説明

記録装置

【課題】記録が行われ保持された記録媒体が、記録媒体を搬送するローラーに接触することを適切に防止することができる記録装置を提供する。
【解決手段】記録が行われた用紙Pを起立状態で保持する保持面61を有する上部外側カバー55と、用紙Pを保持面61に添うように搬送すると共に搬送後の用紙Pを外周面に支持して送り込む排紙ローラー44と、上部外側カバー55に設けられ、排紙ローラー44の重力に対して最上となる頂点を越えて送り込まれた用紙Pの下端部を受容すると共に、受容された用紙Pの下端部を、排紙ローラー44に対して非接触状態となるように位置規制する受容部62と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所望の記録を行った記録媒体を起立姿勢で保持する記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、記録媒体(記録用紙)を起立姿勢で収容可能な記録用紙収容部から記録媒体を搬送して、記録済みの記録媒体を起立姿勢で保持する保持部(排紙スタック)と、記録済みの記録媒体が搬送される搬送経路の終端において、保持部の近傍に配設された排紙ローラーと、を備えた縦置き型の記録装置が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−205655号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような従来の縦置き型の記録装置では、保持部に起立状態で蓄積された記録媒体の下端部が、撓んだ場合や保持部から脱落した場合等に、排紙ローラーに接触してしまうことがあった。一般的に、排紙ローラーの表面はゴム等からなるため、保持部上の記録媒体が排紙ローラーに接触すると記録媒体が汚れたり破損するという問題があった。また、保持部から脱落した記録媒体が、排紙ローラーに接触した状態で、排紙ローラーを逆転した場合、紙詰りの原因になるという問題もあった。
【0005】
本発明は、記録が行われ保持された記録媒体が、記録媒体を搬送するローラーに接触することを適切に防止することができる記録装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の記録装置は、記録が行われた記録媒体を起立状態で保持する保持面を有する保持部と、記録媒体を保持面に添うように搬送すると共に搬送後の記録媒体を外周面に支持して送り込むローラーと、保持部に設けられ、ローラーの重力に対して最上となる頂点を越えて送り込まれた記録媒体の下端部を受容すると共に、受容された記録媒体の下端部を、ローラーに対して非接触状態となるように位置規制する受容部と、を備えていることを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、ローラーによって送り込まれた記録媒体は、その下端部が、ローラーに対して接触しないように位置規制された状態で受容部に受容される。したがって、記録後に排出され保持された記録媒体が、再びローラーに接触することを防止することができる。これにより、記録済みの記録媒体が排紙ローラーに接触することで生じる記録媒体の汚れや破損を適切に防止することができる。
【0008】
この場合、受容部は、保持面からローラー側に突設され、記録媒体の下端を支持する支持部と、支持部の先端に鉛直上方に向かって設けられ、受容された記録媒体の下端部の位置規制をする規制部と、を有し、規制部は、保持面とローラーとの間に位置していると共に、ローラーの頂点よりも鉛直下方に位置してことが好ましい。
【0009】
この構成によれば、規制部は、ローラーの頂点(鉛直方向における最上点)よりも下側に設けられているため、ローラーによる記録媒体の送り込みが規制部によって妨げることがない。また、送り込まれた記録媒体の下端は、支持部によって確実に支持されると共に、規制部によってローラー側への移動が規制される。すなわち、送り込まれた記録媒体は、自重によって、保持面、支持部および規制部によりポケット状に形成された受容部に入り込む。これにより、記録媒体の下端部は、ローラーに非接触状態で保持される。
【0010】
この場合、規制部の上端部には、ローラーの頂点を越えて送り込まれた記録媒体の下端部を受容部に導くように、ローラー側に傾斜して形成された媒体導入部が設けられていることが好ましい。
【0011】
また、この場合、媒体導入部は、ローラーの頂点よりも鉛直下方に位置していることが好ましい。
【0012】
これらの構成によれば、ローラーの外周に沿って送り込まれた記録媒体の下端部は、ローラーから媒体導入部に受け渡され、媒体導入部に沿って円滑に受容部に送られる。特に、媒体導入部をローラーよりも下側に設けることにより、記録媒体の送り込みが妨げられることがなく、記録媒体は、確実に受容部に受容される。
【0013】
他にも、受容部は、受容された記録媒体の下端が当接する当接部を有し、当接部は、保持面側に向かって下り勾配となるように設けられていることが好ましい。
【0014】
この構成によれば、送り込まれた記録媒体は、自重により当接部の勾配に沿って移動し、自動的に保持面に添うこととなる。また、当接部の勾配は、ローラー側に向かって上り勾配となっているため、当接部が、記録媒体のローラー側への移動を規制する。これにより、記録媒体の下端部は、ローラーに非接触状態で保持される。
【0015】
この場合、当接部の先端は、ローラーの頂点よりも鉛直下方に位置していることが好ましい。
【0016】
この構成によれば、当接部の先端は、ローラーの頂点よりも下側に設けられているため、ローラーによる記録媒体の送り込みが、当接部によって妨げることがない。
【0017】
この場合、ローラーを搭載する筐体に対し着脱可能に構成され、記録媒体を起立姿勢で収容する記録媒体カセットを備え、保持部および受容部は、記録媒体カセットに設けられていることが好ましい。
【0018】
この構成によれば、筐体(記録装置)から、記録媒体カセットを取り出すことで、未記録の記録媒体の供給と、記録済みの記録媒体の取り出しと、を一度に行うことができる。さらに、記録媒体カセットに、保持部と受容部とが設けられているため、別途記録媒体を保持するための構成を省略することができ、構造の単純化および低コスト化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】記録装置の外観斜視図である。
【図2】用紙を給送ローラーから離間させた状態の記録装置の側断面図である。
【図3】用紙を給送ローラーに圧接させた状態の記録装置の側断面図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係る記録媒体カセットの斜視図である。
【図5】本発明の第1実施形態に係る記録媒体カセットの上部外側カバーを開放した状態の斜視図である。
【図6】本発明の第1実施形態に係る受容部の側断面図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係る受容部の側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の第1実施形態に係る記録装置について説明する。この記録装置は、起立姿勢で保持した用紙(記録媒体)を搬送しながら所望の記録を行い、排紙した記録済みの用紙を起立状態で保持(ストック)するものである。なお、各図に示す通り、X軸(左右)方向、Y軸(前後)方向およびZ軸(上下)方向を規定して、以降説明する。
【0021】
図1または図2に示すように、記録装置1は、X軸およびY軸方向よりもZ軸方向の寸法が大きく形成された薄型の箱状体を成す筐体2によって外観が構成されている。また、記録装置1は、搬送路上に臨む用紙Pにインクジェット方式で印刷処理を行う印刷部3と、枚葉の用紙Pを搬送路に沿って送る搬送部4と、用紙Pを起立姿勢で収容し、筐体2に対し着脱自在に装着される記録媒体カセット5と、搬送部4や印刷部3などを支持する装置フレーム(図示省略)と、を備えている。
【0022】
筐体2の上面には、操作ボタン等が配置された操作パネル21と、PC等に接続するためのケーブルが接続されるケーブル端子22と、複数のインクカートリッジ(図示省略)を着脱可能に装着するカートリッジ装着部(図示省略)を開閉するカートリッジカバー23と、が設けられている。また、筐体2の上面には、記録が行われた用紙P(記録媒体)を排出するための用紙排出口24を開閉する用紙排出口カバー25が設けられている。なお、用紙排出口カバー25は、ユーザーによって開閉されるものであるが、仮に閉じた状態で記録が実行された場合でも、図外の開閉機構によって自動的に開くようになっている。
【0023】
印刷部3は、後述する一対の搬送ローラー42の下流側に配設されており、インクジェットヘッド32を搭載したキャリッジ31と、インクジェットヘッド32に対向位置に設けられた案内部材33と、を有している。
【0024】
キャリッジ31は、X軸方向に延びるキャリッジガイド軸34に沿って、図外のモーターにより往復移動可能に設けられている。なお、図2に示すように、キャリッジ31は、傾斜姿勢で設けられるため、キャリッジガイド軸34を中心として回動しようとする力が生じる。そこで、キャリッジ31の上方に設けられた被ガイド部35が、X軸方向に延びるキャリッジガイド板36を挟み込むことで、キャリッジ31の姿勢を一定に保持している。
【0025】
案内部材33は、搬送経路の一部を構成すると共に、用紙Pの記録面とインクジェットヘッド32との間のギャップ(ワークギャップ)を規定する。また、案内部材33には、インクジェットヘッド32と対向する位置に縁無し印刷の際、用紙P端から外れた領域に吐出されるインクを受ける凹部が形成されている。この凹部の中には、インクを吸収するインク吸収材(図示省略)が設けられている。そして更に、案内部材33の下方には、打ち捨てられたインクを貯留する廃液タンク(図示省略)が配置されている。
【0026】
なお、本実施形態は、インクカートリッジがキャリッジ31から独立して設けられたいわゆるオフキャリッジ型であるが、インクカートリッジがキャリッジ31に搭載された、いわゆるオンキャリッジ型であってもよい。また、本実施形態では、キャリッジ31がX軸方向に移動しながら記録を行ういわゆるシリアルプリンターであるが、用紙P幅をカバーする固定式のインクジェットヘッド32を用いてもよい。さらに、インクジェット方式に限らず、その他の記録方式であってもよい。
【0027】
搬送部4は、上流側から、装着された記録媒体カセット5の先端に対向する位置に設けられ、記録媒体カセット5から供給された用紙Pを下流側へと送り出す給送ローラー41と、用紙Pを印刷部3へと搬送する一対の搬送ローラー42と、印刷部3の案内部材33から用紙Pの浮き上がりを防止する案内ローラー43と、記録の行われた用紙Pを印刷部3から排出する一対の排紙ローラー44と、を有している。なお、給送ローラー41、各搬送ローラー42、案内ローラー43および各排紙ローラー44は、それぞれ用紙Pの幅方向(X軸方向)に適宜の間隔で複数配置されている。
【0028】
給送ローラー41は、用紙Pの先端と接した状態で、図外のモーターにより回転することにより用紙Pを下方へと送り出す。給送ローラー41の外周面に対向位置には、用紙Pが湾曲反転する略U字状の搬送経路を形成するガイド部材45が配設されている。なお、符号46は、給送ローラー41による用紙Pの送り出しを補助する補助従動ローラーである。
【0029】
下方へと送り出された用紙Pは、給送ローラー41及びガイド部材45によって上向きに反転させられ、一対の搬送ローラー42へと送られる。用紙Pは、一対の搬送ローラー42の間に挟まれて、印刷部3に送られる。印刷部3で記録の行われた用紙Pは、案内ローラー43および一対の排紙ローラー44を介して、記録媒体カセット5の排紙保持部52(後述する)に排紙される。
【0030】
図3に破線で示すように、本実施形態では、排紙ローラー44による用紙Pの排出方向は、記録媒体カセット5に向かう様に斜め上方に設定されている。排出される用紙Pは、記録媒体カセット5の保持面61(後述する。)に摺接しながら上方に移動する。
【0031】
なお、本実施形態では、給送ローラー41(と補助従動ローラー46)、搬送ローラー42および排紙ローラー44は、それぞれニップローラーの形態を為している。また、本実施形態では、案内部材33側に位置する搬送ローラー42および排紙ローラー44が、それぞれ図外のモーターにより回転駆動され、インクジェットヘッド側に位置する搬送ローラー42、案内ローラー43および排紙ローラー44が、それぞれ従動するようになっている。また、駆動側の排紙ローラー44は、ゴムローラーにより構成され、案内ローラー43および排紙ローラー44は、拍車状のローラー(スターホイール)により構成されている。
【0032】
続いて、図2ないし図5を参照して、記録媒体カセット5について詳細に説明する。記録媒体カセット5は、筐体2に対して着脱可能に構成されており、装着することで記録装置1の外観を構成する。また、記録媒体カセット5を取り外すことで記録装置1の内部が露出するため、搬送経路に用紙Pが詰まった等の不具合を容易に解消することができる。なお、図示は省略するが、記録媒体カセット5は、筐体2に対してZ軸方向にスライド自在に構成されており、その着脱操作は、記録媒体カセット5をスライドさせることで行われる。
【0033】
記録媒体カセット5は、用紙Pを起立姿勢で収容するカセット本体51と、カセット本体51に設けられ、用紙Pを起立姿勢に保持する排紙保持部52と、を備えている。
【0034】
カセット本体51は、装着時に筐体2と面一になり、記録装置1の概観をなすカセット筐体部53と、全体としてトレイ状に形成された本体トレイ54と、用紙Pを収容する用紙収容空間Sを開閉する上部外側カバー55と、上部外側カバー55に対し、本体トレイ54の上端から突出するようにスライド可能に設けられた上部内側カバー56と、本体トレイ54に対し、本体トレイ54の上端から突出するようにスライド可能に設けられた上部スライドトレイ57と、上部外側カバー55に対し、X軸方向にスライド可能に設けられたエッジガイド58と、用紙収容空間Sに収容した用紙Pの先端を揺動させる可動トレイ59と、を備えている。
【0035】
本体トレイ54の下端部には、収容した用紙Pの先端を支持する用紙先端支持壁54aが形成されている。記録媒体カセット5が装着された状態において収容された用紙Pは、その先端が用紙先端支持壁54aに当接した状態で支持される。
【0036】
図5に示すように、上部外側カバー55は、本体トレイ54の上下方向略中央部に設けられた左右一対の回動支点55aを中心に回動するようになっている。上部外側カバー55を開放することにより、用紙収容空間Sが表れて、用紙Pの収容が可能となる。
【0037】
また、上部外側カバー55の外面、すなわち、筐体2に装着した際に装置内側に向く面は、記録済みの用紙Pを保持する(蓄える)ための保持面61として機能している(詳細は後述する。)。
【0038】
図2および図3に示すように、上部内側カバー56は、記録媒体カセット5が記録装置1(筐体2)に装着された状態で、上部外側カバー55に対して用紙Pの送り方向(Z軸方向)にスライド可能に設けられている。また、同様に、上部スライドトレイ57は、記録媒体カセット5が装着された状態で、本体トレイ54に対してZ軸方向にスライド可能に設けられている。これら上部内側カバー56及び上部スライドトレイ57を用紙PのZ軸方向の長さに合わせて伸縮させることで、その用紙Pに最適な用紙収容空間Sを形成することができる。
【0039】
また、上部内側カバー56を延ばした場合は、上部外側カバー55の外面から連なるように上部内側カバー56の外面が延在し、保持面61がZ軸方向に延長される。
【0040】
図4および図5に示すように、エッジガイド58は、上部外側カバー55にX軸方向に延在して開口した長穴55bにスライド自在に係合し、用紙収容空間Sに収容した用紙Pの幅に合わせてスライド可能に設けられている。これにより、用紙PのX軸方向の長さ(幅)に応じた適切な位置で、セットされた用紙Pのエッジがガイドされる。なお、図示は省略するが、エッジガイド58は、一部が上部外側カバー55の外側に露出しており、この露出部分を操作することにより、上部外側カバー55を閉じた状態であっても、エッジガイド58をスライド可能となっている。
【0041】
図2および図3に示すように、可動トレイ59は、記録媒体カセット5が装着された状態において用紙送り方向下流側となる本体トレイ54の下側に設けられ、いわゆるホッパーとして機能するものである。可動トレイ59は、本体トレイ54の上下方向略中央部に設けられた左右一対の揺動支点59a(図4および図5参照)を中心に回動可能になっており、図外の駆動機構により揺動するようになっている。これにより、収容された用紙Pの先端を、給送ローラー41に圧接させる状態(図3参照)と、離間させる状態(図2参照)と、にすることができる。
【0042】
また、図4に示すように、可動トレイ59には、用紙Pの先端に対応する位置に、X軸方向に沿って適宜の間隔で複数の接触開口部59bが形成されている。この複数の接触開口部59bにより、収容された用紙Pに対して給送ローラー41が圧接できるようになっている。
【0043】
続いて、図2ないし図4および図6を参照して、排紙保持部52について説明する。排紙保持部52は、上部外側カバー55の外面等によりなる保持面61と、排紙された用紙Pの下端部を受容すると共に、受容された用紙Pの下端部を排紙ローラー44に対して非接触状態となるように位置規制する受容部62と、保持面61に設けられ、用紙Pを起立姿勢に保持するホルダー63と、を有している。
【0044】
保持面61は、記録媒体カセット5を筐体2に装着した際に、一対の排紙ローラー44の近傍から用紙排出口24までの間に位置する略平坦な面である。また、上述したように、上部内側カバー56を延ばすことで、保持面61が、用紙排出口24よりも上方に延長される。排紙ローラー44により排出された用紙Pは、保持面61に沿って摺接しながら用紙排出口24に向かって移動する。用紙Pのサイズによっては、用紙排出口24から用紙排出口24から上方に突出して排紙される。
【0045】
このように、未記録の用紙Pを収容する用紙収容空間Sと、記録済みの用紙Pを保持する保持面61とは、同一の部材(上部外側カバー55および上部内側カバー56)の表裏に形成されている。これにより、給紙側を用紙Pのサイズに合わせることで、同時に排紙側もそのサイズに合わせることができる。また、上部外側カバー55(および上部内側カバー56)の一部(一面)が、用紙Pを保持する保持面61として機能するため、別途、用紙Pを保持するための構成を省略することができ、構造の単純化および低コスト化を図ることができる。
【0046】
図2および図6(a)に示すように、受容部62は、保持面61から排紙ローラー44側に突出し、用紙Pの下端を支持する支持部62aと、支持部62aの先端に上方に向かって設けられ、受容された用紙Pの下端部を位置規制する規制部62bと、を有している。すなわち、受容部62は、側面視、L字状に形成され、保持面61、支持部62aおよび規制部62bによりポケット状に形成されている。なお、請求項にいう「保持部」とは、上部外側カバー55およびホルダー63を指し、「ローラー」とは、駆動側の排紙ローラー44を指す。
【0047】
支持部62aは、保持面61からY軸方向に水平に突出すると共に、X軸方向に延びるように設けられた板状の部材である(図4参照)。また、支持部62aは、駆動側の排紙ローラー44よりも下方に位置している(図6(a)参照)。すなわち、排紙ローラー44により送り込まれた用紙Pは、その自重により、排紙ローラー44の鉛直方向において最上点となる頂点から下方に落下し、その下端が支持部62aに支持される。
【0048】
規制部62bは、支持部62aの先端部分に垂直に立設し、適宜の間隔で複数配置された駆動側の排紙ローラー44の間に入り込むようにして、X軸方向に適宜の間隔で複数配置されている(図4参照)。つまり、規制部62bは、全体として略櫛歯形状に形成されている。
【0049】
また、規制部62bは、その内面(保持面61側の面)が、駆動側の排紙ローラー44と保持面61との間に位置していると共に、該ローラー44の近傍において、該ローラー44の回転軸よりも下方に位置している(図6(a)参照)。このため、規制部62bが、排紙ローラー44による用紙Pの送り込みを妨げることがない。また、送り込まれた用紙Pの下端は、支持部62aによって確実に支持されると共に、規制部62bによって排紙ローラー44側への移動が規制される。すなわち、用紙Pの下端部は、駆動側の排紙ローラー44に非接触状態で保持される。なお、規制部62bを、支持部62aと同様にX軸方向に延在させてもよい。
【0050】
各規制部62bの上端部には、排紙ローラー44側に屈曲して形成された媒体導入部62cが設けられている。媒体導入部62cは、その先端部分が、駆動側の排紙ローラー44の頂点と回転軸との間に位置するように形成されている。また、媒体導入部62cの内面(保持面61側の面)は、その内面上から延長した線が、駆動側の排紙ローラー44の外周上の接線(または接線と平行)になるように設けられている(図6(a)の一点鎖線参照)。用紙Pの下端部は、排紙ローラー44の頂点を越えて、駆動側の排紙ローラー44の外周面に支持された状態で送り込まれ(図6(a)の二点鎖線参照)、駆動側の排紙ローラー44から媒体導入部62cに受け渡される。これにより、用紙Pの下端部は、受容部62(支持部62a)に適切かつ円滑に導かれる。
【0051】
なお、図6(b)に示すように、媒体導入部62cを、各規制部62bの上端部分で、排紙ローラー44側に傾斜させた傾斜面部として形成してもよい。
【0052】
次に、図2ないし図4に示すように、ホルダー63は、上部外側カバー55のX軸方向両端部において、それぞれ突出して設けられた一対のピラー部63aと、一対のピラー部63aに掛け渡された板状の板状本体部63bと、を有している。
【0053】
板状本体部63bは、保持面61との間に間隙を存して対面していると共に、用紙PをX軸方向に横断するように設けられている。すなわち、板状本体部63bは、一対のピラー部63aのY軸方向の長さの分だけ、保持面61から離間している。なお、板状本体部63bと保持面61との間隙は、保持する用紙Pの厚みや枚数により適宜決定してよいが、用紙Pの供給側である用紙収容空間Sの間隔と略同一であることが好ましい。
【0054】
また、板状本体部63bの上方には、左右一対のカール矯正ローラー64が回転自在に取り付けられている。各カール矯正ローラー64は、拍車形状に形成(スターホイール)されており、保持面61側に付勢されている。
【0055】
一対の排紙ローラー44により排出された用紙Pは、保持面61に摺接しながら用紙排出口24に向かって移動し、用紙Pの下端部は、駆動側の排紙ローラー44の外周に沿って受容部62へと送り込まれる。そして、用紙Pの下端部は、駆動側の排紙ローラー44に再び接触することなく保持される。また、排紙された用紙Pは、各カール矯正ローラー64によって、その曲げ癖(カール状態)が矯正された上で、ホルダー63と保持面61との間に起立姿勢で保持される。これにより、用紙Pは、倒れることなく順次保持面61に適切に蓄積されるため、連続して用紙Pを排紙することができる。また、記録済みの用紙Pが倒れた状態で記録媒体カセット5を取り外した場合に生じる用紙Pの破損も防止することができる。
【0056】
以上の構成によれば、記録後に排出され保持された用紙Pが、再び駆動側の排紙ローラー44に接触することを防止することができる。これにより、記録済みの用紙Pが駆動側の排紙ローラー44に接触することで生じる用紙Pの汚れや破損を適切に防止することができる。また、記録装置1(筐体2)から、記録媒体カセット5を取り出すことで、未記録の用紙Pの供給と、記録済みの用紙Pの取り出しと、を一度に行うことができる。さらに、記録媒体カセット5に、記録済みの用紙Pを保持する構造であるため、別途、用紙Pを保持するための構成を省略することができ、構造の単純化および低コスト化を図ることができる。なお、本実施形態では、記録媒体カセット5を、いわゆる縦置き型の記録装置1に適用しているが、もちろん横置きの記録装置1に適用してもよい。この場合、カセット筐体部53が底面となるように記録装置1を設置することが好ましい。
【0057】
(第2実施形態)
次に、図7を参照して、本発明の第2実施形態に係る記録媒体カセット5について説明する。なお、以降の説明では、第1実施形態に係るものと異なる説明のみ記載する。
第2実施形態に係る記録媒体カセット5の受容部62は、保持面61から排紙ローラー44側に斜め上方に突出し、用紙Pの下端が当接する当接部71と、当接部71を支持する側面視L字状の傾斜支持部72と、を有している。この当接部71は、保持面61側に向かって下り勾配となるように設けられており、当接部71と傾斜支持部72とで側面から見て直角三角形に形成されている。なお、当接部71および傾斜支持部72は、第1実施形態の規制部62bと同様に、X軸方向に適宜の間隔で複数配置されて、全体として略櫛歯形状に形成されている。
【0058】
具体的には、当接部71は、その先端部分が、駆動側の排紙ローラー44の近傍で、駆動側の排紙ローラー44の頂点と回転軸との間に位置するように形成されている。また、当接部71の内面(保持面61側の面)は、その内面上から延長した線が、駆動側の排紙ローラー44の外周上の接線と平行になるように設けられている(図7の一点鎖線参照)。
【0059】
用紙Pの下端部は、排紙ローラー44の頂点を越えて、駆動側の排紙ローラー44の外周面に支持された状態で送り込まれ(図7の二点鎖線参照)、駆動側の排紙ローラー44から当接部71に受け渡される。送り込まれた用紙Pは、自重により当接部71の勾配に沿って移動し、自動的に保持面61に添うこととなる。また、当接部71の勾配が排紙ローラー44側に向かって上り勾配となっているため、当接部71は、排紙ローラー44側への用紙Pの移動を規制する。これにより、用紙Pの下端部は、駆動側の排紙ローラー44に非接触状態で保持される。
【符号の説明】
【0060】
1:記録装置、5:記録媒体カセット、44:排紙ローラー、51:カセット本体、55:上部外側カバー、61:保持面、62:受容部、62a:支持部、62b:規制部、62c:媒体導入部、71:当接部、P:用紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録が行われた記録媒体を起立状態で保持する保持面を有する保持部と、
前記記録媒体を前記保持面に添うように搬送すると共に搬送後の前記記録媒体を外周面に支持して送り込むローラーと、
前記保持部に設けられ、前記ローラーの重力に対して最上となる頂点を越えて送り込まれた前記記録媒体の下端部を受容すると共に、受容された前記記録媒体の下端部を、前記ローラーに対して非接触状態となるように位置規制する受容部と、を備えていることを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記受容部は、前記保持面から前記ローラー側に突設され、前記記録媒体の下端を支持する支持部と、前記支持部の先端に鉛直上方に向かって設けられ、受容された前記記録媒体の下端部の位置規制をする規制部と、を有し、
前記規制部は、前記保持面と前記ローラーとの間に位置していると共に、前記ローラーの頂点よりも鉛直下方に位置してことを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記規制部の上端部には、前記ローラーの頂点を越えて送り込まれた前記記録媒体の下端部を前記受容部に導くように、前記ローラー側に傾斜して形成された媒体導入部が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の記録装置。
【請求項4】
前記媒体導入部は、前記ローラーの頂点よりも鉛直下方に位置していることを特徴とする請求項3に記載の記録装置。
【請求項5】
前記受容部は、受容された前記記録媒体の下端が当接する当接部を有し、
前記当接部は、前記保持面側に向かって下り勾配となるように設けられていることを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項6】
前記当接部の先端は、前記ローラーの頂点よりも鉛直下方に位置していることを特徴とする請求項5に記載の記録装置。
【請求項7】
前記ローラーを搭載する筐体に対し着脱可能に構成され、前記記録媒体を起立姿勢で収容する記録媒体カセットを備え、
前記保持部および前記受容部は、前記記録媒体カセットに設けられていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−158417(P2012−158417A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−17962(P2011−17962)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】