説明

診断及び治療のための腫瘍関連マーカーの同定

本発明は、その発現が癌疾患に関連する遺伝子産物に関する。本発明はまた、該遺伝子産物が発現される又は異常発現される疾患、特に癌疾患の治療及び診断に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、癌において発現される核酸及びコードされるポリペプチドに関する。本発明はまた、ポリペプチドに結合する薬剤に関する。核酸、そのような核酸によってコードされるポリペプチド及びそれに由来するペプチド、並びに関連する抗体及び細胞溶解性Tリンパ球は、中でも特に、診断及び治療関係において有用である。
【背景技術】
【0002】
学際的なアプローチ及び古典的治療法の網羅的な使用にもかかわらず、癌は現在もなお死亡の主要原因の1つである。
【0003】
癌治療におけるごく最近の治療概念は、組換え腫瘍ワクチン及び抗体療法のような他の特異的手段を使用することによって、患者の免疫系を全体的な治療の概念に組み込むことを目指す。そのような方策の成功のための前提条件は、腫瘍特異的又は腫瘍関連抗原又はエピトープが、そのエフェクター機能を介入措置によって増強しようとする患者の免疫系によって認識されることである。
【0004】
腫瘍細胞は、それらの起源である非悪性細胞とは生物学的に実質上異なる。これらの相違は、腫瘍の発現の間に獲得される遺伝的変化によるものであり、中でも特に、癌細胞における質的又は量的に変化した分子構造体の形成も生じさせる。腫瘍を保持する宿主の特異的免疫系によって認識されるこの種の腫瘍関連構造体は、腫瘍関連抗原と称される。
【0005】
腫瘍関連抗原の特異的認識は、2つの機能的に相互連結された単位である細胞機構及び体液機構を含む:CD4及びCD8Tリンパ球は、それぞれMHC(主要組織適合複合体)クラスII及びIの分子上に提示されるプロセシングされた抗原を認識し、一方Bリンパ球は、未処理抗原に直接結合する循環抗体分子を産生する。腫瘍関連抗原の潜在的な臨床−治療上の重要性は、免疫系による腫瘍性細胞上の抗原の認識が細胞傷害性エフェクター機構の起動を導き、ヘルパーT細胞の存在下で、癌細胞の除去をもたらすことができるという事実から生じる(Pardoll,Nat.Med.4:525−31,1998)。
【0006】
抗体に基づく癌治療は、臨床の場に導入されて成功を収めており、この10年間にわたって腫瘍学における最も有望な治療法として浮上してきた。8つの抗体が腫瘍性疾患の治療に関して承認されているが、それらの大部分は、しかしながら、リンパ腫及び白血病における治療である(Adams GP,Weiner LM,Nat Biotechnol 23:1147−57,2005)。
【0007】
次世代の改良された抗体ベースの癌治療の出現のために克服すべき課題の1つは、良好な毒性/効果プロフィールにとっての鍵となる、適切な標的分子の選択である。
【0008】
健常組織の大部分では堅く沈黙している遺伝子についての検索は、配偶子形成及び/又は栄養膜系譜の遺伝子がしばしば異所性に活性化され、ヒト癌において堅固に発現されるという興味深い所見に関心の焦点を移している。生殖細胞、妊娠性栄養膜細胞及び癌細胞の間の表現型類似性に基づき、John Beardは、100年も前に、「癌の栄養膜理論(trophoblastic theory of cancer)」(Beard J,Lancet 1:1758−63,1902;Gurchot C,Oncology 31:310−3,1975)を提案した。癌細胞による絨毛性性腺刺激ホルモン、α−フェトプロテイン、CEA及び他の栄養膜ホルモンの散発性産生の発見は、新生細胞と栄養膜細胞の間で共有される最初の分子を提供した(Acevedo HF et al.,Cancer 76:1467−75,1995;Dirnhofer S et al.,Hum Pathol 29:377−82,1998;Gurchot C,Oncology 31:310−3,1975;Iles RK,Chard T,J Urol 145:453−8,1991;Laurence DJ,Neville AM,Br J Cancer 26:335−55,1972)。この概念は、着実に増殖する、いわゆる癌/生殖系(CG)クラスの遺伝子の確立(inauguration)によって再燃した。このようなクラスは、各々が様々な腫瘍型で発現される100を超える構成要素で表されている。栄養膜及び配偶子形成のプログラム全体が転写サイレンシングを免れ、癌細胞において異所性に活性化されるという所見は(Koslowski M et al.,Cancer Res 64:5988−93,2004;Simpson AJ et al.,Nat Rev Cancer 5:615−25,2005)、極めて選択的な組織分布を有するこのクラスの遺伝子内で、mAB療法のための適切な標的を見出し得ることを示す。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Pardoll,Nat.Med.4:525−31,1998
【非特許文献2】Adams GP,Weiner LM,Nat Biotechnol 23:1147−57,2005
【非特許文献3】Beard J,Lancet 1:1758−63,1902;Gurchot C,Oncology 31:310−3,1975
【非特許文献4】Acevedo HF et al.,Cancer 76:1467−75,1995
【非特許文献5】Dirnhofer S et al.,Hum Pathol 29:377−82,1998
【非特許文献6】Gurchot C,Oncology 31:310−3,1975
【非特許文献7】Iles RK,Chard T,J Urol 145:453−8,1991
【非特許文献8】Laurence DJ,Neville AM,Br J Cancer 26:335−55,1972
【非特許文献9】Koslowski M et al.,Cancer Res 64:5988−93,2004
【非特許文献10】Simpson AJ et al.,Nat Rev Cancer 5:615−25,2005
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
癌の診断及び治療のための標的構造体を提供することが本発明の目的であった。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的は、特許請求の範囲に記載の要件によって達成される。
【0012】
本発明によれば、腫瘍細胞において選択的に又は異常に発現されており、それ故、治療的及び診断的アプローチのための標的構造体を提供する、胎盤特異的遺伝子が同定される。
【0013】
本発明により腫瘍細胞において選択的に又は異常に発現されると同定される核酸は、(a)配列表の配列番号1〜540、541、545、549、553、557、560、563、566、570、574、577、580、583、587、591、595、599、602、606、610、613、617、620及び624から成る群より選択される核酸配列、その一部又は誘導体を含む核酸、(b)ストリンジェント条件下で(a)の核酸とハイブリダイズする核酸、(c)(a)又は(b)の核酸に関して縮重している核酸、並びに(d)(a)、(b)又は(c)の核酸に相補的である核酸、から成る群より選択される。これらの核酸はまた、本明細書では「腫瘍関連核酸」とも称される。
【0014】
もう1つの態様では、本発明は、本発明により同定される腫瘍関連核酸によってコードされる抗原に関する。従って、本発明により同定される腫瘍関連抗原は、(a)配列表の配列番号1〜540、541、545、549、553、557、560、563、566、570、574、577、580、583、587、591、595、599、602、606、610、613、617、620及び624から成る群より選択される核酸配列、その一部又は誘導体を含む核酸、(b)ストリンジェント条件下で(a)の核酸とハイブリダイズする核酸、(c)(a)又は(b)の核酸に関して縮重している核酸、並びに(d)(a)、(b)又は(c)の核酸に相補的である核酸、から成る群より選択される核酸によってコードされるアミノ酸配列を有する。好ましい実施形態では、本発明により同定される腫瘍関連抗原は、配列表の配列番号542、546、550、554、567、571、584、588、592、596、603、607、614、621及び625から成る群より選択されるアミノ酸配列、その一部又は誘導体を含む。
【0015】
本発明により、特定核酸配列を含む核酸又は特定アミノ酸配列を含む腫瘍関連抗原に言及する場合、これはまた、核酸又は腫瘍関連抗原が、それぞれこれらの特定核酸配列又はアミノ酸配列から成る実施形態も包含する。
【0016】
本発明は、一般に、腫瘍性疾患の治療、予防、診断及び/又は観測のための、本発明により同定される腫瘍関連核酸及び腫瘍関連抗原又はその一部若しくは誘導体、又は腫瘍関連核酸に対する核酸、本発明により同定される腫瘍関連抗原に対する抗体若しくはT細胞又はその一部若しくは誘導体、及び/又は本発明により同定される腫瘍関連抗原を発現する宿主細胞又はその一部若しくは誘導体の使用に関する。
【0017】
これはまた、これらの核酸、抗原、抗体、T細胞及び/又は宿主細胞の2又はそれ以上の組合せの使用を含み得る。
【0018】
本発明により同定される腫瘍関連抗原に対する抗体又はその一部若しくは誘導体の使用に関する本発明の実施形態では、本発明により同定される腫瘍関連抗原に対するT細胞受容体又はその一部若しくは誘導体も、場合によりMHC分子との複合体として、使用し得る。
【0019】
腫瘍関連抗原の非膜貫通部分、特に細胞外部分に対応する又はそれから構成される、本発明により同定される腫瘍関連抗原の一部は、治療、予防、診断及び/又は観測のために特に適切である。それ故、本発明によれば、腫瘍関連抗原の非膜貫通部分、特に細胞外部分に対応する又はそれから構成される、本発明により同定される腫瘍関連抗原の一部、又は本発明により同定される腫瘍関連抗原をコードする核酸の対応する部分は、治療、予防、診断及び/又は観測のために好ましい。同様に、腫瘍関連抗原の非膜貫通部分、特に細胞外部分に対応する又はそれから構成される、本発明により同定される腫瘍関連抗原の一部に対する抗体の使用は好ましい。
【0020】
治療、予防、診断及び/又は観測のための好ましい疾患は、本発明により同定される腫瘍関連核酸の1又はそれ以上が選択的に発現される又は異常発現される疾患である。治療、予防、診断及び/又は観測のための特に好ましい疾患は、本発明により同定される腫瘍関連核酸の1若しくはそれ以上及び/又はそれによってコードされる腫瘍関連抗原の1若しくはそれ以上が選択的に発現される又は異常発現される疾患である。
【0021】
1つの態様では、本発明は、本発明により同定される腫瘍関連抗原又は腫瘍関連抗原をコードする核酸を認識し、好ましくは本発明により同定される腫瘍関連抗原の発現又は異常発現を有する細胞に選択的である薬剤を含有する医薬組成物に関する。
【0022】
さらなる態様では、本発明は、(I)本発明により同定される腫瘍関連抗原の発現若しくは活性を阻害する、及び/又は(II)腫瘍阻害活性若しくは腫瘍破壊活性を有し、本発明により同定される腫瘍関連抗原を発現する若しくは異常発現する細胞に選択的である、及び/又は(III)投与したとき、MHC分子と、本発明により同定される腫瘍関連抗原若しくは、ペプチドエピトープのような、その一部との間の複合体の量を選択的に増加させる薬剤を含有する医薬組成物に関する。
【0023】
特定実施形態では、上記の薬剤は、細胞死の誘導、細胞増殖の低減、細胞膜への損傷又はサイトカインの分泌を生じさせることができ、好ましくは腫瘍阻害活性を有し得る。
【0024】
1つの実施形態では、薬剤は、腫瘍関連抗原をコードする核酸と選択的にハイブリダイズするアンチセンス核酸である。さらなる実施形態では、薬剤は、好ましくはセンスRNA鎖とアンチセンスRNA鎖を含むsiRNAであり、該siRNAにおいて、センスRNA鎖とアンチセンスRNA鎖はRNA二本鎖を形成し、センスRNA鎖は、腫瘍関連抗原をコードする核酸、好ましくは腫瘍関連抗原をコードするmRNA内の約19〜約25個の連続するヌクレオチドの標的配列に実質的に同一なヌクレオチド配列を含む。さらなる実施形態では、薬剤は、腫瘍関連抗原に選択的に結合する抗体、特に腫瘍関連抗原に選択的に結合する補体活性化抗体又は毒素結合抗体である。好ましい実施形態では、腫瘍関連抗原に選択的に結合する抗体は、治療上有用な物質に連結されている及び/又は天然又は人為的エフェクター機構を、腫瘍関連抗原を発現する又は異常発現する上記の細胞にリクルートする。さらなる実施形態では、薬剤は、細胞上のMHC分子に結合された腫瘍関連抗原又はその一部を認識し、このように標識された細胞を溶解する、細胞傷害性Tリンパ球である。さらなる実施形態では、薬剤は、細胞上のMHC分子に結合された腫瘍関連抗原又はその一部を認識し、該腫瘍関連抗原又はその一部を特異的に認識する他の細胞のエフェクター機能を増強する、Tヘルパーリンパ球である。
【0025】
さらなる実施形態では、薬剤は、各々異なる腫瘍関連抗原若しくは腫瘍関連抗原をコードする異なる核酸を認識する、及び/又は異なる腫瘍関連抗原の発現若しくは活性を阻害する、及び/又は異なる腫瘍関連抗原を発現する若しくは異常発現する細胞に選択的な腫瘍阻害活性若しくは腫瘍破壊活性を有する、及び/又は投与したとき、MHC分子と種々の異なる腫瘍関連抗原若しくはその一部との間の複合体の量を選択的に増加させる、2又はそれ以上の薬剤を含み、上記の異なる腫瘍関連抗原の少なくとも1つは本発明により同定される腫瘍関連抗原である。
【0026】
好ましくは、選択的に腫瘍に限定される腫瘍関連抗原は、エフェクター機構をこの特定位置にリクルートするための標識として役立つ。この態様では、本発明は、薬剤自体は腫瘍関連抗原の活性又は腫瘍阻害活性若しくは腫瘍破壊活性を阻害する能力を有さないが、特にエフェクター機構、中でも細胞損傷潜在能を有する機構を特定位置、特に腫瘍又は腫瘍細胞にリクルートすることによってそのような作用を媒介する実施形態を包含する。
【0027】
好ましくは、本発明により同定される腫瘍関連抗原を発現する又は異常発現する上記細胞は、非胎盤細胞である。
【0028】
本発明により同定される腫瘍関連抗原の活性は、タンパク質又はペプチドの任意の活性であり得る。1つの実施形態では、この活性は酵素活性である。
【0029】
本発明によれば、「発現又は活性を阻害する」という語句は、発現又は活性の完全な阻害又は基本的に完全な阻害及び発現又は活性の低減を包含する。
【0030】
投与したとき、MHC分子と本発明により同定される腫瘍関連抗原又はその一部との間の複合体の量を選択的に増加させる薬剤は、(i)腫瘍関連抗原又はその一部、(ii)上記腫瘍関連抗原又はその一部をコードする核酸、(iii)上記腫瘍関連抗原又はその一部を発現する宿主細胞、及び(vi)上記腫瘍関連抗原からのペプチドエピトープとMHC分子との間の単離複合体、から成る群より選択される1又はそれ以上の成分を含む。
【0031】
本発明はさらに、(i)本発明により同定される腫瘍関連抗原又はその一部、(ii)本発明により同定される腫瘍関連抗原又はその一部をコードする核酸、(iii)本発明により同定される腫瘍関連抗原又はその一部に結合する抗体、(iv)本発明により同定される腫瘍関連核酸/本発明により同定される腫瘍関連抗原をコードする核酸と特異的にハイブリダイズするアンチセンス核酸、(v)本発明により同定される腫瘍関連核酸/本発明により同定される腫瘍関連抗原をコードする核酸に対するsiRNA、(vi)本発明により同定される腫瘍関連抗原又はその一部を発現する宿主細胞、及び(vii)本発明により同定される腫瘍関連抗原又はその一部とMHC分子との間の単離複合体、から成る群より選択される1又はそれ以上の成分を含有する医薬組成物に関する。
【0032】
1つの実施形態では、本発明により同定される腫瘍関連抗原又はその一部をコードする核酸は、発現ベクター内で及びプロモーターに機能的に連結されて、医薬組成物中に存在する。さらなる実施形態では、本発明により同定される腫瘍関連抗原又はその一部をコードする核酸は、以下でさらに述べるようにウイルス内で医薬組成物中に存在する。
【0033】
本発明の医薬組成物中に存在する宿主細胞は、腫瘍関連抗原又はその一部を分泌して、それを表面上で発現することができ、好ましくは上記腫瘍関連抗原又はその一部に結合するMHC分子を付加的に発現し得る。1つの実施形態では、宿主細胞は、MHC分子を内因的に発現する。さらなる実施形態では、宿主細胞は、MHC分子及び/又は腫瘍関連抗原若しくはその一部を組換えによって発現する。宿主細胞は、好ましくは非増殖性である。好ましい実施形態では、宿主細胞は、抗原提示細胞、特に樹状細胞、単球又はマクロファージである。
【0034】
さらなる実施形態では、本発明の医薬組成物中に存在する抗体は、モノクローナル抗体である。さらなる実施形態では、抗体は、キメラ若しくはヒト化抗体、抗体のフラグメント、又は合成抗体である。抗体は、本明細書では治療薬又は診断薬とも称する、治療上又は診断上有用な薬剤に連結され得る。
【0035】
本発明の医薬組成物中に存在するアンチセンス核酸は、本発明により同定される腫瘍関連抗原をコードする核酸の6〜50、特に10〜30、15〜30及び20〜30個の連続するヌクレオチドの配列を含み得る。
【0036】
さらなる実施形態では、直接に又は核酸の発現を介して本発明の医薬組成物によって提供される、腫瘍関連抗原又はその一部は、細胞の表面でMHC分子に結合し、上記結合は、好ましくは細胞溶解応答を生じさせる及び/又はサイトカイン放出を誘導する。
【0037】
本発明の医薬組成物は、医薬的に適合性の担体及び/又はアジュバントを含有し得る。
【0038】
本発明の医薬組成物は、好ましくは、腫瘍関連核酸及び/又は腫瘍関連抗原の選択的発現又は異常発現によって特徴づけられる疾患の治療又は予防のために使用される。好ましい実施形態では、疾患は、腫瘍性疾患、好ましくは癌である。
【0039】
好ましい実施形態では、本発明の医薬組成物は、治療的又は予防的に使用し得るワクチンの形態である。そのようなワクチンは、好ましくは本発明により同定される腫瘍関連抗原若しくはその一部、及び/又は本発明により同定される腫瘍関連抗原若しくはその一部をコードする核酸を含有する。特定実施形態では、核酸はウイルス又は宿主細胞内に存在する。
【0040】
本発明はさらに、本発明により同定される1又はそれ以上の腫瘍関連核酸の発現又は異常発現によって特徴づけられ、好ましくは本発明により同定される1又はそれ以上の腫瘍関連抗原の発現又は異常発現も生じさせる疾患、好ましくは腫瘍性疾患、特に癌を治療する、予防する、診断する又は観測する、すなわち上記疾患の後退、進行、経過及び/又は発症を測定する方法に関する。1つの実施形態では、治療又は予防は、本発明の医薬組成物を投与することを含む。
【0041】
本発明による診断の方法及び/又は観測の方法は、一般に、患者から、好ましくは上記疾患を有する、上記疾患を有する若しくは罹患することが疑われる又は上記疾患の潜在的可能性を有する患者から単離された生物学的試料における、(i)本発明により同定される腫瘍関連核酸又はその一部、(ii)本発明により同定される腫瘍関連抗原又はその一部、(iii)本発明により同定される腫瘍関連抗原又はその一部に対する抗体、及び(iv)本発明により同定される腫瘍関連抗原若しくはその一部に特異的なTリンパ球、好ましくは細胞傷害性リンパ球若しくはTヘルパーリンパ球及び/又は腫瘍関連抗原又はその一部とMHC分子との間の複合体、から成る群より選択される1又はそれ以上のパラメータの検出及び/又はその量の測定に関する。上記検出及び/又は量の測定を達成するための手段は、本明細書において説明され、当業者に明らかになる。
【0042】
好ましくは、上記核酸若しくは上記その一部、上記腫瘍関連抗原若しくは上記その一部、上記抗体及び/又は上記Tリンパ球の存在、及び/又は上記疾患を有していない患者と比較して増大する、上記核酸若しくは上記その一部、上記腫瘍関連抗原若しくは上記その一部、上記抗体及び/又は上記Tリンパ球の量は、上記疾患の存在又は上記疾患の発現の潜在的可能性の指標である。
【0043】
本発明の診断及び/又は観測の方法はまた、上記核酸若しくは上記その一部、上記腫瘍関連抗原若しくは上記その一部、上記抗体及び/又は上記Tリンパ球の検出又はその量の測定により、上記疾患の転移挙動を評価する及び/又は予後判定することが可能である実施形態を包含し、上記実施形態では、好ましくは、上記核酸若しくは上記その一部、上記腫瘍関連抗原若しくは上記その一部、上記抗体及び/又は上記Tリンパ球の存在、及び/又は上記疾患を有していない若しくは上記疾患の転移を有していない患者と比較して増大した、上記核酸若しくは上記その一部、上記腫瘍関連抗原若しくは上記その一部、上記抗体及び/又は上記Tリンパ球の量は、上記疾患の転移挙動又は上記疾患の転移挙動の潜在的可能性の指標である。
【0044】
特定実施形態では、上記検出又は量の測定は、(i)生物学的試料を、上記腫瘍関連核酸若しくは上記その一部、上記腫瘍関連抗原若しくは上記その一部、上記抗体又は上記Tリンパ球に特異的に結合する薬剤と接触させること、及び(ii)薬剤と、核酸若しくはその一部、腫瘍関連抗原若しくはその一部、抗体、又はTリンパ球との間の複合体の形成を検出すること又は複合体の量を測定することを含む。
【0045】
1つの実施形態では、疾患は、2又はそれ以上の異なる腫瘍関連核酸の発現又は異常発現によって特徴づけられ、好ましくは2又はそれ以上の異なる腫瘍関連抗原の発現又は異常発現も生じさせ、検出又は量の測定は、2又はそれ以上の異なる腫瘍関連核酸若しくはその一部、2又はそれ以上の異なる腫瘍関連抗原若しくはその一部、上記2又はそれ以上の異なる腫瘍関連抗原若しくはその一部に結合する2又はそれ以上の抗体、及び/又は上記2又はそれ以上の異なる腫瘍関連抗原若しくはその一部、若しくはMHC分子とのその複合体に特異的な、2又はそれ以上のTリンパ球の検出又はその量の測定を含む。さらなる実施形態では、患者から単離された生物学的試料を、対応する正常な生物学的試料と比較する。
【0046】
本発明による観測の方法は、好ましくは、第1時点で第1試料において及び第2時点でさらなる試料において、前述したパラメータの1又はそれ以上を検出する及び/又はその量を測定することを含み、2つの試料を比較することによって疾患の経過を判定する。
【0047】
好ましくは、上記核酸若しくは上記その一部、上記腫瘍関連抗原若しくは上記その一部、上記抗体及び/又は上記Tリンパ球のレベルが、患者から以前に採取した試料と比較して試料中で増大したことは、患者が癌及び/又は癌の転移及び/又は癌の再発を発現した又は発現しかかっていることを示す。好ましくは、上記核酸若しくは上記その一部、上記腫瘍関連抗原若しくは上記その一部、上記抗体及び/又は上記Tリンパ球のレベルが、患者から以前に採取した試料と比較して試料中で低下していることは、上記患者における癌及び/又は癌の転移の後退を示し、それ故、好ましくは癌治療の成功を示す。
【0048】
本発明によれば、核酸若しくはその一部の検出又は核酸若しくはその一部の量の測定は、上記核酸若しくは上記その一部に特異的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドプローブを使用して実施し得るか、又は上記核酸若しくは上記その一部の選択的増幅によって、例えばPCR増幅を用いて実施し得る。1つの実施形態では、オリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドプローブは、上記核酸の6〜50、特に10〜30、15〜30及び20〜30個の連続するヌクレオチドの配列を含む。
【0049】
特定実施形態では、本発明の方法において検出される腫瘍関連抗原若しくはその一部又は測定される量は、細胞内、細胞表面上又はMHC分子との複合体中に存在する。
【0050】
本発明によれば、腫瘍関連抗原若しくはその一部の検出又は腫瘍関連抗原若しくはその一部の量の測定は、上記腫瘍関連抗原又は上記その一部に特異的に結合する抗体を使用して実施し得る。
【0051】
本発明によれば、抗体の検出又は抗体の量の測定は、上記抗体に特異的に結合するタンパク質又はペプチドを使用して実施し得る。
【0052】
本発明によれば、腫瘍関連抗原若しくはその一部に特異的なTリンパ球及び/又はMHC分子とのその複合体の検出又はその量の測定は、上記腫瘍関連抗原又は上記その一部とMHC分子との間の複合体を提示する細胞を使用して実施し得る。Tリンパ球は、それらの増殖、それらのサイトカイン産生、及びMHC分子と腫瘍関連抗原又はその一部との複合体による特異的刺激によって引き金が引かれるそれらの細胞傷害活性を検出することによって付加的に検出し得る。Tリンパ球はまた、組換えMHC分子又は1若しくはそれ以上の腫瘍関連抗原の免疫原性フラグメントが負荷された2若しくはそれ以上のMHC分子の複合体を用いて検出し得る。
【0053】
オリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドプローブ、抗体、タンパク質又はペプチド又は細胞のような、本発明の方法における検出又は量の測定のために使用される薬剤は、好ましくは検出可能に、特に放射性マーカー又は酵素マーカーのような検出可能なマーカーによって標識される。
【0054】
特定態様では、本発明は、本発明により同定される腫瘍関連抗原の発現又は異常発現によって特徴づけられる疾患を治療する、予防する、診断する又は観測する方法であって、上記腫瘍関連抗原又はその一部に結合し、且つ治療薬又は診断薬に連結されている抗体を投与することを含む方法に関する。抗体はモノクローナル抗体であり得る。さらなる実施形態では、抗体は、キメラ抗体若しくはヒト化抗体又は抗体のフラグメントである。
【0055】
ある実施形態では、疾患を診断する又は観測する本発明の方法は、播種性腫瘍細胞又は転移性腫瘍細胞を含む又は含むことが疑われる生物学的試料を用いて実施される。
【0056】
そのような生物学的試料は、例えば血液、血清、骨髄、痰、気管支吸引液、及び/又は気管支洗浄液を含む。好ましくは、疾患を診断する又は観測する本発明の方法は、胎盤細胞を含まない、特に、被験者から単離された非胎盤生物学的試料である生物学的試料を用いて実施される。
【0057】
1つの特定態様では、本発明は、本発明により同定される腫瘍関連抗原の発現又は異常発現によって特徴づけられる疾患を有する患者を治療する方法であって、(i)上記患者から又は同じ種の別の個体、特に健常個体又は異なる種の個体から得た、免疫反応性細胞を含む試料を提供すること、(ii)上記試料を、上記腫瘍関連抗原又はその一部に対する細胞溶解性T細胞の産生を促進する条件下で、上記腫瘍関連抗原又はその一部を発現する宿主細胞と接触させること、及び(iii)細胞溶解性T細胞を、腫瘍関連抗原又はその一部を発現する細胞を溶解するために適切な量で患者に導入することを含む方法に関する。1つの実施形態では、その方法は、得られた細胞溶解性T細胞のT細胞受容体をクローニングすること、T細胞受容体をコードする核酸を、上記患者から又は同じ種の別の個体、特に健常個体又は異なる種の個体から得た、T細胞に移入することを含み、このようにして上記T細胞は所望の特異性を受容し、(iii)におけるように、患者に導入され得る。
【0058】
1つの実施形態では、宿主細胞は、MHC分子を内因的に発現する。さらなる実施形態では、宿主細胞は、MHC分子及び/又は腫瘍関連抗原若しくはその一部を組換え発現する。好ましくは、宿主細胞は、MHC分子によって腫瘍関連抗原又はその一部をその表面に提示する。宿主細胞は、好ましくは非増殖性である。好ましい実施形態では、宿主細胞は、抗原提示細胞、特に樹状細胞、単球又はマクロファージである。
【0059】
本発明はまた、本発明により同定される腫瘍関連抗原の発現又は異常発現によって特徴づけられる疾患を治療する方法であって、(i)異常量の腫瘍関連抗原を発現する、患者からの細胞を同定すること、(ii)上記細胞の試料を単離すること、(iii)上記細胞を培養すること、及び(iv)上記細胞を、細胞に対する免疫応答の引き金を引くために適切な量で患者に導入することを含む方法に関する。
【0060】
本発明はさらに、(a)配列番号1〜540、541、545、549、553、557、560、563、566、570、574、577、580、583、587、591、595、599、602、606、610、613、617、620及び624から成る群より選択される核酸配列、その一部又は誘導体を含む核酸、(b)ストリンジェント条件下で(a)の核酸とハイブリダイズする核酸、(c)(a)又は(b)の核酸に関して縮重している核酸、並びに(d)(a)、(b)又は(c)の核酸に相補的である核酸、から成る群より選択される核酸に関する。
【0061】
さらなる態様では、本発明は、本発明の核酸を含む組換え核酸分子、特にDNA又はRNA分子に関する。
【0062】
本発明はまた、本発明の核酸又は組換え核酸分子を含む宿主細胞に関する。
【0063】
宿主細胞はまた、MHC分子をコードする核酸を含み得る。1つの実施形態では、宿主細胞は、MHC分子を内因的に発現する。さらなる実施形態では、宿主細胞は、MHC分子及び/又は本発明の核酸若しくは組換え核酸分子若しくはその一部を組換え発現する。好ましくは、宿主細胞は非増殖性である。好ましい実施形態では、宿主細胞は、抗原提示細胞、特に樹状細胞、単球又はマクロファージである。
【0064】
さらなる実施形態では、本発明は、本発明により同定される核酸とハイブリダイズし、遺伝子プローブとして又は「アンチセンス」分子として使用し得るオリゴヌクレオチドに関する。本発明により同定される核酸又はその一部とハイブリダイズする、オリゴヌクレオチドプライマー又はコンピテントプローブの形態の核酸分子は、例えばPCR増幅、サザン及びノーザンハイブリダイゼーションによって、上記核酸を検出するため及び/又は本発明により同定される上記核酸に相同な核酸を見出すために使用し得る。ハイブリダイゼーションは、低ストリンジェンシー下で、より好ましくは中ストリンジェンシー下で、最も好ましくは高ストリンジェンシー下で実施し得る。
【0065】
さらなる態様では、本発明は、(a)配列番号1〜540、541、545、549、553、557、560、563、566、570、574、577、580、583、587、591、595、599、602、606、610、613、617、620及び624から成る群より選択される核酸配列、その一部又は誘導体を含む核酸、(b)ストリンジェント条件下で(a)の核酸とハイブリダイズする核酸、(c)(a)又は(b)の核酸に関して縮重している核酸、並びに(d)(a)、(b)又は(c)の核酸に相補的である核酸、から成る群より選択される核酸によってコードされるタンパク質又はペプチドに関する。好ましい実施形態では、上記タンパク質又はペプチドは、配列表の配列番号542、546、550、554、567、571、584、588、592、596、603、607、614、621及び625から成る群より選択されるアミノ酸配列、その一部又は誘導体を含む。
【0066】
さらなる態様では、本発明は、本発明により同定される腫瘍関連抗原の免疫原性フラグメントに関する。上記フラグメントは、好ましくはMHC分子又は抗体、好ましくはヒトHLA受容体又はヒト抗体に結合する。本発明によれば、部分又はフラグメントは、好ましくは少なくとも5、少なくとも6、特に少なくとも8、少なくとも10、少なくとも12、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも30又は少なくとも50個のアミノ酸の配列を含む。
【0067】
さらなる態様では、本発明は、本発明により同定される腫瘍関連抗原又はその一部に結合する薬剤に関する。好ましい実施形態では、薬剤は、タンパク質又はペプチド、特に抗体、T細胞受容体又はMHC分子である。さらなる実施形態では、抗体は、モノクローナル抗体、キメラ抗体又はヒト化抗体、組み合わせ手法によって作製される抗体、又は抗体のフラグメントである。1つの好ましい実施形態では、本発明は、(i)本発明により同定される腫瘍関連抗原又はその一部と(ii)本発明により同定される上記腫瘍関連抗原又は上記その一部が結合しているMHC分子との複合体に選択的に結合し、(i)又は(ii)に単独には結合しない抗体に関する。
【0068】
本発明によれば、「結合」という用語は、好ましくは特異的結合に関する。「特異的結合]は、抗体のような薬剤が、それが特異的であるエピトープのような標的に対して、別の標的への結合と比較してより強く結合することを意味する。ある薬剤がある解離定数(K)で第1標的に結合し、その解離定数が第2標的に対する解離定数よりも低い場合、薬剤は第2標的に比べて第1標的により強く結合する。好ましくは、薬剤が特異的に結合する標的についての解離定数(K)は、薬剤が特異的に結合しない標的についての解離定数(K)よりも10倍を超えて、好ましくは20倍を超えて、より好ましくは50倍を超えて、さらに一層好ましくは100倍、200倍、500倍又は1000倍を超えて低い。
【0069】
そのような特異的抗体は、例えば上記ペプチドを使用した免疫法によって入手し得る。
【0070】
本発明はさらに、本発明により同定される腫瘍関連抗原若しくはその一部又は本発明の抗体に結合する本発明の薬剤と、治療薬又は診断薬との間のコンジュゲートに関する。1つの実施形態では、治療薬又は診断薬は毒素である。
【0071】
さらなる態様では、本発明は、本発明により同定される1又はそれ以上の腫瘍関連核酸の発現又は異常発現によって特徴づけられ、好ましくは本発明により同定される1又はそれ以上の腫瘍関連抗原の発現又は異常発現も生じさせる疾患、好ましくは腫瘍性疾患、特に癌を検出するためのキットであって、(i)腫瘍関連核酸若しくはその一部、(ii)腫瘍関連抗原若しくはその一部、(iii)腫瘍関連抗原若しくはその一部に結合する抗体、及び/又は(iv)腫瘍関連抗原若しくはその一部に特異的なT細胞又はMHC分子とのその複合体の検出又はその量の測定のための薬剤を含むキットに関する。そのような薬剤は本明細書において上記で説明されている。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】正常組織及び癌組織における本発明により同定される腫瘍関連核酸の発現。 配列番号540の核酸配列の有意の発現は、胎盤組織及び乳癌においてのみ認められた。
【図2】正常組織及び癌組織における本発明により同定される腫瘍関連核酸の定量的発現。 定量的RT−PCRは、胎盤組織及び乳癌において配列番号540の核酸配列の選択的発現を示した。
【図3】MCF−7乳癌細胞における配列番号540のmRNAの定量的発現。 siRNAオリゴヌクレオチドによるトランスフェクションの24時間後のリアルタイムRT−PCRは、2つの配列番号540特異的siRNA(siRNA No.1(配列番号630、631)、siRNA No.2(配列番号632、633))が配列番号540発現の強固なサイレンシングを誘導することを示した。
【図4】siRNAオリゴヌクレオチドでのトランスフェクションによる配列番号540発現のサイレンシングは、MCF−7乳癌細胞の増殖障害を生じさせる。 siRNAによるトランスフェクションの96時間後に、新たに合成されたDNA鎖へのBrdUの組込みを測定することによって増殖を定量した。これらの結果は、配列番号540が乳癌細胞の増殖のための正の因子であることを示す。
【図5】正常組織及び癌組織における配列番号541の定量的発現。 リアルタイムRT−PCRは、肺癌における配列番号541の核酸配列の過剰発現を示した。
【図6】正常組織及び癌組織における配列番号545の定量的発現。 リアルタイムRT−PCRは、悪性黒色腫における配列番号545の核酸配列の過剰発現を示した。
【図7】正常組織及び癌組織における配列番号549の定量的発現。 リアルタイムRT−PCRは、卵巣癌における配列番号549の核酸配列の過剰発現を示した。
【図8】正常組織及び癌組織における配列番号553の定量的発現。 リアルタイムRT−PCRは、結腸癌及び卵巣癌における配列番号553の核酸配列の過剰発現を示した。
【図9】正常組織及び癌組織における配列番号557の定量的発現。 リアルタイムRT−PCRは、乳癌における配列番号557の核酸配列の過剰発現を示した。
【図10】正常組織及び癌組織における配列番号560の定量的発現。 リアルタイムRT−PCRは、結腸癌及び卵巣癌における配列番号560の核酸配列の過剰発現を示した。
【図11】正常組織及び癌組織における配列番号563の定量的発現。 リアルタイムRT−PCRは、乳癌、結腸癌、卵巣癌、肺癌及び黒色腫における配列番号563の核酸配列の過剰発現を示した。
【図12】正常組織及び癌組織における配列番号566の定量的発現。 リアルタイムRT−PCRは、胃癌、乳癌、結腸癌、卵巣癌、肺癌及び黒色腫における配列番号566の核酸配列の過剰発現を示した。
【図13】正常組織及び癌組織における配列番号570の定量的発現。 リアルタイムRT−PCRは、卵巣癌、肺癌及び黒色腫における配列番号570の核酸配列の過剰発現を示した。
【図14】正常組織及び癌組織における配列番号574の定量的発現。 リアルタイムRT−PCRは、肺癌及び黒色腫における配列番号574の核酸配列の過剰発現を示した。
【図15】正常組織及び癌組織における配列番号577の定量的発現。 リアルタイムRT−PCRは、胃癌、乳癌及び肺癌における配列番号577の核酸配列の過剰発現を示した。
【図16】正常組織及び癌組織における配列番号580の定量的発現。 リアルタイムRT−PCRは、卵巣癌及び肺癌における配列番号580の核酸配列の過剰発現を示した。
【図17】正常組織及び癌組織における配列番号583の定量的発現。 リアルタイムRT−PCRは、結腸癌、卵巣癌及び肺癌における配列番号583の核酸配列の過剰発現を示した。
【図18】正常組織及び癌組織における配列番号587の定量的発現。 リアルタイムRT−PCRは、肺癌における配列番号587の核酸配列の過剰発現を示した。
【図19】正常組織及び癌組織における配列番号591の定量的発現。 リアルタイムRT−PCRは、乳癌、結腸癌、卵巣癌、肺癌及び黒色腫における配列番号591の核酸配列の過剰発現を示した。
【図20】正常組織及び癌組織における配列番号595の定量的発現。 リアルタイムRT−PCRは、胃癌、結腸癌、卵巣癌、肺癌及び黒色腫における配列番号595の核酸配列の過剰発現を示した。
【図21】正常組織及び癌組織における配列番号599の定量的発現。 リアルタイムRT−PCRは、胃癌、乳癌、肺癌及び黒色腫における配列番号599の核酸配列の過剰発現を示した。
【図22】正常組織及び癌組織における配列番号602の定量的発現。 リアルタイムRT−PCRは、卵巣癌及び肺癌における配列番号602の核酸配列の過剰発現を示した。
【図23】正常組織及び癌組織における配列番号606の定量的発現。 リアルタイムRT−PCRは、胃癌、結腸癌及び肺癌における配列番号606の核酸配列の過剰発現を示した。
【図24】正常組織及び癌組織における配列番号610の定量的発現。 リアルタイムRT−PCRは、胃癌、乳癌及び肺癌における配列番号610の核酸配列の過剰発現を示した。
【図25】正常組織及び癌組織における配列番号613の定量的発現。 リアルタイムRT−PCRは、乳癌、肺癌及び黒色腫における配列番号613の核酸配列の過剰発現を示した。
【図26】正常組織及び癌組織における配列番号617の定量的発現。 リアルタイムRT−PCRは、肺癌及び黒色腫における配列番号617の核酸配列の過剰発現を示した。
【図27】正常組織及び癌組織における配列番号620の定量的発現。 リアルタイムRT−PCRは、卵巣癌及び黒色腫における配列番号620の核酸配列の過剰発現を示した。
【図28】正常組織及び癌組織における配列番号624の定量的発現。 リアルタイムRT−PCRは、胃癌及び肺癌における配列番号624の核酸配列の過剰発現を示した。
【発明を実施するための形態】
【0073】
本明細書における数値の範囲への言及は、上記範囲に含まれる個々の数値の各々を指定し、言及すると理解されるべきである。例えば、配列番号1〜540への言及は、以下の個々の配列番号:1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179、180、181、182、183、184、185、186、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、198、199、200、201、202、203、204、205、206、207、208、209、210、211、212、213、214、215、216、217、218、219、220、221、222、223、224、225、226、227、228、229、230、231、232、233、234、235、236、237、238、239、240、241、242、243、244、245、246、247、248、249、250、251、252、253、254、255、256、257、258、259、260、261、262、263、264、265、266、267、268、269、270、271、272、273、274、275、276、277、278、279、280、281、282、283、284、285、286、287、288、289、290、291、292、293、294、295、296、297、298、299、300、301、302、303、304、305、306、307、308、309、310、311、312、313、314、315、316、317、318、319、320、321、322、323、324、325、326、327、328、329、330、331、332、333、334、335、336、337、338、339、340、341、342、343、344、345、346、347、348、349、350、351、352、353、354、355、356、357、358、359、360、361、362、363、364、365、366、367、368、369、370、371、372、373、374、375、376、377、378、379、380、381、382、383、384、385、386、387、388、389、390、391、392、393、394、395、396、397、398、399、400、401、402、403、404、405、406、407、408、409、410、411、412、413、414、415、416、417、418、419、420、421、422、423、424、425、426、427、428、429、430、431、432、433、434、435、436、437、438、439、440、441、442、443、444、445、446、447、448、449、450、451、452、453、454、455、456、457、458、459、460、461、462、463、464、465、466、467、468、469、470、471、472、473、474、475、476、477、478、479、480、481、482、483、484、485、486、487、488、489、490、491、492、493、494、495、496、497、498、499、500、501、502、503、504、505、506、507、508、509、510、511、512、513、514、515、516、517、518、519、520、521、522、523、524、525、526、527、528、529、530、531、532、533、534、535、536、537、538、539、及び540の1つ1つに言及すると理解されるべきである。
【0074】
本発明によれば、参照試料又は参照生物のような「参照品」は、本発明の方法において試験試料又は試験生物、すなわち患者から得た結果を相互に関連付け、比較するために使用し得る。典型的には、参照生物は健常生物、特に癌に罹患していない生物である。
【0075】
「参照値」は、十分に大きな数の参照品を測定することによって参照品から経験的に決定することができる。好ましくは、参照値は、少なくとも2、好ましくは少なくとも3、好ましくは少なくとも5、好ましくは少なくとも8、好ましくは少なくとも12、好ましくは少なくとも20、好ましくは少なくとも30、好ましくは少なくとも50、又は好ましくは少なくとも100の参照品を測定することによって決定される。
【0076】
本発明によれば、核酸は、好ましくはデオキシリボ核酸(DNA)又はリボ核酸(RNA)である。核酸は、本発明によれば、ゲノムDNA、cDNA、mRNA、組換え生産された分子及び化学合成された分子を包含する。本発明によれば、核酸は、一本鎖又は二本鎖として及び直鎖状分子又は共有結合閉環分子として存在し得る。
【0077】
「本発明により同定される腫瘍関連核酸」及び「本発明により同定される腫瘍関連抗原をコードする核酸」という用語は、同様の意味を有する。しかし、一部の実施形態では核酸、特にmRNAの発現だけが関連しており、タンパク質の発現は重要な因子ではないという事実を説明するために、異なる用語が本明細書で使用される。
【0078】
本明細書で使用される、「RNA」という用語は、少なくとも1個のリボヌクレオチド残基を含む分子を意味する。「リボヌクレオチド」とは、β−D−リボフラノース部分の2'位置にヒドロキシル基を有するヌクレオチドを意味する。この用語は、二本鎖RNA、一本鎖RNA、部分精製RNAのような単離RNA、基本的に純粋なRNA、合成RNA、組換え生産されたRNA、並びに1又はそれ以上のヌクレオチドの付加、欠失、置換及び/又は改変により、天然に生じるRNAとは異なる改変したRNAを包含する。そのような改変は、RNAの末端又は内部などへの、例えばRNAの1又はそれ以上のヌクレオチドにおける、非ヌクレオチド物質の付加を含み得る。RNA分子内のヌクレオチドはまた、非天然に生じるヌクレオチド又は化学合成ヌクレオチド又はデオキシヌクレオチドのような、非標準ヌクレオチドも含み得る。これらの改変したRNAは、類似体又は天然に生じるRNAの類似体と称され得る。
【0079】
本明細書において核酸の検出又は核酸の量の測定に言及する場合、実際に検出されるべき核酸又はその量が実際に測定されるべきである核酸は、好ましくはmRNAである。しかし、これはまた、mRNAが間接的に検出される又はmRNAの量が間接的に測定される実施形態を含み得ることが了解されるべきである。例えば、mRNAがcDNAに形質転換されて、そのcDNAが検出されてもよい又はその量が測定されてもよい。本明細書に示されるmRNAはcDNAの等価物である。当業者は、cDNA配列がmRNA配列と等価であり、本明細書において同じ目的に、例えば検出されるべき核酸にハイブリダイズするプローブの作製のために使用できることを理解する。故に、本明細書において配列表に示す配列に言及する場合、これは、上記配列のRNA等価物も包含する。
【0080】
本発明において述べる核酸は、好ましくは単離されている。「単離核酸」という用語は、本発明によれば、核酸が、(i)インビトロで、例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって増幅された、(ii)クローニングによって組換え生産された、(iii)例えば切断とゲル電気泳動による分画によって精製された、又は(iv)例えば化学合成によって合成されたことを意味する。単離核酸は、組換えDNA手法による操作のために使用可能な核酸である。
【0081】
本発明による縮重核酸は、遺伝暗号の縮重のためにコドン配列が参照核酸とは異なる核酸である。
【0082】
核酸の「誘導体」は、本発明によれば、単一又は複数の、例えば少なくとも2、少なくとも4又は少なくとも6、及び好ましくは3まで、4まで、5まで、6まで、10まで、15まで又は20までのヌクレオチド置換、欠失及び/又は付加が上記核酸内に存在することを意味する。さらに、「誘導体」という用語はまた、ヌクレオチド塩基、糖又はリン酸上の核酸の化学的誘導体化を包含する。「誘導体」という用語はまた、天然では生じないヌクレオチド及びヌクレオチド類似体を含む核酸を包含する。
【0083】
好ましくは、本明細書で述べる特定核酸配列と、上記特定核酸配列の誘導体である、上記特定核酸配列とハイブリダイズする、及び/又は上記特定核酸配列に関して縮重している核酸配列との間の同一性の程度は、少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、さらに一層好ましくは少なくとも90%又は最も好ましくは少なくとも95%、96%、97%、98%又は99%である。同一性の程度は、好ましくは少なくとも約30、少なくとも約50、少なくとも約70、少なくとも約90、少なくとも約100、少なくとも約150、少なくとも約200、少なくとも約250、少なくとも約300、又は少なくとも約400ヌクレオチドの領域に関して与えられる。好ましい実施形態では、同一性の程度は、配列表に記載されている核酸配列のような、参照核酸配列の全長に関して与えられる。
【0084】
2つの配列が互いにハイブリダイズして、安定な二本鎖を形成することができる場合、核酸はもう1つの別の核酸に「相補的」であり、ハイブリダイゼーションは、好ましくはポリヌクレオチド間の特異的ハイブリダイゼーションを可能にする条件(ストリンジェント条件)下で実施される。ストリンジェント条件は、例えばMolecular Cloning:A Laboratory Manual,J.Sambrook et al.,Editors,2nd Edition,Cold Spring Harbor Laboratory press,Cold Spring Harbor,New York,1989又はCurrent Protocols in Molecular Biology,F.M.Ausubel et al.,Editors,John Wiley & Sons,Inc.,New Yorkの中で記載されており、例えば、ハイブリダイゼーション緩衝液(3.5×SSC、0.02%フィコール、0.02%ポリビニルピロリドン、0.02%ウシ血清アルブミン、2.5mM NaHPO(pH7)、0.5%SDS、2mM EDTA)中65℃でのハイブリダイゼーションを参照されたい。SSCは、0.15M塩化ナトリウム/0.15Mクエン酸ナトリウム、pH7である。ハイブリダイゼーション後、DNAが導入された膜を、例えば室温にて2×SSC中で、次に68℃までの温度で0.1〜0.5×SSC/0.1×SDS中で洗浄する。
【0085】
相補性パーセントは、第2の核酸配列と水素結合(例えば、ワトソン−クリック型塩基対合)を形成することができる核酸分子内の連続する残基のパーセンテージを示す(例えば、10個のうち5、6、7、8、9、10個は、50%、60%、70%、80%、90%及び100%相補的である)。「完全に相補的(perfectly complementary、fully complementary)」とは、核酸配列のすべての連続する残基が第2の核酸配列内の同数の連続する残基と水素結合することを意味する。好ましくは、本発明による相補性の程度は、少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、さらに一層好ましくは少なくとも90%又は最も好ましくは少なくとも95%、96%、97%、98%又は99%である。
【0086】
「配列類似性」は、同一であるか又は保存的アミノ酸置換であるアミノ酸のパーセンテージを示す。2つのポリペプチド又は核酸配列の間の「配列同一性」は、配列間で同一であるアミノ酸又はヌクレオチドのパーセンテージを示す。
【0087】
「同一性パーセンテージ」は、最良のアラインメント後に得られた、比較する2つの配列の間で同一であるヌクレオチド又はアミノ酸残基のパーセンテージを表すことが意図されており、このパーセンテージは純粋に統計的であって、2つの配列の間の相違は無作為に及びそれらの長さ全体にわたって分布する。2つのヌクレオチド又はアミノ酸配列間の配列比較は、従来、これらの配列を最適に整列した後に比較することによって実施され、上記比較は、配列類似性の局所領域を同定し、比較するために、セグメントによって又は「比較ウインドウ」によって実施される。比較のための配列の最適アラインメントは、手操作による以外に、Smith and Waterman,1981,Ads App.Math.2,482のローカルホモロジーアルゴリズムによって、Neddleman and Wunsch,1970,J.Mol.Biol.48,443のローカルホモロジーアルゴリズムによって、Pearson and Lipman,1988,Proc.Natl Acad.Sci.USA 85,2444の類似性検索法によって、又はこれらのアルゴリズムを使用するコンピュータプログラム(Wisconsin Genetics Software Package,Genetics Computer Group,575 Science Drive,Madison,Wis.におけるGAP、BESTFIT、FASTA、BLAST P、BLAST N及びTFASTA)によって作成され得る。
【0088】
同一性パーセンテージは、比較する2つの配列の間の同一位置の数を決定し、これら2つの配列の間の同一性パーセンテージを得るために、この数を比較する位置の数で除して、得られた結果に100を乗じることによって計算される。
【0089】
1つの実施形態では、特定核酸配列の誘導体である、特定核酸配列に関して縮重している、又は特定核酸配列の一部である核酸配列は、特定核酸配列に関連する機能及び/又は活性を有する。すなわち、この核酸配列は、特定核酸配列によってコードされるタンパク質又はペプチドと同じ活性又は免疫学的性質を有するタンパク質又はペプチドをコードすることができ、1つの実施形態では、同じタンパク質又はペプチドをコードすることができる。
【0090】
腫瘍関連抗原をコードする核酸は、本発明によれば、単独で又は他の核酸、特に異種核酸との組合せで存在し得る。好ましい実施形態では、核酸は、上記核酸に関して相同又は異種であり得る発現制御配列又は調節配列に機能的に連結されている。コード配列と調節配列は、それらが、上記コード配列の発現又は転写が上記調節配列の制御下又は影響下にあるように互いに共有結合で連結されている場合、互いに「機能的に」連結されている。コード配列が機能的タンパク質に翻訳される場合、調節配列が上記コード配列に機能的に連結されていれば、上記調節配列の誘導は、コード配列内にフレームシフトを引き起こすことなく又は上記コード配列が所望のタンパク質又はペプチドに翻訳されるのを不可能にすることなく、上記コード配列の転写を生じさせる。
【0091】
「発現制御配列」又は「調節配列」という用語は、本発明によれば、プロモーター、エンハンサー及び遺伝子の発現を調節する他の制御エレメントを含む。本発明の特定実施形態では、発現制御配列を調節することができる。調節配列の正確な構造は種又は細胞型に応じて異なり得るが、一般には、TATAボックス、キャッピング配列、CAAT配列等のような、それぞれ転写及び翻訳の開始に関与する5'非転写配列及び5'非翻訳配列を含む。より詳細には、5'非転写調節配列は、機能的に連結された遺伝子の転写制御のためのプロモーター配列を含有するプロモーター領域を含む。調節配列はまた、エンハンサー配列又は上流活性化配列を含み得る。
【0092】
本発明によれば、核酸はさらに、上記核酸によってコードされるタンパク質又はペプチドの宿主細胞からの分泌を制御するペプチドをコードする別の核酸との組合せで存在し得る。本発明によれば、核酸はまた、コードされるタンパク質又はペプチドが宿主細胞の細胞膜に固定される又は上記細胞の特定小器官に区分されることを生じさせるペプチドをコードする別の核酸との組合せで存在し得る。同様に、レポーター遺伝子又は何らかの「タグ」である核酸との組合せが可能である。
【0093】
好ましい実施形態では、組換え核酸分子は、本発明によればベクターであり、プロモーターが適切であれば、ベクターは核酸、例えば本発明により同定される腫瘍関連抗原をコードする核酸の発現を制御する。「ベクター」という用語は、本明細書ではその最も一般的な意味で使用され、核酸が、例えば原核細胞及び/又は真核細胞に導入されて、適切な場合には、ゲノムに組み込まれることを可能にする、核酸のための何らかの中間運搬媒体(ビヒクル)を含む。この種のベクターは、好ましくは細胞内で複製及び/又は発現される。この中間運搬媒体は、例えば、電気穿孔法、微粒子銃、リポソーム投与、アグロバクテリアを用いた導入、DNA又はRNAウイルスを介した挿入における使用に適合され得る。ベクターは、プラスミド、ファージミド、バクテリオファージ又はウイルスゲノムを含む。
本発明により同定される腫瘍関連抗原をコードする核酸は、宿主細胞のトランスフェクションのために使用し得る。本明細書における核酸は、組換えDNA及びRNAの両方を意味する。組換えRNAは、DNA鋳型のインビトロ転写によって作製し得る。さらに、適用の前に配列の安定化、キャップ形成及びポリアデニル化によって修飾し得る。
【0094】
本発明によれば、「宿主細胞」という用語は、外来性核酸で形質転換又はトランスフェクトされ得る何らかの細胞に関する。「宿主細胞」という用語は、本発明によれば、原核細胞(例えば、大腸菌)又は真核細胞(例えば、樹状細胞、B細胞、CHO細胞、COS細胞、K562細胞、酵母細胞及び昆虫細胞)を含む。ヒト、マウス、ハムスター、ブタ、ヤギ、霊長動物からの細胞のような哺乳動物細胞が特に好ましい。細胞は様々な組織型に由来し、一次細胞及び細胞株を含み得る。特定例は、ケラチノサイト、末梢血白血球、骨髄の幹細胞及び胚性幹細胞を含む。さらなる実施形態では、宿主細胞は、抗原提示細胞、特に樹状細胞、単球又はマクロファージである。核酸は、単一コピー又は2若しくはそれ以上のコピーの形態で宿主細胞内に存在することができ、1つの実施形態では、宿主細胞において発現される。
【0095】
本発明によれば、「発現」という用語は、その最も一般的な意味で使用され、RNAの産生又はRNAとタンパク質の産生を含む。この用語はまた、核酸の部分的発現を含む。さらに、発現は一過性に又は安定に実施され得る。哺乳動物細胞における好ましい発現系は、G418に対する耐性を付与する(それ故安定にトランスフェクトされた細胞株を選択することを可能にする)遺伝子のような選択マーカー及びサイトメガロウイルス(CMV)のエンハンサー−プロモーター配列を含有する、pcDNA3.1及びpRc/CMV(Invitrogen,Carlsbad,CA)を含む。
【0096】
MHC分子が腫瘍関連抗原又はその一部を提示する本発明の場合、発現ベクターはまた、上記MHC分子をコードする核酸配列を含み得る。MHC分子をコードする核酸配列は、腫瘍関連抗原若しくはその一部をコードする核酸と同じ発現ベクター上に存在し得るか、又は2つの核酸が異なる発現ベクター上に存在してもよい。後者の場合、2つの発現ベクターを細胞に同時トランスフェクトし得る。宿主細胞が腫瘍関連抗原若しくはその一部又はMHC分子のどちらも発現しない場合、それらの両方をコードする核酸を、同じ発現ベクター上又は異なる発現ベクター上で細胞にトランスフェクトし得る。細胞が既にMHC分子を発現する場合は、腫瘍関連抗原又はその一部をコードする核酸配列だけを細胞にトランスフェクトすることができる。
【0097】
本発明はまた、核酸の検出及び/又はその量の測定のためのキットを含む。そのようなキットは、例えば、検出しようとする又はその量を測定しようとする核酸にハイブリダイズする一対の増幅プライマーを含む。プライマーは、好ましくは上記核酸の6〜50、特に10〜30、15〜30及び20〜30個の連続するヌクレオチドの配列を含み、プライマー二量体の形成を回避するため、オーバーラップしていない。プライマーの一方は核酸の一方の鎖にハイブリダイズし、他方のプライマーは、核酸の増幅を可能にする配置で相補的な鎖にハイブリダイズする。
【0098】
「アンチセンス分子」又は「アンチセンス核酸」は、核酸の発現を調節する、特に核酸の発現を低下させるために使用され得る。「アンチセンス分子」又は「アンチセンス核酸」という用語は、本発明によれば、オリゴリボヌクレオチド、オリゴデオキシリボヌクレオチド、修飾オリゴリボヌクレオチド又は修飾オリゴデオキシリボヌクレオチドであって、特定遺伝子を含むDNA又は上記遺伝子のmRNAに生理的条件下でハイブリダイズして、それにより上記遺伝子の転写及び/又は上記mRNAの翻訳を阻害するオリゴヌクレオチドを指す。本発明によれば、「アンチセンス分子」はまた、その天然プロモーターに対して逆方向に核酸又はその一部を含む構築物を包含する。核酸又はその一部のアンチセンス転写産物は、天然に生じるmRNAと二本鎖を形成することができ、これにより、mRNAの蓄積又は翻訳を妨げ得る。もう1つの可能性は、核酸を不活性化するためのリボザイムの使用である。
【0099】
本発明による好ましいアンチセンスオリゴヌクレオチドは、標的核酸の6〜50、特に10〜30、15〜30及び20〜30個の連続するヌクレオチドの配列を有し、好ましくは標的核酸又はその一部に完全に相補的である。
【0100】
好ましい実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、N末端又は翻訳開始部位、転写開始部位若しくはプロモーター部位のような5'側上流部位とハイブリダイズする。さらなる実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、3'側非翻訳領域又はmRNAスプライシング部位とハイブリダイズする。
【0101】
1つの実施形態では、本発明のオリゴヌクレオチドは、リボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド又はその組合せから成り、1つのヌクレオチドの5'末端ともう1つのヌクレオチドの3'末端がホスホジエステル結合によって互いに連結されている。これらのオリゴヌクレオチドは、従来の方法で合成され得るか又は組換えによって生産され得る。
【0102】
好ましい実施形態では、本発明のオリゴヌクレオチドは「修飾」オリゴヌクレオチドである。本明細書では、オリゴヌクレオチドは、例えばその安定性又は治療効果を高めるために、その標的に結合する能力を損なわずに多種多様な方法で修飾され得る。本発明によれば、「修飾オリゴヌクレオチド」という用語は、(i)そのヌクレオチドの少なくとも2個が合成ヌクレオシド間結合(すなわち、ホスホジエステル結合ではないヌクレオシド間結合)によって互いに連結されている、及び/又は(ii)通常は核酸内で認められない化学基がオリゴヌクレオチドに共有結合で連結されている、オリゴヌクレオチドを意味する。好ましい合成ヌクレオシド間結合は、ホスホロチオエート、アルキルホスホネート、ホスホロジチオエート、リン酸エステル、アルキルホスホノチオエート、ホスホルアミデート、カルバメート、カルボネート、リン酸トリエステル、アセトアミデート、カルボキシメチルエステル及びペプチドである。
【0103】
「修飾オリゴヌクレオチド」という用語はまた、共有結合で修飾された塩基及び/又は糖を有するオリゴヌクレオチドを包含する。「修飾オリゴヌクレオチド」は、例えば、3'位置のヒドロキシル基及び5'位置のリン酸基以外の低分子量有機基に共有結合で結合している糖残基を有するオリゴヌクレオチドを含む。修飾オリゴヌクレオチドは、例えば2'−O−アルキル化リボース残基又はリボースの代わりにアラビノースのような別の糖を含有し得る。
【0104】
オリゴヌクレオチドに関する上述されたすべての実施形態は、ポリヌクレオチドにも適用し得ることを理解されたい。
【0105】
本明細書で使用される「低分子干渉RNA」又は「siRNA」とは、標的遺伝子又は分解されるべきmRNAを同定するために使用される、好ましくは10ヌクレオチド長を超える、より好ましくは15ヌクレオチド長を超える、最も好ましくは18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29又は30ヌクレオチド長の単離RNA分子を意味する。19〜25ヌクレオチドの範囲がsiRNAについての最も好ましい大きさである。
【0106】
本発明によるsiRNAは、部分精製されたRNA、実質的に純粋なRNA、合成RNA、又は組換え生産されたRNA、並びに1又はそれ以上のヌクレオチドの付加、欠失、置換及び/又は改変により、天然に生じるRNAとは異なる変化したRNAを包含し得る。そのような改変は、siRNAの末端又はsiRNAの1若しくはそれ以上の内部ヌクレオチドなどへの、非ヌクレオチド物質の付加;siRNAをヌクレアーゼ消化に対して抵抗性にする修飾(例えば、2'置換リボヌクレオチドの使用、若しくは糖−リン酸骨格への修飾);又はデオキシリボヌクレオチドによるsiRNA内の1若しくはそれ以上のヌクレオチドの置換を含み得る。さらに、siRNAは、修飾オリゴヌクレオチドに関して前述したようにその安定性を高めるために、特に1又はそれ以上のホスホロチオエート結合を導入することによって、修飾され得る。
【0107】
siRNAの一方の鎖又は両方の鎖はまた、3'突出部を含み得る。本明細書で使用される、「3'突出部」は、RNA鎖の3'末端から伸長している少なくとも1つの非対合ヌクレオチドを指す。それ故1つの実施形態では、siRNAは、1〜約6ヌクレオチド(リボヌクレオチド又はデオキシヌクレオチドを含む)長、好ましくは1〜約5ヌクレオチド長、より好ましくは1〜約4ヌクレオチド長、特に好ましくは約2〜約4ヌクレオチド長の少なくとも1つの3'突出部を含む。siRNA分子の両方の鎖が3'突出部を含む実施形態では、突出部の長さは各々の鎖について同じか又は異なり得る。最も好ましい実施形態では、3'突出部はsiRNAの両方の鎖に存在し、2ヌクレオチド長である。例えば、本発明のsiRNAの各々の鎖は、ジデオキシチミジル酸(「TT」)又はジウリジル酸(「uu」)の3'突出部を含み得る。
【0108】
siRNAの安定性を高めるために、3'突出部を分解に対して安定化することもできる。1つの実施形態では、突出部は、アデノシン又はグアノシンヌクレオチドのようなプリンヌクレオチドを含むことによって安定化される。あるいは、修飾類似体によるピリミジンヌクレオチドの置換、例えば2'−デオキシチミジンによる3'突出部内のウリジンヌクレオチドの置換は耐容され、RNAi分解の効率に影響を及ぼさない。特に、2'−デオキシチミジン内に2'−ヒドロキシルを存在させないことにより、組織培養培地における3'突出部のヌクレアーゼ耐性を有意に増強する。
【0109】
siRNAのセンス鎖とアンチセンス鎖は、2つの相補的な一本鎖RNA分子を含み得るか、又は2つの相補的な部分が塩基対合して、一本鎖「ヘアピン」領域によって共有結合で連結されている単一分子を含み得る。すなわち、センス領域とアンチセンス領域はリンカー分子を介して共有結合で連結され得る。リンカー分子は、ポリヌクレオチド又は非ヌクレオチドリンカーであり得る。理論に拘束されることを望むものではないが、後者の型のsiRNA分子のヘアピン領域は「ダイサー」タンパク質(又はその等価物)によって細胞内で切断され、2つの個別の塩基対合RNA分子のsiRNAを形成すると考えられる。
【0110】
本明細書で使用される、「標的mRNA」は、下方調節のための標的であるRNA分子を指す。
【0111】
pol IIIプロモーターからのRNAの発現は最初の転写ヌクレオチドがプリンであるとき唯一効率的であると考えられているので、標的する部位を変化させずにsiRNAをpol III発現ベクターから発現させることができる。
【0112】
本発明によるsiRNAは、標的mRNA配列(「標的配列」)のいずれかにおいて任意の一続きの約19〜25個の連続ヌクレオチドを標的することができる。siRNAについての標的配列を選択するための手法は、例えば、2002年10月11日に改訂された、Tuschl T.et al.,「The siRNA User Guide」に記載されており、その開示全体が参照により本明細書に組み込まれる。「The siRNA User Guide」は、ワールドワイドウエブ上のDr.Thomas Tuschl,Laboratory of RNA Molecular Biology,Rockefeller University,New York,USAによって維持されているウエブサイトで入手可能であり、the Rockefeller Universityのウエブサイトにアクセスし、「siRNA」のキーワードで検索することによって見出すことができる。故に、本発明のsiRNAのセンス鎖は、標的mRNA内の任意の連続する一続きの約19〜約25ヌクレオチドと実質的に同一のヌクレオチド配列を含む。
【0113】
一般に、標的mRNA上の標的配列は、好ましくは開始コドンから50〜100ヌクレオチド下流(すなわち、3'側方向)の、標的mRNAに対応する所与のcDNA配列から選択できる。しかしながら、標的配列は、5'又は3'非翻訳領域、又は開始コドンに近接する領域に位置し得る。
【0114】
siRNAは、当業者の公知の多くの手法を用いて入手できる。例えば、siRNAは、化学合成することができるか又は、その開示全体が参照により本明細書に組み込まれる、Tuschl et al.の米国公開特許出願第2002/0086356号に記載されているショウジョウバエ(Drosophila)インビトロ系のような当技術分野で公知の方法を用いて組換え生産することができる。
【0115】
好ましくは、siRNAは、適切に保護されたリボヌクレオシドホスホルアミダイト及び従来のDNA/RNA合成装置を用いて化学合成される。siRNAは、2個の別々の相補的なRNA分子として、又は2つの相補的な領域を有する1個のRNA分子として合成され得る。
【0116】
あるいは、siRNAはまた、何らかの適切なプロモーターを使用して組換え環状又は直鎖状DNAプラスミドから発現させることができる。そのような実施形態は、本明細書においてsiRNAの投与又はsiRNAの医薬組成物への組込みに言及するとき、本発明により包含される。
【0117】
プラスミドから本発明のsiRNAを発現するための適切なプロモーターは、例えばU6又はH1 RNA pol IIIプロモーター配列及びサイトメガロウイルスプロモーターを含む。
【0118】
他の適切なプロモーターの選択は当業者の技術範囲内である。本発明の組換えプラスミドはまた、特定組織又は特定細胞内環境におけるsiRNAの発現のための誘導的又は調節可能なプロモーターを含み得る。
【0119】
組換えプラスミドから発現されるsiRNAは、培養細胞発現系から標準的手法によって単離され得るか、又は細胞内で発現され得る。インビボでsiRNAを細胞に送達するための組換えプラスミドの使用について、以下詳細説明する。siRNAは、2個の別々の相補的なRNA分子として、又は2つの相補的な領域を有する1個のRNA分子として組換えプラスミドから発現され得る。
【0120】
siRNAを発現するのに適したプラスミドの選択、siRNAを発現するための核酸配列をプラスミドに挿入するための方法、及び組換えプラスミドを対象細胞に送達する方法は、当業者の技術範囲内である。
【0121】
siRNAはまた、インビボで組換えウイルスベクターから細胞内で発現され得る。組換えウイルスベクターは、siRNAをコードする配列及びsiRNA配列を発現するための何らかの適切なプロモーターを含む。組換えウイルスベクターはまた、特定組織又は特定細胞内環境におけるsiRNAの発現のための誘導的又は調節可能なプロモーターを含み得る。siRNAは、2個の別々の相補的なRNA分子として又は2つの相補的な領域を有する1個のRNA分子として組換えウイルスベクターから発現され得る。
【0122】
「ペプチド」という用語は、オリゴペプチド及びポリペプチドを含み、ペプチド結合によって共有結合で連結された2又はそれ以上、好ましくは3又はそれ以上、好ましくは4又はそれ以上、好ましくは6又はそれ以上、好ましくは8又はそれ以上、好ましくは10又はそれ以上、好ましくは13又はそれ以上、好ましくは16又はそれ以上、好ましくは21又はそれ以上、及び好ましくは8、10、20、30、40又は50まで、特に100までのアミノ酸を含む物質を指す。「タンパク質」という用語は、大きなペプチド、好ましくは100を超えるアミノ酸残基を有するペプチドを指すが、一般に「ペプチド」と「タンパク質」という用語は同義語であり、本明細書において同義的に使用される。
【0123】
好ましくは、本発明により記述されるタンパク質及びペプチドは単離されている。「単離タンパク質」又は「単離ペプチド」という用語は、タンパク質又はペプチドがその自然環境から分離されていることを意味する。単離タンパク質又はペプチドは、基本的に精製された状態であり得る。「基本的に精製された」という用語は、タンパク質又はペプチドが、自然界で又はインビボで結合している他の物質を基本的に含まないことを意味する。
【0124】
そのようなタンパク質及びペプチドは、例えば、抗体を作製するとき及び免疫学的アッセイ若しくは診断アッセイにおいて又は治療薬として使用し得る。本発明により記述されるタンパク質及びペプチドは、組織又は細胞ホモジネートのような生物学的試料から単離され得、また、多種多様な原核生物又は真核生物発現系において組換え発現され得る。
【0125】
本発明に関して、タンパク質又はペプチドの「誘導体」又はアミノ酸配列の「誘導体」は、アミノ酸挿入変異体、アミノ酸欠失変異体及び/又はアミノ酸置換変異体を含む。
【0126】
アミノ酸挿入変異体は、アミノ末端及び/又はカルボキシ末端融合、並びに特定アミノ酸配列内の単一アミノ酸又は2若しくはそれ以上のアミノ酸の挿入を含む。挿入を有するアミノ酸配列変異体の場合は、1又はそれ以上のアミノ酸残基がアミノ酸配列内の特定部位に挿入されるが、生じる産物の適切なスクリーニングを伴うランダム挿入も可能である。
【0127】
アミノ酸欠失変異体は、配列からの1又はそれ以上のアミノ酸の除去によって特徴づけられる。
【0128】
アミノ酸置換変異体は、配列内の少なくとも1個の残基が除去され、別の残基がその位置に挿入されることによって特徴づけられる。相同なタンパク質又はペプチドの間で保存されていないアミノ酸配列内の位置に修飾があること及び/又はアミノ酸を類似の性質を有する他のアミノ酸で置換することが好ましい。
【0129】
「保存的置換」は、例えば、類似する極性、電荷、溶解度、疎水性、親水性、及び/又は関与する残基の両親媒性に基づいて実施し得る。例えば:(a)非極性(疎水性)アミノ酸は、アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン及びメチオニンを含む;(b)極性中性アミノ酸は、グリシン、セリン、トレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン及びグルタミンを含む;(c)正に荷電した(塩基性)アミノ酸は、アルギニン、リシン及びヒスチジンを含む;並びに(d)負に荷電した(酸性)アミノ酸は、アスパラギン酸及びグルタミン酸を含む。置換は、典型的には(a)〜(d)の群の中で実施し得る。加えて、グリシンとプロリンは、α−ヘリックスを破壊するそれらの能力に基づき互いに置換され得る。一部の好ましい置換は、以下の群の中で実施し得る:(i)SとT;(ii)PとG;及び(iii)A、V、L及びI。公知の遺伝暗号、並びに組換え及び合成DNA手法を考慮して、当業者は、保存的アミノ酸変異体をコードするDNAを容易に構築することができる。
【0130】
好ましくは、本明細書で述べる特定アミノ酸配列と上記特定アミノ酸配列の誘導体であるアミノ酸配列との間の類似性の程度、好ましくは同一性の程度は、少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、さらに一層好ましくは少なくとも90%又は最も好ましくは少なくとも95%、96%、97%、98%又は99%である。類似性又は同一性の程度は、好ましくは少なくとも約20、少なくとも約40、少なくとも約60、少なくとも約80、少なくとも約100、少なくとも約120、少なくとも約140、少なくとも約160、少なくとも約200又は250アミノ酸の領域に関して与えられる。好ましい実施形態では、類似性又は同一性の程度は、参照アミノ酸配列の全長に対して与えられる。
【0131】
1つの実施形態では、特定タンパク質又はペプチドの誘導体である又は特定タンパク質又はペプチドの一部であるタンパク質又はペプチドは、特定タンパク質又はペプチドの関連する機能及び/又は活性を有する、すなわち特定タンパク質又はペプチドと同じ活性又は免疫学的性質を有し得る。
前述したアミノ酸変異体は、例えば固相合成(Merrifield,1964)及び類似の方法又は組換えDNA操作のような公知のペプチド合成手法を用いて容易に作製し得る。置換、挿入又は欠失を有するタンパク質及びペプチドを作製するためのDNA配列の操作は、例えばSambrook et al.(1989)の中で詳細に説明されている。
【0132】
本発明によれば、タンパク質及びペプチドの「誘導体」はまた、炭水化物、脂質及び/又はタンパク質若しくはペプチドのような、上記タンパク質又はペプチドに関連する何らかの分子の単一又は複数の置換物、欠失物及び/又は付加物を含む。「誘導体」という用語はまた、上記タンパク質及びペプチドのすべての機能性の化学的等価物に及ぶ。
【0133】
本発明によれば、腫瘍関連抗原の一部又はフラグメントは、好ましくはそれが由来するタンパク質又はペプチドの機能的性質を有する。そのような機能的性質は、抗体との相互作用、他のペプチド又はタンパク質との相互作用、核酸の選択的結合及び酵素活性を含む。特定の性質は、MHC分子と複合体を形成し、適切な場合、好ましくは細胞傷害性細胞又はTヘルパー細胞を刺激することによって、免疫応答を生じる能力である。腫瘍関連抗原の一部又はフラグメントは、好ましくは腫瘍関連抗原の少なくとも6、特に少なくとも8、少なくとも10、少なくとも12、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも30又は少なくとも50の連続するアミノ酸の配列を含む。腫瘍関連抗原の一部又はフラグメントは、好ましくは腫瘍関連抗原の8まで、特に10まで、12まで、15まで、20まで、30まで又は55までの連続するアミノ酸の配列を含む。腫瘍関連抗原の一部又はフラグメントは、好ましくは、抗原の非膜貫通部分、特に細胞外部分に対応する又はそれから構成される腫瘍関連抗原の一部である。
【0134】
腫瘍関連抗原の好ましい部分又はフラグメントは、インビボでの細胞傷害性Tリンパ球の刺激に特に適するが、またエクスビボでの治療適合移入のために増殖され、刺激されたTリンパ球の生産にも適する。
【0135】
腫瘍関連抗原をコードする核酸の一部又はフラグメントは、本発明によれば、少なくとも腫瘍関連抗原をコードする及び/又は上記で定義された、上記腫瘍関連抗原の一部又はフラグメントをコードする、核酸の部分に関する。腫瘍関連抗原をコードする核酸の一部又はフラグメントは、好ましくはオープンリーディングフレームに対応する核酸の部分である。
【0136】
本発明によれば、特定実施形態は、腫瘍関連抗原に由来する「ドミナントネガティブ」タンパク質又はペプチドを提供することを含むべきである。ドミナントネガティブタンパク質又はペプチドは、細胞機構と相互作用することによって、活性タンパク質又はペプチドを細胞機構とのその相互作用から排除する又は活性タンパク質又はペプチドと競合し、それによって上記活性タンパク質の作用を低下させる、不活性タンパク質又はペプチド変異体である。
【0137】
標的タンパク質に特異的に結合する特異的抗体を含む抗血清は、様々な標準的工程によって調製できる;例えば、「Monoclonal Antibodies:A Practical Approach」by Philip Shepherd,Christopher Dean ISBN 0−19−963722−9;「Antibodies:A Laboratory Manual」by Ed Harlow,David Lane,ISBN:0879693142及び「Using Antibodies:A Laboratory Manual:Portable Protocol NO」by Edward Harlow,David Lane,Ed Harlow ISBN 0879695447参照。それにより、複合体膜タンパク質をそれらの天然形態で認識するアフィン(affine)及び特異的抗体を作製することも可能である(Azorsa et al.,J.Immunol.Methods 229:35−48,1999;Anderson et al.,J.Immunol.143:1899−1904,1989;Gardsvoll,J.Immunol.Methods 234:107−116,2000)。これは、治療的に使用される予定の抗体の作製のため及び多くの診断適用のために特に適切である。これに関して、生理的に折りたたまれた形態で標的分子を発現する総タンパク質、細胞外部分配列並びに細胞で免疫することが可能である。
【0138】
モノクローナル抗体は、伝統的にハイブリドーマ技術を用いて作製される(技術的詳細については:「Monoclonal Antibodies:A Practical Approach」by Philip Shepherd,Christopher Dean ISBN 0−19−963722−9;「Antibodies:A Laboratory Manual」by Ed Harlow,David Lane ISBN:0879693142;「Using Antibodies:A Laboratory Manual:Portable Protocol NO」by Edward Harlow,David Lane,Ed Harlow ISBN:0879695447参照)。
【0139】
抗体分子の小さな部分であるパラトープだけが、抗体がそのエピトープに結合することに関与することは公知である(Clark,W.R.(1986),The Experimental Foundations of Modern Immunology,Wiley & Sons,Inc.,New York;Roitt,I.(1991),Essential Immunology,7th Edition,Blackwell Scientific Publications,Oxford参照)。pFc'及びFc領域は、例えば、補体カスケードのエフェクターであるが、抗原結合には関与しない。F(ab')フラグメントと称される、pFc'領域が酵素的に除去された又はpFc'領域なしで生成された抗体は、完全抗体の両方の抗原結合部位を担持する。同様に、Fabフラグメントと称される、Fc領域が酵素的に除去された又は上記Fc領域なしで生成された抗体は、無傷抗体分子の一方の抗原結合部位を担持する。さらに、Fabフラグメントは、共有結合で連結された抗体の軽鎖及びFdと称される、上記抗体の重鎖の一部から成る。Fdフラグメントは抗体特異性の主要決定基であり(1つのFdフラグメントは、抗体の特異性を変化させずに10までの異なる軽鎖と結合できる)、Fdフラグメントは、単離されたとき、エピトープに結合する能力を保持する。
【0140】
抗体の抗原結合部分内に位置するのは、抗原エピトープと直接相互作用する相補性決定領域(CDR)及びパラトープの三次構造を維持するフレームワーク領域(FR)である。IgG免疫グロブリンの重鎖と軽鎖のFdフラグメントの両方が、各々3つの相補性決定領域(CDR1〜CDR3)によって分けられた4つのフレームワーク領域(FR1〜FR4)を含む。CDR、特にCDR3領域、さらに重鎖のCDR3領域は、かなりの程度まで抗体特異性に関与している。
【0141】
哺乳動物抗体の非CDR領域は、元の抗体のエピトープに対する特異性を保持しながら、同じか又は異なる特異性を有する抗体の類似領域によって置換され得ることが公知である。これにより、機能的抗体を生産するために、非ヒトCDRがヒトFR及び/又はFc/pFc'領域に共有結合で連結されている「ヒト化」抗体の開発を可能にした。
【0142】
もう1つの例として、国際公開公報第WO92/04381号には、マウスFR領域の少なくとも一部がヒト起源のFR領域で置換されたヒト化マウスRSV抗体の生産とその使用について記載されている。抗原結合能力を有する無傷抗体のフラグメントを含む、この種の抗体は、しばしば「キメラ」抗体と称される。
【0143】
本発明によれば、「抗体」という用語はまた、抗体のF(ab')、Fab、Fv及びFdフラグメント、Fc及び/又はFR及び/又はCDR1及び/又はCDR2及び/又は軽鎖CDR3領域が相同なヒト又は非ヒト配列で置換されているキメラ抗体、FR及び/又はCDR1及び/又はCDR2及び/又は軽鎖CDR3領域が相同なヒト又は非ヒト配列で置換されているキメラF(ab')フラグメント抗体、FR及び/又はCDR1及び/又はCDR2及び/又は軽鎖CDR3領域が相同なヒト又は非ヒト配列で置換されているキメラFabフラグメント抗体、FR及び/又はCDR1及び/又はCDR2領域が相同なヒト又は非ヒト配列で置換されているキメラFdフラグメント抗体を包含する。「抗体」という用語はまた、「一本鎖」抗体を包含する。
【0144】
本発明はまた、腫瘍関連抗原に特異的に結合するタンパク質及びペプチドを含む。この種の結合物質は、例えば、単に溶液中で固定化形態で又はファージディスプレイライブラリーとして作製され得る縮重ペプチドライブラリーによって提供され得る。同様に、1又はそれ以上のアミノ酸を有するペプチドのコンビナトリアルライブラリーを作製することが可能である。ペプトイド及び非ペプチド合成残基のライブラリーも作製し得る。
【0145】
抗体はまた、腫瘍関連抗原を発現する細胞及び組織を提示するための特異的診断物質に連結し得る。それらはまた、治療上有用な物質にも連結し得る。
【0146】
診断物質又は診断薬は、(i)検出可能なシグナルを提供する;(ii)第1若しくは第2の標識によって提供される検出可能なシグナルを修飾するように第2の標識と相互作用する、例えばFRET(蛍光共鳴エネルギー転移);(iii)電荷、疎水性、形状若しくは他の物理的パラメータによって運動性、例えば電気泳動移動度に影響を及ぼす;又は(iv)捕捉部分、例えば親和性、抗体/抗原若しくはイオン錯体形成を提供する、ように機能する何らかの標識を含む。標識として適切であるのは、蛍光標識、発光標識、発色団標識、放射性同位体標識、同位体標識、好ましくは安定な同位体標識、同重体標識、酵素標識、粒子標識、特に金属粒子標識、磁性粒子標識、ポリマー粒子標識、ビオチンのような有機低分子、受容体のリガンド又は細胞接着タンパク質若しくはレクチンのような結合分子、結合物質の使用によって検出できる核酸及び/又はアミノ酸残基を含む標識配列等のような構造体である。診断物質は、非限定的に、硫酸バリウム、イオセタム酸、イオパノ酸、イポダートカルシウム、ナトリウムジアトリゾエート、メグルミンジアトリゾエート、メトリザミド、チロパノ酸ナトリウム、及びフッ素−18及び炭素−11のようなポジトロン放出核種、ヨウ素−123、テクネチウム−99m、ヨウ素−131及びインジウム−111のようなγ放射体、フッ素及びガドリニウムのような核磁気共鳴のための核種を含む放射性診断物質を含む。
【0147】
本発明によれば、「治療上有用な物質」、「治療物質」又は「治療薬」という用語は、治療効果を及ぼし得る何らかの分子を意味する。本発明によれば、治療上有用な物質は、好ましくは1又はそれ以上の腫瘍関連抗原を発現する細胞へと選択的に誘導され、抗癌剤、放射性ヨウ素標識化合物、毒素、細胞増殖抑制性又は細胞溶解性薬剤等を含む。抗癌剤は、例えば、アミノグルテチミド、アザチオプリン、硫酸ブレオマイシン、ブスルファン、カルムスチン、クロラムブシル、シスプラチン、シクロホスファミド、シクロスポリン、シタラビディン、ダカルバジン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン(daunorubin)、ドキソルビシン、タキソール、エトポシド、フルオロウラシル、インターフェロンα、ロムスチン、メルカプトプリン、メトトレキサート、ミトタン、塩酸プロカルバジン、チオグアニン、硫酸ビンブラスチン及び硫酸ビンクリスチンを含む。他の抗癌剤は、例えば、Goodman and Gilman,「The Pharmacological Basis of Therapeutics」,8th Edition,1990,McGraw−Hill,Inc.、特にChapter 52(Antineoplastic Agents(Paul Calabresi and Bruce A.Chabner)に記載されている。毒素は、アメリカヤマゴボウ(pokeweed)抗ウイルスタンパク質のようなタンパク質、コレラ毒素、百日咳毒素、リシン、ゲロニン、アブリン、ジフテリア外毒素又はシュードモナス(Pseudomonas)外毒素であり得る。毒素残基はまた、コバルト−60のような高エネルギー放出放射性核種であり得る。
【0148】
「主要組織適合遺伝子複合体」又は「MHC」という用語は、すべての脊椎動物に存在する遺伝子の複合体に関する。MHCタンパク質又は分子は、ペプチドに結合して、T細胞受容体(TCR)による認識のためにそれらを提示することにより、正常免疫反応におけるリンパ球と抗原提示細胞の間のシグナル伝達に関与する。MHC分子は、細胞内プロセシング画分内でペプチドに結合し、これらのペプチドをT細胞による認識のために抗原提示細胞の表面に提示する。HLAとも称されるヒトMHC領域は、第6番染色体上に位置し、クラスI及びクラスII領域を含む。本発明のすべての態様の1つの好ましい実施形態では、MHC分子はHLA分子である。
【0149】
本明細書で使用される「低減する」又は「阻害する」は、参照試料(例えば、siRNAで処理されていない試料)と比較してレベル、例えばタンパク質又はmRNAのレベルの好ましくは20%又はそれ以上、より好ましくは50%又はそれ以上、最も好ましくは75%又はそれ以上の全体的低下を生じさせる能力を意味する。RNA又はタンパク質発現のこの低減又は阻害は、標的mRNAの切断又は分解を介して起こり得る。タンパク質発現又は核酸発現に関するアッセイは当技術分野において公知であり、例えば、タンパク質発現についてはELISA、ウエスタンブロット分析、RNAについてはノーザンブロット法又はRNアーゼプロテクションアッセイを含む。
【0150】
「患者」という用語は、本発明によれば、ヒト、非ヒト霊長動物又は別の動物、特にウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコのような哺乳動物又はマウス及びラットのようなげっ歯動物を意味する。特に好ましい実施形態では、患者はヒトである。
【0151】
本発明によれば、「増大した」又は「増大した量」という用語は、好ましくは少なくとも10%、特に少なくとも20%、少なくとも50%又は少なくとも100%の増加を指す。物質の量はまた、試験試料では検出可能であるが参照試料中には存在しない又は検出不能である場合も、参照試料と比較して生物学的試料のような試験試料において増大している。
本発明によれば、「疾患」という用語は、腫瘍関連核酸及び/又は腫瘍関連抗原が発現される又は異常発現される何らかの病的状態を指す。「異常発現」は、本発明によれば、健常個体における状態と比較して、発現が変化している、好ましくは増大していることを意味する。発現の増大は、少なくとも10%、特に少なくとも20%、少なくとも50%又は少なくとも100%の増加を指す。1つの実施形態では、発現は疾患個体の組織においてのみ認められ、健常個体における発現は抑制されているか又は胎盤を除いて健常個体では抑制されている。そのような疾患の一例は癌であり、本発明による「癌」という用語は、白血病、精上皮腫、黒色腫、奇形腫、リンパ腫、神経芽細胞腫、神経膠腫、直腸癌、子宮内膜癌、腎癌、副腎癌、甲状腺癌、血液癌、皮膚癌、脳の癌、子宮頸癌、腸癌(intestinal cancer)、肝癌、結腸癌、胃癌、腸癌(intestine cancer)、頭頸部癌、消化器癌、リンパ節癌、食道癌、結腸直腸癌、膵癌、耳鼻咽喉(ENT)癌、乳癌、前立腺癌、子宮の癌、卵巣癌及び肺癌並びにそれらの転移を含む。その例は、肺癌腫、乳癌腫、前立腺癌腫、結腸癌腫、腎細胞癌腫、子宮頸癌腫、又は前述した癌の種類又は腫瘍の転移である。本発明による癌という用語はまた、癌の転移を包含する。
【0152】
「腫瘍」とは、急速で制御されない細胞増殖によって成長し、新たな増殖を開始させた刺激が停止した後も成長し続ける細胞又は組織の異常な群を意味する。腫瘍は、構造機構及び正常組織との機能的協調の部分的又は完全な欠如を示し、通常、良性又は悪性であり得る明確な組織塊を形成する。
【0153】
「転移」とは、その元の部位から身体の別の部分への癌細胞の広がりを意味する。転移の形成は非常に複雑な過程であり、原発腫瘍からの悪性細胞の分離、細胞外マトリックスの侵襲、体腔及び脈管に入るための内皮基底膜の貫入、及び次に、血液によって輸送された後、標的器官の浸潤に依存する。最後に、標的部位における新たな腫瘍の成長は血管新生に依存する。腫瘍転移は、しばしば原発腫瘍が除去された後でも起こり、これは、腫瘍細胞又は成分が残存し、転移の潜在能を発現し得るからである。1つの実施形態では、本発明による「転移」という用語は、原発腫瘍及び局所リンパ節系から離れた転移に関連する「遠隔転移」に関する。
【0154】
本発明によれば、生物学的試料は、体液を含む組織試料及び/又は細胞試料であり得、パンチ生検を含む組織生検、及び血液、気管支吸引液、痰、尿、糞便又は他の体液を採取することのような従来の方法で入手し得る。本発明によれば、「生物学的試料」という用語はまた、血液試料の分画を包含する。好ましくは、本発明による「生物学的試料」という用語は胎盤組織に由来する試料を含まない。
【0155】
本発明によれば、「免疫反応性細胞」という用語は、適切な刺激によって免疫細胞(B細胞、Tヘルパー細胞又は細胞傷害性T細胞など)へと成熟することができる細胞を意味する。免疫反応性細胞は、CD34造血幹細胞、未熟及び成熟T細胞並びに未熟及び成熟B細胞を含む。腫瘍関連抗原を認識する細胞溶解性又はTヘルパー細胞の産生を所望する場合は、免疫反応性細胞を、細胞溶解性T細胞及びTヘルパー細胞の産生、分化及び/又は選択を促進する条件下で、腫瘍関連抗原を発現する細胞と接触させる。T細胞前駆体の細胞溶解性T細胞への分化は、抗原に暴露されたとき、免疫系のクローン選択に類似する。
【0156】
「T細胞」及び「Tリンパ球」という用語は、本明細書では同義的に使用され、Tヘルパー細胞及び細胞溶解性T細胞を含む細胞傷害性T細胞を包含する。
【0157】
一部の治療方法は、1又はそれ以上の腫瘍関連抗原を提示する、癌細胞のような抗原提示細胞の溶解を生じさせる、患者の免疫系の反応に基づく。これに関連して、例えば腫瘍関連抗原とMHC分子との複合体に特異的な自己細胞傷害性Tリンパ球を、細胞異常を有する患者に投与する。インビトロでのそのような細胞傷害性Tリンパ球の産生は公知である。T細胞を分化させる方法の一例は、国際公開公報第WO−A−9633265号に認められる。一般に、血液細胞のような細胞を含む試料を患者から採取し、その細胞を、上記複合体を提示し、細胞傷害性Tリンパ球(例えば、樹状細胞)の増殖を生じさせることができる細胞と接触させる。標的細胞は、COS細胞のようなトランスフェクトされた細胞であり得る。これらのトランスフェクト細胞は、所望の複合体をそれらの表面に提示し、細胞傷害性Tリンパ球と接触させたとき、後者の増殖を刺激する。次に、クローン増殖した自己細胞傷害性Tリンパ球を患者に投与する。
【0158】
抗原特異的細胞傷害性Tリンパ球を選択するもう1つの方法では、細胞傷害性Tリンパ球の特異的クローンを得るためにMHCクラスI分子/ペプチド複合体の蛍光性四量体を使用する(Altman et al.,Science 274:94−96,1996;Dunbar et al.,Curr.Biol.8:413−416,1998)。
本発明はまた、適合移入と称される治療方法を含み(Greenberg,J.Immunol.136(5):1917,1986;Riddel et al.,Science 257:238,1992;Lynch et al.,Eur.J.Immunol.21:1403−1410,1991;Kast et al.,Cell 59:603−614,1989)、この方法では、所望の複合体を提示する細胞(例えば、樹状細胞)を治療される患者の細胞傷害性Tリンパ球と組み合わせて、特異的細胞傷害性Tリンパ球の増殖を生じさせる。増殖した細胞傷害性Tリンパ球を、次に、特異的複合体を提示する特定異常細胞によって特徴づけられる細胞異常を有する患者に投与する。細胞傷害性Tリンパ球は、その後異常細胞を溶解し、それによって所望の治療効果を達成する。
【0159】
さらに、所望の複合体を提示する細胞(例えば、樹状細胞)を、高い親和性で特異的細胞傷害性Tリンパ球の増殖を生じさせ得る健常個体又は別の種(例えば、マウス)の細胞傷害性Tリンパ球と組み合わせ得る。これらの増殖した特異的Tリンパ球の高親和性T細胞受容体をクローニングし、場合により種々の程度にヒト化して、このようにして得られたT細胞受容体を、次に、例えばレトロウイルスベクターを使用して、患者のT細胞に遺伝子導入することにより形質導入し得る。その後、これらの遺伝的に改変したTリンパ球を使用して適合移入を実施し得る(Stanislawski et al.,Nat Immunol.2:962−70,2001;Kessels et al.,Nat Immunol.2:957−61,2001)。
【0160】
適合導入は、本発明により適用できる唯一の治療形態ではない。細胞傷害性Tリンパ球はまた、それ自体公知の方法でインビボにて作製し得る。1つの方法は、複合体を発現する非増殖性細胞を使用する。本明細書で使用する細胞は、照射された腫瘍細胞又は複合体の提示のために必要な一方若しくは両方の遺伝子(すなわち、抗原性ペプチドと提示MHC分子)でトランスフェクトされた細胞のような、通常は複合体を発現する細胞である。もう1つの好ましい形態は、組換えRNAの形態での腫瘍関連抗原の導入であり、これは、例えばリポソーム移入又は電気穿孔法によって細胞に導入し得る。生じる細胞は対象複合体を提示し、自己細胞傷害性Tリンパ球によって認識されて、その後増殖する。
【0161】
抗原提示細胞への組込みをインビボで可能にするために、腫瘍関連抗原又はそのフラグメントをアジュバントと組み合わせることによって同様の作用を達成することができる。腫瘍関連抗原又はそのフラグメントは、タンパク質として、DNA(例えば、ベクター内の)として又はRNAとして示される。腫瘍関連抗原は、プロセシングされてMHC分子に対するペプチドパートナーを産生するが、一方そのフラグメントは、さらなるプロセシングを必要とせずに提示され得る。後者は特に、これらがMHC分子に結合できる場合に該当する。完全な抗原がインビボで樹状細胞によってプロセシングされる投与形態が好ましく、なぜならこれはまた、有効な免疫応答のために必要とされるTヘルパー細胞応答も生じさせ得るからである(Ossendorp et al.,Immunol Lett.74:75−9,2000;Ossendorp et al.,J.Exp.Med.187:693−702,1998)。一般に、例えば皮内注射によって、有効量の腫瘍関連抗原を患者に投与することが可能である。しかし、注射はまた、リンパ節内にも実施し得る(Maloy et al.,Proc Natl Acad Sci USA 98:3299−303,2001)。
【0162】
本発明において記述する医薬組成物及び治療方法はまた、本明細書で述べる疾患を治療的に処置する又は予防するための免疫又はワクチン接種のためにも使用し得る。本発明によれば、「免疫」又は「ワクチン接種」という用語は、好ましくは抗原に対する免疫応答の増大又は活性化に関する。腫瘍関連抗原又はそれをコードする核酸を使用することによる癌への免疫効果を試験するために動物モデルを使用することが可能である。例えば、ヒト癌細胞をマウスに導入して腫瘍を生じさせ、腫瘍関連抗原をコードする1又はそれ以上の核酸を投与し得る。癌細胞への効果(例えば、腫瘍径の縮小)を、核酸による免疫の有効性についての指標として測定し得る。
【0163】
免疫又はワクチン接種のための組成物の一部として、好ましくは1又はそれ以上の腫瘍関連抗原又はその刺激性フラグメントを、免疫応答を誘導するため又は免疫応答を増大させるために1又はそれ以上のアジュバントと共に投与する。アジュバントは、抗原に組み込まれる又は抗原と共に投与される、免疫応答を増強する物質である。アジュバントは、抗原貯蔵所(antigen reservoir)を提供し(細胞外に又はマクロファージ中に)、マクロファージを活性化する及び/又は特定リンパ球を刺激することによって免疫応答を増強し得る。アジュバントは公知であり、非限定的に、モノホスホリル脂質A(MPL,SmithKline Beecham)、QS21(SmithKline Beecham)、DQS21(SmithKline Beecham;国際公開公報第WO96/33739号)、QS7、QS17、QS18及びQS−L1のようなサポニン(So et al.,Mol.Cells 7:178−186,1997)、不完全フロイントアジュバント、完全フロイントアジュバント、ビタミンE、モンタニド、ミョウバン、
CpGオリゴヌクレオチド(Kreig et al.,Nature 374:546−9,1995参照)並びにスクアラン及び/又はトコフェロールのような生分解性油から調製される様々な油中水型エマルションを含む。好ましくは、ペプチドをDQS21/MPLとの混合物中で投与する。DQS21対MPLの比率は、典型的には約1:10〜10:1、好ましくは約1:5〜5:1、特に約1:1である。ヒトへの投与のためには、ワクチン製剤は、典型的には約1μg〜約100μgの範囲内のDQS21及びMPLを含有する。
【0164】
患者の免疫応答を刺激する他の物質も投与し得る。例えば、リンパ球に対するそれらの調節特性の故に、サイトカインをワクチン接種において使用することが可能である。そのようなサイトカインは、例えば、ワクチンの防御作用を高めることが示されたインターロイキン12(IL−12)(Science 268:1432−1434,1995参照)、GM−CSF及びIL−18を含む。
【0165】
免疫応答を増強し、それ故ワクチン接種において使用し得る多くの化合物が存在する。上記化合物は、B7−1及びB7−2(それぞれCD80及びCD86)のようなタンパク質又は核酸の形態で提供される共刺激性分子を含む。
【0166】
本発明はまた、核酸、タンパク質又はペプチドの投与を提供する。タンパク質及びペプチドは、それ自体公知の方法で投与され得る。1つの実施形態では、核酸はエクスビボ法によって、すなわち患者から細胞を取り出し、腫瘍関連抗原を組み込むために上記細胞を遺伝的に修飾して、改変された細胞を患者に再導入することによって投与される。これは一般に、遺伝子の機能的コピーをインビトロで患者の細胞に導入すること及び遺伝的に改変された細胞を患者に再導入することを含む。遺伝子の機能的コピーは、遺伝的に改変された細胞において遺伝子が発現されることを可能にする調節エレメントの機能的制御下にある。トランスフェクション及び形質導入法は当業者に公知である。本発明はまた、ウイルス及び標的制御リポソームのようなベクターを使用することによってインビボで核酸を投与することを提供する。本発明において、核酸の医薬組成物への投与又は組込みに言及される場合、これは核酸がそのようなベクター内に存在する実施形態を含む。
【0167】
好ましい実施形態では、腫瘍関連抗原をコードする核酸を投与するためのウイルス又はウイルスベクターは、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス、ワクシニアウイルス及び弱毒化ポックスウイルスを含むポックスウイルス、セムリキ森林ウイルス、レトロウイルス、シンドビスウイルス及びTyウイルス様粒子から成る群より選択される。アデノウイルス及びレトロウイルスが特に好ましい。レトロウイルスは、典型的には複製欠損型である(すなわち、感染性粒子を生成することができない)。
【0168】
インビトロ又はインビボで核酸を細胞に導入する方法は、核酸のリン酸カルシウム沈殿物のトランスフェクション、DEAEと結合した核酸のトランスフェクション、対象核酸を担持する上記ウイルスによるトランスフェクション又は感染、リポソームを介したトランスフェクション等を含む。特定実施形態では、核酸に特定細胞を指向させることが好ましい。そのような実施形態では、核酸を細胞に投与するために使用される担体(例えば、レトロウイルス又はリポソーム)は、結合標的制御分子を有し得る。例えば、標的細胞上の表面膜タンパク質に特異的な抗体又は標的細胞上の受容体に対するリガンドのような分子を、核酸担体に組み込み得る又は結合し得る。好ましい抗体は、腫瘍関連抗原に選択的に結合する抗体を含む。リポソームを介した核酸の投与を所望する場合は、標的の制御及び/又は取込みを可能にするために、エンドサイトーシスに関連する表面膜タンパク質に結合するタンパク質を、リポソーム製剤に組み込み得る。そのようなタンパク質は、特定細胞型に特異的なキャプシドタンパク質又はそのフラグメント、インターナライズされるタンパク質に対する抗体、細胞内部位を指向するタンパク質等を含む。
【0169】
本発明の治療組成物は、医薬的に適合性の製剤中で投与され得る。そのような製剤は、通常、医薬的に適合性の濃度の塩、緩衝物質、防腐剤、担体、アジュバントのような補足的免疫増強物質、例えばCpGオリゴヌクレオチド、サイトカイン、ケモカイン、サポニン、GM−CSF及び/又はRNA並びに、必要に応じて、他の治療的に活性な化合物を含有し得る。
【0170】
本発明の治療的に活性な化合物は、注射又は注入を含む何らかの従来経路によって投与し得る。投与は、例えば経口的、静脈内、腹腔内、筋肉内経路、皮下的又は経皮的に実施し得る。好ましくは、抗体は、肺エアロゾルとして治療的に投与される。アンチセンス核酸は、好ましくは徐放静脈内投与によって投与される。
【0171】
本発明の組成物は有効量で投与される。「有効量」は、単独で又はさらなる投与物と共に所望の反応又は所望の効果を達成する量を指す。1又はそれ以上の腫瘍関連抗原の発現によって特徴づけられる特定疾患又は特定状態の治療の場合、所望の反応は、好ましくは疾患の経過の阻害に関する。これは、疾患の進行を緩慢にすること、特に疾患の進行を妨げる又は逆転させることを含む。疾患又は状態の治療における所望の反応はまた、上記疾患又は上記状態の発症の遅延又は発症の防止であり得る。本発明によれば、癌の診断又は治療はまた、既に形成された又は形成されるであろう癌転移の診断又は治療を含み得る。本発明によれば、「治療」という用語は、治療的処置及び予防的処置、すなわち予防を含む。
【0172】
本発明の組成物の有効量は、治療される状態、疾患の重症度、並びに患者の年齢、生理的状態、大きさ及び体重を含む患者の個体別パラメータ、治療の期間、付随する治療の種類(存在する場合)、特定投与経路及びこれらに類似の因子に依存する。
【0173】
本発明の医薬組成物は、好ましくは無菌であり、所望の反応又は所望の効果を生じさせるための治療的に活性な物質の有効量を含有する。
【0174】
本発明の組成物の投与される用量は、投与の種類、患者の状態、所望の投与期間等のような様々なパラメータに依存し得る。患者における反応が初期用量で不十分である場合は、より高用量(又は異なる、より限局された投与経路によって達成される効果的により高い用量)を使用し得る。
【0175】
一般に、1ng〜1mg、好ましくは10ng〜100μgの腫瘍関連抗原の用量が、治療のため若しくは免疫応答を生じさせる又は増大させるために製剤され、投与される。腫瘍関連抗原をコードする核酸(DNA及びRNA)の投与を所望する場合は、1ng〜0.1mgの用量が製剤され、投与される。
【0176】
本発明の医薬組成物は、一般に医薬的に適合性の量で及び医薬的に適合性の組成物中で投与される。「医薬的に適合性」という用語は、医薬組成物の活性成分の作用と相互作用しない非毒性物質を指す。この種の製剤は、通常、塩、緩衝物質、防腐剤、担体及び、必要に応じて、他の治療的に活性な化合物を含有し得る。薬剤中で使用されるとき、塩は医薬的に適合性でなければならない。しかし、医薬的に適合性ではない塩も、医薬的に適合性の塩を調製するために使用されてもよく、本発明に包含される。この種の薬理的及び医薬的に適合性の塩は、非限定的に、以下の酸から調製されるものを含む:塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、マレイン酸、酢酸、サリチル酸、クエン酸、ギ酸、マロン酸、コハク酸等。医薬的に適合性の塩としてはまた、ナトリウム塩、カリウム塩又はカルシウム塩のような、アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩等が調製され得る。
【0177】
本発明の医薬組成物は、医薬的に適合性の担体を含有し得る。本発明によれば、「医薬的に適合性の担体」という用語は、ヒトへの投与に適する、1又はそれ以上の適合性固体又は液体充填剤、希釈剤又は被包物質を指す。「担体」という用語は、適用を容易にするために活性成分が組み合わされる、天然又は合成の有機又は無機成分を指す。本発明の医薬組成物の成分は、通常は所望の医薬効果を実質的に損なう相互作用が生じない成分である。
【0178】
本発明の医薬組成物は、塩中の酢酸、塩中のクエン酸、塩中のホウ酸及び塩中のリン酸のような適切な緩衝物質を含有し得る。
【0179】
医薬組成物はまた、必要に応じて、塩化ベンザルコニウム、クロロブタノール、パラベン及びチメロサールのような適切な防腐剤を含有し得る。
【0180】
医薬組成物は、通常は均一投与形態で提供され、それ自体公知の方法で調製され得る。本発明の医薬組成物は、例えばカプセル、錠剤、ロゼンジ、溶液、懸濁液、シロップ、エリキシルの形態、又はエマルションの形態であり得る。
【0181】
非経口投与に適する組成物は、通常、好ましくは受容者の血液と等張である、活性化合物の滅菌水性又は非水性製剤を含む。適合性担体及び溶媒の例は、リンガー液及び等張塩化ナトリウム溶液である。加えて、通常は滅菌固定油が溶液又は懸濁液の媒質として使用される。
【0182】
本発明を以下の図面及び実施例によって詳細に説明するが、それらは例示のためにのみ使用されるものであり、限定を意図されない。図面の説明及び実施例により、同様に本発明に包含されるさらなる実施形態が当業者に到達可能である。
【実施例】
【0183】
本明細書で言及する技術及び方法は、それ自体公知の方法で実施され、例えばSambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd Edition(1989)Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.に記載されている。キット及び試薬の使用を含むすべての方法は、特に指示されない限り製造者の取扱説明書に従って実施される。
(実施例1)
腫瘍において異常に活性化される胎盤特異的遺伝子のスクリーニング
【0184】
組織及び細胞株
【0185】
組織は、常套的診断又は治療手順の間のヒト余剰材料として入手し、使用時まで−80℃で保存した。細胞株は、American Type Culture Collection(ATCC)及びGerman Resource Collection of Microorganisms and Cell Culture(DSMZ)より購入した。
【0186】
RNAの単離及びマイクロアレイハイブリダイゼーション
【0187】
RNeasy Mini Kitプロトコール(Qiagen)を使用して全RNAを単離した。紫外分光法を用いて単離RNAの定量を実施し、A260/A280比及びAgilentバイオアナライザー(Agilent Technologies)の両方によって品質を決定した。5μgの全RNAを、5pmol/μlのT7−オリゴ(dT)24プライマーによるcDNA合成のために使用し、「Superscript First−Strand Synthesis−System」(Invitrogen)を用いて43℃で90分間、RT−PCRを実施した。2番目の鎖の合成は完全cDNAを用いて実施した。cDNA溶液を16℃で2時間インキュベートし、続いて6U T4−DNAポリメラーゼと共に16℃で20分間インキュベートして、0.5M EDTA 10μlを用いて反応を停止させた。GeneChip Sample Cleanup Module(Affymetrix)を使用して二本鎖cDNAを精製した後、製造者の取扱説明書に従ってビオチン−11−CTP及びビオチン−16−UTP(Enzo Diagnostics)を添加したインビトロ転写反応により、cDNA試料から標識cRNAを作製した。cRNAをA260によって定量し、labchipバイオアナライザー(Agilent)を使用して品質を決定した。高品質を有するcRNA標本だけをさらなる分析のために選択した。断片化したcRNA(15μg)を使用して、0.1mg/mlニシン精子DNA及び0.5mg/mlアセチル化ウシ血清アルブミンを含むハイブリダイゼーションカクテル(100mM MES、1M NaCl、20mM EDTA、0.01%Tween−20)300μlを調製した。アレイ間のハイブリダイゼーション効率を比較し、測定した転写レベルの定量を標準化するため、対照cRNAを使用し、これをEukaryotic Hybridization Controlキット(Affymetrix,Santa Clara,CA,USA)に用いる成分として含めた。カクテルを95℃で5分間加熱し、45℃で5分間平衡させて、遠心分離によって清澄化した。カクテルをHG U133 Plus 2.0アレイ(Affymetrix)に45℃で16時間ハイブリダイズした。アレイを洗浄し、製造者の取扱説明書に従ってGeneChip fluidics station protocol EukGE−WS2(Affymetrix)を使用してストレプトアビジン結合フッ素で染色した。アレイをアルゴンイオンレーザー共焦点スキャナ−(Hewlett−Packard,Santa Clara,CA)で走査し、570nmで検出した。Microarray Suiteバージョン5.0(Affymetrix)を用いてデータを抽出し、遺伝子当たり2,500の平均強度を達成するため線形にスケールした。テキストファイルをエクスポートして、各々の問合せオリゴヌクレオチドの完全にマッチするプローブ細胞又はミスマッチプローブ細胞の強度を決定した。加えて、mRNAの5'末端と3'末端の比率を、24のヒトハウスキーピング/メンテナンス遺伝子(Affymetrix)を含むマイクロアレイ試験チップ(Test3 Array)を使用して6つの無作為に選択した標本(各群から2つ)について分析し、RNAの分解を認めなかった。
【0188】
バイオインフォマティクス解析
【0189】
GeneChip(登録商標)Operating Software 1.4(Affymetrix)及びArrayAssistソフトウエアパッケージ5.2(Stratagene)を統計解析のために使用した。
【0190】
結果
【0191】
以下の表1に示す18の正常組織及び以下の表2に示す種々の実体の30の腫瘍細胞株からの試料のスクリーニングは、検討した正常組織の中では胎盤において及び腫瘍細胞株において発現される本明細書で述べる配列を生じさせた。
【0192】
【表1】

【0193】
【表2】

【0194】
(実施例2)
同定された腫瘍関連マーカーの確認
【0195】
1.RNA発現の検査
【0196】
同定された腫瘍関連マーカーを、最初に、様々な組織から又は組織特異的細胞株から得られるRNAを用いて確認する。腫瘍組織と比較した健常組織の差次的発現パターンはその後の治療適用のために決定的に重要であるので、標的遺伝子を、好ましくはこれらの組織試料を用いて特徴づける。
【0197】
全RNAを、分子生物学の標準的な方法によって天然組織試料から又は腫瘍細胞株から単離する。上記単離は、例えば、製造者の取扱説明書に従ってRNeasy Maxiキット(Qiagen、カタログ番号75162)を用いて実施し得る。この単離方法は、カオトロピック試薬、グアニジンイソチオシアネートの使用に基づく。あるいは、酸性フェノールを単離のために使用することができる(Chomczynski & Sacchi,Anal.Biochem.162:156−159,1987)。組織をグアニジンイソチオシアネートを用いて調製した後、RNAを酸性フェノールで抽出し、その後イソプロパノールで沈殿させて、DEPCで処理した水に取る。
このようにした単離したRNA 2〜4μgを、その後、例えば製造者のプロトコールに従ってSuperscript II(Invitrogen)を用いてcDNAに転写した。該当する製造者の標準プロトコールに従ってランダムヘキサマー(例えば、Roche Diagnostics)を使用してcDNA合成を開始させる。品質管理のために、低い程度にのみ発現されるp53遺伝子に特異的なプライマーを使用して、cDNAを30サイクルにわたって増幅する。p53陽性のcDNA試料だけをその後の反応工程のために使用する。
【0198】
様々な正常及び腫瘍組織から並びに腫瘍細胞株から単離されたcDNAアーカイブに基づくPCR又は定量的PCR(qPCR)を用いて発現解析を実施することにより、標的を詳細に分析する。このために、上記反応混合物のcDNA 0.5μlを、特定製造者のプロトコールに従ってDNAポリメラーゼ(例えば、1UのHotStarTaq DNAポリメラーゼ、Qiagen)により増幅する(反応混合物の総容量:25〜50μl)。上記ポリメラーゼと別に、増幅混合物は、0.3mM dNTP、反応緩衝液(DNAポリメラーゼの製造者に依存して、最終濃度1×)、及び各々0.3mMの遺伝子特異的「センス」及び「アンチセンス」プライマーを含む。
【0199】
標的遺伝子の特異的プライマーは、可能な限り、ゲノム汚染が偽陽性結果を導くことがないように2つの異なるエクソンに位置するように選択する。非定量的エンドポイントPCRでは、DNAを変性し、Hot−Start酵素を活性化するため、cDNAを典型的には95℃で15分間インキュベートする。その後DNAを35サイクル(95℃、1分間、プライマー特異的ハイブリダイゼーション温度(約55〜65℃)で1分間、アンプリコンを伸長させるために72℃で1分間)増幅する。その後、PCR混合物10μlをアガロースゲルに適用し、電場中で分画する。臭化エチジウムで染色することによってDNAをゲル中で可視化し、PCR結果を写真として記録する。
【0200】
従来のPCRに代わるものとして、標的遺伝子の発現は定量的リアルタイムPCRによっても分析し得る。様々な分析システムがこの分析のために使用可能であり、その中で最もよく知られているのは、ABI PRISM配列検出システム(TaqMan,Applied Biosystems)、iCycler(Biorad)及びLight cycler(Roche Diagnostics)である。前述したように、特異的PCR混合物をリアルタイム装置における分析に供する。DNAインターカレート染料(例えば、臭化エチジウム、CybrGreen)を添加することにより、新たに合成されたDNAを特異的な光励起によって可視化する(染料の製造者の取扱説明書に従って)。増幅の間に多数の時点で測定することにより、プロセス全体を観測し、標的遺伝子の核酸濃度を定量的に決定することが可能になる。ハウスキーピング遺伝子(例えば、18S RNA、β−アクチン)を測定することによってPCR混合物を基準化する。蛍光標識DNAプローブを介した別の方法も、同様に特定組織試料の標的遺伝子の定量的決定を可能にする(Applied BiosystemsからのTaqManの適用参照)。
【0201】
図1に示すように、RT−PCR分析において、胎盤は配列番号540の核酸配列を発現する唯一の健常組織として確認された。他のいずれの健常組織においても有意の発現を認めなかった。しかし、乳癌では高く且つ有意のレベルの発現を認めた。
【0202】
定量的リアルタイムRT−PCR分析は、配列番号540の核酸配列が分析した乳癌試料の大部分において有意のレベルで発現されることを明らかにした:図2参照。
【0203】
2.クローニング
【0204】
腫瘍関連マーカーのさらなる特徴づけのために必要とされる完全な標的遺伝子を、一般的な分子生物学的方法に従ってクローニングする(例えば、「Current Protocols in Molecular Biology」,John Wiley & Sons Ltd.,Wiley InterScience)。標的遺伝子をクローニングするため又はその配列を分析するために、上記遺伝子を、最初に、校正機能を有するDNAポリメラーゼ(例えば、pfu、Roche Diagnostics)によって増幅する。次にアンプリコンを標準的な方法によってクローニングベクターに連結する。陽性クローンを配列解析によって同定し、その後予測プログラムと公知のアルゴリズムを用いて特徴づける。
【0205】
3.タンパク質の予測
【0206】
本発明により見出される遺伝子(特にRefSeq XMドメインからの遺伝子)は、完全長遺伝子のクローニング、オープンリーディングフレームの決定及びタンパク質配列の推定と解析を必要とし得る。
完全長配列をクローニングするために、cDNA末端の迅速な増幅及び遺伝子特異的プローブによるcDNA発現ライブラリーのスクリーニングのための一般的なプロトコールを使用し得る(Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd edition(1989),Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.)。
このようにして見出されたフラグメントを集めた後、一般的な予測プログラムを用いて潜在的なオープンリーディングフレーム(ORF)を予測することができる。ポリA尾部及びポリアデニル化モチーフの位置は潜在的遺伝子産物の方向をあらかじめ決定するので、その特定方向の3つのリーディングフレームだけが可能な6つのリーディングフレームの外側のままである。前者はしばしば、タンパク質をコードし得る十分に大きなオープンリーディングフレームを1つだけ生成するが、その他のリーディングフレームはあまりに多くの終結コドンを有しており、現実的なタンパク質をコードしない。選択的オープンリーディングフレームの場合、本物の(authentic)ORFの同定には、最適転写開始についてのコザック判定基準を考慮に入れること及び生じ得る推定タンパク質配列を解析することが助けとなる。上記ORFは、潜在的ORFから推定されたタンパク質に対する免疫血清を作製し、組織及び細胞株中の実際のタンパク質の認識に関してこの免疫血清を分析することによってさらに確認される。
【0207】
4.抗体の作製
【0208】
本発明により同定される腫瘍関連抗原は、例えば抗体を使用することによって特徴づけられる。本発明はさらに、抗体の診断的又は治療的使用を含む。抗体は、天然及び/又は変性状態のタンパク質を認識し得る(Anderson et al.,J.Immunol.143:1899−1904,1989;Gardsvoll,J.Immunol.Methods 234:107−116,2000;Kayyem et al.,Eur.J.Biochem.208:1−8,1992;Spiller et al.,J.Immunol.Methods 224:51−60,1999)。
【0209】
標的タンパク質に特異的に結合する特異的抗体を含む抗血清は、様々な標準的方法によって調製し得る:例えば、「Monoclonal Antibodies:A Practical Approach」by Phillip Shepherd,Christopher Dean ISBN 0−19−963722−9,「Antibodies:A Laboratory Manual」by Ed Harlow,David Lane ISBN:0879693142及び「Using Antibodies:A Laboratory Manual:Portable Protocol NO」by Edward Harlow,David Lane,Ed Harlow ISBN:0879695447参照。また本明細書では、天然形態の複合体膜タンパク質を認識するアフィン及び特異的抗体を作製することも可能である。(Azorsa et al., J.Immunol.Methods 229:35−48,1999;Anderson et al.,J.Immunol.143:1899−1904,1989;Gardsvoll,J.Immunol.Methods.234:107−116,2000)。これは、治療的に使用される予定の抗体の作製において及び多くの診断適用のためにも特に重要である。このために、完全なタンパク質及び細胞外部分配列の両方を免疫のために使用し得る。
【0210】
ポリクローナル抗体の免疫と作製
【0211】
様々な免疫プロトコールが公表されている。ある種(例えば、ウサギ、マウス)を所望の標的タンパク質の初回注射によって免疫する。免疫原に対する動物の免疫応答を、定められた期間内に(前回の免疫後約2〜4週間)2回目又は3回目の免疫によって増強することができる。上記動物から血液を採取し、再び種々の定められた時間間隔を置いた後、免疫血清を得る(4週間後に1回目の採血、その後2〜3週間ごとに5回まで採取)。このようにして採取した免疫血清は、ウエスタンブロット法において、フローサイトメトリー、免疫蛍光法又は免疫組織化学によって標的タンパク質を検出し、特徴づけるために使用し得るポリクローナル抗体を含む。
【0212】
動物は通常4つの広く確立された方法のいずれかによって免疫されるが、他の方法も存在する。免疫は、標的タンパク質に特異的なペプチドを使用して、完全なタンパク質を使用して、又は実験的に若しくは予測プログラムを介して同定され得るタンパク質の細胞外部分配列を使用して実施し得る。予測プログラムは必ずしも完璧に機能するわけではないので、膜貫通ドメインによって互いから分離された2つのドメインを用いることも可能である。この場合、2つのドメインの1つは細胞外でなければならず、これはその後実験的に証明され得る(以下参照)。免疫は種々のサービス業者によって商業的に提供される。
【0213】
(1)最初の場合、ペプチド(長さ:8〜12アミノ酸)をインビトロ法によって合成し(場合により商業サービスによって実施される)、上記ペプチドを免疫のために使用する。通常は3回の免疫を実施する(例えば、5〜100μg/免疫の濃度とする)。
【0214】
(2)あるいは、組換えタンパク質を使用して免疫を実施し得る。このために、標的遺伝子のクローン化DNAを発現ベクターにクローニングし、標的タンパク質を、例えば無細胞インビトロで、細菌(例えば、大腸菌)中で、酵母(例えば、サッカロミセス・ポンベ(S.pombe))中で、昆虫細胞中又は哺乳動物細胞中で、特定製造者(例えば、Roche Diagnostics、Invitrogen、Clontech、Qiagen)の条件に従って合成する。また、ウイルス発現系(例えば、バキュロウイルス、ワクシニアウイルス、アデノウイルス)を用いて標的タンパク質を合成することも可能である。上記系の1つにおいて合成された後、標的タンパク質を、通常はクロマトグラフィー法を使用することによって、精製する。これに関して、精製を助けるものとして分子足場(例えば、Hisタグ、Qiagen;FLAGタグ、Roche Diagnostics;GST融合タンパク質)を有するタンパク質を免疫のために使用することも可能である。数多くのプロトコールが、例えば「Current Protocols in Molecular Biology」,John Wiley & Sons Ltd.,Wiley InterScienceにおいて見出される。標的タンパク質を精製した後、前述したように免疫を実施する。
【0215】
(3)所望のタンパク質を内因的に合成する細胞株が利用可能である場合は、特異的抗血清を調製するためにこの細胞株を直接使用することも可能である。この場合は、各々約1〜5×10細胞で1〜3回の注射によって免疫を実施する。
【0216】
(4)免疫はまた、DNAを注射することによっても実施し得る(DNA免疫)。このために、標的遺伝子を、まず最初に標的配列が強力な真核生物プロモーター(例えば、CMVプロモーター)の制御下にあるように発現ベクターにクローニングする。その後、遺伝子銃を使用してDNA(例えば、1回の注射当たり1〜10μg)を生物(例えば、マウス、ウサギ)中の強い血流を有する毛細管領域に免疫原として移入する。移入されたDNAは動物の細胞によって取り込まれ、標的遺伝子が発現されて、動物は最終的に標的タンパク質に対する免疫応答を発現する(Jung et al.,Mol.Cells 12:41−49,2001;Kasinrerk et al.,Hybrid Hybridomics 21:287−293,2002)。
【0217】
モノクローナル抗体の作製
【0218】
モノクローナル抗体は、伝統的にハイブリドーマ技術を用いて作製される(技術的な詳細については、「Monoclonal Antibodies:A Practical Approach」by Philip Shepherd,Christopher Dean ISBN 0−19−963722−9;「Antibodies:A Laboratory Manual」by Ed Harlow,David Lane ISBN:0879693142,「Using Antibodies:A Laboratory Manual:Portable Protocol NO」by Edward Harlow,David Lane,Ed Harlow ISBN:0879695447参照)。同様に使用される新しい方法は、「SLAM」技術である。その技術においては、B細胞を全血から単離し、細胞をモノクローナルにする。その後、単離B細胞の上清をその抗体特異性に関して分析する。ハイブリドーマ技術と異なり、抗体遺伝子の可変領域を、次に、単細胞PCRによって増幅し、適切なベクターにクローニングする。このようにしてモノクローナル抗体の作製が加速される(de Wildt et al.,J.Immunol.Methods 207:61−67,1997)。
【0219】
5.抗体を使用したタンパク質化学法(protein−chemical methods)による標的の確認
【0220】
前述したように作製され得る抗体は、以下のように標的タンパク質をさらに分析するために使用できる:
【0221】
抗体の特異性
【0222】
細胞培養に基づくアッセイとその後のウエスタンブロット法は、抗体が所望の標的タンパク質とのみ特異的に結合するという事実を明らかにするために最も適切である(様々な変法が、例えば「Current Protocols in Proteinchemistry」,John Wiley & Sons Ltd.,Wiley InterScienceに記載されている)。証明のために、細胞を、強力な真核生物プロモーター(例えば、サイトメガロウイルスプロモーター;CMV)の制御下にある標的タンパク質についてのcDNAでトランスフェクトする。多種多様な方法(例えば、電気穿孔法、リポソームに基づくトランスフェクション、リン酸カルシウム沈殿法)が、細胞株をDNAでトランスフェクトするために十分に確立されている(例えば、Lemoine et al.,Methods Mol.Biol.75:441−7,1997)。代替法として、標的遺伝子を内因的に発現する細胞株を使用することも可能である(標的遺伝子特異的RT−PCRを介した検出)。対照として、理想的な場合は、その後のウエスタンブロット法において分析した抗体の特異性を明らかにできるように、相同な遺伝子を実験の中で同時トランスフェクトする。
【0223】
その後のウエスタンブロット法では、標的タンパク質を含む可能性がある細胞培養物又は組織試料からの細胞を1%濃度のSDS溶液に溶解し、その過程でタンパク質を変性させる。溶解産物を8〜15%濃度の変性ポリアクリルアミドゲル(1%SDSを含む)上の電気泳動により大きさによって分画する(SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動、SDS−PAGE)。次に多くのブロット法(例えば、セミドライ電気ブロット法;Biorad)のうちの1つによって特異的膜(例えば、ニトロセルロース、Schleicher & Schull)にタンパク質を移す。所望のタンパク質をこの膜上で視覚化することができる。このために、最初に、標的タンパク質を認識する抗体と共に(希釈:上記抗体の特異性に依存して約1:20〜1:200)膜を60分間インキュベートする。洗浄工程後、マーカー(例えば、ペルオキシダーゼ又はアルカリホスファターゼのような酵素)に結合されており、第1抗体を認識する第2抗体と共に、膜をインキュベートする。その後、呈色反応又は化学発光反応(例えば、ECL,Amersham Bioscience)において膜上で標的タンパク質を可視化することが可能である。標的タンパク質に対して高い特異性を有する抗体は、理想的な場合、所望のタンパク質自体だけを認識するはずである。
【0224】
標的タンパク質の局在化
【0225】
標的タンパク質の、インシリコアプローチで同定された膜局在化を確認するために様々な方法が使用される。前述した抗体を使用する、重要で十分に確立された方法は、免疫蛍光法(IF)である。このために、標的タンパク質を合成する(RT−PCRによるRNAの検出若しくはウエスタンブロット法によるタンパク質の検出)又はさもなければプラスミドDNAでトランスフェクトされた樹立細胞株の細胞を使用する。多種多様な方法(例えば、電気穿孔法、リポソームに基づくトランスフェクション、リン酸カルシウム沈殿法)が、DNAによる細胞株のトランスフェクションのために十分に確立されている(例えば、Lemoine et al.,Methods Mol.Biol.75:441−7,1997)。細胞にトランスフェクトされたプラスミドは、免疫蛍光法において、非修飾タンパク質をコードし得る又はさもなければ種々のアミノ酸マーカーを標的タンパク質に連結し得る。主要なマーカーは、例えば、様々な識別的蛍光形態の緑色蛍光タンパク質(GFP)、高親和性の特異的抗体が利用可能である6〜12アミノ酸の短いペプチド配列、又はそのシステイン特異的蛍光物質を介して結合できる短いアミノ酸配列、Cys−Cys−X−X−Cys−Cys(Invitrogen)である。標的タンパク質を合成する細胞を、例えばパラホルムアルデヒド又はメタノールで固定する。次に細胞を、必要な場合は、界面活性剤(例えば、0.2% Triton X−100)と共にインキュベートすることによって透過性を上げてもよい。細胞を、その後、標的タンパク質に対する又は結合マーカーの1つに対する一次抗体と共にインキュベートする。洗浄工程後、混合物を、第1抗体に結合する蛍光マーカー(例えば、フルオレセイン、テキサスレッド、Dako)に連結された二次抗体と共にインキュベートする。このようにして標識された細胞を、次にグリセロールで覆い、製造者の取扱説明書に従って蛍光顕微鏡を用いて分析する。この場合は、使用する物質に依存して特異的励起によって特異的な蛍光発光が達成される。分析は通常、標的タンパク質に加えて、結合アミノ酸マーカー又はその局在化が文献で既に記述されている他のマーカータンパク質も染色される二重染色において、標的タンパク質の信頼し得る局在化、抗体の品質および標的タンパク質が確認される。GFP及びその誘導体は特殊なケースであって、直接励起可能であり、それら自体が蛍光を発する。免疫蛍光法において、界面活性剤の使用を通して制御され得る膜透過性は、免疫原性エピトープが細胞の内側に位置するのか又は細胞外であるのかを明らかにし得る。選択タンパク質の予測を、それ故、実験的に裏付けることができる。代替的な可能性は、フローサイトメトリーによって細胞外ドメインを検出することである。このために、細胞を非透過処理条件下で固定し(例えば、PBS/アジ化ナトリウム/2%FCS/5mM EDTAを用いる)、製造者の取扱説明書に従ってフローサイトメーターで分析する。細胞外エピトープだけが、この方法で分析される抗体によって認識され得る。免疫蛍光法との相違は、例えばヨウ化プロピジウム又はトリパンブルーを使用することによって死細胞と生細胞を識別することが可能であり、それ故偽陽性結果を回避できることである。
【0226】
もう1つの重要な検出法は、特定組織試料に関する免疫組織化学(IHC)によるものである。この方法の目的は、機能的に無傷の組織集合体においてタンパク質の局在化を同定することである。IHCは特に、(1)腫瘍及び正常組織における標的タンパク質の量を推定することができる、(2)腫瘍及び健常組織中のどの程度の数の細胞が標的遺伝子を合成するかを分析する、並びに(3)標的タンパク質が検出可能である組織(腫瘍、健常細胞)中の細胞型を定義するために役立つ。あるいは、標的遺伝子のタンパク質の量は、デジタルカメラと適切なソフトウエア(例えば、Tillvision,Till−photonics,Germany)を使用した組織免疫蛍光法によって定量し得る。この技術は頻繁に公表されており、それ故染色及び顕微鏡検査の詳細は、例えば、「Diagnostic Immunohistochemistry」by David J.,MD Dabbs ISBN:0443065667又はin「Microscopy,Immunohistochemistry,and Antigen Retrieval Methods:For Light and Electron Microscopy」ISBN:0306467704に認められる。抗体の性質の故に、意味のある結果を得るために種々のプロトコールを使用しなければならない(一例を以下で述べる)ことに留意すべきである。
【0227】
通常、組織学的に定義された腫瘍組織及び、参照として、対応する健常組織をIHCにおいて使用する。標的遺伝子の存在がRT−PCR分析を通して公知である細胞株を陽性及び陰性対照として使用することも可能である。バックグラウンド対照は常に含めなければならない。
【0228】
ホルマリン固定し(別の固定法、例えばメタノールによる固定も可能である)、パラフィン包埋した厚さ4μmの組織片をガラス支持体に載せ、例えばキシレンで脱パラフィン化する。試料をTBS−Tで洗浄し、血清中でブロックする。次いで第1抗体(希釈1:2〜1:2000)と共に1〜18時間インキュベートし、この場合、通常はアフィニティー精製された抗体を使用する。洗浄工程の後、アルカリホスファターゼ(代替酵素:例えばペルオキシダーゼ)に連結された、第1抗体に対する第2抗体と共に約30〜60分間インキュベートする。続いてアルカリホスファターゼを使用した呈色反応を実施する(例えば、Shi et al.,J.Histochem.Cytochem.39:741−748,1991;Shin et al.,Lab.Invest.64:693−702,1991参照)。抗体特異性を明らかにするため、あらかじめ免疫原を添加することによって反応をブロックできる。
【0229】
タンパク質修飾の分析
【0230】
例えばN−又はO−グリコシル化又はミリスチル化のような二次タンパク質修飾は、免疫原性エピトープの接近可能性を障害する、さらには完全に妨げる可能性があり、それ故抗体療法の効果に問題を生じさせ得る。さらに、二次修飾のタイプと量が正常組織と腫瘍組織で異なることがしばしば明らかにされている(例えば、Durand & Seta,2000;Clin.Chem.46:795−805;Hakomori,1996;Cancer Res.56:5309−18)。これらの修飾の分析は、それ故、抗体治療の成功のためには必要不可欠である。潜在的な結合部位は特異的アルゴリズムによって予測することができる。
【0231】
タンパク質修飾の分析は、通常ウエスタンブロット法(上記参照)によって行われる。通常数kDaの大きさを有するグリコシル化は、特により大きな全体質量の標的タンパク質を導き、これはSDS−PAGEにおいて分画できる。特異的O−及びN−グリコシド結合を検出するために、タンパク質溶解産物をインキュベートした後、O−又はN−グリコシラーゼ(それぞれの製造者の取扱説明書に従って、例えばPNガーゼ、エンドグリコシダーゼF、エンドグリコシダーゼH、Roche Diagnostics)を用いてSDSによって変性する。これに続いて、前述したようにウエスタンブロット法を実施する。従って、グリコシダーゼとのインキュベーション後に標的タンパク質の大きさが縮小していれば、特異的グリコシル化を検出することができ、この方法で、修飾の腫瘍特異性を分析することも可能である。
【0232】
標的遺伝子の機能分析
【0233】
標的分子の機能はその治療的有用性のために極めて重要であり得るので、機能分析は治療的に利用可能な分子の特徴づけにおける重要な構成要素である。機能分析は、細胞培養実験において細胞内で又はさもなければ動物モデルを用いてインビボで実施され得る。これは、突然変異によって標的分子の遺伝子のスイッチを切ること(ノックアウト)又は標的配列を細胞又は生物に挿入すること(ノックイン)のいずれかを含む。従って、最初の場合は、分析しようとする遺伝子の機能喪失による細胞環境での機能的修飾を分析することが可能である(機能の喪失)。2番目の場合は、分析遺伝子の付加によって引き起こされる修飾を分析することができる(機能の獲得)。
【0234】
a.細胞における機能分析
【0235】
トランスフェクション。機能の獲得を分析するためには、標的分子の遺伝子を細胞に移入しなければならない。このために、標的分子の合成を可能にする細胞をDNAでトランスフェクトする。通常、本明細書では標的分子の遺伝子は強力な真核生物プロモーター(例えば、サイトメガロウイルスプロモーター;CMV)の制御下にある。多種多様な方法(例えば、電気穿孔法、リポソームに基づくトランスフェクション、リン酸カルシウム沈殿法)が、細胞株をDNAでトランスフェクトするために十分に確立されている(例えば、Lemoine et al.,Methods Mol.Biol.75:441−7,1997)。遺伝子は、ゲノムへの組込みを伴わずに一過性に、又は例えばネオマイシンによる選択後にゲノムへの組込みを伴って安定に合成し得る。
RNA干渉(siRNA)。細胞内の標的分子の機能の完全な喪失を誘導し得る、標的遺伝子の発現の阻害を、細胞におけるRNA干渉(siRNA)技術によって生じさせ得る(Hannon,GJ.2002.RNA interference.Nature 418:244-51;Czauderna et al.2003.Nucl.Acid Res.31:670-82)。このために、標的分子に特異的な約20〜25ヌクレオチド長の短い二本鎖RNA分子で細胞をトランスフェクトする。次に酵素処理によって標的遺伝子の特異的RNAの分解、そしてそれ故標的タンパク質の発現低下を生じさせ、結果として標的遺伝子を機能的に分析することを可能にする。
【0236】
トランスフェクション又はsiRNAによって修飾された細胞株は、その後種々の方法で分析し得る。最も一般的な例を以下に列挙する。
【0237】
1.増殖及び細胞周期挙動
【0238】
細胞増殖を分析するために多様な方法が確立されており、様々な会社によって商業的に供給されている(例えば、Roche Diagnostics,Invitrogen;アッセイ方法の詳細は数多くの適用プロトコールに記載されている)。細胞培養実験における細胞数は、単に計数することによって又は細胞の代謝活性を測定する比色アッセイ(例えば、wst−1,Roche Diagnostics)によって決定できる。代謝アッセイ法は、酵素マーカーを介して間接的に実験における細胞数を測定する。細胞増殖は、DNA合成の速度を分析することによって、例えばブロモデオキシウリジン(BrdU)を添加し、組み込まれたBrdUを特異的抗体を介して比色分析によって検出することにより、直接測定し得る。
【0239】
2.アポトーシス及び細胞傷害性
【0240】
細胞のアポトーシス及び細胞傷害性を検出するための多くのアッセイ系が利用可能である。決め手となる特徴は、不可逆性で、いかなる場合にも細胞死を生じさせる、ゲノムDNAの特異的で酵素依存性の断片化である。これらの特異的DNAフラグメントを検出するための方法は市販されている。利用可能なさらなる方法は、組織切片においてもDNAの一本鎖切断を検出できるTUNELアッセイである。細胞の活力状態のマーカーとして役立つ変化した細胞透過性を介して、細胞傷害性が主として検出される。これは、一方では、細胞培養上清における細胞内で典型的に認められるマーカーの分析を含む。他方で、無傷細胞では吸収されない染料マーカーの吸収性を分析することも可能である。染料マーカーの最もよく知られている例はトリパンブルーとヨウ化プロピジウムであり、一般的な細胞内マーカーは、上清中で酵素的に検出できる乳酸デヒドロゲナーゼである。様々な商業的供給者(例えば、Roche Diagnostics,Invitrogen)の様々なアッセイ系が利用可能である。
【0241】
3.遊走アッセイ
【0242】
細胞が遊走する能力は、好ましくはボイデンチャンバー(Corning Costar)を使用した、特異的遊走アッセイにおいて分析される(Cinamon G.,Alon R.J.Immunol.Methods.2003 Feb;273(1−2):53−62;Stockton et al.2001.Mol.Biol.Cell.12:1937−56)。このために、特定細孔径を有するフィルター上で細胞を培養する。遊走できる細胞は、このフィルターを通って下にある別の培養容器中へと移動することができる。その後の顕微鏡分析は、標的分子の機能の獲得又は機能の喪失によって誘導される、変化した可能性のある遊走挙動の測定を可能にする。
【0243】
b.動物モデルにおける機能分析
【0244】
標的遺伝子機能の分析のための細胞培養実験の可能な代替法は、動物モデルにおける複雑なインビボ実験である。細胞ベースの方法と比較して、これらのモデルは、生物全体に関してのみ検出可能である発育不全又は疾患を検出できるという利点を有する。今日では、ヒト疾患のための多くのモデルが利用可能である(Abate−Shen & Shen.2002.Trends in Genetics S1−5;Matsusue et al.2003.J.Clin.Invest.111:737−47)。例えば酵母、線虫又はゼブラフィッシュなどの様々な動物モデルが、その後集中的に特徴づけられてきた。しかし、他の種に比べて好ましいモデルは、例えばマウス(ハツカネズミ(Mus musculus))のような哺乳動物モデルであり、それらはヒトでの生物学的プロセスを最もよく再現する可能性を提供するからである。マウスに関しては、一方で、マウスゲノムに新しい遺伝子を組み込むトランスジェニック法が近年確立された(機能の獲得;Jegstrup I.et al.2003.Lab Anim.2003 Jan.;37(1):1-9)。他方で、他の系統的なアプローチは、マウスゲノムにおける遺伝子のスイッチを切り、それによって所望の遺伝子の機能の喪失を誘導する(ノックアウトモデル、機能の喪失;Zambrowicz BP & Sands AT.2003.Nat.Rev.Drug Discov.2003 Jan;2(1):38−51;Niwa H.2001.Cell Struct.Funct.2001 Jun;26(3):137−48);技術的な詳細は数多く公表されている。
【0245】
マウスモデルが作製された後、導入遺伝子によって又は遺伝子の機能喪失によって誘導される変化を生物全体において分析することができる(Balling R,2001.Ann.Rev.Genomics Hum.Genet.2:463−92)。従って、例えば挙動試験を実施すること並びに確立された血液パラメータを生化学的に検討することが可能である。組織学的分析、免疫組織化学又は電子顕微鏡検査は、変化を細胞レベルで特徴づけることを可能にする。遺伝子の特異的発現パターンはインサイチューハイブリダイゼーションによって検出できる(Peters T.et al.2003.Hum.Mol.Genet 12:2109−20)。
【0246】
(実施例3)
同定された腫瘍関連マーカーの詳細な分析
【0247】
RNAの単離、RT−PCR及びリアルタイムRT−PCR
【0248】
RNAの抽出、一本鎖cDNAの合成、RT−PCR及びリアルタイムRT−PCRは、先に記述されているように実施した(Koslowski,M.et al.,Cancer Res.62,6750−6755(2002),Koslowski,M.et al.,Cancer Res.64,5988−5993(2004))。リアルタイムの定量的発現分析は、40サイクルのRT−PCRにおいて実施した。HPRT(センス:5'−TGA CAC TGG CAA AAC AAT GCA−3';アンチセンス:5'−GGT CCT TTT CAC CAG CAA GCT−3'、62℃でアニーリング)に基準化した後、腫瘍試料中の遺伝子特異的転写産物を、ΔΔCT計算を用いて正常組織に対して数量化した。
【0249】
siRNA二本鎖
【0250】
配列番号540のsiRNA二本鎖(Qiagen,Hilden,Germany)は、配列番号540のmRNA配列の標的配列、5'−NNC CAC AGA AGG UAC CAG UUA−3'(siRNA No.1;センス(5'−CCA CAG AAG GUA CCA GUU AUU−3')、アンチセンス(5'−UAA CUG GUA CCU UCU GUG GUU−3'))及び5'−NNC AGC AAG ACU CCC UCU AAA−3'(siRNA No.2;センス(5'−CAG CAA GAC UCC CUC UAA AUU−3')、アンチセンス(5'−UUU AGA GGG AGU CUU GCU GUU−3'))を対象とした。
【0251】
細胞増殖分析
【0252】
siRNA二本鎖によるトランスフェクションの24時間後に、10%FCSを添加した培地中で1x10細胞を48時間培養した。Wallac Victorマルチラベルカウンター(Perkin Elmer,Boston,MA)でDELFIA細胞増殖キット(Perkin Elmer,Boston,MA)を製造者の取扱説明書に従って使用して、新たに合成されたDNA鎖へのBrdUの組込みを測定することによって増殖を分析した。
【0253】
図3は、siRNAオリゴヌクレオチドによるトランスフェクションの24時間後のリアルタイムRT−PCRによるMCF−7乳癌細胞での配列番号540のmRNA発現の定量を示す。非トランスフェクト細胞及び非サイレンシング(ns)siRNAでトランスフェクトした細胞と比較して、2つの配列番号540特異的siRNA(siRNA No.1(配列番号 630、631)、siRNA No.2(配列番号632、633))は、配列番号540発現の強固なサイレンシングを誘導する。
【0254】
図4は、siRNAオリゴヌクレオチドを用いたトランスフェクションによる配列番号540発現のサイレンシングが、MCF−7乳癌細胞の増殖障害を生じさせることを示す。siRNAによるトランスフェクションの96時間後に、新たに合成されたDNA鎖へのBrdUの組込みを測定することによって増殖を定量した。これらの結果は、配列番号540が乳癌細胞の増殖のための正の因子であることを示す。
【0255】
配列番号541のヌクレオチド配列は、配列番号65から推定され、未知の機能の177アミノ酸のタンパク質(配列番号542)をコードする。正常組織及び癌組織における配列番号541の発現を、配列特異的オリゴヌクレオチド(配列番号543、544)を使用したリアルタイムRT−PCRによって定量した;図5参照。正常組織では、配列番号541は胎盤において高発現され、胸腺で弱い発現だけを示す。配列番号541は肺癌において過剰発現される。これらの発現結果に基づき、配列番号541及びその発現産物は、標的治療のための、特にこの特定腫瘍型のための分子マーカー及び/又は標的候補物質として適格である。
【0256】
配列番号545のヌクレオチド配列は、配列番号249から推定され、膜タンパク質の溶質担体(SLC)群の成員(配列番号546)をコードする。内在性膜タンパク質に特有であるように、SLCは、親水性細胞内又は細胞外ループによって互いに結合された多くの疎水性膜貫通αヘリックスを含む。SLCに依存して、これらの輸送体はモノマーとして又はオブリゲート(obligate)ホモオリゴマー若しくはヘテロオリゴマーとして機能性である。配列番号545によってコードされるタンパク質は細胞表面タンパク質である。正常組織及び癌組織における配列番号545の発現を、配列特異的オリゴヌクレオチド(配列番号547、548)を使用したリアルタイムRT−PCRによって定量した;図6参照。正常組織と比較して、配列番号545は悪性黒色腫において過剰発現される。これらの発現結果に基づき、配列番号545及びその発現産物は、標的治療のための、特にこの特定腫瘍型のための分子マーカー及び/又は標的候補物質として適格である。
【0257】
配列番号549のヌクレオチド配列は、配列番号4から推定され、未知の機能の763アミノ酸のタンパク質(配列番号550)をコードする。このタンパク質は2つの潜在的膜貫通ドメイン及び1つの典型的なフィブロネクチンIII型ドメインを保持する。フィブロネクチンは、膜貫通受容体タンパク質(インテグリン)に結合する高分子量の細胞外マトリックス糖タンパク質である。インテグリンに加えて、それらはまたコラーゲン、フィブリン及びヘパリン硫酸などの細胞外マトリックス成分にも結合する。配列番号549によってコードされるタンパク質は、これまでのところ未知の新しいフィブロネクチン様タンパク質であり得る。正常組織及び癌組織における配列番号549の発現を、配列特異的オリゴヌクレオチド(配列番号551、552)を使用したリアルタイムRT−PCRによって定量した;図7参照。正常組織と比較して、配列番号549は卵巣癌において過剰発現される。これらの発現結果に基づき、配列番号549及びその発現産物は、標的治療のための、特にこの特定腫瘍型のための分子マーカー及び/又は標的候補物質として適格である。
【0258】
配列番号553のヌクレオチド配列は、配列番号156から推定され、未知の機能の496アミノ酸のタンパク質(配列番号554)をコードする。このタンパク質は潜在的膜貫通タンパク質を保持する。正常組織及び癌組織における配列番号553の発現を、配列特異的オリゴヌクレオチド(配列番号555、556)を使用したリアルタイムRT−PCRによって定量した;図8参照。正常組織では、配列番号553は胎盤において高発現される。他の正常組織と比較して、配列番号553は結腸癌及び卵巣癌において過剰発現される。これらの発現結果に基づき、配列番号553及びその発現産物は、標的治療のための、特にこれらの特定腫瘍型のための分子マーカー及び/又は標的候補物質として適格である。
【0259】
配列番号557のヌクレオチド配列は、配列番号273から推定された。配列番号557は、明らかなオープンリーディングフレームを有さない部分cDNAである。正常組織及び癌組織における配列番号557の発現を、配列特異的オリゴヌクレオチド(配列番号558、559)を使用したリアルタイムRT−PCRによって定量した;図9参照。正常組織では、配列番号557の高発現は乳房において検出可能である。正常組織と比較して、配列番号557は乳癌において過剰発現される。これらの発現結果に基づき、配列番号557及びその発現産物は、標的治療のための、特にこの特定腫瘍型のための分子マーカー及び/又は標的候補物質として適格である。
【0260】
配列番号560のヌクレオチド配列は、配列番号135から推定された。配列番号560は明らかなオープンリーディングフレームを有さない。正常組織及び癌組織における配列番号560の発現を、配列特異的オリゴヌクレオチド(配列番号561、562)を使用したリアルタイムRT−PCRによって定量した;図10参照。正常組織では、配列番号560の発現は十二指腸及び結腸において検出可能である。正常組織と比較して、配列番号560は結腸癌及び卵巣癌において過剰発現される。これらの発現結果に基づき、配列番号560及びその発現産物は、標的治療のための、特にこれらの特定腫瘍型のための分子マーカー及び/又は標的候補物質として適格である。
【0261】
配列番号563のヌクレオチド配列は、配列番号177から推定された。配列番号563は明らかなオープンリーディングフレームを有さない。正常組織及び癌組織における配列番号563の発現を、配列特異的オリゴヌクレオチド(配列番号564、565)を使用したリアルタイムRT−PCRによって定量した;図11参照。配列番号563は胎盤において高発現される。正常組織と比較して、配列番号563は乳癌、結腸癌、卵巣癌、肺癌及び黒色腫において過剰発現される。これらの発現結果に基づき、配列番号563及びその発現産物は、標的治療のための、特にこれらの特定腫瘍型のための分子マーカー及び/又は標的候補物質として適格である。
【0262】
配列番号566のヌクレオチド配列は、配列番号149から推定され、未知の機能の155アミノ酸のタンパク質(配列番号567)をコードする。このタンパク質配列は、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーの成員と部分的に相同であり、潜在的膜貫通ドメインを保持する。配列番号566によってコードされるタンパク質は、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーの新しい成員であり得る。正常組織及び癌組織における配列番号566の発現を、配列特異的オリゴヌクレオチド(配列番号568、569)を使用したリアルタイムRT−PCRによって定量した;図12参照。正常組織と比較して、配列番号566は胃癌、乳癌、結腸癌、卵巣癌、肺癌及び黒色腫において過剰発現される。これらの発現結果に基づき、配列番号566及びその発現産物は、標的治療のための、特にこれらの特定腫瘍型のための分子マーカー及び/又は標的候補物質として適格である。
【0263】
配列番号570のヌクレオチド配列は、配列番号53から推定され、カーネルリポカリンスーパーファミリーの成員(配列番号571)をコードする。これらの分泌糖タンパク質は、妊娠に適した子宮環境の調節、及び受精過程における適切な一連の事象の時期と発生において、明確且つ重要な役割を有する。正常組織及び癌組織における配列番号570の発現を、配列特異的オリゴヌクレオチド(配列番号572、573)を使用したリアルタイムRT−PCRによって定量した;図13参照。配列番号570は胎盤において高発現される。他の正常組織と比較して、配列番号570は卵巣癌、肺癌及び黒色腫において過剰発現される。これらの発現結果に基づき、配列番号570及びその発現産物は、標的治療のための、特にこれらの特定腫瘍型のための分子マーカー及び/又は標的候補物質として適格である。
【0264】
配列番号574のヌクレオチド配列は、明らかなオープンリーディングフレームを有さない。正常組織及び癌組織における配列番号574の発現を、配列特異的オリゴヌクレオチド(配列番号575、576)を使用したリアルタイムRT−PCRによって定量した;図14参照。配列番号574は胎盤において高発現される。他の正常組織と比較して、配列番号574は肺癌及び黒色腫において過剰発現される。これらの発現結果に基づき、配列番号574及びその発現産物は、標的治療のための、特にこれらの特定腫瘍型のための分子マーカー及び/又は標的候補物質として適格である。
【0265】
配列番号577のヌクレオチド配列は、配列番号20から推定された。配列番号577は、明らかなオープンリーディングフレームを有さない部分cDNAである。正常組織及び癌組織における配列番号577の発現を、配列特異的オリゴヌクレオチド(配列番号578、579)を使用したリアルタイムRT−PCRによって定量した;図15参照。配列番号577は胎盤において高発現される。他の正常組織と比較して、配列番号577は胃癌、乳癌及び肺癌において過剰発現される。これらの発現結果に基づき、配列番号577及びその発現産物は、標的治療のための、特にこれらの特定腫瘍型のための分子マーカー及び/又は標的候補物質として適格である。
【0266】
配列番号580のヌクレオチド配列は、配列番号32から推定された。配列番号580は、明らかなオープンリーディングフレームを有さない部分cDNAである。正常組織及び癌組織における配列番号580の発現を、配列特異的オリゴヌクレオチド(配列番号581、582)を使用したリアルタイムRT−PCRによって定量した;図16参照。配列番号580は胎盤において高発現される。他の正常組織と比較して、配列番号580は卵巣癌及び肺癌において過剰発現される。これらの発現結果に基づき、配列番号580及びその発現産物は、標的治療のための、特にこれらの特定腫瘍型のための分子マーカー及び/又は標的候補物質として適格である。
【0267】
配列番号583のヌクレオチド配列は、配列番号257から推定され、転写因子のホメオボックスクラスの成員(配列番号584)をコードする。これらのタンパク質の発現は、胚発生の間に空間的及び時間的に調節される。正常組織及び癌組織における配列番号583の発現を、配列特異的オリゴヌクレオチド(配列番号585、586)を使用したリアルタイムRT−PCRによって定量した;図17参照。配列番号583は胎盤及び前立腺において高発現される。他の正常組織と比較して、配列番号583は結腸癌、卵巣癌及び肺癌において過剰発現される。これらの発現結果に基づき、配列番号583及びその発現産物は、標的治療のための、特にこれらの特定腫瘍型のための分子マーカー及び/又は標的候補物質として適格である。
【0268】
配列番号587のヌクレオチド配列は、配列番号148から推定され、IGF−II mRNA結合タンパク質(IMP)ファミリーの成員(配列番号588)をコードする。インスリン様増殖因子2(IGF2)mRNAの5'UTRに結合して、IGF2の翻訳を調節することによって機能する。正常組織及び癌組織における配列番号587の発現を、配列特異的オリゴヌクレオチド(配列番号589、590)を使用したリアルタイムRT−PCRによって定量した;図18参照。正常組織と比較して、配列番号587は肺癌において過剰発現される。これらの発現結果に基づき、配列番号587及びその発現産物は、標的治療のための、特にこの特定腫瘍型のための分子マーカー及び/又は標的候補物質として適格である。
【0269】
配列番号591のヌクレオチド配列は、配列番号194から推定され、未知の機能の372アミノ酸のタンパク質(配列番号592)をコードする。正常組織及び癌組織における配列番号591の発現を、配列特異的オリゴヌクレオチド(配列番号593、594)を使用したリアルタイムRT−PCRによって定量した;図19参照。配列番号591は精巣において高発現される。他の正常組織と比較して、配列番号591は乳癌、結腸癌、卵巣癌、肺癌及び黒色腫において過剰発現される。これらの発現結果に基づき、配列番号591及びその発現産物は、標的治療のための、特にこれらの特定腫瘍型のための分子マーカー及び/又は標的候補物質として適格である。
【0270】
配列番号595のヌクレオチド配列は、配列番号191から推定され、未知の機能の357アミノ酸のタンパク質(配列番号596)をコードする。正常組織及び癌組織における配列番号595の発現を、配列特異的オリゴヌクレオチド(配列番号597、598)を使用したリアルタイムRT−PCRによって定量した;図20参照。配列番号595は精巣において高発現される。他の正常組織と比較して、配列番号595は胃癌、結腸癌、卵巣癌、肺癌及び黒色腫において過剰発現される。これらの発現結果に基づき、配列番号595及びその発現産物は、標的治療のための、特にこれらの特定腫瘍型のための分子マーカー及び/又は標的候補物質として適格である。
配列番号599のヌクレオチド配列は、配列番号18から推定され、明らかなオープンリーディングフレームを有さない。正常組織及び癌組織における配列番号599の発現を、配列特異的オリゴヌクレオチド(配列番号600、601)を使用したリアルタイムRT−PCRによって定量した;図21参照。配列番号599は胎盤において高発現される。他の正常組織と比較して、配列番号599は胃癌、乳癌、肺癌及び黒色腫において過剰発現される。これらの発現結果に基づき、配列番号599及びその発現産物は、標的治療のための、特にこれらの特定腫瘍型のための分子マーカー及び/又は標的候補物質として適格である。
【0271】
配列番号602のヌクレオチド配列は、配列番号133から推定され、細胞外マトリックスタンパク質のフォンビルブラント因子ドメインスーパーファミリーの成員(配列番号603)をコードする。正常組織及び癌組織における配列番号602の発現を、配列特異的オリゴヌクレオチド(配列番号604、605)を使用したリアルタイムRT−PCRによって定量した;図22参照。正常組織と比較して、配列番号602は卵巣癌及び肺癌において過剰発現される。これらの発現結果に基づき、配列番号602及びその発現産物は、標的治療のための、特にこれらの特定腫瘍型のための分子マーカー及び/又は標的候補物質として適格である。
【0272】
配列番号606のヌクレオチド配列は、配列番号128から推定され、CDC42エフェクタータンパク質のBorgファミリーの成員(配列番号607)をコードする。Borgファミリーのタンパク質はCRIB(Cdc42/Rac相互作用性結合)ドメインを含む。それらはCDC42に結合して、CDC42の機能を負に調節する。低分子量Rho GTPアーゼであるCDC42は、下流のエフェクタータンパク質との相互作用を介してFアクチン含有構造体の形成を調節する。正常組織及び癌組織における配列番号606の発現を、配列特異的オリゴヌクレオチド(配列番号608、609)を使用したリアルタイムRT−PCRによって定量した;図23参照。正常組織と比較して、配列番号606は胃癌、結腸癌及び肺癌において過剰発現される。これらの発現結果に基づき、配列番号606及びその発現産物は、標的治療のための、特にこれらの特定腫瘍型のための分子マーカー及び/又は標的候補物質として適格である。
【0273】
配列番号610のヌクレオチド配列は、配列番号118から推定され、明らかなオープンリーディングフレームを有さない。正常組織及び癌組織における配列番号610の発現を、配列特異的オリゴヌクレオチド(配列番号611、612)を使用したリアルタイムRT−PCRによって定量した;図24参照。正常組織と比較して、配列番号610は胃癌、乳癌及び肺癌において過剰発現される。これらの発現結果に基づき、配列番号610及びその発現産物は、標的治療のための、特にこれらの特定腫瘍型のための分子マーカー及び/又は標的候補物質として適格である。
【0274】
配列番号613のヌクレオチド配列は、配列番号116から推定され、未知の機能の76アミノ酸のタンパク質(配列番号614)をコードする。正常組織及び癌組織における配列番号613の発現を、配列特異的オリゴヌクレオチド(配列番号615、616)を使用したリアルタイムRT−PCRによって定量した;図25参照。配列番号613は胎盤において高発現される。他の正常組織と比較して、配列番号613は乳癌、肺癌及び黒色腫において過剰発現される。これらの発現結果に基づき、配列番号613及びその発現産物は、標的治療のための、特にこれらの特定腫瘍型のための分子マーカー及び/又は標的候補物質として適格である。
【0275】
配列番号617のヌクレオチド配列は、配列番号267から推定された。配列番号617は、明らかなオープンリーディングフレームを有さない部分cDNAである。正常組織及び癌組織における配列番号617の発現を、配列特異的オリゴヌクレオチド(配列番号618、619)を使用したリアルタイムRT−PCRによって定量した;図26参照。配列番号617は胎盤及び子宮内膜において高発現される。他の正常組織と比較して、配列番号617は肺癌及び黒色腫において過剰発現される。これらの発現結果に基づき、配列番号617及びその発現産物は、標的治療のための、特にこれらの特定腫瘍型のための分子マーカー及び/又は標的候補物質として適格である。
【0276】
配列番号620のヌクレオチド配列は、配列番号182から推定され、多数の推定上の膜貫通ドメイン及びパッチドファミリードメインを保持する829アミノ酸のタンパク質(配列番号621)をコードする。膜貫通タンパク質パッチドは、形態形成因子(morphogene)、ソニックヘッジホッグ(Sonic Hedgehog)に対する受容体である。このタンパク質は、スムーズンドタンパク質と結合してヘッジホッグシグナルを形質導入する。配列番号620はパッチドファミリーの新規成員であり得る。正常組織及び癌組織における配列番号620の発現を、配列特異的オリゴヌクレオチド(配列番号622、623)を使用したリアルタイムRT−PCRによって定量した;図27参照。配列番号620は肺において高発現される。他の正常組織と比較して、配列番号620は卵巣癌及び黒色腫において過剰発現される。これらの発現結果に基づき、配列番号620及びその発現産物は、標的治療のための、特にこれらの特定腫瘍型のための分子マーカー及び/又は標的候補物質として適格である。
【0277】
配列番号624のヌクレオチド配列は、配列番号184から推定され、2つの細孔形成Pドメインを含むカリウムチャネルタンパク質のスーパーファミリーの成員である、TWIK関連酸感受性Kチャネルに類似する323アミノ酸のタンパク質(配列番号625)をコードする。正常組織及び癌組織における配列番号624の発現を、配列特異的オリゴヌクレオチド(配列番号626、627)を使用したリアルタイムRT−PCRによって定量した;図28参照。配列番号624は肺において高発現される。他の正常組織と比較して、配列番号624は胃癌及び肺癌において過剰発現される。これらの発現結果に基づき、配列番号624及びその発現産物は、標的治療のための、特にこれらの特定腫瘍型のための分子マーカー及び/又は標的候補物質として適格である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(I)腫瘍関連抗原の発現若しくは活性を阻害する、及び/又は、
(II)腫瘍阻害活性を有し、腫瘍関連抗原を発現する若しくは異常発現する細胞に選択的である、及び/又は、
(III)投与したとき、MHC分子と腫瘍関連抗原若しくはその一部との間の複合体の量を選択的に増加させる、
薬剤を含有する医薬組成物であって、前記腫瘍関連抗原が、
(a)配列番号541、1〜540、545、549、553、557、560、563、566、570、574、577、580、583、587、591、595、599、602、606、610、613、617、620及び624から成る群より選択される核酸配列、その一部又は誘導体を含む核酸、
(b)ストリンジェント条件下で(a)の前記核酸とハイブリダイズする核酸、
(c)(a)又は(b)の前記核酸に関して縮重している核酸、並びに、
(d)(a)、(b)又は(c)の前記核酸に相補的である核酸、
から成る群より選択される核酸によってコードされる配列を有する、医薬組成物。
【請求項2】
(II)の前記薬剤が、細胞死の誘導、細胞増殖の低減、細胞膜への損傷又はサイトカインの分泌を生じさせる、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
(I)又は(II)の前記薬剤が、前記腫瘍関連抗原をコードする核酸と選択的にハイブリダイズするアンチセンス核酸である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
(I)又は(II)の前記薬剤が、前記腫瘍関連抗原に選択的に結合する抗体である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記薬剤が、
(i)腫瘍関連抗原又はその一部、
(ii)腫瘍関連抗原又はその一部をコードする核酸、
(iii)腫瘍関連抗原又はその一部に結合する抗体、
(iv)腫瘍関連抗原をコードする核酸と特異的にハイブリダイズするアンチセンス核酸、
(v)腫瘍関連抗原をコードする核酸に対するsiRNA、
(vi)腫瘍関連抗原又はその一部を発現する宿主細胞、及び、
(vii)腫瘍関連抗原又はその一部とMHC分子との間の単離複合体、
から成る群より選択される1又はそれ以上の成分を含有する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記薬剤が、各々異なる腫瘍関連抗原の発現若しくは活性を選択的に阻害する、各々異なる腫瘍関連抗原を発現する若しくは異常発現する細胞に選択的である、又はMHC分子と種々の異なる腫瘍関連抗原若しくはその一部との間の複合体の量を増加させる、2又はそれ以上の薬剤を含み、前記腫瘍関連抗原の少なくとも1つが、
(a)配列番号541、1〜540、545、549、553、557、560、563、566、570、574、577、580、583、587、591、595、599、602、606、610、613、617、620及び624から成る群より選択される核酸配列、その一部又は誘導体を含む核酸、
(b)ストリンジェント条件下で(a)の前記核酸とハイブリダイズする核酸、
(c)(a)又は(b)の前記核酸に関して縮重している核酸、並びに
(d)(a)、(b)又は(c)の前記核酸に相補的である核酸
から成る群より選択される核酸によってコードされる配列を有する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項7】
(i)腫瘍関連抗原又はその一部、
(ii)腫瘍関連抗原又はその一部をコードする核酸、
(iii)腫瘍関連抗原又はその一部に結合する抗体、
(iv)腫瘍関連抗原をコードする核酸と特異的にハイブリダイズするアンチセンス核酸、
(v)腫瘍関連抗原をコードする核酸に対するsiRNA、
(vi)腫瘍関連抗原又はその一部を発現する宿主細胞、及び、
(vii)腫瘍関連抗原又はその一部とMHC分子との間の単離複合体、
から成る群より選択される1又はそれ以上の成分を含有する医薬組成物であって、前記腫瘍関連抗原が、
(a)配列番号541、1〜540、545、549、553、557、560、563、566、570、574、577、580、583、587、591、595、599、602、606、610、613、617、620及び624から成る群より選択される核酸配列、その一部又は誘導体を含む核酸、
(b)ストリンジェント条件下で(a)の前記核酸とハイブリダイズする核酸、
(c)(a)又は(b)の前記核酸に関して縮重している核酸、並びに、
(d)(a)、(b)又は(c)の前記核酸に相補的である核酸、
から成る群より選択される核酸によってコードされる配列を有する、医薬組成物。
【請求項8】
(ii)の核酸が発現ベクター内に存在する、請求項5又は7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記宿主細胞が前記腫瘍関連抗原又はその一部を分泌する、請求項5又は7に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記宿主細胞が、前記腫瘍関連抗原又はその一部に結合するMHC分子を付加的に発現する、請求項5又は7に記載の医薬組成物。
【請求項11】
宿主細胞が、前記MHC分子及び/又は前記腫瘍関連抗原若しくはその一部を組換えによって発現する、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記宿主細胞が前記MHC分子を内因的に発現する、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記宿主細胞が抗原提示細胞である、請求項5、7、10又は12に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記抗体が、モノクローナル抗体、キメラ抗体若しくはヒト化抗体であるか、又は抗体のフラグメントである、請求項4、5又は7に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記抗体が治療薬又は診断薬に連結されている、請求項4、5、7又は14に記載の医薬組成物。
【請求項16】
癌の治療又は予防のために使用し得る、請求項1から15のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記癌が、肺腫瘍、乳房腫瘍、前立腺腫瘍、黒色腫、結腸腫瘍、胃腫瘍、膵腫瘍、ENT腫瘍、卵巣腫瘍、結腸直腸腫瘍、子宮頸癌、結腸癌又は乳癌である、請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項18】
ワクチンの形態である、請求項1、2、5から13、16及び17のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項19】
治療及び/又は予防用途のための、請求項18に記載の医薬組成物。
【請求項20】
(i)腫瘍関連核酸又はその一部、及び/又は、
(ii)腫瘍関連抗原又はその一部、及び/又は、
(iii)腫瘍関連抗原又はその一部に対する抗体、及び/又は、
(iv)患者から単離した生物学的試料中の腫瘍関連抗原又はその一部に特異的なTリンパ球、
を検出する又はその量を測定する工程を含む、癌疾患を診断する又は観測する方法であって、前記腫瘍関連核酸が、
(a)配列番号541、1〜540、545、549、553、557、560、563、566、570、574、577、580、583、587、591、595、599、602、606、610、613、617、620及び624から成る群より選択される核酸配列、その一部又は誘導体を含む核酸、
(b)ストリンジェント条件下で(a)の前記核酸とハイブリダイズする核酸、
(c)(a)又は(b)の前記核酸に関して縮重している核酸、並びに、
(d)(a)、(b)又は(c)の前記核酸に相補的である核酸、
から成る群より選択されており、
前記腫瘍関連抗原が、前記核酸の群から選択される核酸によってコードされる配列を有する、癌疾患を診断する又は観測する方法。
【請求項21】
前記検出又はその量を測定する工程が、
(i)生物学的試料を、腫瘍関連核酸若しくはその一部、腫瘍関連抗原若しくはその一部、抗体又はTリンパ球に特異的に結合する薬剤と接触させる工程、及び
(ii)薬剤と、核酸若しくはその一部、腫瘍関連抗原若しくはその一部、抗体又はTリンパ球との間の複合体の形成を検出する工程又は該複合体の量を測定する工程、
を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記腫瘍関連核酸又はその一部に特異的に結合する前記薬剤が、前記核酸又は前記その一部に特異的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記腫瘍関連抗原又はその一部に特異的に結合する前記薬剤が、前記腫瘍関連抗原又は前記その一部に特異的に結合する抗体である、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記抗体に特異的に結合する前記薬剤が、前記抗体に特異的に結合するタンパク質又はペプチドである、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
前記Tリンパ球に特異的に結合する薬剤が、前記腫瘍関連抗原又はその一部とMHC分子との間の複合体を提示する細胞である、請求項21に記載の方法。
【請求項26】
前記疾患を観測する方法が、前記疾患を有する又は前記疾患に罹患することが疑われる患者からの試料において前記疾患の後退、経過又は発症を測定することを含む、請求項20から25のいずれかに記載の方法。
【請求項27】
第1時点での第1試料における検出又は量の測定する工程、及び第2時点でのさらなる試料における検出及び量の測定する工程、並びに2つの試料の比較する工程を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記薬剤が検出可能に標識されている、請求項21から27のいずれかに記載の方法。
【請求項29】
前記試料が体液及び/又は体組織を含む、請求項20から28のいずれかに記載の方法。
【請求項30】
前記癌疾患が、前記腫瘍関連核酸の発現又は異常発現によって特徴づけられる、請求項20から29のいずれかに記載の方法。
【請求項31】
前記癌疾患が、前記腫瘍関連核酸によってコードされる腫瘍関連抗原の発現又は異常発現によってさらに特徴づけられる、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
請求項1から19のいずれかに記載の医薬組成物の投与を含む、腫瘍関連抗原の発現又は異常発現によって特徴づけられる疾患を治療する又は予防する方法であって、前記腫瘍関連抗原が、
(a)配列番号541、1〜540、545、549、553、557、560、563、566、570、574、577、580、583、587、591、595、599、602、606、610、613、617、620及び624から成る群より選択される核酸配列、その一部又は誘導体を含む核酸、
(b)ストリンジェント条件下で(a)の前記核酸とハイブリダイズする核酸、
(c)(a)又は(b)の前記核酸に関して縮重している核酸、並びに、
(d)(a)、(b)又は(c)の前記核酸に相補的である核酸、
から成る群より選択される核酸によってコードされる配列を有する、方法。
【請求項33】
前記腫瘍関連抗原又はその一部に結合し、且つ治療薬又は診断薬に連結されている抗体を投与することを含む、腫瘍関連抗原の発現又は異常発現によって特徴づけられる疾患を治療する、予防する、診断する又は観測する方法であって、前記腫瘍関連抗原が、
(a)配列番号541、1〜540、545、549、553、557、560、563、566、570、574、577、580、583、587、591、595、599、602、606、610、613、617、620及び624から成る群より選択される核酸配列、その一部又は誘導体を含む核酸、
(b)ストリンジェント条件下で(a)の前記核酸とハイブリダイズする核酸、
(c)(a)又は(b)の前記核酸に関して縮重している核酸、並びに、
(d)(a)、(b)又は(c)の前記核酸に相補的である核酸、
から成る群より選択される核酸によってコードされる配列を有する、方法。
【請求項34】
前記抗体が、モノクローナル抗体、キメラ抗体若しくはヒト化抗体であるか、又は抗体のフラグメントである、請求項23又は33に記載の方法。
【請求項35】
腫瘍関連抗原の発現又は異常発現によって特徴づけられる疾患を有する患者を治療する方法であって、
(i)免疫反応性細胞を含む試料を提供すること、
(ii)前記試料を、前記腫瘍関連抗原又は前記その一部に対する細胞溶解性又はサイトカイン放出性T細胞の産生を促進する条件下で、前記腫瘍関連抗原又はその一部を発現する宿主細胞と接触させること、及び
(iii)細胞溶解性又はサイトカイン放出性T細胞を、腫瘍関連抗原又はその一部を発現する細胞を溶解するために適切な量で前記患者に導入すること
を含み、前記腫瘍関連抗原が、
(a)配列番号541、1〜540、545、549、553、557、560、563、566、570、574、577、580、583、587、591、595、599、602、606、610、613、617、620及び624から成る群より選択される核酸配列、その一部又は誘導体を含む核酸、
(b)ストリンジェント条件下で(a)の前記核酸とハイブリダイズする核酸、
(c)(a)又は(b)の前記核酸に関して縮重している核酸、並びに、
(d)(a)、(b)又は(c)の前記核酸に相補的である核酸、
から成る群より選択される核酸によってコードされる配列を有する、方法。
【請求項36】
前記宿主細胞が、腫瘍関連抗原又はその一部に結合するMHC分子を組換え発現する、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記宿主細胞が、腫瘍関連抗原又はその一部に結合するMHC分子を内因的に発現する、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
請求項1から19のいずれかに記載の医薬組成物の有効量を投与することを含む、患者において癌の発現を抑制する方法。
【請求項39】
タンパク質又はポリペプチド又はその一部に特異的に結合する薬剤であって、前記タンパク質又はポリペプチドが、
(a)配列番号541、1〜540、545、549、553、557、560、563、566、570、574、577、580、583、587、591、595、599、602、606、610、613、617、620及び624から成る群より選択される核酸配列、その一部又は誘導体を含む核酸、
(b)ストリンジェント条件下で(a)の前記核酸とハイブリダイズする核酸、
(c)(a)又は(b)の前記核酸に関して縮重している核酸、並びに、
(d)(a)、(b)又は(c)の前記核酸に相補的である核酸、
から成る群より選択される核酸によってコードされる、薬剤。
【請求項40】
抗体である、請求項39に記載の薬剤。
【請求項41】
前記抗体が、モノクローナル抗体、キメラ抗体若しくはヒト化抗体であるか、又は抗体のフラグメントである、請求項40に記載の薬剤。
【請求項42】
(i)タンパク質又はポリペプチド又はその一部と、
(ii)前記タンパク質又はポリペプチド又はその一部が結合するMHC分子、
との複合体に選択的に結合し、(i)又は(ii)単独には結合しない抗体であって、前記タンパク質又はポリペプチドが、
(a)配列番号541、1〜540、545、549、553、557、560、563、566、570、574、577、580、583、587、591、595、599、602、606、610、613、617、620及び624から成る群より選択される核酸配列、その一部又は誘導体を含む核酸、
(b)ストリンジェント条件下で(a)の前記核酸とハイブリダイズする核酸、
(c)(a)又は(b)の前記核酸に関して縮重している核酸、並びに、
(d)(a)、(b)又は(c)の前記核酸に相補的である核酸、
から成る群より選択される核酸によってコードされる、抗体。
【請求項43】
モノクローナル抗体、キメラ抗体若しくはヒト化抗体であるか、又は抗体のフラグメントである、請求項42に記載の抗体。
【請求項44】
請求項39から41のいずれかに記載の薬剤又は請求項42から43のいずれかに記載の抗体と、治療薬又は診断薬との間のコンジュゲート。
【請求項45】
前記治療薬又は前記診断薬が毒素である、請求項44に記載のコンジュゲート。
【請求項46】
癌を検出するためのキットであって、
(i)腫瘍関連核酸又はその一部、及び/又は
(ii)腫瘍関連抗原又はその一部、及び/又は
(iii)腫瘍関連抗原又はその一部に結合する抗体、及び/又は
(iv)腫瘍関連抗原又はその一部とMHC分子との間の複合体に特異的なT細胞
を検出する又はその量を測定するための薬剤を含み、前記腫瘍関連核酸が、
(a)配列番号541、1〜540、545、549、553、557、560、563、566、570、574、577、580、583、587、591、595、599、602、606、610、613、617、620及び624から成る群より選択される核酸配列、その一部又は誘導体を含む核酸、
(b)ストリンジェント条件下で(a)の前記核酸とハイブリダイズする核酸、
(c)(a)又は(b)の前記核酸に関して縮重している核酸、並びに、
(d)(a)、(b)又は(c)の前記核酸に相補的である核酸、
から成る群より選択されており、
前記腫瘍関連抗原が、前記核酸の群から選択される核酸によってコードされる配列を有する、キット。
【請求項47】
前記腫瘍関連抗原が、配列番号542、546、550、554、567、571、584、588、592、596、603、607、614、621及び625から成る群より選択されるアミノ酸配列、その一部又は誘導体を含む、請求項1から19のいずれかに記載の医薬組成物、又は請求項20から38のいずれかに記載の方法。
【請求項48】
前記タンパク質又はポリペプチドが、配列番号542、546、550、554、567、571、584、588、592、596、603、607、614、621及び625から成る群より選択されるアミノ酸配列、その一部又は誘導体を含む、請求項39から41のいずれかに記載の薬剤、請求項42から43のいずれかに記載の抗体、又は請求項44から45のいずれかに記載のコンジュゲート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【公表番号】特表2011−501758(P2011−501758A)
【公表日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−530332(P2010−530332)
【出願日】平成20年10月22日(2008.10.22)
【国際出願番号】PCT/EP2008/008924
【国際公開番号】WO2009/053041
【国際公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(504346260)ガニメド ファーマシューティカルズ アーゲー (21)
【出願人】(509256849)
【氏名又は名称原語表記】JOHANNES GUTENBERG−UNIVERSITAET MAINZ
【住所又は居所原語表記】Saarstrasse 21, 55122 Mainz, Germany
【Fターム(参考)】