説明

記録媒体搬送機構及びその記録媒体搬送機構を備えた画像形成装置

【課題】 用紙カセットへの記録用紙の補給を自動で行う機能を備えた記録媒体搬送機構に対し、その実用性の向上を図るための構成を提供する。
【解決手段】 複合機1の給紙ユニット4の側面に補給用トレイ8を設ける。この補給用トレイ8と、給紙ユニット4内の各用紙カセット5A,5Bとに亘って補給搬送路7を形成する。補給用トレイ8上に補給用の記録用紙が載置された際、そのサイズを検知し、それに一致するサイズの記録用紙を収容する用紙カセットに対して記録用紙を搬送して用紙の補給を行う。一致するサイズの記録用紙を収容する用紙カセットがない場合には、補給動作を禁止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンタ、ファクシミリ装置や、これら複数の機能を兼ね備えた複合機に備えられる記録媒体搬送機構及びその記録媒体搬送機構を備えた画像形成装置に係る。特に、本発明は、記録媒体の補給機能を備えた記録媒体搬送機構に対し、その実用性の向上を図るための対策に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、複写機、プリンタ、ファクシミリ装置等の画像形成装置や、これら複数の機能を兼ね備えた複合機にあっては、感光体ドラム等を備えた画像形成部(プリント部)へ給紙するための記録用紙を収容する収容部として用紙カセットや手差しトレイが備えられている。例えば用紙カセットに多数枚の記録用紙を収容しておき、印刷要求を受けた場合には、用紙カセットから記録用紙が1枚ずつ順次取り出されて画像形成部へ給紙される。一方、ユーザが手差しトレイに記録用紙(例えばハガキなど)を載置して印刷動作を開始させた場合には、この手差しトレイ上の記録用紙が画像形成部へ給紙されることになる。
【0003】
図10は、一般的な複合機の内部構成の概略を示す図である。この図に示す複合機は、スキャナユニットa、プリンタユニットb、給紙ユニットcが一体的に組み付けられて構成されている。スキャナユニットaは原稿画像の読み取りを行うものである。プリンタユニットbは給紙ユニットcから送り込まれた記録用紙に対して所定の印刷動作を行うものである。給紙ユニットcは上記記録用紙を収容すると共に印刷要求に応じてこの記録用紙を1枚ずつプリンタユニットbに供給するようになっている。また、この給紙ユニットcは、複数(図10に示すものでは2つ)の用紙カセットd1,d2を備えていると共に、側面に手差しトレイeを備えている。各用紙カセットd1,d2はそれぞれ収容している記録用紙のサイズが異なっている。例えば上段の用紙カセットd1にはA4サイズ用紙が、下段の用紙カセットd2にはB5サイズ用紙がそれぞれ収容されている。また、各用紙カセットd1,d2及び手差しトレイeにはプリンタユニットbに向かって延びる用紙搬送路fが連通しており、この用紙搬送路fは、プリンタユニットbを経て、スキャナユニットaと給紙ユニットcとの間に形成された排紙空間gに開放している。つまり、給紙ユニットcの上面が排紙トレイg1として構成されている。
【0004】
このため、例えば複写動作時には、スキャナユニットaに原稿が載置されてこの原稿の画像が読み取られると共に、給紙ユニットc内の一方の用紙カセットd1(d2)から取り出された1枚の記録用紙がプリンタユニットbに供給され、上記スキャナユニットaで作成された画像データに基づいた印刷動作が行われる。その後、この印刷が行われた印刷物はプリンタユニットbから排紙トレイg1へ排出されることになる。
【0005】
また、この種の画像形成装置において、用紙カセットd1(d2)内の記録用紙が無くなった場合にはユーザが用紙補給作業を行う必要がある。例えば、用紙カセットd1(d2)を装置本体から引き出し可能な構成としておき、用紙補給時にはユーザが用紙カセットd1(d2)を引き出した後に、この用紙カセットd1(d2)に対して記録用紙を補給することになる。
【0006】
しかし、これでは、用紙カセットd1,d2を引き出すための空間を画像形成装置の周囲に予め確保しておく必要があり、また、この引き出し機構を有するために装置構成の複雑化や故障発生要因箇所の増大を招いていた。
【0007】
この点に鑑みられたものとして下記の特許文献1が提案されている。この特許文献1のものは、原稿台と原稿排紙トレイとの間に亘る読取搬送路から分岐する補給搬送路を備えさせ、この補給搬送路の下流端を用紙カセットに接続している。これにより、用紙カセット内の記録用紙が無くなった場合には、記録用紙を原稿台に載置し、この記録用紙を1枚ずつ原稿台から取り出して、補給搬送路を経て用紙カセットに搬送することができる。このため、用紙カセットを引き出して記録用紙を補給するといった従来の作業が必要なくなり用紙補給の自動化を図ることができる。
【特許文献1】特開平5−221535号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1のものでは、原稿台を利用して記録用紙を用紙カセットに補給するようにしているため、以下に述べる課題がある。
(1) 先ず、記録用紙を補給するための用紙搬送経路が長くなってしまうことが掲げられる。つまり、この特許文献1にも示されているように、一般的な画像形成装置では、ユーザの操作性の観点から原稿台は装置の上端部付近に配置されている。一方、用紙カセットは装置の下端部に配置されている。このため、この原稿台に載置した記録用紙を用紙カセットまで搬送するための補給搬送路を長く要し(画像形成装置の高さ寸法程度の長さの補給搬送路が必要である)、装置全体としての用紙搬送経路長さが長くなる。その結果、装置全体としての大型化を招いてしまうばかりでなく、用紙ジャムの発生要因箇所が増大してしまうことになる。
(2) 原稿の読み取り動作中には、原稿台に原稿が載置されているため、全ての原稿の読み取り動作が完了するまでは記録用紙の補給動作を行うことができない。このため、例えば用紙カセットに僅かな枚数しか記録用紙が残っていない状況で大量の原稿を複写しようとした場合、複写動作の途中で記録用紙が無くなり、その後の複写動作を行うことができなくなってしまう。尚、このような状況で原稿の読み取り動作のみを継続して行い、装置内のメモリに原稿画像データを蓄積していき、記録用紙の補給後にその原稿画像データをメモリから読み出して印刷動作を再開させることも考えられる。しかし、メモリの容量には限界があるため、原稿画像データ量がメモリの容量を超えてしまう場合には対応できない。
(3) 記録用紙の補給動作中には、原稿台に記録用紙が載置されているため、全ての記録用紙の補給動作が完了するまでは原稿の複写動作を行うことができない。このため、例えば緊急の複写動作が必要な場合であっても、全ての記録用紙の補給動作が完了するまで待たねばならず、ユーザにとって使い勝手の良いものではなかった。また、この緊急の複写動作が必要な場合に、補給動作を中断させ、原稿台から記録用紙を取り除いて複写動作を行うことも考えられるが、このように補給動作が完了していない状況では、用紙カセットに十分な枚数の記録用紙が収容されていない可能性があり、上述の(2)の場合と同様に、複写動作の途中で記録用紙が無くなり、その後の複写動作を行うことができなくなってしまう可能性がある。
(4) この特許文献1のものは、原稿台を利用しているため、この原稿台を備えていない画像形成装置には適用できない。つまり、プリンタ専用機には適用することができず、汎用性の低い技術であった。
【0009】
本発明は、以上の点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、用紙カセットへの記録用紙の補給を自動で行う機能を備えた記録媒体搬送機構に対し、その実用性の向上を図るための構成を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために講じられた本発明の解決手段は、記録媒体を収容する記録媒体収容部と、この記録媒体収容部から取り出された記録媒体を画像形成部に向けて搬送するための記録媒体搬送路とを備えた記録媒体搬送機構を前提とする。この記録媒体搬送機構に対し、記録媒体を載置可能な記録媒体専用の記録媒体載置部と、この記録媒体載置部に載置された記録媒体を上記記録媒体収容部に向けて搬送する記録媒体補給搬送路とを備えさせている。
【0011】
この特定事項により、記録媒体収容部の記録媒体が無くなったり記録媒体の残り枚数が少なくなって補給が必要となった際には、記録媒体載置部に記録媒体をセット(載置)し、この記録媒体を記録媒体補給搬送路を経て記録媒体収容部に向けて搬送させる。これにより、記録媒体収容部には記録媒体が自動的に補給されることになる。本解決手段における上記記録媒体載置部は、記録媒体専用のものであって原稿台が兼用するものではないため、その配置自由度が高い(従来技術では原稿台が兼用していた)。このため、本解決手段では、この記録媒体載置部を記録媒体収容部の近傍に配置することが可能であり、この両者間を繋ぐ記録媒体補給搬送路の長さは短くて済む。その結果、小型の記録媒体補給機構が実現でき、画像形成装置全体としての小型化が図れ、また用紙ジャムの発生要因箇所の増大を招くこともない。
【0012】
記録媒体載置部の具体構成として、画像形成部に向けて搬送される記録媒体を載置するための手差しトレイが記録媒体載置部を兼用した構成としている。これによれば、記録媒体補給のための特別なトレイを備えさせる必要がなくなり、部品点数の大幅な増加を抑制でき、簡単な構成で上記効果を奏することが可能になる。
【0013】
また、記録媒体補給搬送路の具体構成として、記録媒体搬送路の一部が記録媒体補給搬送路の少なくとも一部を兼用した構成としている。これによれば、装置内部の搬送経路の全長を大幅に短くすることができ、よりいっそう装置の小型化及び用紙ジャムの発生要因箇所の削減を図ることができる。
【0014】
また、記録媒体収容部を複数備えさせる一方、記録媒体載置部に載置された記録媒体のサイズを認識するサイズ認識手段を備えさせ、このサイズ認識手段が認識したサイズに合致するサイズの記録媒体を収容するための記録媒体収容部に向けて記録媒体載置部上の記録媒体を搬送するように記録媒体補給搬送路を切り換える切り換え手段を備えさせている。これによれば、ユーザは、補給すべき記録媒体収容部を指定する操作を行うことなく、自動的に所定の(記録媒体載置部に載置された記録媒体のサイズに適合した)記録媒体収容部に対して記録媒体が補給されることになる。
【0015】
この場合、サイズ認識手段が認識したサイズに合致するサイズの記録媒体を収容するための記録媒体収容部が存在しない場合には、記録媒体補給動作を中止するようにしている。これにより、誤った補給動作が実行されてしまう可能性がなくなり、用紙ジャムの発生や予期しないサイズの記録媒体に対して画像形成が行われてしまうといった状況を回避することができる。
【0016】
また、記録媒体載置部に載置された記録媒体を記録媒体収容部に向けて搬送する際に、この記録媒体収容部に収容されている記録媒体を取り出して画像形成部での画像形成を行う場合、記録媒体載置部からの記録媒体の搬送動作を中断し、上記画像形成を優先的に行う構成としている。このように画像形成を優先的に行うことにより、ユーザの画像形成要求に迅速に応えることが可能となり、画像形成装置の実用性の向上を図ることができる。
【0017】
更に、画像形成が行われる記録媒体が、記録媒体載置部に載置された記録媒体と同種のものであるとき、この記録媒体載置部に載置された記録媒体を画像形成部に向けて搬送するようにしている。つまり、補給用として記録媒体載置部に載置された記録媒体をそのまま画像形成用として利用するものである。これによっても、ユーザの画像形成要求に迅速に応えることが可能となる。
【0018】
加えて、記録媒体搬送路と記録媒体補給搬送路とを互いに独立した搬送路とし、記録媒体載置部に載置された記録媒体を記録媒体収容部に向けて搬送する動作と、記録媒体収容部に収容されている記録媒体を取り出して画像形成部に向けて搬送する動作とを並行させる構成としている。つまり、画像形成のための記録媒体は記録媒体収容部から取り出され記録媒体搬送路を経て画像形成部に向けて搬送される一方、補給用のための記録媒体は記録媒体載置部から取り出され記録媒体補給搬送路を経て記録媒体収容部に向けて搬送されることになる。このようにして画像形成動作と記録媒体補給動作とが同時並行されるため、それぞれの動作を極めて効率良く行うことが可能となる。
【0019】
尚、上記各解決手段のうち何れか一つの記録媒体搬送機構を備えた画像形成装置も本発明の技術的思想の範疇である。つまり、記録媒体収容部から取り出されて記録媒体搬送路を搬送されてきた記録媒体に対して所定の画像形成を行う画像形成部を備えた画像形成装置である。
【発明の効果】
【0020】
本発明では、記録媒体収容部への記録媒体の補給を自動で行う機能を備えた記録媒体搬送機構に対し、記録媒体専用の記録媒体載置部と、この記録媒体載置部に載置された記録媒体を記録媒体収容部に向けて搬送する記録媒体補給搬送路とを備えさせている。つまり、記録媒体専用の記録媒体載置部を使用したことでその配置自由度が高くなり、この記録媒体載置部を記録媒体収容部の近傍に配置することが可能になる。その結果、記録媒体補給搬送路の長さが短くて済み、記録媒体補給機構の小型化及び用紙ジャムの発生要因箇所の削減を図ることができ、実用性の高い記録媒体補給機構を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態では、コピー機能、プリント機能、ファクシミリ機能等を兼ね備えた複合機に本発明を適用した場合について説明する。
【0022】
(第1実施形態)
−複合機の全体構成の説明−
図1は本実施形態に係る画像形成装置としての複合機1の内部構成の概略を示している。この図1に示すように、この複合機1は、スキャナユニット2、画像形成部としてのプリンタユニット3及び給紙ユニット4を備えている。以下、各ユニットについて説明する。
【0023】
<スキャナユニット2の説明>
スキャナユニット2は、透明なガラス等で成る図示しない原稿台上に載置された原稿の画像を読み取って画像データを作成する部分である。このため、このスキャナユニット2の内部には、図示しない露光光源、複数の反射鏡、結像レンズ、光電変換素子(CCD:Charge Coupled Device)等が備えられている。そして、露光光源から原稿に照射された光の反射光を光電変換素子が受け、この光電変換素子において電気信号としての原稿画像データが作成されるようになっている。また、このスキャナユニット2としては、セットされた複数枚の原稿を順次搬送してそれぞれの原稿画像を順に読み取り可能とする原稿自動給紙装置を備えさせてもよい。これによれば、上記原稿台上に原稿を載置して画像の読み取りを行うシート固定方式の読み取り動作と、原稿自動給紙装置によって原稿を搬送しながらその画像の読み取りを行うシート移動方式の読み取り動作とが行えることになる。
【0024】
<プリンタユニット3の説明>
プリンタユニット3は、例えば電子写真方式の印刷機構(図示省略)を有している。この印刷機構は、図示しない感光体ドラムを備え、上記光電変換素子において作成された原稿画像データに基づいたレーザ光が感光体ドラムの表面に照射されて静電潜像が形成され、この静電潜像をトナー(顕像化物質)により可視像に現像した後に、後述する給紙ユニット4から供給される記録用紙(記録媒体)にこのトナー像を転写する。その後、この転写されたトナー像を定着ローラの加熱により記録用紙に定着させる。これによって記録用紙に対して所定の印刷動作が行われるようになっている。尚、このプリンタユニット3における印刷機構としては電子写真方式に限るものではなく、その他の方式(熱転写方式やインクジェット方式等)を採用してもよい。
【0025】
<給紙ユニット4の説明>
次に、給紙ユニット4について説明する。この給紙ユニット4は、記録用紙の収容部(記録媒体収容部)としての2つの用紙カセット5A,5Bと、1つの手差しトレイ5Cとを備えていると共に、用紙搬送路として主搬送路(記録媒体搬送路)6及び補給搬送路(記録媒体補給搬送路)7を備えている。
【0026】
主搬送路6は、一端側が分岐して各分岐路6A,6B,6Cのそれぞれが各用紙カセット5A,5B及び手差しトレイ5Cの排出側に対向している。また、この主搬送路6の他端は上記プリンタユニット3を経由して、スキャナユニット2と給紙ユニット4との間に形成された排紙空間Aに開放している。つまり、給紙ユニット4の上面が排紙トレイ41として構成されている。
【0027】
また、この主搬送路6の上流端(用紙カセット5A,5B及び手差しトレイ5Cに対向する部分)には給紙ローラ61が配設されている。また、各用紙カセット5A,5Bの内部には、この用紙カセット5A,5B内に収容されている多数枚の記録用紙のうち最上部の1枚の記録用紙のみを主搬送路6に送り出すための用紙送り出し機構51が備えられている。この用紙送り出し機構51は、水平軸回りに回動自在(図1に実線で示す状態と破線で示す状態を参照)に支持されたアーム51aと、このアーム51aの先端に回転可能に取り付けられた引き込みローラ51bとを備えている。上記アーム51aは、引き込みローラ51bが用紙カセット5A,5B内の記録用紙の上面に当接するように付勢力(図1における時計回り方向の付勢力)が付与されており、これによって引き込みローラ51bの外面が記録用紙に所定の押圧力をもって当接するようになっている。この状態で、引き込みローラ51bが回転することにより、用紙カセット5A,5B内に収容されている多数枚の記録用紙のうち最上部の1枚のみが主搬送路6に送り出されるようになっている。
【0028】
また、主搬送路6の複数箇所には、用紙カセット5A,5Bや手差しトレイ5Cから取り出された記録用紙をプリンタユニット3に向けて搬送し、且つ印刷された記録用紙を排紙トレイ41に向けて搬送するための複数の搬送ローラ対62,62,…が配設されている。更に、主搬送路6の下流端には、この主搬送路6を搬送されてきた記録用紙を排紙トレイ41に排出するための排紙ローラ対63が設けられている。また、主搬送路6の複数箇所には、この主搬送路6の各所における記録用紙の存在の有無を検出するための搬送路用紙センサ64,64,…が備えられている。
【0029】
上記各用紙カセット5A,5Bの内部には、金属製の回動板52が回動自在に支持されている。この回動板52は、用紙カセット5A,5Bの幅方向(図1の紙面に直交する方向)に延びる回動軸を中心に上下に回動自在に支持されており、この回動板52の上面に記録用紙が載置されることになる。また、この回動板52の下側にはリフトプレート53が当接されている。このリフトプレート53も、用紙カセット5A,5Bの幅方向(図1の紙面に直交する方向)に延びる回動軸を中心に上下に回動自在に支持されており、図示しない回動機構(アクチュエータ)によって上方への回動が可能になっている。このため、このリフトプレート53が上方へ回動すると、回動板52に対して上向きの付勢力が与えられることになり(図1に実線で示す状態を参照)、これによって用紙カセット5A,5B内に収容されている多数枚の記録用紙のうち最上部の記録用紙の高さ位置が収容枚数に拘わりなく常に一定高さ(分岐路6A,6Bに対向する高さ)に維持されるようになっている。尚、本実施形態にあっては、このリフトプレート53に代えてコイルスプリングを備えさせ、このコイルスプリングからの付勢力によって回動板52に上方への付勢力を与えるようにしてもよい。
【0030】
次に、本実施形態の特徴部分について説明する。本実施形態の特徴は、上記用紙カセット5A,5Bを装置本体から引き出すことなしに、これら用紙カセット5A,5Bに対して記録用紙の補給が可能な構成となっていることにある。以下、この用紙補給のための構成について説明する。
【0031】
図1に示すように、給紙ユニット4における上記手差しトレイ5Cが配設されている側面とは反対側(図1における右側)の側面には、記録媒体載置部としての補給用トレイ8が配設されている。この補給用トレイ8上には、載置された記録用紙のサイズを認識するための用紙サイズセンサが設けられている。この用紙サイズセンサの具体構成としては、補給用トレイ8上に載置された記録用紙の幅方向の端縁を揃える(整合する)ための可動ガイドの位置を検出することによって用紙サイズが認識できるようにしたものが掲げられる。また、補給用トレイ8上に載置された記録用紙の一方の端縁または両端縁の位置を光学的に検出して用紙サイズを認識するものであってもよい。
【0032】
そして、上記補給搬送路7は、一端がこの補給用トレイ8に向けて開放している一方、他端が分岐して各分岐路7A,7Bのそれぞれが各用紙カセット5A,5Bに連通している。これら分岐路7A,7Bの用紙カセット5A,5Bに対する連通箇所は、上記主搬送路6の分岐路6A,6Bが用紙カセット5A,5Bに対して連通している箇所(図1における左側の側面)とは反対側(図1における右側の側面)となっている。
【0033】
また、この補給搬送路7における補給用トレイ8に対向する部分には補給取り出しローラ71が配設されている一方、各用紙カセット5A,5Bに対向する部分には補給送り込みローラ対72が配設されている。これにより、補給用トレイ8に載置された記録用紙のうち最上部の1枚が、補給取り出しローラ71の回転に伴って補給搬送路7に送り出され、一方の分岐路7A(7B)を経て各用紙カセット5A,5Bのうち選択的に一方に対して補給できるようになっている。また、補給搬送路7の複数箇所には、この補給搬送路7の各所における記録用紙の存在の有無を検出するための搬送路用紙センサ65,65が備えられている。
【0034】
更に、補給搬送路7における各分岐路7A,7Bの分岐部分には水平軸回りに回動可能な切り換え手段としての補給切り換えゲート73が設けられている。この補給切り換えゲート73は、図中実線で示す第1切り換え状態と図中破線で示す第2切り換え状態との間で切り換え可能となっている。第1切り換え状態では、上段の用紙カセット5Aへの分岐路7Aが遮断され、この状態で用紙補給動作が行われた際には下段の用紙カセット5Bへの用紙補給が行われることになる。逆に、第2切り換え状態では、下段の用紙カセット5Bへの分岐路7Bが遮断され、この状態で用紙補給動作が行われた際には上段の用紙カセット5Aへの用紙補給が行われることになる。
【0035】
−複合機の制御部の説明−
図2は、この複合機1の動作を制御するための制御部の概略構成を示す制御ブロック図である。この図2に示すように、複写機1には、搭載されている各機器(スキャナユニット2、プリンタユニット3、給紙ユニット4等)を統括的に制御するためのCPU9が備えられている。そして、このCPU9に対して、上記搬送路用紙センサ64,65、ローラ制御部91、ゲート制御部92、サイズ認識手段としての用紙サイズセンサ93、リフトプレート制御部94、プリンタユニット制御部95が接続されている。
【0036】
搬送路用紙センサ64,65は、上述した如く、主搬送路6や補給搬送路7の各所において用紙の有無を検知するものであって、この各搬送路用紙センサ64,65からの出力をCPU9が受けることによって主搬送路6や補給搬送路7における用紙の搬送状態を把握できるようになっている。
【0037】
ローラ制御部91は、主搬送路6や補給搬送路7に設けられた各ローラ61,62,63,71,72の駆動・停止を制御し、これによってユーザが指示する複合機1の動作に応じた記録用紙の搬送動作が得られるようになっている。
【0038】
ゲート制御部92は、上記補給搬送路7に設けられた補給切り換えゲート73のアクチュエータを作動させ、補給切り換えゲート73の姿勢を上記第1切り換え状態(図1の実線状態)と第2切り換え状態(図1の破線状態)との間で切り換え可能にしている。
【0039】
用紙サイズセンサ93は、上述した如く補給用トレイ8上に載置された記録用紙のサイズを認識し、その認識信号をCPU9に送信するようになっている。
【0040】
リフトプレート制御部94は、上記リフトプレート53を回動させるためのアクチュエータを制御してリフトプレート53の回動姿勢を制御するものである。
【0041】
プリンタユニット制御部95は、上記プリンタユニット3における印刷動作を統括的に制御する。
【0042】
−複合機の基本動作説明−
以上の如く構成された複合機1の動作として、先ず、本複合機1が、プリンタとして機能する場合には、パーソナルコンピュータ等のホスト装置から送信された印刷データ(イメージデータやテキストデータ)を受信し、この受信した印刷データ(プリントデータ)を図示しないバッファ(メモリ)に一旦格納していく。このバッファへのプリントデータの格納と共に、バッファからのプリントデータの読み出しを順次行って、この読み出したプリントデータに基づき、上述したプリンタユニット3の印刷動作により記録用紙に印刷が行われる。ここで使用される記録用紙は、プリントデータ中の用紙サイズデータに合致するサイズの記録用紙を収容している用紙カセット5A(5B)の用紙送り出し機構51の動作により主搬送路6に送り出されるものである。例えば、上段の用紙カセット5AにA4サイズ用紙が、下段の用紙カセット5BにB5サイズ用紙がそれぞれ収容されている場合に、プリントデータ中の用紙サイズデータとしてA4サイズが指定されていると、上段の用紙カセット5Aからの給紙動作が行われることになる。また、手差しトレイ5Cに記録用紙(例えばハガキなど)がセットされている場合には、印刷動作の実行により、この手差しトレイ5C上の記録用紙が主搬送路6に送り出されて印刷動作が行われることになる。
【0043】
また、本複合機1がスキャナとして機能する場合には、上記スキャナユニット2によって読み取った原稿のスキャン画像データをバッファに一旦格納していく。このバッファへのスキャン画像データの格納と共に、バッファからホスト装置へのスキャン画像データの送信を順次行って、このホスト装置のディスプレイ等に画像表示する。尚、本複合機1がファクシミリとして機能する場合には、このスキャン画像データの送信先が一般公衆回線となる。
【0044】
更に、本複合機1がコピー機として機能する場合には、上記スキャナ機能によって読み取った原稿画像データに基づきプリンタユニット3の印刷動作によって記録用紙に印刷が行われることになる。この場合、給紙ユニット4からの記録用紙の送り出し動作も上述したプリンタとして機能する場合と同様であって、ユーザが設定したサイズの記録用紙が、各用紙カセット5A,5B及び手差しトレイ5Cのうちの一つから取り出され、プリンタユニット3に供給されて印刷動作が行われることになる。
【0045】
−用紙補給動作−
次に、本実施形態の特徴とする動作である用紙補給動作について説明する。この動作は、例えば、複合機1の操作パネル上に設けられた表示部に、用紙カセット内に記録用紙が無くなった旨や、用紙カセット内の記録用紙残り枚数が少なくなった旨の表示がなされることを受けて実行される動作である。
【0046】
先ず、印刷動作が行われていない状況において記録用紙の補給を行う際には、図3に示すように、ユーザは補給用トレイ8上に記録用紙Pの束をセットする。このとき、上記用紙サイズセンサ93によって、補給用トレイ8上に載置されている記録用紙Pのサイズが認識され、その認識信号がCPU9に送信される。この認識信号を受けたCPU9は、ゲート制御部92に対して切り換え信号を送信し、このゲート制御部92は、その切り換え信号に応じて補給切り換えゲート73の姿勢を切り換える。例えば、上述の如く上段の用紙カセット5AにA4サイズ用紙が、下段の用紙カセット5BにB5サイズ用紙がそれぞれ収容されている場合に、用紙サイズセンサ93によってB5サイズ用紙が認識された際には補給切り換えゲート73の姿勢が第1切り換え状態(図1の実線及び図3に示す状態)となる。一方、用紙サイズセンサ93によってA4サイズ用紙が認識された場合には補給切り換えゲート73の姿勢が第2切り換え状態(図1に破線で示す状態)となる。
【0047】
その後、ユーザが操作パネル上に設けられている用紙補給スイッチを押すことにより、記録用紙Pの補給動作が開始される。この補給動作では、補給取り出しローラ71及び補給送り込みローラ対72が回転する。これにより、上記記録用紙Pの束のうち最上部の記録用紙Pの1枚が補給用トレイ8から取り出されて補給搬送路7に送り出される。そして、上記補給切り換えゲート73の姿勢に応じて所定の用紙カセット5B(5A)に対して1枚の記録用紙Pが補給される。例えば、下段の用紙カセット5Bに対して記録用紙Pを補給する場合には、図3に実線の矢印で示すように、補給用トレイ8から取り出された記録用紙Pは下段の用紙カセット5Bに向けて搬送されることになる。この場合、記録用紙Pが用紙カセット5Bに収容され、その先端(記録用紙Pの搬送方向下流側端)が用紙カセット5B内の引き込みローラ51bに当接すると、この引き込みローラ51bが回転し、記録用紙Pの先端が給紙ローラ61の近傍位置に達するまで用紙引き込み動作が行われる。
【0048】
1枚の記録用紙Pが補給用トレイ8から取り出されて補給搬送路7に送り出されると、補給用トレイ8上の次の記録用紙Pが補給用トレイ8から取り出されて補給搬送路7に送り出される。このようにして、補給用トレイ8上に記録用紙Pが無くなるまで、順次1枚ずつ記録用紙Pが用紙カセット5Bに補給されていく。
【0049】
尚、上段の用紙カセット5Aに記録用紙Pを補給する場合には、上記補給切り換えゲート73の姿勢が切り換えられる(図1に破線で示す第2切り換え状態となる)のみであって、補給のための動作は上述と同様である。
【0050】
但し、上記用紙サイズセンサ93によって認識した用紙サイズが、各用紙カセット5A,5Bの何れにも対応しないものであるとき(例えば補給用トレイ8上にB4サイズの記録用紙Pがセットされたとき)には、記録用紙Pの補給動作を実行することなしに、操作パネル上の表示部に、セットした記録用紙のサイズに対応する用紙カセットがない旨の警告を表示する。
【0051】
また、本実施形態の場合、上述した用紙補給動作と同時並行に印刷動作を実行することが可能である。例えば、下段の用紙カセット5Bに対して記録用紙Pが補給されている際(B5サイズ用紙の補給時)に、上段の用紙カセット5Aに収容されている記録用紙Pに対する印刷要求(A4サイズ用紙への印刷要求)がなされた場合には、図3に破線の矢印で示すように主搬送路6に対して上段の用紙カセット5Aから給紙が行われると共に、補給搬送路7では、図3に実線の矢印で示すように補給用トレイ8から下段の用紙カセット5Bへの用紙補給動作が行われることになる。このように、本形態では、印刷動作時に使用する用紙搬送路(主搬送路6)と、用紙補給時に使用する用紙搬送路(補給搬送路7)とが互いに独立した通路として構成されているため、用紙補給動作と印刷動作とを同時並行することが可能である。これは、上段の用紙カセット5Aに対して記録用紙Pが補給されている際(A4サイズ用紙の補給時)に、下段の用紙カセット5Bに収容されている記録用紙Pに対する印刷要求(B5サイズ用紙への印刷要求)がなされた場合も同様である。
【0052】
尚、このように用紙補給動作と印刷動作とを実行する際に、同一用紙カセットに対して用紙補給動作と印刷動作とを実行する要求がある場合(例えばA4サイズ用紙に対する印刷要求とA4サイズ用紙の補給要求とがなされた場合)には、用紙カセット5A内に記録用紙Pが存在している間は印刷動作が優先的に行われる。つまり、図4に破線の矢印で示すように記録用紙Pが取り出されて印刷動作が行われ、その印刷動作が完了した後に、図4に実線の矢印で示す用紙補給動作が開始されることになる。但し、この印刷動作が完了する以前に用紙カセット5A内の記録用紙Pが無くなった場合には、その時点で用紙補給動作に切り換えられ、この用紙補給動作が完了した後、または、残りの印刷動作で必要な枚数分だけ用紙カセット5Aに記録用紙Pの補給が行われた後に再び印刷動作が開始されることになる。
【0053】
また、このように印刷動作の途中で記録用紙Pが無くなった場合、補給用トレイ8から用紙カセット5Aに搬送された1枚の記録用紙Pをそのまま主搬送路6に送り出してプリンタユニット3での印刷動作に提供するようにしてもよい。つまり、補給する記録用紙Pを用紙カセット5Aに通過させてプリンタユニット3に送り込むといった動作である。
【0054】
以上説明したように、本実施形態では、補給用トレイ8、及びこの補給用トレイ8から各用紙カセット5A,5Bへの用紙補給が可能な補給搬送路7を設けている。このため、従来の如く原稿台を利用して記録用紙を用紙カセットに補給するものに対して以下に述べる効果を奏することができる。
【0055】
先ず、記録用紙Pを補給するための用紙搬送経路(補給搬送路7)を短くすることができる。つまり、補給用トレイ8は、補給される記録用紙専用のトレイであるため、その配置自由度が高く、そのため、この補給用トレイ8を用紙カセット5Aの近傍に配置することが可能である。従って、補給搬送路7の経路長さを短くでき、これによって、複合機1全体としての用紙搬送経路長さが大幅に長くなってしまうといった状況を回避できる。その結果、複合機1の大型化を回避でき、また、用紙ジャムの発生要因箇所の増大を招くこともない。
【0056】
上述した如く原稿の読み込み動作、印刷動作、用紙補給動作を同時並行することができる。つまり、原稿の読み込み動作や印刷動作の完了を待たねば用紙補給動作が開始できなかったり、用紙補給動作の完了を待たねば原稿の読み込み動作や印刷動作が開始できないといった状況を招くことがなく、各動作を効率良く行うことができる。例えば、用紙補給動作中に緊急の複写動作が必要な状況が生じた場合であっても、その複写動作を迅速に実行することができ、非常に使い勝手の良好な複合機1を提供することができる。
【0057】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態は、手差しトレイ5Cが補給用トレイ(記録媒体載置部)8としての機能を兼用するものであって、補給搬送路7の構成が上述した第1実施形態のものと異なっている。従って、ここでは、第1実施形態との相違点についてのみ説明する。
【0058】
図5は本実施形態に係る画像形成装置としての複合機1の内部構成の概略を示している。尚、この図5では、上述した第1実施形態に係る複合機1の各部材と同一の機能を有する部材については同一の符号を付している。
【0059】
この図5に示すように、この複合機1における主搬送路6は、上述した各用紙カセット5A,5B及び手差しトレイ5Cに向けて延びる分岐路6A,6B,6Cの他に、各用紙カセット5A,5Bと手差しトレイ5Cとの間に亘る補給搬送路7’が設けられている。この補給搬送路7’は、一端が手差しトレイ5Cに連通している一方、他端が分岐路6A,6Bの分岐点の近傍で開放している。このため、手差しトレイ5Cにセットされた記録用紙を、分岐路6Cを経てプリンタユニット3に向けて主搬送路6に送り出すといった搬送形態(手差しトレイ5Cにセットされた記録用紙に対して印刷動作を行う場合の搬送形態)ばかりでなく、補給搬送路7’から分岐路6Aを経て上段の用紙カセット5Aへ送り出したり、補給搬送路7’から分岐路6Bを経て下段の用紙カセット5Bへ送り出すといった搬送形態(用紙補給のための搬送形態)が可能となっている。
【0060】
また、上記手差しトレイ5Cからプリンタユニット3に向かう分岐路6Cと補給搬送路7’との合流位置には第1ゲート74が、上記上段の用紙カセット5Aに向けて延びる分岐路6Aと補給搬送路7’との合流位置には第2ゲート75が、上記下段の用紙カセット5Bに向けて延びる分岐路6Bと補給搬送路7’との合流位置には第3ゲート76がそれぞれ設けられている。各ゲート(切り換え手段)74,75,76は、図中実線で示す第1切り換え状態と図中破線で示す第2切り換え状態との間で切り換え可能となっている。これら各ゲート74,75,76の切り換え動作は上記ゲート制御部92によって制御される。
【0061】
印刷動作時における用紙取り出し動作としては、上段の用紙カセット5Aからの記録用紙の取り出し、下段の用紙カセット5Bからの記録用紙の取り出し、手差しトレイ5Cからの記録用紙の取り出しがある。これらに応じて各ゲート74,75,76は切り換えられる。つまり、上段の用紙カセット5Aからプリンタユニット3に記録用紙を送り出す場合には、第2ゲート75が第2切り換え状態となり且つ第3ゲート76が第1切り換え状態となる。また、下段の用紙カセット5Bからプリンタユニット3に記録用紙を送り出す場合には、第2ゲート75及び第3ゲート76が共に第2切り換え状態となる。更に、手差しトレイ5Cからプリンタユニット3に記録用紙を送り出す場合には、第1ゲート74が第2切り換え状態となる。
【0062】
そして、用紙カセット5A,5Bに対する記録用紙の補給時におけるゲート74,75,76の切り換え動作は以下のとおりである。先ず、上段の用紙カセット5A内に記録用紙が無くなった場合や記録用紙の残り枚数が少なくなった場合には、ユーザが、例えばA4サイズの記録用紙の束を手差しトレイ5Cにセットして用紙補給スイッチを押す。手差しトレイ5Cには上記用紙サイズセンサ93が備えられており、この用紙サイズセンサ93によってA4サイズの記録用紙がセットされたことが認識されると、図6に示すように、各ゲート74,75,76が共に第1切り換え状態となり、給紙ローラ61が回転する。また、上記リフトプレート制御部94によって、リフトプレート53を回動させるためのアクチュエータが制御され、用紙カセット5A内のリフトプレート53を最下部まで回動させる。これは、用紙カセット5A内に記録用紙Pが残っている場合に、この用紙カセット5A内の記録用紙Pと補給されてきた記録用紙Pとが衝突しないようにするためである。
【0063】
用紙補給動作が開始されると、図6に実線の矢印で示すように、記録用紙Pの束のうち最上部の記録用紙Pの1枚が手差しトレイ5Cから取り出され、補給搬送路7’及び分岐路6Aを経て上段の用紙カセット5A内に補給される。この場合、記録用紙Pが用紙カセット5Aに収容され、その先端(記録用紙Pの搬送方向下流側端)が用紙カセット5A内の引き込みローラ51bに当接すると、この引き込みローラ51bが回転して用紙引き込み動作が行われる。また、この補給動作時には、引き込みローラ51bが記録用紙Pに接触しないようにアーム51aを上方へ回動させておいてもよい。この動作が順次行われて手差しトレイ5C上に記録用紙Pが無くなるまで順次1枚ずつ記録用紙Pが用紙カセット5Aに補給されていく。
【0064】
一方、下段の用紙カセット5B内に記録用紙Pが無くなった場合や記録用紙Pの残り枚数が少なくなった場合には、ユーザが、例えばB5サイズの記録用紙Pの束を手差しトレイ5Cにセットして用紙補給スイッチを押す。手差しトレイ5Cに備えられた用紙サイズセンサ93によってB5サイズの記録用紙Pがセットされたことが認識されると、図7に示すように、第1ゲート74及び第2ゲート75が共に第1切り換え状態となり、第3ゲート76が第2切り換え状態となって給紙ローラ61が回転する。また、この場合にも、上記リフトプレート制御部94によって、リフトプレート53を回動させるためのアクチュエータが制御され、用紙カセット5B内のリフトプレート53が最下部まで回動する。
【0065】
用紙補給動作が開始されると、図7に実線の矢印で示すように、記録用紙Pの束のうち最上部の記録用紙Pの1枚が手差しトレイ5Cから取り出され、補給搬送路7’及び分岐路6Bを経て下段の用紙カセット5B内に補給される。この場合にも、記録用紙Pが用紙カセット5Bに収容され、その先端(記録用紙Pの搬送方向下流側端)が用紙カセット5B内の引き込みローラ51bに当接すると、この引き込みローラ51bが回転して用紙引き込み動作が行われる。また、この補給動作時には、引き込みローラ51bが記録用紙Pに接触しないようにアーム51aを上方へ回動させておいてもよい。この動作が順次行われて手差しトレイ5C上に記録用紙Pが無くなるまで順次1枚ずつ記録用紙Pが用紙カセット5Bに補給されていく。
【0066】
また、本実施形態においても、手差しトレイ5Cに備えられた用紙サイズセンサ93によって認識した用紙サイズが、各用紙カセット5A,5Bの何れにも対応しないものであるとき(例えば手差しトレイ5C上にB4サイズの記録用紙Pがセットされたとき)には、記録用紙Pの補給動作を実行することなしに、操作パネル上の表示部に、セットした記録用紙のサイズに対応する用紙カセットがない旨の警告を表示する。
【0067】
また、本実施形態では、主搬送路6の一部が用紙補給用の搬送路を兼用しているため、用紙カセット5A,5Bへの用紙補給要求と印刷要求とが同時に発生した場合には一方のみしか実行することができない。この場合の動作手順について図8のフローチャートに沿って説明する。
【0068】
先ず、用紙カセット5A,5Bへの用紙補給要求と印刷要求とが同時に発生した場合(ステップST1)、ステップST2において、現在、補給搬送路7’内に記録用紙Pが存在しているか否かを判定する。この判定は、主搬送路6の各部に配設された搬送路用紙センサ64,64の検知信号に基づいて認識される。
【0069】
そして、補給搬送路7’内に記録用紙Pが存在していない場合(ステップST2でNo判定された場合)には、そのままステップST3に移る。一方、補給搬送路7’内に記録用紙Pが存在している場合(ステップST2でYes判定された場合)には、ステップST4において、補給搬送路7’内の記録用紙Pを速やかに用紙カセット5A,5Bに送り込んだ後にステップST3に移る。
【0070】
ステップST3では、一時的に記録用紙Pの補給動作を停止し、上記用紙サイズセンサ93によって手差しトレイ5C上の記録用紙Pのサイズを認識する。その後、ステップST5では、印刷要求データを確認し、この印刷要求データ中の用紙サイズ情報から印刷動作に必要な記録用紙Pのサイズを把握すると共に、上記用紙サイズセンサ93によって認識された手差しトレイ5C上の記録用紙Pのサイズを把握する。
【0071】
そして、この両者のサイズが異なっている場合(ステップST5でNo判定された場合)にはステップST6に移り、用紙補給動作を停止した状態で、印刷動作を開始させる。つまり、手差しトレイ5C上の記録用紙Pを取り出すことなしに、上記印刷要求データに応じたサイズの記録用紙Pを収容している用紙カセットからの給紙を行って、この給紙された記録用紙Pに対する印刷動作を実行する(ステップST8)。
【0072】
一方、上記ステップST5において、印刷動作に必要な記録用紙Pのサイズと手差しトレイ5C上の記録用紙Pのサイズとが一致している場合(ステップST5でYes判定された場合)には、ステップST7に移り、手差しトレイ5C上の記録用紙Pを使用して印刷動作を開始させる。つまり、図9に示すように、第1ゲート74が第2切り換え状態となる。そして、この図9に実線の矢印で示すように、手差しトレイ5C上の記録用紙Pを分岐路6Cを経てプリンタユニット3に向けて搬送し、この記録用紙Pに対する印刷動作を実行する(ステップST8)。
【0073】
このようにして印刷動作が実行された後、ステップST9において、印刷動作が完了した否かが判定され、この印刷動作が完了するまで上記ステップST5〜ステップST8の動作を繰り返す。そして、印刷動作が完了してステップST9でYes判定されると、ステップST10に移り、手差しトレイ5C上の記録用紙Pを所定の用紙カセットに向けて搬送する補給動作を再開させる。
【0074】
このように、本形態では、用紙カセット5A,5Bへの用紙補給要求と印刷要求とが同時に発生した際、これら両要求で使用する用紙サイズが一致している場合には、補給用の記録用紙Pをそのまま使用して(用紙カセット5A,5Bに補給することなしに)プリンタユニット3に供給するようにしている。このため、ユーザの印刷要求に迅速に応える印刷動作を行うことが可能である。
【0075】
また、本実施形態では、手差しトレイ5Cが補給用トレイとしての機能を兼用していると共に、主搬送路6の一部が用紙補給用の搬送路を兼用しているため、特別な補給用トレイやこれに繋がる専用の補給経路を設ける必要がなく、複合機1内のスペースが節約ができ、全体としての構成の簡素化及びコンパクト化を図ることができる。
【0076】
−その他の実施形態−
以上説明した各実施例は複合機1に本発明を適用した場合について説明した。本発明はこれに限るものではなく、複写機、プリンタ、ファクシミリ装置等にも適用することが可能である。
【0077】
また、上記各実施形態では、2つの用紙カセット5A、5Bと一つの手差しトレイ5Cとを備えた複合機1に本発明を適用した場合について説明した。これら用紙カセット及び手差しトレイの個数はこれに限るものではない。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】第1実施形態に係る複合機の内部構成の概略を示す図である。
【図2】複合機の制御部の構成を示す制御ブロック図である。
【図3】第1実施形態における用紙補給動作を説明するための図1相当図である。
【図4】第1実施形態における用紙補給動作と印刷動作とを実行する際の動作を説明するための図1相当図である。
【図5】第2実施形態に係る複合機の内部構成の概略を示す図である。
【図6】第2実施形態において上段の用紙カセットへの補給動作を説明するための図5相当図である。
【図7】第2実施形態において下段の用紙カセットへの補給動作を説明するための図5相当図である。
【図8】用紙カセットへの用紙補給要求と印刷要求とが同時に発生した場合の動作手順を示すフローチャート図である。
【図9】用紙カセットへの用紙補給要求と印刷要求とが同時に発生した場合において、両要求で使用する用紙サイズが同一である場合の用紙搬送動作を説明するための図5相当図である。
【図10】従来例における複合機の内部構成の概略を示す図である。
【符号の説明】
【0079】
1 複合機(画像形成装置)
3 プリンタユニット(画像形成部)
5A,5B 用紙カセット(記録媒体収容部)
5C 手差しトレイ(記録媒体載置部)
6 主搬送路(記録媒体搬送路)
7,7’ 補給搬送路(記録媒体補給搬送路)
73 補給切り換えゲート(切り換え手段)
74,75,76 ゲート(切り換え手段)
8 補給用トレイ(記録媒体載置部)
93 用紙サイズセンサ(サイズ認識手段)
P 記録用紙(記録媒体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体を収容する記録媒体収容部と、この記録媒体収容部から取り出された記録媒体を画像形成部に向けて搬送するための記録媒体搬送路とを備えた記録媒体搬送機構において、
記録媒体を載置可能な記録媒体専用の記録媒体載置部と、この記録媒体載置部に載置された記録媒体を上記記録媒体収容部に向けて搬送する記録媒体補給搬送路とを備えていることを特徴とする記録媒体搬送機構。
【請求項2】
上記請求項1記載の記録媒体搬送機構において、
記録媒体載置部は、画像形成部に向けて搬送される記録媒体を載置するための手差しトレイが兼用した構成となっていることを特徴とする記録媒体搬送機構。
【請求項3】
上記請求項1または2記載の記録媒体搬送機構において、
記録媒体搬送路の一部が記録媒体補給搬送路の少なくとも一部を兼用した構成となっていることを特徴とする記録媒体搬送機構。
【請求項4】
上記請求項1、2または3記載の記録媒体搬送機構において、
記録媒体収容部は複数備えられている一方、記録媒体載置部に載置された記録媒体のサイズを認識するサイズ認識手段が備えられており、
上記サイズ認識手段が認識したサイズに合致するサイズの記録媒体を収容するための記録媒体収容部に向けて記録媒体載置部上の記録媒体を搬送するように記録媒体補給搬送路を切り換える切り換え手段を備えていることを特徴とする記録媒体搬送機構。
【請求項5】
上記請求項4記載の記録媒体搬送機構において、
サイズ認識手段が認識したサイズに合致するサイズの記録媒体を収容するための記録媒体収容部が存在しない場合には、記録媒体補給動作を中止する構成となっていることを特徴とする記録媒体搬送機構。
【請求項6】
上記請求項1〜5のうち何れか一つに記載の記録媒体搬送機構において、
記録媒体載置部に載置された記録媒体を記録媒体収容部に向けて搬送する際に、この記録媒体収容部に収容されている記録媒体を取り出して画像形成部での画像形成を行う場合、記録媒体載置部からの記録媒体の搬送動作を中断し、上記画像形成を優先的に行う構成となっていることを特徴とする記録媒体搬送機構。
【請求項7】
上記請求項6記載の記録媒体搬送機構において、
画像形成が行われる記録媒体が、記録媒体載置部に載置された記録媒体と同種のものであるとき、この記録媒体載置部に載置された記録媒体を画像形成部に向けて搬送する構成となっていることを特徴とする記録媒体搬送機構。
【請求項8】
上記請求項1〜7のうち何れか一つに記載の記録媒体搬送機構において、
記録媒体搬送路と記録媒体補給搬送路とは互いに独立した搬送路となっており、
記録媒体載置部に載置された記録媒体を記録媒体収容部に向けて搬送する動作と、記録媒体収容部に収容されている記録媒体を取り出して画像形成部に向けて搬送する動作とを並行させる構成となっていることを特徴とする記録媒体搬送機構。
【請求項9】
上記請求項1〜8のうち何れか一つに記載の記録媒体搬送機構を備え、記録媒体収容部から取り出されて記録媒体搬送路を搬送されてきた記録媒体に対して所定の画像形成を行う画像形成部を備えていることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−117414(P2006−117414A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−308520(P2004−308520)
【出願日】平成16年10月22日(2004.10.22)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】