説明

誘導発熱ローラ装置の異常検出表示装置

【課題】誘導発熱ローラ装置の異常の発生箇所や内容ならびに異常原因を確実かつ簡単に確認できるようにすること。
【解決手段】ローラ2の表面温度、中空内部温度、誘導コイル2に通電する電圧・電流、電圧波形および電力調節器3それぞれの異常を検出して、それぞれ独自のコード番号を出力する複数の異常検出器23〜29を設け、異常を検出したとき、その異常を検出した異常検出器のコード番号と異常が発生した月日と時刻を履歴格納メモリ31に順に書き込み、表示部32のMODE、NEXT、LASTの操作キーボタンの操作により、履歴格納メモリ31に記憶した異常履歴を最新の異常から順に、表示部32の表示面abcに表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘導発熱ローラ装置の異常検出表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図2は、従来の誘導発熱ローラ装置の異常検出表示装置の構成を示すもので、ローラ本体(以下、ロールシェルという。)1の中空内部に誘導コイル2が配置され、その誘導コイル2はサイリスタなどからなる電力調節器3と電路開閉器4を介して交流電源5に接続され、誘導コイル2に所定の交流電圧を印加することによりロールシェル1がジュール発熱する。ロールシェル1には、ロールシェル1の表面温度を検出する第1の温度検出器6と第2の温度検出器7がロールシェル1の肉厚内に配置され、第1の温度検出器6と第2の温度検出器7の温度検出器の検出信号は回転トランス9により外部へ取り出される。また、ロールシェル1の中空内部に、その内部温度を検出する第3の温度検出器8が配置され、第3の温度検出器8の検出信号はそのまま外部へ取り出される。
【0003】
第1の温度検出器6の検出信号は、制御盤10内の温度表示機能付の温度調節計11に入力され、ここで予め設定した設定温度と比較し、ロールシェル1の表面温度がその設定値を維持するように電力調節器3を制御する。第2の温度検出器7の検出信号は、制御盤10内の温度表示機能付の第1の温度異常検出器12に入力され、ここで予め設定した異常温度と比較し、ロールシェル1の表面温度がその異常温度を越えたとき異常検出信号を出力する。第3の温度検出器8の検出信号は、制御盤10内の温度表示機能付の第2の温度異常検出器13に入力され、同様に予め設定した異常温度と比較し、ロールシェル1の内部温度がその異常温度を越えたとき異常検出信号を出力する。
【0004】
計測温度表示機能付の温度調節計11、第1の温度異常検出器12および第2の温度異常検出器12で異常と検出した異常検出信号は、制御盤10の外表面に配置した第1の異常表示灯14の点灯回路に入力され、いずれかの異常検出信号で第1の異常表示灯14を点灯し、電路開閉器4を遮断し、同時に電力調節器3を停止する。また、電力調節器3から誘導コイル2に供給する電路に電流検出器15が配置され、変流器15の出力電流は電流信号変換器16を介して電力調節器3に入力し、電力調節器3の出力電流を調整する。また、電力調節器3は、電力調節器3内のヒューズ溶断や過電流、冷却フアンがある場合その冷却フアンの停止などの異常を検出して電力調節器3を停止するとともに、異常信号を第2の異常表示灯17の点灯回路に入力し、第2の異常表示灯17を点灯する。
【0005】
以上のように構成された従来の誘導発熱ローラ装置の異常検出表示装置では、温度表示機能付の温度調節計11、第1および第2の温度異常検出器12、13は制御盤10の裏面内側に配置され、第1の異常表示灯14と第2の異常表示灯17が制御盤の表面外側に配置されている。そのため異常が発生したとき、その異常の発生は第1、第2の異常表示灯14、17によって確認し、異常個所や異常内容は制御盤の扉を開けて温度調節計10、第1および第2の温度異常検出器12、13の各機器の表示で確認するようにしている。
【0006】
しかし、このような制御盤では、異常の発生時には安全のため電源を遮断して誘導コイル2への通電を止めるため、たとえばロールシェル1の表面温度が過上昇した異常であっても、その異常が発生してからある程度時間が経過した後には、ロールシェル1の温度は低下していて、制御盤の扉を開けてその異常を確認しようとしても、その確認ができないといった問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、異常の発生箇所や内容ならびに異常原因を確実かつ簡単に確認できるようにし、斯かる問題を解消する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、状態検出信号を入力して異常を判別し、異常であるとき所定のコード番号を出力する複数の異常検出手段と、月日および時刻を出力する時計手段と、異常が発生した月日および時刻ならびに前記コード番号を異常の発生順に複数記憶する記憶手段と、前記記憶手段に記憶した月日および時刻ならびに前記コード番号を最新の記憶から順次表示する表示手段とを設けたことを主な特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、運転時の誘導発熱ローラ装置を構成する各部位の状態、ローラの表面および中空内の温度、誘導コイルに電力を印加する電路の電圧・電流・電圧波形、電力調節器の異常状態が検出されると、異常の発生月日および時刻ならびに各部位に割り当てたコード番号を記憶し、その記憶内容を必要時に表示するので、異常発生の有無、異常発生原因を、簡単に確認をすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
異常の発生箇所や内容ならびに異常原因を確実かつ簡単に確認できるようにする目的を、運転時の誘導発熱ローラ装置の各部位の状態を検出し、その検出に基づいて異常を検出する異常検出器のそれぞれに個別のコード番号を割り当て、異常が発生したとき、その異常を検出した異常検出器のコード番号を、発生した月日とともに、発生した日時順に記憶手段に格納し、必要時、記憶手段に格納した発生した日時とコード番号を制御盤の外表面に設置した表示面に表示することにより実現した。
【実施例】
【0011】
以下、本発明に係る実施例について図1を参照して説明する。図1は実施例に係る誘導発熱ローラ装置の異常検出表示装置の構成を示すブロック図である。なお、図2に示す誘導発熱ローラ装置の異常検出表示装置と同一部分および対応する部分には同一の符号を付している。また、図1では、電力調節部は省略している。
【0012】
図1において、20は変圧器、21は電圧信号変換器、22は変圧器、23は電力調節器3からの信号を入力して、割り当てられた独自のコード番号を出力する電力調節器異常検出器、24は電流信号変換器16からの電流信号を入力して、異常電流であると判定したとき割り当てられた独自のコード番号を出力する電流異常検出器、25は電圧信号変換器21からの電圧信号を入力して、異常電圧である判定したとき割り当てられた独自のコード番号を出力する電圧異常検出器、26は変圧器22から電圧波形を入力して、異常電圧波形である判定したとき、すなわち交流電圧の最高値と最低値間の差が0でないとき割り当てられた独自のコード番号を出力する電圧波形異常検出器、27はローラの中空内部の温度を検出する温度検出器8からの温度信号を入力して、異常温度であると判定したとき割り当てられた独自のコード番号を出力する内部温度異常検出器、28および29はローラの表面温度を検出する第1の温度検出器6および第2の温度検出器7からの温度信号をそれぞれ入力して、異常温度であると判定したときそれぞれ割り当てられた独自のコード番号を出力する表面温度異常検出器、30は日付(月日)および時刻を出力する時計装置、31は異常履歴格納メモリ、32は制御盤10の外表面に設置した表示部である。
【0013】
表示部32には、三段の表示面a、b、cとMODE、NEXT、LAST、DISPLAYの4個の操作キーボタンが配置され、通常、上段の表示面aにはローラの表面温度を検出する第1の温度検出器6からの検出信号に基づいた現在の表面温度、中段の表示面bには図示しない温度調節部に設定されたローラの表面温度の設定値、下段の表示面cには電流信号変換器16の出力に基づく出力電流値が表示される。この表示を行っているときには、上段の表示面aの両側の表面温度と℃を記した赤色LEDが点灯し、中段の表示面bの両側の設定温度と℃を記した赤色LEDが点灯し、下段の表示面cの両側の出力電流とAを記した赤色LEDが点灯する。
【0014】
異常履歴格納メモリ31は、縦方向に10段、横方向に三欄X、Y、Zの区分けした格納領域を有し、格段のX欄には異常が発生した月日、Y欄には異常が発生した時刻、Z欄には異常を検出した異常検出器のコード番号を、最新の異常を最上段にして順次下段へ格納する。たとえば、ロールシェル1の内部温度を検出する温度検出器8の検出信号を入力した内部温度異常検出器27が異常温度であると判定し、それに割り当てられた独自のコード番号を出力すると、時計装置30の日付および時刻を読み出し、その月日および時刻とその独自のコード番号を異常履歴格納メモリ31の第1段目に書き込む。次に電圧波形異常検出器26が異常波形であると判定し、それに割り当てられた独自のコード番号を出力すると、時計装置30の月日および時刻を読み出し、異常履歴格納メモリ31の第1段目に書き込まれた内容を第2段目に移し、その月日および時刻とその独自のコード番号を異常履歴格納メモリ31の第1段目に書き込む。以下同様にして異常発生ごと順次書き込む。
【0015】
そして、ローラが停止した状態で表示部32のMODEキーボタンとNEXTキーボタンを同時に2秒以上押すと異常履歴格納メモリ31の内容を表示するモードに切り替わり、表示格段両側のLEDは消灯し、上段の表示面aには異常履歴格納メモリ31の第1段目のX(月日)、中段の表示面bには第1段目のY(時刻)、下段の表示面cには第1段目のZ(コード番号)をそれぞれ表示する。この状態で、NEXTキーボタンを押すと、異常履歴格納メモリ31の第2段目の内容が同様にして表示され、LASTキーボタンを押すと直前の第1段目の表示に変わる。NEXTキーボタンの操作を繰り返すことにより履歴格納メモリ31の第10段目の内容が順次表示され、履歴格納メモリ31の第10段目の内容が表示れた状態で、さらにNEXTキーボタンを押すと第1段目の内容の表示に戻る。以下この表示が繰り返される。これらの表示操作中にDISPLAYキーボタンを押すと、元のローラの表面温度、表面温度の設定値、出力電流値の表示に戻り、表示格段両側のLEDは点灯する。
【0016】
この異常履歴格納メモリ31の内容の表示によって、たとえば前記のような第1段目および第2段目に書き込まれた異常の場合は、誘導コイル2に直流分の電流が流れたことによる誘導コイル2が加熱したものと判断でき、その異常を除去する対応策が取れる。
【0017】
なお、図1では、各異常検出器等ブロックで示しているが、温度調節機能を含めマイクロコンピュータのソフト上で処理するようにしてもよい。このようにすると制御盤をコンパクト化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施例に係る誘導発熱ローラ装置の異常検出表示装置の構成を示すブロック図である。
【図2】従来の誘導発熱ローラ装置の異常検出表示装置の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0019】
1 ローラ本体
2 誘導コイル
3 電力調節器
4 電路開閉器
5 交流電源
6、7、8 温度検出器
9 回転トランス
10 制御盤
15 変流器
16 電流信号変換器
20 変圧器
21 電圧信号変換器
22 変圧器
23〜29 異常検出器
30 時計装置
31 履歴格納メモリ
32 表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
状態検出信号を入力して異常を判別し、異常であるとき所定のコード番号を出力する複数の異常検出手段と、月日および時刻を出力する時計手段と、異常が発生した月日および時刻ならびに前記コード番号を異常の発生順に複数記憶する記憶手段と、前記記憶手段に記憶した月日および時刻ならびに前記コード番号を最新の記憶から順次表示する表示手段とを設けたことを特徴とする誘導発熱ローラ装置の異常検出表示装置。
【請求項2】
状態検出信号は、ローラの表面温度、誘導コイルを配置したローラの中空内の温度、誘導コイルに印加する電圧および電流ならびに電圧波形、誘導コイルに印加する電力調節器の異常である請求項1に記載の誘導発熱ローラ装置の異常検出表示装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−258014(P2008−258014A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−99310(P2007−99310)
【出願日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【出願人】(000110158)トクデン株式会社 (91)
【Fターム(参考)】