説明

記録装置及び記録方法

【課題】ユーザが所望するシーンを撮り逃すことを防ぐことができ、且つユーザの使い勝手がよい記録装置を提供できるようにする。
【解決手段】動画像信号を含む動画ファイルを記録媒体に記録する記録手段と、前記記録媒体の空き容量に基づいて閾値を設定する設定手段と、記録指示に応じて前記記録媒体の空き領域に対する動画ファイルの記録を開始し、前記動画ファイルの記録中に前記動画ファイルのサイズが前記閾値に達すると前記動画ファイルを分割し、前記動画ファイルの記録中に前記記録媒体の空き容量が所定値以下となると前記記録指示の後に記録された動画ファイルのうち最も古い動画ファイルを削除するように、前記記録手段を制御する制御手段とを設け、記録停止時に、停止直近のデータを記録媒体上に保持できるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は記録装置及び記録方法に関し、特に、動画像を記録するために用いて好適な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ハードディスクやメモリカード、DVDなどのランダムアクセス可能な記録媒体に対し、動画像信号などの情報信号を記録し、再生する装置が知られている。また、例えば、家庭用のHDD/DVDレコーダでは、HDDの一部の領域に対し、直前の所定期間(数十分から数時間)分のテレビ番組のデータを保存しておく。そして、ユーザが番組を見逃した場合にも、保存しておいたテレビ番組のデータを後で見ることができるようにする機能を備えたハードディスクレコーダが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
前述のように、HDD/DVDレコーダでは、HDDの一部の領域に対し、直前に受信したテレビ番組のデータを繰り返し記録している。一方、ビデオカメラでは、家庭用のHDD/DVDレコーダとは異なり、内蔵HDDを持たないものがある。このようなビデオカメラでは、撮影開始前の撮り逃したシーンを記録することができないという問題点があった。
【0004】
そのため、ビデオカメラでは、内蔵するDRAM等のメモリに対し、撮影開始の直前の動画像を繰り返し記憶しておくことも考えられている。しかしながら、メモリに記録できるのはせいぜい数秒間程度であり、数分〜数十分もの長い時間記憶しておくことはできない。そこで、撮影した動画像を記録するための交換可能な記録媒体の一部の記録領域に対して、撮影開始前の動画像を繰り返し記録しておき、撮り逃しを防ぐことも考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−348514号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述のように、ランダムアクセス可能な記録媒体に動画像を記録する場合、記録した動画像をFAT(File Allocation Table)ファイルシステム等のファイルシステムに従ってファイルとして管理することが一般的である。このようにファイルとして管理した場合には、記録媒体から動画ファイルを削除する際にも、ファイルを単位として削除することになる。
【0007】
また、FAT等、汎用のファイルシステムでは、一つのファイルのサイズの上限が決められている。そのため、撮影中に、現在記録中の動画ファイルのサイズがこの条件サイズに達すると、記録中のファイルをクローズし、新たにファイルをオープンして記録を継続することが一般的である。
【0008】
このため、記録媒体の一部の記録領域に対して撮影開始前の動画像を繰り返し記録する場合にも、同様に、記録中にファイルのサイズが上限に達した場合にファイルを分割して記録することになる。具体的には、繰り返し記録用の一部の記録領域に対して順次動画像を記録し、空き領域が無くなると、最初に記録された動画像を削除し、同じ領域に新たな動画像を記録することになる。
【0009】
このとき、動画像はファイルを単位として削除されるが、ファイルの上限サイズは一般的に数ギガバイトと大きい。そのため、繰り返し記録のときに、一度に数分〜数十分の動画が消去されることになり、使い勝手が悪いものであった。
本発明は前述の問題点に鑑み、ユーザが所望するシーンを撮り逃すことを防ぐことができ、且つユーザの使い勝手がよい記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の記録装置は、動画像信号を含む動画ファイルを記録媒体に記録する記録手段と、前記記録媒体の空き容量に基づいて閾値を設定する設定手段と、記録指示に応じて前記記録媒体の空き領域に対する動画ファイルの記録を開始し、前記動画ファイルの記録中に前記動画ファイルのサイズが前記閾値に達すると前記動画ファイルを分割し、前記動画ファイルの記録中に前記記録媒体の空き容量が所定値以下となると前記記録指示の後に記録された動画ファイルのうち最も古い動画ファイルを削除するように、前記記録手段を制御する制御手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ユーザが所望するシーンを撮り逃すことを防ぐことができ、且つユーザの使い勝手がよい記録装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1の実施形態を示し、システム構成を説明する図である。
【図2A】ループ記録時の処理を説明するフローチャートである。
【図2B】書き込み処理を説明するフローチャートである。
【図3】第1の実施形態を示し、出力ファイルリストを説明する図である。
【図4】第1の実施形態を示し、図2のS203の詳細を説明する図である。
【図5】第1の実施形態を示し、記録媒体上のデータの様子を説明する図である。
【図6】第2の実施形態を示し、記録動作を説明するフローチャートである。
【図7】第2の実施形態を示し、図6のS603の詳細を説明する図である。
【図8】第2の実施形態を示し、記録媒体上のデータの様子を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。
図1は、本実施形態におけるビデオカメラ100の構成例を示すブロック図である。
図1において、撮像部101は被写体の画像を撮影し、動画像信号を出力する。表示部102は、撮影時においては撮像部101から出力された動画像信号の画像や、各種の情報を表示する。また、表示部102は、再生時においては、再生された動画像や各種の情報を表示する。表示部102は、制御部106からの指示により、メニュー画面など、必要な情報を表示する。
【0014】
信号処理部103は、撮影時には撮像部101から出力された動画像信号に対してMPEG方式に従う圧縮処理など必要な処理を施して記録再生部104に出力する。また、信号処理部103は、再生時には再生された動画像信号に対して伸張処理など必要な処理を施して表示部102に出力する。また、信号処理部103は、圧縮後の動画像信号のデータレートが目標のデータレートとなるように、動画像信号を圧縮する。
【0015】
記録再生部104は、記録媒体105に対し、動画像信号やその他の情報を記録再生する。記録媒体105は、メモリカードやHDDなどのランダムアクセス媒体である。本実施形態においては、記録媒体105は不図示の装着、排出機構によって交換可能である。また、本実施形態では、記録媒体105に記録された動画像をFAT等、所定のファイルシステムに従って管理する。
【0016】
制御部106は、操作部107からの指示によりビデオカメラ100の各部を制御する。また、制御部106は、所定のファイルシステムに従い、記録媒体105に記録した動画像ファイルを管理する。
操作部107は、電源スイッチや撮影開始、停止を指示するトリガスイッチ、再生モードへの切り替えスイッチ、メニュー表示のスイッチ等、各種のスイッチを備える。ユーザは操作部107を操作することにより、撮影、再生等を指示する。
メモリ108は、各種の情報を記憶するRAM等を含み、入力された映像情報を一時蓄積する蓄積媒体として用いられる。これら各ブロックは、バス109を介してデータのやりとりを行う。
【0017】
まず、通常の撮影時の処理について説明する。
操作部107より電源が投入されると、制御部106は各部を制御し、撮像部101で撮影された動画像を表示部102に表示することで撮影待機モードとなる。この状態で操作部107により撮影開始の指示があると、制御部106は信号処理部103、記録再生部104を制御し、撮像部101から出力された動画像信号を圧縮して記録媒体105に記録する。
【0018】
本実施形態では、記録媒体105に対して、動画像信号をファイルとして記録する。そして、操作部107より撮影停止の指示があると、制御部106は各部を制御し、記録媒体105に対する動画像の記録を停止する。本実施形態では、通常、記録開始の指示から記録停止の指示までの間に記録媒体105に記録された一連のシーンの動画像信号を一つのファイルとして管理する。
【0019】
一方、本実施形態では、動画撮影中に、現在記録中の動画ファイルのサイズが、ファイルシステムにより既定された上限のサイズ、例えば4ギガバイト(GB)に達すると、現在記録中のファイルをクローズする。そして、新たにファイルをオープンし、この新たな動画ファイルに対して動画像信号を格納し、撮影を継続する。そして、この様に、一連のシーンの動画像が複数のファイルに分割されて記録された場合には、一つのシーンを構成する複数の動画ファイルをまとめて管理するための管理情報を生成し、記録している。
【0020】
次に、再生時の処理を説明する。
操作部107により再生モードへの切り替え指示があると、制御部106は各部を制御し、記録媒体105に記録された各シーンの代表画像(サムネイル)の一覧画面を作成し、表示部102に表示する。この際、前記の様に、一つのシーンが複数の動画ファイルに分割されていた場合であっても、各動画ファイルの代表画像ではなく、一つのシーンについて一つの代表画像を表示する。ユーザは、表示部102に一覧画面に表示された代表画像のうち、所望のシーンの代表画像を選択し、再生開始を指示する。
【0021】
制御部106は、ユーザにより指示された代表画像に対応したシーンの動画ファイルを再生するように、記録再生部104を制御する。信号処理部103は、再生された動画ファイルに含まれる動画像信号を伸張し、表示部102に出力する。表示部102は、代表画像の一覧画面に代えて、再生された動画像を表示する。そして、再生停止の指示があると、再度、代表画像の一覧画面を表示部102に表示する。また、ユーザにより選択されたシーンが複数の動画ファイルに分割されて記録されていた場合には、これら複数の動画ファイルを先頭から順次再生する。
【0022】
次にループ記録機能について説明する。
ループ機能とは、記録媒体105の空き領域に対して繰り返し動画像信号を記録する機能である。ユーザが操作部107を操作して、ループ記録開始を指示すると、制御部106は各部を制御し、信号処理部103による動画像信号の圧縮動作を開始する。そして、記録再生部104を制御し、記録媒体105に対し、圧縮された動画像信号を記録媒体105の空き領域に対して順次書き込む。
【0023】
このとき、制御部106は記録再生部104を制御し、記録媒体105の空き領域に対して順次動画像信号を記録し、空き領域が無くなると、再度、記録媒体105においてループ記録を開始したアドレスに戻り、動画像信号を上書きする。
【0024】
このような処理を、ユーザが操作部107を操作して記録停止を指示するまで繰り返す。そして、記録開始後に記録停止の指示があると、制御部106は、記録再生部104に対する動画像信号の書き込み、及び上書きを停止する。そして、ループ記録の開始指示以降、その時点までに記録された動画像信号をそのまま記録媒体105に記録するように指示する。ただし、ループ記録開始した後、空き容量が無くなると、後述の様に、ループ記録開始後、古い動画像から順に上書きする。そのため、ループ記録停止時には、ループ記録開始時点での空き容量に対応した時間分の、記録停止直前の動画像が保存されている。ユーザは、この様にループ記録により記録した動画像のうち、保存したい部分を別の記録媒体にコピーした後に削除、或いは、保存したい部分以外を削除することで、再度、空き領域として使用することができる。
【0025】
ここで、ループ記録中に、現在記録中の動画ファイルのサイズが、前記のファイルシステムに既定された上限のサイズに達すると、通常の撮影時と同様、記録中のファイルをクローズし、新たにファイルをオープンすることになる。このとき、記録する動画像のデータレートを50メガビット/秒とし、ファイルシステムにて既定された上限のサイズを4ギガバイト(GB)とすると、4GBは約11分の動画像に対応する。
【0026】
従って、空き容量が所定値以下の記録媒体、例えば、11分より少ない記録媒体105に対してループ記録を行うと、空き容量が無くなった時点で、今まで記録していた動画像を全て削除した後、再度同じ領域に対して動画像を記録することになる。そのため、ループ記録停止を指示したタイミングによっては、ループ記録の機能を有効に使うことができなくなってしまう。
【0027】
そこで、本実施形態では、ループ記録時においては、ファイルシステムにて既定されたファイルサイズの上限に関係なく、ループ記録開始時の記録媒体の空き容量に基づいて、ファイルサイズの上限を設定することにした。
【0028】
図2Aは、ループ記録時の処理を説明するフローチャートである。なお、図2の処理は、制御部106がビデオカメラ100の各部を制御することにより実行される。
【0029】
電源が投入され、撮影待機モードにおいてループ記録の設定指示があると、フローが開始する。
まず、制御部106は記録媒体105から読み出した管理情報に基づいて、記録媒体105の残容量を取得する(S201)。次に、記録媒体105の残容量に基づいて、ファイル分割のための閾値を決定する(S202)。ファイル分割の閾値とは、ループ記録を行う際に、一つのファイルに記録可能な動画像信号の上限のサイズである。ファイル分割の閾値設定処理については後述する。
【0030】
次に、ユーザから動画像の記録開始の指示を待つ(S203)。そして、ユーザが操作部107を操作することで記録を開始するよう記録指示を受けると、ファイルリストを初期化する(S204)。
【0031】
図3(a)は、ループ記録の際に用いるファイルリストの一例である。ファイルリストは、ループ記録モードが設定されると、制御部106により生成され、メモリ108に記憶される。ファイルリストは、ループ記録の際に、記録済みのファイル名(またはその一部)と、テーブルに登録されたファイルのうち、記録媒体105にどこまで書き込んだかを示すポインタ(書込みポインタ)を有する。また、記録済みファイルのうちどこまで削除したかを示すポインタ(削除ポインタ)も有し、ポインタを2つ有する。S204では、ファイル名をすべてNULLで未登録とし、両ポインタを先頭に固定する。
【0032】
次に、動画像信号の記録を開始する(S205)。信号処理部103は、記録停止の指示を受けるまで、撮影された動画像信号を符号化してメモリ108へ記憶すると共に、メモリ108に記憶した符号化動画像信号のサイズ(データ量)を制御部106へ通知する。
【0033】
次に、制御部106は、メモリ108へ蓄積された符号化動画像信号のデータ量を信号処理部103からの通知を用いて監視する(S206)。そして、蓄積量が書込み閾値以上になった場合、記録媒体105への書き込み処理を行う(S213)。
【0034】
書き込み閾値は、メモリ108に蓄積された符号化動画像信号を記録媒体105に対して一回の書き込み処理で書き込むサイズ(データ量)である。本実施形態では、記録媒体105に対して書き込み可能なデータレートは、符号化動画像信号のデータレートよりも高い。そのため、符号化動画像信号をメモリ108に一旦蓄積する。そして、メモリ108に対して書き込み閾値分の符号化動画像信号が蓄積される度に、この書き込み閾値分の符号化動画像信号を記録媒体105に書き込む。書き込みが完了すると、再びメモリ108に書き込み閾値分の動画像信号が蓄積されるまで書き込みを停止するという間欠記録を行う。
【0035】
図2Bは、S213の書き込み処理を示すフローチャートである。
まず、動画像信号を格納するための動画ファイルをオープン済みかどうか確認する(S221)。オープン済みであれば、メモリ108へ蓄積された符号化動画像信号のうち、書込み閾値分の動画像信号を読み出し、記録媒体105に記録する(S222)。
【0036】
次に、書き込み後の記録媒体105の残容量を取得する(S223)。次に、記録中の動画ファイルのサイズがファイル分割閾値に達したか否かを検出する(S224)。そして、ファイル分割の閾値に達していれば記録中の動画ファイルをクローズする(S225)。一方、ファイル分割の閾値に達していない場合はクローズせずに処理を終了する。
【0037】
また、S221において、動画ファイルをオープン済みでなければ、記録媒体105にファイル分割閾値分の残容量があるかどうかを判別する(S226)。この結果、記録媒体105にファイル分割閾値分の残容量があれば、新規に動画ファイルをオープンする(S227)。次に、新規オープンした動画ファイルをファイルリストに登録する(S228)。図3(b)は、登録が行われた際のファイルリストの例を示したものである。登録を行う場合は、オープンしたファイル名(またはその一部)がテーブルに登録され、書き込みポインタを一つ進める。
【0038】
また、S226において、残容量不足と判断した場合、ファイルリストを参照して、今回のループ記録を開始してから記録した動画ファイルで記録媒体105に残っている動画ファイルのうち最も古いファイルを削除する(S229)。図3(c)は、ファイル削除が発生した場合のファイルリストの一例を示したものである。削除を行う場合は、削除ポインタ位置に登録されるファイルを削除して、その分の空き容量を記録媒体105上で確保すると共に、削除ポインタを一つ進める。
【0039】
この様に、メモリ108に蓄積された書き込み閾値分の動画像信号の書き込み処理が行われる。そして、メモリ108に蓄積された符号化動画像信号のデータ量が書き込み閾値よりも少なくなっている状態で、操作部107から記録停止の指示を受けたかどうかを判断する(S207)。記録停止の指示を受けると、信号処理部103による動画像信号の符号化処理を停止させる(S208)。そして、メモリ108に蓄積されている符号化動画像信号が書き込み閾値以上であるかどうかを判別する(S209)。
【0040】
そして、メモリ108に蓄積されている符号化動画像信号が書き込み閾値以上であれば、図2Bに示す書き込み処理を行い(S214)、その後S209に戻る。また、S209において、書込み閾値未満であった場合、その時点でメモリ108に蓄積されている、未記録の符号化動画像信号のサイズを書き込み閾値に設定し(S210)、図2Bの書き込み処理を実行する(S211)。その後、記録中の動画ファイルをクローズする(S212)。
【0041】
次に、S202におけるファイル分割サイズの決定方法について説明する。
図4は、図2のS202の詳細を説明するフローチャートである。
S401において、記録媒体105の残容量を所定値L(Lは2以上の整数)で割ったものを暫定のファイル分割閾値とする。定数Lは記録媒体105に保持を保証するデータ量によって決定する。
【0042】
例えば、残容量のうち、4/5を直近データで残したければL=5、2/3を残したい場合は、L=3であり、記録媒体の残容量が例えば60ギガバイトであった場合、ファイル分割閾値は、以下の通りとなる。
(L=5の場合) 60ギガバイト / 5 = 12ギガバイト
(L=3の場合) 60ギガバイト / 3 = 20ギガバイト
【0043】
本実施形態では、ループ記録時においてファイルを削除する際に、ループ記録開始後、どのくらいの割合で直近の動画像を残したいかを設定することができるものとする。例えば、空き容量に記録可能な動画像のうち、直近の2/3の動画を保存したいとした場合、定数Lは3となる。設定可能な割合として、本実施形態では、4/5、2/3等、予め決められた割合の中からユーザが選択できる様にした。
【0044】
次に、ファイル分割閾値とファイルシステムにて既定されたファイルサイズの上限値とを比較し、ファイル分割の閾値がファイルシステムの上限値よりも大きいかどうかを判別する(S402)。例えば、ファイルシステムにFATを用いる場合、一つのファイルサイズの上限値は4ギガバイトである。この比較の結果、算出されたファイル分割の閾値が上限値より大きい場合は、ファイルシステムの上限値をファイル分割閾値に設定する(S403)。また、S402の比較の結果、小さい場合は、設定された閾値が下限値よりも小さいかどうかを判別する。下限値は、予め決められた値で特に制約は無い。しかし、あまりに小さいファイルが生成されると、ハンドリングが悪化したり、1ファイルに記録される動画像の時間が短くなったりする。そのため、本実施形態では、ファイル分割の閾値に下限値を設定している。例えば、下限値として、目標とする動画像のデータレートで数分程度の長さに対応したサイズを設定する。
【0045】
S404において、ファイル分割の閾値が下限値を下回れば、ファイル分割閾値に下限値を設定する。S403〜S405の処理が終わると、書き込み閾値の整数倍であって、且つ、ファイル分割閾値よりも小さいサイズのうちの最大値となるように、ファイル分割の閾値を調整する(S406)。これにより、図2Bの書き込み動作において、ファイル分割閾値を超えるファイルを生成することが無くなる。
【0046】
図5は、ループ記録において、記録媒体105に記録される動画ファイルの様子を示す図である。
図5(a)は、ループ記録による動画像の記録を開始する前の状態を示している。図5(a)では、記録媒体105の一部が使用済であり、空き領域を用いて直近の動画像を記録する。例としてL=5でファイル分割の閾値を決定する。
【0047】
図5(b)は、ループ記録を開始した直後の記録媒体105の様子を示しており、最初の動画ファイル1をオープンし、動画像信号を記録している様子を示している。図5(c)は、動画ファイル1のサイズがファイル分割の閾値を越えたため、ファイル1をクローズし、新規に動画ファイル2をオープンして記録を継続している状態を示している。
図5(d)は、空き容量がなくなる直前まで追記を続けている状態である。
図5(e)は、ファイル5がファイル分割閾値にたどり着いた状態であり、空き容量がなくなった状態である。
図5(f)は、残容量不足を判定した結果、ループ記録を開始してから記録されたファイル1〜5のうち、最も古いファイル1が削除された状態である。
図5(g)は、新たにファイル6がオープンされ、ファイル6に動画像信号を記録している状態を示す。
図5(h)は、ファイル1、2、3が残容量不足により削除され、記録停止時に、直近のデータである、最も古い動画ファイル以外のファイル4、5、6、7、8が保持されている状態を表す。
【0048】
この様に、本実施形態におけるビデオカメラ100は、記録媒体の残容量が不足すると、記録中の映像情報を構成する複数ファイルのうち、もっとも古いファイルを削除して、残容量を再確保しながら記録動作を継続することができる。したがって、記録停止時に、停止直近のデータを記録媒体上に保持することが可能である。
【0049】
なお、本発明は動画像信号の符号化方式やファイルシステム、記録媒体の種類には依存せず、符号化方式としてMotion JPEG、ファイルシステムにUDF、記録媒体にSDカードを用いるなどしてもよい。
【0050】
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、ファイル分割閾値を記録媒体の残容量を用いて算出する方法を説明した。本実施形態では、ループ記録停止時に保存しておきたい動画像の時間をユーザが設定できるように構成し、ユーザから指定された時間に基づいて決定する構成とした。なお、ビデオカメラ100の構成は第1の実施形態と同じであるため、詳細な説明は省略する。また、ループ記録時の基本的な処理は図2Aに示す動作と同じであるが、S202のファイル分割閾値の設定処理と、S211、S213、S214の書き込み処理が異なる。
【0051】
図7は、本実施形態におけるファイル分割閾値の設定処理を示すフローチャートである。操作部107により、ループ記録時における動画像の記録時間の設定指示があると、処理を開始する。まず、設定可能なループ記録時間の上限値と下限値を算出する(S701)。具体的には、記録媒体105の空き領域の半分のサイズ、或いは、ファイルシステムにて規定されたサイズのうちの大きい方とする。そして、算出した上限値のサイズをデータレートで割ることにより、記録する動画像信号のデータレートとに基づいて、ループ記録時間として設定可能な時間の上限値を算出する。また、下限値については、第1の実施形態と同様の値を設定し、この下限値と動画像信号のデータレートに基づいて、ループ記録時間として設定可能な時間の下限値を算出する。
【0052】
次に、この様に算出した上限値、下限値の情報を含む、ループ記録時間の設定画面を、指定可能な記録時間(記録可能時間)として表示部102に表示する(S702)。ユーザは、この設定画面を見ながら操作部107を操作することにより、ループ記録時における動画像の記録時間を設定する。次に、ループ記録時間が設定されたか判別する(703)。本実施形態では、ループ記録停止指示があった時点で、ユーザが設定したループ記録時間分の直前の動画像が記録媒体に記録されているように制御する。
【0053】
ループ記録時間が設定されると、設定された時間と動画像信号のデータレートとに基づいて、ファイル分割の閾値を算出する(S704)。更に、書き込み閾値の整数倍であって、且つ、ファイル分割閾値よりも小さいサイズのうちの最大値となるように、ファイル分割の閾値を調整する(S705)。
【0054】
図6は、本実施形態における、書き込み処理を示すフローチャートである。なお、図6において、S601及びS602以外は、図2Bのフローチャートの対応番号と同じ内容であるため、同じステップ番号を付して説明を省略する。
【0055】
S221において、動画ファイルがオープン済みでないと判定された場合、記録媒体105に対して、ループ記録開始後に記録された動画ファイルが二つ記録されているかどうかを判別する(S601)。この時点で、二つの動画ファイルが記録されていた場合には、連続して二つ記録される度に、二つの動画ファイルのうち、先に記録された方の動画ファイルを記録媒体105から削除する(S602)。そして、新たに動画ファイルをオープンする(S227)。一方、S601で、ループ記録開始後に記録された動画ファイルが一つしか記録媒体105に記録されていない場合には、この動画ファイルを削除せずに、新たに動画ファイルをオープンする(S227)。
【0056】
図8は、本実施形態において、ループ記録時における記録媒体105に記録される動画ファイルの様子を示す図である。
図8(a)は、記録を開始する前の状態であり、媒体の一部が使用済であり、空き領域を用いて直近の映像情報を記録する。
図8(b)は、ループ記録を開始した直後の記録媒体105の様子を示しており、最初の動画ファイル1をオープンし、動画像信号を記録している様子を示している。
図8(c)は、動画ファイル1のサイズがファイル分割の閾値を越えたため、動画ファイル1をクローズし、新規に動画ファイル2をオープンして記録を継続している状態を示している。動画ファイル2の記録を開始する時点では、一つの動画ファイル1しか記録されていないため、この動画ファイル1を削除せずに動画ファイル2をオープンする。
図8(d)は、動画ファイル2がファイル分割閾値に達した状態である。図8(e)は、図8(d)の状態で、更に動画像の記録を継続した状態を示している。図8(d)の状態では、既に、ループ記録開始後二つの動画ファイル1、2が記録されている。そのため、これら二つのファイルのうち、先に記録された動画ファイル1を削除する。そして、図8(f)に示す様に、新たに動画ファイル3をオープンし、動画の記録を続ける。図8(g)は、図8(f)の状態から更に記録を続け、動画ファイル3が分割上限値に達した後、動画ファイル4をオープンした後で、ループ記録の停止が指示された状態を示している。
【0057】
この様に、本実施形態における記録装置は、ユーザがループ記録時に残しておきたい直近の動画像の記録時間に基づいて、ループ記録時のファイル分割閾値を設定している。そして、ループ記録中に二つの動画ファイルが記録される度に、先に記録された方を削除して、新たに動画像の記録を継続する。これにより、残容量を再確保しながら記録動作を継続することができ、記録停止時に、停止直近のデータを記録媒体105に保持することが可能である。
【0058】
(その他の実施形態)
また、本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(コンピュータプログラム)を、ネットワーク又は各種のコンピュータ読み取り可能な記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給する。そして、そのシステム或いは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。
【符号の説明】
【0059】
100 ビデオカメラ、101 撮像部、102 表示部、103 信号処理部、104 記録再生部、105 記録媒体、106 制御部、107 操作部、108 メモリ、109 バス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動画像信号を含む動画ファイルを記録媒体に記録する記録手段と、
前記記録媒体の空き容量に基づいて閾値を設定する設定手段と、
記録指示に応じて前記記録媒体の空き領域に対する動画ファイルの記録を開始し、前記動画ファイルの記録中に前記動画ファイルのサイズが前記閾値に達すると前記動画ファイルを分割し、前記動画ファイルの記録中に前記記録媒体の空き容量が所定値以下となると前記記録指示の後に記録された動画ファイルのうち最も古い動画ファイルを削除するように、前記記録手段を制御する制御手段とを備えることを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記設定手段は、前記記録媒体の空き容量を所定値で割った値を前記閾値として設定することを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記記録手段は、所定のファイルシステムに従って前記動画ファイルを記録し、前記設定手段は、前記閾値の最大値を前記ファイルシステムにて規定されたサイズとすることを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項4】
動画像信号を含む動画ファイルを記録媒体に記録する記録手段と、
前記動画像信号の記録時間を指定する指定手段と、
前記指定手段により指定された記録時間に基づいて閾値を設定する設定手段と、
記録指示に応じて前記記録媒体の空き領域に対する動画ファイルの記録を開始し、前記動画ファイルの記録中に前記動画ファイルのサイズが前記閾値に達すると前記動画ファイルをクローズし、前記記録指示の後に記録された動画ファイルのうち前記クローズされた動画ファイル以外の動画ファイルを削除するように、前記記録手段を制御する制御手段とを備えることを特徴とする記録装置。
【請求項5】
前記指定手段は、前記記録媒体の空き容量に基づく前記記録時間の上限値よりも短い記録時間を指定可能であることを特徴とする請求項4に記載の記録装置。
【請求項6】
前記上限値は、前記記録媒体の空き容量と前記動画像信号のデータレートとにより算出された記録可能時間の半分の時間であることを特徴とする請求項5に記載の記録装置。
【請求項7】
前記設定手段は、前記指定された記録時間と前記動画像信号のデータレートとに基づいて前記閾値を算出することを特徴とする請求項4に記載の記録装置。
【請求項8】
動画像信号を含む動画ファイルを記録媒体に記録する記録手段と、
前記動画像信号の記録時間を指定する指定手段と、
前記指定手段により指定された記録時間に基づいて閾値を設定する設定手段と、
記録指示に応じて前記記録媒体の空き領域に対する動画ファイルの記録を開始し、前記動画ファイルの記録中に前記動画ファイルのサイズが前記閾値に達すると前記動画ファイルを分割するように、前記記録手段を制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、前記記録指示による記録開始後、前記閾値のサイズの動画ファイルが前記記録媒体に対して連続して二つ記録される度に、前記二つの動画ファイルのうち先に記録された方の動画ファイルを削除するよう、前記記録手段を制御することを特徴とする記録装置。
【請求項9】
動画像信号を含む動画ファイルを記録媒体に記録する記録工程と、
前記記録媒体の空き容量に基づいて閾値を設定する設定工程と、
記録指示に応じて前記記録媒体の空き領域に対する動画ファイルの記録を開始し、前記動画ファイルの記録中に前記動画ファイルのサイズが前記閾値に達すると前記動画ファイルを分割し、前記動画ファイルの記録中に前記記録媒体の空き容量が所定値以下となると前記記録指示の後に記録された動画ファイルのうち最も古い動画ファイルを削除するように、前記記録工程を制御する制御工程とを備えることを特徴とする記録方法。
【請求項10】
動画像信号を含む動画ファイルを記録媒体に記録する記録工程と、
前記動画像信号の記録時間を指定する指定工程と、
前記指定工程において指定された記録時間に基づいて閾値を設定する設定工程と、
記録指示に応じて前記記録媒体の空き領域に対する動画ファイルの記録を開始し、前記動画ファイルの記録中に前記動画ファイルのサイズが前記閾値に達すると前記動画ファイルをクローズし、前記記録指示の後に記録された動画ファイルのうち前記クローズされた動画ファイル以外の動画ファイルを削除するように、前記記録工程を制御する制御工程とを備えることを特徴とする記録方法。
【請求項11】
動画像信号を含む動画ファイルを記録媒体に記録する記録工程と、
前記動画像信号の記録時間を指定する指定工程と、
前記指定工程において指定された記録時間に基づいて閾値を設定する設定工程と、
記録指示に応じて前記記録媒体の空き領域に対する動画ファイルの記録を開始し、前記動画ファイルの記録中に前記動画ファイルのサイズが前記閾値に達すると前記動画ファイルを分割するように、前記記録工程を制御する制御工程とを備え、
前記制御工程は、前記記録指示による記録開始後、前記閾値のサイズの動画ファイルが前記記録媒体に対して連続して二つ記録される度に、前記二つの動画ファイルのうち先に記録された方の動画ファイルを削除するよう、前記記録工程を制御することを特徴とする記録方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−130106(P2011−130106A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−285563(P2009−285563)
【出願日】平成21年12月16日(2009.12.16)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】