説明

試料観察装置、エッジ位置算出装置、及びプログラム

電子ビームを照射して、所望のパターンが形成された試料の表面を観察する試料観察装置であって、電子ビームを試料の表面に照射する電子銃と、電子ビームが試料の表面に照射されることにより、試料から生じる電子を検出する電子検出部と、電子検出部が検出した電子に基づいて、試料の表面上の位置と、当該位置に対応して電子検出部が検出した電子量との関係を示す信号プロファイルを生成する状態取得部と、試料の表面上のそれぞれの位置における、信号プロファイルの2階微分値を算出する微分器と、信号プロファイルの2階微分値に基づいて、試料の表面に設けられたパターンのエッジの位置を算出するエッジ位置算出部とを備える試料観察装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、電子ビームにより試料の表面を観察する試料観察装置に関する。特に、本発明は、試料表面に設けられたパターンのエッジを観察する試料観察装置に関する。また本出願は、下記の日本特許出願に関連する。文献の参照による組み込みが認められる指定国については、下記の出願に記載された内容を参照により本出願に組み込み、本出願の記載の一部とする。
特願2003−086966 出願日 2003年3月27日
【背景技術】
従来、電子ビームを用いて試料を観察する装置に電子顕微鏡がある。電子顕微鏡は、電子ビームを試料に照射することにより試料から生じる2次電子、反射電子等を検出し、検出したこれらの電子に基づいて、試料表面の電子像を取得する。
試料の表面には所望のパターンが設けられており、電子顕微鏡が取得した電子像から、当該パターンの寸法を測定する場合がある。この場合、当該パターンの断面のそれぞれの位置に対応する電子量から、当該パターンのエッジを検出し、パターン寸法を測定している(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】 特開平5−2996754号公報(第2−3頁、第7図)
しかし、電子顕微鏡は、様々な要因によって電子像を精度よく取得できない場合がある。例えば、試料、試料ステージ等の帯電等の電気的な要因によって電子ビームがドリフトしたり、電子ビームの焦点がずれてしまった場合、精度よく電子像を取得できない。また、試料ステージの振動等の物理的な要因によっても、電子ビームの照射位置等がずれてしまい、精度よく電子像を取得することができない。このため、測定したパターンの寸法は、測定環境等により変動し、再現性のある測定をすることが困難であった。
そこで本発明は、上記の課題を解決することのできる試料観察装置、エッジ位置算出装置、及びプログラムを提供することを目的とする。この目的は、請求の範囲における独立項に記載の特徴の組み合わせにより達成される。また従属項は本発明の更なる有利な具体例を規定する。
【発明の開示】
上記課題を解決するために、本発明の第1の形態においては、電子ビームを照射して、所望のパターンが形成された試料の表面を観察する試料観察装置であって、電子ビームを試料の表面に照射する電子銃と、電子ビームが試料の表面に照射されることにより、試料から生じる電子を検出する電子検出部と、電子検出部が検出した電子に基づいて、試料の表面上の位置と、当該位置に対応して電子検出部が検出した電子量との関係を示す信号プロファイルを生成する状態取得部と、試料の表面上のそれぞれの位置における、信号プロファイルの2階微分値を算出する微分器と、信号プロファイルの2階微分値に基づいて、試料の表面に設けられたパターンのエッジの位置を算出するエッジ位置算出部とを備える試料観察装置を提供する。
エッジ位置算出部は、2階微分値が極小値となる位置を、エッジの位置として算出してよい。試料観察装置は、信号プロファイルをスムージングしたスムージングプロファイルを算出するスムージング部を更に備え、微分器は、信号プロファイルの微分値、スムージングプロファイルの微分値、及びスムージングプロファイルの2階微分値を更に算出し、エッジ位置算出部は、信号プロファイルの微分値が極大値となる位置に対する、スムージングプロファイルの微分値が極大値となる位置の変動量、及び信号プロファイルの2階微分値が極小値となる位置に対する、スムージングプロファイルの2階微分値が極小値となる位置の変動量に基づいて、エッジ位置を算出してよい。
信号プロファイルをスムージングしたスムージングプロファイルを算出するスムージング部を更に備え、微分器は、信号プロファイルの微分値、スムージングプロファイルの微分値、及びスムージングプロファイルの2階微分値を更に算出し、エッジ位置算出部は、信号プロファイルの2階微分値が極小値となる位置に対する、スムージングプロファイルの2階微分値が極小値となる位置の変動量が予め定められた閾値以下である場合、信号プロファイルの2階微分値が極小値となる位置をエッジ位置として算出し、信号プロファイルの2階微分値が極小値となる位置に対する、スムージングプロファイルの2階微分値が極小値となる位置の変動量が予め定められた閾値以上である場合、信号プロファイルの微分値が極大値となる位置に対する、スムージングプロファイルの微分値が極大値となる位置の変動量、及び信号プロファイルの2階微分値が極小値となる位置に対する、スムージングプロファイルの2階微分値が極小値となる位置の変動量に基づいて、エッジ位置を算出してよい。
本発明の第2の形態においては、試料の表面に照射された電子ビームによって取得された、試料の表面の状態を示す信号プロファイルから、試料の表面におけるエッジの位置を算出するエッジ位置算出装置であって、信号プロファイルの2階微分値を算出する微分器と、信号プロファイルの2階微分値に基づいて、試料の表面に設けられたパターンのエッジの位置を算出するエッジ位置算出部とを備えるエッジ位置算出装置を提供する。
本発明の第3の形態においては、エッジ位置算出装置に、試料の表面に照射された電子ビームによって取得された試料の表面の状態を示す信号プロファイルから、試料の表面におけるエッジの位置を算出させるプログラムであって、エッジ位置算出装置を、信号プロファイルの2階微分値を算出する微分器と、信号プロファイルの2階微分値に基づいて、試料の表面に設けられたパターンのエッジの位置を算出するエッジ位置算出部として機能させるプログラムを提供する。
尚、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではなく、これらの特徴群のサブコンビネーションも又、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明の実施形態に係る試料観察装置100の構成の一例を示す図である。
図2は、信号処理部30が取得する電子像及び信号プロファイルを説明する図である。図2(a)は、試料110の表面に設けられたパターン112の一例を示し、図2(b)は、信号処理部30が取得する電子像の一例を示し、図2(c)は、信号処理部30が生成する信号プロファイルの一例を示す。
図3は、信号処理部30の構成の一例を示す図である。
図4は、エッジ114の形状及び信号プロファイルの一例を示す図である。図4(a)は、エッジ114の形状の一例を示し、図4(b)は、傾斜角効果を考慮しない場合の信号プロファイルを示し、図4(c)は、傾斜角効果により増大する電子量の信号プロファイルを示し、図4(d)は、信号処理部30が生成する信号プロファイルを示す。
図5は、信号プロファイル、微分値、及び2階微分値の関係の一例を示す図である。
図6は、信号プロファイル118をスムージングした場合の、信号最大点、微分最大点、及び2階微分最小点の位置の変動の一例を示す図である。
図7は、エッジ位置算出装置34の構成の他の例を示す図である。
図8は、信号プロファイル及びスムージングプロファイルのエッジ領域の一例を示す図である。
図9は、特異点の位置を算出する方法の一例を説明するための図である。
図10は、試料観察装置100を制御するコンピュータ300の構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は請求の範囲にかかる発明を限定するものではなく、又実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
図1は、本発明の実施形態に係る試料観察装置100の構成の一例を示す。試料観察装置100は、測定するべき試料110に電子ビーム24を照射することにより、試料110の表面の状態を観察する。試料観察装置100は、筐体10、電子銃12、偏向器14、レンズ18、電子検出部16、試料ホルダ20、試料ステージ22、及び信号処理部30を備える。
まず、試料観察装置100の動作の概要について説明する。電子銃12は、電子ビーム24を生成する。電子銃12には、電子ビーム24を試料110方向に加速するための負の加速電圧が印加される。偏向器14は、電子ビーム24を、試料110の表面の所望の位置に偏向させる。偏向器14は、例えば、電界を生成することにより電子ビーム24を偏向させる。
レンズ18は、偏向された電子ビーム24を、試料110の表面において合焦させる。レンズ18は、例えば与えられる電流に応じて電子ビームの焦点位置を変更させるものであってよい。
試料ホルダ20は、試料110を載置する。試料ホルダ20には、電子銃12より高い電位が与えられ、電子ビーム24を試料110の方向に加速させる。また、試料ステージ22は、試料ホルダ20を載置する。試料観察装置100は、試料ステージ22を移動させることにより、電子ビーム24が照射される試料110の位置を変更する。
電子検出部16は、電子ビーム24が試料110の表面に照射されることにより生じる電子を検出する。信号処理部30は、電子検出部16が検出した電子に基づいて、試料110の表面の状態を示す電子像を取得する。また、信号処理部30は、試料110の表面上の位置と、当該位置に対応して電子検出部16が検出した電子量との関係を示す信号プロファイルを生成し、当該信号プロファイルに基づいて、試料110の表面に設けられたパターンのエッジ位置を算出する。また、信号処理部30は、当該パターンの寸法を算出する。
図2は、信号処理部30が取得する電子像及び信号プロファイルを説明する図である。図2(a)は、試料110の表面に設けられたパターン112の一例を示す。例えば、試料110は、半導体基板であって、パターン112は試料110の表面に設けられた配線パターンである。パターン112は、試料110の表面に対し角度を有して設けられたエッジ114を有する。本例における試料観察装置100は、当該エッジ114の試料110の表面における位置を測定し、測定したエッジ位置に基づいてパターン112の寸法を測定する。
図2(b)は、信号処理部30が取得する電子像の一例を示す。電子ビーム24が試料110の表面に照射されることにより、電子ビーム24が照射された試料110の表面において2次電子及び反射電子が生じる。信号処理部30は、電子ビーム24が照射された位置と、当該位置に電子ビーム24が照射されたときに電子検出部16が検出した電子量とを対応付けて格納し、電子ビーム24が照射された位置と、当該位置に対応する電子量との関係を示す電子像を生成する。
図2(c)は、信号処理部30が生成する信号プロファイルの一例を示す。信号処理部30は、寸法を測定するべきパターン112の断面A−A’のそれぞれの位置と、当該位置に対応する電子量との関係を示す信号プロファイルを生成する。図2(c)に示すように、信号プロファイルにはパターン112のエッジ114に対応する位置に、波形のエッジを含むエッジ領域116を有する。信号処理部30は、当該信号プロファイルの波形のエッジの位置を算出することにより、パターン112のエッジ114の位置を算出する。
図3は、信号処理部30の構成の一例を示す。信号処理部30は、状態取得部32、及びエッジ位置算出装置34を有する。状態取得部32は、電子検出部16が検出した電子に基づいて、試料110の表面上の位置と、当該位置に対応して電子検出部16が検出した電子量との関係を示す信号プロファイルを生成する。
エッジ位置算出装置34は、状態取得部32が生成した信号プロファイルに基づいて、試料110の表面に設けられたパターン112のエッジ114の位置を算出する。エッジ位置算出装置34は、微分器42及びエッジ位置算出部40を有する。
微分器42は、試料110の表面上のそれぞれの位置における、信号プロファイルの2階微分値を算出する。このとき、微分器42は、エッジ領域116に対応する範囲の2階微分値を算出してよく、またエッジ領域116の一部に対応する範囲の2階微分値を算出してもよい。この場合、微分器42は、エッジ領域116において、信号値が最小となる位置と信号値が最大となる位置との間のそれぞれの位置における2階微分値を算出することが好ましい。
エッジ位置算出部40は、信号プロファイルの2階微分値に基づいて、試料110の表面に設けられたパターン112のエッジ114の位置を算出する。例えば、エッジ位置算出部40は、信号プロファイルの2階微分値が極小値となる位置を、エッジ114の位置として算出する。
図4は、エッジ114の形状及び信号プロファイルの一例を示す。図4(a)は、エッジ114の形状の一例を示す。このようなエッジ114に電子ビームを照射した場合、エッジ114の形状と材質に応じて2次電子が放出される。但し、いわゆる傾斜角効果により、電子ビームの入射方向に対して傾きを有する場所から放出される2次電子量は、電子ビームの入射方向に対して傾きを有さない場所から放出される2次電子量より増大する。
図4(b)は、傾斜角効果を考慮しない場合の信号プロファイルを示し、図4(c)は、傾斜角効果により増大する電子量の信号プロファイルを示す。状態取得部32は、図4(d)に示すように、図4(b)及び図4(c)に示した信号プロファイルを加算した信号プロファイルを生成する。
本例における試料観察装置100は、信号プロファイルの2階微分値が極小となる位置をエッジ114の位置として算出する。当該位置は、図4(c)に示す斜度成分が最大となる点とほぼ一致する。また、斜度成分が最大となる点は、信号プロファイルの斜度が最大となる点に近似できる。信号プロファイルの斜度が最大となる点は、電子ビームのドリフト、焦点ずれ等が生じた場合であっても、検出される位置の変動が少ないため、本例における試料観察装置100は、電子ビームのドリフト、焦点ずれ等が生じた場合であっても再現性のある測定を行うことができる。
図5は、信号プロファイル118、微分値122、及び2階微分値124の関係の一例を示す図である。また、本図においては信号プロファイル118の立ち上がりエッジの領域を示す。
図4において説明したように、状態取得部32は、傾斜角効果を考慮しない場合の信号プロファイルに斜度成分を加算した信号プロファイルを取得する。このとき、2階微分値の最小点(極小値となる点)は、信号プロファイルの信号最大点と、微分値の最大点(極大値となる点)との間で検出される。
図6は、信号プロファイル118をスムージングした場合の、信号最大点、微分最大点、及び2階微分最小点の位置の変動の一例を示す図である。ここで、スムージングとは、例えば信号プロファイルにおけるそれぞれの位置の電子量を、隣接する位置の電子量と加算平均し、当該位置におけるスムージングプロファイルの電子量の値として算出する操作を指す。つまり、スムージングプロファイルの所望の位置における電子量を算出するために、信号プロファイルから対応する複数のサンプル点を抽出し、抽出したサンプル点における電子量を加算平均することにより、当該スムージングプロファイルの所望の位置における電子量を算出する。
また、スムージングにおいては、スムージングプロファイルのそれぞれの位置の電子量を算出する場合に用いる、信号プロファイルにおけるサンプル点数を変化させることにより、スムージング強度を変化させることができる。例えば、スムージングプロファイルの所望の位置の電子量を算出するために、信号プロファイルの対応する位置を含む所定の領域に存在するサンプル点の電子量を加算平均するが、当該所定の領域の幅を変化させることにより、当該所定の領域に含まれるサンプル点数を変化させ、スムージング強度を変化させる。
また、上述したスムージングの操作では、複数のサンプル点の電子量を加算平均したが、他の例においては、それぞれのサンプル点の電子量に重み付けをして加算平均してもよい。また、当該重み付けの係数を変化させることにより、スムージングの強度を変化させてもよい。
信号プロファイルをスムージングすることにより、当該信号プロファイルを取得したときの測定条件に対して、電子ビーム24のドリフト、焦点ずれ等が生じている場合の、信号プロファイルを疑似的に算出することができる。つまり、信号プロファイルをスムージングしても位置の変動が少ない点は、測定条件によらず再現性のある測定点であるといえる。
図6において、横軸はスムージング強度を示し、縦軸は図5の横軸に対応した位置を示す。信号プロファイルをスムージングした場合、立ち上がりエッジにおける信号最大点は右側に変動し、微分最大点は左側に変動する。これに対し、2階微分最小点の位置はスムージング強度によらずほとんど変動しない。つまり、試料観察装置100は、測定条件によらず再現性のある測定を行うことができる。
また、予め定められた強度のスムージングを行った場合の、2階微分最小点の位置の変動量が予め定められた閾値以上である場合、エッジ位置算出装置34は、2階微分最小点の位置の変動量、及び微分最大点の位置の変動量に基づいてエッジ位置を算出してもよい。この場合、エッジ位置算出装置34は、信号プロファイルをスムージングするスムージング部を更に有することが好ましい。
図7は、エッジ位置算出装置34の構成の他の例を示す。本例におけるエッジ位置算出装置34は、スムージング部36、複数の微分器42、及びエッジ位置算出部40を有する。
スムージング部36は、信号プロファイルを受け取り、予め定められた強度のスムージングを行ったスムージングプロファイルを生成する。微分器42aは、信号プロファイル及びスムージングプロファイルを受け取り、それぞれの微分値を算出する。また、微分器42aは、信号プロファイルの微分値、及びスムージングプロファイルの微分値を受け取り、信号プロファイルの2階微分値、及びスムージングプロファイルの2階微分値を算出する。
エッジ位置算出部40は、信号プロファイルの微分値が最大となる位置に対する、スムージングプロファイルの微分値が最大となる位置の変動量、及び信号プロファイルの2階微分値が最小となる位置に対する、スムージングプロファイルの2階微分値が最小となる位置の変動量に基づいて、パターン112のエッジ位置を算出する。エッジ位置の算出方法については、図8及び図9を用いて説明する。
図8は、信号プロファイル及びスムージングプロファイルのエッジ領域の一例を示す。図8において、実線119で示される波形は、信号プロファイルのエッジ領域を示し、破線120で示される波形は、スムージングプロファイルのエッジ領域を示す。
図8に示すように、スムージングプロファイルの立ち上がりエッジの2階微分最小点は、信号プロファイルの立ち上がりエッジの2階微分最小点に対し、右側に変動する場合がある。2階微分最小点の位置の変動量が所定の閾値以下である場合、エッジ位置算出装置34は、図3に関連して説明したように2階微分最小点の位置をエッジ位置として算出する。
また、2階微分最小点の位置の変動量が所定の閾値以上である場合、エッジ位置算出装置34は、微分最大点及び2階微分最小点の位置の変動量に基づいて、エッジ位置を算出する。以下、微分最大点及び2階微分最小点の変動量に基づいてエッジ位置を算出する場合について説明する。
スムージングプロファイルの微分最大点は、信号プロファイルの微分最大点に対し、左側に変動する。2階微分最小点の変動方向と、微分最大点の変動方向との極性が変化しているため、スムージングをした場合に位置の変動量が略零となるような特異点は、2階微分最小点と微分最大点との間に有ることがわかる。
エッジ位置算出部40は、信号プロファイルの微分値最大点及び2階微分最小点の位置、及び信号プロファイルをスムージングした場合のこれらの点の変動量及び変動方向に基づいて、特異点を検出する。例えば、エッジ位置算出部40は、信号プロファイルの微分最大点と2階微分最小点との間を、前述したそれぞれの変動量に応じた分割比で分割した点をエッジ位置として算出する。
図9は、エッジ位置を算出する方法の一例を説明するための図である。図9において横軸はスムージング部36におけるスムージングの強度を示し、縦軸は信号プロファイルにおける微分最大点及び2階微分最小点の位置、及びスムージングプロファイルにおける微分最大点及び2階微分最小点の位置を示す。
エッジ位置算出部40は、まず信号プロファイルの2階微分最小点の位置を基準点A、微分最大点の位置を基準点Bとして算出する。次に、エッジ位置算出部40は、スムージングプロファイルの2階微分最小点の位置を基準点A’、微分最大点の位置を基準点B’として算出する。そして、基準点Aと基準点A’との位置の変動量ΔA、及び基準点Bと基準点B’との位置の変動量ΔBを算出する。
そして、エッジ位置算出部40は、基準点Aの位置、基準点Bの位置、変動量ΔA、及び変動量ΔBから、特異点の位置Eを算出する。例えば、基準点Aと基準点A’とを結ぶ直線が、基準点Bと位置B’とを結ぶ直線と交わる位置を特異点の位置Eとして算出する。例えば、エッジ位置算出部40は下式に基づいて特異点の位置Eを算出する。

また、ΔA及びΔBは、測定するべきパターン112の形状によって定まるため、エッジ位置算出部40は、予め同一形状のパターンを用いて測定したΔA及びΔBを格納し、格納したΔA及びΔBを用いて特異点の位置Eを算出してもよい。また、エッジ位置算出部40は、α=ΔA/ΔBの値を予め格納していてもよい。この場合、エッジ位置算出部40は、下式を用いて特異点の位置Eを算出する。

また、それぞれの位置の変動量が、スムージングの強度に対して線形に変化する領域と、非線形に変化する領域がある。スムージング部36は、微分最大点及び2階微分最小点の位置の変動量がスムージングの強度に対して線形に変化する領域で、信号プロファイルをスムージングすることが好ましい。例えば、スムージング部36は、微分最大点のスムージングによる位置の変動量が、スムージングプロファイルの各点を算出するために用いる信号プロファイルのサンプル点数に対して線形に変化するサンプル点数の領域で、信号プロファイルをスムージングしてスムージングプロファイルを生成する。
以上説明した処理により、信号プロファイルにおける位置と、スムージングプロファイルにおける位置とが略同一である特異点の位置を算出することができる。算出した特異点の位置を、測定するべきパターン112のエッジ114の位置とすることで、電子ビーム24のドリフト、焦点ずれ等が生じた場合であっても、再現性のある測定を行うことができる。
また、本例における試料観察装置100は、信号プロファイルをスムージングすることにより、電子ビームのドリフトや焦点ずれが生じた場合の信号プロファイルを擬似的に算出していたが、他の例においては、偏向器14、レンズ18等を制御することにより電子ビームのドリフトや焦点ずれを実際に生じさせた場合の信号プロファイルを更に取得して特異点を検出してもよい。
また、試料観察装置100は、観察するべきパターンの形状毎に、前述した特異点の信号レベルが予め与えられており、観察するパターン112の信号プロファイルにおいて当該信号レベルとなる位置をエッジの位置として算出してもよい。
図10は、試料観察装置100を制御するコンピュータ300の構成の一例を示す。本例において、コンピュータ300は、試料観察装置100を図1〜図9において説明した試料観察装置100として機能させるプログラムを格納する。また、コンピュータ300は、試料観察装置100のエッジ位置算出装置34として更に機能してもよい。
コンピュータ300は、CPU700と、ROM702と、RAM704と、通信インターフェース706と、ハードディスクドライブ710と、フレキシブルディスクドライブ712と、CD−ROMドライブ716とを備える。CPU700は、ROM702、RAM704、ハードディスクドライブ710、フレキシブルディスク720、及び/又はCD−ROM722に格納されたプログラムに基づいて動作する。
例えば、コンピュータ300が、エッジ位置算出装置34として機能する場合、当該プログラムは、コンピュータ300が、エッジ位置算出装置34として機能するためのプログラムを格納する。コンピュータ300をエッジ位置算出装置34として機能させるプログラムは、コンピュータ300を、例えば図3に関連して説明した微分器42、及びエッジ位置算出部40として機能させる。また、当該プログラムは、コンピュータ300を、図7に関連して説明したスムージング部36、微分器42a、微分器42b、及びエッジ位置算出部40として機能させてもよい。
通信インターフェース706は、例えば試料観察装置100の電子銃12、偏向器14、電子検出部16、レンズ18、及び試料ステージ22と通信し、それぞれを制御するための制御信号を送信する。格納装置の一例としてのハードディスクドライブ710、ROM702、又はRAM704は、設定情報、及びCPU700を動作させるためのプログラム等を格納する。また、これらのプログラムは、フレキシブルディスク720、CD−ROM722等の記録媒体に格納されていてもよい。
フレキシブルディスクドライブ712は、フレキシブルディスク720がプログラムを格納している場合、フレキシブルディスク720からプログラムを読み取りCPU700に提供する。CD−ROMドライブ716は、CD−ROMがプログラムを格納している場合、CD−ROM722からプログラムを読み取りCPU700に提供する。
また、プログラムは記録媒体から直接RAMに読み出されて実行されても、一旦ハードディスクドライブにインストールされた後にRAMに読み出されて実行されてもよい。更に、上記プログラムは単一の記録媒体に格納されても複数の記録媒体に格納されても良い。また記録媒体に格納されるプログラムは、オペレーティングシステムとの共同によってそれぞれの機能を提供してもよい。例えば、プログラムは、機能の一部または全部を行うことをオペレーティングシステムに依頼し、オペレーティングシステムからの応答に基づいて機能を提供するものであってもよい。
プログラムを格納する記録媒体としては、フレキシブルディスク、CD−ROMの他にも、DVD、PD等の光学記録媒体、MD等の光磁気記録媒体、テープ媒体、磁気記録媒体、ICカードやミニチュアーカードなどの半導体メモリー等を用いることができる。又、専用通信ネットワークやインターネットに接続されたサーバシステムに設けたハードディスクまたはRAM等の格納装置を記録媒体として使用してもよい。
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、請求の範囲の記載から明らかである。
【産業上の利用可能性】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、パターンのエッジ位置の測定等において、測定条件によらず再現性のある測定を行うことができる。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子ビームを照射して、所望のパターンが形成された試料の表面を観察する試料観察装置であって、
前記電子ビームを前記試料の表面に照射する電子銃と、
前記電子ビームが前記試料の表面に照射されることにより、前記試料から生じる電子を検出する電子検出部と、
前記電子検出部が検出した電子に基づいて、前記試料の表面上の位置と、当該位置に対応して前記電子検出部が検出した電子量との関係を示す信号プロファイルを生成する状態取得部と、
前記試料の表面上のそれぞれの位置における、前記信号プロファイルの2階微分値を算出する微分器と、
前記信号プロファイルの2階微分値に基づいて、前記試料の表面に設けられた前記パターンのエッジの位置を算出するエッジ位置算出部と
を備える試料観察装置。
【請求項2】
前記エッジ位置算出部は、前記2階微分値が極小値となる位置を、前記エッジの位置として算出する請求項1に記載の試料観察装置。
【請求項3】
前記信号プロファイルをスムージングしたスムージングプロファイルを算出するスムージング部を更に備え、
前記微分器は、前記信号プロファイルの微分値、前記スムージングプロファイルの微分値、及び前記スムージングプロファイルの2階微分値を更に算出し、
前記エッジ位置算出部は、前記信号プロファイルの微分値が極大値となる位置に対する、前記スムージングプロファイルの微分値が極大値となる位置の変動量、及び前記信号プロファイルの2階微分値が極小値となる位置に対する、前記スムージングプロファイルの2階微分値が極小値となる位置の変動量に基づいて、前記エッジ位置を算出する請求項1に記載の試料観察装置。
【請求項4】
前記信号プロファイルをスムージングしたスムージングプロファイルを算出するスムージング部を更に備え、
前記微分器は、前記信号プロファイルの微分値、前記スムージングプロファイルの微分値、及び前記スムージングプロファイルの2階微分値を更に算出し、
前記エッジ位置算出部は、
前記信号プロファイルの2階微分値が極小値となる位置に対する、前記スムージングプロファイルの2階微分値が極小値となる位置の変動量が予め定められた閾値以下である場合、前記信号プロファイルの2階微分値が極小値となる位置を前記エッジ位置として算出し、
前記信号プロファイルの2階微分値が極小値となる位置に対する、前記スムージングプロファイルの2階微分値が極小値となる位置の変動量が予め定められた閾値以上である場合、前記信号プロファイルの微分値が極大値となる位置に対する、前記スムージングプロファイルの微分値が極大値となる位置の変動量、及び前記信号プロファイルの2階微分値が極小値となる位置に対する、前記スムージングプロファイルの2階微分値が極小値となる位置の変動量に基づいて、前記エッジ位置を算出する請求項1に記載の試料観察装置。
【請求項5】
試料の表面に照射された電子ビームによって取得された、前記試料の表面の状態を示す信号プロファイルから、前記試料の表面におけるエッジの位置を算出するエッジ位置算出装置であって、
前記信号プロファイルの2階微分値を算出する微分器と、
前記信号プロファイルの2階微分値に基づいて、前記試料の表面に設けられた前記パターンのエッジの位置を算出するエッジ位置算出部と
を備えるエッジ位置算出装置。
【請求項6】
エッジ位置算出装置に、試料の表面に照射された電子ビームによって取得された前記試料の表面の状態を示す信号プロファイルから、前記試料の表面におけるエッジの位置を算出させるプログラムであって、
前記エッジ位置算出装置を、
前記信号プロファイルの2階微分値を算出する微分器と、
前記信号プロファイルの2階微分値に基づいて、前記試料の表面に設けられた前記パターンのエッジの位置を算出するエッジ位置算出部と
して機能させるプログラム。

【国際公開番号】WO2004/085959
【国際公開日】平成16年10月7日(2004.10.7)
【発行日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−503974(P2005−503974)
【国際出願番号】PCT/JP2004/000470
【国際出願日】平成16年1月21日(2004.1.21)
【出願人】(390005175)株式会社アドバンテスト (1,005)
【Fターム(参考)】