説明

誘導加熱調理器

【課題】トッププレートの汚れなどに影響されること無く、常に鍋の位置を検出することができ、使い勝手の良い誘導加熱調理器を提供する。
【解決手段】鍋を載置するトッププレートと、トッププレートの下方に設けられた加熱コイル5と、加熱コイル5に高周波電流を供給するインバータ回路304と、トッププレートの下方に設けられた複数の鍋検出コイル310と、鍋検出コイル310に高周波電流を供給する鍋検出用インバータ回路309と、鍋検出コイル310に流れる電流を検出するコイル電流検出回路312と、コイル電流検出回路312の出力に応じて前記鍋を加熱する電力を調整するようにインバータ回路304を制御する制御手段307とを備えたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鍋の位置ズレを効率よく検出する誘導加熱調理器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の誘導加熱調理器は、鍋を効率よく加熱するために、トッププレートの上面に鍋を載置する位置を示す円状の印が示されている。
【0003】
しかし、鍋を載置するトッププレートは、ガラスやセラミックの平面状に鍋の載置位置を示す印刷を施しているだけなので、鍋に具材を入れるときや混ぜている時に、無意識のうちに鍋の位置がずれてしまう問題がある。
【0004】
そこで、特許文献1に示すように、同心円状に独立した内コイルと外コイルからなる誘導コイル(加熱コイル)を設け、各々のコイルに流れる電流を検出する内コイル用電流検知手段と外コイル用電流検知手段との出力に基づき、鍋底判定手段によって鍋の材料や鍋の大きさを判定することができるものであり、また、位置ずれ判定手段によって内コイルと外コイルに対して鍋の位置ずれを判定することができるものである。そして、判断した鍋の大きさや位置ずれに応じて内コイルと外コイルに対する通電を制御するものがある。
【0005】
また、特許文献2に示すように、複数の光センサを設けて鍋の位置ずれや形状を検出するものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−127821号公報
【特許文献2】特開2010−108796号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の従来技術において、特許文献1に示す誘導加熱調理器は、内コイルと外コイルの各々に鍋がどのくらいの面積を占めているかを確認し、コイルの半分以上に鍋が存在しない場合、そのコイルへの電力の供給を停止するようにしている。例えば、鍋の載置位置がずれて鍋が外コイルの面積に対して半分以下の状態になると外コイルへの電力を停止し内コイルのみで鍋を加熱するようになっている。そのため、調理中に調理者が鍋ずれに気づいて鍋位置を修正しても、外コイルへの電力の供給が停止しているため外コイル用電流検知手段により電流が検出できないため外コイルへの電力の供給ができない課題がある。
【0008】
また、特許文献2に示す誘導加熱調理器は、汚れによって光透過窓が汚れた場合、鍋の位置や形状を正確に検出できない課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、鍋を載置するトッププレートと、該トッププレートの下方に設けられた加熱コイルと、該加熱コイルに高周波電流を供給するインバータ回路と、前記トッププレートの下方に設けられた複数の鍋検出コイルと、該鍋検出コイルに高周波電流を供給する鍋検出用インバータ回路と、前記鍋検出コイルに流れる電流を検出するコイル電流検出回路と、該コイル電流検出回路の出力に応じて前記鍋を加熱する電力を調整するように前記インバータ回路を制御する制御手段とを備えたものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の誘導加熱調理器は、トッププレートの汚れなどに影響されること無く、常に鍋の位置を検出することができ、使い勝手の良い誘導加熱調理器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】一実施例の誘導加熱調理器をシステムキッチンに組み込んだ状態の斜視図。
【図2】一実施例の誘導加熱調理器の斜視図。
【図3】一実施例の誘導加熱調理器の加熱コイルの上面視図。
【図4】一実施例の誘導加熱調理器の構成を説明するブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施例である誘導加熱調理器を図1〜図4を参照して説明する。
【0013】
図1と図2において、誘導加熱調理器の本体1上面にはトッププレート2が水平に配置されている。トッププレート2は、耐熱性の高い結晶化ガラスから構成され、鉄等の磁性体鍋又はアルミ等の非磁性体鍋(図示無し)等の調理容器が載置される。また、トッププレート2の周りにはトッププレート枠3が設けられており、トッププレート2とトッププレート枠3との間にはシール材(図示せず)が充填されてトッププレート2の周りに固着され、トッププレート2上に溢した水が本体1内部に漏れないような水密構造となっている。トッププレート枠3は、本体1に固定されており、本体1をシステムキッチン13に設置する際は、本体1をシステムキッチン13の上面から落とし込んで組み込まれ、トッププレート枠3で本体1を吊り下げて設置される。
【0014】
また、トッププレート2下方の本体1内部には、手前側右と左側と後側中央に加熱コイル5が配設されており、トッププレート2に載置された鉄等の磁性体又はアルミ等の非磁性体よりなる鍋を誘導加熱する。手前側左右の加熱コイル5は、炒め物や揚げ物など比較的大きい火力が必要な調理用として最大3kWの加熱出力(火力)を有しており、よく使用される直径200mm程度の鍋を効率よく加熱できるように加熱コイル5の直径の大きさを略200mmとしている。また、トッププレート2の中央後側に配設された加熱コイル5は、保温や煮込み料理、炊飯調理など調理中の作業がそれ程必要なくかつ比較的火力が弱い調理用として使用され、最大1.6kWの加熱出力(火力)を有している。
【0015】
鍋を載置するトッププレート2上面には、トッププレートの下方に設けられている加熱コイル5と同じ位置に鍋を載置できるように、鍋位置表示部4が表示されている。使用者はこの鍋位置表示部4に合わせて鍋を載置することで鍋を効率よく加熱することができる。
【0016】
トッププレート2の上面手前側の辺部に沿って上面操作部12が設けられており、上面操作部12には、上面操作キー12aと上面表示部12b(図2)が設けられている。上面操作キー12aは、夫々の加熱コイル5の通電をオン・オフするキーや、火力を設定するキー、通電タイマー値を設定するキー、自動調理を設定するメニューキー等が設けられている。そして、上面表示部12bは夫々の加熱コイル5の通電状態や火力の設定内容をわかりやすく表示する。
【0017】
本体1後部右側には、上方に向けて開口した吸気口8が設けられており、本体1内に設けられたファン(図示せず)により、吸気口8から吸気した冷却風を本体1内に設けられた制御基板(図示せず)や加熱コイル5等に流して冷却する。本体1後部左側には、本体1内部を冷却した冷却風を排気する排気口9が設けられている。
【0018】
本体1前面左部には、グリル加熱手段6が設けられている。7はグリル加熱手段6の扉で、ハンドル7aが設けられている。また、グリル加熱手段6の内部には出し入れ可能な受け皿(図示せず)が収納されている。
【0019】
10は開閉収納式の前面操作部で、主にグリル加熱手段6を操作するものであり、本実施例ではグリル加熱手段6の隣に位置するように本体1の前面右側に設けられている。また、前面操作部10は、閉じているときに上部を本体1側に押すことによりロック装置(図示せず)が解除され、前面操作部10の上部が前面側にバネと制御装置(図示せず)により前面側にゆっくりと回動して飛び出すようになっており、逆に閉じるときは上部を本体1側に向かって押し込むことにより本体1に収納され、ロック装置により保持される構成となっている。なお、図1は前面操作部10が開いている状態を示し、図2は前面操作部10が閉じている状態を示す。
【0020】
前面操作部10の前面操作キー10aは、グリル加熱手段6のシーズヒータ302(図4)を入切する等の操作を行い、前面操作キー10aで操作した内容は前面表示部10bで使用者に判り易く表示される。11は、電源切/入スイッチで、本体1前面に設けられ、本体1の主電源の入切を行う。
【0021】
図3は本実施例における誘導加熱調理器の加熱コイルの上面視図である。図3に示すように、加熱コイル5は、内側加熱コイル5aと外側加熱コイル5bから構成される。310は鍋検出コイルで、加熱コイル5に複数箇所に設けている。本実施例では、加熱コイル5の中心部の1箇所と、内側加熱コイル5aと外側加熱コイル5bの間の4箇所の合計5箇所に鍋検出コイル310を設けている。
【0022】
鍋検出コイル310は、被加熱物である鍋の有無と鍋の材質を検出するものである。鍋検出コイル310は加熱コイル5とは異なり鍋を加熱する必要が無いので、必要とする電源は極わずかな高周波電流で良い。そして、高周波磁界を発生して鍋との磁気結合の状態で鍋検出コイル310に流れる電流を検出して鍋検出コイル310の上方に鍋が載置されているのかどうか検知し、また鍋の材質も検知するものである。
【0023】
図4は実施例1における誘導加熱調理器の回路構成を説明するブロック図である。図4において、301は交流電源で、誘導加熱調理器に電力を供給する商用電源である。302はシーズヒータで、グリル加熱手段6の内部に入れられた被加熱物を加熱するものである。そして、303はヒータ制御回路で、シーズヒータ302の通電を制御するものである。304はインバータ回路で、後述する制御手段307からの制御信号に応じた加熱出力が得られるように加熱コイル5へ高周波電源を供給する。311は温度検出器で、トッププレート2の下面の温度を検出し、トッププレート2を介して被加熱物である鍋の温度を検出する。308はフィルタ回路を搭載したフィルタ手段であり、各インバータ回路304より生じる雑音ノイズを抑制し、雑音ノイズが商用電源301に漏洩することを防ぐ。310は前述した鍋検出コイルである。309は鍋検出用インバータ回路で、後述する制御手段307の制御信号に応じて鍋検出コイル310に高周波電流を供給する。312はコイル電流検出回路で、鍋検出コイル310に流れる電流を検出する。313は入力電流検出回路で、商用電源301から流れ込む電流を検出する。鍋検出コイル310とコイル電流検出回路312と鍋検出用インバータ回路309は必要に応じてその数を設ける。
【0024】
307はマイクロコンピュータで構成された制御手段で、前面操作キー10aや、上面操作キー12aの操作信号の入力に従い、前面表示部10bや上面表示部12bに表示信号を出力する。また、シーズヒータ302の通電を制御するヒータ制御回路303や、加熱コイル5の通電を制御するインバータ回路304及び鍋検出コイル310の通電を制御する鍋検出用インバータ回路309に制御信号を出力する。また、コイル電流検出回路312からの検出値に応じて、鍋検出コイル310の上方に鍋が載置されているのかどうか、また鍋の材質は何かを判断する。
【0025】
以上のように構成された誘導加熱調理器の動作を説明する。調理物を入れた鍋をトッププレート2の上に載せ、上面操作部12を操作して希望の火力を設定し、通電開始のキーを操作して通電を開始する。制御手段307は、先に鍋検出用インバータ回路309を駆動して鍋検出コイル310に電力を供給しコイル電流検出回路312によって検出された検出値に応じて、被加熱物である鍋の材質、または鍋が適正に載置鍋位置表示部4に載置されているかを確認する。
【0026】
そして、鍋が適正に載置されていることを確認した後、鍋の材質に応じて最適な加熱を行うようにも加熱コイル5に印加する電源の周波数や電力を決定し、インバータ回路304を制御して加熱コイル5に電力を供給し鍋の加熱を開始する。
【0027】
加熱中は、鍋検出コイル310にわずかな高周波電流を印加し鍋の位置情報を確認し、内側加熱コイル5aと外側加熱コイル5bとの間に設けた4箇所の鍋検出コイル310の1箇所でも鍋が無いと判断した場合は、報知音や表示などで調理者に鍋がずれたことを知らせる。
【0028】
また、加熱コイル5の中央部に設けた鍋検出コイル310のみが鍋を検出し、内側加熱コイル5aと外側加熱コイル5bとの間に設けた4箇所の鍋検出コイル310は鍋を検出しない場合がある。このような場合は、載置された鍋が小径と判断し、加熱途中で内側加熱コイル5aと外側加熱コイル5bとの間に設けた4箇所の鍋検出コイル310のうち1箇所でも鍋が有ると判断した場合に鍋がずれたことを調理者に知らせる。また、全ての鍋検出コイル310にて鍋が無いと検出した場合は、制御手段307は加熱コイル5への電力の供給を停止して調理者に知らせる。
【0029】
さらに、加熱中は鍋検出用インバータ回路309を駆動して鍋検出コイル310に電力を供給しコイル電流検出回路312によって検出を続けるので、一度鍋が無いと判断しても、調理者によって鍋が適正の場所に載置された場合は加熱を再開する。
【0030】
なお、鍋検出コイル310の設置場所は、加熱コイル5の中心部と加熱コイル5の外周より外側に複数設けても良い。また、鍋検出コイル310に大電流を流せるように設計することで、鍋が有ると判断できた鍋検出コイル310に対して高周波の大電流を流して鍋を加熱できるようにしても良い。
【0031】
上記した本実施例によれば、トッププレートの汚れなどに影響されること無く、常に鍋の位置を検出することができ、使い勝手の良い誘導加熱調理器を提供することができる。
【符号の説明】
【0032】
2 トッププレート
5 加熱コイル
304 インバータ回路
307 制御手段
309 鍋検出用インバータ回路
310 鍋検出コイル
312 コイル電流検出回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鍋を載置するトッププレートと、該トッププレートの下方に設けられた加熱コイルと、該加熱コイルに高周波電流を供給するインバータ回路と、前記トッププレートの下方に設けられた複数の鍋検出コイルと、該鍋検出コイルに高周波電流を供給する鍋検出用インバータ回路と、前記鍋検出コイルに流れる電流を検出するコイル電流検出回路と、該コイル電流検出回路の出力に応じて前記鍋を加熱する電力を調整するように前記インバータ回路を制御する制御手段とを備えたことを特徴とする誘導加熱調理器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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