説明

誘導加熱容器

【課題】誘導加熱によって発熱する導電性材料からなる発熱体を、容器本体の内底面に部分的に接着して取り付けるにあたり、液状の内容物を加熱する際に突沸が生じないようにする。
【解決手段】所定の間隔で並ぶ複数の仮想軌線30a,30b,30c上に、非接着部32を介在させて線状接着部31を断続的に形成することで、所定の配列とされた線状接着部31により、誘導加熱発熱体3を容器本体2の内底面21側に部分的に接着して取り付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁調理器などが備える電磁誘導加熱コイルにより発生する高周波磁界によって渦電流が誘起され、そのジュール熱により発熱する誘導加熱発熱体を備えた誘導加熱容器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ガス機器が主流であった加熱調理機器に代わって、一般に、電磁調理器と称される加熱調理機器が、安全性、清潔性、利便性、経済性などの観点から、飲食業などにおける業務用のみならず、一般家庭においても広く普及するようになってきている。
【0003】
しかしながら、この種の電磁調理器は、内部に備えた電磁誘導加熱コイルにより高周波磁界を発生させ、誘起された渦電流によって生じるジュール熱により加熱対象物を加熱するというものである。このため、炎を使わずに加熱調理を行うことができる反面、その原理上、使用できる調理器具が限られてしまい、鉄、鉄ホーローなど専用の金属製調理器具を用いなければならないという不利があった。
【0004】
このような状況下、上記した電磁調理器の不利を解消し、電磁調理器による誘導加熱が可能な容器を安価に提供するために、例えば、特許文献1や、特許文献2では、非導電性の容器本体に、誘導加熱によって発熱する導電性材料からなる発熱体を取り付けた電磁調理器用の容器が提案されている。
【0005】
【特許文献1】特開平7−296963号公報
【特許文献2】特開2003−111668号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、発熱体を容器本体に取り付けるにあたり、特許文献1にあっては、インモールド成形や、ヒートシール、接着テープ、接着等の貼り付け方法を例示し、これらの方法によって、容器本体の内底部に薄膜状の発熱体を固着積層するとしている。
しかしながら、発熱体を容器本体の内底部に固着積層したのでは、容器本体の内底部が過剰に加熱されて、容器本体を損傷してしまうおそれがある。特許文献1では、局部的に高温となるようにされた幅狭部の下面に非接触部を設けて、容器本体への熱伝導を防ぐとしているものの、他の部位が発熱することによる容器本体への影響を何ら考慮していない。
【0007】
一方、特許文献2では、発熱体と容器本体の底部との間に空間部を設けることによって、底部の損傷を抑制している。また、加熱調理に際して容器本体内に入れられた水等の液体が、この空間部内を循環することにより、発熱体の放熱効率と液体の加熱効率とを向上させることもできるとしている。
しかしながら、特許文献2では、容器本体に対して非接着状態で発熱体を収容しており、容器本体から発熱体が容易に外れてしまわないように、容器本体の下方胴部の内周面に形成された環状の突起に発熱体を係止させている。このため、発熱体としては、上記突起に係止できるものしか利用できず、アルミ箔や、その他の金属箔などのように撓み変形しやすい素材からなる発熱体は、容器本体から容易に脱落してしまうことから、利用することができなかった。
【0008】
本発明者らは、従来技術が有していた上記のような問題を勘案しつつ鋭意検討を重ねた。そして、アルミ箔や、その他の金属箔などからなる発熱体を容器本体に取り付けるにあたっては、かかる発熱体を容器本体の内底面に部分的に接着することに想い到った。発熱体を容器本体の内底面に部分的に接着すれば、液状の内容物が非接着部に流れ込むことにより、発熱体と容器本体の内底面との間を循環することが期待される。
【0009】
ところが、そのようにして発熱体が取り付けられた電磁調理器用の容器を実用に供するべく、さらなる鋭意検討を重ねたところ、発熱体を容器本体の内底面に部分的に接着したものにあっては、接着部位の近傍で突沸が起こりやすいという新たな問題が本発明者らによって見出された。そして、突沸が起こると、熱湯が飛散するだけでなく、突沸の勢いによっては容器全体が飛び跳ねてしまい、電磁調理器上の所定の位置からずれて正常な調理ができなくなってしまうことがあった。特に、発熱体を部分的に接着するにあたり、接着部を、散点状に配列したものや、発熱体の中心側から外縁側に向かって放射状に配列したものにおいて、突沸が顕著であった。
【0010】
本発明は、以上のよう事情に鑑みてなされたものであり、誘導加熱によって発熱する導電性材料からなる発熱体を容器本体に取り付けるにあたり、発熱体を容器本体の内底面に部分的に接着することとしても、その接着部の配列を工夫することで、液状の内容物を加熱する際の突沸が抑止された誘導加熱容器の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る誘導加熱容器は、液状の被加熱物を収容するようにされた容器本体と、高周波磁界により渦電流が誘起されて発熱する誘導加熱発熱体とを備え、前記誘導加熱発熱体の中心側から外縁側に向かう径方向に所定の間隔で離間して、前記径方向と交差するように前記誘導加熱発熱体内を周回する一又は複数の仮想軌線上に、所定の間隔で一又は複数の非接着部を介在させて線状接着部を断続的に形成し、前記線状接着部により、前記誘導加熱発熱体を前記容器本体の内底面側に部分的に接着して取り付けた構成としてある。
【発明の効果】
【0012】
以上のような構成とした本発明によれば、誘導加熱発熱体を容器本体に取り付けるにあたり、線状接着部により、誘導加熱発熱体を容器本体の内底面側に部分的に接着して取り付けることで、被加熱物に対する加熱効率を高めるとともに、誘導加熱発熱体からの熱によって容器本体が損傷するのを有効に回避することができることに加え、線状接着部の配列を工夫することで、液状の被加熱物を加熱する際の突沸を抑止することも可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の好ましい実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
なお、図1(a)は、本実施形態に係る誘導加熱容器の概略を示す平面図であり、図1(b)は、図1(a)のA−A断面図である。
【0014】
図1に示す容器1は、水などの液状の被加熱物を収容するようにされた容器本体2と、高周波磁界により渦電流が誘起されて発熱する誘導加熱発熱体3とを備えており、容器本体2の内底面21側に、誘導加熱発熱体3が取り付けられている。
【0015】
図1に示す例において、容器本体2の内底面21は、ほぼ正方形状とされた平面形状を有している。容器本体2は、この内底面21の周りを囲むように側壁部22を立設させることで、液状の被加熱物が収容できるようにしてあるが、内底面21の平面形状は、図示する例には限られない。例えば、矩形状、円形状とするほか、三角形、五角形、六角形などの多角形状としてもよい。容器本体2の全体的な形状も図示する例には限らず、使い勝手などを考慮して種々の形状とすることができる。
【0016】
ただし、容器1は、一般に、市販の電磁調理器の上に置いて使用されることから、容器本体2の内底面21や、内底面21側に取り付けられる誘導加熱発熱体3の大きさは、使用する電磁調理器が備える加熱コイルの大きさに応じて設定するのが好ましい。例えば、市販の家庭用電磁調理器が備える一般的な加熱コイルは、内径5cm程度、外径20cm程度であり、業務用のものであれば、これよりも大きいものもあるが、使用が想定される電磁調理器に応じて大きさを適宜定めておくものとする。
【0017】
また、容器本体2の開口端縁23には、その内周縁の全周に沿って段部24を設けてある。この段部24には、図1(b)に一点破線で示すトレー4や、図示しない蓋体などが支持されて、容器本体2の開口部を覆うようになっている。このようにすることで、本実施形態における容器1は、次のような利用態様に供することができる。
【0018】
例えば、容器1は、電磁調理器の上に置いて使用されるところ、使用に際しては、所定量の水を容器本体2に注入して、誘導加熱発熱体3が水に浸されるようにする。そして、容器本体2の開口端縁23に設けられた段部24に、多数の蒸気孔が穿設されたトレー4を支持させ、このトレー4上に調理対象を載置して蓋体で覆ってから、誘導加熱発熱体3が水に浸漬した状態で電磁調理器を作動させる。これにより、誘導加熱によって誘導加熱発熱体3を発熱させると、誘導加熱発熱体3に接している水が加熱されて沸騰し、容器内に発生する蒸気によって調理対象を蒸して加熱処理することができる。
【0019】
本実施形態において、容器本体2や、トレー4などは、ポリスチレン等のポリスチレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂などの合成樹脂材料、さらには、紙や、ガラスなど、種々の汎用の非磁性材料にて形成することができる。これらの材料にて容器本体2を形成することにより、電磁調理器で使用可能な誘導加熱容器を安価に提供することが可能となる。
【0020】
一方、誘導加熱発熱体3は、電磁調理器などが備える電磁誘導加熱コイルから発生する高周波磁界により渦電流が誘起され、その電気抵抗によりジュール熱が生じて発熱し得る導電性材料を用いて形成される。例えば、アルミニウム,ニッケル,金,銀,銅,白金,鉄,コバルト,錫,亜鉛などの金属、又はこれらの合金、あるいは、導電性を付与した樹脂フィルムや紙など、高周波磁界による誘導加熱によって発熱する種々の導電性材料を用いて形成することができる。
【0021】
より具体的には、例えば、金属材料としてアルミニウムを用いる場合、誘導加熱発熱体3は、好ましくは0.10〜100μm程度、より好ましくは1〜40μm程度の厚みのアルミニウム箔を用いて形成することができる。誘導加熱発熱体3は、アルミニウム箔などの金属箔を用いて形成するのが好ましく、容器本体2に取り付ける際に、ヒートシールによる接着が可能となるように、容器本体2に用いた材料に対してヒートシール性を有する樹脂層をラミネートすることもできるが、これ以外にも、接着剤などを用いて取り付けるようにしてもよい。
【0022】
本実施形態では、誘導加熱発熱体3を容器本体2に取り付けるにあたり、例えば、図1に示すような配列で線状接着部31を形成し、この線状接着部31によって、誘導加熱発熱体3が容器本体2の内底面21に部分的に接着されるようにする。誘導加熱発熱体3を容器本体2に部分的に接着させることで、容器本体2に収容された水などの液状の被加熱物が、誘導加熱発熱体3の裏面側、すなわち、容器本体2と誘導加熱発熱体3との間にも行き渡るようになる。これによって、被加熱物に対する加熱効率を高めるとともに、誘導加熱発熱体3からの熱によって容器本体2が損傷するのを有効に回避することができる。
【0023】
このとき、誘導加熱発熱体3の裏面側に被加熱物が滞留してしまうのを避け、誘導加熱発熱体3の表面側と裏面側との間を被加熱物が対流しやすくなるように、誘導加熱発熱体3の中心側には、対流孔としての抜き孔33を形成するのが好ましい。
【0024】
さらに、本実施形態では、線状接着部31によって、誘導加熱発熱体3を容器本体2の内底面21に部分的に接着するにあたり、液状の被加熱物を加熱する際の突沸を抑止するために、線状接着部31の配列を特定する。図1には、そのような線状接着部31の配列の一例を示してある。
【0025】
図1に示す例において、線状接着部31は、誘導加熱発熱体3の中心側から外縁側に向かう径方向に並んで、径方向と交差するように誘導加熱発熱体3内を周回する第一仮想軌線30a、第二仮想軌線30b、第三仮想軌線30c上に形成されおり、各線状接着部31は、円形とされた誘導加熱発熱体3と同心状の配列としてある。
また、上記各仮想軌線30a,30b,30c上に形成される線状接着部31は、それぞれ四つの非接着部32をほぼ等間隔で介在させて断続的に形成されている。これにより、同一仮想軌線上に形成される各線状接着部31が、ほぼ等しい長さとなる円弧状に形成されている。
なお、線状接着部31の接着幅(長手方向に直交する長さ)は、0.1〜5mm程度とすることができる。
【0026】
このような配列で線状接着部31を形成するにあたり、各仮想軌線30a,30b,30cは、誘導加熱発熱体3の半径をRとしたときに、径方向に沿って0.05R〜0.5Rの間隔で並ぶように設定する。各仮想軌線30a,30b,30cの間隔を上記範囲とすれば、各仮想軌線30a,30b,30c上に形成される線状接着部31の径方向に沿った間隔も上記範囲内となる。このような間隔で線状接着部31が形成される限り、径方向に沿って列設される線状接着部31の数は制限されない。
また、図1に示す例では、各線状接着部31が、円形とされた誘導加熱発熱体3と同心状となるように配列されているが、線状接着部31の径方向に沿った間隔が上記範囲内にあれば、線状接着部31の配列は、誘導加熱発熱体3の中心から偏心させてもよい。
【0027】
また、各仮想軌線30a,30b,30c上に線状接着部31を形成する際には、同一仮想軌線上で隣接する線状接着部31の端部が離間する長さWを当該仮想軌線の全長の0.01〜0.2とし、かつ、線状接着部31の長さLを当該線状接着部31が形成される仮想軌線の全長の0.02〜0.99となるようにすることで、より確実に突沸を抑止することができる。図1に示す例では、各仮想軌線30a,30b,30c上に、四つの非接着部32を介在させて、四つの線状接着部31が、ほぼ等しい長さで形成されているが、同一仮想軌線上で隣接する線状接着部31の端部が離間する長さWと、線状接着部31の長さLが上記範囲内にあれば、介在させる非接着部32の数、すなわち、仮想軌線上に形成する線状接着部31の数は制限されない。
【0028】
ただし、液状の被加熱物を加熱する際の突沸を、より効果的に抑止するためには、同一仮想軌線上に形成される線状接着部31が、ほぼ等しい長さで形成されるようにしたり、線状接着部31を同心状に形成したりするなどして、できるだけ対称性の高い配列で線状接着部31を形成するのが好ましい。
また、線状接着部31は、誘導加熱発熱体3内を周回するように設定された仮想軌線上に形成するが、例えば、後述する実施例12に相当する図4(d)に示すように、円形の誘導加熱発熱体3に対して仮想軌線を四角形状とし、径方向に沿って上記の間隔で並ぶように相似的に拡径させていくと、仮想軌線が一定の大きさ以上となったときに、その角部が誘導加熱発熱体3からはみ出してしまう。本実施形態では、一部が誘導加熱発熱体3からはみ出て設定される仮想軌線上にも線状接着部31を形成してもよい。この場合、線状接着部31は、途中に非接着部を形成せずに、その両端が誘導加熱発熱体31の外縁又はその近傍に至るようにしてもよい。また、この場合の線状接着部31の一端から他端間での長さは、誘導加熱発熱対3からはみ出した部分を除外した当該仮想軌線の全長の0.02〜0.99となるようにするのが好ましい。
【0029】
以上のような配列で形成された線状接着部31により、誘導加熱発熱体3を容器本体2の内底面21側に部分的に接着して取り付けるようにすることで、液状の被加熱物を加熱する際の突沸を抑止することができるが、以下に具体的な実施例を挙げて、本発明をより詳細に説明する。
【実施例】
【0030】
[実施例1]
ポリプロピレンを材料樹脂に用いて成形された容器本体2を用意し、その内底面21側に、線状接着部31により、誘導加熱発熱体3としての厚さ7μmのアルミ箔を部分的に接着して取り付けて誘導加熱容器1とした。このとき、誘導加熱発熱体3の半径Rは75mm(直径φ150mm)であり、誘導加熱発熱体3と同心状に形成された抜き孔33の半径は20mm(直径φ40mm)であった。上記アルミ箔の裏面には、厚さ20μmのポリプロピレンフィルムをラミネートし、ヒートシールにより接着した。
線状接着部31の配列は、図1に示すものとした。線状接着部31の具体的な配列を表1に示す。
なお、線状接着部31の具体的な配列を表に示すにあたり、誘導加熱発熱体3の最も中心寄りに位置する仮想軌線から順に、第一仮想軌線、第二仮想軌線、・・・とし、以下の実施例、比較例においても同様とした。また、本実施例では、同一仮想軌線上で隣接する線状接着部31の端部が離間する長さを全て等しくするとともに、各仮想軌線上には非接着部32をほぼ等間隔で介在させて、同一仮想軌線上に形成される線状接着部31が全て等しい長さで形成されるようにしたが、実施例2を除く以下の実施例、比較例においても同様とした。また、以下の各表において、仮想軌線が円形のものについては、仮想軌線の全長の欄に、その直径をカッコで併せて示した。
【0031】
【表1】

【0032】
次いで、電磁調理器の上に置かれた誘導加熱容器1に250ccの水を入れて、誘導加熱発熱体3が水に浸漬した状態で電磁調理器を作動させた。その後、水が沸騰する様子を観察したが、突沸は認められなかった。
線状接着部31の配列を上記のようにすることで突沸を防止できる理由は定かではないが、次のように推測する。
まず、突沸は、誘導加熱発熱体3の片面が容器に接着されて被加熱物への放熱が悪く蓄熱しやすい接着された部位と、接着されてない部位との境界付近で多く観察されるところ、接着された部位の面積が小さく、また、接着された部位の面積に対して、接着されてない部位との間に形成される境界線の長さが長いほど、被加熱物への放熱が良好になされ、突沸しにくくなると思われる。そして、このときの接着された部位の形状を複雑な凹凸にして上記境界線を長くするよりも、線状として長くする方が、被加熱物の対流を阻害しないと考えられ、さらに、本実施例のように、線状接着部31を非接着部32で分断することで、被加熱物の対流を促進することができ、これによって被加熱物への放熱がさらに良好となり、より効果的に突沸を防止できるものと考えられる。
【0033】
[実施例2]
線状接着部31の配列を、図2(a)に示すものとした以外は、実施例1と同様の容器形態とした。そして、実施例1と同様にして、容器1内で水が沸騰する様子を観察したところ、突沸は認められなかった。本実施例における線状接着部31の具体的な配列を表2に示す。
【0034】
【表2】

【0035】
[実施例3]
線状接着部31の配列を、図2(b)に示すものとした以外は、実施例1と同様の容器形態とした。そして、実施例1と同様にして、容器1内で水が沸騰する様子を観察したところ、突沸は認められなかった。本実施例における線状接着部31の具体的な配列を表3に示す。
【0036】
【表3】

【0037】
[実施例4]
線状接着部31の配列を、図2(c)に示すものとした以外は、実施例1と同様の容器形態とした。そして、実施例1と同様にして、容器1内で水が沸騰する様子を観察したところ、突沸は認められなかった。本実施例における線状接着部31の具体的な配列を表4に示す。
【0038】
【表4】

【0039】
[実施例5]
線状接着部31の配列を、図2(d)に示すものとした以外は、実施例1と同様の容器形態とした。そして、実施例1と同様にして、容器1内で水が沸騰する様子を観察したところ、突沸は認められなかった。本実施例における線状接着部31の具体的な配列を表5に示す。
【0040】
【表5】

【0041】
[実施例6]
線状接着部31の配列を、図3(a)に示すものとし、実施例1と同様の容器形態とした。そして、実施例1と同様にして、容器1内で水が沸騰する様子を観察したところ、突沸は認められなかった。本実施例における線状接着部31の具体的な配列を表6に示す。
なお、本実施例における線状接着部31の配列は、実施例4の線状接着部31の配列に対して、同一仮想軌線上で隣接する線状接着部31の端部が離間する長さを長くするとともに、線状接着部31の長さを短くしたものに相当する。
【0042】
【表6】

【0043】
[実施例7]
線状接着部31の配列を、図3(b)に示すものとした以外は、実施例1と同様の容器形態とした。そして、実施例1と同様にして、容器1内で水が沸騰する様子を観察したところ、突沸は認められなかった。本実施例における線状接着部31の具体的な配列を表7に示す。
【0044】
【表7】

【0045】
[比較例1]
線状接着部31の配列を、図3(c)に示すものとした以外は、実施例1と同様の容器形態とした。そして、実施例1と同様にして、容器1内で水が沸騰する様子を観察したところ、突沸が認められた。本比較例における線状接着部31の具体的な配列を表8に示す。
【0046】
【表8】

【0047】
[実施例8]
線状接着部31の配列を、図3(d)に示すものとし、実施例1と同様の容器形態とした。そして、実施例1と同様にして、容器1内で水が沸騰する様子を観察したところ、わずかに突沸が認められたが、通常の使用に支障はなかった。本実施例における線状接着部31の具体的な配列を表9に示す。
なお、本実施例における線状接着部31の配列は、実施例5の線状接着部31の配列に対して、同一仮想軌線上で隣接する線状接着部31の端部が離間する長さを長くするとともに、線状接着部31の長さを短くしたものに相当する。
【0048】
【表9】

【0049】
[実施例9]
線状接着部31の配列を、図4(a)に示すものとし、実施例1と同様の容器形態とした。そして、実施例1と同様にして、容器1内で水が沸騰する様子を観察したところ、突沸は認められなかった。本実施例における線状接着部31の具体的な配列を表10に示す。
なお、本実施例における線状接着部31の配列は、実施例4の線状接着部31の配列に対して、隣接する仮想軌線に形成される線状接着部31の配列を互い違いにしたものに相当する。
【0050】
【表10】

【0051】
[実施例10]
線状接着部31の配列を、図4(b)に示すものとし、実施例1と同様の容器形態とした。そして、実施例1と同様にして、容器1内で水が沸騰する様子を観察したところ、突沸は認められなかった。本実施例における線状接着部31の具体的な配列を表11に示す。
なお、仮想軌線の全長、線状接着部の長さを測定するにあたり、抜き孔33にかかる部分は除外した。また、第一仮想軌線上に形成される線状接着部31の長さについて、当該欄の上段は抜き孔33に一部が切り欠かれた線状接着部31の長さであり、下段は抜き孔33にかかっていない線状接着部31の長さである。また、本実施例における線状接着部31の配列は、実施例4の線状接着部31の配列に対して、誘導加熱発熱体3の中心側に形成された抜き孔33を図中下方に20mm偏心させたものに相当する。
【0052】
【表11】

【0053】
[実施例11]
線状接着部31の配列を、図4(c)に示すものとし、実施例1と同様の容器形態とした。そして、実施例1と同様にして、容器1内で水が沸騰する様子を観察したところ、突沸は認められなかった。本実施例における線状接着部31の具体的な配列を表12に示す。
なお、本実施例における線状接着部31の配列は、実施例4の線状接着部31の配列に対して、誘導加熱発熱体3の中心側に形成された抜き孔33を図中下方に20mm偏心させるとともに、線状接着部31も同様に偏心させたものに相当する。
【0054】
【表12】

【0055】
[実施例12]
線状接着部31の配列を、図4(d)に示すものとし、各仮想軌線を四角形状とした以外は、実施例1と同様の容器形態とした。そして、実施例1と同様にして、容器1内で水が沸騰する様子を観察したところ、突沸は認められなかった。本実施例における線状接着部31の具体的な配列を表13に示す。
なお、本実施例における第五仮想軌線は、誘導加熱発熱体3からはみ出て設定されており、誘導加熱発熱体3からはみ出した部分は、第五仮想軌線の全長から除外した。また、第五仮想軌線上には、途中に非接着部を形成せずに、その両端が誘導加熱発熱体3の外縁の近傍に至るように線状接着部31を形成した。
【0056】
【表13】

【0057】
以上、本発明について、好ましい実施形態を示して説明したが、本発明は、前述した実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更実施が可能であることは言うまでもない。
【0058】
例えば、誘導加熱発熱体3は、図示するような円形状とするのが好ましいが、矩形状、楕円形状とするなど、任意の形状としてもよい。この場合には、円形以外の形状とされた誘導加熱発熱体3の外形形状と少なくとも二点で接する内接円のうち最も大きい円の半径をRとし、又は当該円と同心状に線状接着部31を形成するなどして、本発明を適用すればよい。
【0059】
また、線状接着部31の配列は、前述したもの以外にも種々の変形実施が可能であり、例えば、図5(a)に示すように、径方向に並ぶそれぞれの線状接着部31に対し、それぞれの線状接着部31のほぼ中央で交差するように、径方向にも補助的に線状接着部34を形成して、容器本体2に対する誘導加熱発熱体3の接着強度を高めることもできる。ただし、この場合には、線状接着部31,34を形成することで、線状接着部31,34に囲まれて閉じた空間が形成されないようにする必要がある。図5(b),(c)に示すような円弧の組み合わせからなる配列で、線状接着部31を形成することも可能である。
さらに、前述した実施形態では、誘導加熱発熱体3の中心側から外縁側に向かう径方向に、前述した間隔で離間して並ぶ複数の仮想軌線を設定し、この複数の仮想軌線のそれぞれについて、一又は複数の非接着部32を介在させて線状接着部31を形成するようにしたが、これ以外にも、図6に示すような配列とすることができる。すなわち、仮想軌線は、誘導加熱発熱体内を一周して閉じるように設定するに限らず、一つの仮想軌線を渦巻き状に周回するように設定し、このように設定された仮想軌線上に一又は複数の非接着部32を適宜の間隔で介在させて線状接着部31を断続的に形成するようにしてもよい。
【0060】
また、前述した実施形態では、被加熱物として水を容器本体2に収容し、容器1を蒸し器として使用して、調理対象を蒸して加熱処理する例を示したが、被加熱物を直接に加熱するための加熱容器として使用するようにしてもよい。
【0061】
また、誘導加熱発熱体3には、誘導加熱によって誘導加熱発熱体3を発熱させたときに、他の部位よりも選択的に過剰に発熱する部位を設けることができる。これにより、例えば、前述した実施形態のように、容器1を蒸し器として使用する際に、容器本体2に収容された水が減少して、誘導加熱発熱体3が水面上に露出していく過程で、誘導加熱発熱体3に設けられた他の部位よりも選択的に過剰に発熱する部位が、所定のタイミングで熱溶融によって破断するようにし、これによって、安全機構が働いて電磁調理器が停止するようにすることが可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明に係る誘導加熱容器は、市販の電磁調理器により、被加熱物を加熱することができる容器として利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明に係る誘導加熱容器の実施形態の概略を示す説明図である。
【図2】本発明に係る誘導加熱発熱体の実施例2〜5を示す説明図である。
【図3】本発明に係る誘導加熱発熱体の実施例6,7、比較例1、及び実施例8を示す説明図である。
【図4】本発明に係る誘導加熱発熱体の実施例9〜12を示す説明図である。
【図5】本発明に係る誘導加熱発熱体の実施形態の変形例を示す説明図である。
【図6】本発明に係る誘導加熱発熱体の実施形態の他の変形例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0064】
1 容器
2 容器本体
21 内底面
3 誘導加熱発熱体
30a 第一仮想軌線
30b 第二仮想軌線
30c 第三仮想軌線
31 線状接着部
32 非接着部
33 抜き孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状の被加熱物を収容するようにされた容器本体と、高周波磁界により渦電流が誘起されて発熱する誘導加熱発熱体とを備え、
前記誘導加熱発熱体の中心側から外縁側に向かう径方向に所定の間隔で離間して、前記径方向と交差するように前記誘導加熱発熱体内を周回する一又は複数の仮想軌線上に、所定の間隔で一又は複数の非接着部を介在させて線状接着部を断続的に形成し、
前記線状接着部により、前記誘導加熱発熱体を前記容器本体の内底面側に部分的に接着して取り付けたことを特徴とする誘導加熱容器。
【請求項2】
前記仮想軌線上に、複数の非接着部をほぼ等間隔で介在させて、同一仮想軌線上に形成される前記線状接着部が、ほぼ等しい長さで形成されるようにした請求項1に記載の誘導加熱容器。
【請求項3】
前記誘導加熱発熱体が円形であるときは当該円、又は、前記誘導加熱発熱体が円形以外の形状であるときは当該形状と少なくとも二点で接する内接円のうち最も大きい円、と同心状に前記線状接着部を形成した請求項1又は2のいずれか一項に記載の誘導加熱容器。
【請求項4】
前記誘導加熱発熱体の中心側に抜き孔を形成した請求項1〜3のいずれか一項記載の誘導加熱容器。
【請求項5】
前記径方向に並ぶ前記各線状接着部のそれぞれに交差する線状の接着部を形成した請求項1〜4のいずれか一項記載の誘導加熱容器。
【請求項6】
前記誘導加熱発熱体が円形であるときは当該円の半径、又は、前記誘導加熱発熱体が円形以外の形状であるときは当該形状と少なくとも二点で接する内接円のうち最も大きい円の半径をRとしたときに、0.05R〜0.5Rの間隔で誘導加熱発熱体の中心側から外縁側に向かう径方向に前記間隔で離間して並ぶ複数の仮想軌線を設定し、
同一仮想軌線上で隣接する前記線状接着部の端部が離間する長さを当該仮想軌線の全長の0.01〜0.2とし、かつ、前記線状接着部の長さを当該線状接着部が形成される仮想軌線の全長の0.02〜0.99とした請求項1〜5のいずれか一項に記載の誘導加熱容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−63518(P2010−63518A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−230731(P2008−230731)
【出願日】平成20年9月9日(2008.9.9)
【出願人】(000003768)東洋製罐株式会社 (1,150)
【出願人】(000223193)東罐興業株式会社 (90)
【Fターム(参考)】