説明

試料検査装置及び試料検査方法

【課題】位置合わせミスによる擬似欠陥の発生を抑制し、効率の良い検査を行うこと。
【解決手段】試料のパターンを測定して測定画像を生成する測定画像生成部と、測定画像と基準画像とを比較して差異が閾値を超えたら欠陥と判定する比較部とを備える、試料検査装置において、測定画像と基準画像の一定エリアのエリア画像を切り出し、エリア画像同士の位置ずれ量を測定し、エリア画像同士の位置ずれ量の信頼度を示す信頼度情報を求める位置ずれ測定部と、信頼度情報と位置ずれ量を利用してエリア画像同士の位置合わせを行う位置合わせ部と、を備える試料検査装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料のパターンを検査する検査に関し、特に半導体素子や液晶ディスプレイ(LCD)を製作するときに使用されるフォトマスク、ウェハ、あるいは液晶基板などの試料のパターンを検査する検査装置と検査方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
1ギガビット級のDRAMに代表されるように、大規模集積回路(LSI)を構成するパターンは、サブミクロンからナノメータのオーダーになろうとしている。このLSIの製造における歩留まりの低下の大きな原因の一つとして、半導体ウェハ上に超微細パターンをフォトリソグラフィ技術で露光、転写する際に使用されるフォトマスクの欠陥があげられる。特に、半導体ウェハ上に形成されるLSIのパターン寸法の微細化に伴って、パターン欠陥として検出しなければならない寸法も極めて小さいものとなっている。このため、このような欠陥を検査する装置の開発が行われている。
【0003】
一方、マルチメディア化の進展に伴い、液晶表示装置(LCD)は、500mm×600mm、またはこれ以上への液晶基板サイズの大型化と、液晶基板上に形成されるTFT等のパターンの微細化が進んでいる。従って、極めて小さいパターン欠陥を広範囲に検査することが要求されるようになってきている。このため、このような大面積LCDのパターン及び大面積LCDを製作する時に用いられるフォトマスクの欠陥を短時間で、効率的に検査する試料検査装置の開発も急務となってきている。
【0004】
背景技術において、被検査領域は、短冊状の検査ストライプに仮想的に分割され、更にその分割された検査ストライプが連続的に走査されるようにXYθテーブルの動作が制御されて検査が実行されることを前提としている。実際に比較処理する際には、検査ストライプをさらに細分化したエリアに対して比較判定処理を行っており、エリアごとに画像同
士の位置合わせを行った後で該エリアの欠陥有無を判定する比較行為がなされてきた。
【0005】
ところが、エリア内にパターンが存在しない場合に正確な位置ずれ量が測定できなかったり、存在したとしてもX軸方向のパターンのみが存在したりした場合にX軸方向の位置ずれ量が測定できないような場合が散見されている。そして、エリアの位置ずれが極端に変動することはないため、そのような場合にも近傍エリアの位置ずれ量を使用することで、より正確な位置合わせが可能となる(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−147749
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
(1)本発明は、効率の良い試料検査を行うことにある。
(2)また、本発明は、試料の画像の位置合わせを効率良く行うことにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明の実施の形態では、試料のパターンを測定して測定画像を生成する測定画像生成部と、測定画像と基準画像とを比較して差異が閾値を超えたら欠陥と判定する比較部とを備える、試料検査装置において、測定画像と基準画像の一定のエリアのエリア画像を切り出し、エリア画像同士の位置ずれ量を測定し、エリア画像同士の位置ずれ量の信頼度を示す信頼度情報を求める位置ずれ測定部と、信頼度情報と位置ずれ量を利用してエリア画像同士の位置合わせを行う位置合わせ部と、を備え
前記信頼度情報は、エリア画像同士をずらしながら求めた、エリア画像同士の差の2乗和平均のグラフの勾配が大きいと、ずれ量の信頼度が高くなり、勾配が小さいと、ずれ量の信頼度が低くなる、試料検査装置にある。
(2)又、本発明の実施の形態では、試料のパターンを測定して測定画像を生成し、測定画像と基準画像の一定のエリアのエリア画像を切り出し、エリア画像同士の位置ずれ量を測定し、エリア画像同士の位置ずれ量の信頼度を示す信頼度情報を求め、信頼度情報と位置ずれ量を利用してエリア画像同士の位置合わせを行い、測定画像と基準画像とのエリア画像を比較して、差異が閾値を超えたら欠陥と判定し、
前記信頼度情報は、エリア画像同士をずらしながら求めた、エリア画像同士の差の2乗和平均のグラフの勾配が大きいと、ずれ量の信頼度が高くなり、勾配が小さいと、ずれ量の信頼度が低くなる、試料検査方法にある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施の形態における試料検査装置と試料検査方法を説明するためのブロック図である。
【図2】実施の形態における試料検査装置の内部構成を示す概念図である。
【図3】光学画像の取得手順を説明するための図である。
【図4】幾つかのエリア画像の図である。
【図5】ずれ量と信頼度情報を求める一例を示す図である。
【図6】ずれ量と信頼度情報を求める他の例を示す図である。
【図7】試料検査の手順を説明するための図である。
【図8】信頼度情報を求める他の例を示す図である。
【図9】ダイ−ダイ(DD)比較を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の詳細を実施の形態によって説明する。
【0011】
(試料検査装置)
図1は、本発明の実施の形態の試料検査装置と試料検査方法を説明するブロック図である。試料検査装置10は、フォトマスク、ウェハ、あるいは液晶基板などの試料のパターン12を検査するものである。試料検査装置10は、試料のパターン12を測定画像生成部14で測定して光学データの測定画像を生成する。また、試料検査装置10は、試料のパターンの設計データ22を参照画像生成部24で処理して参照画像を生成する。
【0012】
位置ずれ測定部30は、生成された測定画像と参照画像から一定の領域のエリアのエリア画像を切出すエリア画像切出部300、エリア画像同士の位置ずれ量を測定する位置ずれ量算出部302、このエリアの位置ずれ量の信頼度情報を生成する信頼度情報生成部304を備えている。この信頼度情報は、位置ずれ量算出部302で求めたエリア画像同士の位置ずれ量が、実際の位置ずれ量との一致度の確かさを示す情報である。格納部32は、位置ずれ測定部30で求めた、各エリアの位置ずれ量と信頼度情報を格納する。位置合わせ部34は、格納部32から読み出された信頼度情報を参照して、測定画像のエリア画像16と参照画像のエリア画像26とを位置合わせする。比較部36は、これらエリア画像16、26を比較して、その差異が閾値を超えたら欠陥と判定する。
【0013】
なお、後述するが、測定画像と対比する基準となる画像は、設計データ22から求めた参照画像の他に、測定画像生成部14で生成した測定画像を利用することもできる。そのため、測定画像と対比する画像を参照画像と測定画像を含めて基準画像と呼び、ブロック26では、基準画像(参照画像と測定画像)と記載してある。
【0014】
図2は、試料検査装置10の内部構成を示す概念図である。試料検査装置10は、マスクやウェハ等の基板を試料100として、試料100のパターンの欠陥を検査するものである。試料検査装置10は、光学画像取得部110と制御系回路150とを備えている。光学画像取得部110は、オートローダ112、照明光を発生する照明装置114、XYθテーブル116、XYθモータ118、レーザ測長システム120、拡大光学系122、ピエゾ素子124、フォトダイオードアレイなどの受光部126、センサ回路128などを備えている。制御系回路150では、制御計算機となるCPU152が、データ伝送路となるバス154を介して、大容量記憶装置156、メモリ装置158、表示装置160、印字装置162、オートローダ制御回路170、テーブル制御回路172、オートフォーカス制御回路174、展開回路176、参照回路178、比較回路180、位置回路182、位置ずれ測定回路184などに接続されている。展開回路176、参照回路178、比較回路180、位置回路182及び、位置ずれ測定回路184は、図2に示すように、相互に接続されている。XYθテーブル116は、X軸モータ、Y軸モータ、θ軸モータなどのXYθモータ118により駆動される。
【0015】
なお、図1の測定画像生成部14は、図2の光学画像取得部110で構成することができる。同様に、参照画像生成部24は、展開回路176と参照回路178により構成することができる。位置ずれ測定部30は、位置ずれ測定回路184で構成することができ、エリア画像切出部300、位置ずれ量算出部302、及び、信頼度情報生成部304などの処理を行う。位置合わせ部34と比較部36は、比較回路180で構成することができ、位置合わせの処理、比較処理、欠陥の検出処理などを行う。格納部32は、大容量記憶装置156又はメモリ装置158を使用することができる。また、格納部32は、制御系回路150内の適当な箇所に配置できるが、位置ずれ処理を行う位置ずれ測定部30に内臓させると便利である。図2では、本実施の形態を説明する上で必要な構成部分以外については記載を省略している。試料検査装置10にとって、通常、必要なその他の構成が含まれる。
【0016】
(光学画像取得部の動作)
試料100は、オートローダ制御回路170により駆動されるオートローダ112から自動的に搬送され、XYθテーブル116の上に配置される。試料100は、照明装置114によって光が照射される。試料100の下方には、拡大光学系122、受光部126及びセンサ回路128が配置されている。露光用マスクなどの試料100を透過した光は、拡大光学系122を介して、受光部126に光学像として結像し、入射される。オートフォーカス制御回路174は、試料100のたわみやXYθテーブル116のZ軸(X軸とY軸と直交する)方向への変動を吸収するため、ピエゾ素子124を制御して、試料100への焦点合わせを行なう。XYθテーブル116は、CPU152の制御の下にテーブル制御回路172により駆動される。X軸方向、Y軸方向、θ方向に駆動する3軸(X−Y−θ)モータ118の様な駆動系によって移動可能となる。これらの、Xモータ、Yモータ、θモータは、例えばステップモータを用いることができる。XYθテーブル116の移動位置は、レーザ測長システム120により測定され、位置回路182に供給される。受光部126で受光した光学像は、センサ回路128で測定画像の電子データとなる。センサ回路128から出力された試料100の光学画像は、位置回路182から出力されたXYθテーブル116上における試料100の位置を示すデータとともに位置ずれ測定回路184に送られる。位置ずれ測定回路184から測定画像と参照画像が比較回路180に送られる。なお、図2の試料検査装置10では、試料100の透過光を利用しているが、試料100の反射光を利用することもできる。XYθテーブル116上の試料100は、オートローダ制御回路170により検査終了後に自動的に排出される。なお、光学画像は、例えば8ビットの符号なしデータであり、各画素の明るさの階調を表現している。
【0017】
(参照画像の生成)
試料100のパターン形成時に用いた設計データ22は、大容量記憶装置156に記憶される。設計データ22は、大容量記憶装置156からCPU152を通して展開回路176に入力される。設計データの展開工程として、展開回路176は、試料100の設計データを2値ないしは多値の原イメージデータに変換して、この原イメージデータが参照回路178に送られる。参照回路178は、原イメージデータに適切なフィルタ処理を施し、参照画像を生成する。センサ回路128から得られた測定画像は、拡大光学系122の解像特性や受光部126のアパーチャ効果等によってフィルタが作用した状態にあると言える。この状態では測定画像と参照画像の特性に差異があるので、設計側の原イメージデータにも参照回路178によりフィルタ処理を施し、測定画像に合わせる。位置ずれ測定回路184は、測定画像と参照画像を取り込み、エリア画像を切り出し、位置ずれ量を測定し、信頼度情報を求める。比較回路180は、信頼度情報を参照して、エリア画像同士を位置ずれ量ずらして位置合わせを行い、所定のアルゴリズムに従って比較し、欠陥の有無を判定する。
【0018】
以上の説明において、「〜回路」或いは「〜工程」と記載したものは、コンピュータで動作可能なプログラムにより構成することができる。或いは、ソフトウェアとなるプログラムだけではなく、ハードウェアとソフトウェアとの組合せにより実施させても構わない。或いは、ファームウェアとの組合せでも構わない。又は、これらの組み合わせで実現しても良い。また、プログラムにより構成される場合、プログラムは、磁気ディスク装置、磁気テープ装置、FD、或いはROM(リードオンリメモリ)等の記録媒体に記録される。
【0019】
(検査ストライプの画像取得)
図3(A)は、測定画像の取得手順を説明するための図である。試料100の被検査領域は、図3(A)に示すように、Y軸方向にスキャン幅Wで仮想的に分割される。即ち、被検査領域は、スキャン幅Wの短冊状の複数の検査ストライプ101に仮想的に分割される。更にその分割された各検査ストライプ101が連続的に走査されるようにXYθテーブル116が制御される。XYθテーブル116は、X軸に沿って移動して、測定画像は、検査ストライプ101として取得される。検査ストライプ101は、図3(A)では、Y軸方向のスキャン幅Wを持ち、長手方向がX軸方向の長さを有する矩形の形状である。受光部126では、図3(A)に示されるようなスキャン幅Wの画像を連続的に受光する。受光部126は、第1の検査ストライプ101における画像を取得した後、第2の検査ストライプ101における画像を今度は逆方向に移動しながら同様にスキャン幅Wの画像を連続的に入力する。スキャン幅Wは、例えば2048画素程度とする。第3の検査ストライプ101における画像を取得する場合には、第2の検査ストライプ101における画像を取得する方向とは逆方向、すなわち、第1の検査ストライプ101における画像を取得した方向に移動しながら画像を取得する。
【0020】
(試料検査の位置ずれ処理)
試料検査の位置ずれ処理は、測定画像と参照画像とをまず、図3(B)のように適当な画素サイズのエリアにそれぞれ切り出す。通常は、検査に先立ち測定画像と参照画像との位置合わせ(全体アライメント)を行っておく。これは適当な専用マークを使って行われるが、オペレータが指定する任意のパターンエッジ等を使って行ってもよい。従って、切り出したエリア画像同士は、おおよその位置は合っているが、試料のひずみやXYθテーブル116の精度などにより若干の位置ずれを生じている。そこで、切り出したエリア画像(通常1024画素角程度)同士の位置ずれ量をサブ画素単位で測定して両者のずれ量が小さくなるように調整し(エリアアライメント)、その後、適切なアルゴリズムに従って比較し、欠陥の有無を判定する。
【0021】
エリアアライメントに用いる手法は種々のものが存在するが、例えば、1/16画素程度の精度でX、Y軸方向にパターンをずらしながら、2つのエリア画像の差の2乗和平均をとり、それが最小となる位置を最適位置と判断するような手法がある。図4(A)、(B)に示すようなパターン形状の場合にはあまり問題にならないことが多いが、エリア内にパターンが存在しない場合や、図4(C)に示すように存在しても位置ずれ量を測定する際にノイズに埋もれてしまうような場合には、正確な位置ずれ量が測定できないことがある。パターンが存在したとしても、図4(D)に示すようなY軸方向のパターンのみが存在する場合、Y軸方向の位置ずれ量が測定できないことがある。又は、実際の欠陥が存在している場合、欠陥に引きずられて正確なエリアアライメントができないようなこともある。
【0022】
しかし、測定パターンの取得手法を考慮するとエリアの位置ずれが極端に変動することはないため、そのような場合にも近傍エリアの位置ずれ量を使用することで、より正確な位置合わせが可能となる。ただし、その際、近傍エリアで測定した位置ずれ量が信頼できるかどうかが重要となる。そこで、本発明の実施形態では、測定画像と参照画像の一定エリアのエリア画像同士の位置ずれ量を測定し、このエリア画像同士の位置ずれ量の信頼度を示す信頼度情報を求める。なお、このように位置ずれを測定し、それを基にした位置ずれ測定結果信頼度情報を得る方法は、効率よく信頼性の高い信頼度情報を得ることができる。上述した差の2乗和平均をとる手法の他に、絶対値平均や符号付平均、隣接画素との差などの手法もある。位置ずれ測定結果信頼度情報は、位置ずれを測定する際、同時に信頼度情報も得られる情報である。位置ずれ測定結果信頼度情報は、信頼度情報が測定した位置ずれ量に含まれている情報である。
【0023】
(第1の実施形態)
図5(A)と図5(B)は、図4(B)のパターンに対して、X軸方向とY軸方向にそれぞれ、エリア画像同士を、1/16画素の精度でパターンをずらしながら、2つの画像の差の2乗和平均を取って求めたものである。X軸方向は、−1/16画素の「ずれ」において、2乗和平均の値が最小になり、それを中心にマイナス方向もプラス方向も2乗和平均の値が勾配をもった傾斜で徐々に大きくなっている。この場合、X軸方向において、−1/16画素の位置ずれ量でエリア画像が一致していると考えられる。また、Y軸方向は、+1/16画素の「ずれ」において、2乗和平均の値が最小になり、それを中心にマイナス方向もプラス方向も2乗和平均の値が勾配をもった傾斜で徐々に大きくなっている。この場合、Y軸方向において、+1/16画素の位置ずれ量でエリア画像が一致していると考えられ。図4(B)のパターンに対して、図5(A)と図5(B)に示すようにX軸方向とY軸方向共にピークが出現する。
【0024】
図6(A)と図6(B)は、図4(D)のようなパターンに対して、X軸方向とY軸方向それぞれに、図5(A)と図5(B)と同様にして、エリア画像同士を、1/16画素の精度でパターンをずらしながら、2つの画像の差の2乗和平均を取って求めたものである。図4(D)では、X軸方向に対しては、図6(A)に示すように±0画素の位置ずれ量でエリア画像が一致し、ピークが出現しているが、Y軸方向に対しては図6(B)に示すようにピークが出現していない。
【0025】
図5(A)と(B)及び図6(A)と(B)で示すグラフの勾配から「ずれ量」の信頼度を知ることができる。グラフの勾配が大きいと、「ずれ量」の信頼度が高くなり、勾配が小さいと、「ずれ量」の信頼度が低くなる。例えば、図5(A)の場合、グラフの勾配が大きく、−1/16画素の「ずれ量」の信頼度が高くなり、図5(B)の場合も、勾配が図5(A)より少し小さく、+1/16画素の「ずれ量」の信頼度が少し低くなる。また、図6(A)の場合、グラフの勾配が図5(A)より大きく、±0画素の「ずれ量」の信頼度が更に高くなる。
【0026】
このように、ピークの出現パターンと勾配の大小関係からX、Yそれぞれの方向に対する信頼度を複数段階、例えば10段階に分けて、信頼度情報として、エリアごとに出力する。この信頼度情報は自身のエリアにも反映するが、近傍のエリアに対しても反映させることが容易にできる。例えば、表1のようにテーブルで信頼度情報を記憶する。表1は、信頼度を10段階に分け、数値が大きい程、信頼度が高いとする。信頼度情報は、各エリアに複数種類、持たせることができる。
【0027】
【表1】

【0028】
(試料検査の流れ)
図7は、試料のパターン検査の流れを示している。図3(A)に示すように検査ストライプの測定画像を取得する(ステップS1)。次に、図3(B)に示すように測定画像と参照画像について、一定領域のエリアを切り出す(ステップS2)。切り出された、測定画像と参照画像のエリア画像同士の位置ずれ量を算出する(ステップS3)。
【0029】
一例として、測定画像と参照画像のエリア画像同士の位置ずれ量は、上述のように、図5(A)と(B)、及び図6(A)と(B)から求めることができる。図5(A)では、X軸方向の−1/16画素の位置ずれ量が求まり、図5(B)では、Y軸方向の+1/16画素の位置ずれ量が求まり、図6(A)では、X軸方向の±0画素の位置ずれ量が求まる。しかし、図6(B)では、Y軸方向にピークがないので、位置ずれ量を求めることはできない。
【0030】
図5(A)と(B)及び図6(A)と(B)で示すグラフの勾配から、上述のように、「ずれ量」の信頼度を知ることができる。図6(B)の場合、2乗和平均の値の変化がなく、「ずれ量」を求めることができず、当然、勾配がゼロであるから、信頼度も得られない。このようにして、算出した各エリアについて、位置ずれ量と信頼度情報を格納部32に書き込む(ステップS4)。
【0031】
図6(B)のように、「位置ずれ量」が不明であり、又は、信頼度が低い場合、このエリアの近傍の信頼度の高いエリア画像を調査し、最適な信頼度の高いエリア画像が得られたら、その「位置ずれ量」を利用して位置合わせ処理を行う(ステップS5)。位置合わせが完了したら、測定画像のエリア画像と参照画像のエリア画像を比較して、その差が所定の閾値より大きい場合、欠陥と判定する(ステップS6)。この手順を同一のストライプのエリアで行い、比較するエリアが無くなったら(ステップS7)、次のストライプに進み、検査するストライプが無くなったら(ステップS8)、検査を終了する。
【0032】
(第2の実施形態)
信頼度情報の算出は、図5(A)と(B)及び図6(A)と(B)の他に、パターン形状から推定することも可能である。一例として隣接画素との差をとる手法を記述する。例えば、図8(A)に示すようなパターン形状(簡単のため5×5画素で図示している。)についてX軸方向とY軸方向に差分(微分)をとると、それぞれ図8(B)、図8(C)のようになる。パターンのエッジを横切る場合に、この差分値が大きくなることから図8(A)のパターンは、図4(D)のように縦のエッジを有すると推定することができる。これらの推定結果から総合的に各方向に対する確からしさを求めておくことで、対象エリアの方向ごとの信頼度情報を作成することができる。なお、エリアアライメントに影響を及ぼすような大きな欠陥が存在した場合には、上記パターン形状情報が2つの画像で異なることになる。このようなエリアの信頼度情報の値は極端に下げておくと良い。このようにすることで、欠陥に引きずられることもなく、エリア内のパターン形状に影響されることもなく、効率よく検査を行うことが可能になる。
【0033】
(第3の実施形態)
検査ストライプ画像を取得した後でエリア単位の検査は行われる。図3(B)に示すように、検査ストライプ内には複数の隣接したエリアが存在する。より近いエリアの信頼度情報を参照することが基本となるが、パターン形状が複雑である場合には、より遠いエリアの信頼度情報を採用した方が適切な場合も存在する。しかし、遠いエリアである場合には、系の変動影響をより多く受けていることも考慮しなければならない。そのため、単純に信頼度情報の高いものを優先するのではなくて、信頼度情報に距離に応じた重みを付与する。例えば、信頼度情報に距離に逆比例した重みを付与することで、エリア画像の信頼度情報が高くても、遠くにある場合、信頼度を低くする。
【0034】
(第4の実施形態)
今まで、検査ストライプ内でのエリア情報の参照について記したが、パターン形状が検査ストライプを跨る方向に同様の傾向を示していることもある。そのため、検査ストライプを跨った信頼度情報の参照も考慮に入れるとよい。その場合、同一の検査ストライプと、別の検査ストライプで重み付けを変えて、別の検査ストライプでは、同一の検査ストライプより重みを小さくして、信頼度を低くする。
【0035】
(第5の実施形態)
XYθテーブル116の動作は、図3に示すように順方向(FWD方向)と逆方向(BWD方向)の交互動作をさせる。XYθテーブル116の走行精度によっては、順方向走行時と逆方向走行時で軌道が若干異なる可能性がある。このような場合に、直前の検査ストライプ、つまりXYθテーブル116が逆方向に動作したときの位置ずれ情報を反映すると、かえって位置ずれが大きくなってしまう可能性がある。そこで、位置ずれ情報を反映するのは、同一方向に動作して画像取得した検査ストライプのものを使用すると良い。
【0036】
例えば、第1検査ストライプが順方向動作であれば、第2検査ストライプは逆方向動作、そして第3検査ストライプが順方向動作となるので、第3検査ストライプの位置ずれ情報の参照には、第1検査ストライプの位置ずれ情報を反映することになる。
【0037】
比較処理とXYθテーブル116の動作は同期が取れているとは限らないので、第5検査ストライプの位置ずれ情報参照に第1検査ストライプの位置ずれ情報を反映できるようにしておくことも有効である。検査ストライプの方向で重み付けを変えて、順方向の検査ストライプを利用する場合、逆方向の検査ストライプより重みを大きくして信頼度を高める。更に、距離の重みと組み合わせることにより、より正確な信頼度を得ることができる。
【0038】
(第6の実施形態)
エリア内の図形形状が、図4(D)に示すようなパターンである場合には、Y軸方向の最適位置は求まり難いが、近傍に図4(A)や(B)のようなエリアが存在すれば、そのY位置から該当エリアの推定をすることができる。試料検査装置などの系の変動影響を考慮すると近傍エリアの反映量はサブ画素単位ではなく、画素単位にとどめておいて、サブ画素単位の位置あわせは、処理エリア内で行う。これにより、ノイズ低減効果を得ることができる。ここで整数画素にとどめると、誤差の累積を防ぐことができる。
【0039】
(第7の実施形態)
これまでの実施形態ではX、Y軸方向の信頼度情報について記述してきたが、図4(B)のような斜めパターンに対しては、X、Y軸方向ともに測定することは可能であるが、上述したパターン形状判定の際にX、Y軸方向だけでは方向性がはっきりせず、信頼度レベルをあげることが難しくなる傾向にある。このような場合に備えて、X、Y軸方向に加えて、X、Y軸に対して45度方向の形状の信頼度情報をもった方がより適切となることもある。パターン形状としては、45度以外の斜め線も存在するため、幾つかの方向について信頼度情報を求めても良い。しかし、求める方向が多過ぎると、複雑になるため、適当な数の方向に絞ると良い。
【0040】
(第8の実施形態)
これまでの実施形態では、測定画像と参照画像を比較するダイ−データベース(DB)比較検査装置について述べたが、測定画像同士を比較するダイ−ダイ(DD)比較検査手法もある。ダイ−ダイ比較の場合、比較の一方の測定画像が基準画像となる。この場合、図9に示すように試料100の中に同一の設計データから描画された領域が2つ以上あることが前提となる。ダイ−ダイ比較検査を行う試料検査装置には、光源を2つ以上持ち、比較したい画像を同時に取り込むものと、光源は1つであるが、少なくとも検査ストライプ1本分のメモリを搭載して、取り込んだ画像から比較したい画像をお互いに切り出すものがある。このようなダイ−ダイ比較検査の場合においても、これまでの実施形態で説明したように、近傍エリアの位置ずれ量と信頼度情報を反映させることは有効である。
【0041】
近傍エリアの位置ずれ量と信頼度情報を参考にして、エリアの位置合わせを実行することにより、位置合わせミスによる擬似欠陥の発生を抑制し、効率の良い検査を行うことが可能になった。なお、複数の信頼度情報を組み合わせることで、より確実な信頼度を得ることができる。従来、比較対象エリア内で位置ずれ量が正確に測定できなかった場合に、近傍エリアの位置ずれ量を単純に参照して、かえって合わせ込みがうまくいかないことがあるが、本発明は、このことを解決することができる。
【0042】
以上、具体例を参照しつつ実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。各実施の形態では、XYθテーブル116が移動することで検査位置が走査されているが、XYθテーブル116を固定し、その他の光学系が移動するように構成しても構わない。すなわち、相対移動すればよい。また、装置構成や制御手法等、本発明の説明に直接必要しない部分等については記載を省略したが、必要とされる装置構成や制御手法を適宜選択して用いることができる。その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更しうる全ての試料検査装置は、本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0043】
10・・・試料検査装置
12・・・試料のパターン
14・・・測定画像生成部
16・・・測定画像のエリア画像
22・・・試料のパターンの設計データ
24・・・参照画像生成部
26・・・基準画像(参照画像又は測定画像)のエリア画像
30・・・位置ずれ測定部
300・・エリア画像切出部
302・・位置ずれ量算出部
302・・信頼度情報生成部
32・・・各エリアの位置ずれ量と信頼度情報の格納部
34・・・位置合わせ部
36・・・比較部
100・・試料
101・・検査ストライプ
110・・光学画像取得部
112・・オートローダ
114・・照明装置
116・・XYθテーブル
118・・XYθモータ
120・・レーザ測長システム
122・・拡大光学系
124・・ピエゾ素子
126・・受光部
128・・センサ回路
150・・制御系回路
152・・CPU
154・・バス
156・・大容量記憶装置
158・・メモリ装置
160・・表示装置
162・・印字装置
170・・オートローダ制御回路
172・・テーブル制御回路
174・・オートフォーカス制御回路
176・・展開回路
178・・参照回路
180・・比較回路
182・・位置回路
184・・位置ずれ測定回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料のパターンを測定して測定画像を生成する測定画像生成部と、測定画像と基準画像とを比較して差異が閾値を超えたら欠陥と判定する比較部とを備える、試料検査装置において、
測定画像と基準画像の一定のエリアのエリア画像を切り出し、エリア画像同士の位置ずれ量を測定し、エリア画像同士の位置ずれ量の信頼度を示す信頼度情報を求める位置ずれ測定部と、
信頼度情報と位置ずれ量を利用してエリア画像同士の位置合わせを行う位置合わせ部と、を備え
前記信頼度情報は、エリア画像同士をずらしながら求めた、エリア画像同士の差の2乗和平均のグラフの勾配が大きいと、ずれ量の信頼度が高くなり、勾配が小さいと、ずれ量の信頼度が低くなる、試料検査装置。
【請求項2】
位置合わせ部は、位置合わせ対象のエリア画像同士の位置合わせを行う際、近傍のエリア画像の信頼度情報を参照し、近傍のエリア画像の信頼度が高い場合、近傍のエリア画像の位置ずれ量を利用して、エリア画像同士の位置合わせを行う、請求項1に記載の試料検査装置。
【請求項3】
位置ずれ量とその信頼度情報を保持す格納部を備え、
格納部には、位置ずれ量とその信頼度情報を複数持つ、請求項1乃至2のいずれかに記載の試料検査装置。
【請求項4】
位置合わせ部は、位置合わせ対象のエリア画像同士の位置合わせを行う際、近傍のエリア画像の信頼度情報に位置合わせ対象のエリアからの距離を基にして重みを付して信頼度を求め、近傍のエリア画像の信頼度が高い場合、近傍のエリア画像の位置ずれ量を利用して、エリア画像同士の位置合わせを行う、請求項1乃至3のいずれかに記載の試料検査装置。
【請求項5】
試料のパターンが、短冊状の検査ストライプに仮想的に分割され、検査ストライプが連続的に走査されるようにXYθテーブルの動作が制御される試料検査装置において、
位置合わせ部は、比較対象のエリア画像が属する検査ストライプ以外の検査ストライプで得られたエリア画像の信頼度情報を参照する、請求項1乃至4のいずれかに記載の試料検査装置。
【請求項6】
試料のパターンが、短冊状の検査ストライプに仮想的に分割され、検査ストライプが連続的に走査されるようにXYθテーブルの動作が制御される試料検査装置において、
位置合わせ部は、XYθテーブルの動作方向が同方向の比較対象のエリア画像が属する検査ストライプ以外の検査ストライプで得られたエリア画像の信頼度情報を参照する、請求項1乃至5のいずれかに記載の試料検査装置。
【請求項7】
信頼度情報は、X軸方向及びY軸方向に別個に持つ、請求項1乃至のいずれかに記載の試料検査装置。
【請求項8】
試料のパターンを測定して測定画像を生成し、
測定画像と基準画像の一定のエリアのエリア画像を切り出し、
エリア画像同士の位置ずれ量を測定し、
エリア画像同士の位置ずれ量の信頼度を示す信頼度情報を求め、
信頼度情報と位置ずれ量を利用してエリア画像同士の位置合わせを行い、
測定画像と基準画像とのエリア画像を比較して、差異が閾値を超えたら欠陥と判定し、
前記信頼度情報は、エリア画像同士をずらしながら求めた、エリア画像同士の差の2乗和平均のグラフの勾配が大きいと、ずれ量の信頼度が高くなり、勾配が小さいと、ずれ量の信頼度が低くなる、試料検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−286500(P2010−286500A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−189979(P2010−189979)
【出願日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【分割の表示】特願2008−5469(P2008−5469)の分割
【原出願日】平成20年1月15日(2008.1.15)
【出願人】(305008983)アドバンスド・マスク・インスペクション・テクノロジー株式会社 (105)
【Fターム(参考)】