説明

診断および治療適用用フィブリン結合ペプチドコンジュゲート

本発明は、フィブリンと結合することができる新規ペプチドを含む診断的または治療的に有効な化合物の新規クラス、その製造方法、および治療および診断における使用のためのその組成物に関する。本発明化合物は特に、腫瘍細胞外マトリクス(EC)または間質の結合組織に存在するフィブリンに結合し、従って活性部分を固形腫瘍内のフィブリン沈着に移動させ、うまく結合することができる標的部分として作用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は診断的イメージングおよび治療の技術分野に属しており、特に診断または治療適用のためのペプチド-ベースのフィブリン標的化合物に関する。
本発明はさらに、上記化合物の製造方法、それを含む医薬組成物、および固形腫瘍またはより一般的にはフィブリン沈着もしくは蓄積と関連するすべての病態の標的イメージングまたは治療におけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
例えば肺塞栓症(PE)、深部静脈血栓症(DVT)、卒中およびアテローム性動脈硬化症などの血栓関連疾患は、凝血塊の存在下にて発症することが知られている病理学的血管病態のすべての例である。
DVTにて、例として、脚および股間の深部血管に形成される凝血塊は、脚から心臓に戻る血流を遮断しうる。いくつかの場合、例えば塞栓症では、凝血塊微粒子は血管組織への血流を引っかけ、軽減し、または遮断さえする血管への血流により分離され、運搬される。そのような凝血塊が肺血管に引っかかる場合、塞栓症が致命的にさえなりうる。
【0003】
米国のみで、推定600,000患者が毎年PEに罹患する。そのうちおよそ378,000の患者にてPEは察知されず、およそ114,000の患者が後に該疾患と関連する合併症により死亡している。この高死亡率は臨床症状の欠乏、多くの場合、調査および検出の現在入手可能な方法と関連する有意な制限に起因する。
【0004】
上記疾患が死亡率の主な原因を示すため、血栓特異的治療および検出方法の開発が臨床実践にて最重要である。
【0005】
近年、フィブリン沈着または蓄積が種々のがん形態、特に固形腫瘍と関連することがあることが認識されている。種々の腫瘍タイプにおけるフィブリン/フィブリノゲン沈着の異種パターンの存在は、フィブリン/フィブリノゲンが腫瘍間質形成にて重要な役割を果たすというかなりの相関的および間接的証拠により支持される事実である(例えばCostantini V et al., Fibrin and Cancer, Thromb Haemost. 1993; 69:406; Dvorak HF et al. Thrombosis and cancer, Hum Pathol. 1987; 18:275; Dvorak HF et al. Vascular permeability factor, fibrin, and the pathogenesis of tumor stroma formation, Ann N Y Acad Sci. 1992; 667:101; Cavanagh PG et al., Role of the coagulation system in tumor-cell-induced platelet aggregation and metastasis, Hemostasis. 1988; 18:37; and Bardos H et al., Fibrin deposition in primary and metastatic human brain tumours, Blood Coagul fibrinolysis. 1996; 7:536を参照のこと)。
【0006】
いくつかの有意な止血異常は、例えば播種性血管内凝固症候群、出血事象および遊走性血栓性静脈炎などのがん患者にても記載されている。凝固カスケードの腫瘍媒介活性化もまた、腫瘍間質の形成および血行性転移の促進の両方に関係している。さらに、フィブリンマトリクスは、変換された細胞、マクロファージおよび線維芽細胞などのかなりの数の特徴ある細胞タイプの遊走を促進することが知られている。特に、創傷治癒と同様に、フィブリン/フィブリノゲンの他の粘着性グリコプロテインを伴う細胞外マトリクス(ECM)への沈着は足場として供され、増殖因子の結合を支持し、血管新生および腫瘍細胞増殖中の接着、増殖および遊走を促進することが示されている(例えばDvorak HF et al., Vascular permeability factor, fibrin, and the pathogenesis of tumor stroma formation, Ann N Y Acad Sci. 1992; 667:101; Rickles FR et al., Tissue Factor, Thrombin, and Cancer, Chest. 2003; 124:58S-68S; Brown HF et al., Fibrinogen influx and accumulation of cross-linked fibrin in healing wounds and in tumor stroma, Am J Pathol. 1988; 130:4559; Dvorak HF et al., Fibrin containing gels induce angiogenesis: implication for tumor stroma generation and wound healing, Lab Invest. 1987; 57:673; and Rickles FR et al., Tissue Factor, Thrombin and Cancer, Cest. 2003; 124:58S-68Sを参照のこと)。
【0007】
ヒトにおける多くの固形腫瘍はかなりの量の架橋フィブリンを含み、従って腫瘍間質形成における役割を提示する。この点で、免疫蛍光法、免役組織化学法および免疫電子顕微鏡法などの近年の技術は、フィブリン沈着が主要な腫瘍タイプの間質内にて起こり、フィブリノゲンおよびフィブリンの両方を腫瘍宿主細胞接触面に局在化しうることを示唆した(例えばRickles FR et al, Tissue Factor, Thrombin and Cancer, Cest. 2003; 124: 58S-68S; Costantini V et al., Fibrinogen deposition without trombine generation in primary human breast cancer, Cancer Res. 1991; 51: 349-353; and Simpson-Haidaris PJ et al., Tumors and Fibrinogen: The Role of Fibrinogen as an Extracellular Matrix Protein, Ann. N.Y. Acad. Sci., 2001 936(1): 406-425を参照のこと)。
【0008】
さらに、相関性は血漿フィブリノゲンレベルと腫瘍サイズ、腫瘍浸潤深度および転移との間に存在するようだ(例えばLee JH et al., Preoperative plasma fibrinogen levels in gastric cancer patients correlate with extent of tumor, Hepatogastroenterology 2004; 51:1860-3を参照のこと)。さらに、フィブリン/血小板は腫瘍細胞をヒト免疫系により提供される循環ナチュラルキラーユニットの作用から保護し、従って循環腫瘍の生存を改善することに関与することが知られている(例えばPalumbo JS, et al. Platelets and fibrin(ogen) increase metastatic potential by impeding natural killer cell-mediated elimination of tumor cells, Blood, 2005; 105:178を参照のこと)。これは例えば、腫瘍を標的とする抗体を用いた従来の腫瘍治療が腫瘍を含むフィブリンの治療に有効でないことがあり、後者の治療がいくらかフィブリン自体により保護されるためであることを示唆する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、フィブリン沈着の視覚化および確立された血管系および凝血フィブリンの標的阻害/破壊は悪性疾患進行に対する重要なツールと考えられる。この点、改善されたフィブリン結合化合物がフィブリン沈着、特に固形腫瘍と関連する病態の高感度診断および特定の治療に用いられる必要性が残る。
【0010】
血栓特異的造影剤の探索は放射性標識フィブリノゲンが最初に評価された30年前に始まった(例えばKakkar et al., Lancet. 1970, 1:540-542を参照のこと)
【0011】
多くのMRIベースイメージングアプローチもまた、文献に記載されている(例えばWinter PM, et al. Improved molecular imaging contrast agent for detection of human thrombus, Magn Reson Med. Aug; 2003 50(2):411-6; Botnar RM et al., In vivo molecular imaging of acute and subacute thrombosis using a fibrin-binding magnetic resonance imaging contrast agent, Circulation. 2004, Apr 27; 109(16):2023-9; Yu X et al., High-resolution MRI characterization of human thrombus using a novel fibrin targeted paramagnetic nanoparticle contrast agent, Magn Reson Med. 2000; 44:867-872; Flacke S et al., Novel MRI contrast agent for molecular imaging of fibrin: implications for detecting vulnerable plaques, Circulation. 2001; 104:1280-1285を参照のこと)。
【0012】
形成された血栓に結合する放射性標識血小板および抗血小板抗体、抗フィブリン抗体、抗活性化血小板抗体、および活性化または不活性化組織型プラスミノーゲン活性化剤(tPA)もまた開示されている(例えばThakur et al., Throm. Res., 1976 9:345-357およびPalabrica et al., Proc. Natl. Acad. Sci., 1989; 86:1036-1040を参照のこと)。
【0013】
血小板親和性ペプチドもまた知られている(例えばBautovich et al., J. Nucl. Med., 1994, 35:195-202およびMuto et al., Radiology, 1993; 189 (suppl):303を参照のこと)。
国際特許出願WO 01/09188は、検出可能に標識された場合にフィブリン凝血塊の局在化およびイメージングに有用なフィブリン結合ポリペプチドを開示する。
【0014】
WO 02/055544は上記WO 01/09188のペプチドよりも低解離速度を与えると言われるフィブリン結合ポリペプチドのクラスに関し、これは同様にフィブリン含有凝血塊の検出、イメージングおよび局在化に有用であり、より一般的にはフィブリンが重要な役割を担う冠動脈の状態の診断/治療に有用である。
【0015】
WO 02/055544の好ましいポリペプチドは、例えばシステイン「C」残基がジスルフィド結合を形成すると考えられる(該国際特許出願の第19頁下を参照のこと)アミノ酸配列WQPCPWESWTFCWDPを含むポリペプチド(第9頁第25行目を参照のこと)である。
【0016】
US 5,792,742はフィブリン結合ペプチド、その製造、ならびに凝血塊、血栓、微小血栓、肺動脈塞栓、アテローム性動脈硬化症または腫瘍のイメージングまたは治療のためおよび血栓、がん細胞および/または与えられた細菌感染部位への治療剤の標的送達のためのその標識誘導体の使用を開示する。インビボ試験データは、該文献に記載されており、特許請求されたペプチドの血栓に対する標的能力を評価する。
【0017】
US 6,991,775は、深部静脈、冠状動脈および頸動脈の血栓ならびに頭蓋内、動脈および心室内大動脈血栓の診断に有用であると言われるペプチドベース多量体標的造影剤を開示する。広範な数のペプチドベースMRI造影剤がそこに開示され、そのうちの一つは血栓溶解標的アッセイに有用である。
【0018】
US 2006/0034773において、生物学的に活性なAAZA誘導体の例を提供するように二つのAAZA部分がWO 02/055544のフィブリン標的ペプチドと共役している。心疾患、凝血塊/血栓を含むフィブリン、血小板または腫瘍を標的し、治療するためのこれらのコンジュゲートの使用もまた特許請求されている。
【課題を解決するための手段】
【0019】
発明の要約
フィブリン沈着およびそれに関連する病理学的過程を検出し、局在化し、測定し、治療するための改善された物質および方法の必要性に関し、本発明は、適切なリンカーを通して1以上の診断的または治療的に有効な部分と共役する改善されたフィブリン結合ペプチドを含む新規クラスの治療的または診断的に活性な化合物を提供する。
【0020】
本発明化合物に含まれるペプチド部分は、先に知られているペプチドと比較して予想外に高程度にフィブリン特異的な結合を示す。
【0021】
さらに、本発明化合物は、臨床実践にて特に有利と言われる可溶性などの改善された物理的特性を与える。
【0022】
重要なことにそのペプチド部分は、フィブリン、特に腫瘍の細胞外マトリクス(EC)または間質の結合組織に存在するフィブリンに選択的に結合し、診断的または治療的に活性な部分と結合してフィブリン沈着、特に固形腫瘍または転移組織内のフィブリン沈着に移動させこれにうまく結合させることができる標的部分として作用することができる。
【0023】
従って、本発明の新規な診断剤または治療剤は、例えば固形悪性腫瘍および関連する障害などのフィブリン沈着または蓄積と関連する病態の診断、予防および治療のための適用を発見することができる。
【0024】
以下の段落にて詳細に説明するように、本発明は、化合物の新規クラス、その製造方法、治療剤または診断剤としての使用のためのその化合物、血栓を含むフィブリン、または一般にフィブリン沈着と関連する病態、特にがんおよび転移過程の検出および局在化のための医薬組成物の製造におけるその使用に関する。
【0025】
本発明はさらに、フィブリン沈着と関連する障害の治療および予防のための方法、ならびに本発明化合物の投与および使用を通したインビトロおよびインビボフィブリンイメージングのための方法に関する。
【0026】
本発明のこれらおよび他の態様は、以下の詳細な記載を参照して明らかとなろう。
【発明を実施するための形態】
【0027】
定義
本明細書において、特に明記されなければ、用語「ポリペプチド」は、ペプチドアミド結合[-C(O)NH-]により主鎖(側鎖に対して)を通して結合する2以上のアミノ酸の化合物を意味するために用いる。本明細書にて「ポリペプチド」と同義で用いられる用語「ペプチド」は一般に、25より少ないアミノ酸を有するポリペプチドを意味するために用いられる。
【0028】
用語「フィブリン由来ポリペプチド」は、フィブリンと免疫学的に交差反応性である、タンパク質の免疫学的に反応性のフラグメントなどのフィブリンの任意のサブコンポーネントまたはフラグメントを意味する。
【0029】
用語「結合」は、本明細書に記載のものを含む標準アッセイにより決定することができる、ポリペプチドが与えられた標的を認識し、可逆的に結合する能力を意味する。そのような標準アッセイとしては、結合をもたらす平衡透析、ゲルろ過および分光学的変化のモニターが挙げられるが、これらに限定されない。
【0030】
用語「特異性」は、一の標的について別のものよりもより高い結合親和性を有する結合ポリペプチドを意味する。結合特異性は二の試験標的物質についての解離平衡定数(KD)または会合平衡定数(Ka)により特徴付けることができる。用語「フィブリン特異性」は、フィブリンについて不適切な標的よりもより高い親和性を有するフィブリン結合部分を意味する。好ましい具体的態様にて、本発明の結合ポリペプチドはフィブリンについて特異的であり、好ましくは約10μM未満、より好ましくは約1μM未満、最も好ましくは約0.5μM未満またはさらに低い解離定数を有する。
【0031】
本明細書にて用語「結合部分」は、別の分子と結合錯体を形成することができる任意の分子を意味する。「フィブリン結合部分」は凝血塊、可溶性もしくは不溶性フィブリン、またはフィブリノゲンではなくフィブリンにより示される構造もしくは特徴を有するフィブリンの可溶性もしくは不溶性フラグメントと錯体を形成する結合部分である。フィブリンのそのような可溶性または不溶性フラグメントには、典型的に架橋フィブリンのタンパク質分解治療により生成されるが、フィブリン特有の構造的特徴を保持する「フィブリン誘導体化」ポリペプチドとして定義されるフラグメントが含まれる。
【0032】
特異的フィブリン結合ペプチドは以下の本明細書第1表などに記載される。
【0033】
本明細書において用語「治療剤」または「治療的に有効な部分」は、同義であり、インビボにて有益な治療効果または細胞毒性効果を有する化合物または物質を意味する。治療剤としては、例えば生物活性剤、細胞毒性薬、薬物、化学療法剤、放射線治療剤、遺伝物質などと称される成分が挙げられる。
本明細書において用語「患者」は、哺乳動物、特にヒトを意味する。
【0034】
本明細書において用語「医薬的に許容される」担体または賦形剤は、その生物学的または薬理学的活性を破壊しないように、本発明化合物と一緒に患者に投与しうる無毒性担体または賦形剤を意味する。
【0035】
上記定義を考慮し、本明細書にて特に明記されなければ、本明細書において用語「フィブリン結合ペプチド部分」または単に「ペプチド部分」は同義であり、第1表の上記配列のそれぞれにより定義されるような対応するフィブリン結合ペプチドの適切な残基を意味する。
【0036】
発明の詳細な記載
従って、本発明の第一目的は、一般式(I):
A[-Y(-T)r]s (I)
[式中、
Aは以下の第1表のアミノ酸配列:
【0037】
第1表−フィブリン結合ペプチド配列
【表1】



からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むフィブリン結合ペプチド部分であり;
【0038】
Yはそれぞれ独立してAを少なくとも一つのT部分と連結する適切な連結部分であり;
Tはそれぞれ独立して診断的または治療的に活性な部分であり;
rはそれぞれ独立して1〜8の整数であり;
sは1または2である]
で示される化合物またはその生理学的に許容される塩である。
【0039】
第1表および本明細書の他の部分において、アミノ酸配列は慣習的にIUPAC-IUB則により一文字コードにより示される(例えばBiochem. J., 1984, 219, 345-373; and Biochemical Nomenclature and Related Documents, 2nd edition, Portland Press, 1992, pages 39-69を参照のこと)。
【0040】
よりよい理解のために、慣習的に一文字または三文字コードの両方により表される選択されたアミノ酸の意味は第2表に示す。
【0041】
第2表−アミノ酸の略語
【表2】

【0042】
第1表により、A部分はまた、非天然アミノ酸および例えばCha、Ffe4、F34fe、S(Galnac)などのさらなる残基も含むことができ、これらの意味は以下の第3表に具体的に記載される。
【0043】
第3表−非天然アミノ酸残基および部分の略語
【表3】

【0044】
さらに、第1表のアミノ酸配列内に、WO 02/055544に記載の上記先行技術のペプチドに関する意図的に下線を付した変形があり、これはWQPCPWESWTFCWDPであり、ここに、以下に配列番号000で同定される。
【0045】
それゆえ、ほんの一例を挙げると、配列番号001としてコードされた本発明のペプチド内に「A」として定義されるアミノ酸は、先行技術ペプチドにて対応するアミノ酸「W」を同位置にて置き換える。実質的に類似の考察が任意の残存配列に適用される。
【0046】
最終的に、本発明のフィブリン結合ペプチド部分は、式(I)内で好ましくはその配列中の2のシステイン残基間のジスルフィド結合により立体配座的に抑えられる。それゆえ第1表および本明細書の他の部分により、記号「C*」は単に、ジスルフィド結合の一因となるシステイン残基を意味する。
【0047】
ペプチドと同様のコンフォメーションおよびフィブリン特異性を保持する歪んだペプチドについての他の方法は、先行文献に記載されており、本明細書にて用いることができる。
【0048】
上記に加え、特に明記されなければ、第1表のペプチドを形成するようなカルボキサミド結合に関与せず、分子中の残りの基にも結合しない、本発明の式(I)の化合物における上記アミノ酸配列の任意のアミノまたはカルボキシル基は、以下の詳細のように、適宜任意の適切な保護基(Pg)とのコンジュゲーションにより保護されるか、またはいくらか不活性化された形態にて存在してもよい。
【0049】
本発明のある具体的態様により、式(I)の化合物におけるフィブリンペプチド部分Aとしては、ペプチド配列のN-末端(-NH2)およびC-末端(-COOH)基の一方または両方がYとのカルボキサミド結合の形成により官能基化されている、第1表の基から選択されるアミノ酸配列が挙げられる。
【0050】
本明細書において、特に明記されなければ、用語「フィブリン結合ペプチド部分」または単に「ペプチド部分」は同義であり、上記コンジュゲーション後に変形しないペプチド単位部分を意味する。
【0051】
一方、上記のように、アミノ酸配列のC-末端またはN-末端基がYとの結合により官能基化されない場合、任意の適切な保護基(Pg)とのコンジュゲーションおよび従来の方法により適切に保護するか、または不活性化することができる。
【0052】
この場合、「フィブリン結合ペプチド部分」は、任意の保護/不活性化およびカルボキサミド結合形成に続くフィブリン結合ペプチドのオリジナルアミノ酸配列から生じる部分を意味する。
【0053】
典型的に、例えば第1表および以下の式:
H2N-WQPC*PAESWTFC*WDP-COOH
[式中、トリプトファンWのN-末端(-NH2)およびプロリン基のC-末端(-COOH)は明確にされている]
で示されるアミノ酸配列番号001を有するフィブリン結合ペプチドの場合には、対応するフィブリン結合ペプチド部分Aは、例えば以下の式:
-HN-WQPC*PAESWTFC*WDP-CO-;
H2N-WQPC*PAESWTFC*WDP-CO-;
Pg-HN-WQPC*PAESWTFC*WDP-CO-;および
-HN-WQPC*PAESWTFC*WDP-CO-Pg
[式中、Pgは任意の適切な保護基または不活性化基である]
を含むことができる。
【0054】
本明細書において、特に明記されなければ、用語「保護基」は、これに結合する官能基の特徴的化学的機能を維持するために適合される保護基を指定する。具体的には、本明細書において、保護基はアミノまたはカルボキシル官能基を維持するために用いる。従って、適切な保護基としては、例えばFmoc、ベンジル、ベンジルオキシカルボニルもしくはアルキルエステルまたは一般にそのような官能基の保護を目的とする他の基を挙げることができ;保護基の一般的な参照として、例えば文献(T. W. Green, Protective Groups in Organic Synthesis (Wiley, N.Y. 1981))を参照のこと。
【0055】
特に明記されなければ、本明細書において用語「不活性化基」は、ペプチド単位のN-末端(-NH2)またはC-末端(-COOH)基と化学的に反応して対応するペプチド部分のフィブリンに対する特異性を維持するその適切な誘導体に化学反応により変換することができる化学基を意味するものであるが、異なる部分におけるカルボキシルまたはアミノ官能基とそれぞれ化学的に反応することができず、従ってカルボキサミド架橋反応に関与しなくてよい。
【0056】
従って、不活性化基の適切な例は、アセチル[CH3(CO)-またはAcとも称される]を含み、対応する非反応性アセチル化AcHN-基に変換することによりペプチド鎖のアミノ末端基を不活性化するために用いることができる。
【0057】
一方、アミノ基自体およびその誘導体(例えば-NH2、-NH(CH3)またはH2NOC-CH2-NH-など)は、対応する-CONH2、-CONH(CH3)または-CONH-CH2-CONH2未反応アミドをそれぞれ提供することにより末端カルボキシル基を不活性化するために用いることができる。
【0058】
本発明の好ましい具体的態様にて、式(I)の化合物におけるAは、第1表に示すように(配列番号001)として同定されるアミノ酸配列を含み、それ自体または例えば以下の任意の上記Pgもしくは不活性化基:
-HN-WQPC*PAESWTFC*WDP-CO-;
Ac-HN-WQPC*PAESWTFC*WDP-CO-;
-HN-WQPC*PAESWTFC*WDP-CONH-CH2-CONH2
-HN-WQPC*PAESWTFC*WDP-CONH2
を有する、フィブリン結合ペプチド部分である。
【0059】
本発明の別の具体的態様により、式(I)の化合物におけるパラメータ「s」は、1および2から選択され、従って以下に図示される本発明化合物を生じる:
s = 1である場合、A-Y(-T)r(ここに、Aは第1表のペプチドの末端アミノまたはカルボキシル官能基のいずれか一つにより分子中の残りの基に結合する);
s = 2である場合、(T)rY-A-Y(-T)r(ここに、Aは一方では末端アミノ基により、他方では末端カルボキシ基により分子中の残りの基に結合し、二つの-Y(-T)r部分は互いに同一または異なる)。
【0060】
上記に加えて、本発明のさらに異なる具体的態様により、パラメータ「r」は1〜8の変数であり;従って1以上のT基は式(I)の化合物に存在し、それぞれ適切にY部分に結合することができる。
好ましくは、式(I)の化合物中、rは1〜4の整数である。
【0061】
本発明の別の好ましい態様により、式(I)の化合物中、sは1である。
s = 1である本発明化合物は、それぞれ独立して適切な連結部分Yによりペプチド部分のN-末端(-NH2)または逆にC-末端(-COOH)基に共役した1以上の診断的にまたは治療的に活性な部分Tを含み、従って式(I)の化合物(ここに、Aはその末端N-またはC-末端基のみにて官能基化される)となる。
【0062】
本発明の別の好ましい態様により、式(I)の化合物中、sは2である。
従って、s = 2である本発明化合物は、それぞれ独立して適切な連結部分Yによりペプチド部分の二のN-末端(-NH2)およびC-末端(-COOH)基のそれぞれに共役した1以上の診断的にまたは治療的に活性な部分Tを含み、従って式(I)の化合物(ここに、AはN-およびC-末端基の両方にて官能基化される)となる。
上記のように、式(I)の化合物におけるペプチド部分Aは、1以上の診断的にまたは治療的に活性な部分Tと連結部分Yにより共役する。
AおよびT部分間の連結基として作用するのに加えて、Yは診断的にまたは治療的に活性な部分Tとフィブリン標的部分自体との間に適切な距離を提供することができる。
【0063】
実際、これら二の単位間の最適な距離は、本発明化合物の標的可能性を得、維持するために重要な因子を示すことができる。実際に、ペプチドベース標的部分の任意の不適切なまたは最適でない誘導体化が標的対象に対するペプチド親和性の有意な損失をもたらすことが多いことはよく知られている。
さらに、リンカーYは診断剤または治療剤Tの親水性を改善するために有意に寄与し、従って式(I)の化合物の所望の薬物動態または薬力学プロファイルを提供することができる。
【0064】
本発明により、Yは直鎖または分枝鎖、少なくとも二価の連結部分である。
本発明のある好ましい具体的態様にて、Yは直鎖または分枝鎖二価連結部分である。
【0065】
「二価連結部分」(または本明細書にて同義である「二価連結鎖」もしくは「二価リンカー」)は、一方でAの末端アミノまたはカルボキシル基、および他方で活性部分Tと共役することができる二の官能基を含む鎖を意味する。
特に明記されなければ、本明細書において用語「官能基」は、分子または部分の特徴的な化学反応に関与する分子または部分中の原子の特定の群を意味する。本明細書において、官能基は、互いにカルボキサミド架橋共役される、部分A、リンカーYおよび活性部分Tの特定の-NH2または-COOH末端基である。
【0066】
さらに、しかし、これらと同一のリンカーYおよび活性部分Tは適宜、遊離基または適宜活性化もしくは適切に保護されている基として存在することができる例えばアミノ、チオールまたはカルボキシル基などのさらなる官能基を含んでもよい。
本発明の別の好ましい具体的態様にて、Yは直鎖または分枝鎖多官能連結部分である。
【0067】
特に明記されなければ、本明細書にて同義である「多官能連結部分」または多官能リンカー」は、少なくとも3の官能基を含む直鎖または分枝鎖であり、そのうちの一つはAのN-末端(-NH2)またはC-末端(-COOH)基で該多官能部分を連結し、残りの官能基は少なくとも2、好ましくは2〜8、より好ましくは2〜4の同一または異なる診断的にまたは治療的に有効な部分で多官能部分を連結する。
【0068】
多官能鎖の適切な例としては、例えば
(a) N-分枝リジン系(f. i., Veprek, P et al., J. Pept. Sci. 5, 5 (1999); 5, 203 (1999)を参照のこと)
(b) ポリカルボキシル化合物およびその適切な誘導体(ここに、カルボキシル基は適切に活性化または保護された形態である)
(c) ポリアミノ化化合物およびその適切な誘導体(ここに、アミノ基は適切に活性化または保護された形態である)
(d) アミノ酸およびポリオルニチン、ポリアルギニン、ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸などのポリアミノ酸
を挙げることができる。
【0069】
二価または多価にかかわらず、Yは限定されるものではないが、置換または非置換、飽和または不飽和、直鎖または分枝鎖アルキレン;直鎖、分枝鎖または環状アミノ酸由来のアミノ酸およびペプチド(例えば結合部分のN-またはC-末端の拡張);誘導体化または非誘導体化ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンまたはポリビニルピリジン鎖;置換または非置換ポリアミド鎖;誘導体化または非誘導体化ポリアミン、ポリエステル、ポリエチレンイミン、ポリアクリレート、ポリ(ビニルアルコール)、ポリグリセロールまたはオリゴ糖(例えばデキストラン)鎖;グリコシル化アミノ酸残基、交互ブロックコポリマー;マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸およびピメリン酸;カプロン酸;単独ジアミンおよびジアルコール;本明細書記載の他の任意のリンカーならびに例えばWO 98/18497およびWO 98/18496に記載の当分野で知られる他の任意の単独ポリマー性リンカーを挙げることができる。
【0070】
好ましくは、連結部分は直鎖または分枝鎖C1-C100、より好ましくはC1-C50、さらにより好ましくはC1-C35アルキレン鎖を含み、適宜-O-、-CO-、-CONH-、-NHCO-、-NH-、>NCO-、-OCN<または-N<から選択される1以上の基を介してもよく、カルボキサミド架橋反応によりY鎖に含まれる場合に、Y鎖は適宜例えば-CONH2もしくは-NHCOCH3基などの適宜保護されていてもよいアミノまたはカルボキシル基から選択される1以上の基により、または一般に天然アルファアミノ酸に由来する任意の側鎖によりさらに置換されていてもよい。この点、Y鎖置換基の適切な例としては、例えば適宜1以上の-S-単位を介してもよく、適宜適切に保護されるか、もしくは適宜保護されていないアミノもしくはカルボキシル基、もしくはヒドロキシル(-OH)もしくはチオール(-SH)基、もしくは1以上の適宜置換されていてもよいアリールもしくはヘテロアリール環により置換されていてもよい、直鎖または分枝鎖(C1-C5)アルキルまたはアルキレン基が挙げられる。
【0071】
特に明記されなければ、本明細書において用語「(C1-C5)アルキルまたはアルケニル」は、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、tert-ブチル、ペンチル、ビニル、プロペニルなど(このうち、メチル、エチル、プロピルおよびイソプロピルが好ましい)の1〜5の炭素原子を含む直鎖または分枝鎖、飽和または不飽和アルキルまたはアルキレン置換基を意味する。
より好ましくは、連結部分Yは、例えばホモ二官能性およびヘテロ二官能性単位およびその適切な組合せから選択される1以上のサブユニットを含む。
【0072】
特に明記されなければ、本明細書において用語ホモ二官能性またはヘテロ二官能性単位または部分は、それぞれ同一または異なる少なくとも二の反応性官能基を有する単位または部分を意味する。
ホモ二官能性単位の適切な例としては、例えば式:
-OC-Z-CO-および-NH-Z-NH-
を有するジカルボキシルおよびジアミノ部分が挙げられ、ヘテロ二官能性単位の例としては、式:
-NH-Z-CO-および-CO-Z-NH-
[式中、Zは上記の適宜介されおよび/または置換されていてもよい直鎖または分枝鎖である]
を有するアミノ酸が挙げられる。
【0073】
本発明の好ましい態様にて、Zは以下の基:
-(CH2)n-、
-CH2-(CH2O)n-、
-CH2O-(CH2(CH2)pO)n-(CH2)n-、
-(CH2)n-NH-(CH2)n-、
-N((CH2)n-)2
-(CH2)p-CH(NH-)-(CH2)n-、
-(CH2)p-CH(CONH2)-(CH2)n-、
-(CH2(CH2)pO)n-(CH2)n-、
-(CH2)p-CH(CO-)-(CH2)n-、
-(CH2)p-CH(NHCOCH3)-(CH2)n-
[式中、nはそれぞれ独立して1〜6の整数であり、pはゼロまたは1〜5の整数である]
から選択される基を含む。
【0074】
好ましくは、本発明の連結鎖Yは、1以上の以下の基:
-HN-(CH2)n-CO-、
-OC-(CH2)n-CO-、
-HN-(CH2)n-NH-、
-HN-(CH2)n-NH-(CH2)n-NH-、
-OC-(CH2)n-NH-(CH2)n-CO-、
-HN-[(CH2)2-O]2-CH2-CO-、
-HN-CH(CO-)-(CH2)n-NH-、
-HN-CH(CO-)-(CH2)n-CO-、
-OC-CH(NH-)-(CH2)n-NH-、
-OC-CH2O-((CH2)2O))n-(CH2)2-NH-、
-N((CH2)n-CO-)2
-HN-CH(CONH2)-(CH2)n-NH-、
-OC-CH(NHCOCH3)-(CH2)n-NH-
[式中、nは上記に定義されるとおりである]
およびその任意の適切な繰り返しおよび組合せを含む。
【0075】
さらにより好ましくはこのクラスは
-HN-CH2-CO-、
-OC-(CH2)2-CO-、
-OC-(CH2)3-CO-、
-HN-[(CH2)2-O]2-CH2-CO-、
-OC-CH2O-(CH2)2O-(CH2)2-NH-、
-HN-CH(CO-)-(CH2)4-NH-、
-OC-CH(NH-)-(CH2)4-NH-、
-HN-CH(CO-)-(CH2)2-CO-、
-HN-CH(CONH2)-(CH2)4-NH-、
-OC-CH(NHCOCH3)-(CH2)4-NH-、
-N(CH2-CO-)2
である。
【0076】
以上より、さらなる官能基化を可能とする二より多い官能基を有する上記任意の部分が分枝鎖系を生じることができることは当業者に明らかである。実際に例として、-HN-CH(CO-)-(CH2)4-NH-と称されるその部分は以下の化学式:
【化1】

[式中、太線はさらなる部分または基との結合可能点を示す]
で適切に示すことができる。
【0077】
従って、例えばAの一方または両方のN-末端(-NH2)またはC-末端(-COOH)基にて適切な適宜保護されていてもよいY部分またはY部分のサブユニットで共役されたペプチド部分Aなどの本発明の任意の中間体化合物は、本発明のさらなる目的を構成することができる。
【0078】
本発明のさらなる好ましい態様により、式(I)の化合物中、Tは診断的に有効な部分である。
本明細書において同義である表現「診断的に有効な部分」または「イメージング有効部分」または「イメージング部分」は、イメージング診断手順により検出可能な任意の部分を意味し、例えば磁気共鳴映像法(MRI)、放射性イメージング、X線イメージング、光イメージングなどの使用における今日のイメージング診断技術により検出されるシグナルを提供するか、改善するか、またはとにかく都合よく改変し、従って該技術と関連して使用される場合に診断的に有用な、好ましくはコントラストのあるイメージの記載を可能とすることができる任意の部分をいう。
【0079】
本発明による診断的に有効な部分の例としては、例えばキレート化ガンマ線または陽電子放出放射性核種;キレート化またはポリキレート化錯体の形態である常磁性金属イオン、20より多い原子数の原子を含むX線吸収剤;色素分子;蛍光分子;リン光性分子;UVスペクトルに吸収される分子;量子ドット;近または遠赤外線内に吸収可能な分子、一般に検出可能な物質を生成するすべての部分が挙げられる。以上により、用いられるイメージングモダリティは本発明の診断化合物が含むイメージング検出可能部分により選択されるべきであることは当業者に知られている。
【0080】
本明細書において同義である用語「造影イメージング剤」または「造影剤」は、生存する哺乳動物患者、好ましくはヒト患者に由来する細胞、生物学的体液および生物学的組織などの生物学的要素中または上にフィブリンユニットまたはフィブリン沈着をインビトロにて視覚化または検出し、ならびに適切な診断イメージング法に関して検出可能な存在を用いる場合、哺乳動物の、好ましくはヒトの体器官、領域または組織中または上にフィブリンおよびフィブリン沈着をインビボにて同定し、位置づけるために使用することができる、任意の検出可能な存在を意味する。
【0081】
MRI造影剤
本発明の特に好ましい具体的態様にて、式(I)の化合物におけるTはMRI検出可能部分である。
TがMRI検出可能部分である式(I)の化合物は、MRI造影剤としての使用に好ましい。
従って、ある好ましい態様にて、本発明はTがMRI検出可能部分である式(I)の新規MRI造影剤に関する。
好ましいMRI検出可能部分は、MRI法により検出可能な常磁性金属元素で標識されたキレートリガンドの残基を含む。
【0082】
好ましい常磁性金属元素は20〜31、39、42、43、44、49および57〜83の原子番号を有するものである。
より好ましい常磁性金属イオンは、Fe(2+)、Fe(3+)、Cu(2+)、Ni(2+)、Rh(2+)、Co(2+)、Cr(3+)、Gd(3+)、Eu(3+)、Dy(3+)、Tb(3+)、Pm(3+)、Nd(3+)、Tm(3+)、Ce(3+)、Y(3+)、Ho(3+)、Er(3+)、La(3+)、Yb(3+)、Mn(3+)、Mn(2+)から選択され;最も好ましくはGd(3+)である。
【0083】
本明細書において同義である用語「キレーター」、「キレートリガンド」または「キレート剤」は、遷移金属または別の金属体との2以上の配位結合を含む錯体を形成することができる極性基の存在により特徴付けられる、化学部分、物質、化合物または分子を意味する。本発明の好ましい態様にて、キレートリガンドとしては、環状または直鎖のポリアミノ ポリカルボン酸またはポリホスホン酸が挙げられ、遊離または適宜活性化されていてもよい官能基として提示される少なくとも1のアミノ、チオールまたはカルボキシル基を含み、これは連結鎖Yの適切な官能基とのコンジュゲーション反応における使用に適切なものである。
【0084】
本明細書において同義である「キレート剤の残基」または「キレートリガンドの残基」は、上記コンジュゲーション後に残存するキレートリガンドの一部を意味する。好ましいコンジュゲーションは、キレートリガンドの酸性基(-COOH)またはその適切な反応性誘導体と連結部分Yのアミノ基(-NH2)から、あるいはキレートリガンドの適切な反応性アミノ基およびY部分のカルボキシル基またはその適切な誘導体から形成され、カルボキサミド結合を生じる。架橋反応に関与するキレートリガンドの酸性またはアミノ基は、リガンド残基のキレート可能性を軽減または改変しないために適切に選択される。
【0085】
本明細書において「金属元素で標識されたキレートリガンド」における用語「標識」または「錯体」は、金属元素と錯体化するリガンド、すなわち金属元素とのキレートまたは配位錯体の形態であるリガンドを意味する。
【0086】
本明細書において同義である用語「金属体」または「金属元素」は、イメージング技術により検出可能な金属イオンを意味する。そのような金属体としては、具体的には磁気共鳴映像法(MRI)などのイメージング技術により検出可能な常磁性金属イオン、またはシンチグラフイメージング、単光子放射コンピュータ断層撮影法(SPECT)および陽電子放出断層撮影法(PET)などのイメージング技術により検出可能な金属イオン(例えば放射性核種)、または治療用放射性核種が挙げられる。
【0087】
適切なキレートリガンドとしては、本明細書に記載のものが挙げられるが、特に、例えばベンゾDTPA、ジベンゾDTPA、フェニルDTPA、ジフェニルDTPA、ベンジルDTPAおよびジベンジルDTPA、N,N-ビス[2-[(カルボキシメチル)[(メチルカルバモイル)メチル]エチル]-グリシン(DTPA-BMA)、N-[2-[ビス(カルボキシメチル)アミノ]-3-(4-エトキシフェニル)プロピル)]-N-[2-[ビス(カルボキシメチル)アミノ]エチル]グリシン(EOB-DTPA)、4-カルボキシ-5,8,11-トリス(カルボキシメチル)-1-フェニル-2-オキサ-5,8,11-トリアザトリデカン-13-オン酸(BOPTA)、N,N-ビス[2-[ビス(カルボキシメチル)アミノ]エチル]L-グルタミン酸(DTPA-GLU)などのジエチレントリアミンペンタ酢酸(DTPA)およびその誘導体を含むポリアミノポリカルボン酸およびその誘導体;DTPA-Lys(Figure 3aの化合物1を参照のこと);エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA);例えば[10-(2-ヒドロキシプロピル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン 1,4,7,-トリ酢酸(HPDO3A)などの1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン 1,4,7,-トリ酢酸(DO3A)およびその誘導体;1,4,7-トリアザシクロノナン N,N',N''-トリ酢酸(NOTA);例えば本明細書に引用されるWO 03/008390記載の6-[ビス(カルボキシメチル)アミノ]テトラヒドロ-6-メチル-1H-1,4-ジアゼピン-1,4(5H)-ジ酢酸(AAZTA)およびその誘導体、例えばベンゾ-DOTA、ジベンゾ-DOTA、(α,α',α'',α''')-テトラメチル-1,4,7,10-テトラアザシクロテトラデカン-1,4,7,10-テトラ酢酸(DOTMA)などの1,4,7,10-テトラアザシクロテトラデカン-1,4,7,10-テトラ酢酸(DOTA)およびその誘導体;または1,4,8,11-テトラアザシクロテトラデカン-N,N',N'',N'''-テトラ酢酸(TETA);または1以上のカルボン酸基がホスホン酸基および/またはホスフィン酸基により置き換えられる対応化合物、例えばN,N'-ビス-(ピリドキサル-5-ホスフェート) エチレンジアミン-N.N'-ジ酢酸(DPDP);エチレンジニトリロテトラキス(メチルホスホン酸)(EDTP)、1,4,7,10-テトラアザシクロテトラデカン-1,4,7,10-テトラ(メチレンホスホン酸)(DOTP)、例えばUS5362476およびUS5,409,689記載のホスホノアルキル-ポリアザ大環状化合物およびUS6509324記載の直線状ホスホノアルキル誘導体など;またはテキサフィリン、ポルフィリン、フタロシアニンなどの大環状キレート剤からなる群から選択されるキレートリガンドである。
【0088】
本発明の好ましいキレートリガンドとしては、figures 3a〜3cからなる構造1〜21cを有するものであり、その製造に関する適切な文献の参照も含む。
【0089】
特に好ましくは、DTPA、DTPA-GLU、DTPA-Lys、DOTA、AAZTAおよび以下のAAZTA誘導体:
【化2】

である。
【0090】
核イメージング(放射性核種イメージング)および放射線治療
本発明の別の好ましい具体的態様にて、式(I)の化合物におけるTは放射性イメージング検出可能部分または放射性治療部分である。
Tが放射性イメージング検出可能部分である式(I)の化合物は、放射線造影剤としての使用に好ましい。
従って、別の好ましい具体的態様にて、本発明はTが放射性イメージング検出可能部分である式(I)の新規放射線造影剤に関する。
【0091】
特に明記されなければ、本明細書において「放射性イメージング検出可能部分」は、シンチグラフイメージング、単光子放射コンピュータ断層撮影法(SPECT)および陽電子放出断層撮影法(PET)などのイメージング技術により検出可能である部分を意味する。
【0092】
好ましい放射性イメージング検出可能部分は、シンチグラフ、SPECTまたはPETイメージング法により検出可能な放射性核種で標識されたキレート剤の残基を含む。
Tは放射線治療部分である場合、好ましくは治療的に活性な放射性核種で標識されたキレートリガンドの残基を含む。
上記キレートリガンドと一緒に、放射性核種用キレートリガンドの適切な例は、例えばUS 5,367,080、US 5,364,613、US 5,021,556、US 5,075,099およびUS 5,886,142記載のリガンドなどの直鎖、大環状テルピリジンおよびN3S、N2S2、N2S3、N2S4、N3S3またはN4キレーター、および限定されないが6-ヒドラジノピリジン-3-カルボン酸(HYNIC)または1,4,8,11-テトラアザシクロテトラデカン-N,N',N'',N'''-テトラ酢酸(TETA)などの当分野にて知られる他のキレートリガンド;および例えばUS 5,720,934記載のビス-アミノビス-チオール(BAT)キレーターから選択することができる。
【0093】
N4キレートリガンドはまた、例えばUS 5,608,110、US 5,665,329、US 5,656,254およびUS 5,688,487に記載される。いくつかのN3SまたはN2S2キレーターは例えばUS 5,659,041、US 5,574,140、US 5,780,006、US 5,662,885およびUS 5,976,495に記載される。キレーターとしてはまた、キレートリガンドメルカプト-アセチル-アセチル-グリシル-グリシン(MAG3)の誘導体も挙げることができ、MAMA(モノアミドモノアミンジチオール)、DADS(N2Sジアミンジチオール)、CODADSなどのN3SおよびN2S2系を含む。これらのリガンド系および他のものは文献(Liu and Edwards, Chem Rev, 1999,. 99, 2235-2268)およびその参考文献に記載される。
【0094】
キレーターとしてはまた、四座配位にて金属に供与されないリガンド原子を含む錯体も挙げることができる。これらとしては、例えばUS 5,183,653、US 5,387,409およびUS 5,118,797に記載されるテクネチウムおよびレニウムジオキシムのボロン酸付加体が挙げられる。
別の具体的態様にて、本発明のフィブリン結合ポリペプチドのジスルフィド結合は、99mTcなどの放射性核種のキレート化のための2のリガンドとして用いられる。このように、ペプチドループはTcの導入(ペプチド-S-S-ペプチドがペプチド-S-Tc-S-ペプチドに変化する)により拡張される。
【0095】
本発明の好ましい放射性核種としては、例えば99mTc、51Cr、67Ga、68Ga、47Sc、167Tm、141Ce、111In、113In、168Yb、175Yb、140La、90Y、88Y、153Sm、166Ho、165Dy、166Dy、61Cu、62Cu、64Cu、67Cu、97Ru、103Ru、186Re、188Re、203Pb、211Bi、212Bi、213Bi、214Bi、105Rh、109Pd、117mSn、149Pm、161Tb、177Lu、198Au、111Ag、199Au、51Mn、52mMn、52Fe、60Cu、72As、94mTcまたは110In、142Pr、159Gdが挙げられる。
【0096】
放射性核種の選択は所望の治療的または診断的用途に基づくだろう。例えば治療目的のために(例えば初期腫瘍および転移について放射線治療を提供するために)、好ましい放射性核種としては、64Cu、90Y、105Rh、111In、117mSn、149Pm、153Sm、161Tb、166Dy、166Ho、175Yb、177Lu、186/188Reおよび199Au、特に好ましくは186/188Re、177Luおよび90Yを挙げることができる。診断目的のために(例えばフィブリン沈着の位置を決め、腫瘍治療進行をモニターするために)、好ましい放射性核種としては、64Cu、67Ga、68Ga、99mTcおよび111Inを挙げることができる。99mTcは低コスト、入手可能性、イメージング特性および高特異的活性のために特に診断用途に好ましい。特に、99mTcの核および放射性特性によりこの同位体は理想的なシンチグラフイメージング剤となる。実際、この同位体は140 keVの単光子エネルギーおよび約6時間の放射性半減期を有しており、99Mo-99mTcジェネレータから容易に入手可能である。
【0097】
PETイメージングに用いられる好ましい金属放射性核種は例えば51Mn、52Fe、60Cu、68Ga、72As、94mTcまたは110Inなどの陽電子放出金属イオンである。
適切なリガンド残基の選択はリガンド標識に用いられる放射性核種に依存する。従って、好ましい残基としては、figures 3a〜3cの1〜21cのキレートリガンドのもの(111Inおよび例えば177Lu、90Y、153Smおよび166Hoなどの放射性ランタニド、または67Ga、68Ga、61Cu、62Cu、64Cuまたは67Cuについて)およびfigures 4a〜4bの22〜33のキレートリガンド(放射性99mTc、186Re、188Reについて)が挙げられる。
【0098】
特に、111Inおよび例えば177Lu、90Y、153Smおよび166Hoなどの放射性ランタニドなどの金属体であり、特に好ましくは以下のリガンド残基である:
【化3】

【0099】
上記式17および18にて、Rはアルキル、好ましくはメチルである。
放射性99mTc、186Re、188Reについて、特に好ましくは以下のリガンド残基である:
【化4】

【0100】
これらおよび他の金属キレート基は、本明細書にそのまま引用される例えばUS 5,608,110、US 6,143,274、US 5,627,286、US 5,662,885、US 5,780,006およびUS 5,976,495記載のものである。
さらに、上記式19のキレート基はUS 6,143,274に記載されており;上記式31および32のキレート基はUS 5,627,286およびUS 6,093,382に記載されており;式33のキレート基はUS 5,662,885、US 5,780,006およびUS 5,976,495に記載される。
【0101】
式31および32にて、XはCH2またはOであり、YはC1-C10分枝鎖または非分枝鎖アルキルであり;Yはアリール、アリールオキシ、アリールアミノ、アリールアミノアシルであり;Yはアリール部分に結合しているアルキル基がC1-C10分枝鎖もしくは非分枝鎖アルキル基、C1-C10分枝鎖もしくは非分枝鎖ヒドロキシまたはポリヒドロキシアルキル基またはポリアルコキシアルキルまたはポリヒドロキシ-ポリアルコキシアルキル基である、アリールキルであり、Jは>C(=O)、-OC(=O)-、-SO2-、>NC(=O)-、>NC(=S)-、-N(Y)-、-NC(=NCH3)-、-NC(=NH)-、-N=N-、nがすべて1-100である、合成または天然アミノ酸由来のホモポリアミドまたはヘテロポリアミンであり;他のすべての構造の変形は例えばUS 6,093,382に記載されている。上記各特許、出願および参考の開示は本明細書のそのまま組み込まれる。
【0102】
従って、シンチグラフ適用に好ましいものは、Tが22〜33の上記リガンド残基の一つである99mTcで標識された式(I)の放射性イメージング造影剤である。
【0103】
PETイメージング
本発明のさらなる具体的態様にて、式(I)の化合物におけるTは標識される場合、PETイメージングに用いるために適宜標識されていてもよい糖部分である。
従って、別の好ましい態様にて、本発明はTが適切に標識された糖部分である式(I)の化合物に関する。
好ましい糖部分は、例えば124I、125I、131I、123I、77Br、76Brおよび18F;特に好ましくは18Fなどの放射性核種によるハロゲン化により標識される。
【0104】
治療的に有効な薬剤
本発明の別の具体的態様にて、式(I)の化合物におけるTは治療的に活性な部分である。
それゆえ、本明細書において同義である、Tが治療的に活性な部分または治療剤である式(I)の化合物は、本発明のさらなる目的を構成する。
特に明記されなければ、本明細書において用語「治療的」としては、病態の症状の少なくとも部分的な緩和が挙げられる。式(I)の治療的に有効な薬剤は、有用である症状の完全な緩和を生じる必要はない。例えば個体の治療は、腫瘍もしくは疾患領域のサイズまたは血栓の減少、または腫瘍もしくは疾患領域のサイズの増大の予防ならびに他の症状の部分的緩和を生じ得る。あるいは、治療はまた、問題の領域中の血管の数の減少も生じ得、またはその数の増大を予防し得る。治療はまた、主な腫瘍の転移性増殖の数またはサイズを予防または軽減し得る。
【0105】
本発明の治療的に活性な部分の適切な例としては、血栓溶解可能な抗凝固-血栓溶解剤または線維素溶解薬、血管新生阻害剤、がん細胞の増殖を選択的に殺傷しおよび/または阻害するための化学療法剤または殺腫瘍剤などの細胞毒性薬、特に放射線治療剤が挙げられる。
【0106】
本発明のある具体的態様にて、Tは血栓溶解剤または線維素溶解薬である。
線維素溶解薬の適切な例は、例えばプラスミノーゲン活性化剤、ウロキナーゼ、ストレプトキナーゼおよびアニストレプラーゼなどの線維素溶解酵素を含む。コンジュゲートの血栓溶解活性または抗血管新生活性が問題の部位にてより局在化し集中されるように、本発明の治療的に有効な化合物のフィブリン結合ポリペプチド部分は、血栓溶解剤をフィブリン塊の部位または血管新生部位に「誘導」させ、コンジュゲートのそのような部位への親和性を改善する。
従って、Tが血栓溶解剤または線維素溶解剤である式(I)の化合物は、ヒトなどの哺乳動物における血栓関連疾患、特に急性心筋梗塞、卒中および肺塞栓症の治療に特に有用であろう。
【0107】
本発明の別の具体的態様にて、Tは化学療法剤または殺腫瘍剤である。
腫瘍標的治療剤の適切な例は、例えば白金化合物(例えばスピロプラチン、シスプラチンおよびカルボプラチン)、メトトレキセート、アドリアマイシン、マイトマイシン、アンサミトシン、ブレオマイシン、シトシン、アラビノシド、アラビノシルアデニン、メルカプトポリリジン、ビンクリスチン、ブスルファン、クロラムブシル、メルファラン(例えばPAM、L-PAMまたはフェニルアラニンマスタード)、メルカプトプリン、ミトタン、塩酸プロカルバジン、ダクチノマイシン(アクチノマイシンD)、塩酸ダウノルビシン、塩酸ドキソルビシン、タキソール、マイトマイシン、プリカマイシン(ミトラマイシン)、アミノグルテチミド、エストラムスチンリン酸ナトリウム、フルタミド、酢酸ロイプロリド、酢酸メゲストロール、クエン酸タモキシフェン、テストラクトン、トリロスタン、アムサクリン(m-AMSA)、アスパラギナーゼ(L-アスパラギナーゼ)、エルウィニア(Erwina)アスパラギナーゼ、エトポシド(VP-16)、インターフェロンcx-2a、インターフェロンcx-2b、テニポシド(VM-26)、硫酸ビンブラスチン(VLB)、硫酸ビンクリスチンおよび硫酸ブレオマイシンなどの抗腫瘍剤を含む。
【0108】
本発明のさらなる具体的態様にて、Tは血管新生および/または腫瘍増殖に重要なシグナリング分子に活性を有するチロシンキナーゼ阻害剤などの血管新生阻害剤、例えばSU5416およびSU6668(Sugen/Pharmacia & Upjohn)、エンドスタチン(EntreMed)、アンギオスタチン(EntreMed)、コンブレスタチン(Oxigene)、シクロスポリン、5-フルオロウラシル、ビンブラスチン、ドキソルビシン、パクリタキセル、ダウノルビシン、イムノトキシン;凝固因子;アシクロビル、アマンタジン アジドチミジン(AZTまたはジドブジン)、リバビリンおよびビダラビン一水和物(アデニンアラビノシド、ara-A)などの抗ウイルス薬であり;
本発明のさらなる好ましい具体的態様にて、式(I)の化合物におけるTは放射線治療剤である。
【0109】
好ましい放射線治療剤は、治療的放射性核種で標識されるキレートリガンドの残基を含む。これらの化合物は本発明の放射線治療剤としての使用に好ましい。
【0110】
従って、別の具体的態様にて、本発明はTがベータ粒子、アルファ粒子およびAugerまたはCoster-Kroning電子などのイオン化放射線を放出する放射性核種で適切に標識されたキレートリガンドの残基である式(I)の新規放射線治療剤に関する。
【0111】
放射線治療に用いられる好ましい放射性核種としては、64Cu、90Y、105Rh、111In、117mSn、149Pm、153Sm、161Tb、166Dy、166Ho、175Yb、177Lu、186/188Reおよび199Auが挙げられ、特に好ましくは177Luおよび90Yである。
【0112】
特に放射線治療用途に適切な放射性核種の選択は以下の多くの因子に依存する:
a. 物理的半減期−これは、注射前の有意な放射性崩壊を伴わないで、放射性金属およびコンジュゲートからの放射線治療構築体の合成および精製、注射部位への該構築体の送達を可能とするのに十分長くあるべきである。好ましい放射性核種は約0.5〜約8日の物理的半減期を有するべきである。
b. 放射性核種からの放出エネルギー−短い距離にわたりそのエネルギーを預ける高エネルギー的な粒子を放出し、それにより非常に局在化した損傷を生じるため、粒子放射体である放射性核種(アルファ放射体、ベータ放射体およびAuger電子放射体など)は特に有用である。これらの同位体からのベータ粒子放出からのエネルギーが約5〜約150細胞直径内に預けられるため、ベータ放出放射性核種が特に好ましい。これらの核種から製造された放射線治療剤は、その局在化部位に比較的近いが骨髄などの隣接する正常な組織を損傷するほど長距離を移動できない疾患細胞を殺傷することができる。
c. 特異的活性(すなわち放射能/放射性核種の質量)−高い特異的活性を有する放射性核種(例えばジェネレータ生成90Y、111In、177Lu)は特に好ましい。放射性核種の特異的活性は、その製造方法、製造についての特定の標的および問題の同位体の特性により決定される。
【0113】
多くのランタニドおよびランタノイドとしては、ベータ粒子を放出するため放射線治療剤としての使用に適切なものとなる核特性を有する放射性同位体が挙げられる。これらのうちいくつかを以下の第4表に記載する。
【0114】
第4表
【表4】

表中:Pmはプロメチウムであり、Smはサマリウムであり、Dyはジスプロシウムであり、Hoはホルミウムであり、Ybはイッテルビウムであり、Luはルテチウムであり、Yはイットリウムであり、Inはインジウムである。
上記ランタニドおよびランタノイドの代替としての放射性レニウム同位体の使用は当分野にてよく知られている。
特に186/188Re同位体は、放射線医薬治療における多くの適用を有する核医学に特に関心があることが分かっている。
【0115】
従って、好ましい具体的態様にて、本発明はTがベータ粒子、アルファ粒子およびAugerまたはCoster-Kroning電子などのイオン化放射線を放出する適切にキレートされた放射性核種の残基である、式(I)の新規放射線治療剤に関する。
【0116】
より好ましいTは、90Y、111In、149Pm、153Sm、166Dy、166Ho、175Ybおよび177Luから選択されるランタニドまたはランタノイド放射性核種で標識されたキレートリガンドの残基である。適切なキレートリガンドの例は、figures 3a〜3cのものから選択することができる。
【0117】
特に好ましい具体的態様にて、本発明はTが90Y、111Inまたは177Luで標識されたfigures 3a〜3cのキレートリガンドの残基である、式(I)の新規放射線治療剤に関する。
別の好ましい態様にて、本発明はTが186Reまたは188Reで標識されたfigures 4aおよび4bの式22〜33のキレートリガンドの残基である、式(I)の新規放射線治療剤に関する。
本発明の放射線治療剤に含まれるフィブリン標的ペプチド部分を、それに連結するキレート化された放射性同位体を病理学的フィブリン沈着、例えば内部固形腫瘍に持っていくことができ、従ってベータまたはアルファ粒子放出放射性同位体は細胞死をもたらす細胞毒性量のイオン化放射線を放出する。
【0118】
光学的イメージング
本発明のさらなる好ましい具体的態様にて、式(I)の化合物中、Tは光学活性なイメージング部分である。
Tが光学活性なイメージング部分である式(I)の化合物もまた、新規であり、本発明のさらなる目的を講師する。これらの化合物は光学的イメージング造影剤としての使用に好ましい。
従って、さらなる具体的態様にて、本発明はTが光学活性イメージング部分である式(I)を有する光学的イメージングのための新規造影剤に関する。
【0119】
光学活性なイメージング部分の適切な例としては、例えば有機発色団またはフルオロフォアなどの拡張された非局在化環系を有し、400-1500 nmの範囲内に最大吸収または放出を有する光学色素;例えばフルオレセインなどの蛍光分子;リン光分子;UVスペクトルに吸収される分子;量子ドット;または近もしくは遠赤外線を吸収可能な分子が挙げられる。
【0120】
イメージの製造において検出されるべき光学的パラメータとしては、例えば透過電磁波、吸収、蛍光またはリン光放射、光反射、振幅または最大吸光度の変化および弾性散乱放射線を挙げることができる。例えば生物学的組織は、650-1000 nmの範囲の近赤外(NIR)波長における光に比較的半透明である。NIR放射は数センチメートルまで組織を貫通することができ、NIR部分を含む本発明の診断剤の使用を許可し、インビボにて標的含有組織を造影する。
【0121】
近赤外色素としては、例えばCy5.5、IRDye800、インドシアニングリーン(ICG)、テトラスルホン酸置換インドシアニングリーン(TS-ICG)などのインドシアニングリーン誘導体およびその組合せなどのシアニンまたはインドシアニン誘導体を挙げることができる。
【0122】
別の具体的態様にて、本発明化合物としては、拡張的にコンジュゲートし、そのため非局在化した環系を有し、400-1500 nmの範囲の最大吸収または放出を有する、有機発色団またはフルオロフォアなどの光学色素などの光標識を挙げることができる。あるいは、本発明化合物は生物発光分子で誘導体化することができる。光標識の最大吸収の好ましい範囲は600〜1000 nmであり、ヘモグロビンからのシグナルとの干渉を最小限にする。好ましい光吸収標識は、例えば> 105 cm-1M-1の高い分子吸収性を有し、蛍光光学色素は高量子収率を有するだろう。光学色素の例としては、限定されないが、US 6051207、US 6083485、US 6534041、WO 96/23524およびその参考文献に記載のものが挙げられる。
【0123】
本発明の光学標識診断誘導体の注射後に、患者は薬剤に用いられる光標識についての適切な波長範囲における1以上の光源(例えばレーザー)でスキャンする。用いられる光は単色または多色で連続的またはパルスであってよい。透過光、散乱光または反射光は対象における一または複数の波長に調整された光検出器により検出し、標的含有組織(例えば血管新生組織)の位置を決定する。光学的パラメータの変化は時間とともにモニターされ、標的部位における光学標識試薬の蓄積を検出することができる。標準イメージ加工および検出装置は、本発明の光学イメージング試薬とともに用いることができる。
【0124】
好ましい具体的態様にて、式(I)の化合物中、Tは5-カルボキシフルオレセイン(CF5)の残基である:
【化5】

5-カルボキシフルオレセインとコンジュゲートした本発明のフィブリン結合ペプチド部分を含む多くの式(I)の化合物を製造し、インビトロにてフィブリン検出アッセイに用いた。
【0125】
以下の第5表に提示される得られた結果は、そこに記載されたすべての5-カルボキシフルオレセイン標識フィブリン結合ペプチドが等しく標識された当分野のかなりのフィブリン結合ペプチドと同程度またははるかに優れた結合を有することを示す。
【0126】

常磁性または放射性核種でキレートされた本発明化合物ならびにその標識されていない前駆体を含む、Tが治療的または診断的に活性な部分である本発明の式(I)の化合物はまた、医薬的に許容される塩の形態であることもできる。
【0127】
本明細書において用語「医薬的に許容される塩」は、親化合物が、親化合物の活性を破壊しない無毒性の安定な塩の形態に内部で中和されない酸性または塩基性基を作ることにより改変される、本発明化合物の誘導体を意味する。
該塩の適切な例としては、アミンなどの塩基性残基の鉱酸塩または有機酸塩;カルボン酸などの酸性残基のアルカリまたは有機塩が挙げられる。
【0128】
本発明化合物を塩化するために適切に用いることができる無機塩基の好ましいカチオンは、カリウム、ナトリウム、カルシウムまたはマグネシウムなどのアルカリまたはアルカリ土類金属のイオンを含む。有機塩基の好ましいカチオンは、とりわけエタノールアミン、ジエタノールアミン、モルホリン、グルカミン、N-メチルグルカミン、N,N-ジメチルグルカミンなどの第一級、第二級および第三級アミンのものを含む。
【0129】
本発明の錯体を塩化するために適切に用いることができる無機酸の好ましいアニオンは、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸などのハロ酸のイオンのものまたは硫酸などの他のイオンのものを含む。
有機酸の好ましいアニオンは、例えば酢酸、コハク酸、クエン酸、フマル酸、マレイン酸またはシュウ酸などの塩基性物質の塩化のための医薬技術に通常用いられる酸のものを含む。
アミノ酸の好ましいカチオンおよびアニオンは、例えばタウリン、グリシン、リジン、アルギニン、オルニチンまたはアスパラギン酸およびグルタミン酸のものを含む。
【0130】
上記すべてのものから、本発明の式(I)の化合物の具体例は、特に以下のMRI造影剤などを含む:
キレート錯体1
【化6】

【0131】
キレート錯体2
【化7】

【0132】
キレート錯体3
【化8】

【0133】
キレート錯体4
【化9】

【0134】
キレート錯体5
【化10】

【0135】
キレート錯体6
【化11】

【0136】
キレート錯体7
【化12】

【0137】
キレート錯体8
【化13】

【0138】
キレート錯体9
【化14】

【0139】
キレート錯体10
【化15】

【0140】
キレート錯体11
【化16】

【0141】
製造
前駆体
そのさらなる具体的態様にて、本発明はTが本発明の標識されていないキレートリガンド残基である式(I)の化合物の標識されていない前駆体、またはその生理学的に許容される塩に関する。
製造
それ自体または生理学的に許容される塩の形態である式(I)の化合物の製造は、本発明のさらなる目的である。
【0142】
ペプチド合成
新規な式(I)の化合物の製造は、最適化されたフィブリン結合ペプチド部分Aの製造を含む。
本発明のフィブリン結合ペプチド部分の直接的合成は、固相ペプチド合成、液相合成などの従来技術を用いて達成することができる;好ましくは固相合成;例として文献(Stewart et al., 固相ペプチド合成, W. H. Freeman Co., San Francisco, 1989; Merrifield, J. Am. Chem. Soc., 1963, 85:2149-2154; Bodanszky and Bodanszky, The Practice of Peptide Synthesis, Springer-Verlag, New York, 1984)を参照のこと;参照によりそのまま本明細書に組み込まれる。
【0143】
ペプチド合成の参照のために、例えば以下の実験項の手順A-Lを参照のこと。
本発明のフィブリン結合ペプチドは、好ましくは単離されまたは合成されるとすぐに精製される。精製目的のために、C4-、C8-またはC18-シリカなどのアルキル化シリカカラムを用いた逆相高速液体クロマトグラフィー(RP-HPLC)などの用いることができる多くの標準方法がある。増大する有機含有量の勾配移動相(例えば通常少量のトリフルオロ酢酸を含む水性緩衝液中のアセトニトリルなど)を一般に用い、精製を達成する。イオン交換クロマトグラフィーもまた用い、その充填に基づきペプチドを分離することができる。ポリペプチドの純度は種々の方法により測定することができる(HPLCの主要な大きいピークの同定など)。HPLCカラムにて少なくとも95%のインプット物質である単一ピークを生じるポリペプチドが好ましい。さらにより好ましくは、HPLCカラムにて少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%またはさらに99.5%以上のインプット物質である単一ピークを生じるポリペプチドである。
【0144】
本発明の式(I)の化合物中、得られたフィブリン結合ペプチドが使用のための所望のペプチドであることを確認するために、ペプチド成分の分析を行うことができる。そのような分析は高分解能質量分析を用いて行い、ペプチドの分子量を測定することができる。あるいは、ペプチドのアミノ酸含有量は、水性酸中にてペプチドを加水分解し、HPLCまたはアミノ酸分析器により混合物の成分を分離し、同定し、定量することにより確認することができる。連続的にペプチドを分解し、順にアミノ酸を同定するタンパク質シーケンサーを用いて、正確にペプチドの配列を決定することもできる。
【0145】
結合ポリペプチドの改変または最適化
フィブリン結合ポリペプチドの改変または最適化、従って最適化ペプチド部分を提供することは、本発明の範囲内である。具体的には、本発明のポリペプチド配列をさらに改変し、その有効性、薬物動態挙動、安定性および/または他の生物学的、物理的および化学的特性を最適化することができる。
【0146】
リンカー
本発明のリンカー部分Yは知られているか、または既知の手順により市販のサブユニットから出発して容易に製造することができる。
【0147】
非限定的な例として、figure 1は、本発明のリンカーで官能基化されたペプチド部分[ここに、ペプチド部分は第1表に示されるアミノ酸配列番号001を含むものであり、コンジュゲートした連結部分は-GGGKJJ-である(ここに、JはFmoc-8-アミノ-3,6-ジオキサオクタン酸である)]の製造のための合成経路を含む(Aldrich Neosystem and Peptides Internationalカタログを参照のこと)。
【0148】
キレート化合物
式(I)の化合物(ここに、Tは常磁性もしくは放射性金属イオンで標識された(または標識されるべき)キレートリガンド残基またはその生理学的に許容される塩である)の製造は、本明細書にわたって詳細に、特に以下の実験項に含まれる合成反応式2-4に記載される。
上記から、上記方法がさらに異なるT部分を有する式(I)の化合物の製造に適用することができることは当業者に明らかである。
【0149】
一般的手順
一般的用語にて、式(I)の化合物の製造に採用することができる合成経路は、例えば以下の主な工程を含むことができる:
1)分子中の残りの基との金属配位および共有結合中に含まれるか、または含まれない任意の官能基が場合により適切におよび独立して保護または活性化され得る適切な形態におけるキレートリガンドの製造。この点、製造されたキレート部分は選択された常磁性または放射性金属ですでに錯体化され得、あるいは好ましい具体的態様により標識されていないものであることができる。この場合、リガンドがまず反応して分子中の残りの基とコンジュゲートした後、得られたコンジュゲート化合物が既知の方法により選択された常磁性金属イオンまたは放射性核種と錯体化する。
後者の場合、Tが常磁性金属イオンまたは放射性核種で標識されたキレート剤の残基である式(I)の化合物は、本発明のさらなる目的である。
【0150】
2)適切に脱保護/活性化された樹脂への適切に保護されたペプチド部分または選択されたアミノ酸の充填、次いでリンカーYとコンジュゲートしたペプチド部分Aを適切に構築するようなさらなるアミノ酸、ペプチドまたはリンカーサブユニットとの連続的カップリング。
あるいは、リンカーYの適切なサブユニットを上記樹脂に適切に充填し、次いでA-Y部分を担持した樹脂を得るためにさらなるリンカーおよびペプチドサブユニットおよびアミノ酸と既知の方法により反応させることができる。
【0151】
上記カップリング反応が種々の連続的カップリングの可能性により起こり得、すべて本発明の範囲内に含まれるものであることは当業者に明らかである。
上記各カップリング反応にて、官能基は反応に関わるとすぐに適切に脱保護または活性化することができ、さもなくば所望でない副反応を回避するように保護または不活性化することができる。
従って、例えば与えられたアミノ酸またはサブユニットはまず保護または不活性化工程を受け、次いでカップリング工程に関わるように意図的に脱保護または活性化することができるカップリング反応に関与しない官能基を保護することを目標とすることができる。
好ましくは、脱保護/活性化、カップリングおよび保護/不活性化などの上記各工程後に、任意の得られた「充填-ペプチド-中間体」は精製工程、例えば適切な溶媒による洗浄工程を受ける。
【0152】
3)適切に脱保護/活性化された樹脂に担持されたA-Y部分と選択された部分Tとのカップリング
4)カップリング化合物の樹脂からの開裂、システインの-SH基をジスルフィド結合-S-S-に変換するようなペプチドの環化、Tが標識された任意の適切なキレート剤である場合、次いで式(I)の所望の化合物を得るような選択された常磁性金属イオンまたは放射性核種との錯体化。
【0153】
上記のとおり、「保護基」は、結合する官能基を保護するために適合された基である。本明細書においてFmoc((9H-フルオレン-9-イルメトキシ)カルボニル)は、好ましくはアミノ-保護基として本発明の錯体化合物の製造に関わるアミノ酸、ペプチド部分、ポリ-アミノ-酸性樹脂について用いられる。従って、Fmoc保護アミノ酸、Y単位またはサブユニットおよびペプチド部分は、式(I)の化合物の製造のための有用な中間体構築ブロックとしてみなすことができる。
【0154】
反応順序、脱保護/保護工程、中間体の精製および洗浄工程ならびに樹脂への充填および樹脂からの開裂のいずれかにおける上記反応式手順、その包括的な任意の変形により、都合よく式(I)のキレート錯体またはその塩を単離することができ、従って本発明の範囲内に含まれるものである。
同様に、実質的に類似の方法にて行うことにより、該方法はまた、部分Tが例えば光学的イメージング部分または治療的有効部分などの上記錯体化合物以外の基である式(I)の化合物の製造のために供することもできる。
【0155】
適切に保護されたキレートリガンドの製造
本発明化合物の主なリガンド残基は当業者によく知られており、そのうちのいくつかはすでに市販されている。市販されていないキレーターは例えば参考文献により既知の方法により製造することができる。
そのうち、以下の構造:
【化17】

を有するAAZTA誘導体は新規であり、従って本発明のさらなる目的である。
その、特に対応のtert-ブチルエステルの製造は以下の実験項に詳細に記載する。
【0156】
ペプチドの充填、脱保護/活性化および充填ペプチドのカップリング
好ましくは、ペプチド部分が接着している樹脂は適切に保護されたPAL-PEG-PS樹脂である。より好ましくはFmoc-PAL-PEG-PS樹脂である。
樹脂に充填してすぐのペプチド部分のリンカーYまたはその任意のサブユニットとのカップリング前に、カップリング反応を受ける官能基は従来の方法により脱保護され、得られた中間体を適切に洗浄した。
【0157】
単離されたリガンドの錯体化
単離されたリガンドの錯体化は、よく知られている方法により適切な金属または放射性核種で適切に標識することにより行うことができる。
例えば、特にGd(III)キレートなどの本発明の常磁性錯体は、適切なGd(III)誘導体、特にGd(III)塩または酸化物の化学量論量の添加により製造することができる。例えば常磁性金属イオンによる標識を開示したEP 230893、および放射性金属による標識を開示したWO 98/52618、U.S. 5,879,658およびU.S. 5,849,261を参照のこと。
【0158】
放射性イメージングまたは放射性診断用途のためのキレート
上記方法、その包括的な任意の改変はまた、式(I)のランタニドまたはランタノイド放射性同位体のキレート錯体を製造するために用いることができる。
他方では、例えば放射性テクネチウムの錯体を形成する場合、99mTcの塩、好ましくは99mTc過テクネチウム酸塩を還元剤の存在下、標識されていない本発明化合物と反応させる。好ましい還元剤はジチオナイトおよび第一スズおよび第一鉄イオンであり、最も好ましくは塩化第一スズである。
【0159】
そのような錯体を製造する手段は、都合よく所定量の標識された本発明化合物および十分な量の還元剤を含む封をしたバイアルを含むキット形態にて提供され、試薬を99mTcで標識する。放射性核種以外の本発明の放射性医薬品の製造に必要なすべての化合物を含む単一またはマルチバイアルキットは本発明の重要な部分である。単一バイアルキットは好ましくは、キレートリガンド(金属放射性核種を用いる場合)、スズ塩源(還元が必要な場合、例えばテクネチウムを用いる場合)または他の医薬的に許容される還元剤を含み、医薬的に許容される酸または塩基で適切に緩衝し、約3〜約9の値までpHを調節する。用いられる還元剤の量およびタイプは、主に形成される交換錯体の性質に依存するだろう。適切な条件は当業者によく知られている。好ましくは、キット内容物は凍結乾燥形態である。そのような単一バイアルキットは適宜不安定リガンドまたは交換リガンド、例えばグルコヘプトネート、グルコネート、マンニトール、リンゴ酸、クエン酸または酒石酸などを含んでいてもよく、最終生成物の放射性化学純度および安定性を改善するために供されるジエチレントリアミン-ペンタ酢酸(DPTA)、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)またはa-、b-もしくはg-シクロデキストリンなどの反応改変体も含むことができる。キットはまた、凍結乾燥工程に役立つよう設計される安定剤、マンニトールなどの膨張剤、および当業者に知られる他の添加剤も含むことができる。
【0160】
マルチバイアルキットは好ましくは、同じ一般的成分を含むが、放射性医薬品を再構成する際に2以上のバイアルを用いる。例えば1のバイアルは、過テクネチウム酸塩の添加にて不安定なTc(V)錯体を形成する必要があるすべての成分を含むことができる(例えばスズ源または他の還元剤)。過テクネチウム酸塩をこのバイアルに加え、適切な時間待った後、このバイアルの内容物をリガンドならびに適切な緩衝剤を含む第二バイアルに加え、pHをその最適値に調節する。約5〜60分の反応時間後、本発明の錯体を形成する。都合よく、このマルチバイアルキットの両バイアルの内容物は凍結乾燥される。上記のように、反応改変体、交換リガンド、安定剤、膨張剤などはいずれかまたは両方のバイアルにて存在することができる。
本発明に有用な99mTc過テクネチウム酸塩には、ナトリウム塩またはアンモニウム塩または低級アルキルアンモニウム塩などのアルカリ金属塩が含まれる。
【0161】
放射活性的に標識された本発明のイメージング剤は、適切な量の放射能を含まなければならない。111Inまたは99mTc錯体を形成する際に、例えば約0.01ミリキュリー(mCi)〜約100 mCi/mLの濃度にて放射能を含む溶液中にて放射性錯体を形成することが一般的に好ましい。
【0162】
放射線治療用キレート
ベータ放出ランタニド放射性同位体などの放射性金属の製造方法は、当業者に知られており、他の文献に開示されている[例えばCutler C S, Smith CJ, Ehrhardt GJ.; Tyler TT, Jurisson SS, Deutsch E.「Current and potential therapeutic uses of lanthanide radioisotopes.」Cancer Biother. Radiopharm. 2000; 15(6): 531-545]。多くのベータ放出同位体は比較的低コスト高収率にて製造することができ、多く(例えば90Y、149Pm、177Lu)は、上記文献の引用された手順によりほぼ担体フリー特異的活性(すなわち大部分の原子は放射活性である)を生成しうる。非放射性原子が標的組織上のレセプターに結合するためのその放射性類似体と競争することができるので、高特異的活性放射性同位体の使用は標的組織にできるだけ高用量の放射能を送達することを可能にするために重要である。
【0163】
本発明の錯体の製造(ここに、金属は放射性レニウムである)は、例えば出発物質としてレニウム化合物(ここに、金属は+5または+7酸化状態である)を用いて達成することができる。レニウムがRe(VII)状態である化合物の例は、NH4ReO4またはKReO4である。Re(V)は例えば[ReOCl4](NBu4)、[ReOCl4](AsPh4)、ReOCl3(PPh3)2およびReO2(ピリジン)4+として入手可能である。レニウム錯体を形成することができる他のレニウム試薬もまた用いることができる。
【0164】
活性
上記のように、本発明の新規な式(I)の化合物は、アミノ酸配列が先行文献の既知のフィブリン標的ペプチド配列と異なる新規フィブリン結合ペプチド部分Aを含む。予想外に、本発明化合物は優れた物理的特性とともに、既知のフィブリン標的ペプチド、特にリンカーGGGK-NH2により官能基化されるWQPC*PWESWTF*CWDP(配列番号000)より優れたフィブリン選択的結合を有する。
【0165】
特に、既知のペプチドの6位のTrpをAlaで置換し、以下の第5および6表に提示されるフィブリン結合親和性データにより立証されるように、改善された有効性ならびにより親水性であるペプチドを生じた。この置換の改善された特性は、特にペプチドの他のTrp残基を置き換えることによりフィブリン結合を全くもたらさないか、または還元されたものをもたらされるため、予想外であった。
【0166】
既知のペプチドを改変するために用いられた別の方法は、N-またはC-末端にてアミノ酸を結合することによる。一般に、C-末端におけるアミノ酸の結合はペプチドの有効性を劇的に変化しなかった。しかし、極性アミノ酸(Argなど)をN-末端に加えた場合、結合の改善が観察された。従って、1位のTrpの重要性を考慮して、有益な効果を伴った極性の導入は予想外であった。さらに、11位のPheについて独特なアミノ酸シクロヘキシルアラニン(Cha)の導入はさらに、有効性の改善をもたらす。置換フェニルアラニン誘導体がより弱い結合をもたらしたことを考慮すると、より嵩高い低芳香族の残基への変化が有効性を改善することは予想外であった。従って、これらの3つの改変の組合せは、既知のペプチドと比較して予想外に優れた物理的特性とともに優れたフィブリン特異的結合および改善された有効性を有する第1表のペプチドをもたらした。
【0167】
本発明の実践にて、フィブリノゲンと比較したフィブリン結合部分のフィブリンに対する親和性の測定は、有用な基準であり、フィブリンについての特異性を意味する。結合の定量および親和性の測定のための標準的なアッセイとしては、平衡透析、ゲルろ過、または結合部分およびその標的の相互作用から生じることができる数多くの分光変化(例えば蛍光偏光の変化)のモニターが挙げられる。これらの技術によりリガンド(またはタンパク質)濃度の関数として結合および遊離リガンドの濃度を測定する。結合ポリペプチドの濃度([結合])は以下の式:
[結合]=N x [遊離]/((1/Ka)+[遊離])
で示される、遊離ポリペプチドの濃度([遊離])およびポリペプチドについての結合部位の濃度、すなわちフィブリン上の濃度(N)と関連する。
【0168】
この式へのデータの解は、結合親和性の定量的基準である結合定数Kaを生じる。結合定数Kaは解離定数KDの逆数である。KDは親和性の測定にて記録されることがより多い。フィブリノゲンについてフィブリンより1.5倍高いKDを有するペプチドは低特異性フィブリン結合体と考えられる。フィブリノゲンについてフィブリンより10倍高いKDを有するペプチドは中程度の特異性フィブリン結合体であり、フィブリノゲンについてフィブリンより100倍以上高いKDを有するペプチドはフィブリンについて非常に特異的である。好ましくは本発明中、ペプチドおよび診断的にまたは治療的に活性な薬剤は、フィブリノゲンについてフィブリンより少なくとも1.5倍高い、より好ましくは少なくとも10倍高い、さらにより好ましくは少なくとも100倍高い、最も好ましくは少なくとも1000倍高いKDを有するものを含む。好ましいフィブリン結合ポリペプチドはフィブリンについて1ナノモーラー(nM)〜100マイクロモーラー(μM)の範囲のKDを有し、少なくとも10 nM、少なくとも20 nM、少なくとも40 nM、少なくとも60 nM、少なくとも80 nM、少なくとも1μM、少なくとも5μM、少なくとも10μM、少なくとも20μM、少なくとも40μM、少なくとも60μMおよび少なくとも80μMのKD値を含む。
【0169】
本発明の実践にて、結合アッセイ試験は本発明の5-カルボキシフルオレセイン標識ペプチドを用いて行った。蛍光偏光測定により測定して得られたKD値は、製造されたそれぞれの5-カルボキシフルオレセイン誘導体についてペプチド部分の配列(ID)を提供する以下の第5表に挙げられており、拡張されたペプチド配列および製造された化合物に含まれるリンカー、HPLCおよび質量スペクトルデータ(詳細には実験項を参照のこと)、ほとんどについて、同様に官能基化され、標識され、従って配列Ac-WQPC*PWESWTFC*WDPGGGK-NH2 [Ac-配列番号000-GGGK(CF5)-NH2]を有する既知のフィブリン結合ペプチドと比較した結合親和性測定を含む。
【0170】
第5表 5-カルボキシフルオレセイン標識ペプチド
【表5】







【0171】
第5表に示されるように、本明細書に記載のすべての5-カルボキシフルオレセイン標識フィブリン結合ペプチドは、かなりのフィブリン結合ペプチドと同程度か、またはかなり優れた結合を有する。
さらに以下の第6表は、第1表のフィブリン結合ペプチドについて配列ID、製造され試験されたフィブリン結合部分の拡張された配列、HPLCおよび質量スペクトルデータなどの分析データ(詳細には実験項を参照のこと)、およびほとんどのペプチドについて同様に官能基化され配列Ac-WQPC*PWESWTFC*WDPGGGK-NH2(Ac-配列番号000-GGGK-NH2)を有する既知のフィブリン結合ペプチドと比較して従来の方法により行った結合親和性測定(IC50と表現)(相対IC50 =1)を提供する。
1未満の相対IC50はかなりのペプチドより良い結合を示す。
【0172】
第6表 ペプチドフィブリン結合特性
【表6】











IC50 半最大阻害濃度は、その標的の50%阻害に必要な阻害剤の濃度を示す
† = C-末端リジンを除くペプチドのすべてのリジン基のNeにivDde基を有するペプチドについて記録した分析データ
‡ = N-末端Aloc-保護ペプチドについて記録した分析データ
【0173】
第6表に示されるように、そこに記載されるすべてのフィブリン結合ペプチドは、かなりのフィブリン結合ペプチドと同程度またははるかに優れた結合を有する。
【0174】
フィブリン結合部分をそれに連結する診断的にまたは治療的に有効な部分を標的部位に向けることができる標的ベクターとして用いる場合、本発明により結合特異性の他の態様はより重要になることがある。これはイメージング剤および治療剤が動的システムにて作用するためである(ここに、標的へのイメージング剤の結合はイメージング手順を通して安定な平衡状態にない)。例えば薬剤が最初に注射される場合、薬剤および薬剤標的錯体の濃度は急速に増大する。しかし、注射後すぐに、循環(遊離)物質は腎臓または肝臓を通過し始め、イメージング剤の血漿濃度は低下し始める。この血漿中の遊離薬剤の濃度は結局、薬剤標的錯体の解離を生じさせる。従って、診断(または治療)剤の有用性は、一方では薬剤の通過速度に比べて薬剤標的解離速度の差異に依存する。他方では、低拡散もしくは輸送、限定インビボ有効性、および/またはインビボ特異性の欠如はすべて、中程度の造影促進または低い治療的有効性をもたらす。
【0175】
本発明化合物の特異性および効率を試験する目的で、それぞれヒト血漿塊におけるインビトロMRI試験および神経-2A-芽細胞腫マウスモデルにおけるインビボMRI試験の二つのプロトコールを促して用いた。
【0176】
次いでイメージング試験をインビトロまたはインビボにて行い、ここに、本発明のいくつかの典型的なキレート錯体により提供されるMRIシグナル増強を記録し、WO02/055544に開示される既知のペプチドAc-WQPCPWESWTFCWDPなどの類似のキレート化合物により提供されるシグナルと比較した。以下の実験項などの上記プロトコールにて示されるように、ProHance(登録商標)を参照化合物として必ず用いた。従って、特にインビトロ試験は、ヒト血漿塊に異なるインキュベーション濃度にてインキュベートされた各試験化合物から回収されるシグナル増強の比較を行った。例えば以下の実験項に示される第7および8表およびFigure 5に図示される得られた結果は、本発明化合物が特に都合良く低インキュベーション濃度にて用いられる場合に、凝血塊の最大シグナル増強を記録したことを示す。
【0177】
さらに、皮下接種または自然発生の腫瘍を有する動物にて行ったインビボMRイメージング試験は、腫瘍内のフィブリンを検出するための本発明の診断剤の適合性を示す。
例えばインビボ試験は、本発明のいくつかの典型的なキレート化合物および参照化合物としてProHance(登録商標)を用いたマウスモデルを行った。得られたデータおよびイメージは、例えばいくつかはfigure 6-10に示されるが、本発明の新規なフィブリン標的MRI造影剤は、合理的な長さの時間にてフィブリン基質のイメージングを可能とする現実的に短い時間(その標的時間は6時間未満である)にて腫瘍内で選択的に蓄積することを示す。次いで試験薬剤を数日にわたりすべての組織から完全に洗浄した。投与された動物の組織学的検査により確認されるように、提示される標的はMR記録シグナルおよびフィブリン濃度間の良い相関関係でフィブリン濃度に比例した。
【0178】
高いフィブリン親和性とともに、本発明のMRI造影剤はさらに、有利に高緩和能を与え、これはインビボにて非常に少量のフィブリン蓄積の検出を可能にした。
例えばFigure 10に示されるように、本発明の典型的なキレート錯体と既知のペプチドなどの類似の化合物とでインビボにて行った比較試験は、本発明の薬剤により提供されるすぐれた腫瘍増強を示した。特に、腫瘍内の高シグナル増強は本発明の典型的なキレート錯体として用いられるキレート錯体1の注射の4時間後に記録されたが、より少ない数の腫瘍片に含まれるより低いシグナル増強が類似の既知ペプチド誘導体で処置した動物にて回収された。
【0179】
さらに、抗凝固剤としてのワルファリンで処置した腫瘍動物モデルにて行ったMRI実験は、腫瘍治療の結果として腫瘍フィブリン内容物の軽減の評価に対する本発明化合物の使用の適合性を示す。
【0180】
使用
本発明化合物は、フィブリン、および例えば凝血塊および血栓塞栓症などのフィブリンと関連するすべての病態、特に腫瘍および転移過程を見つけ出し、測定しおよび治療するため、ならびに異なる抗がん剤および抗凝固-抗血栓薬の治療効果を評価およびモニターするための有利な用途を見出すことができる。
【0181】
特に、式(I)の化合物(ここに、Tは診断的に活性な部分である)は、有利に例えば塞栓症(PE)、深部静脈血栓症(DVT)、卒中、アテローム性動脈硬化症およびプラーク形成ならびに多発性硬化症、関節リウマチ、狼瘡、低酸素症または心臓、腎臓、肝臓、脳もしくは他の器官の虚血に関わる脱髄過程および軸索損傷などの炎症過程と関連するフィブリン沈着、ならびに一般にフィブリンが関与する血管新生過程と関連するすべての炎症性疾患の検出および診断における用途を見出すことができる。好ましくは、本発明の新規造影剤は都合良く、癌性転移組織、特に固形腫瘍におけるフィブリンの局在化およびイメージング、および抗血管新生薬から抗凝固-抗血栓薬まで異なる抗がん剤の治療効果の評価に用いることができる。
【0182】
さらに、フィブリン内容物が腫瘍段階およびグレードと関連するため、本発明の診断剤は、固形腫瘍の非侵入性組織病理学的グレードにおける用途を見出すことができる。
他方、式(I)の化合物(ここに、Tは治療的に活性な部分である)は、フィブリン沈着を伴うすべての病態の予防および治療、特に固形腫瘍およびそれに伴う転移過程の予防および治療のための有利な用途を見出す。
【0183】
本発明化合物は、脈管内(例えば静脈内、動脈内、冠動脈内、心室内投与など)、髄腔内、腹腔内、リンパ管内および腔内投与に用いることができるため、広範囲の用途を有する。さらに、それらは、経口または非経口投与、それゆえ具体的には胃腸管のイメージングに適する。
その好ましい具体的態様にて、本発明は、有効成分として少なくとも一つの式(I)の化合物(その医薬的に許容される塩を含む)を1以上の医薬的に許容される担体または賦形剤とともに含む、医薬組成物に関する。
【0184】
投与の所望の経路のための組成物は、当分野にてよく知られる任意の方法により製造することができる。投与量、剤形、投与形態、組成物などの詳細は、参照により本明細書に組み込まれる文献(Remington's Pharmaceutical Sciences, 18th ed., Alfonso R. Gennaro, ed. (Mack Publishing Co., Easton, PA 1990))などの標準的医薬文献にてさらに記載される。
例えば非経口投与について、組成物は、好ましくはpHが6.0〜8.5の範囲であることができる、滅菌水溶液または懸濁液として製剤化することができる。
【0185】
これらの水溶液または懸濁液は、0.002〜1.0 Mの範囲の濃度にて投与することができる。これらの製剤は、そのまま凍結乾燥され供されて使用前に再構成することができる。
胃腸管用途または体腔内注射について、これらの薬剤は、例えば粘性を制御するために適宜適切な賦形剤を含んでもよい溶液または懸濁液として製剤化することができる。
経口投与について、薬剤は医薬技術にて通常用いられる製造方法により、または胃の酸性pHに対してさらなる保護を得るためにコーティング製剤として製剤化することができ、従って特に胃液の典型的なpH値にて起こるキレート金属イオンの放出を予防することができる。
例えば甘味料および/または着香料などの他の賦形剤もまた、医薬製剤の既知の技術により加えることができる。
【0186】
本発明化合物の溶液または懸濁液はまた、エアロゾル-気管支造影および点滴に用いられるエアロゾルとして製剤化することもできる。
例えばそれらはまた、リポソームに封入することもできるか、またはリポソーム自体を構成することができ、従って単層または多重膜小胞として用いることができる。
好ましくは、本発明の適切な医薬組成物は、ヒトへの静脈内投与に適合された医薬組成物として規定の手順に従い製剤化する。
【0187】
例えば、MRI法にて用いるための本発明の常磁性造影剤は注射用組成物の形態にて患者に投与する。MRI造影剤の投与方法は、好ましくは非経口、静脈内、動脈内、髄腔内、間質的または腔内である。フィブリン沈着、特に固形腫瘍のイメージングのために、静脈内または動脈内投与が好ましい。
例えばMRIについて、対象は、MRシグナルを標的(例えば血管新生部位)にて少なくとも10%増強させるのに十分な投与量の造影剤を受けるものである。本発明のフィブリン標的MRI造影剤の注射後に、患者は、標的を含む任意の部位の位置を測定するためのMRI装置にてスキャンする。標的局在化における治療設定において、細胞毒性剤または治療剤はすぐに投与することができ、必要ならば次いで、患者をスキャンし、治療効果を視覚化することができる。
【0188】
本発明のMRI造影剤は、例えば従来のMRI造影剤と同様に用いることができる。標的が例えば組織内の腫瘍部位である場合、いくつかのMR技術およびパルス配列がバックグラウンド血液および組織に対する該部位のコントラストを増強することが好ましいことがある。これらの技術としては、例えばファーストスピンエコー系列(例えばAlexander et al., Magnetic Resonance in Medicine, 40(2): 298-310 (1998)を参照のこと)およびフロースポイルドグラジエントエコー系列(例えばEdelman et al., Radiology, 177(1): 45-50 (1990)を参照のこと)などの血液を暗くしようとするブラックブラッド血管造影配列が挙げられるがこれらに限定されない。これらの方法はまた、脈管形成腫瘍などの組織を含む標的とバックグラウンド組織とのコントラストを増大する、反転回復調製配列または飽和回復調製配列などのコントラストにおける相違を増強するフロー独立技術も含む。
【0189】
放射線治療の場合、当分野にて知られる適切な投与計画を本発明の放射線治療化合物に用いることができる。
本化合物は、標的組織の損傷または切除を引き起こすのに十分であるが、実質的な損傷が非標的(正常な組織)にもたらされるほどではない放射能の量を用いた単回または複数回のIVまたはIP注射を含むが、これらに限定されない、多くの方法を用いて投与することができる。必要な量および投与量は、用いられる同位体のエネルギーおよび半減期、薬剤の摂取の程度および体内から薬剤を除去する程度、および腫瘍量に応じて構築物で異なる。一般に投与量は、約0.01 mCi〜約100 mCi、好ましくは1 mCi〜50 mCiの範囲であることができる。典型的に、約30-50 mCiの単回用量から約3 Curiesまでの累積用量を適用することができる。
【0190】
本発明の放射線治療組成物は生理学的に許容される緩衝剤を含むことができ、注射前の化合物の放射線分解損傷を防ぐための放射線安定剤を必要とすることができる。放射線安定剤は当業者に知られており、例えばパラ-アミノ安息香酸, アスコルビン酸, ゲンチシン酸などを含むことができる。
放射性核種イメージングの場合、本発明化合物は注射により患者に投与することができる。イメージング剤に取り込まれる核種のガンマ線エネルギーを測定するPETカメラまたはガンマカメラを用いて、薬剤の摂取領域を造影し、部位内に存在する放射能量を定量する。インビボにおける部位のイメージングは数分で生じうる。しかし、イメージングは所望ならば、放射性標識ペプチドを患者に注射した後数時間またはそれ以上にて生じうる。たいていの場合、十分な量の投与量が約1時間の約0.1内にイメージされる領域に蓄積されて、シンチフォトの撮影を可能にする。
【0191】
所望の予防的、治療的または診断的効果を得るために、治療的または診断的に有効な用量または量の有効成分を、都合良く単位用量の形態にて毎日1回以上で投与する。日用量は、導入される生物学的に活性な分子に応じて医療従事者により明らかに選択される。
本明細書において用語「有効用量または有効量」は、その目的とする診断または治療目的:すなわち例えば細胞、体液および生物組織ならびにフィブリン沈着により影響されるヒト体器官、領域もしくは組織などの患者生物学的要素を視覚化するため、またはそれを目的とする治療目的;またはフィブリンと関連する病態の発症を遅延させもしくは予防させるため;または症状の進行、重大化または悪化を遅らせもしくは停止させるためという目的を果たすのに十分な、本発明の診断もしくは治療分子またはその医薬組成物の任意の量を意味する。
【0192】
そのさらなる具体的態様にて、本発明は、インビトロおよびインビボの両方における生存哺乳類患者、好ましくはヒト患者由来の細胞、体液および生物組織などの病理学的系ならびにフィブリン沈着が起こる腫瘍またはがん組織、炎症などのヒト体器官、領域または組織の診断イメージングに用いられる診断用製剤の製造のため、ならびに病変の治療の進行および結果をモニターするためのTが診断的に活性な部分である式(I)の化合物の使用に関する。
【0193】
さらなる別の態様にて、本発明は、Tが診断的に活性な部分である式(I)の化合物を哺乳類患者に投与することにより、例えば式(I)の適切な化合物を例えば生体外サンプルの生物サンプルおよび組織と接触させることによりインビトロおよびインビボの両方にて固形腫瘍または腫瘍細胞をイメージングする方法を提供する。
さらなる具体的態様にて、本発明、インビトロおよびインビボの両方における生存哺乳類患者、好ましくはヒト患者由来の細胞、体液および生物組織などの病理学的系ならびにフィブリン沈着が起こる腫瘍またはがん組織、炎症などのヒト体器官、領域または組織の予防および/または治療に用いられる治療用製剤の製造のためのTが治療的に活性な部分である式(I)の化合物の使用に関する。
【0194】
さらなる態様にて、本発明は、ヒト細胞、体液またはフィブリン沈着により影響される体器官、組織もしくは領域などの病理学的系を本発明の治療剤と接触させることを含む腫瘍成長をインビボにて予防または阻害する方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0195】
【図1】FIG. 1は、典型的なリンカーで官能基化された本発明のペプチドの製造方法を図示する。
【図2】FIG. 2は、本発明の典型的な5-カルボキシフルオレセイン標識ペプチドの製造方法を図示する。
【図3】FIGs 3a、3b、3cは、111In、および常磁性Gd3+などのランタニドまたは例えば177Lu、90Y、153Smおよび166Hoなどの放射性ランタニドのいずれかのための好ましいキレーターの例を図示する。
【図4】FIGs 4a、4bは、90mTc、186Reおよび188Reなどの放射性金属イオンの好ましいキレーターの例を図示する。
【図5】FIG 5は、各試験化合物についてT1加重MRイメージにて測定される、2Tおよび25〜400μMの濃度のペプチドにて回収された凝血塊にて記録されたシグナル増強の百分率(% Enh)の図示的提示を提供する。
【図6】FIG 6は、実施例16にて得られるキレート錯体2(25μmol/kg)の注射後の異なる時間にて得られる連続的スライスに関する。矢印は腫瘍を示す。
【図7】FIG 7は、実施例16にて参照化合物として用いられるProHance(登録商標), 100μmol/kgの注射後の異なる時間にて得られる連続的T1加重スライスに関する。矢印は腫瘍を示す。
【図8】FIG 8は、キレート錯体2(25μmol/kg)および実施例17にて得られるProHance(登録商標)(100μmol/kg)の注射前および後の異なる時間にて得られるT1加重イメージを意味する。腫瘍領域(TRAMPT)は矢印により示される。
【図9】FIG 9は、キレート錯体5(25μmol/kg)および実施例17にて得られるProHance(登録商標)(100μmol/kg)の注射後の異なる時間にて収集されるT1加重イメージを意味する。腫瘍領域は矢印により示される。
【図10】FIG 10は、実施例18にて得られるキレート錯体1(25μmol/kgの錯体)(下)および参照化合物2(上)の注射後4時間にて得られるT1加重MRIイメージ(連続的スライス)に関する。
【0196】
実験項
本発明のフィブリン結合部分およびその診断的にまたは治療的に活性な部分とのコンジュゲートの単離、コンジュゲーションおよび使用は、さらに実施例にて例示される。以下の実施例に含まれる具体的なパラメータは、本発明の実践を例示するものであり、何ら本発明の範囲を限定するために提示されるものではない。
当業者は、当分野にてよく知られている異なる製造アプローチを合成手順に基づき同様に採用することができることを理解することができる。
【0197】
略語
本明細書および以下の実施例を通して以下の共通の略語を用い;他のものは従来採用されるものとして用いる。
FBS ウシ胎仔血清
DMEM: ダルベッコ改変イーグル培地
FCS: ウシ胎仔血清
AA アミノ酸
ACN アセトニトリル
Ac2O 酢酸無水物
Adoa (J) 8-アミノ-3,6-ジオキサオクタン酸
Aloc アリルオキシカルボニル
API-ES 大気圧イオン化エレクトロスプレー
Boc t-ブチルオキシカルボニル
CE キャピラリー電気泳動法
CF5-NHS 5 カルボキシフルオレセイン, スクシンイミジルエステル(単一異性体)
Cha 2-シクロヘキシル-L-アラニン
DCM ジクロロメタン
DIC N,N'-ジイソプロピルカルボジイミド
DIEA N,N-ジイソプロピルエチルアミン
DMAC N,N-ジメチルアセトアミド
DMF N,N-ジメチルホルムアミド
DMSO ジメチルスルホキシド
DSG ジ-N-ヒドロキシスクシンイミジル-グルタレート
Et2O ジエチルエーテル
EtOAc 酢酸エチル
Ffe4 L-4-フルオロフェニルアラニン
F34fe L-3,4-ジフルオロフェニルアラニン
Fmoc 9-フルオレニルメチルオキシカルボニル
Fmoc-J(またはFmoc-Adoa) Fmoc-8-アミノ-3,6-ジオキサオクタン酸
【0198】
G グリシン
GdCl3 塩化ガドリニウム
Glut グルタル酸
HATU O-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N',N'-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート
HBTU (2-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,2,3,3-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート)
HOBt N-ヒドロキシベンゾトリアゾール
Hypt4 トランス-4-ヒドロキシ-L-プロリン
ICP-AES 誘導結合プラズマ発光分光法
ivDde (4,4-ジメチル-2,6-ジオキソシクロヘキサ-1-イリデン)-3-メチルブチル
Lys リジン
MALDI マトリクス支援レーザー脱離イオン化法
Mr 分子量
MS 質量分析
NHS N-ヒドロキシスクシンイミド
NMM N-メチルモルホリン
NMP N-メチルピロリドン
PB リン酸緩衝液
PBS Ca++およびMg++を含まないダルベッコリン酸緩衝生理食塩水
Pip ピペリジン
Pd(PPh3)4 テトラキス(トリフェニル-ホスフィン)パラジウム(0)
Pmc 2,2,5,7,8-ペンタメチルクロマン-6-スルホニル
試薬B (TFA:H2O:フェノール:トリイソプロピルシラン, 88:5:5:2)
SATA S-アセチルチオールアセチル
S(Galnac) O-(2-アセタミド-2-デオキシ-α-D-ガラクトピラノシル)-L-セリン
SPPS 固相ペプチド合成
TFA トリフルオロ酢酸
TIPS トリイソプロピルシラン
Tris トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン
Trt トリチル
【0199】
出発物質
用いられるFmoc保護アミノ酸は、Nova-Biochem(San Diego, CA, USA)、Advanced ChemTech(Louisville, KY, USA)、Chem-Impex International(Wood Dale Ill, USA)およびMultiple Peptide System(San Diego, CA, USA)から得た。DPPE、DSPE-PG4-NH2およびDPPE-PG4-NH2はAvanti Polar Lipids(Alabaster, AL)から得た。Fmoc-PEG3400-NHSはShearwater Polymers (Huntsville, AL)から得た。他の試薬はAldrich Chemical Co.(Milwaukee, WI)およびVWR Scientific Products(Bridgeport, NJ)から得た。ペプチド合成用溶媒はPharmco Co.(Brookfield, CT)から得た。
【0200】
ペプチド部分の合成および精製
手順A:自動ペプチド固相ペプチド合成
個別のペプチドはABI 433A器具(Applied Biosystems, Foster City, CA)を用いて製造した。PAL-Peg-PS-樹脂(1.2 g, 0.18 mmol/g)またはNovaSyn TGR樹脂(1.25 g, 0.20 mmol/g)(NovaBiochem, Novato, CA)をすべての合成について用いた。FastMocTMプロトコールを用いて樹脂上にペプチドを組み立てた。合成後、樹脂をDCM(2×)で洗浄し、乾燥した。
【0201】
手順B:アミノ酸のカップリング説明
特に明記されなければ、カップリング溶媒としてDMFを用いた。DMF中の適当なFmoc-アミノ酸(0.25M溶液, 3当量)をHATU(NMP中0.5M, 3.0当量)およびDIEA(6.0当量)で処理した。混合物を〜2分間振盪した後、樹脂の入った合成容器に移した。次いで容器を常温にて終夜振盪した。樹脂をろ過し、過剰な試薬を除去した後、DMFで洗浄した(4×)。
【0202】
手順C:Fmoc保護基の除去説明
Fmoc保護アミノ酸を含む樹脂を10分間DMF中の20%ピペリジンで処理した(v/v, 15.0 mL/g樹脂)。溶液を樹脂から排出した。この手順を一度繰り返した後、DMFで樹脂を洗浄した(4×)。
【0203】
手順D:ivDde基の除去(固相)
ivDde保護アミノ酸を含む樹脂をDMF(10 mL/g樹脂)中の10%(v/v)ヒドラジンで10分間処理した。溶液を樹脂から排出した。この手順を一度繰り返した後、樹脂をDMFで洗浄した(4×)。
【0204】
手順E:溶液中におけるペプチドからのivDde基の除去
ペプチド50 mgをDMF(2.0 mL)に溶解し、ニートのヒドラジン40-200μLで10分間処理した。混合物を水で希釈し、10 mLの容積とし、これを直接C18逆相カラムに適用し、一般的手順に記載の分取用HPLCにより精製した。
【0205】
手順F:Fmoc-Adoa(Fmoc-J)のカップリング
Fmoc-Adoa(2当量)およびHATU(2当量)をDMFに溶解し、DIEA(4当量)を混合物に加えた。混合物を1分間撹拌した後、活性化された酸を樹脂に担持させた。試薬の濃度を上記標準的ペプチドカップリングについてのものとした。カップリングを常温にて12時間続けた。樹脂から反応体を除去し、DMFで洗浄した(4×)。二のAdoa単位が樹脂に担持した場合、第一担持Fmoc-Adoa単位のFmoc基を除去し(手順C)、樹脂をDMFで洗浄した後(4×)、第二Adoa部分をカップリングした。
【0206】
手順G:樹脂結合ペプチドの開裂および側鎖脱保護
試薬B(88:5:5:2 - TFA:水:フェノール:TIPS - v/v/wt/v)、15 mL/g樹脂を樹脂〜1.0 gに加え、容器を常温にて4.5時間振盪した。樹脂をろ過し、TFAで2回洗浄した(5 mL/g樹脂)。ろ液を集め、濃縮してシロップを得、これをEt2O 20 mL/樹脂gでトリチュレーションし固体残渣を得、これを5-15分間撹拌した後、遠心分離した。上清をデカンテーションし、工程を3回繰り返した。得られた固体を高真空下または乾燥窒素ガス流下で乾燥した。
【0207】
手順H:ジスルフィド環化
Et2Oとの粗製の開裂混合物のトリチュレーションから得られた析出物をビーカーに移し、DMSO(5-10μL/mg粗製ペプチド)を加えた。N-メチル-D-グルカミン(H2O中10-100 mM)を加えることにより溶液のpHを8に調節した。混合物を48時間撹拌した後、分取用HPLCにより精製した。
【0208】
手順I:ペプチドの5-カルボキシフルオレセイン(CF5)誘導体の製造
ペプチドのDMF(15μL/mg)およびDIEA(20当量/ペプチド当量)溶液に5-カルボキシフルオレセインNHSエステル(1.3-1.5当量)のDMF(20μL/mg)を加えた。混合物を1-3時間撹拌した。反応を質量分析および分析用HPLCによりモニターした。反応完了後、組成物をろ過し、分取用HPLCにより精製した。
【0209】
手順J:Aloc-Gly-OHの製造
Gly-O-t-Bu・AcOH(1 g, 5.24 mmol)をDCM(15 mL)に溶解し、ジアリルピロカーボネート(1.1 g, 5.91 mmol, 1.13当量)を滴加した。混合物を常温にて0.5時間撹拌した。次いでDIEA(3.7 g, 5 mL, 28.68 mmol, 5.47当量)を加えた。混合物を常温にて終夜撹拌した。揮発物を除去し、粗製の残渣をEtOAc(100 mL/粗製物g)に溶解し、有機層を1N HCl(2×)で洗浄した。揮発物を除去し、粗製物を高真空下乾燥した。NMR(500 MHz, CDCl3)は純粋な生成物を示し、構造式と一致した。次いで粗製物をTFA/DCM(1/1, v/v, 25 mL)の溶液に溶解し、溶液を終夜撹拌した。揮発物を除去し、EtOAcを加えてフラスコ壁から残渣を洗浄した後、揮発物をロータリーエバポレータにて留去した。これを繰り返した。得られた生成物を終夜高真空下にて乾燥した。物質のNMR分析(CDCl3, 500 MHz)は予測された構造式と一致し、純度はカップリングマニュアルプロトコールにおける使用に十分であることが分かった。
【0210】
手順K:Aloc-Arg(Pmc)-OHの製造
H-Arg(Pmc)-OH(5 g, 11.35 mmol)をH2Oおよびジオキサン(1/1, v/v, 125 mL)の混合物に溶解し、ジアリルピロカーボネート(6.34 g, 34.05 mmol, 3.0当量)を加えた。Na2CO3を加えることにより混合物のpHを>10.0に調節した。混合物を撹拌し、還流温度にて終夜維持した。揮発物をロータリーエバポレーションにて留去し、粗製物をEtOAc(粗製物100 mL/g)に溶解し、溶液を1N HCl(2×)で洗浄した。揮発物をロータリーエバポレーションにより留去し、粗製物をCHCl3に溶解し、溶液をシリカゲルカラムに充填した。カラムを2のカラム容積のCHCl3で溶出した後、同様にMeOHの5%CHCl3溶液で溶出した。所望の化合物を含むフラクションを集め、揮発物をロータリーエバポレーションにより留去し、高真空下にて減圧し、Aloc-Arg(Pmc)-OH 4.2 g(70%収率)を得た。プロトンNMRスペクトル(CDCl3, 500 MHz)を予測された構造式および必要な純度と一致した。
【0211】
手順L:ペプチドからのAloc保護基の除去
Aloc保護ペプチドを5-20 mL/ペプチド100 mgのNMM:酢酸:DMF(1:2:10)溶液に溶解した。Pd(PPh3)4(1-10当量/ペプチド当量)を加えた。混合物を0.5〜4時間撹拌した。MSおよび分析用HPLCを用いて反応をチェックした。反応完了後、粗製の反応混合物をH2O中10%〜25% CH3CNで2倍に希釈し、ろ過し、分取用HPLCにより精製した。
【0212】
分析および精製についての一般的手順
【0213】
分析用HPLC
カラム: Waters Corp. X-Terra, MS-C18; 4.6 mm i.d. x 50 mm; 5μm粒子; 溶離液A: 水(0.1重量%のTFAを含むHPLCグレード); 溶離液B: アセトニトリル(0.1重量%のTFA)。用いられる初期条件および勾配溶出プロファイルは、標記化合物の分析のための各実験手順に記載する。溶出速度: 3 mL/min; 検出: UV 220 nm.
【0214】
分取用HPLC精製
カラム: Waters Corp. X-Terra MS-C18; 50 mm i.d. x 250 mm; 10μm粒子; 溶離液: 溶離液A: 水 (0.1重量% TFAを含むHPLCグレード); 溶離液B: アセトニトリル (0.1重量% TFA); 用いられる初期条件および勾配溶出プロファイルは、標記化合物の分析のための各実験手順に記載する。溶出速度: 100 mL/min; 検出: UV 220 nm.
【0215】
ペプチド分析に用いられるHPLC法
A系: カラム: Waters XTerra MS-C18 4.6 x 50 mm; 粒子サイズ: 5ミクロン; 溶離液: A: 水 (0.1% TFA), B: アセトニトリル (0.1% TFA); 溶出: 7分で直線勾配5-55% B; 流速: 3 mL/min; 検出: UV, λ= 220 nm.
【0216】
B系: カラム: Waters XTerra MS-C18 4.6 x 50 mm; 粒子サイズ: 5ミクロン; 溶離液: A: 水 (0.1% TFA), B: アセトニトリル (0.1% TFA); 溶出: 7分で直線勾配5-65% B; 流速: 3 mL/min; 検出: UV, λ= 220 nm.
C系: カラム: Waters XTerra MS-C18 4.6 x 50 mm; 粒子サイズ: 5ミクロン; 溶離液: A: 水 (0.1% TFA), B: アセトニトリル (0.1% TFA); 溶出: 7分で直線勾配15-65% B; 流速: 3 mL/min; 検出: UV, λ= 220 nm.
【0217】
D系: カラム: Waters XTerra MS-C18 4.6 x 50 mm; 粒子サイズ: 5ミクロン; 溶離液: A: 水 (0.1% TFA), B: アセトニトリル (0.1% TFA); 溶出: 6分で直線勾配15-70% B; 流速: 3 mL/min; 検出: UV, λ= 220 nm.
E系: カラム: Waters XTerra MS-C18, 4.6 mm i.d. x 50 mm; 粒子サイズ: 5ミクロン; 溶離液: A: 水 (0.1% TFA), B: アセトニトリル (0.1% TFA); 溶出: 6分で直線勾配15-60% B; 流速: 3.0 mL/min; 検出: UV, λ= 220 nm.
F系: カラム: YMC C18, 4.6 x 250 mm; 溶離液: A: 水 (0.1%TFA), B: アセトニトリル (0.1%TFA), 初期条件: 20% B, 溶出: 20分で直線勾配20-80% B; 流速: 1.0 mL/min; 検出: UV, λ= 220 nm.
【0218】
G系: カラム: Waters XTerra MS-C18, 4.6 mm i.d. x 50 mm; 粒子サイズ: 5ミクロン; 溶離液: A:水 (0.1% TFA), B: アセトニトリル (0.1% TFA); 溶出: 初期条件: 10% B, 8分にわたり直線勾配10-50% B; 流速: 3 mL/min; 検出: UV, λ= 220 nm.
H系: カラム: Waters XTerra MS-C18 4.6 x 50 mm; 粒子サイズ: 5ミクロン; 溶離液: A: 水 (0.1% TFA), B: アセトニトリル (0.1% TFA); 溶出: 初期条件: 5% B, 8分で直線勾配5-65% B; 流速: 3 ml/min; 検出: UV λ= 220 nm.
【実施例】
【0219】
実施例
実施例1:Ac-GWQPC*PWESWTFC*WDPGGGK-NH2 環状(5->13)(GGGKリンカー官能基化Ac-配列番号004ペプチド)の製造
FastMocTMプロトコールを用いて行ったFmoc化学を用いて、ペプチド配列をABIペプチドシンセサイザーを用いた手順Aに記載のFmoc-PAL-PEG-PS樹脂(0.18 mmol/g, 1.38 g, 0.25 mmol)からSPSSにより製造した。開裂および側鎖脱保護を手順Gに記載のように行い、ジスルフィド環化を手順Hに記載のように行った。HPLC精製により精製環状ペプチド105 mg(17.8%収率)を得た。
【0220】
実施例2:Ac-SGSGJWQPC*PWESWTFC*WDPGGGK-NH2(環状9->17)(GGGKリンカー官能基化Ac-配列番号005ペプチド)の製造
手順A、GおよびHを用いて0.266 mmolスケールにてペプチドを製造し、HPLC精製により純粋な生成物130 mg(18.8%収率)を得た。
【0221】
実施例3:Ac-RWQPC*PAESWT-Cha-C*WDPGGGK-NH2環状(5->13)(GGGKリンカー官能基化Ac-配列番号032ペプチド)の製造
手順A、GおよびHの方法を用いてペプチドを製造した。HPLC精製により生成物140 mg(27.5%収率)部を綿状白色固体として得た。
【0222】
実施例4:Ac-WQPC*PAESWTFC*WDPGGGK(JJ)-NH2環状(4->12)ペプチド(Ac-配列番号001-GGGKJJ)の製造
ivDde保護ペプチドAc-W(Nin-Boc)-Q(Trt)-P-C(Trt)-P-A-E(OtBu)-Ser(tBu)-W(Nin-Boc)-T(tBu)-F-C(Trt)-W(Nin-Boc)-D(OtBu)-P-GGGK(ivDde)-NH-TGRを130μmolスケール(0.65 g樹脂)にて組み立てた(手順A)。DMF中10%ヒドラジン6.5 mLで10分間(2×)樹脂を処理することによりivDde基を除去した(手順D)。次いで樹脂をDMF(4×)で洗浄した。分離フラスコにて、NMP(1 mL)中のFmoc-Adoa (100 mg, 0.26 mmol, 2.0当量)をDMF(0.5 mL)中のHATU (99 mg, 0.26 mmol, 2当量)およびDIEA (67 mg, 91μL, 0.52 mmol, 4当量)で2分間処理した後、樹脂を含む容器に溶液を移し、次いで常温にて12時間容器を撹拌した(手順F)。
【0223】
樹脂をDMF(4×5 mL)で洗浄し、DMF (10 mL, 2×10分)中20%ピペリジンで処理してFmoc基を除去した後、DMFで洗浄(4×10 mL)した(手順C)。次いでFmoc-Adoaを上記樹脂(上記参照)とカップリングし、Fmoc保護基(上記参照)を除去し、樹脂を洗浄した。開裂および側鎖脱保護(手順G)を試薬B (10 mL)を用いて4.5時間行った。樹脂を取り出し、TFA (5 mL)で洗浄し、集めた溶液の溶媒を留去し、エーテルでトリチュレーションし、粗製の直線状ペプチドを灰白色固体として得た。固体をDMSO (3 mL)に溶解した後、0.1M水性N-メチルグルカミンを添加することにより溶液のpHを8に調節した。混合物を48時間撹拌し(手順H)、反応時間を分析用HPLCおよび質量分析でモニターした。反応完了時に、全溶液をH2O中10% CH3CNで15 mLに希釈し、水性TFAを添加することによりpHを2に調節した。
得られた溶液を分取用逆相C18カラムに適用し、10% CH3CN (0.1% TFA)〜H2O (0.1% TFA)の直線勾配を用いて精製した。フラクション15 mLを集め、純粋な生成物を含むフラクションをプールし、冷凍し、凍結乾燥し、ペプチド42 mg (13%収率)を綿状白色固体として得、これをHPLCおよび質量分析により特徴付けた。HPLC: tR 3.83 min; カラム: Waters XTerra MS-C18 4.6 x 50 mm; 粒子サイズ: 5ミクロン; 溶離液: A: 水 (0.1% TFA), B: アセトニトリル (0.1% TFA); 溶出: 7分で直線勾配5-65% B; 流速: 3 mL/min; 検出: UV,λ = 220 nm. 質量スペクトル (API-ES): Neg.イオン: [M-H]: 2480.6; [M-2H]/2: 1239.9
以下の実施例5および6は、N-末端Aloc-アルギニンを有するペプチドの製造を記載する。
【0224】
実施例5:Aloc-RWQPC*PWESWTFC*WDPGGGK-NH2環状(5→13)ペプチド(GGGKリンカー官能基化Aloc-配列番号010)の製造
W(Nin-Boc)-Q(Trt)-P-C(Trt)-P-W(Nin-Boc)-E(OtBu)-S(tBu)-W(Nin-Boc)-T(tBu)-F-C(Trt)-W(Nin-Boc)-D(OtBu)-P-GGG-K(Boc)-PAL-PEG-PS樹脂0.54 mmol (3 g)を自動SPSSにより製造した(手順A)。以下の手順Bの改変を用いてAloc-Arg(Pmc)をN-末端に連結した。樹脂をマニュアル固相合成容器に加え、軽く撹拌することによりDMF (20 mL)中に懸濁した。Aloc-Arg(Pmc)-OH (524 mg, 1.00 mmol, 1.85当量)、HATU (380 mg, 1.0 mmol, 1.85当量)およびDIEA (257 mg, 347 L, 1.98 mmol, 3.67当量)を容器の撹拌を停止して連続して加え、容器を終夜振盪した。陰性ニンヒドリン試験により示されるようにカップリング反応を完了した。樹脂をDCM (3×20 mL)で洗浄し、乾燥した。
【0225】
試薬B (88:5:5:2-TFA: 水: フェノール: TIPS - v/v/wt/v) (25 mL)を容器に加え、容器を常温にて5時間振盪した。樹脂をろ過し、TFA (2×5 mL)で洗浄した。集めたろ液を濃縮し、シロップとし、これをEt2O (20 mL)でトリチュレーションし、得られた固体を遠心分離によりペレット化した。上清をデカンテーションし、工程を3回繰り返した(手順G)。得られた固体を集め、記載のように(手順H)環化し(48時間)、逆相C18カラムでHPLCにより精製した。生成物含有フラクションをプールし、冷凍し、凍結乾燥し、所望の生成物290 mg (21%収率)を得た。
【0226】
実施例6:Aloc-RWQPC*PAESWT-Cha-C*WDPGGGK-NH2(GGGKリンカー官能基化Aloc-配列番号032)の製造
ペプチドを手順A、B、GおよびHの方法により製造し、生成物230 mg (26.7%収率)を綿状白色固体として得た。
以下の実施例7およびFigure 2は、ペプチドの5-カルボキシフルオレセイン誘導体の製造を記載し、説明する。
【0227】
実施例7:5-カルボキシフルオレセイン標識誘導体RWQPC*PAESWTFC*WDPGGGK(CF5)-NH2環状(5->13)ペプチド化合物(GGGK(CF5)リンカー官能基化配列番号036-CF5)の製造
ペプチドAloc-RWQPC*PAESWTFC*WDPGGGK-NH2環状(5->13)ペプチド(Aloc-配列番号036)を手順A、B、GおよびHの方法により製造し、HPLCにより精製した。N-末端Aloc Nε20-CF5誘導体を以下の手順Iにより製造した。ペプチド (70 mg, 0.029 mmol)を撹拌しながら無水DMF (1 mL)に溶解した後、DIEA (0.074 g, 100μL, 0.572 mmol, 19.7当量)、次いでCF5-NHS (20 mg, 0.042 mmol, 1.45当量)の無水DMF溶液を加えた。混合物を常温にて1時間撹拌した。反応混合物をH2O中20% CH3CNでその容積の2倍に希釈し、C18逆相分取用HPLCカラムで精製し、Aloc-RWQPC*PAESWTFC*WDPGGGK(CF5)-NH2環状(5→13)ペプチド50 mg (62.8%収率)を得た。
【0228】
この中間体のAloc基を以下の手順Lにより除去した。中間体をNMM:HOAc:DMF (1:2:10, v/v/v, 5 mL)の溶液に溶解し、混合物を撹拌し、Pd(PPh3)4 (21 mg, 0.018 mmol, 1.0当量)を加えた。混合物を常温にて1時間撹拌した。次いで反応混合物をH2O中10% CH3CNでその容積の2倍に希釈し、CH3CN (0.1% TFA)〜H2O (0.1% TFA)の直線勾配を用いて分取用逆相C18カラムで精製した。純粋生成物含有フラクションをプールし、冷凍し、凍結乾燥し、生成物29 mg (60.4%収率)を橙色固体として得た。
【0229】
実施例8:
6-[ビス[2-(1,1-ジメチルエトキシ)-2-オキソエチル]アミノ]-6-(5-カルボキシペンチル)テトラヒドロ-1H-1,4-ジアゼピン-1,4(5H)-二酢酸α,α'-ビス(1,1-ジメチルエチル)エステルの製造
標記AAZTAリガンドの製造は以下の反応式1により合成的に示す。
【0230】
反応式1
【化18】

【0231】
a) 中間体B:6-ニトロヘキサン酸メチルエステルの製造
2-ニトロシクロヘキサノン (6.77 g; 47.3 mmol)を乾燥MeOH (150 mL)に溶解し、2倍過剰重量のAmberlyst(登録商標)A21 (13.5 g)を加えた。混合物を窒素雰囲気下1.5時間還流した後、ろ過し、溶媒を留去し、6-ニトロヘキサン酸メチルエステル (7.72 g; 42 mmol)を得た。収率: 89%。
分析データ
HPLC: 95.4%(領域%)
Mr: 175.18 (C7H13NO4)
1H-NMR: 得られたデータは中間体Bの構造と一致する。
13C-NMR: 得られたデータは中間体Bの構造と一致する。
MS: 得られたデータは中間体Bの構造と一致する。
【0232】
b) 中間体C:ヘキサヒドロ-6-ニトロ-1,4-ビス(フェニルメチル)-1H-1,4-ジアゼピン-6-ペンタン酸メチルエステルの製造
N,N'-ジベンジルエチレンジアミンジアセテート (14.67 g; 40.7 mmol)をEtOH (50 mL)に懸濁し、透明溶液が得られるまで混合物を50℃にて加熱した。パラホルムアルデヒド (3.67 g; 122.1 mmol)を加え、懸濁液を80℃にて1.5時間加熱し、暗橙色透明溶液を得た。6-ニトロヘキサン酸メチルエステル B (7.13 g; 40.7 mmol)のEtOH (10 mL)溶液を滴加した。新たな溶液を放置して室温まで冷却し、室温にて18時間、次いで50℃にて4.5時間撹拌した。混合物の溶媒を留去し、残渣をEtOAc (100 mL)に溶解し、溶液を水性Na2CO3および食塩水で洗浄した。水相を分離し、EtOAc (1 x 50 mL; 1 x 30 mL)で抽出した。有機相を集め、乾燥し (Na2SO4)、ろ過し、溶媒を留去した。粗製物21.7 gをフラッシュクロマトグラフィーにより精製し、Cを薄黄色油状物 (10.8 g; 24.6 mmol)として得た。収率: 60 %。
分析データ
HPLC: 99.5%(領域%)
Mr: 439.55 (C25H33N3O4)
1H-NMR: 得られたデータは中間体Cの構造と一致する。
13C-NMR: 得られたデータは中間体Cの構造と一致する。
MS: 得られたデータは中間体Cの構造と一致する。
【0233】
c) 中間体E:6-[ビス[2-(1,1-ジメチルエトキシ)-2-オキソエチル]アミノ]-6-(5-メトキシ-5-オキソペンチル)テトラヒドロ-1H-1,4-ジアゼピン-1,4(5H)-二酢酸α,α'-ビス(1,1-ジメチルエチル)エステルの製造
10%Pd/C (1.5 g)を化合物C (10 g; 22.8 mmol)のMeOH (400 mL)溶液に加え、懸濁液を水素雰囲気下40℃にて5時間撹拌した。懸濁液をろ過し(Millipore(登録商標)フィルターFT 0.45μm)、溶液を留去した。残渣をMeCN (100 mL)に溶解し、粉末化した新鮮なK2CO3 (16.8 g; 122 mmol)およびNa2SO4 (3 g; 21 mmol)を加えた。t-ブチルブロモアセテート (20.8 g; 107 mmol)を加え、橙色混合物を撹拌し、80℃にて7時間加熱した。混合物をろ過し、さらにK2CO3 (16.8 g; 122 mmol)、Na2SO4 (3 g; 21 mmol)およびt-ブチルブロモアセテート (0.88 g; 4.5 mmol)を加え、新たな混合物を80℃にて9.5時間加熱した。混合物をろ過し、溶媒を留去し、残渣をカラムクロマトグラフィーにより精製し、Eを薄黄色油状物 (7.8 g; 11.4 mmol)として得た。収率: 50 %。
分析データ
Mr: 685.90 (C35H63N3O10)
1H-NMR: 得られたデータは中間体Eの構造と一致する。
13C-NMR: 得られたデータは中間体Eの構造と一致する。
MS: 得られたデータは中間体Eの構造と一致する。
【0234】
d) 中間体F:6-[ビス[2-(1,1-ジメチルエトキシ)-2-オキソエチル]アミノ]-6-(5-カルボキシペンチル)テトラヒドロ-1H-1,4-ジアゼピン-1,4(5H)-二酢酸α,α'-ビス(1,1-ジメチルエチル)エステルの製造
1 M 溶液のLiOH (95.4 mL; 95.4 mmol)を一滴ずつ0℃に冷却した化合物E (8.17 g; 11.9 mmol)のTHF (200 mL)溶液に加えた。次いで溶液を室温にて28時間撹拌した。氷AcOH (4 mL)を添加することにより溶液のpHを7にした。水50 mLを加え、THFを留去した。水性残渣をEtOAc (3 x 75 mL)で抽出した。有機相を集め、乾燥し(Na2SO4)、ろ過し、溶媒を留去した。粗製物6.24 gをフラッシュクロマトグラフィーにより精製し、Fを薄黄色油状物 (3.76 g; 5.6 mmol)とした。収率: 47 %。
分析データ
Mr: 671.87 (C34H61N3O10)
1H-NMR: 得られたデータは中間体Fの構造と一致する。
13C-NMR: 得られたデータは中間体Fの構造と一致する。
MS: 得られたデータは中間体Fの構造と一致する。
所望ならば中間体Fのtert-ブトキシカルボニル基は既知の脱保護法により除去することができる。
【0235】
実施例9:
キレート錯体1の製造
キレート錯体1の製造を以下の反応式2に示す。
反応式2
【化19】

キレート錯体1
【0236】
Figure 1に図示されるように製造したFmoc-PAL-PEG-PS樹脂担持中間体A (5.00 g; 0.90 mmol)をSPPS容器にてDMAC (40 mL)中50%モルホリンで1時間振盪し、樹脂を膨潤させ、Fmoc基を開裂した。溶媒をろ過した後、Fmoc-GGG-OH (1.48 g; 3.60 mmol)、HOBt (0.55 g; 3.60 mmol)、DIC (0.56 mL; 3.60 mmol)およびDMAC (40 mL)を樹脂に加え、懸濁液を室温にて6時間振盪し、混合物をろ過し、樹脂をDMAC (5x40 mL)で洗浄した。次いで樹脂をDMAC (7 mL)中50%モルホリンで10分間振盪し、混合物をろ過し、新たにDMAC (7 mL)中50%モルホリンを加えた。懸濁液を20分間撹拌した後、混合物をろ過し、樹脂をDMAC (5x40 mL)で洗浄した。Fmoc-Lys(Fmoc)-OH (2.13 g; 3.60 mmol)、HOBt (0.55 g; 3.60 mmol)、DIC (0.56 mL; 3.60 mmol)およびDMAC (40 mL)を樹脂に加え、懸濁液を室温にて6時間振盪し、ろ過し、樹脂をDMAC (5x40 mL)で洗浄した。次いで樹脂をDMAC (7 mL)中50%モルホリンで10分間振盪し、混合物をろ過し、新たにDMAC (7 mL)中50%モルホリンを加えた。懸濁液を20分間撹拌した後、混合物をろ過し、樹脂をDMAC (5x40 mL)で洗浄した。Fmoc-Lys(Fmoc)-OH (4.26 g; 7.20 mmol)、HOBt (1.10 g; 7.20 mmol)、DIC (1.12 mL; 7.20 mmol)およびDMAC (40 mL)を樹脂に加え、懸濁液を室温にて6時間振盪し、ろ過し、樹脂をDMAC (5x40 mL)で洗浄した。次いで樹脂をDMAC (7 mL)中50%モルホリンで10分間振盪し、混合物をろ過し、新たにDMAC (7 mL)中50%モルホリンを加えた。懸濁液を20分間撹拌した後、混合物をろ過し、樹脂をDMAC (5x40 mL)で洗浄した。DTPA-Glu (10.7 g; 14.4 mmol)、HOBt (2.20 g; 14.4 mmol)、DIC (2.26 mL; 14.4 mmol)、DIEA (4.90 mL; 28.8 mmol)およびDMAC (40 mL)を樹脂に加えた。懸濁液を室温にて24時間振盪し、ろ過し、樹脂をDMAC (5x40 mL)、CH2Cl2 (5x40 mL)で洗浄した後、減圧乾燥した。樹脂を「試薬B」150 mLとフラスコ中にて4.5時間振盪した。樹脂をろ過し、溶液を減圧留去し、油状粗製物を得、Et2O (40 mL)で処理した後、析出物を得た。析出物を遠心分離し、デカンテーションし、Et2O (4x40 mL)で洗浄し、白色固体2.10 gを得た。この生成物2.10 gをDMSO (36 mL)およびH2O (4.0 mL)の混合物に溶解し、D-(-)-N-メチルグルカミン1.23 gでpHを8に調節した。溶液を室温にて96時間撹拌した後、分取用HPLCにより精製した。生成物を含むフラクションを凍結乾燥し、所望のキレートリガンド (0.280 g; 0.058 mmol)を白色固体として得た。リガンド (0.240 g; 0.050 mmol)をH2O (80 mL)に懸濁し、0.1 N NaOH (8.50 mL; 0.85 mmol)をpH 6.5まで加えて溶解した。0.1 N NaOH (6.0 mL; 0.60 mmol)によりpH 6.5を維持して5.187 mM水性GdCl3 (38.3 mL; 0.202 mmol)を加えた。溶液を0.1 N NaOHでpH 7.0に調節した後、XAD 1600 カラムに充填し、H2O/ACN勾配(所望の生成物はACN = 30の百分率で溶出する)で溶出し、溶媒を留去した後、化合物キレート錯体1ナトリウム塩(0.167 g; 0.029 mmol)を白色固体として得た。総収率 3.8 %。
キレート錯体1の分析データ
Mr: 5663.73 (C205H276Gd4N48Na10O83S2)
CE: 88.5%(領域%)
MS: 得られたデータはキレート錯体1構造と一致する。
【0237】
実施例10:
キレート錯体2の製造
キレート錯体2の製造を以下の反応式3に示す。
反応式3
【化20】

キレート錯体2
【0238】
上記手順Aにより得られたFmoc-PAL-PEG-PS樹脂担持中間体B (3.00 g; 0.60 mmol)をDMAC (25 mL)の入ったSPPS容器中1時間振盪し、樹脂を膨潤した。溶媒をろ過した後、樹脂をDMF (5x25 mL)で洗浄した。次いで樹脂をDMF (25 mL)中10%ヒドラジンと15分間振盪し、溶媒をろ過し、新たにDMF (25 mL)中10%ヒドラジンを加えた。懸濁液をさらに20分間撹拌した後、混合物をろ過し、樹脂をDMF (5x25 mL)、次いでDMAC (5x25 mL)で洗浄した。Fmoc-Lys(Fmoc)-OH (1.42 g; 2.40 mmol)、HOBt (0.36 g; 2.40 mmol)、DIC (0.37 mL; 2.40 mmol)およびDMAC (25 mL)を樹脂に加え、懸濁液を室温にて24時間振盪し、ろ過し、樹脂をDMAC (5x25 mL)で洗浄した。次いで樹脂をDMAC (25 mL)中50%モルホリンと10分間振盪し、混合物をろ過し、新たにDMAC (25 mL)中50%モルホリンを加えた。懸濁液を20分間撹拌した後、混合物をろ過し、樹脂をDMAC (5x25 mL)で洗浄した。Fmoc-Lys(Fmoc)-OH (2.84 g; 4.80 mmol)、HOBt (0.73 g; 4.80 mmol)、DIC (0.75 mL; 4.80 mmol)およびDMAC (25 mL)を樹脂に加え、懸濁液を室温にて24時間振盪し、ろ過し、樹脂をDMAC (5x25 mL)で洗浄した。次いで樹脂をDMAC (25 mL)中50%モルホリンと10分間振盪し、混合物をろ過し、新たにDMAC (25 mL)中50%モルホリンを加えた。懸濁液を20分間撹拌した後、混合物をろ過し、樹脂をDMAC (5x25 mL)で洗浄した。DTPA-Glu (7.17 g; 9.60 mmol)、HOBt (1.47 g; 9.60 mmol)、DIC (1.50 mL; 9.60 mmol)、DIEA (3.26 mL; 9.60 mmol)およびDMAC (25 mL)を樹脂に加えた。懸濁液を室温にて24時間振盪し、ろ過し、樹脂をDMAC (5x25 mL)、CH2Cl2 (5x25 mL)で洗浄した後、真空乾燥した。樹脂をフラスコ中「試薬B」100 mLと4.5時間振盪した。樹脂をろ過し、溶液を減圧留去し、油状粗製物を得、Et2O (40 mL)で処理した後、析出物を得た。析出物を遠心分離し、デカンテーションし、Et2O (4x40 mL)で洗浄し、白色固体1.60 gを得た。この生成物1.60 gをDMSO (27 mL)およびH2O (3.0 mL)の混合物に溶解し、D-(-)-N-メチルグルカミン0.94 gでpHを8に調節した。溶液を室温にて96時間撹拌した後、分取用HPLCにより精製した。生成物を含むフラクションを凍結乾燥し、所望のキレートリガンド (0.260 g; 0.060 mmol)を白色固体として得た。リガンド (0.220 g; 0.050 mmol)をH2O (80 mL)に懸濁し、pH 6.5まで0.1 N NaOH (7.40 mL; 0.74 mmol)を加えて溶解した。0.1 N NaOH (6.10 mL; 0.61 mmol)でpH 6.5を維持しながら6.21 mM 水性GdCl3 (32.60 mL; 0.202 mmol)を加えた。溶液を0.1 N NaOHでpH 7.0に調節した後、XAD 1600 カラムに充填し、H2O/ACN勾配 (所望の生成物はACN = 30の百分率で溶出する)で溶出し、溶媒留去後、キレート錯体2ナトリウム塩 (0.174 g; 0.033 mmol)を白色固体として得た。収率 6.6 %。
キレート錯体2の分析データ
Mr: 5202.26 (C187H245Gd4N43Na10O74S2)
CE: 87.8%(領域%)
MS: 得られたデータはキレート錯体2構造と一致する。
【0239】
実施例11:
キレート錯体4の製造
反応式3の合成手順に従い、対応するDTPAリガンドの代わりに適切なAAZTAリガンドを用いて、キレート錯体4もまた製造した。
【化21】

キレート錯体4
Mr: 5042.44 (C191H257Gd4N43Na6O66S2)
MS: 得られたデータはキレート錯体4構造と一致する。
【0240】
実施例12:
キレート錯体3の製造
キレート錯体3の製造を以下の反応式4に示す。
反応式4.
【化22】

【化23】

【化24】

キレート錯体3
【0241】
a) tert-ブチルエステルとして適切に保護されたリガンドを実施例8にて先に記載のように製造する。
b) 中間体Aの製造
従来のFmoc固相ペプチド合成を用いて、反応式4の上記Fmoc-PAL-PEG-PS樹脂担持中間体AをPAL-PEG-PS樹脂から合成した。
c) 中間体Bの製造
上記のように製造したFmoc-PAL-PEG-PS樹脂担持中間体AをSPPS容器中DMAC (25 mL)と1時間振盪し、樹脂を膨潤した。溶媒をろ過した後、樹脂をDMF (5x20 mL)で洗浄した。次いで樹脂をDMF (25 mL)中10%ヒドラジンと15分間振盪し、溶媒をろ過し、新たにDMF (25 mL)中10%ヒドラジンを加えた。懸濁液をさらに20分間撹拌した後、混合物をろ過し、樹脂をDMF (3x25 mL)、次いでDMAC (4x25 mL)で洗浄した。次いで樹脂を振盪し、Fmoc-Lys(Fmoc)-OH (2.84 g; 4.80 mmol)、HOBt (0.73 g; 4.80 mmol)、DIC (0.75 mL; 4.80 mmol)およびDMAC (25 mL)を樹脂に加え、懸濁液を室温にて24時間振盪し、ろ過し、樹脂をDMAC (5x25 mL)で洗浄し、そして中間体Bを得た。
【0242】
d) 中間体Cの製造
Fmoc-PAL-PEG-PS樹脂担持中間体B (2.6 g; 0,43 mmol)をSPPS容器中DMAC (25 mL)と1時間振盪し、樹脂を膨潤した。溶媒をろ過した後、樹脂をDMF (5x20 mL)で洗浄した。次いで樹脂をDMAC (25 mL)中50%モルホリンと15分間振盪し、混合物をろ過し、新たにDMAC (25 mL)中50%モルホリンを加えた。懸濁液を20分間撹拌した後、ろ過し、樹脂をDMAC (5x20 mL)で洗浄した。適切に保護されたAAZTAリガンド (化合物F) (3,5 g; 5,21 mmol)、HOBt (799mg; 5,21 mmol)、DIC (816μL; 5,21 mmol)およびDMAC (25 mL)を樹脂に加えた。懸濁液を室温にて96時間振盪し、ろ過し、樹脂をDMAC (5x25 mL)、CH2Cl2 (5x25 mL)で洗浄した後、真空乾燥した。樹脂をフラスコ中「試薬B」100 mLと5時間振盪した。樹脂をろ過し、DMAC (30 mL)で洗浄し、溶液を減圧留去し、油状粗製物を得、Et2O (30 mL)で処理した後、析出物を得た。析出物を遠心分離し、デカンテーションし、Et2O (4x40 mL)で洗浄し、白色固体1.70 gを得た。
【0243】
e) 中間体Dの製造
中間体C (1.70 g)をDMSO (27 mL)およびH2O (3.0 mL)の混合物に溶解し、D-(-)-N-メチルグルカミン0.94 gでpHを8に調節した。溶液を室温にて96時間撹拌した後、分取用HPLCにより精製した。生成物を含むフラクションを凍結乾燥し、リガンドD (0.300 g; 0.067 mmol)を白色固体として得た。
【0244】
f) キレート錯体3の製造
リガンドD (0.300 g; 0.067 mmol)をH2O (80 mL)に懸濁し、0.1 N NaOHをpH 6.5まで加えて溶解した。0.1 N NaOHでpH 6.5を維持しながら5.18 mM 水性GdCl3 (51.9 mL; 0.27 mmol)を加えた。溶液を0.1 N NaOH (全NaOH = 10 mL; 1.0 mmol)でpH 7.0に調節した後、XAD 1600 カラムに充填し、H2O/ACN勾配で溶出し、溶媒留去後、キレート錯体3 (0.110 g; 0.021 mmol)を白色固体として得た。
Mr: 5213.60 (C197H266Gd4N46Na6O69S2)
MS: 得られたデータはキレート錯体3構造と一致する。
【0245】
実施例13:
キレート錯体11の製造
【化25】

先の実施例のように行い、すべての合成工程にてFmoc-PAL-PEG-PS樹脂(充填率0.2 mmol/g)100 mgを用い、溶媒としてDMFを用いたピペリジン脱保護、4当量のAAおよびHBTU/HOBt/DIPEAとのアミノ酸カップリングを含む先に記載の標準的Fmoc手順を用い、標記化合物を製造した。最終工程は酸活性化剤としてHATUを用いてマニュアル系で行った。次いでTFA/トリイソプロピルシラン/エタンジチオール(95:3:2, v:v)の混合物を2時間用いてペプチドの樹脂から開裂した。次いでペプチドが析出し、ジエチルエーテルで洗浄し、得られた固体をAcOHおよびDMSO (50 ml, 49:1, v:v)の5%溶液混合物に溶解し、24時間撹拌し、トリプトファンの完全な脱保護および二の中心システインの環化を得た。次いで溶液を凍結乾燥し、最終生成物を得、これをHPLCにより精製した。
このように得られた純粋生成物は45mg (9.7μmol, 48%総収率)であった。
NaOH溶液でpH 6.5に維持しながらGdCl3のH2O 10 mM 溶液をリガンドの水溶液に少しずつ加えた。測定値が直線性から外れるまで加えた後にそれぞれ緩和能測定を行った。この点にて、必要量のリガンドを加えその点を戻した。残存遊離Gd(III)イオンをOrange Xylenol UV法により定量した。次いで化学量論量の遊離リガンドを加え、遊離Gd(III)イオンを0.3% (mol/mol)以下に軽減させた。凍結乾燥により所望のキレート錯体11を得た。
【0246】
実質的に同様にして、適切な反応体およびその操作条件を適切に選択し、以下の本発明のキレート錯体もまた製造した:
キレート錯体5
【化26】

Mr: 3618.79 (C142H183Gd2N35Na4O48S2)
MS: 得られたデータはキレート錯体5構造と一致する。
【0247】
キレート錯体6
【化27】

Mr: 2952.16 (C125H161GdN29Na3O37S2)
MS: 得られたデータはキレート錯体6構造と一致する。
【0248】
キレート錯体7
【化28】

Mr: 3242.48 (C137H183GdN31Na3O43S2)
MS: 得られたデータはキレート錯体7構造と一致する。
【0249】
キレート錯体8
【化29】

Mr: 3645.90 (C146H192Gd2N34Na4O47S2)
MS: 得られたデータはキレート錯体8構造と一致する。
【0250】
キレート錯体9
【化30】

Mr: 2926.12 (C123H159GdN29Na3O37S2)
MS: 得られたデータはキレート錯体9構造と一致する。
【0251】
キレート錯体10
【化31】

Mr: 3171.29 (C130H171GdN30Na4O44S2)
MS: 得られたデータはキレート錯体10構造と一致する。
【0252】
参考錯体
WO 02/055544により既知のペプチドAc-WQPC*PWESWTFC*WDGGGK-NH2から出発し、先の反応式の合成手順に従い、キレートリガンド部分を適切に改変してリンカー官能基化ペプチド中間体にコンジュゲートすることにより、いくつかのキレート化合物をインビボおよびインビトロ試験のための参照化合物として製造した。
以下の参照化合物を特に製造した:
【0253】
参考例1
【化32】

Mr: 5778.87 (C213H281Gd4N49Na10O83S2)
MS: 得られたデータは参考例1構造と一致する。
【0254】
参考例2
【化33】

Mr: 3357.61 (C145H188GdN32Na3O43S2)
MS: 得られたデータは参考例2構造と一致する。
【0255】
参考例3
【化34】

Mr: 2952.16 (C125H161GdN29Na3O37S2)
MS: 得られたデータは参考例3構造と一致する。
【0256】
参考例4
【化35】

Mr: 3232.44 (C138H177GdN31Na3O42S2)
MS: 得られたデータは参考例4構造と一致する。
【0257】
参考例5
【化36】

Mr: 3344.37 (C137H176GdN31Na5O45PS2)
MS: 得られたデータは参考例5構造と一致する。
【0258】
参考例6
【化37】

Mr: 5494.55 (C201H261Gd4N45Na10O79S2)
MS: 得られたデータは参考例6構造と一致する。
本発明の合成したキレート化合物および参照化合物のすべてを当分野にて広く知られている方法により電気泳動法により特徴付けた。
【0259】
実施例14:
ヒト/マウス凝血塊におけるフィブリンMRIイメージング
インビトロMRI試験
手順工程のすべてを以下のインビトロプロトコールに詳細に記載する。
方法
異なる種(ヒト、モルモットおよびマウス)からの小血漿凝血塊は、クエン酸血漿 (1:3,v/v) リン脂質(試薬パトロンチン(Pathromtin))およびCaCl2 0.008 M (Dade Behring, Germany)を2ml小バイアル中37℃にて混合することにより形成した。凝血塊をTBS 1Xで3回洗浄し、造影剤で100μMの錯体濃度にて37℃30分間インキュベートした。二の凝血塊をインキュベーションの各溶液について調製した。インキュベーション後、凝血塊をTBS 1Xで4回洗浄し、MRI分析のためにTBS 1Xを充填した小バイアルに入れた。T1加重2Dスピンエコー(SE)イメージを2T MRI系にて以下のパラメータ:TR/TE = 400/8 ms、空間分解能 = 430μmおよびスライス厚さ = 2 mmを用いて取得した。各塊の最大シグナル強度を回収したMRイメージにて測定し、TBSでインキュベーションされた凝血塊からのシグナルと比較した。MRI後に凝血塊をICP分析のために調製した。
【0260】
結果
本発明、参照化合物1、参照化合物2、参照化合物4および参照化合物5のキレート錯体1などの試験化合物で得られた凝血塊におけるシグナル増強、得られた結果を比較し、以下のように挙動の観点から分類することができる。
【0261】
第7表
【表7】

第7表にて、参照化合物について回収された最大シグナル増強は、キレート錯体1に標準化されるように記録する。得られた結果は、本発明の式(I)の化合物の代表としてキレート錯体1は最大シグナル増強を与えるが、すべての試験された参照化合物により得られた増強は常に有意に低いものであることを示す。
【0262】
実施例15
上記手順に従い、例えばキレート錯体1〜7などの本発明のキレート化合物および参照化合物1〜6の第二の広範な群を異なるインキュベーション濃度(錯体25〜400μM)にてヒト凝血塊にて試験した。次いでシグナル増強(%)を2TにおけるMRイメージングにより各凝血塊について測定し、凝血塊における対応するGd含量をICPにより測定した。
【0263】
結果
凝血塊におけるシグナル増強を比較し、例えば100μMのペプチドのインキュベーション濃度にて、試験化合物を以下のように挙動の観点から分類することができる(最大シグナル増強はキレート錯体4に標準化した):
【0264】
第8表
【表8】

【0265】
得られた結果は、一般に、本発明化合物はより高いシグナル増強を与え、100μMのインキュベーション濃度にて、キレート錯体4、キレート錯体1およびキレート錯体5は最良の結果を与えることを示す。
figure 5は、本発明のいくつかの代表化合物、参照およびProHance (対照)で得られた、異なる濃度にて測定されたシグナル増強のさらなるデータを示す。
有利なことに、得られたデータにより、特に低濃度にて用いた場合に、本発明化合物で得られた増強がより良いことが分かる。
【0266】
実施例16
腫瘍モデルにおけるフィブリンMRIイメージング
インビボMRI試験:
手順工程のすべてを以下のインビボプロトコールにて詳細に記載する。
方法:
哺乳動物腫瘍マウスモデル(BALB-neuT)にて試験を行った。マウスをiv注射で本発明のキレート錯体2 25μmol/kgおよびProHance(登録商標)100μmol/kgで処置した。腫瘍のシグナル増強はコントラスト投与後3時間まで行った。
【0267】
結果
高シグナルスポットを本発明のキレート化合物の注射後3時間までに腫瘍内部および境界に見つけた。異なる速度論はProHance(登録商標)で示され、55分後に腫瘍境界のみにシグナル分配を示し、腫瘍内部にはシグナル増強が見られなかった。
連続的T1加重SEイメージを試験化合物の注射前および後に取得し、いくつかの例をFigure 6および7に示す。イメージは、コントラスト後異なる時点にて取得したものと同じマウスからの一連のスライスに関する。特に、Figure 6は25μmol/kgにおけるキレート錯体2の注射後イメージを含み(矢印は腫瘍を示す)、Figure7はProHance(登録商標)の投与後の類似のイメージを含む。
【0268】
実施例17
本試験は、PBプロモータ-SV40 T抗原融合トランス遺伝子(PB-Tag)をC57BL/6同系交配マウスの生殖細胞系に導入することにより発症させたトランスジェニック腺がんマウス前立腺モデル(TRAMP)にて行った。
方法:
二のTRAMPマウスを100μmol/kg iv (対照)にてProHance(登録商標)で処置し、後日、キレート錯体2またはキレート錯体5の25μmol/kg ivにて処置した。
T1加重SEイメージをコントラスト注射前および後に取得し、腫瘍中の増強の動力学を試験化合物投与後3時間まで追跡した。
【0269】
結果
高シグナルスポットが本発明のキレート化合物の注射後5および30分以内に、肥大した精嚢および前立腺がんを示す腫瘍の内部および境界にて見られたが、非常に弱いシグナル増強がProHance(登録商標)の注射後に見られた。
腫瘍中で得られたシグナル増強のいくつかの例はFigure 8および9に示す。
特に、Figure 8は、キレート錯体2 (25 μmol/kg)およびProHance(登録商標) (100μmol/kg)で処置した小前立腺腫瘍を有するマウスからのイメージを示す。矢印は腫瘍領域を示す。
Figure 9は、キレート錯体5 (25μmol/kg)およびProHance(登録商標)(100μmol/kg)で処置された大前立腺腫瘍を有するマウスからのT1加重イメージを示す。矢印は腫瘍領域を示す。
【0270】
実施例18
本試験は、2.106 Neuro 2A細胞の植菌により誘発された神経芽細胞腫を有するマウスにて行った。
方法
それぞれ植菌された5のマウスの二の群を形成し、参照化合物2およびキレート錯体1で試験した。
腫瘍細胞植菌の10日後、同様の腫瘍サイズ(直径5-10 mm)を有するマウスをインビボMRI試験のために選択した。コントラスト投与の前後に、T1およびT2高分解能2Dスピンエコーおよび3Dグラジエントエコーイメージを取得した。注射後4時間および24時間にてMRIを行った。最大シグナル強度は、全腫瘍領域にて測定し、全腫瘍を含むコントラスト後の各イメージにて測定し、コントラスト前イメージと比較した。MRI試験の終わりに、すべての動物を犠牲にし、腫瘍、血液、肝臓、腎臓および大腿骨を取り出し、ICPによりGdアッセイのために調製した。
【0271】
結果
有意な腫瘍シグナル増強がキレート錯体1注射後4時間にて観察されたが、参照化合物2では増強は低く、全腫瘍にて少しだけ存在していた。Figure 10は錯体25μmol/kgの注射後2Tにて得られたT1加重MRIイメージを示す。
【0272】
プロトコール
本発明のフィブリン標的化合物のスクリーニング
インビトロ試験
導入
本プロトコールを設定して用い、血栓の感受性検出のための本発明のフィブリン標的造影剤の特異性および有効性をMRIにより試験した。
異なる血漿種からインビトロにて生成した凝血塊にて検討を行った。フィブリン標的造影剤でインキュベートした各サンプルからのシグナル増強を評価し、標準的造影剤ProHance(登録商標)と比較した。
【0273】
物質
被験物質
化合物:試験における造影剤は、フィブリンペプチド、任意のリンカーおよび少なくとも一のガドリニウムのキレート錯体を含む本発明化合物である。
試薬
化合物:生物サンプル
(種、生体液および株):モルモット血漿(Dunkin Hartley)、マウス血漿CD(登録商標)-1(ICR)BR IGS、ウサギ血漿(New Zealand White)。
試験系
用いた試験系は、適切なモデルであり、本検討のために複製しやすいものとして選択された、異なる血漿種(ヒト、モルモット、マウスおよびウサギ)からインビトロにて生成した凝血塊であった。
装置
すべてのMRI実験は、最大強度110 mT/mおよび回転速度75μsで勾配設定をし、MRRSコンソール(MR Research Systems Ltd, Surrey UK)と接続した、2T Oxford magnet (bore= 45 cm i.d.)にて行った。バードケージ共振器アンテナ(7.3 cm i.d.)を用いた。
【0274】
方法
インビトロ試験
送達された対照血漿Nを健康な血液ドナーから集めたプールされた血漿から得、HEPES緩衝溶液(12 g/L)で安定化し、凍結乾燥した。使用前に、注意深く懸濁液を振盪して凍結乾燥血漿を溶解させることにより血漿対照Nを蒸留水中にて再構成した。凝血塊を2 mLバイアル中に形成させ、ここに、再構成された血漿300μlおよびパトロンチン**SL (二酸化ケイ素粒子, 野菜リン脂質, 塩化ナトリウム2.4 g/L, Hepes 14.3 g/L, pH 7.6) 300μLを加えた。混合物を37℃2分間インキュベーションした後、先に37℃にてインキュベーションした塩化カルシウム溶液300μLを加え、37℃にて30分間さらにインキュベーションして新たな混合物を得た。得られた塊を5 mLチューブに移し、TBS 3 mLで3回洗浄し、被験物質を0.0〜0.2 mMの最終濃度にて37℃30分間インキュベーションした。インキュベーションの終わりに、凝血塊をTBS 3 mLで4回洗浄し、未結合被験物質を除去した後、MRI法のために1.5 mlバイアルに入れた。
次いでT1加重スピンエコー(SE)系列を用い、高分解能MRIを2テスラにて行った。T1マップをまた、2Dグラジエントエコーイメージまたは反転回復スピンエコーイメージの取得から算出した。
実験の終わりに、凝血塊をICP-AES分析のために分析実験室に送った。
【0275】
生物サンプルにおけるガドリニウムのアッセイ
器具
アッセイは、以下の器具パラメータで操作したJobin-Yvon Mod 24分光計にて行った:
サンプルフロー: 1 mL/min
火炎プラズマ: 6000〜10000℃
波長: 342.247 nm
アルゴンフロー: ネブライザー0.3 L/min, トランスポートガス0.2 L/min, 冷却ガス12 L/min.
サンプル分解をマイクロウェーブ系により行った(MDS-2000 CEM Corporation)。
【0276】
サンプル調製および分析条件
硝酸(65% v/v)1.5 mL中に塊を懸濁させることにより凝血塊溶液を調製した。硝酸(65% v/v)1.5 mLをインキュベーション(インキュベーション前および後)の溶液および洗浄溶液に加えた。サンプルにマイクロウェーブオーブン系による湿式灰化工程を行うことにより有機マトリクスの破壊を行った。最終的に所望な残渣をHCL 5%(v/v)3.0 mLに溶解した後、ICP-AESにより分析した。
データ処理
簡潔に、直線性を二の標準についてそれぞれHCl 5% (v/v)中0.00〜20 mg(Gd)/Lの範囲にて低および高と評価した。機器較正直線を用いて、試験サンプル中のガドリニウムの全含量を算出し、μg(Gd)/mLとして表す。
【0277】
MRIデータ分析
最大シグナル強度を塊などの興味の領域(ROI)内にて測定し、専用ソフトウェア(MR Research Systems Ltd, Surrey UK)を用いて各MRイメージにてオペレータにより示した。最大シグナル強度増強(Enh%)を以下のように測定した:
Enh%= 100*(SIx-SI0)/SI0
(式中、SI0およびSIxはそれぞれ試験化合物なしおよびありでインキュベーションされた凝血塊のシグナル強度である)。
【0278】
インビボ試験
導入
本検討のねらいは、固形腫瘍内のフィブリンの感受性検出のための造影剤として本発明のフィブリン標的物質の特異性および有効性を評価することであった。
本検討は、A/Jマウスの右脇腹にNeuro-2a細胞を皮下注射により導入した神経芽細胞腫のマウスモデルにて行った(例えばY. Chen et al., J. Pediatr Surg. 2003. 37(9), 1298-1304; Anthony D. Sandler et al., Cancer Research 2003, 63, 394-399を参照のこと)。
腫瘍内のシグナル増強動力学を本発明のフィブリン標的造影剤の注射後に評価し、標準物質ProHance(登録商標)と比較した。
【0279】
物質
被験物質
化合物: 試験造影剤は、フィブリン標的ペプチド、任意のリンカーおよび少なくとも一のガドリニウムのキレート錯体を含む。
参照物質
化合物: ProHance(登録商標)
濃度: 0.5 M
試薬
化合物: ペニシリン/ストレプトマイシン (10000μg/mL), 供給業者: Biochrom KG, Berlin, Germany
化合物: L-グルタミン (200mM), 供給業者: SIGMA-ALDRICH, Steinheim, Germany
化合物: ウシ胎仔血清, 供給業者: HyClone(登録商標), Logan, Utah, USA
化合物: 最小必須培地イーグル, 供給業者: SIGMA-ALDRICH, Steinheim, Germany
化合物: ダルベッコリン酸緩衝食塩水(PBS), 供給業者: SIGMA Chemicals, St. Louis, MO, U.S.A.
化合物: Zoletil 100, 供給業者: Virbac, Carros, France
化合物: Rompun(登録商標), 供給業者: Bayer AG, Laverkusen, Germany
【0280】
試験系
動物
種および株: マウスA/J (Harlan Italy, S. Pietro al Natisone (UD), Italy)
装置
すべての実験は、最大強度110 mT/mおよび回転速度75μsでセルフシールド勾配設定をし、2T Oxford magnet (bore= 45 cm i.d.)と接続した、MRRSコンソール(MR Research Systems Ltd, Surrey UK)にて行った。R.F.コイルとして、マウスサイズに最適化された直交共振器を用いた。
【0281】
方法
実験設計
マウス神経芽細胞株(BS TCL 128 Neuro-2a)は、Istituto Zooprofilattico Sperimentale della Lombardia e dell'Emilia, Bresciaにより供給された。細胞を90% MEM培地および10%ウシ胎仔血清中にて増殖させ、集め、生理食塩水で2回洗浄し、PBS (106細胞/0.2mL)中にて再懸濁した。106細胞を各動物の右脇腹に皮下注射した。
MRI実験の日まで腫瘍直径を測定することにより植菌後一日おきに腫瘍の発症を追跡した。300〜700 mmの腫瘍直径を有する動物をインビボイメージングのために選択した。腫瘍のシグナル増強を被験物質の投与後24時間までMRIにより追跡し、参照物質のものと比較した。動物は0.4 mL/kgのZoletil(登録商標)および0.25 mL/kgのRompun(登録商標)で筋肉内麻酔した。
被験物質およびProHance(登録商標)(参照物質)をそれぞれ0.025および0.1 mmol/kgの用量にて投与した。
高分解能T1加重スピンエコーおよびグラジエントエコー系列を用いて、適切なコントラストのイメージを達成し、腫瘍を検出し、被験物質および参照物質のコントラストグラフィック効果を追跡した。
実験の終わりに、動物をチレタミン/ゾラゼパム(Zoletil)(登録商標)0.2 mL/kg+キシラジン(Rompun)(登録商標)0.25 mL/kgの筋肉内注射により犠牲にした。
次いで腫瘍、血液、腎臓、肝臓および大腿骨を取り出し、重量を測定し、ICP-AESにより分析するまで約4℃にて貯蔵した。
【0282】
生物サンプルにおけるガドリニウムのアッセイ
器具
アッセイは、以下の器具パラメータで操作したJobin-Yvon Mod 24分光計にて行った:
サンプルフロー: 1 mL/min
火炎プラズマ: 6000〜10000℃
波長: 342.247 nm
アルゴンフロー: ネブライザー0.3 L/min, トランスポートガス0.2 L/min, 冷却ガス12 L/min.
サンプル分解をマイクロウェーブ系により行った(MDS-2000 CEM Corporation)。
【0283】
サンプル調製および分析条件
硝酸(65% v/v)1.5 mL中に正確に重量を量った腫瘍を懸濁させることにより腫瘍溶液を調製した。硝酸(65% v/v)1.5 mL中に正確に重量を量った肝臓を測定することにより肝臓を調製した。硝酸(65% v/v)1.5 mL中に正確に重量を量った各腎臓を懸濁させることにより腎臓溶液を調製した。硝酸(65% v/v)1.5 mL中に血液1 mLを混合することにより血液溶液を調製した。硝酸(65% v/v)1.5 mL中に正確に重量を量った各大腿骨を懸濁させることにより骨溶液を調製した。
サンプルにマイクロウェーブオーブン系による湿式灰化工程を行うことにより有機マトリクスの破壊を行った。
最終的に所望な残渣をHCL 5%(v/v)3.0 mLに溶解した後、ICP-AESにより分析した。
データ処理
簡潔に、直線性を二の標準についてそれぞれHCl 5% (v/v)中0.00〜20 mg(Gd)/Lの範囲にて低および高と評価した。機器較正直線を用いて、試験サンプル中のガドリニウムの全含量を算出し、μg(Gd)/mLとして表す。
【0284】
MRIデータ分析
シグナル強度を全腫瘍などの興味の領域(ROI)内にて測定し、専用ソフトウェア(MR Research Systems Ltd, Surrey UK)を用いて各MRイメージにてオペレータにより示した。シグナル強度増強(Enh%)を以下のように測定した:
Enh%= 100*(SIx-SI0)/SI0
(式中、SI0およびSIx(t)はそれぞれ造影剤(被験物質または参照物質)の注射前および後の腫瘍のシグナル強度であった)。
集めたデータ(体重、臨床兆候、総病理学検査)は定性分析を行った。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
A[-Y(-T)r]s (I)
[式中、
Aは以下のアミノ酸配列:
【表1】



からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むフィブリン結合ペプチド部分であり;
Yはそれぞれ独立してAを少なくとも一つのT部分と連結する適切な連結部分であり;
Tはそれぞれ独立して診断的または治療的に活性な部分であり;
rはそれぞれ独立して1〜8の整数であり;
sは1または2である]
で示される化合物またはその生理学的に許容される塩。
【請求項2】
Yが1以上の次の部分:
-OC-Z-CO-、
-NH-Z-NH-、
-NH-Z-CO-、
-CO-Z-NH-、
および任意の適切な繰り返しおよびその組合せを含み、
Zが以下の基:
-(CH2)n-、
-CH2-(CH2O)n-、
-CH2O-(CH2(CH2)pO)n-(CH2)n-、
-(CH2)n-NH-(CH2)n-、
-N((CH2)n-)2
-(CH2)p-CH(NH-)-(CH2)n-、
-(CH2)p-CH(CONH2)-(CH2)n-、
-(CH2(CH2)pO)n-(CH2)n-、
-(CH2)p-CH(CO-)-(CH2)n-、
-(CH2)p-CH(NHCOCH3)-(CH2)n-
から選択される基を含む単位である(ここに、nはそれぞれ独立して1〜6の整数であり、pはゼロまたは1〜5の整数である)、式(I)の化合物。
【請求項3】
Yが1以上の次の基:
-HN-(CH2)n-CO-、
-OC-(CH2)n-CO-、
-HN-(CH2)n-NH-、
-HN-(CH2)n-NH-(CH2)n-NH-、
-OC-(CH2)n-NH-(CH2)n-CO-、
-HN-[(CH2)2-O]2-CH2-CO-、
-HN-CH(CO-)-(CH2)n-NH-、
-HN-CH(CO-)-(CH2)n-CO-、
-OC-CH(NH-)-(CH2)n-NH-、
-OC-CH2O-((CH2)2O))n-(CH2)2-NH-、
-N((CH2)n-CO-)2
-HN-CH(CONH2)-(CH2)n-NH-、
-OC-CH(NHCOCH3)-(CH2)n-NH-
(ここに、nは1〜6の整数である)
および任意の適切な繰り返しおよびその組合せである、請求項1記載の式(I)の化合物。
【請求項4】
Yが1以上の次の基:
-HN-CH2-CO-、
-OC-(CH2)2-CO-、
-OC-(CH2)3-CO-、
-HN-[(CH2)2-O]2-CH2-CO-、
-OC-CH2O-(CH2)2O-(CH2)2-NH-、
-HN-CH(CO-)-(CH2)4-NH-、
-OC-CH(NH-)-(CH2)4-NH-、
-HN-CH(CO-)-(CH2)2-CO-、
-HN-CH(CONH2)-(CH2)4-NH-、
-OC-CH(NHCOCH3)-(CH2)4-NH-、
-N(CH2-CO-)2
および任意の適切な繰り返しおよびその組合せを含む、請求項3記載の式(I)の化合物。
【請求項5】
sが1である、請求項1記載の式(I)の化合物。
【請求項6】
sが2である、請求項1記載の式(I)の化合物。
【請求項7】
rが1〜4の整数である、請求項1記載の式(I)の化合物。
【請求項8】
Tがキレートガンマ線もしくは陽電子放出放射性核種、キレートもしくはポリキレート錯体の形態の常磁性金属イオンまたはX-線吸収剤からなる群から選択される診断的に活性な部分である、請求項1〜7のいずれか記載の式(I)の化合物。
【請求項9】
TがMRI法により検出可能な常磁性金属元素で標識されたキレートリガンドの残基を含むMRI検出可能部分である、請求項8記載の式(I)の化合物。
【請求項10】
キレートリガンドがポリアミノポリカルボン酸ならびにDTPA、ベンゾ-DTPA、ジベンゾ-DTPA、フェニル-DTPA、ジフェニル-DTPA、ベンジル-DTPAおよびジベンジル DTPAを含むその誘導体、DTPA-BMA、EOB-DTPA、BOPTA、DTPA-GLU、DTPA-Lys、EDTA、DO3A、HPDO3A、NOTA、AAZTAおよびその誘導体、DOTAならびにベンゾ-DOTA、ジベンゾ-DOTA、DOTMA、TETA、DPDP、EDTPおよびDOTPなどのその誘導体からなる群から選択される、請求項9記載の式(I)の化合物。
【請求項11】
キレートリガンドがDTPA、DTPA-GLU、DTPA-Lys、DOTA、AAZTAおよび式:
【化1】

で示される任意のAAZTA誘導体からなる群から選択される、請求項10記載の式(I)の化合物。
【請求項12】
常磁性金属元素がFe(2+)、Fe(3+)、Cu(2+)、Ni(2+)、Rh(2+)、Co(2+)、Cr(3+)、Gd(3+)、Eu(3+)、Dy(3+)、Tb(3+)、Pm(3+)、Nd(3+)、Tm(3+)、Ce(3+)、Y(3+)、Ho(3+)、Er(3+)、La(3+)、Yb(3+)、Mn(3+)およびMn(2+)からなる群から選択される常磁性金属イオンである、請求項9〜11のいずれか記載の式(I)の化合物。
【請求項13】
常磁性金属イオンがGd(3+)である、請求項12記載の式(I)の化合物。
【請求項14】
TがシンチグラフSPECTまたはPETイメージング法により検出可能な放射性核種で標識されたキレートリガンドの残基を含む放射線イメージング検出可能部分である、請求項8記載の式(I)の化合物。
【請求項15】
放射性核種が99mTc、51Cr、67Ga、68Ga、47Sc、167Tm、141Ce、111In、113In、168Yb、175Yb、140La、90Y、88Y、153Sm、166Ho、165Dy、166Dy、61Cu、62Cu、64Cu、67Cu、97Ru、103Ru、186Re、188Re、203Pb、211Bi、212Bi、213Bi、214Bi、105Rh、109Pd、117mSn、149Pm、161Tb、177Lu、198Au、111Ag、199Au、51Mn、52mMn、52Fe、60Cu、72As、94mTc、110In、142Prおよび159Gdからなる群から選択される、請求項14記載の式(I)の化合物。
【請求項16】
放射性核種が64Cu、67Ga、68Ga、99mTcおよび111Inから選択される、請求項15記載の式(I)の化合物。
【請求項17】
キレートリガンドが式1〜33から選択される、請求項14〜16のいずれか記載の式(I)の化合物。
【請求項18】
Tが抗凝固-血栓溶解剤、線維素溶解薬、血管新生阻害剤、化学療法剤または殺腫瘍剤などの細胞毒性薬、および放射線治療剤からなる群から選択される治療的に活性な部分である、請求項1〜7のいずれか記載の式(I)の化合物。
【請求項19】
Tが64Cu、90Y、105Rh、111In、117mSn、149Pm、153Sm、161Tb、166Dy、166Ho、175Yb、177Lu、186/188Reおよび199Auからなる群から選択される放射性核種で標識された適切なキレートリガンドの残基を含む放射線治療剤である、請求項18記載の式(I)の化合物。
【請求項20】
以下の錯体:
キレート錯体1
【化2】

キレート錯体2
【化3】

キレート錯体3
【化4】

キレート錯体4
【化5】

キレート錯体5
【化6】

キレート錯体6
【化7】

キレート錯体7
【化8】

キレート錯体8
【化9】

キレート錯体9
【化10】

キレート錯体10
【化11】

キレート錯体11
【化12】

から選択される、請求項1記載の式(I)の化合物。
【請求項21】
a)適切に保護されたペプチド部分または選択されたアミノ酸を適切に脱保護/活性化された樹脂上に充填し、次いでリンカーYと共役したペプチド部分Aを適切に配列するように、別のアミノ酸、ペプチドまたはリンカーサブユニットと連続カップリングさせる工程(ここに、AおよびYは請求項1記載のものと同義である);
b)適切に脱保護/活性化された樹脂に担持されたA-Y部分を選択された部分Tとカップリングさせる工程(ここに、Tは請求項1記載のものと同義である);
c)工程b)のカップリング化合物を樹脂から開裂し、システインの-SH基をジスルフィド結合-S-S-に変換するようにペプチドを環化した後、Tが標識された任意の適切なキレート剤を示す場合に、所望の式(I)の化合物を得、適宜その生理学的に許容される塩に変換されるように、選択された常磁性金属イオンまたは放射性核種と適宜錯体化させる工程を含む、請求項1記載の式(I)の化合物およびその生理学的に許容される塩の製造方法。
【請求項22】
適宜保護されている適切なY部分またはY部分のサブユニットとペプチド部分AのN-末端(-NH2)またはC-末端(-COOH)基の一方または両方にて共役したペプチド部分Aを含む、中間体化合物(ここに、AおよびYは請求項1記載のものと同義である)。
【請求項23】
Tが任意の適切な非標識キレートリガンド残基またはその塩である、請求項1記載の式(I)の化合物の前駆体。
【請求項24】
有効成分として有効量の請求項1記載の式(I)の化合物またはその生理学的に許容される塩を1以上の医薬的に許容される担体、希釈剤または賦形剤とともに含む、医薬組成物。
【請求項25】
診断剤または医薬としての使用のための請求項1記載の式(I)の化合物。
【請求項26】
フィブリン沈着と関連する病態の検出、診断または治療のための請求項1記載の式(I)の化合物。
【請求項27】
Tががん組織および転移組織におけるフィブリン沈着を局在化およびイメージングするための診断的に有効な部分である、請求項1記載の式(I)の化合物の使用。
【請求項28】
Tがフィブリン沈着と関連する病理学の予防および治療のための治療的に有効な部分である、請求項1記載の式(I)の化合物の使用。
【請求項29】
哺乳動物におけるフィブリン沈着と関連する病態をインビボにて検出および診断する方法であって、Tが請求項1記載の診断的に活性な部分またはその生理学的に許容される塩である、有効量の式(I)の化合物を該哺乳動物に投与する、方法。
【請求項30】
器官および組織からの細胞、生体液および生体外サンプルなどの生物学的サンプルにおけるフィブリン沈着をインビトロにて検出または測定する方法であって、生物学的サンプルを有効量の式(I)の化合物(ここに、Tは請求項1記載の診断的に活性な部分である)またはその生理学的に許容される塩と接触させる、方法。
【請求項31】
哺乳動物にてフィブリン沈着と関連する病態を治療する方法であって、有効量の式(I)の化合物(ここに、Tは請求項1記載のように、治療的に活性な部分である)またはその生理学的に許容される塩を哺乳動物に投与する、方法。
【請求項32】
フィブリン沈着と関連する病態または病変が凝血塊、塞栓症、深部静脈血栓症、卒中、炎症性疾患、固形腫瘍および転移過程を含む、請求項28、29または31記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3a】
image rotate

【図3b】
image rotate

【図3c】
image rotate

【図4a】
image rotate

【図4b】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公表番号】特表2010−512369(P2010−512369A)
【公表日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−540744(P2009−540744)
【出願日】平成19年12月11日(2007.12.11)
【国際出願番号】PCT/EP2007/063659
【国際公開番号】WO2008/071679
【国際公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【出願人】(504448162)ブラッコ・イメージング・ソシエタ・ペル・アチオニ (34)
【氏名又は名称原語表記】BRACCO IMAGING S.P.A.
【Fターム(参考)】