例を示す図である。
【図17】第3の実施の形態におけるデバイスドライバ400の処理手順例を示す図である。
【図18】第3の実施の形態における最大効率転送速度モード判定の処理手順例を示す図である。
【図19】第4の実施の形態として、本発明が具現化されるパーソナルコンピュータ700の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態(以下、実施の形態と称する)について説明する。説明は以下の順序により行う。
1.第1の実施の形態(転送送速度モード設定の基本例)
2.第2の実施の形態(機器動作内容に応じた転送速度モード設定)
3.第3の実施の形態(ファイルにビットレートが規定される場合に応じた転送速度設定)
4.第4の実施の形態(転送速度モード設定の構成が適用されるパーソナルコンピュータ装置の構成例)
【0016】
<1.第1の実施の形態>
[ビデオカメラ装置の構成例]
図1は、本発明の実施の形態が具現化される記録媒体制御装置の一例としてのビデオカメラ100の構成例を示す図である。このビデオカメラ100は、光学レンズ部101、カメラ機能部102、光電変換部103、画像信号処理部104、画像入出力部105、表示部106、音声処理部107、音声入出力部108、操作入力部109、通信部110を備える。また、CPU(Central Processing Unit)111、RAM112(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)113、メディアドライブ120、電源部114を備える。
【0017】
光学レンズ部101は、内部に、被写体を撮像するためのレンズ群、絞り調整機構、フォーカス調整機構、ズーム機構、シャッター機構、フラッシュ機構、および、手ぶれ補正機構などを備える。カメラ機能部102は、CPU111からの制御信号を受けて、光学レンズ部101に供給する制御信号を生成する。そして、生成した制御信号を光学レンズ部101に供給して、ズーム制御、シャッター制御、および、露出制御などの制御を行う。
【0018】
光電変換部103は撮像素子により構成され、その結像面に、光学レンズ部101を通じた像が結像される。なお、撮像素子には、CCD(Charge Coupled Device)センサやCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサなどを採用できる。この光電変換部103は、例えばシャッター操作などに応じてCPU111から供給される画像取り込みタイミング信号を受けて、結像面に結像されている被写体像を画像信号に変換し、画像信号処理部104に供給する。
【0019】
画像信号処理部104は、CPU111からの制御信号に基づいて、供給された画像信号についての所要の信号処理を実行する。例えば、ガンマ調整、ゲイン調整、画質調整などの処理を実行する。また、必要に応じてMPEG(Moving Picture Experts Group)等の圧縮方式による画像圧縮処理を実行する。
【0020】
画像信号処理部104は、所定方式の画像信号を生成して画像入出力部105から外部に出力させることができる。また、画像入出力部105は、外部から所定方式の画像信号を入力可能ともされており、この入力された画像信号を画像信号処理部104の処理を経て表示部106に表示させることができる。また、画像信号処理部104は、画像入出力部105が入力した画像信号を記録用画像データに変換して、例えばCPU111経由でメディアドライブ120に供給することもできる。
【0021】
また、ビデオカメラ100は、音声処理部107及び音声入出力部108を備えることで、音声信号の入出力が可能とされている。音声入出力部108は音声信号の入出力が行われる部位である。まず、音声入出力部108から入力した音声信号は音声信号を音声処理部107にて、所要の音声信号処理が施される。例えば、所定の音声圧縮符号化方式による圧縮処理などを行う。また、音声入出力部108は、音声処理部107から供給される所定形式の音声信号を外部に出力させることもできる。
【0022】
この場合のCPU111は、画像信号処理部104から供給される圧縮画像信号と音声処理部107から供給される圧縮画像信号データとにより、所定形式の画像音声ファイルを形成可能とされている。ここでの画像音声ファイルとは、例えば動画に対して音声が同期して再生される形式の動画ファイルなどである。
【0023】
上記画像音声ファイルのデータは、例えばCPU111の制御によって書込みデータとしてメディアドライブ120に供給される。メディアドライブ120は、CPU111との連携により、異なる複数の種別のメディア(記憶媒体)に対応して例えば物理層レベルでのデータの書込み、読出しを実行可能なように構成される。
【0024】
この図においては、メディアドライブ120がデータの書込み、読出しを行うメディア500として、磁気ディスク500A、光ディスク500B、光磁気ディスク500Cおよび半導体メモリ500Dが示されている。これらのメディア500は、例えばビデオカメラ100に固定的に内蔵されるものであってもよい。また、ビデオカメラ100に対して装脱可能な、所定の規格に従ったリムーバブル形式のものとされてもよい。
【0025】
メディアドライブ120は、ファイルの記録などのために記録データが転送されてくるのに応じては、この記録データを制御対象として選択されているメディア500に対して書き込む処理を行う。なお、メディア500に記録されたデータは例えば所定のファイルシステム方式によってファイル単位で管理される。
【0026】
また、例えばメディア500に記録されているファイルの再生として、画像音声ファイルを再生するときには、CPU111及びメディアドライブ120は、指定された画像音声ファイルが記録されているメディアにアクセスして読出しを行う。このようにして読み出される画像音声ファイルは、例えばCPU111の処理により、圧縮画像信号データと圧縮音声信号データとに分離される。そのうえで、圧縮画像信号データについては画像信号処理部104に受け渡し、圧縮音声信号については、音声処理部107に受け渡す。
【0027】
この場合の画像信号処理部104及び音声処理部107は、それぞれ、上記のようにして転送されてきた圧縮音声信号データと圧縮画像信号データについて、復調処理を含む所要の再生信号処理を実行する。これにより、圧縮ビデオデータを再生した画像を表示部106にて表示させることができる。また、この画像の再生時間に同期して、圧縮音声信号データを再生して得られる音声信号を、音声入出力部108に含まれるとされるスピーカにより音声として出力させたり、ヘッドフォン端子から出力させることができる。
【0028】
CPU111は、プログラムを実行することでビデオカメラ100についての各種制御処理を実行する。RAM112は、CPU111がプログラムに従った処理を実行するときの作業領域(ワークメモリ)として使用されるものである。ROM113は、CPU111が実行する各種プログラムのほか、CPU111が処理を実行するのに使用する各種設定情報などが記憶される部位である。
【0029】
この場合の操作入力部109は、ビデオカメラ1に備えられる各種操作子を一括して示しているものとされる。例えば、この操作入力部109における操作子としては、撮像画像の記録開始、停止に応じて操作される記録ボタン、撮像モードなどを選択する操作子、各種パラメータの変更を行うための操作子などが含まれる。
【0030】
通信部110は、CPU111の制御に応じて、所定のデータ通信方式により外部デバイスと通信を行うための部位である。この通信部110が対応するデータ通信方式としては、有線、無線を問わず特に限定されるべきものではなく、また、対応するデータ通信方式の数も限定されるべきものでない。現状であれば、データ通信方式としては、有線ではEthernet(登録商標)などのネットワークを挙げることができる。また、USB(Universal Serial Bus)、IEEE(Institute of Electrical and Electronic Engineers)1394などのデータインターフェース規格を挙げることができる。また、無線であれば、Bluetooth(登録商標)などのデバイス間近距離無線通信、IEEE802.11a/b/gなどの無線LAN(Local Area Network)規格を挙げることができる。
【0031】
電源部114は、ビデオカメラ100における各種のハードウェアデバイスに対して動作電源を供給するもので、例えばバッテリや電源アダプタからの電力供給を受けて動作する電源回路などを備えて構成される。
【0032】
[ファイルシステムのアクセスレベル]
上記のようにして、本実施の形態のビデオカメラ100は、主としては、撮像、収音により得られる画像音声ファイルを、メディアに対して記憶させることができるようになっている。メディアに記憶されるファイルは、所定方式によるファイルシステムにより管理される。本実施の形態としては、ファイルアロケーションテーブル(FAT:File Allocation Table)ファイルシステムにより管理されるものとする。このファイルシステムは、周知のようにして、ツリー型のディレクトリ構造によりファイルを管理する。また、データの書込み/読出しについては、クラスタといわれる論理的なデータ単位を最小単位とする。クラスタは、メディアに対する物理的なデータ書込み/読出しの最小単位であるセクタを所定数にまとめたものとなる。
【0033】
図2は、本発明の実施の形態に対応するファイルシステムのアクセスレベルを示している。この図に示すアクセスレベルとしての階層構造はソフトウェア層と、その下層となるハードウェア層とに大別される。ソフトウェア層は、メディアに対してホストとなる機器において、CPUが実行するプログラム、及び各種ファームウェア、ミドルウェアなどにより実現される。図1との対応では、ビデオカメラ100におけるCPU111により実現されるものとなる。また、この場合のソフトウェア層は、図示するように、上層から下層にかけて、アプリケーション200、ファイルシステム300、デバイスドライバ400の各層が規定される。ハードウェア層には、メディア500が位置する。
【0034】
アプリケーション200は、例えばファイルの記録/再生機能などを有するものであり、ファイルレベルでのアクセス要求をファイルシステム300に対して行う。
【0035】
ファイルシステム300は、アプリケーション200からのファイルレベルによるアクセス要求を、クラスタのレベルに変換する。さらに、デバイスドライバ400に対しては、クラスタレベルでのアクセス要求を行う。ただし、アクセス要求の際には、クラスタ番号をセクタアドレスに変換することが行われる。これによりデバイスドライバ400は、クラスタ単位のデータをセクタレベルで認識できる。そして、デバイスドライバ400は、上記ファイルシステム300からのアクセス要求に応じてメディア500に対してセクタレベルでのアクセス要求を行う。
【0036】
この場合のメディア500は、ファイルシステムの規格に従ってフォーマット(初期化)されている。図1との対応では、磁気ディスク500A、光ディスク500B、光磁気ディスク500Cおよび半導体メモリ500Dの何れかとなる。メディア500は、デバイスドライバ400からのセクタアドレスによるアクセス要求に応答して、指定されたセクタアドレスからデータを読出して、デバイスドライバ400に返す。
【0037】
デバイスドライバ400は、メディア500からのアクセス応答に応じてセクタ単位でのデータを受け取る。そして、所定数のセクタ単位のデータを連結したクラスタ単位によりファイルシステム300にデータを渡す。ファイルシステム300は、デバイスドライバ400から受け取ったクラスタ単位のデータを、ファイルレベルのデータに変換してアプリケーション200に受け渡す。
【0038】
[第1の実施の形態に対応する機能構成例]
メディアにおいては複数の転送速度モードに対応してファイルの記録再生が可能なものがある。このような転送速度モードの具体例としては、Ultra DMA(Direct Memory Access)の規格を挙げることができる。この規格では、転送速度モードとして、モード0乃至5までの6つが規定されており、モード番号が大きくなるのに応じて最大転送速度(理論値)が高くなる。
【0039】
そして、メディアが複数の転送速度モードに対応する場合、これまでにおいては、メディアに対してのホストとなる機器は複数の転送速度モードのうちから自身が対応可能な範囲で、その最大転送速度が最も高いものを選択して設定することとしていた。
【0040】
しかし、実際においては常に最速の転送速度モードが適切であるとは限らない。例えば実測により得られるデータ転送速度(実効転送速度)は、仕様において規定される最大転送速度よりも通常は低く、最大転送速度に対するその比率(以降、「実効効率」とも称するる)もデータ転送速度ごとに異なる。すると、例えば最速のデータ転送速度を設定したとしても、これより低いデータ転送速度と実効転送速度にさほどの顕著な差がみられないということも起こり得る。また、データ転送のための動作周波数が高くなるほど消費電力や輻射ノイズは増加する。このことからすれば、例えばデータ転送速度と消費電力や輻射ノイズ抑制との兼ね合いを考慮した場合には、最速の転送速度モードを常に設定するのではなく、実効効率が最も高い転送速度モードを設定することのほうが好ましいといえる。そこで本発明の第1の実施の形態としては、次に説明するようにして、転送速度モードを設定できるように構成する。
【0041】
図3は、本発明の第1の実施の形態に対応するデータ転送速度設定のための構成例を示している。この図においてはデバイスドライバ400、メディア500および転送クロック生成部121が示される。
【0042】
デバイスドライバ400は、図2に示したように、基本的にはセクタレベルでのメディア500に対するアクセス制御を実行するものであるが、ここでは、本発明の実施の形態のデータ転送速度判定に対応した構成が示されている。転送クロック生成部121は、設定すべきデータ転送速度に応じた周波数の転送クロックCLKを生成する。この転送クロックCLKに従ったデータ転送速度によりメディア500に対するデータの書込み、読出しが実行される。
【0043】
この図に示すデバイスドライバ400は、データ転送速度判定およびデータ転送動作環境設定に対応する機能として、転送速度モード候補認識部410、転送速度モード設定部420、実効転送速度計測処理部430および転送速度モード判定部440を備えて成る。
【0044】
転送速度モード候補認識部410は、最も適切であるとする転送速度モード、すなわち最大効率転送速度モードを判定するのにあたって、その候補となる転送速度モードを認識する部位である。このために、転送速度モード候補認識部410は、メディア500の転送速度モード情報保持部520にて保持されている転送速度モード情報を読み出す。転送速度モード情報には、メディア500が対応可能な転送速度モードごとに、その各種仕様などについての所定の内容が示されている。従って、転送速度モード候補認識部410は、転送速度モード情報の内容を参照することでそのメディア500が対応可能な転送速度モードについて認識できる。すなわち、上記の最大効率転送速度モードの候補となる転送速度モードが全て認識できる。なお、転送速度モード候補認識部410は、特許請求の範囲に記載の候補認識部の一例である。
【0045】
転送速度モード設定部420は実際に転送速度モードを設定する機能部位である。ここで、「転送速度モードを設定する」とは、すなわち、転送速度モードの仕様にて示されるデータ転送速度によりメディア500に対するデータの記録再生が行われる動作環境を設定することをいう。そして、この動作環境を設定するためには、例えば、転送速度モードの仕様において規定される転送クロックの周波数を設定する。具体的には、上記転送速度モードの仕様において規定される周波数による転送クロックCLKが生成されるように転送クロック生成部121を制御する。この転送クロックCLKは、例えばメディア500のほか、ここでは図示していないCPU111などにも供給さ、これにより、メディア500に対するデータの書込みおよび読出しは、転送クロックCLKに同期して実行されることになる。
【0046】
また、上記動作環境設定のためには、例えばメディア500側でも対応の転送速度モードに応じた設定を行っておくべき場合がある。このような場合には、転送速度モード設定部420は、上記動作環境設定のために、メディア500に対して設定対象の転送速度モードを指定する。メディア500は、例えばこの指定された転送速度モードに応じた内部設定を行う。
【0047】
実効転送速度計測処理部430は、候補の転送速度モードごとに応じた設定のもとでテストライト(試し書き)とテストリード(試し読み)を実行し、テストライト時およびテストリード時それぞれに対応する実効転送速度を計測する機能部位である。そして、実効転送速度計測処理部430は、テスト結果を示す情報として、計測により得られた転送速度モード候補ごとの実効転送速度を示す計測結果情報601を所定の記憶領域に保持させる。なお、実際に計測結果情報601としてのデータが保持される領域については、例えばビデオカメラ100との対応であれば、CPU111のレジスタ、または、RAM112においてデバイスドライバ400のために割り与えられた作業領域などとなる。また、候補ごとの転送速度モード設定は、転送速度モード設定部420が実行する。なお、実効転送速度計測処理部430および候補ごとの転送速度モード設定を行う転送速度モード設定部420が特許請求の範囲に記載の実行転送速度計測部の一例となる。
【0048】
転送速度モード判定部440は、計測結果情報601の内容に基づいて、転送速度モード候補のうちから実効効率が最も高い転送速度モードを判定する。また、この場合の転送速度モード設定部420は、この判定された転送速度モードに対応したデータ転送動作環境を設定することも行う。これにより、例えばアプリケーション200がメディア500に対して実行するファイルアクセスに対応しては、最も効率的とされるデータ転送速度によりデータの書込み、読出しが実行されることになる。なお、転送速度モード判定部440は、特許請求の範囲に記載の転送速度モード判定部の一例となる。
【0049】
[第1の実施の形態に対応する処理手順例]
図4のフローチャートは、第1の実施の形態に対応してデバイスドライバ400が実行するとされる、転送速度モード判定および判定結果に応じた動作環境設定のための手順例を示している。
【0050】
ここでは、転送速度モード判定は、対応のメディア500の電源がオンとされたことに応じて実行されるものとする。そこで、この図においては、まず、デバイスドライバ400は、メディア500の電源をオンとするための制御を実行する(ステップS901)。この電源オンの制御は、例えばメディア500がホスト機器に内蔵のものであれば、ホスト機器の電源がオンとされたことに応じて実行するものとなる。また、メディア500がリムーバブル形式であれば、メディア500が装填されたことに応じて実行するものとなる。
【0051】
次に、デバイスドライバ400の転送速度モード候補認識部410は、メディア500の転送速度モード情報保持部520から転送速度モード情報を読出してその内容を参照することで、先に述べたようにして転送速度モードの候補を認識する(ステップS903)。次に、認識した転送モード候補は複数であるか否かについて判定する(ステップS904)。
【0052】
ステップS904において転送速度モードの候補が複数であると判定された場合には、まず、転送速度モード候補ごとに付した番号に対応する変数nについて1を代入する(S905)。次に、ステップS906、S907により第n候補の転送速度モードを設定するための処理を実行する。まず、ステップS906においては、転送クロック生成部121を制御して、第n候補の転送速度モードにて規定される周波数の転送クロックCLKを生成させる。また、ステップS907では、必要に応じて、メディア500に対して第n候補の転送速度モードを指示する。
【0053】
上記の処理によって第n候補の転送速度モードが設定された状態のもと、実効転送速度計測処理部430は、メディアに対してテストライトを実行しながら実際に得られるデータ転送速度、すなわち実効転送速度を計測する(ステップS909)。続いて、実効転送速度計測処理部430は、メディアに対してテストリードを実行しながら実効転送速度を計測する(ステップS910)。そして実効転送速度計測処理部430は、上記テストライトとテストリードにより測定された実効転送速度を計測結果情報601として保持させる(ステップS911)。
【0054】
次に実効転送速度計測処理部430は、変数nについて最大値であるか否かについて判定し(ステップS912)、最大値ではないとして判定したのであれば変数nについてインクリメントし(ステップS913)、ステップS906の処理に戻る。すなわち、次候補の転送速度モードに対応した実効転送速度を計測してテスト結果情報として保持させるための処理を開始する。
【0055】
なお、上記テストライトとテストリードをメディア500のどの領域に対して行うべきかの具体例については後述する。
【0056】
一方、ステップS912にて変数nが最大値であると判定された場合には、全ての候補の転送速度モードごとのテスト結果情報が得られていることになる。そこで、この場合には、転送速度モード判定部440により、これまでに得られた計測結果情報601に基づいて、転送速度モード候補のうちから1つの転送速度モードを判定する(ステップS920)。なお、ステップS920としての転送速度モードの判定処理については後述する。また、このステップS920により判定される転送速度モードは設定対象となる転送速度モードであるが、後述の説明から理解されるように実効効率が最も高いものとして扱われる。このことに因み、以降、ステップS920により判定される転送速度モードを「最大効率転送速度モード」とも称する。
【0057】
そして、転送速度モード設定部420は、上記ステップS920により判定された最大効率転送速度モードをメディアアクセス時に対応した転送速度モードとして設定する(ステップS915)。
【0058】
また、ステップS904において転送速度モード候補が1つであると判定された場合には、メディア500が対応可能な転送速度モードはもともと1つであることになる。そこで、この場合には、このメディア500が対応しているその1つの転送速度モードを設定する(ステップS916)。このときの設定処理としては、例えばステップS905、S906と同様でよい。
【0059】
[最大効率転送速度モード判定の概念]
まず、本発明の実施の形態における最大効率転送速度モード判定の概念について説明する。図7は、図4のステップS905乃至S912の処理によって得られたとする第1乃至第3候補の転送速度モードA乃至Cごとに応じた計測結果情報601の一例を示している。この場合には、第1候補の転送速度モードAは、仕様で規定される転送クロック周波数が50MHzであるとされている。この転送速度モードAを設定して測定されたテストリード時とテストライト時の実効転送速度は、それぞれ60Mbps(bit per second)、50Mbpsとされている。また、第2候補の転送速度モードBは、転送クロック周波数が25MHzであるとして規定されており、テストリード時とテストライト時の実効転送速度は、それぞれ60Mbps、50Mbpsとされている。また、第3候補の転送速度モードは、転送クロック周波数が12.5MHzであるとして規定されており、テストリード時とテストライト時の実効転送速度は、それぞれ25Mbps、20Mbpsとされている。なお、データ転送モードごとの最大転送速度は、例えば転送クロック周波数に対応するのでデータ転送モードA,B,Cの順に低くなる。
【0060】
図7において、各候補の転送速度モードにおけるテストリード時とテストライト時の実効転送速度の各欄には、括弧内に転送クロック周波数に対する実効転送速度の比率(転送速度比率)が示されている。この転送速度比率は、(実効転送速度(Mbps)/転送クロック周波数(MHz))により求められる。これによれば、例えばテストリード時の上記転送速度比率は、第2候補と第3候補の各転送速度モードB、Cの場合には「2.0」であるのに対して、最速の第1候補の転送速度モードAの場合には「1.2」となっている。すなわち、第2候補および第3候補の転送速度モードB,Cが設定されているときと比較して、第1候補の転送速度モードでは転送速度比率が小さくなってしまっている。また、テストライト時の転送速度比率については、第3候補の転送速度モードでは「1.6」、第2候補の転送速度モードでは「1.8」、第1候補の転送速度モードの場合には「1.0」となっており、上記と同じことがいえる。
【0061】
このような結果からすると、例えば転送クロック周波数が最も速い第1候補の転送速度モードを設定したとしても、そのときの実効転送速度としては、第2候補の転送速度モードに対して顕著に高速であるとはいえない。また、テストリード時とテストライト時の転送速度比率を総合してみると第2転送速度モードが最も高くなっている。従ってこの場合には、第2候補の転送速度モードBが、転送クロック周波数に対して最も効率の良い実効転送速度が得られているといえる。すなわち、第2候補の転送速度モードBを最大効率転送速度モードとして判定することが妥当であるといえる。
【0062】
なお、先に述べたように、ここでの実効比率は最大転送速度に対する実効転送速度の比率をいう。本発明の実施の形態での転送速度モードごとにおける転送クロック周波数は、例えば転送速度モードごとに規定される最大転送速度に対応するものとなる。従って、本発明の実施の形態における上記の転送速度比率は、実質的に実効比率であるとしてみてよい。
【0063】
[最大効率転送速度モード判定のための処理手順例]
図5および図6のフローチャートは、図4のステップS920としての最大効率転送速度モード判定のための処理手順例を示している。これらの図に示す処理は上記図7により説明した概念に対応して最大効率転送速度モードを判定するための手順例の1つとなる。
【0064】
まず図5において転送速度モード判定部440は、転送速度モード候補ごとに付した番号に対応する変数nについて1を代入したうえで(ステップS923)、ステップS930以降の処理を実行する。
【0065】
ステップS930においては、第n候補の転送速度モードに対応する評価値算出を実行する。このステップS930としての評価値算出の処理手順例は図6により後述する。次に、転送速度モード判定部440は、現在の変数nが最大値であるか否かについて判定する(ステップS926)。このステップS926において変数nが最大値ではないと判定された場合には、残りの候補の転送速度モード対応の評価値算出のために変数nをインクリメントして(ステップS927)、ステップS930の評価値算出の処理を再度実行する。そして、ステップS926において変数nが最大値であると判定された場合には、候補のうちから評価値が最も高い転送速度モードを最大効率転送速度モードであるとして判定する(ステップS928)。
【0066】
図6のフローチャートは、上記図5のステップS930に相当する第n候補転送速度モード対応の評価値算出の処理手順例を示している。まず、転送速度モード判定部440は、第n候補の転送速度モードに対応する計測結果情報601と転送クロック周波数を示す情報とを取得する(ステップS931)。ここでは計測結果情報601として、第n候補の転送速度モードに対応するテストリード時とテストライト時の実効転送速度の情報を取得する。また、転送速度モード情報には転送クロック周波数が示されている。従って、転送クロック周波数の情報は、転送速度モード情報の内容を解釈した転送速度モード候補認識部410から取得できる。
【0067】
次に転送速度モード判定部440は、第n候補の転送速度モードでのテストリード時に対応した転送速度比率Rvnを算出する(ステップS932)。この転送速度比率Rvnは、例えば上記ステップS931により取得した第n候補の転送速度モードの転送クロック周波数をfn、テストリード時の実効転送速度をRrtnとして、以下の式1により求めることができる。
Rvn=Rrtn/fn・・・(式1)
【0068】
次に転送速度モード判定部440は、同じ第n候補の転送速度モードのテストライト時に対応した転送速度比率Wvnを算出する(ステップS933)。この転送速度比率Wvnは、第n候補の転送速度モードの転送クロック周波数をfn、テストライト時の実効転送速度をWrtnとして、以下の式2により求めることができる。
Wvn=Wrtn/fn・・・(式2)
【0069】
次に転送速度モード判定部440は、第n候補の転送速度モードに対応する評価値Vnを算出する(ステップS934)。このためには、例えば上記ステップS931、S932により求めた転送速度比率Rvn、Wvnを利用して以下の式3により求める。
Vn=(Wvn+Rvn)/2・・・(式3)
【0070】
この式3から理解されるように、この場合の評価値Vnは、リード対応転送速度比率Rvnとライト対応転送速度比率Wvnの平均値としている。すなわち、この場合には、平均値を求めることにより記録および再生の両者を総合して評価することとしている。
【0071】
上記の説明では、評価値Vnを求めるのにあたり、テストリード時とテストライト時とに対応する転送速度比率Rvn、Wvnを求めたうえで、その平均値を求めることとしている。この評価値Vnについては、先にテストリード時とテストライト時の実効転送速度Rrtn、Wrtnの平均値を求め、この平均値と転送クロック周波数との比を算出しても同様に求めることができる。この点からすると、本発明の実施の形態においては次のことがいえる。すなわち、テストライトとテストリードのそれぞれに対応する実効転送速度Rrtn、Wrtnの平均値を転送速度モード判定に利用する総合的な実効転送速度として扱っているといえる。
【0072】
このように本発明の実施の形態においては、実効転送速度を利用して求めた評価値により設定対象の転送速度モード判定を行う。本発明の実施の形態の実効転送速度は実測により得られるものであるために、例えば異なるメディアごとにも対応して正しい判定結果を得ることができる。
【0073】
なお、本発明の実施の形態における転送速度比率Rvn、Wvnは実効比率に相当するのであるが、変形例として、例えば転送速度比率Rvn、Wvnを求める代わりに、本来の実効比率を求めるようにしてもよい。すなわち、規定の最大転送速度に対する実効転送速度Rrtn、Wrtnの各比率を求めるものである。しかし、例えば通常、転送速度モード情報には、ホスト側で転送速度モードを設定できるようにするためのパラメータの情報として、転送クロック周波数を指定する情報が格納されている。すなわち、本発明の実施の形態では、最大転送速度の具体値が既知でなくとも、転送速度モード情報において格納される転送クロック周波数の情報を利用して実効比率相当の情報を取得可能に構成されている。
【0074】
また、例えば設定対象とする転送速度モードの判定結果をメディアごとに対応させて、例えばホスト機器の不揮発性メモリや所定のメディアなどに記憶させておくことも考えらえられる。この場合には、例えばメディアの電源がオンとされたことに応じて、このメディアに対応する判定結果の情報を読み出す。そして、その判定結果情報が示す転送速度モードを設定するというものである。このようにすれば、例えばメディアの電源がオンとなるたびに転送速度モードの判定処理を実行する必要がなくなる。
【0075】
[テストライトおよびテストリードのための書込み領域例]
図4のステップS907、S908として実効転送速度計測処理部430が実行するテストライトとテストリードに際しては、メディア500に対して実際にデータの書込みおよび読出しを実行する。このテストライトとテストリードに対応してデータの書込みおよび読出しに使用される領域の設定例について説明する。
【0076】
図8は、メディア500についてのフォーマット構造例を示している。なお、この図に示すフォーマット構造は、ファイルアロケーションテーブルファイルシステム(FATファイルシステム)に対応したものの一例となる。この図に示すメディア500は、大きくは、論理アドレス(LBA)の先頭に対応して配置される主起動領域501と、パーティション510の領域から成る。また、主起動領域501とパーティション510との間には、緩衝領域としての空き領域502が形成されている。
【0077】
また、パーティション510の領域は、図示するようにしてシステム領域511とデータ領域512とから成る。ここでの詳しい説明は省略するが、システム領域511は、ファイルアロケーションテーブル(FAT)などをはじめとする現パーティションに対応した管理情報が配置される領域である。データ領域512は、例えばクラスタといわれる単位領域でファイルを形成するデータが記録される領域である。
【0078】
上記の空き領域502の実際としては、例えば0x01乃至0x3E(0xは16進法による表記であることを示す)の論理アドレス範囲を占有する領域となっている。そして、例えばテストライト時とテストリード時には、この領域範囲における任意の位置に対して所定サイズのデータの書込みおよび読出しを実行すればよい。また、書込みおよび読出しのためのデータサイズは、例えば1クラスタ分とすることが好ましい。これによりデバイスドライバ400は、テストライト時およびテストリード時においても、通常のファイルアクセス時と同じデータの書込みおよび読出し処理で対応できる。
【0079】
<第2の実施の形態>
[第2の実施の形態に対応する機能構成例]
上記第1の実施の形態においては、最大効率転送速度モードが常に設定されるようになっている。しかし、例えば実際のホスト機器の動作内容に応じては、実効効率を優先するよりも、できるだけ高速な実効転送速度によりデータ転送を実行させた方がよい、すなわち高速性を優先させたほうがよいとする考え方をとることもできる。
【0080】
一具体例として、例えば本発明の実施の形態においてホスト機器となる図1のビデオカメラ100と、パーソナルコンピュータとを所定のデータインターフェースを介して接続しているものとする。このような場合において、ホスト機器の動作内容として、メディア500に記録されているファイルのデータを読出してパーソナルコンピュータに転送するというものを想定する。あるいは、パーソナルコンピュータからビデオカメラ100に転送されるファイルのデータをメディア500に記録するというものを想定する。一般にデータ処理能力はビデオカメラ100などの装置よりもパーソナルコンピュータのほうが高い。従って、上記の場合におけるファイルデータの転送は、できる限り高速なデータ転送速度により行うことについて何ら問題はなく、それだけファイル転送に要する時間も短縮されるという利点もある。
【0081】
また、ホスト機器の動作として、ビデオカメラ100により静止画を撮像してメディア500に記録する際には、例えば次の静止画の撮像記録が可能な状態にできるだけ迅速に移行できるようにすることが要求される。この点からすれば、撮像により得た静止画像ファイルをメディアに記録する際にも、できる限り高速なデータ転送速度であることが好ましいことになる。
【0082】
これに対して、例えば、ホスト機器の動作が撮像により得られる動画ファイルの記録再生などである場合には、その動画ファイルの圧縮率などに応じて規定されるビットレートを満足する実効転送速度が得られさえすれば問題なく記録再生が行える。この点については、音声ファイルも同様である。また、静止画ファイルの再生である場合にも、現状の一般的なデータ転送速度であれば、例えばユーザにストレスがない速度でファイルを再生することが可能である。従って、これらの場合には、効率を優先したデータ転送速度の設定を行って、消費電力やノイズなどに有利な状態とすることが好ましいといえる。
【0083】
そこで、第2の実施の形態においては、メディア500に対するファイルアクセスを伴うホスト機器の動作内容に応じて、最大効率転送速度モードと最速の転送速度モードとで設定を切り替え可能な構成を採る。
【0084】
図9は、第2の実施の形態に対応する機能構成例を示している。なお、この図において図3と同一部分には同一符号を付して説明を省略する。この図のアプリケーション200においては、上記の転送速度モードの設定切り替え機能に対応するものとして、優先事項判定部210と優先事項指定部220とが備えられる。
【0085】
優先事項判定部210は、現在の機器動作内容に応じて優先事項を判定する部位である。この優先事項判定部210は、優先事項判定のために優先事項テーブル602と現優先事項情報603とを利用する。優先事項テーブル602は、アプリケーション200が使用するデータとして、例えばアプリケーション200の展開時においてRAM112などに読み込まれている。なお、優先事項判定部210は、特許請求の範囲に記載の優先事項判定部の一例となる。
【0086】
図10は、優先事項テーブル602の一例を示している。この図に示すようにして、優先事項テーブルは、所定の機器動作内容ごとに優先事項を対応させた構造を有する。優先事項テーブルにおける機器動作内容のそれぞれは、上記の例で挙げたような、動画ファイルの記録、再生、静止画ファイルの記録、再生などの何れかとなる。また、データインターフェース経由でホスト機器と接続された機器との間で転送されるファイルの記録、再生などの何れかとなる。これらの機器動作内容ごとに、適合する優先事項が示される。また、優先事項テーブルにおいて規定される優先事項は、「実効効率」と「速度」の2つであるとしている。
【0087】
優先事項が「実効効率」の場合は、設定すべき転送速度モードとして実効効率が高いものを優先すべきことを意味する。これに対して優先事項が「速度」の場合は、実効転送速度ができるだけ高いものを優先すべきことを意味する。
【0088】
図9において、優先事項判定部210は、例えば後述するようにして機器動作内容の変更に応じて優先事項に変更が生じるか否かについて判定する。そして、優先事項に変更が生じるものと判定した場合に、その優先事項を優先事項指定部220に通知する。優先事項指定部220は、通知された優先事項をデバイスドライバ400に対して指定する。この指示は、図示するようにしてファイルシステム300を仲介するようにして実行されるものとなる。
【0089】
ここでは上記優先事項指定部220からの優先事項の指定は、デバイスドライバ400において転送速度モード判定部440が受けるものとしている。まず、転送速度モード判定部440は、指定された優先事項が「効率」である場合には、転送速度モード候補認識部410、実効転送速度計測処理部430および転送速度モード設定部420と協同して最大効率転送速度モードを判定する。そして、この判定された最大効率転送速度モードを設定する。これに対して、指示された優先事項が「速度」である場合には、転送速度モード設定部420は、転送速度モード候補認識部410により認識された転送速度モード候補のうちから最速の実効転送速度が得られている転送速度モードを設定する。なお、ここで最速であるとして判断される実効転送速度は、テストライト時とテストリード時に測定された実効転送速度の平均値となる。
【0090】
[第2の実施の形態に対応する処理手順例]
図11のフローチャートは、第2の実施の形態に対応してアプリケーション200が実行する処理手順例を示している。まず、優先事項判定部210は、機器動作内容がこれより変更される状態にあるか否かについて判定する(ステップS941)。例えば、ホスト機器に対するユーザ操作や、ホスト機器と接続された他の機器からの命令などに応じては、アプリケーション200が機器の動作モードの切り替えの処理を実行する。優先事項判定部210は、例えばこのようなアプリケーション200の処理結果に基づき機器動作内容が変更されることを判定する。
【0091】
次に優先事項判定部210は、優先事項テーブル602にて保持されている優先事項テーブルを参照することで、変更後の機器動作内容に対応する優先事項が何であるのかを判定する(ステップS942)。次に、現優先事項情報603が示す優先事項と、上記ステップS942にて判定された変更後の機器動作内容に対応する優先事項とを比較し(ステップS943)、その比較結果が一致しているか否かについて判定する(ステップS944)。
【0092】
現優先事項情報603は、これまでの機器動作内容に対応して設定されていた優先事項を示している。従って、ステップS944にて比較結果が一致していないと判定された場合には、機器動作内容の変更に応じて優先事項にも変更が生じることになる。そこで、この場合には、優先事項指定部220により判定された優先事項をデバイスドライバ400に対して指定する(ステップS948)。なお、ステップS948による優先事項の指定は、実質、優先事項を指定したうえでのデータ転送速度設定の実行要求となる。また、優先事項判定部210は、ステップS944にて比較結果が一致していないと判定されたことに応じて、現優先事項情報603の内容を、ステップS942にて判定した優先事項が示されるように更新する(ステップS949)。
【0093】
これに対して、ステップS944にて比較結果が一致していると判定された場合には、機器動作内容の変更に係わらず優先事項には変更は生じない。そこで、この場合の優先事項指定部220は、ステップS948としての優先事項指定の処理を実行することなく処理を終了する。また、優先事項判定部210もステップS946による現優先事項情報603の更新は実行しない。
【0094】
なお、例えば機器動作内容が変更する都度、判定した優先事項を指定してデバイスドライバ400側に転送速度モード判定を実行させるようにすることも考えられる。しかし、上記のようにして、ステップS944にて比較結果が一致していないと判定された場合においてのみ優先事項を指定することで、デバイスドライバ400は機器動作内容が変更されるごとに転送速度モード判定を実行する必要がなくなる。これにより、例えば処理負荷の軽減が図られる。
【0095】
図12は、第2の実施の形態に対応してデバイスドライバ400が実行する処理手順例を示している。なお、この図に示すステップにおいて図4と処理が同じとなるものについては同一符号を付している。例えば転送速度モード判定部440は優先事項指定部220から優先事項指定が送信されてくるとこれを受信する(ステップS901A)。
【0096】
続くステップS903乃至S913およびステップS916の各処理は、図4での説明と同様となるため、ここでの説明は省略する。
【0097】
図12においては、ステップS912にて変数nが最大値であると判定された場合には、先のステップS901Aにて受信した優先事項指定として実効効率と速度の何れが指定されていたのかを判定する(ステップS914)。ステップS914において優先事項が実効効率であると判定された場合には、設定対象となる転送速度モードとして、転送速度モード候補のうちから最大効率転送速度モードを判定する(ステップS920)。これに対して、優先事項が速度であると判定された場合には、設定対象となる転送速度モードとして、転送速度モード候補のうちから最速効率転送速度モードを判定する(ステップS950)。ステップS920としての最大効率転送速度モード判定処理は、例えば先に図5および図6により説明したのと同様の処理でよい。また、ステップS950としての最速効率転送速度モード判定処理については後述する。
【0098】
また、この場合の転送モード設定部420は、ステップS920により最大効率転送速度モードが判定された場合には、この最大効率転送速度モードとして判定された転送速度モードに対応する動作環境を設定する。また、ステップS950により最速転送速度モードが判定された場合には、この最速転送速度モードとして判定された転送速度モードに対応する動作環境を設定する。
【0099】
図13のフローチャートは、上記ステップS950としての最速転送速度モード判定の処理手順例を示している。転送速度モード判定部440は、変数nに1を代入する(ステップS951)。次に、転送速度モード判定部440は、第2候補の転送速度モードに対応する計測結果情報として、リード時とライト時とのそれぞれに対応する実効転送速度を取得する(ステップS952)。そして、取得したリード時の実効転送速度とライト時の実効転送速度とを加算または平均する演算により評価値Vnを求める(ステップS953)。上記ステップS952およびS953の処理は、変数nが最大値であると判定されるまで、変数nをインクリメントしたうえで繰り返し実行される(ステップS954、S955)。そして変数nが最大値になったことが判定されると、例えば転送速度モードごとの評価値Vnを比較し、最大値であるものを最速転送速度モードとして判定する(ステップS956)。
【0100】
なお、例えば1つの転送速度モード候補において測定される実行転送速度が、これより高速な転送速度クロック周波数の転送速度モード候補において測定される実効転送速度以上となる可能性はないことを前提とする。この場合、実効転送速度を測定しなくとも、最速の転送速度モードは、転送クロック周波数が最も高い転送速度モードであることになる。そこで、このことを前提に、次のような変形例を考えることができる。すなわち、優先事項が速度である場合には、実効転送速度に基づくことなく、転送クロック周波数が最も高い転送速度モードを最速転送速度モードとして判定するというものである。この場合、優先事項が速度であることに応じては、例えばステップS909、S910のテストライトとテストリードを省略して処理負荷を軽減させることが可能である。
【0101】
<第3の実施の形態>
[第3の実施の形態の概要]
例えば、先の第2の実施の形態において述べたように、動画や音声などのコンテンツファイルはその圧縮率などに応じて、ビットレートが規定されている。つまり、単位時間あたりの記録再生に必要なデータ処理量が規定されている。そして、このビットレートに対応して、最低限必要な実効転送速度(必須実効転送速度)も決まる。この必須実効転送速度以上であれば、メディアから読出したファイルの再生、またメディアへのファイルの記録が正常に行える。この点で、効率を優先したデータ転送速度を設定することが有効になる。しかし、必須実効転送速度より低い実効転送速度によりデータ転送が行われた場合には、正常な記録再生結果が得られない可能性があることになる。このことからすると、例えばデータレートが規定される形式のファイルを記録再生するという機器動作内容のもとで最大効率転送速度モードを判定する場合には、次のことを考慮する必要がある。すなわち、必須実効転送速度を下回る実効転送速度となる転送速度モードが判定の対象とならないようにする必要がある。
【0102】
一例として、ビットレートが24Mbpsの動画ファイルを記録するという機器動作内容を想定する。この場合の24Mbpsのビットレートに応じて決まる必須実効転送速度は32Mbpsであるとする。これは、例えば動画ファイルを記録するメディアの特性として必須実効転送速度がファイルのビットレートの4/3倍になるという想定に基づいている。そして、この動画ファイルの記録に対応した最大効率転送速度モード判定の過程において先に図7に示した計測結果が得られたとする。この図7におけるテストライト時の実効転送速度と、32Mbpsの必須実効転送速度とを比較すると、第3候補の転送速度モードではテストライト時の実効転送速度が20Mbpsとなっており必須実効転送速度より低い。これに対して第1候補と第2候補の転送速度モードのテストライト時の実効転送速度は、それぞれ45Mbps、50Mbpsであり必須実効転送速度より高い。従って、この段階で、第3候補の転送速度モードは判定対象から除外すべき必要がある。
【0103】
また、機器動作内容としてはファイルの記録と再生の観点から区別することができる。この場合において、ファイルの記録に限定して最大効率転送速度モードを判定しようとすれば、テストライト時の実効転送速度のみを利用して判定することについて何ら問題はないといえる。すなわち、テストリードを実行する必要はない。同様に、ファイルの再生に限定しては、テストリード時の実効転送速度のみを利用して判定すればよく、テストライトを実行する必要はない。
【0104】
そこで、第3の実施の形態においては、まず1つには、ビットレートが規定されるファイルの記録再生という機器動作内容に対応しては、次のような処理が実行されるように構成する。すなわち、ファイルに規定されたビットレートに応じた必須実効転送速度を満足していない転送速度モードについては候補から除外して最大効率転送速度モード判定が行われるようにするというものである。これにより、ファイルの記録再生に支障がないようにしたうえで、最大効率転送速度モードを設定することが可能になる。
【0105】
また、もう1つには、機器動作内容がファイルの記録、再生の何れであるのかに応じて、最大効率転送速度モード判定におけるテストライトとテストリードのうち一方のみの処理を実行するように構成する。これにより、例えば最大効率転送速度モード判定処理の負荷を軽減できる。また、メディアに対するアクセス頻度がそれだけ低くなるため、例えばフラッシュメモリなどである場合にはその寿命が伸びることにもなる。
【0106】
[第3の実施の形態に対応する機能構成例]
図14は、第3の実施の形態に対応する機能構成例を示している。この図に示される機能部位の構成は図9と同様である。ただし、転送速度モード判定部440が判定処理を実行するのにあたり、計測結果情報601に加えてビットレート情報605を使用する点が異なっている。また、実効転送速度計測処理部430が記録再生識別情報604を利用する点も異なっている。
【0107】
[第3の実施の形態に対応する処理手順例]
図15のフローチャートは、第3の実施の形態に対応してアプリケーション200が実行する処理手順例を示している。この図において、図11と同じステップについては同一符号を付している。
【0108】
この図において、ステップS941乃至S944の処理は、図11と同様となる。そして、この場合には、ステップS944にて現優先事項情報603が示す優先事項とステップS942にて判定された変更後の機器動作内容に対応する優先事項とが一致していないと判定された場合には、次のようにして処理を実行する。すなわち、ステップS941に対応して判定された変更後の機器動作内容がメディア500への記録と再生の何れであるのかに応じて、記録と再生の何れかを示す記録再生識別情報604を生成する(ステップS945)。なお、機器動作内容が記録と再生の何れであるのかについては、アプリケーション200が、自身の処理の実行結果に基づいて認識することができる。次に、この変更後の機器動作内容のもとでメディアに記録または再生される対象のファイルについてビットレートが規定されたファイルであるか否かについて判定する(ステップS946)。
【0109】
例えば動画ファイルや音声ファイルであることに応じて上記ステップS946にてビットレートが規定されたファイルであると判定した場合には、この規定されているビットレートの値を示すビットレート情報605を生成する(ステップS947)。なお、ビットレートの値は、例えばアプリケーション200により、上記対象のファイルの属性の1つとして認識することができる。これに対して、ステップS946にてビットレートが規定されたファイルではないと判定した場合には、ステップS947をスキップする。次に、優先事項指定部220は、デバイスドライバ400に対して判定された優先事項を指定する(ステップS948A)。この点については、図11のステップS948と同様であるが、ステップS948Aでは、上記の優先事項の指定とともに、ステップS945により生成した記録再生識別情報604も送信する。また、ステップS947によりビットレート情報605が生成されたのであれば、このビットレート情報605も送信する。
【0110】
図16および図17のフローチャートは、第3の実施の形態に対応してデバイスドライバ400が実行する処理手順例を示している。これらの図に示すステップにおいて、図12と同じ処理については同一符号を付して説明は省略する。
【0111】
図16においては、ステップS901Aにより優先事項指定を受信したことに応じて、例えば転送速度モード判定部440は、優先事項指定とともに送信されてきた記録再生識別情報604を例えばレジスタなどにて保持する。また、記録再生識別情報604とともにビットレート情報605も送信されている場合には、このビットレート情報605も保持する。
【0112】
そして、この場合の転送速度モード判定部440は、例えばステップS906およびS907による第n候補の転送速度モード設定の処理を実行した後、ステップS908により、記録再生識別情報604が記録を示しているか否かについて判定することとしている。
【0113】
ステップS908において記録再生識別情報604が記録を示していると判定された場合には、機器動作内容としては記録であることになる。そこでこの場合には、テストライトによる実効転送速度を計測し(ステップ909)、その測定結果情報を保持する(ステップS911)。すなわち、ステップS910によるテストリードによる実効転送速度の計測は行わない。
【0114】
これに対して、記録再生識別情報604が記録を示していないと判定された場合には、機器動作内容としては再生であることになる。この場合には、ステップS909のテストライトによる実効転送速度の計測は行わずに、テストリードによる実効転送速度を計測し(S910)、その測定結果情報を保持する(ステップS911)。このようにして、第3の実施の形態においては、機器動作内容が記録であればテストリードの処理を実行しないように、また、機器動作内容が再生であればテストライトの処理を実行しないように構成される。
【0115】
図18のフローチャートは、図17に示したステップS920Aとしての最大効率転送速度モード判定の処理手順例を示している。なお、この図に示すステップにおいて図5と同じ処理となるものについては同一符号を付している。この場合の転送速度モード判定部440は、まずビットレート情報605に示されているビットレート値を取得する(ステップS921)。ただし、これまでの説明から理解されるように、例えば記録再生対象のファイルが静止画像や文書などのものである場合などにはビットレート情報605は保持されない。このようにしてビットレート情報605が無い場合、ステップS921においては、ビットレート値を取得する代わりに、0のビットレート値を設定することとしている。このようにして0のビットレート値を設定することで、以降の説明から理解されるように、後述のステップS924およびS925の処理を無効化するのと同様の結果を生じさせることができる。
【0116】
次に転送速度モード判定部440は、必須実効転送速度を算出する(ステップS922)。その算出の具体例としては、例えば上記ステップS921により取得したビットレート値と計数kとを乗算する。上記の係数kは、予め次のようにして設定されている。すなわち、ホスト機器の仕様、処理能力などにより、必須転送速度はビットレートに対してどの程度の比率となるべきかが決まる。具体例として、ホスト機器の性能などにより、必須実効転送速度についてはビットレートの4/3倍(約1.3倍)であることが必要であるとする。この場合には、係数kとしては4/3となる。ここで、或る形式の動画ファイルは、その圧縮率などに応じて、24Mbps、16Mbps、9Mbpsの何れかのビットレートが規定されるものとする。すると、24Mbpsのビットレート値に対応しては32Mbpsの必須実効転送速度が求められることになる。また、16Mbpsのビットレート値に対応しては22Mbpsの必須実効転送速度が求められることになる。9Mbpsのビットレート値に対応しては12Mbpsの必須実効転送速度が求められることになる。また、ビットレート情報605が無かった場合に対応してビットレート値が0とされた場合には、常に、必須実効転送速度は0となる。
【0117】
次に、ステップS923により変数nについて1を代入した後は、計測結果情報601から取得した第n候補の転送速度モードに対応する実効転送速度と、上記ステップS922により求めた必須実効転送速度とを比較する(ステップS924)。なお、図18の説明にあたっては、上記計測結果情報601から取得した第n候補の転送速度モードに対応する実効転送速度については計測実効転送速度と称して必須実行転送速度と区別する。そして、その比較結果として、計測実効転送速度のほうが必須実効転送速度より高いか否かについて判定する(ステップS925)。
【0118】
ステップS925にて計測実効転送速度のほうが高いと判定された場合には、ステップS930の評価値算出の処理を実行するが、計測実効転送速度のほうが低い場合には、ステップS930をスキップする。このように、ステップS930がスキップされることで、その第n候補についての評価値は得られないことになる。この結果、ステップS928における判定の対象からは除外されることになる。すなわち、実効転送速度が必須実効転送速度より低くなってしまう転送速度モードを判定候補から除外することができる。
【0119】
なお、ビットレート情報605がないとして0のビットレート値が設定された場合、ステップS925においては常に計測実効転送速度の方が高いとして判定され、ステップS930の評価値算出が実行される。すなわち、ステップS924とS925による処理を実行せずにステップS930を実行しているのと同じ結果が得られる。
【0120】
また、この場合のステップS930における第n候補対応の評価値算出処理は、例えば次のようになる。第3の実施の形態においては、先の図16におけるS908乃至S910の処理によって、計測結果情報601としては、テストライト時とテストリード時の何れかに応じた実効転送速度の情報のみを有する。そこで、評価値算出処理としては、単に計測結果情報601から取得したテストライト時とテストリード時の何れか一方のみの実効転送速度と転送クロック周波数fnとにより転送速度比率を算出すればよい。すなわち、図6におけるステップS932またはS933のうち、何れか一方の処理を実行すればよい。そして、このようにして求めた転送速度比率を評価値Vnとする。
【0121】
また、図17におけるステップS950の最速転送速度モード判定の処理にあっても、第n候補に対応して取得したテストライト時とテストリード時の何れか一方のみの実効転送速度の情報をそのまま評価値Vnとすればよい。このようにテストライトとテストリードの何れか一方のみが実行される場合には、テストライトとまたはテストリードにより測定された実効転送速度をそのまま転送速度モード判定に利用する。
【0122】
なお、変形例として、テストリードとテストライトの両者を実行しておいたうえで、機器動作内容が記録、再生の何れであるのかに応じて、テストリード時またはテストライト時の実効転送速度のみを利用して評価値を算出するという構成を考えることができる。例えば実際には、テストリードとテストライトに要する時間は1ms程度の短時間とすることが可能であるため、両者を実行させたとしても例えばユーザが体感するほどの機器の動作遅延は生じるものではなく、この点で何ら問題はない。
【0123】
<第4の実施の形態>
[パーソナルコンピュータの構成例]
これまでの実施の形態の説明においては、本発明の実施の形態が具現化される装置としてビデオカメラ100を挙げていたが、例えば本発明の実施の形態は、パーソナルコンピュータにより具現化することも可能である。図19のブロック図は、このようなパーソナルコンピュータ700の構成例を示している。
【0124】
図19に示されるパーソナルコンピュータ700は、CPU701、RAM702、ROM703、バス704、入出力インターフェース705、入力部710、出力部720、通信部730および記憶部740を有して構成される。
【0125】
CPU701は、ROM703に記憶されているプログラム、または記憶部740における所定の記録媒体からRAM702にロードされたプログラムに従って処理を実行するものである。ROM703には、上記プログラムのほか、CPU701が処理を実行するときに必要な所定の設定データなども記憶される。また、RAM703は、上記のようにしてロードされたプログラムが展開されるとともに、例えばCPU701が演算を行って得られるデータなどが適宜記憶される作業領域としても利用される。
【0126】
上記CPU701、RAM702、ROM703は、バス704を介して相互に接続されている。また、このバス704には入出力インターフェース705も接続されている。
【0127】
入出力インターフェース705には、入力部710、出力部720、通信部730および記憶部740が接続されている。入力部710は、パーソナルコンピュータ700に信号、データを入力するデバイス、装置としての部位であり、具体的にはキーボード、マウス、スキャナ、マイクロフォンなどとなる。出力部720は、パーソナルコンピュータ700にて処理されたデータ、信号などを所定の態様によって出力するための部位であり、具体的にはディスプレイ装置、スピーカ、プリンタ、プロッタなどとなる。通信部730は、ネットワークや所定のデータインターフェースにより外部装置と通信を行うための機能部位である。具体的には、LAN(Local Area Network)、USB(Universal Serial Bus)、IEEE1394などの有線によるデータインターフェースに対応して構成される部位となる。また、Bluetooth(登録商標)や無線LAN規格などの無線通信に対応して構成される部位となる。
【0128】
記憶部740は、1以上の補助記憶装置を有して、例えばCPU701の制御により、パーソナルコンピュータ700が使用するファイルのデータなどが記録再生される部位である。ここでは、補助記憶装置に対応する記録媒体として、磁気ディスク741A、光ディスク741B、光磁気ディスク741Cおよび半導体メモリ741Dが示されている。
【0129】
例えばこの図19に示す構成において、これまでに説明したアプリケーション200、ファイルシステム300、デバイスドライバ400の動作は、CPU701がプログラムを実行することにより具現化される。また、転送クロック生成部121に相当する機能は、例えば入出力インターフェース705において、実際に記憶部710との間でデータの受け渡しが行われるハードウェアなどが有するように構成すればよい。
【0130】
なお、本発明の実施の形態は本発明を具現化するための一例を示したものであり、本発明の実施の形態において明示したように、本発明の実施の形態における事項と、特許請求の範囲における発明特定事項とはそれぞれ対応関係を有する。同様に、特許請求の範囲における発明特定事項と、これと同一名称を付した本発明の実施の形態における事項とはそれぞれ対応関係を有する。ただし、本発明は実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において実施の形態に種々の変形を施すことにより具現化することができる。
【0131】
また、本発明の実施の形態において説明した処理手順は、これら一連の手順を有する方法として捉えてもよく、また、これら一連の手順をコンピュータに実行させるためのプログラム乃至そのプログラムを記憶する記録媒体として捉えてもよい。この記録媒体として、例えば、CD(Compact Disc)、MD(MiniDisc)、DVD(Digital Versatile Disk)、メモリカード、ブルーレイディスク(Blu-ray Disc(登録商標))等を用いることができる。
【符号の説明】
【0132】
100 ビデオカメラ
120 メディアドライブ
121 転送クロック生成部
200 アプリケーション
210 優先事項判定部
220 優先事項指定部
400 デバイスドライバ
410 転送速度モード候補認識部
420 転送速度モード設定部
430 実効転送速度計測処理部
440 転送速度モード判定部
500 メディア
501 主起動領域
502 空き領域
520 転送速度モード情報保持部
601 計測結果情報
602 優先事項テーブル
603 現優先事項情報
604 記録再生識別情報
605 ビットレート情報
700 パーソナルコンピュータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体に対応して設定可能なデータ転送速度を示す転送速度モードの候補を認識する候補認識部と、
前記候補として認識された転送速度モードごとに実効転送速度を計測する実効転送速度計測部と、
前記候補として認識された転送速度モードごとの前記実効転送速度に基づいて前記転送速度モードごとの実効効率を算出し、前記候補として認識された転送速度モードのうちから前記実効効率が最も高い転送速度モードを設定対象転送速度モードとして判定する転送速度モード判定部と、
前記設定対象転送速度モードとして判定された転送速度モードが示すデータ転送速度により前記記録媒体に対する記録再生が行われるように設定する転送速度モード設定部と
を具備する記録媒体制御装置。
【請求項2】
前記記録媒体に対する記録または再生を伴う機器動作内容に応じて、転送速度モードを設定する際の優先事項が実効効率または速度の何れであるのかを判定する優先事項判定部をさらに具備し、
前記転送速度モード判定部は、前記優先事項が実効効率であると判定されている場合には前記実効効率が最も高い転送速度モードを前記設定対象転送速度モードとして判定し、前記優先事項が速度であると判定されている場合には前記実効効率が最も高い転送速度モードに代えて前記実効転送速度が最も高い転送速度モードを前記設定対象転送速度モードとして判定する
請求項1記載の記録媒体制御装置。
【請求項3】
前記転送速度モード判定部は、前記記録媒体に対してファイルを記録または再生するのに最低限必要な必須実効転送速度と前記実効転送速度とを比較し、前記実効転送速度のほうが低い転送速度モードを前記候補から除外する請求項1記載の記録媒体制御装置。
【請求項4】
前記実効転送速度計測部は、前記候補の転送速度モードを順次設定して当該設定された転送速度モードごとに、前記記録媒体に対する記録または再生を伴う機器動作内容が記録である場合に応じては記録媒体に対するデータ書込みを実行しながら前記実効転送速度を計測する記録対応計測処理を実行し、前記機器動作内容が再生である場合に応じては前記記録媒体に対するデータ読出しを実行しながら前記実効転送速度を計測する再生対応計測処理を実行する
請求項1記載の記録媒体制御装置。
【請求項5】
前記実効転送速度計測部は、前記候補の転送速度モードを順次設定して当該された転送速度モードごとに、記録媒体に対するデータ書込みを実行しながらデータ書込みの際の実効転送速度を計測する記録対応計測処理と記録媒体に対する読出しを実行しながらデータ読出しの際の実効転送速度を計測する再生対応計測処理とを実行し、
前記転送速度モード判定部は、前記データ書込みの際の実効転送速度と前記データ読出しの際の実効転送速度との平均値である前記実効転送速度に基づいて前記実効効率を算出する
請求項1記載の記録媒体制御装置。
【請求項6】
前記転送速度モード判定部は、前記実効転送速度と前記転送速度モードによって規定される転送クロック周波数との比率を前記実効効率として算出する請求項1記載の記録媒体制御装置。
【請求項7】
記録媒体に対応して設定可能なデータ転送速度を示す転送速度モードの候補を認識する候補認識手順と、
前記候補として認識された転送速度モードごとに実効転送速度を計測する実効転送速度計測手順と、
前記候補として認識された転送速度モードごとの前記実効転送速度に基づいて前記転送速度モードごとの実効効率を算出し、前記候補として認識された転送速度モードのうちから前記実効効率が最も高い転送速度モードを設定対象転送速度モードとして判定する転送速度モード判定手順と、
前記設定対象転送速度モードとして判定された転送速度モードが示すデータ転送速度により前記記録媒体に対する記録再生が行われるように設定する転送速度モード設定手順と
を具備する記録媒体制御方法。
【請求項8】
記録媒体に対応して設定可能なデータ転送速度を示す転送速度モードの候補を認識する候補認識手順と、
前記候補として認識された転送速度モードごとに実効転送速度を計測する実効転送速度計測手順と、
前記候補として認識された転送速度モードごとの前記実効転送速度に基づいて前記転送速度モードごとの実効効率を算出し、前記候補として認識された転送速度モードのうちから前記実効効率が最も高い転送速度モードを設定対象転送速度モードとして判定する転送速度モード判定手順と、
前記設定対象転送速度モードとして判定された転送速度モードが示すデータ転送速度により前記記録媒体に対する記録再生が行われるように設定する転送速度モード設定手順と
をコンピュータに実行させるプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2011−186709(P2011−186709A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−50270(P2010−50270)
【出願日】平成22年3月8日(2010.3.8)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】