説明

記録材帯電装置、画像形成装置、及び記録材帯電装置の清掃機構

【課題】記録材帯電手段の清掃時の操作性が向上した記録材帯電装置、画像形成装置、及び記録材帯電装置の清掃機構を提供する。
【解決手段】 画像形成装置内にて記録材搬送路Qに対向配置され、記録材を除電するか又は帯電させる記録材帯電装置Aは、記録材帯電手段40と;突起部51と、清掃具60が備える当接部62bが当接する受け部52dと、を備え、突起部51が記録材帯電手段40より記録材搬送路Q側に突出した第1の位置にある第1の状態と、突起部51が突起方向において記録材帯電手段40より記録材搬送路Qとは反対側に退避した第2の位置にある第2の状態とをとり得る突起部材と;を有し、清掃具60が帯電手段40に適合される際に、受け部52dに対する当接部62bからの付勢力により、突起部材51は第1の状態から第2の状態となる構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式或いは静電記録方式を利用した画像形成装置にて用いられる記録材を除電するか又は帯電させる記録材帯電装置、これを備えた画像形成装置、及び記録材帯電装置の清掃機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式の画像形成装置においては、像担持体としての電子写真感光体を一様に帯電させた後、画像情報に応じて露光することで、像担持体上に画像情報に応じた静電像を形成する。像担持体上に形成された静電像は、現像装置によって現像剤で現像剤像として現像される。像担持体上に現像剤で形成された現像剤像(トナー像)は、転写部において記録材に静電的に転写される。その後、記録材上の未定着のトナー像は、定着装置によって記録材に定着され記録画像となる。
【0003】
転写部での像担持体からの記録材の分離、又は転写部へ記録材を導く静電搬送ベルト(静電転写ベルト)からの記録材の分離を補助するなどの目的で、転写部と定着手段の間に記録材を除電するか又は帯電させる記録材帯電装置として分離帯電装置を設置する。
【0004】
分離帯電装置の構成としては、ワイヤ放電式のコロナ放電器、或いは鋸歯状電極などの非接触式の放電電極を採用する場合が多い。例えば、図2は、記録材を除電するか又は帯電させる記録材帯電手段としてワイヤ放電方式のコロナ放電器40を備える分離帯電装置Aを示す。コロナ放電器40は、その機能上、周囲に飛散しているトナーなどを引き付け、使用中に汚れていく。コロナ放電器40に付着したトナーは、そのままにしておくと除電又は帯電効果が薄れて、機能低下を引き起こすことがある。そのため、ブラシなどで定期的な清掃が必要である。コロナ放電器の清掃に関する構成は、特許文献1、特許文献2に開示されている。
【0005】
又、転写と定着との間において、転写中の記録材へのストレスを減らすためにスピード差を設ける場合が多い。しかし、この影響や定着ニップの形状などにより、記録材の後端が転写部から抜けた瞬間に跳ねて中間に位置する除電器に接触してしまうことがある。この際に、もしコロナ放電器が定期清掃直前の状態で汚れていると、記録材の後端にトナーなどが付着してしまう問題が生じる。
【0006】
上記記録材の汚れの対策としては、図2に示すように、コロナ放電器40より記録材搬送路に向かって突出した突起形状部(突起部)51を備える突起部材50を、コロナ放電器40の近辺に固定することが有効である。これにより、突起部51を跳ねた記録材に点接触させることにより、記録材の汚れを最小限にすることができる。
【0007】
ところで、コロナ放電器40を清掃する場合、図2中の矢印のように、記録材搬送方向に対して垂直な方向に渡ってクリーナを滑らすように操作する。これにより、コロナ放電器40を一様にきれいにすることができる。しかし、前記突起部51がある場合には、クリーナが突起部51に引っかかり、操作性が悪化する。そればかりか、突起先端を破損してしまう可能性がある。
【0008】
以上、記録材帯電装置として分離帯電装置を例に従来の問題点を説明したが、同様の問題は、記録材帯電装置としての転写帯電装置においてもある。つまり、従来、像担持体からトナー像を記録材に転写させる転写帯電手段として、ワイヤ放電方式のコロナ放電器が用いられる。そして、記録材を像担持体から分離するための手段として、記録材の搬送方向において転写帯電手段の下流側近傍に、記録材搬送路に向かって突出した除電部材(除電針)を設けた構成が知られている。このように転写帯電手段と除電部材とを備える記録材帯電装置、即ち、転写帯電装置においても、上記分離帯電器の場合と同様に、除電部材によって、コロナ放電器の清掃時の操作性が悪化したり、或いは除電部材を破損させる虞があるといった問題がある。
【0009】
尚、特許文献3は、転写帯電手段と転写帯電手段の記録材移動方向下流側に配置された記録材除電用の除電部材(除電針)を有する画像形成装置において、除電部材を支持する絶縁部材を転写帯電手段の短手方向へ除電部材を進退させる時に、同時に、転写帯電手段のケーシングに固定されたクリーニング部材が除電部材に摺接する構成を開示している。特許文献3の技術は、除電部材を支持する絶縁部材を移動させる動作によって、除電部材をクリーニングしようとするものである。つまり、斯かる技術は、転写帯電手段の清掃時の操作性が除電部材により悪化するとの問題、或いは転写帯電手段の清掃時に除電部材を破損する虞があるとの問題を解決するものではない。
【特許文献1】特開平8−190255号公報
【特許文献2】特開2003−76118号公報
【特許文献3】特開平8−211751号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、記録材帯電手段の清掃時の操作性が向上した記録材帯電装置、画像形成装置、及び記録材帯電装置の清掃機構を提供することである。
【0011】
本発明の他の目的は、記録材帯電手段の清掃時に突起部材を破損する危険性が低減された記録材帯電装置、画像形成装置、及び記録材帯電装置の清掃機構を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的は本発明に係る画像形成装置にて達成される。要約すれば、本発明は、画像形成装置内にて記録材搬送路に対向配置され、記録材を除電するか又は帯電させる記録材帯電装置において、記録材を除電するか又は帯電させる記録材帯電手段と;前記記録材搬送路に向かって突起した突起部と、前記記録材帯電手段を清掃する清掃具が備える当接部が当接する受け部と、を備え、前記突起部が前記記録材帯電手段より前記記録材搬送路側に突出した第1の位置にある第1の状態と、前記突起部が前記記録材帯電手段より前記記録材搬送路とは反対側に退避した第2の位置にある第2の状態とをとり得る突起部材と;を有し、前記清掃具が前記帯電手段に適合される際に、前記受け部に対する前記当接部からの付勢力により、前記突起部材は前記第1の状態から前記第2の状態となることを特徴とする記録材帯電装置である。
【0013】
又、本発明によれば、上記本発明の記録材帯電装置を備える画像形成装置が提供される。又、本発明によれば、上記本発明の記録材帯電装置と、清掃具とを備える記録材帯電装置の清掃機構が提供される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、記録材帯電手段の清掃時の操作性が向上する。又、本発明によれば、記録材帯電手段の清掃時に突起部材を破損する危険性が低減される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明に係る画像形成装置を図面に則して更に詳しく説明する。
【0016】
実施例1
[画像形成装置の全体構成]
先ず、図1を参照して画像形成装置の全体構成について説明する。尚、本実施例の画像形成装置100は、画像形成装置本体110と通信可能に接続されたパーソナルコンピュータ、或いは原稿読み取り装置などの外部機器からの画像情報信号に従って、電子写真方式を利用して記録材(例えば、記録用紙、プラスチックフィルム、布など)にフルカラー画像を形成することができるフルカラーレーザービームプリンタである。
【0017】
画像形成装置100は、複数の像形成手段として、それぞれイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの画像を形成する第1、第2、第3、第4の画像形成ステーション120Y、120M、120C、120Kを有する。本実施例では、各画像形成ステーション120Y、120M、120C、120Kの構成は、現像色が異なる以外は実質的に同一構成である。
【0018】
画像形成装置100は、垂直方向に並設された4個の感光ドラム1(1Y、1M、1C、1K)を備えている。感光ドラム1は、駆動手段(図示せず)によって、図1中、反時計回りに回転駆動される。感光ドラム1の周囲には、その回転方向に従って順に、感光ドラム1の表面を均一に帯電する帯電手段としての帯電装置2(2Y、2M、2C、2K)、画像情報に基づいてレーザービームを照射し感光ドラム1上の静電潜像を形成する露光手段としてのスキャナユニット3(3Y、3M、3C、3K)、静電潜像にトナーを付着させてトナー像として現像する現像手段としての現像装置4(4Y、4M、4C、4K)、感光ドラム1上のトナー像を記録材Sに転写させる静電転写装置5、転写後の感光ドラム1表面に残った転写残トナーを除去するクリーニング装置6(6Y、6M、6C、6K)などが配設されている。
【0019】
ここで、感光ドラム1(1Y、1M、1C、1K)、帯電装置2(2Y、2M、2C、2K)、現像装置4(4Y、4M、4C、4K)、クリーニング装置6(6Y、6M、6C、6K)は一体的にカートリッジ化されプロセスカートリッジ7(7Y、7M、7C、7K)を構成している。プロセスカートリッジ7は、画像形成装置本体110に設けられた、装着ガイド、位置決め部材などとされる装着手段を介して、画像形成装置本体110に対して着脱自在に装着される。
【0020】
又、本実施例では、画像形成装置100の前面の扉に取り付けられた静電転写装置5と、各プロセスカートリッジ7との間で画像形成装置本体110を分割できるようになっている。つまり、本実施例では、画像形成装置100の前面の扉130は、図1中矢印dで示すように、画像形成装置本体110の下端部近傍に設けられた軸140を中心として手前に回動させて開く。これにより、静電転写装置5は、各プロセスカートリッジ7の感光ドラム1から離間し、プロセスカートリッジ7の着脱のための開口部が開放される。又、扉130を開くと、後述する分離帯電装置Aのコロナ放電器(除電器)40の作用部側が開放される。これにより、分離帯電装置Aの清掃を行うことができる。
【0021】
以下、画像形成装置100の各要素について更に詳述する。上述のように、本実施例では、各画像形成ステーション120Y、120M、120C、120Kの構成は、現像色が異なる以外は実質的に同一構成であるので、以下特に区別を要しない場合は、いずれかの画像形成ステーションに属する要素であることを示すように図中符号に与えた添え字Y、M、C、Kは省略して総括的に説明する。
【0022】
感光ドラム1は、例えば直径30mmのアルミシリンダの外周面に、有機光導伝体層(OPC感光体)を塗布して構成される。感光ドラム1は、その両端部を支持部材によって回転自在に支持されている。そして、感光ドラム1は、一方の端部に駆動モータ(図示せず)からの駆動力が伝達されることにより、図1中反時計周りに回転駆動される。
【0023】
帯電装置2としては、接触帯電方式のものを使用することができる。この帯電装置2は、帯電部材として、ローラ状に形成された導電性ローラを有する。そして、このローラを感光ドラム1の表面に当接させると共に、このローラに帯電バイアス電圧を印加することにより、感光ドラム1の表面を一様に帯電させる。
【0024】
スキャナユニット3は、感光ドラム1の略水平方向に配置されている。スキャナユニット3において、画像信号に対応する画像光が、レーザーダイオード(図示せず)によって、スキャナモーター(図示せず)によって高速回転されるポリゴンミラー9(9Y、9M、9C、9K)に照射される。ポリゴンミラー9に反射した画像光は、結像レンズ10(10Y、10M、10C、10K)を介して、帯電済みの感光ドラム1の表面を選択的に露光する。こうして、感光ドラム1に静電潜像が形成される。
【0025】
現像装置4Y、4M、4C、4Kは、それぞれ現像剤としてイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色のトナーを収納した現像容器を有する。感光ドラム1に対向する現像容器の一部は開口している。この開口部に、現像剤担持体としての現像ローラが回転可能に配置される。この現像ローラによって現像容器内のトナーを搬送し、静電像に応じて感光ドラム1へ供給する。
【0026】
静電転写装置5は、全ての感光ドラム1Y、1M、1C、1Kに対向し、接触した状態で循環移動可能な静電転写ベルト11を有する。静電転写ベルト11は、1011〜1014Ω・cmの体積固有抵抗を持たせた、厚さ約150μmのフィルム状部材で構成される。この静電転写ベルト11は、垂直方向に4軸でローラに支持され、図1中左側の外周面に記録材Sを静電吸着して感光ドラム1に記録材Sを接触させるべく循環移動する。つまり、静電転写ベルト11は、本実施例では、周長約700mmのベルトであり、駆動ローラ13、従動ローラ14a、14b、テンションローラ15の4本のローラにより掛け渡され、図中矢示の時計方向に回転する。これにより、記録材Sは静電転写ベルト11により転写位置まで搬送される。そして、静電転写ベルト11が循環移動して、記録材Sが従動ローラ14a側から駆動ローラ13側へ搬送される間に、トナー像が感光ドラム1から記録材Sに転写される。
【0027】
この静電転写ベルト11の内側(感光ドラム1が当接する表面とは反対側)に当接し、4個の感光ドラム1Y、1M、1C、1Kに対向した位置に、転写ローラ12(12Y、12M、12C、12K)が並設されている。これら転写ローラ12から正極性の電荷が静電転写ベルト11を介して記録材Sに印加される。この電荷による電界により、感光ドラム1に接触している記録材Sに、感光ドラム1上の負極性のトナー像が転写される。
【0028】
給紙部16は、画像形成部に記録材Sを供給する。給紙部16において、複数枚の記録材Sが記録材カセット17に収納されている。画像形成時には、記録材供給ローラ18(半月ローラ)、レジストローラ対19が画像形成動作に応じて駆動回転し、記録材カセット17内の記録材Sを1枚毎分離給送する。記録材Sの先端は、レジストローラ対19に突き当たり一旦停止し、ループを形成する。その後、記録材Sは、静電転写ベルト11の回転と画像書出し位置の同期をとって、レジストローラ対19によって静電転写ベルト11へと給紙される。
【0029】
静電吸着ベルト11により搬送されながら、順次、各色のトナー像を転写された記録材Sは、その後定着部20にて加熱・加圧される。これにより、記録材S上の未定着のトナー像は、記録材Sに定着される。
【0030】
画像形成動作について更に説明する。画像形成動作が開始されると、各プロセスカートリッジ7が印字タイミングに合わせて順次駆動され、その駆動に応じて感光ドラム1Y、1M、1C、1Kが、図1中反時計回り方向に回転駆動される。そして、各々のプロセスカートリッジ7に対応するスキャナユニット3が順次駆動される。又、帯電ローラ2は感光ドラム1の周面に一様な電荷を付与する。そして、スキャナユニット3が、感光ドラム1の周面に画像信号に応じて露光を行う。これにより、感光ドラム1の周面上に静電潜像が形成される。本実施例では、現像装置4は、反転現像(トナーの帯電極性と同極性に帯電された感光ドラムの露光により電位が減衰した部分にトナーを付着させる現像方式)により静電像を現像する。つまり、本実施例では、現像装置4内の現像ローラは、静電潜像の低電位部にトナーを転移させて、感光ドラム1の周面上にトナー像を形成(現像)する。
【0031】
記録材Sの搬送方向において最上流の感光ドラム1Yの周面上のトナー像の先端が、静電転写ベルト11との対向点に回転搬送されてくるタイミングで、その対向点に記録材Sの印字開始位置が一致するように、レジローラ対19が回転を開始して、記録材Sを静電転写ベルト11へ給送する。
【0032】
記録材Sは、静電吸着ローラ22と静電転写ベルト11とによって挟み込むようにして静電転写ベルト11の外周に圧接する。又、静電転写ベルト11と静電吸着ローラ22との間に電圧を印加することにより、誘電体である記録材Sと静電転写ベルト11の誘電体層に電荷を誘起し、記録材Sを静電転写ベルト11の外周に静電吸着する。これにより、記録材Sは静電転写ベルト11に安定して吸着され、記録材Sの搬送方向において最下流の転写部まで搬送される。
【0033】
このように、記録材Sは、静電転写ベルト11によって搬送されながら、各感光ドラム1と転写ローラ12との間の転写部TY、TM、TC、TKに形成される電界によって、各感光ドラム1のトナー像が順次転写される。
【0034】
4色のトナー像を転写された記録材Sは、ベルト駆動ローラ13の曲率による曲率分離能力と、詳しくは後述する分離帯電装置Aが備えるコロナ放電器(除電器)40による記録材Sからの過剰電荷の除電により、静電転写ベルト11から分離される。次いで、記録材Sは定着部20に搬入される。
【0035】
記録材Sは、定着部20でトナー像を熱定着された後、記録材排出ローラ対23a、23bによって、記録材排出部24に画像面を下にした状態で排出される。
【0036】
ここで、定着部20の例として広く採用されている熱ローラ方式の定着装置に関して説明する。斯かる定着装置は、定着ローラ(加熱ローラ)21aと加圧ローラ21bとの圧接ローラ対を基本構成として有する。そして、該ローラ対を回転させ、該ローラ対の相互圧接部である定着ニップ部に、定着すべき未定着トナー画像を担持した記録材Sが導入される。そして、該定着ニップ部で記録材Sを挟持搬送して、定着ローラ21aの熱と、定着ニップ部の加圧力にて、未定着トナー画像を記録材Sの表面に熱圧定着させる。定着ローラ21aは、一般に、アルミニウムの中空金属ローラを基体(芯金)とする。又、その芯金の内空に熱源としてのハロゲンランプが挿入して配設されている。そして、定着ローラ21aは、このハロゲンランプの発熱で加熱される。定着ローラ21aの外周面が所定の定着温度に維持されるようにハロゲンランプへの通電が制御されて、定着ローラ21aは温調される。
【0037】
特に、フルカラーの画像形成を行う画像形成装置の定着装置は、最大4層のトナー画像層を十分に加熱溶融させて混色させる能力を要求される。そのため、定着ローラ21aの芯金を高い熱容量を有するものにし、又その芯金外周にトナー画像を包み込んで均一に溶融するためのゴム弾性層を具備させる。そして、そのゴム弾性層を介してトナー画像の加熱を行っている。又、加圧ローラ21b内にも熱源を具備させて、加圧ローラも加熱・温調する構成にしたものもある。
【0038】
本実施例では、図1に示すように、記録材カセット17から供給され、静電転写ベルト11上に担持されて各転写部TY、TM、TC、TKを通過した後、静電転写ベルト11から分離されて定着部20へと導入され、次いで記録材排出部24へと至る経路が、記録材搬送路Qである。
【0039】
[分離帯電装置]
次に、図2〜図4を参照して、本実施例にて最も特徴的な、分離帯電装置Aについて説明する。
【0040】
記録材Sの搬送方向において最下流の転写部TMの下流側に、記録材帯電装置としての分離帯電装置Aが配置されている。分離帯電装置Aは、記録材帯電手段としてワイヤ放電式のコロナ放電器(除電器)40を有する。本実施例では、上述のように、分離帯電装置Aは、コロナ放電により、各画像形成ステーション120Y、120M、120C、120Kを通過した後の記録材Sから過剰電荷を除電する。これにより、記録材Sは、静電転写ベルト11から分離される。
【0041】
除電器40は、放電電極としての放電ワイヤ41と、ステー42と、電極保持部材(図示せず)などを備えている。放電ワイヤ41は、その軸線方向(長手方向)が、記録材Sの搬送方向と交差(本実施例では直交)する方向に沿うようにして配置される。放電ワイヤ41の軸線方向両端部は、電極保持部材(図示せず)によって保持されている。放電ワイヤ41は、放電電極として好適な任意の材料で作成することができるが、本実施例ではタングステンワイヤである。
【0042】
ステー42は、断面略コの字型である。つまり、ステー42は、記録材Sの搬送方向において互いに対向する第1ステー側板(ステー上流側板)42a、第2ステー側板(ステー下流側板)42bと、これらステー上流側板42aとステー下流側板42bとを連結するステー背板42cとを有する。ステー上流側板42a、ステー下流側板42bは、記録材Sの搬送方向と交差(本実施例では直交)する方向に沿って配置される。又、ステー背板42cは、その面が、記録材搬送路Qの面と略平行になるように配置される。ステー上流側板42a及びステー下流側板42bの、ステー背板42cとは反対側は開放され、ステー開口部42dが形成されている。除電器40は、ステー開口部42dを介してコロナ放電作用によって記録材Sを除電する。放電ワイヤ41は、ステー上流側板42aとステー下流側板42bとの間に挟み込まれた位置に、これらに対して略平行に配置される。本実施例では、ステー42は、ステンレススチールの板を加工して形成されている。
【0043】
分離帯電装置Aは更に、除電器40に付着したトナーなどの汚れが記録材Sに付かないように、記録材搬送経路Qに向かって突起した突起形状部(突起部)51を備えた突起部材50を有する。本実施例では、突起部材50の突起部51は、除電器40を構成するステー上流側板42aの外側(図1中下側)に隣接して配置される。
【0044】
特に、記録材Sの後端が転写部を抜けた後に除電器40側に跳ねた場合には、突起部51に記録材Sの後端が一旦接触した後に定着器20へ搬入される。突起部51は、その先端で記録材Sに点接触する。尚、この際、図9に示すように記録材Sが撓むことで突起部51間で除電器40に接触しないようにしつつ、突起部51の数を極力抑えるためには、記録材Sの後端は複数の突起部51に対して均等に接触することが望ましい。このため、突起部材50は分離帯電装置Aに隣接配置されると共に、その複数の突起部51の先端位置において、除電器40と同様に記録材搬送路Qの面と略平行に設置される。
【0045】
本実施例では、突起部材50は、除電器40と共に分離帯電装置ユニットとして一体的に画像形成装置本体110から取り外すことができる。これにより、突起部材50と除電器40との相互位置決めと共に、画像形成装置本体110への位置決めも容易に行えるという効果がある。
【0046】
ところで、除電器40を清掃する場合、スポンジ、フェルトなどの弾性を有する清掃部材を放電ワイヤ41に接触させて、除電器40の長手方向、即ち、記録材Sの搬送方向と交差(本実施例では直交)する方向に滑らすように操作する。これにより、放電ワイヤ41、更にはステー42の内面の付着物(トナー、放電生成物など)を拭き取る。こうして、除電器40を長手方向で略一様にきれいにすることができる。
【0047】
この際、従来は、除電器40に隣接して設けられた突起部51がクリーナに引っかかり、操作性が悪かった。
【0048】
そこで、本実施例では、分離帯電手段Aは、以下の構成を有する。
【0049】
本実施例では、突起部材50は、突起部51が除電器40より記録材搬送路Q側に突出した第1の位置にある第1の状態と、突起部51がその突起方向において除電器40より記録材搬送路Qとは反対側に退避した第2の位置にある第2の状態とをとり得る。
【0050】
図3(a)、(b)をも参照して更に説明する。図3(a)は、除電器40にクリーナ60を適合する前の状態(このとき突起部材50は第1の状態にある)を示し、図3(b)は、除電器40にクリーナ60を適合した状態(このとき突起部材50は第2の状態にある)を示している。
【0051】
本実施例では、突起部材50は、除電器40の長手方向、即ち、記録材Sの搬送方向と交差(本実施例では直交)する方向に所定のピッチで鋸歯状に設けられた突起部51と、これら複数の突起部51を互いに連結して一体と成す突起部材基部52とを有する。本実施例では、突起部材基部52は、断面形状が除電器40のステー42のコの字型に沿うコの字型とされている。つまり、突起部材基部52は、ステー上流側板42aと略平行な第1基部側板(基部上流側板)52aと、ステー下流側板42bと略平行な第2基部側板(基部下流側板)52bと、ステー背板42cと略平行な基部背板52cとを有する。突起部51は、基部上流側板52aの先端に一体に設けられている。そして、突起部材基部52は、除電器40のステー42に緩く嵌合している。これにより、突起部材基部52は除電器40に対して相対移動可能となっている。尚、本実施例では、突起部材支持部材52及び突起部材51は、ポリブチレンテレフタレート(PBT)で形成されている。
【0052】
又、基部背板52cと、分離帯電装置ユニットのケーシングを成すフレーム81との間には、弾性部材である圧縮バネ(バネ部材)71が配置されている。尚、圧縮バネ71は、画像形成装置本体110に固定されたフレームとの間に設けてもよい。又、圧縮バネ71は、突起部材基部52に結合されていてもよいし、突起部材基部52に接触するように突起部材基部52とフレーム81との間に配置されていてもよい。
【0053】
突起部材基部52は、圧縮バネ71によって記録材搬送路Qに向けて付勢されている。これにより、突起部材50は、通常、突起部51が除電器40より記録材搬送路Q側に突出した第1の位置にある第1の状態をとる(図3(a))。
【0054】
図4をも参照して、分離帯電装置Aの清掃は、弾性を有する清掃部材61と、清掃部材61を支持する所望の剛性を備えた清掃部材支持部材62とを有するクリーナ(清掃具)60を用いて行われる。本実施例では、清掃部材61は、発泡ウレタンなどのスポンジで形成されている。
【0055】
清掃部材61は、除電器40のステー開口部42dに嵌合する断面略矩形形状とされており、ステー背板42cと略平行な清掃部材端面61aが放電ワイヤ41に接触する。又、ステー上流側板42a、ステー下流側板42bの内面と略平行な清掃部材側面61b、61cが、それぞれステー上流側板42a、ステー下流側板42bの内面に接触する。
【0056】
分離帯電装置Aの清掃時には、クリーナ60の清掃部材61を除電器40のステー42に適合させ、その内側に嵌入させる。そして、清掃部材支持部材62の底部62aを、除電器40のステー42(上流側板42a、下流側板42b)の記録材搬送路Q側の先端に突き当てる。この状態で、図4中矢印にて示すように、クリーナ60を除電器40の長手方向、即ち、記録材Sの搬送方向と交差(本実施例では直交)する方向にスライドさせる。これにより、放電ワイヤ41、ステー上流側板42aの内面、ステー下流側板42bの内面の付着物を清掃部材61に吸着させる。
【0057】
ここで、突起部材50の突起部材基部52とフレーム81との間に設けられた圧縮バネ71は、一個の突起部51当たり10〜100gfの荷重にて、クリーナ60の突き当て方向に伸縮する。又、本実施例では、基部下流側板52bの記録材搬送路Q側の先端は、クリーナ50が突き当たる受け部52dとなっている。
【0058】
一方、クリーナ50の清掃部材支持部材62には、清掃部材61をステー開口部42dに嵌入させる際に突起部材基部52の受け部52dと適合する位置に、該受け部52dと当接する当接部62bが設けられている。クリーナ60の当接部62bは、底面62aより分離帯電装置Aに向かって突出した縁部先端に形成されている。
【0059】
そして、本実施例では、受け部52dと当接部62bとは、これらが当接した状態で突起部51の先端がクリーナ60に接触しないように設定されている。
【0060】
清掃部材61をステー開口部42dに嵌入させていくと、当接部62bが受け部52dに当接する。更に、当接部62bで受け部52dを押すことにより、圧縮バネ71の弾性力に抗してクリーナ60を除電器40に向けて進行させる。これにより、突起部材基部52は突起部51と共に、記録材搬送路Qから離間するように移動する。そして、清掃部材端面61aが放電ワイヤ41に十分に接触した状態で、清掃部材支持部材62の底面62aが除電器40に突き当たる。このように、清掃部材支持部材62の底面62aを除電器40に突き当てた際に、突起部材50は、突起部51がその突起方向において除電器40より記録材搬送路Qとは反対側に退避した第2の位置にある第2の状態となっている(図3(b))。清掃部材端面61aに、放電ワイヤ41が嵌り込む溝61a1を設けても良い。
【0061】
このように、本実施例では、突起部材基部52の受け部52dに対するクリーナ60の当接部62bからの付勢力により、突起部材50は、圧縮バネ71の弾性力に抗して第1の状態から第2の状態へと遷移する。本実施例では、圧縮バネ71は、突起部51を第1の位置と第2の位置との間で移動させる可動手段として機能する。
【0062】
突起部材50が第2の状態をとっている場合、突起部51がクリーナ60に突き当たることはない。これにより、除電器40の清掃時に、クリーナ60によって突起部51を破損することを回避することができる。又、クリーナ60は、清掃部材支持部材62の底部62aを、ステー上流側板42a及びステー下流側板42bの記録材搬送路Q側の先端42a1、42b1に適正に突き当てることにより、除電器40の長手方向にスライドさせることができる。この際に、突起部51の先端は、ステー上流側板42aの先端より退避しているので、クリーナ60をスムーズに動かし、除電器40の清掃を行うことができる。
【0063】
本実施例では、ステー上流側板42a及びステー下流側板42bの記録材搬送Q側の先端42a1、42b1は、クリーナ60を除電器40の長手方向に移動させる際のガイドとして機能する。又、本実施例では、清掃部材支持部材62の底部62aは、上記ガイド42a1、42b1上を滑動する滑動部として機能する。
【0064】
又、本実施例では、フレーム81の突起部51の先端近傍の位置(突起部材51の先端より記録材搬送路Qとは反対側の位置)に、突起部材清掃部材82が設けられている。突起部材清掃部材82としては、除電器40を清掃するクリーナ60が備える清掃部材61と同様に、スポンジ、フェルトなどを用いることができる。本実施例では、突起部材清掃部材82として、発泡ウレタンのスポンジを用いた。これにより、除電器40をクリーナ60で清掃する時に、突起部51の先端が第1の位置(図3(a))から第2の位置(図3(b))に退避する動作に伴い、突起部材51に付着した汚れも突起部材清掃部材82によって同時に清掃することができる。
【0065】
尚、上述のように第1の状態と第2の状態とをとり得る突起部材50を備える分離帯電装置Aと、この分離帯電装置を清掃するための清掃部材61を備えたクリーナ60とで、分離帯電装置Aの清掃機構が構成される。
【0066】
以上、本実施によれば、除電器40に引き寄せられ、付着したトナーなどの汚れが記録材Sに付着することを、突起部材50を設けることで最小限に抑えつつ、除電器40の清掃時の操作性を向上することができる。又、除電器40の清掃時に突起部材50の突起部51を破損する危険性を低減することができる。更に、突起部51の退避動作は、クリーナ50による除電器40の清掃動作と連動しているので、突起部材51を退避させるために特別の動作を行う必要がなく、操作性は極めてよい。
【0067】
実施例2
次に、図5〜7を参照して、本発明の他の実施態様について説明する。本実施例の画像形成装置の基本構成及び動作は、実施例1のものと同じである。従って、実施例1の画像形成装置と実質的に同一若しくは相当する機能、構成を有する要素には同一符号を付して、詳しい説明は省略する。
【0068】
図5に本実施例に係る分離帯電装置Aの概略断面を示す。図5(a)は、除電器40にクリーナ60を適合する前の状態(このとき突起部材50は第1の状態にある)を示し、図5(b)は、除電器40にクリーナ60を適合した状態(このとき突起部材50は第2の状態にある)を示している。
【0069】
本実施例の分離帯電装置Aにおいて、除電器40の構成は、実施例1と同じである。そして、実施例1と同様に、除電器40のステー上流側板42aの外側(図5中下側)に隣接して突起部材50の突起部51が配置されている。
【0070】
図6は、本実施例における突起部材50の部分分解図である。本実施例では、突起部材51は、弾性部材としての樹脂シートで形成される。樹脂シートとしては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンエーテルなどをベースとしたシートを用いることができる。そして、この突起部材50は、本実施例では2枚に分割された支持部材55(55A、55B)にて挟み込まれ、除電器40のステー上流側板42aの外側に固定される。2枚に分割された支持部材55A、55Bは、ポリブチレンテレフタレート(PBT)で形成され、突起部材50を挟んだ状態でビス止め、カシメ止め、接着、溶着などの適当な固定手段で互いに固定される。
【0071】
図7をも参照して更に説明する。図7は、支持部材55内に配置された突起部材50の部分拡大平面図である。突起部材50は、支持部材55の内側の凹部(突起部材配置部)55c内に配置され、位置決めされる。支持部材55は、記録材搬送路Qに対向する端縁部に、突起部材50の突起部51が突出するための孔55aを有する。これにより、支持部材55の記録材搬送路Qに対向する端縁部は、所定のピッチで孔55aが設けられたリブ55bを形成する。
【0072】
突起部材50は、実施例1と同様に、突起部51が除電器40より記録材搬送路Q側に突出した第1の位置にある第1の状態と、突起部51がその突起方向において除電器40より記録材搬送路Qとは反対側に退避した第2の位置にある第2の状態とをとり得る。
【0073】
本実施例では、突起部材50は、除電器40の長手方向、即ち、記録材Sの搬送方向と交差(本実施例では直交)する方向に所定のピッチで設けられた突起部51と、これら複数の突起部51を互いに連結して一体と成す突起部材基部52とを有する。突起部51は、弾性変形可能な弾性作用部53を介して突起部材基部52に連結されている。
【0074】
つまり、弾性作用部53は、外力が加わらない状態で除電器40の長手方向、即ち、記録材Sの搬送方向と交差(本実施例では直交)する方向に略平行に延在する2本の脚部53a、53bを円弧状の連結部53cで連結したU字形状部を有する。このU字形状部は、記録材搬送路Qに向かって略垂直に延在する固定部53dで突起部材基部52に連結される。脚部53a、53b、連結部53cで形成されるU字形状部は、バネ作用を発揮する。そして、突起部51は、記録材搬送路Q側の一方の脚部53aの端部において、記録材搬送路Qに向かって突起するように連結されている。
【0075】
これら突起部51、弾性作用部53、基部52は、それ自体弾性部材である樹脂シートにて一体的に成形されている。
【0076】
突起部51は、U字形状部の2本の脚部53a、53bが近づくように弾性作用部53が撓むことで、記録材搬送路Qから離間する。一方、U字形状部のバネ作用により2本の脚部53a、53bが略平行な位置に復帰することで、突起部51は記録材搬送路Qに向かって突出する。
【0077】
尚、支持部材55A、55Bは、突起部材50を挟み込んだ状態で、突起部材50の突起部51が突出可能な孔55a、リブ55bを有し、又、突起部材50の突起部51を移動可能とする。これら分割された支持部55A、55Bは、突起部材50を挟んで対称の構造であっても、非対称の構造であっても構わない。
【0078】
又、本実施例では、突起部材50は、複数の突起部51が突起部材基部52により連結された一枚のシートであるものとした。しかし、これに限定されるものではなく、突起部51、弾性作用部53、更に基部52を備えた、分割された樹脂シートによって突起部材50を構成してもよい。
【0079】
一方、実施例1と同様に、分離帯電装置Aの清掃は、弾性を有する清掃部材61と、清掃部材(本実施例では発泡ウレタンのスポンジ)61を支持する所望の剛性を備えた清掃部材支持部材62とを有するクリーナ60を用いて行われる。
【0080】
本実施例では、清掃部材61をステー開口部42dに嵌入させていくと、クリーナ60の清掃部材支持部材62の一方の端縁の先端である当接部62bが、支持部材55のリブ55bに当接する。このとき、当接部62bが当接する位置にある孔55aから突出した突起部51の先端(受け部)51aが、クリーナ60の当接部62bで押される。これにより、突起部材50の弾性作用部53が上述のようにして撓むことで、突起部51は、リブ55bの内側へと退避する。即ち、このとき突起部51は、除電器40のステー上流側板42aより記録材搬送路Qとは反対側へと退避する。こうして、突起部材50は、突起部51が突起方向において除電器40より記録材搬送路Qとは反対側に退避した第2の位置にある第2の状態をとる。又、このとき、清掃部材端面61aが放電ワイヤ41に十分に接触した状態で、清掃部材支持部材62の底面62aが除電器40に突き当たる(図5(b)、図7(b))。
【0081】
このように、本実施例では、突起部材50は、受け部としての突起部51の先端51aに対するクリーナ60の当接部62bからの付勢力によって、突起部材50は、突起部材50を構成する樹脂シートの弾性力に抗して第1の状態から第2の状態へと遷移する。本実施例では、突起部材50が一体的に備えた弾性作用部53が、突起部51を第1の位置と第2の位置との間で移動させる可動手段として機能する。
【0082】
クリーナ60は、清掃部材支持部材62の底部62aを、ステー上流側板42a及びステー下流側板42bの記録材搬送路Q側の先端42a1、42b1に適正に突き当てることにより、除電器40の長手方向にスライドさせることができる。
【0083】
実施例1と同様に、ステー上流側板42a及びステー下流側板42bの記録材搬送Q側の先端42a1、42b1は、クリーナ60を除電器40の長手方向に移動させる際のガイドとして機能する。又、本実施例では、清掃部材支持部材62の底部62aは、上記ガイド42a1、42b1上を滑動する滑動部として機能する。このようにガイドされた状態で、クリーナ60の当接部62bは、突起部材50の支持部材55の端縁先端に形成されたリブ55b上を、除電器40の長手方向、即ち、記録材Sの搬送方向と交差(本実施例では直交)する方向に滑動する。
【0084】
そして、図7(b)に示すように、クリーナ60を除電器40の長手方向にスライドさせて清掃する時に、クリーナ60は支持部材55のリブ55bに突き当たりつつ進み、且つ、突起部51の先端51aは、突起部材50の弾性内で退避する。このため、クリーナ60が突起部51に引っかかることはない。これにより、操作性を損なうことなく、除電器40を清掃することができる。
【0085】
このように、本実施例では、複数の突起部51のうち、クリーナ60が当接する突起部51のみが除電器40より退避する。つまり、突起部材51は、除電器40の長手方向において突起部51を複数有し、除電器40に適合されたクリーナ60が滑動するのに伴い、各突起部51の先端はクリーナ60の当接部62bと当接又は離間する。そして、それに応じて、各突起部51は第1の位置と第2の位置との間を移動する。
【0086】
尚、本実施例では、突起部材50の弾性作用部53は、クリーナ60の移動方向に沿う樹脂シートの平面内で変形する。そのため、クリーナ60が当接した際に、突起部51は、弾性作用部53の弾性力に抗してスムーズに移動する。
【0087】
又、本実施例では、突起部51は、クリーナ60の移動方向にテーパー面51b1、51b2が形成された三角形状である。これにより、クリーナ60の当接部62bの移動方向先端62b1、62b2は、容易に突起部51をリブ55bの内側へと、弾性作用部53の弾性力に抗して押し下げることができる。
【0088】
以上、本実施によれば、実施例1と同様の効果を奏し得ると共に、突起部51の可動手段(弾性作用部53)を突起部材50が一体的に備えているので、より簡易な構成とし得る利点がある。
【0089】
実施例3
次に、図8を参照して、本発明の他の実施態様について説明する。本実施例の画像形成装置の基本構成及び動作は、実施例1、2のものと同じである。従って、実施例1、2の画像形成装置と実質的に同一若しくは相当する機能、構成を有する要素には同一符号を付して、詳しい説明は省略する。
【0090】
本実施例では、突起部材50は弾性部材であるコイルバネ(バネ部材)で構成される。この突起部材50は、実施例2と同様に、支持部材55にて挟み込まれて、除電器40のステー上流側板42aの外側に取り付けられる。尚、図8には、1つの突起部材50のみを図示するが、同様の構成の突起部材50が、除電器40の長手方向において所定のピッチで複数設けられている。
【0091】
更に説明すると、突起部材50は、支持部材55に形成された凹部(突起部材配置部)55c内に収容される。突起部材50を構成するコイルバネ(ねじりコイルバネ)は、支持部材55の凹部55c内に突起した軸55dに通されて位置決めされる。そして、突起部材50を構成するコイルバネの一端が伸長して成る一方の腕部54aが曲げられて、突起部51が形成されている。突起部51は、記録材搬送路Qに向かって突起するように三角形状に曲げられている。
【0092】
コイルバネの一方の腕部54aにおいて、突起部51の前後に延長する直線部分54a1、54a2が支持部材55のリブ55bの内面に当接する。又、コイルバネの他端が伸長して成る他方の腕部54bが、上記リブ55bの内面に対向した支持部材55の凹部55の内面(台座面)に当接する。こうして、突起部材50は、コイルバネが圧縮された状態で、支持部材55の凹部55c内に配置されている。従って、通常、突起部51は、支持部材55に形成された孔55aから突出して、記録材搬送Qに向かって突起するように付勢される。
【0093】
このように、突起部51は、それ自体弾性変形可能なコイルバネで形成されている。そして、外力が加わらない状態で、突起部51が形成さえたコイルバネの一方の腕部54aは、突起部51が記録材搬送路Qに向かって突出するように付勢されている。
【0094】
本実施例では、突起部材50を構成するコイルバネ自体が、突起部51を除電器40より記録材搬送路Q側に突出した第1の位置と、除電器40より記録材搬送路Qとは反対側に退避した第2の位置の間で移動させる可動手段として機能する。
【0095】
そして、クリーナ60による除電器40の清掃時には、実施例2と同様にして、クリーナ60の当接部62bが、受け部としての突起部51の先端51aに当接することで、突起部51は、リブ55bの内側、即ち、除電器40のステー上流側板42aより退避した位置(図8中2点鎖線)へと移動する。これにより、突起部材50は、突起部51がその突起方向において除電器40より記録材搬送路Qとは反対側に退避した第2の位置にある第2の状態をとる。
【0096】
こうして、突起部材50は、受け部としての突起部51の先端51aに対するクリーナ60の当接部62bからの付勢力により、突起部材50は、突起部材50を構成するコイルバネの弾性力に抗して第1の状態から第2の状態へと遷移する。
【0097】
本実施例では、複数の突起部50のうち、クリーナ60が当接する突起部51のみが除電器40より退避する。つまり、本実施例では、除電器40の長手方向において複数の突起部材50が設けられている。そして、除電器40に適合されたクリーナ60が滑動するのに伴い、それぞれの突起部材50の各突起部51の先端がクリーナ60の当接部62bと当接又は離間する。それに応じて、各突起部51は第1の位置と第2の位置との間を移動する。
【0098】
本実施例の構成によっても、実施例2と同様に、操作性を損なうことなく除電器40を清掃することができる。
【0099】
以上、本発明をいくつかの実施例に則して説明したが、本発明は上記各実施例の態様に限定されるものではない。
【0100】
例えば、本発明は、記録材帯電装置としての転写帯電装置においても適用可能である。つまり、従来、像担持体からトナー像を記録材に転写させる転写帯電手段として、ワイヤ放電方式のコロナ放電器が用いられる。そして、記録材を像担持体から分離するための手段として、記録材の搬送方向において転写帯電手段の下流近傍に、記録材搬送路に向かって突出した突起部を有する除電部材(除電針)を設けた構成が知られている。斯かる構成の転写帯電手段において、除電部材は、上記各実施例における突起部材に相当する。即ち、上記各実施例における除電部材を接地するなどして除電作用を成すようにすればよい。これにより、上記各実施例における分離帯電装置Aの構成は、実質的にすべてこの転写帯電装置に適用することができ、その清掃時において、上記各実施例と同様の作用効果を奏し得る。
【0101】
又、記録材帯電手段は、上記各実施例におけるワイヤ放電式のコロナ放電器に限定されるものではなく、例えば、鋸歯状電極を用いた放電器であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】本発明を適用し得る画像形成装置の一実施例の概略断面図である。
【図2】本発明を適用し得る分離帯電装置の概略斜視図である。
【図3】本発明の第1の実施例における分離帯電装置の概略断面図である。
【図4】分離帯電装置の清掃方法を説明するためのクリーナの概略斜視図である。
【図5】本発明の第2の実施例における分離帯電装置の概略断面図である。
【図6】本発明の第2の実施例における突起部材の部分分解斜視図である。
【図7】本発明の第2の実施例における突起部材の部分拡大平面図である。
【図8】本発明の第3の実施例における突起部材の平面図である。
【図9】本発明を適用し得る突起部材と搬送中の記録材の位置関係を示す概略図である。
【符号の説明】
【0103】
40 除電器(記録材帯電手段)
41 放電ワイヤ(放電電極)
42 ステー
50 突起部材
51 突起部
52 突起部材の基部
52d 受け部
55 突起部材の支持部材
60 クリーナ(清掃具)
61 清掃部材
62 清掃部材支持部材
62b 当接部
71 圧縮バネ(弾性部材、可動手段)
82 突起部材清掃部材
A 分離帯電装置(記録材帯電装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成装置内にて記録材搬送路に対向配置され、記録材を除電するか又は帯電させる記録材帯電装置において、
記録材を除電するか又は帯電させる記録材帯電手段と、
前記記録材搬送路に向かって突起した突起部と、前記記録材帯電手段を清掃する清掃具が備える当接部が当接する受け部と、を備え、前記突起部が前記記録材帯電手段より前記記録材搬送路側に突出した第1の位置にある第1の状態と、前記突起部が前記記録材帯電手段より前記記録材搬送路とは反対側に退避した第2の位置にある第2の状態とをとり得る突起部材と、
を有し、
前記清掃具が前記帯電手段に適合される際に、前記受け部に対する前記当接部からの付勢力により、前記突起部材は前記第1の状態から前記第2の状態となることを特徴とする記録材帯電装置。
【請求項2】
更に、前記第1の状態となるように前記突起部材を付勢する弾性部材を有し、前記清掃具が前記帯電手段に適合される際に、前記弾性部材の弾性力に抗して前記突起部材が移動することで前記突起部は前記第1の位置から前記第2の位置に移動することを特徴とする請求項1の記録材帯電装置。
【請求項3】
前記弾性部材はバネ部材である請求項2の記録材帯電装置。
【請求項4】
前記受け部は前記突起部とは別個に設けられており、該受け部に前記当接部が当接した状態で前記突起部は前記清掃具に接触しないことを特徴とする請求項1、2又は3の記録材帯電装置。
【請求項5】
前記突起部材は弾性部材で形成され、該弾性部材の弾性力により前記第1の状態となるように付勢されており、前記清掃具が前記帯電手段に適合される際に、前記突起部は該弾性部材の弾性力に抗して前記第1の位置から前記第2の位置に移動することを特徴とする請求項1の記録材帯電装置。
【請求項6】
前記受け部は前記突起部の先端であることを特徴とする請求項5の記録材帯電装置。
【請求項7】
前記弾性部材は樹脂製のシートであることを特徴とする請求項5又は6の画像形成装置。
【請求項8】
前記突起部を前記第1の位置へと付勢する弾性作用部と、該弾性作用部に連結された前記突起部とが、前記樹脂製のシートにより一体的に成形されていることを特徴とする請求項7の記録材帯電装置。
【請求項9】
前記突起部材は、前記記録材帯電手段の長手方向において前記突起部を複数有し、前記清掃具が前記記録材帯電手段に適合された状態で該長手方向に滑動するのに伴い、前記受け部としての各突起部の先端は前記当接部と当接又は離間して、それに応じて各突起部は前記第1の位置と第2の位置との間を移動することを特徴とする請求項7又は8の記録材帯電装置。
【請求項10】
前記弾性部材はバネ部材であることを特徴とする請求項5又は6の記録材帯電装置。
【請求項11】
前記バネ部材はコイルバネであり、一方の腕部を曲げることで前記突起部が形成されており、他方の腕部との間の弾性力により前記突起部は前記第1の位置へと付勢されていることを特徴とする請求項10の記録材帯電装置。
【請求項12】
前記記録材帯電装置は、その長手方向において前記突起部材を複数有し、前記清掃具が前記記録材帯電手段に適合された状態で該長手方向に滑動するのに伴い、前記受け部としてのそれぞれの突起部材の各突起部の先端は前記当接部と当接又は離間し、それに応じて各突起部は前記第1の位置と第2の位置との間を移動することを特徴とする請求項10又は11の記録材帯電装置。
【請求項13】
前記突起部材は前記記録材帯電手段と一体的に前記画像形成装置より取り外すことができることを特徴とする請求項1〜12のいずれかの項に記載の記録材帯電装置。
【請求項14】
前記記録材帯電手段はコロナ放電電器であることを特徴とする請求項1〜13のいずれかの項に記載の記録材帯電手段。
【請求項15】
像担持体と、請求項1〜14のいずれかの項に記載の記録材帯電手段と、記録材上に転写されたトナー像を定着させる定着装置と、を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項16】
前記記録材帯電手段は、前記像担持体又は前記像担持体に対して記録材を搬送する記録材担持体から記録材を分離するための分離帯電装置であることを特徴とする請求項15の画像形成装置。
【請求項17】
前記記録材帯電手段は、前記像担持体から記録材にトナーを転写する転写帯電装置であることを特徴とする請求項15の画像形成装置。
【請求項18】
画像形成装置内にて記録材搬送路に対向配置されて記録材を除電するか又は帯電させる記録材帯電装置であって;記録材を除電するか又は帯電させる記録材帯電手段と;前記記録材搬送路に向かって突起した突起部と、前記記録材帯電手段を清掃する清掃具が備える当接部が当接する受け部と、を備え、前記突起部が前記記録材帯電手段より前記記録材搬送路側に突出した第1の位置にある第1の状態と、前記突起部が前記記録材帯電手段より前記記録材搬送路とは反対側に退避した第2の位置にある第2の状態とをとり得る突起部材と;を有する記録材帯電装置と、
前記記録材帯電装置を清掃する清掃部材を備えた清掃具と、
を有し、
前記清掃具を前記帯電手段に適合させる際に、前記受け部に前記当接部を当接させて付勢することにより、前記突起部材を前記第1の状態から前記第2の状態とすることを特徴とする記録材帯電装置の清掃機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−39325(P2006−39325A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−220911(P2004−220911)
【出願日】平成16年7月28日(2004.7.28)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】