説明

設計支援システムおよび設計支援プログラム

【課題】図形要素の形状を容易に制御することができるシステム等を提供する。
【解決手段】本発明の設計支援システム100によれば、ユーザにより与えられた変形指示にしたがいながらも自由度がある変形条件にしたがって図形要素が変形される。この結果、変形指示そのものが制限されることはないため、少なくともその分だけ容易に図形要素の形状が制御されうる。また、変形条件に自由度があるため、設計上無理のある補正図形要素が作成される可能性を低減しながら図形要素の形状が制御されうる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスプレイ装置に表示されている対象物の形状を変更する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
曲線の形状変更においては、曲線に対して曲率プロットの形状および変化状況を確認しながら、当該曲線の制御点を3次元的に変位させるという作業を満足の行く結果が得られるまで繰り返すという手法が採用されている。
【0003】
曲面の形状変更においては、曲面の断面線に対して縮閉線を用いて制御することにより生成された断面線群によって曲面を生成する手法が提案されている(非特許文献1参照)。
【0004】
しかるに、自動車のスタイリングのような複雑な形状を扱う場合には前記手法の適用が困難である。このため、曲面に対してハイライトの位置、姿勢および形状などを確認しながら、当該曲面の制御点を3次元的に変位させる、または、四辺から曲面を生成する際のパラメータを駆使して曲面内部の形状を制御するという作業を満足の行く結果が得られるまで繰り返すという手法が採用されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】「デジタルスタイルデザインに関する研究」社団法人精密工学会誌2004年第70巻
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、前記手法によれば、その性質上、トリムによる四辺以外の曲面において期待通りの結果を得ることが難しい。さらに、曲面断面の曲率変化が単調変化および極値を有するような形状のみを対象としており、自動車のスタイリングのような複雑な形状を一度に制御することは困難である。また、曲線においては同様の理由により、制御点の変位によって生成される新たな曲線の形状を所望の形状に変更することはきわめて困難である。
【0007】
そこで、本発明は、図形要素の形状を容易に制御することができるシステム等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するための本発明の設計支援システムは、出力装置に表示されている仮想的な空間における図形要素に対する、入力装置により検知された変形指示を認識するように構成されている第1演算処理要素と、前記第1演算処理要素により認識された前記変形指示にしたがいながらも自由度を有する変形条件が満たされるように前記図形要素が変形された結果としての補正図形要素を作成した上で前記出力装置に表示させるように構成されている第2演算処理要素とを備えていることを特徴とする(第1発明)。
【0009】
本発明の設計支援システムによれば、ユーザにより与えられた変形指示にしたがいながらも自由度がある変形条件にしたがって図形要素が変形される。この結果、変形指示そのものが制限されることはないため、容易に図形要素の形状が制御されうる。また、変形条件に自由度があるため、設計上無理のある補正図形要素が作成される事態を回避しながら図形要素の形状が制御されうる。
【0010】
第1発明の設計支援システムにおいて、前記第1演算処理要素が、前記図形要素としての曲面および平行に配置された平面群により定義される複数のハイライト線のうち、一のハイライト線に対する指定ハイライト線への変位指示を前記変形指示として認識し、前記第2演算処理要素が、前記曲面が変形された結果としての前記指定ハイライト線に応じた一の補正ハイライト線が定義される補正曲面を前記補正図形要素として作成するとともに、ハイライト操作の視線方向とは異なる方向について指定ハイライト線の位置が拘束され、かつ、前記一のハイライト線における前記平面と前記曲面との交線の接線方向と、前記一の補正ハイライト線における前記平面と前記補正曲面との交線の接線方向とが同じである一方、前記一のハイライト線と、前記平面および前記曲面の交線との交点における前記曲面の法線ベクトルと、前記一の補正ハイライト線と、前記平面および前記補正曲面の交線との交点における前記補正曲面の法線ベクトルとが異なっていてもよく、かつ、前記指定ハイライト線と、前記一の補正ハイライト線とがハイライト操作の視線方向について離れていてもよいという自由度を有する条件を前記曲面変形条件として用いて前記補正曲面を作成するように構成されていてもよい(第2発明)。
【0011】
当該構成の設計支援システムによれば、曲面の変形指示そのものが制限されることはないため、容易に曲面の形状が制御されうる。また、曲面変形条件に自由度があるため、元の曲面と比較してハイライト線の配置パターンが著しく異なるような補正曲面が作成される事態を回避しながら曲面の形状が制御されうる。
【0012】
第1発明の設計支援システムにおいて、前記第1演算処理要素が、前記図形要素としての曲線の曲率変化態様の変更指示を前記変形指示として認識するように構成され、前記第2演算処理要素が、前記曲線が変形された結果としての補正曲線を前記補正図形要素として作成するとともに、前記曲線および前記曲率変化態様の変更指示に応じた前記補正曲線のそれぞれの端点位置、端点における接線方向および端点曲率のうち少なくとも1つが一致するという曲線変形条件を前記変形条件として、前記補正曲線を作成するように構成されていてもよい(第3発明)。
【0013】
第3発明の設計支援システムにおいて、前記第2演算処理要素は、前記曲率変化態様の変更指示が補正されてもよいという自由度を有する条件を前記曲線変形条件として用いて前記補正曲線を作成するように構成されていてもよい(第4発明)。
【0014】
当該構成の設計支援システムによれば、曲線の変形指示そのものが制限されることはないため、容易に曲線の形状が制御されうる。また、曲線変形条件に自由度があるため、元の曲線と比較して端点位置、端点における接線方向および端点曲率のすべてが異なるような補正曲線が作成される事態を回避しながら曲線の形状が制御されうる。
【0015】
前記課題を解決するための本発明の設計支援プログラムは、前記出力装置と、前記入力装置とを備えているコンピュータを、第1〜第4発明のうちいずれか1つの設計支援システムとして機能させることを特徴とする(第5発明)。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の設計支援システムの構成図。
【図2】本発明の設計支援システムの機能(第1実施形態)に関する説明図。
【図3】元の曲面に関する説明図。
【図4】曲面変形条件に関する説明図。
【図5】曲面変形条件の自由度に関する説明図。
【図6】ハイライト線の配置パターンに関する説明図。
【図7】本発明の設計支援システムの機能(第2実施形態)に関する説明図。
【図8】元の曲線に関する説明図。
【図9】変形指示および曲線変形指示に関する説明図。
【図10】補正曲線に関する説明図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(本発明の設計支援システムの構成)
本発明の一実施形態としての設計支援システムの構成について説明する。
【0018】
図1に示されている設計支援システム100は、図形要素の変形指示を検知する入力装置210および図形要素を表示する出力装置220を備えているコンピュータにより構成されている。
【0019】
入力装置210は、たとえば、使用者の指先またはペン先の位置または軌跡を検知するタッチパネルにより構成されている。このパネルは出力装置220と一体的に構成されてもよい。この場合、指先またはペン先が出力装置220の画面に接触しながら動く際の軌跡が入力装置210により検知される。操作ボタンおよびマウスポインティング装置などが入力装置210の構成要素として採用されてもよい。音声認識装置が入力装置210の構成要素として採用されてもよい。
【0020】
設計支援システム100は、第1演算処理要素110と、第2演算処理要素120とを備えている。
【0021】
第1演算処理要素110は、出力装置220に表示されている仮想的な3次元空間における図形要素の、入力装置210により検知された変形指示を認識するように構成されている。第2演算処理要素120は、変形指示にしたがいながらも自由度を有する変形条件が満たされるように図形要素が変形された結果としての補正図形要素を作成した上で、出力装置220に表示させるように構成されている。
【0022】
なお、本発明を構成する「要素」は物理的にはメモリ(ROM,RAM)、および、このメモリから「設計支援プログラム」を読み出して担当する演算処理を実行する演算処理装置(CPU)により構成されている。このプログラムはCDやDVD等のソフトウェア記録媒体を通じてコンピュータにインストールされてもよいが、コンピュータからサーバに要求信号が送信されたことに応じて当該サーバによってネットワークや人工衛星を介して当該コンピュータにダウンロードされてもよい。
【0023】
(本発明の第1実施形態としての設計支援システムの機能)
本発明の第1実施形態としての設計支援システムの機能について説明する。
【0024】
図3に示されているような曲面Sが出力装置220に表示されている状態について考える。曲面Sの形状特性を表わすハイライト線HLも出力装置220に表示されている。
【0025】
ハイライト線HLは、図3に示されているように指定方向に平行に配置された平面群(破線参照)のそれぞれと、曲面Sとの複数の交線CL(一点鎖線参照)が定義された場合、当該複数の交線CLのそれぞれの接線ベクトルの方向が一致する点群を接続する曲線として定義される。曲面Sが定義されている3次元座標系における指定方向は、たとえば、作業者による入力装置210に対する操作入力に応じて任意に変更されうる。図3では説明の簡単のため、1本のハイライト線HLのみが示されているが、実際には多数のハイライト線が出力装置220に表示されていてもよい。
【0026】
また、曲面Sは、図6(a)に縞模様で示されているようなハイライト線HLの並列パターンを有している。縞の幅および間隔はハイライト線HLの並列密度または間隔を表わしている。曲面Sは面群から構成されていてもよい。当該面群の一部または全部がトリム面により構成されていてもよい。たとえば、図4(b)に示されているように、トリム面S1〜S3およびトリムされていない曲面S4により構成される面群SGによって、曲面Sが構成されていてもよい。面群はG0連続性がある(境界を介してつながっている)面群であってもよい。
【0027】
この状態で、まず、第1演算処理要素110により、曲面Sの変形指示が認識される(図2/STEP110)。具体的には、作業者による入力装置210に対する操作入力に応じて、図4に示されているように指定ハイライト線HLsetが設定されるとともに、一のハイライト線HLが指定される。これにより、当該一のハイライト線HLを指定ハイライト線HLsetに変位させる旨の指示が認識される。
【0028】
なお、変形指示が認識されている時点で出力装置220に表示されているような形態で曲面Sを望む方向が「(ハイライト操作の)視線方向」として定義される。視線方向は、たとえば、作業者による入力装置210の操作に応じて任意に変更されうる。
【0029】
そして、変形指示に応じて、第2演算処理要素120により、次の曲面変形条件が満たされるように曲面Sが変形された結果としての補正曲面Sbarが作成された上で、出力装置220に表示される(図2/STEP120)。
【0030】
補正曲面Sbarの作成に際して、曲面Sと、曲面変形条件とを入力として、補正曲面Sbarを出力とする任意の変形ソフトウェアが使用される。この変形ソフトウェアとしては、たとえば、think3社のGSM(Global Shape Modeling)が挙げられる。
【0031】
当該変形ソフトウェアによれば、3次元実数空間(ユークリッド空間)R3から3次元実数空間R3への写像(写像行列)Mによって記述されるC大局的または局所的変形が実行される。写像Mにより、一の点が一の点に変換され、一の曲線が一の曲線に変換され、かつ、一の曲面が一の曲面に変換される。
【0032】
写像Mは、式(01)で表わされるようにCbarは曲線Cが写像Mにより変換された結果M(C(t))であるため、曲線C(t)が補正曲線Cbar(t)に変更された場合、当該曲線を表現するのに用いられるパラメータtを保存する写像である。写像Mは、式(02)で表わされるようにSbarは曲面Sが写像Mにより変換された結果M(S(u,v))であるため、曲面S(u,v)が補正曲面Sbar(u,v)に変更された場合、当該曲面を表現するのに用いられるパラメータ(u,v)を保存する写像である。
【0033】
C(t)→Cbar(t)=M(C(t)) ..(01)。
【0034】
S(u,v)→Sbar(u,v)=M(S(u,v)) ..(02)。
【0035】
そして、写像Mに応じて定まるエネルギー様の関数の値を最小化するようなただ1つの写像Mが求められる。なお、当該関数の値を最小化するとともに、位置、接線方向および曲率のうち少なくとも1つに関する拘束条件を満たすような写像Mが求められてもよい。その上で、当該求められた写像Mに応じた補正曲面Sbar(または補正曲線Cbar)が出力装置220において出力される。
【0036】
(曲面変形条件)
ハイライト操作の視線方向とは異なる方向について指定ハイライト線HLsetの位置が拘束され、かつ、一のハイライト線HLにおける平面と曲面Sとの交線CLの接線方向と、指定ハイライト線HLsetに応じた一の補正ハイライト線HLbarにおける当該平面と補正曲面Sbarとの交線CLbar接線方向とが同じである(図5(b)参照)。
【0037】
その一方、曲面変形条件は、次のような自由度を有する。
【0038】
(曲面変形条件の自由度)
一のハイライト線HLと交線CLmとの交点における曲面Sの単位法線ベクトルNmと、一の補正ハイライト線HLbarと交線CLmbarとの交点における補正曲面Sbarの単位法線ベクトルNmbarとが異なっていてもよく(図5(a)参照)、かつ、指定ハイライト線HLsetと、一の補正ハイライト線HLbarとがハイライト操作の視線方向について離れていてもよい(図5(b)参照)。
【0039】
前記性質を有する変形ソフトウェアおよび前記のように自由度を有する曲面変形条件に依れば、単面だけではなく、面群から構成される曲面を対象として変形が実施されうる。当該面群の一部または全部がトリム面により構成されていてもよい。たとえば、図4(b)に示されているように、トリム面S1〜S3およびトリムされていない曲面S4により構成される面群SGによって、曲面Sが構成されていてもよい。
【0040】
前記のように自由度のある曲面変形条件にしたがって作成された補正曲面Sbarにおける補正ハイライト線HLbarの配置パターン(図6(b)縞模様参照)は、補正ハイライト線HL1barおよびHL2barの理想的な配置態様(図6(b)一点鎖線及び二点鎖線参照)と近似または酷似していることがわかる。なお、入力された指定ハイライト線HLsetの位置によっては、補正ハイライト線HLbarの理想的な配置態様はさまざまに変化する。補正ハイライト線HLbarの配置態様が元のハイライト線の配置態様から著しく乖離する場合もある。
【0041】
その一方、前記のような自由度がない曲面変形条件にしたがって補正曲面Sbarが作成された場合、補正ハイライト線HLbarの配置パターンが、元の曲面Sのハイライト線HLの配置パターン(図6(a)縞模様参照)から著しく乖離する可能性がある。
【0042】
たとえば、補正曲面Sbarにおける補正ハイライト線の配置パターン(図6(c)縞模様参照)が、補正ハイライト線HL1barおよびHL2barの理想的な配置態様(図6(c)一点鎖線及び二点鎖線参照)から乖離していることがわかる。
【0043】
(本発明の第1実施形態の設計支援システムの作用効果)
本発明の第1実施形態としての設計支援システム100によれば、曲面Sの変形指示そのものが制限されることはないため、容易に曲面Sの形状が制御されうる(図5(a)参照)。また、曲面変形条件に自由度があるため(図5(a)(b)参照)、元の曲面Sと比較してハイライト線HLの配置パターンが著しく異なるような補正曲面Sbarが作成される事態を回避しながら曲面Sの形状が制御されうる(図6(a)〜(c)参照)。
【0044】
(本発明の第2実施形態の設計支援システムの機能)
本発明の第2実施形態としての設計支援システムの機能について説明する。
【0045】
図8に示されているような曲線Cが出力装置220に表示されている状態について考える。なお、3次元空間における曲線C3DはG0連続性がある線群から構成されていてもよい。
【0046】
一般的には、まず、曲線C3Dが3次元空間(出力装置220に表示されている。)から平面または2次元空間(入力装置210に対する操作入力等によって定義される。)に投影される。これにより、曲線C3Dが当該平面に射影された結果として当該平面上の曲線Cが定義される。この上で、曲線Cが次に説明するように変形されることにより当該平面上の補正曲線Cbarが作成される。そして、補正曲線Cbarが、当該平面から元の3次元空間に逆投影されることにより、3次元空間における補正曲線C3Dbarが作成される。
【0047】
これら一連の処理の過程が出力装置220により表示される。これにより、ユーザは3次元空間における曲線C3D、曲線C3Dの当該平面への投影結果としての曲線C、当該平面上における曲線Cの変形結果としての補正曲線Cbarおよび補正曲線Cbarの3次元空間への逆投影結果としての補正曲線C3Dbarのそれぞれの形状および配置等を認識することができる。
【0048】
基礎となる曲線C上の各点pC(s)から、当該各点pC(s)における曲線Cの曲率中心に向かってまっすぐに伸びる線分群(以下「ひげ」という。)も出力装置220に表示されている。ここで「s」は、たとえば、該当曲線に沿ってその始点から終点までの間で定義されている弧長(arc-length)を意味している。
【0049】
曲線C上の点pC(s)からのびる1本のひげの長短は、この点pC(s)における曲線Cの曲率κC(s)の高低を表わしている。具体的には、このひげの長さは、曲率κC(s)に所定の曲率描画スケール係数αが乗じられることにより定められている。図8において、ひげが折れ曲がりのある輪郭を描いているが、これは、図9(a)に実線で示されているように曲線Cに沿ってその曲率κC(s)が円滑に変化していないことを示している。
【0050】
当該実施形態においては、ひげが凹凸のない滑らかな形状を描くように、すなわち、曲線Cに沿ってその曲率が連続的または規則的に変化するように当該曲線Cの形状を補正することを目的としている。
【0051】
そこで、まず、第1演算処理要素110により、曲線Cの変形指示が認識される(図7/STEP210)。具体的には、ユーザにより入力装置210が操作されることにより描かれた、ひげの輪郭形状を指定するための目標曲率曲線Tfが曲線変形指示として認識される。これにより、次に説明するように前記目的が達成される。
【0052】
目標曲率曲線Tfの認識に応じて、曲線Cの目標曲率κbar(s)が決定される。具体的には、曲線Cの目標曲率κbar(s)が、曲線C上の点pC(s)と目標曲率曲線Tf上の点pTf(s)との距離(ノルム)と、前記曲率描画スケールαとに基づき、式(202)にしたがって表わされる。これにより、図9(b)に一点鎖線で示されているようにパラメータの値sに応じて変化する目標曲率κbar(s)が定義される。
【0053】
κbar(s)=|pC(s)−pTf(s)|/α ..(202)。
【0054】
そして、第2演算処理要素120により、次の曲線変形条件が満たされるように曲線Cが変形された結果としての補正曲線Cbarが作成された上で、出力装置220に表示される(図7/STEP220)。
【0055】
(曲線変形条件)
次の境界条件1〜6のうち少なくとも1つが満たされる。
【0056】
(境界条件1)補正曲線Cbarの始点位置pCbar(s1)と元曲線Cの始点位置pC(s1)とが一致する。
【0057】
(境界条件2)補正曲線Cbarの始点姿勢θCbar(s1)と元曲線Cの始点姿勢θc(s1)とが一致する。
【0058】
(境界条件3)補正曲線Cbarの始点曲率κCbar(s1)と元曲線Cの始点曲率κC(s1)とが一致する。
【0059】
(境界条件4)補正曲線Cbarの終点位置pCbar(s2)と元曲線Cの終点位置pC(s2)とが一致する。
【0060】
(境界条件5)補正曲線Cbarの終点姿勢θCbar(s2)と元曲線Cの終点姿勢θc(s2)とが一致する。
【0061】
(境界条件6)補正曲線Cbarの終点曲率κCbar(s2)と元曲線Cの終点曲率κC(s2)とが一致する。
【0062】
目標曲率κbar(s)にそのまましたがうことにより、この曲線変形条件が満たされると仮定すると、補正曲線Cbar上の点(位置)pCbar(s)は、曲線Cの始点位置pC(s1)と、1次元座標値uにおける補正曲線Cbarの単位接線ベクトルt(u)=(cosθCbar(u),sinθCbar(u))とに基づき、式(204)により表わされる。補正曲線Cbarの姿勢θCbar(u)は、目標曲率κbar(s)に応じて定まる、点Cbar(u)における接線方向、すなわち、接線ベクトルt(u)の方位角を意味する。
【0063】
pcbar(s)=pC(s1)+∫[s1,s]t(u)du ..(204)。
【0064】
また、当該仮定にしたがうと、補正曲線Cbarの姿勢θCbar(s)は、曲線Cの始点姿勢θC(s1)と、1次元座標値uにおける目標曲率κbar(u)とに基づき、式(206)にしたがって表わされる。
【0065】
θCbar(s)=θC(s1)+∫[s1,s]κbar(u)du ..(206)。
【0066】
しかるに、ユーザにより指定された目標曲率曲線Tfにそのまましたがうと、当該条件が満たされない可能性がある。このため、曲線変形条件は次のような自由度を有する。
【0067】
(曲線変形条件の自由度)
曲線変形指示を表わす目標曲率曲線Tfに応じた目標曲率κbar(s)が変更されてもよい。なお、境界条件1〜6のうちすべてが満たされる必要はないという意味でも、曲線変形条件は自由度を有している。
【0068】
具体的には、この自由度により、目標曲率κbar(s)にスカラー関数φ(s)が乗じられることにより、新たな目標曲率κbar_mdf(s)=κbar(s)・φ(s)が決定される。その結果、図9(b)に破線で示されているように座標値sに応じて変化する目標曲率κbar_mdf(s)が定義される。スカラー関数φ(s)は、たとえば前記曲線変形条件が満たされるように探索的に決定される。
【0069】
そして、目標曲率κbar_mdf(s)にしたがって元の曲線Cが補正された結果として、曲率κbar_mdf(s)を有する補正曲線Cbarが作成される。これにより、図10に示されているように、ひげの輪郭が滑らかに変化するような補正曲線Cbarが出力装置220に表示される。さらに、前記のように補正曲線Cbarの3次元空間への逆投影結果としての補正曲線C3Dbarが出力装置220により出力される。
【0070】
(本発明の第2実施形態の設計支援システムの作用効果)
本発明の第2実施形態としての設計支援システム100によれば、曲線Cの変形指示(目標曲率曲線Tfの描画)そのものが制限されることはないため、容易に曲線Cの形状が制御されうる(図9(a)参照)。また、曲線変形条件に自由度があるため(図9(b)参照)、元の曲線Cと比較して端点位置、端点における接線方向および端点曲率のすべてが異なるような補正曲線Cbarが作成される事態を回避しながら曲線Cの形状が制御されうる(図10参照)。
【符号の説明】
【0071】
100‥設計支援システム、110‥第1演算処理要素、120‥第2演算処理要素、210‥入力装置、220‥出力装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
出力装置に表示されている仮想的な空間における図形要素に対する、入力装置により検知された変形指示を認識するように構成されている第1演算処理要素と、
前記第1演算処理要素により認識された前記変形指示にしたがいながらも自由度を有する変形条件が満たされるように前記図形要素が変形された結果としての補正図形要素を作成した上で前記出力装置に表示させるように構成されている第2演算処理要素とを備えていることを特徴とする設計支援システム。
【請求項2】
請求項1記載の設計支援システムにおいて、
前記第1演算処理要素が、前記図形要素としての曲面および平行に配置された平面群により定義される複数のハイライト線のうち、一のハイライト線に対する指定ハイライト線への変位指示を前記変形指示として認識し、
前記第2演算処理要素が、前記曲面が変形された結果としての前記指定ハイライト線に応じた一の補正ハイライト線が定義される補正曲面を前記補正図形要素として作成するとともに、
ハイライト操作の視線方向とは異なる方向について指定ハイライト線の位置が拘束され、かつ、前記一のハイライト線における前記平面と前記曲面との交線の接線方向と、前記一の補正ハイライト線における前記平面と前記補正曲面との交線の接線方向とが同じである一方、前記一のハイライト線と、前記平面および前記曲面の交線との交点における前記曲面の法線ベクトルと、前記一の補正ハイライト線と、前記平面および前記補正曲面の交線との交点における前記補正曲面の法線ベクトルとが異なっていてもよく、かつ、前記指定ハイライト線と、前記一の補正ハイライト線とがハイライト操作の視線方向について離れていてもよいという自由度を有する条件を前記曲面変形条件として用いて前記補正曲面を作成するように構成されていることを特徴とする設計支援システム。
【請求項3】
請求項1記載の設計支援システムにおいて、
前記第1演算処理要素が、前記図形要素としての曲線の曲率変化態様の変更指示を前記変形指示として認識するように構成され、
前記第2演算処理要素が、前記曲線が変形された結果としての補正曲線を前記補正図形要素として作成するとともに、前記曲線および前記曲率変化態様の変更指示に応じた前記補正曲線のそれぞれの端点位置、端点における接線方向および端点曲率のうち少なくとも1つが一致するという曲線変形条件を前記変形条件として、前記補正曲線を作成するように構成されていることを特徴とする設計支援システム。
【請求項4】
請求項3記載の設計支援システムにおいて、
前記第2演算処理要素は、前記曲率変化態様の変更指示が補正されてもよいという自由度を有する条件を前記曲線変形条件として用いて前記補正曲線を作成するように構成されていることを特徴とする設計支援システム。
【請求項5】
前記出力装置と、前記入力装置とを備えているコンピュータを、請求項1〜4のうちいずれか1つに記載の設計支援システムとして機能させることを特徴とする設計支援プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−197925(P2011−197925A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−62926(P2010−62926)
【出願日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【出願人】(510076247)シンク・スリー インク (1)
【氏名又は名称原語表記】think 3, Inc.
【住所又は居所原語表記】7723 Tylers Place Blvd. Suite 106 West Chester,Ohio 45069−4684,USA
【Fターム(参考)】