説明

誘電体上にIII−V族半導体材料を成長させるための方法

III−V族半導体材料の再成長層の形成は、中間層を予め形成することによって、容易にされる。この中間層は、主として、その滑らかな形態特性により選択される。この中間層は、下にある基板を覆うように、かつこの基板の一部を覆って形成された誘電体層を覆うように、形成される。この中間層は、その下にある基板層の、誘電体層によって覆われた領域以外の領域の単結晶特性を維持し、そしてこの中間層を覆って形成された再成長層の電気的特性および形態特性を改善する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、国防総省によって認められた、契約番号N00014−02−C−0473の下で、政府の支持によりなされた。政府は、本発明において特定の権利を有する。
【0002】
(発明の背景)
本発明は、一般に、半導体製造技術に関し、そしてより特定すると、特定の半導体材料を、誘電材料を備える構造体を覆って再成長させるための技術に関する。
【背景技術】
【0003】
誘電体は、半導体の多くの用途において、半導体構造体の伝導性領域と金属領域との間の電気的分離を維持するために、使用される。これらの半導体材料が、シリコンベースである場合、このような材料を、誘電体を備える構造体を覆って成長させることは、さほど困難ではない。多結晶質シリコンは、固有に伝導性であり、そして望ましくは抵抗が低い接触を、半導体構造体の他の領域に形成する。
【0004】
不運にも、一般にIII−V族材料と称される半導体材料のクラスについては、上記利点は、固有ではない。III−V族材料とは、すなわち、元素の周期表のIII族およびV族に入る半導体材料である。これらの材料(例えば、インジウムリン(InP)およびガリウムヒ素(GaAs))は、高速電子用途および電気光学用途のために選択された、半導体である。誘電体を覆って成長したIII−V族半導体は、ほとんどの部分について、固有に導電性ではない。再成長した層が半導体領域と重なる領域において、その電気的特性は、望ましくなく高い抵抗を、その下にある半導体領域と再成長した層との間に生じる。再成長したIII−V族半導体材料はまた、代表的に、望ましくない形態を有する。具体的には、あるクラスの再成長したIII−V族半導体は、加工が不可避であるほど粗い表面を提示するが、一般に、これらの材料は、比較的良導体である。他のクラスのIII−V族半導体は、より滑らかであり、これらの材料の加工を容易にするが、一般に、伝導性が低い。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、半導体製造の分野において、誘電体を備える構造体を覆うIII−V族半導体材料の再成長を容易にし、そして下にある半導体領域との良好な電気的接触を提供する技術が必要とされている。本発明は、この要件に適う。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(発明の要旨)
本発明は、III−V族半導体材料の再成長層の電気的特性および形態特性を改善するための方法に関する。簡単に、一般的に言えば、本発明は、基板を形成する工程;この基板の少なくとも1つの選択された部分を覆って誘電体層を形成する工程;この誘電体層を覆い、そしてこの基板のなお露出している部分を覆って、中間層を形成する工程であって、この中間層は、その滑らかな形態特性により選択される、工程;およびこの中間層を覆って、III−V族再成長層を形成する工程を包含する。
【0007】
中間層を形成する工程は、好ましくは、この中間層のためのIII−V族半導体材料を選択する工程を包含する。より具体的には、この中間層は、インジウムガリウムヒ素(InGaAs)、インジウムヒ素(InAs)、ガリウムアンチモン(GaSb)およびインジウムアンチモン(InSb)のような材料から選択され得る。
【0008】
例として開示される、本発明の実施形態において、III−V族再成長層は、p型インジウムアンチモン(InSb)であり、そして半導体層を形成する工程は、分子線エピタキシー(MBE)によって実施される。
【発明の効果】
【0009】
上記要旨から、本発明は、半導体製造の分野において、かなりの利点を提供することが理解される。具体的には、本発明は、誘電体層が形成されたいくらかの領域を備える半導体構造体を覆う、III−V族半導体材料の再成長を容易にする。本発明の他の局面および利点は、添付の図面と組み合わせて考慮され、以下のより詳細な記載から明らかになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
(発明の詳細の説明)
説明の目的で図面に示されるように、本発明は、半導体製造技術に関し、そして特に、誘電体層を備える構造体におけるIII−V族半導体材料の使用を容易にする製造方法に関する。III−V族材料は、高速半導体構造体(例えば、ヘテロ接合バイポーラトランジスタ(HBT)、高電子移動度トランジスタ(HEMT)および種々の電子光学デバイス)において、重要な用途を有する。上で議論されたように、III−V族半導体材料は、一般に、望ましくない電気的特性および形態特性を有し、これらの特性は、これらの材料が、誘電体層を備える構造体と動作することを困難にする。
【0011】
本発明に従って、III−V族材料が半導体構造体を覆って再成長される前に、中間層(すなわち、シード層)が、先に成長される。この中間層は、比較的滑らかな形態を有するように選択され、これによって、この中間層を覆って成長する最終的な層の形態特性および電気的特性が、改善される。実際には、この中間層は、最終的な層の望ましい成長特性を改善し、そして可能にする。
【0012】
図1に示されるように、本発明は、基板(参照番号10によって示される)を備える半導体構造体に適用される。基板10は、必ずしも、この構造体における最下層である必要はなく、例えば、ヘテロ接合バイポーラトランジスタ(HBT)の基部領域であり得る。具体的な例として、基板10は、インジウムガリウムヒ素(InGaAs)基部であり得る。製造の間に実施される加工工程の結果として、この半導体構造体は、誘電材料の少なくとも1つの層12をさらに備える。この層12は、基板10を覆って形成される。誘電体層12は、例えば、酸化ケイ素(SiO)または窒化ケイ素(SiN)であり得る。誘電体層12の厚さは、本発明において重要ではないが、代表的な厚さは、10nm〜1000nmの範囲である。
【0013】
半導体の多くの用途において、半導体領域(例えば、トランジスタの基部として働く基板10)との電気的接触を確立することが必要である。金属接触層を、接触がなされる領域に直接適用することは、時々、実用的ではない。なぜなら、このような金属−半導体接合部は、望ましい電気的特性を有さないからである。従って、III−V族材料の再成長層を基板10を覆って適用し、そしてこの再成長層を通る電気的接触を確立する必要がある。上で議論されたように、このアプローチは、III−V族材料を用いて達成することが困難である。なぜなら、この再成長層は、代表的に、望ましい電気的特性および形態特性を有さないからである。
【0014】
本発明において、中間層14が、最初に、基板10および誘電体層12を覆って形成される。中間層14(すなわち、シード層)は、例えば、p型インジウムガリウムヒ素(InGaAs)、n型インジウムヒ素(InAs)、ガリウムアンチモン(GaSb)またはインジウムアンチモン(InSb)であり得る。この層の厚さは、本発明において重要ではないようであるが、10nm〜100nmの範囲の厚さが適切である。この材料は、非常に滑らかな形態を提供するように選択される。中間層14の、誘電材料12と接触する部分は、多結晶形態を採り、一方で、基板10を直接覆って形成される部分は、この基板を覆ってエピタキシャルに成長し、そして一般に、単結晶である。基板10および誘電体層12は、図1に示されるように、平坦な積み重なりであり得るが、これらの層はまた、パターン付けされ得、そして輪郭を付けられ得る。図2は、1つのこのような可能な層のパターンを示す。従って、中間層14は、図1に示されるように、誘電体層12から基板10へと下向きの段を有し得るか、平坦であり得るか、または図2に示されるように、上向きの段を有し得る。
【0015】
III−V族の再成長層16が中間層14を覆って形成される場合、中間層の存在は、この再成長層の電気的特性および形態特性を改善する。再成長層16の、誘電体層12を覆わない領域は、下にある中間層から単結晶形態を採り、そしてこの領域は、基板10との、抵抗が低い良好な接触を提供する。再成長層16の、誘電体層12を直接覆う領域は、一般に、多結晶形態を取る。例のみとして、この再成長領域は、適切な厚さ(例えば、200nm)のIII−V族層(例えば、p型インジウムアンチモン(InSb))であり得る。代表的に、金属層(図示せず)が、再成長層16の一部を覆って形成されて、基板10または基部、およびこの半導体基板の他の選択された領域との電気的接触を確立する。
【0016】
上記において、半導体層を形成する工程、すなわち成長させる工程は、適切なエピタキシャルプロセス(例えば、分子線エピタキシー(MBE))によって、実施される。
【0017】
上記のことから、本発明は、III−V族材料を使用する半導体製造の分野におけるかなりの改善を提供することが理解される。具体的には、滑らかな形態の中間層すなわちシード層の使用は、引き続いて適用されるIII−V族再成長層の特性を改善する。この改善は、III−V族材料の望ましい特性を利用する、種々の半導体構造体を製造することを可能にする。本発明の特定の実施形態が詳細に記載されたが、種々の改変が、本発明の精神および範囲内でなされ得ることもまた、理解される。従って、本発明は、添付の特許請求の範囲による以外には、限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、本発明の方法に従って形成される構造体の断面を示す図である。
【図2】図2は、図1と類似であるが、構造体の代替の形態を示す断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
III−V族半導体構造体を製造するための方法であって、以下の工程:
基板を形成する工程;
該基板の少なくとも1つの選択された部分を覆って、誘電体層を形成する工程;
該誘電体層と、該基板のなお露出している部分とを覆って、中間層を形成する工程であって、該中間層は、該中間層の滑らかな形態特性により選択される、工程;ならびに
該中間層を覆って、III−V族再成長層を形成する工程、
を包含する、方法。
【請求項2】
前記基板が、III−V族半導体材料である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記中間層を形成する工程が、該中間層のためのIII−V族半導体材料を選択する工程を包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記中間層が、インジウムガリウムヒ素(InGaAs)、インジウムヒ素(InAs)、ガリウムアンチモン(GaSb)およびインジウムアンチモン(InSb)からなる群より選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記III−V族再成長層が、p型インジウムアンチモン(InSb)である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記半導体層を形成する工程が、分子線エピタキシー(MBE)によって実施される、請求項1に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−533169(P2007−533169A)
【公表日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−509481(P2007−509481)
【出願日】平成17年3月23日(2005.3.23)
【国際出願番号】PCT/US2005/010008
【国際公開番号】WO2005/109477
【国際公開日】平成17年11月17日(2005.11.17)
【出願人】(506079685)ノースロップ グルムマン コーポレイション (18)
【Fターム(参考)】