説明

誘電体スラリーの製造方法および積層セラミック電子部品の製造方法

【課題】誘電体層の薄層化に適した誘電体スラリーの製造方法と、誘電損失が小さく、高誘電率で長寿命の積層セラミック電子部品の提供。
【解決手段】誘電体粉末と溶剤を少なくとも含む分散前処理溶液を予備分散処理による混合分散工程と、予備分散処理済み溶液を後分散処理による混合分散工程を有し、予備分散処理が第1前処理と第2前処理の二段階分散処理であり、第1前処理が高速せん断分散機処理であり、第2前処理が高圧ホモジナイザー分散機、又は、超音波分散機分散処理であり、後分散処理がビーズ径が0.1mm以下のビーズを用いるビーズミル分散機処理を含む。予備分散処理前の誘電体粉末のBET比表面積(α)に対する予備分散処理後の誘電体粉末のBET比表面積(β)の変化率が0.7〜3.5%となり、予備分散処理前の誘電体粉末のBET比表面積(α)に対する後分散処理後の誘電体粉末のBET比表面積(γ)の変化率が15%以下となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘電体スラリーの製造方法および積層セラミック電子部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
積層セラミック電子部品の一例としての積層セラミックコンデンサは、携帯電話、パソコン等の種々の電子機器に組み込まれ、その需要は年々増加してきている。さらに携帯電話、パソコン等の電子機器の小型化・軽量化の進展に伴い、微小化が強く求められてきており、このため、誘電体グリーンシート層の薄層化と多層化が求められている。
【0003】
誘電体層の薄層化には、誘電体の分散を向上させる必要があり、例えば、下記の特許文献1においては、分散機としてメディアレスの高圧ホモジナイザーを誘電体分散工程に取り入れることで誘電体へのダメージが少なく、分散度の高い誘電体塗料を作製している。
【0004】
しかしながら誘電体グリーンシートの薄層化および多層化も限界に近づきつつあり、誘電体にも0.15μm以下の微粒子化でかつ誘電率アップなどの特性向上が求められている。誘電体を微粒子にしてかつ誘電率を向上させることには非常に困難が伴い、場合によっては誘電体の二次凝集体が強くなってしまったり、誘電体そのものが柔らかかったりと、今までの分散方法では対応できなくなってきている。
【0005】
たとえば、特許文献1に示す技術では、高圧ホモジナイザーとビーズミルの組み合わせの分散方法を開示している。この特許文献1では、0.3μmの誘電体を高圧ホモジナイザーを処理する前にボールミルを使用して他の材料との混合を行っている。しかしながら、この分散方法では、同様にボールミルで0.15μm以下の微粒子で誘電率の高い誘電体材料を混合すると、BETは上昇するにもかかわらず、数10μm前後の粗大粒が残ってしまう場合もある。
【0006】
また逆にBET変化を抑えるためにΦ0.1μm以下の小径ビーズを使用すると、分散しても粗大粒子が残ってしまったり、分散機のビーズ分離機構がスクリーンである場合、最悪、スクリーンに凝集粒子が堆積して目詰まりを起こしてしまい、分散できない場合が生じたり、ビーズ分離がスクリーンでない分散機の場合においては、その粗大粒を壊すために、ビーズ径アップや周速アップを行い分散しなければならず、BET上昇を起こしたり、コンタミ増加に繋がってしまったりする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−146764号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、その目的は、誘電体層の薄層化に適した誘電体スラリーを提供することができる誘電体スラリーの製造方法と、誘電損失が小さく、高誘電率で長寿命の積層セラミック電子部品とを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、誘電体層の薄層化に適した誘電体スラリーについて鋭意検討した結果、0.15μm以下の誘電体粉末のスラリー化工程の前工程において2段階でメディアレス分散処理を導入することで、BET比表面積の上昇と粗大粒子の残存とのバランスがとれ、その後に行われる直径0.1mm以下のビーズによるビーズミル分散で、誘電体粒子に対するダメージが少ない薄膜用の誘電体スラリーを製造することができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
すなわち、本発明に係る誘電体スラリーの製造方法は、
誘電体粉末と溶剤とを少なくとも混合分散して誘電体スラリーを製造する方法であって、
前記誘電体粉末と溶剤とを少なくとも含む分散前処理溶液を、予備分散処理により混合分散する工程と、
前記予備分散処理が行われた処理済み溶液を、後分散処理により混合分散する工程と、を有し、
前記予備分散処理が、第1前処理と、前記第1前処理の後に行われ、前記第1前処理とは異なる第2前処理との二段階の分散処理であり、
前記第1前処理が、高速せん断分散機による分散処理であり、
前記第2前処理が、高圧ホモジナイザー分散機、または、超音波分散機による分散処理であり、
前記後分散処理が、ビーズ径が0.1mm以下のビーズを用いるビーズミル分散機による分散処理を含み、
前記予備分散処理前の溶液に含まれる誘電体粉末の初期BET比表面積(α)に対する予備分散処理後の溶液に含まれる誘電体粉末のBET比表面積(β)の変化率(100×(β−α)/α)が0.7〜3.5%となるように前記予備分散処理が行われ、
前記予備分散処理前の溶液に含まれる誘電体粉末の初期BET比表面積(α)に対する後分散処理後の溶液に含まれる誘電体粉末のBET比表面積(γ)の変化率(100×(γ−α)/α)が15%以下となるように前記後分散処理が行われることを特徴とする。
【0011】
本発明に係る誘電体スラリーの製造方法では、高速せん断処理と高圧ホモジナイザー処理または超音波処理を組み合わせることで、誘電体粉末へのダメージを抑えつつ二次凝集を解し、その後に行われる直径0.1mm以下の小径ビーズによる分散により、分散しても粗大粒子が残ってしまうことが無くなり、低ダメージ分散が可能となり、本来誘電体粉末が持つ特性を保持した誘電体スラリーを実現することができる。
【0012】
本発明では、予備分散処理の前後における誘電体粉末のBET比表面積の変化率(100×(β−α)/α)が0.7〜3.5%である。その範囲にあるときに、誘電体にダメージを与えず、二次凝集を解し、その後に行われる直径0.1mm以下の小径ビーズによる分散効率が向上する。本発明の方法により得られる誘電体スラリーでは、微細で均一な粒径の誘電体粉末が均一に分散している。
【0013】
また、本発明では、後分散処理後における溶液に含まれる誘電体粉末のBET比表面積の変化率(100×(γ−α)/α)が15%以下である。後分散処理におけるBET比表面積の変化率を所定範囲にしても、高分散なスラリーとすることができ、誘電損失が少なく、高誘電率で高寿命の積層セラミック電子部品を製造することができる。
【0014】
前記後分散処理が、前記ビーズミル分散機による分散処理の後に行われるメディアレス分散処理をさらに含んでもよい。そのメディアレス分散処理に際して、バインダ樹脂の溶解液が添加されてもよい。誘電体粉末に対するダメージの少なく、粒度の揃った誘電体スラリーを得ることができる。
【0015】
本発明に係る積層セラミック電子部品の製造方法は、
上述した誘電体スラリーの製造方法により得られた誘電体スラリーを用いて、グリーンシートを形成する工程と、
前記グリーンシート上に内部電極パターンを形成する工程と、
前記内部電極パターン層が形成された前記グリーンシートを、複数積層して積層体を形成する工程と、
前記積層体を焼成する工程と、を有する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は本発明の一実施形態に係る積層セラミックコンデンサの概略断面図である。
【図2】図2(A)および図2(B)は図1に示す積層セラミックコンデンサの製造過程を示す概略断面図である。
【図3】図3は本発明の一実施形態に係る積層セラミックコンデンサを製造する過程で用いられる薄膜用誘電体スラリーの製造プロセスを示すフローチャート図である。
【図4】図4はロータステータ型分散機の概念図である。
【図5】図5はホモジナイザー分散機の概念図である。
【図6】図6は超音波分散機の概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を、図面に示す実施形態に基づき説明する。
積層セラミックコンデンサの構造
まず、本発明に係るセラミックスラリーを用いて製造される積層セラミックコンデンサの全体構成について説明する。
【0018】
図1に示すように、本実施形態に係る積層セラミックコンデンサ2は、コンデンサ素体4と、第1端子電極6と第2端子電極8とを有する。コンデンサ素体4は、誘電体層10と、内部電極層12とを有し、誘電体層10の間に、これらの内部電極層12が交互に積層してある。交互に積層される一方の内部電極層12は、コンデンサ素体4の一方の端部4aに形成してある第1端子電極6の内側に対して電気的に接続してある。また、交互に積層される他方の内部電極層12は、コンデンサ素体4の他方の端部4bに形成してある第2端子電極8の内側に対して電気的に接続してある。
【0019】
コンデンサ素体4において、誘電体層10と内部電極層12との積層体の積層方向の両端部には、内部電極層を有されない外装用誘電体層14が形成してある。
【0020】
積層セラミックコンデンサ2の形状やサイズは、目的や用途に応じて適宜決定すればよい。積層セラミックコンデンサ2が直方体形状の場合は、通常、縦(0.4〜5.6[mm])×横(0.2〜5.0[mm])×厚み(0.1〜1.9[mm])程度である。
【0021】
各誘電体層10の厚みは、特に限定されないが、0.15〜5.0[μm]程度であるが、本実施形態では、1.0μm以下である。誘電体層10の積層数は、特に限定されないが、好ましくは20〜1000である。
【0022】
各内部電極層12の厚みは、好ましくは0.15〜5.0[μm]、より好ましくは0.25〜0.5[μm]程度である。内部電極層12の厚さは、電極の途切れが生じない範囲で薄い方がより望ましい。内部電極層12は、単一の層で構成してあってもよく、あるいは2以上の組成の異なる複数の層で構成してあってもよい。
【0023】
第1端子電極6と第2端子電極8の材質は特に限定されないが、通常、銅や銅合金、ニッケルやニッケル合金などが用いられる。第1端子電極6と第2端子電極8の厚みも特に限定されないが、通常10〜50[μm]程度である。
誘電体層の組成
【0024】
誘電体層10は、たとえば以下に示す主成分および各副成分を含有する。
主成分である誘電体粉末としては、チタン酸バリウムを用いることが好ましい。また、Ca,Sr、ZrおよびSnの少なくともいずれかを含む誘電体[例えば(Ba,Zr)TiO]を主成分として用いても良い。
【0025】
第1副成分としては、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luの少なくともいずれか1種の希土類元素の酸化物が例示される。
【0026】
第2副成分としては、たとえばMgOが例示される。なお、CaO、SrOおよびBaOから選ばれる少なくとも1種の酸化物を、第3副成分として用いても良い。
【0027】
第4副成分としては、たとえばSiO系の焼結助剤が例示される。第5副成分としては、V,MoOおよびWOから選ばれる少なくとも1種の酸化物が例示される。第5副成分としては、MnOおよびCrから選ばれる少なくとも1種の酸化物が例示される。その他の副成分としては、たとえばAlを用いてもよい。
積層セラミックコンデンサの製造方法
【0028】
次に、本実施形態に係る積層セラミックコンデンサ2の製造方法の一例を説明する。
グリーンシートの製造方法
【0029】
図1に示す誘電体層10を構成することになるグリーンシートを製造するために、グリーンシート用塗料(誘電体スラリー)を準備する。
【0030】
まず、主成分の誘電体粉末および各副成分粉末と、バインダ樹脂の溶解液とを、後述する方法により分散混合して誘電体スラリーを得る。
【0031】
誘電体粉末および各副成分粉末としては、上記した酸化物やその混合物、複合酸化物を用いることができるが、その他、焼成により上記した酸化物や複合酸化物となる各種化合物、例えば、炭酸塩、シュウ酸塩、硝酸塩、水酸化物、有機金属化合物等から適宜選択し、混合して用いることもできる。
【0032】
バインダ樹脂は特に限定されず、ポリビニルブチラール、アクリル、エチルセルロース等の通常の各種バインダから適宜選択すればよい。また、用いる有機溶剤も特に限定されず、印刷法やシート法など、利用する方法に応じて、メタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール系溶剤や、メチルエチルケトン、テルピネオール、ブチルカルビトール、アセトン、トルエン等の各種有機溶剤から適宜選択すればよい。
【0033】
誘電体スラリーは、溶剤系の塗料であってもよく、水系の塗料であってもよい。誘電体スラリーを水系の塗料とする場合には、水溶性のバインダや分散剤などを水に溶解させた誘電体原料とを混合すればよい。水溶性バインダは特に限定されず、例えば、ポリビニルアルコール、セルロース、水溶性アクリル樹脂などを用いればよい。
【0034】
誘電体スラリー中のバインダ樹脂の含有量に特に制限はない。通常、バインダ樹脂は10〜20[重量%]程度、溶剤は50〜400[重量%]程度とすればよい。また、ペースト中には、必要に応じて各種分散剤、可塑剤、帯電防止剤、粘性調整剤等から選択される添加物が含有されていてもよい。これらの総含有量は、10[重量%]以下とすることが好ましい。
【0035】
誘電体スラリーは、図2(A)に示すように、PET等の支持フィルム20上にシート状に成形され、内装用グリーンシート10aとなる。内装用グリーンシート10aは、焼成後に図1に示す誘電体層10となる部分である。
【0036】
グリーンシートの形成方法は、所望の厚みが塗布できれば、塗布方法は限定されないが、薄膜グリーンシート作製のための手段であるため、薄膜(1μm以下)に適した塗布方法が好ましい。
【0037】
塗布後グリーンシートは乾燥されるが、乾燥も薄膜に適した乾燥方法が好ましく、雰囲気乾燥、AFD、遠赤外線などを組み合わせて使用する。特に乾燥炉前半は緩やかな乾燥に対応できるような方法が好ましい。
内部電極層の形成方法
【0038】
内部電極層12の形成方法は、層を均一に形成できる方法であれば特に限定されず、例えば内部電極層用ペーストを用いたスクリーン印刷法或いはグラビア印刷法、オフセット印刷などの厚膜形成方法、あるいは蒸着、スパッタリングなどの薄膜法が挙げられる。本実施形態ではスクリーン印刷法を用いる。
【0039】
本実施形態で用いる内部電極層用ペーストは、導電性粉末、溶剤、分散剤、可塑剤、有機ビヒクル、添加物粉末などを含有する。内部電極層用ペーストは、これらの成分を、ペースト化することにより形成する。
【0040】
なお、導電性粉末としては、特に限定されないが、誘電体層10の構成材料が耐還元性を有するため、卑金属を用いることができる。導電材として用いる卑金属としては、NiまたはNi合金が好ましい。
【0041】
溶剤としては、特に限定されず、ターピネオール、ブチルカルビトール、ケロシン、アセトン、イソボニルアセテートなどが使用できる。
【0042】
分散剤としては、特に限定されないが、マレイン酸系分散剤、ポリエチレングリコール系分散剤および/またはアリルエーテルコポリマー分散剤が例示される。
【0043】
可塑剤としては、フタル酸エステル、アジピン酸、燐酸エステル、グリコール類などが使用できる。
【0044】
バインダとしては、特に限定されず、エチルセルロース、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、ポリビニルアルコール、ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリスチレン、又は、これらの共重合体などが使用できる。
【0045】
内部電極層用ペースト中には、グリーンシートに含まれるセラミック粉末と同じ組成の添加物粉末が共材として含まれていても良い。共材は、焼成過程において導電性粉末の焼結を抑制する作用を奏する。
【0046】
誘電体を薄膜化するには、内部電極層も薄膜にする必要があり、そのためにはもとの導電材粉の粒度を細かく、また粒度分布をシャープにする必要がある。導電材粉の分散は、誘電体粉末と同様な分散処理を行っても良いし、湿式分級処理を組み合わせてもよい。あるいは、導電粉の段階で乾式分級処理を行ってもよい。
【0047】
内部電極用ペーストの分散を向上させるためには、塗料分散もしっかりする必要がある。特に、微粒子Niを使用する場合には、まず混練工程として高固形分状態でNi粉と分散剤、樹脂、溶剤をしっかり濡らし、分散剤、樹脂とNi粒子との距離を縮めておく必要がある。この高固形分処理により、微粒子でも粘度が低く、経時安定性の高い塗料とすることができる。
【0048】
高固形分処理を行う装置としては、3本ロール、2本ロール、加圧ニーダー、連続式ニーダー等が挙げられる。さらにこの塗料を高圧ホモジナイザーで処理することが好ましい。それにより薄膜塗布に適した塗料とすることが出来る。この時に使用する高圧ホモジナイザーとしては液−液衝突タイプでも壁面衝突タイプでもまた攪拌タイプや超音波分散機でも可能である。しかし一般的に電極ペーストは高粘性であるため、高粘度に適した装置が好ましい。
コンデンサ素体の形成
【0049】
まず、図2(B)に示すように、内部電極層用ペーストを内装用グリーンシート10aに印刷し、内部電極ペースト層12aが形成された内装用グリーンシート10aを準備する。内部電極ペースト層12aは、焼成後に図1に示す内部電極層12となる部分である。
【0050】
また、内部電極ペースト層12aが形成され無い外装用グリーンシート(図示省略)も準備する。外装用グリーンシートは、焼成後に、図1に示す外装用誘電体層14となる部分である。
【0051】
外装用グリーンシートは、内装用グリーンシート10aと同一の誘電体スラリーにより形成することができるが、異なる誘電体スラリーにより形成しても良い。外装用グリーンシートは、内装用グリーンシート10aに比較して、厚膜に形成することが好ましい。外装用グリーンシートの積層工数を削減するためである。なお、内装用グリーンシート10aは、静電容量を向上させるためには、薄いほど好ましい。
【0052】
まず、所定枚数の外装用グリーンシートを積層し、その後に、内部電極ペースト層12aが形成された内装用グリーンシート10aを多数積層し、さらに所定枚数の外装用グリーンシートを積層し、その積層体を所定形状に切断することにより、グリーンチップを得る。
【0053】
なお、積層方式は様々な方法がある。特に剥離PETから最初に剥がす剥離タイプと、最初に層間を接着してから剥離する圧着タイプがあり、それぞれメリット、デメリットがあるため、その製品の要求特性を満たしやすい積層タイプを選定すればよい。生産性と薄膜対応性で剥離熱圧着方式が好ましいと考えられる。剥離熱圧着方式は、ロールで供給されたグリーンシートをまず剥離してから、位置合わせを行い、熱を掛けながら積層していく方式である。まず剥離してしまうため、剥離を工夫して速度を速められると積層全体のタクトを短くでき、生産性の高い積層機となる。またシートや剥離PETに工夫をすることで、薄膜でも剥がせることが可能となる。
【0054】
積層体を切断して得られたグリーンチップは、次に、脱バインダ処理、焼成処理およびアニール処理が行われる。これらの諸条件は、一般的な条件である。
【0055】
上記のように脱バインダ処理、焼成およびアニールを経て、コンデンサ素体4が得られる。コンデンサ素体4に対して、バレル研磨やサンドブラストなどにより端面研磨を施し、外部電極用ペーストを印刷または転写して焼成し、第1端子電極6と第2端子電極8を形成する。そして、必要に応じて、第1端子電極6と第2端子電極8の表面に、めっき等により被覆層を形成する。このようにして積層セラミックコンデンサ2が製造される。積層セラミックコンデンサ2は、ハンダ付等によりプリント基板上などに実装され、各種電子機器等に使用される。
誘電体スラリーの製造方法
【0056】
次に、図2(A)に示す内装用グリーンシート10aを形成するための誘電体スラリーを製造する方法について説明する。
【0057】
図3に示すように、まず、ステップS1にて、誘電体粉末を準備する。誘電体粉末の製法(固相法、水熱合成法、ゾル・ゲル法、アルコキシド法)は問わないが、製法によって誘電体粉末の凝集度が異なり、次のステップS2およびS3における前処理(予備分散処理)条件が若干異なることになる。
【0058】
誘電体粉末の製法によって異なる凝集度に合わせた前処理方法(予備分散処理)が必要であり、この前処理によって、後のビーズミル工程(ステップS4)による分散性が向上する。ステップS2またはステップS3において、ビーズミルなどで激しい分散をしてしまうと、誘電体粉末にダメージを与えてしまい、せっかく高誘電率で微粒子の誘電体粉を用いても、よい特性を持つ製品(積層セラミックコンデンサー)にはならない。そのため、いかにダメージを与えずに凝集塊を解してやるかがポイントとなる。特に0.15μm以下の微粒子の場合は、その微粒子故に凝集力が強く、0.2μm以上の粒子とは挙動があきらかに異なる。
【0059】
またさらに誘電体の誘電率を向上させる手段として通常行われることとして、誘電体の熱処理温度を上げたり、追加で熱処理工程を入れることが行われるが、その処理でも凝集が発生してしまう。そのためその強い二次凝集粉を解すには特別な手順が必要である。
【0060】
本実施形態では、誘電体粉末を、まずは溶剤と分散剤とにしっかり濡らすために、好ましくは周速20m/s以上の高速攪拌機(高速せん断分散機)で混合する。高速せん断分散機としては、たとえばディゾルバー型、ロータステータ型、コロイドミル型、薄膜旋回型が例示されるが、好ましくはロータステータ型分散機(第1前処理分散機)が用いられる。一方、ディゾルバー型はせん断力が足りなく、コロイドミル型はロータとステータの間隙が100分の数mmと狭いため、粉体に粉砕が起こってしまったり、溶剤の沸点以上にスラリー温度が上昇してしまったり、コンタミが多く混入してしまったりする。また、薄膜旋回型も同様にスラリーが高温になりやすいため、これの分散機を用いる場合には、いずれも使い方に工夫が必要となる。
【0061】
ロータステータ型分散機は、たとえば図4に示すように、回転軸と共に回転するロータ30と、回転しないステータ32との間の隙間に処理液を通し、分散混合するための装置である。本実施形態では、特に、周速20m/s以上の周速で使用できる装置が好ましい。
【0062】
この混合液を時間ごとに粒度を測定し、粒度分布、特に10μm以上の粗大粒子の分布が変化しなくなったら、そのペーストの一部を、次の第2前処理分散機で処理を行う。第2前処理分散機としては、高圧ホモジナイザーや超音波分散機などのメディアレス分散機が使用される。
【0063】
高圧ホモジナイザーとしては、たとえば図5に示すように、処理液を所定の流路に通して、処理部(ジェネレーター)で衝突部34に衝突させて分散処理を行う衝突型の装置と、衝突せず直管だけの貫通型ジェネレーター式の装置(図示せず)がある。処理部(ジェネレーター)が衝突型であれば少ない処理時間で済むため好ましいが、設備が高価になってしまう。衝突せず前後の通過径を変えさせて乱流を起こす貫通型ジェネレーターを使った場合は処理時間を必要とするが、粗大粒の詰まりがなく、洗浄性も高く、前処理には適している。
【0064】
また、超音波分散機としては、たとえば図6に示す装置が用いられ、発振器の振幅が分散性に効いており、好ましくは30μm以上、さらに好ましくは40μm以上である。しかしながら、超音波振動の振幅が45μmを越えると、振動子36そのものが欠けるようになり、分散液中のコンタミとなってしまうので注意が必要である。
【0065】
その後、図3に示すステップS4にて、後分散処理としてのビーズミルでの分散を行う。ビーズミルとしては、好ましくはジルコニアビーズでφ0.1mm以下が使用できる分散機が必要である。φ0.1mm以下のビーズが使えればどんなミルでも構わないが、使用するスラリーの粘度範囲やコンタミ発生量により慎重に選定する必要がある。このミルで小径ビーズを使用して分散することで、ダメージを与えずにすむ。
【0066】
ビーズミルの周速として、好ましくは10m/s以下、さらには8m/s以下(5m/s以上)が好ましい。ビーズ径をできるだけ小さくし、可能な限り低周速に抑えて分散することが好ましい。しかし周速5m/s以下のとなった場合、遠心分離タイプのビーズミルではビーズ流出の危険性が高く、かつ誘電体粉体の弱いが大きな凝集を解すには不十分なせん断しかかからないため不適である。
【0067】
このΦ0.1mm以下の小径ビーズを使用して誘電体を狙いの粒度まで分散し、その後、バインダ樹脂および可塑剤、帯電防止剤等を添加して誘電体スラリーとする(ステップS6)。このときビーズミルにてこれらの材料を混合分散しても構わないし、高速せん断装置によって混合を行っても構わない。
【0068】
また、このビーズミル分散の後にさらにメディアレス分散(ステップS5)を行って、誘電体スラリー(ステップS6)としても構わない。メディアレス分散機としては、高圧ホモジナイザーが挙げられ、処理条件としては、圧力40MPaから250MPa、パス回数は3から10パスが好ましい。
【0069】
本実施形態では、第1前処理前の溶液に含まれる誘電体粉末のBET比表面積(α)に対する第2前処理後の溶液に含まれる誘電体粉末のBET比表面積(β)の第1BET変化率(100×(β−α)/α)が0.7〜3.5%、好ましくは1.0〜3.0%となるように、第1前処理および第2前処理に用いられる処理装置の組合せや諸条件が選択される。なお、第1前処理前の溶液に含まれる誘電体粉末のBET比表面積(α)は、誘電体粉末の種類や合成法により異なるが、好ましくは、7〜15m/g、さらに好ましくは8〜13m/gである。
【0070】
また、本実施形態では、誘電体粉末の初期BET比表面積(α)に対する後分散処理後の溶液に含まれる誘電体粉末のBET比表面積(γ)の第2BET変化率(100×(γ−α)/α)が15%以下、好ましくは12.5%となるように、ステップS4のビーズミルの条件と、ステップS5のメディアレス分散の条件が決定される。なお、ビーズミルによる分散処理の後には、必ずしもメディアレス分散を行う必要がない。本発明において、「後分散処理」は、ビーズミル処理を少なくとも含み、その後に、メディアレス分散を行う場合には、そのメディアレス分散も後分散処理に含まれ、ビーズミルによる分散処理の後に行われる最終スラリーとなるまでの全ての処理が含まれる。
【0071】
上述したように、本実施形態に係る誘電体スラリーの製造方法およびそれを用いた積層セラミックコンデンサの製造方法においては、0.15μm以下の誘電体粉末のスラリー化工程の前工程において2段階でメディアレス分散処理を導入することで、BET比表面積の上昇と粗大粒子の残存とのバランスがとれ、その後に行われる直径0.1mm以下のビーズによるビーズミル分散で、誘電体粒子に対するダメージが少なく、薄膜に適した誘電体スラリーを製造することができる。
【0072】
本実施形態では、予備分散処理(第1前処理+第2前処理)の前後における誘電体粉末のBET比表面積の第1BET変化率(100×(β−α)/α)が0.7〜3.5%である。このような範囲では、誘電体へのダメージや二次凝集が少なく、その後に行われる直径0.1mm以下の小径ビーズによる分散効率が向上する。本実施形態の方法により得られる誘電体スラリーでは、微細で均一な粒径の誘電体粉末が均一に分散している。
【0073】
また、本実施形態では、第2BET変化率(100×(γ−α)/α)が15%以下である。すべての分散処理におけるBET比表面積の変化率を所定範囲とすることで、誘電損失が少なく、高誘電率で高寿命の積層セラミック電子部品を製造することができる。
【0074】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々に改変することができる。
【0075】
たとえば、本発明に係る製造方法は、積層セラミックコンデンサに限らず、インダクタ、バリスタなどのその他の積層セラミック電子部品の製造にも用いることができる。
【実施例】
【0076】
以下、本発明を、さらに詳細な実施例に基づき説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。
実施例1
【0077】
固相法により製造した(Ba1−xCa)(Ti1−yZr)O(BCTZ)を、900℃の仮焼温度で処理し、SEM径(D50)が100nm、初期BET比表面積(α)が8.5m/g(n=5の平均値)、誘電率が6000である誘電体粉末を準備した。
【0078】
次に、エタノール/プロパノール/キシレンから成る溶剤を75重量部と、ポリカルボン酸からなる分散剤を3重量部とを、ロータステータ型分散機(浅田鉄工製の2軸高速デスパミル)に投入し、ロータステータ部を周速10m/secで攪拌しながら、誘電体粉末を100重量部と微量添加物を投入した。周速を40m/secに上げてから60分処理(第1前処理)を行った。その後、第2前処理として、この処理液を高圧ホモジナイザー(吉田機械興業製ナノマイザー)で圧力100MPaで5パス(5p)処理を行った。
【0079】
次に、この処理液を、Φ0.05mmのジルコニア(ZrO)ビーズを80%充填したビーズミル装置(浅田鉄工製「ピコミル」)に投入し、スクリーンメッシュ15μmで、周速6m/secで滞留時間が15分となるように分散処理(ビーズミル分散)を行った(第1後分散処理)。
【0080】
その後、処理液をロータステータ型分散機に投入し、ロータステータ部を周速10m/secで攪拌しながら、誘電体粉末100重量部に対して、15%に溶解したポリビニルブチラール樹脂(積水化学製、BH−3)を15重量部と、可塑剤として、樹脂100重量部に対して10重量部のDOPとを、投入した。さらに、エタノール/プロパノール/メチルエチルケトン/キシレンからなる溶剤を150重量部添加し、周速を30m/secに上げてから60分処理を行った(第2後分散処理)。その後、この処理液を高圧ホモジナイザーで圧力100MPaで5パス(5p)処理を行った(第3後分散処理)後、0.5μmのフィルターと、0.3μmのフィルターを5パス通過させ、ろ過処理を行い、誘電体塗料(完成塗料)を得た。
【0081】
なお、分散処理前後の処理液の一部10ccを、るつぼに入れ、130℃のオーブンで3時間乾燥させた。この処理液から得られた乾燥粉について、BET比表面積測定機(Macsorb HM1208)にてBET比表面積を測定したところ、第2前処理後のBET比表面積(β)が8.67m/g、完成塗料のBET比表面積(γ)が9.13m/gであった(n=5の平均値)。
【0082】
これらの値から、前処理(第1前処理+第2前処理)前後の第1BET変化率は2.1%であり、全分散処理(第1前処理〜第3後分散処理)前後のBET比表面積の第2BET変化率は7.5%であることが確認された。さらに、前処理後の塗料0.1ccにHOを50cc加えて希釈し、レーザー回折方式の粒度分布測定装置(日機装製 MT3300)にてD100を測定したところ、1.06μmであった。結果を表1に示す。
【0083】
さらに、後分散処理後で濾過後の処理液(完成塗料)を用いて、厚さ0.9μmのグリーンシートを形成した。さらに、このグリーンシートの表面に厚さ0.3μmの電極をスクリーン印刷し、シートユニットとした。このユニットを剥離熱圧着積層機に掛け、電極がないグリーンシートを20μmになるまで積層した上に、このユニットを350層積層し、さらに電極がないシートを20μmになるまで、その上に積層した。
【0084】
この積層ユニットを電極サイズに合わせて切断し、脱バイ後1140℃と1210℃の2つの焼成温度でおのおの焼成を行った。外部電極を付け、0603サイズに切断しセラミックコンデンサとした。作製した積層セラミックコンデンサ100個について、インピーダンスアナライザー(ヒューレットパッカード社製、HP−4284A)を用いて、静電容量とtanδの測定を行った。εは、この静電容量と層間厚みと電極面積から計算した。さらに、このコンデンサ20個について、200℃で層間に75Vの電圧が印加されるようにして、寿命(平均寿命:MTTF)を測定した。寿命はワイブル解析により求めた。tanδ、εおよび寿命に関する特性は、実施例1の値を100%としたときの相対値で表した。これらの結果を表1に示す。
なお、本実施例では、BET比表面積は、気体(Nガス)を粉体に吸着させ、それにより粉体の比表面積を求める方法により求められ、具体的には、上述したBET比表面積測定機により求めた。
実施例2および比較例1
【0085】
前処理1におけるホモジナイザー処理の周速を、表1に示すように変化させた以外は、実施例1と同様にして、評価を行った。結果を表1に示す。表1に示すように実施例2では、実施例1と同様の結果が得られた。すなわち、実施例2では、第1BET変化率は、0.7〜3.5%の範囲内であり、第2BET変化率は、15%以下であり、tanδ、εおよび寿命共に、実施例1と遜色ないことが確認された。
【0086】
一方、比較例1では、ビーズミル処理で目詰まりが生じ、完成塗料を得ることができなかった。
実施例3
【0087】
水熱合成法により製造したBaTiO(BT)を、仮焼温度300℃で処理し、SEM径が120nm、初期BET比表面積(α)が7.6m/g(n=5の平均値)、誘電率が2000である誘電体粉末を用いると共に、グリーンシートの厚みを0.4μmとした以外は、実施例1と同様にして、評価を行った。結果を表1に示す。表1に示すように、実施例1と同様な結果が得られた。すなわち、第1BET変化率は、0.7〜3.5%の範囲内であり、第2BET変化率は、15%以下であり、tanδ、εおよび寿命共に、実施例1と遜色ないことが確認された。
実施例4−aおよび4−b
【0088】
実施例4−aは、実施例3で用いた仮焼き後の誘電体粉末を再度500℃で熱処理し(追加熱処理)、SEM径(D50)が120nm、初期BET比表面積(α)が7.6m/g(n=5の平均値)、誘電率が2850である誘電体粉末を用いると共に、グリーンシートの厚みを0.5μmとした以外は、実施例3と同様にして、評価を行った。さらに実施例4−bは、実施例4−aと同様のBT粉を用いて前処理条件2の処理回数を5パスから10パスに変更して、評価を行った。結果を表1に示す。表1に示すように、実施例3と同様な結果が得られた。すなわち、第1BET変化率は、0.7〜3.5%の範囲内であり、第2BET変化率は、15%以下であり、tanδ、εおよび寿命共に、実施例3と遜色ないことが確認された。ただし、実施例4−aでは、実施例3に比較して、εおよび寿命が向上した。さらに実施例4−bにおいては前処理の条件を上げることで熱処理により生じた凝集粉を解すことができ、特性向上につなげることが確認された。
比較例2
【0089】
実施例3で用いた誘電体粉末を用いると共に、ロータステータ型分散器の代わりに、第1前処理として、ディゾルバー(プライミクス社製「TKホモミキサー」)で分散処理を行い、更にグリーンシートの厚みを0.4μmとした以外は、実施例3と同様にして、評価を行った。結果を表1に示す。表1に示すように、比較例2では、第2前処理で目詰まりが生じ、その後の処理が行えず、完成塗料を得ることができなかった。
比較例3
【0090】
実施例3で用いた誘電体粉末を用いると共に、ロータステータ型分散器の代わりに、第1前処理として、Φ10mmのジルコニア(ZrO)ビーズを充填したビーズミル装置を用いて、周速12m/secで分散処理を行い、更にグリーンシートの厚みを0.4μmとした以外は、実施例3と同様にして、評価を行った。結果を表1に示す。表1に示すように、比較例3では、第1BET変化率が12%、第2BET変化率も、17.5%と高く、実施例3に比べtanδが劣化すると共に、寿命特性が低下することが確認された。
比較例4
【0091】
ロータステータ型分散器の代わりに、第1前処理として、Φ10mmのジルコニア(ZrO)ビーズ充填したビーズミル装置を用いると共に、第2前処理で用いる高圧ホモジナイザーの条件を、140MPaおよび5パスとした以外は、実施例1と同様にして、評価を行った。表1に示すように、比較例4では、第1BET変化率が17.8%、第2BET変化率も、23.8%と高く、実施例1に比べtanδが劣化すると共に、寿命特性が低下することが確認された。
【0092】
実施例5〜7および比較例5
【0093】
第2前処理におけるホモジナイザー処理の条件を表2に示すように変更させた以外は実施例1と同様にして、評価を行った。結果を表2に示す。表2に示すように、実施例5〜7においては実施例1と同様な結果が得られた。すなわち、実施例5〜7においては、第1BET変化率は、0.7〜3.5%の範囲内であり、第2BET変化率は、15%以下であり、tanδ、εおよび寿命共に実施例1と同様な結果が得られた。
【0094】
一方、比較例5では、第1BET変化率が0.7%未満であったため、ビーズミル処理で目詰まりが生じ、完成塗料を得ることができなかった。
実施例8〜10および比較例6〜8
【0095】
ビーズミル処理の条件を表3に示すように変更させた以外は実施例1と同様にして、評価を行った。結果を表3に示す。表3に示すように、実施例8〜10においては実施例1と同様な結果が得られた。すなわち、実施例8〜10においては、第1BET変化率は、0.7〜3.5%の範囲にあり、第2BET変化率は、15%以下であり、tanδ、εおよび寿命共に実施例1と同様な結果が得られた。
【0096】
一方、比較例6〜8では、第2BET変化率が15%を超えており、実施例1に比べ、tanδ、εおよび寿命の全ての特性が低下することが確認された。
実施例11〜14および比較例9、10
【0097】
第2前処理として、高圧ホモジナイザーの代わりに、超音波分散機(日本精機製 UW−600T)を用いると共に、超音波分散機の処理条件として、超音波振動の振幅と、処理液の滞留時間を、表4に示すように変化させた以外は、実施例1と同様にして、評価を行った。さらに、実施例1とは異なる評価として、ビーズミル処理後の処理液0.1ccにエタノールを10cc入れて、150Wの超音波分散機で5分間処理を行った後、この液をスピンコーターでアルミフォイール上に展開乾燥させ、その最外装部を、JEOL製 JSM−6700Fにて倍率1万倍10視野観察し、1μm以上の粒子(粗大粒子個数)をカウントした。これらの結果を表4に示す。
【0098】
表4に示すように、実施例12〜14では、ホモジナイザーの代わりに、第2前処理として、超音波分散機を用いた場合でも、実施例1と同様な結果が得られることが確認できた。すなわち、第1BET変化率は、0.7〜3.5%の範囲にあり、第2BET変化率は、15%以下であり、tanδ、εおよび寿命共に実施例1と同様な結果が得られた。また、実施例12〜14では、第1BET変化率が0.7%未満である比較例9および10に比較して、粗大粒子の数も少なく、寿命が向上していることが確認できた。
【0099】
【表1】

【0100】
【表2】

【0101】
【表3】

【0102】
【表4】

【符号の説明】
【0103】
2… 積層セラミックコンデンサ
4… コンデンサ素体
6,8… 端子電極
10… 誘電体層
12… 内部電極層
10a… グリーンシート
12a… 内部電極ペースト層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体粉末と溶剤とを少なくとも混合分散して誘電体スラリーを製造する方法であって、
前記誘電体粉末と溶剤とを少なくとも含む分散前処理溶液を、予備分散処理により混合分散する工程と、
前記予備分散処理が行われた処理済み溶液を、後分散処理により混合分散する工程と、を有し、
前記予備分散処理が、第1前処理と、前記第1前処理の後に行われ、前記第1前処理とは異なる第2前処理との二段階の分散処理であり、
前記第1前処理が、高速せん断分散機による分散処理であり、
前記第2前処理が、高圧ホモジナイザー分散機、または、超音波分散機による分散処理であり、
前記後分散処理が、ビーズ径が0.1mm以下のビーズを用いるビーズミル分散機による分散処理を含み、
前記予備分散処理前の溶液に含まれる誘電体粉末の初期BET比表面積(α)に対する予備分散処理後の溶液に含まれる誘電体粉末のBET比表面積(β)の変化率(100×(β−α)/α)が0.7〜3.5%となるように前記予備分散処理が行われ、
前記予備分散処理前の溶液に含まれる誘電体粉末の初期BET比表面積(α)に対する後分散処理後の溶液に含まれる誘電体粉末のBET比表面積(γ)の変化率(100×(γ−α)/α)が15%以下となるように前記後分散処理が行われる誘電体スラリーの製造方法。
【請求項2】
前記後分散処理が、前記ビーズミル分散機による分散処理の後に行われるメディアレス分散処理をさらに含む請求項1に記載の誘電体スラリーの製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の誘電体スラリーの製造方法により得られた誘電体スラリーを用いて、グリーンシートを形成する工程と、
前記グリーンシート上に内部電極パターンを形成する工程と、
前記内部電極パターン層が形成された前記グリーンシートを、複数積層して積層体を形成する工程と、
前記積層体を焼成する工程と、を有する積層セラミック電子部品の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−72033(P2012−72033A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−219338(P2010−219338)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】