説明

認証可能なポリマー及び物品用の化学組成物、並びにその認証方法

1種以上の[ベンゾ[4,5]イミダゾ(複素環)]化合物を含む組成物が開示されている。[ベンゾ[4,5]イミダゾ(複素環)]化合物は次式の構造I及びIIからなる群から選択される。
【化1】


式中、R及びRは独立に水素原子、電子吸引基、有機基、二価1,2−シクロアルキリデン基、又はこれらの組合せからなる群から選択され、「q」は独立に1〜4の整数であり、Lは連結基であり、「r」は独立に0又は1である。1種以上の[ベンゾ[4,5]イミダゾ(複素環)]化合物は、組成物が約330〜約390nmの波長を有する励起放射線に曝露された際に約470nm以上の最大蛍光放出波長及び約80nm以上のストークスシフトを呈するように充分な濃度で存在する。ここで、波長はビスフェノールAポリカーボネートマトリックス中で測定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学組成物及び認証可能なポリマー及び物品を製造するためのタグ識別子(taggant)としてのそれらの用途、並びにこれらのポリマー及び物品を認証する方法に関する。本発明は、特にセキュリティー文書のような物品を認証するためのセキュリティー用途、医薬品包装、携帯電話のカバーやバッテリーのような電気通信付属品、及びコンパクトディスク(CD)やデジタルバーサタイルディスク(DVD)のようなデータ記憶媒体に有用である。
【背景技術】
【0002】
データ記憶媒体の多方面のメーカーやユーザーが直面する主要な問題は、無許可の製造業者、販売者及び/又はユーザーによる情報の不当な複製又はコピーである。エレクトロニクス系やソフトウェア系のアプローチが使用されている。海賊版は、今や、無許可の複製がオリジナルの電子的対海賊版回路、コードなどを有するまでになっている。例えば、標準的なホログラムは今や容易に偽造され、もはや製品の信憑性を保証できない。同様に、対海賊版機能を解除し、そのデータへの無制限のアクセスを可能にするコンピューターコードが開発されている。そのやり方には関係なく、データ記憶媒体の海賊版は、正当なソフトウェア及びエンターテインメントコンテンツプロバイダー並びにオリジナルの電子装置製造業者から多大な収益及び利益を奪っている。かかる消費者レベルの海賊版を阻止するために数多くのアプローチが開発されて来ている。1つのかかるアプローチは、米国特許第6099930号、同第6514617号、同第6296911号、米国特許出願公開第2002/0149003号、及び国際公開第00/14736号に開示されているように、データ記憶媒体の構築に使用する基材中に「タグ」すなわち認証マーカーを配置することである。
【0003】
成形、押出などの従来の方法によってポリマーマトリックス中にタグ識別子として組み込むことができる化学組成物に対するニーズもある。ポリカーボネートのようなエンジニアリング熱可塑性樹脂の場合、かかる方法は280℃程度又はそれ以上の高温を使用することが多い。加工処理装置におけるこれらの高温及び滞留時間で、当技術分野で公知の化学組成物は一般に分解又は劣化する傾向があり、そのため最終ポリマー組成物又は成形品での有効なタグ識別子としての性能が不満足となる。
【特許文献1】米国特許第6099930号明細書
【特許文献2】米国特許第6514617号明細書
【特許文献3】米国特許第6296911号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2002/0149003号明細書
【特許文献5】国際公開第00/14736号パンフレット
【特許文献6】フランス国特許第1090115号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、ポリマー及び物品、特にエンジニアリング熱可塑性樹脂を含むものに使用される認証タグ(又はタグ識別子)又はタグ識別子の組合せとして使用することができる、より有効で熱的に安定な化学物質が必要とされている。また、かかる化学組成物を製造し、ポリマー組成物及び物品を認証して、その認証可能なポリマー組成物及び認証可能な物品の真正の製造業者、販売者、及び/又はユーザーが無許可の製造業者の悪影響を受けないようにする方法を提供することも望ましいであろう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の態様は1種以上の[ベンゾ[4,5]イミダゾ(複素環)]化合物を含む組成物であり、この1種以上の[ベンゾ[4,5]イミダゾ(複素環)]化合物は次式の構造I及びIIからなる群から選択される。
【0006】
【化1】

式中、RとRは独立に水素原子、電子吸引基、有機基、二価1,2−シクロアルキリデン基、又はこれらの組合せからなる群から選択され、「q」は独立に1〜4の整数であり、Lは連結基であり、「r」は独立に0又は1である。ここで、1種以上の[ベンゾ[4,5]イミダゾ(複素環)]化合物は、組成物が、約330〜約390nmの波長を有する励起放射線に曝露された際に、約470nm以上の最大蛍光放出波長及び約80nm以上のストークスシフトを呈するのに充分な濃度で組成物中に存在する。この波長はビスフェノールAポリカーボネートマトリックス中で測定される。
【0007】
本発明の第2の態様は次式の構造Iを有する化合物である。
【0008】
【化2】

式中、Rは独立に水素原子、電子吸引基、有機基、二価1,2−シクロアルキリデン基、又はこれらの組合せからなる群から選択され、「q」は1〜4の整数であり、Lは連結基であり、「r」は0又は1である。
【0009】
本発明の第4の態様は、ある物品が標準信号を有する認証可能な物品であることを認証する方法であり、ここで認証可能な物品はタグ識別子を含んでいる。この方法は、紫外線源と光検出器を含む光学試験機を用いることにより物品の試験部分に紫外線を照射し、その物品により放出された試験信号を測定し、試験信号が標準信号と合致するならばその物品が認証可能な物品であることを認証することからなる。ここで、タグ識別子は1種以上の[ベンゾ[4,5]イミダゾ(複素環)]化合物を含んでおり、この1種以上の[ベンゾ[4,5]イミダゾ(複素環)]化合物は、タグ識別子が、約330〜約390nmの波長を有する励起放射線に曝露された際に、約470nm以上の最大蛍光放出波長及び約80nm以上のストークスシフトを呈するのに充分な濃度でタグ識別子中に存在する。
【0010】
本発明の第4の態様は[2,2’]ビス{[ベンゾ[4,5]イミダゾ[2,1−a]イソインドリル]−11−オン}化合物を製造する方法である。この方法は、下記式の構造IIIを有する芳香族二無水物を、下記式の構造IVを有する芳香族ジアミンと接触させ、下記式の構造Iを有する[2,2’]ビス{[ベンゾ[4,5]イミダゾ[2,1−a]イソインドリル]−11−オン}化合物を形成することからなる。
【0011】
【化3】

式中、Lは連結基であり、「r」は0又は1である。
【0012】
【化4】

式中、Rは水素原子、電子吸引基、有機基、二価1,2−シクロアルキリデン基、又はこれらの組合せからなる群から選択され、「q」は0〜4の整数である。
【0013】
【化5】

本発明の第5の態様は精製された[7,7’]ビス{[ベンゾ[4,5]イミダゾ[2,1−a]イソインドリル]−11−オン}化合物を含むポリマー組成物であり、これは、下記式の構造Vを有する芳香族テトラミンを、下記式の構造VIを有する芳香族一無水物と接触させ、第1の中間体生成物を形成し、第1の中間体生成物を第1の溶媒で処理し、第2の中間体生成物を単離し、中間体生成物を第2の溶媒で処理し、下記式の構造IIを有する[7,7’]ビ[ベンゾ[4,5]イミダゾ[2,1−a]イソインドリル]−11,11」−ジオン化合物を単離することからなる方法によって製造される。
【0014】
【化6】

式中、「L」は連結基であり、「r」は0又は1である。
【0015】
【化7】

式中、Rは水素原子、電子吸引基、有機基、二価1,2−シクロアルキリデン基、又はこれらの組合せからなる群から選択され、「q」は0〜4の整数である。
【0016】
【化8】

ここで、化合物は、約330〜約390nmの波長を有する励起放射線に曝露された際に、約470〜530nm未満の波長を有する蛍光を放出し、これらの波長はビスフェノールAポリカーボネートマトリックス中で測定され、化合物は蛍光を放出することができる組成物が生成するのに充分な濃度で存在する。
【0017】
本発明のその他の態様は、上記1種以上の[ベンゾ[4,5]イミダゾ(複素環)]化合物を含むポリマー組成物及び物品を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の好ましい実施形態に関する以下の詳細な説明及びそこに含まれている実施例を参照することによって、本発明がより容易に理解できるであろう。以下の明細書及び特許請求の範囲では多くの用語に言及するが、それらは以下の意味をもつものと定義される。
【0019】
単数形態は、前後関係から明らかに他の意味を有さない限り複数形態を含む。
【0020】
用語「任意」又は「場合により」とは、その後に記載される事象又は状況が起こってもいいし起こらなくてもよく、またその記載はその事象が起こる場合と起こらない場合とを含むことを意味している。
【0021】
本明細書で使用する場合、用語「1,2−シクロアルキリデン基」とは、本明細書に開示されている[ベンゾ[4,5]イミダゾ(複素環)]化合物に関するとき、3〜6個の炭素原子を有するシクロアルキリデン基を意味し、これは1,2−シクロアルキリデン基を形成するのに利用可能な[ベンゾ[4,5]イミダゾ(複素環)]化合物のいずれか2つの隣接する芳香環炭素原子と縮合していることができる。1,2−シクロアルキリデン基を形成することができる基の例としては、1,3−プロピリデン、1,4−ブチリデン、1,5−ペンチリデン、1,6−ヘキシリデンなどがある。従って、例えば1,3−プロピリデン基が結合に利用可能ないずれか2つの隣接する芳香族炭素原子と共に縮合環を形成すると、1,2−シクロペンチリデン環が得られる。
【0022】
本明細書で使用する場合、用語「脂肪族基」とは、1以上の価数を有しており、環状ではなく線状又は枝分かれの原子の配列を含む基をいう。脂肪族基の例としては、メチル、メチレン、エチル、エチレン、ヘキシル、ヘキサメチレンなどがある。本明細書で使用する場合、用語「環式脂肪族基」は、「1,2−シクロアルキリデン基」(上記)を除き、1以上の価数を有しており、環状であるが芳香族ではない原子の配列を含む基をいう。環式脂肪族基の例としては、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどがある。本明細書で使用する場合、用語「芳香族基」とは、1以上の価数を有しており、1以上の芳香族基を含んでいる基をいう。酸素、イオウ、及び窒素のような1以上のヘテロ原子を含む芳香族基も本明細書中では「芳香族基」と定義される。芳香族基の例としては、フェニル、ピリジル、フラニル、チエニル、ナフチル、アントラセニルなどがある。
【0023】
本明細書で定義される場合、用語「ハロゲン基」は、単原子ハロゲン原子のCl、Br、F、及びIをいう。
【0024】
本明細書で使用する場合、用語「電子吸引基」とは、芳香環炭素原子に結合した電気陰性中心を有するハロゲン基又は任意の炭素に結合した基をいう。電子吸引基の電気陰性中心は炭素原子、窒素原子、又はイオウ原子からなることができる。電子吸引基の非限定例としては、トリフルオロメチル、エステル基、カルボン酸基、アセチル、ベンゾイル、プロパノイル、ブタノイル、ペンタノイル、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、及びアセトアセチルのようなカルボニル含有基、ニトロ、クロロ、ブロモ、ヨード、フルオロ、アルキルスルホニル、アリールスルホニルなどがある。
【0025】
本明細書で使用する場合、用語「吸収カットオフ波長」とは、認証技術に使用する化合物のいずれかに関するとき、その化合物のUV−可視スペクトルにおいて最大吸収強度の5%に対応する最高のUV−可視波長をいい、この化合物は適切な溶媒中の溶液として存在する。
【0026】
本明細書で使用する場合、用語「最大蛍光放出」とは、例えばポリカーボネートポリマーマトリックスのようなポリマーマトリックス中に存在するときの[ベンゾ[4,5]イミダゾ(複素環)]化合物に対する最大蛍光強度における波長をいう。
【0027】
本明細書で使用する場合、用語「ストークスシフト」は、一実施形態では、最大吸収における波長と最大放出強度における波長との波長差として定義される。別の実施形態では、「ストークスシフト」は、特に最大吸収波長と最大励起波長との差が約20nm以下であるとき、最大蛍光放出波長と励起波長との差として定義される。
【0028】
本明細書で使用する場合、用語「有機基」は、脂肪族、環式脂肪族、及び芳香族基を総称していう。適切な有機基は本明細書中既に定義された電子吸引基を除く。また、有機基はさらに1以上のヘテロ原子を含んでいてもよい。
【0029】
本明細書で使用する場合、用語「放射線応答性化合物」及び「蛍光体」は互換的に使用されている。
【0030】
本発明の1つの態様は、既に記載した構造I及びIIからなる群から選択される1種以上の[ベンゾ[4,5]イミダゾ(複素環)]化合物を含む組成物である。適切なビスフェノールA(BPA)ポリカーボネートマトリックスは、GE Plasticsにより製造され、メルトフローレート25を有するHF1110Rで例示される。波長の測定は、0.005重量%濃度の[ベンゾ[4,5]イミダゾ(複素環)]化合物を有するBPAポリカーボネート試料の1mm厚の成形チップに対して行う。測定(蛍光であれ吸収分光であれ)はベースラインに対して補正される、すなわち、母材樹脂の吸収又は放出に対して補正される。使用するBPA樹脂は一般に澄んだ透明な樹脂であり、光透過率は約89%(ASTM D1003試験法を用いて測定)。BPAポリカーボネートは、BPAとハロゲン化カルボニル(例えば、ホスゲン)の界面重合、又はBPAとジアリールカーボネート(例えば、ジフェニルカーボネート)の溶融重合により製造することができる。
【0031】
最大蛍光放出波長及びストークスシフトは、溶媒の種類による影響を受け得る(「ソルバトクロミズム」といわれる)。さらに、蛍光放出とストークスシフトは、溶液又は固相中(例えば、固体ポリマーマトリックス中)の蛍光体分子間の分子間及び分子内相互作用の性質により影響され得る。最大蛍光放出波長及びストークスシフトを決定するには幾つかの方法が考えられる。1つの方法では、蛍光分光(又は蛍光測定)を用いて実際の物品(すなわち、樹脂マトリックス)内で決定する。330〜390nmに設定された励起波長での蛍光測定により、最大蛍光放出の位置を明らかにすることができる。その最大蛍光放出に対応する波長に検出器を固定することにより、スペクトルを生成すると、蛍光励起が最大である最大波長(通例、300〜390nmの範囲)の決定が可能になる。この場合、ストークスシフトは、最大蛍光放出波長と最大励起波長との差と定義される。試験試料が追加の着色剤を含有しない場合、励起範囲における最大吸収の決定は簡単な吸収分光を用いて行うことができる。また、蛍光体の性質は溶媒(例えば、ジクロロメタン)中で規定してもよい。一実施形態では、溶媒(おそらくは、その蛍光体の蛍光特性を決定するのに使用するものと同一)を用いて認証可能な物品又はポリマー試料を溶解し、認証可能な物品中に存在する蛍光体をHPLCのようなクロマトグラフィー技術により単離してもよい。必要であれば、溶媒を蒸発させ、蛍光体を適切な溶媒に溶解し、具体的に蛍光放出及び光吸収を測定して、ストークスシフト及び最大蛍光放出を決定してもよい。
【0032】
一実施形態では、組成物は、1種以上の化合物に加えて不純物及び/又は汚染物質を含んでいてもよい。かかる不純物及び/又は汚染物質は、あまりに高い濃度で存在すると組成物の最大蛍光放出波長及びストークスシフトに影響を及ぼすことがあるということが了解されよう。従って、一実施形態では、かかる不純物及び/又は汚染物質を、本明細書に記載するような精製方法によって除去する。1つの代表的な実施形態では、組成物の最大蛍光放出波長及びストークスシフトは、1種以上の化合物の最大蛍光放出波長及びストークスシフトと実質的に同一である。すなわち、1つの代表的な実施形態では、組成物中の不純物及び/又は汚染物質の量は、組成物の最大蛍光放出波長又はストークスシフトに影響しないようなものである。別の実施形態では、組成物は、UV−可視スペクトルにおける吸収カットオフ波長が約420nm以下である。かかる組成物は、「精製された」組成物ということができる。
【0033】
構造I及びIIで表される[ベンゾ[4,5]イミダゾ(複素環)]化合物は、タグ識別子組成物として使用するのに多種多様な構造上の変形が可能である。連結基「L」は、構造I及びIIの各々に存在する2つの四環式断片を連結することができるあらゆる二価以上の基であることができる。例えば、連結基は、二価脂肪族、芳香族、又は環式脂肪族基のような炭素系の基、例えば、ケイ素系の基、例えばスルフィド、スルホキシ、又はスルホン基のようなイオウ系の基、窒素系の基のようなヘテロ原子系の連結基、カルボニル基などであることができる。
【0034】
炭素系連結基の例としては、式CRを有する二価基があり、式中のRとRは各々が独立に、場合により窒素、酸素、及びイオウのような1以上のヘテロ原子で置換されていてもよい脂肪族、環式脂肪族、及び芳香族基からなる群から選択される。脂肪族基の非限定例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、第三−ブチル、ネオペンチル、イソヘキシル、イソオクチル、シクロヘキシルメチル、シクロヘプチルメチル、シクロペンチルメチルなどのC〜C20脂肪族基がある。環式脂肪族基の非限定例としては、シクロヘキシル、シクロペンチル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロヘプチル、シクロオクチルなどのC〜C12環状基がある。芳香族基の非限定例としては、フェニル、ナフチルなどがある。
【0035】
ケイ素系の連結基の例としては、ジアルキルシリル、ジアルコキシシリル、アルキルアルコキシルシリル基などがある。ケイ素系の基のその他の例として、2つの末端基が、構造I又はIIの四環式部分を連結することができる1以上の有機ケイ素基を含んでいてもよい2以上の有機ケイ素基を含む構造がある。窒素系の基の例としては、第二アミノ基(NH)、又はN−アルキルアミノ、N−アリールアミノ、若しくはN−シクロアルキルアミノ基のような第三窒素基がある。適切なイオウ系の基としては1以上のイオウ原子を含むあらゆる基があり、ここで1以上のイオウ原子が一方又は両方の四環式部分を連結する。イオウ系の基の幾つかの例としては、スルフィド基、スルホキシド基、及びスルホン基がある。
【0036】
ある実施形態では、連結基「L」は独立にC=O、S、O、SO、及びCRからなる群から選択され、ここでRとRは独立に水素原子、脂肪族基、芳香族基、環式脂肪族基、及びこれらの組合せからなる群から選択され、「r」は1である。
【0037】
ある実施形態では、構造(I)の化合物は、qが1の値を有するようなものが好ましい。かかる化合物は、「q」が1である構造IVのオルト−フェニレンジアミンを構造IIIの二無水物と反応させることにより製造することができる。商業的に容易に入手可能であるのでオルト−フェニレンジアミン自体が好ましい材料である。オルトフェニレンジアミンと二無水物IIの反応により、Rが水素原子で、「q」が1で、「r」が1である構造Iの[ベンゾ[4,5]イミダゾ(複素環)]化合物が得られる。異なるR及び「q」の値を有する2種の異なるオルト−フェニレンジアミンを使用すると、Rと「q」の値のあらゆる可能な組合せを有する[ベンゾ[4,5]イミダゾ(複素環)]化合物の混合物を得ることができる。
【0038】
別の実施形態では、「q」は1で、「r」は1であり、「L」はO、C=O、S、SO、及びCRからなる群から選択される連結基であり、ここでRとRは独立に水素原子、脂肪族基、芳香族基、環式脂肪族基、及びこれらの組合せからなる群から選択される。このタイプの化合物を製造するのに必要な二無水物を下記構造VII〜XIに示す。ここで、RとRは既に記載した通りである。
【0039】
【化9】

例えば、ビス(3,4−無水物)であるオキシジフタル酸無水物(構造VII)は当技術分野で公知の方法により容易に製造することができる。適切な二無水物の別の例は化合物であり、RとRはメチル基である。
【0040】
例えばオキシジフタル酸無水物のビス(2,3 無水物)形のような、上記二無水物の他の位置異性体形も使用することができる。ビス(3,4−無水物)とビス(2,3−無水物)形を含む混合物を構造IIIのオルト−フェニレンジアミンとの縮合反応に用いて、構造Iの対応する[ベンゾ[4,5]イミダゾ(複素環)]化合物及びそれらの異性体形を含む混合物を形成することもできる。
【0041】
その他の実施形態では、適切な二無水物として、リンカー「L」が次式の構造XIIで示されるジヒドロキシ芳香族化合物から誘導された構造単位を含むものも包含される。
【0042】
【化10】

式中、RとRは独立に脂肪族基、芳香族基、若しくはこれらの組合せであるか、又はRとRが一緒になって5〜12個の炭素原子を有する環状構造の一部を形成する。
【0043】
特定の実施形態では、構造IIIの二無水物は、「r」が0であるような構造を有し、すなわち、1,1’−ビフェニル−3,4,3’,4’−二無水物(以後BPDAという)である。BPDAは、構造IVのオルト−フェニレンジアミンと縮合させて、沢山の[ベンゾ[4,5]イミダゾ(イソインドリル)]化合物を製造することができる。特定の実施形態では、4−ベンゾイル−オルト−フェニレンジアミンをBPDAと反応させるが、その生成物は次式の構造XIIIを有しており、次式にはHantzsch−Widmanの命名法に従った番号付け系も示してある。
【0044】
【化11】

例えば、XIIIの構造の異性体である次式の構造XIVを有する化合物は、7,7’−ジベンゾイル−[2,2’]ビ[ベンゾ[4,5]イミダゾ[2,1−a]イソインドリル]−11,11」−ジオンと正式に命名することができる。
【0045】
【化12】

構造Iの化合物は認証技術において極めて有用である。これらの化合物は、低い可視色のような重要なスペクトル特性をユニークな組合せでもっており、また電磁放射線、特に紫外線(例えば、UVランプ、発光ダイオード又はレーザーからの)のような光子を吸収して、可視領域の蛍光放射線を放出し、その結果ある実施形態では80nm以上、別の実施形態では100nm以上、さらに別の実施形態では120nm以上の長いストークスシフトを示す能力を有している。さらに、これらの化合物は、UV−可視スペクトルにおける吸収カットオフ波長が約420nm以下である。これらの性質のため、これらの化合物は、認証可能なポリマー組成物及びその認証可能な物品を製造するための優れたタグ識別子候補となる。ある代表的な実施形態では、構造Iの適切な化合物は、UV−可視スペクトルにおける吸収カットオフ波長が約420nm以下、最大蛍光放出波長が約470nm以上、ストークスシフトが約100nm以上である。
【0046】
構造IIの適切なビス[ベンゾ[4,5]イミダゾ(複素環)]化合物として、「q」が好ましくは1の値を有するものがある。[7,7’]ビス{[ベンゾ[4,5]イミダゾ[2,1−a]イソインドリル]−11−オン}化合物ともいわれるこのタイプの化合物は、2モルの置換又は非置換フタル酸無水物を、次式の構造Vを有する1モルのテトラミンと縮合することにより製造することができる。
【0047】
【化13】

式中、「L」は既に記載したような連結基であり、「r」は0又は1である。「r」が0である場合、構造Vの化合物は3,4,3’,4’−テトラアミノ−1,1’−ビフェニルとなり、その1モルを2モルのフタル酸無水物と縮合させると「r」が0で、「q」が1であり、Rが水素原子である構造IIを有する生成物を得ることができる。
【0048】
適切なフタル酸無水物として、塩素化フタル酸無水物のようなハロゲン化フタル酸無水物もある。塩素化フタル酸無水物の特定の例としては、モノ−、ジ−、トリ−、及びテトラ−クロロフタル酸無水物がある。これらの化合物は、当技術分野で公知の方法を用いるフタル酸無水物の塩素化によって、異性体の混合物として、又は特定の異性体として容易に入手可能である。塩素化フタル酸無水物を構造Vの適切なテトラミンと反応させて、Rが塩素原子であり、「q」が1〜4、「r」が0又は1である構造IIの多種多様なビス[ベンゾ[4,5]イミダゾ(複素環)]化合物を提供することができる。
【0049】
特定の実施形態では、構造Vのテトラアミノ化合物が3,4、3’,4’−テトラアミノ−1,1’−ビフェニル(すなわち、「r」=0)であり、これをフタル酸無水物と反応させる場合、得られる生成物([7,7’]ビ[ベンゾ[4,5]イミダゾ[2,1−a]イソインドリル]−11,11’−ジオンともいわれる)はRが水素原子で、「q」が4である構造IIを有する。
【0050】
構造I及びIIの電子吸引基は独立にエステル基、カルボン酸基、ケトン基、ハロゲン基、ニトロ基、シアノ基、トリフルオロメチル基、スルホン基、及びこれらの組合せからなる群から選択される。ある実施形態では、電子吸引基は式CORを有するケトン基であり、式中のRはC〜C12脂肪族、環式脂肪族、又は芳香族基からなる群から選択される。別の実施形態では、電子吸引基は式COORを有するエステル基であり、式中のRはC〜C12脂肪族、環式脂肪族、又は芳香族基からなる群から選択される。
【0051】
特定の実施形態では、タグ識別子組成物は次式の構造XIII及びXVからなる群から選択される1種以上のものからなる。
【0052】
【化14】

既に記載した通り、構造Iのタグ識別子組成物(一般に、[2,2’]ビス{[ベンゾ[4,5]イミダゾ[2,1−a]イソインドリル]−11−オン}化合物ともいわれる)は、構造IIIの二無水物を構造IVのオルト−フェニレンジアミンと反応させることにより製造することができる。この方法は一般に、1モルの二無水物と2モルのオルト−フェニレンジアミンとを溶媒中で加熱することからなり、溶媒は脂肪族カルボン酸、芳香族モノヒドロキシ化合物、環式脂肪族アルコール、ハロゲン化及び非ハロゲン化液体芳香族炭化水素、N,N−ジアルキルアミド、環状N−アルキルアミド、並びに以上の溶媒の混合物からなる群から選択される。二無水物に対して少し過剰(通例約5〜20モル%)のオルト−フェニレンジアミンが、目的とする生成物の比較的高めの収率を得る上で有益であることが多い。この反応の進行は液体クロマトグラフィーのような分析法により追跡することができる。反応生成物を濾過により反応混合物から単離する。反応生成物は、そのままでさらなる用途に使用することもできるし、又は所望により、用途のタイプに応じて、さらに精製することもできる。一般に、認証技術においてタグ識別子として使用するには、その材料の可視色を低めるのに役立つのでその反応生成物を精製するのが望ましい。また、精製により、最終の単離製品中に比較的高めの濃度の所望の精製された生成物を得ることもでき、その結果適切な励起放射線(例えばUV放射線)による励起の際によりシャープでより明確な蛍光放出信号を得ることができる。ある実施形態では、精製は、[2,2’]ビス{[ベンゾ[4,5]イミダゾ[2,1−a]イソインドリル]−11−オン}反応生成物を第1の溶媒で処理し、中間体の[2,2’]ビ[ベンゾ[4,5]イミダゾ[2,1−a]イソインドリル]−11,11’−ジオンを単離し、その中間体の精製された[2,2’]ビ[ベンゾ[4,5]イミダゾ[2,1−a]イソインドリル]−11,11’−ジオンを第2の溶媒で処理し、精製された[2,2’]ビ[ベンゾ[4,5]イミダゾ[2,1−a]イソインドリル]−11,11’−ジオンを単離することによって達成することができる。従って、ある実施形態では、精製工程で、第1の溶媒及び第2の溶媒に可溶性である不純物が除去される。これらの不純物の存在及びこれらの不純物の除去は、高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)のような技術で都合よく追跡することができる。不純物は、他の化学種もあるが中でも、目的とする多環式複素環化合物を形成する環化反応の過程において形成される部分的に反応した中間体からなり得る。これらの中間体は、可視スペクトルの緑色領域における所望の蛍光放出及び80nm以上の長いストークスシフトを呈するのに適切な程度、又は適切なタイプの共役をもっていない可能性がある。従って、精製は、かかる不純物の除去を助け、単離された生成物のポリマー組成物及びかかるポリマー組成物から作成される物品中における認証タグ識別子としての性能を改良する。
【0053】
ある実施形態では、第1の溶媒と第2の溶媒は、芳香族炭化水素及び部分的に水素化された芳香族炭化水素からなる群から選択される1種以上のものからなる。ジヒドロナフタレンは好ましい第1の溶媒である。好ましい第2の溶媒は、トルエン、キシレン、メシチレン、及びこれらの混合物からなる群から選択されるものである。無水物とアミンとの反応における極めて一般的な不純物は通常原料そのもの及び一部の残留溶媒である。高めの含有量で存在する可能性が最も高い不純物はおそらく無水物である。極めて高い純度で、殊に溶媒の沸点が極めて高い場合、微量のその溶媒が存在する可能性がある。高沸点溶媒の除去には、高真空下で長時間の乾燥が必要である。
【0054】
構造IIを有する化合物は、既に記載した通りテトラアミノジアリール化合物を芳香族一無水物と反応させることにより製造することができる。[7,7’]ビス{[ベンゾ[4,5]イミダゾ[2,1−a]イソインドリル]−11−オン}化合物といわれることもあるこれらの化合物は、一般に、1モルのテトラアミノジアリール化合物を2モルの芳香族一無水物と一緒に加熱することによって製造される。少し過剰(約5〜10%のモル過剰)の一無水物が、目的とする生成物の比較的高めの収率を得る上で有益であることが多い。構造Iの化合物の場合と同様に、反応生成物の色より低い可視色を有する製品を得るためには、反応生成物をさらに精製する必要があることが多い。また、精製により、最終の単離製品中に比較的高めの濃度の目的とする精製された生成物を得ることができ、その結果適切な励起放射線(例、UV放射線)による励起の際によりシャープでより明確な蛍光放出信号を得ることができる。精製は、[7,7’]ビス{[ベンゾ[4,5]イミダゾ[2,1−a]イソインドリル]−11−オン}反応生成物を第1の溶媒で処理し、中間体の[7,7’]ビス{[ベンゾ[4,5]イミダゾ[2,1−a]イソインドリル]−11−オン}化合物を単離し、中間体の精製された[7,7’]ビス{[ベンゾ[4,5]イミダゾ[2,1−a]イソインドリル]−11−オン}化合物を第2の溶媒で処理し、精製された[7,7’]ビス{[ベンゾ[4,5]イミダゾ[2,1−a]イソインドリル]−11−オン}化合物を単離することにより達成される。ある実施形態では、第1の溶媒と第2の溶媒は芳香族炭化水素及び部分的に水素化された芳香族炭化水素からなる群から選択される1種以上のものからなる。従って、ある実施形態では、精製工程で、第1の溶媒と第2の溶媒可溶性である不純物が除去される。これらの不純物の存在及びこれらの不純物の除去はHPLCのような技術により都合よく追跡することができる。不純物は、他の化学種もあるが中でも、目的とする多環式複素環化合物を形成する環化反応の過程において形成される部分的に反応した中間体からなり得る。これらの中間体は、可視スペクトルの緑色領域における所望の蛍光放出、及び一実施形態では80nm以上、別の実施形態では100nm以上、さらに別の実施形態では120nm以上の長いストークスシフトを呈するのに
適切な程度、又は適切なタイプの共役をもたない可能性がある。ある代表的な実施形態では、長いストークスシフトは80〜180nmの範囲である。さらに、こうして精製された化合物は、UV−可視スペクトルにおける吸収カットオフ波長が約420nm以下であることにより表されるように低い可視色を有する。すなわち、精製はかかる不純物の除去を助け、単離された生成物の、ポリマー組成物及びかかるポリマー組成物から作成される物品中における認証タグ識別子としての性能を改良する。
【0055】
ジヒドロナフタレンは好ましい第1の溶媒である。好ましい第2の溶媒は、トルエン、キシレン、メシチレン、及びこれらの混合物からなる群から選択されるものである。ある実施形態では、この方法に従って製造される精製された[7,7’]ビス{[ベンゾ[4,5]イミダゾ[2,1−a]イソインドリル]−11−オン}化合物は、UV−可視スペクトルにおける吸収カットオフ波長が約420nm以下、最大蛍光放出波長が約470nm以上、ストークスシフトが約80nm以上である。
【0056】
本発明の別の態様は、構造I及びIIからなる群から選択される1種以上の[ベンゾ[4,5]イミダゾ(複素環)]化合物をタグ識別子として含むポリマー組成物である。用語「認証可能なポリマー」とは、タグ識別子組成物を含んでおり、認証可能な物品を製造するのに使用されるあらゆるポリマー組成物を意味する。このポリマーは熱可塑性ポリマー、熱硬化性ポリマー、又はこれらの混合物からなることができる。ポリマーはホモポリマー、コポリマー、又はこれらの混合物であることができる。基材ポリマーとして利用することができる適切なポリマーの幾つかの可能な例としては、特に限定されないが、非晶質、結晶性及び半結晶性の熱可塑性材料、ポリ塩化ビニル、ポリオレフィン、塩素化ポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキシルメチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリスルホン、水素化ポリスルホン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ABS樹脂、ポリスチレン、水素化ポリスチレン、ポリ(シクロヘキシルエチレン)、ポリ(スチレン−コ−アクリロニトリル)、ポリ(スチレン−コ−無水マレイン酸) ポリブタジエン、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(メチルメタクリレート−コ−イミド)コポリマー、ポリアクリロニトリル、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリフェニレン、ポリアリーレンエーテル、ポリアミドイミド、ポリ(エチレン−コ−酢酸ビニル)、ポリ酢酸ビニル、液晶ポリマー、エチレン−テトラフルオロエチレンコポリマー、ポリアリーレート、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アルキド、ポリウレタン、鉱物充填シリコーン樹脂、ビス−マレイミド樹脂、シアン酸エステル樹脂、ビニル樹脂、及びベンゾシクロブテン樹脂、並びに以上のポリマーを含むブレンド、混合物及びコポリマー、反応生成物、及び複合材がある。
【0057】
適切な熱可塑性ポリマーはエンジニアリング熱可塑性ポリマーを含む1種以上のものである。ある実施形態では、ポリマーは、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリスルホン、ポリアリーレンエーテル、ポリシロキサン、及びポリオレフィン、並びにこれらのブレンド及びコポリマーからなる群から選択される熱可塑性ポリマーである。
【0058】
一般に、構造I及びIIの化合物は、ポリマー組成物の全体重量に対して約0.01ppm〜約20重量%の[ベンゾ[4,5]イミダゾ(複素環)]化合物の量でポリマー中に存在し得る。ポリマー中の化合物の範囲の下限は、一般に、物品に成形されることになる最終のポリマー組成物中のこれらの化合物の実際の濃度に対応する。この範囲の上限は一般に、大量、例えば20重量%までの[ベンゾ[4,5]イミダゾ(複素環)]化合物が存在することができるマスターバッチのポリマー組成物に対応する。成形品を製造するためのマスターバッチによるアプローチは、マトリックスポリマー中の[ベンゾ[4,5]イミダゾ(複素環)]添加剤の不均一な分布、極端に小量の添加剤を正確に秤量してマトリックスポリマー流に入れる必要性のような困難性を回避し、組成物の一貫性を改良し、最終の樹脂中のタグ識別子の濃度の変化を特に制限してより信頼性のある認証を確実にすることから、一般に有利である。従って、マスターバッチによるアプローチにより、成形業者がより良好な品質の成形製品をより容易に製造することが可能になる。マスターバッチは、成形業者がタグ識別子を含有する最終物品を製造する場合だけでなく、樹脂の製造業者が認証可能な樹脂を製造する場合にも使用することができる。
【0059】
構造I及びIIの化合物はまた比較的高い分解温度も有しており、これは本発明の目的ではその材料が空気中で加熱されたとき周囲温度で測定される初期重量に対してその重量の10%を損う温度として定義される。ある実施形態では、[ベンゾ[4,5]イミダゾ(複素環)]化合物は、空気中で測定して、ある実施形態では350℃より高く、別の実施形態では約280〜約450℃の分解温度を有する。かかる高い分解温度のため、これらの化合物はポリマー成形作業、殊に300℃を超える成形温度を使用することが多いエンジニアリング熱可塑性樹脂の成形への応用の優れた候補となる。
【0060】
認証可能なポリマー及び認証方法は価値のある情報をもたらす。例えば、認証可能なポリマーとしてのポリマー又は認証可能な物品としての物品の同定により、ポリマーの組成及び出所、認証可能なポリマーから作成された認証可能な物品の出所、又は物品、ポリマー若しくはそれから作成された物品が無許可の複製若しくはコピーであるか否か、ポリマーの連続番号(又はロット番号)、製造日などの一片以上の情報を得ることができる。幾つかの場合に、ポリマー又は物品が認証可能なポリマー又は認証可能な物品であることを認証できないことは、無許可のコピー又はの複製の証明となる。
【0061】
本発明の別の実施形態は、ある物品が認証可能な物品であることを認証する方法であり、ここで認証可能な物品はタグ識別子を含んでいる。この方法は、放射線源と光検出器を含む光学試験機(この光学試験機は蛍光測定に適している)を用いてカットオフ波長より低い波長の放射線(例えば、UV放射線)を物品の試験部分に照射し、その物品により放出された試験信号を測定し、試験信号が標準信号と合致する場合にその物品が認証可能な物品であることを認証することからなる。ここで、タグ識別子は構造I及びII(本明細書中既に開示した)からなる群から選択される1種以上の[ベンゾ[4,5]イミダゾ(複素環)]化合物を含んでおり、この1種以上の[ベンゾ[4,5]イミダゾ(複素環)]化合物は、UV−可視スペクトルにおける吸収カットオフ波長が約420nm以下であり、最大蛍光放出波長が約470nm以上であり、ストークスシフトが約90nm以上である。本明細書に開示されている認証可能なポリマーを様々なポリマー系物品中に使用すると、その物品の製造者連鎖、流通網、販売時点又は使用時点に沿ったあらゆる時点で1以上の関係者が認証可能なポリマー又は物品の存否を確認又は同定することが可能になる。偽造品を認証可能なポリマー又は物品として同定するリスクを低減するためには、2以上の線源、すなわち1つはカットオフ波長より低いピーク波長のもの、別の1つは可視/近UV範囲にピーク波長を有する(すなわち、青色/紫色を放出する)線源を使用して認証を行うのがことがある。例えば、カットオフ波長より低い線源は380nmの発光ダイオード(LED)であることができ、他の線源はピーク放出が約420〜約470nmの範囲にある青色/紫色LEDであることができる。かかる組合せは、より短いストークスシフトを有する標準の蛍光体を使用する偽造品に対して長いストークスシフト蛍光体でタグ付けされた認証可能なポリマー間を識別するのに役立つであろう。というのは、青色/紫色線源の下では偽造品と比較して認証可能なポリマーでは極めて低い蛍光放出が生じるからである。物品又はポリマーを認証するために、2つの線源を備えた光学試験機は、各線源について2つの基準信号に対して比較することができる2つの信号を戻す(return)。物品は、両方の信号を確認することができる場合に限り認証される。認証可能なポリマーはまた、ある種の用途においては望ましいか又は一定の顧客を他の顧客から識別し得る顧客の目に見える色を提供する標準の着色剤を含んでいてもよい。かかる場合、光学試験機が白色LED線源も含んでいると、ある物品の可視色を決定するのに適切であるので好ましい。一実施形態では、光学試験機がUV LEDと白色LEDを含んでおり、光検出器が色を測定することができる一連の赤色、緑色、青色及び透明なフィルター処理したLEDである。別の実施形態では、光学試験機が青色LEDも含んでいる。光学試験機はCD又はDVDプレイヤー及び/又はレコーダーのような光学ドライブに組み込み、媒体を認証した後にそのデータへのアクセスを許可したり拒否したりすることができる。
【0062】
光学試験機は電磁放射線源と検出器の両方を含む。光学試験機は定置型装置でも手持ち式の携帯型装置でもよい。一実施形態では、光学試験機はデータ記憶媒体プレイヤーである。データ記憶媒体の実例としては、特に限定されないが、コンパクトディスク(CD)及びデジタルバーサタイルディスク(DVD)がある。一実施形態では、光学試験機はCDプレイヤーであることができる。別の代表的な実施形態では、光学試験機はDVDプレイヤーである。別の実施形態では、光学試験機はBlu線ディスクプレイヤーであることができる。適切なデータ記憶媒体プレイヤーの実例は、一実施形態では330nm(以後、「nm」と略す)〜450nm、別の実施形態では330〜400nm、さらに別の実施形態では330〜390nmの範囲の波長の読み取りレーザーを有するデータ記憶媒体プレイヤーである。
【0063】
電磁放射線源の実例としては、ランプ若しくはLED放射線のような広いスペクトル分布、又は狭いスペクトル分布(狭いバンドのフィルター処理した発光ダイオード及びレーザー)を有する可視又は不可視光源がある。電磁放射線源は、一実施形態では約330〜約450nm、別の実施形態では330〜400nm、さらに別の実施形態では330〜390nmの波長を有するレーザー又はLED放射線であることができる。ある実施形態では、認証を行うのに使用する1以上の線源は、タグ識別子に充分な励起を提供し、かつ検出可能な放出を生成するためにほぼカットオフ波長以下の波長を有していなければならない。
【0064】
使用することができる具体的な検出器としては、1以上の反射された電磁放射線、透過した電磁放射線、放出された電磁放射線、又はかかる電磁放射線の組合せを検出信号として測定、同定及び/又は定量することができるものがある。一実施形態では、検出器は、1以上の強度、スペクトル分布、強度比、ピーク位置など、及びこれらの組合せを測定、定量、及び/又は同定することができる。幾つかの代表的な実施形態では、検出器は、吸収、反射、散乱、発光 などの光学的相互作用、及び偏光などの検出信号の特別な性質測定、同定及び/又は定量することができる。一実施形態では、検出器は光検出器であることができる。
【0065】
検出器の実例としては、一実施形態では、UV−可視分光光度計のような電子分光光度計、振動分光光度計、蛍光分光光度計、発光分光光度計など、及びこれらの組合せがある。振動分光光度計の例は、Raman、赤外、Surface Enhanced Raman及びSurface Enhanced Resonance Raman分光光度計である。1つの代表的な実施形態では、使用する検出器は蛍光分光光度計である。別の代表的な実施形態では、検出器は蛍光分光光度計と発光分光光度計の組合せであることができる。
【0066】
本発明の方法で物品を認証するのに使用する検出波長は約400〜約550nmである。ある実施形態では、物品を認証するのに使用する検出波長は約450〜約550nmの範囲である。使用する認証方法に基づいて単一の波長を選択すべき場合には、最大蛍光放出が期待される波長に対応する波長を選択するのが好ましい。
【0067】
認証しようとする物品は薄い縁部を有する成形品の形状であることができ、刺激に対する曝露による放出の変化の検出は物品のこれらの薄い縁部で行うことができ(縁部放出)、一方励起のために使用する光源は物品の頂部から、すなわち物品の表面に対して垂直に照射するか又はその表面の垂線に対してある角度(0〜約80度)で照射する。1つの代表的な実施形態では、成形品はCD又はDVDのようなデータ記憶媒体デバイスであることができる。別の代表的な実施形態では、薄い縁部での放出は蛍光又は発光の放出であることができる。
【0068】
本発明の方法により認証又は確認することができる認証可能な物品又は認証可能なポリマーは、330nm〜UVカットオフ波長(すなわち、約420nm以下)の範囲の放射線を吸収して試験信号を生成する[ベンゾ[4,5]イミダゾ(複素環)]タグ識別子を含んでいる。試験信号は、ある実施形態では純粋な蛍光放出放射線、又は蛍光放出と励起源からの幾らかの残余の放出光との組合せからなる。
【0069】
検出器によって検出される信号は試験信号である。この試験信号は主として蛍光放出信号であるが、認証可能なポリマー組成物によっては蛍光放出信号に加えて吸収信号も使用することができる。ある代表的な実施形態では、試験信号は蛍光放出である。[ベンゾ[4,5]イミダゾ(複素環)]化合物は、ある実施形態では照射UV又はレーザー放射線の波長に対して約100nmより大きく長波長側にシフトされた蛍光放出試験信号を生成する。このシフトは長いストークスシフトといわれることが多い。別の実施形態では、長いストークスシフトは約120nmより大きい。
【0070】
様々な紫外線−感受性の[ベンゾ[4,5]イミダゾ(複素環)]化合物の個々の動的な性質を特にユニークな認証信号として使用できることが理解されよう。特定の化合物の特に選択される信号を予測する困難さは、無許可のコピー及び複製能を阻止する認証方法を提供するのに有利である。
【0071】
ある物品は、その物品のUV放射線により誘導された蛍光放出試験信号が認証可能な物品のUV放射線により誘導された蛍光放出標準信号と実質的に同一である場合に、認証可能な物品として認証することができる。一実施形態では、試験信号と標準信号は相対的な値の差が約5%以下であることができる。その他の実施形態では、試験信号と標準信号との変動は+/−20%以下であることができ、その他の実施形態ではその変動が約+/−10%であることができる。幾つかのその他の実施形態では、従来のUV範囲のちょうど外側、又は吸収カットオフ波長より低いピーク波長を有する励起源を使用することができる。
【0072】
認証しようとする物品の試験部分を光学試験機の電磁放射線源と相互作用させることは本発明の方法の1つの態様である。物品の試験部分は物品全体であってもよいし、又は物品の一部分のみであってもよい。1つの代表的な実施形態では、認証しようとする物品の試験部分は、その物品の、局在化された濃度の放射線応答性化合物を含有する部分である。このように、認証しようとする物品の一部分のみを放射線源で照射すればよいということは本発明の方法の1つの利点である。試験部分の大きさはレーザーで作成されるスポット、すなわち約1μm程度の小さいものから、ほぼ物品全体の大きさとすることができる。一実施形態では、試験部分は直径が約0.1〜約20cmである。別の実施形態では、試験部分は直径約0.5〜約15cmである。
【0073】
試験部分を放射線に曝す時間の長さは、とりわけ、照射する放射線の波長、試験部分の大きさ、物品の大きさ及び形状、基材ポリマーの組成、放射線感受性化合物(すなわちタグ識別子)の種類及び濃度などに依存する。
【0074】
本発明の1つの代表的な実施形態では、認証しようとする物品はデータ記憶媒体であることができ、光学試験機はデータ記憶媒体プレイヤーである。ある実施形態では、データ記憶媒体の回転速度は、UV又はレーザー放射線感受性化合物に、望ましいレベルの蛍光放出試験信号を生成するのに充分な時間が与えられるように充分遅くなければならない。1つの代表的な実施形態では、データ記憶媒体は認証の方法中、1rpm(毎分回転数)〜40000rpmの速度で回転させることができ、別の実施形態では、データ記憶媒体を100〜10000rpmの速度で回転させることができる。好ましい実施形態では、光学媒体は認証中150〜1000rpmの範囲の速度で回転する。
【0075】
本明細書に開示されている認証方法は物品を認証することができる。一般に、この認証方法の目的は、ある試験物品が認証可能な物品であるか否か、又はある試験物品が認証可能なポリマーを含んでいるかどうかを決定することである。1つの代表的な実施形態では、この物品は認証すべきポリマー組成物であることができる。試験物品はポリカーボネート、特にポリカーボネート基材ポリマーを用いて作成されたデータ記憶媒体からなることができる。1つの代表的な実施形態では、認証しようとする物品はDVD又はCDである。別の実施形態では、物品は追記可能なディスク(例えば、CD−R、CD−RW、DVD−R、DVD+R、DVD−RWなどの追記可能なCD又はDVD)である。
【0076】
本発明の認証方法は、一度より多く使用しても、又は一度だけ使用してもよい。認証可能なポリマー中の構造I又はIIの蛍光体化合物の濃度は、放射線応答性化合物の量子効率、励起及び放出波長、並びに使用する検出技術に依存し、一般に認証可能なポリマー又は認証可能な物品の全体重量に対して、ある実施形態では約0.001ppm〜約1重量%、別の実施形態では約0.5ppm〜約0.5重量%、さらに別の実施形態では約1ppm〜約1重量%の量で存在する。
【0077】
一実施形態では、蛍光体化合物は、認証しようとする物品の少なくとも一部分にあればよい。別の実施形態では、この化合物は物品の一部分全体に分布していてもよい。ある代表的な実施形態では、蛍光体化合物は物品の一部分全体に均一に分布していることができる。同様に、蛍光体化合物は、認証しようとする物品の表面の少なくとも一部分上にあってもよいし、又はある表面全体にあってもよい。別の実施形態では、UV又はレーザー放射線応答性化合物は物品の表面上に均一に分布していることができ、別の実施形態では、UV又はレーザー放射線応答性化合物が物品の少なくとも一部分の表面上のある局在化された領域に含まれていてもよい。
【0078】
1つの代表的な実施形態では、認証しようとする物品又は認証可能な物品の少なくとも1つの部分又は部品が、基材ポリマーと上記のようなUV又はレーザー放射線応答性[ベンゾ[4,5]イミダゾ(複素環)]化合物とからなる認証可能なポリマーを含む。
【0079】
ある代表的な実施形態では、基材ポリマーはポリカーボネートポリマーである。多種多様な分子構造、分子量、及び物理的性質を有するポリカーボネートを、当業者が業界で認められている技術を用いて製造することができる。モノマー又はコモノマーとしてのビスフェノールAに基づくポリカーボネートホモポリマー、コポリマー、及びこれらのブレンドは、容易に製造され、また商業的に容易に入手可能であるので好ましい基材である。基材ポリマーとして使用するのに適切なポリカーボネート組成物はまた、このタイプの樹脂組成物に通常配合される様々な添加剤を含んでいてもよい。かかる添加剤は、例えば、充填材又は強化材、熱安定剤、酸化防止剤、光安定剤、可塑剤、帯電防止剤、難燃剤、離型剤、追加の樹脂、発泡剤など、及び以上の添加剤を含む組合せである。以上の添加剤の任意の組合せを使用してもよい。かかる添加剤は組成物を形成する際の成分の混合中の適切なときに混合することができる。
【0080】
充填材又は強化材の例としては、ガラス繊維、アスベスト、炭素繊維、シリカ、タルク及び炭酸カルシウムがある。熱安定剤の例としては、トリフェニルホスファイト、トリス−(2,6−ジメチルフェニル)ホスファイト、トリス−(混合モノ−及びジ−ノニルフェニル)ホスファイト、ジメチルベンゼンホスホネート及びトリメチルホスフェートがある。
【0081】
酸化防止剤の例としては、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、及びペンタエリトリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]がある。その他の可能な酸化防止剤としては、例えば、有機ホスファイト、例えばトリス(ノニル−フェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリトリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリトリトールジホスファイトなど、アルキル化モノフェノール、ポリフェノール及びポリフェノールとジエンのアルキル化反応生成物、例えばテトラキス[メチレン(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメート)]メタン、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメートオクタデシル、2,4−ジ−tert−ブチルフェニルホスファイトなど、パラ−クレゾールとジシクロペンタジエンのブチル化反応生成物、アルキル化ヒドロキノン、ヒドロキシル化チオジフェニルエーテル、アルキリデン−ビスフェノール、ベンジル化合物、β−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオン酸と一価若しくは多価アルコールのエステル、β−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−プロピオン酸と一価若しくは多価アルコールのエステル、チオアルキル若しくはチオアリール化合物のエステル、例えばジステアリルチオプロピオネート、ジラウリルチオプロピオネート、ジトリデシルチオジプロピオネートなど、β−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオン酸のアミドなど、並びに以上の組合せがある。
【0082】
光安定剤の例としては、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−オクチルフェニル)−ベンゾトリアゾール及び2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノンがある。可塑剤の例としては、ジオクチル−4,5−エポキシ−ヘキサヒドロフタレート、トリス−(オクトキシカルボニルエチル)イソシアヌレート、トリステアリン及びエポキシド化大豆油がある。帯電防止剤の例としては、グリセロールモノステアレート、ナトリウムステアリルスルホネート、及びナトリウムドデシルベンゼンスルホネートがある。離型剤の例としては、ステアリルステアレート、蜜蝋、モンタンワックス及びパラフィンワックスがある。他の樹脂の例としては、特に限定されないが、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、及びポリフェニレンオキシドがある。
【0083】
このタイプの樹脂組成物に通常配合されるその他の添加剤も使用できる。かかる添加剤としては、酸化防止剤、熱安定剤、帯電防止剤(テトラアルキルアンモニウムベンゼンスルホン酸塩、テトラアルキルホスホニウムベンゼンスルホン酸塩など)、離型剤(ペンタエリトリトールテトラステアレート、グリセロールモノステアレートなど)など、並びに以上のいずれかを含む組合せを挙げることができる。使用できるその他の可能な添加剤は、中でも、安定剤、例えば光及び熱安定剤(例えば、酸性リン系化合物)、ヒンダードフェノール、酸化亜鉛、硫化亜鉛粒子、又はこれらの組合せ、潤滑剤(鉱油など)、可塑剤、着色剤として使用される染料(アントラキノン、アントラピリドン、メタン染料、キノフタロン、アゾ染料、ペリノンなど)、並びに以上の添加剤の組合せからなる。
【0084】
例えば、1つの代表的な実施形態では、認証可能なポリマー組成物は、認証可能なポリマーの重量を基準にして、熱安定剤を約0.01〜約0.1重量%、帯電防止剤を約0.01〜約1重量%、及び離型剤を約0.1〜約1重量%含むことができる。
【0085】
特に基材ポリマーがポリカーボネートである場合、認証可能なポリマーの加工処理に役立たせるために、例えば押出機又はその他の混合装置で触媒(1種以上)を使用することもできる。触媒は通例、得られる材料の粘度の調節を補助する。可能な触媒としては、水酸化テトラアルキルアンモニウム、水酸化テトラアルキルホスホニウムなどの水酸化物があり、水酸化ジエチルジメチルアンモニウム及び水酸化テトラブチルホスホニウムが好ましい。触媒(1種以上)は単独で、又はリン酸のような酸などのクエンチャーと組み合わせて使用することができる。加えて、コンパウンディング中水をポリマーメルトに注入し、ベントを介して水蒸気として除去して、残留する揮発性化合物を除去することができる。
【0086】
本明細書に開示されている認証可能なポリマーは、単軸式又は二軸式押出機、混練機、ブレンダーなどの、様々な前駆体を適切に混合することができる反応容器を用いて製造される。
【0087】
[ベンゾ[4,5]イミダゾ(複素環)]化合物を基材ポリマー中に混入する方法としては、例えば、溶液キャスティング、混和、ブレンド、又は共重合がある。一実施形態では、[ベンゾ[4,5]イミダゾ(複素環)]化合物は、ポリマーの製造段階で、ポリマーのコンパウンディング工程中、ポリマーの物品への加工処理中、又はこれらの組合せでポリマー中に混入することができる。[ベンゾ[4,5]イミダゾ(複素環)]化合物は、濃縮物、すなわち既に記載したようなマスターバッチを用いて、又はポリマーのコンパウンディング段階中、又は物品の形成工程中に導入することができる。
【0088】
例えば、基材ポリマー用のポリマー前駆体は、前もって[ベンゾ[4,5]イミダゾ(複素環)]化合物と混合し(例えば、ペレット、粉末、及び/又は液体形態に)、重量測定又は容積測定フィーダーを用いて同時に押出機に供給することもできるし、或いは場合により[ベンゾ[4,5]イミダゾ(複素環)]化合物を射出成形機その他の成形装置の供給口に、又は代わりの射出口を介して加えてもよい。場合により、一実施形態では、基材ポリマーを製造し、[ベンゾ[4,5]イミダゾ(複素環)]化合物を認証可能なポリマーの一部分上に塗布、成形、又は溶接することにより基材ポリマーの一部分に分散させることができる。
【0089】
別のアプローチにおいて、[ベンゾ[4,5]イミダゾ(複素環)]化合物は、コンパウンディング中にこの化合物をメルトに加えることによって基材ポリマー中に混入してもよい。1つの代表的な実施形態では、[ベンゾ[4,5]イミダゾ(複素環)]化合物は、二軸式押出機を用いてコンパウンディングすることにより、サイドフィーダーを介して[ベンゾ[4,5]イミダゾ(複素環)]化合物をメルトに加えることによって混入することができる。別の代表的な実施形態では、[ベンゾ[4,5]イミダゾ(複素環)]化合物は、サイドフィーダーを介して押出機の下流に加えてもよい。別の特定の実施形態では、殊に蛍光体の融点が押出温度と比較して低い場合には単軸式押出機を使用してもよい。
【0090】
基材ポリマー前駆体を使用する場合、押出機は、ポリマー前駆体の分解を引き起こすことなく融解させるのに充分な高い温度に維持すべきである。ポリカーボネートの場合、例えば、一実施形態では約220〜約360℃の温度を使用することができる。別の実施形態では、約260〜約320℃の温度を利用する。同様に、押出機内の滞留時間を調節して分解を最小にするべきである。約10分以下の滞留時間を使用することができ、一実施形態では約5分以下を用い、別の実施形態では約2分以下を使用し、さらに別の実施形態では約1分以下を使用する。所望の形態(通例ペレット、シート、ウェブなど)に押し出す前に、場合により、得られた混合物を、溶融濾過及び/又はスクリーンパックの利用などの濾過により望ましくない汚染物質又は分解生成物を除去することができる。
【0091】
幾つかの実施形態では、構造I又はIIの化合物、殊にヒドロキシ基、又はカルボン酸基を有するものを有するポリマーペレットを製造するのに使用する条件下で、カルボン酸基と、ポリマー基材のポリマー鎖中に存在し得る適当な官能基(例えば、アミノ、アミド、ヒドロキシなど)との間で化学反応が起こることがある。この結果、蛍光化合物I又はIIの化学的に結合した誘導体が形成され得るので、その蛍光特性が得られるポリマー組成物内で本質的に保持されることになる。ヒドロキシ基を有する蛍光体化合物は、ビス(メチルサリチル)カーボネート(すなわちBMSC)のような活性化性の基(通常電子吸引基)を有するジアリールカーボネートと反応することができ、これらはポリカーボネートホモポリマー及びコポリマーを製造するのに使用される。かかる状況において、蛍光体化合物はポリカーボネート樹脂マトリックスと化学的に結合する用になり得る。
【0092】
構造I及びIIの化合物は、様々な物品を製造するのに価値がある。有利に製造することができる物品としては、成形品、押出品、及び被覆物品がある。[ベンゾ[4,5]イミダゾ(複素環)]化合物を含むポリマー組成物は、商業的に入手可能又は当業者に公知の任意の標準的な装置、設計、又は形状を用いて射出成形又は押し出すことができる。[ベンゾ[4,5]イミダゾ(複素環)]化合物を含むコーティング組成物は溶媒系又は粉末系であることができる。所望のコーティングを製造するのに必要とされる溶媒、装置、及び塗布条件の選択は当業者が確認することができる。このようにして製造された成形品は、ある実施形態では、オリジナルであるとして認証することができる認証可能な物品である。この認証可能な物品は、認証可能な物品の全体重量に対して、ある実施形態では0.001ppm〜約1重量%、別の実施形態では0.5ppm〜約0.5重量%、さらに別の実施形態では1ppm〜約1重量%の[ベンゾ[4,5]イミダゾ(複素環)]化合物を含む。
【0093】
認証可能なポリマーは、その材料の物理的及び化学的性質が望まれるあらゆる用途に使用することができる。一実施形態では、認証可能なポリマーは認証すべき物品を作成するのに使用できる。一実施形態では、認証可能なポリマーを含む物品はデータ記憶媒体であることができる。認証可能なポリマーを含むその他の物品としては、包装材料(殊に、薬品包装)、レンズのような自動車部品、電気通信付属品(例えば、携帯電話カバー)、コンピューター及び消費者用エレクトロニクス、構築材料、医療器具、アイウェア製品、光ディスク、セキュリティー文書、セキュリティーインク、流通証券、自動車部品、電気通信及び家庭用電化製品、アルコール飲料、化粧品、医薬品及び医療器具用の包装材料、フィルム及びシート(例えば、ディスプレー用途に使用されるもの)などがある。
【0094】
本発明の認証方法を用いて認証することができるデータ記憶媒体は、様々な成形技術、加工処理技術、又はこれらの組合せを用いて形成することができる。適切な成形技術としては、射出成形、フィルムキャスティング、押出、プレス成形、ブロー成形、スタンピングなどがある。1つの可能な方法は、一実施形態では認証可能なポリマーであってもよい溶融ポリマーを金型に充填する射出成形−圧縮技術からなる。この金型はプリフォーム、インサート、充填材などを含有していてもよい。ポリマーを冷却し、まだ少なくとも部分的に溶融状態にあるうちに圧縮して、螺旋同心又はその他の配向に配列される所望の表面特徴(例えば、ピット、溝、縁部の特徴、平滑度など)を、形成された部品の所望の一部分、すなわち所望の領域の片面又は両面上に刻印する。その後、形成された部品を室温に冷却する。一旦形成された部品が製造されたら、当技術分野で公知の中でも、電気メッキ、塗装技術(スピンコーティング、スプレーコーティング、蒸着、スクリーン印刷、塗装、浸漬など)、積層、スパッタリング、及び以上の加工処理技術を含む組合せのような追加の加工処理を使用して、基材上に所望の層を配置することができる。
【0095】
データ記憶媒体の例は、場合により中空の(バブル、キャビティーなど)又は充填された(繊維、球、粒子などの様々な形態の金属、プラスチック、ガラス、セラミックなどの)コアを含み得る射出成形された基材からなる。一実施形態では、成形された基材はポリカーボネートからなり得る。
【0096】
一実施形態では、形成された認証可能な物品又は試験物品がデータ記憶媒体である場合、認証可能なポリマーはデータ記憶媒体プレイヤーデバイスのレーザーを介して読み取られる基材を形成するのに好ましく使用される。すなわち、認証可能なポリマーの応答を偽造すること、及び使用する技術がその媒体の作動性(playability)に影響を与えないのを確実にすることが極めて困難になるからである。DVDのような2つの基材を有するデータ記憶媒体においては、認証可能なポリマーを用いて一方又は両方の基材を形成することができる。1つの代表的な実施形態では、DVDの認証可能なポリマーで形成された基材がDVDプレイヤーデバイスのレーザーによって読み取られる基材となる。
【0097】
データ記憶媒体の基材上には、リードスルー基材層、結合層、データ層、誘電体層(1以上)、半反射層、結合層、反射層(1以上)、及び/又は保護層、並びに以上の層を含む組合せを始めとする様々な層が配置される。基材層自体が1以上の追加の層を含んでいてもよい。これらの追加の層は様々な材料からなり、製造される媒体のタイプに従って配置される。例えば、これらの層は表面媒体を構成し得、この表面媒体は基材と接触して配置された保護層、誘電体層、データ記憶層、誘電体層、そして次に反射層からなり、基材の反対側には任意の装飾層が配置される。一方、1つのタイプの光学媒体の場合、これらの層は任意の装飾層、保護層、反射層、誘電体層、及びデータ記憶層からなり得、それに続く誘電体層が基材と接触する。光学媒体としては、特に限定されないが、CD、CD−ROM、CD−R、CD−RW、DVD、DVD−R、DVD−RW、DVD−RAM、DVD−ROM、高密度DVD、強化ビデオディスク(EVD)、スーパーオーディオCD(SACD)、光磁気、Blu線、その他のようなあらゆる従来の事前記録、書換可能、又は追記可能なフォーマットを挙げることができる。媒体の形態はディスク状に限定されることはなく、読み出し装置内に収容することができる任意の形状でよいものと了解されたい。
【0098】
データ記憶層は、光学層、磁気層、又は光磁気層のような検索可能なデータを記憶することができるあらゆる材料からなることができる。可能なデータ記憶層としては、特に限定されないが、酸化物(例えば、酸化ケイ素)、希土類元素−遷移金属合金、ニッケル、コバルト、クロム、タンタル、白金、テルビウム、ガドリニウム、鉄、ホウ素、その他、合金、有機染料(例えば、シアニン又はフタロシアニンタイプの染料)、無機相変化型化合物(例えば、TeSeSn、InAgSbなど)及び以上のものを含む組合せがある。
【0099】
保護層は、塵埃、油、その他の汚染物質から保護する。保護層の厚さは通常、少なくとも部分的に、使用する読み書き機構のタイプ、例えば、磁気、光学、又は光磁気によって決定される。可能な保護層としては、取り分け、金、銀、窒化物(例えば、取り分け、窒化ケイ素及び窒化アルミニウム)、炭化物(例えば、炭化ケイ素等)、酸化物(例えば、二酸化ケイ素等)、ポリマー性材料(例えば、ポリアクリレート又はポリカーボネート)、炭素膜(ダイヤモンド、ダイヤモンド様炭素など)、及び以上のものを含む組合せのような防食性材料がある。
【0100】
誘電体層をデータ記憶層の片面又は両面に配置することができ、熱制御器として使用されることが多い。可能な誘電体層としては、環境中で適合性の、好ましくは周囲の層と反応しない材料の中でも、窒化物(例えば、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、等)、酸化物(例えば、酸化アルミニウム)、炭化物(例えば、炭化ケイ素)、及び以上の材料を含む組合せがある。
【0101】
反射層は、データ検索を可能にするのに充分な量のエネルギー(例えば、光)を反射するのに充分な厚さを有するべきである。可能な反射層としては、金属(例えば、アルミニウム、銀、金、チタン、ケイ素、合金並びに以上の金属を含む混合物、等)を始めとして、特定のエネルギー場を反射することができるあらゆる物質がある。
【0102】
データ記憶層、誘電体層、保護層及び反射層に加えて、潤滑層などの他の層を使用することができる。有用な潤滑剤としては、フルオロ化合物、殊にフルオロ油及びグリースなどがある。
【0103】
一実施形態では、認証可能なポリマーは、データ記憶媒体の基材に形成される。1つの代表的な実施形態では、認証可能なポリマーは光学記憶媒体の基材を構成する。
【0104】
1つの特定の代表的な実施形態では、認証可能なポリマーはデジタルバーサタイルディスク(DVD)の1以上の基材を構成する。本明細書に開示されている認証可能なポリマーを含む具体的なDVDは2つの接合されたプラスチック基材(又は樹脂層)からなり、各々が通例約0.8mm以下の厚さを有し、約0.7mm以下の厚さが好ましい。また、約0.5mm以上の厚さが好ましい。これら2つの接合したプラスチック基材の1以上が1以上のデータ層からなる。一般に層ゼロ(又はL0)といわれる第1の層が、ディスクのデータを読み取る面(読み出し面)に最も近い。一般に層1(L1)といわれる第2の層は、読み出し面から離れている。L0(3)とL1(5)との間には、通例、接着剤及び場合により保護コーティング又は分離層が配置される。片面DVD(すなわち、DVDの1つの面上に配置された単一の読み出し面から読まれるもの)は、さらに、そのDVDの読み出し面とは反対の面上に配置されたラベルを含んでいることができる。一実施形態では、第1の層及び第2の層の1つ又は両方が認証可能なポリマーからなっていてもよい。1つの代表的な実施形態では、第1の層が認証可能なポリマーを含んでいる。
【0105】
単一の層が読み出し面から読み取られる場合(例えば、DVD5、DVD10)、スタンピングした表面を、スパッタリングその他の蒸着法により薄い反射データ層で被覆する。これにより、通例約60〜約100オングストローム(Å)の厚さの金属コーティングが作成される。同一の読み出し面から読み取られる2つのデータ層のDVD(例えば、DVD9、DVD14、DVD18)の場合、レーザーは、第1の層を読み取るときにはその層で反射することができなければならず、また第2の層を読み取るときには第1の層を通って集中する(又は伝達する)ことができなければならない。従って、第1の層は「半透明」(すなわち、半反射性)であり、一方第2の層は「全反射性」である。Consortium for Optical Mediaにより規定されている現行の標準規格では、全反射性と半反射性データ層に対する金属化の組合せは、電気パラメーターR14Hにより測定して(ECMA仕様書#267に記載されている)、レーザーの波長において約18%〜約30%でなければならない。現在のDVDの場合、一般に使用されるレーザー波長は約700nm以下であり、約370〜約680nmが好ましく、約600〜約680nmがさらに好ましい。これらの金属化標準は無色の光学的品質の樹脂と共に使用するDVDデータ層に対して設定されたものであるが、着色樹脂を使用するDVD系にも同様に適用される。
【0106】
樹脂に色をつける場合、基材を通過し反射する光透過が行われる。半反射及び全反射(L0及びL1)層上の金属化の種類と厚さを基材の光透過率に合わせる。所望の反射率は、金属化の厚さと半反射データ層の反射率とのバランスをとり、全反射データ層の厚さを調節して目的とする仕様内の反射率を確保することによって得ることができる。
【0107】
個々のデータ層に対する金属化は、様々な反射性材料を用いて得ることができる。半反射及び/又は全反射データ層として使用するのに充分な反射率を有し、好ましくは基材上にスパッタリングすることができる材料、例えば金属、合金などを使用することができる。幾つかの可能な反射性材料は金、銀、白金、ケイ素、アルミニウムなど、並びに以上の材料を1種以上含む合金及び組合せからなる。例えば、第1/第2の反射データ層の金属化は金/アルミニウム、銀合金/アルミニウム、銀合金/銀合金などであることができる。次の層の充分な反射率を確保するためには、各々の層の全体の反射率に加えて、引き続く反射データ層間の反射率の差を調節しなければならない。好ましくは、引き続く層(例えば、第1及び第2の層)間の反射率の差は約5%以下であり、約4%以下が好ましく、約3.0%以下がより好ましい。隣接する反射データ層間の反射率の差が約0.5%以上であるとさらに好ましく、約1%以上がより好ましい。2つの層に関連して説明したが、2より多くの層を使用することができ、引き続く層間の反射率の差は上記の通りであると了解されることに留意されたい。
【0108】
反射データ層は通例、成形、エンボス加工などにより基材の表面に形成されたパターン(例えば、ピット、溝、asperities、開始/停止配向器(start/stop orientator)などの表面特徴)上にスパッタリングその他の方法で配置する。蒸着は、例えば、第1のパターン化表面上への半反射データ層のスパッタリングからなることができる。次に、分離層又は保護コーティングを半反射データ層上に配置することができる。複数のデータ層のDVD(例えば、DVD14、DVD18など)を形成する場合には、分離層の半反射データ層と反対側の面に第2のパターン化表面を(例えば、スタンピングなどにより)形成することができる。次いで、全反射データ層をスパッタリングその他により分離層の上に設けることができる。また、DVD14構成の場合、全反射データ層を第2の基材(又は樹脂層)のパターン化表面上に設けることができる。次に、別の分離層又は保護コーティングを、半反射データ層と全反射データ層の一方又は両方の上に配置する。その後、結合剤又は接着剤を2つの基材間に配置し、一緒に結合してディスクを形成することができる。場合により、幾つかの半反射データ層を設け、各々の引き続く層間に分離層を配置することができる。
【0109】
反射データ層の反射率は、反射層の数に応じて約5〜約100%であることができる。単一の反射データ層を使用する場合、反射率は好ましくは約30〜約100%であり、約35〜約90%がより好ましく、約45〜約85%がさらにより好ましい。2つの反射データ層を使用する場合、データ層の反射率は好ましくは約5〜約45%であり、約10〜約40%がより好ましく、約15〜約35%がさらにより好ましく、約18〜約30%が殊に好ましい。最後に、多数の反射データ層(例えば、単一の読み出し面から読み取り可能な2より多くの反射データ層)を使用する場合、反射率は好ましくは約5〜約30%であり、約5〜約25%がより好ましい。殊に好ましい範囲は現状ではECMA仕様書#267を基準にしており、反射率は二重層DVD(例えば、1以上の全反射層と1以上の半反射層)で約18〜約30%の反射率又は単一層DVD(例えば、1つの全反射層)で約45〜約85%の反射率である。
【0110】
一実施形態では、これらのDVD基材を作成するのに使用するポリマーは、レーザーの波長領域で、約60〜94%未満の光の透過を可能にする。この透過範囲内で、好ましくは透過率は約70%以上であり、約74%以上がより好ましく、約78%以上が殊に好ましい。使用する着色剤のタイプと量に応じて、透過率は、着色剤のタイプに依存して約92%以下であることができ、約88%以下、さらには約85%以下が可能である。基材の透過率が低減するにつれて、基材の所望の接着を達成することがより困難になることに留意されたい。好ましくは、基材はポリカーボネートを含み、主としてポリカーボネート(例えば、約80%以上のポリカーボネート)からなる基材が殊に好ましい。
【0111】
既に論じたように、蛍光体化合物は認証しようとする物品又は認証可能な物品の中又はその上にあればよい。かかる物品又は認証可能な物品はデータ記憶媒体ディスクであってもよく、ここでデータ記憶媒体はリードスルー基材層と反射層を含む。このデータ記憶媒体はさらに1以上の追加の基材層、結合層、又は半反射層を含んでいてもよい。UV又はレーザー放射線応答性化合物はデータ記憶媒体のリードスルー基材層の表面上、又はデータ記憶媒体のリードスルー基材層中に位置することができる。一実施形態では、リードスルー基材層はポリカーボネートからなる。
【0112】
本明細書に開示されている組成物、方法及び物品は、出所の認証及び確認に有用な認証技術を提供し、ポリマー系基材及び物品、殊にポリカーボネート系基材及びかかる基材から作成された物品を同定する。
【0113】
特定の基材又はデータ記憶媒体中の蛍光体化合物の存在は、認証可能なポリマーに対して(予め定められた長いストークスシフトの点で)特に選択される認証信号に関して様々なオプションを提供する。その結果、偽造者並びに非合法の生産者及び販売者は、認証可能なポリマー及びそれから正当に作成された物品に対する認証信号を「模倣する」のが余計困難になる。特定の蛍光体化合物を示す特に選択された試験信号を予測することの困難さは、無許可のコピー及び複製活動を阻止する認証方法を提供する上で有利である。
【実施例】
【0114】
以下の実施例は、本発明をさらに例証するために挙げるものである。
【0115】
使用した全ての必要な原料と試薬は実験室級の純度であり、Aldrich−Sigma Company、USA及びLancaster Chemical Company、UKから入手した。ここに記載する全ての出発材料及び生成物のプロトンNMRスペクトルは300メガヘルツBruker NMR分光計でd−ジメチルスルホキシドを溶媒として用いて測定した。化合物はさらに、液体クロマトグラフ及びQuattro Ultima Pt質量分析計を含む液体クロマトグラフ−質量分析計(LC−MS)系で特性を決定した。液体クロマトグラフィーで成分を分離するには、Xterra C18(50mm×4.6mm、5μm)カラムを使用した。次いで、分離された成分を質量分析により分析した。紫外−可視(UV−VIS)スペクトルは、複光束式Perkin−Elmer Lambda 900 UV−VIS−NIR分光光度計を用いて記録した。赤外(IR)スペクトルは、Perkin Elmer Spectrum GXシリーズ装置を用い、全反射減衰モードを使用することによって得た。
【0116】
蛍光スペクトルは、Hitachi F−4500分光光度計及び波長365nmの励起放射線を用いて記録した。測定は、蛍光発生化合物を有する1mmの厚さの成形チップに対して行った。反射バックグラウンドを使用して蛍光応答を測定した。
【0117】
[ベンゾ[4,5]イミダゾ[複素環]化合物に対する熱重量分析(TGA)を行って、その熱安定性を決定した。本明細書に開示されているように、熱安定性は、その試料がその初期重量の10%を失う温度によって与えられる。分析は、自動試料採取器を備えておりTA Instrumentsから入手可能なTGA 2950装置を用いて行った。この技術を用いて、材料の重量変化の量を空気中で温度の関数として測定した。試料を40℃の初期温度で平衡化させた後、10℃/分の速度で500℃の最高温度まで加熱し、その後500℃で平衡化させた。このプロセスを通して試料の重量を連続的にモニターした。この技術は、加熱プロセス中に起こり得る重量変化を測定する。
【0118】
実施例1
この実施例では、[7,7’]ビ[ベンゾ[4,5]イミダゾ[2,1−a]イソインドリル]11,11’−ジオンの調製について説明する。
【0119】
3,3’4,4’−テトラアミノビフェニル(1グラム)、フタル酸無水物(1.48gm)及び酢酸(25ミリリットル)の混合物を還流下で撹拌しながら10時間加熱した。室温に冷却した後、反応混合物を濾過し、固体の生成物を回収し、酢酸で、次いで水で洗浄し、120℃で8時間乾燥して、生成物(1.8グラム)を得た。
【0120】
この粗生成物を160℃に維持したテトラヒドロナフタレン(10ミリリットル)中で撹拌した。4時間撹拌した後、混合物の温度を100℃にし、濾過し、固体のフィルターケーキをテトラヒドロナフタレン(5ミリリットル)で洗浄した。固体の生成物を還流トルエン(10ミリリットル)中で1時間加熱した後、周囲温度に冷却し、濾過し、最後に120℃で8時間乾燥して、精製された生成物を収量1.5グラムで得た。
【0121】
実施例2
この実施例では、7,7’−ジベンゾイル−[2,2’]ビ[ベンゾ[4,5]イミダゾ[2,1−a]イソインドリル]−11,11’−ジオンの調製について説明する。
【0122】
3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(3グラム)、酢酸(50ミリリットル)及び3,4−ジアミノベンゾフェノン(5.19グラム)の混合物を、還流下で撹拌しながら10時間加熱した。周囲温度に冷却した後、析出した固体の生成物を濾過し、酢酸で、次に水で洗浄し、120℃で8時間乾燥した。粗生成物の収量は6.5グラムであった。
【0123】
この粗生成物を、160℃に維持したテトラヒドロナフタレン(20ミリリットル)中で4時間撹拌した。混合物の温度を100℃にし、濾過し、5ミリリットルのテトラヒドロナフタレンで洗浄した。フィルターケーキを還流トルエン(25ミリリットル)中で撹拌し、不溶性の固体生成物を濾過し、120℃で8時間乾燥して、収量5グラムの精製された生成物を得た。
【0124】
実施例3
この実施例では、上記のように調製した[ベンゾ[4,5]イミダゾ(複素環)]化合物を配合した押出ポリマー試料を調製するのに使用した手順について説明する。この方法は、[7,7’]−ビ[ベンゾ[4,5]イミダゾ[2,1−a]イソインドリル]11,11’−ジオンについて例示する。
【0125】
1キログラムのビスフェノールAホモポリカーボネート(HF1110R、GE Plasticsから市販)及び[7,7’]ビ[ベンゾ[4,5]イミダゾ[2,1−a]イソインドリル]11,11’−ジオン添加剤(実施例1に記載したようにして調製した)の混合物を、添加剤が全体の試料の約0.005重量%となるようにして、ポリエチレンバッグに入れ、約3〜4分激しく振とうした。次に、得られた材料を、W & P ZSK−25 Mega Compounderを用いて真空中表1に示す条件下でコンパウンディングしてポリマーペレットを製造した。
【0126】
【表1】

実施例4
この実施例では、実施例3に記載したようにして調製した押出ペレットから成形チップを製造するのに使用する一般手順について説明する。
【0127】
押出ペレットを、120℃に維持したオーブンで約4時間乾燥した。次いで、この乾燥したペレットを、LTM−Demag成形機を用いて表2に示す条件下で成形した。
【0128】
実施例5と6は、それぞれ実施例1と2の[ベンゾ[4,5]イミダゾ(複素環)]化合物を有する成形プラークに対応する。実施例4に記載したようにして調製した成形プラークを用いて、プラーク中に存在する[ベンゾ[4,5]イミダゾ(複素環)]化合物が示す蛍光放出スペクトルを測定した。UV−可視吸収最大は、溶媒としてN,N−ジメチルホルムアミドを用いて測定したときに[ベンゾ[4,5]イミダゾ(複素環)]化合物が示す最高強度の吸収を表す。吸収カットオフ波長(λ)は、最大UV−可視吸収信号の強度の5%に対応する波長を表す。特定の[ベンゾ[4,5]イミダゾ(複素環)]化合物が最高強度のUV−可視吸収最大(λmax)を示す波長と、蛍光放出(λ)ピークとの差がストークスシフト(単位nm)である。結果をまとめて表4に示す。表中、「T」は、[ベンゾ[4,5]イミダゾ(複素環)]化合物が周囲温度におけるその化合物の初期重量に対して重量の10%を失った温度を表し、「(λ)」はその化合物の可視カットオフ色を表す。これらの結果を表3に示す。
【0129】
【表2】

【0130】
【表3】

表3に示した結果が明らかに示しているように、実施例1と2の[ベンゾ[4,5]イミダゾ(複素環)]化合物は、420nm未満の低い吸収カットオフ波長、すなわち、タグ識別子化合物を有する成形チップが極めて少ない色を呈するか又は全く色を呈さないこと、可視スペクトルの緑色領域における蛍光放出、及び80nmより大きい長いストークスシフトの望ましい組合せを示している。
【0131】
代表的な実施形態を参照して本発明を説明してきたが、当業者には理解されるように、本発明の範囲から逸脱することなく、様々な変更をなすことができ、また本発明の要素を等価物で置き換えることができる。加えて、特定の状況又は材料を本発明の教示に適合させるべく、本発明の本質的な範囲から逸脱することなく多くの修正を行うことができる。従って、本発明は、本発明を実施する上で考えられる最良の形態として開示した特定の実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲に入る全ての実施形態を包含するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式の構造I及びIIからなる群から選択される1種以上の[ベンゾ[4,5]イミダゾ(複素環)]化合物を含んでなる組成物であって、
1種以上の[ベンゾ[4,5]イミダゾ(複素環)]化合物は、組成物が、約330〜約390nmの波長を有する励起放射線に曝露された際に、約470nm以上の最大蛍光放出波長及び約80nm以上のストークスシフトを呈するように充分な濃度で組成物中に存在し、ここで波長はビスフェノールAポリカーボネートマトリックス中で測定される、組成物。
【化1】

式中、R及びRは独立に水素原子、電子吸引基、有機基、二価1,2−シクロアルキリデン基、又はこれらの組合せからなる群から選択され、「q」は独立に1〜4の整数であり、Lは連結基であり、「r」は独立に0又は1である。
【請求項2】
[ベンゾ[4,5]イミダゾ(複素環)]化合物が空気中で測定して約280〜約450℃の10%減量分解温度を有する、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
「q」=1である、請求項1記載の組成物。
【請求項4】
「L」が独立にC=O、S、O、SO、CRからなる群から選択され、ここでR及びRは独立に水素原子、脂肪族基、芳香族基、環式脂肪族基、及びこれらの組合せからなる群から選択され、「r」が1である、請求項3記載の組成物。
【請求項5】
「r」が0である、請求項4記載の組成物。
【請求項6】
が、エステル基、カルボン酸基、ケトン基、ハロゲン基、ニトロ基、シアノ基、トリフルオロメチル基、スルホン基、及びこれらの組合せからなる群から選択される、請求項5記載の組成物。
【請求項7】
ケトン基が式CORを有しており、式中のRがC〜C12脂肪族、環式脂肪族、又は芳香族基からなる群から選択される、請求項6記載の組成物。
【請求項8】
エステル基が式COORを有しており、式中のRがC〜C12脂肪族、環式脂肪族、又は芳香族基からなる群から選択される、請求項6記載の組成物。
【請求項9】
1種以上の[ベンゾ[4,5]イミダゾ(複素環)]化合物が、次の構造XIII及びXVからなる群から選択される、請求項1記載の組成物。
【化2】

【請求項10】
1種以上の[ベンゾ[4,5]イミダゾ(複素環)]化合物のUV−可視スペクトルにおける吸収カットオフ波長が約420nm以下である、請求項1記載の組成物。
【請求項11】
さらにポリマーを含んでいる、請求項1記載の組成物。
【請求項12】
ポリマーが、ポリ塩化ビニル、ポリオレフィン、塩素化ポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキシルメチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリスルホン、水素化ポリスルホン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ABS樹脂、ポリスチレン、水素化ポリスチレン、ポリ(シクロヘキシルエチレン)、ポリ(スチレン−コ−アクリロニトリル)、ポリ(スチレン−コ−無水マレイン酸)ポリブタジエン、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(メチルメタクリレート−コ−イミド)コポリマー、ポリアクリロニトリル、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリフェニレン、ポリアリーレンエーテル、ポリアミドイミド、ポリ(エチレン−コ−酢酸ビニル)、ポリ酢酸ビニル、液晶ポリマー、エチレン−テトラフルオロエチレンコポリマー、ポリアリーレート、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アルキド、ポリウレタン、鉱物充填シリコーン樹脂、ビス−マレイミド樹脂、シアン酸エステル樹脂、ビニル樹脂、及びベンゾシクロブテン樹脂、並びに以上のポリマーを含むブレンド、混合物及びコポリマー、反応生成物、及び複合材からなる群から選択される熱可塑性ポリマーである、請求項11記載の組成物。
【請求項13】
1種以上の[ベンゾ[4,5]イミダゾ(複素環)]化合物のUV−可視スペクトルにおける吸収カットオフ波長が約420nm以下である、請求項11記載の組成物。
【請求項14】
組成物の全体重量に対して約0.001ppm〜約20重量%の[ベンゾ[4,5]イミダゾ(複素環)]化合物を含んでいる、請求項13記載の組成物。
【請求項15】
請求項14記載の組成物を含んでなる物品。
【請求項16】
物品の全体重量に対して0.001ppm〜約1重量%の[ベンゾ[4,5]イミダゾ(複素環)]化合物を含んでいる、請求項15記載の物品。
【請求項17】
物品の全体重量に対して0.5ppm〜約0.5重量%の[ベンゾ[4,5]イミダゾ(複素環)]化合物を含んでいる、請求項15記載の物品。
【請求項18】
物品の全体重量に対して1ppm〜約1重量%の[ベンゾ[4,5]イミダゾ(複素環)]化合物を含んでいる、請求項15記載の物品。
【請求項19】
射出成形品、押出品、又はコーティング組成物からなる、請求項15記載の物品。
【請求項20】
光ディスク、セキュリティー文書、セキュリティーインク、流通証券、自動車部品、電気通信及び家庭用電化製品、又はアルコール飲料、化粧品、医薬品及び医療器具用の包装材料からなる群から選択される、請求項19記載の物品。
【請求項21】
次式の構造Iを有する化合物。
【化3】

式中、Rは独立に水素原子、電子吸引基、有機基、二価1,2−シクロアルキリデン基、又はこれらの組合せからなる群から選択され、「q」は1〜4の整数であり、Lは連結基であり、「r」は0又は1である。
【請求項22】
「q」=1である、請求項21記載の化合物。
【請求項23】
「L」が独立にC=O、S、O、SO、CRからなる群から選択され、ここでR及びRは独立に水素原子、脂肪族基、芳香族基、環式脂肪族基、及びこれらの組合せからなる群から選択され、「r」が1である、請求項22記載の化合物。
【請求項24】
「r」が0である、請求項23記載の化合物。
【請求項25】
が独立にエステル基、カルボン酸基、ケトン基、ハロゲン基、ニトロ基、シアノ基、トリフルオロメチル基、スルホン基、及びこれらの組合せからなる群から選択される、請求項24記載の化合物。
【請求項26】
ケトン基が式CORを有しており、ここでRはC〜C12脂肪族、環式脂肪族、又は芳香族基からなる群から選択される、請求項25記載の化合物。
【請求項27】
がフェニル基である、請求項26記載の化合物。
【請求項28】
エステル基が式COORを有しており、ここでRはC〜C12脂肪族、環式脂肪族、又は芳香族基からなる群から選択される、請求項25記載の化合物。
【請求項29】
UV−可視スペクトルにおける吸収カットオフ波長が約420nm以下である、請求項21記載の化合物。
【請求項30】
さらに、ポリマーを含んでいる、請求項21記載の化合物。
【請求項31】
UV−可視スペクトルにおける吸収カットオフ波長が約420nm以下である、請求項30記載の化合物。
【請求項32】
約470nm以上の最大蛍光放出波長、及び約80nm以上のストークスシフトを呈する、請求項30記載の化合物。
【請求項33】
標準信号を有する認証可能な物品である物品を認証する方法であって、認証可能な物品がタグ識別子を含んでおり、方法が、
紫外線源及び蛍光検出器を含む光学試験機を用いて物品の試験部分に紫外線を照射し、
物品により放出された試験信号を測定し、
その試験信号が標準信号と合致した場合にはその物品が認証可能な物品ことを認証することを含んでなり、
タグ識別子組成物が1種以上の[ベンゾ[4,5]イミダゾ(複素環)]化合物を含んでおり、1種以上の[ベンゾ[4,5]イミダゾ(複素環)]化合物は、約330〜約390nmの波長を有する励起放射線に曝露された際に、タグ識別子組成物が約470nm以上の最大蛍光放出波長及び約80nm以上のストークスシフトを呈するのに充分な濃度でタグ識別子組成物中に存在する、方法。
【請求項34】
照射が、約330〜約390nmの波長を有する紫外線を含む、請求項33記載の方法。
【請求項35】
試験信号が約100nm以上のストークスシフトを含む、請求項33記載の方法。
【請求項36】
試験信号が約120nm以上のストークスシフトを含む、請求項33記載の方法。
【請求項37】
[ベンゾ[4,5]イミダゾ(複素環)]化合物が次式の構造I及びIIからなる群から選択される、請求項33記載の方法。
【化4】

式中、R及びRは独立に水素原子、電子吸引基、有機基、二価1,2−シクロアルキリデン基、又はこれらの組合せからなる群から選択され、「q」は1〜4の整数であり、Lは連結基であり、「r」は0又は1である。
【請求項38】
[2,2’]ビス{[ベンゾ[4,5]イミダゾ[2,1−a]イソインドリル]−11−オン}化合物の製造方法であって、方法は、
下記構造IIIを有する芳香族二無水物を下記構造IVを有する芳香族ジアミンと接触させ、
下記構造Iを有する[2,2’]ビス{[ベンゾ[4,5]イミダゾ[2,1−a]イソインドリル]−11−オン}化合物を形成する
ことを含んでなる、方法。
【化5】

式中、Lは連結基であり、「r」は0又は1である。
【化6】

式中、Rは水素原子、電子吸引基、有機基、二価1,2−シクロアルキリデン基、又はこれらの組合せからなる群から選択され、「q」は0〜4の整数である。
【化7】

【請求項39】
ジアミンが、オルト−フェニレンジアミン、4−メトキシカルボニル−オルト−フェニレンジアミン、4−アセチル−オルト−フェニレンジアミン、4−メチルスルホニル−オルト−フェニレンジアミン、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項38記載の方法。
【請求項40】
「r」が0であり、「q」が1であり、Rがベンゾイル基である、請求項38記載の方法。
【請求項41】
接触が、芳香族二無水物及び芳香族ジアミンを溶媒中で加熱することを含んでおり、溶媒が、脂肪族カルボン酸、芳香族モノヒドロキシ化合物、環式脂肪族アルコール、ハロゲン化及び非ハロゲン化液体芳香族炭化水素、N,N−ジアルキルアミド、環状N−アルキルアミド、及び以上の溶媒の混合物からなる群から選択される、請求項38記載の方法。
【請求項42】
さらに、[2,2’]ビス{[ベンゾ[4,5]イミダゾ[2,1−a]イソインドリル]−11−オン}の精製を含む、請求項38記載の方法。
【請求項43】
精製が、
[2,2’]ビス{[ベンゾ[4,5]イミダゾ[2,1−a]イソインドリル]−11−オン}を第1の溶媒で処理し、
中間体の[2,2’]ビ[ベンゾ[4,5]イミダゾ[2,1−a]イソインドリル]−11,11’−ジオンを単離し、
中間体の精製された[2,2’]ビ[ベンゾ[4,5]イミダゾ[2,1−a]イソインドリル]−11,11’−ジオンを第2の溶媒で処理し、
精製された[2,2’]ビ[ベンゾ[4,5]イミダゾ[2,1−a]イソインドリル]−11,11’−ジオンを単離する
ことからなる、請求項42記載の方法。
【請求項44】
第1の溶媒及び第2の溶媒が、芳香族炭化水素及び部分的に水素化された芳香族炭化水素からなる群から選択される1種以上のものからなる、請求項43記載の方法。
【請求項45】
第1の溶媒がジヒドロナフタレンである、請求項44記載の方法。
【請求項46】
第2の溶媒が、トルエン、キシレン、メシチレン、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項44記載の方法。
【請求項47】
[7,7’]ビス{[ベンゾ[4,5]イミダゾ[2,1−a]イソインドリル]−11−オン}化合物の製造方法であって、
下記式の構造Vを有する芳香族テトラミンを、下記式の構造VIを有する芳香族一無水物と接触させ、
第1の中間体生成物を形成し、
第1の中間体生成物を第1の溶媒で処理し、
第2の中間体生成物を単離し、
中間体生成物を第2の溶媒で処理し、
下記式の構造IIを有する[7,7’]ビ[ベンゾ[4,5]イミダゾ[2,1−a]イソインドリル]−11,11’−ジオン化合物を単離する
ことを含んでなり、化合物が、約330〜約390nmの波長を有する励起放射線に曝露された際に、約470nm〜530nm未満の波長を有する蛍光放出を呈し、波長はビスフェノールAポリカーボネートマトリックス中で測定され、化合物は、蛍光放出を呈することができる組成物を生成するのに充分な濃度で存在する、方法。
【化8】

式中、「L」は連結基であり、「r」は0又は1である。
【化9】

式中、Rは水素原子、電子吸引基、有機基、二価1,2−シクロアルキリデン基、又はこれらの組合せからなる群から選択され、「q」は0〜4の整数である。
【化10】

【請求項48】
[7,7’]ビス{[ベンゾ[4,5]イミダゾ[2,1−a]イソインドリル]−11−オン}化合物が、空気中で測定して約280〜約420℃の10%減量分解温度を有する、請求項47記載の方法。
【請求項49】
[7,7’]ビス{[ベンゾ[4,5]イミダゾ[2,1−a]イソインドリル]−11−オン}化合物がさらに約80〜約180nmのストークスシフトを呈する、請求項48記載の方法。

【公表番号】特表2008−524383(P2008−524383A)
【公表日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−546721(P2007−546721)
【出願日】平成17年12月1日(2005.12.1)
【国際出願番号】PCT/US2005/043423
【国際公開番号】WO2006/065541
【国際公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【復代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
【Fターム(参考)】