説明

試料傾け補助具

【課題】 本発明は、簡単に大きく傾斜角度を変更できる試料傾け補助具を提供することを目的とする。
【解決手段】 試料の計装時等において、試料を傾けるための試料傾け補助具は、台となるベースと、前記ベースに回転可能に支持された回転体と、前記ベースに移動可能に支持された可動体と、前記可動体を一軸方向に移動させる駆動体とを具備する。前記可動体が移動することにより、前記回転体の前記ベースに対する傾きは変化する。前記可動体の移動方向を前記ベースの表面に平行にした。また、少なくとも前記ベースと前記可動体と前記可動体とは磁性材料により形成されており、前記可動体に磁石を取付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査試料を任意の角度に傾斜させるための試料傾け補助具に関する。
【背景技術】
【0002】
試料の、特には物理的な計測において、例えば、試料の面の粗さを計測する場合において、計測面に対して粗さ計を計測面に垂直な方向から当てて計測する。従って、例えば試料が直方体ではない多面体である場合、試料の接地面と計測面とは平行でないため、試料を傾けるための試料傾け補助具が使用される。この様な試料傾け補助具の従来例として、図5に示される補助具50がある。
【0003】
図5に示される従来の試料傾け補助具50は、粗さ計で使用するものとして、台となるベース2と、試料10を載せるためのものであって且つベース2に回転自由に支持された回転体3と、ベースに取付けられていて垂直方向に移動して回転体3を上下動させるための移動体51とを具備する。移動体51は、ベース2にねじ結合し、回転することによって垂直方向(即ち、その軸方向)に移動可能であり、その移動によって回転体3のベース2との接合部である軸(シャフト)7の周りで回転体3を回転させるので、試料傾け補助具50は回転体3の傾きを自在に変えることが出来る。
【0004】
この様な従来の試料傾け補助具は、微小な傾斜角度調整には良いが、大きく傾斜角度を変更するには、移動体が長くなり、大きく傾斜角度を変えるのに時間がかかるという問題があった。また、早く大きく移動させるため、ねじピッチを大きくすると任意の位置で停止させるのに固定具が必要になるという問題がある。
【0005】
また、傾きを自在に変化可能な装置として既知なものがある(例えば、特許文献1又は特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平第8−33737号
【特許文献2】実開平第6−86573号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みなされたもので、簡単に大きく傾斜角度を変更できる試料傾け補助具を提供することを目的とする。
本発明のその他の目的は、回転体の転倒を確実に防止できる試料傾け補助具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1の形態では、上述した目的を達成するために、試料の計装時等において、試料を傾けるための試料傾け補助具は、台となるベースと、前記ベースに回転可能に支持された回転体と、前記ベースに移動可能に支持された可動体と、前記可動体を一軸方向に移動させる駆動体とを具備する。前記可動体が移動することにより、前記回転体の前記ベースに対する傾きは変化する。前記可動体の移動方向を前記ベースの表面に平行にしたことを特徴とする。
【0008】
この様に構成することにより、即ち、特に、ベースと回転体間に可動体を設け、可動体の移動方向をベースの表面に平行にしたことにより、回転体の自重がねじ面に直接作用せず、ねじの回転を防止できるようになり、固定具が無しで、駆動体のねじピッチを大きくして容易に大きな傾斜角度の変更ができるようにしても、任意の位置に固定できるようになる。従って、簡単に大きく傾斜角度を変更でき、しかも回転体の転倒を防止できる。
【0009】
本発明の請求項2の形態では、上記請求項1の形態において、少なくとも前記回転体と前記可動体とは磁性材料により形成されており、前記可動体に磁石を取付けたことを特徴とする。
【0010】
この様に構成することにより、可動体に磁石を取付けたことにより、ベース、可動体、回転体で磁気回路を形成し、可動体が回転体を吸引するようにして回転体と可動体との結合力はより大きくなり、回転体上に重心の高い試料を置いても転倒を防止できるようになる。
【0011】
本発明の請求項3の形態では、上記請求項1又は2のいずれかの形態において、前記回転体は前記可動体に接触して、それにより支持されることを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載の試料傾け補助具。
【0012】
本形態によれば、回転体が一方をベースにより支持され、他方を可動体により支持されるので、可動体の移動により、試料を載せた回転体の傾きが確実の変化可能である。
【0013】
本発明の請求項4の形態では、上記請求項1から3の形態のいずれか一項において、前記可動体と前記回転体との接触部を略半円筒形にしたことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の試料傾け補助具。
【0014】
本形態によれば、磁気吸引力を確保しながら、可動体の滑らかな移動と回転体の傾斜角度変更が可能になる。従って、より簡単に大きく傾斜角度を変更できると共に、回転体の転倒を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面に基づいて本発明の試料傾け補助具の好適な実施の形態を詳細に説明する。図1から図3は、本発明に係る試料傾け補助具の第1の実施の形態の図解的説明図であり、図1は本発明の第1の実施の形態の試料傾け補助具の構成と作動を示す図式的側断面図であり、図2は図1の可動体をA方向から見た立体図である。また、図3は本発明の試料傾け補助具の原理の説明図である。図面、図1から3を参照すると、図5に開示される従来例の要素部分と同じ又は同様である図1から3の要素部分は、同じ参照符号により指定されている。
【0016】
まず図1を参照すると、本発明の第1の実施の形態の試料傾け補助具1が示されており、試料傾け補助具1には試料10が設置されて、粗さ計12により計測されている状態が示される。本実施の形態の試料傾け補助具1は、ベース(台)となるベース2と、ベース2に回転可能に支持された回転体3と、ベース2に移動可能に支持された可動体4と、可動体4を一軸方向に移動させる駆動体5と、可動体4に取付けた磁石6とを具備する。試料傾け補助具1は、ベース2が机等に設置されて使用されるが、ベース2上に各構成部が載る構成となっている。回転体3は、試料10を載せるためのものであって、図1において試料10は側断面が五角形の形状を有するものとして示される。試料10の回転体3への設置面と粗さ計測面Bは平行ではないので、回転体3をベース2に対して軸(シャフト)7の周りで回転させて傾ける必要がある。駆動体5は、ねじ切られた第1のシャフト21と、円柱状の2本の第2と第3のシャフト22,23とを、図2に示すように具備しており、これらの3本のシャフト21,22,23は、ベース2に平行に設置され、その両端をベース2に支持される。第1のシャフト21が中央で、第2と第3のシャフト22,23は、その両側に設置される。駆動体5は第1のシャフト21に接続されたハンドル24を更に具備しており、ハンドル24は図1に示されるように、第1のシャフト21がベース2の右端部を貫通したその端部に取り付けられる。ハンドル24を回転させて第1のシャフト21を回転することが出来る。従って、第1のシャフト21は回転可能にベース2に両端を支持される。
【0017】
第1のシャフト21は、可動体4を貫通するようにそれに嵌合しており、可動体4のその貫通孔もまたナット状にねじ切られているので、ハンドル24による第1のシャフト21の回転により、可動体4は、第1と第2と第3のシャフト21,22,23に沿ってベース2に平行に左右に移動する。ここで第2と第3のシャフト22,23も可動体を貫通する。本実施の形態において、可動体4はT字を逆転した側断面形状を有しており、図2に示されるように、回転体3に面するその頂部側部Cには5つの磁石6が実質的に等間隔で配置される。可動体4の頂部は実質的に半円筒形である。
【0018】
回転体3は、図1に示されるようにL字型であり、そのL字の交差部において軸7を介してベース2に連結しており、軸7を中心に回転可能である。回転体3は一方の端部で軸7を介してベース2により支持され、他方でその下面を可動体4の頂部により支持される。従って、可動体4の左右方向の移動により、回転体3のベース2に対する傾きを自在に変えることが出来る。
【0019】
磁石6は、回転体3と可動体4の連結の結合力を強くする機能を有する。このため、試料傾け補助具1の各構成要素は、鋼等の磁性材料により形成される。本実施の形態において、好適にはベース2は機械構造用炭素鋼、回転体3及び第1のシャフト21は合金工具鋼(JIS−SKD)、可動体4は機械構造用炭素鋼により形成されている。これにより、磁気回路(磁力線)が、磁石6から回転体3、ベース2、第1のシャフト21、可動体4の経路で形成されて、磁石6により吸引力が回転体3に作用する。磁石6は図2に示されるように、回転体3に面する可動体4の頂部側部Cに配置され、頂部側部Cの傾斜角度は垂直方向に対して実質的に45度であることが好ましい。ただしベース2はアルミ等の非磁性体であっても良い。
【0020】
磁石6の機能について、図3を参照して更に説明する。回転体3と可動体4を連結する上で、磁力を最大限に発揮するには回転体3の面に磁力が垂直に向いていることが必要である。しかし、回転体3の角度が任意に変わる。そこで、どの状態でも吸着できるように、可動体4の半円筒面に磁力が作用する位置となっている。さらに、回転体3の角度が45度の時に試料10の重心位置が回転体3の支点の外側にはみ出し、転倒しやすくなるため、回転体3の角度が約45°の時に磁力が最大になるよう磁石の向きを約45°に傾けて取り付けることが好ましい。
【0021】
上記構成にて本発明の作動を説明する。
まず、回転体3の上に計測する試料10を置き、回転体3に固定する。次に、試料10の計測される計測面Bが略水平になるように駆動体5を作動させて、可動体4を移動させる。ベース2に保持された可動体4が移動すると、回転体3は軸7を回転中心軸として回転し、その傾斜角が変化し、回転体3の上に固定された試料10も傾いて計測面Bが略水平になる。回転体3の下へ回転しようとする力(自重)は可動体4を介してベース2で支持されるので、駆動体5においては傾斜角に対応した一部の力しか作用しないため可動体4に作用する摩擦力で回転体3の回転を止めることができ、固定具を必要としない。
【0022】
また、可動体4に設けた磁石6と、可動体4と回転体3とベース2は常に接触し、既に説明したように磁気回路を形成しているので、可動体4と回転体3を引き離す力に対して強力に反作用し、回転体3が転倒するのを防止できるようになる。45度の傾斜角度まで対応できれば、それ以上の傾斜角度が必要な場合には、試料の設置面を変えることで対処出来るので、一般的に45度以上の傾斜角が必要なケースは少ない。
【0023】
図4を参照すると、第2の実施の形態の試料傾け補助具の可動体4bの構成が示されている。図4は、図2に対応する可動体4b付近の立体図である。本実施の形態の可動体4bでは磁石6bが2つ配置される。磁石6bの位置は回転体3に対面する可動体4bの頂部側部Cであって、第1の実施の形態と同様である。本実施の形態の上記以外の構成及び作動については第1の実施の形態と同様であるので、重複を避けて省略する。
このように本発明において磁石の数・形状・配置等については、回転体及び試料の重量を支えられる磁力を発揮可能に選定すればよい。
【0024】
次に上記実施の形態の効果及び作用について説明する。本発明の第1の実施の形態の試料傾け補助具により以下の効果が期待できる。
・上記手段を採用したことにより、即ち、特に、ベースと回転体間に可動体を設け、可動体の移動方向をベースの表面に平行にしたことにより、回転体の自重がねじ面に直接作用せず、その自重によるねじの回転を防止できるようになり、固定具が無しで、駆動体のねじピッチを大きくして容易に大きな傾斜角度の変更ができるようにしても、任意の位置に固定できるようになる。
・また、可動体に磁石を取付けたことにより、ベース、可動体、回転体で磁気回路を形成し、可動体が回転体を吸引して回転体上に重心の高い試料を置いても転倒を防止できるようになる。
・また、可動体と回転体との接触部を略半円筒形にしたことにより、磁気吸引力を確保しながら、可動体の滑らかな移動と回転体の傾斜角度変更が可能になる。
・上記作用が功奏し、即ち、ベースと回転体間に可動体を設け、可動体の移動方向をベースの表面に平行にしたこと、可動体に磁石を取付けたこと、可動体と回転体との接触部を略半円筒形にしたことにより、簡単に大きく傾斜角度を変更でき、しかも回転体の転倒を防止できる試料傾け補助具を提供できる。
【0025】
本発明の第2の実施の形態の試料傾け補助具に関しても、上記第1の実施の形態の効果と同様の効果が期待できる。
【0026】
上記の説明において、駆動体と可動体との組み合わせによる直動機構は、回転運動を直線運動に変換するねじ式であったが、例えばラック・ピニオン機構やシリンダ等のその他の直動機構であっても良い。また、手動であったが、モータ等の動力機構により駆動されても良い。
また、上記において記載した、あるいは添付図面に示した実施の形態において、可動体は2本の第1と第2のシャフトに沿って移動したが、これらのシャフトは2本以外の数であっても良く、あるいはシャフトが無く、可動体4は直接ベース2に接触してベース2上を滑動するように形成されても良い。またこの際、可動体は車輪状の複数の要素を具備して、この要素に支持されて移動しても良い。
【0027】
また、上記の実施例では試料の粗さ計測において、試料傾け補助具が使用されたが、本発明の試料傾け補助具はこれ以外の種々の用途に使用されても良い。
【0028】
上記の実施の形態は本発明の例であり、本発明は、該実施の形態により制限されるものではなく、請求項に記載される事項によってのみ規定されており、上記以外の実施の形態も実施可能である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図1は、本発明に係る試料傾け補助具の第1の実施の形態の図式的側断面図であり、その構成と作動を説明する。
【図2】図2は図1の可動体をA方向から見た立体図である。
【図3】図3は本発明の実施の形態の試料傾け補助具の原理の説明図である。
【図4】図4は、本発明の第2の実施の形態の可動体をA方向から見た立体図であり、図2に対応する図面である。
【図5】図5は従来例の試料傾け補助具の図式的側断面図である。
【符号の説明】
【0030】
1 試料傾け補助具
2 ベース
3 回転体
4 可動体
5 駆動体
6 磁石
7 軸(シャフト)
10 試料
21 第1のシャフト
22 第2のシャフト
23 第3のシャフト
24 ハンドル
B 計測面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料の計装時等において、試料を傾けるための試料傾け補助具において、この試料傾け補助具は、
台となるベースと、
前記ベースに回転可能に支持された回転体と、
前記ベースに移動可能に支持された可動体と、
前記可動体を一軸方向に移動させる駆動体と、
を具備しており、
前記可動体が移動することにより、前記回転体の前記ベースに対する傾きは変化しており、
前記可動体の移動方向を前記ベースの表面に平行にしたことを特徴とする試料傾け補助具。
【請求項2】
少なくとも前記回転体と前記可動体とは磁性材料により形成されており、前記可動体に磁石を取付けたことを特徴とする請求項1に記載の試料傾け補助具。
【請求項3】
前記回転体は前記可動体に接触して、それにより支持されることを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載の試料傾け補助具。
【請求項4】
前記可動体と前記回転体との接触部を略半円筒形にしたことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の試料傾け補助具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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