説明

記録媒体駆動装置およびその制御方法

【課題】衝撃の印加後に最短時間で確実に最適な処理動作に復帰することができる記録媒体駆動装置を提供する。
【解決手段】加速度検出器35は記録媒体およびヘッドスライダに加わる加速度を検出する。加速度検出器35の検出結果から、衝撃エネルギーの大きさを特定する指標が導き出される。制御回路47は加速度検出器の検出結果に基づき記録媒体からヘッドスライダを待避させる。待避後に、制御回路47は当該指標に基づき複数種類の処理動作のうちから1以上の処理動作を選択的に実行する。待避後の処理動作は必要最小限のものに限定される。その結果、衝撃エネルギーの大きさに拘わらず待避後に共通に処理動作が実行される場合に比べて、待避後の処理動作すなわち復帰処理の時間は短縮されることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は例えばハードディスク駆動装置(HDD)といった記録媒体駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献2に記載されるように、加速度センサーを備えるハードディスク駆動装置(HDD)は広く知られる。こういったHDDでは加速度センサーの出力に応じてHDDの落下が検出される。落下が検出されると、ヘッドは磁気ディスクから待避する。衝撃の付加に拘わらずヘッドや磁気ディスクの損傷は回避されることができる。
【特許文献1】米国特許第7031094号明細書
【特許文献2】特開2007−115309号公報
【特許文献3】特開平6−103712号公報
【特許文献4】特許第3821642号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
HDDでは落下の衝撃に応じて磁気ディスクの横ずれやスピンドルモーターの軸ずれが発生することがある。こういった横ずれや軸ずれはHDDの性能劣化を引き起こす。例えばトラッキングサーボ信号の補正値に誤差が生じる。その結果、書き込み時間や読み取り時間が長期化してしまう。
【0004】
本発明は、上記実状に鑑みてなされたもので、衝撃の印加後に最短時間で確実に最適な処理動作に復帰することができる記録媒体駆動装置を提供することを目的とする。本発明はそういった記録媒体駆動装置の実現に大いに寄与する制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、第1の記録媒体駆動装置は、記録媒体と、前記記録媒体に向き合わせられるヘッドスライダと、加速度を検出する加速度検出器と、加速度検出器の検出結果から導き出されて衝撃エネルギーの大きさを特定する指標に基づき、複数種類の処理動作のうちから1以上の処理動作を選択的に実行する制御回路とを備える。
【0006】
こういった記録媒体駆動装置では、衝撃エネルギーの大きさに応じて選択的に処理動作は実行される。衝撃印加後の処理動作は必要最小限のものに限定されることができる。したがって、確実に最適な処理動作のみが実行される。その結果、衝撃エネルギーの大きさに拘わらず待避後に共通に処理動作が実行される場合に比べて、待避後の処理動作すなわち復帰処理の時間は短縮されることができる。記録媒体駆動装置は衝撃の印加後に最短時間で確実に最適な処理動作に復帰することができる。
【0007】
加速度検出器には、無重力状態の検出に基づき落下を検出する落下センサーが利用されることができる。この場合には、前記制御回路は、無重力状態の開始および無重力状態の終了に基づき落下時間を計測し、計測した落下時間に基づき前記複数種類の処理動作のうちから前記1以上の処理動作を選択的に実行すればよい。一般に、落下センサーは、簡素な構造を有し、かつ、安価に提供されることができる。落下センサーは、低コストで、かつ、限られたスペース内に確実に配置されることができる。加速度検出器には、こういった落下センサーに代わって衝撃センサーが利用されてもよい。衝撃センサーによれば、さらに精度よく衝撃エネルギーの大きさは特定されることができる。
【0008】
前記制御回路は、前記ヘッドスライダのトラッキングサーボ信号に所定の周波数で変化する周波数信号を付加する周波数信号付加部と、ヘッドスライダの挙動に基づき共振周波数を特定する共振周波数特定部と、特定された共振周波数に基づき、ヘッドスライダのトラッキングサーボ信号から予め決められた周波数を取り除く周波数フィルターの周波数特性を設定する周波数特性設定部とを備えてもよい。衝撃の印加に応じてヘッドスライダの関連機構で共振周波数が変化しても、フィルター係数の変更に基づきヘッドスライダの追従性は確保されることができる。
【0009】
前記制御回路は、記録媒体の偏心量を算出する偏心量算出部と、算出された偏心量に基づき前記ヘッドスライダのトラッキングサーボ信号に付加される偏心補正値を算出する偏心補正値算出部と、算出された偏心補正値を所定の記憶媒体に格納する偏心補正値格納部とを備えてもよい。衝撃の印加に応じて記録媒体の偏心量が変化しても、偏心補正値の変更に基づきヘッドスライダの追従性は確保されることができる。
【0010】
前記制御回路は、ヘッドスライダの位置決め信号に基づきヘッドスライダを位置決めする位置決め制御部と、ヘッドスライダがオントラック位置に位置決めされた際にヘッドスライダの駆動に利用される電流値を測定する駆動電流値測定部と、測定された電流値を所定の記憶媒体に格納する電流値格納部とを備えてもよい。衝撃の印加に応じてヘッドスライダの関連機構に加わる外力が変化しても、電流値の変更に基づきヘッドスライダの追従性は確保されることができる。
【0011】
こういった記録媒体駆動装置の実現にあたって、記録媒体駆動装置の制御方法は、例えば、加速度検出器で記録媒体およびヘッドスライダに加わる加速度を検出する工程と、加速度検出器の検出結果に基づき記録媒体からヘッドスライダを待避させる工程と、待避後に、加速度検出器の検出結果から導き出されて衝撃エネルギーの大きさを特定する指標に基づき、複数種類の処理動作のうちから1以上の処理動作を選択的に実行する工程とを備えればよい。
【0012】
第2の記録媒体駆動装置は、記録媒体と、記録媒体に向き合わせられるヘッドスライダと、記録媒体およびヘッドスライダに加わる加速度を検出する加速度検出器と、衝撃エネルギーの大きさを特定する指標に従って規定の閾値、および、ヘッドスライダの位置決め信号に関連する所定の補正値を記憶する記憶媒体と、加速度検出器の検出結果から導き出されて衝撃エネルギーの大きさを特定する指標、および、記憶媒体に記憶される規定の閾値を相互に照らし合わせ、指標および閾値の比較に応じてヘッドスライダの位置決め信号に関連して前記所定の補正値に対応する現補正値を算出し、算出された現補正値、および、前記所定の補正値が一致すると、記憶媒体内の規定の閾値を書き換える制御回路とを備える。
【0013】
こういった記録媒体駆動装置では、記録媒体およびヘッドスライダに加速度すなわち衝撃が加わると、加速度の印加に応じて補正値の変化が想定される。こういった想定にあたって指標および閾値の比較が利用される。算出された補正値と記憶の補正値とが一致すると、閾値の適性は阻却される。比較の結果に基づき閾値が書き換えられると、閾値の精度は向上する。その結果、無駄な処理動作は極力回避されることができる。
【0014】
こういった記録媒体駆動装置の実現にあたって、例えば、記録媒体駆動装置の制御方法は、加速度検出器で記録媒体およびヘッドスライダに加わる加速度を検出する工程と、衝撃エネルギーの大きさを特定する指標に従って規定される閾値を記憶媒体から取得する工程と、加速度検出器の検出結果から導き出されて衝撃エネルギーの大きさを特定する指標、および、取得した閾値を相互に照らし合わせ、指標および閾値の比較に応じてヘッドスライダの位置決め信号に関連する現補正値を算出する工程と、現補正値に対応してヘッドスライダの位置決め信号に関連する所定の補正値を記憶媒体から取得する工程と、算出された現補正値、および、取得された所定の補正値が一致すると、記憶媒体内の前記閾値を書き換える工程とを備えればよい。
【発明の効果】
【0015】
以上のように本発明によれば、衝撃の印加後に最短時間で確実に最適な処理動作に復帰することができる記録媒体駆動装置は提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、添付図面を参照しつつ本発明の一実施形態を説明する。
【0017】
図1は本発明に係る記録媒体駆動装置の一具体例すなわちハードディスク駆動装置(HDD)11の外観を概略的に示す。このHDD11は箱形の筐体すなわちハウジング12を備える。ハウジング12は箱形のベース13およびカバー14から構成される。ベース13は例えば平たい直方体の内部空間すなわち収容空間を区画する。カバー14はベース13の開口に結合される。カバー14とベース13との間で収容空間は密閉される。ベース13やカバー14は例えばプレス加工に基づきそれぞれ1枚の板材から成型されればよい。板材は例えばアルミニウムといった金属材料から成形されればよい。ベース13の底板の裏側にはプリント回路基板15が固定される。プリント基板回路15にはコネクタ16が連結される。
【0018】
図2に示されるように、収容空間には、記録媒体としての1枚以上の磁気ディスク18が収容される。磁気ディスク18はスピンドルモータ19の回転軸に装着される。スピンドルモータ19は例えば3600rpmや4200rpm、5400rpmといった高速度で磁気ディスク18を回転させることができる。磁気ディスク18は例えば2.5インチの直径を有する。
【0019】
収容空間にはキャリッジ21がさらに収容される。キャリッジ21はキャリッジブロック22を備える。キャリッジブロック22は、ベース13の底板から垂直方向に立ち上がる支軸23に回転自在に連結される。支軸23はベース13の底板に例えばねじ(図示されず)に基づき固定される。キャリッジブロック22には、支軸23から水平方向に延びる複数のキャリッジアーム24が区画される。キャリッジブロック22は例えば押し出し成型に基づきアルミニウムから成型されればよい。
【0020】
個々のキャリッジアーム24の先端にはヘッドサスペンション25が取り付けられる。ヘッドサスペンション25はキャリッジアーム24の先端から前方に延びる。ヘッドサスペンション25にはフレキシャが張り合わせられる。フレキシャ上には浮上ヘッドスライダ26が支持される。フレキシャに基づき浮上ヘッドスライダ26はヘッドサスペンション25に対してその姿勢を変化させることができる。浮上ヘッドスライダ26にはヘッド素子すなわち電磁変換素子が搭載される。
【0021】
磁気ディスク18の回転に基づき磁気ディスク18の表面で気流が生成されると、気流の働きで浮上ヘッドスライダ26には正圧すなわち浮力および負圧が作用する。浮力および負圧とヘッドサスペンション25の押し付け力とが釣り合うことで磁気ディスク18の回転中に比較的に高い剛性で浮上ヘッドスライダ26は浮上し続けることができる。
【0022】
こういった浮上ヘッドスライダ26の浮上中にキャリッジ21が支軸23回りで回転すると、浮上ヘッドスライダ26は磁気ディスク18の半径線に沿って移動することができる。その結果、浮上ヘッドスライダ26上の電磁変換素子は最内周記録トラックと最外周記録トラックとの間でデータゾーンを横切ることができる。こうして浮上ヘッドスライダ26上の電磁変換素子は目標の記録トラック上に位置決めされる。
【0023】
キャリッジブロック22には例えばボイスコイルモーター(VCM)27といった動力源が接続される。このボイスコイルモーター27の働きでキャリッジブロック22は支軸23回りで回転することができる。こうしたキャリッジブロック22の回転に基づきキャリッジアーム24およびヘッドサスペンション25の揺動は実現される。
【0024】
ヘッドサスペンション25の先端には、ヘッドサスペンション25の先端から前方に延びるロード部材すなわちロードタブ28が固定される。ロードタブ28はキャリッジアーム24の揺動に基づき磁気ディスク18の半径方向に移動することができる。ロードタブ28の移動経路上には磁気ディスク18の外側でランプ部材29が配置される。ランプ部材29はベース13に固定される。ロードタブ28はランプ部材29に受け止められる。ランプ部材29は例えば硬質プラスチック材料から成型されればよい。
【0025】
ランプ部材29にはロードタブ28の移動経路に沿って延びるランプ29aが形成される。このランプ29aは磁気ディスク18の中心から遠ざかるにつれて磁気ディスク18の表面を含む仮想平面から遠ざかる。したがって、キャリッジアーム24が支軸23回りで磁気ディスク18の回転軸から遠ざかると、ロードタブ28はランプ29aを上っていく。こうして浮上ヘッドスライダ26は磁気ディスク18の表面から引き剥がされる。浮上ヘッドスライダ26は磁気ディスク18から外側に待避する。反対に、キャリッジアーム24が支軸23回りに磁気ディスク18の回転軸に向かって揺動すると、ロードタブ28はランプ29aを下っていく。回転中の磁気ディスク18から浮上ヘッドスライダ26には浮力が作用する。ランプ部材29およびロードタブ28は協働でいわゆるロードアンロード機構を構成する。
【0026】
図2から明らかなように、ベース13の底板にはフレキシブルプリント基板ユニット31が固定される。このフレキシブルプリント基板ユニット31は、折り返しに基づく重ね合わせに応じて比較的に剛性を確保する第1フレキシブルプリント基板片32と、一端で第1フレキシブルプリント基板片32の一端に接続され、他端でキャリッジブロック22の側面に重ね合わせられる第2フレキシブルプリント基板片33とを備える。第1フレキシブルプリント基板片32および第2フレキシブルプリント基板片33は1枚のフレキシブルプリント基板から構成される。第1フレキシブルプリント基板片32は例えば1対のねじ34でベース13の底板に固定される。第1フレキシブルプリント基板片32および第2フレキシブルプリント基板片33の境界で1枚のフレキシブルプリント基板は直角に折り曲げられる。第2フレキシブルプリント基板片33は第1フレキシブルプリント基板片32およびキャリッジブロック22の間で湾曲しつつ延びる。第2フレキシブルプリント基板片33の弾性変形に基づきキャリッジブロック22の回転は許容される。1枚のフレキシブルプリント基板は、ステンレス鋼板といった金属薄板と、金属薄板上に順番に積層される絶縁層、導電層および保護層とを備える。導電層は配線パターンを構成する。絶縁層および保護層には例えばポリイミド樹脂といった樹脂材料が用いられればよい。
【0027】
第1フレキシブルプリント基板片32の表面には例えば落下センサー35が実装される。落下センサー35は重力加速度を検出する。すなわち、重力加速度の喪失すなわち無重力状態の開始に基づき落下センサー35は落下の開始を検出する。落下センサー35は落下開始信号を出力する。その後、重力加速度の復活すなわち無重力状態の終了に基づき落下センサー35は落下の終了を検出する。落下センサー35は落下終了信号を出力する。ただし、落下開始信号および落下終了信号には共通の信号が用いられてもよい。落下の開始と終了とは交互に生じることから、信号の順番に基づき落下開始信号および落下終了信号は区別付けられることができる。こうして落下センサー35でハウジング12に加わる加速度は検出される。第1フレキシブルプリント基板片32の裏面にはコネクタ(図示されず)が実装される。コネクタは前述のプリント回路基板15に接続される。
【0028】
キャリッジブロック22上で第2フレキシブルプリント基板片33の表面にはヘッドアンプ36が実装される。このヘッドアンプ36はIC(集積回路)チップとして構成される。ヘッドアンプ36は電磁変換素子の読み出しヘッド素子および書き込みヘッド素子に接続される。接続にあたってフレキシブルプリント基板37が用いられる。フレキシブルプリント基板37は個々のフレキシャから連続する。フレキシブルプリント基板37はキャリッジブロック22上で第2フレキシブルプリント基板片33に接続される。磁気情報の読み出し時には、ヘッドアンプ36から電磁変換素子の読み出しヘッド素子に向けてセンス電流が供給される。同様に、磁気情報の書き込み時には、ヘッドアンプ36から電磁変換素子の書き込みヘッド素子に向けて書き込み電流が供給される。センス電流の電流値は特定の値に設定される。
【0029】
図3はHDD11の回路構成を概略的に示す。ヘッドアンプ36にはリードライト制御回路41が接続される。リードライト制御回路41はセンス電流を生成する。センス電流はヘッドアンプ36で増幅される。増幅されたセンス電流は電磁変換素子42に供給される。センス電流の電圧の変化に基づきリードライト制御回路41はバイナリ値を検出する。ハードディスクコントローラー(HDC)43は検出されたバイナリ値に基づきデータを復元する。復元されたデータはコネクタ16からホストに転送される。転送にあたってハードディスクコントローラー43はバッファ44を利用する。バッファ44には一時的にデータが保持されることができる。
【0030】
リードライト制御回路41は書き込み電流を生成する。書き込み電流はヘッドアンプ36で増幅される。増幅された書き込み電流は電磁変換素子42に供給される。書き込み電流の生成にあたってリードライト制御回路41はハードディスクコントローラー43からデータを受け取る。ハードディスクコントローラー43にはコネクタ16を通じてホストからデータが供給される。こうしたデータの転送にあたってハードディスクコントローラー43はバッファ44を利用する。バッファ44には一時的にデータが保持されることができる。
【0031】
ヘッドアンプ36にはサーボコントローラー45が接続される。サーボコントローラー45は磁気ディスク18上のサーボパターンに基づきセンス電流の電圧に現れる変化を検出する。サーボコントローラー45は電圧の変化に応じて電磁変換素子42と記録トラックとの乖離量を特定する。サーボコントローラー45はそういった乖離量の大きさに応じて制御電流を生成する。この制御電流はトラッキングサーボ信号に相当する。
【0032】
サーボコントローラー45には周波数フィルターすなわちノッチフィルター46が接続される。ノッチフィルター46は特定の周波数域で制御電流を減衰させる。ノッチフィルター46には例えばデジタルフィルターが用いられればよい。ノッチフィルター46のフィルター係数は随時変更されることができる。ノッチフィルター46から出力される制御電流はボイスコイルモーター27に供給される。ボイスコイルモーター27は供給される制御電流に基づき動作する。キャリッジアーム21は支軸23回りで揺動する。電磁変換素子42は記録トラックの中心線に向かって駆動される。こうしてサーボコントローラー45はトラッキングサーボの実行時にボイスコイルモーター27の動作を制御する。
【0033】
ボイスコイルモーター27にはシステムコントローラー47が接続される。システムコントローラー47は、後述されるように、シーク時にボイスコイルモーター27の動作を制御する。同時に、システムコントローラー47はトラッキングサーボの実行時にサーボコントローラー45と協働でボイスコイルモーター27の動作を制御する。システムコントローラー47はHDD11の落下の検出時に落下時処理動作を実行する。ボイスコイルモーター27の制御にあたってシステムコントローラー47はボイスコイルモーター27に向かって駆動電流を出力する。ここでは、ノッチフィルター46の出力とシステムコントローラー47の出力とは加算器48で足し合わせられる。
【0034】
システムコントローラー47にはフラッシュメモリー51およびランダムアクセスメモリー(RAM)52が接続される。システムコントローラー47は、フラッシュメモリー51から取得する所定のファームウェアに基づきボイスコイルモーター27の制御や落下時処理動作、その他の処理動作を実行する。こういった処理動作の実行にあたってシステムコントローラー47はランダムアクセスメモリー(RAM)52を利用する。システムコントローラー47には前述の落下センサー35がさらに接続される。落下センサー35の出力はシステムコントローラー47に供給される。
【0035】
フラッシュメモリー51にはファームウェアやバイアス補正値データ、偏心補正値データ、フィルター係数データ、閾値データ、耐衝撃バジェット値データ、その他のデータが格納される。システムコントローラー47は前述の駆動電流の生成にあたってバイアス補正値データを取得する。バイアス補正値データにはバイアス補正値が記述される。バイアス補正値は、例えば第2フレキシブルプリント基板片33の弾性力といった外力に起因するボイスコイルモーター27の位置ずれを特定する。したがって、バイアス補正値に基づき駆動電流がボイスコイルモーター27に供給されると、外力の作用に拘わらず電磁変換素子42は所望の位置に位置決めされることができる。バイアス補正値は例えば磁気ディスク18の半径方向位置に応じて異なる値に設定される。バイアス補正値はシーク時かトラッキングサーボの実行時かに拘わらず利用される。バイアス補正値の算出方法は後述される。加えて、トラッキングサーボの実行時にはシステムコントローラー47は駆動電流の生成にあたって偏心補正値データを取得する。偏心補正値データには偏心補正値が記述される。偏心補正値は、磁気ディスク18の回転に同期する浮上ヘッドスライダ26の位置ずれすなわちRRO(Repeatable Runout)を特定する。こういった位置ずれは、磁気ディスク18の回転中心と記録トラックの円中心との偏心量に基づき特定される。偏心補正値は例えば所定の振幅の正弦波で構成される。正弦波の周期は磁気ディスク18の1回転に相当する。偏心補正値に基づき駆動電流がボイスコイルモーター27に供給されると、記録トラックの偏心に拘わらず良好なトラッキングサーボが実現される。偏心補正値の算出方法は後述される。フィルター係数データにはノッチフィルター46のフィルター係数が記述される。フィルター係数に基づきノッチフィルター46ではノッチの中心周波数および深さは決定される。フィルター係数の設定方法は後述される。閾値データには所定の閾値が記述される。閾値は衝撃エネルギーの大きさを特定する。ここでは、閾値に「5%」「10%」「15%」が設定される。個々の数値は設計時の耐衝撃バジェット値に対する割合を示す。閾値に基づき衝撃エネルギーの大きさは判定される。耐衝撃バジェット値データには耐衝撃バジェット値が記述される。耐衝撃バジェット値は、衝撃エネルギーの大きさを特定する指標に基づき耐衝撃バジェットの値を特定する。ここでは、耐衝撃バジェット値は耐衝撃バジェットに相当する落下高さを特定する。
【0036】
システムコントローラー47はシーク制御部53を備える。シーク制御部53は、指定された番号の記録トラックに電磁変換素子42を位置決めする。位置決めにあたってボイスコイルモーター27に向かって駆動電流を出力する。番号の指定にあたってシーク制御部53はハードディスクコントローラー43からデータを取得する。シーク時、サーボコントローラー45は動作を停止する。
【0037】
システムコントローラー47は落下時間計測部54を備える。落下時間計測部54は、落下センサー35から出力される落下開始信号の受信に応じて落下時間の計測を開始する。落下時間計測部は、落下センサー35から出力される落下終了信号の受信に応じて落下時間の計測を終了する。落下時間計測部54は落下時間データを出力する。落下時間データで落下時間は特定される。落下時間は、衝撃エネルギーの大きさを特定する指標に相当する。
【0038】
システムコントローラー47では落下時間計測部54に衝撃エネルギー判定部55が接続される。衝撃エネルギー判定部55は衝撃エネルギーの大きさを判定する。判定にあたって衝撃エネルギー判定部55はフラッシュメモリー51から閾値データおよび耐衝撃バジェット値データを取得する。衝撃エネルギー判定部55は閾値データおよび耐衝撃バジェット値データに基づき個々の閾値ごとに対応する落下高さを算出する。同時に、衝撃エネルギー判定部55は落下時間データの落下時間に基づき落下高さを算出する。閾値データから算出された落下高さに落下時間データから算出された落下高さが照らし合わせられる。こうして衝撃エネルギーの大きさに応じて落下は分類される。
【0039】
システムコントローラー47は周波数信号付加部56を備える。周波数信号付加部56はボイスコイルモーター27に向かって周波数信号を出力する。この周波数信号は所定の周波数で変化する。周波数信号には例えば設定された周波数の正弦波信号が用いられる。正弦波信号の周波数は所定の周波数域で変化する。
【0040】
システムコントローラー47では周波数信号付加部56に共振周波数特定部57が接続される。共振周波数特定部57はサーボコントローラー45から供給される制御電流に基づき共振を検知する。共振周波数特定部57は、周波数信号付加部56から供給される周波数情報に基づき周波数信号の周波数を取得する。こうして共振周波数特定部57は共振の検知時に共振周波数を特定する。共振周波数特定部57は制御電流の変化に基づき共振時の振動のゲインを特定する。
【0041】
システムコントローラー47では共振周波数特定部57に周波数特性設定部58が接続される。周波数特性設定部58はノッチフィルター46のフィルター係数を設定する。フィルター係数の設定に応じてノッチフィルター46ではノッチの中心周波数およびノッチの深さが設定される。このとき、周波数特性設定部58はフラッシュメモリー51からフィルター係数データを取得する。新たに特定されたフィルター係数はフィルター係数データのフィルター係数に照らし合わせられる。2つのフィルター係数が一致すると、周波数特性設定部58はフラッシュメモリー51内で対応の閾値データを書き換える。閾値データの数値は所定の刻み値で増加する。2つのフィルター係数が一致しなければ、周波数特性設定部58は、ノッチフィルター46のフィルター係数を変更すると同時に、新たに特定されたフィルター係数でフラッシュメモリー51内のフィルター係数データを上書きする。
【0042】
システムコントローラー47は偏心量算出部59を備える。偏心量算出部59は、磁気ディスク18の回転中心と記録トラックの円中心との乖離量すなわち偏心量を算出する。算出にあたって偏心量算出部59にはサーボコントローラー45から制御電流が供給される。制御電流は磁気ディスク18の1回転ごとに周期的に変化する。こういった変化は偏心量を反映する。したがって、偏心量算出部59はサーボコントローラー45の制御電流に基づき偏心量を算出する。
【0043】
システムコントローラー47では偏心量算出部59に偏心補正値算出部61が接続される。偏心補正値算出部61は、偏心量算出部59で特定される偏心量に基づき前述の偏心補正値を算出する。システムコントローラー47では偏心補正値算出部61に偏心補正値格納部62が接続される。偏心補正値格納部62は、偏心補正値算出部61で算出された偏心補正値の格納の是非を判定する。判定にあたって偏心補正値格納部62はフラッシュメモリー51から偏心補正値データを取得する。偏心補正値算出部61で算出された偏心補正値は偏心補正値データの偏心補正値に照らし合わせられる。2つの偏心補正値が一致すると、偏心補正値格納部62はフラッシュメモリー51内で対応の閾値データを書き換える。閾値データの数値は所定の刻み値で増加する。2つの偏心補正値が一致しなければ、偏心補正値格納部62は、偏心補正値算出部61で算出された偏心補正値でフラッシュメモリー51内の偏心補正値データを上書きする。
【0044】
システムコントローラー47は駆動電流値測定部63を備える。駆動電流値測定部63は、シーク動作に基づき電磁変換素子42が指定された記録トラック上に位置決めされた際に、ボイスコイルモーター27に供給される駆動電流の電流値を測定する。測定された電流値はバイアス補正値に相当する。すなわち、シーク時に所定の回転角位置で記録トラック上に電磁変換素子42が維持されると、駆動電流に基づく駆動力と外力に起因する駆動力とは釣り合う。したがって、バイアス補正値に基づきボイスコイルモーター27に駆動電流が供給されると、外力の作用に拘わらず電磁変換素子42は記録トラック上に維持されることができる。こういった駆動電流が供給されなければ、外力の作用に基づき電磁変換素子42は記録トラックから遠ざかってしまう。測定にあたってサーボコントローラー45からボイスコイルモーター27に制御電流は供給されない。電磁変換素子42の位置はサーボコントローラー45から駆動電流値測定部63に供給される制御電流に基づき判定される。電流値は磁気ディスク18の半径方向で複数箇所で測定されてもよい。
【0045】
システムコントローラー47では駆動電流値測定部63にバイアス補正値格納部64が接続される。バイアス補正値格納部64は、駆動電流値測定部63で測定された電流値すなわちバイアス補正値の格納の是非を判定する。判定にあたってバイアス補正値格納部64はフラッシュメモリー51からバイアス補正値データを取得する。駆動電流値測定部63で測定された電流値すなわちバイアス補正値はバイアス補正値データのバイアス補正値に照らし合わせられる。2つのバイアス補正値が一致すると、バイアス補正値格納部63はフラッシュメモリー51内で対応の閾値データを書き換える。閾値データの数値は所定の刻み値で増加する。2つのバイアス補正値が一致しなければ、バイアス補正値格納部64は、駆動電流値測定部63で測定されたバイアス補正値でフラッシュメモリー51内のバイアス補正値データを上書きする。
【0046】
次に図4を参照しつつシステムコントローラー47の落下時処理動作を詳述する。まず、ステップS1で落下の有無が判定される。落下センサー35から落下開始信号が供給されると、HDD11の落下が認定される。ステップS2で落下時間計測部54は落下時間の計測を開始する。同時に待避動作が実行される。例えばシーク制御部53からボイスコイルモーター27に駆動電流が供給される。こうした駆動電流の供給を受けてボイスコイルモーター27は支軸23回りでキャリッジ21を駆動する。その結果、浮上ヘッドスライダ26は磁気ディスク18から待避する。ロードタブ28はランプ部材29上に保持される。落下センサー35から落下終了信号が供給されると、ステップS3で落下時間の計測が終了する。落下時間が計測されると、処理動作はステップS4に進む。
【0047】
ステップS4で衝撃エネルギー判定部55は衝撃エネルギーの大きさを判定する。判定にあたって落下時間は落下高さに変換される。変換にあたって重力加速度は用いられる。計測値が耐衝撃バジェット値「5%」未満であると、システムコントローラー47はステップS5で通常の処理動作に復帰する。落下時処理動作は終了する。
【0048】
ステップS6で衝撃エネルギー判定部55は再び衝撃エネルギーの大きさを判定する。計測値が耐衝撃バジェット値「5%」以上であって耐衝撃バジェット値「10%」未満であると、システムコントローラー47は第1復帰処理を選択する。処理動作はステップS7に進む。第1復帰処理では共振周波数が計測し直される。ここでは、まず、シーク制御部53の働きで電磁変換素子42は任意の記録トラック上に位置決めされる。続いてサーボコントローラー45はトラッキングサーボを実行する。周波数信号付加部56からボイスコイルモーター27に向かって周波数信号が供給される。周波数信号の周波数は徐々に変化する。特定の周波数で浮上ヘッドスライダ26は激しく振動する。その結果、サーボコントローラー45から供給される制御電流が大きく振れる。こうして共振は検出される。共振周波数特定部57は周波数情報に基づき共振周波数を特定する。同時に共振周波数特定部57は振動の振幅に基づきゲインを特定する。特定された共振周波数およびゲインに基づき周波数特性設定部58はノッチフィルター46のフィルター係数を算出する。算出されたフィルター係数はフィルター係数データのフィルター係数に照らし合わせられる。2つのフィルター係数が一致すると、周波数特性設定部58はフラッシュメモリー51内で対応の閾値データを書き換える。ここでは、例えば閾値「5%」は閾値「6%」に引き上げられる。2つのフィルター係数が一致しなければ、周波数特性設定部58は、ノッチフィルター46のフィルター係数を変更すると同時に、新たに特定されたフィルター係数でフラッシュメモリー51内のフィルター係数データを上書きする。例えば図5に示されるように、共振周波数に変化がなくゲインが増大した場合には、フィルター係数の設定に応じてノッチフィルター46でノッチの深さが深められる。ノッチの中心周波数は維持される。例えば図6に示されるように、ゲインに変化がなく共振周波数がシフトした場合には、フィルター係数の設定に応じてノッチフィルター46でノッチの中心周波数はシフトされる。ノッチの深さは維持される。このように共振周波数やゲインの変化に応じてフィルター係数は変更される。その後、処理動作はステップS5に進む。前述と同様に、システムコントローラー47は通常の処理動作に復帰する。落下時処理動作は終了する。
【0049】
ステップS8で衝撃エネルギー判定部55は再び衝撃エネルギーの大きさを判定する。計測値が耐衝撃バジェット値「10%」以上であって耐衝撃バジェット値「15%」未満であると、システムコントローラー47は第2復帰処理を選択する。処理動作はステップS9に進む。第2復帰処理では偏心補正値が算出し直される。ここでは、まず、シーク制御部53の働きで電磁変換素子42は任意の記録トラック上に位置決めされる。偏心量算出部59はサーボコントローラー45の制御電流に基づき偏心量を算出する。偏心補正値算出部61はその偏心量に基づき偏心補正値を算出する。偏心補正値格納部62では、算出された偏心補正値は偏心補正値データの偏心補正値に照らし合わせられる。2つの偏心補正値が一致すると、偏心補正値格納部62はフラッシュメモリー51内で対応の閾値データを書き換える。例えば閾値「10%」は閾値「11%」に引き上げられる。2つの偏心補正値が一致しなければ、偏心補正値格納部62は、偏心補正値算出部61で算出された偏心補正値でフラッシュメモリー51内の偏心補正値データを上書きする。その後、システムコントローラー47はステップS10で前述の第1復帰処理を実行する。第1復帰処理が完了すると、前述と同様に、システムコントローラー47は通常の処理動作に復帰する。落下時処理動作は終了する。
【0050】
ステップS8で計測値が耐衝撃バジェット値「15%」以上であることが確認されると、システムコントローラー47は第3復帰処理を選択する。処理動作はステップS11に進む。第3復帰処理ではバイアス補正値が算出し直される。ここでは、まず、シーク制御部53の働きで電磁変換素子42は任意の記録トラック上に位置決めされる。駆動電流値測定部63は駆動電流の電流値すなわちバイアス補正値を算出する。バイアス補正値格納部64では、算出されたバイアス補正値はバイアス補正値データのバイアス補正値に照らし合わせられる。2つのバイアス補正値が一致すると、バイアス補正値格納部64はフラッシュメモリー51内で対応の閾値データを書き換える。例えば閾値「15%」は閾値「16%」に引き上げられる。2つのバイアス補正値が一致しなければ、バイアス補正値格納部64は、駆動電流値測定部63で算出されたバイアス補正値でフラッシュメモリー51内のバイアス補正値データを上書きする。その後、システムコントローラー47はステップS12で前述の第2復帰処理を実行する。第2復帰処理が完了すると、ステップS13でシステムコントローラー47は第1復帰処理を実行する。第1復帰処理が完了すると、前述と同様に、システムコントローラー47は通常の処理動作に復帰する。落下時処理動作は終了する。
【0051】
以上のような落下時処理動作によれば、待避後に、落下高さに応じて選択的に第1〜第3復帰処理は実行される。待避後の処理動作は必要最小限のものに限定されることができる。したがって、確実に最適な処理動作のみが実行される。その結果、落下高さに拘わらず待避後に共通に処理動作が実行される場合に比べて、待避後の処理動作すなわち復帰処理の時間は短縮されることができる。
【0052】
しかも、以上の落下時処理動作では、照らし合わせに応じてフィルター係数同士が一致すると、フラッシュメモリー51内で閾値は書き換えられる。同様に、照らし合わせに応じて偏心補正値同士やバイアス補正値同士が一致すると、フラッシュメモリー51内で閾値は書き換えられる。こうして閾値の精度は高められる。その結果、無駄な処理動作は極力回避されることができる。
【0053】
なお、落下センサー35は例えば衝撃センサーに置き換えられてもよい。その他、落下センサー35および衝撃センサーは併用されてもよい。その他、フラッシュメモリー51内の閾値の書き換えにあたって、フィルター係数や偏心補正値、バイアス補正値の照らし合わせは1回に限定されるものではない。例えば複数回にわたって連続的にフィルター係数同士や偏心補正値同士、バイアス補正値同士が一致するまでフラッシュメモリー51内の閾値の書き換えは保留されてもよい。
【0054】
(付記1) 記録媒体と、前記記録媒体に向き合わせられるヘッドスライダと、加速度を検出する加速度検出器と、加速度検出器の検出結果に基づき記録媒体からヘッドスライダを待避させ、待避後に、加速度検出器の検出結果から導き出されて衝撃エネルギーの大きさを特定する指標に基づき、複数種類の処理動作のうちから1以上の処理動作を選択的に実行する制御回路とを備えることを特徴とする記録媒体駆動装置。
【0055】
(付記2) 付記1に記載の記録媒体駆動装置において、前記加速度検出器は、無重力状態の検出に基づき落下を検出する落下センサーであって、前記制御回路は、無重力状態の開始および無重力状態の終了に基づき落下時間を計測し、計測した落下時間に基づき前記複数種類の処理動作のうちから前記1以上の処理動作を選択的に実行することを特徴とする記録媒体駆動装置。
【0056】
(付記3) 付記1に記載の記録媒体駆動装置において、前記加速度検出器には、衝撃を検出する衝撃センサーが用いられ、前記ヘッドスライダの待避後、前記制御回路は、前記衝撃センサーの検出結果に基づき前記複数の処理動作のうちから前記1つ以上の処理動作を選択的に実行することを特徴とする記録媒体駆動装置。
【0057】
(付記4) 付記1に記載の記録媒体駆動装置において、前記制御回路は、前記ヘッドスライダのトラッキングサーボ信号に所定の周波数で変化する周波数信号を付加する周波数信号付加部と、ヘッドスライダの挙動に基づき共振周波数を特定する共振周波数特定部と、特定された共振周波数に基づき、ヘッドスライダのトラッキングサーボ信号から予め決められた周波数を取り除く周波数フィルターの周波数特性を設定する周波数特性設定部とを備えることを特徴とする記録媒体駆動装置。
【0058】
(付記5) 付記1に記載の記録媒体駆動装置において、前記制御回路は、記録媒体の偏心量を算出する偏心量算出部と、算出された偏心量に基づき前記ヘッドスライダのトラッキングサーボ信号に付加される偏心補正値を算出する偏心補正値算出部と、算出された偏心補正値を所定の記憶媒体に格納する偏心補正値格納部とを備えることを特徴とする記録媒体駆動装置。
【0059】
(付記6) 付記1に記載の記録媒体駆動装置において、前記制御回路は、ヘッドスライダの位置決め信号に基づきヘッドスライダを位置決めする位置決め制御部と、ヘッドスライダがオントラック位置に位置決めされた際にヘッドスライダの駆動に利用される電流値を測定する駆動電流値測定部と、測定された電流値を所定の記憶媒体に格納する電流値格納部とを備えることを特徴とする記録媒体駆動装置。
【0060】
(付記7) 加速度検出器で記録媒体およびヘッドスライダに加わる加速度を検出する工程と、加速度検出器の検出結果に基づき記録媒体からヘッドスライダを待避させる工程と、待避後に、加速度検出器の検出結果から導き出されて衝撃エネルギーの大きさを特定する指標に基づき、複数種類の処理動作のうちから1以上の処理動作を選択的に実行する工程とを備えることを特徴とする記録媒体駆動装置の制御方法。
【0061】
(付記8) 付記7に記載の記録媒体駆動装置の制御方法において、無重力状態の検出に基づき落下を検出する落下センサーの出力に基づき、無重力状態の開始および無重力状態の終了を特定する工程と、特定された無重力状態の開始および無重力状態の終了に基づき落下時間を計測する工程と、計測された落下時間に基づき前記1以上の処理工程を選択的に実行する工程とを備えることを特徴とする記録媒体駆動装置の制御方法。
【0062】
(付記9) 付記7に記載の記録媒体駆動装置の制御方法において、前記ヘッドスライダのトラッキングサーボ信号に所定の周波数で変化する周波数信号を付加する工程と、ヘッドスライダの挙動に基づき共振周波数を特定する工程と、特定された共振周波数に基づき、ヘッドスライダのトラッキングサーボ信号から予め決められた周波数を取り除く周波数フィルターの周波数特性を設定する工程とを含むことを特徴とする記録媒体駆動装置の制御方法。
【0063】
(付記10) 付記7に記載の記録媒体駆動装置の制御方法において、記録媒体の偏心量を算出する工程と、算出された偏心量に基づき前記ヘッドスライダのトラッキングサーボ信号に付加される偏心補正値を算出する工程と、算出された偏心補正値を所定の記憶媒体に格納する工程とを含むことを特徴とする記録媒体駆動装置の制御方法。
【0064】
(付記11) 付記7に記載の記録媒体駆動装置の制御方法において、ヘッドスライダの位置決め信号に基づきヘッドスライダを位置決めする工程と、ヘッドスライダがオントラック位置に位置決めされた際にヘッドスライダの駆動に利用される電流値を測定する工程と、測定された電流値を所定の記憶媒体に格納する工程とを含むことを特徴とする記録媒体駆動装置の制御方法。
【0065】
(付記12) 記録媒体と、記録媒体に向き合わせられるヘッドスライダと、記録媒体およびヘッドスライダに加わる加速度を検出する加速度検出器と、衝撃エネルギーの大きさを特定する指標に従って規定の閾値、および、ヘッドスライダの位置決め信号に関連する所定の補正値を記憶する記憶媒体と、加速度検出器の検出結果から導き出されて衝撃エネルギーの大きさを特定する指標、および、記憶媒体に記憶される規定の閾値を相互に照らし合わせ、指標および閾値の比較に応じてヘッドスライダの位置決め信号に関連して前記所定の補正値に対応する現補正値を算出し、算出された現補正値、および、前記所定の補正値が一致すると、記憶媒体内の規定の閾値を書き換える制御回路とを備えることを特徴とする記録媒体駆動装置。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明に係る記録媒体駆動装置の一具体例すなわちハードディスク駆動装置(HDD)の外観を概略的に示す斜視図である。
【図2】HDDの内部構造を概略的に示す平面図である。
【図3】HDDの回路構成を概略的に示すブロック図である。
【図4】落下時処理動作の処理手順を示すフローチャートである。
【図5】HDDの落下前後で振動系およびノッチフィルターの周波数特性の一具体例を示すグラフである。
【図6】HDDの落下前後で振動系およびノッチフィルターの周波数特性の一具体例を示すグラフである。
【符号の説明】
【0067】
11 記録媒体駆動装置(ハードディスク駆動装置)、18 記録媒体(磁気ディスク)、26 ヘッドスライダ、35 加速度検出器(落下センサー)、46 周波数フィルター(ノッチフィルター)、47 制御回路(システムコントローラー)、53 位置決め制御部(シーク制御部)、56 周波数信号付加部、57 共振周波数特定部、58 周波数特性設定部、59 偏心量算出部、61 偏心補正値算出部、62 偏心補正値格納部、63 駆動電流値測定部、64 電流値格納部(バイアス補正値格納部)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体と、前記記録媒体に向き合わせられるヘッドスライダと、加速度を検出する加速度検出器と、加速度検出器の検出結果に基づき記録媒体からヘッドスライダを待避させ、待避後に、加速度検出器の検出結果から導き出されて衝撃エネルギーの大きさを特定する指標に基づき、複数種類の処理動作のうちから1以上の処理動作を選択的に実行する制御回路とを備えることを特徴とする記録媒体駆動装置。
【請求項2】
請求項1に記載の記録媒体駆動装置において、前記加速度検出器は、無重力状態の検出に基づき落下を検出する落下センサーであって、前記制御回路は、無重力状態の開始および無重力状態の終了に基づき落下時間を計測し、計測した落下時間に基づき前記複数種類の処理動作のうちから前記1以上の処理動作を選択的に実行することを特徴とする記録媒体駆動装置。
【請求項3】
請求項1に記載の記録媒体駆動装置において、前記加速度検出器には、衝撃を検出する衝撃センサーが用いられ、前記ヘッドスライダの待避後、前記制御回路は、前記衝撃センサーの検出結果に基づき前記複数の処理動作のうちから前記1つ以上の処理動作を選択的に実行することを特徴とする記録媒体駆動装置。
【請求項4】
請求項1に記載の記録媒体駆動装置において、前記制御回路は、前記ヘッドスライダのトラッキングサーボ信号に所定の周波数で変化する周波数信号を付加する周波数信号付加部と、ヘッドスライダの挙動に基づき共振周波数を特定する共振周波数特定部と、特定された共振周波数に基づき、ヘッドスライダのトラッキングサーボ信号から予め決められた周波数を取り除く周波数フィルターの周波数特性を設定する周波数特性設定部とを備えることを特徴とする記録媒体駆動装置。
【請求項5】
請求項1に記載の記録媒体駆動装置において、前記制御回路は、記録媒体の偏心量を算出する偏心量算出部と、算出された偏心量に基づき前記ヘッドスライダのトラッキングサーボ信号に付加される偏心補正値を算出する偏心補正値算出部と、算出された偏心補正値を所定の記憶媒体に格納する偏心補正値格納部とを備えることを特徴とする記録媒体駆動装置。
【請求項6】
請求項1に記載の記録媒体駆動装置において、前記制御回路は、ヘッドスライダの位置決め信号に基づきヘッドスライダを位置決めする位置決め制御部と、ヘッドスライダがオントラック位置に位置決めされた際にヘッドスライダの駆動に利用される電流値を測定する駆動電流値測定部と、測定された電流値を所定の記憶媒体に格納する電流値格納部とを備えることを特徴とする記録媒体駆動装置。
【請求項7】
加速度を検出する工程と、加速度検出器の検出結果から導き出されて衝撃エネルギーの大きさを特定する指標を導出する工程と、前記指標に基づき、複数種類の処理動作のうちから1以上の処理動作を選択的に実行する工程とを備えることを特徴とする記録媒体駆動装置の制御方法。
【請求項8】
記録媒体と、記録媒体に向き合わせられるヘッドスライダと、加速度検出器と、衝撃エネルギーの大きさを特定する指標に従って規定の閾値、および、ヘッドスライダの位置決め信号に関連する所定の補正値を記憶する記憶媒体と、加速度検出器の検出結果から導き出されて衝撃エネルギーの大きさを特定する指標、および、記憶媒体に記憶される規定の閾値を相互に照らし合わせ、指標および閾値の比較に応じてヘッドスライダの位置決め信号に関連して前記所定の補正値に対応する現補正値を算出し、算出された現補正値、および、前記所定の補正値が一致すると、記憶媒体内の規定の閾値を書き換える制御回路とを備えることを特徴とする記録媒体駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−230769(P2009−230769A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−70959(P2008−70959)
【出願日】平成20年3月19日(2008.3.19)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】