説明

試料台及び試料ホルダ

【課題】本発明は、TEM観察に用いる試料をイオンミリング法により作製するに当たり、イオンビームが試料台をスパッタすることにより生じる試料台物質が試料表面に付着するいわゆるリデポジッションの少ない試料を作製する試料台を提供する。
【解決手段】頂角が120度以下の三角形あるいは扇形で、先端部の厚さが1μm以上5μm以下で、先端から離れるにつれて傾斜断面を有し、傾斜断面の鉛直方向に対する傾斜角を5度以下とする導電性材料であり、TEM観察用試料ホルダ及びイオンミリング装置用試料ホルダに固定するための穴を有することを特徴とするイオンミリング用試料台である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、TEM観察に用いる試料をイオンミリング法により作製するための試料台及び試料ホルダに関する。
【背景技術】
【0002】
透過型電子顕微鏡(TEM)観察に用いる薄膜試料の作製方法として、集束イオンビーム加工装置を利用した方法が広く用いられている。特に、特許文献1〜3に記載されているように、大きな試料から数μm〜数十μm程度の微細な部分を摘出し、専用の試料台に接着後、摘出した試料片を薄膜化する方法(以下、マイクロサンプリング法)は、観察したい部分を狙って薄膜試料にすることが可能であり、現在広く用いられている。
【0003】
ここで、集束イオンビーム加工装置で作製した試料には、集束イオンビームによるダメージにより試料表面に片面10〜20nmのダメージ層が発生する。このダメージ層のために、集束イオンビーム加工法で作製した試料では、高分解能でのTEM観察が難しいと言う問題がある。そのため、集束イオンビーム加工装置での加工後、試料表面のダメージ層を除去するために、Arイオンビームによるイオンミリングを施すことが多い。
【0004】
しかしながら、Arイオンビームによるイオンミリングを施す場合、Arイオンビームにより、試料だけでなく、マイクロサンプリング法で試料片を固定した試料台もスパッタリングされ、スパッタされた試料台物質が試料表面に再付着する所謂リデポジッションが問題となる。
【0005】
リデポジッションを避けるためには、試料台はできるだけ薄い方が望ましい。例えば、特許文献4に記載されているように、試料台の断面形状を台形状とし、先端部の厚さを2〜5μm以下にした試料台が提案されている。しかしながら、特許文献4記載の試料台では、試料台の厚さが厚くなる割合が最大で45度と大きいため、リデポジッションを防ぐ目的に対しては大きな効果が得られない。また、特許文献2、3に記載されているように、試料台形状としては、半円形状のものが主に利用されている。しかしながら、半円形状の試料台では、試料近傍に試料台が存在するため、リデポジッションが顕著になる。これに対し、特許文献5に記載されているように、円錐形状あるいは角錐形状の試料台が提案されているが、この場合も、試料近傍の試料台の厚さが厚いため、リデポジッションが避けられない。
【0006】
【特許文献1】特開平11−108813 号公報
【特許文献2】特開2001−242051号公報
【特許文献3】特開2006−172958号公報
【特許文献4】特開2004−179038号公報
【特許文献5】特開2004−199969号公報
【非特許文献1】材料の科学と工学 Vol.40 No.5 Page.232−236 「鉄鋼材料開発における電子顕微鏡の役割」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、TEM観察に用いる試料をイオンミリング法により作製するに当たり、イオンビームが試料台をスパッタすることにより生じるリデポジッションの少ないイオンミリング用試料台を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、試料台の形状を頂角が120度以下の三角形あるいは扇形とし、先端部の厚さが1μm以上5μm以下で、先端から離れるにつれて角度5度以下の割合で厚さが厚くなるような試料台断面形状とすることで、リデポジッションが殆ど無くなることを見出した。さらに、その試料台の一部に穴を開けることにより、TEM観察用試料ホルダ及び/又はイオンミリング装置用試料ホルダに固定することが容易となることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
その主旨とするところは、以下の通りである。
(1) TEM観察に用いる試料を装着する導電性材料からなる試料台であって、前記試料台先端部の断面に前記試料を装着する平面を有し、前記試料台の幅方向に前記先端部から頂角が120度以下の三角形あるいは扇形状に広がり、かつ、前記先端部の厚さが1μm以上5μm以下で、前記先端部から離れるにつれて厚さが厚くなる傾斜断面を有し、前記傾斜断面の鉛直方向に対する傾斜角を5度以下とすると共に、前記試料台の位置を固定する試料ホルダに固定するための穴を有することを特徴とする、試料台。
(2) TEM観察に用いる試料を装着する導電性材料からなる試料台であって、前記試料台先端部の断面に前記試料を装着する平面を有し、前記試料台の幅方向に前記先端部から広がりがなく、かつ、前記先端部の厚さが1μm以上5μm以下で、前記先端部から離れるにつれて厚さが厚くなる傾斜断面を有し、前記傾斜断面の鉛直方向に対する傾斜角を5度以下とすると共に、前記試料台の位置を固定する試料ホルダに固定するための穴を有することを特徴とする、試料台。
(3) TEM観察に用いる試料を装着する導電性材料からなる試料台であって、
前記試料台先端部の断面に前記試料を装着する平面を有し、前記試料台の幅方向に前記先端部から頂角が120度以下の三角形あるいは扇形状に広がり、かつ、前記先端部の厚さが1μm以上5μm以下で、前記先端部から厚さが一定である部分を有すると共に、前記試料台の位置を固定する試料ホルダに固定するための穴を有することを特徴とする、試料台。
(4) TEM観察に用いる試料を装着する導電性材料からなる試料台であって、
前記試料台先端部の断面に前記試料を装着する平面を有し、前記試料台の幅方向に前記先端部から広がりがなく、かつ、前記先端部の厚さが1μm以上5μm以下で、前記先端部から厚さが一定である部分を有すると共に、前記試料台の位置を固定する試料ホルダに固定するための穴を有することを特徴とする、試料台。
(5) 前記試料を装着するための前記平面部の幅が1μm以上100μm未満であることを特徴とする、(1)〜(4)のいずれかに記載の試料台。
(6) (1)〜(5)のいずれかに記載の試料台を固定するための試料ホルダであって、前記試料台の穴に嵌合する突起を有することを特徴とする、試料ホルダ。
(7) 前記試料ホルダがTEM観察用及び/又はイオンミリング装置用であることを特徴とする、(6)記載の試料ホルダ。
【発明の効果】
【0010】
本発明の試料台により、TEM観察に用いる試料をイオンミリング法により作製するに当たり、イオンビームが試料台をスパッタすることにより生じる試料台物質が試料表面に付着する所謂リデポジッションの少ない試料を作製することが可能になり、TEMによる高分解能での観察、詳細な解析が可能となる。
また、本発明の試料ホルダを用いることで、試料を破損させることなく、試料台を容易に試料ホルダに装着することが可能となり、試料作製の効率を大幅に向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0012】
図1は、本発明の試料台の一例を示す平面図と断面図である。材質は導電性であれば良い。例えば、モリブデンやニッケル、銅等の金属材料が使用できる。但し、柔らかい材質の場合、薄くした時に曲がる恐れがあるため、硬い材質の方が望ましい。例えば、モリブデンが適している。
【0013】
試料台1は、先端に、試料を装着するために平面部4を有している。この平面部4に、集束イオンビーム加工装置を用いたマイクロサンプリング法により抽出した試料を装着する。マイクロサンプリング法については、非特許文献1に詳しく説明されている。簡単に説明すると、試料の観察したい部分の周囲をGaイオンビームで削り、観察したい部分にタングステン等からなる針を接着し、観察したい部分を持ち上げ、抽出するものである。抽出した試料の大きさは幅1〜10μm、奥行き1〜5μm、高さ1〜30μm程度の大きさである場合が多い。TEM観察用の試料を作製する場合、この抽出した試料を、試料台1に載せて接着し、さらに、集束イオンビーム装置内で厚さを0.1μm程度まで加工し、TEM観察用の薄膜試料とする。接着は、炭化タングステン等のガスを吹き付けながら、Gaイオンビームを照射することで起こる化学蒸着を利用することが多い(非特許文献1)。
【0014】
本発明の一例としての試料台1においては、先端部の平面部4に、マイクロサンプリング法により抽出した試料を載せて、接着する。試料をしっかりと接着し固定するためには、平面部4の幅5は、抽出した試料の幅よりも大きいことが望ましい。しかしながら、集束イオンビーム加工装置での加工後のイオンミリングにおいてのリデポジッションを避けるためには、試料台1の平面部4の幅5は試料の幅よりも小さいことが望ましい。したがって、試料台1の平面部4の幅5は試料の幅と同程度が最も望ましい。マイクロサンプリング法で抽出できる試料の幅は最大100μm程度であるので、試料台1の平面部4の幅5は1〜100μmが好ましい。
【0015】
試料台1の先端部の頂角3は小さい方が望ましい。120度超になるとリデポジッションが顕著になるため、120度以下とする。頂角3は0度であっても良い。ただし、頂角3が小さい場合、試料台1の強度によっては、試料を載せた際に試料台1が曲がる恐れがある。したがって、頂角3が小さい場合は、試料台1が曲がらないように、試料台1の試料ホルダへの取付部付近で、試料台1を補強することが望ましい。補強した試料台1の一例を図2に示す。補強部9の形状は、特に限定されない。ただし、補強部9は、試料台1の先端部から少なくとも30μm以上離れていることが好ましい。30μmよりも近いと、リデポジッションの原因となる可能性がある。
【0016】
試料台1の先端部の厚さ6は薄い方が良いが、1μm未満では、マイクロサンプリング法により抽出した試料を固定するのが難しくなるため、1μm以上が望ましい。また、5μm超の厚さになると、リデポジッションが急激に増加するため、5μm以下とした。先端部から遠ざかるにつれて、試料台1の厚さは厚くなる。すなわち、試料台1は、先端部から離れるにつれて厚さが厚くなる傾斜断面を有する。
【0017】
図1及び図2の断面図に示すように、厚さの増加の割合(傾斜断面の鉛直方向に対する傾斜角)7は、0度以上5度以下とする。高分解能観察に適したTEM試料を作製する場合、イオンミリングのビーム入射角度が5度以下で実施する場合が多く、試料台1のの断面形状も5度以下の傾斜角で厚さが増加する形状が適している。5度超の傾斜角で厚さが増加する形状の場合、イオンミリングのビーム入射角度が5度以下の場合にリデポジッションが激しくなる。傾斜角がマイナス、即ち、先端部から遠ざかるにつれて厚みが薄くなる場合、試料台1の強度が弱くなり、試料台1が曲がる恐れがあるため、前記傾斜角は0度以上が望ましい。また、前記傾斜角が0度以上であっても、その角度が小さい場合、試料台1の材質によっては曲がる恐れがある。したがって、前記傾斜角が小さい場合は、試料台1が曲がらないように、試料台1の試料ホルダへの取付部付近で、試料台1を補強することが望ましい。補強した試料台1の一例を図3、図4に示す。補強部9の形状は、特に限定されない。ただし、補強部9の厚さも、試料台1の先端部から前記傾斜角が5度の割合で増加してきた場合の試料台1の厚さを超えてはならない。リデポジッションの原因となる可能性があるためである。
【0018】
図5に、イオンミリング時のイオンビーム入射方向11と試料台1及び試料10の断面形状を示す。また、TEM観察用の試料ホルダ及び/又はイオンミリング装置用試料ホルダに装着することを考えて、最も厚い部分の厚さ8は20μm〜100μm程度が望ましい。100μmよりも厚いと試料ホルダの許容厚さを超える場合があり、20μm未満であるとピンセット等による取り扱いが難しく、試料を破損する恐れが強くなり、また、試料台1をTEM試料ホルダ及び/又はイオンミリング装置用試料ホルダに固定することが難しい。
【0019】
従来の試料台の場合、TEM試料ホルダあるいはイオンミリング装置用試料ホルダに試料台を載せて、上から押さえ板を被せて、押さえ板を試料ホルダにネジ止め等の方法で固定する方法が一般的であるが、試料台の厚さが薄いと、この方法では試料台がしっかりと固定されない。接着剤で試料台を試料ホルダに固定することは可能であるが、その場合、TEM観察時あるいはイオンミリング時の試料汚染の原因になる上、試料台を取り外す際に試料台及び試料を破損してしまう可能性が高い。
【0020】
本発明では、図1の平面図に示すように、試料台1には0.2mmφ〜0.5mmφの穴2が開けてある。図6及び図7に示すように、TEM観察用試料ホルダの本体15の先端部12には0.18mmφ〜0.48mmφの突起13が付いており、押さえ板16には0.2mmφ〜0.5mmφの穴17が開けてある。TEM試料ホルダの突起13を、試料台1の穴2を合わせて装着し、押さえ板16を上から被せて、ネジ19をTEM観察用試料ホルダの上端部12のネジ穴14と押さえ板16のネジ穴18に挿通させてネジ止めすることで、試料台1がTEM試料ホルダに固定される(図8、9)。TEM試料ホルダの突起13は、試料台1の穴2及び押さえ板16の穴17に挿入し易いように、試料台1及び押さえ板16の穴2,17よりも直径で0.02mm〜0.04mm程度小さくしておくことが望ましい。穴2,17の直径よりも突起13の直径が0.04mm以上小さいと、試料台1をしっかりと固定することができないことがある。直径の差が0.02mm以下だと、突起13を穴2,17に挿入する作業が極めて難しくなることがある。
【0021】
試料台1の穴2は、小さ過ぎると、試料ホルダの突起13を穴2に挿入する作業が難しくなる恐れがある。しかしながら、大き過ぎると、試料台1の強度が弱くなり、曲がる恐れがある。試料台1の強度を保ちつつ、取り扱いが比較的容易な大きさを検討した結果、前記の大きさとすることが好ましい。
【0022】
前記試料台1を取り付けるためのイオンミリング用試料ホルダを図10、11に示す。TEM観察用試料ホルダの場合と同様に、試料台1を装着するための突起20が付いている。試料台1の穴2を突起20に嵌め込み、その上から押さえ板23を被せて、ネジ24をネジ穴21に挿通させることで固定する。突起20の形状は、TEM観察用試料ホルダの場合と同様に、0.18mmφ〜0.48mmφが好ましい。突起20の高さは、試料台1と押さえ板23の厚さの和と同程度が望ましい。突起20の高さが試料台1と押さえ板23の厚さの和よりも極端に低いと、試料台1及び押さえ板23を固定できない。しかしながら、突起20の高さが高過ぎると、イオンミリング時のリデポジッションの原因となる。
【0023】
押さえ板23の厚さは、50〜200μm程度が望ましい。薄過ぎると押さえ板の強度が弱くなり、試料台1をしっかりと固定できない。厚過ぎるとリデポジッションの原因となる。
【0024】
試料回転台22の周囲には、イオンミリング装置内で回転できるように歯車が付いている。
【実施例】
【0025】
(実施例1)
表1に示す化学組成を有する鋼を作製し、集束イオンビーム加工装置を用いたマイクロサンプリング法により試料の一部を抽出し、図12に示す形状の試料台の上に載せて固定した。試料台に用いた材料はモリブデンである。試料台をピンセット等で取り扱い易いように、試料台の底部には円弧状のリングが付いた形状とした。
【0026】
マイクロサンプリング法で抽出した試料の大きさは、幅10μm、厚さ3μm、高さ20μmである。試料の試料台への固定は、タングステンの化学蒸着法を利用した。さらに、集束イオンビーム装置により抽出した試料の厚さを100nmまで薄膜化した。マイクロサンプリング及び薄片化には、加速電圧30kVで加速したGaイオンビームを用いた。薄膜化した試料を載せた試料台を図14に示す形状のイオンミリング用試料ホルダに載せ替え、ネジで固定し、イオンミリング装置に装着し、Arイオンビームによるイオンミリングを行った。イオンミリングは、加速電圧300V、ビーム電流4μA、イオンビーム入射角度4度で、試料を回転させながら10分間行った。Arイオンミリング終了後、試料台を図13に示すTEM観察用試料ホルダに載せ替え、TEM内で試料の元素分析を行った。元素分析は、TEMに装着された蛍光X線分析装置を利用した。
【0027】
比較例として、マイクロサンプリング法により、図15に示す試料台に試料を載せて、集束イオンビーム加工装置により薄膜化し、その後Arイオンビームによるイオンミリングを行った。イオンミリングの際に用いたイオンミリング用試料ホルダに試料台を固定した状態を図16に示す。試料台27の固定は市販の樹脂系ワックスで固定した。マイクロサンプリング法、集束イオンビーム加工装置による薄膜化、及びArイオンビームによるイオンミリングの条件は、前記条件と同一の条件とした。試料台27の材質も前記試料台と同じもの(モリブデン)とした。Arイオンミリング終了後、試料台27を通常のTEM観察用試料ホルダに載せ替え、TEM内で試料26の元素分析を行った。TEM観察用試料ホルダに試料台27を取り付けた状態を図17に示す。試料台27は押さえ板を被せて、ネジで固定した。
【0028】
結果を表2に示す。比較例の試料台27を用いて試料作製した場合、蛍光X線分析によりモリブデンの信号が検出された。これは、Arイオンミリングの際に試料台27が削られて、試料26表面に付着したものと考えられる。一方、本発明の試料台を用いた場合、蛍光X線分析においてモリブデンの信号は検出されず、試料台からのリデポジッションが皆無であった。
【0029】
【表1】

【0030】
【表2】

【0031】
(実施例2)
試料台の形状を様々に変えて、実施例1と同様の試料作製を行い、実施例1と同様に、リデポジッションの有無を判定した。結果を表3に示す。本発明の条件範囲内においては、リデポジッションが検出されなかった。一方、頂角が120度を越える比較例、厚さ増加割合が5度を超える比較例、先端部の厚さが5μmを超える比較例については、いずれもリデポジッションが検出された。
【0032】
【表3】

【0033】
(実施例3)
本発明の試料台には穴があいており、試料ホルダの突起と嵌合することで、試料台を容易に固定でき、ハンドリングミスによる試料破損を少なくできる。本発明の試料台を用いて、実施例1と同様の試料作製を100回づつ行い、ハンドリングミスによる試料破損確率を調べた。結果を表4に示す。表4には、比較例として、穴が開いていない試料台を用いた場合の結果も併せて示す。本発明の条件範囲内においてはハンドリングミスによる試料破損は10%以下であるが、比較例の試料台では、ハンドリングミスによる試料破損の確率が高くなった。
【0034】
【表4】

【0035】
(実施例4)
本発明のイオンミリング用試料ホルダには突起が付いており、試料台の穴と嵌合することで、試料台を容易に固定でき、ハンドリングミスによる試料破損を少なくできる。また、試料台の固定にワックスや接着剤を使用した場合に問題となる試料汚染も回避できる。
本発明の試料台を用いて、試料汚染及びハンドリングミスによる試料破損確率を調べた。試料破損確率は、実施例1と同様の試料作製を100回ずつ行い、調べた。試料汚染の有無は、TEM中で蛍光X線分析を行い、炭素が検出されるかどうかで判断し、炭素が検出されなかった場合を○、炭素が検出された場合を×とした。結果を表5に示す。本発明の条件範囲内においては、試料汚染は皆無であり、ハンドリングミスによる試料破損は10%以下であった。比較例として、図18に示す突起が付いていないイオンミリング用試料ホルダに、試料の上から押さえ板を被せてネジで固定した場合、及び、図17に示す突起が付いていないイオンミリング用試料ホルダに、樹脂系ワックスで試料を固定した場合の試料汚染及びハンドリングミスによる試料破損確率を調べた。結果を表5に併せて示す。
【0036】
【表5】

【0037】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の試料台の構成の一例を示す図である。
【図2】頂角が0度の場合の本発明の試料台の構成の一例を示す図である(補強部あり)。
【図3】厚さ増加割合が0度の場合の本発明の試料台の構成の一例を示す図である(補強部あり)。
【図4】厚さ増加割合が0度の場合の本発明の試料台の構成の一例を示す図である(補強部あり)。
【図5】イオンミリング時のイオンビーム入射方向と試料台及び試料の断面形状を示す図である。
【図6】本発明のTEM観察用試料ホルダの構成の一例を示す図である。
【図7】本発明のTEM観察用試料ホルダに用いる試料押さえの構成の一例を示す図である。
【図8】本発明のTEM観察用試料ホルダに本発明の試料台を載せた状態の一例を示す図である。
【図9】本発明のTEM観察用試料ホルダに本発明の試料台を載せ、押さえ板で固定した状態の一例を示す図である。
【図10】本発明のイオンミリング用試料ホルダの構成の一例を示す図である。
【図11】本発明のイオンミリング用試料ホルダ本発明の試料台を載せ、押さえ板で固定した状態の一例を示す図である。
【図12】実施例1〜4で用いた本発明の試料台の構成を示す図である。
【図13】実施例1〜4で用いたTEM観察用試料ホルダの形状を示す図である。
【図14】実施例1〜4で用いた本発明のイオンミリング用試料ホルダの形状を示す図である。
【図15】実施例1で用いた比較例の試料台の形状を示す図である。
【図16】実施例1で用いた比較例のイオンミリング用試料ホルダの構成を示す図である。
【図17】実施例1で用いた比較例のTEM観察用用試料ホルダの構成を示す図である。
【図18】実施例4で用いた比較例のイオンミリング用試料ホルダの構成を示す図である。
【符号の説明】
【0039】
1 試料台
2 穴
3 頂角
4 平面部
5 平面部の幅
6 先端部(平面部)の厚さ
7 厚さ増加割合
8 最大厚さ
9 補強部
10 試料
11 Arイオンビームの入射方向
12 TEM観察用試料ホルダの先端部
13 突起
14 ネジ穴
15 TEM観察用試料ホルダの本体
16 押さえ板
17 穴
18 ネジ穴
19 ネジ
20 突起
21 ネジ穴
22 試料回転台
23 押さえ板
24 ネジ
25 試料
26 試料
27 試料台



【特許請求の範囲】
【請求項1】
TEM観察に用いる試料を装着する導電性材料からなる試料台であって、
前記試料台先端部の断面に前記試料を装着する平面を有し、前記試料台の幅方向に前記先端部から頂角が120度以下の三角形あるいは扇形状に広がり、かつ、前記先端部の厚さが1μm以上5μm以下で、前記先端部から離れるにつれて厚さが厚くなる傾斜断面を有し、前記傾斜断面の鉛直方向に対する傾斜角を5度以下とすると共に、前記試料台の位置を固定する試料ホルダに固定するための穴を有することを特徴とする、試料台。
【請求項2】
TEM観察に用いる試料を装着する導電性材料からなる試料台であって、
前記試料台先端部の断面に前記試料を装着する平面を有し、前記試料台の幅方向に前記先端部から広がりがなく、かつ、前記先端部の厚さが1μm以上5μm以下で、前記先端部から離れるにつれて厚さが厚くなる傾斜断面を有し、前記傾斜断面の鉛直方向に対する傾斜角を5度以下とすると共に、前記試料台の位置を固定する試料ホルダに固定するための穴を有することを特徴とする、試料台。
【請求項3】
TEM観察に用いる試料を装着する導電性材料からなる試料台であって、
前記試料台先端部の断面に前記試料を装着する平面を有し、前記試料台の幅方向に前記先端部から頂角が120度以下の三角形あるいは扇形状に広がり、かつ、前記先端部の厚さが1μm以上5μm以下で、前記先端部から厚さが一定である部分を有すると共に、前記試料台の位置を固定する試料ホルダに固定するための穴を有することを特徴とする、試料台。
【請求項4】
TEM観察に用いる試料を装着する導電性材料からなる試料台であって、
前記試料台先端部の断面に前記試料を装着する平面を有し、前記試料台の幅方向に前記先端部から広がりがなく、かつ、前記先端部の厚さが1μm以上5μm以下で、前記先端部から厚さが一定である部分を有すると共に、前記試料台の位置を固定する試料ホルダに固定するための穴を有することを特徴とする、試料台。
【請求項5】
前記試料を装着するための前記平面部の幅が1μm以上100μm未満であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の試料台。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の試料台を固定するための試料ホルダであって、
前記試料台の穴に嵌合する突起を有することを特徴とする、試料ホルダ。
【請求項7】
前記試料ホルダがTEM観察用及び/又はイオンミリング装置用であることを特徴とする、請求項6記載の試料ホルダ。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2010−9774(P2010−9774A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−164632(P2008−164632)
【出願日】平成20年6月24日(2008.6.24)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】