説明

記録装置、記録装置の制御プログラム、記録方法、記録物

【課題】記録装置内に載置できない対象にも、記録装置による画像を設けることができるようにする。
【解決手段】CPU301は、UV照射装置121が発生した紫外線の照射によって、最終インクに対する照射量が、それ以前に重ねられた非最終インクに対する照射量よりも少なくなるように、吐出されたインクに対する紫外線の照射量を調整する。その結果、吐出されたインクのうち、最終に重ねられた最終インクの硬化段階は、それ以前に吐出された非最終インクの硬化段階よりも低い。当該最終インクは非最終インクに比べて粘着性が高く、他の物体に粘着しやすい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクを被記録媒体上に吐出し、その被記録媒体上のインクに紫外線を照射する記録装置、記録装置の制御プログラム、記録方法、及び記録物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、インクを吐出する吐出手段と、紫外線を発生する紫外線発生源とを備える記録装置がある(例えば、特許文献1参照)。吐出手段は、載置手段が載置した被記録媒体に対しインクの吐出を行い、印刷による記録を行う。紫外線発生源は、被記録媒体に付着したインクに対し、紫外線を照射する。被記録媒体に付着したインクは、紫外線の露光により硬化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−292887号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術の記録装置では、操作者が被記録媒体を載置手段に載置すると、当該被記録媒体を載置した載置手段が記録装置内に移動し、吐出手段がインクの吐出を行って印刷を行う。しかしながら、被記録媒体が記録装置よりも大きい場合や、例えば被記録媒体が立体的形状を有する場合のように、当該被記録媒体の固定により載置手段が移動不可能となる場合には、被記録媒体を記録装置内に載置することができない。このような場合、従来技術の記録装置では記録を行うことができなかった。
【0005】
本発明の目的は、記録装置内に載置できない対象にも、記録装置による画像を設けることができる記録装置、記録装置の制御プログラム、記録方法、及び記録物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、第1発明の記録装置は、被記録媒体を載置可能な載置手段と、紫外線の露光により粘着性を生じながら硬化し、所定の硬化段階までは混和可能なインクを、前記載置手段が載置した前記被記録媒体に対して吐出する吐出手段と、前記載置手段が載置した前記被記録媒体に照射するための紫外線を発生する紫外線発生源と、前記載置手段が載置した前記被記録媒体に対し、印刷工程を少なくとも3回の分割印刷に分けてインクを順次吐出し、各回の分割工程において吐出されたインクが互いに重なるように、前記吐出手段を制御する吐出制御手段と、前記紫外線発生源が発生した紫外線を照射されたことによって、最後の分割印刷において重ねられた最終インクが粘着性を備え、それ以前の順番の分割印刷において重ねられた非最終インクが混和不可能になる範囲で、前記最終インクに対する照射量が前記非最終インクに対する照射量よりも少なくなるように、前記紫外線発生源が発生した紫外線の照射量を調整する照射調整手段とを有することを特徴とする。
【0007】
本願第1発明の記録装置は、載置手段と、吐出手段と、紫外線発生源とを有する。吐出制御手段の制御に基づき、吐出手段は、載置手段が載置した被記録媒体に対し少なくとも3回の分割印刷に分けてインクを順次吐出する。吐出手段が吐出したインクは、紫外線によって硬化するインクである。インクは、紫外線発生源が発生した紫外線の照射によって、粘着性を備え、所定の硬化段階までは、混和可能な状態である。
【0008】
吐出制御手段の制御に基づく少なくとも3回の分割印刷毎に、吐出されたインクには、紫外線発生源が発生した紫外線が照射され、紫外線がインクに到達すると、露光量に応じて、インクが硬化する。
【0009】
照射調整手段は、紫外線発生源が発生した紫外線の照射によって、最後の分割印刷において重ねられた最終インクに対する照射量が、それ以前の順番の分割印刷において重ねられた非最終インクに対する照射量よりも少なくなるように、吐出されたインクに対する紫外線の照射量を調整する。その結果、印刷工程の全体としては吐出制御手段の制御に基づく少なくとも3回の分割印刷があり、後にまだ非最終インク若しくは最終インクとなるインクの吐出が既に吐出されたインクに対して重ねられる場合には、既に吐出された非最終インクは混和不可能な状態になるまで硬化される。硬化され混和不可能となった非最終インクに、次の分割印刷の順番の非最終インク若しくは最終インクが吐出される。吐出されたインクのうち、最終に重ねられた最終インクの硬化段階は、それ以前に吐出された非最終インクの硬化段階よりも低い。当該最終インクは非最終インクに比べて粘着性が高く、他の物体に粘着しやすい。
【0010】
非最終インク若しくは最終インクの少なくとも一方が色彩又は輪郭形状のいずれかにより画像を構成し、当該最終インクが粘着性を備えることで、他の物体に粘着可能な印刷結果物、すなわち粘着画像を構成することができる。上記印刷結果物が備える粘着性を利用して非最終インクを他の物体に粘着させることにより、上記印刷結果物が備える上記画像を当該他の物体に転写することができる。この結果、記録装置内に載置できない対象にも、記録装置による画像を設けることができる。
【0011】
第2発明の記録装置は、上記第1発明において、前記吐出制御手段は、先の順番の分割印刷において吐出された非最終インクに、それより後の順番の分割印刷において吐出された非最終インクを重ねるように、前記吐出手段を制御する非最終吐出制御手段を含み、前記照射調整手段は、前記先の順番及びそれより後の順番の分割印刷となる少なくとも2回分以上の非最終インクに対する紫外線の照射量が第1照射量となるように、前記紫外線発生源が発生した紫外線の照射量を調整する非最終照射調整手段を含み、前記吐出制御手段は、前記非最終照射調整手段の調整に基づき紫外線を照射された非最終インクの表面の少なくとも一部に対し、最終インクとして新たなインクを吐出するように、前記吐出手段を制御する最終吐出制御手段をさらに含み、前記照射調整手段は、前記最終吐出制御手段の制御に基づき吐出された最終インクに対する紫外線の照射量が、前記非最終照射調整手段による第1照射量よりも小さな第2照射量となるように、前記紫外線発生源が発生した紫外線の照射量を調整する最終照射調整手段をさらに含むことを特徴とする。
【0012】
最終照射調整手段及び非最終照射調整手段の制御に基づき、最終インクへの第2照射量が非最終インクへの第1照射量よりも小さくなるので、最終インクの硬化状態が他のインクの硬化状態よりも低くなる。一方、2回分以上の分割印刷において重ねられた非最終インクに対して第1照射量にて照射が行われるので、非最終インクに対する照射量を分割印刷毎に変更する場合に比べて、照射量の変更が少なく、また照射量の変更のための調整が少なく、記録装置の制御系統が簡単である。非最終インクを画像とするとともに、最終インクが粘着性を備えることで、非最終インクを他の物体に粘着可能な印刷結果物、すなわち粘着画像を構成することができる。
【0013】
第3発明の記録装置は、上記第1発明において、前記吐出制御手段は、非最終インクとして初回の分割印刷において第1インクを吐出するように、前記吐出手段を制御する一次吐出制御手段を含み、前記照射調整手段は、前記一次吐出制御手段の制御によって吐出された第1インクに対する紫外線の照射量が一次照射量になるように、前記紫外線発生源が発生した紫外線の照射量を調整する一次照射調整手段を含み、前記吐出制御手段は、前記一次照射調整手段の調整に基づき紫外線を照射された前記第1インクの表面の少なくとも一部に対し、少なくとも1回の分割印刷において、非最終インクとして第2インクを新たに吐出するように、前記吐出手段を制御する二次吐出制御手段をさらに含み、前記照射調整手段は、前記二次吐出制御手段の制御によって吐出された前記第2インクに対する紫外線の照射量であり、前記一次照射調整手段の調整による一次照射量とは異なる二次照射量になるように、前記紫外線発生源が発生した紫外線の照射量を調整する二次照射調整手段を含むことを特徴とする。
【0014】
最終インクに対する照射量に比べて多い一次照射量及び二次照射量により高い硬化状態となった第1インク及び第2インクを画像とするとともに、最終インクが備える粘着性を利用して非最終インクを他の物体に粘着させることにより、他の物体に粘着可能な印刷結果物、すなわち粘着画像を構成することができる。一次照射量及び二次照射量のそれぞれの照射量により、第1インク及び第2インクに対する適切な硬化を実現することができる。
【0015】
第4発明の記録装置は、上記第1乃至第3発明のいずれかにおいて、前記吐出制御手段は、最後の分割印刷において白色のインクを吐出するように、前記吐出手段を制御することを特徴とする。
【0016】
吐出制御手段の制御により吐出手段が最後の分割印刷において最上部に吐出した最終インクは、印刷結果物として他の物体に転写した後は、最も下に位置する最下層となる。最終インクを白色インクで構成することにより、転写後において視覚的な白い下地を構成することができる。
【0017】
第5発明の記録装置は、上記第1乃至第4発明のいずれかにおいて、前記吐出制御手段は、透明なインクを吐出するように、前記吐出手段を制御することを特徴とする。
【0018】
吐出制御手段の制御により吐出手段によって初回の分割印刷において吐出され最下部に位置するインクは、印刷結果物として他の物体に転写した後は、最も外側となる。その最も外側となるインクを透明なインクで構成することにより、転写後において透明なインクにより非最終インクを保護することができる。
【0019】
第6発明の記録装置は、上記第1乃至第5発明のいずれかにおいて、前記吐出制御手段は、先の分割印刷において既に吐出され紫外線を照射された非最終インクと互いに共通の色彩の非最終インクとしてインクを吐出するように、前記吐出手段を制御することを特徴とする。
【0020】
非最終インクを構成するインクを共通の色彩とすることにより、当該色彩を強調した、美観を向上した画像を形成することができる。
【0021】
第7発明の記録装置は、上記第1乃至第6発明のいずれかにおいて、前記吐出制御手段は、前記最終インクを吐出するための制御時と前記非最終インクを吐出するための制御時とは異なる色彩のインクを吐出するように、前記吐出手段を制御することを特徴とする。
【0022】
最終インクを非最終インクと異なる色彩とすることにより、色彩差を利用した画像表現を実現することができる。
【0023】
第8発明の記録装置は、上記第1乃至第5発明のいずれかにおいて、前記吐出制御手段は、初回の分割印刷では透明なインクを吐出し、2回目以降の複数回の分割印刷においては、初回の分割印刷において吐出されたインクとは異なる色彩で、互いに共通の色彩のインクを吐出するように、前記吐出手段を制御することを特徴とする。
【0024】
初回の分割印刷において吐出されたインクの色彩を、2回目以降の複数回の分割印刷において吐出されたインクの色彩と異なる色彩とすることにより、色彩差を利用した画像表現を実現することができる。
【0025】
第9発明の記録装置は、上記第1乃至第5発明のいずれかにおいて、前記吐出制御手段は、全ての分割印刷において互いに共通の色彩のインクを吐出するように、前記吐出手段を制御することを特徴とする。
【0026】
本願第9発明においては、用途や目的により、粘着性を備えた最終インクを、非最終インクによる画像と同じ色にすることも可能である。
【0027】
第10発明の記録装置は、上記第1乃至第9発明のいずれかにおいて、前記吐出制御手段は、前記被記録媒体に対する平面視において互いに同一となる領域にそれぞれ前記インクを吐出するように、前記吐出手段を制御することを特徴とする。
【0028】
本願第10発明においては、用途や目的により、最終インク、非最終インクを、平面視においてすべて同一領域に重ねることも可能である。
【0029】
第11発明の記録装置は、上記第1乃至第10発明のいずれかにおいて、前記吐出制御手段の制御に基づき前記吐出手段が吐出する、非最終インクによる分割印刷の数を設定する分割数設定手段を備えることを特徴とする。
【0030】
本願第11発明においては、用途や目的、インクの種類、使用環境、被記録媒体の種類、画像の内容等に応じて非最終インクからなる重なり部分を複数設け、それら複数の重なり部分の非最終インクで画像を表現することができる。
【0031】
第12発明の記録装置は、上記第1乃至第11発明のいずれかにおいて、前記吐出制御手段の制御に基づく前記吐出手段が吐出するインクの吐出量を設定するインク量設定手段を備えることを特徴とする。
【0032】
本願第12発明においては、用途や目的、インクの種類、使用環境、被記録媒体の種類、画像の内容等に応じて最終インクまたは非最終インクからなる重なり部分の厚さを適宜に変化させ、最終インクの粘着力を調整したり、凹凸を吸収する機能を調整したり、所望の硬化状態に到達するまでの時間を調整することができる。
【0033】
第13発明の記録装置は、上記第1乃至第10発明のいずれかにおいて、前記吐出手段が吐出する非最終インクの分割印刷の数を設定する分割印刷数設定手段と、前記吐出手段が吐出する最終インクの吐出量を設定するインク量設定手段と、前記分割印刷数設定手段によって設定された数が多いほど、前記インク量設定手段によって設定するインク量が少なくなるように、前記吐出手段の吐出するインク量を調整する第1インク量調整手段とを備えることを特徴とする。
【0034】
本願第13発明においては、用途や目的、インクの種類、使用環境、被記録媒体の種類、画像の内容等に応じて、非最終インクからなる重なり部分を複数設けるとともに最終インクからなる部分の厚さを適宜に変化させ、さらに最終インクからなる部分の厚さを非最終インクからなる部分の数に応じて変化させる。複数の非最終インクの重ね合わせで画像を表現しつつ、粘着層の粘着力を調整したり、凹凸を吸収する機能を調整したり、所望の硬化状態に到達するまでの時間を調整することができる。
【0035】
第14発明の記録装置は、上記第1乃至第13発明のいずれかにおいて、前記吐出制御手段の制御及び前記照射調整手段の調整による前記インクの吐出及び前記紫外線の照射を実行して単層を形成する単層記録モードと、前記吐出制御手段の制御及び前記照射調整手段の調整による前記インクの吐出及び前記紫外線の照射を実行して積層された複数の層を形成する積層記録モードと、のうち、いずれかのモードを設定するためのモード設定手段を備えることを特徴とする。
【0036】
本願第14発明においては、操作者の用途や目的に応じ、インクからなる層を1層のみ形成する単層記録モードとインクからなる層を複数層積層して画像を形成する積層記録モードとを、切り替えて使用することができるので、操作者の利便性を向上することができる。
【0037】
第15発明の記録装置は、上記第1乃至第14発明のいずれかにおいて、前記吐出手段は、エポキシ化合物、オキセタン加工物、及びビニルエーテル加工物のうち少なくとも1つと、重合開始剤、増感剤等を含む、カチオン系の前記インクを吐出することを特徴とする。
【0038】
カチオン系のインクを用い、紫外線を照射することで、インクの粘着性を外表面から喪失させ、インクを経時的に硬化させることができる。
【0039】
第16発明の記録装置は、上記第1乃至第15発明のいずれかにおいて、前記照射調整手段は、前記吐出手段が吐出した非最終インクに対する前記紫外線発生源が発生した紫外線の照射量を、それぞれ、JIS Z3284に準拠したタッキング試験機による評価においてインクの引張荷重が0となるときの照射量の最小値以上とすることを特徴とする。
【0040】
本願第16発明においては、吐出手段が吐出した非最終インク対する紫外線発生源が発生した紫外線の照射量を照射調整手段によって調整し、後の順番の分割印刷で他のインクを重ねられるインクを十分な硬化状態とすることができる。
【0041】
第17発明の記録装置は、上記第1乃至第16発明のいずれかにおいて、前記照射調整手段は、前記吐出手段が吐出した最終インクに対する前記紫外線発生源が発生した紫外線の照射量を、JIS Z3284に準拠したタッキング試験機による評価においてインクの引張荷重が0となるときの照射量の最小値以上とするか、若しくは、当該最小値の0.05倍〜0.95倍の範囲となるようにすることを特徴とする。
【0042】
本願第17発明においては、吐出手段が吐出した最終インクに対する紫外線発生源が発生した紫外線の照射量を最照射調整手段によって調整し、最終インクに確実に粘着性を持たせることができる。
【0043】
第18発明の記録装置は、上記第1乃至第17発明のいずれかにおいて、前記吐出手段は、濡れ張力が36以下である剥離体からなる前記被記録媒体にインクを吐出することを特徴とする。
【0044】
剥離体上にインクを吐出することにより、転写時において最終インクを容易に剥離体から剥離させ、画像を確実に他の物体に転写することができる。
【0045】
第19発明の記録装置は、上記第18発明において、前記吐出手段は、ポリプロピレンからなる前記被記録媒体にインクを吐出することを特徴とする。
【0046】
転写時において最終インクをさらに確実に剥離体から剥離させることができ、また画像をくっきりと定着させて視認性を向上することができる。
【0047】
第20発明の記録装置は、上記第1乃至第19発明のいずれかにおいて、前記載置手段を移動させる駆動手段と、前記吐出制御手段及び前記照射調整手段の制御及び調整により実行した前記インクの吐出及び前記紫外線の照射の後、当該吐出及び照射が可能な処理領域から、前記処理領域より操作者側に位置する操作者側領域へ、前記載置手段を移動させるように、前記駆動手段を制御する第1駆動制御手段を有することを特徴とする。
【0048】
本願第20発明においては、最終インクまで露光した後、第1駆動制御手段の制御に基づき、駆動手段が、処理領域から操作者側領域へ載置手段を移動させる。操作者は、近くに移動してきた載置手段に載った被記録媒体を用いて、当該被記録媒体に形成した印刷結果物を円滑に他の物体へ転写することができる。
【0049】
第21発明の記録装置は、上記第20発明において、前記第1駆動制御手段の制御により実行した前記載置手段の前記操作者側領域への移動の後、前記紫外線の照射を停止するように前記紫外線発生源を制御する、照射停止手段と、前記照射停止手段による前記照射の停止後に、前記載置手段を前記操作者側領域から前記処理領域へ移動させるように、前記駆動手段を制御する第2駆動制御手段と、前記第2駆動制御手段の制御により実行した前記載置手段の前記処理領域への移動の後、インクの吐出を伴うことなく前記紫外線の照射を開始するように、前記吐出手段及び前記紫外線発生源を制御する、後照射制御手段と、を有することを特徴とする。
【0050】
本願第21発明においては、被記録媒体に形成した印刷結果物を他の物体へ転写した後、当該他の物体を被記録媒体に代えて載置手段に載せ、記録装置内へ投入することで、転写した印刷結果物に紫外線を照射し、確実に硬化を進めることができる。
【0051】
第22発明の記録装置は、上記第20又は第21発明において、前記吐出手段は、経時的に外表面の粘着性の喪失が進行するインクを吐出し、前記第1駆動制御手段の制御により実行した前記載置手段の前記操作者側領域への移動の後、少なくとも一時期に、前記インクの外表面の粘着性に関する時間要素情報を報知する、第1報知手段を有することを特徴とする。
【0052】
本願第22発明においては、駆動手段により操作者の近くに移動してきた被記録媒体を操作者が取り扱うべき時間範囲や制限を、操作者が確実に認識することができる。
【0053】
第23発明の記録装置は、上記第1乃至第19発明のいずれかにおいて、前記吐出手段は、経時的に外表面の粘着性の喪失が進行するインクを吐出し、前記吐出制御手段の制御に基づき吐出され前記照射調整手段の調整に基づき紫外線を照射される、前記最終インクの外表面の粘着性に関する時間要素情報を報知する、第2報知手段を有することを特徴とする。
【0054】
本願第23発明によれば、印刷結果物に備えられる最終インク表面の粘着性について操作者が留意すべき時間範囲や制限を、操作者が確実に把握することができる。
【0055】
第24発明の記録装置は、上記第1乃至第23発明のいずれかにおいて、前記インクの外表面の所望の硬化状態に関連した時点情報又は期間情報を取得する時間情報取得手段と、前記時間情報取得手段が取得した前記時点情報又は前記期間情報に基づき、前記吐出手段が吐出したインクに対する前記紫外線発生源が発生した紫外線の照射量を設定する設定手段と、を有することを特徴とする。
【0056】
本願第24発明においては、操作者が、所望の硬化状態に対応した時点や期間を指定することで、その時点や期間において最終インクが当該所望の硬化状態となるように、インクに対し紫外線を照射することができる。操作者は、用途や目的に応じた最終インクの粘着性能を容易に実現することができる。
【0057】
第25発明の記録装置は、上記第1乃至第24発明のいずれかにおいて、前記吐出制御手段は、前記吐出制御手段の制御に基づき吐出し前記被記録媒体の所定部分に付着する、前記最終インクの外表面の粘着性に関する時間要素情報を、前記所定部分に印刷するように、前記吐出手段を制御することを特徴とする。
【0058】
本願第25発明においては、操作者は、最終インクが備える粘着性能を、当該最終インク内において視覚的に確実に認識することができる。
【0059】
第26発明の記録装置は、上記第1乃至第24発明のいずれかにおいて、前記吐出制御手段は、前記吐出制御手段の制御に基づき吐出し前記被記録媒体の所定部分に付着する、前記最終インクの外表面の粘着性に関する時間要素情報を、前記所定部分とは異なる部分に印刷するように、前記吐出手段を制御することを特徴とする。
【0060】
本願第26発明においては、操作者は、最終インクが備える粘着性能を、当該最終インクの外部において視覚的に確実に認識することができる。
【0061】
上記目的を達成するために、第27発明の記録装置の制御プログラムは、被記録媒体を載置可能な載置手段と、紫外線の露光により粘着性を生じながら硬化し、所定の硬化段階までは混和可能なインクを、前記載置手段が載置した前記被記録媒体に対して吐出する吐出手段と、前記載置手段が載置した前記被記録媒体に照射するための紫外線を発生する紫外線発生源と、を有する記録装置に備えられた制御手段に対し、前記載置手段が載置した前記被記録媒体に対し、印刷工程を少なくとも3回の分割印刷に分けてインクを順次吐出し、各回の分割工程において吐出されたインクが互いに重なるように、前記吐出手段を制御する吐出制御手順と、前記紫外線発生源が発生した紫外線を照射されたことによって、最後の分割印刷において重ねられた最終インクが粘着性を備え、それ以前の順番の分割印刷において重ねられた非最終インクが混和不可能になる範囲で、最終インクに対する照射量が、非最終インクに対する照射量よりも少なくなるように、前記紫外線発生源が発生した紫外線の照射量を調整する照射調整手順と、を実行させる。
【0062】
本願第27発明の制御プログラムの制御対象となる記録装置は、載置手段と、吐出手段と、紫外線発生源とを有する。制御手段が制御プログラムの吐出制御手順を実行すると、吐出手段は、載置手段が載置した被記録媒体に対し少なくとも3回の分割印刷に分けてインクを順次吐出する。吐出手段が吐出したインクは、紫外線によって硬化するインクである。インクは、紫外線発生源が発生した紫外線の照射によって、粘着性を備え、所定の硬化段階までは、混和可能な状態である。
【0063】
制御手段が制御プログラムの照射制御手順を実行すると、吐出制御手順の制御に基づく少なくとも3回の分割印刷毎に、吐出されたインクには、紫外線発生源が発生した紫外線が照射され、紫外線がインクに到達すると、露光量に応じて、インクが硬化する。照射制御手順では、紫外線発生源が発生した紫外線の照射によって、最後の分割印刷において重ねられた最終インクに対する照射量が、それ以前の順番の分割印刷において重ねられた非最終インクに対する照射量よりも少なく、吐出されたインクに対する紫外線の照射量を制御する。その結果、印刷工程の全体としては吐出制御手段の制御に基づく少なくとも3回の分割印刷があり、後にまだ非最終インク若しくは最終インクとなるインクの吐出が既に吐出されたインクに対して重ねられる場合には、既に吐出された非最終インクは混和不可能な状態になるまで硬化される。硬化され混和不可能となった非最終インクに、次の分割印刷の順番の非最終インク若しくは最終インクが吐出される。吐出されたインクのうち、最終インクに重ねられた最終インクの硬化段階は、それ以外の非最終インクの硬化段階よりも低い。当該最終インクは非最終インクに比べて粘着性が高く、他の物体に粘着しやすい。
【0064】
非最終インク若しくは最終インクの少なくとも一方が色彩又は輪郭形状のいずれかにより画像を構成し、当該最終インクが粘着性を備えることで、他の物体に粘着可能な印刷結果物を構成することができる。上記印刷結果物が備える粘着性を利用して非最終インクを他の物体に粘着させることにより、上記印刷結果物が備える上記画像を当該他の物体に転写することができる。この結果、記録装置内に載置できない対象にも、記録装置による画像を設けることができる。
【0065】
上記目的を達成するために、第28発明の記録方法は、紫外線の露光により粘着性を生じながら硬化し、所定の硬化段階までは混和可能なインクを、被記録媒体に対し、印刷工程を少なくとも3回の分割印刷に分けてインクを順次吐出し、各回の分割工程において吐出されたインクが互いに重なる、第1ステップと、前記第1ステップで紫外線を照射されたことによって、最後の分割印刷において重ねられた最終インクが粘着性を備え、それ以前の順番の分割印刷において重ねられた非最終インクが混和不可能になる範囲で、最終インクに対する照射量が、非最終インクに対する照射量よりも少なくなる、第2ステップと、を有する。
【0066】
本願第28発明の記録方法は、第1ステップと、第2ステップとを有する。第1ステップで、被記録媒体に対し印刷工程を少なくとも3回の分割印刷に分けてインクを順次吐出する。インクは、紫外線によって硬化するインクである。インクは、紫外線の露光によって粘着性を備え、所定の硬化段階までは、混和可能な状態である。
【0067】
第2ステップで、インクに対し、紫外線を照射する。紫外線がインクに到達すると、露光量に応じて、インクが硬化する。最終に重ねられた最終インクの硬化段階を、それ以外の非最終インクの硬化段階よりも低くする。当該最終インクは非最終インクに比べて粘着性が高く、他の物体に粘着しやすくなる。
【0068】
非最終インク若しくは最終インクの少なくとも一方が色彩又は輪郭形状のいずれかによりに画像を構成し、当該最終インク粘着性を備えることで、他の物体に粘着可能な記録物、すなわち粘着画像を構成することができる。記録物が備える粘着性を利用して非最終インクを他の物体に粘着させることにより、記録物が備える上記画像を当該他の物体に転写することができる。この結果、記録物を製造する記録装置内に載置できない対象にも、記録装置による画像を設けることができる。
【0069】
上記目的を達成するために、第29発明の被記録媒体上の記録物は、紫外線の露光により粘着性を生じながら硬化し、所定の硬化段階までは混和可能なインクを、被記録媒体に対し、印刷工程を少なくとも3回の分割印刷に分けてインクを順次吐出し、各回の分割工程において吐出されたインクが互いに重なる、第1ステップと、前記第1ステップで紫外線を照射されたことによって、最後の分割印刷において重ねられた最終インクが粘着性を備え、それ以前の順番の分割印刷において重ねられた非最終インクが混和不可能になる範囲で、最終インクに対する照射量が、非最終インクに対する照射量よりも少なくなる、第2ステップと、を実行することにより形成している。
【0070】
本願第29発明の記録物は、第1ステップと、第2ステップとを経て、被記録媒体上に形成する。第1ステップで、被記録媒体に対し印刷工程を少なくとも3回の分割印刷に分けてインクを順次吐出する。インクは、紫外線によって硬化するインクである。インクは、紫外線の露光によって粘着性を備え、所定の硬化段階までは、混和可能な状態である。
【0071】
第2ステップで、インクに対し、紫外線を照射する。紫外線がインクに到達すると、露光量に応じて、インクが硬化する。最終に重ねられた最終インクの硬化段階を、それ以外の非最終インクの硬化段階よりも低くする。当該最終インクは非最終インクに比べて粘着性が高く、他の物体に粘着しやすくなる。
【0072】
非最終インク若しくは最終インクの少なくとも一方が色彩又は輪郭形状のいずれかによりに画像を構成し、当該最終インクが粘着性を備えることで、他の物体に粘着可能な記録物、すなわち粘着画像を構成することができる。記録物が備える粘着性を利用して非最終インクを他の物体に粘着させることにより、記録物が備える上記画像を当該他の物体に転写することができる。この結果、記録物を製造する記録装置内に載置できない対象にも、記録装置による画像を設けることができる。
【発明の効果】
【0073】
本発明によれば、記録装置内に載置できない対象にも、記録装置による画像を設けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の一実施形態であるインクジェット記録装置の全体の概略構成を示す平面図及び正面図である。
【図2】インクジェット記録装置の要部の構成を示す斜視図である。
【図3】図2中III−III断面によるキャリッジの側断面図である。
【図4】図2中IV−IV断面によるキャリッジの側断面図である。
【図5】インクジェット記録装置の制御系統の機能構成を示すブロック図である。
【図6】CPUが実行する制御内容を表すフローチャートである。
【図7】ステップS100の各印刷モード動作処理の詳細内容を表すフローチャートである。
【図8】ステップS200の印刷処理の詳細内容を表すフローチャートである。
【図9】各種印刷設定を含むデータテーブルの一例を表す図である。
【図10】データテーブルの別の例を表す図である。
【図11】照射量設定処理の内容を表すフローチャートである。
【図12】ステップS400の照射量調整モード選択処理の詳細内容を表すフローチャートである。
【図13】ステップS500の期間入力による照射量調整%記憶処理の詳細内容を表すフローチャートである。
【図14】ステップS600の時点入力による照射量調整%記憶処理の詳細内容を表すフローチャートである。
【図15】ステップS700の照射量調整%演算処理の詳細内容を表すフローチャートである。
【図16】ステップS800の電流増減モード処理の詳細内容を表すフローチャートである。
【図17】ステップS900の点灯個数増減モード処理の詳細内容を表すフローチャートである。
【図18】ステップS900の点灯個数増減モード処理の詳細内容を表すフローチャートである。
【図19】インク量調整%設定変更処理の内容を表すフローチャートである。
【図20】インク量調整%設定変更処理の内容を表すフローチャートである。
【図21】結果物の略図である。
【発明を実施するための形態】
【0075】
以下、本発明の一実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0076】
図1(a)は本発明の一実施形態であるインクジェット記録装置100(記録装置)の全体の概略構成を示す平面図であり、図1(b)はその正面図である。図1(a)及び図1(b)に示すように、インクジェット記録装置100は、インクを吐出する印刷ヘッド101(吐出手段)と、印刷ヘッド101を搭載するキャリッジ102と、キャリッジ102をX軸方向にガイドするX軸ガイドバー103と、キャリッジ102をX軸ガイドバー103に沿って駆動するX軸モータ111とを備えている。またインクジェット記録装置100は、紙や布等の被印刷媒体104(被記録媒体)を載置可能な載置テーブル105と、載置テーブル105をY軸方向に駆動するY軸モータ108(駆動手段)と、Y軸モータ108の回転軸に連結し、載置テーブル105の下面の軸受112と螺合するボールネジ109と、載置テーブル105をY軸方向にガイドするガイドレール110と、ガイドレール110を支持すると共に、内蔵したZ軸モータ(図示せず)により載置テーブル105をZ軸方向に駆動可能な上下駆動機構113とを備えている。またインクジェット記録装置100は、インクを収納したインクタンク106と、インクタンク106から印刷ヘッド101へインクを供給するための遮光性のインクチューブ107とを備えている。
【0077】
載置テーブル105は、被印刷媒体104をエア吸着によって上面に固定した状態で載置可能である。図1に示す例では、載置テーブル105は2つの被印刷媒体104をX軸方向に並列して載置している。載置テーブル105は、X軸方向における左右両側端部に、印刷ヘッド101をフラッシングする際にインクを噴出するためのフラッシング穴114を有している。なお、載置テーブル105のうち、被印刷媒体104を載置する機能(移動機能を含まない)が、特許請求の範囲に記載の載置手段に相当する。
【0078】
また、インクタンク106が収納するインクは、紫外線の露光により粘着性を生じながら硬化し、所定の硬化段階までは混和(後述)可能なUVインクであり、特に本実施形態で用いるのは、例えば、エポキシ化合物、オキセタン加工物、及びビニルエーテル加工物のうち少なくとも1つと、重合開始剤、増感剤等を含む、カチオン系のインクである。好適には、重合開始剤を1〜10(重量%)、顔料を1〜10(重量%)、モノマーを10〜95(重量%)含むインクである。なお、溶剤や水をさらに含んでもよい。このため、本実施形態のインクにおいては、紫外線の照射を契機に経時的にその外表面に関する粘着性の喪失が進行する。印刷ヘッド101は当該インクを被印刷媒体104に対して吐出する。
【0079】
図2は、インクジェット記録装置100の要部の構成を示す斜視図である。また図3は、図2中III−III断面によるキャリッジ102の側断面図であり、図4は、図2中IV−IV断面によるキャリッジ102の側断面図である。
【0080】
図2乃至図4に示すように、キャリッジ102は、側断面が略L字型形状を有するアルミ合金等からなる熱伝導性部材である。キャリッジ102は、水平部102aの前側(図2及び図3中左側)端部付近に印刷ヘッド101を搭載している。印刷ヘッド101は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのインクを吐出する印刷ヘッド101Y,101M,101C,101Kの他、透明インクを吐出する印刷ヘッド101T及び白インクを吐出する印刷ヘッド101Wを有している。またキャリッジ102は、印刷ヘッド101のX軸方向における左右両側に、紫外線を照射するUV照射装置121(紫外線発生源)を印刷ヘッド101を挟むように搭載している。UV照射装置121は、被印刷媒体104と対向する下面に、X軸方向及びY軸方向に沿って格子状に配列した複数のUV−LED121aを有している。なお、ここではUV照射装置121が被印刷媒体104に対し直接的に紫外線を照射するようにしたが、UV照射装置121は紫外線を発生するだけであり、その他の手段を介して被印刷媒体104に対し紫外線を照射するようにしてもよい。
【0081】
キャリッジ102は、印刷ヘッド101及びUV照射装置121を包み込むように、前面側にダクトカバー122を装着している。このダクトカバー122とキャリッジ102とが、印刷ヘッド101、UV照射装置121及びインクチューブ107を取り囲むチャンバー123を形成している。
【0082】
キャリッジ102は、ダクトカバー122の中央上部にブロアファン127を有している。ブロアファン127は、図3及び図4中の直線矢印に示すように、チャンバー123内において気体の流動を引き起こす。ブロアファン127による気流は、印刷ヘッド101の背面に設けた熱交換用フィン128及びUV照射装置121の上面に設けた熱交換用フィン133を介して印刷ヘッド101及びUV照射装置121を冷却し、水平部102aの後側(図2及び図3中右側)に設けた噴出口134から被印刷媒体104に向かって流出する。
【0083】
印刷ヘッド101は、インク吐出口付近にヒータ129を備えている。ヒータ129は、印刷ヘッド101のインク吐出口付近を加熱することにより、吐出口付近のインクの粘度を吐出に最適な粘度とする。また印刷ヘッド101は、ヘッドの温度を検出するサーミスタ131を有している。UV照射装置121も同様に、装置の温度を検出するサーミスタ135を有している。これらのサーミスタ131,135は、印刷ヘッド131及びUV照射装置121の温度を検出し、後述するCPU301に出力する。CPU301は、この検出結果に基づいてブロアファン127の駆動を制御し、印刷ヘッド101及びUV照射装置121を中心とするチャンバー123内の温度制御を行う。さらに、キャリッジ102は、水平部102aの後端部に立設した垂直部102bに、補助ヒータ132を有している。補助ヒータ132は、チャンバー123内の温度制御を行う際の補助的役割を果たす。
【0084】
図5は、インクジェット記録装置100の制御系統の機能構成を示すブロック図である。図5に示すように、インクジェット記録装置100の制御系統は、主として、CPU301と、ROM302と、EEPROM302aと、RAM303と、入力インターフェース304と、出力インターフェース305とを備えている。出力インターフェース305は、印刷ヘッド101を駆動する印刷ヘッド回路306と、X軸モータ111を駆動するX軸モータ駆動回路307と、Y軸モータ108を駆動するY軸モータ駆動回路308と、上下駆動機構113のZ軸モータを駆動するZ軸モータ駆動回路309と、UV照射装置121を駆動するUV装置駆動回路310と、ブロアファン127を駆動するブロアファン駆動回路311と、ヒータ129を駆動するヒータ駆動回路312と、補助ヒータ132を駆動する補助ヒータ駆動回路313と、後述するPC320が備える液晶ディスプレイであるLCD321とに接続する。また、入力インターフェース304は、印刷開始指令や印刷データ等の入力を行うためのPC(パーソナルコンピュータ)320と、上述したサーミスタ131,135とに接続する。
【0085】
ROM302は、各種の制御プログラム等を記憶する。CPU301(制御手段)は、RAM303の一時記憶機能を利用しつつ、ROM302に記憶した上記制御プログラムに従って信号処理を行うことにより、後述する図6乃至図8及び図11乃至図20のフローチャートに示す制御内容を実行する。
【0086】
図6は、CPU301が実行する制御内容を表すフローチャートである。図6に示すように、ステップS10では、CPU301は印刷前処理を行う。印刷前処理は、操作者がPC320の図示しないキーボードやマウス等の操作手段を介して行う印刷画像の選択や画像の配置・編集、印刷モードの選択、各種印刷設定の変更等の操作信号を入力し、当該操作信号に基づいて行う印刷の前処理である。なお、上記印刷モードは、被印刷媒体104の種類や印刷層の構成、インクの色・量や紫外線照射量等の各種印刷設定に応じて予め定まっており、RAM303が所定の記憶エリアにデータテーブルとして記憶している(後述の図9及び図10参照)。操作者はこれら複数の印刷モードの中から所望の印刷モードを選択することで、当該印刷モードに対応する印刷設定で印刷を行うことができる。印刷モードの詳細については後述する。なお、上記照射量とは、インクジェット記録装置100で1つの印刷対象を完成するまでに、その印刷対象を構成するインクが受ける照射量、すなわち1つの印刷対象が完成するまでに累積して照射された紫外線の量である。
【0087】
次のステップS20では、CPU301は、印刷を開始するか否かを判定する。CPU301は、この判定をPC320より印刷開始指令を入力したか否かを検出することにより行う。PC320より印刷開始指令を入力していない場合には(ステップS20でNO)、ステップS10に戻る。一方、PC320より印刷開始指令を入力した場合には(ステップS20でYES)、ステップS100に移行する。
【0088】
ステップS100では、CPU301は、上記ステップS10で設定した各種印刷設定に従って被印刷媒体104に対し印刷を実行する各印刷モード動作処理を実行する(詳細内容は後述の図7参照)。
【0089】
ステップS30では、CPU301は、操作者がインクジェット記録装置100の電源のOFF操作を行ったか否かを判定する。操作者が電源OFF操作を行っていない場合には(ステップS30でNO)、先のステップS10に戻り、上述と同様の処理を繰り返す。一方、操作者が電源のOFF操作を行った場合には(ステップS30でYES)、ステップS40に移行し、CPU301はインクジェット記録装置100の終了処理を実行する。終了処理は、例えば起動中のOSやアプリケーションのシャットダウン等である。以上により、本フローチャートを終了する。
【0090】
上記において、ステップS10においては、CPU301は、操作者の操作入力に基づき、後述する図9に示す印刷モード「1」に対応する単層記録モードと、後述する図10に示す印刷モード「32」〜「43」に対応する積層記録モードとを設定することになる。したがって、このステップS10が、特許請求の範囲に記載のモード設定手段として機能する。
【0091】
図7は、上記ステップS100の各印刷モード動作処理の詳細内容を表すフローチャートである。図7に示すように、各印刷モード動作処理では、印刷工程を少なくとも3回(本実施形態では4回)の分割印刷に分けて印刷を行う。まずステップS105では、CPU301は、初回の分割印刷である初期印刷を行うか否かを判定する。初期印刷は、被印刷媒体104の表面に対し最初にインクの吐出を行う印刷処理である。CPU301は、前述したステップS10の印刷前処理で設定した印刷モードに基づき、対応する初期印刷の完了回数(初期印刷を行う設定回数)に関わる情報をRAM303の所定の記憶エリア(以下、完了回数記憶エリアと記載する)から読み出し、当該初期印刷の完了回数が0より大きいか否かを判定する。初期印刷の完了回数が0である場合には(ステップS105でNO)、初期印刷を行わないとみなし、後述のステップS115に直接移行する。一方、初期印刷の完了回数が0より大きい場合には(ステップS105でYES)、初期印刷を行うとみなし、次のステップS110に移行する。
【0092】
ステップS110では、CPU301は、初期印刷に関わる各種設定を行う。具体的には、CPU301は、前述したステップS10の印刷前処理で設定した印刷モードに基づき、対応する初期印刷の色設定、インク量、紫外線照射量及び完了回数等をRAM303の所定の記憶エリアから読み出し、印刷モードに対応する印刷設定を行う。
【0093】
ステップS200では、CPU301は、被印刷媒体104を載置した載置テーブル105を印刷ヘッド101によるインクの吐出及びUV照射装置121による紫外線照射が可能な処理領域(図1に示す領域)に移動させ、上記ステップS110で設定した印刷設定に基づいた初期印刷を、設定した完了回数だけ行う印刷処理を実行する(詳細内容は後述の図8参照)。
【0094】
ステップS115では、CPU301は、上記初期印刷より後の順番の分割印刷である中期印刷を行うか否かを判定する。中期印刷は、上記初期印刷により被印刷媒体104上に形成したインク層の表面に対しインクが互いに重なるように、あるいは初期印刷を行わなかった場合(初期印刷の完了回数が0だった場合)には被印刷媒体104の表面に対しインクの吐出を行う印刷処理である。CPU301は、前述したステップS10の印刷前処理で設定した印刷モードに基づき、対応する中期印刷の完了回数に関わる情報をRAM303の上記完了回数記憶エリアから読み出し、当該中期印刷の完了回数が0より大きいか否かを判定する。中期印刷の完了回数が0である場合には(ステップS115でNO)、中期印刷を行わないとみなし、後述のステップS125に直接移行する。一方、中期印刷の完了回数が0より大きい場合には(ステップS115でYES)、中期印刷を行うとみなし、次のステップS120に移行する。
【0095】
ステップS120では、CPU301は、上記ステップS110と同様にして中期印刷に関わる各種印刷設定を行う。
【0096】
ステップS200では、CPU301は、上記ステップS120で設定した印刷設定に基づいた中期印刷を、設定した完了回数だけ行う印刷処理を実行する(詳細内容は後述の図8参照)。
【0097】
ステップS125では、CPU301は、最後の分割印刷である後期印刷を行うか否かを判定する。後期印刷は、上記中期印刷により被印刷媒体104上に形成したインク層の表面に対しインクが互いに重なるように、あるいは中期印刷を行わなかった場合(中期印刷の完了回数が0だった場合)には初期印刷で形成したインク層の表面に対しインクが互いに重なるように、若しくは被印刷媒体104の表面に対しインクの吐出を行う印刷処理である。CPU301は、前述したステップS10の印刷前処理で設定した印刷モードに基づき、対応する後期印刷の完了回数に関わる情報をRAM303の上記完了回数記憶エリアから読み出し、当該後期印刷の完了回数が0より大きいか否かを判定する。後期印刷の完了回数が0である場合には(ステップS125でNO)、後期印刷を行わないとみなし、後述のステップS135に直接移行する。一方、後期印刷の完了回数が0より大きい場合には(ステップS125でYES)、後期印刷を行うとみなし、次のステップS130に移行する。
【0098】
ステップS130では、CPU301は、上記ステップS110と同様にして後期印刷に関わる各種印刷設定を行う。
【0099】
ステップS200では、CPU301は、上記ステップS130で設定した印刷設定に基づいた後期印刷を、設定した完了回数だけ行う印刷処理を実行する(詳細内容は後述の図8参照)。
【0100】
ステップS135では、CPU301は、操作者による手作業があるか否かを判定する。ここでいう手作業は、印刷途中の被印刷媒体104の所定部分に付着したインクに対して操作者が行う所望の作業や、操作者がインクの状態を目視にて確認することをいい、上記所望の作業は例えば被印刷媒体104に対してインク以外の材料により装飾を行う作業や、転写作業等である。CPU301は、前述したステップS10の印刷前処理で設定した印刷モードに基づき、対応する手作業の有無に関わる情報をRAM303の所定の記憶エリア(以下、手作業有無記憶エリアと記載する)から読み出し、手作業の有無を判定する。手作業がない場合には(ステップS135でNO)、後述のステップS160に直接移行する。一方、手作業がある場合には(ステップS135でYES)、次のステップS140に移行する。
【0101】
ステップS140では、CPU301は、出力インターフェース305を介してLCD321に表示信号を出力し、各種情報の表示を行う。各種情報は、例えば、上述した初期印刷、中期印刷若しくは後期印刷により実行したインクの吐出及び紫外線の照射の後、被印刷媒体104の所定部分に付着したインクの粘着性に関する時間要素情報(時点や期間)である。この時間要素情報の詳細については後述する。
【0102】
ステップS145では、CPU301は、印刷ヘッド101がフラッシングやパージ等のメンテナンス処理を必要とする状態であるか否かを判定し、必要な状態である場合には、当該メンテナンス処理を実行する。フラッシングは、印刷ヘッド101のインクを前述したフラッシング穴114内に一斉噴射することによってノズル面に発生した詰まりを除去する処理である。またパージは、図示しない吸引ポンプを用いて印刷ヘッド101のノズル面からインクを吸引する処理である。操作者が手作業を行う際にこのようなメンテナンス処理を実行することにより、印刷を行っていない時間を有効活用することができる。
【0103】
ステップS150では、CPU301は、出力インターフェース305を介してY軸モータ駆動回路308に駆動信号を出力してY軸モータ108及びボールネジ109を駆動させ、載置テーブル105をY軸方向に沿って移動させつつ上述した処理領域から当該処理領域よりも操作者側に位置する作業位置に移動させる。載置テーブル105が当該作業位置に位置する際には、被印刷媒体104の上面がインクジェット記録装置100の前方側(図1(a)中下側)に露出し、操作者が被印刷媒体104の所定部分に付着したインクに対し上述した所望の作業やインクの状態確認を実行することが可能となる。この作業位置が特許請求の範囲に記載の操作者側領域に相当する。
【0104】
なお、前述したようにインクジェット記録装置100においては、印刷ヘッド101と載置テーブル105とが独立して移動することが可能な構成となっている。このため、CPU301は、上記ステップS145のメンテナンス処理と上記ステップS150の作業位置移動処理とを同時並行して行う。これにより、動作時間を短縮し、処理効率を向上することができる。
【0105】
ステップS155では、CPU301は、操作者による手作業が完了したか否かを判定する。CPU301は、この判定を、操作者がPC320の上記操作手段を介して作業完了信号を入力したか否かを検出することにより行う。作業完了信号を検出しない場合には(ステップS155でNO)本ステップを繰り返し、作業完了信号を検出した場合には(ステップS155でYES)、次のステップS160に移行する。
【0106】
ステップS160では、CPU301は、印刷の仕上げを行うか否かを判定する。仕上げは、初期印刷、中期印刷及び後期印刷が終了し、操作者による手作業が行われた被印刷媒体104に対し、紫外線照射及び必要に応じて印刷を施すことで、一連の印刷処理の仕上げを行う処理である。CPU301は、前述したステップS10の印刷前処理で設定した印刷モードに基づき、対応する仕上げの完了回数に関わる情報をRAM303の上記完了回数記憶エリアから読み出し、当該仕上げの完了回数が0より大きいか否かを判定する。仕上げの完了回数が0である場合には(ステップS160でNO)、仕上げを行わないとみなし、後述のステップS170に直接移行する。一方、仕上げの完了回数が0より大きい場合には(ステップS160でYES)、仕上げを行うとみなし、次のステップS165に移行する。
【0107】
ステップS165では、CPU301は、上記ステップS110と同様にして仕上げ制御に関わる各種設定を行う。
【0108】
ステップS200では、CPU301は、上記ステップS165で設定した制御設定に基づいた仕上げを、設定した完了回数だけ行う印刷処理を実行する(詳細内容は後述の図8参照)。
【0109】
ステップS170では、CPU301は、上記ステップS150と同様に、出力インターフェース305を介してY軸モータ駆動回路308に駆動信号を出力し、載置テーブル105をY軸方向に沿って移動させつつ上述した処理領域から排出位置に移動させる。載置テーブル105が当該排出位置に位置する際には、操作者は載置テーブル105から被印刷媒体104を取り外すことができる。以上により、本サブルーチンを終了する。
【0110】
なお、操作者が所望の作業やインクの状態確認を実行可能な上記作業位置と、載置テーブル105から被印刷媒体104を取り外すことが可能な上記排出位置とは、同じ位置としてもよいし異なる位置としてもよい。作業位置と排出位置を同じ位置とした場合には、例えば何らかの不具合(作業の失敗や印刷の失敗)が生じた際に、操作者は迅速に被印刷媒体104を載置テーブル105から取り外すことができる。一方、作業位置と排出位置を異なる位置とする場合には、例えば排出位置を作業位置よりも装置内側とすることで、作業位置が排出位置よりも装置外側となるため、載置テーブル105が作業位置に移動した際に、操作者が印刷完了と間違って被印刷媒体104を載置テーブル105から取り外してしまうことを防止できる。また、作業位置が装置外側に位置するため、操作者が所望の作業やインクの状態確認をし易くなるという効果もある。
【0111】
また、上記の初期印刷、中期印刷及び後期印刷における各ステップS200では、印刷ヘッド101は、被印刷媒体104に対する平面視において互いに同一となる領域にそれぞれインクを吐出してもよいし、下の印刷層の表面の少なくとも一部に対しインクを吐出するようにしてもよい。例えば後期印刷層を後述する「半硬化」状態として粘着層として機能させる場合には、必ずしも後期印刷層を中期印刷層の全面に形成する必要はなく、一部に形成してもよい。
【0112】
上記において、初期印刷、中期印刷及び後期印刷における各ステップS200では、CPU301は、載置テーブル105が載置した被印刷媒体104に対し、印刷工程を少なくとも3回の分割印刷に分けてインクを順次吐出し、各回の分割工程において吐出されたインクが互いに重なるように、印刷ヘッド101を制御することになる。したがって、これらのステップS200は、特許請求の範囲に記載の吐出制御手段として機能すると共に、吐出制御手順及び第1ステップに相当する。
【0113】
また、後期印刷において印刷ヘッド101より吐出したインクが特許請求の範囲に記載の最終インクに相当し、中期印刷及び初期印刷において印刷ヘッド101より吐出したインクが非最終インクに相当する。さらに、初期印刷において印刷ヘッド101より吐出したインクが第1インクに相当し、中期印刷において印刷ヘッド101より吐出したインクが第2インクに相当する。以下適宜、これらの称呼を使用する。
【0114】
また、初期印刷及び中期印刷における各ステップS200では、CPU301は、先の順番の分割印刷において吐出された非最終インクに、それより後の順番の分割印刷において吐出された非最終インクを重ねるように、印刷ヘッド101を制御することになる。したがって、これらのステップS200は、特許請求の範囲に記載の非最終吐出制御手段として機能する。このうち、初期印刷におけるステップS200は一次吐出制御手段として機能し、中期印刷におけるステップS200は、二次吐出制御手段として機能する。
【0115】
さらに、後期印刷におけるステップS200では、CPU301は、初期印刷及び中期印刷における各ステップS200において紫外線を照射された非最終インクの表面の少なくとも一部に対し、最終インクとして新たなインクを吐出するように、印刷ヘッド101を制御することになる。したがって、このステップS200が、特許請求の範囲に記載の最終吐出制御手段として機能する。
【0116】
また上記ステップS150においては、CPU301は、後期印刷でのステップS200の印刷処理により実行したインクの吐出及び紫外線の照射の後、当該吐出及び照射が可能な処理領域から、当該処理領域より操作者側に位置する作業位置へ、載置テーブル105を移動させるように、Y軸モータ108を制御する。したがって、このステップS150が特許請求の範囲に記載の第1駆動制御手段として機能する。
【0117】
また上記ステップS140は、ステップS150の作業位置移動処理の前の手順であるが、ステップS140においてLCD321に上記時間要素情報を表示した状態でステップS150を行うことにより、載置テーブル105の作業位置への移動の後、少なくとも一時期に、インクの外表面の粘着性に関する時間要素情報を報知することになる。したがって、このステップS140が、特許請求の範囲に記載の第1報知手段として機能する。
【0118】
図8は、上記ステップS200の印刷処理の詳細内容を表すフローチャートである。図8に示すように、ステップS205では、CPU301は、RAM303の所定の記憶エリア(以下、動作回数記憶エリアと記載する)に動作回数「0」を記憶することで動作回数を初期化する。動作回数は、各印刷処理(初期印刷、中期印刷、後期印刷、仕上げ)を実際に行った回数であり、前述の各印刷モードごとに定まった完了回数とは異なるものである(後述の図9及び図10参照)。
【0119】
ステップS210では、CPU301は、出力インターフェース305を介してX軸モータ駆動回路307に駆動信号を出力し、キャリッジ102をX軸方向に沿って移動させることで印刷ヘッド101を移動させる。これと共に、CPU301は、出力インターフェース305を介してY軸モータ駆動回路308に駆動信号を出力し、載置テーブル105をY軸方向に沿って移動させる。このような印刷ヘッド101のX軸方向の移動と載置テーブル105のY軸方向の移動により、印刷ヘッド101を開始位置に移動させる。開始位置は、載置テーブル105に載置した被印刷媒体104に対する印刷開始位置の上方位置である。これにより、載置テーブル105は印刷ヘッド101によるインクの吐出及びUV照射装置121による紫外線照射が可能な処理領域に移動したことになる。
【0120】
ステップS215では、CPU301は、UV照射装置121のUV−LED121aが点灯しているか否かを判定する。CPU301は、この判定をUV装置駆動回路310に対して照射信号を出力しているか否かにより行う。UV−LED121aが点灯している場合には(ステップS215でYES)、ステップS225に直接移行する。一方、UV−LED121aが点灯していない場合には(ステップS215でNO)、ステップS220に移り、CPU301は、出力インターフェース305を介してUV装置駆動回路310に照射信号を出力し、UV照射装置121のUV−LED121aを点灯させて紫外線の照射を開始する。そして、ステップS225に移行する。
【0121】
なお、上記ステップS220におけるUV照射装置121の照射量は、前述したステップS10の印刷前処理で設定した印刷モードごとに定まっている(後述の図9及び図10参照)。CPU301は、設定した印刷モードに基づき、対応する照射量情報をRAM303の所定の記憶エリア(以下、照射量調整%記憶エリアと記載する)から読み出し、当該照射量となるように照射を行う。
【0122】
ステップS225では、CPU301は、図示しないポンプを駆動してインクタンク106から印刷ヘッド101へインクを供給すると共に、出力インターフェース305を介して印刷ヘッド駆動回路306に制御信号を出力し、印刷ヘッド101より被印刷媒体104に対してインクを吐出する。このときのインク量は、前述したステップS10の印刷前処理で設定した印刷モードごとに定まっている(後述の図9及び図10参照)。CPU301は、設定した印刷モードに基づき、対応するインク量情報をRAM303の所定の記憶エリア(以下、インク量調整%記憶エリアと記載する)から読み出し、当該インク量となるようにインクの吐出を行う。
【0123】
ステップS230では、CPU301は、出力インターフェース305を介してX軸モータ駆動回路307に駆動信号を出力し、キャリッジ102をX軸方向に沿って移動させることで印刷ヘッド101をX軸方向に移動させる。これにより、X軸方向の印刷を行う。
【0124】
ステップS235では、CPU301は、X軸方向の印刷が完了したか否かを判定する。CPU301は、この判定をキャリッジ102がX軸方向における所定位置まで移動したか否かを検出することにより行う。X軸方向の印刷が完了していない場合には(ステップS235でNO)、上記ステップS225に戻りX軸方向の印刷を継続する。一方、X軸方向の印刷が完了した場合には(ステップS235でYES)、次のステップS240に移行する。
【0125】
ステップS240では、CPU301は、出力インターフェース305を介してY軸モータ駆動回路308に駆動信号を出力し、載置テーブル105をY軸方向に沿って移動させる。これにより、載置テーブル105はY軸方向に一行分移動する。なおこのとき、例えば被印刷媒体104の表面に凹凸があったり、被印刷媒体104が立体的形状を有するような場合には、CPU301は必要に応じてZ軸モータ駆動回路309にも駆動信号を出力し、載置テーブル105をZ軸方向にも移動させる。
【0126】
ステップS245では、CPU301は、Y軸方向の印刷が完了したか否かを判定する。CPU301は、この判定を載置テーブル105がY軸方向における所定位置まで移動したか否かを検出することにより行う。Y軸方向の印刷が完了していない場合には(ステップS245でNO)、上記ステップS225に戻り再びX軸方向の印刷を行う。一方、Y軸方向の印刷が完了した場合には(ステップS245でYES)、次のステップS250に移行する。
【0127】
CPU301は、上述したステップS225〜ステップS245をY軸方向の印刷が完了するまで繰り返す。この間、キャリッジ102をX軸方向に移動させて印刷ヘッド101により一行分のインクを吐出した後、載置テーブル105をY軸方向に一行分移動させ、再び印刷ヘッド101による次の行分のインクの吐出を実行することを繰り返す。
【0128】
ステップS250では、CPU301は、上記ステップS205においてRAM303の上記動作回数記憶エリアに記憶した動作回数に1を加算し、次のステップS255において動作回数記憶エリアの内容を当該加算した動作回数に更新する。
【0129】
ステップS260では、CPU301は、印刷動作を完了するか否かを判定する。具体的には、CPU301は、前述したステップS10の印刷前処理で設定した印刷モードに基づき、対応する印刷の完了回数に関わる情報をRAM303の上記完了回数記憶エリアから読み出し、上記ステップS255で上記動作回数記憶エリアに記憶した動作回数が、上記読み出した完了回数に達しているか否かを判定する。動作回数が完了回数に達していない場合には(ステップS260でNO)、先のステップS210に戻り、再び同様の手順を繰り返す。一方、動作回数が完了回数に達している場合には(ステップS260でYES)、ステップS265に移行する。
【0130】
ステップS265では、CPU301は、出力インターフェース305を介してUV装置駆動回路310に停止信号を出力し、UV照射装置121のUV−LED121aを消灯させて紫外線の照射を停止する。以上により、本サブルーチンを終了する。
【0131】
上記において、初期印刷、中期印刷及び後期印刷のいずれかにおいて手作業前の最後の上記ステップS200の印刷処理を行う場合、上記ステップS265においては、CPU301が、その後のステップS150においてY軸モータ108が載置テーブル105を作業位置に移動する前に(移動後も継続して)、紫外線の照射を停止するようにUV照射装置121を制御することになる。したがって、ステップS265が特許請求の範囲に記載の照射停止手段として機能する。
【0132】
また仕上げでの印刷処理における上記ステップS210においては、CPU301は、上記ステップS265による照射の停止後に、載置テーブル105を作業位置から処理領域へ移動させるように、Y軸モータ108を制御することになる。したがって、ステップS210は特許請求の範囲に記載の第2駆動制御手段として機能する。
【0133】
また操作者が後述の図10に示す印刷モード「38」〜「43」を選択した場合には、仕上げでの印刷処理における上記ステップS220においては、上記ステップS210により実行した載置テーブル105の処理領域への移動の後、インクの吐出を伴うことなく紫外線の照射を開始するように、印刷ヘッド101及びUV照射装置121を制御することになる。したがって、このステップS220は、特許請求の範囲に記載の後照射制御手段として機能する。
【0134】
次に、上述した制御内容に基づいてインクジェット記録装置100が行う具体的な動作について説明する。図9は、各種印刷設定を含むデータテーブルの一例を表す図である。RAM303は、このデータテーブルを所定の記憶エリアに記憶している。
【0135】
図9に示すデータテーブルは、インクジェット記録装置100で布や金属等である被印刷媒体104に対し正像印刷を行う場合のテーブルである。モード番号が「1」〜「6」である印刷モードでは、初期印刷、中期印刷及び後期印刷におけるインクを「完全硬化」させるのに対し、モード番号が「7」〜「12」である印刷モードでは、初期印刷、中期印刷及び後期印刷のうち手作業前の最終の印刷層におけるインクを「半硬化」させることにより、当該インクの粘着性を利用してラメ等の装飾材を被印刷媒体104に付着させるものである。
【0136】
ここで、上記「完全硬化」とは、インクが硬化することにより粘着性をほぼ完全に喪失した状態であり、具体的には当該インクを粘着剤として使用した場合に、JIS Z3284に準拠したタッキング試験機による評価においてインクの引張荷重が0となる状態である。なお、「完全硬化」のための照射量としては、「完全硬化」の状態になるときの照射量の最小値以上であればいい。この「完全硬化」した状態ではインクは他の分割印刷のインクと混和しなくなる。一方、「半硬化」とは、インクが硬化により完全には粘着性を喪失していない状態であり、具体的にはインクが上記「完全硬化」の状態になるときの照射量の最小値である完全硬化照射量の0.05倍〜0.95倍の範囲の照射量によって当該インクが硬化した状態である。この「半硬化」した状態ではインクは他の分割印刷のインクと混和可能である。したがって、完全硬化照射量の0.95倍の照射量によってインクが硬化した段階が、特許請求の範囲に記載の所定の硬化段階に相当する。
【0137】
以下に、操作者が図9中の印刷モード「7」を選択した場合について説明する。操作者がPC320の図示しないキーボードやマウス等の操作手段を介して印刷モード「7」を選択すると、CPU301は、図6に示すステップS10において、入力インターフェース304を介して当該モードを特定する信号を入力し、印刷モードを「7」に設定する。なお、このように操作者がモード選択操作を行うのではなく、例えば画像データにモードを特定するデータが含まれており、操作者が印刷する画像を選択するとCPU301が画像データに含まれる上記データに従ってモード設定を行う構成としてもよい。
【0138】
その後、操作者が被印刷媒体104を載置テーブル105に載置し、PC320より印刷開始指令を入力すると(ステップS20でYES)、ステップS100に移行して、CPU301は各印刷モード動作処理を実行する。当該印刷モード「7」では初期印刷の完了回数が「1」となっているため(ステップS105でYES)、ステップS110においてCPU301は印刷モード「7」に対応した初期印刷各種設定を行う。具体的には、図9に示すように、CPU301は初期印刷の色設定を画像データに従った色である原色(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック、又は白)、インク量調整%を100%、照射量調整%を50%に設定する。そして、ステップS200においてCPU301は上記印刷設定に基づいて1回の初期印刷処理を実行する。
【0139】
なお、上記インク量調整%の値は、完全硬化しつつ1回の印刷で印刷処理を完了する場合のインク量を100%とした場合の値であり、上記照射量調整%の値は、上述した完全硬化照射量(インクが「完全硬化」の状態となるときの照射量の最小値)を100%とした場合の値である。印刷モード「7」では、初期印刷の照射量を完全硬化照射量の50%に設定しているため、初期印刷でのインクは「半硬化」した状態となり、当該インクの粘着性を利用して後述するように装飾材を被印刷媒体104に付着させることが可能となっている。すなわち、当該初期印刷で形成した印刷層は粘着層として機能する。
【0140】
なお、上記ではインクを「半硬化」させるための照射量を完全硬化照射量の50%としたが、これに限らず、完全硬化照射量の5%〜95%の範囲の照射量であればよい。下限値を5%としたのは、これより下の値ではインクが液体に近い状態となり粘着性を得ることができないからである。また上限値を95%としたのは、これより上の値ではインクが「完全硬化」に近い状態となりこの場合も粘着性を得ることができないからである。
【0141】
次に、印刷モード「7」では中期印刷及び後期印刷の完了回数が「0」となっているため(ステップS115及びステップS125でNO)、CPU301は中期印刷及び後期印刷を行わずに処理をステップS135に移行する。そして、印刷モード「7」では手作業が「有り」となっているため(ステップS135でYES)、ステップS140及びステップS145において、CPU301は各種情報表示及び必要に応じてメンテナンス処理を行う。このとき、前述したように、本実施形態のインクは経時的にその外表面に関する粘着性の喪失を進行するものであることから、CPU301は上記ステップS140において、上記初期印刷で形成した印刷層のインクの粘着性低下に関する時間要素情報をLCD321に表示する。具体的には、「あと何分で固まります」や「何日の何時頃に固まります」等の表示を行う。これにより、操作者は、後述する手作業をいつまでにしなければならないかを認識することができる。
【0142】
その後、ステップS150において、CPU301は載置テーブル105を処理領域から作業位置に移動させる。このとき、印刷モード「7」では手作業の種類が「ラメ散布」であるため、操作者は露出した被印刷媒体104に対してラメを散布して付着させることで装飾を行う。これにより、印刷後の被印刷媒体104の装飾性を向上することができる。なお、装飾材としてはラメに限るものではなく、例えばスパンコール等でもよい。その他、金属(蒸着したものを含む)、セラミックス、有機材料、樹脂のいずれかから成り、箔(アルミ蒸着したものを含む)、粉体、ビーズ、及び繊維のうち、少なくとも1つの形状で構成されているものでもよい。
【0143】
上記作業が完了し、操作者がその旨をPC320の操作手段を介して入力すると(ステップS155でYES)、CPU301は処理をステップS160に移行する。そして、印刷モード「7」では仕上げの完了回数が「1」となっているため(ステップS160でYES)、ステップS165においてCPU301は印刷モード「7」に対応した仕上げ制御各種設定を行う。具体的には、図9に示すように、CPU301はインク量調整%を0%、照射量調整%を100%に設定する。そして、ステップS200においてCPU301は上記印刷設定に基づいて1回の仕上げ印刷処理を実行する。
【0144】
なお、印刷モード「7」では仕上げの色設定が「無し」、インク量調整%が「0」となっているため、仕上げ印刷処理ではインクの吐出を行わない。また、仕上げの照射量を完全硬化照射量である100%に設定しているため、上述したように初期印刷において「半硬化」となったインクが、当該仕上げ印刷処理により「完全硬化」する。これにより、半硬化状態で被印刷媒体104に付着させた装飾材を、その後のインクの硬化により固定することができる。
【0145】
次に、操作者が例えば図9中の印刷モード「1」を選択した場合について説明する。この印刷モード「1」では、初期印刷の完了回数が「1」となっており(ステップS105でYES)、中期印刷及び後期印刷の完了回数が「0」となっており(ステップS115、ステップS125でNO)、手作業が「無し」(ステップS135でNO)、且つ、仕上げの完了回数が「0」となっているため(ステップS160でNO)、CPU301はステップS110で印刷モード「1」に対応した初期印刷各種設定を行い、ステップS200において上記印刷設定に基づき初期印刷を1回実行する。ここでは、初期印刷についてインク量を100%に設定し、照射量を完全硬化照射量である100%に設定しているため、初期印刷でのインクは「完全硬化」した状態となる。その後、ステップS170において、CPU301は載置テーブル105を処理領域から排出位置に移動させる。
【0146】
図10は、データテーブルの別の例を表す図である。図10示すデータテーブルは、インクジェット記録装置100で転写ラベルを作成する場合のテーブルである。この転写ラベルは、被印刷媒体104(剥離体)として例えば濡れ張力が36以下であるPP(ポリプロピレン)等の材料を用い、この被印刷媒体104に対し鏡像印刷を行う。その上で、最終の印刷層におけるインクを「半硬化」させることにより、当該インクの粘着性を利用して作成した転写ラベルを対象物に貼り付け、被印刷媒体104上に形成した印刷層を対象物に転写可能とするものである。被印刷媒体104として濡れ張力の小さいPP等の材料を用いることにより、被印刷媒体104上のインクを剥がれ易くし、転写し易い構成となっている。
【0147】
なお、図10中の印刷モード「32」〜「37」は仕上げ処理を行わないモードであり、印刷モード「38」〜「43」は仕上げ処理を行うモードである。すなわち、印刷モード「32」〜「37」では初期印刷、中期印刷及び後期印刷により転写ラベルを作成し、その後の仕上げ処理を行わないのに対し、印刷モード「38」〜「43」では手作業設定が「有り」になっており、初期印刷、中期印刷及び後期印刷により転写ラベルを作成し、手作業として操作者が当該転写ラベルを用いて対象物に転写した後、当該転写対象物を被印刷媒体104に代えて載置テーブル105に載せ、インクジェット記録装置100内に投入することで、仕上げ処理において紫外線照射により「完全硬化」させ、転写物を完成させる。例えば、転写対象物がインクジェット記録装置100内に載置不可能な場合には印刷モード「32」〜「37」を選択し、転写対象物がインクジェット記録装置100内に載置可能な場合には印刷モード「38」〜「43」を選択する。
【0148】
以下、例えば図10中の印刷モード「32」を選択した場合について説明する。この印刷モード「32」では、初期印刷、中期印刷及び後期印刷の完了回数が全て「1」となっており(ステップS105、ステップS115、ステップS125でYES)、手作業が「無し」(ステップS135でNO)、且つ、仕上げの完了回数が「0」となっているため(ステップS160でNO)、CPU301はステップS110、ステップS120、ステップS130で印刷モード「32」に対応した印刷各種設定を行い、それぞれのステップS200において上記印刷設定に基づき初期印刷、中期印刷及び後期印刷を各1回ずつ実行する。ここでは、初期印刷、中期印刷及び後期印刷の3回の印刷を行うため、それぞれにおけるインク量の合計が100%となるように設定している。また、後期印刷の照射量を完全硬化照射量の50%(第2照射量)に設定しているため、後期印刷でのインクが「半硬化」した状態となり、当該印刷層が粘着層として機能する。その後、ステップS170において、CPU301は載置テーブル105を処理領域から排出位置に移動させる。操作者は、このようにして作成した転写ラベルを上記「半硬化」状態の印刷層を利用して対象物に貼り付ける。これにより、初期印刷層が印刷媒体104から剥がれ、初期印刷層、中期印刷層及び後期印刷層からなる3層の印刷層からなる印刷結果物が対象物に転写する。なお、転写前においては、被印刷媒体104上に初期印刷層、中期印刷層及び後期印刷層の順に積層した構成だったが、転写後においては、対象物上に後期印刷層、中期印刷層及び初期印刷層の順に積層した構成となる。
【0149】
次に、例えば図10中の印刷モード「41」を選択した場合について説明する。当該印刷モード「41」では初期印刷の完了回数が「1」となっているため(ステップS105でYES)、ステップS110においてCPU301は印刷モード「41」に対応した初期印刷各種設定を行う。具体的には、図10に示すように、CPU301は初期印刷の色設定を透明、インク量調整%を100%、照射量調整%を100%(第1照射量、一次照射量)に設定する。そして、ステップS200においてCPU301は上記印刷設定に基づいて1回の初期印刷処理を実行する。
【0150】
同様に、印刷モード「41」では中期印刷の完了回数が「1」となっているため(ステップS115でYES)、CPU301は中期印刷を上記と同様にして行う。ここでは、図10に示すように、CPU301は中期印刷の色設定を画像データに従った色である原色(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック、又は白)、インク量調整%を50%、照射量調整%を100%(第1照射量、二次照射量)に設定する。
【0151】
さらに、印刷モード「41」では後期印刷の完了回数が「1」となっているため(ステップS125でYES)、CPU301は後期印刷を上記と同様にして行う。ここでは、図10に示すように、CPU301は中期印刷の色設定を画像データに従った色である原色(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック、又は白)、インク量調整%を50%、照射量調整%を50%(第2照射量)に設定する。これにより、後期印刷でのインクが「半硬化」した状態となり、当該印刷層が粘着層として機能する。
【0152】
そして、印刷モード「41」では手作業が「有り」となっているため(ステップS135でYES)、ステップS140及びステップS145において、CPU301は各種情報表示及び必要に応じてメンテナンス処理を行う。このとき、前述したように、本実施形態のインクは経時的にその外表面に関する粘着性の喪失を進行するものであることから、CPU301は上記ステップS140において、上記後期印刷で形成した印刷層のインクの粘着性低下に関する上記時間要素情報をLCD321に表示する。具体的には、「あと何分で固まります」や「何日の何時頃に固まります」等の表示を行う。これにより、操作者は、後述する転写作業をいつまでにしなければならないかを認識することができる。
【0153】
その後、ステップS150において、CPU301は載置テーブル105を処理領域から作業位置に移動させる。このとき、印刷モード「41」では手作業の種類が「転写」であるため、操作者は露出した転写ラベルを載置テーブル105から取り外し、当該転写ラベルを上記「半硬化」状態の印刷層を利用して対象物に貼り付ける。これにより、初期印刷層が印刷媒体104から剥がれ、初期印刷層、中期印刷層及び後期印刷層からなる3層の印刷層が対象物に転写する。
【0154】
上記作業が完了し、操作者がその旨をPC320の操作手段を介して入力すると(ステップS155でYES)、CPU301は処理をステップS160に移行する。そして、印刷モード「41」では仕上げの完了回数が「1」となっているため(ステップS160でYES)、ステップS165においてCPU301は印刷モード「41」に対応した仕上げ制御各種設定を行う。具体的には、図10に示すように、CPU301はインク量調整%を0%、照射量調整%を100%に設定する。そして、ステップS200においてCPU301は上記印刷設定に基づいて1回の仕上げ印刷処理を実行する。
【0155】
なお、印刷モード「41」では仕上げの色設定が「無し」、インク量調整%が「0」となっているため、仕上げ印刷処理ではインクの吐出を行わない。また、仕上げの照射量を完全硬化照射量である100%に設定しているため、上述したように後期印刷において「半硬化」となったインクが、当該仕上げ印刷処理により「完全硬化」する。これにより、転写対象物に付着させた印刷層を、その後のインクの硬化により確実に固定することができる。
【0156】
上述した各印刷モードのうち、図9に示す印刷モード「1」では、CPU301がステップS200の印刷処理によるインクの吐出及び紫外線の照射を実行して単層を形成するモードである。したがって、このモードが特許請求の範囲に記載の「単層記録モード」に相当する。一方、図10に示す印刷モード「32」〜「43」は、CPU301が初期印刷、中期印刷及び後期印刷でのステップS200の印刷処理によるインクの吐出及び紫外線の照射を実行して積層された複数の層を形成するモードである。したがって、これらのモードが特許請求の範囲に記載の「積層記録モード」に相当する。
【0157】
次に、UV照射装置121の照射量の設定処理について説明する。この照射量設定処理は、前述したステップS10の印刷前処理において、操作者が照射量の設定若しくは設定変更を行う旨の操作入力を行った場合に、CPU301が実行する処理である。図11は、この照射量設定処理の内容を表すフローチャートである。
【0158】
まずステップS400では、CPU301は、照射量調整モード選択処理を実行する。照射量調整モード選択処理は、UV照射装置121の照射量をどのようにして調整するかを、予め定まった複数のモードの中から選択する処理である(詳細内容は後述の図12参照)。
【0159】
ステップS310では、CPU301は、出力インターフェース305を介してLCD321に表示信号を出力し、照射量の設定入力を促す入力促進表示を行う。
【0160】
ステップS320では、CPU301は、上記入力促進表示に応じて操作者がPC320の前述した操作手段を介して照射量の設定入力を行ったか否かを判定する。入力がない場合には(ステップS320でNO)入力があるまで本ステップを繰り返し、入力があった場合には(ステップS320でYES)次のステップS330に移行する。
【0161】
ステップS330では、CPU301は、操作者が行った設定入力の種類が期間であるか否かを判定する。本実施形態では、UV照射装置121の照射量を設定するために、操作者はインクの外表面の所望の硬化状態に関連した時点又は期間を入力することができる。操作者は、時点として、例えば印刷完了後の被印刷媒体104上のインクが完全硬化する日時を入力することができる。なお、時点とは、日付、日時、年月日、時分など特定の一時を示すものである。また操作者は、期間として、現時点(印刷を行う時点)から被印刷媒体104のインクが完全硬化するまでの期間を入力することができる。
【0162】
このように、操作者が所望の硬化状態に関連した時点又は期間を入力できる構成とすることで、次のような利点がある。例えば、操作者が図9に示す印刷モード「7」〜「12」を選択する場合、「半硬化」状態の印刷層が「完全硬化」状態となる前に、ラメ等の装飾材を散布する必要がある。また、操作者が図10に示す印刷モード「32」〜「43」を選択する場合、「半硬化」状態の後期印刷層が「完全硬化」状態となる前に、作成した転写ラベルを用いて転写させる必要がある。したがって、装飾材の散布や転写を行うのに必要な期間を見越して完全硬化する時点又は期間を入力し、当該時点又は期間に応じた照射量を設定することで、装飾材の散布や転写を行うのに必要な期間を確保することが可能となる。
【0163】
なお、このように操作者が直接設定入力を行うのではなく、例えば画像データに時点又は期間を特定するデータが含まれており、操作者が印刷する画像を選択するとCPU301が画像データに含まれる上記データに従って時点又は期間の設定入力を行う構成としてもよい。
【0164】
操作者の設定入力の種類が期間である場合には(ステップS330でYES)、ステップS500に移行する。そして、CPU301は、期間に基づいて照射量を設定・記憶する、期間入力による照射量調整%記憶処理を実行する(詳細内容は後述の図13参照)。一方、操作者の設定入力の種類が期間でない場合には(ステップS330でNO)、時点入力であるとみなしてステップS600に移行する。そして、CPU301は、時点に基づいて照射量を設定・記憶する、時点入力による照射量調整%記憶処理を実行する(詳細内容は後述の図14参照)。以上により、本サブルーチンを終了する。
【0165】
上記において、ステップS320において操作者が設定入力を行った場合には、CPU301は、インクの外表面の所望の硬化状態に関連した時点情報又は期間情報を取得することになる。したがって、ステップS320は、特許請求の範囲に記載の時間情報取得手段として機能する。
【0166】
図12は、上記ステップS400の照射量調整モード選択処理の詳細内容を表すフローチャートである。図12に示すように、ステップS405では、CPU301は、出力インターフェース305を介してLCD321に表示信号を出力し、照射量調整モードの設定入力を促す入力促進表示を行う。
【0167】
ステップS410では、CPU301は、上記入力促進表示に応じて操作者がPC320の前述した操作手段を介して照射量調整モードの設定入力を行ったか否かを判定する。入力がない場合には(ステップS410でNO)入力があるまで本ステップを繰り返し、入力があった場合には(ステップS410でYES)次のステップS415に移行する。
【0168】
ステップS415では、CPU301は、操作者が入力した照射量調整モードが「電流増減モード」であるか否かを判定する。本実施形態では、照射量を調整するモードとして、大きく分けて、UV照射装置121のUV−LED121aに供給する電流を変化させて照射量を調整する「電流増減モード」と、UV−LED121aの点灯個数を増減して照射量を調整する「点灯個数増減モード」との2つがある。操作者が入力した照射量調整モードが「点灯個数増減モード」である場合には(ステップS415でNO)、後述のステップS425に直接移行する。一方、操作者が入力した照射量調整モードが「電流増減モード」である場合には(ステップS415でYES)、次のステップS420に移行する。
【0169】
ステップS420では、CPU301は、操作者が入力した照射量調整モードである「電流増減モード」をRAM303の所定の記憶エリア(以下、調整モード記憶エリアと記載する)に記憶する。
【0170】
ステップS425では、CPU301は、操作者が入力した照射量調整モードが「近似優先モード」であるか否かを判定する。本実施形態では、操作者が「点灯個数増減モード」を選択した場合において、さらに点灯個数をどのように決定するかを設定するための後述する複数のモードを用意している。すなわち、UV−LED121aの点灯個数を増減して照射量を調整する場合には、点灯個数に対応して予め決められた段階的な複数の照射量(以下、段階照射量と記載する)のうちのいずれかを選択することにより、操作者が入力した期間または時点に対応した時期において所望の硬化状態(ここでは完全硬化状態)を得るために、インクに照射すべき目標照射量を決定することになる。例えば、UV−LED121aの個数が20個である場合、5%ずつ増減する段階的な段階照射量(0%、5%、10%、・・・、95%、100%)の中から目標照射量を決定することになる。「近似優先モード」は、操作者が入力した上記期間や時点に基づいてCPU301が算出した目標照射量が、上記段階的な複数の段階照射量と一致しない場合に、段階的な複数の段階照射量のうち、目標照射量との差が最小の段階照射量を、インクに照射する照射量(実照射量)として優先的に選択するモードである。操作者が入力した照射量調整モードが「近似優先モード」でない場合には(ステップS425でNO)、後述のステップS435に移行する。一方、操作者が入力した照射量調整モードが「近似優先モード」である場合には(ステップS425でYES)、次のステップS430に移行する。
【0171】
ステップS430では、CPU301は、操作者が入力した照射量調整モードである「近似優先モード」をRAM303の上記調整モード記憶エリアに記憶する。
【0172】
ステップS435では、CPU301は、操作者が入力した照射量調整モードが「高い方優先モード」であるか否かを判定する。「高い方優先モード」は、操作者が入力した上記期間や時点に基づいてCPU301が算出した目標照射量が、上記段階的な複数の段階照射量と一致しない場合に、段階的な複数の段階照射量のうち、目標照射量より大きく且つ当該目標照射量との差が最小である段階照射量を、インクに照射する照射量として優先的に選択するモードである。操作者が入力した照射量調整モードが「高い方優先モード」でない場合には(ステップS435でNO)、後述のステップS445に移行する。一方、操作者が入力した照射量調整モードが「高い方優先モード」である場合には(ステップS435でYES)、次のステップS440に移行する。
【0173】
ステップS440では、CPU301は、操作者が入力した照射量調整モードである「高い方優先モード」をRAM303の上記調整モード記憶エリアに記憶する。
【0174】
ステップS445では、CPU301は、操作者が入力した照射量調整モードが「低い方優先モード」であるか否かを判定する。「低い方優先モード」は、操作者が入力した上記期間や時点に基づいてCPU301が算出した目標照射量が、上記段階的な複数の段階照射量と一致しない場合に、段階的な複数の段階照射量のうち、目標照射量未満で且つ当該目標照射量との差が最小である段階照射量を、インクに照射する照射量として優先的に選択するモードである。操作者が入力した照射量調整モードが「低い方優先モード」でない場合には(ステップS445でNO)、後述のステップS455に移行する。一方、操作者が入力した照射量調整モードが「低い方優先モード」である場合には(ステップS445でYES)、次のステップS450に移行する。
【0175】
ステップS450では、CPU301は、操作者が入力した照射量調整モードである「低い方優先モード」をRAM303の上記調整モード記憶エリアに記憶する。
【0176】
ステップS455では、CPU301は、操作者が入力した照射量調整モードが「指定モード」であるか否かを判定する。「指定モード」は、操作者が入力した上記期間や時点に基づいてCPU301が算出した目標照射量が、上記段階的な複数の段階照射量と一致しない場合に、段階的な複数の段階照射量のうちの中央値と、当該中央値から操作者の操作に基づき増減させた段階照射量とを選択可能に表示し、当該選択肢の中から操作者が所望の段階照射量をインクに照射する照射量として選択するモードである。操作者が入力した照射量調整モードが「指定モード」でない場合には(ステップS455でNO)、後述のステップS465に移行する。一方、操作者が入力した照射量調整モードが「指定モード」である場合には(ステップS455でYES)、次のステップS460に移行する。
【0177】
ステップS460では、CPU301は、操作者が入力した照射量調整モードである「指定モード」をRAM303の上記調整モード記憶エリアに記憶する。
【0178】
ステップS465では、CPU301は、操作者が入力した照射量調整モードが「一方指定モード」であるか否かを判定する。「一方指定モード」は、操作者が入力した上記期間や時点に基づいてCPU301が算出した目標照射量が、上記段階的な複数の段階照射量と一致しない場合に、段階的な複数の段階照射量のうち、目標照射量より大きく且つ当該目標照射量との差が最小である段階照射量と、目標照射量未満で且つ当該目標照射量との差が最小である段階照射量の2つを、LCD321に選択可能に表示し、その中から操作者が選択した段階照射量をインクに照射する照射量として選択するモードである。操作者が入力した照射量調整モードが「一方指定モード」でない場合には(ステップS465でNO)、後述のステップS475に移行する。一方、操作者が入力した照射量調整モードが「一方指定モード」である場合には(ステップS465でYES)、次のステップS470に移行する。
【0179】
ステップS470では、CPU301は、操作者が入力した照射量調整モードである「一方指定モード」をRAM303の上記調整モード記憶エリアに記憶する。
【0180】
ステップS475では、CPU301は、操作者が入力した照射量調整モードが「再指定モード」であるか否かを判定する。「再指定モード」は、操作者が入力した上記期間や時点に基づいてCPU301が算出した目標照射量が、上記段階的な複数の段階照射量と一致しない場合に、操作者に対し期間や時点の再入力を要求するモードである。操作者が入力した照射量調整モードが「再指定モード」でない場合には(ステップS475でNO)、本サブルーチンを終了する。一方、操作者が入力した照射量調整モードが「再指定モード」である場合には(ステップS475でYES)、次のステップS480に移行する。
【0181】
ステップS480では、CPU301は、操作者が入力した照射量調整モードである「再指定モード」をRAM303の上記調整モード記憶エリアに記憶する。以上により、本サブルーチンを終了する。
【0182】
図13は、上記ステップS500の期間入力による照射量調整%記憶処理の詳細内容を表すフローチャートである。図13に示すように、ステップS505では、CPU301は、前述の図11に示すステップS310における入力促進表示に応じて操作者がステップS320において入力を行った期間情報を、RAM303の所定の記憶エリア(以下、入力期間記憶エリアと記載する)に記憶する。
【0183】
ステップS510では、CPU301は、RAM303の上記入力期間記憶エリアに記憶した期間の値が適正値であるか否かを判定する。具体的には、入力期間(ここでは日数)が0以上の整数で、且つ、限界値以下であれば、適正値と判定し、それ以外であれば適正値でないと判定する。限界値は、設定期間が過剰に長い期間とならないように予め設定した値であり、RAM303が所定の記憶エリアに記憶している。なお、期間をさらに細かい単位、例えば時間や分で入力するようにしてもよい。入力期間の値が適正値でない場合には(ステップS510でNO)、ステップS515に移行し、CPU301は、出力インターフェース305を介してLCD321に表示信号を出力し、期間の再入力を促す入力促進表示を行う。そして次のステップS520では、CPU301は、上記入力促進表示に応じて操作者が期間の再入力を行ったか否かを判定する。入力がない場合には(ステップS520でNO)入力があるまで本ステップを繰り返し、入力があった場合には(ステップS520でYES)先のステップS505に戻る。一方、上記ステップS510において、入力期間の値が適正値である場合には(ステップS510でYES)、次のステップS525に移行する。
【0184】
ステップS525では、CPU301は、出力インターフェース305を介してLCD321に表示信号を出力し、上記入力した期間の補正の有無の入力を促す補正有無入力促進表示を行う。期間の補正は、例えば、被印刷媒体104を所望のタイミングで確実に完全硬化させるために、操作者が入力した期間から所定の余裕期間を差し引くような場合に行うものである。
【0185】
ステップS530では、CPU301は、上記入力促進表示に応じて操作者が期間の補正の有無の入力を行ったか否かを判定する。入力がない場合には(ステップS530でNO)、補正を行わないとみなし、後述のステップS540に移行する。入力があった場合には(ステップS530でYES)、ステップS535に移行する。
【0186】
ステップS535では、CPU301は、上記入力期間記憶エリアより期間を読み出し、所定の補正条件(上記所定の余裕期間の減算等)に基づいて補正を行い、当該補正後の期間の値を入力期間記憶エリアに記憶する。
【0187】
ステップS540では、CPU301は、上記入力期間記憶エリアより期間を読み出し、当該期間をRAM303の所定の記憶エリア(以下、表示期間記憶エリアと記載する)に記憶する。
【0188】
ステップS545では、CPU301は、内蔵した計時手段(又は装置外部の計時手段でもよい)より現在の時点を取得し、当該時点をRAM303の所定の記憶エリア(以下、現時点記憶エリアと記載する)に記憶する。
【0189】
ステップS550では、CPU301は、上記現時点記憶エリアに記憶した時点を読み出し、当該時点に上記表示期間記憶エリアに記憶した期間を加算することにより、表示時点の演算を行う。
【0190】
ステップS555では、CPU301は、上記演算した表示時点をRAM303の所定の記憶エリア(以下、表示時点記憶エリアと記載する)に記憶する。
【0191】
ステップS700では、CPU301は、所定の相関テーブル(またはグラフでもよい)に基づき、上記ステップS540において表示期間記憶エリアに記憶した表示期間が現時点から経過した後の時期において所望の硬化状態(ここでは完全硬化状態)を得るために、インクに照射すべき上記目標照射量を演算する照射量調整%演算処理を実行する(詳細内容は後述の図15参照)。なお、上記相関テーブルは、初期硬化状態からの経過期間と初期硬化状態から経時的に進行するインクの硬化状態との相関を表すテーブルであり、RAM303(又は装置外部の記憶手段でもよい)が所定の記憶エリアに記憶している。また初期硬化状態は、操作者の照射量設定に応じて紫外線照射が行われた結果インクが到達した「半硬化」状態のことである。
【0192】
ステップS560では、CPU301は、上記ステップS700での演算結果である照射量を、前述したRAM303の照射量調整%記憶エリアに記憶する。
【0193】
ステップS565では、CPU301は、出力インターフェース305を介してLCD321に表示信号を出力し、上記RAM303の照射量調整%記憶エリアの値、表示時点記憶エリアの値、表示期間記憶エリアの値、補正の有無、補正内容の説明等の表示を行う。以上により本サブルーチンを終了する。
【0194】
上記において、ステップS700では、CPU301は、ステップS320で取得した時点情報又は期間情報に基づき、印刷ヘッド101が吐出したインクに対するUV照射装置121が発生した紫外線の照射量を設定することになる。よって、ステップS700は、特許請求の範囲に記載の設定手段として機能する。
【0195】
図14は、上記ステップS600の時点入力による照射量調整%記憶処理の詳細内容を表すフローチャートである。図14に示すように、ステップS605では、CPU301は、前述の図11に示すステップS310における入力促進表示に応じて操作者がステップS320において入力を行った時点情報を、RAM303の所定の記憶エリア(以下、入力時点記憶エリアと記載する)に記憶する。
【0196】
ステップS610では、CPU301は、内蔵した計時手段(又は装置外部の計時手段でもよい)より現在の時点を取得し、当該時点をRAM303の上記現時点記憶エリアに記憶する。
【0197】
ステップS615では、CPU301は、上記現時点記憶エリアに記憶した時点を読み出し、当該時点に限界期間を加算することにより、限界時点の演算を行う。限界期間は、設定期間が過剰に長い期間とならないように予め設定した値であり、RAM303が所定の記憶エリアに記憶している。
【0198】
ステップS620では、CPU301は、上記演算した限界時点をRAM303の所定の記憶エリア(以下、限界時点記憶エリアと記載する)に記憶する。
【0199】
ステップS625では、CPU301は、上記ステップS605でRAM303の上記入力時点記憶エリアに記憶した時点の値が適正値であるか否かを判定する。具体的には、入力時点が、上記ステップS610で現時点記憶エリアに記憶した現在の時点と、上記ステップS620で限界時点記憶エリアに記憶した限界時点との間の時点であれば適正値と判定し、それ以外であれば適正値でないと判定する。入力時点の値が適正値でない場合には(ステップS625でNO)、ステップS630に移行し、CPU301は、出力インターフェース305を介してLCD321に表示信号を出力し、時点の再入力を促す入力促進表示を行う。そして次のステップS635では、CPU301は、上記入力促進表示に応じて操作者が時点の再入力を行ったか否かを判定する。入力がない場合には(ステップS635でNO)入力があるまで本ステップを繰り返し、入力があった場合には(ステップS635でYES)先のステップS605に戻る。一方、上記ステップS625において、入力時点の値が適正値である場合には(ステップS625でYES)、次のステップS640に移行する。
【0200】
ステップS640では、CPU301は、出力インターフェース305を介してLCD321に表示信号を出力し、上記入力した時点の補正の有無の入力を促す補正有無入力促進表示を行う。時点の補正は、例えば、被印刷媒体104を所望のタイミングで確実に完全硬化させるために、操作者が入力した時点から所定の余裕期間を差し引いた時点とするような場合に行うものである。
【0201】
ステップS645では、CPU301は、上記入力促進表示に応じて操作者が時点の補正の有無の入力を行ったか否かを判定する。入力がない場合には(ステップS645でNO)、補正を行わないとみなし、後述のステップS655に移行する。入力があった場合には(ステップS645でYES)、ステップS650に移行する。
【0202】
ステップS650では、CPU301は、上記入力時点記憶エリアより時点を読み出し、所定の補正条件(上記所定の余裕期間の減算等)に基づいて補正を行い、当該補正後の時点の値を入力時点記憶エリアに記憶する。
【0203】
ステップS655では、CPU301は、上記入力時点記憶エリアより時点を読み出し、当該時点をRAM303の上記表示時点記憶エリアに記憶する。
【0204】
ステップS660では、CPU301は、上記ステップS610で現時点記憶エリアに記憶した時点を読み出し、上記表示期間記憶エリアに記憶した時点より減算することにより、表示期間の演算を行う。
【0205】
ステップS665では、CPU301は、上記演算した表示期間をRAM303の上記表示期間記憶エリアに記憶する。
【0206】
ステップS700では、CPU301は、上記相関テーブルに基づき、上記ステップS665において表示期間記憶エリアに記憶した表示期間が現時点から経過した後の時期において所望の硬化状態(ここでは完全硬化状態)を得るために、インクに照射すべき目標照射量を決定する照射量調整%演算処理を実行する(詳細内容は後述の図15参照)。
【0207】
ステップS670では、CPU301は、上記ステップS700での演算結果である照射量を、前述したRAM303の照射量調整%記憶エリアに記憶する。
【0208】
ステップS675では、CPU301は、出力インターフェース305を介してLCD321に表示信号を出力し、上記RAM303の照射量調整%記憶エリアの値、表示時点記憶エリアの値、表示期間記憶エリアの値、補正の有無、補正内容の説明等の表示を行う。以上により本サブルーチンを終了する。
【0209】
図15は、上記ステップS700の照射量調整%演算処理の詳細内容を表すフローチャートである。図15に示すように、ステップS705では、CPU301は、前述の図12に示す照射量調整モード選択処理において、操作者が入力した照射量調整モードが「電流増減モード」であるか否かを判定する。操作者が入力した照射量調整モードが「電流増減モード」である場合には(ステップS705でYES)、次のステップS800に移行し、CPU301は、UV照射装置121のUV−LED121aに供給する電流を変化させて照射量を調整する電流増減モード処理を実行する(詳細内容は後述の図16参照)。一方、操作者が入力した照射量調整モードが「点灯個数増減モード」である場合には(ステップS705でNO)、次のステップS900に移行し、CPU301は、UV−LED121aの点灯個数を増減して照射量を調整する点灯個数増減モード処理を実行する(詳細内容は後述の図17参照)。以上により、本サブルーチンを終了する。
【0210】
図16は、上記ステップS800の電流増減モード処理の詳細内容を表すフローチャートである。図16に示すように、ステップS805では、操作者が入力した期間又は時点に対応した時期(詳細には、前述のステップS540において表示期間記憶エリアに記憶した表示期間、又は前述のステップS665において表示期間記憶エリアに記憶した表示期間が現時点から経過した後の時期)において所望の硬化状態(ここでは完全硬化状態)を得るための上記目標照射量を前述した相関テーブルに基づき算出し、当該目標照射量となるようなUV照射装置121のUV−LED121aに供給する電流値である電流調整%を演算する。この電流調整%の値は、上述した完全硬化照射量(インクが「完全硬化」の状態となるときの照射量の最小値)となるような電流値を100%とした場合の値である。
【0211】
ステップS810では、CPU301は、上記演算した電流調整%の値が下限%よりも大きいか否かを判定する。下限%は、電流値が過小な値とならないように予めUV照射装置121の仕様等に基づき設定した値であり、RAM303が所定の記憶エリアに記憶している。電流調整%の値が下限%以下である場合には(ステップS810でNO)、ステップS815に移行し、CPU301は、出力インターフェース305を介してLCD321に表示信号を出力し、電流値が小さすぎる旨を表す下限%違反表示を行う。そして、次のステップS820では、CPU301は、操作者に対し期間又は時点の再入力を促す再入力催促表示をLCD321に行う。
【0212】
一方、上記ステップS810において、電流調整%の値が下限%より大きい場合には(ステップS810でYES)、ステップS825に移行する。ステップS825では、CPU301は、上記演算した電流調整%の値が上限%よりも小さいか否かを判定する。上限%は、電流値が過大な値とならないように予めUV照射装置121の仕様等に基づき設定した値であり、RAM303が所定の記憶エリアに記憶している。電流調整%の値が上限%以上である場合には(ステップS825でNO)、ステップS830に移行し、CPU301は、出力インターフェース305を介してLCD321に表示信号を出力し、電流値が大きすぎる旨を表す上限%違反表示を行う。そして、次のステップS835では、CPU301は、操作者に対し期間又は時点の再入力を促す再入力催促表示をLCD321に行う。
【0213】
一方、上記ステップS825において、電流調整%の値が上限%より小さい場合には(ステップS825でYES)、ステップS840に移行する。ステップS840では、CPU301は、上記ステップS805で演算した電流調整%の値を、RAM303の上記照射量調整%記憶エリアに記憶する。以上により、本サブルーチンを終了する。
【0214】
図17及び図18は、上記ステップS900の点灯個数増減モード処理の詳細内容を表すフローチャートである。図17に示すように、ステップS902では、CPU301は、操作者が入力した期間又は時点に対応した時期(詳細には、前述のステップS540において表示期間記憶エリアに記憶した表示期間、又は前述のステップS665において表示期間記憶エリアに記憶した表示期間が現時点から経過した後の時期)において所望の硬化状態(ここでは完全硬化状態)を得るための上記目標照射量を前述した相関テーブルに基づき算出し、当該目標照射量となるようなUV照射装置121のUV−LED121aの点灯個数を演算する。なお、ここでは点灯個数を目標照射量に比例して演算するため、点灯個数は整数になるとは限らない。また、点灯個数は、UV−LED121aに供給する電流調整%を一定の値(例えば100%)に固定した状態における点灯個数である。
【0215】
ステップS904では、CPU301は、操作者が入力した上記期間や時点に基づいてCPU301が算出した目標照射量が、UV−LED121aの個数に応じた段階的な複数の段階照射量のいずれかと一致するか否かを判定する。言い換えれば、CPU301は、上記ステップS902で演算した点灯個数が整数となるか否かを判定する。目標照射量が、段階的な複数の段階照射量と一致する場合には(ステップS904でYES)、ステップS906に移行する。なお、本判定において、CPU301は、目標照射量と段階照射量が完全に一致するか否かを判定するのではなく、目標照射量が段階照射量との関係で所定のしきい値の範囲内にあるか否かを判定し、当該範囲内にあれば一致すると判定し、当該範囲外であれば一致しないものと判定する。
【0216】
ステップS906では、CPU301は、上記演算した点灯個数の値が下限個数よりも大きいか否かを判定する。下限個数は、点灯個数が過小な値とならないように予めUV照射装置121の仕様等に基づき設定した値であり、RAM303が所定の記憶エリアに記憶している。例えば、UV−LED121aの個数が20個である場合、下限個数はその10%相当の2個となる。点灯個数の値が下限個数以下である場合には(ステップS906でNO)、ステップS908に移行し、CPU301は、出力インターフェース305を介してLCD321に表示信号を出力し、点灯個数が少なすぎる旨を表す下限個数違反表示を行う。その後、後述するステップS982に移行する。一方、上記ステップS906において、点灯個数の値が下限個数より大きい場合には(ステップS906でYES)、次のステップS910に移行する。
【0217】
ステップS910では、CPU301は、上記演算した点灯個数の値が上限個数よりも小さいか否かを判定する。上限個数は、点灯個数が過大な値とならないように予めUV照射装置121の仕様等に基づき設定した値であり、RAM303が所定の記憶エリアに記憶している。例えば、UV−LED121aの個数が20個である場合、上限個数はその95%相当の19個となる。点灯個数の値が上限個数以上である場合には(ステップS910でNO)、ステップS912に移行し、CPU301は、出力インターフェース305を介してLCD321に表示信号を出力し、点灯個数が多すぎる旨を表す上限個数違反表示を行う。その後、後述するステップS982に移行する。一方、上記ステップS910において、点灯個数の値が上限個数より小さい場合には(ステップS910でYES)、次のステップS914に移行する。
【0218】
ステップS914では、CPU301は、上記ステップS902で演算した点灯個数の値をRAM303の上記照射量調整%記憶エリアに記憶する。この際、点灯個数を照射量に換算して記憶する。例えば、UV−LED121aの個数が20個である場合に、演算した点灯個数が5個であれば25%、10個であれば50%、15個であれば75%として記憶する(以下同様)。そして、後述のステップS984に移行する。
【0219】
一方、先のステップS904において、目標照射量がUV−LED121aの個数に応じた段階的な複数の段階照射量のいずれかと一致しない場合には(ステップS904でNO)、次のステップS916に移行する。ステップS916では、CPU301は、前述の図12に示す照射量調整モード選択処理において、操作者が入力した照射量調整モードが「近似優先モード」であるか否かを判定する。「近似優先モード」でない場合には(ステップS916でNO)、後述のステップS922に移行する。一方、「近似優先モード」である場合には(ステップS916でYES)、次のステップS918に移行する。
【0220】
ステップS918では、CPU301は、上記段階的な複数の段階照射量のうち、目標照射量との差が最小の段階照射量を、インクに照射する照射量(実照射量)として優先的に選択し、当該段階照射量に対応する個数を点灯個数に決定する。
【0221】
ステップS920では、CPU301は、上記決定した点灯個数をRAM303の上記照射量調整%記憶エリアに記憶する。
【0222】
ステップS922では、CPU301は、前述の図12に示す照射量調整モード選択処理において、操作者が入力した照射量調整モードが「高い方優先モード」であるか否かを判定する。「高い方優先モード」でない場合には(ステップS922でNO)、後述のステップS928に移行する。一方、「高い方優先モード」である場合には(ステップS922でYES)、次のステップS924に移行する。
【0223】
ステップS924では、CPU301は、上記段階的な複数の段階照射量のうち、目標照射量より大きく且つ当該目標照射量との差が最小である段階照射量を、インクに照射する照射量として優先的に選択し、当該段階照射量に対応する個数を点灯個数に決定する。
【0224】
ステップS926では、CPU301は、上記決定した点灯個数をRAM303の上記照射量調整%記憶エリアに記憶する。
【0225】
ステップS928では、CPU301は、前述の図12に示す照射量調整モード選択処理において、操作者が入力した照射量調整モードが「低い方優先モード」であるか否かを判定する。「低い方優先モード」でない場合には(ステップS928でNO)、後述のステップS934に移行する。一方、「低い方優先モード」である場合には(ステップS928でYES)、次のステップS930に移行する。
【0226】
ステップS930では、CPU301は、上記段階的な複数の段階照射量のうち、目標照射量未満で且つ当該目標照射量との差が最小である段階照射量を、インクに照射する照射量として優先的に選択し、当該段階照射量に対応する個数を点灯個数に決定する。
【0227】
ステップS932では、CPU301は、上記決定した点灯個数をRAM303の上記照射量調整%記憶エリアに記憶する。
【0228】
図18に移り、ステップS934では、CPU301は、前述の図12に示す照射量調整モード選択処理において、操作者が入力した照射量調整モードが「指定モード」であるか否かを判定する。「指定モード」でない場合には(ステップS934でNO)、後述のステップS968に移行する。一方、「指定モード」である場合には(ステップS934でYES)、次のステップS936に移行する。
【0229】
ステップS936では、CPU301は、UV−LED121aの中央個数に対応する時点を前述の相関テーブルに基づいて逆算する。中央個数とは、UV照射装置121が有するUV−LED121aの数の中央値であり、例えばUV−LED121aの個数が19個である場合には10となる。なお、UV−LED121aの個数が偶数個(例えば20個)である場合には、2つの中央値(20個である場合には10と11)のうちのいずれかを中央個数とする。この場合、いずれを選択するかを予め設定しておいてもよい。
【0230】
ステップS938では、CPU301は、出力インターフェース305を介してLCD321に表示信号を出力し、上記演算した中央個数に対応する時点をLCD321に選択可能に表示する。
【0231】
ステップS940では、CPU301は、上記LCD321に表示した中央個数に対応する時点に応じて、操作者がPC320の前述した操作手段を介して点灯個数が増加するように(言い換えれば時点を早めるように)操作入力を行ったか否かを判定する。操作者が点灯個数が減少するように(言い換えれば時点を遅らせるように)操作入力を行った場合には(ステップS940でNO)、後述のステップS952に移行する。一方、操作者が点灯個数が増加するように(言い換えれば時点を早めるように)操作入力を行った場合には(ステップS940でYES)、次のステップS942に移行する。
【0232】
ステップS942では、CPU301は、操作者が増加させた上記点灯個数の値が前述した上限個数よりも小さいか否かを判定する。点灯個数の値が上限個数より小さい場合には(ステップS942でYES)、次のステップS944に移行し、CPU301は、操作者が増加させた点灯個数に対応する時点を前述の相関テーブルに基づいて逆算し、ステップS946において、当該演算した時点をLCD321に選択可能に表示する。
【0233】
一方、上記ステップS942において、操作者が増加させた上記点灯個数の値が上限個数以上である場合には(ステップS942でNO)、ステップS948に移行し、CPU301は、出力インターフェース305を介してLCD321に表示信号を出力し、点灯個数が多すぎる旨を表す前述の上限個数違反表示を行う。その後、ステップS950では、CPU301は、上記ステップS940において操作者が増加させた分の個数を点灯個数より減算し、点灯個数を増加前の元の値に戻す。
【0234】
ステップS952では、CPU301は、上記ステップS938でLCD321に表示した中央個数に対応する時点に応じて、操作者がPC320の前述した操作手段を介して点灯個数が減少するように(言い換えれば時点が遅くなるように)操作入力を行ったか否かを判定する。操作者が点灯個数が増加するように(言い換えれば時点を早めるように)操作入力を行った場合には(ステップS952でNO)、後述のステップS964に移行する。一方、操作者が点灯個数が減少するように(言い換えれば時点を遅らせるように)操作入力を行った場合には(ステップS952でYES)、次のステップS954に移行する。
【0235】
ステップS954では、CPU301は、操作者が減少させた上記点灯個数の値が前述した下限個数よりも大きいか否かを判定する。点灯個数の値が下限個数より大きい場合には(ステップS954でYES)、次のステップS956に移行し、CPU301は、操作者が減少させた点灯個数に対応する時点を前述の相関テーブルに基づいて逆算し、ステップS958において、当該演算した時点をLCD321に選択可能に表示する。
【0236】
一方、上記ステップS954において、操作者が減少させた上記点灯個数の値が下限個数以下である場合には(ステップS954でNO)、ステップS960に移行し、CPU301は、出力インターフェース305を介してLCD321に表示信号を出力し、点灯個数が少なすぎる旨を表す前述した下限個数違反表示を行う。その後、ステップS962では、CPU301は、上記ステップS952において操作者が減少させた分の個数を点灯個数に加算し、点灯個数を減少前の元の値に戻す。
【0237】
ステップS964では、上記ステップS938、ステップS946及びステップS958でLCD321に表示した時点の選択肢の中の1つを操作者が選択したか否かを判定する。操作者が1つの時点を選択していない場合には(ステップS964でNO)、先のステップS940に戻る。一方、操作者が1つの時点を選択した場合には(ステップS964でYES)、次のステップS966に移行する。
【0238】
ステップS966では、CPU301は、上記操作者が選択した時点に対応する点灯個数をRAM303の上記照射量調整%記憶エリアに記憶する。
【0239】
ステップS968では、CPU301は、前述の図12に示す照射量調整モード選択処理において、操作者が入力した照射量調整モードが「一方指定モード」であるか否かを判定する。「一方指定モード」でない場合には(ステップS968でNO)、後述のステップS980に移行する。一方、「一方指定モード」である場合には(ステップS968でYES)、次のステップS970に移行する。
【0240】
ステップS970では、CPU301は、上記段階的な複数の段階照射量のうち、目標照射量より大きく且つ当該目標照射量との差が最小である段階照射量に対応する点灯個数、すなわち上記ステップS902で演算した点灯個数より高い方の個数(整数)について、対応する時点(又は期間でもよい)を前述の相関テーブルに基づいて逆算する。
【0241】
ステップS972では、CPU301は、上記段階的な複数の段階照射量のうち、目標照射量未満で且つ当該目標照射量との差が最小である段階照射量に対応する点灯個数、すなわち上記ステップS902で演算した点灯個数より高い方の個数(整数)について、対応する時点(又は期間でもよい)を前述の相関テーブルに基づいて逆算する。
【0242】
ステップS974では、CPU301は、上記ステップS970及びステップS972において演算した2つの時点(又は期間でもよい)をLCD321に選択可能に表示する。
【0243】
ステップS976では、上記表示した時点(若しくは期間)の選択肢の中の1つを操作者が選択したか否かを判定する。操作者が1つの時点(若しくは期間)を選択していない場合には(ステップS976でNO)、操作者が選択するまで本判定を繰り返す。一方、操作者が1つの時点(若しくは期間)を選択した場合には(ステップS976でYES)、次のステップS978に移行する。
【0244】
ステップS978では、CPU301は、上記操作者が選択した時点に対応する点灯個数をRAM303の上記照射量調整%記憶エリアに記憶する。
【0245】
ステップS980では、CPU301は、前述の図12に示す照射量調整モード選択処理において、操作者が入力した照射量調整モードが「再指定モード」であるか否かを判定する。「再指定モード」である場合には(ステップS980でYES)、次のステップS982に移行する。
【0246】
ステップS982では、CPU301は、出力インターフェース305を介してLCD321に表示信号を出力し、操作者に対し期間や時点の再入力を要求する再入力催促表示を行う。その後、本サブルーチンを終了する。
【0247】
一方、上記ステップS980において、「再指定モード」でない場合には(ステップS980でNO)、ステップS984に移行する。ステップS984では、CPU301は、RAM303が上記照射量調整%記憶エリアに記憶した照射量を読み出し、当該照射量に対応する時点を前述の相関テーブルに基づいて逆算する。
【0248】
ステップS986では、CPU301は、出力インターフェース305を介してLCD321に表示信号を出力し、上記演算した時点をLCD321に表示する。以上により、本サブルーチンを終了する。
【0249】
また、インクジェット記録装置100により被印刷媒体104上に形成した複数の印刷層(初期印刷層、中期印刷層及び後期印刷層)が、特許請求の範囲に記載の被記録媒体上の記録物に相当する。
【0250】
次に、インクジェット記録装置100のインク量の設定変更処理について説明する。このインク量の設定変更処理は、前述したステップS10の印刷前処理において、操作者がインク量の設定若しくは設定変更を行う旨の操作入力を行った場合に、CPU301が実行する処理である。図19及び図20は、このインク量調整%設定変更処理の内容を表すフローチャートである。
【0251】
まずステップS1002では、CPU301は、後述する各変数、すなわち、全体層インク量「a」、初期印刷層インク量調整%「b1」、初期印刷層完了回数「b2」、中期印刷層インク量調整%「c1」、中期印刷層完了回数「c2」、初期印刷層と中期印刷層の累積インク量調整%「d」、後期印刷層インク量調整%「e1」、及び後期印刷層完了回数「e2」を、初期化する。
【0252】
ステップS1004では、CPU301は、出力インターフェース305を介してLCD321に表示信号を出力し、全体層インク量の設定入力を促す入力促進表示を行う。全体層インク量「a」とは、1つの被印刷媒体104に対する1回の印刷において、初期印刷、中期印刷及び後期印刷の各々で使用するインクの総量であり、例えば完全硬化しつつ1回の印刷で印刷処理を完了する場合(図9の印刷モード「1」)のインク量と等しく設定する。
【0253】
ステップS1006では、CPU301は、上記入力促進表示に応じて操作者がPC320の前述した操作手段を介して全体層インク量の設定入力を行ったか否かを判定する。入力がない場合には(ステップS1006でNO)入力があるまで本ステップを繰り返し、入力があった場合には(ステップS1006でYES)次のステップS1008に移行する。
【0254】
ステップS1008では、CPU301は、上記入力のあった全体層インク量を、上記全体層インク量「a」としてRAM303の所定の記憶エリアに記憶する。
【0255】
ステップS1010では、CPU301は、出力インターフェース305を介してLCD321に表示信号を出力し、初期印刷層インク量調整%の設定入力を促す入力促進表示を行う。初期印刷層インク量調整%とは、初期印刷において使用するインク量であり、ここでは上記全体層インク量を100%とする値で入力する。
【0256】
ステップS1012では、CPU301は、上記入力促進表示に応じて操作者がPC320の前述した操作手段を介して初期印刷層インク量調整%の設定入力を行ったか否かを判定する。入力がない場合には(ステップS1012でNO)入力があるまで本ステップを繰り返し、入力があった場合には(ステップS1012でYES)次のステップS1014に移行する。
【0257】
ステップS1014では、CPU301は、上記入力のあった初期印刷層インク量調整%を、初期印刷層インク量調整%「b1」としてRAM303の所定の記憶エリアに記憶する。
【0258】
ステップS1016では、CPU301は、出力インターフェース305を介してLCD321に表示信号を出力し、初期印刷層の完了回数の設定入力を促す入力促進表示を行う。初期印刷層の完了回数とは、前述したように初期印刷を行う設定回数である。
【0259】
ステップS1018では、CPU301は、上記入力促進表示に応じて操作者がPC320の前述した操作手段を介して初期印刷層の完了回数の設定入力を行ったか否かを判定する。入力がない場合には(ステップS1018でNO)入力があるまで本ステップを繰り返し、入力があった場合には(ステップS1018でYES)次のステップS1020に移行する。
【0260】
ステップS1020では、CPU301は、上記入力のあった初期印刷層の完了回数を、初期印刷層完了回数「b2」としてRAM303の所定の記憶エリアに記憶する。
【0261】
ステップS1022では、CPU301は、出力インターフェース305を介してLCD321に表示信号を出力し、中期印刷層インク量調整%の設定入力を促す入力促進表示を行う。中期印刷層インク量調整%とは、中期印刷において使用するインク量であり、ここでは上記全体層インク量を100%とする値で入力する。
【0262】
ステップS1024では、CPU301は、上記入力促進表示に応じて操作者がPC320の前述した操作手段を介して中期印刷層インク量調整%の設定入力を行ったか否かを判定する。入力がない場合には(ステップS1024でNO)入力があるまで本ステップを繰り返し、入力があった場合には(ステップS1024でYES)次のステップS1026に移行する。
【0263】
ステップS1026では、CPU301は、上記入力のあった中期印刷層インク量調整%を、中期印刷層インク量調整%「c1」としてRAM303の所定の記憶エリアに記憶する。
【0264】
ステップS1028では、CPU301は、出力インターフェース305を介してLCD321に表示信号を出力し、中期印刷層の完了回数の設定入力を促す入力促進表示を行う。中期印刷層の完了回数とは、前述したように中期印刷を行う設定回数である。
【0265】
ステップS1030では、CPU301は、上記入力促進表示に応じて操作者がPC320の前述した操作手段を介して中期印刷層の完了回数の設定入力を行ったか否かを判定する。入力がない場合には(ステップS1030でNO)入力があるまで本ステップを繰り返し、入力があった場合には(ステップS1030でYES)次のステップS1032に移行する。
【0266】
ステップS1032では、CPU301は、上記入力のあった中期印刷層の完了回数を、中期印刷層完了回数「c2」としてRAM303の所定の記憶エリアに記憶する。
【0267】
ステップS1034では、CPU301は、RAM303より上記初期印刷層インク量調整%「b1」、初期印刷層完了回数「b2」、中期印刷層インク量調整%「c1」、及び中期印刷層完了回数「c2」を読み出し、「b1」×「b2」+「c1」×「c2」を演算することにより初期印刷層と中期印刷層の累積インク量調整%を算出し、累積インク量調整%「d」としてRAM303の所定の記憶エリアに記憶する。
【0268】
図20に移り、ステップS1036では、CPU301は、RAM303より上記算出した累積インク量調整%「d」及び全体層インク量「a」を読み出し、累積インク量調整%「d」が全体層インク量「a」より大きいか否かを判定する。累積インク量調整%「d」が全体層インク量「a」より大きい場合には(ステップS1036でYES)、ステップS1038に移行する。
【0269】
ステップS1038では、CPU301は、出力インターフェース305を介してLCD321に表示信号を出力し、初期印刷層と中期印刷層の累積インク量が全体層インク量を超えたことを表す警告表示を行う。そして次のステップS1040では、CPU301は、上記全体層インク量「a」、初期印刷層インク量調整%「b1」、初期印刷層完了回数「b2」、中期印刷層インク量調整%「c1」、中期印刷層完了回数「c2」、及び累積インク量調整%「d」の値をLCD321に表示する。さらに次のステップS1042では、操作者に上記値の再入力を促す入力促進表示を行う。
【0270】
ステップS1044では、CPU301は、上記入力促進表示に応じて操作者がPC320の前述した操作手段を介して中期印刷層に関わる再入力を行ったか否かを判定する。中期印刷層に関わる再入力があった場合には(ステップS1044でYES)、先のステップS1022に戻る。一方、中期印刷層に関わる再入力がない場合には(ステップS1044でNO)、ステップS1046に移行する。
【0271】
ステップS1046では、CPU301は、上記入力促進表示に応じて操作者がPC320の前述した操作手段を介して初期印刷層に関わる再入力を行ったか否かを判定する。初期印刷層に関わる再入力があった場合には(ステップS1046でYES)、先のステップS1010に戻る。一方、初期印刷層に関わる再入力がない場合には(ステップS1046でNO)、全体層インク量の再入力を行うとみなし、先のステップS1004に戻る。
【0272】
なお、上記ステップS1036において、累積インク量調整%「d」が全体層インク量「a」以下である場合には(ステップS1036でNO)、ステップS1048に移行する。
【0273】
ステップS1048では、CPU301は、出力インターフェース305を介してLCD321に表示信号を出力し、後期印刷層の完了回数の設定入力を促す入力促進表示を行う。後期印刷層の完了回数とは、前述したように後期印刷を行う設定回数である。
【0274】
ステップS1050では、CPU301は、上記入力促進表示に応じて操作者がPC320の前述した操作手段を介して後期印刷層の完了回数の設定入力を行ったか否かを判定する。入力がない場合には(ステップS1050でNO)入力があるまで本ステップを繰り返し、入力があった場合には(ステップS1050でYES)次のステップS1052に移行する。
【0275】
ステップS1052では、CPU301は、上記入力のあった後期印刷層の完了回数を、後期印刷層完了回数「e2」としてRAM303の所定の記憶エリアに記憶する。
【0276】
ステップS1054では、CPU301は、RAM303より上記全体層インク量「a」、累積インク量調整%「d」及び後期印刷層完了回数「e2」を読み出し、(「a」−「d」)/「e2」を演算することにより後期印刷層のインク量調整%を算出し、後期印刷層インク量調整%「e1」としてRAM303の所定の記憶エリアに記憶する。このように演算することで、上記ステップS1030及びステップS1032によって設定された中期印刷層完了回数「c2」が多いほど、累積インク量調整%「d」が大きくなることから、後期印刷層インク量調整%「e1」が少なくなるようにインク量を調整することになる。
【0277】
ステップS1056では、CPU301は、RAM303より上記算出した後期印刷層インク量調整%「e1」を読み出し、当該後期印刷層インク量調整%「e1」が上限値より小さいか否かを判定する。この上限値は、後期印刷層のインク量が過大な量とならないように予め印刷ヘッド101の仕様等に基づき設定した値であり、RAM303が所定の記憶エリアに記憶している。後期印刷層インク量調整%「e1」が上限値以上である場合には(ステップS1056でNO)、次のステップS1058に移行する。
【0278】
ステップS1058では、CPU301は、出力インターフェース305を介してLCD321に表示信号を出力し、後期印刷層のインク量が上限を超えたことを表す警告表示を行う。そして次のステップS1060では、CPU301は、上記全体層インク量「a」、初期印刷層インク量調整%「b1」、初期印刷層完了回数「b2」、中期印刷層インク量調整%「c1」、中期印刷層完了回数「c2」、累積インク量調整%「d」、後期印刷層インク量調整%「e1」、後期印刷層完了回数「e2」、及び上限値をLCD321に表示する。さらに次のステップS1062では、操作者に上記値の再入力を促す入力促進表示を行う。その後、後述のステップS1072に移行する。
【0279】
なお、上記ステップS1056において、後期印刷層インク量調整%「e1」が上限値より小さい場合には(ステップS1056でYES)、次のステップS1064に移行する。
【0280】
ステップS1064では、CPU301は、RAM303より上記算出した後期印刷層インク量調整%「e1」を読み出し、当該後期印刷層インク量調整%「e1」が下限値より大きいか否かを判定する。この下限値は、後期印刷層のインク量が過少な量とならないように予め印刷ヘッド101の仕様等に基づき設定した値であり、RAM303が所定の記憶エリアに記憶している。後期印刷層インク量調整%「e1」が下限値以下である場合には(ステップS1064でNO)、次のステップS1066に移行する。
【0281】
ステップS1066では、CPU301は、出力インターフェース305を介してLCD321に表示信号を出力し、後期印刷層のインク量が下限を下回ったことを表す警告表示を行う。そして次のステップS1068では、CPU301は、上記全体層インク量「a」、初期印刷層インク量調整%「b1」、初期印刷層完了回数「b2」、中期印刷層インク量調整%「c1」、中期印刷層完了回数「c2」、累積インク量調整%「d」、後期印刷層インク量調整%「e1」、後期印刷層完了回数「e2」、及び上限値をLCD321に表示する。さらに次のステップS1070では、操作者に上記値の再入力を促す入力促進表示を行う。その後、次のステップS1072に移行する。
【0282】
ステップS1072では、CPU301は、上記入力促進表示に応じて操作者がPC320の前述した操作手段を介して後期印刷層に関わる再入力を行ったか否かを判定する。後期印刷層に関わる再入力があった場合には(ステップS1072でYES)、先のステップS1048に戻る。一方、後期印刷層に関わる再入力がない場合には(ステップS1072でNO)、ステップS1074に移行する。
【0283】
ステップS1074では、CPU301は、上記入力促進表示に応じて操作者がPC320の前述した操作手段を介して中期印刷層に関わる再入力を行ったか否かを判定する。中期印刷層に関わる再入力があった場合には(ステップS1074でYES)、先のステップS1022に戻る。一方、中期印刷層に関わる再入力がない場合には(ステップS1074でNO)、ステップS1076に移行する。
【0284】
ステップS1076では、CPU301は、上記入力促進表示に応じて操作者がPC320の前述した操作手段を介して初期印刷層に関わる再入力を行ったか否かを判定する。初期印刷層に関わる再入力があった場合には(ステップS1076でYES)、先のステップS1010に戻る。一方、初期印刷層に関わる再入力がない場合には(ステップS1076でNO)、全体層インク量の再入力を行うとみなし、先のステップS1004に戻る。
【0285】
なお、上記ステップS1064において、後期印刷層インク量調整%「e1」が下限値より大きい場合には(ステップS1064でYES)、次のステップS1078に移行する。
【0286】
ステップS1078では、CPU301は、上記ステップS1054で算出した後期印刷層インク量調整%「e1」の値を決定した後期印刷層インク量調整%「e1」としてRAM303の所定の記憶エリアに記憶する。
【0287】
ステップS1080では、CPU301は、RAM303の前述した完了回数記憶エリア及びインク量調整%記憶エリアに記憶した値を読み出し、対応する印刷モードの各印刷層インク量調整%の値、及び各印刷層の完了回数の値について、以上の手順により決定した値に更新して記憶する。以上により、本サブルーチンを終了する。
【0288】
なお、上記においては、全体層インク量、初期印刷層インク量調整%、初期印刷層完了回数、中期印刷層インク量調整%、中期印刷層完了回数、及び後期印刷層完了回数を操作者が入力するようにしたが、このように操作者が直接設定入力を行うのではなく、例えば画像データに上記各値を特定するデータが含まれており、操作者が印刷する画像を選択するとCPU301が画像データに含まれる上記データに従って上記各値の設定入力を行う構成としてもよい。
【0289】
また上記ステップS1020、及び、ステップS1032においては、CPU301は、印刷ヘッド101が吐出する、非最終インクによる分割印刷の数を設定することになる。したがって、これらの手順が、特許請求の範囲に記載の分割数設定手段として機能する。
【0290】
また上記ステップS1014、ステップS1026、及びステップS1078においては、CPU301は、印刷ヘッド101が吐出するインクの吐出量を設定することになる。したがって、これらの手順が特許請求の範囲に記載のインク量設定手段として機能する。
【0291】
また上記ステップS1000全体においては、ステップS1008において全体層インク量「a」を定めた上で、ステップS1020及びステップS1032において非最終インクの分割印刷の数(すなわち初期印刷層の完了回数及び中期印刷層の完了回数)を設定することから、この非最終インクの分割印刷の数が多いほど、各分割印刷(初期印刷、中期印刷及び後期印刷)において印刷ヘッド101が吐出するインク量は少なくなる。したがって、このステップS1000全体が、特許請求の範囲に記載の第1インク量調整手段として機能する。
【0292】
以上において、操作者が図10に示す印刷モード「32」〜「43」を選択した場合には、上記初期印刷、中期印刷、及び後期印刷での各種設定手順であるステップS110、ステップS120、及びステップS130において、CPU301は、紫外線発生源が発生した紫外線を照射されたことによって、後期印刷において重ねられた最終インクが粘着性を備え、それ以前の順番の中期印刷及び初期印刷において重ねられた非最終インクが混和不可能になる範囲で、最終インクに対する照射量(図10では50%)が非最終インクに対する照射量(図10では100%)よりも少なくなるように、UV照射装置121が発生した紫外線の照射量を調整することになる。したがって、これらの手順が特許請求の範囲に記載の照射調整手段として機能すると共に、照射調整手順及び(請求項28記載の)第2ステップに相当する。また、上記のように照射量を調整して実際に照射を行うステップS200が(請求項29記載の)第2ステップに相当する。
【0293】
またこの場合に、初期印刷及び中期印刷での各種設定手順であるステップS110及びステップS120においては、CPU301は、先の順番及びそれより後の順番の分割印刷となる少なくとも2回分以上の非最終インクに対する紫外線の照射量が第1照射量(完全硬化照射量である100%)となるように、UV照射装置121が発生した紫外線の照射量を調整することになる。したがって、これらの手順が非最終照射調整手段として機能する。このうち、初期印刷でのステップS110が一次照射調整手段として機能し、中期印刷でのステップS120が二次照射調整手段として機能する。
【0294】
また後期印刷でのステップS130においては、CPU301は、後期印刷におけるステップS200において吐出された最終インクに対する紫外線の照射量が、初期印刷及び中期印刷での上記第1照射量よりも小さな第2照射量(後述する完全硬化照射量の50%)となるように、UV照射装置121が発生した紫外線の照射量を調整することになる。したがって、この手順が最終照射調整手段として機能する。
【0295】
以上説明した実施形態のインクジェット記録装置100では、操作者が図10に示す印刷モード「32」〜「43」を選択した場合、CPU301の制御に基づき、印刷ヘッド101は、載置テーブル105が載置した被印刷媒体104に対し3回の分割印刷(初期印刷、中期印刷及び後期印刷)に分けてインクを順次吐出する。印刷ヘッド101が吐出したインクは、紫外線によって硬化するインクである。インクは、UV照射装置121が発生した紫外線の照射によって、粘着性を備え、所定の硬化段階までは、混和可能な状態である。そして3回の分割印刷毎に、吐出されたインクには、UV照射装置121が発生した紫外線が照射され、紫外線がインクに到達すると、露光量に応じて、インクが硬化する。
【0296】
CPU301は、UV照射装置121が発生した紫外線の照射によって、最後の後期印刷において重ねられた最終インクに対する照射量が、それ以前の中期印刷及び初期印刷において重ねられた非最終インクに対する照射量よりも少なくなるように、吐出されたインクに対する紫外線の照射量を調整する。その結果、印刷工程の全体としてはCPU301の制御に基づく3回の分割印刷があり、後の分割印刷においてまだ非最終インク若しくは最終インクの吐出が既に吐出されたインクに対して重ねられる場合には、既に吐出された非最終インクは混和不可能な状態になるまで硬化される。硬化され混和不可能となった非最終インクに、次の分割印刷の順番の非最終インク若しくは最終インクが吐出される。図21に示すように、吐出されたインクのうち、最終に重ねられた最終インクの硬化段階は、それ以前に吐出された非最終インクの硬化段階よりも低い。当該最終インクは非最終インクに比べて粘着性が高く、他の物体に粘着しやすい。
【0297】
非最終インク若しくは最終インクの少なくとも一方が色彩又は輪郭形状のいずれかにより画像を構成し、当該最終インクが粘着性を備えることで、他の物体に粘着可能な印刷結果物、すなわち粘着画像を構成することができる。上記印刷結果物が備える粘着性を利用して非最終インクを他の物体に粘着させることにより、上記印刷結果物が備える上記画像を当該他の物体に転写することができる。この結果、インクジェット記録装置100内に載置できない対象にも、インクジェット記録装置100による画像を設けることができる。
【0298】
さらに、本実施形態では次のような効果も得ることができる。すなわち、例えば被印刷媒体104がインクジェット記録装置100よりも大きくて印刷ができないような場合に、仮にインクジェット記録装置100を大きく構成すれば、そのような被印刷媒体104に対し印刷することが可能となるが、本実施形態ではインクジェット記録装置100を大きくしなくても印刷可能であるため、設置スペース、製造コスト等の面で有利である。またインクジェット記録装置100を大きくするにしても限界があるため、所定の大きさを超える被印刷媒体104に対しては印刷することができないが、本実施形態ではそのような制限がない。
【0299】
また、被印刷媒体104をインクジェット記録装置100内に載置できない場合に、例えば紙等の中間的な印刷媒体に一旦印刷を行い、その印刷された媒体ごと最終的に画像を設けたい対象物に接着剤等を用いて貼り付けることが考えられる。しかしこの場合には、印刷媒体を画像の形状に合わせて正確に切断する必要があり、操作者の手間を要し、また手作業が困難であれば各画像に対応して切断することが可能な切断装置等が必要となる。本実施形態ではこのような切断は不要であり、操作者は転写のみ行えばよいため、労力を低減でき、且つ、切断装置等も不要となる。
【0300】
また、本実施形態では特に、CPU301の制御に基づき、最終インクへの照射量が非最終インクへの照射量よりも小さくなるので、最終インクの硬化状態が他のインクの硬化状態よりも低くなる。一方、2回分以上の分割印刷において重ねられた非最終インクに対して同じ照射量にて照射が行われるので、非最終インクに対する照射量を分割印刷毎に変更する場合に比べて、照射量の変更が少なく、また照射量の変更のための調整が少なく、インクジェット記録装置100の制御系統が簡単である。非最終インクを画像とするとともに、最終インクが粘着性を備えることで、非最終インクを他の物体に粘着可能な印刷結果物、すなわち粘着画像を構成することができる。
【0301】
また、本実施形態では特に、最終インクに対する照射量に比べて多い照射量により高い硬化状態となった第1インク及び第2インクを画像とするとともに、最終インクが備える粘着性を利用して非最終インクを他の物体に粘着させることにより、他の物体に粘着可能な印刷結果物、すなわち粘着画像を構成することができる。初期印刷及び中期印刷でのそれぞれの照射量により、第1インク及び第2インクに対する適切な硬化を実現することができる。
【0302】
また、本実施形態では特に、操作者が図10に示す印刷モード「33」、「36」、「39」、「42」を選択した場合、CPU301は後期印刷におけるステップS200の印刷処理において、白色のインクを吐出するように印刷ヘッド101を制御する。すなわち、印刷ヘッド101が後期印刷において最上部に吐出した最終インクは、印刷結果物として他の物体に転写した後は、最も下に位置する最下層となることから、最終インクを白色インクで構成することにより、転写後において視覚的な白い下地を構成することができる。
【0303】
また、本実施形態では特に、操作者が図10に示す印刷モード「35」〜「37」、「41」〜「43」を選択した場合、CPU301は初期印刷におけるステップS200の印刷処理において、透明なインクを吐出するように、印刷ヘッド101を制御する。すなわち、印刷ヘッド101によって初期印刷において吐出され最下部に位置するインクは、印刷結果物として他の物体に転写した後は、最も外側となる。その最も外側となるインクを透明なインクで構成することにより、転写後において透明なインクにより非最終インクを保護することができる。
【0304】
また、本実施形態では特に、操作者が図10に示す印刷モード「32」〜「34」、「38」〜「40」を選択した場合、CPU301は先の分割印刷において既に吐出され紫外線を照射された非最終インクと互いに共通の色彩の非最終インクとしてインクを吐出するように制御することが可能である。非最終インクを構成するインクを共通の色彩とすることにより、当該色彩を強調した、美観を向上した画像を形成することができる。
【0305】
また、本実施形態では特に、操作者が図10に示す印刷モード「33」、「34」、「39」、「40」を選択した場合、CPU301は最終インクを吐出するための制御時と非最終インクを吐出するための制御時とは異なる色彩のインクを吐出するように、印刷ヘッド101を制御する。最終インクを非最終インクと異なる色彩とすることにより、色彩差を利用した画像表現を実現することができる。
【0306】
また、本実施形態では特に、操作者が図10に示す印刷モード「35」、「41」を選択した場合、CPU301は初回の分割印刷では透明なインクを吐出し、2回目以降の複数回の分割印刷においては、初回の分割印刷において吐出されたインクとは異なる色彩で、互いに共通の色彩のインクを吐出するように、印刷ヘッド101を制御する。初回の分割印刷において吐出されたインクの色彩を、2回目以降の複数回の分割印刷において吐出されたインクの色彩と異なる色彩とすることにより、色彩差を利用した画像表現を実現することができる。
【0307】
また、本実施形態では特に、操作者が図10に示す印刷モード「32」、「38」を選択した場合、CPU301は全ての分割印刷において互いに共通の色彩のインクを吐出するように印刷ヘッド101を制御することが可能である。このようにすることで、用途や目的により、粘着性を備えた最終インクを、非最終インクによる画像と同じ色にすることも可能である。
【0308】
また、本実施形態では特に、前述したように、CPU301は、被印刷媒体104に対する平面視において互いに同一となる領域にそれぞれインクを吐出するように、印刷ヘッド101を制御することが可能である。このようにすることで、用途や目的に応じ、最終インク及び非最終インクを、平面視においてすべて同一領域に重ねることができる。
【0309】
また、本実施形態では特に、ステップS1020、及び、ステップS1032において、CPU301が印刷ヘッド101が吐出する、非最終インクによる分割印刷の数を設定する。このように、用途や目的、インクの種類、使用環境、被印刷媒体104の種類、画像の内容等に応じて非最終インクからなる重なり部分を複数設け、それら複数の重なり部分の非最終インクで画像を表現することができる。
【0310】
また、本実施形態では特に、ステップS1014、ステップS1026、及びステップS1078において、CPU301が印刷ヘッド101が吐出するインクの吐出量を設定する。これにより、用途や目的、インクの種類、使用環境、被印刷媒体104の種類、画像の内容等に応じて最終インクまたは非最終インクからなる重なり部分の厚さを適宜に変化させ、最終インクの粘着力を調整したり、凹凸を吸収する機能を調整したり、所望の硬化状態に到達するまでの時間を調整することができる。
【0311】
また、本実施形態では特に、CPU301は、ステップS1000において、ステップS1020及びステップS1032によって設定された分割印刷数が多いほど、ステップS1014、ステップS1026、及びステップS1078によって設定するインク量が少なくなるように、印刷ヘッド101の吐出するインク量を調整する。これにより、用途や目的、インクの種類、使用環境、被印刷媒体104の種類、画像の内容等に応じて、非最終インクからなる重なり部分を複数設けるとともに最終インクからなる部分の厚さを適宜に変化させ、さらに最終インクからなる部分の厚さを非最終インクからなる部分の数に応じて変化させる。複数の非最終インクの重ね合わせで画像を表現しつつ、粘着層の粘着力を調整したり、凹凸を吸収する機能を調整したり、所望の硬化状態に到達するまでの時間を調整することができる。
【0312】
また、本実施形態では特に、操作者の用途や目的に応じ、インクからなる層を1層のみ形成する単層記録モードとしての印刷モード「1」と、インクからなる層を複数層積層して画像を形成する積層記録モードとしての印刷モード「32」〜「43」を、切り替えて使用することができるので、操作者の利便性を向上することができる。
【0313】
また、本実施形態では特に、印刷ヘッド101は、エポキシ化合物、オキセタン加工物、及びビニルエーテル加工物のうち少なくとも1つと、重合開始剤、増感剤等を含む、カチオン系のインクを吐出する。このようにカチオン系のインクを用い、紫外線を照射することで、インクの粘着性を外表面から喪失させて、インクを経時的に硬化させることができる。
【0314】
また、本実施形態では特に、操作者が図10に示す印刷モード「32」〜「43」を選択した場合、CPU301は、印刷ヘッド101が吐出した非最終インクに対するUV照射装置121が発生した紫外線の照射量を、それぞれ、JIS Z3284に準拠したタッキング試験機による評価においてインクの引張荷重が0となるときの照射量の最小値である完全硬化照射量とする。このようにして、印刷ヘッド101が吐出した非最終インク対するUV照射装置121が発生した紫外線の照射量を調整し、後の順番の分割印刷で他のインクを重ねられるインクを十分な硬化状態とすることができる。
【0315】
また、本実施形態では特に、操作者が図10に示す印刷モード「32」〜「43」を選択した場合、CPU301は、印刷ヘッド101が吐出した最終インクに対するUV照射装置121が発生した紫外線の照射量を、JIS Z3284に準拠したタッキング試験機による評価においてインクの引張荷重が0となるときの照射量の最小値とするか、若しくは、当該最小値の0.05倍〜0.95倍の範囲となるようにする。このようにして、UV照射装置121が吐出した最終インクに対するUV照射装置121が発生した紫外線の照射量を調整し、最終インクに確実に粘着性を持たせることができる。
【0316】
また、本実施形態では特に、印刷ヘッド101は、濡れ張力が36以下である被印刷媒体104にインクを吐出する。これにより、転写時において最終インクを容易に被印刷媒体104から剥離させ、画像を確実に他の物体に転写することができる。
【0317】
また、本実施形態では特に、印刷ヘッド101は、ポリプロピレンからなる被印刷媒体104にインクを吐出する。これにより、転写時において最終インクをさらに確実に被印刷媒体104から剥離させることができ、また画像をくっきりと定着させて視認性を向上することができる。
【0318】
また、本実施形態では特に、最終インクまで露光した後、CPU301の制御に基づき、Y軸モータ108が処理領域から作業位置へ載置テーブル105を移動させる。操作者は、近くに移動してきた載置テーブル105に載った被印刷媒体104を用いて、当該被印刷媒体104に形成した印刷結果物を円滑に他の物体へ転写することができる。
【0319】
また、本実施形態では特に、操作者が図10に示す印刷モード「38」〜「43」を選択した場合、被印刷媒体104に形成した印刷結果物を他の物体へ転写した後、当該他の物体を被印刷媒体104に代えて載置テーブル105に載せ、インクジェット記録装置100内へ投入することで、転写した印刷結果物に紫外線を照射し、確実に硬化を進めることができる。
【0320】
また、本実施形態では特に、CPU301は、ステップS140において、載置テーブル105の作業位置への移動の後、少なくとも一時期に、インクの外表面の粘着性に関する上記時間要素情報をLCD321に表示する。これにより、Y軸モータ108により操作者の近くに移動してきた被印刷媒体104を操作者が取り扱うべき時間範囲や制限を、操作者が確実に認識することができる。
【0321】
また、本実施形態では特に、操作者が、所望の硬化状態に対応した時点や期間を指定することで、その時点や期間において最終インクが当該所望の硬化状態となるように、インクに対し紫外線を照射することができる。操作者は、用途や目的に応じた後期印刷層の粘着性能を容易に実現することができる。
【0322】
なお、本発明は、上記実施形態に限るものではなく、その趣旨及び技術的思想を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。以下、そのような変形例を順を追って説明する。
【0323】
上記実施形態では、紫外線の照射を契機に粘着性を生じながら経時的に硬化が進行するカチオン系のインクを用いることとしたが、本願発明の「インクジェット記録装置100内に載置できない被印刷媒体104に対して画像を設けることができる」という主要な効果を得る上では、時間経過によらず照射量のみによって硬化が進行する、いわゆるラジカル系インクを用いてもよい。すなわち、紫外線の露光により粘着性を生じながら硬化し、所定の硬化段階までは混和可能なUVインクであればよい。
【0324】
また上記実施形態では、UV照射装置121の電流値あるいは点灯個数を制御することにより照射量を変更するようにしたが、これに限らず、UV照射装置121が発生する紫外線の照射量については一定としつつ、当該紫外線を何らかの手段で遮蔽して残りの紫外線を通過させることにより、インクに到達する照射量を調整するようにしてもよい。
【0325】
また上記実施形態では、操作者が図10に示す印刷モードのうち、手作業有りのモードである印刷モード「38」〜「43」を選択した場合に、CPU301は、上記ステップS140において、上記最終インクの外表面の粘着性に関する上記時間要素情報をLCD321に表示するようにしたが、これに限らない。例えば、手作業無しのモードである印刷モード「32」〜「37」を選択した場合にも、所定のタイミングで後期印刷で形成した印刷層のインクの粘着性低下に関する上記時間要素情報をLCD321に表示するようにしてもよい。この場合、この表示を行う手順が特許請求の範囲に記載の第2報知手段として機能する。これにより、印刷結果物に備えられるインク表面の粘着性について操作者が留意すべき時間範囲や制限を、操作者が確実に把握することができる。
【0326】
また上記実施形態では特に行わなかったが、最終インクの外表面の粘着性に関する上記時間要素情報を、初期印刷、中期印刷及び後期印刷の少なくともいずれかにおいて、被印刷媒体104の所定の部分(画像に含まれる部分)に印刷してもよい。これにより、操作者は、最終インクが備える粘着性能を、当該最終インク内において視覚的に確実に認識することができる。その結果、操作者は、転写作業をいつまでにしなければならないかを認識しつつ作業することができる。
【0327】
また上記において、最終インクの外表面の粘着性に関する上記時間要素情報を、上述した所定部分とは異なる部分(画像に含まれない部分)に印刷してもよい。この場合、操作者は、最終インクが備える粘着性能を、当該最終インクの外部において視覚的に確実に認識することができると共に、時間要素情報等の操作者の作業に関わる不要な部分については転写せず、画像データに関わる必要な部分のみを転写させることができる。その結果、転写先の対象物における見栄えを向上できる効果もある。
【0328】
また上記実施形態では、非最終インクの重ね合わせで画像を表現し、最終インクに粘着性を持たせるようにしたが、このように非最終インクだけ色彩や輪郭形状によって画像を構成するほか、例えば図10に示す印刷モード「35」や「41」のように、最終インクが画像を形成し、透明な非最終インクが最終インクの画像を保護する層として構成されてもよい。そのほか、印刷結果物は、透明な最終インク及び非最終インクから構成された透明模様としての画像でもよい。また、最終インク及び非最終インクの輪郭が一致している必要はない。例えば、最終インクが非最終インクよりも狭い面積で、最終インクの全てが非最終インクに重なっており、最終インクが有色で文字などの形状をなし、非最終インクが透明であれば、保護層となる非最終インクを介して表示内容となる最終インクを見る印刷結果物とすることができる。
【0329】
また上記実施形態では、図10に示す印刷モード「32」〜「43」を選択した場合に、第1インクと第2インクに対する照射量を同じとしたが、異ならせてもよい。例えば、第2インクが透明である場合に、第2インクに対し照射する紫外線が第2インクを通過して、第1インクに達することが考えられる。この場合に、第1インクに対する照射量は第2インクを通過して到達する紫外線の照射量を見越して、1回の紫外線照射で完全硬化させる照射量よりも少なくすることで、余計な電力の消費を抑制してもよい。このように、何らかの理由で、最適な照射量にするため、第1インク及び第2インクが完全硬化する範囲で、一次照射量と二次照射量とを異ならせてもよい。
【0330】
また上記実施形態では、インクジェット記録装置100が紫外線の照射量を設定する機能を有する場合について説明したが、当該機能をインクジェット記録装置100ではなく、インクジェット記録装置100の画像データを作成するPC320やその他の外部装置に設け、時点等から決定した照射量情報を、例えば画像データの一部として外部より入力する構成としてもよい。
【0331】
また上記実施形態では、印刷ヘッド101等の印刷機構及び紫外線発生源としてのUV照射装置121を有するインクジェット記録装置100が紫外線の照射量を設定する機能を有する場合について説明したが、例えば印刷機構を有さずに紫外線発生源を有する紫外線照射装置が照射量を設定する機能を有する構成としてもよい。あるいは、例えば紫外線発生源を有さずに印刷機構を有する記録装置が照射量を設定する機能を有する構成としてもよい。
【0332】
また上記実施形態では、予め決められた段階的な複数の段階照射量を、UV照射装置121のUV−LED121aの点灯個数を増減させることで実現したが、これに限らず、例えばUV照射装置121のUV−LED121aに供給する電流値を予め段階的に設定しておいてもよい。また、このようなUV照射装置121に対応して予め定まった点灯個数や電流値ではなく、操作者が入力した期間又は時点に基づき演算した目標照射量について、単に、当該照射量の値の小数点以下を四捨五入することにより、段階的な複数の段階照射量を実現するようにしてもよい。
【0333】
また上記実施形態では、予め決められた段階的な複数の照射量群の例として1種類の照射量群(UV−LED121aの点灯個数に対応した照射量群)のみを説明したが、照射量群を複数種類設けてもよい。照射量群が複数種類ある場合には、照射装置を備える記録装置若しくは照射装置自体の種別を手動若しくは自動で特定し、それに応じた照射量群を特定し、その特定した照射量群のいずれかの段階照射量を選択するように構成してもよい。
【0334】
また上記実施形態では、UV照射装置121のUV−LED121aの点灯個数を増減させるようにしたが、この際、点灯対象であるUV−LED121a以外の消灯対象であるUV−LED121aについて、完全に消灯しなくてもよい。例えば、完全に消灯せずに極めてわずかに照射させておくことで、ON/OFFを繰り返す場合に比べて、LEDの寿命を長くすることができる。
【0335】
また上記実施形態では、ステップS800の電流増減モード処理において、設定した電流値による照射量から逆算した時点を報知しなかったが、点灯個数増減モード処理におけるステップS986のように、当該時点をLCD321に表示するようにしてもよい。
【0336】
また上記実施形態では、「電流増減モード」において、電流値を増減させて照射量を調整するようにしたが、電流値の増減だけでなく、例えばUV照射装置121の電源として交流電源を用いる場合には、周波数や波形を変更することで照射量を増減させてもよい。
【0337】
また以上で述べた「完全硬化」については、時間的な要因についてインクの硬化状態や粘着性との相対関係を考慮して、インクに対する紫外線の照射量を決定しているが、その他の要因を時間的な要因と共に考慮してもよい。記録物の周辺温度(インクジェット記録装置100のヒータ129、補助ヒータ132、UV−LED121a、各種モータ108,111などが発する熱も含む)も、インクの硬化を進行させる要因として考慮してもよい。
【0338】
被印刷媒体104の種類や印刷層の構成、インクの色・量や紫外線照射量等に関し、RAM303が所定の記憶エリアに記憶するデータテーブルは、インクジェット記録装置100へネットワークや記憶媒体を介して外部から供給されても、インクジェット記録装置100において操作者によって入力されてもよい。紫外線照射量については、インクの組成や使用用途に関連して、インクの硬化度(粘着度)と温度や時間経過の少なくとも一方との相関に応じて適宜決められる。紫外線照射量は、上記相関に応じ、温度や時間経過の少なくとも一方に応じて自動的に求められるように、インクジェット記録装置100のプログラムを構成してもよい。インクへの紫外線照射量をさまざまに変え、温度や時間経過の少なくとも一方に応じて実験を重ねた結果に対応したデータテーブルを作成し、自動的、または、手動で、紫外線照射量を決定若しくは入力できるように、インクジェット記録装置100のプログラムを構成してもよい。
【0339】
なお、以上において、図5に示す矢印は信号の流れの一例を示すものであり、信号の流れ方向を限定するものではない。また、図6乃至図8、図11乃至図20に示すフローチャートは本発明を上記フローに示す手順に限定するものではなく、発明の趣旨及び技術的思想を逸脱しない範囲内で手順の追加・削除又は順番の変更等をしてもよい。
【0340】
また、以上既に述べた以外にも、上記実施形態や各変形例による手法を適宜組み合わせて利用しても良い。
【符号の説明】
【0341】
100 インクジェット記録装置(記録装置)
101 印刷ヘッド(吐出手段)
104 被印刷媒体(被記録媒体、剥離体)
105 載置テーブル(載置手段)
108 Y軸モータ(駆動手段)
121 UV照射装置(紫外線発生源)
301 CPU(制御手段)
P 印刷層(記録物)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被記録媒体を載置可能な載置手段と、
紫外線の露光により粘着性を生じながら硬化し、所定の硬化段階までは混和可能なインクを、前記載置手段が載置した前記被記録媒体に対して吐出する吐出手段と、
前記載置手段が載置した前記被記録媒体に照射するための紫外線を発生する紫外線発生源と、
前記載置手段が載置した前記被記録媒体に対し、印刷工程を少なくとも3回の分割印刷に分けてインクを順次吐出し、各回の分割工程において吐出されたインクが互いに重なるように、前記吐出手段を制御する吐出制御手段と、
前記紫外線発生源が発生した紫外線を照射されたことによって、最後の分割印刷において重ねられた最終インクが粘着性を備え、それ以前の順番の分割印刷において重ねられた非最終インクが混和不可能になる範囲で、前記最終インクに対する照射量が前記非最終インクに対する照射量よりも少なくなるように、前記紫外線発生源が発生した紫外線の照射量を調整する照射調整手段と
を有することを特徴とする記録装置。
【請求項2】
請求項1記載の記録装置において、
前記吐出制御手段は、
先の順番の分割印刷において吐出された非最終インクに、それより後の順番の分割印刷において吐出された非最終インクを重ねるように、前記吐出手段を制御する非最終吐出制御手段を含み、
前記照射調整手段は、
前記先の順番及びそれより後の順番の分割印刷となる少なくとも2回分以上の非最終インクに対する紫外線の照射量が第1照射量となるように、前記紫外線発生源が発生した紫外線の照射量を調整する非最終照射調整手段を含み、
前記吐出制御手段は、
前記非最終照射調整手段の調整に基づき紫外線を照射された非最終インクの表面の少なくとも一部に対し、最終インクとして新たなインクを吐出するように、前記吐出手段を制御する最終吐出制御手段をさらに含み、
前記照射調整手段は、
前記最終吐出制御手段の制御に基づき吐出された最終インクに対する紫外線の照射量が、前記非最終照射調整手段による第1照射量よりも小さな第2照射量となるように、前記紫外線発生源が発生した紫外線の照射量を調整する最終照射調整手段をさらに含む
ことを特徴とする記録装置。
【請求項3】
請求項1記載の記録装置において、
前記吐出制御手段は、
非最終インクとして初回の分割印刷において第1インクを吐出するように、前記吐出手段を制御する一次吐出制御手段を含み、
前記照射調整手段は、
前記一次吐出制御手段の制御によって吐出された第1インクに対する紫外線の照射量が一次照射量になるように、前記紫外線発生源が発生した紫外線の照射量を調整する一次照射調整手段を含み、
前記吐出制御手段は、
前記一次照射調整手段の調整に基づき紫外線を照射された前記第1インクの表面の少なくとも一部に対し、少なくとも1回の分割印刷において、非最終インクとして第2インクを新たに吐出するように、前記吐出手段を制御する二次吐出制御手段をさらに含み、
前記照射調整手段は、
前記二次吐出制御手段の制御によって吐出された前記第2インクに対する紫外線の照射量であり、前記一次照射調整手段の調整による一次照射量とは異なる二次照射量になるように、前記紫外線発生源が発生した紫外線の照射量を調整する二次照射調整手段を含む
ことを特徴とする記録装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の記録装置において、
前記吐出制御手段は、
最後の分割印刷において白色のインクを吐出するように、前記吐出手段を制御する
ことを特徴とする記録装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載の記録装置において、
前記吐出制御手段は、
透明なインクを吐出するように、前記吐出手段を制御する
ことを特徴とする記録装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか1項記載の記録装置において、
前記吐出制御手段は、
先の分割印刷において既に吐出され紫外線を照射された非最終インクと互いに共通の色彩の非最終インクとしてインクを吐出するように、前記吐出手段を制御する
ことを特徴とする記録装置。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか1項記載の記録装置において、
前記吐出制御手段は、
前記最終インクを吐出するための制御時と前記非最終インクを吐出するための制御時とは異なる色彩のインクを吐出するように、前記吐出手段を制御する
ことを特徴とする記録装置。
【請求項8】
請求項1乃至請求項5のいずれか1項記載の記録装置において、
前記吐出制御手段は、
初回の分割印刷では透明なインクを吐出し、2回目以降の複数回の分割印刷においては、初回の分割印刷において吐出されたインクとは異なる色彩で、互いに共通の色彩のインクを吐出するように、前記吐出手段を制御する
ことを特徴とする記録装置。
【請求項9】
請求項1乃至請求項5のいずれか1項記載の記録装置において、
前記吐出制御手段は、全ての分割印刷において互いに共通の色彩のインクを吐出するように、前記吐出手段を制御する
ことを特徴とする記録装置。
【請求項10】
請求項1乃至請求項9のいずれか1項記載の記録装置において、
前記吐出制御手段は、
前記被記録媒体に対する平面視において互いに同一となる領域にそれぞれ前記インクを吐出するように、前記吐出手段を制御する
ことを特徴とする記録装置。
【請求項11】
請求項1乃至請求項10のいずれか1項記載の記録装置において、
前記吐出制御手段の制御に基づき前記吐出手段が吐出する、非最終インクによる分割印刷の数を設定する分割数設定手段を備える
ことを特徴とする記録装置。
【請求項12】
請求項1乃至請求項11のいずれか1項記載の記録装置において、
前記吐出制御手段の制御に基づく前記吐出手段が吐出するインクの吐出量を設定するインク量設定手段を備える
ことを特徴とする記録装置。
【請求項13】
請求項1乃至請求項10のいずれか1項記載の記録装置において、
前記吐出手段が吐出する非最終インクの分割印刷の数を設定する分割印刷数設定手段と、
前記吐出手段が吐出する最終インクの吐出量を設定するインク量設定手段と、
前記分割印刷数設定手段によって設定された数が多いほど、前記インク量設定手段によって設定するインク量が少なくなるように、前記吐出手段の吐出するインク量を調整する第1インク量調整手段と
を備えることを特徴とする記録装置。
【請求項14】
請求項1乃至請求項13のいずれか1項記載の記録装置において、
前記吐出制御手段の制御及び前記照射調整手段の調整による前記インクの吐出及び前記紫外線の照射を実行して単層を形成する単層記録モードと、前記吐出制御手段の制御及び前記照射調整手段の調整による前記インクの吐出及び前記紫外線の照射を実行して積層された複数の層を形成する積層記録モードと、のうち、いずれかのモードを設定するためのモード設定手段
を備えることを特徴とする記録装置。
【請求項15】
請求項1乃至請求項14のいずれか1項記載の記録装置において、
前記吐出手段は、
エポキシ化合物、オキセタン加工物、及びビニルエーテル加工物のうち少なくとも1つと、重合開始剤、増感剤等を含む、カチオン系の前記インクを吐出する
ことを特徴とする記録装置。
【請求項16】
請求項1乃至請求項15記載のいずれか1項記載の記録装置において、
前記照射調整手段は、
前記吐出手段が吐出した非最終インクに対する前記紫外線発生源が発生した紫外線の照射量を、それぞれ、JIS Z3284に準拠したタッキング試験機による評価においてインクの引張荷重が0となるときの照射量の最小値以上とすることを特徴とする記録装置。
【請求項17】
請求項1乃至請求項16記載のいずれか1項記載の記録装置において、
前記照射調整手段は、
前記吐出手段が吐出した最終インクに対する前記紫外線発生源が発生した紫外線の照射量を、JIS Z3284に準拠したタッキング試験機による評価においてインクの引張荷重が0となるときの照射量の最小値以上とするか、若しくは、当該最小値の0.05倍〜0.95倍の範囲となるようにする
ことを特徴とする記録装置。
【請求項18】
請求項1乃至請求項17のいずれか1項記載の記録装置において、
前記吐出手段は、
濡れ張力が36以下である剥離体からなる前記被記録媒体にインクを吐出する
ことを特徴とする記録装置。
【請求項19】
請求項18記載の記録装置において、
前記吐出手段は、
ポリプロピレンからなる前記被記録媒体にインクを吐出する
ことを特徴とする記録装置。
【請求項20】
請求項1乃至請求項19のいずれか1項記載の記録装置において、
前記載置手段を移動させる駆動手段と、
前記吐出制御手段及び前記照射調整手段の制御及び調整により実行した前記インクの吐出及び前記紫外線の照射の後、当該吐出及び照射が可能な処理領域から、前記処理領域より操作者側に位置する操作者側領域へ、前記載置手段を移動させるように、前記駆動手段を制御する第1駆動制御手段
を有することを特徴とする記録装置。
【請求項21】
請求項20記載の記録装置において、
前記第1駆動制御手段の制御により実行した前記載置手段の前記操作者側領域への移動の後、前記紫外線の照射を停止するように前記紫外線発生源を制御する、照射停止手段と、
前記照射停止手段による前記照射の停止後に、前記載置手段を前記操作者側領域から前記処理領域へ移動させるように、前記駆動手段を制御する第2駆動制御手段と、
前記第2駆動制御手段の制御により実行した前記載置手段の前記処理領域への移動の後、インクの吐出を伴うことなく前記紫外線の照射を開始するように、前記吐出手段及び前記紫外線発生源を制御する、後照射制御手段と、
を有することを特徴とする記録装置。
【請求項22】
請求項20又は請求項21記載の記録装置において、
前記吐出手段は、
経時的に外表面の粘着性の喪失が進行するインクを吐出し、
前記第1駆動制御手段の制御により実行した前記載置手段の前記操作者側領域への移動の後、少なくとも一時期に、前記インクの外表面の粘着性に関する時間要素情報を報知する、第1報知手段を有する
ことを特徴とする記録装置。
【請求項23】
請求項1乃至請求項19のいずれか1項記載の記録装置において、
前記吐出手段は、
経時的に外表面の粘着性の喪失が進行するインクを吐出し、
前記吐出制御手段の制御に基づき吐出され前記照射調整手段の調整に基づき紫外線を照射される、前記最終インクの外表面の粘着性に関する時間要素情報を報知する、第2報知手段を有する
ことを特徴とする記録装置。
【請求項24】
請求項1乃至請求項23のいずれか1項記載の記録装置において、
前記インクの外表面の所望の硬化状態に関連した時点情報又は期間情報を取得する時間情報取得手段と、
前記時間情報取得手段が取得した前記時点情報又は前記期間情報に基づき、前記吐出手段が吐出したインクに対する前記紫外線発生源が発生した紫外線の照射量を設定する設定手段と、
を有することを特徴とする記録装置。
【請求項25】
請求項1乃至請求項24のいずれか1項記載の記録装置において、
前記吐出制御手段は、
前記吐出制御手段の制御に基づき吐出し前記被記録媒体の所定部分に付着する、前記最終インクの外表面の粘着性に関する時間要素情報を、前記所定部分に印刷するように、前記吐出手段を制御する
ことを特徴とする記録装置。
【請求項26】
請求項1乃至請求項24のいずれか1項記載の記録装置において、
前記吐出制御手段は、
前記吐出制御手段の制御に基づき吐出し前記被記録媒体の所定部分に付着する、前記最終インクの外表面の粘着性に関する時間要素情報を、前記所定部分とは異なる部分に印刷するように、前記吐出手段を制御する
ことを特徴とする記録装置。
【請求項27】
被記録媒体を載置可能な載置手段と、紫外線の露光により粘着性を生じながら硬化し、所定の硬化段階までは混和可能なインクを、前記載置手段が載置した前記被記録媒体に対して吐出する吐出手段と、前記載置手段が載置した前記被記録媒体に照射するための紫外線を発生する紫外線発生源と、を有する記録装置に備えられた制御手段に対し、
前記載置手段が載置した前記被記録媒体に対し、印刷工程を少なくとも3回の分割印刷に分けてインクを順次吐出し、各回の分割工程において吐出されたインクが互いに重なるように、前記吐出手段を制御する吐出制御手順と、
前記紫外線発生源が発生した紫外線を照射されたことによって、最後の分割印刷において重ねられた最終インクが粘着性を備え、それ以前の順番の分割印刷において重ねられた非最終インクが混和不可能になる範囲で、最終インクに対する照射量が、非最終インクに対する照射量よりも少なくなるように、前記紫外線発生源が発生した紫外線の照射量を調整する照射調整手順と、
を実行させるための記録装置の制御プログラム。
【請求項28】
紫外線の露光により粘着性を生じながら硬化し、所定の硬化段階までは混和可能なインクを、被記録媒体に対し、印刷工程を少なくとも3回の分割印刷に分けてインクを順次吐出し、各回の分割工程において吐出されたインクが互いに重なる、第1ステップと、
前記第1ステップで紫外線を照射されたことによって、最後の分割印刷において重ねられた最終インクが粘着性を備え、それ以前の順番の分割印刷において重ねられた非最終インクが混和不可能になる範囲で、最終インクに対する照射量が、非最終インクに対する照射量よりも少なくなる、第2ステップと、
を有する記録方法。
【請求項29】
紫外線の露光により粘着性を生じながら硬化し、所定の硬化段階までは混和可能なインクを、被記録媒体に対し、印刷工程を少なくとも3回の分割印刷に分けてインクを順次吐出し、各回の分割工程において吐出されたインクが互いに重なる、第1ステップと、
前記第1ステップで紫外線を照射されたことによって、最後の分割印刷において重ねられた最終インクが粘着性を備え、それ以前の順番の分割印刷において重ねられた非最終インクが混和不可能になる範囲で、最終インクに対する照射量が、非最終インクに対する照射量よりも少なくなる、第2ステップと、
を実行することにより形成した、被記録媒体上の記録物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2011−212911(P2011−212911A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−81789(P2010−81789)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】