説明

記録装置

【課題】レンズ交換式の記録装置において、焦点距離の変化に応じてマイクの指向性の変化を実感することの可能な記録装置を提供する。
【解決手段】撮像光学系を交換可能なレンズ交換式の記録装置であって、音声を集音する内蔵マイク121と、交換レンズ200から焦点距離の稼働範囲と現在の焦点距離を取得する交換レンズ制御部115と、焦点距離稼働範囲に対する指向性可変量を設定し、焦点距離の現在位置に基づいて集音した音声の指向性を制御する指向性パラメータを決定し、決定された指向性パラメータに応じて集音した指向性を変更するCPU109と、内蔵マイク121の指向性を可変にするオーディオ制御部119を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録装置に関し、詳しくは、撮影レンズの焦点距離に応じた指向性の録音を行うことが可能な記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より動画等の撮影時に画像と共に周囲の音声を記録する撮影装置が公知である。例えば、特許文献1には、コンバージョンレンズの倍率情報に応じて、マイクの指向性や感度を調節可能なカメラが開示されている。また、特許文献2には、ズーム操作に応じてマイクの指向性を調節するステレオズームマイクロホンが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−178183号公報
【特許文献2】特開平6−113392号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したように、撮影レンズの焦点距離に応じてマイクの指向性を調節する記録装置は提案されている。しかし、上述の装置はいずれも焦点距離を基本情報とし、焦点距離の絶対値に応じて指向性を調節しているだけである。一般的に、記録装置に装着可能な交換レンズの焦点距離は、広角ズーム、望遠ズーム等、様々なラインナップが揃えてあり、これらの交換レンズにより、広い範囲の焦点距離をカバーしている。
【0005】
様々ラインナップに対応するように広い範囲の焦点距離の内の一部分の焦点距離しかカバーしない交換レンズの場合、単純に焦点距離の絶対値に応じてマイクの指向性を調節すると、指向性の変化を楽しむことができない場合がある。例えば、焦点距離が9−18mm(フォーサーズ規格、以下の焦点距離も同様)、40−150mmという交換レンズのラインナップの場合、焦点距離の範囲は9−150mmとなり、9−18mmの交換レンズを使用するユーザは、動画撮影中にズーム操作を行ったとしても、殆ど指向性の変化を感じることができない。
【0006】
本発明は、このような事情を鑑みてなされたものであり、レンズ交換式の記録装置において、焦点距離の変化に応じてマイクの指向性の変化を実感することの可能な記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため第1の発明に係わる記録装置は、撮像光学系を交換可能なレンズ交換式の記録装置において、音声を集音する集音部と、交換レンズから焦点距離の稼働範囲と現在の焦点距離を取得する焦点距離情報取得部と、上記焦点距離稼働範囲に対する指向性可変量を設定する連動特性設定部と、上記焦点距離の現在位置に基づいて上記集音した音声の指向性を制御する指向性パラメータ決定部と、上記決定された指向性パラメータに応じて上記集音した指向性を変更する指向性変更処理部と、上記指向性変更処理部の変更処理に従って、上記集音部の指向性を可変にする指向性可変部と、を具備する。
【0008】
第2の発明に係わる記録装置は、上記第1の発明において、上記連動特性設定部は、上記取得した焦点距離の稼働範囲から指向性稼働範囲を最大限に対応づけるようにする。
第3の発明に係わる記録装置は、上記第1および第2の発明において、さらに、撮像した映像を処理する画像処理部を有し、上記画像処理部によって処理される画像処理モードに応じて指向性稼働範囲を調整する。
【0009】
第4の発明に係わる記録装置は、上記第1の発明において、上記連動特性設定部は、上記交換レンズが固定焦点距離の場合には、上記指向性特性も固定の位置とする。
第5の発明に係わる記録装置は、上記第1の発明において、上記連動特性設定部は、指向性の最大および最小位置に加えて中間位置を更に指定する。
【0010】
第6の発明に係わる記録装置は、上記第1の発明において、上記焦点距離稼働範囲は、光学的稼働範囲とデジタル処理の稼働範囲とを有し、上記連動特性設定部は、上記光学的稼働範囲とデジタル処理の稼働範囲のそれぞれに対応した指向性を設定する。
【0011】
第7の発明に係わる記録装置は、上記第1の発明において、上記焦点距離稼働範囲がデジタル処理で稼働する範囲のみの場合は、このデジタル処理の稼働範囲に対して焦点距離稼働範囲を設定する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、レンズ交換式の記録装置において、焦点距離の変化に応じてマイクの指向性の変化を実感することの可能な記録装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係わるカメラの電気回路を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態に係わるカメラにおいて、交換レンズごとのマイクの指向性を示すグラフである。
【図3】本発明の一実施形態に係わるカメラにおいて、アートフィルタとしてジオラマが選択されている場合の交換レンズごとのマイクの指向性を示すグラフである。
【図4】本発明の一実施形態に係わるカメラにおいて、シーンプログラムとして風景が選択されている場合の交換レンズごとのマイクの指向性を示すグラフである。
【図5】本発明の一実施形態に係わるカメラにおいて、シーンプログラムおよびアートフィルタと、マイクの指向性の関係を示す図である。
【図6】本発明の一実施形態に係わるカメラにおいて、光学ズームとデジタルズームによってズーミングがなされる場合のマイクの指向性を示すグラフである。
【図7】本発明の一実施形態に係わるカメラにおいて、焦点距離とマイクの指向性が非線形の関係にある場合のグラフである。
【図8】本発明の一実施形態に係わるカメラの動作を示すフローチャートである。
【図9】本発明の一実施形態に係わるカメラのマイク指向性制御可否の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面に従って本発明を適用したカメラを用いて好ましい実施形態について説明する。本発明の好ましい一実施形態に係わるカメラは、デジタルカメラであり、撮像部101を有し、この撮像部101によって被写体像を画像データに変換し、この変換された画像データに基づいて、被写体像を本体の背面に配置した表示部105にライブビュー表示する。撮影者はライブビュー表示を観察することにより、構図やシャッタチャンスを決定する。レリーズ操作時には、画像データが記録媒体113に記録される。記録媒体113に記録された画像データは、再生モードを選択すると、表示部105に再生表示することができる。また、本実施形態に係わるカメラは、ズームレンズ等の交換レンズ200を装着可能であり、焦点距離に応じてマイク(121、300)の指向性を調節することが可能である。
【0015】
図1は、本実施形態に係わるカメラの電気回路を示すブロック図である。カメラは、カメラ本体100、交換レンズ200、外部マイク300から構成される。
【0016】
カメラ本体100内のバス111には、撮像部101、画像処理部103、表示部105、操作部107、CPU(Central Processing Unit)109、記憶媒体113、交換レンズ制御部115、アクセサリ制御部117、オーディオ制御部119、ROM(Read Only Memory)125、RAM(Random Access Memory)127が接続されている。
【0017】
撮像部101は、交換レンズ200内のレンズ201を通過した被写体像を受光し、この被写体像を静止画や動画の画像データに変換する。変換された画像データはバス111に出力される。
【0018】
画像処理部103は、撮像部101によって変換された画像データを取り込み、各種画像処理を施す。画像処理としては、画像データのデジタル的増幅(デジタルゲイン調整処理)、色補正、ガンマ(γ)補正、コントラスト補正、ライブビュー表示用画像生成、フェードアウト、フェードイン等の各種の画像処理を行なう。また、ジオラマ等のアートフィルタが撮影者によって設定されている場合には、設定されたアートフィルタに応じた画像処理を行う。画像処理を施した画像データは、バス111に出力される。
【0019】
表示部105は、カメラ本体100の背面等に配置され、液晶モニタ、有機EL等のモニタ画面を有する。表示部105には、ライブビュー表示、メニュー画面表示、記録済み画像の再生表示等、各種画像の表示がなされる。メニュー画面では十字釦やOK釦を操作することにより種々の設定、例えばデジタルズームの有効化等を行うことができる。操作部107は、撮影者がカメラに指示を与えるためのスイッチ、ダイヤル等の部材であり、パワースイッチ、レリーズ釦、動画釦、十字釦、OK釦、メニュー釦等の各種操作部材が配置されている。また、操作部107を操作することにより、風景モード等、シーンプログラムの設定や、ジオラマ等のアートフィルタの設定を行うことができる。
【0020】
CPU109は、ROM125に記憶されているプログラムに従ってカメラ全体の制御を行う。また、CPU109は、交換レンズ200の焦点距離の稼働範囲からマイク指向性制御範囲、すなわち、焦点距離稼働範囲に対する指向性可変量を設定する連動特性設定部としての機能を有する。マイク指向制御範囲(指向性可変量)は、後述する図2〜図4、および図6、図7において、縦軸に示す広指向性と狭指向性の間の範囲に相当する。なお、連動特性設定部は、取得した焦点距離の稼働範囲から指向性稼働範囲を最大限に対応づけるようにする。
【0021】
さらに、CPU109は、音の広がりを決める指向性パラメータの算出、すなわち、焦点距離の現在位置に基づいて集音した音声の指向性を制御する指向性パラメータを決定する指向性パラメータ決定部としても機能する。すなわち、連動特性設定部および指向性パラメータ決定部は、内蔵マイク121または外部マイク300の指向性に関する情報に加えて、装着された交換レンズ200のワイド端焦点距離、テレ端焦点距離、現在の焦点距離等の情報を用いて、後述する図2〜図7に示すような特性で、集音した音声に指向性を有する音声データに変換するための指向性パラメータを算出する。CPU109は、決定された指向性パラメータに応じて、オーディオ制御部119において集音した音声の指向性を変更する指向性変更処理部としても機能する。
【0022】
記憶媒体113は、カメラ本体100に着脱自在または内蔵された不揮発性の記録用の媒体であり、画像データや音声データの記憶を行う。
【0023】
交換レンズ制御部115は、レンズ制御部115a、検出部115b、および通信制御部115cを有し、交換レンズ200と通信を行い、交換レンズ200の制御を行う。すなわち、通信制御部115cは、交換レンズ200内の通信制御部209と通信を行う。検出部115bは、交換レンズ200の装着の有無を検出し、交換レンズ200が装着されている場合には、通信制御部115cを介して、装着された交換レンズ200の種別、ワイド端焦点距離、テレ端焦点距離、現在の焦点距離等、交換レンズ200の種々のレンズ情報の検出を行う。レンズ制御部115aは、検出部115bによって検出された情報を基づいて、レンズ制御CPU205を介して、交換レンズ200の制御を行う。交換レンズ制御部115は、交換レンズ200から焦点距離の稼働範囲(ワイド端焦点距離およびテレ端焦点距離)と現在の焦点距離を取得する焦点距離情報取得部として機能する。
【0024】
アクセサリ制御部117は、外部マイク300の装着の可否を検出する。アクセサリ制御部117は、判別された外部マイク300の種別に応じて、外部マイク300に対して制御を行う。また、アクセサリ制御部117は、外部マイク300と通信を行うことができる場合には、外部マイク300の種別の判別を行い、ステレオマイクの右(R)と左(L)の間の距離情報等を取得する。
【0025】
オーディオ制御部119は、信号処理部119a、A/D変換部119b、D/A変換部119c、スイッチ部119dを有する。スイッチ119dは、外部マイク300または内蔵マイク121からアナログ音声信号の入力切換えを行い、A/D変換部119bに出力する。A/D変換部119bはアナログ音声信号をデジタル音声データに変換し、信号処理部119aに出力する。
【0026】
信号処理部119aは、DSP(デジタルシグナルプロセッサ:Digital Signal Processor)等を含み、CPU109によって算出された指向性パラメータに基づいて、交換レンズ200の焦点距離に応じた指向性となるようにデジタル音声データを調整し、D/A変換部119cに出力する。また、信号処理部119aでは、ゲインの調整によりフェードイン、フェードアウトの処理も行う。信号処理部119aにおける信号処理は、マイク間隔や周波数特性に合わせてチューニングされる。なお、一般に信号処理することにより音質は変化する。マイク指向性処理を無効状態にする場合と有効状態にする場合で、指向性が略中央の状態において音質は変化する。そこで、メニュー設定で、マイク指向性処理の有効・無効を切換えるように構成するとよい。D/A変換部119cは、信号処理部119aによって処理されたデジタル音声データをアナログ音声信号に変換し、この音声信号を内蔵スピーカ123出力する。
【0027】
集音部として機能する内蔵マイク121は、ステレオマイクであり、周囲の音声をアナログ音声信号に変換し、また内蔵スピーカ123は、ステレオスピーカであり、信号処理部119aにおいて処理された音声データに基づいて、指向性のある音を発生する。オーディオ制御部119は、CPU109における指向性変更処理部における変更処理にしたがって、集音部(内蔵マイク121、外部マイク300)の指向性を変更する指向性を可変にする指向性可変部としての機能を有する。
【0028】
ROM125は、フラッシュメモリ等、電気的に書き換え可能な不揮発性メモリである。ROM125には、カメラ全体を制御するためのプログラムや、カメラの調整値等が記憶されている。RAM127は、SDRAM等の揮発性のメモリであり、画像データや音声データ等の一時記憶用として用いられる。
【0029】
交換レンズ200は、レンズ201、レンズ制御部203、レンズ制御CPU205、レンズ操作部207、通信制御部209を有する。レンズ201は、焦点距離可変のズームレンズまたは固定焦点レンズであり、被写体像を形成する。
【0030】
レンズ操作部207は、焦点距離を変更するためのズーム環等の操作部材を有する。通信制御部209は、カメラ本体100内の通信制御部115cとの通信を行う。レンズ制御部CPU205はカメラ本体100内のレンズ制御部115aからの指示に従って、レンズ制御部205によって、レンズ201のピント合わせ、絞り制御等、交換レンズ200の全体制御を行う。また、レンズ制御CPU205は、交換レンズ201のテレ端焦点距離、ワイド端焦点距離、現在の焦点距離等の種々の情報を検出し、通信制御部209を介して、カメラ本体100側に情報を送信する。
【0031】
集音部として機能する外部マイク300は、カメラ本体100に脱着可能なステレオマイクまたはモノラルマイクであり、周囲の音声をアナログ音声信号に変換する。外部マイク300は、アナログ音声信号をオーディオ制御部119のスイッチ部119dに出力し、またアクセサリ制御部117と信号のやり取りを行う。
【0032】
次に、本実施形態における焦点距離に応じた指向性の決定について、図2ないし図5を用いて説明する。図2は、各交換レンズの焦点距離とマイクの指向性の関係を示す図である。図2には、例示的に、焦点距離が9mm−18mmのズームレンズA、14mm−42mmのズームレンズB、焦点距離が17mmの単焦点レンズを示している。図2の横軸は、これらのレンズの焦点距離を示し、図中左が広角側、右が望遠側である。また縦軸はマイクの指向性を示し、下が広指向性であり、上に行くほど狭指向性である。なお、縦軸中に「中間」とあるが、これは単に狭指向と広指向の間にあることを意味するだけで、真ん中であることは意味しない。
【0033】
図2の例において、ズームレンズAでは、ワイド端の9mmが最広指向のマイク指向性とし、テレ端の18mmを最狭指向のマイク指向性とし、その間は焦点距離に応じて線形で指向性を変化させている。また、ズームレンズBでは、ワイド端の14mmが最広指向のマイク指向性とし、テレ端の42mmを最狭指向のマイク指向性とし、その間は焦点距離に応じて線形で指向性を変化させている。すなわち、焦点距離の絶対的な値に応じて、マイク指向性を決めるのではなく、連動特性設定部として機能するCPU109が(後述する図8のS7、S27参照)、個々のレンズの焦点距離の内、ワイド端焦点距離を最広指向に割り当て、テレ端焦点距離を最狭指向性に割り当てるようにしている。すなわち、連動特性設定部は、取得した焦点距離の稼働範囲から指向性稼働範囲を最大限に対応づけるようにしている。
【0034】
また、図2に示す単焦点レンズ(固定焦点距離のレンズ)は、デジタルズーム機能を有しており、このデジタルズームを実行した場合の焦点距離の変化に対応するマイク指向性を破線で示す。この単焦点レンズの焦点距離は17mmであり、デジタルズームを行うと17mmより望遠側に焦点距離が変化する。そこで、マイク指向性は、17mmを最広指向に対応させ、最大デジタルズーム値を最狭指向に対応させるようにしている。連動特性設定部として機能するCPU109は、交換レンズ200が固定焦点距離の場合には、指向特性を固定の位置とし、デジタルズーム機能が有効となっている場合には、デジタル処理の稼働範囲(デジタルズーム値の範囲)に対して焦点距離稼働範囲を設定し、この焦点距離稼働範囲に応じてマイク指向性を可変にしている。
【0035】
このように、本実施形態においては、焦点距離が変化する範囲の内、ワイド端焦点距離を最広指向に割り当て、テレ端焦点距離を最狭指向性に割り当てるようにしているので、焦点距離の変化に応じて音の広がりが変化し、マイクの指向性の変化を実感することができる。
【0036】
図2に示した例では、焦点距離の変化に応じて、マイク指向性も最広指向性から最狭指向性に変化させていた。しかし、設定されているアートフィルタによっては、最広指向性から最狭指向性の全範囲を使用せず、その一部を使用する方が撮影画面に相応しい場合がある。図3に示す例は、アートフィルタとしてジオラマが設定されている場合を示す。ジオラマは、画面の周囲をぼかし、中央にピントを合った像とする画像処理である。このため、画面中央の注目度が高いことから、マイク指向性も狭指向性にすることが望ましい。
【0037】
そこで、ジオラマが設定されている場合には、図3に示すように、ズームレンズAでは、ワイド端の9mmが中間のマイク指向性とし、テレ端の18mmを最狭指向のマイク指向性とし、その間は焦点距離に応じて線形で指向性を変化させている。また、ズームレンズBでは、ワイド端の14mmが中間のマイク指向性とし、テレ端の42mmを最狭指向のマイク指向性とし、その間は焦点距離に応じて線形で指向性を変化させている。なお、前述したように、中間は最広指向性と最狭指向性の丁度真ん中でなくてもよい。
【0038】
同様に、単焦点レンズの場合、デジタルズームを実行した場合には、マイク指向性は、17mmを中間のマイク指向性に対応させ、最大デジタルズーム値を最狭指向に対応させるようにしている。
【0039】
このように、アートフィルタとしてジオラマが設定された場合には、焦点距離の変化に応じて、マイク指向性も中間の指向性から最狭指向性に変化させている。このため、ジオラマに相応しいマイク指向性となる。なお、アートフィルタとしてはジオラマ以外にもあり、各種アートフィルタに相応しい指向性の範囲を自動設定するようにすればよい。すなわち、画像処理部103によって処理される画像処理モード応じて指向性稼働範囲を調節するようにすればよい。
【0040】
また、撮影モードに応じて相応しい指向性の範囲を選択するようにしてもよい。図4に示す例は、シーンプログラムとして風景モードが設定されている場合を示す。風景モードは、比較的遠方にある被写体に対してピントと露出が合うように自動焦点調節や自動露出制御を行うモードである。このため、画面全体に亘って注目度が高いことから、マイク指向性も広指向性にすることが望ましい。
【0041】
風景モードが設定されている場合には、図4に示すように、ズームレンズAでは、ワイド端の9mmが最広指向のマイク指向性とし、テレ端の18mmを中間のマイク指向性とし、その間は焦点距離に応じて線形で指向性を変化させている。また、ズームレンズBでは、ワイド端の14mmが最広指向のマイク指向性とし、テレ端の42mmを中間のマイク指向性とし、その間は焦点距離に応じて線形で指向性を変化させている。なお、前述したように、中間は最広指向性と最狭指向性の丁度真ん中でなくてもよい。
【0042】
同様に、単焦点レンズの場合、デジタルズームを実行した場合には、マイク指向性は、17mmを中間の最広指向のマイク指向性に対応させ、最大デジタルズーム値を中間のマイク指向に対応させるようにしている。
【0043】
このように、シーンプログラムとして風景モードが設定された場合には、焦点距離の変化に応じて、マイク指向性も最広指向のマイク指向性から中間のマイク指向性に変化させている。このため、風景モードに相応しいマイク指向性となる。なお、シーンプログラムとしては風景モード以外にも種々あり、各種シーンプログラムに相応しい指向性の範囲を自動設定するようにすればよい。連動特性設定部として機能するCPU109は、指向性の最大位置および最小位置に加えて中間位置を更に指定している。中間位置を指定することにより、より撮影モードや画像処理モード等に応じたマイク指向性を得ることができる。
【0044】
このように、本実施形態においては、アートフィルタやシーンプログラム等に基づいて、自動的にマイク指向性の範囲を自動設定するようにしている。図5に、設定されたアートフィルタやシーンプログラムに応じて自動設定するマイク指向性の範囲の例を示す。図5に示す例では、アートフィルタとしてジオラマが設定された場合、シーンプログラムとしてスポーツモードが設定された場合には、マイク指向性の範囲としては、ズーム(望遠)側になるように自動設定する。
【0045】
また、シーンプログラムとして風景モードや花火モードが設定された場合には、マイク指向性の範囲としては、ワイド(広角)側になるように自動設定する。また、シーンプログラムとして演奏会・ライブ等での撮影が設定された場合には、マイク指向性制御は強制的にオフとする。これらの例以外にも、カメラの設定に応じて、マイク指向性の範囲を変更するようにすればよい。
【0046】
焦点距離を変更するにあたって、光学ズームとデジタルズームを併用するタイプのカメラがある。この場合、光学ズームおよびデジタルズームによる焦点距離の変化に応じて、図2ないし図4に示すように線形に変化させてもよいが、非線形に変化するようにしてもよい。図6に示す例は、前述のズームレンズBであり、14mm−42mmの光学ズームに加えて、42mm−84mmのデジタルズームによるズームミングを可能としている。
【0047】
図6に示す例では、光学ズームの場合のマイクの指向性の変化範囲の方が、デジタルズームの場合の指向性の変化範囲よりも大きくなるように、非線形に変化している。すなわち、連動特性設定部として機能するCPU109は、光学的稼働範囲とデジタル処理の稼働範囲のそれぞれに対応した指向性を設定するようにしている。デジタルズームは、光学ズームの補助的な焦点距離可変の手段として使用されることが多いので、指向性制御にあたっては、光学ズームによる焦点距離変更に応じてマイク指向性を変更するエリアを広くとるようにしている。
【0048】
また、光学ズームであっても、焦点距離の変化とマイク指向性の変化の関係を非線形としてもよい。図7に示す例において、焦点距離9mm−18mmのズームレンズAは、ワイド側におけるマイク指向性変化範囲を広くとるようにしている。一方、焦点距離40mm−150mmのズームレンズCは、テレ側におけるマイク指向性変化範囲を広く取るようにしている。ズームレンズAは広角ズームであることから、マイク指向性変化範囲としてはワイド側を主とし、ズームレンズCは望遠ズームであることから、マイク指向性変化範囲としてはテレ側を主としている。
【0049】
次に、本実施形態における動作について、図8および図9に示すフローチャートを用いて説明する。このフローチャートは、ROM125に記憶されているプログラムに従ってCPU109によって実行される。また、ここに示すフローチャートは、主として動画撮影時の録音に関する処理について示している。
【0050】
操作部107の内のパワースイッチがオンすると、動作が開始し、まず、デジタルカメラの起動を行う(S1)。ここでは、電源電池から各部に電源が供給され、初期化等の処理を実行する。
【0051】
続いて、レンズ情報の取得を行う(S3)。ここでは、交換レンズ制御部115が、通信制御部115c、209を介して、交換レンズ200のレンズ情報を取得する。レンズ情報としては、交換レンズ200の種別、ワイド端焦点距離、テレ端焦点距離、現在の焦点距離等である。
【0052】
レンズ情報を取得すると、次に、マイク指向性制御可否を行う(S7)。ここでは、交換レンズがズームレンズであるか、またデジタルズームが有効か等に基づいて、マイク指向制御を行うか否かを判定する。マイク指向性制御によってマイク指向性を変化させる必要がない場合には、信号処理分の消費電力を抑えるために、マイク指向性制御を無効にするようにしている。このマイク指向性制御可否の詳しい動作については、図9を用いて後述する。
【0053】
マイク指向性制御可否を行うと、次に、焦点距離稼働範囲からマイク指向性制御範囲を算出する(S7)。ここでは、図2ないし図7を用いて説明したように、連動特性設定部として機能するCPU109は、交換レンズ200のワイド端焦点距離、テレ端焦点距離等のレンズ情報や、デジタルズームによる焦点距離等の情報、アートフィルタやシーンプログラム等の情報を用いて、マイク指向性の制御範囲を算出する。
【0054】
続いて、動画撮影の開始を行う(S9)。動画撮影は、操作部107の内の動画釦が操作されると動画撮影を開始する。動画釦が操作されていない場合には、他の処理を実行する。動画撮影を開始すると、撮像部101によって取得された画像データを画像処理部103によって動画用に画像処理を行い、この処理された動画の画像データを記憶媒体113に記録する。
【0055】
続いて、現在の焦点距離を取得する(S13)。ここでは、再度、交換レンズ制御部115が交換レンズ200と通信を行い、現在設定されている焦点距離を取得する。焦点距離を取得すると、次に、指向性パラメータの算出を行う(S13)。指向性パラメータは、マイク指向性を広指向か狭指向かの程度を示すパラメータである。ステップS7において算出された制御範囲の中で、ワイド端焦点距離、テレ端焦点距離、および現在の焦点距離に基づいて、指向性パラメータを算出する。
【0056】
次に、マイク指向性変更処理を行う(S15)。ここでは、信号処理部119aがステップS13において算出された指向性パラメータに基づいてマイク指向性処理の変更を行う。すなわち、指向性変更処理部として機能するCPU109と指向性可変部として機能するオーディオ制御部119によって、マイク指向性処理の変更処理を行う。このため、内蔵マイク121によって変換された音声信号に基づく音声データは、指向性パラメータに従った音の広がりとなるように音声処理がなされる。すなわち、狭指向の場合には、狭い範囲に音源があるように、逆広指向の場合には広い範囲に音源があるように音声データの処理がなされる。この処理された音声データはD/A変換された後、内蔵スピーカ103から音声が出力される。また、動画の画像データと共に記録媒体113に記録される。
【0057】
マイク指向性変更処理を行うと、次に、レンズ取り外し検出を行う(S17)。ここでは、交換レンズ制御部115内の検出部115bによって、交換レンズ200の装着の有無を判定する。なお、交換レンズ200と通信を行い、通信が不能の場合にレンズ取り外しがなされたと判定するようにしてもよい。
【0058】
ステップS17における判定の結果、レンズ取り外しがなされていた場合には、次に、フェードアウト処理を行い、動画撮影を一時中断する(S19)。交換レンズ200が取り外されたことから、動画撮影を続行することできず、また動画再生時に違和感をなくすために、画像処理部103および信号処理部119aがフェードアウト処理を行う。フェードアウト処理後、画像データおよび音声データの記録を一時中断する。
【0059】
動画撮影を一時中断すると、次に、交換レンズ200が再装着されたか否かを判定する(S21)。ここでは、交換レンズ制御部115内の検出部115bによって、交換レンズ200の装着の有無を判定する。ステップS17の場合と同様、交換レンズ200と通信を行い、通信が成立した場合に交換レンズ200が再装着された判定するようにしてもよい。
【0060】
ステップS21における判定の結果、交換レンズ200が再装着された場合には、次に、ステップS3と同様に、レンズ情報を取得する(S23)。続いて、ステップS5と同様にマイク指向性制御可否を行う(S25)。再装着された交換レンズ200がステップS5の場合と異なっている場合もあることから再度、マイク指向性制御の可否を行う。
【0061】
続いて、ステップS27と同様に、焦点距離稼働範囲からマイク指向性制御範囲を算出する(S27)。マイク指向性制御範囲を算出すると、次に、フェードイン処理し、動画撮影を再開する(S29)。動画撮影を再開するにあたって、自然な感じで動画を再開できるように、ここでは画像処理部103および信号処理部119aがフェードイン処理を行うようにしている。
【0062】
ステップS29において動画撮影を再開すると、またはステップS17における判定の結果、レンズ取り外しがなかった場合には、次に、動画撮影終了か否かを判定する(S31)。ここでは、動画釦が再度、操作され動画撮影終了が指示されたか否かを判定する。この判定の結果、動画撮影終了でなかった場合には、ステップS11に戻り、動画撮影を続行する。一方、動画撮影終了であった場合には、動画撮影終了処理を行ってから動作を終了する。なお、パワースイッチがオンであれば、ステップS3からスタートする。
【0063】
次に、ステップS5およびS25におけるマイク指向性制御可否の動作について、図9を用いて説明する。まず、処理用パラメータが有るか否かの判定を行う(S51)。処理用パラメータは、ステレオマイクの右(R)と左(L)の間隔に対応する。内蔵マイク121の場合には、左右の間隔の情報を有しているので処理用パラメータ有りと判定される。外部マイク300の場合には、通信等によって左右の間隔に関する情報を取得できた場合には、有りと判定される。
【0064】
ステップS51における判定の結果、処理用パラメータが有った場合には、次に、ズームレンズか否かの判定を行う(S53)。ここでは、ステップS3、S23において取得したレンズ情報に基づいて、ズームレンズが装着されているか否かを判定する。
【0065】
ステップS53における判定の結果、ズームレンズでなかった場合、すなわち、単焦点レンズ若しくは交換レンズ200が装着されていなかった場合には、次に、デジタルズームが有効か否かを判定する(S55)。前述したように、メニュー画面においてデジタルズームを有効化できる。
【0066】
ステップS55における判定の結果、デジタルズームが有効であった場合、またはステップS53における判定の結果、ズームレンズが装着されていた場合には、次に、マイク指向性制御を有効にする(S57)。マイク指向制御を有効にすると、前述のステップS11〜S15において、図2ないし図7を用いて説明したマイク指向制御を実行する。
【0067】
一方、ステップS55における判定の結果、デジタルズームが有効でなかった場合、またはステップS51における判定の結果、処理用パラメータがなかった場合には、次に、マイク指向性制御を無効にする(S59)。マイク指向性制御を無効にすると、前述のステップS11〜S15において、図2ないし図7を用いて説明したマイク指向制御を実行しない。なお、メニュー画面において、マイク指向性制御の無効を設定していた場合にも、このステップでマイク指向制御を無効にする。ステップS57またはS59においてマイク指向性制御について有効または無効にすると、元のフローに戻る。
【0068】
以上、説明したように、本発明の一実施形態においては、焦点距離情報取得部として機能する交換レンズ制御部115は、交換レンズから焦点距離の稼働範囲と現在の焦点距離を取得し(図8S3参照)、連動特性設定部として機能するCPU109は焦点距離稼働範囲に対する指向性可変量を設定し(図8のS7参照)、指向性パラメータ制御部として機能するCPU109は焦点距離の現在位置に基づいて集音した音声の指向性を制御する指向性パラメータを決定し(図8のS13参照)、指向性変更処理部として機能するCPU109は決定された指向性パラメータに応じて集音した指向性を変更する(図8のS15参照)。指向性可変部として機能するオーディオ制御部はこの変更処理に従って、集音部の指向性を可変にする。
【0069】
このように、本発明の一実施形態は構成されていることから、レンズ交換式の記録装置において、焦点距離の変化に応じてマイクの指向性の変化を実感することができる。すなわち、焦点距離の絶対値に従ってマイクの指向性を変化させるのではなく、交換レンズの焦点距離の稼働範囲を考慮した現在の焦点距離に基づいてマイクの指向性を決めるようにしている。
【0070】
また、本発明の一実施形態においては、画像処理モードやシーンプログラム等の撮影モードに応じてマイク指向特性を変更するようにしている。このため、映像効果と連動したマイク指向性とすることができる。
【0071】
なお、本発明の一実施形態においては、撮影のための機器として、デジタルカメラを用いて説明したが、カメラとしては、デジタル一眼レフカメラでもデジタル一眼カメラでもよく、ビデオカメラ、ムービーカメラのようなカメラでもよい。いずれにしても、レンズ交換式の焦点距離可変の撮影機器であれば、本発明を適用することができる。
【0072】
本発明は、上記実施形態にそのまま限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素の幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0073】
100・・・デジタルカメラ、101・・・撮像部、103・・・画像処理部、105・・・表示部、107・・・操作部、109・・・CPU、111・・・バス、113・・・記憶媒体、115・・・交換レンズ制御部、115a・・・レンズ制御部、115b・・・検出部、115c・・・通信制御部、117・・・アクセサリ制御部、119・・・オーディオ制御部、119a・・・信号処理部、119b・・・A/D変換部、119c・・・D/A変換部、119d・・・スイッチ部、121・・・内蔵マイク、123・・・内蔵スピーカ、125・・・ROM、127・・・RAM、200・・・交換レンズ、201・・・レンズ、203・・・レンズ制御部、205・・・レンズ制御CPU、207・・・レンズ操作部、209・・・通信制御部、300・・・外部マイク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像光学系を交換可能なレンズ交換式の記録装置において、
音声を集音する集音部と、
交換レンズから焦点距離の稼働範囲と現在の焦点距離を取得する焦点距離情報取得部と、
上記焦点距離稼働範囲に対する指向性可変量を設定する連動特性設定部と、
上記焦点距離の現在位置に基づいて上記集音した音声の指向性を制御する指向性パラメータ決定部と、
上記決定された指向性パラメータに応じて上記集音した指向性を変更する指向性変更処理部と、
上記指向性変更処理部の変更処理に従って、上記集音部の指向性を可変にする指向性可変部と、
を具備することを特徴とする記録装置。
【請求項2】
上記連動特性設定部は、上記取得した焦点距離の稼働範囲から指向性稼働範囲を最大限に対応づけるようにすることを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
さらに、撮像した映像を処理する画像処理部を有し、
上記画像処理部によって処理される画像処理モードに応じて指向性稼働範囲を調整することを特徴とする請求項1および2に記載の記録装置。
【請求項4】
上記連動特性設定部は、上記交換レンズが固定焦点距離の場合には、上記指向性特性も固定の位置とすることを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項5】
上記連動特性設定部は、指向性の最大および最小位置に加えて中間位置を更に指定することを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項6】
上記焦点距離稼働範囲は、光学的稼働範囲とデジタル処理の稼働範囲とを有し、
上記連動特性設定部は、上記光学的稼働範囲とデジタル処理の稼働範囲のそれぞれに対応した指向性を設定することを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項7】
上記焦点距離稼働範囲がデジタル処理で稼働する範囲のみの場合は、このデジタル処理の稼働範囲に対して焦点距離稼働範囲を設定することを特徴とする請求項1に記載の記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−204900(P2012−204900A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−65344(P2011−65344)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(504371974)オリンパスイメージング株式会社 (2,647)
【Fターム(参考)】