説明

試錐装置およびこれに使用する位置決め用筒状部材と固定用筒状部材

【課題】
地面上の掘削中心に対する試錐装置の位置決め作業を簡単に行うことができる試錐装置およびこれに使用する位置決め用筒状部材を提供することを目的とする。
【解決手段】
地面Eに穿った位置決め用の穴79内に、地面Eから上部を突出させた状態で略鉛直方向に位置決め用筒状部材81を挿入する。位置決め用筒状部材81の側面部に嵌合させた状態で該側面部に水平方向に押し当てて試錐装置1の地面Eに対する水平方向の位置決めを可能とする凹形状の嵌合部を、地面Eに穴を穿つための試錐装置1の台座3に形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地面に穴を穿つための試錐装置およびこれに使用する位置決め用筒状部材と固定用筒状部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に示されている従来の試錐装置においては、設置治具の中心と地面上の掘削中心とが一致するように前記設置治具を地面上に設置して固定したのち、試錐装置をクレーン装置で吊り上げて前記設置治具の上方に移動し、吊下げ状態に保持してから下降する。そして、前記試錐装置のガイド孔を前記設置治具の円筒部の外周面に嵌合した状態で前記円筒部の外周面に沿ってスライド下降させながら、前記試錐装置の接地板を前記設置治具の敷板上に着座させ前記試錐装置を固定するようにしている。
【特許文献1】特開2001−132378号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の試錐装置を地面上の掘削中心に位置付けるには、試錐装置をクレーン装置で吊り上げた状態でクレーン装置を操作しながら試錐装置のガイド孔と設置治具の円筒部との中心同士を正確に一致させたのち、試錐装置のガイド孔を設置治具の円筒部に嵌合させなければならず、前記掘削中心に対する試錐装置の水平方向の位置決め作業が面倒であるという問題があった。
【0004】
本発明はこのような問題を解消するためになされたもので、地面上の掘削中心に対する試錐装置の位置決め作業を簡単に行うことができる試錐装置およびこれに使用する位置決め用筒状部材と固定用筒状部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的を達成するために、本発明に係る試錐装置は、地面に穴を穿つための試錐装置において、前記地面に穿った位置決め用の穴内に、前記地面から上部を突出させた状態で略鉛直方向に挿入された位置決め用筒状部材の側面部に嵌合させた状態で前記側面部に水平方向に押し当てて前記試錐装置の地面に対する水平方向の位置決めを可能とする凹形状の嵌合部を前記試錐装置の台座に形成したものである。
【0006】
請求項2に記載した発明に係る試錐装置は、請求項1に記載の試錐装置において、前記試錐装置の前記位置決めを行ったのち、前記位置決め用筒状部材の上部外周に固定用筒状部材を嵌合した状態で前記試錐装置の台座に前記固定用筒状部材を締結部材により固定可能とする固定部を前記試錐装置の台座に形成したことを特徴とするものである。
【0007】
請求項3に記載した発明に係る試錐装置は、請求項1または請求項2に記載の試錐装置において、前記試錐装置は、地中を掘削して前記地面に穴を穿つための掘削部材が先端部に取り付けられた試錐管と、前記試錐管に対して下方に向かって繰り返し打撃荷重を付与する打撃装置と、前記打撃装置の打撃部によって打撃される被打撃部材と前記試錐管の上端部とにそれぞれ螺着され前記被打撃部材と前記試錐管の上端部とを連結する継手部材とを備え、前記継手部材を、その軸芯部に中空部を形成すると共に該中空部に連なる切欠部を前記継手部材の長手方向に沿って形成して横断面が略C字状の略管状に形成する一方、
前記試錐管とその外周の土との摩擦抵抗を低減する試錐液を前記掘削部材の掘削部に供給する試錐液供給管を、前記継手部材の切欠部および中空部を介して前記試錐管内に配設可能としたことを特徴とするものである。
【0008】
請求項4に記載した発明に係る試錐装置の位置決め用筒状部材は、地面に穿った位置決め用の穴内に、前記地面から上部を突出させた状態で略鉛直方向に下部が挿入され、試錐装置の前記地面に対する水平方向の位置決めを行う位置決め用筒状部材であって、前記試錐装置の台座に形成された凹状の嵌合部を前記位置決め用筒状部材の側面部に嵌合させた状態で前記側面部に水平方向に押し当てて前記試錐装置の前記位置決めを行うことを可能としたものである。
【0009】
請求項5に記載した発明に係る試錐装置の位置決め用筒状部材は、請求項4に記載の試錐装置の位置決め用筒状部材において、前記位置決め用筒状部材は、筒状部材本体と、該筒状部材本体の軸芯に交差する方向の外方に延びると共に前記筒状部材本体の長手方向中途部の外周面に固着されたストッパとを備えていることを特徴とするものである。
【0010】
請求項6に記載した発明に係る試錐装置の固定用筒状部材は、地面に穿った位置決め用の穴内に前記地面から上部を突出させた状態で略鉛直方向に挿入された位置決め用筒状部材の側面部に、試錐装置の台座に形成された凹形状の嵌合部を嵌合させた状態で前記側面部に水平方向に押し当てて前記試錐装置の地面に対する水平方向の位置決めを行ったのち、前記位置決め用筒状部材の上部外周に嵌合された状態で前記試錐装置の台座に締結部材により固定されるものである。
【0011】
請求項7に記載した発明に係る試錐装置の固定用筒状部材は、請求項6に記載の試錐装置の固定用筒状部材において、前記固定用筒状部材は、筒状部材本体と、該筒状部材本体の軸芯に交差する方向の外方に延びると共に前記筒状部材本体の下部に固着されたフランジとを備え、前記フランジを前記試錐装置の台座に前記締結部材により固定するようにしたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、地面に穿った位置決め用の穴内に挿入された位置決め用筒状部材に、試錐装置の台座に形成した凹形状の嵌合部を嵌合させた状態で水平方向に押し当てて試錐装置の地面に対する水平方向の位置決めを行うことができるので、地面上の掘削中心に対する試錐装置の水平方向の位置決め作業を簡単に行うことができる。
【0013】
請求項2記載の発明によれば、位置決め用筒状部材に固定用筒状部材を嵌合した状態で試錐装置の台座の固定部に固定用筒状部材を締結部材により固定することができるので、試錐作業時における試錐装置自体の振動による試錐装置の水平方向における全ての方向の移動を簡単な構成で阻止することができる。
【0014】
請求項3記載の発明によれば、打撃装置によって打撃される被打撃部材と試錐管とを連結する継手部材に切欠部および中空部を形成して、これらの切欠部および中空部を介して試錐液供給管を試錐管内に配設することができるようにしたので、継手部材の切欠部と中空部との間を試錐液供給管を移動させることで、試錐液供給管を試錐管から取り外すことなく試錐管から継手部材を取り外すことができ、その結果、試錐管を継ぎ足すための連結作業を簡単に行うことができる。
【0015】
請求項4記載の発明によれば、地面に穿った位置決め用の穴内に挿入された位置決め用筒状部材に、試錐装置の台座に形成した凹形状の嵌合部を嵌合させた状態で水平方向に押し当てて試錐装置の地面に対する水平方向の位置決めを行うことができるので、地面上の掘削中心に対する試錐装置の水平方向の位置決め作業を簡単に行うことができる。
【0016】
請求項5記載の発明によれば、位置決め用筒状部材における筒状部材本体の長手方向中途部の外周面にストッパが固着されているので、地面に穿った位置決め用の穴の深さが深くてもストッパが地面に当接することで位置決め用筒状部材の上部を常に地面から突出させることができる。このため、試錐装置の台座の嵌合部を位置決め用筒状部材に嵌合させて行う試錐装置の位置決め作業を支障なく行うことができる。
【0017】
請求項6記載の発明によれば、固定用筒状部材を位置決め用筒状部材に嵌合した状態で固定用筒状部材を試錐装置の台座に締結部材により固定することで、試錐作業時における試錐装置自体の振動による試錐装置の水平方向における全ての方向の移動を簡単な構成で阻止することができる。
【0018】
請求項7記載の発明によれば、固定用筒状部材における筒状部材本体の下部に固着されたフランジを試錐装置の台座に締結部材により固定するようにしたので、その固定のための作業が行い易い上、試錐装置の台座と固定用筒状部材とを強固に一体化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明に係る試錐装置の構成を示す側面図であり、図1において符号1で示すものは、この実施の形態による試錐装置を示しており、この試錐装置1は、該試錐装置1を地面Eに設置するための台座3と、該台座3上に4本のワイヤロープ4a,4b,4c,4dにより張力が付与されて起立した状態で設置された横断面H字状の柱部材5と、該柱部材5に装着され該柱部材5の長手方向に沿って移動自在とされた打撃装置7と、該打撃装置7によって打撃荷重が付与される試錐管9と、打撃装置7の上端部に設けられたロープ連結部10に一端側が連結されたワイヤロープ11の他端側の巻取り長さを適宜調整して打撃装置7の高さ位置を変更するロープ巻取り装置13と、上方から被せられて前記柱部材5の上端部に装着された滑車装置14とを備える。前記ロープ巻取り装置13は台座3上に固定されている。
【0020】
前記滑車装置14は略逆台形状の一対の側面板とそれらの上端縁同士が水平方向の上面板で連結されて一体に形成された滑車装置本体14aと、該滑車装置本体14aに設けられた一対の滑車14b,14bとからなり、該滑車14b,14bに前記ワイヤロープ11の中途部が掛け渡されている。試錐装置1の側方近傍の地面E上には、ベントナイトを主成分として水に懸濁させた懸濁液からなる試錐液を可撓性の試錐液供給管15を介して試錐管9内に供給する試錐液供給装置17と、高圧に昇圧された作動油を可撓性の作動油供給管19aを介して供給すると工程とその供給した作動油を可撓性の作動油戻り管19bを介して帰還させる工程とを打撃装置7に対して繰り返し行う作動油供給装置21とが設置されている。
【0021】
前記試錐液供給装置17は、電動モーター17aと該電動モーター17aによって駆動されるポンプ17bとを備え、試錐液貯留タンク(図示せず)に貯留された試錐液がポンプ17bによって供給される。また、前記作動油供給装置21は、電動モーター21aと該電動モーター21aによって駆動される油圧ポンプ21bとを備え、作動油貯留タンク(図示せず)に貯留された作動油が油圧ポンプ21bによって打撃装置7に高圧で供給される。
【0022】
試錐装置1は、ロープ巻取り装置13が固定された台座3と柱部材5と打撃装置7と滑車装置14とに互いに分離することができ、これらの部材を分離した状態で収納することができる。
さらに詳しく説明すると、図2に示すように、台座3は、柱部材5およびロープ巻取り装置13が上面に固定された基板23と、該基板23が載置されてボルト25…により固定された一対の脚部材27,27と、これら一対の脚部材27,27の端部同士に掛け渡されて脚部材27,27の上面にボルト29…により固定された一対の梁部材31,31とを備える。脚部材27,27と梁部材31,31とは、共に横断面がコ字状とされ、かつ、それぞれの長手方向が互いに直交するように両部材の背面同士が接合固定されている。また、脚部材27,27に比べて梁部材31,31の方が長く、梁部材31,31の長手方向中途部に脚部材27,27の端部が固定されている。一対の脚部材27,27間の内幅寸法は、後述する昇降台車77の一対のフォーク部83,83が脚部材27,27間に丁度納まる程度に設定され、一対のフォーク部83,83上に試錐装置1が安定して載置されるように構成されている。
【0023】
前記基板23は、図3および図4に示すように、略長方形に形成され、その一方の長辺側の中間部が凹形状に切り欠かれて嵌合部33aが形成された基板本体33と、該基板本体33の上面の一方側に溶接により固着された支持部材35と、基板本体33の下面の四隅および中央部の所定の箇所に溶接によりそれぞれ固着された断面コ字状の支持片37…とを備えている。基板本体33の嵌合部33aにおける凹形状の両角部は面取りされて面取部33e,33eが形成されており、これによって、後述する位置決め用筒状部材81に前記嵌合部33aが円滑に嵌合できるようになっている。
【0024】
支持部材35が固着された基板本体33の一方側とは反対側の他方側には、支持部材35と共に挟持して柱部材5を支持するための後付支持部材36(図2参照)をボルト38,38により着脱自在に螺着して固定するための一対のネジ孔33b,33bが形成されている。また、基板本体33の四隅の近傍には、前記ボルト25を挿通して脚部材27,27に形成されたネジ孔に螺着するためのボルト挿通孔33c…がそれぞれ穿設され、嵌合部33aの両側縁の近傍には、後述する固定用筒状部材87を固定するための一対のボルト挿通孔33d,33d(本発明でいう固定部を構成する。)が穿設されている。なお、前記後付支持部材36は、前記ボルト38,38を挿通するためのボルト挿通孔が2個穿設されているが、それ以外は前記支持部材35と同一の構成である。
【0025】
また、基板本体33の下面における嵌合部33aの近傍には該嵌合部33aを補強するための断面く字状の補強片39が嵌合部33aの凹形状の周縁に略沿うように位置付けられ溶接により固着されており、該補強片39の近傍には該補強片39に対向するように前記支持片37が溶接により固着されている。
一方、前記支持部材35は、略台形状の板材からなる補強板41と、該補強板41の鉛直部分の側縁に、表面側の中央部が溶接により固着された横断面コ字状の突き当て部材43とからなり、該突き当て部材43の裏面側に前記柱部材5の一方の側面が突き当てられ支持される。
【0026】
前記打撃装置7は、図5および図6に示すように、打撃装置本体45が挟持された状態で固定された枠部材46と、該枠部材46の側面に、ネジ部材47…により固定されたガイド49とを備え、該ガイド49は、第1ガイド分体51と第2ガイド分体53とからなる。第1ガイド分体51は、横断面が略クランク状の板材からなる第1ガイド本体51aと、該第1ガイド本体51aの内面側に固着された4つの第1ガイド部材51b…とを備える。第2ガイド分体53は、横断面が略コ字状の板材からなる第2ガイド本体53aと、該第2ガイド本体53aの内面側に固着された4つの第2ガイド部材53b…とを備え、前記枠部材46にネジ部材47,47により固定されると共に、第1ガイド分体51にもネジ部材55,55により固定される。前記第1ガイド部材51b…と第2ガイド部材53b…とが柱部材5のレール部5aにそれぞれ係合して打撃装置7が柱部材5の長手方向に沿って上下方向に移動自在とされる。第1ガイド部材51b…および第2ガイド部材53b…における前記レール部5aに係合するガイド部は、超高分子ポリエチレン等の摩擦抵抗が少なく耐摩耗性を有する材料で構成されている。
【0027】
試錐装置1によって試錐作業が行われている際、予め決められた下限位置まで打撃装置7が下降したときにそれを検出する位置検出装置57が柱部材5の下部に配設されている(図1を参照)。位置検出装置57の前記検出によって、作動油供給装置21の電動モーター21aの回転が停止され打撃装置7の打撃動作が停止される。
前記位置検出装置57は、打撃装置7が下降してそのガイド49の下端部が当接してスイッチが作動するマイクロスイッチ等からなる接触式の位置検出装置、または、打撃装置7のガイド49の下端部に磁石を配設し、その磁石の磁力を検出する磁力検出センサ等からなる非接触式の位置検出装置で構成することができる。
なお、前記試錐液供給装置17の電動モーター17a,作動油供給装置21の電動モーター21aおよび位置検出装置57は、それぞれ電線(図示せず)を介して制御装置59(図1を参照)に電気的に接続されている。
【0028】
前記試錐管9は、図7に示すように、外径が34ミリメートルで内径が21.2ミリメートルで長さが1メートルないし1.5メートルの鉄製の円筒状の管からなり、一端部の外周部には雄ネジ部9aが形成され、他端部の内周部には雌ネジ部9bが形成されている。また、試錐管9の長手方向中途部には、幅寸法が0.5ミリメートルで長さが10ミリメートルの長孔9c…が複数穿設され、該長孔9c…は、試錐管9の長手方向に沿う方向に長尺の長孔とされている。図7中の(3)図に示すように、該長孔9c…は、試錐管9の軸芯回りの円周方向に等角度間隔で6個穿設されており、これらの孔は、高密度のレーザー光線の照射によって穿設される。
【0029】
図8に示すように、試錐管9の雌ネジ部9bが形成された部分には掘削部材63が螺着される。掘削部材63は地面Eを掘削して地中に穴を穿つための部材であり、前記打撃装置7によって試錐管9に打撃荷重が付与されることで前記掘削部材63によって地面Eに穴が穿たれる。そして、該穴の深度が深くなるのに応じて、地面Eから突出している試錐管9の上端部の雄ネジ部9aに他の試錐管9の雌ネジ部9bを螺着して試錐管9を継ぎ足していく。これによって、通常、10メートルないし15メートルの深さまで地面Eが掘削される。
【0030】
前記打撃装置7の打撃装置本体45の下端部には、およそ5ミリメートルの振幅で上下方向に振動する略円柱状の打撃部65(図5を参照)が設けられ、該打撃部65が正六角柱状の被打撃部材67に設けられた有底穴67a内に嵌合された状態で該打撃部65によって被打撃部材67の穴底67bが打撃される。該被打撃部材67と地面Eに貫入された試錐管9の上端部とが継手部材69にそれぞれ螺着され連結される。前記継手部材69は、図10に示すように、その一端部の外周部に雄ネジ部69aが形成され、他端部の内周部と外周部とに雌ネジ部69bと雄ネジ部69cがそれぞれ形成され、長手方向中途部は正六角柱状に形成されている。
【0031】
また、継手部材69は、その軸芯部に中空部69dが形成されると共に該中空部69dに連なる切欠部69eが継手部材69の長手方向全域に亘って形成されて横断面が略C字状の略管状に形成されている。前記継手部材69の雄ネジ部69aに前記被打撃部材67が螺着され、前記継手部材69の雌ネジ部69bに試錐管9の上端部の雄ネジ部9aが螺着され、さらに、前記継手部材69の雄ネジ部69cに正六角柱状のネジ部材71が螺着される(図8および図9を参照)。継手部材69の雄ネジ部69cにネジ部材71を螺着することによって、前記切欠部69eの形成に起因して低下した継手部材69の強度および剛性が補われ、該継手部材69と試錐管9との連結の強度が十分確保される。
【0032】
前記継手部材69の切欠部69eは、試錐液を供給する試錐液供給管15を試錐管9内に通して配管するために形成されたものであり、該切欠部69eを介して試錐管9内に配設された試錐液供給管15の先端部は、試錐管9の先端部に螺着された前記掘削部材63に、管状の接続管73を介して接続される。該接続管73の一端部の外周部に形成された雄ネジ部が前記掘削部材63の軸芯に沿って形成された雌ネジ部63aに螺着され、前記接続管73の他端部の外周部に試錐液供給管15の先端部15aが嵌合され結着されている。
【0033】
一方、掘削部材63には、試錐液供給管15に連通する連通孔63bが掘削部材63の軸芯に沿って形成され、該連通孔63bに交差するように排出孔63cが貫通形成されている。試錐液供給管15を介して試錐液供給装置17から供給された試錐液は、前記連通孔63bを通過して排出孔63cから地中に排出される。
【0034】
以上のように構成された試錐装置1は、ロープ巻取り装置13が固定された状態の基板23と柱部材5と打撃装置7と滑車装置14と脚部材27,27と梁部材31,31とに分解したり、分解されたものを組み立てたりすることが簡単にできるため、分解された状態でコンパクトに収納することができるだけでなく、分解された状態で運搬することができるので容易に遠隔地に運搬することができる。そして、運搬された現場で簡単に組み立てることができるので、後述する試錐作業を迅速に行うことができる。
【0035】
また、打撃装置7は、打撃装置本体45が固定された枠部材46と第1ガイド分体51と第2ガイド分体53とに分解した状態で収納し、打撃装置本体45が固定された枠部材46は、基板23上に載置した載台64(図14を参照)上に起立した状態で載置して収納することができる。なお、載台64の高さは、枠部材46の下端より下方に突出した打撃装置本体45の下部部分の長さより高くなっており、かつ、載台64の上面部には、打撃装置本体45の前記下部部分が挿通可能な凹形状の切欠部が形成されている。このため、該切欠部に打撃装置本体45の下部部分を挿通して、打撃装置本体45が固定された枠部材46を載台64上に起立した状態で載置することができる。
【0036】
試錐装置1を使用して試錐作業を行う場合は、図11および図12に示すように、互いに連結する前の複数の試錐管9…内に1本の試錐液供給管15を予め挿入して、該試錐液供給管15の先端部15aを接続管73を介して掘削部材63に接続したのち(図8を参照)、先頭の試錐管9に掘削部材63を螺着すると共に複数の試錐管9…内に挿入された状態で試錐液供給管15をとぐろ状に巻いて枠体75に載置しておく。このようにするのは、試錐作業を行い易くするためである。なお、図11および図12に示すように、最後尾の試錐液供給管15の後端部15bは試錐管9から長めに突出させて余裕を持たせておくのが望ましい。
この枠体75の下部にはキャスタ75aが設けられているので、試錐液供給管15および複数の試錐管9…を載置した状態で所望の場所に枠体75を容易に移動させることができる。
【0037】
上述した試錐装置1を使用して試錐作業を行う場合は、試錐装置1の構成部品(分解された台座3の構成部品,柱部材5,分解された打撃装置7の構成部品および滑車装置14等)、試錐液供給管15が挿入されてとぐろ状に巻かれた状態で複数の試錐管9…が載置された枠体75、試錐液供給装置17、作動油供給装置21、および試錐する地点に試錐装置1を移動させ設置するための昇降台車77その他の器具を試錐作業を行う現場まで運搬する。その後、以下の作業工程で試錐作業を行う。
まず、試錐装置1の組み立て作業の工程について説明する。
【0038】
(試錐装置1の組み立て作業)
(1−1)試錐装置1を組み立てるには、まず、一対の脚部材27,27の端部同士に一対の梁部材31,31を掛け渡してボルト29…(図2を参照)により固定すると共に、ロープ巻取り装置13が固定された基板23を一対の脚部材27,27上に掛け渡してボルト25…により固定し、台座3を組み立てる。
【0039】
(1−2)次に、基板23上の嵌合部33aの近傍に前記載台64を設置し、該載台64上に打撃装置本体45および第1ガイド分体51が固定された枠部材46を起立した状態で載置する。
【0040】
(1−3)次に、滑車装置14を柱部材5の上端部に固定したのち、図13に示すように、基板23上に固定された支持部材35の突き当て部材43に柱部材5の下端部を突き当てた状態で、二人の作業者M1,M2のうち一方の作業者M1が柱部材5の上端部に連結されたワイヤロープ4c,4aの下端部を引っ張りながら柱部材5を起立させる。このとき、他方の作業者M2も柱部材5を下方から手で支えながら起立させる。
【0041】
(1−4)柱部材5を鉛直に起立させた状態で、ワイヤロープ4a,4b,4c,4dの下端部を一対の梁部材31,31の両端部における連結部31a…(図2を参照)にそれぞれ連結したのち、ワイヤロープ4a,4b,4c,4dの張力が互いに均等になるように張力の調整を行う。
【0042】
(1−5)次に、図14に示すように、支持部材35の突き当て部材43に突き当てた柱部材5の部位とは反対側の柱部材5の下端部の側面に後付支持部材36を突き当てた状態で基板本体33の一対のネジ孔33b,33bに、ボルト38,38を後付支持部材36のボルト孔に挿通して螺着することで、後付支持部材36を基板本体33上に固定する。
【0043】
(1−6)次に、載台64上に載置したまま打撃装置7の第1ガイド分体51を柱部材5に接近させ、該第1ガイド分体51の第1ガイド部材51b…のガイド部を柱部材5の一方のレール部5a,5aに装着する。そして、第2ガイド分体53を、その第2ガイド部材53b…のガイド部を柱部材5の他方のレール部5a,5aに装着した状態で第1ガイド分体51にネジ部材55,55により固定すると共に枠部材46にもネジ部材47…により固定する。
これによって、柱部材5のレール部5a…に沿って打撃装置7は上下方向に移動自在とされ、上方から見て、打撃装置7の打撃部65の軸芯と基板本体33の嵌合部33aの凹形状の中心とが一致することになる。
【0044】
(1−7)次に、ロープ巻取り装置13を作動させてワイヤロープ11を巻き取り、図14中の二点鎖線で示す予め設定された上限位置まで打撃装置7を上昇させてロープ巻取り装置13の作動を停止させたのち、基板23上に載置されていた載台64を除去する。これによって、柱部材5の上部に打撃装置7が静止した状態とされる。
【0045】
次に、試錐装置1の設置作業の工程について説明する。
(試錐装置1の設置作業)
(2−1)図15に示すように、試錐する予定の地面Eにおける地点に、ダイヤモンドドリル等の穿孔装置により略鉛直方向に予め穿たれた位置決め用の穴79内に位置決め用筒状部材81を該穴79に沿って略鉛直方向に挿入する。前記位置決め用の穴79の内径は位置決め用筒状部材81の外径と略等しくされている。位置決め用筒状部材81は、円筒状の筒状部材本体81aと、該筒状部材本体81aの軸芯に直交する方向の外方に延び該筒状部材本体81aの長手方向中途部の外周面に溶接により固着された円環状のストッパ81bとを備えており、該ストッパ81bの下面が地面Eに当接し、地面Eから上部が突出した状態で位置決め用筒状部材81が地面Eの位置決め用の穴79に設置される。
【0046】
なお、前記筒状部材本体81aは円筒状に形成されているが、これに限るものではなく、基板23の嵌合部33aを、大きくガタつくことなく、かつ、円滑に嵌合することができる形状であれば、円以外の形状、例えば、四角形,六角形もしくは八角形等の多角形または楕円形の横断面形状からなる筒であってもよい。
基板23の嵌合部33aを、大きくガタつくことなく、かつ、円滑に嵌合することができるようにするため、筒状部材本体81aの外径は基板23の嵌合部33aにおける内側の幅寸法より少しだけ小さな寸法に形成されている。
また、図15に示す位置決め用筒状部材81のストッパ81bは、筒状部材本体81aの長手方向中途部における外周面の全周を囲む円環状に形成された部材で構成されているが、ストッパ81bの下面が地面Eに当接して位置決め用筒状部材81の上部を地面Eから突出させることができさえすれば、円環状の部材以外の他の部材(例えば、筒状部材本体81aの長手方向中途部の外周面における一部から外方に向かって突出する棒状または板状の突片)を筒状部材本体81aの長手方向中途部の外周面に溶接により固着するようにしてもよい。
また、図15に示す地面Eは、表面側がコンクリート層E1で覆われ、該コンクリート層E1の下方に地盤層E2が形成されている例を示しており、位置決め用の穴79はコンクリート層E1を貫通して地盤層E2まで達している。
【0047】
(2−2)次に、図16に示すように、柱部材5等が組み付けられた台座3の底面の下方と地面Eとの間に昇降台車77の一対のフォーク部83,83を挿入したのち、昇降台車77の操作レバー85を操作して一対のフォーク部83,83を台座3の梁部材31の底面が位置決め用筒状部材81の上端より上方に位置するまで台座3の底面を地面Eから上昇させる。
【0048】
(2−3)次に、図17および図18中の(1)図に示すように、柱部材5等が組み付けられた台座3が載置された昇降台車77を位置決め用筒状部材81の方に向かって移動させる。その際、上方から見て、基板23における嵌合部33aが形成された基板本体33の側縁と脚部材27,27と梁部材31とで囲まれた領域に位置決め用筒状部材81が位置するように昇降台車77を移動させる(図17中の(1)図および図18中の(2)図を参照)。
【0049】
(2−4)次に、昇降台車77の操作レバー85を操作して、位置決め用筒状部材81の上端が台座3の基板23の上面より上方に位置するまで一対のフォーク部83,83を下降させたのち(図17中の(2)図を参照)、位置決め用筒状部材81の側面部に基板23の嵌合部33aを嵌合させるように昇降台車77を移動させる。このとき、嵌合部33aに形成された面取部33e,33eによって位置決め用筒状部材81が案内されて嵌合部33aが位置決め用筒状部材81に円滑に嵌合される。そして、位置決め用筒状部材81の側面部に嵌合部33aを嵌合させた状態で該側面部に水平方向に嵌合部33aを押し当てる(図17中の(3)図を参照)。これによって、台座3、延いては試錐装置1の地面に対する水平方向の位置決めが行われ、上方から見て、打撃装置7の打撃部65の軸芯が位置決め用筒状部材81の軸芯と一致することになる。
【0050】
(2−5)次に、位置決め用筒状部材81の側面部に嵌合部33aを嵌合させた状態で、昇降台車77の操作レバー85を操作して台座3の底面が地面Eに接地するまで一対のフォーク部83,83を下降させ、台座3を地面Eに接地させたのち(図19中の(1)図および(2)図を参照)、昇降台車77のフォーク部83,83を台座3の下方から引き出し、台座3から離間した場所まで昇降台車77を移動させる(図19中の(3)図を参照)。
【0051】
(2−6)次に、図20に示すように、前記位置決め用筒状部材81の筒状部材本体81aの上部外周に固定用筒状部材87を嵌合したのち、台座3の基板本体33に穿設された一対のボルト挿通孔33d,33d(図3および図4を参照)にボルト89をそれぞれ挿通してナット91により締め付け固定する。これによって、台座3の基板23と固定用筒状部材87とが強固に一体化され、地面Eに対する台座3の水平方向における全ての方向の移動が位置決め用筒状部材81によって規制される。なお、前記ボルト89およびナット91は本発明でいう締結部材を構成する。
前記固定用筒状部材87は、円筒状の筒状部材本体93と、該筒状部材本体93内の上部に溶接により固着された円板状の上面部材95と、前記筒状部材本体93の軸芯に直交する方向の外方に延び該筒状部材本体93の下端部に溶接により固着されたフランジ97とを備えている。
【0052】
なお、前記筒状部材本体93は円筒状に形成されているが、これに限るものではなく、位置決め用筒状部材81の筒状部材本体81aの上部外周に、水平方向に大きくガタつくことなく、かつ、円滑に嵌合することができる形状であれば、円以外の形状、例えば、四角形,六角形もしくは八角形等の多角形または楕円形の横断面形状からなる筒であってもよい。
位置決め用筒状部材81に対して固定用筒状部材87を水平方向に大きくガタつくことなく、かつ、円滑に嵌合することができるようにするため、筒状部材本体93の内径は、位置決め用筒状部材81の外径より少しだけ大きな寸法に形成されている。上面部材95の中央部には、試錐管9が挿入できるように試錐管9の外径より大きな寸法の開口95aが形成され、フランジ97には、筒状部材本体93を挟んでその両側に前記ボルト89がそれぞれ挿通される一対のボルト挿通孔が形成されている。
また、フランジ97は、図2に示すように、外周部の一部が直線状に切断され切除部97bが形成された略円環状に形成された部材からなるが、基板23のボルト挿通孔33d,33dに固定することによって固定用筒状部材87を基板23に固定することができさえすれば、略円環状の部材以外の他の部材(例えば、筒状部材本体93の下端部周縁における一部から外方に向かって突出する棒状または板状の突片)を筒状部材本体93の下端部に溶接により固着するようにしてもよい。
【0053】
(2−7)次に、打撃装置7にそれぞれの一端部が接続された作動油供給管19aと作動油戻り管19bとのそれぞれの他端部を作動油供給装置21に接続する。
【0054】
(2−8)次に、試錐液供給管15が挿入され枠体75に載置された複数の試錐管9…のうち、掘削部材63が螺着された先頭の試錐管9を枠体75から取り出して、その試錐管9の掘削部材63側から前記ネジ部材71(図8を参照)を挿入したのち、さらに、試錐管9の掘削部材63側端部を前記固定用筒状部材87の上面部材95の開口95aおよび位置決め用筒状部材81の筒状部材本体81a内に挿入して掘削部材63の先端部を地面Eの位置決め用の穴79の底部に接地させる。
【0055】
(2−9)次に、前記継手部材69の切欠部69eを介して継手部材69の中空部69dに試錐液供給管15を挿通して、試錐管9の上端部の雄ネジ部9aに継手部材69の雌ネジ部69bを螺着したのち、試錐管9に挿入していた前記ネジ部材71を継手部材69の雄ネジ部69cに螺着する。そして、継手部材69の切欠部69eから試錐液供給管15を取り出して継手部材69の雄ネジ部69aに前記被打撃部材67を螺着したのち、ロープ巻取り装置13を作動させて打撃装置7の高さ位置を調整しながら打撃装置7の打撃部65を被打撃部材67の有底穴67a内に嵌合する。前記被打撃部材67,継手部材69およびネジ部材71の螺着作業は、それらの部材の正六角柱状の側面部に工具をそれぞれ装着して行うようにすることで十分な締め付けトルクを付与して強固に螺着することができる。
【0056】
(2−10)その後、ロープ巻取り装置13をさらに駆動して、少なくとも打撃装置7が位置検出装置57によって検出される下降位置まで下降できるようにワイヤロープ11を弛ませておく。
【0057】
(2−11)次に、試錐液供給管15の後端部15bを試錐液供給装置17に接続する。以上の作業で試錐装置1の設置作業が終了する。
【0058】
次に、試錐装置1による試錐作業の工程について説明する。
(試錐装置1による試錐作業)
(3−1)制御装置59の制御盤を操作して試錐液供給装置17の電動モーター17aおよび作動油供給装置21の電動モーター21aを作動させる。これによって、作動油供給装置21の油圧ポンプ21bから作動油供給管19aを介して作動油が打撃装置7に供給され、その打撃部65によって被打撃部材67が繰り返し打撃される一方、試錐液供給装置17のポンプ17bから試錐液が試錐液供給管15を介して掘削部材63に供給され、連通孔63bを経由して排出孔63cから地中に排出される。この結果、試錐管9に対して下方に向かって繰り返し打撃荷重が付与されて掘削部材63によって地中が掘削され、掘削部材63が螺着された試錐管9は次第に地中に没入される。このとき、排出孔63cから地中に排出される前記試錐液は、地中に貫入した試錐管9とその外周の土との摩擦抵抗を低減する機能や地面Eに掘削部材63によって穿たれた穴の内周面に擁壁を形成する機能等を有する。
【0059】
(3−2)やがて、打撃装置7が柱部材5に沿って、予め設定された下限位置まで下降して、その下降位置を位置検出装置57が検出すると、その検出信号が電線を介して制御装置59に送信され、制御装置59は、作動油供給装置21の電動モーター21aの回転を停止させて打撃装置7の作動を停止させると共に試錐液供給装置17の電動モーター17aの回転を停止させて試錐液の供給を中断させる。
【0060】
(3−3)次に、ロープ巻取り装置13を駆動して打撃装置7の打撃部65を被打撃部材67から離脱させ、予め設定された上限位置まで打撃装置7を上昇させたのち、被打撃部材67を工具でねじ戻して継手部材69から取り外す。そして、ネジ部材71を継手部材69からねじ戻して試錐管9に挿通させたまま下方に離脱させたのち、継手部材69の切欠部69eを介して継手部材69の中空部69dに試錐液供給管15を挿通した状態で継手部材69を工具でねじ戻して試錐管9から取り外す。
【0061】
(3−4)次に、前記枠体75に載置された次の試錐管9を取り出し、該試錐管9の雌ネジ部9bを、地面Eの位置決め用の穴79から突出している試錐管9の雄ネジ部9aに螺着し、試錐管9を継ぎ足す。
【0062】
(3−5)次に、上述した試錐装置1の設置作業の際に行った工程(2−9),(2−10)と同じ作業を行ったのち、この試錐作業で行った前記工程(3−1)ないし(3−4)と同じ作業を行う。
【0063】
(3−6)以下、上述した工程(3−1)ないし(3−5)と同じ作業を繰り返すことで、試錐装置1によって、予定された地中の深度まで掘削される。
【0064】
(3−7)打撃装置7が前記下限位置まで下降したことが位置検出装置57によって検出されて制御装置59によって作動油供給装置21の電動モーター21aと試錐液供給装置17の電動モーター17aとの回転が停止され、かつ、予定された地中の深度まで掘削したら、作動油供給管19aおよび作動油戻り管19bを作動油供給装置21から取り外す。
【0065】
(3−8)次に、上述した工程(3−3)と同じ作業を行って被打撃部材67および継手部材69を取り外したのち、ネジ部材71を試錐管9の上端部から抜き取る。
【0066】
(3−9)次に、試錐液供給管15の後端部15bを試錐液供給装置17から取り外したのち、掘削部材63の雌ネジ部63aに対して接続管73の雄ネジ部がねじ戻される方向に試錐液供給管15の後端部15bを回転させて、試錐液供給管15と共に接続管73を掘削部材63から取り外して試錐管9から引っ張り出す。
【0067】
(3−10)次に、ボルト89とナット91とを取り外して固定用筒状部材87を台座3の基板23から離脱させたのち、柱部材5等が組み付けられた台座3を位置決め用筒状部材81の地点から昇降台車77により移動させると共に位置決め用筒状部材81を地面Eの位置決め用の穴79から抜き取る。以上で試錐作業は終了する。
【0068】
なお、上述した試錐作業を行う地点が1箇所だけでなく、一定の領域内の複数の地点についても試錐作業を行いたい場合は、前記複数の地点に位置決め用の穴79を穿孔装置により予め穿っておく。そして、前記作業工程(3−10)で抜き取った位置決め用筒状部材81を他の位置決め用の穴79内に挿入したのち、次の試錐作業に移行する。次の試錐作業は、前記位置決め用筒状部材81の地点まで柱部材5等が組み付けられた台座3を昇降台車77により移動させる作業から始まり、その試錐作業の工程は、前記作業工程(2−2)ないし(2−11)および(3−1)ないし(3−10)と同じ作業工程となる。
なお、以上説明した作業工程(1−1)ないし(3−10)は、本発明の要旨または思想に反しない範囲で、順序や内容を必要に応じて適宜変更することができる。
【0069】
前記複数の地点について試錐作業が全て終了したのち、トリクロロエチレンやテトラクロロエチレン等の揮発性有機化合物(volatile organic compounds 以下「VOCs」という。)からなる汚染物質が地中に存在するか否かを調査するために、地面Eに貫入された前記複数の試錐管9…の長孔9c…を介して吸水ポンプにより地下水を吸引して、その吸引した地下水に含まれるVOCsの濃度を濃度計測装置によって検査することもできる。また、その検査の結果、VOCsが地中に存在していた場合は、前記複数の試錐管9…内に浄化液を加圧ポンプで供給して試錐管9…の長孔9c…を介して浄化液を地中に排出させて地中の汚染土壌を浄化することもできる。この場合の浄化液としては、オゾン,過酸化水素または界面活性剤を所定の割合で水に溶解して生成した浄化液や、その他、水等がある。
【0070】
試錐管9…の長孔9c…を介して地下水を吸引したり浄化液を供給する場合は、例えば、地中に貫入された試錐管9内に膨張管付き器具105を挿入して行うことができる(図21を参照)。膨張管付き器具105は、ステンレス製の導管107と、空気を供給するためのステンレス製の空気供給管111と、これらの管107,111が並列にされた状態で挿通される一対のゴム製の膨張管113,114とを備える。膨張管113の上端部および下端部の内側にはステンレス製の円柱状の口金118,118がそれぞれ配設され、膨張管114の上端部および下端部の内側にはステンレス製の円柱状の口金118,121がそれぞれ嵌入されている。口金118に貫通して穿設された貫通孔には導管107および空気供給管111の長手方向中途部がそれぞれ貫通して気密に嵌入され、口金121に穿設された有底穴には導管107および空気供給管111の先端部がそれぞれ気密に嵌入されている。
【0071】
一対の膨張管113,114内は気密にされた膨張室113a,114aがそれぞれ形成され、該膨張室113a,114aにそれぞれ連通する空気孔124,124が空気供給管111の長手方向中途部に穿設されている。導管107における膨張管113,114間における膨張管114の近傍には連通孔125が穿設されている。
膨張管113から突出した導管107と空気供給管111との端部には、それぞれ樹脂製の接続管126と空気供給接続管127とが気密に接続される。
【0072】
前記膨張管付き器具105を使用して地下水の吸引や浄化液の供給の各作業を行う場合は、地中に貫入された試錐管9内に、膨張管113,114が膨張していない状態で膨張管付き器具105を、その膨張管113,114間に試錐管9の長孔9cが位置するよう所望の深度まで挿入したのち、空気供給管111に空気を供給して膨張管113,114を膨張させる。図21は、膨張管113,114を膨張させた状態を示している。膨張管付き器具105を挿入する深度は、地下水の吸引や浄化液の供給を行いたい深度に応じて決定される。膨張管113,114が膨張することで膨張管113,114が試錐管9の内壁に圧接され、膨張管113,114間に位置する試錐管9の長孔9cと連通孔125とが膨張管113,114間における試錐管9内の空間を介して連通する。これによって、地下水を吸引する場合は、試錐管9の長孔9cから地下水が吸引されて連通孔125,導管107および接続管126を介して地上まで吸水され、また、浄化液を地中に供給する場合は、接続管126,導管107および連通孔125を介して試錐管9の長孔9cから地中に浄化液が供給される。
【0073】
また、浄化液を地中に供給しながら地中のVOCsと反応したのちの液体を地下水と共に吸引する場合は、地中に貫入した複数の試錐管9…に前記膨張管付き器具105をそれぞれ挿入して複数の試錐管9…のうちの一部の試錐管9に浄化液を供給する一方、残りの試錐管9…から前記反応後の液体を地下水と共に吸引するようにすればよい。
【0074】
上述したように構成された試錐装置1によれば、地面Eに穿った位置決め用の穴79内に挿入された位置決め用筒状部材81に、試錐装置1の台座3に形成した凹形状の嵌合部33aを嵌合させた状態で水平方向に押し当てて試錐装置1の地面Eに対する水平方向の位置決めを行うことができるので、地面E上の掘削中心に対する試錐装置1の水平方向の位置決め作業を簡単に行うことができる。
【0075】
また、この実施の形態による試錐装置1によれば、位置決め用筒状部材81に固定用筒状部材87を嵌合した状態で試錐装置1の台座3のボルト挿通孔33d,33dに固定用筒状部材87をボルト89およびナット91により固定するようにしたので、試錐作業時における試錐装置1自体の振動による試錐装置1の水平方向における全ての方向の移動を簡単な構成で阻止することができる。
【0076】
また、この実施の形態による試錐装置1によれば、打撃装置7によって打撃される被打撃部材67と試錐管9とを連結する継手部材69に切欠部69eおよび中空部69dを形成して、これらの切欠部69eおよび中空部69dを介して試錐液供給管15を試錐管9内に配設することができるようにしたので、継手部材69の切欠部69eと中空部69dとの間を試錐液供給管15を移動させることで、試錐液供給管15を試錐管9から取り外すことなく試錐管9から継手部材69を取り外すことができ、その結果、試錐管9を継ぎ足すための連結作業を簡単に行うことができる。
【0077】
また、この実施の形態による試錐装置1の位置決め用筒状部材81によれば、地面Eに穿った位置決め用の穴79内に挿入された位置決め用筒状部材81に、試錐装置1の台座3に形成した凹形状の嵌合部33aを嵌合させた状態で水平方向に押し当てて試錐装置1の地面Eに対する水平方向の位置決めを行うことができるので、地面E上の掘削中心に対する試錐装置1の水平方向の位置決め作業を簡単に行うことができる。
【0078】
また、この実施の形態による試錐装置1の位置決め用筒状部材81によれば、位置決め用筒状部材81における筒状部材本体81aの長手方向中途部の外周面にストッパ81bが固着されているので、地面Eに穿った位置決め用の穴79の深さが深くても位置決め用の穴79の周囲の地面Eにストッパ81bが当接することで位置決め用筒状部材81の上部を常に地面Eから突出させることができる。このため、試錐装置1の台座3の嵌合部33aを位置決め用筒状部材81に嵌合させて行う試錐装置1の位置決め作業を支障なく行うことができる。
【0079】
また、この実施の形態による試錐装置1の固定用筒状部材87によれば、固定用筒状部材87を位置決め用筒状部材81に嵌合した状態で固定用筒状部材87を試錐装置1の台座3にボルト89およびナット91により固定することで、試錐作業時における試錐装置1自体の振動による試錐装置1の水平方向における全ての方向の移動を簡単な構成で阻止することができる。
【0080】
さらにまた、この実施の形態による試錐装置1の固定用筒状部材87によれば、固定用筒状部材87における筒状部材本体93の下端部に固着されたフランジ97を試錐装1置の台座3にボルト89およびナット91により固定するようにしたので、その固定のための作業が行い易い上、試錐装置1の台座3と固定用筒状部材87とを強固に一体化することができる。
【0081】
なお、上述した実施の形態は本発明を説明するための一例であり、本発明は、前記の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲と明細書との全体から読み取れる発明の要旨または思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更後の試錐装置およびこれに使用する位置決め用筒状部材と固定用筒状部材もまた、本発明の技術的範囲に含まれものである。
例えば、上述した実施の形態においては、固定用筒状部材87を試錐装置1の台座3に固定する際に使用するボルト89とナット91とを着脱自在とする例を示したが、本発明は、このような構成に囚われることなく、ボルト89もしくはナット91の一方の座面を台座3の基板本体33の下面もしくは固定用筒状部材87のフランジ97の上面に溶接により固着してそれにボルト89もしくはナット91の他方を螺着するようにするか、または、台座3の基板本体33自体もしくは固定用筒状部材87のフランジ97自体にボルト89を螺着するためのネジ孔を形成し、該ネジ孔にボルト89を螺着するようにしてもよい。これらの場合は、ボルト89またはナット91のうち何れか一方の部材が着脱自在とされる場合はその一方の部材が本発明でいう締結部材を構成し、ボルト89またはナット91のうち何れか一方の部材が台座3の基板本体33に溶接により固着される場合はその一方の部材が本発明でいう固定部を構成し、ボルト89やナット91が台座3の基板本体33に溶接により固着されない場合は基板本体33自体に形成されたネジ孔またはボルト挿通孔33dが本発明でいう固定部を構成する。
【0082】
また、上述した実施の形態においては、継手部材69に挿通され掘削部材63に接続された試錐液供給管15を介して試錐液供給装置17により試錐液を供給しながら試錐管9に螺着された掘削部材63により地面Eを掘削する例を示したが、本発明は、このような構成に囚われることなく、試錐液を供給することなく掘削部材63により地面Eを掘削するようにしてもよい。この場合は、試錐液供給管15を掘削部材63に接続する必要がないので試錐液供給管15および接続管73だけでなく継手部材69およびネジ部材71も不要となるため、被打撃部材67を試錐管9の雄ネジ部9aに直接螺着するような構成としてもよい。このとき、試錐管9と被打撃部材67とを他の部材に変更しないで試錐液の供給の有無の何れの場合も対応できるように、試錐管9と被打撃部材67と継手部材69との相互に螺合する各ネジ部のネジサイズやネジ長さを共通にしておくとよい。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】図1は本発明の実施の形態に係る試錐装置の構成を示す側面図である。
【図2】図2は図1の矢視A−A線に沿う拡大断面図である。
【図3】図3の(1)図は前記試錐装置の台座を構成する基板を上方から見た状態を示す上面図であり、図3の(2)図は前記基板を後方から見た状態を示す後面図である。
【図4】図4の(1)は前記基板を下方から見た状態を示す下面図であり、図4の(2)図は前記基板を側方から見た状態を示す側面図である。
【図5】図5は前記試錐装置における打撃装置の部分を拡大して示す拡大側面図である。
【図6】図6は図1の矢視B−B線に沿う拡大断面図である。
【図7】図7の(1)図は試錐管の構成を示す断面図であり、図7の(2)図は前記試錐管の一部Cを拡大して示す拡大断面図であり、図7の(3)図は図7の(1)図の矢視D−D線に沿う拡大断面図である。
【図8】図8は前記試錐管に他の部材が組み付けられた状態を拡大して示す拡大断面図である。
【図9】図9の(1)図は図8の矢視E−E線に沿う拡大断面図であり、図9の(2)図は図8の矢視F−F線に沿う拡大断面図である。
【図10】図10は前記試錐管に組み付けられる継手部材を上方斜めから見た状態を示す外観図である。
【図11】図11は試錐液供給管が挿入された試錐管が載置された枠体を正面から見た状態を示す外観図である。
【図12】図12はその枠体を左側方から見た状態を示す外観図である。
【図13】図13は前記試錐装置の組み立て作業を行っている状態を示す図である。
【図14】図14は前記試錐装置が組み立てられた状態を示す正面図である。
【図15】図15の(1)図ないし(3)図は前記試錐装置で試錐する予定の地点に位置決め用筒状部材を挿入する工程を示した図である。
【図16】図16は前記試錐装置を昇降台車に載置して前記位置決め用筒状部材の方に向かって移動している状態を示す側面図である。
【図17】図17の(1)図ないし(3)図は前記位置決め用筒状部材が挿入された地点に前記試錐装置を位置決めするまでの工程を示した図である。
【図18】図18の(1)図および(2)図は前記試錐装置を昇降台車に載置して前記位置決め用筒状部材の方に向かって移動している工程の上方から見た状態を示す上面図である。
【図19】図19の(1)図は昇降台車を操作して前記試錐装置を接地させた状態を示す側面図であり、図19の(2)図はそれを上方から見た状態を示す上面図であり、図19の(3)図は前記試錐装置を接地させたのち昇降台車を移動させた状態を示す側面図である。
【図20】図20の(1)図は前記位置決め用筒状部材に固定用筒状部材を嵌合して前記試錐装置の台座に固定した状態を示す側面図であり、図20の(2)図はその固定用筒状部材を固定した状態を拡大して示す拡大断面図である。
【図21】図21は前記試錐管内に膨張管付き器具を設置した状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0084】
1 試錐装置
3 台座
7 打撃装置
9 試錐管
15 試錐液供給管
33a 嵌合部
33d ボルト挿通孔(固定部)
63 掘削部材
65 打撃部
67 被打撃部材
69 継手部材
69d 中空部
69e 切欠部
79 位置決め用の穴
81 位置決め用筒状部材
81a 筒状部材本体
81b ストッパ
87 固定用筒状部材
89 ボルト(締結部材)
91 ナット(締結部材)
93 筒状部材本体
97 フランジ
E 地面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地面に穴を穿つための試錐装置において、
前記地面に穿った位置決め用の穴内に、前記地面から上部を突出させた状態で略鉛直方向に挿入された位置決め用筒状部材の側面部に嵌合させた状態で前記側面部に水平方向に押し当てて前記試錐装置の地面に対する水平方向の位置決めを可能とする凹形状の嵌合部を前記試錐装置の台座に形成したことを特徴とする試錐装置。
【請求項2】
請求項1に記載の試錐装置において、
前記試錐装置の前記位置決めを行ったのち、前記位置決め用筒状部材の上部外周に固定用筒状部材を嵌合した状態で前記試錐装置の台座に前記固定用筒状部材を締結部材により固定可能とする固定部を前記試錐装置の台座に形成したことを特徴とする試錐装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の試錐装置において、
前記試錐装置は、地中を掘削して前記地面に穴を穿つための掘削部材が先端部に取り付けられた試錐管と、前記試錐管に対して下方に向かって繰り返し打撃荷重を付与する打撃装置と、前記打撃装置の打撃部によって打撃される被打撃部材と前記試錐管の上端部とにそれぞれ螺着され前記被打撃部材と前記試錐管の上端部とを連結する継手部材とを備え、
前記継手部材を、その軸芯部に中空部を形成すると共に該中空部に連なる切欠部を前記継手部材の長手方向に沿って形成して横断面が略C字状の略管状に形成する一方、
前記試錐管とその外周の土との摩擦抵抗を低減する試錐液を前記掘削部材の掘削部に供給する試錐液供給管を、前記継手部材の切欠部および中空部を介して前記試錐管内に配設可能としたことを特徴とする試錐装置。
【請求項4】
地面に穿った位置決め用の穴内に、前記地面から上部を突出させた状態で略鉛直方向に下部が挿入され、試錐装置の前記地面に対する水平方向の位置決めを行う位置決め用筒状部材であって、
前記試錐装置の台座に形成された凹状の嵌合部を前記位置決め用筒状部材の側面部に嵌合させた状態で前記側面部に水平方向に押し当てて前記試錐装置の前記位置決めを行うことを可能とした試錐装置の位置決め用筒状部材。
【請求項5】
請求項4に記載の試錐装置の位置決め用筒状部材において、
前記位置決め用筒状部材は、筒状部材本体と、該筒状部材本体の軸芯に交差する方向の外方に延びると共に前記筒状部材本体の長手方向中途部の外周面に固着されたストッパとを備えていることを特徴とする試錐装置の位置決め用筒状部材。
【請求項6】
地面に穿った位置決め用の穴内に前記地面から上部を突出させた状態で略鉛直方向に挿入された位置決め用筒状部材の側面部に、試錐装置の台座に形成された凹形状の嵌合部を嵌合させた状態で前記側面部に水平方向に押し当てて前記試錐装置の地面に対する水平方向の位置決めを行ったのち、
前記位置決め用筒状部材の上部外周に嵌合された状態で前記試錐装置の台座に締結部材により固定される試錐装置の固定用筒状部材。
【請求項7】
請求項6に記載の試錐装置の固定用筒状部材において、
前記固定用筒状部材は、筒状部材本体と、該筒状部材本体の軸芯に交差する方向の外方に延びると共に前記筒状部材本体の下部に固着されたフランジとを備え、
前記フランジを前記試錐装置の台座に前記締結部材により固定するようにした試錐装置の固定用筒状部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2008−223324(P2008−223324A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−62809(P2007−62809)
【出願日】平成19年3月13日(2007.3.13)
【出願人】(591211711)カルト株式会社 (20)
【Fターム(参考)】