説明

記録装置および記録方法

【課題】高品位記録が可能な記録装置。
【解決手段】複数の記録ヘッドを搭載したキャリッジとキャリッジを案内支持するガイド部材とを備え、キャリッジをガイド部材に沿って往復走査させ記録媒体に記録を行う記録装置であって、複数の記録ヘッドは、キャリッジがガイド部材の第1端側にある場合はガイド部材から遠い位置にある第1記録ヘッドが近い位置にある第2記録ヘッドよりも記録媒体の搬送路側にあり、キャリッジがガイド部材の第2端側にある場合はその反対であるように第1、第2記録ヘッドが配置され、キャリッジを第1端側から第2端側へ走査して記録する際のキャリッジの走査開始位置から記録開始位置までの距離を第2端側から第1端側へ走査して記録する際の該距離よりも大きく設定する設定手段と、前記設定手段によりキャリッジを制御して記録を行う記録制御手段と、を備えた記録装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は記録装置および記録方法に関し、詳しくは、記録ヘッドを搭載したキャリッジの加速時に発生する振動に起因した記録品位の低下を低減する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット方式の記録ヘッドなど記録ヘッドを搭載して往復移動を行うキャリッジについて、加速する際にキャリッジに振動が発生することが知られている。この振動はキャリッジの移動を案内支持するガイド部材を用いる構成において生じることが多い。このような振動が生じるキャリッジの加速領域で記録を行う構成では、搭載される記録ヘッドも振動し結果として記録されるドットの位置がばらつき記録品位が低下する場合がある。
【0003】
これに対し、特許文献1には、キャリッジの停止から記録を開始するまでの助走距離を、高品位記録を行う場合は通常記録よりも大きく取る例が開示されている。これにより、キャリッジないし記録ヘッドの振動が十分に減衰した状態で記録を行うことができ、上記振動による記録品位の低下を低減することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−179954号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、同じ色の記録を行うための記録ヘッドあるいはノズル列を記録媒体の搬送方向に複数個配置することで高速記録を実現する記録装置が提供されており、このような装置では、特許文献1に記載の構成をそのまま適用することはできない。すなわち、キャリッジに搭載された複数の記録ヘッド間あるいは複数のノズル列間で、上述した加速に伴う振動の影響が異なる。そのため、キャリッジのガイド部材からの距離が遠い位置にある記録ヘッドないしノズル列ほど振動の影響をより大きく受け、記録ドット位置のばらつきがより大きくなるという課題がある。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、キャリッジのガイド部材からの距離が異なる複数の記録ヘッドについて加速時の振動に起因した記録品位の低下を低減することが可能な記録装置および記録方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明の記録装置は、複数の記録ヘッドを搭載したキャリッジと、キャリッジの移動を案内支持するガイド部材とを備え、キャリッジをガイド部材に沿って往復走査させ、搬送される記録媒体に記録を行う記録装置であって、複数の記録ヘッドは、キャリッジがガイド部材の一方の端である第1端側にある場合は、ガイド部材からの距離が相対的に遠い位置にある第1の記録ヘッドが、ガイド部材からの距離が相対的に近い位置にある第2の記録ヘッドよりも記録媒体の搬送路側にあり、キャリッジがガイド部材の別の一方の端である第2端側にある場合は、前記第2の記録ヘッドが前記第1の記録ヘッドよりも記録媒体の搬送路側にあるよう配置され、キャリッジを第1端側から第2端側へ向かって走査して記録する際の、キャリッジの走査開始位置から記録開始位置までの距離を、第2端側から第1端側へ向かって走査して記録する際の該距離よりも大きく設定する設定手段と、前記設定手段によりキャリッジを制御して記録ヘッドによる記録を行う記録制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、複数の記録ヘッドを搭載したインクジェット記録装置であっても、キャリッジの加速に伴う振動の影響による記録品位低下を低減させる効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明を適用可能なインクジェット記録装置の外観斜視図である。
【図2】本発明におけるキャリッジ内の記録ヘッドの配置構造を示す模式図である。
【図3】本発明における記録装置の制御構成を示すブロック図である。
【図4】本発明における記録制御を示すフローチャートである。
【図5】本発明の実施例における記録媒体とキャリッジ走査開始位置を示す図である。
【図6】キャリッジの走査距離と振動振幅の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0011】
図1は本発明の代表的な実施形態に係るインク液滴を吐出する記録ヘッドを搭載したインクジェット記録装置の構成を示す外観斜視図である。図1に示されるように、記録媒体1に対向する位置に記録ヘッド2を複数(以下、本実施形態では、2つとして説明する。)搭載するキャリッジ3は、ガイド部材であるガイド軸4によって回動可能および摺動自在に案内支持される。キャリッジ3の移動範囲の片端にプーリ付きキャリッジモータ5が配置され、もう片端にアイドルプーリ6が配置され、これらにタイミングベルト7が掛けまわされ、キャリッジ3とタイミングベルト7とが連結される。ガイド軸4を中心としてキャリッジ3が回転するのを防ぐために、ガイド軸4と平行に延びるサポート部材8が設置され、キャリッジ3はサポート部材8によって摺動自在に支持される。さらに、記録ヘッドのメンテナンスを行うためのヘッドメンテナンス機構9が、インクジェット記録装置のそこでは記録を行わない非記録領域に設けられている。ヘッドメンテナンス機構9には、例えば、非記録時に記録ヘッド2のノズルの開口部を封止するためのキャッピング装置(不図示)やノズル面に付着した異物や余分なインクを掻き取るためのワイパー(不図示)などがある。このような構成により、キャリッジ3は図中矢印Aの方向(主走査方向)に、ガイド軸4の軸方向における一方の端(第1端)と他方の端(第2端)との間をガイド軸4に沿って往復移動する。また、記録媒体1は、搬送モータ(不図示)によってキャリッジ3の移動方向(主走査方向)と交差する方向(図中矢印Bの方向:副走査方向)に搬送される。
【0012】
図2は、キャリッジ3に搭載された2つの記録ヘッド2aおよび2bの配置構造を示す模式図である。記録ヘッド2aおよび2bの各々にはCMYK(シアン、マゼンタ、イエロー、黒)の色毎のノズル列10が形成されている。ノズル列10の各々は複数のノズル11を有する。隣接する記録ヘッド2aおよび2bの配置位置の関係に着目して、記録ヘッド2aおよび2bは、図2に示されるように、それぞれのノズル列の一部が走査する領域が重なるように配置される。これにより、記録ヘッド2aおよび2bそれぞれのノズル列10の長さが短くても、ほぼそれぞれのノズル列の長さを合せた副走査方向の長さの記録ヘッドとして記録を行うことができ、高速記録が可能となる。なお、この際、上記走査領域が重なるそれぞれノズルについては、その走査領域の記録データが例えば1/2ずつに割り振られてそれぞれのノズルからのインク吐出が行われる。
【0013】
なお、図2に示す例は、記録ヘッド2aおよび2bは、キャリッジに対して互いに別個に装着されるものとしたが、この構成に限られないことはもちろんである。記録ヘッド2aおよび2bのノズル列を一体に構成し、1つの記録ヘッドにおける複数のノズル列の形態とすることもできる。
【0014】
図3は、図1に示すインクジェット記録装置の制御構成を示すブロック図である。図3に示すように、図1に示したインクジェット記録装置には装置全体を制御する制御部12が備えられ、制御部12は、ホストコンピュータ(以下、ホストという)13とケーブル14を介して接続され、記録ヘッド2やキャリッジモータ5の動作を制御する。なお、ケーブル14の代わりに赤外線や無線電波をインタフェース(例えば、IrDAやBluetooth(登録商標))とする構成でもよい。ホスト13からはケーブル14を介して記録データや記録にかかわるモードの種類、各種コマンド等が制御部12に対して送信されてくる。制御部12には、画像処理部15が設けられる。画像処理部15には、インクジェット記録装置全体を制御するための各種処理を実行するCPU15a、各種処理に対応した制御プログラムを格納するROM15b、プリントバッファや制御プログラム実行のための作業領域として用いられるRAM15cがある。画像処理部15は、さらに、ラスタカラム変換を始めとする各種画像処理を実行するASIC15d、ホスト13との間でデータを送受信するためのインタフェース(I/F)15eを備えている。
【0015】
また、キャリッジモータ5および搬送モータ16を制御するモータドライバ17、記録ヘッド2を駆動制御するヘッドドライバ18が設けられている。なお、キャリッジモータ5は、キャリッジ3を主走査方向に移動させるための駆動力を発生するモータであり、搬送モータ16は、フィードローラ(不図示)および排紙ローラ(不図示)を駆動して記録媒体を搬送させるための駆動力を発生するモータである。エンコーダ19は、キャリッジ3の主走査方向の位置を検出するために用いられ、その出力信号はエンコーダコントローラ20を経て、画像処理部15のCPU15aにフィードバックされる。このときエンコーダコントローラ20はエンコーダ19からの出力信号を処理して、キャリッジ位置信号とキャリッジ速度信号とを生成する。したがって、CPU15aには、キャリッジ位置信号やキャリッジ速度信号が転送される。
【0016】
次に以上のような構成のインクジェット記録装置を用いた記録制御のいくつかの実施形態について説明する。
【0017】
(第1の実施形態)
図4は、キャリッジ駆動制御を中心にした記録制御を示すフローチャートである。
【0018】
図5は記録開始時のキャリッジ3の走査開始位置と記録媒体1との関係を表す模式図である。図5(a)はキャリッジ3を図に対し右から左の方向(以下、往方向という)へ走査させて記録する際の走査開始位置、図5(b)はキャリッジ3を図に対し左から右の方向(以下、復方向という)へ走査させて記録する際の走査開始位置を示す。また、キャリッジ3に搭載される2つの記録ヘッド2aおよび2bは、図5のような位置関係で配置されたものとして以下説明する。すなわち、まず、ガイド軸4から記録ヘッド2b(第1の記録ヘッド)までの距離Dbは、記録ヘッド2a(第2の記録ヘッド)までの距離Daよりも長い(Da<Db)。さらにキャリッジが図5(a)のように右端側にある場合は、主走査方向Aにおいて記録ヘッド2aよりも記録ヘッド2bの方が記録媒体1の搬送路側に近くなるように2つの記録ヘッド2aおよび2bが配備されている。この場合、図5(b)に示す左端側では、主走査方向Aにおいて記録ヘッド2bよりも記録ヘッド2aの方が記録媒体1の搬送路側に近くなる。
【0019】
本実施形態でのキャリッジ3の動作を、図4に示すフローチャートに従って説明する。まず、ステップS1でホスト13からの記録データの入力があると、処理はステップS2に進み、記録方法を選択する。ここでキャリッジ3の往復走査の両方で記録を行う双方向記録を行うか、往走査のみもしくは復走査のみで記録を行う片方向記録を行うかを記録データに基づいてモード設定する(詳細は後述)。本実施形態では双方向記録を行うものとする。次にステップS3で、制御部12は入力出された記録データをRAM15c内のプリントバッファに展開する。そしてステップS4にてキャリッジ3の各駆動パラメータを設定する。
【0020】
ここで本実施形態におけるキャリッジ3の各駆動パラメータのうち、キャリッジの走査開始位置から記録媒体への記録開始位置までの主走査方向における距離の設定について、図5および図6を用いて説明する。キャリッジ3は、走査開始位置において主走査方向Aへの力が加えられて加速されて走行する。図6はキャリッジ3の走査開始からの走行距離X(横軸)に対する、キャリッジの加速時に生じる振動の振幅ΔD(縦軸)を、記録ヘッド2a、2b毎に表した波形グラフである。図6において、実線が記録ヘッド2aについての波形、点線が記録ヘッド2bについての波形を示す。この振動は加速直後に大きな振幅を示したあと、その後減衰していくような挙動をとる。また図6中に斜線で示した領域との境界21および22は画像品質等の記録品位に影響を及ぼす振動振幅の境界を示し、これより振動の振幅が大きくなると画像劣化として視認される。この振動振幅は、図の波形が示すように、ガイド軸4からの距離が遠い位置にある記録ヘッド2bの方が記録ヘッド2aよりも大きい。キャリッジ3が図5(a)のように往方向記録をする場合は、記録ヘッド2aよりも記録ヘッド2bの方が先に記録開始のタイミングとなる。また、図5(b)のように復方向記録をする場合は、記録ヘッド2bより記録ヘッド2aの方が先に記録開始のタイミングとなる。
【0021】
本実施形態では、走査の加速度が所定の加速度のとき、往方向記録時の記録ヘッド2bの助走距離Xbを、復方向記録時の記録ヘッド2aの助走距離Xaよりも大きく設定する。すなわち、図6に示すように、記録ヘッド2aおよび記録ヘッド2bのそれぞれについて、それぞれ振動振幅が境界21および22より小さくなる距離Xa、Xbに助走距離を設定する。そして、走査開始位置から少なくともそれぞれの助走距離を移動した位置を記録開始位置に設定する。
【0022】
このようにステップS4にて設定された駆動パラメータに基づいて、ステップS5にてキャリッジ3を駆動させる。
【0023】
従来では複数の記録ヘッドにおける双方向記録を行うにあたり、往方向および復方向のキャリッジの助走距離ないし記録開始位置は一意的に決まるため、特にガイド軸から離れた記録ヘッドに対して振動減衰が充分でないまま記録を開始する可能性があった。あるいは、往復両方向に対して助走距離を大きく取ることによって、キャリッジの移動距離が大きくなり、結果として主走査方向における装置のサイズが増す可能性があった。一方、この実施形態に従えば、ガイド軸4からの距離がより遠い記録ヘッド2bの助走距離Xbを、ガイド軸4に近い記録ヘッド2aの助走距離Xaよりも大きくなるように設定する。この結果、ガイド軸から離れた記録ヘッドについて振動が充分に減衰した状態で記録に用いることが可能となり、結果として高品位な記録を達成できる。さらには、図5に示すところの右端側(第1端側)のみ助走距離を大きくとればよく、左端側(第2端側)の助走距離を同様に大きくする必要はないため、不必要に装置を大型化することを回避できる。
【0024】
なお、本実施形態では、上述したように、左端側における記録開始位置は記録ヘッド2aの助走距離に従って設定されるが、この記録開始位置で記録ヘッド2bの助走距離をも満たさなければならないことはもちろんである。すなわち、キャリッジにおける記録ヘッド2aと記録ヘッド2bとの主走査方向の距離は、この距離に記録ヘッド2aの助走距離を加えたときに、記録ヘッド2bの助走距離を満たすものである。
【0025】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態を説明する。本実施形態は、第1の実施形態に、ヘッドメンテナンス機構9の配備構成を加えたものであり、その他のインクジェット記録装置構成、制御システム構成、および図4のフローチャートは第1の実施形態と同様なので説明を省略する。
【0026】
ヘッドメンテナンス機構9を記録装置に配備する場合は、主走査方向に関して記録媒体1が戴置される領域外に配備する必要がある。このため通常この配備スペース分に対してインクジェット記録装置を主走査方向に大きくする必要がある。第1の実施形態では上述のように図5においてキャリッジ3の助走距離を右端側(第1端側)で大きく取る。そのため、ヘッドメンテナンス機構9を図5(b)のように右端側(第1端側)へ配備することで、インクジェット記録装置の不必要な大型化を回避することが可能となる。
【0027】
以上のように、この実施形態に従えば、ヘッドメンテナンス機構を搭載したインクジェット記録装置においても不必要にインクジェット記録装置の大型化を招くことなく、ガイド軸から相対的に遠く離れたヘッドに対する振動低減効果が得られる。
【0028】
(第3の実施形態)
本発明の第3の実施形態を説明する。本実施形態例のインクジェット記録装置構成、制御システムの概略構成は第1の実施形態と同様なので説明を省略する。また本実施形態においても図4のフローチャートに示したような処理が実行される。以下の説明では第1の実施形態で説明したものと同じ処理の説明は省略する。
【0029】
図4のステップS1〜S3の処理後、ステップS4にて、キャリッジ3の駆動パラメータのうちキャリッジの加速度を設定する方法について、図5および図6を用いて説明する。ここでキャリッジの加速時に生じる振動は、キャリッジの加速度が小さくなるほど、その振幅が小さくなることから、図6中に点線で示す記録ヘッド2bの波形も、加速度を小さくすることで記録ヘッド2aのような実線の波形に近づいていく。すなわち、キャリッジ3が図5(a)のように往方向記録する場合は、図5(b)のように復方向記録する場合よりもキャリッジの加速度を小さく設定する。これにより、第1の実施形態のようにガイド軸から相対的に遠く離れたヘッドに対しても振動が充分に減衰した状態で記録可能となる。このようにステップS4にて設定された駆動パラメータに基づいて、ステップS5にてキャリッジ3を駆動する。
【0030】
以上の実施形態の方法によると、往方向での加速度を小さくすることにより、ガイド軸から相対的に遠く離れたヘッドに対する振動低減効果が得られる。第1の実施形態のように助走距離を大きくとる必要がないことから、例えば装置の大きさに制約があり、加速度を小さくすることによる記録速度の低下を気にしない場合は、本実施形態の適用が効果的である。
【0031】
(第4の実施形態)
本発明の第4の実施形態を説明する。本インクジェット記録装置の装置構成、制御システムの概略構成は第1の実施形態と同様なので説明を省略する。また本実施形態においても図4のフローチャートに示したような処理が実行される。以下の説明では第1の実施形態で説明したものと同じ処理の説明は省略する。
【0032】
本実施形態では、図4のステップS1の処理後、ステップS2において、片方向記録モードが選択された場合について説明する。この片方向記録は、双方向記録に比して記録速度は低下するが、より高画質を得たい場合に選択される。この場合、図5において復方向よりも往方向の方が、第1の実施形態あるいは第3の実施形態で述べたように、助走距離の増加あるいは加速度の低下により記録速度が遅くなる。従って片方向記録は復方向を選択する。ステップS3以降は第1の実施形態から第3の実施形態と同様の処理を行う。
【0033】
以上4つの実施形態の説明においては、記録ヘッドの数を2個としたが、これに限定されるものではなく、複数であれば何個でも構わない。例えば、図2に示されるような記録ヘッドまたはノズル列の配置構造が繰り返されて、記録ヘッドまたはノズル列が千鳥状に配置されていてもよい。このとき、図2の場合と同様に、隣接する記録ヘッドは、それぞれのノズル列の一部が走査する領域が重なるように配置されることができる。これにより、記録ヘッドのそれぞれのノズル列の長さが短くても、ほぼそれぞれのノズル列の長さを合せた副走査方向の長さの記録ヘッドとして記録を行うことができ、高速記録が可能となる。
【0034】
また、記録ヘッドのノズル数やインク色の種類、色配置についても上記説明に限定されるものではない。例えば、ガイド部材からの相対的な距離が異なる第1の記録ヘッドまたはノズル列と第2の記録ヘッドまたはノズル列とで、用いるインク色は異なるものであってもよい。
【0035】
さらに、第1の実施形態から第3の実施形態を組合せて適用させることも可能である。すなわち記録装置の仕様に合わせて助走距離や加速度の組合せを設定するなどしてもよい。
【0036】
上述の実施形態ではインクジェット記録装置を例示したが、本発明はこれに限定されず、複数の記録ヘッドを搭載したキャリッジが記録時に加速に伴う振動の影響を受け得る構成を有するその他の記録装置にも、本発明を適用可能である。
【符号の説明】
【0037】
1 記録媒体
2、2a、2b 記録ヘッド
3 キャリッジ
4 ガイド軸
9 ヘッドメンテナンス機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の記録ヘッドを搭載したキャリッジと、キャリッジの移動を案内支持するガイド部材とを備え、キャリッジをガイド部材に沿って往復走査させ、搬送される記録媒体に記録を行う記録装置であって、
複数の記録ヘッドは、キャリッジがガイド部材の一方の端である第1端側にある場合は、ガイド部材からの距離が相対的に遠い位置にある第1の記録ヘッドが、ガイド部材からの距離が相対的に近い位置にある第2の記録ヘッドよりも記録媒体の搬送路側にあり、キャリッジがガイド部材の別の一方の端である第2端側にある場合は、前記第2の記録ヘッドが前記第1の記録ヘッドよりも記録媒体の搬送路側にあるよう配置され、
キャリッジを第1端側から第2端側へ向かって走査して記録する際の、キャリッジの走査開始位置から記録開始位置までの距離を、第2端側から第1端側へ向かって走査して記録する際の該距離よりも大きく設定する設定手段と、
前記設定手段によりキャリッジを制御して記録ヘッドによる記録を行う記録制御手段と、
を備えたことを特徴とする記録装置。
【請求項2】
記録ヘッドのメンテナンスを行う為のヘッドメンテナンス機構が、記録装置の記録媒体が戴置される領域外であってかつ前記第1端側に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
複数の記録ヘッドを搭載したキャリッジと、キャリッジの移動を案内支持するガイド部材とを備え、キャリッジをガイド部材に沿って往復走査させ、搬送される記録媒体に記録を行う記録装置であって、
複数の記録ヘッドは、キャリッジがガイド部材の一方の端である第1端側にある場合は、ガイド部材からの距離が相対的に遠い位置にある第1の記録ヘッドが、ガイド部材からの距離が相対的に近い位置にある第2の記録ヘッドよりも記録媒体の搬送路側にあり、キャリッジがガイド部材の別の一方の端である第2端側にある場合は、前記第2の記録ヘッドが前記第1の記録ヘッドよりも記録媒体の搬送路側にあるように配置され、
キャリッジを第1端側から第2端側へ向かって走査して記録する際のキャリッジの加速度を、キャリッジを第2端側から第1端側へ向かって走査して記録する際のキャリッジの加速度よりも小さく設定する設定手段と、
該設定手段によりキャリッジを制御して記録ヘッドによる記録を行う記録制御手段と、
を備えたことを特徴とする記録装置。
【請求項4】
前記第2端側から第1端側へ向かって走査する方向で記録を行い、前記第1端側から第2端側へ向かって走査する方向で記録を行わない、片方向記録モードを備えたことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の記録装置。
【請求項5】
複数の記録ヘッドを搭載したキャリッジと、キャリッジの移動を案内支持するガイド軸とを備え、キャリッジをガイド部材に沿って往復走査させ、搬送される記録媒体に記録を行う記録装置による記録方法であって、
複数のヘッドを、キャリッジがガイド部材の一方の端である第1端側にある場合は、ガイド部材からの距離が相対的に遠い位置にある第1の記録ヘッドがガイド部材からの距離が相対的に近い位置にある第2の記録ヘッドよりも記録媒体の搬送路側にあり、キャリッジがガイド部材の別の一方の端である第2端にある場合は、前記第2の記録ヘッドが前記第1の記録ヘッドよりも記録媒体の搬送路側にあるように配置し、
キャリッジを第1端側から第2端側へ向かって走査して記録する際のキャリッジの走査開始位置から記録開始位置までの距離を、第2端側から第1端側へ向かって走査して記録する際の該距離よりも大きく設定し、
前記設定によりキャリッジを制御して記録ヘッドによる記録を行うことを特徴とする記録方法。
【請求項6】
複数の記録ヘッドを搭載したキャリッジと、キャリッジの移動を案内支持するガイド部材とを備え、キャリッジをガイド部材に沿って往復走査させ、搬送される記録媒体に記録を行う記録装置による記録方法であって、
複数の記録ヘッドを、キャリッジがガイド部材の一方の端である第1端側にある場合は、ガイド部材からの距離が相対的に遠い位置にある第1の記録ヘッドがガイド部材からの距離が相対的に近い位置にある第2の記録ヘッドよりも記録媒体の搬送路側にあり、キャリッジがガイド部材の別の一方の端である第2端側にある場合は、前記第2の記録ヘッドが前記第1の記録ヘッドよりも記録媒体の搬送路側にあるように配置し、
キャリッジを第1端側から第2端側へ向かって走査して記録する際のキャリッジの加速度を、キャリッジを第2端側から第1端側へ向かって走査して記録する際のキャリッジの加速度よりも小さく設定し、
前記設定によりキャリッジを制御して記録ヘッドによる記録を行うことを特徴とする記録方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−45859(P2012−45859A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−191385(P2010−191385)
【出願日】平成22年8月27日(2010.8.27)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】