説明

誘導加熱コイル

【課題】端面に複雑形状を有する被加熱部材を効率的に高周波誘導加熱するコイルを提供する。
【解決手段】二つの第1扇状コイル部10A,10Bと一つの第2扇状コイル部20とが連接され、第1扇状コイル部は、ワーク50の中心50Cの傍らの位置から半径方向に沿って外周縁50A側へ延出し所定角度で開いた二つの第1径方向部11A,11Bと第1径方向部の外周縁50A側の端部を連結する弧状の第1円弧部11Cとから成り、第2扇状コイル部は中心50Cの傍らの位置から半径方向に沿って外周縁側へ延出し所定角度で開いた二つの第2径方向部21A,21Bと第2径方向部の外周縁側の端部を連結する弧状の第2円弧部21Cとから成り、第1円弧部11Cを、切欠部の半径方向外側の端部から外周縁までに亘る中間領域でワークと同心の第1の仮想円C1に沿うように配設し、第2円弧部21Cは凸部を覆うように第1の仮想円C1よりも半径の大きい第2の仮想円C2上に沿うように配設した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークの複雑形状の端面を表面硬化処理するための高周波誘導加熱用のコイル(以下、誘導加熱コイルと言う)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車の駆動機構には、図4に示す金属製のダイヤフラムスプリング(以下、ワークと言う場合がある)50が利用されている。この種のダイヤフラムスプリング50にあっては、耐摩耗性を高めるために表面に硬化処理を施すことが望ましい。
一般に、自動車のボディなどの構造部品は、高周波加熱によってその表面に硬化処理が施される。
【0003】
特許文献1には、所定の幅を有し孔や溝が穿設されている環状の被加熱面を誘導加熱するための高周波加熱コイル体が開示されている。
【特許文献1】実開平6−60096号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、ダイヤフラムスプリング50は、図4に示すように、円形の外周縁50Aを有する表面に、外周縁50Aの円と同心で外周縁50Aより小さい径の円形の内周縁50Bによって画成された開口部51と、内周縁50Bから外周縁50Aへ半径方向に沿って内周縁50Bと外周縁50Aとの間まで延出していて外周縁50A及び内周縁50Bの中心50Cまわりに等角度間隔に設けられた複数の切欠部52と、を有している。
さらに、切欠部52として、第1切欠部52Aとこれよりも幅狭の第2切欠部52Bとが交互に並んでいる。隣り合う第1切欠部52Aと第2切欠部52Bとの間は、半径方向に長手で細幅の第1領域S1として形成されており、各第1領域S1は、第1切欠部52A及び第2切欠部52Bの外側の端部から外周縁50Aまで広がったリング状の第2領域S2に連続している。図4では、第1領域S1にシングルハッチングを付し、第2領域S2にダブルハッチングを付して表している。
また、第1切欠部52A同士は、図4に示すように、二つの第1切欠部52A,52Aの真ん中を通る仮想線X,X’が60°の角度を成すように形成されている。同様に、第2切欠部52B同士は、図4に示すように、二つの第2切欠部52B,52Bの真ん中を通る仮想線Y,Y’が60°の角度を成すように形成されている。
さらに、ダイヤフラムスプリング50は、外周縁50Aから外側へ突出していて、中心50Cまわりに等角度間隔に設けられた複数の凸部53を有する。
このように、ダイヤフラムスプリング50の表面は複雑に形成されている。
【0005】
この種の複雑形状の平板ワーク50の表面を加熱するための高周波誘導加熱用のコイルは、複雑形状を有さない円盤状のワーク(図示省略)の表面を加熱するための高周波誘導加熱コイルをそのまま利用することはできない。
そこで、本発明者らは、この種の複雑形状の平板ワーク50の表面を加熱するための高周波誘導加熱用のコイルとして様々なタイプのコイルを設計し、シミュレーションによって当該コイル表面の温度等を確認した。
以下、本発明者らが試作したコイルの一例、即ち第1〜第5の試作品について説明する。
【0006】
〔第1の試作品について〕
図5に示す高周波誘導加熱用のコイル100は、大径の第1コイル部101と、この第1コイル部101の内側に配設される小径の第2コイル部102と、を備えている。これらの第1コイル部101及び第2コイル部102は、断面が四角型に形成された金属でなる筒状部材である。第1コイル部の幅W4は第2コイルの幅W5よりも広く、高さH1も第2コイルの高さH2より高くなるように寸法が選定されている。
第1コイル部101は、その底面がダイヤフラムスプリング50の外周縁50Aの内側から外側に亘る領域を覆うように配設され、第2コイル部102は、その底面がダイヤフラムスプリング50の内周縁50Bの内側から外側に亘る領域を覆うように配設されている。
しかし、このように設計したコイル100をシミュレーションによってダイヤフラムスプリング50の加熱される表面の温度を確認したところ、表面全体にむらなく加熱することはできないことが判明した。
【0007】
〔第2の試作品について〕
図6に示す高周波誘導加熱用のコイル110は、3つの扇状コイル部111A〜111Cを中心50Cまわりに等角度間隔に連成して構成されている。
各扇状コイル部111A〜111Cは、ダイヤフラムスプリング50の中心50Cの傍らの位置から半径方向に沿ってダイヤフラムスプリング50の外周縁50A側へ延出していて所定の角度で開いた二つの径方向部112A,112Bと、これらの径方向部112A,112Bの外周縁50A側の端部を連結する円弧部112Cと、からなる。各扇状コイル部111A〜111Cは、一方の径方向部112A(112B)における中心50C側の端部を連結部113を介して隣り合う扇状コイルの隣接側の径方向部112B(112A)における中心側の端部に連結されている。
円弧部112Cは、その底面がダイヤフラムスプリング50の外周縁50Aの内側から外側に亘る領域を覆うように配設されている。
しかし、このように設計したコイル110をシミュレーションによってダイヤフラムスプリングの加熱される表面の温度を確認したところ、表面全体にむらなく加熱することができないことが判明した。
【0008】
〔第3の試作品について〕
図7に示す高周波誘導加熱用のコイル120は、3つの扇状コイル部111A〜111Cを中心50Cまわりに等角度間隔に連成して構成されている点で図6のコイル110と同じであるが、さらに、各径方向部112A,112Bが、その長手方向における中間部に磁性体121A,121Bを巻回するように設計した。
しかし、このように設計したコイル120をシミュレーションによってダイヤフラムスプリング50の加熱される表面の温度を確認したところ、表面全体にむらなく加熱することができないことが判明した。
【0009】
〔第4の試作品について〕
図8に示す高周波誘導加熱用のコイル130は、3つの扇状コイル部111A〜111Cを中心50Cまわりに等角度間隔に連成して構成されている点で図6のコイル110と同じであるが、図6のコイル110に比して各径方向部112A,112Bが短く形成されている。
具体的には、各円弧部112Cが、切欠部52の半径方向外側の端部から外周縁50Aへ亘る中間領域でダイヤフラムスプリング50と同心で、外周縁の円より半径の小さい第1の仮想円a’上に沿うように配設されていることを特徴としている。ここで、第1の仮想円a’の半径は、切欠部52の半径方向外側の端部と外周縁50Aとの中間位置から中心50Cまでの長さに設定されている。
しかし、このように設計したコイル130をシミュレーションによってダイヤフラムスプリング50の加熱される表面の温度を確認したところ、表面全体にむらなく加熱することができないことが判明した。特に、ダイヤフラムスプリング50の外周縁50Aに形成された各凸部53に対する加熱が十分でなかった。
【0010】
〔第5の試作品について〕
図9に示す高周波誘導加熱用のコイル140は、3つの扇状コイル部111A〜111Cを中心50Cまわりに等角度間隔に連成して構成した点で図6のコイル110と同じであるが、図6のコイル110に比して、各径方向部112A,112Bを長く形成した。具体的には、各円弧部112Cが前記凸部を覆うように、上記第1の仮想円a’よりも半径の大きい第2の仮想円b’上に沿うように配設されていることを特徴としている。
しかし、このように設計したコイル140をシミュレーションによってダイヤフラムスプリング50の加熱される表面の温度を確認したところ、表面全体にむらなく加熱することができないことが判明した。特に、切欠部52の半径方向外側の端部と外周縁50Aとの中間領域、即ち前述の第2領域S2に対する加熱が十分でなかった。
【0011】
このような設計変更を繰り返した結果、本発明者らは、図4に示すダイヤフラムスプリングに適したコイルを創作することができた。
そこで、本発明は、端面に複雑形状を有する被加熱部材を効率的に高周波誘導加熱するためのコイルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明は、円形の外周縁を有する端面にこの円形と同心でこの円形より小さい径を有する円形の内周縁によって画成された開口部と、上記内周縁から外周縁へ半径方向に沿って内周縁と外周縁との間まで延出していて円形の中心まわりに等角度間隔に設けられた複数の切欠部と、を有すると共に、外周縁から外側へ突出していて円形の中心まわりに等角度間隔に設けられた複数の凸部と、を有する被加熱部材を加熱するための誘導加熱コイルであって、二つの第1扇状コイル部と一つの第2扇状コイル部とが連なっていて、第1扇状コイル部は、上記中心の傍らの位置から半径方向に沿って外周縁側へ延出していて所定の角度で開いた二つの第1径方向部と、これらの第1径方向部の外周縁側の端部を連結する弧状の第1円弧部と、から成り、第2扇状コイル部は、中心の傍らの位置から半径方向に沿って外周縁側へ延出していて所定の角度で開いた二つの第2径方向部と、これらの第2径方向部の外周縁側の端部を連結する弧状の第2円弧部と、から成り、第1円弧部は、切欠部の半径方向外側の端部から外周縁までに亘る中間領域で円形と同心の第1の仮想円に沿うように配設され、第2円弧部は凸部を覆うように第1の仮想円よりも半径の大きい第2の仮想円に沿うように配設されていることを特徴としている。
【0013】
本発明の誘導加熱コイルにおいて、好ましくは、二つの第2径方向部が成す角度は、二つの第1径方向部が成す角度よりも大きいことを特徴としている。
さらに、本発明の誘導加熱コイルは、各第1扇状コイル部における二つの第1径方向が成す角度(θ1)が75°、第2扇状コイル部における二つの第2径方向が成す角度(θ3)が90°、第2扇状コイル部の両側にそれぞれ配置される第1扇状コイル部と当該第2扇状コイル部とにおける第1径方向とそれに隣り合う第2径方向とが成す角度(θ4)が30°、一方の第1扇状コイル部における他方の第1扇状コイル部側の第1径方向部とこの第1径方向部と隣り合う他方の第1扇状コイル部における第1径方向部とが成す角度(θ2)が60°、に設定されていて、外部からコイル内に水を供給するための給水管が一方の第1扇状コイル部の第1径方向部における端部に連結され、コイル内の水を排出するための排水管が他方の第1扇状コイル部の第1径方向部の端部に連結されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、三つの扇型のコイル部材、即ち二つの第1扇状コイル部及び一つの第2扇状コイル部を連結し、その内の一つのコイル部材、すなわち第2扇状コイル部が加熱する領域を他のコイル部材による加熱領域と部分的にずらしている。したがって、本発明のコイルによれば、ダイヤフラムスプリング50の表面全体をむらなく加熱できる。よって、本コイルによれば、複雑形状を円形の表面に有する薄板を十分に表面加工処理することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を説明するが、背景技術で説明した部材と同一の部材については、同じ符号を付してその説明は省略する。
図1は本発明の実施形態に係る高周波誘導加熱用のコイル1の平面図であり、図2は図4のダイヤフラムスプリング50に対して図1のコイル1を配置した状態を示す図である。
本実施形態におけるダイヤフラムスプリング50の寸法は、外周縁を成す円の半径R1(図4参照)が55mmであり、内周縁を成す円の半径R2(図4参照)が13mmである。
【0016】
コイル1は、一本の断面四角形の筒状部を屈曲形成させたように、二つの第1扇状コイル部10A,10Bと、一つの第2扇状コイル部20と、が連なって構成されている。
各第1扇状コイル部10A,10Bは、ダイヤフラムスプリングの中心50Cから所定距離隔てた傍らの位置から半径方向に沿ってダイヤフラムスプリング50の外周縁50A側へ延出していて所定の角度で開いた二つの第1径方向部11A,11Bと、これらの第1径方向部11A,11Bの外周縁側の端部を連結する弧状の第1円弧部11Cと、から成る。ここで、ダイヤフラムスプリング50の中心50Cの傍らとは、中心50Cから例えば半径10〜40mmの円内の領域を言う。
第1径方向部11A,11B及び第1円弧部11Cの幅、即ちコイル1を成す角筒の幅W1は、ダイヤフラムスプリングにおける隣り合う第1切欠部52Aと第2切欠部52Bとの幅W2程度に、例えば8mmに設定されている。
二つの第1径方向部11A,11Bが成す角度θ1は、図示の場合、75°であるが、45°〜105°であってもよい。角度θ1及び後述する角度θ2〜θ4は、第1径方向部等の半径方向に延びる部材を成す角筒の幅方向における中間を通る線を基準としたものである。
第1円弧部11Cは、切欠部52の半径方向外側の端部から外周縁までの中間領域、即ち第2領域S2(図4のダブルハッチングで示す領域)でダイヤフラムスプリング50と同心の第1の仮想円C1(図1参照)上に沿うように配設されている。図示例の場合、第1の仮想円C1の半径は45mmであり、第1円弧部11Cの内側の縁11Dが第1の仮想円C1に沿うように形成されている。
二つの第1扇状コイル部10A,10Bは、図示のように、一方の第1扇状コイル部10Aにおける他方の第1扇状コイル部10B側の第1径方向部11Aと、この第1径方向部11Aと隣り合う他方の第1扇状コイル部10Bにおける第1径方向部11Bとが成す角度θ2が60°になるように配設されている。第1扇状コイル部10Aの第1径方向部11Aにおける中心50C側の端部には、外部からコイル1内に水を供給するための給水管41が、他方の第1扇状コイル部10Bの第1径方向部11Bにおける中心50C側の端部には、コイル1内の水を排出するための排水管42が連結されている。これらの給水管41、排水管42は、コイル1と同様に、金属、例えば銅で構成されている。
【0017】
第2扇状コイル部20は、ダイヤフラムスプリングの中心50Cの近傍の位置から半径方向に沿って外周縁50A側へ延出していて所定の角度で開いた二つの第2径方向部21A,21Bと、これらの第2径方向部21A,21Bの外周縁50A側の端部を連結する弧状の第2円弧部21Cと、から成る。
二つの第2径方向部21A,21Bが成す角度θ3は、図示の場合、90°であるが、45°〜180°であってもよい。
第2円弧部21Cは、ダイヤフラムスプリング50の凸部53を覆うように、第1の仮想円C1よりも半径の大きい第2の仮想円C2上に沿うように配設されている。図示例の場合、第2の仮想円C2の半径は55mmであり、第2円弧部21Cの内側の縁21Dが第2の仮想円C2に沿うように形成されている。これにより、第2円弧部21Cは、半径方向において第1円弧部11Cよりも外側に配設されている。
第2扇状コイル部20を成す角筒も、第1扇状コイル部10A,10Bと同様に、例えば幅W3が8mmに設定されている。
この第2扇状コイル部20は、第2径方向部21A(21B)とその隣の第1扇状コイル部10A(10B)の第1径方向部11B(11A)とで成す角度θ4が30°となるように配設されている。第2径方向部21A(21B)は、中心50C側の端部を隣りの第1扇状コイル部10A(10B)の第1径方向部11B(11A)の中心50C側の端部と、連結部30A(30B)を介して連結している。
【0018】
二つの第1扇状コイル部10A,10Bと一つの第2扇状コイル部20とは、それらの内部が連通するように一体に構成されている。
【0019】
このように構成された本発明の実施形態に係るコイル1によってダイヤフラムスプリングを加熱した場合の作用について説明する。なお、コイル1は固定配置され、ダイヤフラムスプリング50が中心50Cまわりに所定の角速度で矢印A(図2参照)方向へ回転する。
図3は、図2に示す状態でコイル1を通電してダイヤフラムスプリング50を加熱した場合に、ダイヤフラムスプリング50の表面において特に加熱された部分を斜線で強調して模式的に表した図である。
本実施形態に係るコイル1において、二つの第1扇状コイル部10A,10Bによれば、図3に示すA1,A2の斜線領域が集中的に加熱される。具体的には、第1扇状コイル部10A,10Bの第1径方向部11A,11Bによって、内周縁50Bから半径方向に沿った第1領域S1、図示の場合、第2切欠部52Bの長手方向に沿ってその両縁周辺が加熱された状態を示している。
また、第2領域S2では、第1扇状コイル部10A,10Bの第1円弧部11Cによって、第1切欠部52A及び第2切欠部52Bの外側端部寄り部分が集中的に加熱されている。このように、第1円弧部11Cによって加熱される第2領域S2における部分より外側、即ち半径方向外側が、別の斜線A3で示すように、第2扇状コイル部20の第2円弧部21Cによって加熱される。また、第2扇状コイル部20の第1径方向部21A,21Bによっても、第1領域S1が加熱される。
そして、所定の速度でダイヤフラムスプリング50が回転されることで、ダイヤフラムスプリング50の表面はむらなく全体が十分に加熱される。
【0020】
このように、本実施形態に係るコイル1によれば、上記したように、三つの扇型のコイル部材、即ち第1扇状コイル部10A,10B及び第2扇状コイル部20を連結し、その内の一つのコイル部材、即ち第2扇状コイル部20が加熱する領域を他のコイル部材による加熱領域と部分的にずらしている。この場合、第1扇状コイル部10A,10Bの第1円弧部11Cではカバーできない、第2領域S2におけるダイヤフラムスプリング50の外周縁50A寄りの部分は、ダイヤフラムスプリング50の中心50Cから離れた箇所であり、第2領域S2における切欠部52寄りの部分よりも外周縁50Aに沿っていて面積が広いため、第2円弧部21Cは第1円弧部11Cよりも長く設定されていて、当該第2領域S2におけるダイヤフラムスプリング50の外周縁50A寄りの部分を十分に加熱できるように構成されている。
したがって、本発明に実施形態に係るコイル1によれば、ダイヤフラムスプリング50の表面全体をむらなく加熱できる。よって、本コイル1によれば、複雑形状を円形の表面に有する薄板を十分に表面加工処理することが可能である。
【0021】
本発明は上記実施の形態に限定されるものでなく、特許請求の範囲に記載された発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更した形態を含むものである。
例えば、本発明のコイルによって誘導加熱処理を施すワークは、上記のダイヤフラムスプリング50に限らず、図4に示す形状の端面を端部に有する筒状部材であってもよい。
本発明のコイルは、上記実施形態の数値に寸法や角度が限定されるものではない。たとえば、第2扇状コイル部における第2径方向部21A,21Bが成す角度θ3は、第1扇状コイル部における第1径方向部11A,11Bが成す角度θ1と同じであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施の形態に係る高周波誘導加熱用のコイルの平面図である。
【図2】図4に示すワークに対して図1のコイルを配置した状態の平面図である。
【図3】図2に示す状態で加熱した場合に、ダイヤフラムスプリングの表面において特に加熱される領域を模式的に示す図である
【図4】従来のダイヤフラムスプリングの平面図である。
【図5】図4のダイヤフラムスプリングを加熱する第1の試作品のコイルを示す斜視図である。
【図6】図4のダイヤフラムスプリングを加熱する第2の試作品のコイルを示す斜視図である。
【図7】図4のダイヤフラムスプリングを加熱する第3の試作品のコイルを示す斜視図である。
【図8】図4のダイヤフラムスプリングを加熱する第4の試作品のコイルを示す斜視図である。
【図9】図4のダイヤフラムスプリングを加熱する第5の試作品のコイルを示す斜視図である。
【符号の説明】
【0023】
1 コイル
10A,10B 第1扇状コイル部
11A,11B 第1径方向部
11C 第1円弧部
11D 縁
20 第2扇状コイル部
21A,21B 第2径方向部
21C 第2円弧部
21D 縁
30A,30b 連結部
41 給水管
42 排水管
50 ダイヤフラムスプリング(ワーク)
50A 外周縁
50B 内周縁
50C 中心
51 開口部
52 切欠部
52A 第1切欠部
52B 第2切欠部
53 凸部
C1 第1の仮想円
C2 第2の仮想円
R1,R2 半径
S1 第1領域
S2 第2領域
W1〜W5 幅
θ1〜θ4 角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円形の外周縁を有する端面に、上記円形と同心で該円形より小さい径を有する円形の内周縁によって画成された開口部と、上記内周縁から上記外周縁へ半径方向に沿って上記内周縁と上記外周縁との間まで延出していて上記円形の中心まわりに等角度間隔に設けられた複数の切欠部と、さらに、上記外周縁から外側へ突出していて上記円形の中心まわりに等角度間隔に設けられた複数の凸部と、を有する被加熱部材を加熱するための誘導加熱コイルであって、
二つの第1扇状コイル部と一つの第2扇状コイル部とが連なっていて、
上記第1扇状コイル部は、上記中心の傍らの位置から上記半径方向に沿って上記外周縁側へ延出していて所定の角度で開いた二つの第1径方向部と、これらの第1径方向部の上記外周縁側の端部を連結する弧状の第1円弧部と、から成り、
上記第2扇状コイル部は、上記中心の傍らの位置から上記半径方向に沿って上記外周縁側へ延出していて所定の角度で開いた二つの第2径方向部と、これらの第2径方向部の上記外周縁側の端部を連結する弧状の第2円弧部と、から成り、
上記第1円弧部は、上記切欠部の半径方向外側の端部から上記外周縁までに亘る中間領域で上記円形と同心の第1の仮想円に沿うように配設され、
上記第2円弧部は、上記凸部を覆うように、上記第1の仮想円よりも半径の大きい第2の仮想円に沿うように配設されていることを特徴とする、誘導加熱コイル。
【請求項2】
前記二つの第2径方向部が成す角度は、前記二つの第1径方向部が成す角度よりも大きいことを特徴とする、請求項1に記載の誘導加熱コイル。
【請求項3】
各第1扇状コイル部における二つの第1径方向が成す角度(θ1)が75°、
第2扇状コイル部における二つの第2径方向が成す角度(θ3)が90°、
第2扇状コイル部の両側にそれぞれ配置される第1扇状コイル部と当該第2扇状コイル部とにおける第1径方向とそれに隣り合う第2径方向とが成す角度(θ4)が30°、
一方の第1扇状コイル部における他方の第1扇状コイル部側の第1径方向部とこの第1径方向部と隣り合う他方の第1扇状コイル部における第1径方向部とが成す角度(θ2)が60°、に設定されていて、
外部からコイル内に水を供給するための給水管が一方の第1扇状コイル部の第1径方向部における端部に連結され、コイル内の水を排出するための排水管が他方の第1扇状コイル部の第1径方向部の端部に連結されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の誘導加熱コイル。
【請求項4】
前記被加熱部材が薄板状部材であり、前記端面が上記薄板状部材の一方の面であることを特徴とする、請求項1〜3の何れかに記載の誘導加熱コイル。
【請求項5】
前記被加熱部材が筒状部材であり、前記端面が上記筒状部材の一方の端部の面であることを特徴とする、請求項1〜3の何れかに記載の誘導加熱コイル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−27313(P2010−27313A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−185402(P2008−185402)
【出願日】平成20年7月16日(2008.7.16)
【出願人】(390029089)高周波熱錬株式会社 (288)
【Fターム(参考)】